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特許7517001液体噴射装置および液体噴射装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】液体噴射装置および液体噴射装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20240709BHJP
   B41J 2/19 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B41J2/175 153
B41J2/175 301
B41J2/175 175
B41J2/19
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020151172
(22)【出願日】2020-09-09
(65)【公開番号】P2022045531
(43)【公開日】2022-03-22
【審査請求日】2023-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】平井 康章
(72)【発明者】
【氏名】深澤 茂則
(72)【発明者】
【氏名】小関 光浩
(72)【発明者】
【氏名】▲羽▼賀 大翔
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-013453(JP,A)
【文献】特開2005-074985(JP,A)
【文献】特開2016-043601(JP,A)
【文献】特開2014-205301(JP,A)
【文献】特開2019-014162(JP,A)
【文献】特開2015-066485(JP,A)
【文献】特開2018-034335(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0290454(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/175
B41J 2/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記液体を収容する交換可能な液体収容部から前記液体噴射ヘッドへ前記液体を供給する供給流路と、
前記供給流路に設けられ、前記液体収容部から前記液体を吸引し、前記液体噴射ヘッドに前記液体を送る送液部と、
前記送液部の駆動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記液体収容部内の前記液体の残量が閾値を下回った場合には、前記閾値以上である場合よりも、前記送液部が一度に吸引する前記液体の量を少なくするとともに、前記送液部が吸引する回数を増やすことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記液体を収容する交換可能な液体収容部から前記液体噴射ヘッドへ前記液体を供給する供給流路と、
前記供給流路に設けられ、前記液体収容部から前記液体を吸引し、前記液体噴射ヘッドに前記液体を送る送液部と、
前記送液部の駆動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記液体収容部内の前記液体の残量が閾値を下回った場合には、前記閾値以上である場合よりも、前記送液部が前記液体を吸引する速度を遅くすることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項3】
液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記液体を収容する交換可能な液体収容部から前記液体噴射ヘッドへ前記液体を供給する供給流路と、
前記供給流路に設けられ、前記液体収容部から前記液体を吸引し、前記液体噴射ヘッドに前記液体を送る送液部と、
前記送液部の駆動を制御する制御部と
前記供給流路において、前記送液部と前記液体噴射ヘッドとの間に設けられ、前記液体を貯留可能な液体貯留部と、
前記液体貯留部内の前記液体の量を検出可能な検出部と、を備え、
前記制御部は
前記液体収容部に収容される前記液体の量を表す収容量目安値および前記液体噴射ヘッドから排出される前記液体の排出量を表す排出量目安値に基づいて、前記液体収容部内の前記液体の残量を算出するカウント部と、
前記液体貯留部内の前記液体の量が所定量を下回ったことを前記検出部が検出した時における前記液体収容部内の前記液体の残量を記憶する記憶部と、を有し、
前記記憶部が記憶する前記液体収容部内の前記液体の残量に基づいて前記排出量目安値を補正し、
前記カウント部が算出した前記液体収容部内の前記液体の残量に応じて前記送液部の駆動制御を変更することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記排出量目安値の補正を所定回数行った後は、前記カウント部による算出結果に基づいて、前記液体貯留部内の前記液体の量が前記所定量を下回ったことを前記検出部が検出するよりも先にユーザーに報知することを特徴とする請求項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記液体を収容する交換可能な液体収容部から前記液体噴射ヘッドへ前記液体を供給する供給流路と、
前記供給流路に設けられ、前記液体収容部から前記液体を吸引し、前記液体噴射ヘッドに前記液体を送る送液部と、
前記送液部の駆動を制御する制御部と
前記供給流路において、前記送液部と前記液体噴射ヘッドとの間に設けられ、前記液体を貯留可能な液体貯留部と、
前記液体貯留部内の前記液体の量を検出可能な検出部と、を備え、
前記制御部は、前記液体収容部内の前記液体の残量が閾値以上の場合には、前記液体貯留部内の前記液体の量が所定量を下回る前に前記送液部による送液を行い、前記液体収容部内の前記液体の残量が前記閾値を下回ったときに、前記送液部による送液を停止させ、前記液体貯留部内の前記液体の量が前記所定量を下回った後に前記送液部による送液を行うことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項6】
液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記液体を収容する交換可能な液体収容部から前記液体噴射ヘッドへ前記液体を供給する供給流路と、
前記供給流路に設けられ、前記液体収容部から前記液体を吸引し、前記液体噴射ヘッドに前記液体を送る送液部と、を備える液体噴射装置の制御方法であって、
前記液体収容部内の前記液体の残量が閾値を下回った場合には、前記閾値以上である場合よりも、前記送液部が一度に吸引する前記液体の量を少なくするとともに、前記送液部が吸引する回数を増やすことを特徴とする液体噴射装置の制御方法。
【請求項7】
液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記液体を収容する交換可能な液体収容部から前記液体噴射ヘッドへ前記液体を供給する供給流路と、
前記供給流路に設けられ、前記液体収容部から前記液体を吸引し、前記液体噴射ヘッドに前記液体を送る送液部と、を備える液体噴射装置の制御方法であって、
前記液体収容部内の前記液体の残量が閾値を下回った場合には、前記閾値以上である場合よりも、前記送液部が前記液体を吸引する速度を遅くすることを特徴とする液体噴射装置の制御方法。
【請求項8】
液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記液体を収容する交換可能な液体収容部から前記液体噴射ヘッドへ前記液体を供給する供給流路と、
前記供給流路に設けられ、前記液体収容部から前記液体を吸引し、前記液体噴射ヘッドに前記液体を送る送液部と
前記供給流路において、前記送液部と前記液体噴射ヘッドとの間に設けられ、前記液体を貯留可能な液体貯留部と、
前記液体貯留部内の前記液体の量を検出可能な検出部と、を備える液体噴射装置の制御方法であって、
前記液体収容部に収容される前記液体の量を表す収容量目安値および前記液体噴射ヘッドから排出される前記液体の排出量を表す排出量目安値に基づいて、前記液体収容部内の前記液体の残量を算出し、
前記液体貯留部内の前記液体の量が所定量を下回ったことを前記検出部が検出した時における前記液体収容部内の前記液体の残量を記憶し、
記憶された前記液体収容部内の前記液体の残量に基づいて前記排出量目安値を補正し、
算出した前記液体収容部内の前記液体の残量に応じて前記送液部の駆動制御を変更することを特徴とする液体噴射装置の制御方法。
【請求項9】
記排出量目安値の補正を所定回数行った後は、前記液体収容部内の前記液体の残量を算出した結果に基づいて、前記液体貯留部内の前記液体の量が前記所定量を下回ったことを前記検出部が検出するよりも先にユーザーに報知することを特徴とする請求項8に記載の液体噴射装置の制御方法。
【請求項10】
液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記液体を収容する交換可能な液体収容部から前記液体噴射ヘッドへ前記液体を供給する供給流路と、
前記供給流路に設けられ、前記液体収容部から前記液体を吸引し、前記液体噴射ヘッドに前記液体を送る送液部と
前記供給流路において、前記送液部と前記液体噴射ヘッドとの間に設けられ、前記液体を貯留可能な液体貯留部と、
前記液体貯留部内の前記液体の量を検出可能な検出部と、を備える液体噴射装置の制御方法であって、
