(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】光ファイバの製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 25/12 20060101AFI20240709BHJP
C03B 37/10 20060101ALI20240709BHJP
C03C 25/104 20180101ALI20240709BHJP
C03C 25/475 20180101ALI20240709BHJP
【FI】
C03C25/12
C03B37/10 A
C03C25/104
C03C25/475
(21)【出願番号】P 2020136385
(22)【出願日】2020-08-12
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】椿山 仁士
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-202969(JP,A)
【文献】特開2001-66476(JP,A)
【文献】特開平11-106239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C25/00-25/70
C03B37/10
G02B6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の圧力をかけて着色材をダイス内に送り出し、前記ダイス内に光ファイバ素線を通過させて前記光ファイバ素線の周囲に前記着色材を塗布する光ファイバの製造方法であって、
線速停止状態の後、前記光ファイバ素線の線速の上昇を開始してから前記線速が定常製造線速に至る途中までの間は、前記線速に対する前記着色材の供給圧力の比を、前記定常製造線速に至った後の前記線速に対する前記供給圧力の比よりも大きく
し、
前記線速停止状態における前記着色材の前記ダイス内への供給圧力を0.1MPa以上0.5MPa以下としてから前記線速の上昇を開始する、光ファイバの製造方法。
【請求項2】
前記線速停止状態において、前記ダイス内に前記着色材が充填されてから前記線速の上昇を開始する、請求項
1に記載の光ファイバの製造方法。
【請求項3】
所定の圧力をかけて着色材をダイス内に送り出し、前記ダイス内に光ファイバ素線を通過させて前記光ファイバ素線の周囲に前記着色材を塗布する光ファイバの製造方法であって、
線速停止状態の後、前記光ファイバ素線の線速の上昇を開始してから前記線速が定常製造線速に至る途中までの間は、前記線速に対する前記着色材の供給圧力の比を、前記定常製造線速に至った後の前記線速に対する前記供給圧力の比よりも大きくし、
前記線速停止状態において、前記ダイス内に前記着色材が充填されてから前記線速の上昇を開始する
、光ファイバの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、着色材が入れられた容器が納められた圧力容器に加圧空気を供給して圧力容器内の圧力を高めて、着色材を供給することを開示している。
特許文献2は、光ファイバの被覆方法に関する発明であって、線引速度と被覆材料を押し出す圧力の比を一定にすることを開示している。
特許文献3は、光ファイバ線引時の線速上昇中において、製造線速に近い領域で線速上昇割合に対する樹脂供給圧力の上昇割合の比を製造線速における線速に対する樹脂供給圧力の比より小さくすることを開示している。
特許文献4には、光ファイバの線引速度に応じて被覆樹脂の供給圧を調節する方法が開示されている。具体的には、ニップル孔内の被覆樹脂の液面位置を検出し、液面高さが一定になるように樹脂圧力を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-186247号公報
【文献】特開平1-45746号公報
【文献】特開2001-66476号公報
【文献】特開平10-194794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
設備停止時にはダイス内にインクが供給されないため、ダイス内がインクで満たされた状態になっていない。その状態でダイス内を通過する光ファイバの線速を上昇させると、ダイス内の空気がインク内に気泡として長時間残留したままでインクが光ファイバに塗布されることで外観不良が発生する場合がある。
【0005】
