(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】印刷システム、印刷制御プログラム及び印刷物の生産方法
(51)【国際特許分類】
B41J 3/28 20060101AFI20240709BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240709BHJP
B41J 21/00 20060101ALI20240709BHJP
G06F 3/12 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B41J3/28
B41J2/01 107
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J21/00 Z
G06F3/12 350
G06F3/12 356
G06F3/12 378
(21)【出願番号】P 2020148815
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 春樹
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-132624(JP,A)
【文献】特開2009-199205(JP,A)
【文献】特開2015-146093(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0368850(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 3/28
B41J 2/01
B41J 21/00
G06F 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体が載置される媒体台と、
前記媒体台に対し前記媒体を吸着させる吸着機構と、前記媒体台に載置された前記媒体に対し、相対移動しながら印刷を行う印刷機構と、
を含んだフラットベッド型の印刷装置と、
1つの媒体の同一位置への二重印刷の可能性の警告を行う制御部と
、
を備え
、
前記制御部は、前記媒体上に第1の画像が印刷された後で、前記吸着機構による吸着が継続されている状態では、前記媒体の交換が行われていないと判定して、印刷対象として指定された第2の画像の印刷位置として前記第1の画像が印刷された領域内の位置が指定された場合に、前記警告を行い、
前記制御部は、前記第1の画像の印刷が行われた後で、前記吸着機構による吸着が解除され、さらに吸着が再開された状態では、前記媒体の交換が行われたと判定して、印刷対象として指定された第3の画像の印刷位置として前記第1の画像が印刷された領域内の位置が指定された場合に、前記警告を行わない、
印刷システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記媒体に印刷される2以上の画像が重なる場合には、予め定められた印刷可能条件を満たすまで、前記2つの画像のうち少なくとも一方の画像の前記媒体への印刷を行わないよう制御する、請求項
1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記媒体に印刷される2つの画像の位置関係を示す情報を出力させることにより前記警告を行う、請求項1
または2に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記位置関係を示す情報は、前記媒体に印刷される2以上の画像の前記位置関係を示す画像である、請求項
3に記載の印刷システム。
【請求項5】
媒体台に載置された媒体に対し、相対移動しながら印刷を行う印刷機構
と、前記媒体台に対し前記媒体を吸着させる吸着機構と、を含んだフラットベッド型の印刷装置を制御するコンピューターに、
前記印刷機構を制御する
印刷ステップと、
1つの媒体の同一位置への二重印刷の可能性の警告を行う
警告ステップと
を実行させるための印刷制御プログラム
であって、
前記警告ステップにおいては、
前記媒体上に第1の画像が印刷された後で、前記吸着機構による吸着が継続されている状態では、前記媒体の交換が行われていないと判定して、印刷対象として指定された第2の画像の印刷位置として前記第1の画像が印刷された領域内の位置が指定された場合に、前記警告を行い、
前記第1の画像の印刷が行われた後で、前記吸着機構による吸着が解除され、さらに吸着が再開された状態では、前記媒体の交換が行われたと判定して、印刷対象として指定された第3の画像の印刷位置として前記第1の画像が印刷された領域内の位置が指定された場合に、前記警告を行わない、
印刷制御プログラム。
【請求項6】