前記液体収容部内の前記液体の残量が閾値以上の場合には、前記液体貯留部内の前記液体の量が所定量を下回る前に前記送液部による送液を行い、前記液体収容部内の前記液体の残量が前記閾値を下回ったときに、前記送液部による送液を停止させ、前記液体貯留部内の前記液体の量が前記所定量を下回った後に前記送液部による送液を行うことを特徴とする液体噴射装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体に液体を噴射する液体噴射装置および液体噴射装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された液体噴射装置は、液体を収容する袋体を備える着脱可能な液体収容部の一例である液体供給源と、液体を噴射する液体噴射ヘッドの一例である液体噴射部と、液体供給源の液体を液体噴射部に向けて加圧供給するための送液部の一例である供給ポンプと、を備える。供給ポンプは、液体供給源と液体噴射ヘッドとを接続する供給流路に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-58255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された液体噴射装置において、液体供給源の液体がなくなる付近で供給ポンプが駆動されると、液体収容部内に高い負圧が作用するため、液体収容部内に気泡が流入する場合がある。そして、この気泡が液体収容部内から供給流路内に流出して液体噴射部のノズルに到達することにより、噴射不良が発生する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する液体噴射装置は、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体を収容する交換可能な液体収容部から前記液体噴射ヘッドへ前記液体を供給する供給流路と、前記供給流路に設けられ、前記液体収容部から前記液体を吸引し、前記液体噴射ヘッドに前記液体を送る送液部と、前記送液部の駆動を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記液体収容部内の前記液体の残量に応じて前記送液部の駆動制御を変更する。
【0006】
上記課題を解決する液体噴射装置の制御方法は、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体を収容する交換可能な液体収容部から前記液体噴射ヘッドへ前記液体を供給する供給流路と、前記供給流路に設けられ、前記液体収容部から前記液体を吸引し、前記液体噴射ヘッドに前記液体を送る送液部と、を備える液体噴射装置の制御方法であって、前記液体収容部内の前記液体の残量に応じて前記送液部の駆動制御を変更する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1および第2実施形態における液体噴射装置を示す斜視図。
図2図1の液体噴射装置の内部構造を示す正面図。
図3図1の液体噴射装置が備える装着部の斜視図。
図4図1の液体噴射装置が備えるメンテナンス部の模式図。
図5図1の液体噴射装置が備える流路ユニットの斜視図。
図6図1の液体噴射装置に装着される液体収容部の斜視図。
図7図6の液体収容部を別の角度から見た斜視図。
図8図5の流路ユニットの吸引動作時の内部構成を示す模式図。
図9図5の流路ユニットの吐出動作時の内部構成を示す模式図。
図10図5の流路ユニットが備える液体貯留部の断面図。
図11】液体の量が所定量を下回った状態の液体貯留部の断面図。
図12】供給流路を閉鎖した状態の液体貯留部の断面図。
図13】第1実施形態における液体噴射装置の電気的構成を示すブロック図。
図14】第1および第2実施形態における供給流路の模式図。
図15図14の供給流路において、液体の残量が閾値を下回った場合に送液部内の液体が使用されるときの模式図。
図16図14の供給流路において、液体の残量が閾値を下回った場合に液体貯留部内の液体が使用されるときの模式図。
図17図14の供給流路において、液体の残量が閾値を下回った場合に液体収容部内の液体が使用されるときの模式図。
図18】第1実施形態における液体噴射装置の制御方法を示すフローチャート。
図19】第2実施形態における液体噴射装置の電気的構成を示すブロック図。
図20】第2実施形態における排出量目安値の補正方法を示すフローチャート。
図21】第2実施形態における液体噴射装置の制御方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、液体噴射装置および液体噴射装置の制御方法の、第1実施形態および第2実施形態を、図面を参照して説明する。液体噴射装置は、例えば、用紙などの媒体に液体の一例であるインクを噴射して記録するインクジェット式のプリンターである。
【0009】
(第1実施形態)
<液体噴射装置の構成について>
図1に示すように、液体噴射装置11は、略直方体状の外装体12を備える。外装体12の前面には、底部側から上に向かって順に、前蓋15、装着口17、排出トレイ18、および操作パネル19が配置される。前蓋15は、液体収容部21が着脱可能に装着される装着部14を覆い、回動可能に構成される。装着口17には、媒体を収容可能な媒体収容体16が装着される。排出トレイ18には、記録された媒体が排出される。操作パネル19では、ユーザーによって液体噴射装置11の操作が行われる。操作パネル19は、タッチパネル式の表示部19aを備える。表示部19aには、メニューやメッセージ等が表示される。すなわち、この外装体12の前面において、液体噴射装置11に対する操作が主に行なわれる。
【0010】
装着部14は、1または複数の液体収容部21が着脱可能に構成される。液体収容部21は、容器13と、容器13から取り外し可能に載置される液体収容体20と、で構成される。本実施形態においては、4つの容器13と、それぞれの容器13に載置される液体収容体20と、により4つの液体収容部21が構成される。そして、4つの液体収容体20は、それぞれ異なる種類の液体を収容する。液体は、例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー等の色の異なるインクである。これにより、ユーザーは、液体収容体20内の液体の残量が空になったときや、液体収容体20内の液体の残量が少なくなったときに、液体収容部21を、液体収容体20内の液体が満杯の新しい液体収容部21に、交換することができる。すなわち、本実施形態の液体噴射装置11は、液体を収容する液体収容部21を装着部14に対して交換可能に構成される。
【0011】
図面では、液体噴射装置11は、平面上に置かれているものとし、幅方向と奥行方向は実質的に水平である。そして、鉛直方向をZ軸で、Z軸と交差する面に沿う方向をX軸及びY軸で示す。X軸、Y軸、及びZ軸は、好ましくは互いに直交する。以下の説明では、X軸方向を幅方向X、Y軸方向を奥行き方向Y、Z軸方向を鉛直方向Zともいう。本実施形態においては、液体収容部21が装着部14に装着されるときの移動経路と交差する方向が幅方向となり、移動経路が延びる方向が奥行方向となる。また、液体収容部21が装着部14に装着されるときの液体収容部21の移動方向を装着方向ともいい、液体収容部21が装着部14から取り出されるときの液体収容部21の移動方向を取出方向ともいう。
【0012】
図2に示すように、外装体12の内部には、底部から上に向かって順に、装着部14、媒体収容部23、搬送部24、および記録部25が収容される。すなわち、液体噴射装置11は、装着部14と、媒体収容部23と、搬送部24と、記録部25とを備える。さらに、液体噴射装置11は、記録部25のメンテナンスを行うメンテナンス部26と、記録部25に液体を供給する供給流路27と、記録部25等の動作を制御する制御部29と、を備える。
【0013】
媒体収容部23は、媒体Sを収容する引出し型の媒体収容体16と、媒体収容体16の移動を案内する案内枠35とを有する。搬送部24は、媒体Sを支持する媒体支持部36を有する。搬送部24は、媒体収容部23に収容された媒体Sを媒体収容部23から一枚ずつ取り出して搬送し、媒体支持部36の上に配置する。
【0014】
記録部25は、ノズル37から液体を噴射する液体噴射ヘッド38と、液体噴射ヘッド38を保持するキャリッジ39と、を備える。外装体12の内側には、幅方向に沿って延びるガイド軸40が架設される。キャリッジ39は、ガイド軸40に沿って幅方向に往復移動し、その往復移動の途中で液体噴射ヘッド38が媒体支持部36上に配置された媒体Sに対して液体を噴射することで記録が行われる。
【0015】
液体収容部21には、液体噴射ヘッド38に供給される液体が収容される。供給流路27は、液体収容部21から液体噴射ヘッド38に液体を供給する流路である。そのため、液体の種類毎に少なくとも1つの供給流路27が設けられる。本実施形態においては、4つの供給流路27が設けられる。
【0016】
供給流路27は、上流側流路41と、下流側流路42と、上流側流路41および下流側流路42を接続する接続流路43と、を有する。上流側流路41は、流路ユニット33と、可撓性を有する供給チューブ44と、を含んで構成される。
【0017】
図3に示すように、装着部14は、液体収容部21を収容可能な収容空間を形成する枠体31を有する。外装体12の前面側に、枠体31は収容空間に連通する挿入口31aを形成する。さらに、枠体31は、液体収容部21の着脱時の移動を案内するために、奥行方向に延びる1または2以上の凸形状または凹形状からなる線状の案内レール31bを複数組有することが好ましい。液体収容部21は、挿入口31aを通じて収容空間に入り、奧に向かって延びる移動経路に沿って奥行方向に移動することにより装着部14に装着される。
【0018】
枠体31が形成する収容空間の奥には、中空針状の接続部32を有する流路ユニット33が設けられる。液体収容部21が装着部14に装着されると、液体収容部21が有する図2に示す供給口34と接続部32とが接続される。液体収容部21は、液体収容部21に収容された液体を、接続部32を通じて液体噴射装置11に供給可能な状態になる。本実施形態においては、液体噴射装置11に装着される4つの液体収容部21に対しそれぞれ対応するように、4つの流路ユニット33が設けられる。
