(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】非接触計測装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/16 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
G01B11/16 G
(21)【出願番号】P 2020148883
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】禹 明▲勲▼
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-018713(JP,A)
【文献】特開2007-292468(JP,A)
【文献】特開平09-049705(JP,A)
【文献】特開2015-152490(JP,A)
【文献】国際公開第2005/103610(WO,A1)
【文献】特開2006-340890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光により被計測物の表面に生じた複数の斑点模様を有するスペックルパターンを前記被計測物の変化前後においてデジタルカメラにより撮像し、前記変化前後の前記スペックルパターンのデジタル画像を用いて前記被計測物の変化量を計測する非接触計測装置であって、
前記デジタル画像における前記スペックルパターン上の複数の斑点模様のうち、ピークロッキング現象が引き起こされる範囲以下のサイズの斑点模様を低減する低減処理を前記変化前後のデジタル画像のそれぞれに対して行う処理部と、
前記低減処理によって除去された前記変化前後のデジタル画像に対してデジタル画像相関法を適用することにより前記被計測物の変化量を計測する計測部と、
を備え、
前記低減処理は、
前記変化前後のデジタル画像に対してフーリエ変換を行うことで前記デジタル画像の周波数スペクトルを生成する第1処理と、
前記周波数スペクトルの高周波成分を低減させる第2処理と、
前記第2処理後の前記周波数スペクトルに対して逆フーリエ変換を行うことで、
前記範囲以下のサイズの斑点模様が低減された前記変化前後のデジタル画像を生成する第3処理と、
を含み、
前記計測部は、前記第3処理によって生成された前記変化前後のデジタル画像に対してデジタル画像相関法を適用することにより前記被計測物の変化量を計測し、
前記第2処理は、前記周波数スペクトルの周波数領域を周波数帯域が異なる複数の領域に分割し、分割した前記複数の領域のうち、前記周波数帯域が最も高い領域の周波数成分を完全に除去することなく低減させる、非接触計測装置。
【請求項2】
前記第2処理は、前記周波数スペクトルの周波数領域を、周波数帯域がそれぞれ異なる第1の領域と、第2の領域及び第3の領域に分割し、
前記第1の領域は、第1の周波数以上であり、前記第1の周波数よりも高い第2の周波数未満の周波数帯域であり、
前記第2の領域は、前記第2の周波数以上であり、前記第2の周波数よりも高い第3の周波数未満の周波数帯域であり、
前記第3の領域は、前記第3の周波数以上の周波数帯域であり、
前記処理部は、前記第1の領域における周波数成分に対してはフィルタリングせず、前記第2の領域における周波数成分に対しては線形的に減少するようにフィルタリングし、前記第3の領域における周波数成分に対しては全体的に一定の割合で減少するようにフィルタリングする、請求項1に記載の非接触計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光により被計測物の表面に生じた明暗の斑点模様(スペックルパターン)に基づいて、その被計測物の変位量や変形量(以下、単に「変化量」という。)を非接触で計測する方法がある(特許文献1,2参照)。
【0003】
上記方法は、被計測物の変化前後のスペックルパターンをそれぞれカメラで撮像し、その撮像したスペックルパターン画像に対してデジタル画像相関法を適用し、被計測物の変化量を非接触で計測する。デジタル画像相関法とは、サブセットと呼ばれる微小領域をスペックルパターン画像に設定し、サブセット内の輝度値の情報を用いて相関係数によりサブセットの移動量をピクセル単位で求める。そして、全計測範囲でサブセットの移動量を求めることで、変化量を計測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2005/103610号
【文献】特開2011-85584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
