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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】接続モジュール
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20240709BHJP
   F25B 41/40 20210101ALI20240709BHJP
【FI】
F25B1/00 D
F25B41/40 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020146775
(22)【出願日】2020-09-01
(65)【公開番号】P2021047000
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2019166783
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 正和
(72)【発明者】
【氏名】水野 安浩
(72)【発明者】
【氏名】内山 雅貴
(72)【発明者】
【氏名】杉山 裕紀
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0375740(US,A1)
【文献】特開2004-092734(JP,A)
【文献】国際公開第2014/046063(WO,A1)
【文献】特開2010-281224(JP,A)
【文献】特開平10-267464(JP,A)
【文献】特開2004-012097(JP,A)
【文献】特開2009-041814(JP,A)
【文献】特開平06-011203(JP,A)
【文献】特開2019-105422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 39/02 ~ 39/04
F25B 41/00 ~ 41/40
B60H 1/32
F24F 11/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍サイクル(10)における複数の構成機器が接続される接続モジュール(80)であって、
前記冷凍サイクルにおける冷媒の流路の一部を構成する冷媒流路(82)が形成された本体部(81)を有し、
前記冷媒流路は、
複数の前記構成機器のうち、前記冷凍サイクルの高圧冷媒が流通する高温側構成機器(12)を接続可能な接続口(83a)が形成された高温側流路(82a)と、
複数の前記構成機器のうち、前記高圧冷媒よりも温度の低い冷媒が流通する低温側構成機器(24)を接続可能な接続口(83f、83g)が形成された低温側流路(82b)と、を有し、
前記高温側構成機器(12)は、前記冷媒流路の前記接続口(83a)を介して前記本体部と一体化されており、前記冷凍サイクルの前記高圧冷媒を凝縮させて熱媒体を加熱する熱媒体冷媒熱交換器(12)であり、
前記低温側構成機器(24)は、前記冷媒流路の前記接続口(83f、83g)を介して前記本体部と一体化されており、前記冷媒を蒸発させることで吸熱する蒸発器(24)であり、
前記冷媒は冷凍機油を含んでおり、
前記冷媒流路には、前記蒸発器の流入口に前記低圧冷媒を導く入口側接続口(83f)と、前記蒸発器の流出口に対して接続される出口側接続口(83g)とが形成され、
前記出口側接続口は、前記本体部に対する重力方向において、前記入口側接続口の下方に位置している接続モジュール。
【請求項2】
冷凍サイクル(10)における複数の構成機器が接続される接続モジュール(80)であって、
前記冷凍サイクルにおける冷媒の流路の一部を構成する冷媒流路(82)が形成された
本体部(81)を有し、
前記冷媒流路は、
複数の前記構成機器のうち、前記冷凍サイクルの高圧冷媒が流通する高温側構成機器(12)を接続可能な接続口(83a)が形成された高温側流路(82a)と、
複数の前記構成機器のうち、前記高圧冷媒よりも温度の低い冷媒が流通する低温側構成機器(24)を接続可能な接続口(83f、83g)が形成された低温側流路(82b)と、を有し、
前記低温側構成機器(24)は、前記冷媒流路の前記接続口(83f、83g)を介して前記本体部と一体化されており、前記冷凍サイクルにおける低圧冷媒を蒸発させることで吸熱する蒸発器(24)であり、
前記冷媒は冷凍機油を含んでおり、
前記冷媒流路には、前記蒸発器の流入口に前記低圧冷媒を導く入口側接続口(83f)と、前記蒸発器の流出口に対して接続される出口側接続口(83g)とが形成され、
前記出口側接続口は、前記本体部に対する重力方向において、前記入口側接続口の下方に位置している接続モジュール。
【請求項3】
前記本体部は、前記高温側流路と前記低温側流路との間において、前記本体部よりも熱伝導性が低く形成された伝熱抑制部(85)を有している請求項1又は2に記載の接続モジュール。
【請求項4】
前記伝熱抑制部は、前記高温側流路の側における前記本体部の変形と、前記低温側流路の側における前記本体部の変形とを吸収する変形吸収部(86)を有している請求項3に記載の接続モジュール。
【請求項5】
前記低温側構成機器は、前記蒸発器とは別に接続される主蒸発器(17、20)を有しており、
前記出口側接続口から伸びる前記低温側流路には、前記主蒸発器の流出口に接続される主側接続口(83i、83j)と、前記主側接続口から流入した前記低圧冷媒が前記出口側接続口へ流入することを抑制する抑制部(87)とが配置されている請求項1ないし4の何れか1つに記載の接続モジュール。
【請求項6】
前記低温側構成機器は、更に、少なくとも前記主蒸発器に対して前記低圧冷媒が流通する場合に、前記低圧冷媒が流通する副蒸発器(23)を有しており、
前記出口側接続口から伸びる前記低温側流路には、前記副蒸発器の流出口に接続される補助側接続口(83h)が、前記低温側流路における前記低圧冷媒の流れに関して、前記主側接続口よりも下流側に配置されている請求項5に記載の接続モジュール。
【請求項7】
前記本体部は、前記冷媒の流れを制御する為の流体制御機器(14a、15a)の一部が前記冷媒流路の内部に進入するように凹状に形成された取付部(84a~84e)を有している請求項1ないし6の何れか1つに記載の接続モジュール。
【請求項8】
前記冷媒流路(82)における曲がり部(82c)における流路断面積(Sc)は、前記冷媒流路(82)における直管部(82s)における流路断面積よりも大きく形成されている請求項1ないし7の何れか1つに記載の接続モジュール。
【請求項9】
前記冷媒流路は、前記冷凍サイクル(10)の前記構成機器として追加される特定構成機器に対して前記冷媒が流通する特定冷媒流路(88)を有し、
前記特定構成機器は、前記冷凍サイクルの前記低温側構成機器に対して並列に接続される前記構成機器であり、
前記特定冷媒流路は、前記本体部に形成され、前記低温側構成機器から流出した前記冷
媒に対して、前記特定構成機器から流出した冷媒を合流させる為の前記冷媒流路である請求項1ないし8の何れか1つに記載の接続モジュール。
【請求項10】
複数の前記構成機器は、前記冷凍サイクル(10)の前記構成機器から除外される対象構成機器を含み、
前記冷媒流路は、前記冷凍サイクルからの前記対象構成機器の除外に伴って、前記対象構成機器に対する前記冷媒の流通が不要となる対象冷媒流路(89)を有し、
前記対象構成機器の除外に伴い、前記対象冷媒流路における前記冷媒の流通がなくなる場合、前記対象冷媒流路の内部を閉塞するように取り付けられる閉塞部材(90)を有している請求項1ないし9の何れか1つに記載の接続モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷凍サイクルにおける複数の構成機器が接続される接続モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍サイクルでは、圧縮機、凝縮器、減圧部、蒸発器等の構成機器が用いられており、これらを冷媒配管にて接続している。冷凍サイクルにおける複数の構成機器の接続に関する技術として、特許文献1に記載された技術が知られている。特許文献1では、減圧部としての膨張弁と、蒸発器として機能する熱交換器とを集約して一体化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】中国特許出願公開第106711533号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術の場合、膨張弁と熱交換器を一体化した構成である為、冷凍サイクルにおける構成機器及び接続配管の配置等が限定された専用品になってしまい、冷凍サイクルの様々な構成に対応することができないことが考えられる。この為、特許文献1の技術を適用した場合、冷凍サイクルの構成に対して汎用性に乏しいものになってしまうと考えられる。
【0005】
又、特許文献1に記載された技術の場合、膨張弁と熱交換器とを接続する冷媒配管を省略することができるが、他の冷媒配管については別途接続しなければならない。この為、冷凍サイクル全体に対する省スペース化には、十分に対応できないことが考えられる。
【0006】
本開示は、これらの点に鑑みてなされており、冷凍サイクルにおける複数の構成機器が接続される接続モジュールに関し、様々な冷凍サイクルの構成に対応可能な接続モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の一態様に係る接続モジュールは、冷凍サイクル(10)における複数の構成機器が接続される接続モジュール(80)であって、冷媒流路(82)が形成された本体部(81)を有する。冷媒流路は、冷凍サイクルにおける冷媒の流路の一部を構成する。
【0008】
冷媒流路は、高温側流路(82a)と、低温側流路(82b)と、を有している。高温側流路には、複数の構成機器のうち、冷凍サイクルの高圧冷媒が流通する高温側構成機器(12)を接続可能な接続口(83a)が形成されている。低温側流路には、複数の構成機器のうち、高圧冷媒よりも温度の低い冷媒が流通する低温側構成機器(24)を接続可能な接続口(83f、83g)が形成されている。高温側構成機器(12)は、冷媒流路の接続口(83a)を介して本体部と一体化されており、冷凍サイクルの高圧冷媒を凝縮させて熱媒体を加熱する熱媒体冷媒熱交換器(12)である。又、低温側構成機器(24)は、冷媒流路の接続口(83f、83g)を介して本体部と一体化されており、冷媒を蒸発させることで吸熱する蒸発器(24)である。冷媒は冷凍機油を含んでいる。冷媒流路には、蒸発器の流入口に低圧冷媒を導く入口側接続口(83f)と、蒸発器の流出口に対して接続される出口側接続口(83g)とが形成されている。出口側接続口は、本体部に対する重力方向において、入口側接続口の下方に位置している。
【0009】
これによれば、高温側流路の接続口を用いることで、冷凍サイクルにおける高温側の構成を変更することができる。又、低温側流路の接続口を用いることで、冷凍サイクルにおける低温側の構成を変更することができる。つまり、接続モジュールを用いることで、冷凍サイクルの多様な構成に対応することができる。
【0010】
又、接続モジュールの本体部の内部において、高温側流路を介した高温側構成機器に対する冷媒の流れと、低温側流路を介した低温側構成機器に対する冷媒の流れを形成することができる。これにより、接続モジュールの内部に、冷凍サイクル全体における冷媒の流れの多くの部分を集約することができるので、冷凍サイクルに対する省スペース化に貢献することができる。そして、冷媒流路には、入口側接続口と、出口側接続口とが形成されており、出口側接続口は、本体部に対する重力方向において、入口側接続口の下方に位置している。これにより、蒸発器における冷媒の蒸発に伴って、蒸発器の下部に貯まった冷凍機油が出口側接続口から冷媒流路に流出する為、冷凍サイクルの圧縮機に対する冷凍機油の戻り量の確保に貢献することができる。
【0011】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る接続モジュールの正面図である。
図2】第1実施形態に係る接続モジュールの上面図である。
図3】第1実施形態に係る接続モジュールを用いた車両用空調装置の全体構成図である。
図4】第1実施形態に係る車両用空調装置における統合弁の構成図である。
図5】第1実施形態に係る車両用空調装置の電気制御部を示すブロック図である。
図6】第1実施形態に係る接続モジュールの内部構成を示す説明図である。
図7】第1実施形態に係る接続モジュールの冷媒流路における曲がり部の拡大図である。
図8】第3実施形態に係る接続モジュールの内部構成を示す説明図である。
図9】第3実施形態において、特定冷媒流路を追加した接続モジュールの内部構成を示す説明図である。
図10】第4実施形態に係る接続モジュールの内部構成を示す説明図である。
図11】接続モジュールにおける抑制部の変形例を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
図1図7を用いて、本開示を実施するための実施形態を説明する。第1実施形態の接続モジュール80は、車両用空調装置1を構成する冷凍サイクル10に適用されている。図1図2に示すように、接続モジュール80は、直方体状に形成された本体部81を有している。本体部81の内部には、冷凍サイクル10を循環する冷媒が流通する冷媒流路82が形成されている。冷媒流路82の構成については後述する。
【0014】
尚、以下の説明で前後左右上下の方向を用いて説明するときは、直方体状の本体部81に対して水冷媒熱交換器12が配置されている面を前面として、他の方向を定義する。各図に適宜示す矢印についても同様の定義を用いている。
【0015】
そして、接続モジュール80の本体部81には、複数の接続口(即ち、後述する第1接続口83a~第11接続口83k)が形成されており、冷凍サイクル10の構成機器(例えば、後述する水冷媒熱交換器12、チラー24等)を接続可能に構成されている。これにより、接続モジュール80の冷媒流路82は、冷凍サイクル10にて冷媒が循環する流路の一部を構成する。
【0016】
又、接続モジュール80の本体部81には、流体制御機器である膨張弁や開閉弁を取り付けることができる。これにより、冷媒流路82上に、膨張弁や開閉弁を配置することができ、冷凍サイクル10の冷媒回路を変更することができる。
【0017】
初めに、第1実施形態に係る接続モジュール80が適用される車両用空調装置1について説明する。車両用空調装置1は、内燃機関(すなわち、エンジン)および走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車両に搭載されている。第1実施形態の車両用空調装置1は、ハイブリッド自動車において、空調対象空間である車室内の空調を行うとともに、冷却対象物であるバッテリ48を冷却する冷却機能付きの車両用空調装置である。
【0018】
バッテリ48は、電動モータ等の車載機器へ供給される電力を蓄える二次電池である。バッテリ48は、複数の電池セルを電気的に直列的あるいは並列的に接続することによって形成された組電池である。
【0019】