【0019】
装着部14は、液体収容部21内の液体を図2に示す液体噴射ヘッド38に供給する供給機構28を備える。そして、供給機構28は、変圧機構46と、変圧機構46の駆動源47と、流路ユニット33と変圧機構46とを繋ぐ変圧流路48と、を備える。
【0020】
例えば、変圧機構46は大気開放弁を含み、駆動源47は減圧ポンプである。大気開放弁は、開弁されることによって変圧流路48と大気とを連通する。減圧ポンプは、変圧流路48内の空気を変圧流路48外に排出することによって、変圧流路48内の気圧を下げる。大気開放弁が閉弁された状態で減圧ポンプが駆動されることによって、変圧流路48が減圧される。また、駆動源が停止されて大気開放弁が開弁されることにより、変圧流路48が大気に開放されて、変圧流路48の圧力が元に戻る。このようにして、供給機構28の駆動により、図2に示す制御部29によって変圧流路48の圧力が制御される。なお、弁を開くことを、開弁する、または弁を開放するという。また、弁を閉じることを、閉弁する、または弁を閉鎖するという。
【0021】
図4に示すように、メンテナンス部26は、液体噴射ヘッド38に対応する大きさに形成された有底箱状のキャップ49と、キャップ49を昇降移動させるための昇降機構50と、キャップ49内を吸引するための吸引部51とを備える。
【0022】
液体噴射装置11においては、液体噴射ヘッド38のノズル37の目詰まり、または異物の付着などに起因して生じる噴射不良の予防または解消のために、キャッピング、フラッシング、クリーニング、などのメンテナンス動作が行なわれる。
【0023】
キャッピングとは、液体噴射ヘッド38が液体の噴射を行わないときに、キャップ49が、ノズル37の開口を囲うように液体噴射ヘッド38に当接する動作をいう。これにより、液体噴射ヘッド38のノズル37が開口する下面側との間に閉空間域を囲み形成する。キャッピングによって、ノズル37内の液体の増粘が抑制されるため、噴射不良の発生が予防できる。
【0024】
フラッシングとは、ノズル37から記録とは関係のない液滴が排出されるための噴射動作をいう。フラッシングによって、ノズル37から噴射不良の原因となる増粘した液体、気泡または異物が排出されるため、ノズル37の目詰まりを予防することができる。液体噴射ヘッド38がキャップ49内に向かってノズル37から液滴を噴射することで、フラッシングが行なわれる。
【0025】
クリーニングとは、液体噴射ヘッド38のノズル37に吸引力が加えられてノズル37から強制的に液体が排出される動作をいう。キャップ49は、上昇移動してノズル37の開口を囲うように液体噴射ヘッド38に当接することにより、液体噴射ヘッド38のノズル37が開口する下面側との間に閉空間域を囲み形成する。そして、この状態で吸引部51を駆動することにより、閉空間域に負圧を発生させ、ノズル37を通じて液体噴射ヘッド38内の液体を排出させる吸引クリーニングが実行される。
【0026】
図5に示すように、流路ユニット33は、幅方向において接続部32を挟む両側にそれぞれ第1接続機構53fと第2接続機構53sとを有する。第1接続機構53fは、接続部32より鉛直下方において取出方向に突出するアーム54を備える。アーム54の先端には図2に示す液体収容部21に係合するための係合部55が設けられる。アーム54は基端側を中心に先端側が回動可能に構成される。係合部55は、例えば、アーム54から鉛直上方に突出して、図3に示す装着部14に装着されるときの液体収容部21の移動経路上に配置される。
【0027】
第1接続機構53fは、接続部32より鉛直上方に配置されて取出方向に突出する基板接続部56を備える。基板接続部56は、フラットケーブル等の電気回線57を介して制御部29と接続される。基板接続部56は、上端が下端よりも取出方向に突出して、斜め下を向くように配置されることが好ましい。また、幅方向において基板接続部56の両側には、幅方向に突出するとともに装着方向に沿って延びる一対の案内凸部56aが配置されることが好ましい。
【0028】
第2接続機構53sは、接続部32より鉛直上方において取出方向に突出する誤挿入防止用のブロック58を備えることが好ましい。ブロック58は下方に向いて配置される凹凸形状を有し、この凹凸の形状は、流路ユニット33毎に異なる。
【0029】
流路ユニット33は、一対の位置決め突部59a,59bと、接続部32を囲むように配置される押出機構60と、接続部32の下方で取出方向に突出する液受部61と、を備える。一対の位置決め突部59a,59bは、それぞれ第1接続機構53fと第2接続機構53sとに含まれるように接続部32を挟んで幅方向に並ぶ。位置決め突部59a,59bは、例えば、互いに平行をなして取出方向に突出する棒状の突部としてもよい。位置決め突部59a,59bの取出方向への突出長さは接続部32の取出方向への突出長さより長いことが好ましい。
【0030】
押出機構60は、接続部32の基端部分を囲む枠部材60aと、枠部材60aから取出方向に突出する押圧部60bと、押圧部60bを介して液体収容部21を取出方向に付勢する付勢部60cと、を備える。付勢部60cは、例えば、枠部材60aと押圧部60bの間に介装されたコイルばねとしてもよい。
【0031】
<液体収容部について>
図6に示すように、液体収容部21は、略直方体状の外形をなす容器13と、容器13に対して着脱可能な液体収容体20とを有し、液体収容体20は、容器13に着脱される際にユーザーにより把持される取っ手部20aを備える。
【0032】
液体収容部21は、図3に示す装着部14に装着されるときに先に進む方を先端とし、先端の反対側の端を基端とすると、先端部分に接続構造63を備える。接続構造63は、供給口34を挟む幅方向の両側にそれぞれ第1接続構造63fと第2接続構造63sとを有する。
【0033】
第1接続構造63fは、供給口34より鉛直上方に配置される回路基板64を備える。回路基板64は、液体収容部21に関する各種の情報を記憶するICチップを含んでもよい。各種の情報とは、例えば、液体収容部21の種類や液体の収容量等の情報である。さらに、回路基板64は、図5に示す流路ユニット33が有する基板接続部56に電気的に接続される接続端子を有する。
【0034】
回路基板64は、上方および装着方向に開口する態様で設けられた凹部64a内に、斜め上を向く姿勢で配置されることが好ましい。また、幅方向において回路基板64の両側には、装着方向に延びる案内凹部64gが配置されることが好ましい。
【0035】
第2接続構造63sは、供給口34より鉛直上方に配置された誤挿入防止用の識別部65を備えることが好ましい。識別部65は、接続されるように対応づけられた流路ユニット33の図5に示すブロック58と嵌合する形状の凹凸を有する。
【0036】
接続構造63は、一対の位置決め穴66a,66bと、図5に示す付勢部60cの付勢力を受ける付勢受部67と、を備える。位置決め穴66a,66bは、それぞれ第1接続構造63fと第2接続構造63sとに含まれるように供給口34を挟んで幅方向に並ぶ。第1接続構造63fに含まれる第1位置決め穴66aは円形の穴であるのに対して、第2接続構造63sに含まれる第2位置決め穴66bは幅方向に長い楕円形状の長穴であることが好ましい。
【0037】
図6に示すように、液体収容部21が収容空間に挿入されて先端が図5に示す流路ユニット33に近づくと、まず、取出方向への突出長さが長い図5に示す位置決め突部59a,59bの先端が、液体収容部21の位置決め穴66a,66bに入る態様で係合し、液体収容部21の幅方向への移動を規制する。第2位置決め突部59bに対応する第2位置決め穴66bは幅方向に延びる楕円形状の長穴である。そのため、円形状の第1位置決め穴66aに入る第1位置決め突部59aが位置決めの基準になる。
【0038】
位置決め突部59a,59bが位置決め穴66a,66bに係合した後、さらに、液体収容部21が奧に進むと、付勢受部67が図5に示す押圧部60bと接触して図5に示す付勢部60cの付勢力を受け、液体収容部21の供給口34が図5に示す接続部32に接続される。このように、接続部32が供給口34に接続される前に、位置決め突部59a,59bは、液体収容部21を位置決めすることが好ましい。
【0039】
液体収容部21が正しい位置に挿入された場合、識別部65が流路ユニット33の図5に示すブロック58と適切に嵌合する。これに対して、液体収容部21を間違った位置に装着しようとした場合、識別部65がブロック58と嵌合しない。そのため、液体収容部21はそれ以上奧に進むことができない。これにより、誤装着が防止される。
【0040】
液体収容部21が装着方向に進むと、図5に示す基板接続部56が液体収容部21の凹部64a内に入り、案内凹部64gが図5に示す案内凸部56aに案内される。そのため、液体収容部21の位置が調整されて、回路基板64と基板接続部56とが接触する。これにより、回路基板64と基板接続部56とが電気的に接続され、回路基板64と図5に示す制御部29の間で情報の授受が行われる。このように、第1接続構造63fと第2接続構造63sのうち、回路基板64を含む第1接続構造63fの方に位置決めの基準となる第1位置決め穴66aが配置されることが好ましい。
【0041】
液体収容部21の供給口34が接続部32に対して液体を供給可能な状態に接続され、回路基板64が基板接続部56と接触して電気的に接続されたときに、接続構造63の流路ユニット33に対する接続が完了する。
【0042】
図7に示すように、容器13の底面には、先端から取出方向に向けて延びる係合溝68が凹設される。係合溝68は、図6に示す接続構造63を構成する第1接続構造63fと第2接続構造63sのうち、位置決めの基準となる第1位置決め穴66aと同じ第1接続構造63fの方に含めることが好ましい。
【0043】
