(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/50 20060101AFI20240709BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H01L23/50 X
H01L21/60 301B
(21)【出願番号】P 2020141162
(22)【出願日】2020-08-24
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】巽 泰三
【審査官】石坂 博明
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-245328(JP,A)
【文献】特開平06-021319(JP,A)
【文献】特開2009-194059(JP,A)
【文献】特開平08-222657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/447-21/449
21/60-21/607
23/12-23/15
23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、前記第1面の反対側の第2面と、平面視で端辺から突出する一対のグランドリードとを有する金属製又は合金製の1枚のダイパッドと、
前記一対のグランドリードの間に配置される信号リードと、
平面視で前記ダイパッドの周りに配置される複数のリードと、
前記第2面に実装される半導体チップと、
前記半導体チップの信号パッドと前記信号リードとの間、及び、前記半導体チップのグランドパッドと前記一対のグランドリードとの間を接続する複数のボンディングワイヤと、
前記ダイパッド、前記信号リード、前記複数のリード、前記半導体チップ、及び前記複数のボンディングワイヤを覆うモールド樹脂と
を含み、
前記信号リードと前記一対のグランドリードの各々との間隔は、前記複数のリードの間隔よりも狭
く、
前記信号リードは、
平面視で前記半導体チップから遠い側の第1リード部と、
平面視で前記第1リード部よりも前記半導体チップに近い側に位置し、前記一対のグランドリードを結ぶ方向の幅が前記第1リード部よりも広い第2リード部と
を有し、
前記第2リード部と前記一対のグランドリードの各々との間隔は、前記複数のリードの間隔よりも狭く、
前記複数のボンディングワイヤのうちの前記信号リードの前記第2リード部と前記信号パッドとを接続する一対の信号ボンディングワイヤは、前記第2リード部のうちの前記幅方向における両側で前記第1リード部よりも外側に位置する部分にそれぞれ接続される、半導体装置。
【請求項2】
第1面と、前記第1面の反対側の第2面と、平面視で端辺から突出する一対のグランドリードとを有する金属製又は合金製の1枚のダイパッドと、
前記一対のグランドリードの間に配置される信号リードと、
平面視で前記ダイパッドの周りに配置される複数のリードと、
前記第2面に実装される半導体チップと、
前記半導体チップの信号パッドと前記信号リードとの間、及び、前記半導体チップのグランドパッドと前記一対のグランドリードとの間を接続する複数のボンディングワイヤと、
前記ダイパッド、前記信号リード、前記複数のリード、前記半導体チップ、及び前記複数のボンディングワイヤを覆うモールド樹脂と
を含み、
前記信号リードと前記一対のグランドリードの各々との間隔は、前記複数のリードの間隔よりも狭
く、
前記信号リードと前記ダイパッドとの間隔は、前記複数のリードと前記ダイパッドとの間隔よりも狭く、
前記信号リードは、
平面視で前記半導体チップから遠い側の第1リード部と、
平面視で前記第1リード部よりも前記半導体チップに近い側に位置し、前記一対のグランドリードを結ぶ方向の幅が前記第1リード部よりも広い第2リード部と
を有し、
前記第2リード部と前記一対のグランドリードの各々との間隔は、前記複数のリードの間隔よりも狭く、
前記複数のボンディングワイヤのうちの前記信号リードの前記第2リード部と前記信号パッドとを接続する一対の信号ボンディングワイヤは、前記第2リード部のうちの前記幅方向における両側で前記第1リード部よりも外側に位置する部分にそれぞれ接続される、半導体装置。
【請求項3】
第1面と、前記第1面の反対側の第2面とを有する金属製又は合金製の1枚のダイパッドと、
平面視で前記ダイパッドの隣に配置される信号リードと、
平面視で前記ダイパッドの周りに配置される複数のリードと、
前記第2面に実装される半導体チップと、
前記半導体チップの信号パッドと前記信号リードとの間、及び、前記半導体チップと前記複数のリードのうちの少なくとも1つとを接続する複数のボンディングワイヤと、
前記ダイパッド、前記信号リード、前記複数のリード、前記半導体チップ、及び前記複数のボンディングワイヤを覆うモールド樹脂と
を含み、
前記信号リードと前記ダイパッドとの間隔は、前記複数のリードと前記ダイパッドとの間隔よりも狭
く、
前記ダイパッドは、平面視で端辺から突出する一対のグランドリードをさらに有し、
前記複数のボンディングワイヤは、前記半導体チップのグランドパッドと前記一対のグランドリードとの間をさらに接続し、
前記信号リードと前記一対のグランドリードの各々との間隔は、前記複数のリードの間隔よりも狭く、
前記信号リードは、
平面視で前記半導体チップから遠い側の第1リード部と、
平面視で前記第1リード部よりも前記半導体チップに近い側に位置し、前記一対のグランドリードを結ぶ方向の幅が前記第1リード部よりも広い第2リード部と
を有し、
前記第2リード部と前記一対のグランドリードの各々との間隔は、前記複数のリードの間隔よりも狭く、
前記複数のボンディングワイヤのうちの前記信号リードの前記第2リード部と前記信号パッドとを接続する一対の信号ボンディングワイヤは、前記第2リード部のうちの前記幅方向における両側で前記第1リード部よりも外側に位置する部分にそれぞれ接続される、半導体装置。
【請求項4】
前記第1リード部と前記一対のグランドリードの各々との間隔は、前記複数のリードの間隔と等しい、請求項
1から請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2リード部の前記幅方向における両端は、前記第1リード部の前記幅方向の両端よりも外側に位置する、請求項
1から請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1リード部及び前記第2リード部は、平面視で前記端辺に垂直な方向に延在する対称軸に対して線対称な形状を有する、請求項
1から請求項
5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1リード部及び前記第2リード部は、T字型である、請求項
1から請求項
6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記一対の信号ボンディングワイヤが前記信号パッドに接続される一対の第1端部同士の間隔よりも、前記一対の信号ボンディングワイヤが前記第2リード部に接続される第2端部同士の間隔の方が広い、請求項
1から請求項7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記複数のボンディングワイヤのうちの前記一対のグランドリードと前記グランドパッドとを接続する一対のグランドボンディングワイヤは、前記一対の信号ボンディングワイヤに沿って延在する、請求項
1から請求項8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記信号リードは、
第1面側に位置する第1部分と、前記第1部分に連通し、前記第2面側に位置する第2部分と
を有し、
前記第1リード部は、前記第1部分及び前記第2部分に延在し、
前記第2リード部は、前記第2部分のみに延在する、請求項
1から請求項
9のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記モールド樹脂は、前記第1面の少なくとも一部と、前記信号リードの前記第1面側の少なくとも一部とを露出させる、請求項1から請求項
10のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ダイパッドと、信号リードと、ダイパッドに接続された接地リードと、接地用の電極パッドを有する半導体チップと、金属細線(ボンディングワイヤ)と、ダイパッド、半導体チップを封止すると共に信号リード及び接地リードの下部を外部端子として露出させて封止する封止樹脂とを備える樹脂封止型の半導体装置がある。接地リードは接地用の電極パッドに接続されている。樹脂封止型の半導体装置の一例としては、パッケージから露出した信号リードの下部が外部端子を兼ねたQFN(Quad Flat Non-leaded Package)型の半導体装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような樹脂封止型の半導体装置において、半導体チップに含まれる回路の動作特性を良好にするには、信号リードに接続されたボンディングワイヤのインピーダンス特性を良好にすることが望ましい。
【0005】
しかしながら、樹脂封止型の半導体装置は、低コスト化のために簡易化された構造を有するため、信号リードに接続されたボンディングワイヤのインピーダンス特性を改善するには構造的な制約がある。
【0006】
そこで、インピーダンス特性を改善した樹脂封止型の半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の半導体装置は、第1面と前記第1面の反対側の第2面と平面視で端辺から突出する一対のグランドリードとを有する金属製又は合金製の1枚のダイパッドと、前記一対のグランドリードの間に配置される信号リードと、平面視で前記ダイパッドの周りに配置される複数のリードと、前記第2面に実装される半導体チップと、前記半導体チップの信号パッドと前記信号リードとの間、及び、前記半導体チップのグランドパッドと前記一対のグランドリードとの間を接続する複数のボンディングワイヤと、前記ダイパッド、前記信号リード、前記複数のリード、前記半導体チップ、及び前記複数のボンディングワイヤを覆うモールド樹脂とを含み、前記信号リードと前記一対のグランドリードの各々との間隔は、前記複数のリードの間隔よりも狭い。
