(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/098 20060101AFI20240709BHJP
A61B 17/3207 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A61M25/098
A61B17/3207
(21)【出願番号】P 2020142674
(22)【出願日】2020-08-26
【審査請求日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2019155908
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】松本 美沙
(72)【発明者】
【氏名】宮川 克也
(72)【発明者】
【氏名】中村 友則
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-511644(JP,A)
【文献】特開2018-191883(JP,A)
【文献】特開2015-146878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/098
A61B 17/3207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線が透過する円筒形状の透過部を有するシャフトと、
上記透過部に位置しており、上記透過部と放射線の透過性が異なる少なくとも2個のマーカーと、を備えており、
上記各マーカーは、上記透過部の周方向において相互に完全には重複しない位置にあり、
上記各マーカーは、上記周方向に沿った長さが同一であり、
上記
透過部の軸線方向において隣り合う2個の上記マーカーは、上記軸線方向において一部が重複しているカテーテル。
【請求項2】
放射線が透過する円筒形状の透過部を有するシャフトと、
上記透過部に位置しており、上記透過部と放射線の透過性が異なる少なくとも2個のマーカーと、を備えており、
上記各マーカーは、上記透過部の軸線方向及び周方向において相互に完全には重複しない位置にあり、
上記軸線方向において隣り合う2個の上記マーカーは、上記軸線方向に沿った長さが異な
るカテーテル。
【請求項3】
放射線が透過する円筒形状の透過部を有するシャフトと、
上記透過部に位置しており、上記透過部と放射線の透過性が異なる少なくとも2個のマーカーと、
上記
透過部の周方向に沿っ
て延びる
、上記マーカーよりも放射線の透過性が大きい連結部材と、を備えており、
上記各マーカーは、上記透過部の軸線方向及び周方向において相互に完全には重複しない位置にあり、他の上記マーカーを介して間接的にまたは他の上記マーカーを介することなく直接的に上記
連結部材と連結してい
るカテーテル。
【請求項4】
放射線が透過する円筒形状の透過部を有するシャフトと、
上記透過部に位置しており、上記透過部と放射線の透過性が異なる少なくとも2個のマーカーと、
上記透過部と上記透過部の軸線方向において異なる位置に位置しており、上記透過部と放射線の透過性が異なる円筒部と、
上記円筒部の周壁の一部に形成された開口と、
上記円筒部の内部空間において上記シャフトの軸線周りに回転しつつ上記軸線方向に沿って移動可能なカッターと、
上記円筒部の軸線に対して上記開口と反対側に位置しており、上記シャフトの径方向外側へ膨らむバルーンと、を備えており、
上記各マーカーは、上記透過部の軸線方向及び周方向において相互に完全には重複しない位置にあり、
複数の上記マーカーのいずれか1個は、上記周方向において上記開口と同位置にあ
るカテーテル。
【請求項5】
放射線が透過する円筒形状の透過部を有するシャフトと、
上記透過部に位置しており、上記透過部と放射線の透過性が異なる少なくとも2個のマーカーと、
上記透過部と上記透過部の軸線方向において異なる位置に位置しており、上記透過部と放射線の透過性が異なる円筒部と、
上記円筒部の周壁の一部に形成された開口と、
上記円筒部の内部空間において上記シャフトの軸線周りに回転しつつ上記軸線方向に沿って移動可能なカッターと、
上記円筒部の軸線に対して上記開口と反対側に位置しており、上記シャフトの径方向外側へ膨らむバルーンと、
上記シャフトの内部空間に位置しており、当該内部空間を通るガイドワイヤが挿通される支持体
と、を備えており、
上記各マーカーは、上記透過部の軸線方向及び周方向において相互に完全には重複しない位置にあり、
上記支持体は、上記透過部と放射線の透過性が異な
るカテーテル。
【請求項6】
上記周方向において隣り合う2個の上記マーカーは、上記透過部の軸線に対する周方向角度が90度異なる
請求項1から5のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項7】
上記各マーカーは、上記周方向に沿った長さが同一である
請求項2から5のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項8】
上記透過部と上記軸線方向において異なる位置に位置しており、上記透過部と放射線の透過性が異なる円筒部と、
上記円筒部の周壁の一部に形成された開口と、
上記円筒部の内部空間において上記シャフトの軸線周りに回転しつつ上記軸線方向に沿って移動可能なカッターと、
上記円筒部の軸線に対して上記開口と反対側に位置しており、上記シャフトの径方向外側へ膨らむバルーンと、を更に備える
請求項1から3のいずれかに記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人や動物の管腔に挿入されるカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、人の冠動脈に形成された粥腫を除去するために、冠動脈に挿入されるカテーテルが知られている。このような施術は、方向性冠動脈粥腫切除術(DCA)とも称されている。カテーテルの遠位部分には開口があり、開口からカテーテルの内部空間に進入した粥腫が、カテーテルの内部空間において回転しつつ軸線方向に移動するカッターにより切除される。DCAにおいて、冠動脈に挿入されたカテーテルの開口の位置(カテーテルの姿勢)と、粥腫の位置とは、X線などの放射線を用いて撮影された映像によって把握される。
【0003】
カテーテルの姿勢が把握される必要があるのは、DCAに限らない。例えば、側面からカニューレが突出するカテーテルの場合、カニューレが出る向きを特定するために、カテーテルの姿勢が把握される必要がある。