媒体が載置される媒体台と、前記媒体台に対し前記媒体を吸着させる吸着機構と、前記媒体台に載置された前記媒体に対し、相対移動しながら印刷を行う印刷機構と、を含んだフラットベッド型の印刷装置を用いて、前記媒体台に載置され
、前記吸着機構によって吸着された前記媒体に対し、
前記印刷機構によって印刷を行うことで、印刷物を生産する印刷ステップと、
1つの媒体の同一位置への二重印刷の可能性の警告を行う警告ステップと
、
を含む、印刷物の生産方法
であって、
前記警告ステップにおいては、
前記媒体上に第1の画像が印刷された後で、前記吸着機構による吸着が継続されている状態では、前記媒体の交換が行われていないと判定して、印刷対象として指定された第2の画像の印刷位置として前記第1の画像が印刷された領域内の位置が指定された場合に、前記警告を行い、
前記第1の画像の印刷が行われた後で、前記吸着機構による吸着が解除され、さらに吸着が再開された状態では、前記媒体の交換が行われたと判定して、印刷対象として指定された第3の画像の印刷位置として前記第1の画像が印刷された領域内の位置が指定された場合に、前記警告を行わない、
印刷物の生産方法。
【請求項7】
媒体が載置される媒体台と、
前記媒体台の周囲の人体を検知する人感センサーと、
前記媒体台に載置された前記媒体に対し、相対移動しながら印刷を行う印刷機構と、
1つの媒体の同一位置への二重印刷の可能性の警告を行う制御部と
を備え、
前記制御部は、前記媒体に印刷される2以上の画像の位置が重なる場合に、前記警告を行い、
前記制御部は、前記媒体上に第1の画像が印刷された後で、印刷対象として指定された第2の画像の印刷位置として前記第1の画像が印刷された領域内の位置が指定された場合に、前記警告を行い、
前記制御部は、前記人体が検知された場合に、前記媒体の交換が行われたと判定し、前記第1の画像と、交換後に印刷対象として指定された第3の画像との重なりについては、
前記警告の対象としない、印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システム、印刷制御プログラム及び印刷物の生産方法
に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フラットベッド型のプリンターが知られている。フラットベッド型のプリンターにおいては、印刷がなされる媒体を載せる媒体台上で、プリントヘッドを載せたガントリーが前後に動き、プリントヘッドが左右に動くことで、媒体への印刷が行われる。このようなフラットベッド型のプリンターにおいては、例えば、1つの媒体の左端に1つの画像を印刷し、これに隣接する領域に他の画像を印刷するというように、1つの媒体に複数の画像を印刷することができる。
【0003】
このように、複数の印刷ジョブそれぞれに応じた複数の画像を1つの媒体に印刷する場合には、各画像の印刷開始位置をユーザーが指定する必要がある。しかしながら、例えば、印刷ジョブ1に応じた画像の印刷後に印刷開始位置を変え忘れたまま印刷ジョブ2に応じた画像を印刷した場合には、
図10に示すように、印刷ジョブ1の画像と印刷ジョブ2の画像が同じ印刷開始位置T11から印刷される。このため、2つの画像は重なって印刷されてしまう。また、例えば、印刷ジョブ2の画像の印刷開始位置を変更したものの、変更後の印刷開始位置T12が印刷ジョブ1の画像の領域内の位置であった場合には、
図11に示すように、やはり2つの画像が重なって印刷される。
【0004】
これに対し、特許文献1には、フラットベッドプリンタにおいて、デジタル画像が印刷されることが意図されるフラットな媒体ピース上の位置を操作者に示すために、プロジェクタシステムによってフラットベッド表面に向けてデジタル画像を投影する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1の技術においてはプロジェクターが必要となりコストが高くなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する印刷システムは、媒体が載置される媒体台と、前記媒体台に載置された前記媒体に対し、相対移動しながら印刷を行う印刷機構と、1つの媒体の同一位置への二重印刷の可能性の警告を行う制御部とを備える。
【0008】
また、上記課題を解決する印刷制御プログラムは、媒体台に載置された媒体に対し、相対移動しながら印刷を行う印刷機構を制御するコンピューターに、印刷機構を制御するステップと、1つの媒体の同一位置への二重印刷の可能性の警告を行うステップとを実行させるためのプログラムである。
【0009】