【発明の効果】
【0008】
インピーダンス特性を改善した樹脂封止型の半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、RFフロントエンド回路10の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態の半導体装置100の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2における破線の四角で囲んだ部分を拡大して示す図である。
【
図5】
図5は、信号リード121、一対のグランドリード111、リード126、及び端辺110Aの間の間隔を示す図である。
【
図6】
図6は、信号リード121、一対のグランドリード111、及びダイパッド110の間に生じる静電容量と高周波電流の流れる方向とを示す図である。
【
図7】
図7は、信号リード121、一対のグランドリード111、及びダイパッド110の端辺110Aの間と、信号ボンディングワイヤ141A及びグランドボンディングワイヤ141Bとに生じる静電容量を示す図である。
【
図8】
図8は、信号リード121、一対のグランドリード111、端辺110A、信号ボンディングワイヤ141A、及びグランドボンディングワイヤ141Bの等化回路を示す図である。
【
図9】
図9は、ワイヤ間の距離dに対するワイヤ間の静電容量Cの特性を示す図である。
【
図10】
図10は、信号ボンディングワイヤ141Aとグランドボンディングワイヤ141Bの特性インピーダンスZの計算結果を示す図である。
【
図11】
図11は、半導体装置100におけるS21パラメータの周波数特性を示す図である。
【
図12】
図12は、実施形態の変形例による半導体装置100Aを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施するための形態について、以下に説明する。
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
【0012】
〔1〕 本開示の一態様に係る半導体装置は、第1面と、前記第1面の反対側の第2面と、平面視で端辺から突出する一対のグランドリードとを有する金属製又は合金製の1枚のダイパッドと、前記一対のグランドリードの間に配置される信号リードと、平面視で前記ダイパッドの周りに配置される複数のリードと、前記第2面に実装される半導体チップと、前記半導体チップの信号パッドと前記信号リードとの間、及び、前記半導体チップのグランドパッドと前記一対のグランドリードとの間を接続する複数のボンディングワイヤと、前記ダイパッド、前記信号リード、前記複数のリード、前記半導体チップ、及び前記複数のボンディングワイヤを覆うモールド樹脂とを含み、前記信号リードと前記一対のグランドリードの各々との間隔は、前記複数のリードの間隔よりも狭い。
【0013】
本開示の一態様に係る半導体装置は、樹脂封止型の半導体装置である。信号リードと一対のグランドリードの各々との間隔が複数のリードの間隔よりも狭いことで、信号リードと一対のグランドリードの各々との間の静電容量が増大し、信号リードに接続されたボンディングワイヤのインダクタンスが低下することで、信号リードに接続されたボンディングワイヤのインピーダンス特性が改善される。したがって、インピーダンス特性を改善した樹脂封止型の半導体装置を提供することができる。
【0014】
〔2〕 〔1〕において、前記信号リードと前記ダイパッドとの間隔は、前記複数のリードと前記ダイパッドとの間隔よりも狭くてもよい。信号リードとダイパッドとの間隔が狭いことにより、信号リードとダイパッドとの間の静電容量が増大し、信号リードに接続されたボンディングワイヤのインダクタンスが低下することで、信号リードに接続されたボンディングワイヤのインピーダンス特性がさらに改善される。したがって、インピーダンス特性をさらに改善した樹脂封止型の半導体装置を提供することができる。
【0015】
〔3〕 本開示の他の一態様に係る半導体装置は、第1面と、前記第1面の反対側の第2面とを有する金属製又は合金製の1枚のダイパッドと、平面視で前記ダイパッドの隣に配置される信号リードと、平面視で前記ダイパッドの周りに配置される複数のリードと、前記第2面に実装される半導体チップと、前記半導体チップの信号パッドと前記信号リードとの間、及び、前記半導体チップと前記複数のリードのうちの少なくとも1つとを接続する複数のボンディングワイヤと、前記ダイパッド、前記信号リード、前記複数のリード、前記半導体チップ、及び前記複数のボンディングワイヤを覆うモールド樹脂とを含み、前記信号リードと前記ダイパッドとの間隔は、前記複数のリードと前記ダイパッドとの間隔よりも狭い。
【0016】
本開示の一態様に係る半導体装置は、樹脂封止型の半導体装置である。信号リードとダイパッドとの間隔が狭いことにより、信号リードとダイパッドとの間の静電容量が増大し、信号リードに接続されたボンディングワイヤのインダクタンスが低下することで、信号リードに接続されたボンディングワイヤのインピーダンス特性が改善される。したがって、インピーダンス特性を改善した樹脂封止型の半導体装置を提供することができる。
【0017】
〔4〕 〔3〕において、前記ダイパッドは、平面視で端辺から突出する一対のグランドリードをさらに有し、前記複数のボンディングワイヤは、前記半導体チップのグランドパッドと前記一対のグランドリードとの間をさらに接続し、前記信号リードと前記一対のグランドリードの各々との間隔は、前記複数のリードの間隔よりも狭くてもよい。信号リードと一対のグランドリードの各々との間隔が複数のリードの間隔よりも狭いことで、信号リードと一対のグランドリードの各々との間の静電容量が増大し、信号リードに接続されたボンディングワイヤのインダクタンスが低下することで、信号リードに接続されたボンディングワイヤのインピーダンス特性がさらに改善される。したがって、インピーダンス特性をさらに改善した樹脂封止型の半導体装置を提供することができる。
【0018】
〔5〕 〔1〕、〔2〕、及び〔4〕のいずれか1つにおいて、前記信号リードは、平面視で前記半導体チップから遠い側の第1リード部と、平面視で前記第1リード部よりも前記半導体チップに近い側に位置し、前記一対のグランドリードを結ぶ方向の幅が前記第1リード部よりも広い第2リード部とを有し、前記第2リード部と前記一対のグランドリードの各々との間隔は、前記複数のリードの間隔よりも狭くてもよい。信号リードのうちの半導体チップに近い側の第2リード部が半導体チップよりも遠い側の第1リード部よりも広い幅を有することによって、信号リードと一対のグランドリードの各々との間の静電容量を増大させるとともに、信号リードとダイパッドとの間の静電容量を増大させることができる。このような簡易な構成によって、信号リードに接続されたボンディングワイヤのインダクタンスを低下させて、信号リードに接続されたボンディングワイヤのインピーダンス特性を改善することができる。したがって、簡易な構成でインピーダンス特性を改善した樹脂封止型の半導体装置を提供することができる。
【0019】
〔6〕 〔5〕において、前記第1リード部と前記一対のグランドリードの各々との間隔は、前記複数のリードの間隔と等しくてもよい。第1リード部と一対のグランドリードの各々との間隔が複数のリードの間隔と等しければ、第2リード部と一対のグランドリードとを有しない半導体装置からの変更点を最小限にすることができ、構成が非常に簡易である。したがって、非常に簡易な構成でインピーダンス特性を改善した樹脂封止型の半導体装置を提供することができる。
【0020】
〔7〕 〔5〕又は〔6〕において、前記第2リード部の前記幅方向における両端は、前記第1リード部の前記幅方向の両端よりも外側に位置していてもよい。第2リード部の幅方向における両端が第1リード部の幅方向の両端よりも外側に位置していれば、第2リード部と、第2リード部の幅方向の両側に位置する一対のグランドリードとをバランス良く配置でき、信号リードと一対のグランドリードの各々との間の静電容量を効率的に増大させるとともに、信号リードとダイパッドとの間の静電容量を効率的に増大させることができる。この結果、信号リードに接続されたボンディングワイヤのインダクタンスを効率的に低下させることができ、信号リードに接続されたボンディングワイヤのインピーダンス特性を効率的に改善できる。したがって、インピーダンス特性を効率的に改善した樹脂封止型の半導体装置を提供することができる。
【0021】
〔8〕 〔5〕から〔7〕のいずれか1つにおいて、前記第1リード部及び前記第2リード部は、平面視で前記端辺に垂直な方向に延在する対称軸に対して線対称な形状を有していてもよい。第1リード部及び第2リード部を線対称な形状にすることで、信号リードと一対のグランドリードの各々との間の静電容量と、信号リードとダイパッドとの間の静電容量とを調整しやすい構成が得られる。この結果、線対称な形状を用いて信号リードに接続されたボンディングワイヤのインダクタンスを効率的に低下させることができ、線対称な形状を用いて信号リードに接続されたボンディングワイヤのインピーダンス特性を効率的に改善できる。したがって、線対称な形状を用いてインピーダンス特性を効率的に改善した樹脂封止型の半導体装置を提供することができる。
【0022】
〔9〕 〔5〕から〔8〕のいずれか1つにおいて、前記第1リード部及び前記第2リード部は、T字型であってもよい。第1リード部及び第2リード部をT字型にすることで、信号リードと一対のグランドリードの各々との間の静電容量と、信号リードとダイパッドとの間の静電容量とを調整しやすく、作製が容易な構成が得られる。この結果、静電容量を調整しやすく作製が容易な信号リードに接続されたボンディングワイヤのインダクタンスを効率的に低下させることができ、静電容量を調整しやすく作製が容易な信号リードに接続されたボンディングワイヤのインピーダンス特性を効率的に改善できる。したがって、静電容量を調整しやすく作製が容易でインピーダンス特性を効率的に改善した樹脂封止型の半導体装置を提供することができる。