【0004】
特許文献1には、LT指向マーカーを備えたカテーテルシステムが開示されている。放射線撮影された映像におけるLT指向マーカーの形状が、L字形状またはT字形状のいずれであるかによって、カテーテルの姿勢が把握される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、放射線撮影された映像においてLT指向マーカーがT字形状に見える姿勢は、LT指向マーカーがカテーテルの手前側の外側面に位置する姿勢と、向こう側の外側面に位置する姿勢との2つの姿勢があり得るが、この2姿勢を映像において区別することは難しい。したがって、カテーテルを操作する施術者は、LT指向マーカーがT字形状に見えていても、カテーテルの姿勢が2つの姿勢のうちのいずれかを直ぐさま判断できないおそれがある。
【0007】
また、放射線撮影された映像においてLT指向マーカーがL字形状に見える姿勢において、L字形状のうち軸線方向に沿って延びるマーカーの一部分のうちどれくらいの割合がカテーテルの手前側の外側面に位置する状態なのかを判定することも難しい。したがって、施術者は、LT指向マーカーがL字形状に見えていても、カテーテルの姿勢が、所定の周方向角度の範囲内にある程度の精度で認識できるに過ぎない。
【0008】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、放射線撮影された映像において、カテーテルの軸線周りの回転姿勢を容易に認識可能な手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明に係るカテーテルは、放射線が透過する円筒形状の透過部を有するシャフトと、上記透過部に位置しており、上記透過部と放射線の透過性が異なる少なくとも2個のマーカーと、を備えている。上記各マーカーは、上記透過部の軸線方向及び周方向において相互に重複しない位置にある。
【0010】
各マーカーの位置関係、例えば、各マーカーの縁同士が一直線上にあるか否かによって、カテーテルの軸線周りの回転姿勢を容易に認識することができる。
【0011】
(2) 上記周方向において隣り合う2個の上記マーカーは、上記透過部の軸線に対する周方向角度が90度異なる。
【0012】
周方向において隣り合う2個のマーカーの重複や離間の程度によって、カテーテルの軸線周りの回転姿勢を容易に認識することができる。
【0013】
(3) 例えば、上記各マーカーは、上記周方向に沿った長さが同一である。
【0014】
(4) 上記軸線方向において隣り合う2個の上記マーカーは、上記軸線方向において一部が重複している。
【0015】
カテーテルの軸線周りの回転姿勢が所定の周方向角度となったときに、軸線方向において隣り合う2個のマーカーが連続した1個のマーカーに見える。これにより、カテーテルの軸線周りの回転姿勢が所定の周方向角度となったことを認識することができる。
【0016】
(5) 上記軸線方向において隣り合う2個の上記マーカーは、上記軸線方向に沿った長さが異なる。
【0017】
軸線方向における長さの相違によって、各マーカーを容易に識別することができる。
【0018】
(6) 本発明に係るカテーテルは、上記周方向に沿って環状に延びる環体を備える。上記各マーカーは、他の上記マーカーを介して間接的にまたは他の上記マーカーを介することなく直接的に上記環体と連結している。
【0019】
複数のマーカーが環体を通じて一体に構成されているため、製造時に発生しうる各マーカー間の位置ずれを低減することができる。環体が透過部の全周に亘って形成されるため、環体及び各マーカーが透過部から外れることを抑制することができる。
【0020】
(7) 例えば、本発明に係るカテーテルは、上記透過部と上記軸線方向において異なる位置に位置しており、上記透過部と放射線の透過性が異なる円筒部と、上記円筒部の周壁の一部に形成された開口と、上記円筒部の内部空間において上記シャフトの軸線周りに回転しつつ上記軸線方向に沿って移動可能なカッターと、上記円筒部の軸線に対して上記開口と反対側に位置しており、上記シャフトの径方向外側へ膨らむバルーンと、を更に備える。
【0021】
(8) 複数の上記マーカーのいずれか1個は、上記周方向において上記開口と同位置にある。
【0022】
複数のマーカーのいずれか1個が周方向において開口と同位置にあるため、開口の位置を容易に認識することができる。
【0023】
(9) 本発明に係るカテーテルは、上記シャフトの内部空間に位置しており、当該内部空間を通るガイドワイヤが挿通される支持体を更に備えている。上記支持体は、上記透過部と放射線の透過性が異なる。
【0024】
支持体をマーカーとして利用することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るカテーテルによれば、放射線撮影された映像において、カテーテルの軸線周りの回転姿勢を容易に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、バルーン23が収縮された状態のカテーテル10の外観構成を示す側面図である。
【
図2】
図2は、カテーテル10の先端部13付近の内部構成を示す拡大断面図である。
【
図3】
図3は、カテーテル10の先端部13付近の外観構成を示す拡大側面図である。
【
図4】
図4は、
図3のIV-IV断面を示す断面図であり、(A)は支持体70を備えていない構成を示し、(B)は支持体70を備えた構成を示す。
【
図5】
図5は、血管50においてバルーン23が拡張された状態を示す模式図である。
【
図6】
図6は、血管50において粥腫51が切除された後の状態を示す模式図である。
【
図7】
図7は、X線撮影されたマーカー61、62周辺の映像を模式的に示す側面図である。
【
図8】
図8は、
図3のIV-IV断面を示す断面図であって
図4(A)に示す状態からからマーカー61、62が周方向102に移動した状態を示す。
【
図9】
図9は、変形例におけるカテーテル10のマーカー60周辺を示す拡大側面図である。
【
図10】
図10は、変形例におけるカテーテル10の先端部13付近の外観構成を示す拡大側面図である。
【
図11】
図11は、変形例におけるカテーテル10の先端部13付近の内部構成を示す拡大断面図である。
【
図12】
図12は、X線撮影されたマーカー61、62及び支持部70周辺の映像を模式的に示す側面図である。
【
図13】
図13は、変形例におけるカテーテル10のマーカー60周辺を示す拡大側面図である。