また、上記課題を解決する印刷物の生産方法は、媒体台に載置された前記媒体に対し、相対移動しながら印刷を行うことで、印刷物を生成する印刷ステップと、1つの媒体の同一位置への二重印刷の可能性の警告を行う警告ステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】制御装置及び印刷装置のハードウェア構成図である。
【
図6】第1の画像と第2の画像の位置関係の一例を示す図である。
【
図8】第2の実施形態に係る印刷制御処理を示すフローチャートである。
【
図9】第2の実施形態に係る警告表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)第1の実施形態の印刷システムの構成:
(2)第1の実施形態の印刷制御処理:
(3)第2の実施形態:
(4)他の実施形態:
【0012】
(1)第1の印刷システムの構成:
図1は、印刷システム10の全体構成図である。印刷システム10は、制御装置100と、印刷装置200と、を備える。制御装置100と印刷装置200は、インターフェースを介して接続される。
【0013】
制御装置100は、情報処理装置であり、印刷装置200による印刷を制御する。ユーザーは、制御装置100を通じて、印刷装置200の設定や、動作の指示を行ったり、印刷装置200の状態や設定を確認したりできる。
【0014】
印刷装置200は、いわゆるフラットベッドプリンタであり、媒体台201と、プリントヘッド202と、ガントリー203と、吸着機構204と、を備える。媒体台201は、長方形状の台であり、平面状の表面を有する。媒体台201には、印刷が行われる媒体Aが載置される。媒体Aは、長方形状の印刷用紙である。
【0015】
ガントリー203は、媒体台201上において、媒体台201の縦辺2011に沿った方向に移動可能に設けられている。さらに、ガントリー203は、媒体台201の横辺2012に沿って延びる不図示のガイド軸を有し、プリントヘッド202は、ガントリー203のガイド軸に沿って移動可能に設けられている。以下、プリントヘッド202がガントリー203上を移動可能な方向、すなわち媒体台201の横辺2012に沿った方向を主走査方向Pと称する。また、ガントリー203が移動可能な方向、すなわち媒体台201の縦辺2011に沿った方向を副走査方向Qと称する。
【0016】
プリントヘッド202は、媒体台201に載置された媒体に対してインクを吐出する。プリントヘッド202が主走査方向Pに移動し、移動の過程で媒体台201がインクを吐出することで媒体に画像が形成される。さらに、ガントリー203が不図示のモーターの駆動によって副走査方向Qに移動することで、2次元の画像形成が可能となる。プリントヘッド202は、K(黒)インクと有彩色インク(例えばC(シアン)インク、M(マゼンダ)インク、Y(イエロー)インク等)を吐出することで、カラー画像及びモノクロ画像を形成することができる。なお、インクの色や数は一例であり、プリントヘッド202は、K(黒)インクのみを吐出してもよく、他の色のインクを吐出してもよい。
【0017】
吸着機構204は、媒体台201の全面に渡って等間隔に配置された複数の貫通孔と、真空ポンプとを備え、真空ポンプにより貫通孔を介して媒体台201の表面から裏面の方向に向けた吸引を行う。これにより、媒体台201に載置された媒体Aは、媒体台201に吸着される。これにより、媒体の位置がずれるのを防ぐことができる。吸着機構204のオンオフは、印刷装置200に設けられた、不図示のボタンをユーザーが押下することにより制御されるものとする。吸着機構204がオンされると、吸着が開始され、オフされると吸着が解除される。なお吸着機構204は、オン時には媒体の媒体台201への吸着力が閾値以上になるように動作し、オフ時には媒体の媒体台201への吸着力が閾値未満になるように動作する。すなわち、オフ時には、吸着機構204としての真空ポンプによる吸引が完全にオフになっていなくてもよい。
【0018】
図2は、制御装置100及び印刷装置200のハードウェア構成図である。制御装置100は、第1制御部110と、第1通信部120と、HDD130と、UI部140と、を備える。第1制御部110は、CPU等のプロセッサー、ROM、RAM等を備え、ROM等に記録された種々のプログラムを、RAM等を用いてCPUが実行することで、制御装置100の各部を制御する。HDD130等に記録された印刷制御プログラム(プリンタードライバー)をCPUが実行することにより、第1制御部110は、印刷装置200を制御することができる。第1通信部120は、有線又は無線で接続された他の装置と各種通信プロトコルに従って通信を行う。ハードディスク装置(HDD)130は、各種情報や各種プログラムを格納する。UI部140は、表示部としてのディスプレイや、入力部としてのキーボードやスイッチを含む。
【0019】