電池セルは、充放電可能な二次電池である。第1実施形態では、電池セルとして、リチウムイオン電池を採用している。それぞれの電池セルは、扁平な直方体形状に形成されている。それぞれの電池セルは、平坦面同士が対向するように積層配置されて一体化されている。このため、バッテリ48全体としても略直方体形状に形成されている。
【0020】
この種のバッテリ48は、低温になると出力が低下しやすく、高温になると劣化が進行しやすい。このため、バッテリ48の温度は、バッテリ48が充分な充放電性能を発揮することのできる適切な温度範囲内(第1実施形態では、15℃以上、かつ、55℃以下)に維持されている必要がある。
【0021】
さらに、複数の電池セルを電気的に接続することによって形成されたバッテリ48は、いずれかの電池セルの性能が低下してしまうと、組電池全体としての性能が低下してしまう。このため、バッテリ48を冷却する際には、全ての電池セルを均等に冷却することが望ましい。
【0022】
第1実施形態の車両用空調装置1は、図3の全体構成図に示すように、冷凍サイクル10、高温側熱媒体回路40、低温側熱媒体回路45、室内空調ユニット50、後席側空調ユニット55等を備えている。車室を全体的に空調する室内空調ユニット50と、車室の後席側を主に空調する後席側空調ユニット55を有している為、車両用空調装置1は、デュアルエアコンに相当する。
【0023】
まず、冷凍サイクル10について説明する。冷凍サイクル10は、車両用空調装置1において、空調対象空間である車室内の空調を行う為に、車室内へ送風される送風空気を冷却或いは加熱する。従って、冷凍サイクル10の温度調整対象流体は、送風空気である。さらに、冷凍サイクル10は、車室内の空調に関して、冷房モードの冷媒回路、直列除湿暖房モードの冷媒回路、並列除湿暖房モードの冷媒回路、及び暖房モードの冷媒回路を切り替え可能に構成されている。
【0024】
車両用空調装置1において、冷房モードは、送風空気を冷却して車室内へ吹き出すことによって車室内の冷房を行う運転モードである。直列除湿暖房モードは、冷却されて除湿された送風空気を再加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の除湿暖房を行う運転モードである。並列除湿暖房モードは、冷却されて除湿された送風空気を直列除湿暖房モードよりも高い加熱能力で再加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の除湿暖房を行う運転モードである。暖房モードは、送風空気を加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の暖房を行う運転モードである。
【0025】
また、冷凍サイクル10では、冷媒としてHFO系冷媒(具体的には、R1234yf)を採用している。冷凍サイクル10は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒の圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。冷媒には、圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されている。冷凍機油としては、液相冷媒に相溶性を有するPAGオイル(ポリアルキレングリコールオイル)が採用されている。冷凍機油の一部は、冷媒と共に冷凍サイクル10を循環している。
【0026】
冷凍サイクル10の構成機器のうち、圧縮機11は、冷凍サイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。圧縮機11は、内燃機関や走行用電動モータ等が収容される駆動装置室内に配置されている。駆動装置室は、車室の前方側に配置されている。
【0027】
圧縮機11は、その外殻を形成するハウジングの内部に、低段側圧縮機構と高段側圧縮機構との2つの圧縮機構、および双方の圧縮機構を回転駆動する電動モータを収容して構成されている。つまり、圧縮機11は、二段昇圧式の電動圧縮機である。圧縮機11は、後述する空調制御装置60から出力される制御信号によって、回転数(すなわち、冷媒吐出能力)が制御される。
【0028】
圧縮機11のハウジングには、吸入ポート11a、中間圧ポート11b、及び吐出ポート11cが設けられている。吸入ポート11aは、ハウジングの外部から低段側圧縮機構へ低圧冷媒を吸入させる吸入口である。吐出ポート11cは、高段側圧縮機構から吐出された高圧冷媒をハウジングの外部へ吐出させる吐出口である。
【0029】
中間圧ポート11bは、ハウジングの外部から内部へ中間圧冷媒を流入させて低圧から高圧への圧縮過程の冷媒に合流させるための中間圧吸入口である。中間圧ポート11bは、ハウジングの内部で低段側圧縮機構の吐出口側及び高段側圧縮機構の吸入口側に接続されている。
【0030】
圧縮機11の吐出ポート11cには、冷媒配管を介して、水冷媒熱交換器12の冷媒通路の入口側が接続されている。水冷媒熱交換器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒を流通させる冷媒通路と、高温側熱媒体回路40を循環する高温側熱媒体を流通させる水通路とを有している。
【0031】
そして、水冷媒熱交換器12は、冷媒通路を流通する高圧冷媒と、水通路を流通する高温側熱媒体とを熱交換させて、高温側熱媒体を加熱する加熱用の熱交換器であり、高温側構成機器の一例である。高温側熱媒体回路40の詳細については後述する。
【0032】
水冷媒熱交換器12の冷媒出口には、接続モジュール80の第1接続口83aが接続されている。従って、水冷媒熱交換器12の冷媒出口から流出した高圧冷媒は、第1接続口83aから接続モジュール80内部の冷媒流路82に流入する。第1接続口83aから伸びる冷媒流路82には、第1流路接続部13aが配置されている。
【0033】
図3に示すように、第1流路接続部13aは、互いに連通する3つの流入出口を有している。第1流路接続部13aの流入口側には、冷媒流路82を介して、第1接続口83aが接続されている。第1流路接続部13aの一方の流出口側には、冷媒流路82を介して、暖房用膨張弁14aの入口側が接続されている。そして、第1流路接続部13aの他方の流出口側には、冷媒流路82であるバイパス流路16aが接続されている。即ち、第1流路接続部13aは、冷媒の流れを分岐する分岐部として構成されている。
【0034】
暖房用膨張弁14aは、暖房モード時等に、水冷媒熱交換器12から流出した高圧冷媒を減圧させるとともに、下流側へ流出させる冷媒の流量を調整する減圧部である。暖房用膨張弁14aは、絞り開度を変更可能に構成された弁体、および弁体を変位させる電動アクチュエータを有する電気式の可変絞り機構である。
【0035】
暖房用膨張弁14aの出口には、冷媒流路82を介して、接続モジュール80の第2接続口83bが接続されている。暖房用膨張弁14aは、接続モジュール80の本体部81に形成された第1取付部84aに取り付けられることで、第1流路接続部13aの一方の流出口と第2接続口83bとの間に配置される。この点については後述する。暖房用膨張弁14aは、空調制御装置60から出力される制御信号(制御パルス)によって、その作動が制御される。
【0036】
さらに、暖房用膨張弁14aは、全開機能及び全閉機能を有している。全開機能によれば、弁開度を全開にすることで流量調整作用および冷媒減圧作用を殆ど発揮することなく単なる冷媒通路として機能させることができる。そして、全閉機能によれば、弁開度を全閉にすることで冷媒通路を閉塞することができる。全開機能および全閉機能によって、暖房用膨張弁14aは、各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。従って、暖房用膨張弁14aは、冷媒回路切替部としての機能も兼ね備えている。
【0037】
図3等に示すように、バイパス流路16aは、接続モジュール80の内部に形成されており、第1流路接続部13aの他方の流出口と、第2流路接続部13bの一方の流入口とを接続する冷媒流路82である。
【0038】
バイパス流路16aには、第1開閉弁18aが配置されている。第1開閉弁18aは、バイパス流路16aを開閉する電磁弁であり、高温側構成機器の一例である。第1開閉弁18aは、本体部81に形成された第4取付部84dに取り付けられることで、バイパス流路16aに配置されている。第1開閉弁18aは、空調制御装置60から出力される制御電圧によって、その作動が制御される。
【0039】
そして、接続モジュール80の第2接続口83bには、冷媒配管を介して、暖房用統合弁30aの流入口31が接続されている。暖房用統合弁30aは、車両用空調装置1の暖房モードにおいて、冷凍サイクル10をガスインジェクションサイクルとして機能させるために必要な構成機器の一部を一体的に構成した統合弁30である。更に、暖房用統合弁30aは、サイクルを循環する冷媒の冷媒回路を切り替える冷媒回路切替部として機能し、低温側構成機器の一例である。
【0040】
ここで、暖房用統合弁30aの構成について、図4を参照して説明する。尚、第1実施形態の車両用空調装置1は、基本的に同様に構成された冷房用統合弁30bを有している。以下の説明では、暖房用統合弁30a及び冷房用統合弁30bの総称を統合弁30とし、統合弁30の構成について具体的に説明する。
【0041】
図4に示すように、統合弁30は、冷媒が流入する流入口31と、気相冷媒が流出する第1流出口32と、液相冷媒が流出する第2流出口33とを有している。統合弁30の流入口31には、気液分離器34の入口側が接続されている。
【0042】
気液分離器34は、流入口31から流入した冷媒の気液を分離する気液分離部である。第1実施形態では、気液分離器34として、円筒状の本体部の内部空間へ流入した冷媒を旋回させることで生じる遠心力の作用で冷媒の気液を分離する遠心分離方式(いわゆる、サイクロンセパレータ方式)のものが採用されている。
【0043】
更に、第1実施形態では、気液分離器34として、比較的内容積の小さいものが採用されている。より具体的には、気液分離器34の内容積は、サイクルに負荷変動が生じてサイクルを循環する冷媒循環流量が変動しても、実質的に余剰冷媒を貯めることのできない程度の容積になっている。従って、気液分離器34は、分離した液相冷媒をサイクル内の余剰冷媒として貯える貯液部としての機能を果たすものではない。
【0044】
気液分離器34の気相冷媒出口は、気相側開閉弁35を介して、統合弁30の第1流出口32に接続されている。気相側開閉弁35は、気液分離器34から流出した気相冷媒を第1流出口32へと導く冷媒通路を開閉する開閉弁である。
【0045】
第1流出口32には、冷媒配管及び第1三方継手15aを介して、圧縮機11の中間圧ポート11bが接続されている。従って、第1流出口32から流出した気相冷媒は、圧縮機11の中間圧ポート11bに導かれる。
【0046】
気液分離器34の液相冷媒出口には、固定絞り36の入口側が接続されている。固定絞り36は、気液分離器34から流出した液相冷媒を低圧冷媒となるまで減圧させるものである。固定絞り36としては、絞り開度が固定されたノズル、オリフィス、キャピラリチューブ等を採用することができる。固定絞り36の出口側には、統合弁30の第2流出口33が接続されている。
【0047】
更に、気液分離器34の液相冷媒出口には、迂回流路37が接続されている。迂回流路37は、気液分離器34から流出した液相冷媒を、固定絞り36を迂回させて、統合弁30の第2流出口33へ導く冷媒通路である。迂回流路37には、迂回流路側開閉弁38が配置されている。迂回流路側開閉弁38は、迂回流路37を開閉する開閉弁である。
【0048】
ここで、冷媒が迂回流路側開閉弁38を通過する際に生じる圧力損失は、冷媒が固定絞り36を通過する際に生じる圧力損失に対して極めて小さい。従って、迂回流路側開閉弁38が開いた際には、気液分離器34から流出した殆どの液相冷媒は、固定絞り36を通過することなく、迂回流路37を介して、第2流出口33に導かれる。
【0049】
上述したように、暖房用統合弁30aの第1流出口32には、冷媒配管を介して、第1三方継手15aにおける一方の流入口が接続されている。第1三方継手15aは、3つの流入出口を有する三方継手構造のものである。第1三方継手15aでは、3つの流入出口のうち2つを冷媒流入口とし、残りの1つを冷媒流出口としている。
【0050】
尚、第1三方継手15aとしては、複数の配管を接合して形成されたものや、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けることによって形成されたものを採用することができる。
【0051】
第1三方継手15aの他方の流入口には、後述する冷房用統合弁30bの第1流出口32が接続されている。そして、第1三方継手15aの流出口には、冷媒配管を介して、圧縮機11の中間圧ポート11bが接続されている。
【0052】
図3に示すように、暖房用統合弁30aの第2流出口33には、冷媒配管を介して、室外熱交換器17の冷媒入口側が接続されている。室外熱交換器17は、暖房用膨張弁14aから流出した冷媒と外気ファン17aから送風された外気とを熱交換させる熱交換器である。室外熱交換器17は、駆動装置室内の前方側に配置されている。このため、車両走行時には、室外熱交換器17に走行風を当てることができる。
【0053】
室外熱交換器17は、冷房モード時等に、高圧冷媒を放熱させる放熱器として機能する。この場合、室外熱交換器17は高温側構成機器に相当する。又、暖房モード時等には、室外熱交換器17は、暖房用膨張弁14aにて減圧された低圧冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する。この際には、室外熱交換器17は、低温側構成機器であり、主蒸発器の一例に相当する。外気ファン17aは、空調制御装置60から出力される制御電圧によって回転数(すなわち、送風能力)が制御される電動送風機である。
【0054】
室外熱交換器17の冷媒出口には、冷媒配管を介して、第2三方継手15bの流入口側が接続されている。第2三方継手15bは、第1三方継手15aと同様に構成されており、3つの流入出口を有している。第2三方継手15bの一方の流出口には、冷媒配管を介して、第1逆止弁19aの流入口側が接続されている。第2三方継手15bの他方の流出口には、冷媒配管で構成される暖房用流路16bが接続されている。
【0055】
第1逆止弁19aの流出口側は、冷媒配管を介して、接続モジュール80の第3接続口83cに接続されている。第1逆止弁19aは、第2三方継手15b側(即ち、室外熱交換器17の冷媒出口側)から第3接続口83c側(即ち、接続モジュール80の内部側)へ冷媒が流れることを許容し、第3接続口83c側から第2三方継手15b側へ冷媒が流れることを禁止する。第1逆止弁19aは低温側構成機器に相当する。
【0056】
暖房用流路16bは、第2三方継手15bの一方の流出口と、接続モジュール80の第10接続口83jとを接続する冷媒通路である。暖房用流路16bは、冷媒配管により構成されている。暖房用流路16bには、第2開閉弁18bが配置されている。第2開閉弁18bは、暖房用流路16bを開閉する電磁弁である。第2開閉弁18bは低温側構成機器に相当する。第2開閉弁18bは、空調制御装置60から出力される制御電圧によって、その作動が制御される。