係合溝68は、例えば、底面の先端から取出方向に向けて延びる第1傾斜溝68aと、第1傾斜溝68aの終端から幅方向に延びる係止溝68bと、係止溝68bの終端から第1傾斜溝68aの始端に向けて延びる第2傾斜溝68cと、を有するハートカム溝としてもよい。液体収容部21が図3に示す装着部14に装着されるときの移動経路の終端に近づくと、図5に示すアーム54の先端に突設された係合部55が係合溝68に係合する。
【0044】
第1傾斜溝68a、係止溝68b、および第2傾斜溝68cは、それぞれ始端から終端に向けて溝が浅くなるように傾斜することにより、各交差部分に段差が形成される。そのため、係合部55が第1傾斜溝68aの始端に係合した後、液体収容部21が装着方向に沿って移動すると、図5に示す係合部55は傾斜に沿って第1傾斜溝68a、係止溝68b、第2傾斜溝68cの順に係合する。係合部55は、係止溝68bから第1傾斜溝68aに戻らない。また、係合部55は、第2傾斜溝68cから係止溝68bに戻らない。
【0045】
図7に示すように、係止溝68bは、始端と終端の間の部分が先端側に向けて屈曲した形状を有する。そして、係止溝68bは、その屈曲した部分に、図5に示す係合部55の装着方向奥に位置して係合部55と係合する係合壁部68dを有する。そして、係合部55が係合壁部68dに係合すると、液体収容部21は、図5に示す付勢部60cの付勢力を受けつつも取出方向への移動が規制され、装着部14に装着された状態が維持される。液体収容部21が係合部55に係合されることにより、液体収容部21の装着部14への装着が完了する。
【0046】
収容空間に挿入された液体収容部21がユーザーによって装着方向に押され、係合部55が係合溝68に係合して第1傾斜溝68aに沿って相対移動するとき、液体収容部21は付勢部60cの付勢力を受ける。そのため、係合部55が第1傾斜溝68aから係止溝68bに移行した後、係合壁部68dに係合するまでの間に、液体収容部21は付勢部60cの付勢力で、わずかに取出方向に移動する。
【0047】
取出方向への移動の終端で、係合部55が係合壁部68dに接触するなどして「カチッ」という接触音、またはクリック音が生じるようにしておくと、液体収容部21の装着が完了した、という感覚や感触、またはクリック感をユーザーに与えることができる。これにより、液体収容部21の挿入不足等に起因する装着不良の発生を抑制できる。
【0048】
図7に示すように、係合部55が係合壁部68dに係合しているときに、液体収容部21がユーザーによって装着方向に押し込まれると、係合部55は係止溝68bの傾斜に沿って第2傾斜溝68cに移行する。そして、係合部55は、第2傾斜溝68cの傾斜に沿いつつ、付勢部60cの付勢力によって、第2傾斜溝68cの終端に向けて移動し、係合溝68との係合が外れる。すると、付勢部60cの付勢力によって液体収容部21が取出方向に移動し、液体収容部21の基端部分が図3に示す挿入口31aから枠体31および図1に示す外装体12の外に出る。このとき、図6に示す供給口34が図5に示す接続部32から離れるとともに、図6に示す回路基板64が図5に示す基板接続部56から離れて液体収容部21の図1に示す装着部14への装着が解除される。
【0049】
容器13の底部には、図2に示す案内レール31bの凹凸に沿うレール係合部13aを設けることが好ましい。案内レール31bにより、装着部14に装着されるときの液体収容部21の移動経路を明確にすることができる。また、複数の液体収容部21を挿入する場合にも、案内レール31bにより、隣に並ぶ液体収容部21同士を不要に接触させることなく移動させることができる。
【0050】
容器13の底部には、容器13の姿勢を水平に保つ3つ以上の脚部13bが突設されることが好ましい。4つの脚部13bが突設されることにより、液体収容部21の鉛直方向における位置決めをすることができる。そのため、液体収容部21の姿勢を正しく保持でき、液体収容部21と接続部32を適切に接続できる。そして、液体収容部21と接続部32の接続を適切に維持できる。
【0051】
<供給流路、送液部、および液体貯留部について>
図8に示すように、流路ユニット33は、図2に示す供給流路27の上流端となる接続部32側から順に、吸引側一方向弁70、送液部71、吐出側一方向弁72、および液体貯留部73を有する。すなわち、液体噴射装置11は、吸引側一方向弁70、送液部71、吐出側一方向弁72、および液体貯留部73を有する。そして、吸引側一方向弁70、送液部71、吐出側一方向弁72、および液体貯留部73は、供給流路27に設けられる。供給流路27の上流端となる接続部32には、液体収容部21が接続される。
【0052】
送液部71は、液体を吸引する吸引動作と、吸引した液体を吐出する吐出動作と、を行うダイアフラム式のポンプである。吸引側一方向弁70と送液部71は、第1流路27aを通じて連通する。そして、送液部71と吐出側一方向弁72は、第2流路27bを通じて連通する。さらに、吐出側一方向弁72と液体貯留部73は、第3流路27cを通じて連通する。第1流路27a、第2流路27b、第3流路27cは、供給流路27の一部を構成する。
【0053】
図8に示すように、送液部71は、変圧流路48が接続された変圧室75と、供給流路27の一部を構成する送液室76と、変圧室75と送液室76とを区画するダイアフラム77とを備える。さらに、送液部71は、送液用凹部78aが形成された流路形成部材78を有する。そして、送液室76は、送液用凹部78aとダイアフラム77とにより囲み形成され、第1流路27aの下流端と第2流路27bの上流端とが接続される。
【0054】
複数の流路ユニット33にそれぞれ設けられた送液部71は、変圧流路48により直列に接続される。すなわち、複数の流路ユニット33のうち、1つの流路ユニット33の送液部71は、変圧流路48を介して変圧機構46に接続され、他の流路ユニット33は、幅方向に隣り合う流路ユニット33の変圧室75同士が変圧流路48を介して接続される。これにより、例えば、流路ユニット33の配置間隔が変更される場合に、変圧流路48に可撓性を持たせたり、変圧流路48を長さの異なるものに交換したりすることで容易に対応できる。そして、供給機構28が有する駆動源47が駆動されると、変圧室75の圧力は負圧になる。
【0055】
供給機構28の駆動は、制御部29によって制御される。すなわち、送液部71の駆動は、供給機構28の駆動に伴って、制御部29によって制御される。それぞれの送液部71は、それぞれ別の変圧流路48に接続されてもよい。そしてその変圧流路48のそれぞれが、それぞれ別の供給機構28と繋がってもよい。これにより、送液部71に対応する駆動源47が駆動されることにより、その送液部71の変圧室75の圧力だけを負圧にすることができる。すなわち、液体収容部21毎に送液部71の駆動を制御することができる。
【0056】
変圧室75には、ダイアフラム77と共に変位するばね座79と、ダイアフラム77を送液室76側に向けて付勢する第1コイルばね80とが収容される。そして、供給機構28が有する駆動源47の駆動に伴って変圧室75内に負圧が発生すると、ダイアフラム77が第1コイルばね80の付勢力に抗して送液室76の容積を拡大する方向に変位することで、送液部71が吸引動作を行う。
【0057】
図8に示すように、吸引側一方向弁70は、流路形成部材78に形成された吸引側凹部78bと、可撓性を有する吸引側弁体82と、吸引側弁体82の外縁部分に当接することで吸引側弁体82を固定する吸引側固定部材83と、を備える。さらに、吸引側弁体82と吸引側固定部材83との間には、第2コイルばね84が配置される。第2コイルばね84は、環状突部82bが吸引側凹部78bの内底面に当接する方向に吸引側弁体82を付勢する。
【0058】
吸引側一方向弁70は、吸引側凹部78bと吸引側固定部材83とにより囲み形成される吸引側弁室85を備える。吸引側弁室85は、吸引側弁体82により上流側部分と下流側部分とに区画され、上流側部分に接続部32の下流端が接続されると共に、下流側部分に第1流路27aの上流端が接続される。
【0059】
吸引側弁体82の中央部分には、貫通孔82aが形成されると共に、貫通孔82aを囲む位置には、吸引側凹部78bの内底面と対向するように環状突部82bが形成される。そのため、吸引側弁室85の上流側部分と下流側部分は、貫通孔82aを通じて連通可能である。
【0060】
送液部71が吸引動作を行うと、第1流路27aを通じて吸引側弁室85内の液体が送液室76内に吸引されて吸引側弁室85の下流側部分に負圧が生じる。すると、吸引側弁体82が第2コイルばね84の付勢力に抗して変位する。そして、環状突部82bが吸引側凹部78bの内底面から離間し、吸引側弁室85の上流側部分と下流側部分とが連通する。すなわち、吸引側一方向弁70が開弁して供給流路27を開放する。これにより、接続部32を通じて液体収容部21内の液体が送液部71側に向けて供給される。
【0061】
図8に示すように、吐出側一方向弁72は、流路形成部材78に形成された吐出側凹部78cとフィルム部材87とによって囲み形成される吐出側弁室88を備える。吐出側弁室88内には、可撓性を有する吐出側弁体89と、吐出側弁体89の外縁部分に当接することで吐出側弁体89を固定する吐出側固定部材90と、が設けられる。また、吐出側弁室88は、供給流路27の一部を構成し、第2流路27bの下流端と第3流路27cの上流端とが接続される。なお、第2流路27bの吐出側弁室88に対する開口は、吐出側弁体89の当接部89aによって常時閉鎖される。
【0062】
送液部71が吸引動作を行うと、第2流路27bを通じて吐出側弁室88内の液体が送液部71側に吸引されるため、当接部89aが第2流路27bを閉鎖する。すなわち、吐出側一方向弁72が閉弁する。
【0063】
図9に示すように、吸引動作の後に供給機構28が変圧室75内を大気に開放すると、ダイアフラム77が第1コイルばね80の付勢力によって送液室76の容積を縮小する方向に変位することで、送液部71が吐出動作を行う。
【0064】