図3は、UI部140の表示部に表示される印刷設定画面を示す図である。印刷設定画面300において、ユーザーは、印刷ジョブを選択する。印刷ジョブは、ページ記述言語で記述されたコマンドや印刷対象の画像データを含む。さらにユーザーは、印刷設定画面300において、印刷対象の画像の印刷開始位置を指定する。印刷開始位置は、媒体台201における位置を指定する情報である。また、
図3に示す印刷設定画面には表示されていないが、印刷対象の画像の印刷サイズもユーザー操作に応じて設定される。ここで、印刷サイズは、印刷ジョブに含まれる印刷データの印刷時のサイズである。
【0020】
図4は、媒体台201における座標系の説明図である。本実施形態においては、印刷開始位置は、媒体Aのうち、
図4に示す副走査方向において最も右側かつ副走査方向Qにおいて最も手前側の位置とする。なお、印刷開始位置は、予め定められた位置であればよく、実施形態に限定されるものではない。印刷開始位置は、媒体台201の左下の頂点を原点Oとし、横辺2012をX軸、縦辺2011をY軸とする2次元座標系の値(X,Y)で表現される。印刷サイズは、高さHと幅Wにより指定される。幅WはX軸方向(主走査方向P)の長さであり、高さHはY軸方向(副走査方向Q)の長さである。
【0021】
印刷サイズが入力され、さらに印刷設定画面300において、印刷ジョブが選択され、印刷開始位置が入力された上で印刷開始ボタン302が押下されると、第1通信部120は、印刷指示を印刷装置200に送信する。印刷指示は、印刷ジョブと、印刷開始位置と、印刷サイズと、を含む。
図3に示すように、印刷ジョブとして印刷ジョブ1が選択され、印刷開始位置として(X1,Y1)が指定されたとする。また、印刷ジョブ1の画像の印刷サイズが(W1,H1)であったとする。この場合、
図4に示すように、T1(X1,Y1)を印刷開始位置として、(W1,H1)の印刷サイズにより定まる領域に印刷ジョブ1の画像が印刷される。
【0022】
図2の説明に戻る。印刷装置200は、第2制御部210と、第2通信部220と、印刷機構230と、
図1において説明した吸着機構204と、を備えている。第2制御部210は、CPU、ROM、RAM等を備え、ROM等に記録された種々のプログラムを、RAM等を用いてCPUが実行することで、印刷装置200の各部を制御する。第2制御部210は、単一のチップで構成されてもよく、複数のチップで構成されてもよい。また、第2制御部210は、印刷装置200を動作させる様々の機能ブロックとともにSoCとして構成されてもよい。また、第2制御部210は、例えばCPUに変えてASICを備えてもよく、CPUとASICとが協働することで第2制御部210が実現されてもよい。第2通信部220は、有線または無線で印刷装置200に接続された他の装置と各種の通信プロトコルに従って通信する。本実施形態においては、第2通信部220は、制御装置100と通信を行う。印刷機構230は、
図1を参照しつつ説明した、プリントヘッド202及びガントリー203やこれらの駆動回路などを備え、第2制御部210の制御の下、印刷ジョブに従い印刷動作を行う。
【0023】
第2通信部220が制御装置100から印刷指示を受信すると、第2制御部210は、印刷指示から印刷開始位置T(X,Y)と、印刷サイズ(H,W)を特定する。そして、第2制御部210は、印刷開始位置T(X,Y)、と印刷サイズ(H,W)により定まる印刷領域に対して、印刷対象の画像を印刷するよう制御する。印刷装置200においては、第2制御部210は、印刷機構230による1つの印刷指示に応じた印刷が完了すると、印刷が完了したことを通知する印刷完了通知を、第2通信部220を介して制御装置100に送信する。第2制御部210はまた、吸着機構204による吸着動作のオンオフの切り替えが行われる度に、オンオフの切替通知を、第2通信部220を介して制御装置100に送信する。なお、制御装置100において、切替通知は、媒体の交換が行われたか否かの判定の際に参照される。本処理については後述する。
【0024】
本実施形態の印刷装置200は、第1の印刷指示に従い、1つの媒体上に第1の画像を印刷した後で、さらに第2の印刷指示を受信した場合には、同一の媒体上にさらに、第2の印刷指示に示される第2の画像を印刷することができる。第1の画像と重ならない位置に第2の画像を印刷することをユーザーが希望しているにも関わらず、印刷開始位置の指定が適切でなかったために第1の画像と第2の画像像の少なくとも一部が重畳して印刷される場合がある。本実施形態の制御装置100は、このような事態が生じるのを防ぐような印刷制御処理を行うことができる。
【0025】
(2)第1の実施形態の印刷制御処理:
図5は、制御装置100の第1制御部110による印刷制御処理を示すフローチャートである。印刷制御処理は、印刷物の生産工程を示すものである。印刷制御装置において、制御装置100の第1制御部110は、まず印刷装置200による印刷が完了したか否かを判定する(ステップS100)。印刷装置200は、1つの印刷指示に応じた印刷が完了した場合に、第2通信部220を介して制御装置100に印刷完了通知を送信する。制御装置100の第1制御部110は、第1通信部120を介して印刷完了指示を受信した場合に、印刷が完了したと判定する。以下、ステップS100で印刷が完了したと判定された印刷対象の画像、すなわち既に印刷が完了している画像を第1の画像と称する。また、第1の画像の次に印刷対象として指定された印刷ジョブに対応した画像を第2の画像と称する。
【0026】
第1制御部110は、印刷が完了するまで待機し(ステップS100でN)、印刷が完了すると(ステップS100でY)、媒体の交換が行われたか否かを判定する(ステップS105)。第1制御部110は、印刷装置200から受信した吸着機構204のオンオフの切替通知に基づいて、媒体の交換が行われたか否かを判定する。具体的には、第1制御部110は、印刷が完了した後で、吸着オフへの切替通知を受信し、続けて吸着オンの切替通知を受信した場合、すなわち吸着が解除され、さらに再開された場合に、媒体の交換が行われたと判定する。一方で、第1制御部110は、印刷が完了した後で、切替通知を受信しない場合、すなわち吸着が継続されている場合には、媒体の交換は行われていないと判定する。
【0027】
第1制御部110は、媒体が交換された場合には(ステップS105でY)、過去の印刷位置に関する情報を削除して、処理を終了する。なお、この場合には、新たな媒体への印刷を対象として、印刷制御処理が開始される。この場合については後に詳述する。第1制御部110は、媒体が交換されなかった場合には(ステップS105でN)、印刷サイズと印刷開始位置の設定入力が行われたか否かを判定する(ステップS110)。本実施形態においては、第1制御部110は、印刷サイズが入力され、さらに印刷設定画面300において、印刷開始位置としてのX座標とY座標が入力された場合に、設定入力が行われたと判定する。
【0028】
第1制御部110は、設定入力が行われるまで待機し(ステップS110でN)、設定入力が行われると(ステップS110でY)、第1の画像と第2の画像の、媒体上での重なり判定を行う(ステップS115)。具体的には、第1制御部110は、第1の画像の印刷開始位置と印刷サイズから第1の画像の印刷領域を特定する。なお、印刷装置200に送信された印刷指示に含まれる印刷ジョブ、印刷開始位置及び印刷サイズは、媒体が交換されるまで、HDD130等の記憶部に格納されているものとする。第1制御部110は、記憶部に格納されている第1の画像の印刷開始位置及び印刷サイズから第1の画像の印刷領域を算出し、第2の画像の印刷開始位置が第1の画像の印刷領域に含まれるか否かを判定する。そして、第1制御部110は、第2の画像の印刷開始位置が第1の画像の印刷領域に含まれる場合に、第1の画像と第2の画像が重なると判定する。一方で、第1制御部110は、第1の画像の印刷開始位置が、第1の画像の印刷領域に含まれない場合には、第1の画像と第2の画像は重ならないと判定する。
【0029】
例えば、
図6に示す例では、第2の画像の印刷開始位置T2(X2,Y2)は、第1の画像の印刷開始位置T1と、印刷サイズ(W1,H1)で定まる印刷領域400に含まれない。このため、
図6に示す例では、第1の画像と第2の画像は重ならないと判定される。一方で、
図10や
図11のような位置関係においては、第1の画像(印刷ジョブ1の画像)と第2の画像(印刷ジョブ2の画像)が重なると判定される。このように、第1制御部110は、第1の画像と第2の画像の少なくとも一部が重なる場合に重なると判定し、それ以外の場合に重ならないと判定する。
【0030】
第1制御部110は、2つの画像が重ならない場合には(ステップS120でN)、処理をステップS135へ進める。2つの画像が重なる場合には(ステップS120でY)、第1制御部110は、警告表示を行うよう制御する(ステップS125)。具体的には、第1制御部110は、印刷設定画面300上に警告情報を表示する。警告情報は、2つの画像が重なっていることを示す情報である。このように、第1制御部110は、第1の画像が印刷された後、第2の画像の印刷位置として、第1の画像が印刷された領域内の位置が指定された場合に、警告を行う。ここで、警告情報は、1つの媒体の同一位置への二重印刷の可能性をユーザーに通知するものである。
【0031】
図7は、警告情報の一例を示す図である。