【0057】
接続モジュール80の内部において、第3接続口83cから伸びる冷媒流路82には、第2流路接続部13bが配置されている。第2流路接続部13bは、互いに連通する3つの流入出口を有している。上述したように、第2流路接続部13bの一方の流入口には、バイパス流路16aが接続されている。第2流路接続部13bの他方の流入口には、冷媒流路82を介して、第3接続口83cが接続されている。そして、第2流路接続部13bの流出口側には、冷媒流路82を介して、第3流路接続部13cの流入口側が接続されている。
【0058】
第3流路接続部13cは、接続モジュール80の内部において、1つの流入口に対して3つの流出口を有する分岐部として構成されている。第3流路接続部13cの一方の流出口には、冷媒流路82を介して、第1冷房用膨張弁14bの入口側が接続されている。そして、第3流路接続部13cの他方の流出口には、冷媒流路82を介して、第3開閉弁18cの入口側が接続されている。更に、第3流路接続部13cの別の流出口には、冷媒流路82を介して、冷却用膨張弁14dの入口側が接続されている。
【0059】
第1冷房用膨張弁14bは、冷房モード時等に、第3流路接続部13cから流出した冷媒を減圧させるとともに、下流側へ流出させる冷媒の流量を調整する減圧部である。第1冷房用膨張弁14bは、暖房用膨張弁14aと同様に構成された電気式の可変絞り機構である。従って、第1冷房用膨張弁14bは、空調制御装置60から出力される制御信号(制御パルス)によって、その作動が制御される。
【0060】
又、第1冷房用膨張弁14bは、全開機能および全閉機能を有している為、各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。従って、第1冷房用膨張弁14bは、冷媒回路切替部としての機能も兼ね備えている。
【0061】
第1冷房用膨張弁14bの出口には、冷媒流路82を介して、接続モジュール80の第4接続口83dが接続されている。第1冷房用膨張弁14bは、接続モジュール80の本体部81に形成された第2取付部84bに取り付けられることで、第3流路接続部13cの一方の流出口と第4接続口83dとの間に配置される。
【0062】
次に、第3開閉弁18cは、第3流路接続部13cの他方の流出口から伸びる冷媒流路82を開閉する電磁弁である。第3開閉弁18cは高温側構成機器の一例である。第3開閉弁18cの出口側は、冷媒流路82を介して、接続モジュール80の第5接続口83eに接続されている。
【0063】
第3開閉弁18cは、本体部81に形成された第5取付部84eに取り付けられることで、第3流路接続部13cの他方の流出口と第5接続口83eとの間に配置される。第3開閉弁18cは、空調制御装置60から出力される制御電圧によって、その作動が制御される。
【0064】
そして、冷却用膨張弁14dは、後述するバッテリ48を冷却する際に、第3流路接続部13cから流出した冷媒を減圧させるとともに、下流側へ流出させる冷媒の流量を調整する減圧部である。冷却用膨張弁14dは、暖房用膨張弁14a及び第1冷房用膨張弁14bと同様に構成された電気式の可変絞り機構である。従って、冷却用膨張弁14dは、空調制御装置60から出力される制御信号(制御パルス)によって、その作動が制御される。
【0065】
又、冷却用膨張弁14dは、全開機能および全閉機能を有している為、各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。従って、冷却用膨張弁14dは、冷媒回路切替部としての機能も兼ね備えている。
【0066】
冷却用膨張弁14dの出口には、冷媒流路82を介して、接続モジュール80の第6接続口83fが接続されている。冷却用膨張弁14dは、接続モジュール80の本体部81に形成された第3取付部84cに取り付けられることで、第3流路接続部13cの別の流出口と第6接続口83fとの間に配置される。
【0067】
図3に示すように、接続モジュール80の第4接続口83dには、冷媒配管を介して、冷房用統合弁30bの流入口31が接続されている。冷房用統合弁30bは、上述した暖房用膨張弁14aと同様に構成されている。冷房用統合弁30bは低温側構成機器の一例である。
【0068】
冷房用統合弁30bは、図4を参照して説明したように、流入口31、第1流出口32、第2流出口33、気液分離器34、気相側開閉弁35、固定絞り36、迂回流路37、迂回流路側開閉弁38を有している。冷房用統合弁30bの詳細な構成については、再度の説明を省略する。
【0069】
冷房用統合弁30bの第1流出口32には、冷媒配管及び第2逆止弁19bを介して、第1三方継手15aにおける一方の流入口が接続されている。第2逆止弁19bは、冷房用統合弁30bの第1流出口32側から第1三方継手15aへ冷媒が流れることを許容し、第1三方継手15a側から冷房用統合弁30bへ冷媒が流れることを禁止する。従って、冷房用統合弁30bの第1流出口32から流出した気相冷媒は、第1三方継手15aを介して、圧縮機11の中間圧ポート11bへ導かれる。
【0070】
一方、冷房用統合弁30bの第2流出口33には、冷媒配管を介して、室内蒸発器20の冷媒入口側が接続されている。室内蒸発器20は、後述する室内空調ユニット50の空調ケーシング51内に配置されている。
【0071】
室内蒸発器20は、第1冷房用膨張弁14bにて減圧された低圧冷媒と室内送風機52から送風された送風空気とを熱交換させ、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させることによって送風空気を冷却する。室内蒸発器20は冷却用熱交換器であり、車室全体を対象とした冷房に係る主蒸発器である。又、室内蒸発器20は低温側構成機器の一例である。
【0072】
室内蒸発器20の冷媒出口には、冷媒配管を介して、蒸発圧力調整弁21の入口側が接続されている。蒸発圧力調整弁21は、その上流側の冷媒圧力を予め定めた基準圧力以上に維持する機能を果たす。換言すると、蒸発圧力調整弁21は、室内蒸発器20における冷媒蒸発圧力を、基準圧力以上に維持する機能を果たす。蒸発圧力調整弁21は低温側構成機器の一例である。
【0073】
蒸発圧力調整弁21は、室内蒸発器20の出口側冷媒の圧力の上昇に伴って、弁開度を増加させる機械式の可変絞り機構で構成されている。さらに、第1実施形態の蒸発圧力調整弁21は、室内蒸発器20における冷媒蒸発温度を、室内蒸発器20の着霜を抑制可能な着霜抑制温度(第1実施形態では、1℃)以上に維持している。
【0074】
蒸発圧力調整弁21の出口は、冷媒配管を介して、接続モジュール80の第9接続口83iに接続されている。従って、蒸発圧力調整弁21から流出した冷媒は、接続モジュール80内部にて、他の冷媒流路82に合流する。
【0075】
図3に示すように、接続モジュール80の第5接続口83eには、冷媒配管を介して、第2冷房用膨張弁14cの流入口側が接続されている。第2冷房用膨張弁14cは、接続モジュール80の第5接続口83eから流出した冷媒を低圧冷媒となるまで減圧させる減圧部である。第2冷房用膨張弁14cの流出口側には、冷媒配管を介して、後席側空調ユニット55の後席側蒸発器23の冷媒入口が接続されている。
【0076】
第1実施形態では、第2冷房用膨張弁14cとして、機械的機構で構成された温度式膨張弁が採用されている。より具体的には、第2冷房用膨張弁14cは、後席側蒸発器23の出口側冷媒の温度および圧力に応じて変形する変形部材(具体的には、ダイヤフラム)を有する感温部と、変形部材の変形に応じて変位して絞り開度を変化させる弁体部とを有している。
【0077】
これにより、第2冷房用膨張弁14cでは、後席側蒸発器23の出口側の冷媒の過熱度が予め定めた基準過熱度(第1実施形態では、5℃)に近づくように、絞り開度を変化させる。ここで、機械的機構とは、電力の供給を必要とすることなく、流体圧力による荷重や弾性部材による荷重等によって作動する機構を意味している。
【0078】
後席側蒸発器23は、第2冷房用膨張弁14cで減圧された低圧冷媒と、後席側空調ユニット55から車室の後席へ供給される送風空気との熱交換によって低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させることによって送風空気を冷却する蒸発器である。即ち、後席側蒸発器23は、車室の後席側を空調対象空間とした空調動作に用いられる。
【0079】
後席側蒸発器23は、室内蒸発器20に対して低圧冷媒が流通する場合に、低圧冷媒が流通する副蒸発器である。後席側蒸発器23を通過する冷媒流量は、室内蒸発器20を通過する冷媒流量よりも少なくなるように構成されている。後席側蒸発器23は低温側構成機器の一例である。
【0080】
後席側蒸発器23の冷媒出口側には、冷媒配管を介して、接続モジュール80の第8接続口83hが接続されている。従って、後席側蒸発器23の冷媒出口から流出した冷媒は、接続モジュール80内部にて、他の冷媒流路82に合流する。
【0081】
そして、接続モジュール80の第6接続口83fには、チラー24の冷媒入口側が接続されている。チラー24は、冷却用膨張弁14dにて減圧された低圧冷媒を流通させる冷媒通路と、低温側熱媒体回路45を循環する低温側熱媒体を流通させる水通路とを有している。低温側熱媒体回路45の詳細については後述する。
【0082】
チラー24は、冷媒通路を流通する低圧冷媒と、水通路を流通する低温側熱媒体とを熱交換させて、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させることで、低温側熱媒体を冷却する。チラー24は、低圧冷媒を低温側熱媒体と熱交換させて蒸発させる蒸発器である。従って、チラー24は低温側構成機器に相当する。
【0083】
チラー24を通過する冷媒流量は、後述する暖房モードにて室外熱交換器17を通過する冷媒流量、室内蒸発器20を通過する冷媒流量よりも少ない。チラー24の冷媒通路の流出口には、接続モジュール80の第7接続口83gが接続されている。
【0084】
接続モジュール80の内部において、第7接続口83gから伸びる冷媒流路82には、第8接続口83h、第9接続口83i、第10接続口83jが配置されている。そして、第7接続口83gから伸びる冷媒流路82における下流側の端部には、第11接続口83kが配置されている。
【0085】
従って、第7接続口83gから流出した冷媒は、第8接続口83hにて、後席側蒸発器23から流出した冷媒と合流し、第11接続口83kへ向かって流れる。又、第7接続口83gから流出した冷媒は、第9接続口83iにおいて、室内蒸発器20、蒸発圧力調整弁21を通過した冷媒と合流し、第11接続口83kへ向かって流れる。更に、第7接続口83gから流出した冷媒は、第10接続口83jにて、室外熱交換器17から流出して暖房用流路16bを通過した冷媒と合流し、第11接続口83kへ向かって流れる。
【0086】
接続モジュール80の第11接続口83kには、アキュムレータ22の入口側が接続されている。アキュムレータ22は、内部に流入した冷媒の気液を分離して、分離された液相冷媒をサイクル内の余剰冷媒として貯える貯液部である。アキュムレータ22は低温側構成機器の一例である。アキュムレータ22の気相冷媒出口には、冷媒配管を介して、圧縮機11の吸入ポート11a側が接続されている。
【0087】
第1実施形態に係る冷凍サイクル10では、第3流路接続部13cと第11接続口83kの間において、室内蒸発器20を通過する経路と、後席側蒸発器23を通過する径路と、チラー24を通過する経路とが互いに並列に接続されている。従って、室内蒸発器20を用いた車室全体の冷房と、後席側蒸発器23を用いた車室後席部分の冷房と、チラー24を用いたバッテリ48の冷却を選択的に実現することができる。
【0088】
次に、車両用空調装置1を構成する高温側熱媒体回路40について説明する。高温側熱媒体回路40は、高温側熱媒体を循環させる熱媒体循環回路である。高温側熱媒体としては、エチレングリコールを含む溶液、不凍液等を採用することができる。高温側熱媒体回路40には、水冷媒熱交換器12の水通路、高温側ポンプ41、ヒータコア42等が配置されている。
【0089】
高温側ポンプ41は、高温側熱媒体を水冷媒熱交換器12の水通路の入口側へ圧送する水ポンプである。高温側ポンプ41は、空調制御装置60から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、圧送能力)が制御される電動ポンプである。
【0090】
そして、水冷媒熱交換器12の水通路の出口には、ヒータコア42の熱媒体入口側が接続されている。ヒータコア42は、水冷媒熱交換器12にて加熱された高温側熱媒体と室内蒸発器20を通過した送風空気とを熱交換させて、送風空気を加熱する熱交換器である。ヒータコア42は、室内空調ユニット50の空調ケーシング51内に配置されている。ヒータコア42の熱媒体出口には、高温側ポンプ41の吸入口側が接続されている。
【0091】
つまり、第1実施形態では、水冷媒熱交換器12及び高温側熱媒体回路40の各構成機器によって、圧縮機11から吐出された冷媒を熱源として送風空気を加熱する加熱部が構成されている。
【0092】
続いて、車両用空調装置1を構成する低温側熱媒体回路45について説明する。低温側熱媒体回路45は、低温側熱媒体を循環させる熱媒体循環回路である。低温側熱媒体としては、高温側熱媒体と同様の流体を採用することができる。
【0093】
低温側熱媒体回路45には、チラー24の水通路、低温側ポンプ46、バッテリ冷却部47等が配置されている。低温側ポンプ46は、低温側熱媒体をチラー24の水通路の入口側へ圧送する水ポンプである。低温側ポンプ46の基本的構成は、高温側ポンプ41と同様である。
【0094】
チラー24の水通路の出口には、バッテリ冷却部47の入口側が接続されている。バッテリ冷却部47は、バッテリ48を形成する複数の電池セルに接触するように配置された金属製の複数の熱媒体流路を有している。そして、バッテリ冷却部47は、熱媒体流路を流通する低温側熱媒体と電池セルとを熱交換させることによって、バッテリ48を冷却する熱交換部である。
【0095】
このようなバッテリ冷却部47は、積層配置された電池セル同士の間に熱媒体流路を配置することによって形成すればよい。また、バッテリ冷却部47は、バッテリ48に一体的に形成されていてもよい。例えば、積層配置された電池セルを収容する専用ケースに熱媒体流路を設けることによって、バッテリ48に一体的に形成されていてもよい。
【0096】
次に、室内空調ユニット50について説明する。室内空調ユニット50は、車室内を全体的に空調するために適切な温度に調整された送風空気を車室内の適切な箇所へ吹き出すように構成されている。室内空調ユニット50は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されている。
【0097】