吸引側一方向弁70において、第2コイルばね84は、環状突部82bが吸引側凹部78bの内底面に当接する方向に吸引側弁体82を付勢する。すなわち、吸引側弁体82は、吸引側弁室85の上流側部分と下流側部分とを連通不能とすることにより、供給流路27の閉鎖が可能に構成される。
【0065】
送液部71が吐出動作を行うと、送液室76内の液体が加圧状態で吐出されるため、第1流路27aを通じて送液室76内の液体が吸引側弁室85内に流入する。これにより、吸引側弁室85内の負圧が解消されて、吸引側弁体82の環状突部82bが第2コイルばね84の付勢力によって吸引側凹部78bの内底面に当接する。すなわち、吸引側一方向弁70が閉弁する。
【0066】
送液部71が吐出動作を行うと、送液室76内の液体が加圧状態で吐出されるため、吐出側一方向弁72において、この液体の加圧力によって当接部89aが第2流路27bの開口から離れるように変位する。すなわち、吐出側一方向弁72は、開弁して供給流路27を開放する。すると、第2流路27bを通じて吐出側弁室88内に液体が流入するとともに、流入した液体が第3流路27cを通じて液体貯留部73に供給される。
【0067】
図10に示すように、液体貯留部73は、流路形成部材78に形成された液体貯留部用凹部78dと可撓性部材92とにより囲み形成された液室93を有する。液室93には、第3流路27cの下流端と第4流路27dの上流端とが接続される。第3流路27c、液室93、および第4流路27dは、供給流路27の一部を構成する。
【0068】
液体貯留部73は、第4流路27dを通じて図2に示す供給チューブ44と連通する。そして、液体は供給チューブ44を通じ、図2に示す供給流路27の下流端となる液体噴射ヘッド38まで流通する。すなわち、供給流路27において、液体貯留部73は、図8に示す送液部71と液体噴射ヘッド38との間に設けられる。
【0069】
液体貯留部73は液室93内に液体を貯留可能である。供給流路27に設けられる送液部71は、吸引動作と吐出動作とを交互に連続して行うことにより、液体収容部21から液体を吸引し、液体を吐出する。これにより、送液部71は、液体貯留部73の液室93内に液体を一時的に貯留しながら、液体貯留部73を通じて液体噴射ヘッド38へ液体を送る。
【0070】
液体貯留部73は、変位部材94と、固定部材95と、第1付勢部材96とを備える。変位部材94は、可撓性部材92に連結されて可撓性部材92と共に変位する。固定部材95は、可撓性部材92の外縁部分に当接することで可撓性部材92を固定する。第1付勢部材96は、変位部材94と固定部材95との間に配置される。第1付勢部材96は、例えば、コイルばねである。
【0071】
変位部材94は、可撓性部材92の液室93を構成する内面とは反対の外面に設けられる。また、第1付勢部材96は、変位部材94を付勢することにより、可撓性部材92を液室93の容積を小さくする方向に付勢する。
【0072】
変位部材94は、変位方向Dに沿って液室93内に突出する第1被案内部94aと、液室93とは反対側に突出する第2被案内部94bとを有する。また、流路形成部材78には、第1被案内部94aを可撓性部材92の変位方向Dに案内する第1案内部78eが形成される。また、固定部材95には、第2被案内部94bを変位方向Dに案内する第2案内部95aが形成される。すなわち、液体貯留部73は、案内部78e,95aと被案内部94a,94bとを有し、被案内部94a,94bは、可撓性部材92に連結されて可撓性部材92と共に変位する。
【0073】
図10に示すように、第1被案内部94aは、略円盤形状をなす可撓性部材92の略中央位置から液室93側に突出するように軸状に設けられる。また、第1案内部78eは、液体貯留部用凹部78dに穴状に形成され、第1被案内部94aが差し込まれるように構成される。
【0074】
第1被案内部94aは、例えば、変位方向Dに沿うように延びる1または複数の凹条を有する棒状の柱体とするのが好ましく、丸穴状の第1案内部78eと第1被案内部94aとの隙間により第4流路27dの一部が構成される。また、可撓性部材92は、第1被案内部94aを囲む位置に環状に突出した閉鎖部92aを有する。
【0075】
第1被案内部94aは、可撓性部材92が第1案内部78eから最も離れた位置に位置し、液室93の容積が最大となった場合に、第1被案内部94aが第1案内部78eと係合する長さとするのが好ましい。さらに、図11に示すように、第2被案内部94bは、可撓性部材92が第2案内部95aから最も離れた位置に位置し、液室93の容積が最小となった場合に、第2被案内部94bが第2案内部95aと係合する長さとするのが好ましい。このように構成することにより、被案内部94a,94bが案内部78e,95aから外れてしまう虞を低減できる。
【0076】
液体貯留部73は、レバー部97と、レバー部97を付勢する第2付勢部材98と、検出部の一例である変位検出部99と、を備える。レバー部97は、軸97aを中心として回動可能に設けられる。変位検出部99は、レバー部97が有する被検出部97bを検出することにより可撓性部材92の変位を検出する。本実施形態の第2付勢部材98は、引っ張りばねである。
【0077】
図10に示すように、液体貯留部73へ液体が送られるときは、第3流路27cを通じて液室93内に液体が流入する。これにより、閉鎖部92aは、可撓性部材92が液室93の容積が大きくなる方向に変位する。レバー部97は、第2被案内部94bに押圧されることにより、第2付勢部材98の付勢力に抗して回動し、変位検出部99により被検出部97bが検出されない非検出姿勢となる。
【0078】
図11に示すように、液体貯留部73へ液体が送られないときは、第1付勢部材96の付勢力によって、可撓性部材92が液室93の容積が小さくなる方向に変位する。これにより、液室93内の液体が第4流路27dを通じて液体噴射ヘッド38へ送られる。このとき、第2被案内部94bの変位に伴い、レバー部97は、第2付勢部材98の付勢力によって回動する。そして、液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ると、変位検出部99により被検出部97bが検出される。
【0079】
図12に示すように、液体貯留部73内の液体の量がさらに少なくなると、第1付勢部材96の付勢力によって、可撓性部材92が液室93の容積が小さくなる方向にさらに変位する。これにより、閉鎖部92aが液室93の壁となる液体貯留部用凹部78dに当接して供給流路27を閉鎖する。すなわち、可撓性部材92は、第1案内部78eを閉鎖部92aによって囲うことにより、液室93と第4流路27dとを非連通とする。
【0080】
検出部の一例である変位検出部99は、液体貯留部73内の液体の量を検出可能に構成される。本実施形態の変位検出部99は、発光部と受光部とを有する光学式のセンサーである。そのため、変位検出部99が、受光部が発光部からの光を受光する状態から、受光部が被検出部97bによって発光部からの光を遮られる状態に変化した図11に示す状態のときに、液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ったことを検出する。連続的な変位を検出可能な光学式や磁気式のリニアエンコーダーを用いて、変位検出部99が、液体貯留部73内の液体の量を連続的に測定できるようにしてもよい。
【0081】
液体収容部21内の液体がなくなったときは、送液部71が吸引動作と吐出動作を交互に連続して行っても、液体貯留部73へ液体が送られない。そのため、レバー部97は、変位検出部99により被検出部97bが検出される検出姿勢となる。すなわち、図3に示す供給機構28が駆動されているときに、変位検出部99が液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ったことを検出したときは、制御部29は、液体収容部21内の液体がなくなったと判定する。
【0082】
図9に示す変圧室75内が大気に開放される状態が続くときも、ダイアフラム77が送液室76の容積を縮小する方向に変位した図9の状態のまま停止して、液体貯留部73へ液体が送られない。そのため、レバー部97は、変位検出部99により被検出部97bが検出される図12に示す検出姿勢となる。すなわち、図3に示す供給機構28が駆動されていないときに、変位検出部99が液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ったことを検出しても、制御部29は、液体収容部21内の液体がなくなったと判定しない。
【0083】
<液体の残量の算出方法について>
図13に示すように、液体噴射装置11は、装着部14と、操作パネル19と、搬送部24と、記録部25と、メンテナンス部26と、供給流路27と、を制御する制御部29を備える。操作パネル19が有する表示部19aは、ユーザーに対して、メニューやメッセージ等を表示する。供給流路27が有する変位検出部99は、制御部29に検出結果を出力する。ICチップ22を有する液体収容部21は、装着部14に装着される。制御部29は、装着部14を介して、ICチップ22に格納されている情報を読み取る。
【0084】
制御部29は、インターフェイス部111と、CPU112と、メモリー113と、制御回路114と、駆動回路115と、カウント部116と、を有する。
インターフェイス部111は、外部装置であるコンピューター119と液体噴射装置11との間でデータを送受信する。CPU112は、演算処理装置である。メモリー113は、CPU112のプログラムを格納する領域または作業領域等を確保する記憶装置であり、RAM、EEPROM等の記憶素子を有する。CPU112は、メモリー113に格納されているプログラムに従い、制御回路114を介して、装着部14、搬送部24、記録部25、およびメンテナンス部26を制御する。駆動回路115は、液体噴射ヘッド38のアクチュエーターを駆動させる駆動信号を生成する。
【0085】