【0023】
〔10〕 〔5〕から〔9〕のいずれか1つにおいて、前記複数のボンディングワイヤのうちの前記信号リードの前記第2リード部と前記信号パッドとを接続する一対の信号ボンディングワイヤは、前記第2リード部のうちの前記幅方向における両側で前記第1リード部よりも外側に位置する部分にそれぞれ接続されてもよい。信号リードの第2リード部と信号パッドとを接続する一対の信号ボンディングワイヤを第2リード部のうちの幅方向における両側で第1リード部よりも外側に位置する部分にそれぞれ接続すれば、一対の信号ボンディングワイヤを一対のグランドリードに近づけることができるので、一対の信号ボンディングワイヤのインダクタンスを効果的に低下させることができ、一対の信号ボンディングワイヤのインピーダンス特性を効果的に改善できる。したがって、一対の信号ボンディングワイヤのインピーダンスを効果的に改善した樹脂封止型の半導体装置を提供することができる。
【0024】
〔11〕 〔10〕において、前記一対の信号ボンディングワイヤが前記信号パッドに接続される一対の第1端部同士の間隔よりも、前記一対の信号ボンディングワイヤが前記第2リード部に接続される第2端部同士の間隔の方が広くてもよい。一対の信号ボンディングワイヤを一対のグランドリードに確実に近づけることができるので、一対の信号ボンディングワイヤのインダクタンスをより確実に低下させることができ、一対の信号ボンディングワイヤのインピーダンス特性をより確実に改善できる。したがって、一対の信号ボンディングワイヤのインピーダンスをより確実に改善した樹脂封止型の半導体装置を提供することができる。
【0025】
〔12〕 〔10〕又は〔11〕において、前記複数のボンディングワイヤのうちの前記一対のグランドリードと前記グランドパッドとを接続する一対のグランドボンディングワイヤは、前記一対の信号ボンディングワイヤに沿って延在してもよい。一対のグランドボンディングワイヤと一対の信号ボンディングワイヤとの結合による静電容量を利用して一対の信号ボンディングワイヤのインダクタンスをより効果的に低下させることができ、一対の信号ボンディングワイヤのインピーダンス特性をより効果的に改善できる。したがって、一対の信号ボンディングワイヤのインピーダンスをより効果的に改善した樹脂封止型の半導体装置を提供することができる。
【0026】
〔13〕 〔5〕~〔12〕のいずれか1つにおいて、前記信号リードは、第1面側に位置する第1部分と、前記第1部分に連続し、前記第2面側に位置する第2部分とを有し、前記第1リード部は、前記第1部分及び前記第2部分に延在し、前記第2リード部は、前記第2部分のみに延在してもよい。信号リードのうち第1リード部については、第2リード部と一対のグランドリードとを有しない半導体装置からの変更点を最小限にすることができ、第2リード部については第2部分のみで実現できるので、構成が非常に簡易である。したがって、非常に簡易な構成でインピーダンス特性を改善した樹脂封止型の半導体装置を提供することができる。
【0027】
〔14〕 〔1〕~〔13〕のいずれか1つにおいて、前記モールド樹脂は、前記第1面の少なくとも一部と、前記信号リードの前記第1面側の少なくとも一部とを露出させる。したがって、第1リード部の第1面側の表面を外部端子として利用でき、インピーダンス特性を改善したQFN型の半導体装置を提供することができる。
【0028】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態について詳細に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0029】
<実施形態>
〔RF(Radio Frequency)フロントエンド回路10の構成〕
図1は、RFフロントエンド回路10の構成の一例を示す図である。RFフロントエンド回路10は、パッケージ化された半導体装置によって実現され、一例として無線通信用の基地局で用いられる。なお、ここでは、半導体装置によって実現される回路がRFフロントエンド回路10である形態について説明するが、RFフロントエンド回路に限られるものではない。
【0030】
RFフロントエンド回路10は、スイッチ回路11、PA(Power Amplifier)12、LNA(Low Noise Amplifier)13、信号リード121、122、123、及び電源リード124、125を含む。スイッチ回路11は、3端子型のスイッチであり、端子11A、11B、11Cを有する。端子11Aには、信号リード121が接続されており、端子11BにはPA12の出力端子が接続されており、端子11CにはLNA13の入力端子が接続されている。スイッチ回路11は、2つの電源リード124から電圧Vc1、Vc2の電力供給を受ける。また、RFフロントエンド回路10は、電源リード125から電圧Vccの電力供給を受ける。
【0031】
信号リード121は、アンテナ15に接続される。信号リード121は、送信(Tx)信号をアンテナ15に出力するとともに、アンテナ15から受信(Rx)信号が入力される。このため、信号リード121にRx_in/Tx_outと記す。信号リード122は、PA12の入力端子に接続されており、RFフロントエンド回路10の外部の送信回路から送信(Tx)信号が入力される。このため、信号リード122にTx_inと記す。信号リード123は、LNA13の出力端子に接続されており、RFフロントエンド回路10の外部の受信回路に受信(Rx)信号を出力する。このため、信号リード123にRx_outと記す。
【0032】
このようなRFフロントエンド回路10において、スイッチ回路11は、端子11Aの接続先を端子11Bと端子11Cのいずれか一方に切り替える。PA12は、送信(Tx)信号を増幅してスイッチ回路11の端子11Bに出力し、増幅された送信(Tx)信号はアンテナ15から放射される。LNA13は、アンテナ15で受信され、スイッチ回路11の端子11A、11Cを経て入力される受信(Rx)信号に対してノイズ除去及び増幅を行って信号リード123に出力する。送信(Tx)信号と受信(Rx)信号の周波数は、一例として20GHz帯から40GHz帯であり、ミリ波帯である。
【0033】
ここで、スイッチ回路11の端子11Aと信号リード121との間と、PA12の入力端子と信号リード122の間と、LNA13の出力端子と信号リード123との間は、それぞれ、ボンディングワイヤ(信号ボンディングワイヤ)によって接続される。端子11A、11B、11Cの特性インピーダンスと、信号リード121、122、123の特性インピーダンスとは、50Ω又は50Ωに近い値に設定することが比較的容易であるが、信号ボンディングワイヤの特性インピーダンスは、50Ωよりも大きな値である。
【0034】
スイッチ回路11の端子11Aと信号リード121との間の信号ボンディングワイヤにおける信号の伝送損失が増加すると、PA12が増幅した信号(基本波信号)の伝送損失や、LNA13のNF(Noise Figure)値が増加する。また、PA12の入力端子と信号リード122との間の信号ボンディングワイヤにおける信号の伝送損失が増加すると、PA12における増幅利得が低下する。また、LNA13の出力端子と信号リード123との間の信号ボンディングワイヤにおける信号の伝送損失が増加すると、LNA13における増幅利得が低下する。
【0035】
このため、RFフロントエンド回路10をパッケージ化して基地局に設置する場合には、各信号ボンディングワイヤにおけるS21パラメータによって表される伝送損失を低減することが重要である。具体的には、一例として30GHzの信号を伝送する場合にS21パラメータによって表される伝送損失を絶対値で0.2dB程度に抑えることが望ましい。
【0036】
〔半導体装置100の構成〕
図2は、実施形態の半導体装置100の構成の一例を示す図である。
図3は、
図2における破線の四角で囲んだ部分を拡大して示す図である。
図4は、
図3におけるA-A矢視断面を示す図である。以下では、XYZ座標系を定義して説明する。また、以下では、平面視とはXY面視のことであり、説明の便宜上、-Z方向側を下側又は下、+Z方向側を上側又は上と称すが、普遍的な上下関係を表すものではない。また、Z方向を厚さ方向と称す。
【0037】
半導体装置100は、ダイパッド110、リード120、IC(Integrated Circuit)チップ130、ボンディングワイヤ140、及びモールド樹脂150を含む。半導体装置100は、ダイパッド110の上面にICチップ130を実装し、ダイパッド110の周囲に配置したリード120とICチップ130とをボンディングワイヤ140で接続し、全体をモールド樹脂150で封止してパッケージ化した構成を有する。ICチップ130は、半導体チップの一例であり、
図1に示すスイッチ回路11、PA12、LNA13を内蔵する。なお、
図2では、モールド樹脂150に覆われているダイパッド110、リード120、ICチップ130、及びボンディングワイヤ140を透過的に示す。また、一例として半導体装置100のX方向及びY方向の長さは2mm~10mm、厚さは0.3mm~2mmである。
【0038】
ダイパッド110は、金属製又は合金製の1枚の金属層である。ダイパッド110は、グランド電位点に接続されており、グランド電位に保持される。ここでは一例として、ダイパッド110が銅製であり、一例として厚さが100μm~400μmであることとする。ダイパッド110は、下面がモールド樹脂150に覆われてもよいし、露出してもよい。本実施形態では、ダイパッド110の下面はモールド樹脂150から露出する。ダイパッド110が1枚のみの金属層で構成されており、モールド樹脂150の下面から露出する部分は、1枚の金属層の下面であり、ICチップ130が実装される上面は、1枚の金属層の上面である。ダイパッド110の下面(-Z方向側の面)は、第1面の一例であり、ダイパッド110の上面は、第2面の一例である。ダイパッド110をこのように1枚の金属層で構成することは、低コスト化のために簡易化された構造にするためである。また、ダイパッド110の下面の一部がモールド樹脂150の下面から露出することは、低コスト化のために簡易化された構造でありながら、半導体装置100の放熱性や電気的特性を向上させることに寄与している。