デジタル画像相関法では、デジタルカメラで撮像されたスペックルパターン画像(デジタル画像)が用いられる。デジタルカメラの計測空間は、ピクセル単位で量子化されている。そのため、スペックルパターン上の個々の斑点模様が小さくなると、ピークロッキング現象により、変化量の計測結果も量子化されて計測精度が低下する。その結果、被計測物の変化量を正確に計測することができない場合がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、スペックルパターンに基づいた被計測物の変化量を計測する場合において、変化量の計測精度を向上させることができる非接触計測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様は、レーザ光により被計測物の表面に生じた複数の斑点模様を有するスペックルパターンを前記被計測物の変化前後においてデジタルカメラにより撮像し、前記変化前後の前記スペックルパターンのデジタル画像を用いて前記被計測物の変化量を計測する非接触計測装置であって、前記デジタル画像における前記スペックルパターン上の複数の斑点模様のうち、前記斑点模様のサイズが所定の範囲以下である斑点模様を低減する低減処理を前記変化前後のデジタル画像のそれぞれに対して行う処理部と、前記低減処理によって除去された前記変化前後のデジタル画像に対してデジタル画像相関法を適用することにより前記被計測物の変化量を計測する計測部と、を備える非接触計測装置である。
【0008】
(2)上記(1)の非接触計測装置であって、前記低減処理は、前記変化前後のデジタル画像に対してフーリエ変換を行うことで前記デジタル画像の周波数スペクトルを生成する第1処理と、前記周波数スペクトルの高周波成分を低減させる第2処理と、前記第2処理後の前記周波数スペクトルに対して逆フーリエ変換を行うことで、前記所定の範囲以下のサイズの斑点模様が低減された前記変化前後のデジタル画像を生成する第3処理と、を含み、前記計測部は、前記第3処理によって生成された前記変化前後のデジタル画像に対してデジタル画像相関法を適用することにより前記被計測物の変化量を計測してもよい。
【0009】
(3)上記(2)の非接触計測装置であって、前記第2処理は、前記周波数スペクトルの周波数領域を周波数帯域が異なる複数の領域に分割し、分割した前記複数の領域のうち、前記周波数帯域が最も高い領域の周波数成分を完全に除去することなく低減させてもよい。
【0010】
(4)上記(3)の非接触計測装置であって、前記第2処理は、前記周波数スペクトルの周波数領域を、周波数帯域がそれぞれ異なる第1の領域と、第2の領域及び第3の領域に分割し、前記第1の領域は、第1の周波数以上であり、前記第1の周波数よりも高い第2の周波数未満の周波数帯域であり、前記第2の領域は、前記第2の周波数以上であり、前記第2の周波数よりも高い第3の周波数未満の周波数帯域であり、前記第3の領域は、前記第3の周波数以上の周波数帯域であり、前記処理部は、前記第1の領域における周波数成分に対してはフィルタリングせず、前記第2の領域における周波数成分に対しては線形的に減少するようにフィルタリングし、前記第3の領域における周波数成分に対しては全体的に一定の割合で減少するようにフィルタリングしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、スペックルパターンに基づいた被計測物の変化量を計測する場合において、変化量の計測精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る非接触計測装置を備えた非接触計測システムAの概略構成の一例を示す図である。
【
図2】本実施形態に係るフィルタの伝達関数を説明する図である。
【
図3】本実施形態に係る低減処理の流れを示す図である。
【
図4】本実施形態に係る低減処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る非接触計測装置を、図面を用いて説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る非接触計測装置を備えた非接触計測システムAの概略構成の一例を示す図である。
図1に示すように、非接触計測システムAは、レーザ光源1及び非接触計測装置2を備える。
【0015】
レーザ光源1は、所定波長のレーザ光を被計測物Wの表面に向けて照射する。
【0016】
レーザ光源1は、所定波長のレーザ光を被計測物Wの表面に向けて照射することで、被計測物Wの表面にランダムな明暗の斑点模様、すなわちスペックルパターンが形成する。このスペックルパターンは、レーザ光源1から照射されたレーザ光が被計測物Wの表面において乱反射し、その乱反射したレーザ光が互いに干渉して生じるランダムな複数の斑点模様である。
【0017】