【
図14】
図14は、変形例におけるカテーテル10のマーカー60周辺を示す拡大側面図である。
【
図15】
図15は、変形例におけるカテーテル10のマーカー60周辺を示す拡大側面図である。
【
図16】
図16は、端部37にマーカー61,62を固定する方法を示す模式図である。
【
図17】
図17は、端部37にマーカー61,62を固定する方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様を変更できることは言うまでもない。
【0028】
図1に示されるカテーテル10は、粥腫切除用であり、
図1及び
図2に示されるように、シャフト11と、シャフト11内に設けられたカッター12と、シャフト11の基端に接続された基端部14と、カッター12に回転駆動を付与する駆動部15と、を具備する。
【0029】
シャフト11は、内部にカッター12を内包できるチューブである。シャフト11は、本体部16と、中間部17と、先端部13とに大別される。本体部16、中間部17、及び先端部13は、シャフト11の軸線方向101において異なる位置に位置している。中間部17が円筒部に相当する。
【0030】
本体部16は、例えば合成樹脂製の円管であり、血管の湾曲形状に応じて弾性的に湾曲する。
【0031】
図2に示されるように、中間部17は、本体部16の先端に接続されて、その内部空間が本体部16の内部空間と連通している。中間部17は、後述するブレードチューブ31の端部37よりもX線などの放射線の透過性が小さい材料よりなっている。本実施形態において、中間部17は、例えば医療用ステンレス製の円管である。中間部17は、本体部16の先端に外側から嵌め込まれている。
【0032】
先端部l3は、円管で構成されている。先端部13は、中間部17の先端に接続されて、その内部空間が中間部17の内部空間と連通している。中間部17の基端は本体部16に接続されており、中間部17の先端は先端部13に接続されている。先端部13については、後に詳細に説明される。
【0033】
シャフト11の先端(先端部13の先端)及びシャフト11の基端(本体部16の基端)はそれぞれ開口している。シャフト11の外径は、挿入すべき血管、例えば冠状動脈の内径に応じて設定されている。シャフト11の内径は、カッター12の外径に応じて設定されている。シャフト11の外径及び内径は、シャフト11の軸線方向101に亘ってほぼ均等である。シャフト11の軸線方向101の長さは、ヒトの四肢などのカテーテル挿入部から患部までの長さを考慮して設定されている。
【0034】
図2及び
図3に示されるように、中間部17の周壁25の一部には開口20が形成されている。開口20は、周壁25の一部が切欠されることにより形成されている。開口20の形状や大きさは、患部に形成されているであろう粥腫51(
図5参照)の形状や大きさを考慮して設定されている。
【0035】
シャフト11の内部空間における開口20の近傍(詳細には、中間部17の内部空間から、本体部16の内部空間のうち中間部17近傍に位置する部分までに亘る空間)には、カッター12が設けられている。カッター12は、刃部21とシャフト22とを有する。刃部21は、概ね円筒形状であり、その外径は、シャフト11の内径より若干小さい。刃部21の先端側には、複数の刃が中心から放射状に延びるように形成されている。同図には現れていないが、刃部21の中心には、軸線方向101に沿って貫通孔が形成されている。シャフト22は、刃部21の基端から基端部14の外側まで延出されている。シャフト22は細長な管であり、その内部空間が、刃部21の貫通孔と連通している。シャフト22の内部空間及び刃部21の貫通孔は、ガイドワイヤを挿通するためのものである。
【0036】
図1に示されるように、シャフト22は、駆動部15に接続される。駆動部15から駆動伝達されてシャフト22が回転することによって刃部21が軸線周りに回転する。また、シャフト22が軸線方向101に移動されることによって、刃部21がシャフト11の内部空間を軸線方向101へ移動する。
【0037】
図1及び
図2に示されるように、シャフト11の軸線に対して開口20と反対側となる位置には、バルーン23が設けられている。バルーン23は、シャフト11の周壁25からシャフト11の径方向外側へ膨らむことが可能なものであり、カテーテル10が血管に挿入されるまでは、折り畳まれてシャフト11の周壁25に密着している。バルーン23の素材としては、生体適合性を有する材料が好ましく、具体的には、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。
【0038】
図2に示されるように、バルーン23の基端側は、シャフト11の周壁25に沿って設けられたバルーン用管体24に接続されている。バルーン用管体24の内部空間は、バルーン23の内部空間と連通されている。バルーン用管体24は基端部14(
図1参照)まで延出されており、バルーン用管体24の内部空間は、基端部14のポート41と接続されている。基端部14のポート41から注入された生理食塩水などの液体がバルーン23内に流入することによって、血管内においてバルーン23が膨らまされる。バルーン用管体24は、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエーテルアミドなどの弾性変形可能な軟質プラスチックの成形体である。
【0039】
以下、先端部13の詳細が説明される。
図2に示されるように、先端部13は、ブレードチューブ31と、縮径部32と、先端チップ33とを有する。
【0040】
ブレードチューブ31は、両側が開口した円管である。ブレードチューブ31は、中間部17の先端に接続されて、その内部空間が中間部17の内部空間と連通されている。
【0041】
図1及び
図3に示されるように、ブレードチューブ31は、中間部17側の端部37を除いて、芯材34により補強されている。芯材34は、ブレードチューブ31の周壁内に埋め込まれている。
【0042】
ブレードチューブ31の周壁は、X線などの放射線を透過する材料よりなっている。本実施形態において、当該周壁は、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエーテルアミドなどの弾性変形可能な軟質プラスチックよりなっている。
【0043】
ブレードチューブ31のうちの芯材34は、医療用ステンレスなどの金属製線材が網目に組まれて筒形状にされたものである。当該線材は、ブレードチューブ31の周壁(軟質プラスチック)よりもX線などの放射線の透過性が小さい。