【0039】
ダイパッド110は、リード120とともに1枚の金属層から作製される。1枚の金属層にエッチング処理を施すことにより、ダイパッド110とリード120が作製される。ここでは一例として、エッチング処理が2段階で行われることにより、
図4に示すように形状の異なる部分110-1と部分110-2がダイパッド110に形成される。ダイパッド110は、部分110-1と部分110-2を有し、部分110-1と部分110-2によって構成される。部分110-1と部分110-2の厚さは、一例として50μm~200μmである。なお、エッチング処理は、ウェットエッチング処理又はドライエッチング処理のいずれでもよい。
【0040】
ダイパッド110とリード120を形成する前の1枚の金属層において、上側の部分110-2に相当する厚さの部分に対して1回目のエッチング処理を行い、下側の部分110-1に相当する厚さの部分に対して2回目のエッチング処理を行うことによって、ダイパッド110を作製することができる。このため、平面視では下側の部分110-1の方が上側の部分110-2よりも小さい。
図2及び
図3には平面視でのダイパッド110の形状を示すため、
図2及び
図3におけるダイパッド110の形状は上側の部分110-2の形状に等しい。
図3に示す破線Bは、下側の部分110-1の端辺の位置を示す。
図3において、下側の部分110-1は、破線Bよりも-X方向側に位置する。このため、
図3におけるA-A矢視断面を示す
図4では、下側の部分110-1よりも上側の部分110-2の方が+X方向側に突出している。
【0041】
ここではダイパッド110を部分110-1と部分110-2とに分けて説明するが、部分110-1と部分110-2は1枚の金属層であり、部分110-1と部分110-2との間に境界は存在しない。部分110-1と部分110-2とが1枚の金属層としてダイパッド110を構成している。
【0042】
このようなダイパッド110は、平面視で矩形状であり、4つの端辺110Aを有する。4つの端辺110Aのうちの2つはX軸に平行であり、残りの2つはY軸に平行である。また、ダイパッド110は、一対の(2本の)グランドリード111、一対の(2本の)グランドリード112、及び一対の(2本の)グランドリード113を有する。グランドリード111、112、113にはGNDと記す。一対のグランドリード111は、+X方向側の端辺110Aから+X方向に突出している。一対のグランドリード112と、一対のグランドリード113とは、-X方向側の端辺110Aから-X方向に突出している。一対のグランドリード112は、一対のグランドリード113よりも-Y方向側に位置している。なお、グランドリード111、112、113の端辺110Aに接続される側の端部とは反対側の端部は、モールド樹脂150の側面から露出する。
【0043】
一対のグランドリード111、112、113は、ボンディングワイヤ40のうちの一対のグランドボンディングワイヤ141B、142B、143Bによって、ICチップ130の一対のグランドパッド131B、132B、133Bにそれぞれ接続されている。このため、グランドパッド131B、132B、133Bは、グランド電位に保持される。
【0044】
リード120は、ダイパッド110とともに1枚の金属層に対して2段階のエッチング処理を行うことによって作製される。
図4に示すように、リード120は、下側の部分120-1と、上側の部分120-2とを有する。上側の部分120-2に相当する厚さの部分に対して1回目のエッチング処理を行い、下側の部分120-1に相当する厚さの部分に対して2回目のエッチング処理を行うことによって、リード120を作製することができる。このため、平面視では下側の部分120-1の方が上側の部分120-2よりも小さい。
図2及び
図3には平面視でのリード120の形状を示すため、
図2及び
図3におけるリード120の形状は上側の部分120-2の形状に等しい。
【0045】
ここではリード120を部分120-1と部分120-2とに分けて説明するが、部分120-1と部分120-2は1枚の金属層であり、部分120-1と部分120-2との間に境界は存在しない。部分120-1と部分120-2とが1枚の金属層としてリード120を構成している。部分120-1は第1部分の一例であり、部分120-2は第2部分の一例である。
【0046】
リード120は、
図2に示すように、信号リード121、122、123、電源リード124、125、及びリード126を有する。電源リード124、125、及びリード126の幅は、一例として200μm~300μmであり、ピッチは一例として400μm~600μmである。なお、グランドリード111とリード126のピッチは、一例として電源リード124、125、及びリード126のピッチと等しい。
【0047】
信号リード121は、
図1に示すようにアンテナ15に接続されるリードであるため、
図2においてもRx_in/Tx_outと記す。信号リード121は、
図2に示すように、ダイパッド110の+X方向側の端辺110Aから離間して、一対のグランドリード111の間に設けられている。信号リード121は、平面視でT字型を反時計回りに90度回転させた形状を有する。信号リード121は、ボンディングワイヤ140のうちの一対の(2本の)信号ボンディングワイヤ141AによってICチップ130の信号パッド131Aに接続される。なお、信号リード121の詳細な構成については、
図2及び
図3を用いて後述する。
【0048】
信号リード122は、
図1に示すようにPA12の入力端子に接続されるリードであるため、
図2においてもTx_inと記す。信号リード122は、
図2に示すようにダイパッド110の-X方向側の端辺110Aから離間して、一対のグランドリード112の間に設けられている。信号リード122は、平面視でT字型を時計回りに90度回転させた形状を有する。信号リード122は、ボンディングワイヤ140のうちの一対の(2本の)信号ボンディングワイヤ142AによってICチップ130の信号パッド132Aに接続される。なお、信号リード122の詳細な構成は、信号リード121と同様であるため、後述する信号リード121の詳細な構成についての説明を援用する。
【0049】
信号リード123は、
図1に示すようにLNA13の出力端子に接続されるリードであるため、
図2においてもRx_outと記す。信号リード123は、
図2に示すようにダイパッド110の-X方向側の端辺110Aから離間して、一対のグランドリード113の間に設けられている。信号リード123は、平面視でT字型を時計回りに90度回転させた形状を有する。信号リード123は、ボンディングワイヤ140のうちの一対の(2本の)信号ボンディングワイヤ143AによってICチップ130の信号パッド133Aに接続される。信号リード123は、信号リード122よりも+Y方向側に位置する。なお、信号リード123の詳細な構成は、信号リード121、122と同様であるため、後述する信号リード121の詳細な構成についての説明を援用する。
【0050】
電源リード124は、
図2に示すようにダイパッド110の-Y方向側の端辺110Aから離間して-Y方向に延在する矩形状の6つのリードである。6つの電源リード124は、ボンディングワイヤ140のうちの6本の電源ボンディングワイヤ144によってICチップ130の6つの電源パッド134にそれぞれ接続される。
図1に示す電圧Vc1、Vc2の2つの電源リード124は、
図2に示す6つの電源リード124のうちのいずれか2つである。なお、6つの電源リード124のうちの電圧Vc1、Vc2の2つの電源リード124以外の電源リード124は、電源リードとしてではなく、例えば信号リードとして用いてもよい。
【0051】
電源リード125は、
図2に示すようにダイパッド110の+Y方向側の端辺110Aから離間して+Y方向に延在する矩形状の6つのリードである。6つの電源リード125は、ボンディングワイヤ140のうちの6本の電源ボンディングワイヤ145によってICチップ130の6つの電源パッド135にそれぞれ接続される。
図1に示す電圧Vccの電源リード125は、
図2に示す6つの電源リード125のうちのいずれか1つである。なお、6つの電源リード125のうちの電圧Vccの電源リード125以外の電源リード125は、電源リードとしてではなく、例えば信号リードとして用いてもよい。
【0052】
リード126は、電源リード124、125と同様に平面視で矩形状の11個のリードである。ダイパッド110の+X方向側には、端辺110Aから離間して、5つのリード126が設けられている。そのうちの2つは、-Y方向側のグランドリード111の-Y方向側に設けられており、残りの3つは、+Y方向側のグランドリード111の+Y方向側に設けられている。ダイパッド110の-X方向側には、端辺110Aから離間して、-Y方向側のグランドリード112の-Y方向側1つのリード126が設けられるとともに、+Y方向側のグランドリード113の+Y方向側に1つのリード126が設けられている。ダイパッド110の-Y方向側には、端辺110Aから離間して、6つの電源リード124の両側にリード126が1つずつ設けられている。ダイパッド110の+Y方向側には、端辺110Aから離間して、6つの電源リード125の両側にリード126が1つずつ設けられている。11個のリード126には、一例としてボンディングワイヤが接続されていないが、ボンディングワイヤを介してICチップ130の端子等と接続されていてもよい。
【0053】
ICチップ130は、ダイパッド110の上面に実装されている。ICチップ130の下面にあるグランドパッドは、ダイパッド110に接続されている。また、ICチップ130は、信号パッド131A、一対のグランドパッド131B、132B、133B、6つの電源パッド134、及び6つの電源パッド135を上面に有する。
【0054】