図7の例では、警告情報として、警告アイコン310a、310bと、メッセージ320が表示されている。警告アイコン310aは、X座標に対応し、警告アイコン310bは、Y座標に対応したアイコンである。これにより、第1制御部110は、印刷ジョブ2の印刷開始位置をユーザーから入力された値とした場合に、2つの画像が重なって印刷されることを、第2の画像が印刷される前に、ユーザーに通知することができる。
【0032】
説明を
図5に戻す。警告表示の後、第1制御部110は、印刷可能条件を満たすか否かを判定する(ステップS130)。印刷可能条件は、重なりが解消し、印刷可能な状態になったと第1制御部110が判断するための条件である。本実施形態においては、印刷可能条件として、2つの条件が設定されている。1つ目は、第2の画像(印刷ジョブ2の画像)の印刷開始位置の入力が変更され重なりがなくなったことである。2つ目は、吸着機構204がオフされ再度オンされたことである。例えば、印刷位置を変更するのに替えて、媒体の位置をずらすことで重なりがなくなるように調整することが可能である。吸着機構204がオフされ、再度オンされた場合には、このような作業がユーザーにより行われたと考えることができるため、吸着機構204がオフされ、再度オンされたことが印刷可能条件として設定されている。
【0033】
第1制御部110は、印刷可能条件を満たすまで待機し(ステップS130でN)、印刷可能条件を満たした場合には(ステップS130でY)、処理をステップS135へ進める。このように、第1制御部110は、印刷可能条件を満たすまで待機することで、1つの媒体に印刷される2つの画像が重なる場合には、予め定められた印刷可能条件を満たすまで、媒体への第2の画像の印刷を行わないよう制御することができる。
【0034】
ステップS135において、第1制御部110は、印刷開始入力が行われたか否かを判定する。第1制御部110は、印刷設定画面300において印刷開始ボタン302が選択された場合に印刷開始入力が行われたと判定する。第1制御部110は、印刷開始入力が行われるまで待機する(ステップS135でN)。第1制御部110は、印刷開始入力が行われると(ステップS135でY)、ユーザー操作により設定された印刷開始位置と、印刷サイズと、印刷ジョブと、を含んだ印刷指示を、第1通信部120を介して印刷装置200へ送信する(ステップS140)。印刷装置200は、第2通信部220を介して、印刷指示を受信すると、印刷指示に従い印刷を行うことで印刷物を生産する。
【0035】
このように、第1制御部110は、重なりが生じる可能性がある場合に、その旨を警告することができる。第1制御部110はさらに、重なりが解消するまで印刷開始入力を受け付けないよう制御することで、無駄な印刷が行われるのを防ぐことができる。
【0036】
一方で、第1制御部110は、ステップS105において媒体が交換された場合には(ステップS105でY)、ステップS110~ステップS130の処理を行うことなく、印刷制御処理を終了する。すなわち、第1制御部110は、媒体交換が行われた場合において、交換前に媒体に印刷された第1の画像と、交換後に印刷対象として指定された画像(第3の画像と称する)との重なりについては、警告の対象としない。媒体が交換されている場合には、第3の画像の印刷位置が第1の画像の印刷領域内であっても、画像が重なる状況が生じないためである。
【0037】
以上のように、本実施形態の印刷システム10においては、第2の画像を印刷する前の時点で、制御装置100が、1つの媒体の同一位置への二重印刷の可能性の警告を行う。したがって、カメラやプロジェクター等の特別な装置を追加することなく、印刷開始位置の設定ミスにより、意図せず画像が重畳して印刷されるといった事態を防ぐことができる。すなわち、高いコストを掛けることなく、二重印刷を防ぐことができる。
【0038】
(3)第2の実施形態:
次に、第2の実施形態の印刷システム10について、第1の実施形態の印刷システム10と異なる点を主に説明する。第2の実施形態の印刷システム10は、第1の画像と第2の画像が媒体上で重なるか否かを判定することなく、1つの媒体の同一位置への二重印刷の可能性の警告を行う。
【0039】
図8は、第2の実施形態に係る印刷制御処理を示すフローチャートである。ステップS200~ステップS210の処理は、第1の実施形態において
図5を参照しつつ説明した第1の実施形態に係る印刷制御処理のステップS100~ステップS110の処理と同様である。なお、第1制御部110は、ステップS205において、媒体が交換された場合には、処理をステップS220へ進める。
【0040】
また、第1制御部110は、設定入力が行われた場合には(ステップS210でY)、重なり判定を行うことなく警告表示を行う(ステップS215)。