【0044】
ブレードチューブ31の端部37(芯材34により補強されていない部分)は、ブレードチューブ31の端部37以外の部分(芯材34により補強された部分)よりもX線などの放射線の透過性が大きい。端部37が透過部に相当する。
【0045】
ブレードチューブ31の内径は、本体部16及び中間部17の外径と同等程度である。ブレードチューブ31は、中間部17の先端に外側から嵌め込まれている。ブレードチューブ31の外径及び内径は、軸線方向101に渡ってほぼ均等である。なお、断面図(
図2、
図4~6、
図8、
図11)においては、芯材34の図示が省略されている。
【0046】
図2に示されるように、縮径部32は、両側が開口してテーパ形状に外径が縮径した円管である。縮径部32は、ブレードチューブ31の先端に接続されて、その内部空間がブレードチューブ31の内部空間と連通されている。縮径部32は、ポリアミドやポリエーテルアミドなどの弾性変形可能な軟質プラスチックからなる。縮径部32の基端側の内径は、ブレードチューブ31の先端の外径と同程度であり、ブレードチューブ31の先端に縮径部32が外側から嵌め込まれて熱溶着されている。縮径部32の先端側の内径は、先端チップ33の中央部分の外径と同程度である。縮径部32の先端側においては、肉厚が先端側に向かって薄くなっている。
【0047】
先端チップ33は、両側が開口しており、基端36側がテーパ形状に外径が拡がった円管である。先端チップ33は、縮径部32の先端に接続されて、その内部空間が縮径部32の内部空間と連通している。先端チップ33の先端35側は、縮径部32の先端から軸線方向101の外側へ突出している。先端チップ33の基端36側は、縮径部32の内部空間を軸線方向101に延出されている。基端36は、ブレードチューブ31の内部空間に至っている。つまり、ブレードチューブ31の先端側部分から縮径部32においては、ブレードチューブ31及び縮径部32を外側とし、先端チップ33を内側とした二重管構造となっている。
【0048】
先端チップ33は、基端36側において拡径されているが、その他の部分の外径及び内径はほぼ均等である。均等な部分の外径は、ブレードチューブ31の内径より小さく、縮径部32の先端の内径と同程度である。また、基端36側は拡径されているが、その最大径は、ブレードチューブ31の内径より小さい。
【0049】
先端チップ33は、ポリアミドやポリエーテルアミドなどの弾性変形可能な軟質プラスチックからなる。先端チップ33は、縮径部32の先端に挿入されて熱溶着されている。
【0050】
図3及び
図4(A)に示されるように、ブレードチューブ31の周壁のシャフト11側の端部37の外側面38に、複数のマーカー60が設けられている。
【0051】
本実施形態において、マーカー60は、2個(マーカー61、62)設けられている。以下、2個のマーカー61、62を総称してマーカー60とも記す。マーカー60は、X線などの放射線の透過性がブレードチューブ31よりも小さい材料よりなっている。本実施形態において、マーカー60は、金よりなっており、外側面38にメッキされている。なお、マーカー60は、金に限らず、例えばプラチナよりなっていてもよく、マーカー60の厚さについて制限がない場合には、0.2mm以上の肉厚を有するステンレスよりなっていてもよい。
【0052】
マーカー61、62は、シャフト11の周方向102において隣り合っており、周方向102において相互に重複しない位置にある。ここで、マーカー61、62が周方向102において相互に重複しないとは、マーカー61、62が周方向102において完全には重ならないの意味である。つまり、マーカー61、62は、周方向102において間隔を空けて設けられていてもよいし、周方向102においてマーカー61の一部とマーカー62の一部とが重複していてもよい。本実施形態では、マーカー61、62は、周方向102において間隔を空けて設けられている。
【0053】
マーカー61、62は、シャフト11の軸線方向101において隣り合っており、軸線方向101において相互に重複しない位置にある。ここで、マーカー61、62が軸線方向101において相互に重複しないとは、マーカー61、62が軸線方向101において完全には重ならないの意味である。つまり、マーカー61、62は、軸線方向101において間隔を空けて設けられていてもよいし、軸線方向101においてマーカー61の一部とマーカー62の一部とが重複していてもよい。本実施形態では、軸線方向101においてマーカー61の基端部とマーカー62の先端部とが重複している。換言すると、
図3に示されるように、軸線方向101において、マーカー61の基端側の端611は、マーカー62の先端側の端621よりも、シャフト11の基端側に位置している。
【0054】
図4(A)に示されるように、マーカー61の周方向102の長さL1は、マーカー62の周方向102の長さL2と等しい。なお、長さL1は、長さL2と異なる長さであってもよい。マーカー61、62の周方向102の長さは、ユーザによるカテーテル10の周方向角度の容易な認識の観点から、短い方が好ましい。特に、マーカー61、62の周方向102の長さは、0.3~0.8mmの範囲であることが好ましい。
【0055】
長さL1、L2は任意である。しかし、長さL1、L2は、周方向102においてマーカ61とマーカー62の間に間隔がある(換言すると、ブレードチューブ31の端部37の外側面38が露出する部分がある)ような長さであることが好ましい。
【0056】
マーカー61、62は、ブレードチューブ31の軸線に対する周方向角度が90度異なる。詳細には、軸線方向101に沿った視線において、マーカー61の周方向102の中心とシャフト11の軸線103とを結んだ線81と、マーカー62の周方向102の中心と軸線103とを結んだ線82とのなす角θ1は、90度である。なお、角θ1は、90度に限らず、例えば45度などであってもよい。
【0057】
マーカー61の軸線方向101の長さL3は、マーカー62の軸線方向101の長さL4と異なる長さである。本実施形態では、長さL3は、長さL4より短い。なお、長さL4が、長さL3より短くてもよい。また、長さL3、L4は、同一の長さであってもよい。
【0058】
図3に示されるように、マーカー60うちのいずれか1個(本実施形態ではマーカー62)は、周方向102において開口20と同位置にある。
【0059】