カウント部116は、液体収容部21に収容される液体の量を表す収容量目安値Q1、および液体噴射ヘッド38から排出される液体の排出量を表す排出量目安値Q2pに基づいて、液体収容部21内の液体の残量Q3を算出する。
【0086】
収容量目安値Q1とは、未使用の液体収容部21における液体の収容量である。液体収容部21の出荷時において、液体収容部21における液体の収容量が一定値で管理されているときは、その値が収容量目安値Q1である。すなわち、収容量目安値Q1は、液体収容部21が装着部14に装着されたときに、液体収容部21に収容されている液体の量である。
【0087】
液体収容部21が装着部14に装着されたときは、装着部14と液体収容部21とが電気的に接続される。このとき、制御部29は、装着部14を介して液体収容部21のICチップ22から、その液体収容部21に関する各種の情報を読みとってもよい。液体収容部21が出荷されるときに、その液体収容部21に収容されている液体の収容量がICチップ22内に格納されている場合は、ICチップ22から、その収容量の値を読みとって、収容量目安値Q1としてもよい。このようなときは、制御部29は、収容量目安値Q1を液体収容部21毎の個別の値として管理する。
【0088】
排出量目安値Q2pとは、液体噴射ヘッド38が排出する液体の排出量である。より詳しくは、排出量目安値Q2pとは、1ショットにおいて1つのノズル37から排出される液体の量である。なお、1つのノズル37から1回の噴射が行われることを1ショットという。制御部29は、排出量目安値Q2pを液体収容部21内の液体の種類毎の個別の値として管理する。
【0089】
排出量目安値Q2pとショット回数nとを掛け合わせることにより総排出量Q2が算出される。すなわち、カウント部116は、式Q2=Q2p×nにより総排出量Q2を算出する。なお、ショット回数nは、装着部14にその液体が収容される液体収容部21が装着されてから、1つのノズル37からその液体が噴射された回数を、全てのノズル37において合算した回数である。なお、ショット回数nには、記録によって媒体Sに対して液体が噴射された回数に加えて、フラッシングによって液体が噴射された回数が含まれる。液体噴射ヘッド38のアクチュエーターの駆動条件や、温湿度等の環境条件によって、排出量目安値Q2pが変動するときは、排出量目安値Q2pは、それらの条件によって変動する値としてもよい。さらに、排出量目安値Q2pが記録デューティーによって影響を受けるときは、排出量目安値Q2pは、記録デューティーによって変動する値としてもよい。
【0090】
吸引クリーニング等のメンテナンスによって液体噴射ヘッド38から排出される液体の量を加算して、総排出量Q2が算出されてもよい。例えば、1回のクリーニングにおける吸引量目安値Q2sと、クリーニング回数mと、を掛け合わせた値を加算して総排出量Q2が算出されてもよい。すなわち、カウント部116は、式Q2=(Q2p×n)+(Q2s×m)により総排出量Q2を算出してもよい。吸引量目安値Q2sは、1回の吸引クリーニングにおいて液体噴射ヘッド38全体から排出される液体の量である。クリーニング回数mは、装着部14にその液体が収容される液体収容部21が装着されてから、液体噴射ヘッド38に対して、吸引クリーニングが行われた回数である。吸引クリーニングにおいて、液体が吸引される強度が調整されるときは、吸引量目安値Q2sは、液体が吸引される強度によって変動する値としてもよい。
【0091】
本実施形態の液体収容部21は、その液体収容部21内の液体の残量を検知する残量センサーを備えていない。しかし、カウント部116は、収容量目安値Q1から総排出量Q2を減算する。これにより、本実施形態の液体噴射装置11は、液体収容部21内の液体の残量Q3を算出可能に構成される。すなわち、カウント部116は、式Q3=Q1-Q2により残量Q3を算出する。
【0092】
本実施形態においては、カウント部116は、4つの液体収容部21に対して、それぞれの収容量目安値Q1およびそれぞれの排出量目安値Q2pに基づいて、それぞれの液体収容部21内の液体の残量Q3を算出する。例えば、4つの液体収容体20が、それぞれ、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクを収容するとき、カウント部116は、ブラックのインクの残量Q3aと、シアンのインクの残量Q3bと、マゼンタのインクの残量Q3cと、イエローのインクの残量Q3dと、を算出する。より具体的には、例えば、ブラックのインクを収容する液体収容部21に対して、ブラックのインクの収容量目安値Q1aおよびブラックのインクの排出量目安値Q2paに基づいて、ブラックのインクの残量Q3aを算出する。
【0093】
カウント部116は、液体収容部21が装着部14に装着されてから、その液体収容部21内の液体がなくなるまで、液体噴射ヘッド38からその液体が排出される度に残量Q3の算出を行う。すなわち、図3に示す供給機構28が駆動されているときに、その液体に対応する変位検出部99によって液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ったことが検出されるまで、カウント部116は、液体収容部21内のその液体の残量Q3を算出し続ける。これにより、液体噴射装置11は、液体収容部21内の液体の残量Q3に応じて、送液部71の駆動制御を、制御部29によって変更可能に構成される。
【0094】
液体収容部21内の液体がなくなるときに、カウント部116によって算出される残量Q3が「ゼロ」に近い値になるように、排出量目安値Q2pや吸引量目安値Q2sが設定されることが望ましい。これにより、制御部29が送液部71の駆動制御を変更するタイミングの精度を上げることができる。
【0095】
液体収容部21が、その液体収容部21内の液体の残量Q3を検知する残量センサーを備えてもよい。また、装着部14が、その装着部に装着された液体収容部21内の液体の残量Q3を検出する残量センサーを備えてもよい。例えば、光学式のセンサーによって液面の高さを検知することにより、残量Q3を検出してもよい。そして、制御部29は、カウント部116が算出した残量Q3の代わりに、その残量センサーが検出した残量Q3に応じて送液部71の駆動制御を変更してもよい。また、制御部29は、その残量センサーが検出した残量Q3が閾値Qtを下回った場合と、その残量センサーが検出した残量Q3が閾値Qt以上である場合とで、送液部71の駆動制御を変更してもよい。
【0096】
前述したように、本実施形態においては、カウント部116が、4つの液体収容部21内の残量Q3a,Q3b,Q3c,Q3dをそれぞれ算出する。これにより、制御部29は、それぞれの残量Q3a,Q3b,Q3c,Q3dの値に応じて送液部71の駆動制御を変更する。さらに、残量Q3a,Q3b,Q3c,Q3dのうち、少なくとも1つの残量Q3が閾値Qtを下回った場合と、全ての残量Q3が閾値Qt以上である場合とで、送液部71の駆動制御が、制御部29によって変更される。なお、液体収容部21内の液体の種類によって閾値Qtが変えられるように、4つの液体収容部21に対応してそれぞれの閾値Qta,Qtb,Qtc,Qtdが設定されてもよい。送液部71の駆動制御および閾値Qtについては後述する。
【0097】
<負圧と閾値について>
図14に示すように、供給流路27の上流端には、液体収容部21が接続される。供給流路27の下流端には、圧力調整弁103を介して液体噴射ヘッド38が接続される。圧力調整弁103は、その弁体と液体噴射ヘッド38との間の圧力である流路圧が外気圧よりも低く、その流路圧と外気圧との差が設定値以上になると開弁する差圧弁である。これにより、液体噴射ヘッド38に供給される液体の圧力をノズル37から噴射可能な調整圧力に調整することができる。
【0098】
供給機構28は、駆動源47と大気開放弁46aとを有する。大気開放弁46aが閉弁された状態で駆動源47が駆動されると、変圧流路48が減圧される。これにより、変圧流路48に接続される送液部71は吸引動作を行う。また、駆動源47が停止されて大気開放弁46aが開弁されると、変圧流路48の圧力が元に戻る。これにより、変圧流路48に接続される送液部71は吐出動作を行う。本実施形態においては、変圧流路48に接続される4つの送液部71が同時に吐出動作を行う。
【0099】
液体収容部21内の液体の残量Q3が少ないときに、送液部71が吸引動作を行うと、液体収容体20内の圧力が負圧になる。また、液体収容部21内の液体がなくなる付近で送液部71が吸引動作を行うと、液体収容体20内に高い負圧が作用する。これは、潰れた状態の液体収容体20が元の形状に戻ろうとする復元力によって、液体収容体20内の液体が高い負圧になることも一因する。そして、供給流路27において、液体収容部21と吸引側一方向弁70との間の流路が高い負圧になる。流路の材料は樹脂である。樹脂は気体透過性を有し、微量の気体を透過する特性を有する。また、液体収容部21と供給流路27との接続部等は、シールされているものの、過大な差圧によってその接続部に微量な気体の流入が発生する可能性がある。そのため、液体収容部21と吸引側一方向弁70との間の流路の高い負圧によって、供給流路27の樹脂壁を介した気体透過や、液体収容部21と供給流路27との接続部での気体流入を通じて、液体収容体20内に空気が気泡として流入する場合がある。液体収容体20に流入した空気は、液体中に溶解していたり極微小な気泡であったりしても、時間の経過とともにある程度の大きさの気泡に成長する。液体収容部21内の液体がなくなる付近で、液体収容体20内が高負圧状態に保持される時間が長くなるほど、液体収容体20内の液体中に気泡が発生しやすくなる。そして、その気泡が液体とともに液体収容部21内から供給流路27内に流出して液体噴射ヘッド38に到達することにより、噴射不良が発生する。
【0100】