図9は、第2の実施形態に係る警告表示画面の一例を示す図である。
図9に示すように、警告表示画面500には、第1の実施形態に係る印刷設定画面300と同様の内容を表示する設定領域510が設けられている。警告表示画面500にはさらに、設定領域510に入力された印刷開始位置に対応した、第1の画像及び第2の画像の媒体上における位置関係を示す画像を表示する画像表示領域520が設けられている。
【0041】
説明を
図8に戻す。第1制御部110は、警告表示を行った後、処理をステップS220へ進める。ステップS220及びステップS225の処理は、
図5のステップS135及びステップS140の処理と同様である。
【0042】
以上のように、第2の実施形態に係る印刷システム10においては、第1の実施形態に係る印刷システム10と同様に、第2の画像を印刷する前の時点で、制御装置100が、1つの媒体位置への二重印刷の可能性の警告を行う。これにより、特別な装置を追加することなく、すなわち高いコストを掛けることなく、二重印刷を防ぐことができる。
【0043】
さらに、第2の実施形態の印刷システム10においては、制御装置100は、2つの画像の位置関係を示す画像を表示する。したがって、2つの画像が重なっている場合に、ユーザーは、どの方向に、どの程度、印刷開始位置をずらせば重なりを解消できるのかを視覚的に容易に把握することができる。
【0044】
(4)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、印刷装置200は、スキャナー機能やFAX機能等を備えた複合機であってもよい。また、制御装置100の第1制御部110の機能は、印刷装置200の第2制御部210により実現されてもよい。この場合には、印刷装置200に設けられたUI部において警告が行われる。
【0045】
本実施形態の印刷装置200においては、印刷機構230としての媒体台201上をガントリー203が移動するものであるが、印刷機構は、媒体台に載置された媒体に対し、相対移動しながら印刷を行うものであればよい。すなわち、ガントリー203が固定された状態で、媒体台201が副走査方向Qに移動してもよい。また、プリントヘッド202の位置が固定され、媒体台201が主走査方向P及び副走査方向Qに移動してもよい。また、シリアル方式ではなくライン方式の印刷機構であって主走査方向Pへの移動を行わないようなものでもよい。吸着機構もポンプを用いた吸着のほかにファンで負圧を作ったり、静電気で吸着したり、他の手段を用いた吸着を行ってもよいし、これらを組み合わせて吸着を行ってもよい。
【0046】
媒体は、印刷が行われる印刷媒体であればよく、印刷用紙に限定されるものではない。他の例としては、媒体は、円形や楕円形の用紙であってもよい。また、印刷媒体は布等であってもよい。
【0047】
第1の実施形態においては、制御装置100の第1制御部110は、警告情報を表示部に表示することとしたが、第1制御部110は、ユーザーへの警告を行えばよく、警告の形態は実施形態に限定されるものではない。例えば、制御装置100がスピーカーを備える場合には、第1制御部110は、1つの媒体の同一位置への二重印刷の可能性を知らせる音声を警告情報としてスピーカーから音声出力してもよい。
【0048】
また、本実施形態においては、制御装置100は、第1の画像を印刷した後で、第2の画像の印刷開始位置が第1の画像の印刷範囲内に含まれる場合に、2つの画像が重なるとして警告を行うこととした。ただし、警告を行うタイミングは実施形態に限定されるものではない。例えば、制御装置100において、1つの媒体に印刷予定の2つの画像に対応した印刷サイズや印刷開始位置の入力が2つの画像のいずれの印刷も開始される前に行われるような手順であったとする。この場合、制御装置100は、2つの画像それぞれの印刷サイズ等が入力された後でかつ印刷開始前のタイミングで警告を行うこととしてもよい。
【0049】
また、制御装置100は、1つの媒体に印刷される2以上の画像が重なる場合に警告を行えばよい。すなわち、警告の対象となる重なりは、2つの画像の重なりに限定されるものではなく、3以上の画像の重なりであってもよい。また、警告の対象となる重なりは、印刷順が連続しない2以上の画像の重なりであってもよい。例えば、1つの媒体に印刷予定の3つの画像に対応した印刷サイズ等の入力が行われたとする。この場合に、3つの画像の重なりや、1番目に印刷される画像と3番目に印刷される画像の重なりが警告の対象となる。さらに、制御装置100は、画像の外形だけでなく、画像の内容を考慮して重なりを判定してもよい。具体的には、制御装置100は、1番目に印刷される画像の印刷領域において、印刷がされない、すなわちインクが塗布されない空白領域を特定する。また、制御装置100は、2番目に印刷される画像の印刷領域において、印刷がされる、すなわちインクが塗布される実印刷領域を特定する。そして、制御装置100は、2番目の画像の実印刷領域が1番目の画像の空白領域内に収まる場合には、重ならないと判断し、警告を行わないようにしてもよい。制御装置100は、例えば、1番目の画像の中央に空白領域があり、2番目の画像の実印刷領域が空白領域内に収まる場合には、重ならないと判断して警告を行わないようにしてもよい。