図1に示されるように、シャフト11の基端には基端部14が設けられている。基端部14は、シャフト11の内部空間と連続する内部空間を有する筒状の部材である。基端部14は、ポリプロピレンやABSなどの樹脂の成形体である。基端部14は、シャフト11を血管へ挿抜するときなどの操作において持ち手となり得る。
【0060】
基端部14には、軸線方向101に対して交差する方向へ延出されたポート41が設けられている。ポート41にシリンジなどの他のデバイスが接続されており、他のデバイスから流出入される生理食塩水などの流体が、基端部14からバルーン用管体24へ流出入する。なお、基端部14には、シャフト11の内部空間と連続する他のポートが設けられていてもよい。このようなポートは、例えば、シャフト11の内部に進入した切除済みの粥腫を回収する目的などに用いられる。
【0061】
基端部14の基端側の開口からは、カッター12のシャフト22が延出されており、このシャフト22に駆動部15が接続されている。駆動部15は、モータ及びバッテリーなどを内蔵する。シャフト22には、駆動部15のモータの回転が伝達される。
【0062】
シャフト11の基端部14近傍または基端部14自体が回転操作されることによって、当該回転がシャフト11の中間部17及び先端部13に伝達されて、中間部17及び先端部13が回転される。
【0063】
[カテーテル10の使用方法]
以下、
図5及び
図6などが参照されつつカテーテル10の使用方法が説明される。なお、以下の説明において、「上」及び「下」の記載は、参照されている図の紙面の「上」及び「下」を指す。
【0064】
カテーテル10は、血管50の内壁に形成された粥腫51を切除する際に用いられる。カテーテル10は、バルーン23が収縮された状態(
図1及び
図3参照)で、先端部13から血管50へ挿入される。
図5及び
図6には示されていないが、カテーテル10を血管50に挿入するに際して、予めガイドワイヤが血管50に挿入される。ガイドワイヤの血管50への挿入は、公知の手法により行われる。血管50に挿入されたガイドワイヤを、先端部13の先端チップ33の内部空間から、シャフト11の内部空間、さらにカッター12の刃部21の貫通孔、シャフト22の内部空間へ順に挿入しながら、カテーテル10が先端部13から血管50へ挿入される。
【0065】
冠状動脈のように、血管50が湾曲した箇所において、先端部13は、ガイドワイヤに沿って弾性的に湾曲しながら血管50の粥腫51まで進められる。先端部13が粥腫51に到達し、シャフト11の開口20が粥腫51と対向すると、シャフト11の血管50への挿入が終了される。
【0066】
シャフト11の血管50への挿入過程において、患者の体外から放射線(本実施形態ではX線)が照射されることによって、患者の体内にあるシャフト11の先端部13及び中間部17がX線により撮影される。マーカー60及び中間部17は、ブレードチューブ31の端部37よりもX線の透過性が小さい。そのため、X線撮影された映像において、マーカー60と端部37のコントラストによって、マーカー60が識別可能であり、中間部17と端部37のコントラストによって、中間部17及び中間部17に設けられた開口20が識別可能である。マーカー61、62の相対的な位置関係を認識することによって、シャフト11の位置及び姿勢を患者の体外から認識することができる。また、マーカー61、62及び開口20の相対的な位置関係を認識することによって、開口20の位置及び姿勢を患者の体外から認識することができる。
【0067】
例えば、シャフト11が
図4(A)に示される姿勢であるときに、シャフト11へ向けて
図4(A)の紙面左方からX線が照射された場合、X線撮影されたマーカー61、62は、
図7(A)に示される位置関係で表示される。
図7(A)では、X線の透過性が小さいマーカー60及び中間部17が濃い影で表示されており(
図7(A)ではハッチングで示されている。)、X線の透過性がマーカー60及び中間部17より大きい端部37が薄い影で表示されている。なお、X線の透過性によっては、端部37が表示されない場合があり得るが、この説明では薄い影として表示されるものとして、図においてハッチングされていない部分として示される。
【0068】
ここで、表示された中間部17によって、開口20の位置が認識され得る。例えば、
図7(A)に示されたように中間部17が表示された場合、上端から下方へ凹んだ部分が開口20であると認識可能であるため、この場合において開口20が上方を向いていると認識することができる。しかしながら、当該凹んだ部分が鮮明に表示されるとは限らず、当該凹んだ部分が鮮明に表示されていない場合、表示された中間部17によって開口20の位置を認識することができない。
【0069】
この場合、表示されたマーカー61、62に基づいて、開口20の位置を認識することができる。
【0070】
例えば、2個のマーカー61、62が軸線方向101に一直線となったときのマーカー60の周方向の位置を、開口20の基準位置として認識可能である。以下に詳述する。X線撮影によって表示されたマーカー61、62が視認されつつ、2個のマーカー61、62が一直線となるように、シャフト11が回転操作される。例えば、シャフト11が
図4(A)に示される姿勢から
図4(A)における時計回りに回転操作されて
図8(A)に示される姿勢となると、撮影されたマーカー61、62は、
図7(B)に示される位置関係で表示される。つまり、マーカー61は、
図7(A)のときよりも上方へ移動し、マーカー62は、放射線照射の奥側へ移動することで
図7(A)のときよりも上下に長くなる。シャフト11が
図8(A)に示される姿勢から
図8(A)における時計回りに回転操作されると、マーカー61は
図8(A)のときよりも上方へ移動し、マーカー62は
図8(A)のときよりも下方へ移動する。そして、マーカー61、62が上下方向に同位置となったとき、つまりシャフト11が
図8(B)に示される姿勢となったとき、X線撮影されたマーカー61、62は、
図7(C)に示される位置関係で表示される。つまり、2個のマーカー61、62が軸線方向101に一直線となる。このとき、一直線となったマーカー61、62と上下方向に同位置に、開口20があると認識可能である。
【0071】
マーカー61、62が軸線方向101に一直線となったとき、マーカー61、62の位置は、
図8(B)に実線で示された位置である場合と、
図8(B)に破線で示された位置である場合との2通りが考えられる。しかし、本実施形態のように、ブレードチューブ31の軸線に対する周方向角度がマーカー61、62間で90度異なる構成の場合、当該2通りの場合の何れであるかは、