室内空調ユニット50は、図3に示すように、送風空気の空気通路を形成する空調ケーシング51内に、室内送風機52、室内蒸発器20、ヒータコア42等を収容している。空調ケーシング51は、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。
【0098】
空調ケーシング51における空気流れの最上流側には、内外気切替装置53が配置されている。内外気切替装置53は、空調ケーシング51内へ内気(すなわち車室内空気)と外気(すなわち車室外空気)とを切替導入する。
【0099】
内外気切替装置53は、空調ケーシング51内へ内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整して、内気の導入風量と外気の導入風量との導入割合を変化させる。内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、空調制御装置60から出力される制御信号によって制御される。
【0100】
内外気切替装置53の空気流れ下流側には、室内送風機52が配置されている。室内送風機52は、遠心多翼ファンを電動モータにて駆動する電動送風機によって構成されている。室内送風機52は、内外気切替装置53を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する。そして、室内送風機52の送風能力(すなわち回転数)は、空調制御装置60から出力される制御電圧によって制御される。
【0101】
室内送風機52の空気流れ下流側には、室内蒸発器20、ヒータコア42が、空気流れ方向に、この順に配置されている。室内蒸発器20は、ヒータコア42よりも空気流れ上流側に配置されている。
【0102】
空調ケーシング51内における室内蒸発器20の空気流れ下流側であって、かつヒータコア42の空気流れ上流側には、エアミックスドア54が配置されている。エアミックスドア54は、室内蒸発器20通過後の空気のうち、ヒータコア42を通過する空気と、ヒータコア42をバイパスして流れる空気との風量割合を調整する風量割合調整部である。
【0103】
エアミックスドア54は、エアミックスドア用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、空調制御装置60から出力される制御信号によって制御される。
【0104】
ヒータコア42の空気流れ下流側には、混合空間が設けられている。混合空間は、ヒータコア42を通過した温風と、ヒータコア42をバイパスして流れた冷風とを混合させるための空間である。
【0105】
空調ケーシング51における空気流れの下流部には、混合空間にて混合された空気(即ち、空調風)を、空調対象空間である車室内へ吹き出すための開口部が配置されている。空調ケーシング51の開口部としては、フェイス開口部、フット開口部およびデフロスタ開口部(いずれも図示せず)が設けられている。
【0106】
フェイス開口部は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための開口部である。フット開口部は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すための開口部である。デフロスタ開口部は、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すための開口部である。
【0107】
フェイス開口部、フット開口部およびデフロスタ開口部は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)に接続されている。
【0108】
エアミックスドア54が、ヒータコア42を通過させる空気とヒータコア42をバイパスさせる空気との風量割合を調整することによって、混合空間にて混合される空調風の温度が調整される。これにより、各吹出口から車室内へ吹き出される空調風の温度が調整されることになる。
【0109】
フェイス開口部、フット開口部およびデフロスタ開口部の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイスドア、フットドアおよびデフロスタドアが配置されている。フェイスドアは、フェイス開口部の開口面積を調整する。フットドアは、フット開口部の開口面積を調整する。デフロスタドアは、デフロスタ開口部の開口面積を調整する。
【0110】
フェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替装置である。これらのドアは、リンク機構等を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに連結されて連動して回転操作される。この電動アクチュエータは、空調制御装置60から出力される制御信号によって制御される。
【0111】
吹出口モード切替装置によって切り替えられる吹出口モードとしては、具体的に、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード等がある。
【0112】
フェイスモードは、フェイス吹出口を全開としてフェイス吹出口から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。バイレベルモードは、フェイス吹出口とフット吹出口の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。フットモードは、フット吹出口を全開にすると共にデフロスタ吹出口を小開度だけ開口して、フット吹出口から主に空気を吹き出す吹出口モードである。
【0113】
続いて、車両用空調装置1を構成する後席側空調ユニット55について説明する。後席側空調ユニット55は、車室内の後部において、例えば後席の側方に設けられている。後席側空調ユニット55は、空気通路を形成する後席側ケーシング56を有している。
【0114】
後席側ケーシング56の上流部には、後席側送風機57が配置されている。後席側送風機57は、図示しない内外気切替箱から内気または外気を空調空気として送風する。
【0115】
後席側ケーシング56における後席側送風機57の空気流れ下流側には、後席側蒸発器23が配置されている。上述したように、後席側蒸発器23は、車室の後席側に供給される送風空気を冷却する冷却用熱交換器であり、副蒸発器の一例である。
【0116】
次に、第1実施形態の電気制御部の概要について、図5を参照して説明する。空調制御装置60は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。そして、空調制御装置60は、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、その出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。
【0117】
空調制御装置60の出力側には、車両用空調装置1における制御対象機器が接続されている。制御対象機器には、圧縮機11、暖房用膨張弁14a、第1冷房用膨張弁14b、冷却用膨張弁14d、外気ファン17a、第1開閉弁18a、第2開閉弁18b、第3開閉弁18cが含まれている。
【0118】
更に、制御対象機器は、暖房用統合弁30a、冷房用統合弁30b、室内送風機52、後席側送風機57、高温側ポンプ41、低温側ポンプ46等を含んでいる。上述したように、暖房用統合弁30aにおける制御対象は、気相側開閉弁35、迂回流路側開閉弁38である。同様に、冷房用統合弁30bにおける制御対象も、気相側開閉弁35、迂回流路側開閉弁38である。
【0119】
そして、空調制御装置60の入力側には、図5に示すように、各種センサ群が接続されている。従って、空調制御装置60には、各種センサ群の検出信号がそれぞれ入力される。各種センサ群は、内気温センサ61、外気温センサ62、日射量センサ63、第1冷媒温度センサ64a、第2冷媒温度センサ64b、第3冷媒温度センサ64cを含んでいる。又、各種センサ群には、蒸発器温度センサ66、冷媒圧力センサ65、空調風温度センサ67、高温側熱媒体温度センサ68a、低温側熱媒体温度センサ68b、バッテリ温度センサ69が含まれている。
【0120】
内気温センサ61は、車室内温度(内気温)Trを検出する内気温検出部である。外気温センサ62は、車室外温度(外気温)Tamを検出する外気温検出部である。日射量センサ63は、車室内へ照射される日射量Tsを検出する日射量検出部である。
【0121】
第1冷媒温度センサ64aは、水冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した高圧冷媒の温度を検出する第1冷媒温度検出部である。第2冷媒温度センサ64bは、室外熱交換器17の冷媒出口側に配置されて、室外熱交換器17から流出した冷媒の温度を検出する第2冷媒温度検出部である。従って、室外熱交換器17から流出した冷媒を、暖房用流路16bを介してアキュムレータ22へ流入させる際の第2冷媒温度は、アキュムレータ22へ流入する冷媒の温度となる。
【0122】
第3冷媒温度センサ64cは、チラー24の冷媒通路の出口側に配置されて、チラー24の冷媒通路から流出した冷媒の温度を検出する第3冷媒温度検出部である。冷媒圧力センサ65は、水冷媒熱交換器12から流出した冷媒の高圧圧力Pdを検出する冷媒圧力検出部である。蒸発器温度センサ66は、室内蒸発器20における冷媒蒸発温度(蒸発器温度)Tefinを検出する蒸発器温度検出部である。第1実施形態の蒸発器温度センサ66は、具体的に、室内蒸発器20の熱交換フィンの温度を検出している。
【0123】
空調風温度センサ67は、混合空間から車室内へ送風される送風空気温度TAVを検出する空調風温度検出部である。
【0124】
高温側熱媒体温度センサ68aは、水冷媒熱交換器12の水通路から流出してヒータコア42へ流入する高温側熱媒体の温度である高温側熱媒体温度を検出する高温側熱媒体温度検出部である。電池側熱媒体温度センサ67bは、チラー24の水通路から流出してバッテリ冷却部47へ流入する低温側熱媒体の温度である低温側熱媒体温度を検出する低温側熱媒体温度検出部である。
【0125】
バッテリ温度センサ69は、バッテリ温度(即ち、バッテリ48の温度)を検出するバッテリ温度検出部である。バッテリ温度センサ69は、複数の検出部を有して構成され、バッテリ48の複数の箇所の温度を検出している。この為、空調制御装置60では、バッテリ48の各部の温度差を検出することもできる。更に、バッテリ温度として、複数の検出部による検出値の平均値が採用される。
【0126】
又、空調制御装置60の入力側には、図5に示すように、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル70が接続されている。従って、空調制御装置60には、操作パネル70に設けられた各種操作スイッチからの操作信号が入力される。
【0127】
操作パネル70に設けられた各種操作スイッチには、例えば、オートスイッチ、エアコンスイッチ、風量設定スイッチ、温度設定スイッチ、吹出モード切替スイッチ等が含まれている。オートスイッチは、車両用空調装置1の自動制御運転を設定あるいは解除する際に操作される。エアコンスイッチは、室内蒸発器20等で送風空気の冷却を行うことを要求する際に操作される。
【0128】
風量設定スイッチは、室内送風機52等の風量をマニュアル設定する際に操作される。温度設定スイッチは、車室内の目標温度Tsetを設定する際に操作される。そして、吹出モード切替スイッチは、吹出モードをマニュアル設定する際に操作される。
【0129】
なお、第1実施形態の空調制御装置60は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御部が一体に構成されたものである。つまり、空調制御装置60のうち、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部を構成している。
【0130】
例えば、空調制御装置60のうち、圧縮機11の回転数を制御する構成は、吐出能力制御部を構成している。又、空調制御装置60のうち、減圧部である暖房用膨張弁14a、第1冷房用膨張弁14b、冷却用膨張弁14dの絞り開度を制御する構成は、絞り開度制御部を構成している。
【0131】
そして、暖房用膨張弁14a、第1冷房用膨張弁14b、冷却用膨張弁14d、第1開閉弁18a、第2開閉弁18b、第3開閉弁18c、暖房用統合弁30a、冷房用統合弁30bの作動を制御する構成は、回路切替制御部を構成している。
【0132】
次に、上記構成における第1実施形態の作動について説明する。前述の如く、第1実施形態の車両用空調装置1では、車室内の空調運転として、冷房、除湿暖房、および暖房を行うことができる。そして、車両用空調装置1は、車室内の空調を行うために、冷房モード、直列除湿暖房モード、並列除湿暖房モード、および暖房モードでの運転を実行することができる。
【0133】
冷凍サイクル10の各運転モードの切り替えは、空調制御プログラムが実行されることによって行われる。空調制御プログラムは、操作パネル70のオートスイッチが投入(ON)されて、自動制御運転が設定された際に実行される。
【0134】
空調制御プログラムのメインルーチンでは、上述の空調制御用のセンサ群の検出信号および各種空調操作スイッチからの操作信号を読み込む。そして、読み込んだ検出信号および操作信号の値に基づいて、車室内へ吹き出す吹出空気の目標温度である目標吹出温度TAOを算出する。
【0135】
具体的には、目標吹出温度TAOは、以下数式F1によって算出される。
TAO=Kset×Tset-Kr×Tr-Kam×Tam-Ks×As+C…(F1)
なお、Tsetは温度設定スイッチによって設定された車室内の目標温度(車室内設定温度)、Trは内気温センサ61によって検出された内気温、Tamは外気温センサ62によって検出された外気温、Tsは日射量センサ63によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0136】
そして、操作パネル70のエアコンスイッチが投入された状態で、目標吹出温度TAOが予め定めた冷房基準温度αよりも低くなっている場合には、運転モードが冷房モードに切り替えられる。
【0137】
また、操作パネル70のエアコンスイッチが投入された状態で、目標吹出温度TAOが冷房基準温度α以上になっており、かつ、外気温Tamが予め定めた除湿暖房基準温度βよりも高くなっている場合には、運転モードが直列除湿暖房モードに切り替えられる。
【0138】
また、操作パネル70のエアコンスイッチが投入された状態で、目標吹出温度TAOが冷房基準温度α以上になっており、かつ、外気温Tamが除湿暖房基準温度β以下になっている場合には、運転モードが並列除湿暖房モードに切り替えられる。
【0139】
また、エアコンスイッチの冷房スイッチが投入されていない場合には、運転モードが暖房モードに切り替えられる。
【0140】
このため、冷房モードは、主に夏季のように比較的外気温が高い場合に実行される。直列除湿暖房モードは、主に春季あるいは秋季に実行される。並列除湿暖房モードは、主に早春季あるいは晩秋季のように直列除湿暖房モードよりも高い加熱能力で送風空気を加熱する必要のある場合に実行される。暖房モードは、主に冬季の低外気温時に実行される。以下に各運転モードにおける作動を説明する。