ボンディングワイヤ140は、一対の(2本の)信号ボンディングワイヤ141A、一対の(2本の)グランドボンディングワイヤ141B、一対の(2本の)信号ボンディングワイヤ142A、一対の(2本の)グランドボンディングワイヤ142B、及び一対の(2本の)信号ボンディングワイヤ143Aを有する。また、ボンディングワイヤ140は、一対の(2本の)グランドボンディングワイヤ143B、及び6本の電源ボンディングワイヤ144、及び6本の電源ボンディングワイヤ144を有する。各ボンディングワイヤ140の接続関係は、上述の通りである。
【0055】
モールド樹脂150は、ダイパッド110、リード120、ICチップ130、及びボンディングワイヤ140を封止する。モールド樹脂150は、上述のように配置され、かつ接続されたダイパッド110、リード120、ICチップ130、及びボンディングワイヤ140を金型等に入れて保持した状態で、樹脂材料を用いてモールド成形を行うことによって作製される。これにより、半導体装置100は、パッケージ化される。なお、樹脂材料としては、一例としてエポキシ樹脂等を用いることができる。このような樹脂材料の比誘電率は、一例として約3.0から約5.0である。
【0056】
半導体装置100が完成した状態では、モールド樹脂150から露出するのは、ダイパッド110の下面の一部(部分110-1の下面)、グランドリード111、112、113の平面視における外側の端部、リード120の下面の一部(部分120-1の下面)、及び、リード120の平面視における外側の端部である。
【0057】
半導体装置100は、ダイパッド110の下面の一部(部分110-1の下面)は、半導体装置100の外部にあるグランド電位点に接続するための端子(外部端子)として用いられ、リード120の下面の一部(部分120-1の下面)は、半導体装置100の外部装置の信号端子又は電源端子等に接続するための端子(外部端子)として用いられる。半導体装置100は、いわゆるQFN型の半導体装置である。
【0058】
〔信号リード121及び一対のグランドリード111の詳細な構成〕
次に、主に
図3及び
図4を用いて、信号リード121及び一対のグランドリード111の詳細な構成について説明する。ここで、信号リード122及び一対のグランドリード112の詳細な構成と、信号リード123及び一対のグランドリード113の詳細な構成とは、信号リード121及び一対のグランドリード111の詳細な構成と同様であるため、ここでは信号リード121及び一対のグランドリード111の詳細な構成について説明する。
【0059】
信号リード121は、信号リード部121A、121Bを有する。信号リード部121Aは第1リード部の一例であり、信号リード部121Bは第2リード部の一例である。信号リード部121Aは、平面視でICチップ130から信号リード部121Bよりも遠い側にあり、反時計回りに90度されたT字型の根元の部分である。信号リード部121Bは、信号リード部121AよりもICチップ130に近い側に位置し、+X方向側の端辺110Aに沿ってY方向に延在している。信号リード部121Aは、信号リード部121BのY方向の中心から+X方向に延在している。
【0060】
信号リード部121Aは、
図4に示す部分120-1と部分120-2とが重なっている部分であり、
図3では矩形状の破線Cで囲む領域内に存在する。
図3では破線Cが見えるように信号リード部121Aの輪郭から少しずらして示す。信号リード部121Bは、Y方向における中央部の+X方向側が、信号リード部121Aの-X方向側の端部の分だけ凹んでいる。破線C内に存在する信号リード部121Aの下面は、モールド樹脂150の下面から外部端子として露出する。なお、このような凹みは無くてもよく、X方向に延在する矩形状の信号リード部121Aと、Y方向に延在する矩形状の信号リード部とを合わせて得られるT字型の信号リード121であってもよい。
【0061】
図3において、信号リード部121Aと一対のグランドリード111とのY方向の間隔は、-Y方向側のグランドリード111と-Y方向側のリード126との間隔と、+Y方向側のグランドリード111と+Y方向側のリード126との間隔と等しい。
【0062】
また、一対のグランドリード111は、矩形状の破線Dで囲む領域の下面が外部端子としてモールド樹脂150の下面から露出している。すなわち、一対のグランドリード111の+X方向側の端部の下面が外部端子としてモールド樹脂150の下面から露出している。
図3では破線Dが見えるように一対のグランドリード111の輪郭から少しずらして示す。また、
図3において一対のグランドリード111のY方向における外側にある2つリード126の下面の全体が外部端子としてモールド樹脂150の下面から露出している。このため、リード126の全体を矩形状の破線Eで囲んで示す。破線Eで囲んだ部分(平面視におけるリード126の全体)の下面がモールド樹脂150の下面から露出している。なお、このような構成は、
図3には示さないリード126についても同様である。
図3では破線Eが見えるようにリード126の輪郭から少しずらして示す。
【0063】
ここで、平面視における破線D及びEで囲む領域のサイズ及び形状とX方向における位置とは、破線Cで囲む領域のサイズ及び形状とX方向における位置と等しい。このため、モールド樹脂150の下面には、一対のグランドリード111の2つの外部端子と、複数のリード126の外部端子と、信号リード121の外部端子とがY方向に等間隔かつ等ピッチで配列されている。なお、間隔とは最も近い端辺同士の間隔であり、ピッチとは線幅の中央同士の間隔である。
【0064】
信号リード部121Bは、一対のグランドリード111を結ぶ方向(Y方向)における幅が信号リード部121Aよりも広いため、信号リード部121BのY方向における両端は、信号リード部121AのY方向の両端よりも外側に位置する。一例として、信号リード部121Aの幅(Y方向の幅)が200μm~300μmであるのに対して、信号リード部121Bの幅(Y方向の幅)は450μm~700μmである。
【0065】
信号リード部121Bのうち、Y方向において信号リード部121AのY方向の幅と同じ幅の部分は中央部121B1である。信号リード部121Bのうち、Y方向において信号リード部121Aよりも外側に位置する両端の部分は端部121B2である。中央部121B1のY方向における両側に2つの端部121B2がそれぞれ位置する。中央部121B1の+X方向側の端部は、2つの端部121B2の+X方向側の端部に比べて、-X方向側にオフセットしている。
【0066】
信号リード121は、リード126と比べると、中央部121B1の分だけ端辺110Aに近い。また、信号リード部121Bは、信号リード部121Aと比べると、端部121B2の分だけグランドリード111に近い。換言すれば、信号リード部121BのY方向における両端は、信号リード部121AのY方向の両端よりもグランドリード111に近い。また、+Y方向側の端部121B2と-Y方向側の端部121B2とのY方向の長さは等しいため、信号リード121は、平面視で信号リード部121A及び信号リード部121BのY方向の中心を通りX軸に平行な直線を対称軸とする線対称なT字型の形状を有する。
【0067】
ここで、信号リード121、一対のグランドリード111、及びリード126の位置関係を説明するために、
図3及び
図4に加えて
図5を用いる。
図5は、信号リード121、一対のグランドリード111、リード126、及び端辺110Aの間の間隔を示す図である。
図5では符号を省略し、符号については
図3を援用して説明する。
【0068】
図5に示すように、端辺110Aと信号リード部121Bとの間隔をX1、端辺110Aとリード126との間隔をX2とすると、X1<X2である。すなわち、端辺110Aと信号リード部121Bとの間隔X1は、端辺110Aとリード126との間隔X2よりも狭い。これは、信号リード121が信号リード部121Bを有しない構成に比べると、信号リード部121Bの分だけ信号リード121が端辺110Aに近くなっていることを意味する。ダイパッド110は、端辺110Aに沿って上側の部分110-2が+X方向側に突出しており、信号リード部121Bは信号リード121の上側の部分120-2が-X方向側に突出しているため、間隔X1は一例として200μm以下である。
【0069】
また、
図5に示すように、信号リード部121Bとグランドリード111との間隔をY1、グランドリード111とリード126との間隔をY2とすると、Y1<Y2である。すなわち、信号リード部121Bとグランドリード111との間隔Y1は、グランドリード111とリード126との間隔Y2よりも狭い。これは、信号リード121が信号リード部121Bを有しない構成に比べると、信号リード部121Bの分だけ信号リード121がグランドリード111に近くなっていることを意味する。
【0070】
また、
図3に示すように、一対の信号ボンディングワイヤ141Aは、+Y方向側の端部121B2と-Y方向側の端部121B2とにそれぞれ接続されている。一対の信号ボンディングワイヤ141Aの信号パッド131Aに接続される一対の端部(-X方向側の一対の端部)同士の間隔よりも、信号ボンディングワイヤ141Aの一対の端部121B2にそれぞれ接続される一対の端部(+X方向側の一対の端部)同士の間隔の方が広い。このため、一対の信号ボンディングワイヤ141Aは、-X方向側から+X方向側にかけてY方向の間隔が広がっている。ここで、一対の信号ボンディングワイヤ141Aの信号パッド131Aに接続される一対の端部(-X方向側の一対の端部)は、一対の第1端部の一例である。また、一対の信号ボンディングワイヤ141Aの信号リード部121Bの端部121B2に接続される一対の端部(+X方向側の一対の端部)は、一対の第2端部の一例である。
【0071】