図8(B)に示される姿勢からシャフト11が微回転されることによって識別可能である。例えば、シャフト11が
図8(B)における時計回りに微回転されたときに、マーカー62がマーカー61の下方に位置するように表示された場合(軸線方向101に沿った長さが長いマーカーが軸線方向101に沿った長さが短いマーカーの下方に位置するように表示された場合)、微回転前のマーカー61、62の位置は
図8(B)に実線で示された位置である。一方、シャフト11が
図8(B)における時計回りに微回転されたときに、マーカー62がマーカー61の上方に位置するように表示された場合(軸線方向101に沿った長さが長いマーカーが軸線方向101に沿った長さが短いマーカーの上方に位置するように表示された場合)、微回転前のマーカー61、62の位置は
図8(B)に破線で示された位置である。本実施形態では、マーカー62が周方向102において開口20と同位置にあるため、一直線となったマーカー61、62の位置を、開口20の位置(開口20の周方向角度)として認識することができる。具体的には、マーカー61、62の位置が
図8(B)に実線で示された位置であるとき、シャフト11の上端に対する開口20の周方向角度θ2は45度である。
【0072】
周方向角度がθ2(本例では45度)のときの開口20の位置を基準位置として、当該基準位置からシャフト11を回転することによって、開口20を意図する位置及び向きとすることができる。例えば、開口20を真上に向けたいとき、シャフト11は
図8(B)に実線で示される姿勢から反時計回りに45度回転されるか、
図8(B)に破線で示される姿勢から時計回りに135度回転されればよく、開口20を真下に向けたいとき、シャフト11は
図8(B)に実線で示される姿勢から時計回りに135度回転されるか、
図8(B)に破線で示される姿勢から反時計回りに45度回転されればよい。なお、これらの角度(45度や135度)は、シャフト11を把持しているユーザの手の感覚や、後述するようなマーカー61、62の形状や位置の変化で把握可能である。
【0073】
開口20の位置を認識する手段は、上述した手段(マーカー61、62が軸線方向101に一直線となるようにシャフト11を回転操作する手段)に限らない。
【0074】
例えば、シャフト11が回転操作されることによって、ユーザによって視認されるマーカー62の上下方向(
図7における紙面の上下方向)の長さや位置が変化するが、表示されるマーカー62が上下方向に最も短くなったとき、開口20がシャフト11の上端部に位置して真上を向いている(
図7(A)参照)、または、開口20がシャフト11の下端部に位置して真下を向いていることを認識することができる。また、例えば、マーカー62が上下方向に最も長くなったとき、開口20が放射線照射方向における手前または奥を向いていることを認識することができる。
【0075】
また、表示されたマーカー62のマーカー61に対する相対位置を識別することによって、開口20が上下何れの側を向いているのかを認識することができる。例えば、
図7(A)に示されるように、上下方向に最も短くなったマーカー62がマーカー61より上方に位置している場合、開口20がシャフト11の上端部に位置しており上方を向いていることが認識可能である。一方、上下方向に最も短くなったマーカー62がマーカー61より下方に位置している場合、開口20がシャフト11の下端部に位置しており下方を向いていることが認識可能である。
【0076】
上記のように、撮影によって表示されたマーカー60の映像が視認されつつ、開口20が適切な周方向角度となるように(換言すると、開口20が粥腫51と対向するように)、シャフト11が回転される。その後、ガイドワイヤがカテーテル10の基端部14側から引き抜かれる。また、カッター12のシャフト22に駆動部15が接続される。
【0077】
図5に示されるように、粥腫51にシャフト11の開口20が対向した状態において、ポート41からバルーン用管体24へ流入された流体により、収縮状態のバルーン23が拡張される。拡張されたバルーン23が、粥腫51と反対側の血管50の内壁に当接することによって、開口20が粥腫51に密着され、粥腫51の一部が開口20からシャフト11の内部空間へ進入した状態で、カテーテル10が血管50に対して固定される。
【0078】
続いて、駆動部15のモータが駆動されて、カッター12のシャフト22を通じて刃部21が回転される。基端部14側において、シャフト22がシャフト11に対して軸線方向101の先端側へ進行されることによって、回転する刃部21が粥腫51に当接し、刃部21によって粥腫51が切除される(
図6参照)。切除された粥腫51の欠片52は、シャフト11の内部空間を通じてブレードチューブ31の内部空間へ進入する。粥腫51の切除が終了すると、バルーン23が収縮されて、カテーテル10が血管50から引き抜かれて撤収される。
【0079】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態によれば、各マーカー61、62の位置関係(例えば、各マーカー61、62の縁同士が一直線上にあるか否か)によって、カテーテル10の軸線周りの回転姿勢を容易に認識することができる。
【0080】
また、本実施形態によれば、周方向102において隣り合う2個のマーカー61、62の重複や離間の程度によって、カテーテル10の軸線周りの回転姿勢を容易に認識することができる。
【0081】
また、本実施形態によれば、カテーテル10の軸線周りの回転姿勢が所定の周方向角度となったときに、軸線方向101において隣り合う2個のマーカー61、62が連続した1個のマーカーに見える。これにより、カテーテル10の軸線周りの回転姿勢が所定の周方向角度となったことを認識することができる。
【0082】
また、本実施形態によれば、軸線方向101における長さの相違によって、各マーカー61、62を容易に識別することができる。特に、照射する方向等の放射線照射の条件によっては、いずれかのマーカーの影が薄く表示されることなどによって、各マーカーの相対的な位置関係が不明確である場合があるが、このような場合であっても、マーカーの軸線方向における長さの相違に基づいて、濃い影で表示されるマーカーがいずれのマーカーであるのか判断できる。
【0083】
また、本実施形態によれば、マーカー62が周方向102において開口20と同位置にあるため、開口20の位置を容易に認識することができる。