【0141】
(a)冷房モード
冷房モードでは、空調制御装置60が、暖房用膨張弁14a及び冷却用膨張弁14dを全閉状態とし、第1冷房用膨張弁14bを絞り状態にする。また、空調制御装置60は、第1開閉弁18aを開き、第2開閉弁18b及び第3開閉弁18cを閉じる。そして、空調制御装置60は、冷房用統合弁30bの気相側開閉弁35を開き、迂回流路側開閉弁38を閉じる。
【0142】
冷房モードにおいて、冷媒は、圧縮機11の吐出ポート11c、水冷媒熱交換器12、第1開閉弁18a、第1冷房用膨張弁14b、冷房用統合弁30b、室内蒸発器20、蒸発圧力調整弁21、アキュムレータ22、圧縮機11の吸入ポート11aの順に流れる。
【0143】
ここで、冷房モードの冷房用統合弁30bでは、気相側開閉弁35が開いているので、気液分離器34にて分離された気相冷媒は、第2逆止弁19bを介して、圧縮機11の中間圧ポート11bへ導かれる。即ち、冷房モードでは、圧縮機11は2段昇圧式の圧縮機として機能し、いわゆるガスインジェクションサイクルが構成される。
【0144】
又、冷房モードの冷房用統合弁30bにおいて、迂回流路側開閉弁38が閉じているので、気液分離器34から流出した液相冷媒は、固定絞り36を通過して減圧される。
【0145】
冷房モードでは、空調制御装置60は、このサイクル構成で、出力側に接続された各種制御対象機器へ出力される制御信号等を適宜決定し、決定された制御信号等を各種制御対象機器へ出力する。
【0146】
従って、冷房モードの冷凍サイクル10では、水冷媒熱交換器12を凝縮器として機能させ、室内蒸発器20を蒸発器として機能させる冷凍サイクルが構成される。その結果、冷房モードでは、室内蒸発器20にて冷却された送風空気を車室内へ吹き出すことによって、車室全体の冷房を行うことができる。
【0147】
そして、上述した冷房モードにおいて車室後席側の冷房を行う場合、空調制御装置60は、冷房モードにて説明した状態から第3開閉弁18cを開くと共に、後席側送風機57を作動させる。この結果、第1開閉弁18aから流出した冷媒は、第3開閉弁18cを介して、第2冷房用膨張弁14cにて減圧される。第2冷房用膨張弁14cから流出した低圧冷媒は、後席側蒸発器23にて、後席側送風機57で送風された送風空気と熱交換して送風空気を冷却する。これにより、冷房モードにおける車室後席側の空調を実現することができる。
【0148】
更に、上述した冷房モードにおいて、バッテリ48の冷却を行う場合、空調制御装置60は、上述した冷房モードの状態から冷却用膨張弁14dを絞り状態にすると共に、低温側ポンプ46を予め定められた圧送能力で作動させる。
【0149】
この結果、第1開閉弁18aから流出した冷媒は、冷却用膨張弁14dにて減圧されて、チラー24の冷媒通路に流入する。チラー24に流入した低圧冷媒は、水通路を循環する低温側熱媒体と熱交換して、低温側熱媒体を冷却する。そして、チラー24から流出した低温側熱媒体は、バッテリ冷却部47にてバッテリ48の各電池セルと熱交換して、バッテリ48を冷却する。これにより、冷房モードにおけるバッテリ48の冷却を実現することができる。
【0150】
(b)直列除湿暖房モード
直列除湿暖房モードでは、空調制御装置60が、暖房用膨張弁14a及び第1冷房用膨張弁14bを絞り状態とし、冷却用膨張弁14dを全閉状態にする。また、空調制御装置60は、第1開閉弁18a、第2開閉弁18b及び第3開閉弁18cを閉じる。
【0151】
そして、空調制御装置60は、暖房用統合弁30aの気相側開閉弁35を閉じ、迂回流路側開閉弁38を開く。同様に、冷房用統合弁30bについても、気相側開閉弁35を閉じ、迂回流路側開閉弁38を開く。
【0152】
これにより、直列除湿暖房モードでは、圧縮機11の吐出ポート11c、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁14a、暖房用統合弁30a、室外熱交換器17、第1逆止弁19aの順に冷媒が流れる。そして、第1逆止弁19aから流出した冷媒は、第1冷房用膨張弁14b、冷房用統合弁30b、室内蒸発器20、蒸発圧力調整弁21、アキュムレータ22、圧縮機11の吸入ポート11aの順に流れる。
【0153】
即ち、直列除湿暖房モードでは、室外熱交換器17と室内蒸発器20が冷媒流れに対して直列的に接続された経路で循環する冷凍サイクルが構成される。又、直列除湿暖房モードの冷凍サイクル10では、水冷媒熱交換器12を凝縮器として機能させ、室内蒸発器20を蒸発器として機能させる冷凍サイクルが構成される。
【0154】
直列除湿暖房モードでは、暖房用統合弁30a及び冷房用統合弁30bの何れについても、気相側開閉弁35が閉じているので、気液分離器34で分離された気相冷媒が圧縮機11の中間圧ポート11bに導かれることはない。即ち、直列除湿暖房モードでは、圧縮機11は単段昇圧式の圧縮機として機能する。
【0155】
直列除湿暖房モードの暖房用統合弁30a及び冷房用統合弁30bでは、何れの迂回流路側開閉弁38も開いている為、気液分離器34から流出した液相冷媒は、固定絞り36を通過することなく、殆ど減圧されない状態で第2流出口33から流出する。
【0156】
直列除湿暖房モードでは、空調制御装置60は、このサイクル構成で、出力側に接続された各種制御対象機器へ出力される制御信号等を適宜決定し、決定された制御信号等を各種制御対象機器へ出力する。例えば、空調制御装置60は、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、暖房用膨張弁14aの絞り開度に対する第1冷房用膨張弁14bの絞り開度の開度比を増加させるように制御信号を決定する。
【0157】
これにより、室外熱交換器17における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも高い場合には、室外熱交換器17を凝縮器として機能させる冷凍サイクルが構成される。また、室外熱交換器17における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも低い場合には、室外熱交換器17を蒸発器として機能させる冷凍サイクルが構成される。
【0158】
直列除湿暖房モードにて、室外熱交換器17における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも高い場合には、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、室外熱交換器17の冷媒の飽和温度を低下させて室外熱交換器17における冷媒の放熱量を減少させることができる。これにより、水冷媒熱交換器12における冷媒の放熱量を増加させて、ヒータコア42における送風空気の加熱能力を向上させることができる。
【0159】
又、直列除湿暖房モードにて、室外熱交換器17における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも低い場合、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、室外熱交換器17の冷媒の飽和温度を低下させて室外熱交換器17における冷媒の吸熱量を増加させることができる。これにより、水冷媒熱交換器12における冷媒の放熱量を増加させて、ヒータコア42における送風空気の加熱能力を向上させることができる。
【0160】
その結果、直列除湿暖房モードでは、室内蒸発器20にて冷却されて除湿された送風空気を、ヒータコア42にて再加熱することができる。そして、再加熱された送風空気を車室内へ吹き出すことによって、車室全体に対する除湿暖房を行うことができる。更に、暖房用膨張弁14aおよび第1冷房用膨張弁14bの絞り開度を調整することによって、水冷媒熱交換器12の加熱能力(即ち、ヒータコア42による送風空気の加熱能力)を調整できる。
【0161】
そして、直列除湿暖房モードにおいて車室後席側の空調を行う場合、空調制御装置60は、上述した直列除湿暖房モードの状態から第3開閉弁18cを開くと共に、後席側送風機57を作動させる。この結果、直列除湿暖房モードにおける車室後席側の空調を実現することができる。
【0162】
更に、直列除湿暖房モードにおいて、バッテリ48の冷却を行う場合、空調制御装置60は、上述した直列除湿暖房モードの状態から、冷却用膨張弁14dを絞り状態にすると共に、低温側ポンプ46を予め定められた圧送能力で作動させる。これにより、チラー24にて冷却された低温側熱媒体を用いて、直列除湿暖房モードにおけるバッテリ48の冷却を実現することができる。
【0163】
(c)並列除湿暖房モード
並列除湿暖房モードでは、空調制御装置60が、暖房用膨張弁14a及び第1冷房用膨張弁14bをそれぞれ絞り状態とし、冷却用膨張弁14dを全閉状態とする。また、空調制御装置60は、第1開閉弁18a及び第2開閉弁18bを開き、第3開閉弁18cを閉じる。
【0164】
そして、空調制御装置60は、暖房用統合弁30aの気相側開閉弁35を閉じ、迂回流路側開閉弁38を開く。同様に、冷房用統合弁30bについても、気相側開閉弁35を閉じ、迂回流路側開閉弁38を開く。
【0165】
これにより、並列除湿暖房モードでは、圧縮機11の吐出ポート11c、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁14a、暖房用統合弁30a、室外熱交換器17、第2開閉弁18b、アキュムレータ22、圧縮機11の吸入ポート11aの順に冷媒が循環する。
【0166】
同時に、圧縮機11の吐出ポート11c、水冷媒熱交換器12、第1開閉弁18a、第1冷房用膨張弁14b、冷房用統合弁30b、室内蒸発器20、蒸発圧力調整弁21、アキュムレータ22、圧縮機11の吸入ポート11aの順に冷媒が循環する。
即ち、並列除湿暖房モードでは、室外熱交換器17と室内蒸発器20が冷媒流れに対して並列的に接続された経路で循環する冷凍サイクルが構成される。そして、並列除湿暖房モードの冷凍サイクル10では、水冷媒熱交換器12を凝縮器として機能させ、室外熱交換器17および室内蒸発器20を蒸発器として機能させる冷凍サイクルが構成される。
【0167】
並列除湿暖房モードの暖房用統合弁30a及び冷房用統合弁30bでは、何れも気相側開閉弁35が閉じているので、気液分離器34で分離された気相冷媒が圧縮機11の中間圧ポート11bに導かれることはない。即ち、並列除湿暖房モードでは、圧縮機11は単段昇圧式の圧縮機として機能する。
【0168】
又、並列除湿暖房モードの暖房用統合弁30a及び冷房用統合弁30bでは、何れの迂回流路側開閉弁38も開いている為、気液分離器34から流出した液相冷媒は、固定絞り36を通過することなく、殆ど減圧されない状態で第2流出口33から流出する。
【0169】
並列除湿暖房モードでは、空調制御装置60は、このサイクル構成で、出力側に接続された各種制御対象機器へ出力される制御信号等を適宜決定し、決定された制御信号等を各種制御対象機器へ出力する。
【0170】
例えば、空調制御装置60は、高圧圧力Pdに基づいて、COPが極大値に近づくように、暖房用膨張弁14aおよび第1冷房用膨張弁14bへ出力される制御信号を決定する。この際、空調制御装置60は、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、暖房用膨張弁14aの絞り開度に対する第1冷房用膨張弁14bの絞り開度の開度比を増加させるように制御信号を決定する。
【0171】
その結果、並列除湿暖房モードでは、室内蒸発器20にて冷却されて除湿された送風空気を、ヒータコア42にて再加熱することができる。そして、再加熱された送風空気を車室内へ吹き出すことによって、車室全体に対する除湿暖房を行うことができる。さらに、暖房用膨張弁14aおよび第1冷房用膨張弁14bの絞り開度を調整することによって、水冷媒熱交換器12の放熱量を調整して、ヒータコア42の加熱能力を調整できる。
【0172】
また、並列除湿暖房モードでは、室外熱交換器17における冷媒の蒸発温度を、室内蒸発器20における冷媒の蒸発温度よりも低下させることができる。従って、並列除湿暖房モードでは、直列除湿暖房モードよりも室外熱交換器17における冷媒の吸熱量を増加させて、送風空気の加熱能力を増加させることができる。
【0173】
そして、並列除湿暖房モードにおいて車室後席側の空調を行う場合、空調制御装置60は、上述した並列除湿暖房モードの状態から第3開閉弁18cを開くと共に、後席側送風機57を作動させる。この結果、並列除湿暖房モードにおける車室後席側の空調を実現することができる。
【0174】
更に、並列除湿暖房モードにおいて、バッテリ48の冷却を行う場合、空調制御装置60は、上述した並列除湿暖房モードの状態から、冷却用膨張弁14dを絞り状態にすると共に、低温側ポンプ46を予め定められた圧送能力で作動させる。これにより、チラー24にて冷却された低温側熱媒体を用いて、並列除湿暖房モードにおけるバッテリ48の冷却を実現することができる。
【0175】
(d)暖房モード
暖房モードでは、空調制御装置60が、暖房用膨張弁14aを絞り状態とし、第1冷房用膨張弁14b及び冷却用膨張弁14dを全閉状態とする。また、空調制御装置60は、第1開閉弁18a及び第3開閉弁18cを閉じ、第2開閉弁18bを開く。そして、空調制御装置60は、暖房用統合弁30aの気相側開閉弁35を開き、迂回流路側開閉弁38を閉じる。
【0176】
これにより、暖房モードでは、圧縮機11の吐出ポート11c、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁14a、暖房用統合弁30a、室外熱交換器17、第2開閉弁18b、アキュムレータ22、圧縮機11の吸入ポート11aの順に冷媒が循環する。従って、暖房モードの冷凍サイクル10では、水冷媒熱交換器12を放熱器として機能させ、室外熱交換器17を蒸発器として機能させるガスインジェクションサイクルが構成される。
【0177】
ここで、暖房モードの暖房用統合弁30aでは、気相側開閉弁35が開いているので、気液分離器34にて分離された気相冷媒は圧縮機11の中間圧ポート11bへ導かれる。即ち、暖房モードでは、圧縮機11は2段昇圧式の圧縮機として機能し、いわゆるガスインジェクションサイクルが構成される。
【0178】
又、暖房モードの暖房用統合弁30aにおいて、迂回流路側開閉弁38が閉じているので、気液分離器34から流出した液相冷媒は、固定絞り36を通過して減圧される。
【0179】
このサイクル構成で、空調制御装置60は、出力側に接続された各種制御対象機器へ出力される制御信号等を適宜決定し、決定された制御信号等を各種制御対象機器へ出力する。その結果、暖房モードでは、水冷媒熱交換器12で放熱された熱を用いて加熱された送風空気を車室内へ吹き出すことによって、車室全体の暖房を行うことができる。
【0180】
上述した暖房モードにおいて、バッテリ48の冷却を行う場合、空調制御装置60は、上述した暖房モードの状態から、第1開閉弁18aを開くと共に、冷却用膨張弁14dを絞り状態にする。更に、空調制御装置60は、低温側ポンプ46を予め定められた圧送能力で作動させる。