そこで、本開示は、光ファイバの着色層への気泡の混入を防止して外観不良を抑制可能な光ファイバの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る光ファイバの製造方法は、
所定の圧力をかけて着色材をダイス内に送り出し、前記ダイス内に光ファイバ素線を通過させて前記光ファイバ素線の周囲に前記着色材を塗布する光ファイバの製造方法であって、
線速停止状態の後、前記光ファイバ素線の線速の上昇を開始してから前記線速が定常製造線速に至る途中までの間は、前記線速に対する前記着色材の供給圧力の比を、前記定常製造線速に至った後の前記線速に対する前記供給圧力の比よりも大きくする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、光ファイバの着色層への気泡の混入を防止して外観不良を抑制可能な光ファイバの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る光ファイバの製造装置の概略構成図である。
【
図2】(a)は、実施例1に係る光ファイバ製造装置の着色ダイスに供給されるインクの時間経過における供給圧力の変化を示すグラフであり、(b)は、実施例1に係る着色ダイスを通過する光ファイバ素線の時間経過における線速の変化を示すグラフである。
【
図3】(a)は、比較例に係る光ファイバ製造装置の着色ダイスに供給されるインクの時間経過における圧力変化を示すグラフであり、(b)は、比較例に係る着色ダイスを通過する光ファイバ素線の時間経過における線速変化を示すグラフである。
【
図4】実施例に基づいてインクを供給した場合に着色ダイス内で形成されるメニスカスと、比較例に基づいてインクを供給した場合の着色ダイス内で形成されるメニスカスを示す模式図である。
【
図5】(a)は、実施例2に係る光ファイバ製造装置の着色ダイスに供給されるインクの時間経過における圧力変化を示すグラフであり、(b)は、実施例2に係る着色ダイスを通過する光ファイバ素線の時間経過における線速変化を示すグラフである。
【
図6】(a)は、実施例3に係る光ファイバ製造装置の着色ダイスに供給されるインクの時間経過における圧力変化を示すグラフであり、(b)は、実施例3に係る着色ダイスを通過する光ファイバ素線の時間経過における線速変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の実施形態の説明)
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の一態様に係る光ファイバの製造方法は、
(1)所定の圧力をかけて着色材をダイス内に送り出し、前記ダイス内に光ファイバ素線を通過させて前記光ファイバ素線の周囲に前記着色材を塗布する光ファイバの製造方法であって、
線速停止状態の後、前記光ファイバ素線の線速の上昇を開始してから前記線速が定常製造線速に至る途中までの間は、前記線速に対する前記着色材の供給圧力の比を、前記定常製造線速に至った後の前記線速に対する前記供給圧力の比よりも大きくする。
上記方法によれば、光ファイバ素線に塗布される着色材への気泡の混入を防ぐことで、光ファイバの外観不良を抑制することができる。
【0010】
(2)前記線速停止状態における前記着色材の前記ダイス内への供給圧力を0.1MPa以上0.5MPa以下としてから前記線速の上昇を開始してもよい。
上記方法によれば、線速上昇前に一定の圧力をかけて着色材をダイス内に送り込むため、ダイス内により早く着色材を送り込むことができる。これにより、生産性を向上させることができる。
【0011】
(3)前記線速停止状態において、前記ダイス内に前記着色材が充填されてから前記線速の上昇を開始してもよい。
上記方法によれば、光ファイバ素線に塗布される着色材への気泡の混入を確実に防止することができる。
【0012】
(本開示の実施形態の詳細)
本開示の実施形態に係る光ファイバの製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0013】
図1は、光ファイバ素線の外周にインク(着色材の一例)を被覆する着色工程において、本実施形態に係る光ファイバの製造方法を適用した光ファイバの製造装置の概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態に係る光ファイバの製造装置1は、光ファイバ素線G1にインクを塗布する着色ダイス2と、塗布されたインクに紫外線を照射する紫外線照射装置3と、を備えている。着色ダイス2の前段には光ファイバ素線G1を繰り出す繰出しボビン11が取り付けられており、紫外線照射装置3の後段には紫外線が照射されて形成された光ファイバG2を後段にガイドするガイドローラ12が設けられている。