供給流路27において、液体が使用された液体収容部21の個数と、供給流路27に流入する気泡の累計量の関係を予め求めておき、流入した気泡が液体噴射ヘッド38に到達する程の累計量になる直前、かつ液体収容部21が交換された直後に、強力な吸引クリーニングが行なわれることが望ましい。これにより、供給流路27内に溜まった気泡を一気に液体噴射ヘッド38から排出し、供給流路27内の気泡状態をリセットすることができる。そして、供給流路27内において、液体噴射ヘッド38に噴射不良を発生させる気泡の量を削減することができる。
【0101】
閾値Qtは、液体収容部21内の液体がなくなる付近の、液体収容部21内の液体の量であり、液体収容部21内に高い負圧が作用し始めるときの、液体収容部21内の液体の量に設定される。例えば、液体収容部21内の液体がなくなった後に、送液部71内の液体がなくなって、液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回るまでに使用される液体の量が3グラムとすると、閾値Qtは3グラムよりも大きな値に設定される。閾値Qtは、使用される液体収容体20の大きさや構造によっても異なるが、例えば、10グラムに設定される。
【0102】
液体収容部21内へ作用する高い負圧が抑制されるように、制御部29は、液体収容部21内の液体の残量Q3に応じて、送液部71の駆動制御を変更する。制御部29は、残量Q3が閾値Qtを下回った場合には、残量Q3がその閾値Qt以上である場合よりも、送液部71が一度に吸引する液体の量を少なくするとともに、送液部71が吸引する回数を増やす。送液部71が一度に吸引する液体の量を少なくすることにより、液体収容部21内に作用する負圧が小さくなる。本実施形態においては、供給機構28が有する駆動源47が駆動されると、4つの変圧室75の圧力は、全てが負圧になる。そのため、制御部29は、少なくとも1つの液体収容部21内の液体の残量Q3が閾値Qtを下回った場合には、どの液体収容部21内の液体の残量Q3もその閾値以上である場合よりも、送液部71が一度に吸引する液体の量を少なくするとともに、送液部71が吸引する回数を増やす。これにより、本実施形態においては、本実施形態の液体噴射装置11は、送液部71が吸引動作を行ったときに、どの液体収容部21に対しても、液体収容部21内へ作用する高い負圧が抑制されるように構成される。
【0103】
液体収容部21内へ作用する高い負圧が抑制されるように、制御部29は、液体収容部21内の液体の残量Q3に応じて、送液部71の駆動制御を変更する。制御部29は、液体収容部21内の液体の残量Q3が閾値Qtを下回った場合には、残量Q3がその閾値Qt以上である場合よりも、送液部71が液体を吸引する速度を遅くする。送液部71が液体を吸引する速度を遅くすることにより、液体収容部21内に作用する負圧が小さくなる。本実施形態においては、供給機構28が有する駆動源47が駆動されると、4つの変圧室75の圧力は、全てが負圧になる。そのため、制御部29は、少なくとも1つの液体収容部21内の液体の残量Q3が閾値Qtを下回った場合には、どの液体収容部21内の液体の残量Q3もその閾値Qt以上である場合よりも、送液部71が液体を吸引する速度を遅くする。これにより、本実施形態の液体噴射装置11は、送液部71が吸引動作を行ったときに、どの液体収容部21に対しても、液体収容部21内へ作用する高い負圧が抑制されるように構成される。
【0104】
液体収容部21内に負圧が作用する回数が少なくなるように、制御部29は、液体収容部21内の液体の残量Q3に応じて、送液部71の駆動制御を変更する。制御部29は、液体収容部21内の液体の残量Q3が閾値Qt以上の場合には、液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回る前に送液部71による送液を行う。そして、制御部29は、残量Q3がその閾値Qtを下回った後は、液体貯留部73内の液体の量がその所定量を下回った後に送液部71による送液を行う。これにより、液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回るまで送液部71による送液が停止されるため、液体収容部21内に負圧が作用する回数が少なくなる。本実施形態においては、供給機構28が有する駆動源47が駆動されると、4つの変圧室75の全てが負圧になる。そのため、制御部29は、どの液体収容部21内の液体の残量Q3も閾値Qt以上の場合には、少なくとも1つの液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回る前に送液部71による送液を行う。そして、制御部29は、少なくとも1つの液体収容部21内の液体の残量Q3がその閾値Qtを下回った後は、いずれかの液体貯留部73内の液体の量がその所定量を下回った後に送液部71による送液を行う。これにより、本実施形態の液体噴射装置11は、少なくとも1つの液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回るまで送液部71による送液が停止されるため、その間、どの液体収容部21内においても負圧が抑制されるように構成される。
【0105】
ここで、残量Q3が閾値Qtを下回った場合には、送液部71が一度に吸引する液体の量を少なくする、送液部71が吸引する回数を増やす、送液部71が液体を吸引する速度を遅くする、液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回った後に送液部71による送液を行う、の少なくとも一つを実行するようにしても良い。この場合においても、送液部71が吸引動作を行ったときに、どの液体収容部21に対しても、液体収容部21内へ作用する高い負圧を抑制することができる。
【0106】
温度や液体収容部21の装着期間によって、液体収容部21内に流入した気泡が供給流路27へ流出を始めるタイミングが変わる。例えば、液体の温度が高いと気泡が成長し易くなる。液体収容体20の温度が低いと液体収容体20は剛性が高くなるため、負圧は大きくなって気泡が成長し易くなる。また、液体収容部21の装着期間が長いと、気泡が成長し易くなる。そのため、制御部29が、送液部71の駆動制御を変更するタイミングを、温度や液体収容部21の装着期間によって、変更することが望ましい。すなわち、制御部29が、閾値Qtを温度や液体収容部21の装着期間によって、変更することが望ましい。そして、制御部29が、それぞれの液体収容部21内の液体の残量Q3の閾値Qtを、それぞれの液体収容体20の温度や、それぞれの液体収容部21の装着期間によって、変更することが望ましい。
【0107】
前述したように、それぞれの送液部71は、それぞれ別の変圧流路48に接続されてもよい。そしてその変圧流路48のそれぞれが、それぞれ別の供給機構28と繋がってもよい。これにより、液体収容部21毎に送液部71の駆動を制御することができる。すなわち、それぞれの液体収容部21内の液体の残量Q3に応じて、その液体収容部21に対応するそれぞれの送液部71の駆動制御のみを変更することができる。換言すれば、それぞれの液体収容部21内の負圧の作用状況に応じて、その液体収容部21に対応するそれぞれの送液部71の駆動制御のみを変更することができる。
【0108】
<送液部の駆動制御方法について>
最初に、本実施形態の液体噴射装置11の制御方法における送液部71および液体貯留部73の動作を、液体収容部21内の液体の残量Q3の変化とともに、順に説明する。
【0109】
図14に示すように、どの液体収容部21内の液体の残量Q3も閾値Qt以上である場合には、吸引動作と吐出動作とが交互に連続して行われることにより、制御部29は、送液部71によって、全ての液体収容部21から、送液部71と液体貯留部73とを通じて液体噴射ヘッド38へ、図14に示す破線の矢印の方向に液体を送る。そして、制御部29は、液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回る前に送液部71による送液を行う。
【0110】
図15に示すように、制御部29は、少なくとも1つの液体収容部21内の液体の残量Q3が閾値Qtを下回った場合には、一旦、送液部71による送液を停止する。すなわち、制御部29は駆動源47の駆動を停止し、大気開放弁46aを開弁する。これにより、ダイアフラム77が第1コイルばね80の付勢力によって送液室76の容積を縮小する方向に変位することで、全ての送液部71が吐出動作を行う。全ての送液部71は、送液部71から液体貯留部73を通じて液体噴射ヘッド38へ、図15に示す破線の矢印の方向に、送液部71内の液体を送る。そして、ダイアフラム77が送液室76の容積を縮小する方向に変位した図9の状態のまま停止すると、これ以上、送液部71から液体貯留部73へ液体が送られない。
【0111】
図16に示すように、送液部71から液体貯留部73へ液体が送られないと、第1付勢部材96の付勢力によって、可撓性部材92が液室93の容積が小さくなる方向に変位する。これにより、図16に示す破線の矢印の方向に、液体貯留部73内の液体が液体噴射ヘッド38へ送られる。液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ると、変位検出部99により被検出部97bが検出される。これにより、4つの液体収容部21に対応する全ての液体貯留部73内の液体の量が、順に所定量を下回る。
【0112】