また、-Y方向側のグランドボンディングワイヤ141Bは、-Y方向側のグランドリード111と、-X方向側のグランドパッド131Bとを接続している。+Y方向側のグランドボンディングワイヤ141Bは、+Y方向側のグランドリード111と、+X方向側のグランドパッド131Bとを接続している。一対のグランドリード111同士の間隔は、一対のグランドパッド131B同士の間隔よりも広いため、一対のグランドボンディングワイヤ141Bは、一対の信号ボンディングワイヤ141Aと同様に、-X方向側から+X方向側にかけてY方向の間隔が広がっている。一対のグランドボンディングワイヤ141Bは、一対の信号ボンディングワイヤ141Aに沿って延在している。換言すれば、一対のグランドボンディングワイヤ141Bは、一対の信号ボンディングワイヤ141Aとそれぞれ並列に延在している。これは、互いに並列に延在する信号ボンディングワイヤ141A及びグランドボンディングワイヤ141Bが2組あることを意味する。
【0072】
図6は、信号リード121、一対のグランドリード111、及びダイパッド110(の端辺110A)の間に生じる静電容量(フリンジ容量)と高周波電流の流れる方向とを示す図である。ICチップ130の信号パッド131Aと信号リード121との間では、信号ボンディングワイヤ141Aに破線の両矢印で示すようにX方向に高周波電流が流れる。なお、
図6では主な符号のみを示す。
【0073】
信号リード121に信号リード部121Bを設けて端辺110Aに近づけるとともに、ダイパッド110も端辺110Aを+X方向側に延出させているため、信号リード121とダイパッド110の間の結合(静電結合)が大きくなり、
図6に示すように静電容量(フリンジ容量)Caが生じる。このような静電容量Caは、信号リード121のインピーダンスに影響を与えるものであり、無視できない程度に大きい静電容量である。
【0074】
また、信号リード121に信号リード部121AよりもY方向の外側に突出する信号リード部121Bを設けてグランドリード111に近づけているため、信号リード121とグランドリード111の間の結合(静電結合)が大きくなり、
図6に示すように静電容量(フリンジ容量)Cbが生じる。このような静電容量Cbは、信号リード121のインピーダンスに影響を与えるものであり、無視できない程度に大きい静電容量である。
【0075】
信号リード121とダイパッド110の間の静電容量Caと、信号リード121とグランドリード111の間の静電容量Cbとは、高周波電流の流れる方向に沿っており、高周波電流の流れる方向に対して広がりを有していないため、等化回路における集中定数で表現できる。一例として、信号リード121とグランドリード111の厚さを100μm、信号リード部121BのY方向の幅を700μm、信号リード121及びダイパッド110の間隔と信号リード121及びグランドリード111の間隔(ギャップ)とを150μmとする。この場合に、信号リード121及びダイパッド110の間と信号リード121及びグランドリード111の間とに得られるフリンジ容量は、25fF~35fFである。
【0076】
図7は、信号リード121、一対のグランドリード111、及びダイパッド110の端辺110Aの間と、信号ボンディングワイヤ141A及びグランドボンディングワイヤ141Bとに生じる静電容量を示す図である。信号リード121とダイパッド110の間の静電容量Caと、信号リード121とグランドリード111の間の静電容量Cbとは、上述した集中定数で表せるフリンジ容量である。
【0077】
また、信号ボンディングワイヤ141A及びグランドボンディングワイヤ141Bの間には、
図7に示すように静電容量Ccが生じる。静電容量Ccは、一対のグランドボンディングワイヤ141Bを一対の信号ボンディングワイヤ141Aにそれぞれ沿って延在するように設けたことによって得られる静電容量である。このような静電容量Ccは、信号リード121のインピーダンスに影響を与えるものであり、無視できない程度に大きい静電容量である。
【0078】
〔等化回路〕
図8は、信号リード121、一対のグランドリード111、端辺110A、信号ボンディングワイヤ141A、及びグランドボンディングワイヤ141Bの等化回路を示す図である。
図8において、左端の端子はICチップ130の信号パッド131A及びグランドパッド131Bに相当する。右端の端子は信号リード121及び一対のグランドリード111の外部端子に相当する。
【0079】
コンデンサC1は、ダイパッド110の対地容量をコンデンサとして表したものである。インダクタL1は、一対の信号ボンディングワイヤ141Aと一対のグランドボンディングワイヤ141Bとのインダクタンスをインダクタとして表したものである。コンデンサC2は、
図6及び
図7に示すフリンジ容量Ca及びCbの合成容量をコンデンサとして表したものである。また、信号ボンディングワイヤ141A及びグランドボンディングワイヤ141Bの静電容量Ccは、インダクタL1のインダクタンスを低減する作用をもたらす。
【0080】
また、インダクタL2は、信号リード121及び一対のグランドリード111と、信号リード121及び一対のグランドリード111に接続される半導体装置100の外部の評価基板の線路とを合わせた線路のインダクタンスを有するインダクタである。評価基板の線路は、信号リード121及び一対のグランドリード111と同様に、信号線を一対のグランド線で挟んだGSG構造を有する。
【0081】
半導体装置100は、信号リード121の信号リード部121Bを有さず、端辺110Aが上側の部分110-2の分だけ+X方向側に突出しておらず、信号ボンディングワイヤ141Aを1本にしたGSG構造の比較用の半導体装置に比べて、コンデンサC2が追加されている。また、信号ボンディングワイヤ141Aが2本に増え、一対の(2本の)信号ボンディングワイヤ141Aと一対の(2本の)グランドボンディングワイヤ141Bとがそれぞれ並列に延在して結合することにより、コンデンサC1の静電容量も比較用の半導体装置に比べて変化している。
【0082】
〔ワイヤ間の静電容量C〕
信号ボンディングワイヤ141Aとグランドボンディングワイヤ141Bとの間の静電容量C(ワイヤ間の静電容量C)は、ワイヤ間の距離をd、ワイヤの半径をrとすると、近似的に次式(1)で表すことができる。なお、信号ボンディングワイヤ141Aとグランドボンディングワイヤ141Bとの半径は等しく、ともにrであることとする。
【0083】
【0084】
図9は、ワイヤ間の距離dに対するワイヤ間の静電容量Cの特性を示す図である。
図9において、横軸はワイヤ間の距離d(μm)を表し、縦軸はワイヤ間の静電容量C(fF)を表す。ワイヤ間の静電容量C(fF)は、ワイヤの1mm当たりの静電容量C(fF)を表す。また、
図9には、比誘電率が1.0と4.0の場合の特性を示す。モールド樹脂150の比誘電率は約4.0である。
【0085】
図9に示すように、比誘電率4.0の場合には、比誘電率が1.0の場合(モールド樹脂150がない場合)に比べて、ワイヤ間の静電容量Cが約3倍以上になっていることが分かる。また、比誘電率4.0でワイヤ間の距離dが400(μm)以下になると、ワイヤ間の静電容量Cの増加割合が大きくなっている。ワイヤ間の距離dが300(μm)の場合の静電容量Cは約37.5(fF)であり、ワイヤ間の距離dが500(μm)の場合の約32(fF)に比べて約20%増大している。
【0086】
〔ワイヤの特性インピーダンスZ〕
信号ボンディングワイヤ141Aとグランドボンディングワイヤ141Bの特性インピーダンスZは、次式(2)で表すことができる。式(2)において、Cはワイヤ間の静電容量Cであり、Lは信号ボンディングワイヤ141Aとグランドボンディングワイヤ141Bのインダクタンスである。
【0087】
【0088】
図10は、信号ボンディングワイヤ141Aとグランドボンディングワイヤ141Bの特性インピーダンスZの計算結果を示す図である。
図10には、半導体装置100における信号ボンディングワイヤ141Aとグランドボンディングワイヤ141Bの特性インピーダンスZの計算結果に加えて、比較用の半導体装置における信号ボンディングワイヤの特性インピーダンスの計算結果を示す。比較用の半導体装置は、上述のように、信号リード121の信号リード部121Bを有さず、端辺110Aが上側の部分110-2の分だけ+X方向側に突出しておらず、信号ボンディングワイヤ141Aを1本にしたGSG構造の半導体装置である。
【0089】
半導体装置100では信号ボンディングワイヤ141Aとグランドボンディングワイヤ141Bの長さを300μmに設定するとともに、ワイヤ間の距離dとワイヤの半径rを所定値に設定し、さらに一対の信号ボンディングワイヤ141Aと一対のグランドボンディングワイヤ141Bとがそれぞれ並列に配置されている場合のインダクタンスを0.5nH/mm(2本ずつのワイヤが並列の場合の値)として計算した。
【0090】
また、比較用の半導体装置では、信号リード121が信号リード部121Bを有さず、端辺110Aが上側の部分110-2の分だけ+X方向側に突出していないため、信号ボンディングワイヤの長さを500μmに設定するとともに、ワイヤの半径rを半導体装置100と同一値に設定し、さらに1本の信号ボンディングワイヤと2本のグランドボンディングワイヤのインダクタンスを0.7nH/mm(並列ではないワイヤが3本別々にある場合の値)として計算した。
【0091】
この結果、半導体装置100における信号ボンディングワイヤ141Aとグランドボンディングワイヤ141Bの特性インピーダンスZは約81Ωであり、比較用の半導体装置の信号ボンディングワイヤの特性インピーダンスZは約105Ωであった。すなわち、信号リード部121Bを設けるとともに、ダイパッド110の端辺110Aが信号リード121に近づくように突出させてフリンジ容量を形成することにより、信号伝送に関わるボンディングワイヤ140の特性インピーダンスZを約20%低減できることが分かった。換言すれば、
図8に示す等化回路におけるインダクタL1の特性インピーダンスを20%低減できることが分かった。なお、ここでは、GSG構造を有する比較用の半導体装置と比較したが、グランドボンディングワイヤを有さずに信号ボンディングワイヤのみを有する従来の半導体装置と比較すると、特性インピーダンスの低減はさらに顕著なものとなる。
【0092】
〔S21パラメータの計算結果〕
図11は、半導体装置100におけるS21パラメータの周波数特性を示す図である。