【0014】
着色ダイス2には、インクを供給するインク供給タンク20が供給パイプ21を介して接続されている。光ファイバ素線G1に塗布されるインクとしては、例えば着色のための顔料等を含む紫外線硬化型樹脂が用いられる。インク供給タンク20から供給されたインクは、着色ダイス2を通過する光ファイバ素線G1の外周に塗布される。なお、本例において、光ファイバ素線G1とは、プリフォーム(光ファイバ母材)を線引して形成されたガラスファイバの外周に被覆層(例えばプライマリ樹脂とセカンダリ樹脂)が被覆された状態のファイバを意味する。着色ダイス2と供給パイプ21との接続部分には圧力計23が設けられている。
【0015】
紫外線照射装置3は、インクが塗布された光ファイバ素線G1に紫外線を照射してインクを硬化させる装置である。紫外線照射装置3は、例えば一段あるいは複数段の紫外線照射炉で構成されている。
【0016】
次に、着色工程における上記製造装置1を用いた光ファイバの製造方法について説明する。
まず、光ファイバの製造が開始されると、インク供給タンク20から供給パイプ21を介して供給されるインクが、着色ダイス2に入線された光ファイバ素線G1の外周に塗布される。インクが塗布された光ファイバ素線G1は、着色ダイス2から出線される。
【0017】
着色ダイス2から出線された光ファイバ素線G1は、紫外線照射装置3へ送られる。紫外線照射装置(照射炉)3内に送られた光ファイバ素線G1に紫外線が照射され、光ファイバ素線G1の外周に塗布されているインクが硬化されて、光ファイバG2が形成される。
【0018】
形成された光ファイバG2は、紫外線照射装置3から出線された後、ガイドローラ12を介して巻取りボビン(図示省略)に巻き取られる。
【0019】
(実施例1)
図2(a)は、実施例1に係る光ファイバ製造装置1の着色ダイス2に供給されるインクの時間経過における供給圧力の変化を示すグラフである。
図2(b)は、実施例1に係る着色ダイス2を通過する光ファイバ素線G1の時間経過における線速の変化を示すグラフである。インクの供給圧力は、着色ダイス2と供給パイプ21との接続部分に設けられた圧力計23によりゲージ圧として計測される。
【0020】
図2(b)に示すように、着色ダイス2内に光ファイバ素線G1を通過させて、光ファイバ素線G1にインクを塗布する際には、時間T0から時間T1までの間に光ファイバ素線G1の線速を線速V0から定常線速V1まで直線的に増加させる。定常線速V1に到達した後は線速を定常線速V1のまま維持する。このとき、
図2(a)に示すように、着色ダイス2内に供給されるインクの供給圧力を時間T1よりも短い時間T2までの間に圧力P0から圧力P2まで増加させる。圧力P2は、T0-T2間の供給圧力の傾きがT0-T2間の線速の傾きよりも大きくなるような値に設定されている。その後、時間T2から時間T1までの間に、インク供給圧力を圧力P2から圧力P1まで増加させる。時間T1において圧力P1に到達した後はインク供給圧力を圧力P1のまま維持する。このようにすることで、次式(1)が満たされる。次式(1)において、V2は、時間T2の時の線速である。
P2/V2>P1/V1 ・・・(1)
【0021】
実施例1では、光ファイバ素線G1の線速の上昇を開始してから当該線速が定常線速V1に至る途中までの間の線速、例えば時間T2における線速V2に対するインク供給圧力P2の比(P2/V2)が、定常線速V1のときの当該線速V1に対するインク供給圧力P1の比(P1/V1)よりも大きくなるように供給圧力を調整している。上述の通り、本例では、
図2(a)の、T0-T2間の供給圧力の傾きがT0-T2間の線速の傾きよりも大きい。すなわち、時間T0から時間T2の間の供給圧力の増加の割合が線速の上昇の割合よりも大きい。そのため、T0-T2間における線速に対する供給圧力の比は、定常線速状態となった時間T1以降における線速に対する供給圧力の比よりも大きくなる。また、時間T2の時点での供給圧力P2は、時間T2の時点での線速V2よりも相対的に大きい。そのため、T2-T1間における線速に対する供給圧力の比も、定常線速状態となった時間T1以降における線速に対する供給圧力の比よりも大きくなる。