【0181】
この結果、上述した暖房モードにおける冷媒の循環と同時に、圧縮機11の吐出ポート11c、水冷媒熱交換器12、第1開閉弁18a、冷却用膨張弁14d、チラー24、アキュムレータ22、圧縮機11の吸入ポート11aの順に冷媒が循環する。即ち、室外熱交換器17とチラー24が冷媒流れに対して並列的に接続された経路で循環する冷凍サイクルが構成される。
【0182】
この結果、第1開閉弁18aから流出した冷媒は、冷却用膨張弁14dにて減圧されて、チラー24の冷媒通路に流入する。チラー24に流入した低圧冷媒は、水通路を循環する低温側熱媒体と熱交換して、低温側熱媒体を冷却する。そして、チラー24から流出した低温側熱媒体は、バッテリ冷却部47にてバッテリ48の各電池セルと熱交換して、バッテリ48を冷却する。これにより、暖房モードにおけるバッテリ48の冷却を実現することができる。
【0183】
以上の如く、第1実施形態の車両用空調装置1では、車室全体の空調を行うために、冷媒回路を切り替えて各種運転モードでの運転を行うことができる。これにより、車両用空調装置1では車室全体の快適な空調を実現することができる。又、車両用空調装置1によれば、後席側蒸発器23に対する低圧冷媒の流通の有無を切り替えることで、車室全体の空調に加えて、車室後席側における快適な空調を実現することができる。
【0184】
更に、車両用空調装置1によれば、チラー24対する低圧冷媒の流通の有無を切り替えることで、車室全体の空調に加えて、バッテリ48の適切な温度管理を実現することができる。
【0185】
続いて、第1実施形態における接続モジュール80の具体的構成について、図6等を参照して説明する。上述したように、接続モジュール80の本体部81は、金属製の平板状に形成されており、その内部に冷媒流路82を有している。又、本体部81内部の冷媒流路82には、第1接続口83a~第11接続口83k、第1取付部84a~第5取付部84eが接続されている。
【0186】
この為、本体部81は、以下のようにして形成することができる。先ず、第1接続口83a~第11接続口83k、第1取付部84a~第5取付部84eが接続された冷媒流路82等の形状を為す中子を、塩等を用いて形成する。塩等で形成された中子を、平板状に形成された鋳型の所定位置に配置する。
【0187】
その後、中子が配置された鋳型に対して、溶融金属を注入して本体部81を鋳造する。溶融金属が凝固した段階において塩等で形成された中子を溶融させて除去することによって、本体部81の内部に、冷媒流路82、第1接続口83a~第11接続口83k、第1取付部84a~第5取付部84eを形成する。
【0188】
図1図2に示すように、このように構成された平板状の本体部81には、水冷媒熱交換器12、アキュムレータ22、チラー24、暖房用統合弁30a、冷房用統合弁30bが取り付けられる。
【0189】
又、本体部81の上面には、第1取付部84a~第3取付部84cが形成されており、これらを利用して、流体制御機器である暖房用膨張弁14a、第1冷房用膨張弁14b、冷却用膨張弁14dが本体部81に取り付けられている。
【0190】
更に、本体部81の下面には、第4取付部84dが形成されており、本体部81の左側面の下方には、第5取付部84eが形成されている。第4取付部84dを利用して、流体制御機器としての第1開閉弁18aが本体部81に対して取り付けられており、第5取付部84eを利用して、流体制御機器である第3開閉弁18cが本体部81に取り付けられている。
【0191】
ここで、図1図2に示すように、接続モジュール80の本体部81の前面側には、ヒータコア42が取り付けられている。従って、ヒータコア42の流出口に接続される第1接続口83aは、図6に示すように、本体部81の前面側下方において、本体部81内部の冷媒流路82と、本体部81の外部とを接続している。第1接続口83aから伸びる冷媒流路82は、第1取付部84aの下面に接続されている。
【0192】
第1取付部84aは、本体部81の上面が下方に窪んだ凹状に形成されている。第1取付部84aは、暖房用膨張弁14aの外形に従った内部空間を有している。これにより、第1取付部84aに対して、暖房用膨張弁14aを取り付けることができる。
【0193】
そして、第1取付部84aの左側側面は、第2接続口83bへ向かって伸びる冷媒流路82に接続されている。つまり、第1取付部84aは、第1接続口83aと第2接続口83bを接続する冷媒流路82に進入するように形成されている。従って、第1取付部84aに暖房用膨張弁14aを取り付けることで、第1接続口83aと第2接続口83bを接続する冷媒流路82の間に、暖房用膨張弁14aを配置することができる。
【0194】
図6に示すように、第1接続口83aの左側には、下方が開放された第4取付部84dが形成されている。第4取付部84dの右側面には、第1接続口83aと第1取付部84aの下面とを接続する冷媒流路82の間で分岐した冷媒流路82が接続されている。
【0195】
第4取付部84dは、本体部81の下面が上方に窪んだ凹状に形成されている。第4取付部84dは、第1開閉弁18aの外形に従った内部空間を有している。これにより、第4取付部84dに対して、第1開閉弁18aを取り付けることができる。そして、第4取付部84dの上面には、第3接続口83cへ向かって伸びる冷媒流路82が接続されている。
【0196】
第1接続口83aと第1取付部84aの下面とを接続する冷媒流路82の間で分岐して、第4取付部84dを介して、第3接続口83cへ伸びる冷媒流路82は、バイパス流路16aに相当する。
【0197】
そして、第4取付部84dの上面と第3接続口83cとの間において分岐した冷媒流路82は、3つの冷媒流路82に分岐している。3つの冷媒流路82のうちの一つは、本体部81の左側面に形成された第5取付部84eの上面に接続されている。3つの冷媒流路82のうちの他の1つは、本体部81の上面に形成された第2取付部84bの下面に接続されている。そして、3つの冷媒流路82の残りの1つは、本体部81の上面に形成された第3取付部84cの下面に接続されている。
【0198】
第5取付部84eは、本体部81の左側面が右方向に窪んだ凹状に形成されている。第5取付部84eは、第3開閉弁18cの外形に従った内部空間を有している。これにより、第5取付部84eに対して、第3開閉弁18cを取り付けることができる。そして、第5取付部84eの右側面には、第5接続口83eへ向かって伸びる冷媒流路82が接続されている。
【0199】
第2取付部84bは、本体部81の上面における左側部分において、上面が下方に窪んだ凹状に形成されている。第2取付部84bは、第1冷房用膨張弁14bの外形に従った内部空間を有している。これにより、第2取付部84bに対して、第1冷房用膨張弁14bを取り付けることができる。そして、第2取付部84bの右側面には、第4接続口83dに向かって伸びる冷媒流路82が接続されている。
【0200】
そして、第3取付部84cは、本体部81の上面における第2取付部84bと第1取付部84aの間にて、上面が下方に窪んだ凹状に形成されている。第3取付部84cは、冷却用膨張弁14dの外形に従った内部空間を有している。これにより、第3取付部84cに対して冷却用膨張弁14dを取り付けることができる。そして、第3取付部84cの右側面には、第6接続口83fに向かって伸びる冷媒流路82が接続されている。
【0201】
ここで、図1図2に示すように、第1実施形態に係る接続モジュール80では、チラー24は、本体部81の後面に対して取り付けられている。上述したように、第6接続口83fは、チラー24の流入口に接続される入口側接続口である。従って、第6接続口83fは、本体部81の後面側において、本体部81内部の冷媒流路82と、本体部81の外部とを接続している。
【0202】
そして、図6に示すように、第6接続口83fの右側下方には、第7接続口83gが配置されている。第7接続口83gは、チラー24の流出口が接続される出口側接続口である。従って、第7接続口83gは、本体部81の後面側において、本体部81内部の冷媒流路82と、本体部81の外部とを接続している。つまり、チラー24に対する出口側接続口である第7接続口83gは、本体部81における重力方向において、入口側接続口である第6接続口83fよりも下方に配置されている。
【0203】
第7接続口83gから伸びる冷媒流路82は、本体部81における重力方向下方に伸びた後、その伸びる方向を180度変更して、第11接続口83kに向かって上方に伸びている。
【0204】
第11接続口83kは、本体部81の右側面における上部に形成されている。第11接続口83kには、本体部81の右側面に沿って取り付けられるアキュムレータ22の入口側が接続される。
【0205】
そして、第7接続口83gから第11接続口83kへと伸びる冷媒流路82には、第9接続口83i、第10接続口83jが配置されている。第9接続口83iは、室内蒸発器20の流出口側に接続されている。第10接続口83jは、暖房用流路16bを介して、室外熱交換器17の流出口側に接続されている。従って、第9接続口83i、第10接続口83jは、主蒸発器の流出口に接続される主側接続口に相当する。
【0206】
図6に示すように、第7接続口83gから第11接続口83kへと伸びる冷媒流路82において、第9接続口83i、第10接続口83jは、重力方向に関して最も下方となる位置に配置されている。換言すると、第9接続口83i、第10接続口83jは、第7接続口83gよりも下方に配置されている。
【0207】
更に、第7接続口83gから第11接続口83kへと伸びる冷媒流路82には、第8接続口83hが配置されている。第8接続口83hは、冷媒配管を介して、後席側蒸発器23の流出口側が接続される補助側接続口である。図6に示すように、第8接続口83hは、第7接続口83gから第11接続口83kへと向かう冷媒の流れに関して、第9接続口83i及び第10接続口83jよりも下流側に配置されている。
【0208】
尚、第2接続口83b~第5接続口83e、第8接続口83h~第10接続口83jは、本体部81の前面又は背面の何れか一方に向かって開口されている。これらの接続口が開口する向きについては、冷凍サイクル10の構成及び車両レイアウトに応じて適宜変更することができる。
【0209】
ここで、第1実施形態に係る接続モジュール80の冷媒流路82では、冷凍サイクル10の高圧冷媒が流通する冷媒流路82と、高圧冷媒よりも温度の低い冷媒(例えば、低圧冷媒や中間圧冷媒)が流通する冷媒流路82とが混在する。
【0210】
以下の説明では、冷凍サイクル10の高圧冷媒が流通する冷媒流路82を高温側流路82aといい、冷凍サイクル10の低圧冷媒や中間圧冷媒が流通する冷媒流路82を低温側流路82bという。
【0211】
又、車両用空調装置1の運転モードの切り替えに伴い、接続モジュール80の冷媒流路82における高温側流路82aと低温側流路82bは、適宜変更される。この為、接続モジュール80の本体部81の内部において、高温側流路82aと低温側流路82bが隣り合う状態になることが考えられる。
【0212】
この場合、高温側流路82aを流れる高圧冷媒と、低温側流路82bを流れる低圧冷媒等の間で、熱が本体部81を介して伝達されてしまい、相互に影響を及ぼすことが考えられる。特に、高温側流路82aと低温側流路82bとの間の熱の影響によって、冷凍サイクル10の成績係数の低下が懸念される。
【0213】
この点に鑑みて、第1実施形態に係る接続モジュール80の本体部81には、図6に示すように、複数の伝熱抑制部85が形成されている。各伝熱抑制部85は、高温側流路82aと低温側流路82bとの間に配置されており、本体部81よりも熱伝導性が低くなるように形成されている。
【0214】
具体的には、第1実施形態に係る伝熱抑制部85は、高温側流路82aと低温側流路82bとの間において、高温側流路82aと低温側流路82bの何れか一方に沿って伸びる溝状に形成されている。溝状の伝熱抑制部85の内部には、空気が存在する空間が形成される為、伝熱抑制部85は、本体部81よりも熱伝導性を低くすることができる。
【0215】
図6に示すように、第7接続口83gと第11接続口83kを接続する冷媒流路82と、第1接続口83aと第1取付部84aの下面とを接続する冷媒流路82との間には、伝熱抑制部85が配置されている。
【0216】
ここで、第1接続口83aと第1取付部84aの下面とを接続する冷媒流路82は、車両用空調装置1の各運転モードにて説明したように、水冷媒熱交換器12から流出した高圧冷媒が流通する冷媒流路82である為、高温側流路82aに相当する。
【0217】
一方、第7接続口83gと第11接続口83kを接続する冷媒流路82は、室内蒸発器20やチラー24等から流出した低圧冷媒が流れる冷媒流路82であり、低温側流路82bに相当する。
【0218】
従って、この伝熱抑制部85によって、水冷媒熱交換器12から暖房用膨張弁14aへ流れる高圧冷媒と、チラー24や室内蒸発器20からアキュムレータ22へ流れる低圧冷媒との間における本体部81を介した熱の伝達を抑制することができる。
【0219】
又、図6に示すように、第1接続口83aから第1取付部84aへ伸びる冷媒流路82と、第3取付部84cから第6接続口83fへ伸びる冷媒流路82との間にも、伝熱抑制部85が配置されている。
【0220】
暖房モードにてバッテリ48の冷却を行う場合、第1接続口83aから第1取付部84aへ伸びる冷媒流路82は、水冷媒熱交換器12から流出した高圧冷媒が流れる冷媒流路82であり、高温側流路82aに相当する。
【0221】
又、暖房モードにてバッテリ48の冷却を行う場合、第4取付部84dから第6接続口83fへ伸びる冷媒流路82は、冷却用膨張弁14dで減圧された低圧冷媒が流れる冷媒流路である。従って、この冷媒流路82は低温側流路82bに相当する。
【0222】
従って、この伝熱抑制部85によって、水冷媒熱交換器12から暖房用膨張弁14aへ流れる高圧冷媒と、冷却用膨張弁14dからチラー24へ流れる低圧冷媒との間における本体部81を介した熱の伝達を抑制することができる。
【0223】
このように、接続モジュール80によれば、高温側流路82aと低温側流路82bとの間に伝熱抑制部85を配置することによって、高温側流路82a及び低温側流路82bをそれぞれ流れる冷媒に対する熱の影響を抑制することができる。
【0224】
そして、接続モジュール80における各伝熱抑制部85には、それぞれ、変形吸収部86が形成されている。上述したように、伝熱抑制部85は、高温側流路82aと低温側流路82bの間に配置されている。
【0225】
従って、伝熱抑制部85に対して高温側流路82aの側に位置する本体部81は、高温側流路82aを流れる高圧冷媒の熱によって熱膨張する。一方、伝熱抑制部85に対して低温側流路82bの側に位置する本体部81は、低温側流路82bを流れる低圧冷媒によって収縮する。
【0226】
このように、伝熱抑制部85に対する高温側流路82aの側と、低温側流路82bの側で、本体部81の変形態様が異なる為、伝熱抑制部85に対して本体部81の変形に起因する応力が集中してしまうことが考えられる。