【0050】
制御装置100は、媒体上において第1の画像が印刷された領域内に、第2の画像が印刷されるような印刷位置が指定された場合に警告を行えばよく、ここで、印刷位置は印刷開始位置に限定されるものではない。すなわち、制御装置100は、第2の画像の印刷位置の少なくとも一部が第1の画像が印刷された領域内の位置になるような印刷位置が指定された場合に警告を行えばよい。
【0051】
印刷可能条件は、第1の実施形態に限定されるものではない。他の例としては、印刷設定画面300において、警告アイコン310a、310bの付近に、確認ボタンを表示することとし、ユーザーが重なった状態での印刷を希望する場合には、確認ボタンが押下することとしてもよい。そして、この場合には、確認ボタンが押下されたことが印刷可能条件として定義されてもよい。このように、印刷可能条件は、重なった状態での印刷を許可する指示が入力されたことを、印刷可能な状態になったことの条件として含んでもよい。これにより、第1制御部110は、あえて重なるように印刷したい場合にも対応することができる。
【0052】
本実施形態においては、制御装置100は、吸着機構204のオンオフにより媒体の交換が行われたか否かを判定したが、交換の有無の判定方法は実施形態に限定されるものではない。他の例としては、印刷装置200が人感センサーを備え、制御装置100は、人感センサーが人体を検出した場合に交換が行われたと判定してもよい。媒体を交換する作業のために人が近付いたと考えることができるためである。なお、人感センサーは、媒体台201の周囲の人体を検知すべく、媒体台201の周囲又は媒体台201に設置される。人感センサーは、人体の発する熱(赤外線)を検知するものとする。他の例としては、人感センサーは、媒体台201に設置され、媒体台201に人体が触れた時の静電気を検知するものであってもよい。印刷装置200の第2制御部210は、人感センサーが人体を検知した場合に検知通知を、第2通信部220を介して制御装置100へ送信する。そして、制御装置100は、検知通知を受信した場合に、媒体の交換が行われたと判定する。
【0053】
第2の実施形態においては、制御装置100は、第1の画像を印刷した後で、位置関係を示す画像を表示することとした。ただし、制御装置100は、位置関係を示す画像を表示すればよく、そのタイミングは実施形態に限定されるものではない。例えば上述のように印刷開始位置等の入力が、いずれの画像の印刷も開始される前に行われるとする。この場合には、制御装置100は、印刷開始前において、2つの画像の印刷開始位置等の入力が行われた場合に、入力に基づいて位置関係を示す画像を表示することとしてもよい。
【0054】
第2の実施形態においては、制御装置100は、位置関係を示す画像を表示することとしたが、位置関係を示す情報を出力すればよい。例えば、制御装置100は、重なっています、重なっていません、といったテキスト情報を表示部に表示してもよい。また、制御装置100がスピーカーを備える場合には、第1制御部110は、スピーカーからこれらのテキスト情報を読み上げる音声を出力してもよい。
【0055】
また、制御装置100は、第1の実施形態において2つの画像が重なると判定された場合に、第2の実施形態において
図9を参照しつつ説明した警告表示画面500のように、2つの画像の位置関係を示す画像を表示してもよい。
【0056】
さらに、実施形態は、プログラムや方法としても実現可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、複数の装置が備える部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのプログラムの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし半導体メモリーであってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0057】
10…印刷システム、100…制御装置、110…第1制御部、120…第1通信部、130…HDD、140…UI部、200…印刷装置、201…媒体台、202…プリントヘッド、203…ガントリー、210…第2制御部、220…第2通信部