なお、レーザ光源1と被計測物Wとの間におけるレーザ光の光路上において、レーザ光のビーム径を拡大する凹レンズや、当該凹レンズによりビーム径が拡大されたレーザ光を互いに平行にする凸レンズが設けられてもよい。
【0018】
非接触計測装置2は、被計測物Wの表面に形成されたスペックルパターンに基づいて被計測物Wが変化した量(変化量)を計測する。ここで、変化とは、被計測物Wの状態が変化することであり、例えば、外力による被計測物Wの変形や変位である。この被計測物Wに外力を与える場合とは、例えば、被計測物Wに対して曲げ試験や引張・圧縮等の強度試験を行う場合である。したがって、被計測物Wの変化前とは、例えば、強度試験を行う場合に外力を被計測物Wに与える前である。一方、被計測物Wの変化後とは、例えば、強度試験を行う場合に外力を被計測物Wに与えた後である。
【0019】
本実施形態の非接触計測装置2は、撮像装置3及び処理装置4を備える。
【0020】
撮像装置3は、被計測物Wの表面に形成されたスペックルパターンを撮像する。そして、撮像装置3は、撮像したスペックルパターンの画像をデジタル画像Gで処理装置4に送信する。例えば、撮像装置3は、デジタルカメラであって、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等を備える。例えば、撮像装置3は、デジタル画像Gを有線又は無線で処理装置4に送信する。
【0021】
処理装置4は、CPU又はMPUなどのマイクロプロセッサ、MCUなどのマイクロコントローラなどにより構成されてよい。例えば、処理装置4は、コンピュータである。以下において、本実施形態に係る処理装置4の機能部について説明する。
【0022】
処理装置4は、処理部100、記憶部110及び計測部120を備える。
【0023】
処理部100は、デジタル画像Gにおけるスペックルパターン上の複数の斑点模様のうち、斑点模様のサイズが所定の範囲X以下である斑点模様を低減する低減処理を変化前後のデジタル画像Gのそれぞれに対して行う。所定の範囲Xは、ピークロッキング現象が引き起こされる範囲であって、例えば3ピクセル又は4ピクセルである。
【0024】
ここで、撮像装置3で撮像された、被計測物Wの変化前のデジタル画像Gを「変化前デジタル画像Ga」と称する。撮像装置3で撮像された、被計測物Wの変化後のデジタル画像Gを「変化後デジタル画像Gb」と称する。また、デジタル画像Gaに対して低減処理が行われた画像を、「変化前デジタル画像Ga´」と称する。また、デジタル画像Gbに対して低減処理が行われた画像を、「変化後デジタル画像Gb´」と称する。
【0025】
処理部100は、撮像装置3から変化前デジタル画像Gaを取得すると、変化前デジタル画像Gaに対して低減処理を行うことで変化前デジタル画像Ga´を生成する。そして、処理部100は、生成した変化前デジタル画像Ga´を記憶部110に格納する。処理部100は、撮像装置3から変化後デジタル画像Gbを取得すると、変化後デジタル画像Gbに対して低減処理を行うことで変化後デジタル画像Gb´を生成する。そして、処理部100は、生成した変化後デジタル画像Gb´を記憶部110に格納する。
【0026】
記憶部110には、変化前デジタル画像Ga´及び変化後デジタル画像Gb´が格納される。また、記憶部110には、非接触計測装置2全体を制御するための制御プログラム等を格納している。なお、記憶部110は、処理部100及び計測部120のワークメモリとして機能してもよい。
【0027】
計測部120は、低減処理後の変化前デジタル画像Ga´及び変化後デジタル画像Gb´に対してデジタル画像相関法を適用することにより、被計測物Wの変化量を計測する。デジタル画像相関法に関しては公知であるため詳細については省略するが、デジタル画像相関法とは、サブセットと呼ばれる微小領域をデジタル画像に設定し、サブセット内の輝度値の情報を用いて相関係数によりサブセットの移動量をピクセル単位で求める。そして、計測部120は、全計測範囲でサブセットの移動量を求めることで、変化量を計測する。例えば、計測部120は、変化前デジタル画像Ga´と、変化後デジタル画像Gb´とを用いて、デジタル画像相関法により、被計測物Wが変化した後の任意の領域の位置を変化後画像の中から探し出す。これは、被計測物Wの表面に形成されたスペックルパターンが被計測物Wの表面の変化とともに変化し、変化前後でスペックルパターンの特徴が保たれるからである。
【0028】
以下において、本実施形態に係る処理部100が低減処理を行うための機能部について説明する。処理部100は、第1変換部200、フィルタ部210及び第2変換部220を備える。
【0029】