【0227】
この点に鑑みて、第1実施形態に係る接続モジュール80では、各伝熱抑制部85に対して、それぞれ、変形吸収部86を形成している。変形吸収部86は、溝状に形成された伝熱抑制部85の内部空間と連通するように形成されており、伝熱抑制部85の角部分に配置されている。
【0228】
変形吸収部86は、円柱状の内部空間を有しており、高温側流路82a側の本体部81の変形と、低温側流路82b側の本体部81の変形を吸収し、変形に伴う応力集中を緩和している。
【0229】
ここで、第1実施形態にて冷凍サイクル10を循環する冷媒には、相溶性の冷凍機油が含まれており、チラー24等の蒸発器にて冷媒が蒸発してしまうと、チラー24等の熱交換器内部の下方に冷凍機油が貯まってしまうことが考えられる。
【0230】
冷凍サイクル10のチラー24等の蒸発器にて冷凍機油が貯まってしまうと、冷凍機油が圧縮機11に対して十分な量戻ってこなくなる為、圧縮機11の焼きつき等を要因となることが考えらえる。
【0231】
この点に鑑みて、第1実施形態に係る接続モジュール80では、図6に示すように、チラー24の流出口に接続される第7接続口83gは、チラー24の流入口31に接続される第6接続口83fよりも重力方向下方に配置されている。
【0232】
これにより、チラー24における冷媒の蒸発によって、冷凍機油がチラー24の下部に貯まった場合でも、チラー24の流出口及び第7接続口83gを介して、接続モジュール80の冷媒流路82へと流出させることができる。つまり、接続モジュール80によれば、圧縮機11に対する冷凍機油の戻り量の確保に貢献することができる。
【0233】
更に、図6に示すように、第7接続口83gから第11接続口83kへと伸びる冷媒流路82は、第7接続口83gから下方に伸びた後、その伸びる向きを上方に変えて、第11接続口83kに接続している。
【0234】
そして、第7接続口83gから第11接続口83kへと伸びる冷媒流路82には、第9接続口83i、第10接続口83jが配置されている。そして、第9接続口83i、第10接続口83jは、第7接続口83gから伸びる冷媒流路82において、第7接続口83gよりも重力方向下方で、且つ、最も下方に配置されている。
【0235】
ここで、図3に示すように、第9接続口83iは、室内蒸発器20の流出口が冷媒配管を介して接続される接続口である。第10接続口83jは、室外熱交換器17の流出口が暖房用流路16bを介して接続される接続口である。室内蒸発器20、暖房モード時等における室外熱交換器17は、バッテリ48を冷却する際におけるチラー24の冷媒流量よりも冷媒流量が多い。この場合における室外熱交換器17は主蒸発器に相当する。
【0236】
図6に示すように、第7接続口83gから第11接続口83kへと伸びる冷媒流路82において、第7接続口83gと、第9接続口83i及び第10接続口83jの間には、重力方向下方に向かって伸びる冷媒流路82が配置されている。
【0237】
つまり、第7接続口83gから重力方向下方に向かって伸びる冷媒流路82は、第9接続口83i、第10接続口83jから流入した冷媒が第7接続口83gに流入することを抑制する抑制部87に相当する。
【0238】
これにより、第7接続口83gから流出した冷凍機油が、第7接続口83gから伸びる冷媒流路82の下方に貯まった場合でも、第9接続口83i、第10接続口83jから合流する冷媒の流れを用いて、第11接続口83kへ流通させることができる。つまり、接続モジュール80によれば、この点においても、圧縮機11に対する冷凍機油の戻り量の確保に貢献することができる。
【0239】
又、図6に示すように、第7接続口83gから第11接続口83kへと伸びる冷媒流路82には、第8接続口83hが、第9接続口83i、第10接続口83jよりも冷媒流れの下流側に配置されている。
【0240】
ここで、第8接続口83hは、後席側蒸発器23の流出口が冷媒配管を介して接続される接続口である。そして、後席側蒸発器23は、少なくとも室内蒸発器20に低圧冷媒が流通する場合に、低圧冷媒が流通する主蒸発器に相当する。
【0241】
従って、後席側蒸発器23からの冷凍機油が第8接続口83hを介して冷媒流路82に流出した場合には、少なくとも室内蒸発器20から第9接続口83iから流出した低圧冷媒と合流して流れる。第9接続口83iから流出する低圧冷媒の流量は、室内蒸発器20を通過する為、大きくなる。
【0242】
この為、後席側蒸発器23から第8接続口83hを介して冷凍機油を流出した場合であっても、第9接続口83i、第10接続口83jから流出する流量の大きな冷媒の流れを利用して、第11接続口83kへ流通させることができる。これにより、接続モジュール80は、圧縮機11に対する冷凍機油の戻り量の確保に貢献することができる。
【0243】
続いて、接続モジュール80の冷媒流路82における曲がり部82cの構成について、図7を参照して説明する。接続モジュール80における冷媒流路82には、複数の曲がり部82cが含まれている。この為、接続モジュール80の冷媒流路82では、各曲がり部82cにおける圧損をできるだけ低減することが重要になる。
【0244】
第1実施形態に係る接続モジュール80における冷媒流路82の曲がり部82cは、冷媒配管によって曲がり部82cを構成した場合に比べて、曲がり部82cにおける圧損が小さくなるように形成されている。
【0245】
具体的には、図7に示すように、曲がり部82cは、曲がり部82cにおける流路断面積Scが冷媒流路82において直線状に伸びる直管部82sにおける流路断面積Ssよりも大きくなるように形成されている。
【0246】
これにより、冷媒流路82の曲がり部82cにおける圧損は、冷媒配管にて曲がり部を構成した場合のように、直管部の断面積と同じ流路断面積で曲がり部を構成した場合に比べて小さくなる。
【0247】
このような構成は、従来の冷凍サイクル装置のように、各構成機器を冷媒配管で接続する場合には実現することはできない。冷媒配管にて曲がり部を構成した場合、曲がり部の流路断面積は、冷媒配管の直管部の流路断面積と同じになるからである。第1実施形態に係る接続モジュール80の本体部81は鋳造によって形成されている為、冷媒流路82における各曲がり部82cを図7のように構成することができる。
【0248】
以上説明したように、第1実施形態に係る接続モジュール80は、高温側構成機器に接続される接続口を有する高温側流路82aと、低温側構成機器に接続される接続口を有する低温側流路82bと、を含む冷媒流路82を、本体部81の内部に有している。
【0249】
これによれば、高温側流路82aの接続口を変更して用いることで、冷凍サイクル10における高温側の構成を変更することができる。又、低温側流路の接続口を変更して用いることで、冷凍サイクル10における低温側の構成を変更することができる。つまり、接続モジュール80を用いることで、冷凍サイクル10の多様な構成に対応することができる。
【0250】
又、図3図6に示すように、接続モジュール80の本体部81の内部において、高温側流路82aを介した高温側構成機器に対する冷媒の流れと、低温側流路82bを介した低温側構成機器に対する冷媒の流れを形成することができる。これにより、接続モジュール80の内部に、冷凍サイクル10全体における冷媒の流れの多くの部分を集約することができるので、冷凍サイクル10に対する省スペース化に貢献することができる。
【0251】
そして、接続モジュール80における本体部81には、高温側流路82aと低温側流路82bとの間に、伝熱抑制部85が形成されている。これにより、高温側流路82aを流れる高圧冷媒と、低温側流路82bを流れる低圧冷媒等とが相互に与える熱の影響を抑制することができ、冷凍サイクル10の成績係数の低下を抑えることができる。
【0252】
又、図6に示すように、各伝熱抑制部85には、それぞれ変形吸収部86が形成されている。各変形吸収部86によれば、伝熱抑制部85に対して高温側流路82a側に位置する本体部81の変形と、伝熱抑制部85に対して低温側流路82b側に位置する本体部81の変形を吸収することができるので、本体部81における応力集中を緩和することができる。
【0253】
そして、図6に示すように、接続モジュール80の本体部81において、蒸発器としてのチラー24の流出口に接続される第7接続口83gは、チラー24の流入口に接続される第6接続口83fよりも、重力方向下方に配置されている。
【0254】
これにより、チラー24における冷媒の蒸発に伴って、チラー24の下部に貯まった冷凍機油が第7接続口83gから、接続モジュール80の冷媒流路82に流出する為、圧縮機11に対する冷凍機油の戻り量の確保に貢献することができる。
【0255】
又、図6に示すように、第7接続口83gから伸びる冷媒流路82において、室内蒸発器20の流出口に接続される第9接続口83i、室外熱交換器17の流出口に接続される第10接続口83jは、第7接続口83gよりも重力方向下方に配置されている。
【0256】
これによれば、第7接続口83gから流出して冷媒流路82の下方に貯まった冷凍機油を、第9接続口83i、第10接続口83jから流出する流量の大きな冷媒の流れによって、第11接続口83kへ流通させることができる。この結果、接続モジュール80は、圧縮機11に対する冷凍機油の戻り量の確保に貢献することができる。
【0257】
図3に示すように、車両用空調装置1は、後席側蒸発器23を有しており、後席側蒸発器23は、少なくとも室内蒸発器20に低圧冷媒が流通する場合に、低圧冷媒が流通するように用いられる。
【0258】
そして、図6に示すように、第7接続口83gから第11接続口83kへ伸びる冷媒流路82において、後席側蒸発器23の流出口に接続される第8接続口83hは、第9接続口83i、第10接続口83jよりも冷媒流れ下流側に配置されている。
【0259】
従って、第8接続口83hを介して、後席側蒸発器23からの冷凍機油が流出した場合であっても、第9接続口83iを介して、室内蒸発器20から流出する流量の大きな冷媒の流れによって、確実に第11接続口83kへ流通させることができる。即ち、接続モジュール80は、この点においても、圧縮機11に対する冷凍機油の戻り量の確保に貢献することができる。
【0260】
又、図6に示すように、接続モジュール80の本体部81には、第1取付部84a~第5取付部84eが形成されている。第1取付部84a~第5取付部84eには、それぞれ暖房用膨張弁14a、第1冷房用膨張弁14b、冷却用膨張弁14d、第1開閉弁18a、第3開閉弁18cが取り付けられている。
【0261】
これによれば、暖房用膨張弁14aや第1開閉弁18a等の配置スペースを、本体部81における第1取付部84a~第5取付部84eに集約することができるので、冷凍サイクル10の省スペース化に貢献することができる。
【0262】
図7に示すように、接続モジュール80における冷媒流路82の曲がり部82cは、曲がり部82cにおける流路断面積Scが冷媒流路82の直管部82sの流路断面積Ssよりも大きくなるように形成されている。これにより、接続モジュール80において、冷媒流路82の曲がり部82cにおける圧損を低減することができる。図6に示すように、接続モジュール80の冷媒流路82には、多数の曲がり部82cが含まれている為、有効に圧損を低減することができる。
【0263】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る接続モジュール80について説明する。第2実施形態に係る接続モジュール80においては、上述した第1実施形態に対して、本体部81に対する水冷媒熱交換器12及びチラー24の接続方法を変更したものである。その他の構成については、上述した第1実施形態と同様である為、その説明を省略する。
【0264】
第2実施形態に係る接続モジュール80において、本体部81の前面側には、第1実施形態と同様に、ヒータコア42が取り付けられている。ヒータコア42の流出口は、ボルト及びナット等の締結材を介して、本体部81の前面側に形成された第1接続口83aに接続されている。
【0265】
締結材を用いることによって、ヒータコア42は、本体部81の前面に接するような状態で、本体部81に対する相対的な位置関係が固定される。つまり、第2実施形態に係る接続モジュール80では、高温側構成機器であり、熱媒体冷媒熱交換器の一例である水冷媒熱交換器12が、本体部81と一体化されている。
【0266】
又、第2実施形態に係る接続モジュール80において、本体部81の後面側には、第1実施形態と同様に、チラー24が取り付けられている。上述したように、チラー24は低温側構成機器であって、冷媒を蒸発させることで吸熱する蒸発器の一例に相当する。
【0267】
チラー24の冷媒入口は、ボルト及びナット等の締結材を介して、本体部81の後面側に形成された第6接続口83fに接続されている。又、チラー24の冷媒出口は、ボルト及びナット等の締結材を介して、本体部81の後面側に形成された第7接続口83gに接続されている。
【0268】
本体部81の第6接続口83f及び第7接続口83gにて、締結材を用いて接続することで、チラー24は、本体部81の後面に接するような状態で、本体部81に対する相対的な位置関係が固定される。つまり、第2実施形態に係る接続モジュール80では、チラー24が本体部81と一体化されている。
【0269】
本体部81に対して水冷媒熱交換器12を一体化することによって、接続モジュール80は、冷凍サイクル10における高温側構成機器に関する配置に関して、省スペース化を図ることができる。又、本体部81に対してチラー24を一体化することによって、接続モジュール80は、冷凍サイクル10における低温側構成機器に関する配置に関して、省スペース化を図ることができる。
【0270】
以上説明したように、第2実施形態に係る接続モジュール80によれば、第1実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、上述した第1実施形態と同様に得ることができる。
【0271】
第2実施形態に係る接続モジュール80では、本体部81に対して水冷媒熱交換器12を一体化している為、冷凍サイクル10の高温側構成機器の配置に関して、省スペース化を図ることができる。又、接続モジュール80によれば、本体部81に対してチラー24を一体化している為、10の低温側構成機器の配置に関して、省スペース化を図ることができる。
【0272】
尚、本開示において、本体部81に対する構成機器の一体化とは、本体部81の接続口(例えば、第1接続口83a)に構成機器の冷媒入口又は冷媒出口を接続すると共に、構成機器と本体部81が接するように相対的な位置関係を固定することを意味する。本体部81の接続口と構成機器の冷媒入口又は冷媒出口を接続する際に、ボルト及びナット等の締結材を用いていたが、溶接等によって接合する態様を採用しても良い。又、構成機器と本体部81との相対的な位置を固定する方法として、構成機器を本体部に対して固定しても良い。
【0273】
(第3実施形態)
続いて、第3実施形態に係る接続モジュール80について、図8図9を参照して説明する。先ず、第3実施形態に係る接続モジュール80の基本的構成について説明する。第3実施形態に係る接続モジュール80は、図8に示すように、本体部81に形成された冷媒流路82と、第1接続口83a~第6接続口83fと、第1取付部84a~第5取付部84eを有している。