【0022】
(比較例)
図3(a)は、比較例に係る光ファイバ製造装置1の着色ダイス2に供給されるインクの時間経過における圧力変化を示すグラフである。
図3(b)は、比較例に係る着色ダイス2を通過する光ファイバ素線G1の時間経過における線速変化を示すグラフである。
図3(b)の線速のグラフは
図2(b)のグラフと同一である。
図3(a)に示すように、比較例においては、着色ダイス2内に供給されるインクの供給圧力を時間T1までの間に圧力P0の状態から圧力P1まで直線的に増加させる。時間T1において圧力P1に到達した後はインク供給圧力を圧力P1のまま維持する。すなわち、比較例においては、光ファイバ素線G1の線速の上昇を開始してから当該線速が定常線速V1に至る途中までの区間内の時間である時間T2における線速V2に対するインクの供給圧力P3の比(P3/V2)は、定常線速V1に対するインク供給圧力P1の比(P1/V1)と同一である。
【0023】
図4は、実施例1のように着色ダイス2内に供給されるインクの供給圧力を変化させた状態での着色ダイス2内で形成されるメニスカスと、比較例のように着色ダイス2内に供給されるインクの供給圧力を変化させた状態での着色ダイス2内で形成されるメニスカスを示す模式図である。ここでいうメニスカスとは、界面張力によって着色ダイス2内に供給されたインクLの表面が形成する凹状の曲面である。
図4において、実施例1のようにインクLの供給圧力を変化させた状態でのメニスカス30を実線で示し、比較例のようにインクLの供給圧力を変化させた状態でのメニスカス30Aを破線で示している。
図4に示すように、実施例1の方法でインクLの供給圧力を変化させた場合に着色ダイス2内のインクLの表面に形成されるメニスカス30は、比較例の方法でインクLの供給圧力を変化させた場合に着色ダイス2内のインクLの表面に形成されるメニスカス30Aよりも小さくなる。
【0024】
比較例のように線速の上昇開始から定常線速へ到達するまでの間にインクの供給圧力をP0の状態からP1まで直線的に増加させた場合には、インク硬化後の光ファイバG2の外観不良率は0.4%程度となった。一方、実施例1のように線速の上昇開始から定常線速へ到達する途中にインクの供給圧力をP2へと急激に増加させた場合には、インク硬化後の光ファイバG2の外観不良率は0.1~0.2%程度となった。このように、光ファイバ素線G1の線速上昇を開始してから当該線速が定常線速に至る途中の線速に対するインク供給圧力の比が、定常線速のときの当該定常線速に対するインク供給圧力の比よりも大きくなるように供給圧力を調整して、メニスカスをできるだけ小さくすることで、光ファイバG2の外観不良率が有意に低減することが確認できた。
【0025】
以上説明したように、実施例1に係る光ファイバの製造方法によれば、光ファイバ素線G1へのインクの着色工程において、光ファイバ素線G1の線速停止状態(T0,V0)の後、光ファイバ素線G1の線速の上昇を開始してから線速が定常線速(定常製造線速)V1に至る途中までの間は、線速V2に対するインクの供給圧力P2の比を、定常線速V1における線速に対するインクの供給圧力P1の比よりも大きくする。これにより、
図4に示すようにメニスカス30を小さくすることができるため、メニスカス30に起因する着色ダイス2内に供給されたインクLへの気泡の混入を防ぐことができる。これにより、光ファイバ素線G1に塗布されたインクLへの気泡の混入を防ぐことができ、光ファイバG2の外観不良を抑制することができる。
【0026】
なお、光ファイバ素線G1の線速停止状態において、着色ダイス2内にインクLが充分に充填されてから線速の上昇を開始することが好ましい。これにより、光ファイバ素線G1に塗布されるインクLへの気泡の混入を確実に防止することができる。着色ダイス2内にインクLが充填されたかどうかは、例えば、着色ダイス2への光ファイバ素線G1の入線口を目視で観察することで判断することができる。
【0027】
(実施例2)
図5(a)は、実施例2に係る光ファイバ製造装置1の着色ダイス2に供給されるインクの時間経過における圧力変化を示すグラフである。
図5(b)は、実施例2に係る着色ダイス2を通過する光ファイバ素線G1の時間経過における線速変化を示すグラフである。
図5(b)の線速のグラフは
図2(b)のグラフと同一である。