第1変換部200は、撮像装置3から取得したデジタル画像Gに対してフーリエ変換を行うことでデジタル画像Gの周波数スペクトルを生成する第1処理を実行する。例えば、前記フーリエ変換とは、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform)である。
【0030】
フィルタ部210は、第1変換部200で生成されたデジタル画像Gの周波数スペクトルに対して高周波成分を低減させるフィルタリング処理(以下、「第2処理」という。)を実行する。すなわち、フィルタ部210は、ピークロッキング現象に起因する変化量の計測の誤差を低減するため、デジタル画像Gを周波数空間で所定の範囲X以下に該当する周波数成分を低減させる第2処理を実行する。
【0031】
第2処理の一例として、フィルタ部210は、周波数スペクトルの周波数領域を、周波数帯域が異なる複数の領域に分割し、分割した複数の領域のうち、周波数帯域が最も高い領域の周波数成分を完全に除去することなく低減させる。第2処理の具体例として、
図2に示すように、フィルタ部210は、周波数スペクトルの周波数領域を、周波数帯域がそれぞれ異なる第1の領域310、第2の領域320及び第3の領域330に分割する。
【0032】
第1の領域310は、第1の周波数H1以上から、第1の周波数H1よりも高い第2の周波数H2未満までの周波数帯域(H1≦周波数<H2)である。例えば、第1の周波数H1が0Hzであり、第1の周波数H2が0.1Hzである。第2の領域320は、第2の周波数H2以上から、第2の周波数H2よりも高い第3の周波数H3未満までの周波数帯域(H2≦周波数<H3)である。例えば、第3の周波数H3が0.333Hzである。第3の領域330は、第3の周波数H3以上の周波数帯域(H3≦周波数)である。
【0033】
フィルタ部210は、第1変換部200で生成されたデジタル画像Gの周波数スペクトルにおいて、第1の領域310における周波数成分に対してはフィルタリングせず、第2の領域320における周波数成分に対しては線形的に減少するようにフィルタリングし、第3の領域330における周波数成分に対しては全体的に一定の割合で減少するようにフィルタリングする。ここで、線形的に減少とは、例えば一次関数的に減少することである。
【0034】
本実施形態では
図2に示すように第2処理におけるフィルタの伝達関数は、空間周波数上で3つの領域(第1の領域310、第2の領域320及び第3の領域330)に切り分けたフィルタリングとする。このフィルタの伝達関数は、第1の領域310においては係数を「1」とし、第3の領域330においては係数を例えば「0.5」とする。また、第2の領域320に関しては線形的に減少するように係数が調整される。フィルタ部210は、
図2に示す伝達関数をフィルタリングとしてコンボリューションすることで、スペックルパターンのランダム性を維持しながら、高周波成分も低減し、変化が離散化するピークロッキング現象を低減することができる。
【0035】
第2変換部220は、第2処理後の周波数スペクトルに対して逆フーリエ変換を行うことで、所定の範囲X以下のサイズの斑点模様が低減された変化前後のデジタル画像Gを生成する第3処理を実行する。すなわち、第2変換部220は、変化前デジタル画像Gaの周波数スペクトルに対して第2処理が行われ、第2処理が行われた周波数スペクトルに対して逆フーリエ変換を行うことで変化前デジタル画像Ga´を生成する。第2変換部220は、変化後デジタル画像Gbの周波数スペクトルに対して第2処理が行われ、第2処理が行われた周波数スペクトルに対して逆フーリエ変換を行うことで変化後デジタル画像Gb´を生成する。そして、変化前デジタル画像Ga´及び変化後デジタル画像Gb´は、記憶部110に格納される。このように本実施形態の低減処理は、第1処理、第2処理及び第3処理を含む処理である。
【0036】
以下、本実施形態に係る低減処理の流れについて、
図3及び
図4説明する。
処理部100は、撮像装置3からデジタル画像Gを取得する(ステップS101)。
図3は、本実施形態のデジタル画像Gの一例を示す図である。処理部100は、
図3に示すようなデジタル画像Gを取得すると、そのデジタル画像Gに対してフーリエ変換を行うことで、
図4に示すようなデジタル画像Gの周波数スペクトルSを生成する(ステップS102)。
【0037】
処理部100は、生成したデジタル画像Gの周波数スペクトルS、すなわち周波数空間上で各周波数成分に対するパワーを、
図2に示すような伝達関数でコンボリューションする(ステップS103)。例えば、処理部100は、空間周波数上で第1の領域310、第2の領域320及び第3の領域330の3つの領域に分割する。そして、処理部100は、第1の領域310における周波数成分に対してはフィルタリングせず、第2の領域320における周波数成分に対しては線形的に減少するようにフィルタリングする。また、処理部100は、第3の領域330における周波数成分に対しては全体的に一定の割合で減少するようにフィルタリングする。