【0274】
換言すると、第3実施形態に係る接続モジュール80は、バッテリ48の冷却機能、及び、後席側の空調機能を有していない車両用空調装置1に適用されている。従って、第3実施形態に係る接続モジュール80は、第1実施形態と比較して、図8に示すように、第7接続口83g~第11接続口83kを接続する冷媒流路82を本体部81に有していない構成である。
【0275】
第3実施形態においては、車両用空調装置1に対する機能の追加に伴って、接続モジュール80の基本的構成に変更が生じたものとする。この為、図8に示す接続モジュール80の基本的構成に対して、車両用空調装置1の機能追加に伴い必要となった冷媒流路82及び接続口が追加される。
【0276】
例えば、車両用空調装置1を、バッテリ48の冷却機能付きのデュアルエアコンに変更する場合、図8に示す接続モジュール80の本体部81には、第7接続口83g~第11接続口83kを接続する冷媒流路82が形成される。この場合、第7接続口83gに接続されるチラー24、第8接続口83hに接続される後席側蒸発器23、第11接続口83kに接続されるアキュムレータ22は、第3実施形態における特定構成機器の一例に相当する。
【0277】
そして、この場合において追加される第7接続口83g~第11接続口83kを接続する冷媒流路82は、特定冷媒流路88の一例に相当する。特定冷媒流路88として、第7接続口83g~第11接続口83kを接続する冷媒流路82を追加する場合、図8に示す基本的構成における冷媒流路82の形状を為す中子と共に、特定冷媒流路88の形状を為す中子が塩等を用いて形成される。
【0278】
基本的構成に係る冷媒流路82の中子と共に、特定冷媒流路88に係る中子が、平板状に形成された鋳型の所定位置に配置される。その後、中子が配置された鋳型に対して、溶融金属を注入して本体部81を鋳造する。溶融金属が凝固した段階において塩等で形成された中子を溶融させて除去することによって、本体部81の内部に、図9に示すように特定冷媒流路88を含む冷媒流路82が形成される。
【0279】
このように、第3実施形態に係る接続モジュール80によれば、車両用空調装置1の機能追加によって必要となった構成機器(即ち、チラー24や後席側蒸発器23等の特定構成機器)に係る特定冷媒流路88を本体部81に容易に形成することができる。即ち、第3実施形態に係る接続モジュール80は、特定冷媒流路88の追加によって、冷凍サイクル10の構成の変化に、少ない作業変更で柔軟に対応することができる。
【0280】
尚、特定冷媒流路88の構成は、車両用空調装置1に追加される機能及び特定構成機器に応じて変更される。例えば、第3実施形態に係る車両用空調装置1の基本的構成に対して、バッテリ48の冷却機能を追加する場合、第7接続口83gから第11接続口83kまで伸びる冷媒流路82において、第8接続口83hを形成する必要はない。つまり、特定冷媒流路88として、第7接続口83gから第11接続口83kまで伸びる冷媒流路82の間において、第9接続口83i、第10接続口83jが形成される。
【0281】
又、第3実施形態に係る車両用空調装置1の基本的構成に対して、デュアルエアコンに変更する場合、第8接続口83hから第11接続口83kまで伸びる冷媒流路82が、特定冷媒流路88として形成される。
【0282】
以上説明したように、第3実施形態に係る接続モジュール80によれば、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、上述した実施形態と同様に得ることができる。
【0283】
又、第3実施形態に係る接続モジュール80によれば、車両用空調装置1の機能追加に伴う特定構成機器に対応する特定冷媒流路88を形成できるので、車両用空調装置1の機能追加に関して、接続モジュール80として、少ない工数で柔軟に対応できる。
【0284】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る接続モジュール80について説明する。第4実施形態に係る接続モジュール80は、上述した第1実施形態に係る構成を基本的構成とし、第1実施形態に係る車両用空調装置1から機能を削減した場合を示している。
【0285】
第4実施形態では、例えば、バッテリ48の冷却機能付きのデュアルエアコンとして構成された車両用空調装置1から、バッテリ48の冷却機能及び後席側の空調機能を削減する場合について説明する。
【0286】
上述したように、バッテリ48の冷却に関連するチラー24は、接続モジュール80の第7接続口83gに接続されている。又、後席側の空調に関連する後席側蒸発器23は、接続モジュール80の第8接続口83hに接続されている。この為、後席側蒸発器23及びチラー24は、それぞれ対象構成機器の一例に相当する。
【0287】
そして、バッテリ48の冷却機能及び後席側の空調機能を削減する場合。後席側蒸発器23及びチラー24に対する冷媒の流出入が不要となる為、冷媒流路82のうち、第7接続口83g~第11接続口83kを接続する冷媒流路82が不要となる。つまり、第7接続口83g~第11接続口83kを接続する冷媒流路82は、対象構成機器である後席側蒸発器23及びチラー24に関する対象冷媒流路89に相当する。
【0288】
第4実施形態に係る接続モジュール80においては、図10に示すように、対象冷媒流路89における冷媒の流通を遮断する為に、閉塞部材90が配設されている。閉塞部材90は、対象冷媒流路89の内部に充填され、対象冷媒流路89の内部を閉塞している。対象冷媒流路89には、第7接続口83g~第11接続口83kが配置されている為、閉塞部材90は、第7接続口83g~第11接続口83kの内部も夫々閉塞している。
【0289】
これにより、第4実施形態に係る接続モジュール80によれば、車両用空調装置1からの機能の削減に伴う冷凍サイクル10の構成の変化に関し、閉塞部材90を用いることで少ない作業で柔軟に対応することができる。
【0290】
尚、対象冷媒流路89の構成は、車両用空調装置1から削減される機能及び対象構成機器に応じて変更される。例えば、第1実施形態に係る車両用空調装置1から後席側の空調機能を削減する場合、第7接続口83gから第11接続口83kまでの冷媒流路82において、第5取付部84e及び第8接続口83hが閉塞部材90によって閉塞される。これにより、接続モジュール80は、車室全体に対する空調に加えて、バッテリ48の冷却機能を有する車両用空調装置1に適した態様に変更される。
【0291】
又、第1実施形態に係る車両用空調装置1からバッテリ48の冷却機能を削減する場合は、第7接続口83gから第11接続口83kまでの冷媒流路82において、第3取付部84c及び第7接続口83gが閉塞部材90によって閉塞される。これにより、接続モジュール80は、バッテリ48の冷却機能がないデュアルエアコンに適した態様に変更される。
【0292】
図10に示すように、第4実施形態においては、閉塞部材90は、対象冷媒流路89の内部に充填されるように配置されて、対象冷媒流路89における冷媒の流れを遮断していたが、この態様に限定されるものではない。対象冷媒流路89における冷媒の流れを遮断することができれば、閉塞部材90として種々の態様を採用することができる。例えば、閉塞部材90として、対象冷媒流路89の端部を構成する接続口を閉塞するキャップ上の部材を採用しても良い。又、対象冷媒流路89自体を接続モジュール80から取り除いても良い。
【0293】
以上説明したように、第4実施形態に係る接続モジュール80によれば、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、上述した実施形態と同様に得ることができる。
【0294】
又、第4実施形態に係る接続モジュール80によれば、車両用空調装置1の機能削減に伴い除外される対象構成機器に対応する対象冷媒流路89を閉塞部材90で閉塞できるので、車両用空調装置1の機能削減に関して、少ない工数で柔軟に対応できる。
【0295】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0296】
(1)上述した実施形態では、接続モジュール80における本体部81の冷媒流路として、高温側流路82a及び低温側流路82bを有する構成としていたが、これに限定されるものではない。
【0297】
接続モジュール80の本体部81に対して、他の熱媒体が流通する熱媒体流路を形成しても良い。例えば、高温側熱媒体回路40の高温側熱媒体が流通する熱媒体流路を形成しても良いし、低温側熱媒体回路45の低温側熱媒体が流通する熱媒体流路を形成しても良い。更に、接続モジュール80の本体部81に対して、温度センサや圧力センサ等の検出部を取り付けるように構成しても良い。
【0298】
(2)上述した実施形態における伝熱抑制部85は、本体部81に対して溝状に形成していたが、伝熱抑制部85を、本体部81の前面及び後面の何れか一方の面が窪んだ溝状としても良い。又、伝熱抑制部85を、本体部81の前面及び後面において、何れの表面も窪んだ溝状としても良い。更に、伝熱抑制部85を、本体部81の前面及び後面の間を貫通するスリット状に形成してもよい。
【0299】
(3)又、上述した伝熱抑制部85の内部には、空気が存在するものとしていたが、この態様に限定されるものではない。伝熱抑制部85は、高温側流路82aと低温側流路82bとの間における熱の伝達を阻害できれば、種々の態様を採用することができる。例えば、伝熱抑制部85の内部に、熱伝導性の低い材料を充填するように構成しても良い。
【0300】
(4)そして、上述した実施態様では、変形吸収部86は、円柱状の内部空間を有するように形成しているが、この態様に限定されるものではない。伝熱抑制部85に対して高温側流路82aの側の変形と、伝熱抑制部85に対する低温側流路82bの側の変形とを吸収することができれば、変形吸収部86の形状は適宜変更することができる。
【0301】
(5)又、上述した実施形態においては、変形吸収部86を、伝熱抑制部85における角部分に配置しているが、この態様に限定されるものではない。例えば、溝状の伝熱抑制部85における端部に、変形吸収部86を配置してもよい。変形吸収部86は、溝状の伝熱抑制部85に配置されていれば良く、直線状に伸びる伝熱抑制部85の中央部分に配置することもできる。
【0302】
(6)そして、上述した実施形態では、接続モジュール80の本体部81に、第1取付部84a~第5取付部84eを形成していたが、これに限定されるものではない。本体部81における取付部の数及び配置は、冷凍サイクル10の構成に応じて適宜変更することができる。
【0303】
(7)又、第1取付部84a~第5取付部84eに対して取り付けられる流体制御機器は、上述した実施形態に限定されるものではなく、冷凍サイクル10の構成等に応じて、適宜変更することができる。例えば、上述した実施形態では、第5取付部84eに第3開閉弁18cを取り付けていたが、全閉機能付きの電気式膨張弁に変更しても良い。即ち、第3開閉弁18cと温度式膨張弁である第2冷房用膨張弁14cを、全閉機能付きの電気式膨張弁で代替することも可能である。
【0304】
この場合、運転モードによっては、第5取付部84eの右側面から第5接続口83eへ伸びる冷媒流路82には、電気式膨張弁で減圧された低圧冷媒が流れる場合が考えられる。この為、第5接続口83eの右及び上方に配置された伝熱抑制部85は、第4取付部84dの上面から伸びる冷媒流路と、第5取付部84eから第5接続口83eへ伸びる冷媒流路82との間の熱の影響を抑制することができる。
【0305】
(8)そして、上述の実施形態においては、第7接続口83gから重力方向下方に伸びる冷媒流路82を抑制部87としていたが、この態様に限定されるものではない。抑制部は、第9接続口83i、第10接続口83jから流入した冷媒が第8接続口83hに流入することができれば、種々の態様を採用することができる。
【0306】
例えば、図11に示すように、第8接続口83hと、第9接続口83i及び第10接続口83jの間の冷媒流路82を、少なくとも第9接続口83i、第10接続口83jよりも重力方向上方を通過するように立ち上げた構成を設けて、抑制部87としても良い。この構成によれば、第8接続口83hが第9接続口83iよりも下方に位置する場合でも、第9接続口83i、第10接続口83jから流出した冷媒が第8接続口83hへ流入することを抑制することができる。
【0307】
(9)又、第8接続口83hと、第9接続口83i及び第10接続口83jの間の冷媒流路82に対して、逆止弁を配置して抑制部87を構成することも可能である。この場合の逆止弁は、第8接続口83hから第9接続口83i、第10接続口83jへ向かう冷媒の流れを許容し、第9接続口83i、第10接続口83jから第8接続口83hへ向かう冷媒の流れを禁止するように取り付けられる。
【0308】
(10)又、本開示に係る接続モジュール80の本体部81は、一又は複数のブロックから構成されていても良い。例えば、複数のブロックをボルト等で組み合わせて一体化することで、接続モジュール80の本体部81を構成しても良い。例えば、冷凍サイクル10の基本的構成に係る冷媒流路82が形成された基礎本体部と、特定の構成機器に関する冷媒流路82が形成された特定本体部と、を組み合わせて一体化することで、本体部81を構成してもよい。この場合、車両用空調装置1等の機能変更に伴って、基礎本体部に対して特定本体部を着脱することで、車両用空調装置1等の機能変更に対応することができる。
【0309】
(11)そして、上述の実施形態では、冷凍サイクル10の冷媒としてR1234yfを採用した例を説明したが、冷媒はこれに限定されない。例えば、R134a、R600a、R410A、R404A、R32、R407C等を採用してもよい。または、これらのうち複数の冷媒を混合させた混合冷媒等を採用してもよい。
【0310】
(12)また、高温側熱媒体回路40、低温側熱媒体回路45は、上述の実施形態に開示された構成に限定されない。例えば、上述の実施形態では、熱媒体として、エチレングリコール水溶液を採用した例を説明したが、これに限定されない。熱媒体として、ジメチルポリシロキサン、あるいはナノ流体等を含む溶液、不凍液、アルコール等を含む水系の液冷媒、オイル等を含む液媒体等を採用してもよい。
【0311】
(13)そして、上述した実施形態では、冷却対象物としてバッテリ48を冷却する例を説明したが、冷却対象物はこれに限定されない。冷却対象物として、例えば、インバータ、モータジェネレータ、電力制御ユニット(いわゆる、PCU)、先進運転支援システム(いわゆる、ADAS)用の制御装置等のように作動時に発熱する車載機器を採用してもよい。
【符号の説明】
【0312】
80 接続モジュール
81 本体部
82 冷媒流路
82a 高温側流路
82b 低温側流路
83a~83k 第1接続口~第11接続口(接続口)
84a~84e 第1取付部~第5取付部(取付部)
85 伝熱抑制部
86 変形吸収部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11