図11において、横軸は周波数(GHz)であり、縦軸はS21パラメータ(dB)を示す図である。S21パラメータは、ポート1を信号リード121の外部端子、ポート2を信号パッド131Aとして回路シミュレータで計算したものである。すなわち、S21パラメータは、一対の信号ボンディングワイヤ141Aの伝送損失を表す。
【0093】
図11には、信号リード121に信号リード部121Bを設けるとともに端辺110Aを+X方向側に突出させることによってフリンジ容量(
図6参照)を形成し、さらに一対の信号ボンディングワイヤ141Aと一対のグランドボンディングワイヤ141Bとをそれぞれ並列に延在させた半導体装置100におけるS21パラメータを実線で示す。また、実線で示すS21パラメータの成分からフリンジ容量が寄与した分を除いたS21パラメータを破線で示す。破線で示すS21パラメータは、一対の信号ボンディングワイヤ141Aと一対のグランドボンディングワイヤ141Bとをそれぞれ並列に延在させたことのみによる効果(フリンジ容量による効果を除いた効果)を表すものであり、現実的には実現不可能な構成であるが、回路シミュレータでは分けることが可能であるため、
図11に示す。換言すれば、破線のS21パラメータは、
図8の等化回路でインダクタL1として表す一対の信号ボンディングワイヤ141Aと一対のグランドボンディングワイヤ141Bの特性インピーダンスの軽減によるS21パラメータの改善度合を示すものである。
【0094】
図11に示すように、30GHzにおいて破線のS21パラメータは-0.3dBであり、実線のS21パラメータは-0.2dBであった。このように、
図8の等化回路でインダクタL1として表す一対の信号ボンディングワイヤ141Aと一対のグランドボンディングワイヤ141Bの特性インピーダンスの低下によって-0.3dBという小さい値が得られ、さらに、
図8の等化回路でコンデンサC2として表すフリンジ容量が加わることによって-0.2dBまで低減されることが分かった。なお、信号リード121の信号リード部121Bを有さず、端辺110Aが上側の部分110-2の分だけ+X方向側に突出しておらず、信号ボンディングワイヤ141Aを1本にしたGSG構造の比較用の半導体装置における1本の信号ボンディングワイヤ141AのS21パラメータは、-0.82dBであった。このため、半導体装置100ではS21パラメータが大幅に改善されていることが分かった。
【0095】
以上、実施形態では、信号リード121に信号リード部121Bを設け、ダイパッド110の端辺110Aを+X方向側に突出させ、かつ、一対の信号ボンディングワイヤ141Aと一対のグランドボンディングワイヤ141Bとをそれぞれ並列に延在させる構成を採用した。このような構成により、信号伝送に関わるボンディングワイヤ140の特性インピーダンスZを約20%低減できることが分かった。これは、信号リード121に信号リード部121Bを設けるとともに、ダイパッド110の端辺110Aを+X方向側に突出させることで、信号リード部121Bと端辺110Aとを近づけて、一対の信号ボンディングワイヤ141Aと一対のグランドボンディングワイヤ141Bの長さを短くできたことの効果である。
【0096】
したがって、インピーダンス特性を改善した樹脂封止型の半導体装置100を提供することができる。ボンディングワイヤ140の特性インピーダンスは、リード120の特性インピーダンスと比べると低減させるのが容易ではないが、上述のような構成によって、信号伝送に関わるボンディングワイヤ140の特性インピーダンスを低減することができる。
【0097】
また、例えばセラミックパッケージの半導体装置においてボンディングワイヤの特性インピーダンスを調整しようとする場合には、ボンディングワイヤの上下方向にもインピーダンス調整用の構成要素を配置する自由度が高いが、樹脂封止型半導体装置の場合は、ダイパッド110が1枚の金属層であるため、このような自由度が圧倒的に低い。樹脂封止型半導体装置では、ダイパッド110が1枚の金属層であることから、ボンディングワイヤ140の特性インピーダンスを調整するための構成要素を設ける位置は平面方向に限られることになる。
【0098】
実施形態によれば、このような制約の下において、信号リード121の-X方向側に信号リード部121Bを設け、ダイパッド110の端辺110Aを+X方向側に突出させることで、フリンジ容量を稼ぐことによって、ボンディングワイヤ140の特性インピーダンスを低減している。また、一対の信号ボンディングワイヤ141Aと一対のグランドボンディングワイヤ141Bとをそれぞれ並列に延在させて静電結合させることによって、さらにボンディングワイヤ140の特性インピーダンスZを低減している。これは、
図11に示す通りである。
【0099】
また、以上では、信号リード121及びグランドリード111の部分について説明したが、信号リード122及びグランドリード112の部分と、信号リード123及びグランドリード113の部分とについても同様である。
【0100】
また、信号リード121とダイパッド110との間隔は、複数のリード126とダイパッド110との間隔よりも狭い。信号リード121とダイパッド110との間隔が狭いことにより、信号リード121とダイパッド110との間の静電容量が増大し、信号リード121に接続された信号ボンディングワイヤ141Aが短くなってインダクタンスが低下することで、信号リード121に接続された信号ボンディングワイヤ141Aのインピーダンス特性がさらに改善される。これは、信号リード122、123についても同様である。したがって、インピーダンス特性をさらに改善した樹脂封止型の半導体装置100を提供することができる。
【0101】
また、ダイパッド110は、平面視で端辺110Aから突出する一対のグランドリード111をさらに有し、複数のボンディングワイヤ140は、ICチップ130のグランドパッド131Bと一対のグランドリード111との間をさらに接続し、信号リード121と一対のグランドリード111の各々との間隔は、複数のリード126の間隔よりも狭い。信号リード121と一対のグランドリード111の各々との間隔が複数のリードの間隔よりも狭いことで、信号リード121と一対のグランドリード111の各々との間の静電容量が増大し、信号リード121に接続された信号ボンディングワイヤ141Aのインダクタンスが低下することで、信号リード121に接続された信号ボンディングワイヤ141Aのインピーダンス特性がさらに改善される。これは、信号リード122、123についても同様である。したがって、インピーダンス特性をさらに改善した樹脂封止型の半導体装置100を提供することができる。
【0102】
また、信号リード121は、平面視でICチップ130から遠い側の信号リード部121Aと、平面視で信号リード部121AよりもICチップ130に近い側に位置し、一対のグランドリード111を結ぶ方向の幅が信号リード部121Aよりも広い信号リード部121Bとを有する。信号リード部121Bと一対のグランドリード111の各々との間隔は、複数のリード126の間隔よりも狭い。信号リード121のうちのICチップ130に近い側の信号リード部121BがICチップ130よりも遠い側の信号リード部121Aよりも広い幅を有することによって、信号リード121と一対のグランドリード111の各々との間の静電容量を増大させるとともに、信号リード121とダイパッド110との間の静電容量を増大させることができる。このような簡易な構成によって、信号リード121に接続された信号ボンディングワイヤ141Aのインダクタンスを低下させて、信号リード121に接続された信号ボンディングワイヤ141Aのインピーダンス特性を改善することができる。これは、信号リード122、123についても同様である。したがって、簡易な構成でインピーダンス特性を改善した樹脂封止型の半導体装置100を提供することができる。
【0103】
また、信号リード部121Aと一対のグランドリード111の各々との間隔は、複数のリード126の間隔と等しい。信号リード部121Aと一対のグランドリード111の各々との間隔が複数のリード126の間隔と等しければ、信号リード部121Bと一対のグランドリード111とを有しない半導体装置100からの変更点を最小限にすることができ、構成が非常に簡易である。これは、信号リード122、123についても同様である。したがって、非常に簡易な構成でインピーダンス特性を改善した樹脂封止型の半導体装置100を提供することができる。
【0104】
また、信号リード部121Bの幅方向における両端は、信号リード部121Aの幅方向の両端よりも外側に位置している。信号リード部121Bの幅方向における両端が信号リード部121Aの幅方向の両端よりも外側に位置していれば、信号リード部121Bと、信号リード部121Bの幅方向の両側に位置する一対のグランドリード111とをバランス良く配置でき、信号リード121と一対のグランドリード111の各々との間の静電容量を効率的に増大させるとともに、信号リード121とダイパッド110との間の静電容量を効率的に増大させることができる。この結果、信号リード121に接続された信号ボンディングワイヤ141Aのインダクタンスを効率的に低下させることができ、信号リード121に接続された信号ボンディングワイヤ141Aのインピーダンス特性を効率的に改善できる。これは、信号リード122、123についても同様である。したがって、インピーダンス特性を効率的に改善した樹脂封止型の半導体装置100を提供することができる。
【0105】
また、信号リード部121A及び信号リード部121Bは、平面視で端辺110Aに垂直な方向に延在する対称軸に対して線対称な形状を有している。信号リード部121A及び信号リード部121Bを線対称な形状にすることで、信号リード121と一対のグランドリード111の各々との間の静電容量と、信号リード121とダイパッド110との間の静電容量とを調整しやすい構成が得られる。この結果、線対称な形状を用いて信号リード121に接続された信号ボンディングワイヤ141Aのインダクタンスを効率的に低下させることができ、線対称な形状を用いて信号リード121に接続された信号ボンディングワイヤ141Aのインピーダンス特性を効率的に改善できる。これは、信号リード122、123についても同様である。したがって、線対称な形状を用いてインピーダンス特性を効率的に改善した樹脂封止型の半導体装置100を提供することができる。