【0038】
そして、処理部100は、フィルタリングされた周波数スペクトルS´に対して逆フーリエ変換を行うことでデジタル画像G´を生成する(ステップS104)。そして、処理部100は、低減処理されたデジタル画像G´を記憶部110に格納する(ステップS105)。なお、処理部100は、
図3に示す低減処理を、変化前デジタル画像Ga及び変化後デジタル画像Gbのそれぞれに対して行う。したがって、記憶部110には、低減処理された変化前デジタル画像Ga´及び変化後デジタル画像Gb´が格納される。したがって、計測部120は、低減処理後の変化前デジタル画像Ga´及び変化後デジタル画像Gb´に対してデジタル画像相関法を適用することにより、被計測物Wの変化量を計測する。計測部120は、計測した変化量を外部装置(例えば、表示装置)に出力する。
【0039】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0040】
上記実施形態の処理部100は、低減処理を行う前において平均化処理を実行してもよい。例えば、処理部100は、撮像装置3から複数のデジタル画像Gを取得し、その取得した複数のデジタル画像Gを平均化することで一つのデジタル画像Gavを生成する。ここで、デジタル画像Gの平均化とは、複数間のデジタル画像Gにおいて、同一のピクセルの輝度値を平均化する処理である。処理部100は、生成したデジタル画像Gavに対して低減処理を実行してもよい。処理部100は、平均化処理及び低減処理の一連の処理を、変化前デジタル画像Ga及び変化後デジタル画像Gbのそれぞれにおいて実行してもよい。このように、処理部100は、平均化処理を実行することで高温環境下における空気の揺らぎを低減することができる。
【0041】
上記処理部100は、生成した変化前デジタル画像Ga´及び変化後デジタル画像Gb´を記憶部110に格納せずに、計測部120に出力してもよい。
【0042】
上記非接触計測装置2は、撮像装置3を備えない構成であってもよい。
【0043】
上述したように、本実施形態に係る非接触計測装置2は、デジタル画像Gにおけるスペックルパターン上の複数の斑点模様のうち、斑点模様のサイズが所定の範囲X以下である斑点模様を低減する低減処理を変化前後のデジタル画像Gのそれぞれに対して行う。
【0044】
このような構成により、非接触計測装置2は、ピークロッキング現象を抑制することができ、変化量の計測精度を向上させることができる。
【0045】
また、非接触計測装置2は、周波数スペクトルの周波数領域を周波数帯域が異なる複数の領域に分割し、分割した前記複数の領域のうち、周波数帯域が最も高い領域の周波数成分を完全に除去することなく低減させる。
【0046】
このような構成により、非接触計測装置2は、スペックルパターンのランダム性を維持しつつ、小さな輝度値範囲を示す周波数成分を低減することができる。
【0047】
なお、上述した非接触計測装置2の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。この場合、上記コンピュータは、CPU、GPUなどのプロセッサ及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えてもよい。そして、上記非接触計測装置2の全部または一部の機能をコンピュータで実現するためのプログラムを上記コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムを上記プロセッサに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。ここで、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0048】
明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「備える」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【0049】
また、明細書に記載の「…部」の用語は、少なくとも1つの機能や動作を処理する単位を意味し、これは、ハードウェアまたはソフトウェアとして具現されてもよいし、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで具現されてもよい。
【符号の説明】
【0050】
A…非接触計測システム、1…レーザ光源、2…非接触計測装置、3…撮像装置、4…処理装置、100…処理部、110…記憶部、120…計測部