図5(a)に示すように、実施例2においては、光ファイバ素線G1の線速上昇前に、すなわち、線速停止状態において、着色ダイス2内に供給されるインクの供給圧力を圧力P0よりも高い圧力P4としておき、その後に、時間T1までの間に供給圧力を圧力P4から圧力P1まで直線的に上昇させる。時間T1において圧力P1に到達した後はインクの供給圧力を圧力P1のまま維持する。この場合にも、実施例1と同様に、以下の式(2)が成立する。なお、
図5(a)に示す圧力P5は、時間T2のときの圧力である。
P5/V2>P1/V1 ・・・(2)
【0028】
実施例2において、線速停止状態での供給圧力P4は、ゲージ圧で0.1MPa以上0.5MPa以下とすることが好ましい。供給圧力P4が0.1MPaよりも低い場合には、メニスカスが十分に小さくならずに気泡の混入が発生しやすくなる。一方、供給圧力P4が0.5MPaよりも高い場合には、着色ダイス2の上部からインクが溢れてしまう可能性がある。
【0029】
以上説明したように、実施例2においては、光ファイバ素線G1の線速上昇前に一定の供給圧力P3を印加しておいてからインクを着色ダイス2内に送り込む方法を採用している。当該方法によれば、メニスカス30を小さくしてインクへの気泡の混入を防ぐことで光ファイバG2の外観不良を抑制できるとともに、実施例1や比較例に比べて、着色ダイス2内により早くインクを送り込むことができる。これにより、光ファイバG2の生産性を向上させることができる。
【0030】
(実施例3)
図6(a)は、実施例3に係る光ファイバ製造装置1の着色ダイス2に供給されるインクの時間経過における圧力変化を示すグラフである。
図6(b)は、実施例3に係る着色ダイス2を通過する光ファイバ素線G1の時間経過における線速変化を示すグラフである。
図6(b)の線速のグラフは
図2(b)のグラフと同一である。
図6(a)に示すように、実施例3においては、光ファイバ素線G1の線速上昇前に、すなわち、線速停止状態において、着色ダイス2内に供給されるインクの供給圧力を圧力P0よりも高い圧力P6としておき、時間T1よりも短い時間T3までの間は供給圧力を圧力P6のまま維持する。その後、時間T3から時間T1までの間に供給圧力を圧力P6から圧力P1まで直線的に上昇させる。時間T1において圧力P1に到達した後はインクの供給圧力を圧力P1のまま維持する。この場合にも、時間T0から時間T3までの途中の区間については、実施例1と同様に、以下の式(3)が成立する。なお、
図6(b)に示す線速V4は、時間T0から時間T3までの途中の時間である時間T4での線速である。
P6/V4>P1/V1 ・・・(3)
なお、実施例3においては、時間T3に到達してから時間T1までの線速に対する供給圧力の比(例えば、P6/V3)は、時間T1に到達した後の定常線速V1に対する供給圧力P1の比(P1/V1)と同一となる。
【0031】
以上説明したように、実施例3においては、線速上昇前に着色ダイス2に供給されるインクに一定の圧力P6をかけておいてから着色ダイス2内へのインクの供給を開始する方法を採用している。すなわち、時間T0から時間T3までの間における線速に対する供給圧力の比は、定常線速状態となった時間T1以降における線速に対する供給圧力の比よりも大きくなる。そのため、実施例1、2と同様に光ファイバG2の外観不良を抑制できるとともに、実施例1や比較例に比べて、着色ダイス2内により早くインクを送り込むことができる。
【0032】
以上、本開示を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本開示の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本開示を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【0033】
上記形態では、本開示に係る光ファイバの製造方法を光ファイバ素線G1の着色工程で適用する場合について例示しているが、これに限定されず、例えばプリフォームを線引して作製した光ファイバ素線の外周に被覆層(例えばプライマリ樹脂とセカンダリ樹脂)を被覆する被覆工程で適用するようにしてもよい。なお、この場合における光ファイバ素線とは、プリフォームを線引して形成されるガラスファイバのことを意味する。
【符号の説明】
【0034】
1:光ファイバの製造装置
2:着色ダイス
3:紫外線照射装置
11:繰出しボビン
12:ガイドローラ
20:インク供給タンク
21:供給パイプ
23:圧力計
30、30A:メニスカス
G1:光ファイバ素線
G2:光ファイバ
L:インク