【0106】
また、信号リード部121A及び信号リード部121Bは、T字型である。信号リード部121A及び信号リード部121BをT字型にすることで、信号リード121と一対のグランドリード111の各々との間の静電容量と、信号リード121とダイパッド110との間の静電容量とを調整しやすく、作製が容易な構成が得られる。この結果、静電容量を調整しやすく作製が容易な信号リード121に接続された信号ボンディングワイヤ141Aのインダクタンスを効率的に低下させることができ、静電容量を調整しやすく作製が容易な信号リード121に接続された信号ボンディングワイヤ141Aのインピーダンス特性を効率的に改善できる。これは、信号リード122、123についても同様である。したがって、静電容量を調整しやすく作製が容易でインピーダンス特性を効率的に改善した樹脂封止型の半導体装置100を提供することができる。
【0107】
また、複数のボンディングワイヤ140のうちの信号リード121の信号リード部121Bと信号パッド131Aとを接続する一対の信号ボンディングワイヤ141Aは、信号リード部121Bのうちの幅方向における両側で信号リード部121Aよりも外側に位置する部分にそれぞれ接続されている。信号リード121の信号リード部121Bと信号パッド131Aとを接続する一対の信号ボンディングワイヤ141Aを信号リード部121Bのうちの幅方向における両側で信号リード部121Aよりも外側に位置する部分にそれぞれ接続すれば、一対の信号ボンディングワイヤ141Aを一対のグランドリード111に近づけることができるので、一対の信号ボンディングワイヤ141Aのインダクタンスを効果的に低下させることができ、一対の信号ボンディングワイヤ141Aのインピーダンス特性を効果的に改善できる。これは、信号リード122、123についても同様である。したがって、一対の信号ボンディングワイヤ141Aのインピーダンスを効果的に改善した樹脂封止型の半導体装置100を提供することができる。
【0108】
また、一対の信号ボンディングワイヤ141Aが信号パッド131Aに接続される一対の端部同士の間隔よりも、一対の信号ボンディングワイヤ141Aが信号リード部121Bに接続される端部同士の間隔の方が広い。一対の信号ボンディングワイヤ141Aを一対のグランドリード111に確実に近づけることができるので、一対の信号ボンディングワイヤ141Aのインダクタンスをより確実に低下させることができ、一対の信号ボンディングワイヤ141Aのインピーダンス特性をより確実に改善できる。これは、信号リード122、123についても同様である。したがって、一対の信号ボンディングワイヤ141Aのインピーダンスをより確実に改善した樹脂封止型の半導体装置100を提供することができる。
【0109】
また、複数のボンディングワイヤ140のうちの一対のグランドリード111とグランドパッド131Bとを接続する一対のグランドボンディングワイヤ141Bは、一対の信号ボンディングワイヤ141Aに沿って延在している。一対のグランドボンディングワイヤ141Bと一対の信号ボンディングワイヤ141Aとの結合による静電容量を利用して一対の信号ボンディングワイヤ141Aのインダクタンスをより効果的に低下させることができ、一対の信号ボンディングワイヤ141Aのインピーダンス特性をより効果的に改善できる。これは、グランドボンディングワイヤ142B、143Bについても同様である。したがって、一対の信号ボンディングワイヤ141Aのインピーダンスをより効果的に改善した樹脂封止型の半導体装置100を提供することができる。
【0110】
また、信号リード121は、下面側に位置する部分120-1と、部分120-1に連続し、上面側に位置する部分120-2とを有し、信号リード部121Aは、部分120-1及び部分120-2に延在し、信号リード部121Bは、部分120-2のみに延在している。信号リード121のうち信号リード部121Aについては、信号リード部121Bと一対のグランドリード111とを有しない半導体装置100からの変更点を最小限にすることができ、信号リード部121Bについては部分120-2のみで実現できるので、構成が非常に簡易である。これは、信号リード122、123についても同様である。したがって、非常に簡易な構成でインピーダンス特性を改善した樹脂封止型の半導体装置100を提供することができる。
【0111】
また、モールド樹脂150は、一対のグランドリード111の下面の少なくとも一部と、信号リード121、122、123の下面の少なくとも一部とを露出させるので、QFN型半導体装置を実現できる。信号リード121の下面の少なくとも一部は、一例として信号リード部121Aであり、信号リード122、123についても同様である。したがって、信号リード121、122、123の下面側の表面を外部端子として利用でき、インピーダンス特性を改善したQFN型の半導体装置100を提供することができる。
【0112】
なお、以上では、半導体装置100が、信号リード121に信号リード部121Bを設けるとともに、ダイパッド110の端辺110Aを+X方向側に突出させることによって、フリンジ容量を獲得する形態について説明した。すなわち、信号リード121とダイパッド110とのX方向の間隔を狭めるとともに、信号リード121の信号リード部121Bとグランドリード111とのY方向の間隔を狭めることによってフリンジ容量を獲得する形態について説明した。しかしながら、信号リード121とダイパッド110とのX方向の間隔を狭めることと、信号リード121の信号リード部121Bとグランドリード111とのY方向の間隔を狭めることとを両方含まずに、いずれか一方のみを含むことによって得られるフリンジ容量で、信号伝送に関わるボンディングワイヤ140の特性インピーダンスを低減する構成であってもよい。
【0113】
また、以上では、信号リード121が信号リード部121Aと、信号リード部121AよりもY方向において外側まで延在する信号リード部121Bとを有する形態について説明した。しかしながら、信号リード121はこのような構成には限定されず、信号リード121とダイパッド110とのX方向の間隔を狭めることと、信号リード121の信号リード部121Bとグランドリード111とのY方向の間隔を狭めることとの少なくともいずれか一方を実現できる構成であればよい。例えば、信号リード121は、-X方向側の端部から+X方向側の端部まで信号リード部121BのY方向の幅と同一の幅を有する太いリードであってもよい。
【0114】
また、このため、信号リード121の信号リード部121A及び信号リード部121Bは、T字型ではなくてもよく、信号リード部121A及び信号リード部121BのY方向の幅の中心を通りX軸に平行な直線を対称軸とする線対称な形状ではなくてもよい。
【0115】
また、信号リード部121Aとグランドリード111とのY方向の間隔は、隣り合うリード126同士の間隔とは等しくなくてもよく、隣り合う電源リード124同士の間隔、又は、隣り合う電源リード125同士の間隔と異なっていてもよい。
【0116】
また、信号ボンディングワイヤ141Aが信号リード121に接続される部分は、信号リード部121Bのうちの中央部121B1よりも外側の端部121B2ではなく、中央部121B1であってもよい。
【0117】
また、一対の信号ボンディングワイヤ141Aが信号リード121に接続されるY方向の間隔が、一対の信号ボンディングワイヤ141Aが信号パッド131Aに接続されるY方向の間隔よりも広くなくてもよい。また、一対のグランドボンディングワイヤ141Bは、一対の信号ボンディングワイヤ141Aにそれぞれ沿っていなくても(並列ではなくても)よい。
【0118】
また、ダイパッド110又はリード120の下面がモールド樹脂150から露出することによって実現される外部端子の位置、サイズ、及び形状は、上述のものに限らずに適宜変更してもよい。また、ダイパッド110は2段階のエッチングで形成された部分110-1と部分110-2とを有する構成ではなくてもよく、リード120は2段階のエッチングで形成された部分120-1と部分120-2とを有する構成ではなくてもよい。
【0119】
また、半導体装置100を
図12に示すように変形してもよい。
図12は、実施形態の変形例による半導体装置100Aを示す図である。半導体装置100Aは、
図2に示す一対の信号ボンディングワイヤ141A、142A、143Aの間に、さらにもう1本の信号ボンディングワイヤ141A、142A、143Aをそれぞれ追加した構成を有する。このようにすると、複数の信号ボンディングワイヤ141A、142A、143A同士の静電結合がさらに強くなり、信号ボンディングワイヤ141A、142A、143AのS21パラメータをさらに低減できる。この結果、信号ボンディングワイヤ141A、142A、143Aのインピーダンスをさらに低減できる。
【0120】
以上、本発明の例示的な実施形態の半導体装置について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0121】
10 RFフロントエンド回路
11 スイッチ回路
11A、11B、11C 端子
12 PA
13 LNA
15 アンテナ
100 半導体装置
110 ダイパッド
110A 端辺
110-1、110-2 部分
111、112、113 グランドリード
120 リード
120-1、120-2 部分
121、122、123 信号リード
121A、121B 信号リード部
121B1 中央部
121B2 端部
124、125 電源リード
126 リード
130 ICチップ
131A、132A、133A 信号パッド
131B、132B、133B グランドパッド
134、135 電源パッド
140 ボンディングワイヤ
141A、142A、143A 信号ボンディングワイヤ
141B、142B、143B グランドボンディングワイヤ
144、145 電源ボンディングワイヤ
150 モールド樹脂