【0084】
[変形例]
上記実施形態では、マーカー61、62は個別に構成されていたが、複数のマーカー60は一体に構成されていてもよい。また、マーカー61、62は、メッキ以外の手段によってブレードチューブ31に取り付けられていてもよい。
【0085】
例えば、
図9に示されるように、マーカー61、62が、複数の環体によって連結されていることによって一体に構成されていてもよい。
図9では、マーカー61、62は、環体90(第1環体91、第2環体92、及び第3環体93)によって一体に構成されている。
【0086】
第1環体91、第2環体92、及び第3環体93は、軸線方向101に間隔を空けて設けられている。第1環体91及び第2環体92の間にマーカー61が位置している。マーカー61は、軸線方向101の先端側の端612において、第1環体91と連結している。マーカー61は、軸線方向101の基端側の端611において、第2環体92と連結している。第2環体92及び第3環体93の間にマーカー62が位置している。マーカー62は、軸線方向101の先端側の端621において、第2環体92と連結している。マーカー62は、軸線方向101の基端側の端622において、第3環体93と連結している。
【0087】
以上のようにして一体化されたマーカー61、62及び環体90(第1環体91、第2環体92、及び第3環体93)は、ブレードチューブ31が環体90に挿通されることによって、ブレードチューブ31に取り付けられる。環体90は、接着などによってブレードチューブ31に固定される。環体90(第1環体91、第2環体92、及び第3環体93)は、ブレードチューブ31に取り付けられた状態において、周方向102に沿って延びている。
【0088】
マーカー60及び環体90の構成は、
図9に示される構成に限らない。
【0089】
環体90は、3つに限らない。例えば、
図13(A)に示されるように、1つの環体90に、マーカー61、62が連結されていてもよい。この場合、マーカー61は、軸線方向101の基端側の端611において環体90と連結しており、マーカー62は、軸線方向101の先端側の端621において環体90と連結している。
【0090】
また、各マーカー60は、他のマーカー60を介して環体90と連結されていてもよい。例えば、
図13(B)に示されるように、マーカー61の軸線方向101の先端側の端612が環体90に連結されており、マーカー61の軸線方向101の基端側の端611の角部分がマーカー62の軸線方向101の先端側の端621の角部分に連結されていてもよい。この場合、マーカー62は、マーカー61を介して間接的に環体90と連結しており、マーカー61は、他のマーカー60を介することなく直接的に環体90と連結している。
【0091】
また、環体90は、
図9や
図13に示されるような真っ直ぐに延びたものに限らない。例えば、環体90及びマーカー61、62は、
図14(A)に示されるように構成されていてもよい。
図14(A)に示される構成の場合、環体90の一部が屈曲しつつ延びており、環体90の屈曲した部分にマーカー61、62が連結されている。なお、環体90は、位置94から
図14(A)における外側面38の裏側へ延びて位置95へ至っている。
【0092】
また、マーカー60の数は2個に限らないし、マーカー60及び環体90は、
図13及び
図14(A)以外にも様々な構成を取りうる。例えば、マーカー60及び環体90は、
図14(B)に示されるような4つのマーカー60と2つの環体90よりなる構成や、
図15に示されるような4つのマーカー60と4つの環体90よりなる構成であってもよい。
【0093】
環体90を備えた構成の場合、マーカー60は、環体90よりも肉厚に構成されたり、表面を他の材料でメッキされたりすることが好ましい。例えば、マーカー60及び環体90がステンレスで構成されている場合に、マーカー60部分が金メッキされる。これにより、マーカー60の視認性が向上される。また、マーカー60と環体90との区別が容易となる。
【0094】
上述した構成では、マーカー60と環体90とは一体に構成されていた。つまり、マーカー60と環体90とは同じ材料で構成されていた。しかし、マーカー60と環体90とは異なる材料で構成されていてもよい。例えば、樹脂で構成された環体90に、ステンレスで構成されたマーカー60が嵌め込まれていてもよい。
【0095】
図9に示される構成によれば、複数のマーカー60が環体90を通じて一体に構成されているため、各マーカー60間の位置ずれを低減できる。すなわち、各マーカー60間の相対的な位置が所定の関係(例えば、上記実施形態では、マーカー61、62の周方向角度が90度)に保たれる。環体90がブレードチューブ31の全周に亘って形成されるため、環体90及び各マーカー60がブレードチューブ31から外れることを抑制することができる。
【0096】
上記実施形態では、マーカー60は2個(マーカー61、62)設けられていたが、マーカー60の数は2個に限らない。例えば、
図10に示されるように、マーカー60は、3個(マーカー63、64、65)設けられていてもよい。この場合、マーカー63、64が軸線方向101及び周方向102において隣り合っており、マーカー64、65が軸線方向101及び周方向102において隣り合っている。そして、隣り合うマーカー63、64において、上記実施形態におけるマーカー61、62と同様の位置やサイズの関係が成立する。また、隣り合うマーカー64、65において、上記実施形態におけるマーカー61、62と同様の位置やサイズの関係が成立する。
【0097】
上記実施形態では、マーカー60は、ブレードチューブ31の周壁のシャフト11側の端部37(ブレードチューブ31のうち芯材34により補強されていない部分)に配置されていた。しかし、マーカー60が設けられる箇所は端部37に限らない。例えば、マーカー60は、ブレードチューブ31のうち芯材34により補強されている部分に設けられていてもよい。但し、マーカー60は、視認性向上の観点から、開口20の近傍の位置で且つステンレスなどのマーカー60の視認を阻害するものが存在しない位置に配置されることが望ましい。
【0098】
図11に示されるように、カテーテル10は、支持体70を備えていてもよい。支持体70は、X線などの放射線の透過性がブレードチューブ31よりも小さい材料(例えば金)よりなっている。支持体70は、シャフト11の内部空間における端部37の近傍に配置されている。
【0099】
図4(B)に示されるように、支持体70は、シャフト11の軸線103に対して開口20と反対側となる位置に配置されている。つまり、支持体70とマーカー62のなす角(詳細には、支持体70の周方向102の中心と軸線103とを結んだ線83と、マーカー62の周方向102の中心と軸線103とを結んだ線84とのなす角)は、180度である。また、支持体70とマーカー61のなす角(詳細には、支持体70の周方向102の中心と軸線103とを結んだ線83と、マーカー61の周方向102の中心と軸線103とを結んだ線85とのなす角)は、90度である。なお、支持体70の周方向102の位置は、前記のような位置に限らない。
【0100】
図4(B)及び
図11に示されるように、支持体70は、ガイドワイヤが貫通される貫通孔71を有している。
【0101】
図11に示されるように、ガイドワイヤ72は、シャフト22の内部空間と刃部21の貫通孔を通過して、シャフト11の内部空間のうち開口20に面した部分に達する。当該部分において、ガイドワイヤ72は、支持体70の貫通孔71に挿通される。これにより、支持体70は、ガイドワイヤ72を支持している。
【0102】
カテーテル10が上記のような支持体70を備えており、支持体70が端部37の内部空間に配置されている場合、支持体70をマーカーとして利用することができる。例えば、シャフト11が
図4(B)に示される姿勢であるときに、シャフト11へ向けて
図4(B)の紙面左方からX線が照射された場合、撮影されたマーカー61、62は、
図12に示される位置関係で表示される。この場合、上記実施形態と同様にして、マーカー61、マーカー62、及び支持体70の相互の位置関係によって、シャフト11の姿勢や開口20の位置を認識することができるが、支持体70が加わっているために当該認識がより容易となる。なお、
図12に示されるように、支持体70の形状がマーカー61、62と異なる形状とされることによって、支持体70をマーカー61、62と区別することができる。
【0103】
上記実施形態におけるマーカー61,62は、例えば、以下の方法により端部37に固定されてもよい。
【0104】
図16に示されるように、ステンレス製の支持体110に白金製のマーカー61,62がそれぞれ組み付けられる。なお、マーカー61,62はステンレス製であってもよいが、白金製であることによってX線撮影画像における視認性が優れる。
【0105】
図6(A)に示されるように、支持体110は、帯状の主体111と、主体111から延びる2本の帯状の枝体112,113とを有する。主体111の長手方向と、枝体112,113の長手方向とは直交している。枝体112の長手方向に沿った寸法は、枝体113の長手方向に沿った寸法よりも短い。
【0106】
マーカー61,62は、それぞれが白金製の管として構成されている。
図16(B)に示されるように、マーカー61の管の内部空間に、枝体112の端が挿入される。マーカー62の管の内部空間に、枝体113の端が挿入される。そして、マーカ61,62がそれぞれプレスにより管形状が押し潰されることにより、枝体112,113にマーカー61,62が固定される。
【0107】
図16(C)に示されるように、主体111は、長手方向の両端が接続されて環状にされる。環状となった主体111の内径は、端部37の外径よりも小さく、且つ内径よりも大きい。
【0108】
図17(A)に示されるように、端部37は、内管37Aと外管37Bとからなる。内管37Aの外径は、環状となった主体111の内径と同等である。
図16(C)に示される支持体110は、環状の主体111が内管37Aの外周に沿って嵌め合わされる。これにより、主体111が内管37Aの周方向に沿って延び、枝体112,113がそれぞれ内管37Aの軸線方向(軸線方向101に合致する。)と平行に延びる。また、マーカー61,62が、内管37Aの外周面の所定位置に位置する。すなわちマーカー61,62が
図3に示される位置関係となる。
【0109】
図17(B)に示されるように、内管37Aの外側に外管37Bが嵌め合わされることによって、支持体110及びマーカー61,62は、内管37Aと外管37Bとによって挟み込まれる。そして、内管37A及び外管37Bが加熱によって一体に固定されて端部37となり、内管37Aの両端面及び外管37Bの両端面の各隙間が封止されて端部37の両端面となる。このようにして、マーカー61,62が端部37に固定される。
【0110】
上記実施形態では、マーカー60、中間部17、支持体70の放射線の透過性が、ブレードチューブ31の放射線の透過性より小さかった。しかし、上記実施形態とは逆に、マーカー60、中間部17、支持体70の放射線の透過性が、ブレードチューブ31の放射線の透過性より大きくてもよい。つまり、マーカー60、中間部17、支持体70の放射線の透過性が、ブレードチューブ31の放射線の透過性と異なっていればよい。透過性が異なることによって、マーカー60、中間部17、支持体70が、ブレードチューブ31に対するコントラストによって識別可能である。
【0111】
上記実施形態では、先端部13はブレードチューブ31を有していたが、先端部13が有するのはブレードチューブ31に限らない。例えば、先端部13は、ブレードチューブ31の代わりに、透過性及び柔軟性を有する樹脂製のチューブを有していてもよい。
【0112】
上記実施形態では、カテーテル10は、粥腫切除用であったが、粥腫切除以外の用途に用いられるものであってもよい。
【0113】
例えば、カテーテルは、気管や血管に挿入される吸引用のカテーテルや血管狭窄部貫通用のカテーテル、冠動脈貫通用のカテーテルであってもよい。このようなカテーテルの多くは、先端部に側孔や針などを有している。この場合、側孔や針が開く向きを正しい向きとするために、カテーテルの軸線周りの回転姿勢が調整されることが、上記実施形態の構成を備えることで可能となる。
【0114】
また、例えば、カテーテルは、カテーテルアブレーションに用いられるものであってもよい。このようなカテーテルの多くは、先端部に電極やバルーンを有している。この場合、電極やバルーンの向きや位置を正しいものとするために、カテーテルの軸線周りの回転姿勢が調整されることが、上記実施形態の構成を備えることで可能となる。
【符号の説明】
【0115】
10 カテーテル
17 中間部(円筒部)
20 開口
23 バルーン
25 周壁
31 ブレードチューブ(透過部)
61 マーカー
62 マーカー
70 支持体
91 第1環体
92 第2環体
93 第3環体
101 軸線方向
102 周方向