図17に示すように、少なくとも1つの液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ったところで、制御部29によって、送液部71の吸引動作と吐出動作とが交互に連続して行われる。すなわち、制御部29は、液体収容部21内の液体の残量Q3が閾値Qtを下回った後は、液体貯留部73内の液体の量がその所定量を下回った後に送液部71による送液を行う。このとき、制御部29は、残量Q3がその閾値Qt以上である場合よりも、送液部71が一度に吸引する液体の量を少なくするとともに、送液部71が吸引する回数を増やす。そして、制御部29は、残量Q3がその閾値Qt以上である場合よりも、送液部71が液体を吸引する速度を遅くする。本実施形態においては、制御部29は、少なくとも1つの液体収容部21内の液体の残量Q3が閾値Qtを下回った後は、いずれかの液体貯留部73内の液体の量がその所定量を下回った後に送液部71による送液を行う。このとき、制御部29は、どの液体収容部21内の液体の残量Q3もその閾値Qt以上である場合よりも、送液部71が一度に吸引する液体の量を少なくするとともに、送液部71が吸引する回数を増やす。そして、制御部29は、どの液体収容部21内の液体の残量Q3もその閾値Qt以上である場合よりも、送液部71が液体を吸引する速度を遅くする。
【0113】
吸引動作と吐出動作とが交互に連続して行われることにより、送液部71は、液体収容部21から、送液部71と液体貯留部73とを通じて液体噴射ヘッド38へ、図17に示す破線の矢印の方向に液体を送る。このとき、一旦、液体貯留部73内の液体の量が所定量を上回る。しかし、さきほど液体の残量Q3が閾値Qtを下回った液体収容部21内の液体は、すぐになくなる。そのため、液体がなくなった液体収容部21に対応する送液部71からは、液体貯留部73へ液体が送られない。これにより、その液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回るため、その液体貯留部73の変位検出部99により被検出部97bが検出される。このとき、液体がなくなった液体収容部21が、ユーザーによって新しい液体収容部21に交換されるまで、液体噴射装置11は、記録ジョブの受付を停止する。
【0114】
次に、図18に示すフローチャートを参照し、制御部29が、送液部71の駆動を制御するときの液体噴射装置11の制御方法について、各ステップにおける制御部29が実行する制御を順に説明する。なお、液体噴射装置11の装着部14に新しい液体収容部21が装着されて、液体貯留部73の液室93内に液体が貯留されてから、制御部29は、本フローを開始する。すなわち、どの液体収容部21内の液体の残量Q3も閾値Qt以上であり、どの液体貯留部73内の液体の量も所定量以上のときに、本フローが開始される。
【0115】
ステップS201において、制御部29は、送液部71によって、吸引動作と吐出動作とを交互に連続して行う。すなわち、液体噴射装置11の制御方法において、制御部29は、液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回る前に送液部71による送液を行う。
【0116】
ステップS202において、制御部29は、液体収容部21内の液体の残量Q3が閾値Qtを下回ったか否かを判定する。本実施形態においては、制御部29は、少なくとも1つの液体収容部21内の液体の残量Q3が閾値Qtを下回ったか否かを判定する。全ての残量Q3が閾値Qt以上のときは、制御部29は、いずれかの残量Q3が閾値Qtを下回るまで、ステップS201の制御を継続する。残量Q3が閾値Qtを下回ったときは、ステップS203に移行する。
【0117】
ステップS203において、制御部29は、駆動源47の駆動を停止し、大気開放弁46aを開弁する。そして、ステップS204において、制御部29は、液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ったか否かを判定する。本実施形態においては、制御部29は、少なくとも1つの液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ったか否かを判定する。どの液体貯留部73内の液体の量も所定量以上のときは、制御部29は、少なくとも1つの液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回るまで状態を維持する。少なくとも1つの液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ったときは、ステップS205に移行する。
【0118】
ステップS205において、制御部29は、送液部71が一度に吸引する液体の量を少なくするとともに、送液部71が吸引する回数を増やし、送液部71が吸引する速度を遅くして、送液部71によって、吸引動作と吐出動作とを交互に連続して行う。すなわち、液体噴射装置11の制御方法において、制御部29は、液体収容部21内の液体の残量Q3が閾値Qtを下回った後は、液体貯留部73内の液体の量がその所定量を下回った後に送液部71による送液を行う。このとき、液体噴射装置11の制御方法において、制御部29は、残量Q3がその閾値Qt以上である場合よりも、送液部71が一度に吸引する液体の量を少なくするとともに、送液部71が吸引する回数を増やす。そして、液体噴射装置11の制御方法において、制御部29は、残量Q3がその閾値Qt以上である場合よりも、送液部71が液体を吸引する速度を遅くする。本実施形態においては、制御部29は、少なくとも1つの液体収容部21内の液体の残量Q3が閾値Qtを下回った後は、いずれかの液体貯留部73内の液体の量がその所定量を下回った後に送液部71による送液を行う。このとき、制御部29は、全ての残量Q3がその閾値Qt以上である場合よりも、送液部71が一度に吸引する液体の量を少なくするとともに、送液部71が吸引する回数を増やす。そして、制御部29は、全ての残量Q3がその閾値Qt以上である場合よりも、送液部71が液体を吸引する速度を遅くする。
【0119】
ステップS206において、制御部29は、液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ったか否かを判定する。本実施形態においては、制御部29は、少なくとも1つの液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ったか否かを判定する。どの液体貯留部73内の液体の量も所定量以上のときは、制御部29は、少なくとも1つの液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回るまで、ステップS205の制御を継続する。少なくとも1つの液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ったときは、ステップS207に移行する。
【0120】
ステップS207において、制御部29は、液体の量が所定量を下回った液体貯留部73に対応する液体収容部21内の液体がなくなったことを、表示部19aに表示する。そして、制御部29は、記録ジョブの受付を停止して、フローを終了する。液体噴射装置11の装着部14に新しい液体収容部21が装着されて、液体貯留部73の液室93内にその液体が貯留されると、制御部29は、本フローを再度開始する。
【0121】
以上のように、液体噴射装置11の制御方法において、制御部29は、液体収容部21内の液体の残量Q3に応じて送液部71の駆動制御を変更する。
本実施形態の作用について説明する。
【0122】
液体噴射装置11において、制御部29は、ユーザーによって4つの液体収容部21が装着部14に装着されたことを確認すると、初期化動作を行なって、記録ジョブの受付を開始する。
【0123】
カウント部116は、液体噴射ヘッド38からその液体が排出される度に4つの液体収容部21に対して、収容量目安値Q1および排出量目安値Q2pに基づいて残量Q3の算出を行う。そして、カウント部116は、液体収容部21が装着部14に装着されてから、その液体収容部21内の液体がなくなるまで、液体噴射ヘッド38からその液体が排出される度に残量Q3の算出を行う。これにより、制御部29は、液体噴射装置11に装着された4つの液体収容部21内の、それぞれの液体の残量Q3を常に把握することができる。さらに、制御部29は、液体噴射装置11に装着された4つの液体収容部21内の、それぞれの液体の残量Q3が、それぞれの閾値Qt以上であるか否かを常に把握することができる。
【0124】
それぞれの閾値Qtは、それぞれの液体収容部21内の液体がなくなる付近において、液体収容部21内に高い負圧が作用するときの液体の量に設定される。そのため、制御部29は、液体噴射装置11に装着された4つの液体収容部21内に、高い負圧が作用しているか否かを常に検知することができる。
【0125】
4つの液体収容部21内のどの液体の残量Q3も閾値Qt以上である場合には、吸引動作と吐出動作とが交互に連続して行われることにより、液体収容部21から送液部71と液体貯留部73とを通じて液体噴射ヘッド38へ液体が送られる。これにより、どの液体収容部21内にも高い負圧が作用していない期間においては、効率よく液体噴射ヘッド38へ液体を送ることができる。
【0126】
制御部29は、いずれかの液体収容部21内の液体の残量Q3が閾値Qtを下回った場合には、送液部71による送液を停止することにより、液体貯留部73内の液体が液体噴射ヘッド38へ送られる。すなわち、制御部29が、いずれかの液体収容部21内に高い負圧が作用すると検知したときに、送液部71による送液を停止しながら、液体噴射ヘッド38へ液体を送ることができる。換言すれば、液体を液体噴射ヘッド38へ送りながら、液体収容部21内に作用する負圧を抑制することができる。また、液体を液体噴射ヘッド38へ送りながら、送液部71による送液が停止される期間が設けられることにより、液体収容部21内に負圧が作用する回数を少なくすることができる。
【0127】
液体貯留部73内の液体が使用されると、いずれかの液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回る。制御部29は、いずれかの液体貯留部73内の液体の量がその所定量を下回った後に、送液部71による送液を行う。このとき、制御部29は、全ての残量Q3がその閾値Qt以上である場合よりも、送液部71が一度に吸引する液体の量を少なくするとともに、送液部71が吸引する回数を増やす。そして、制御部29は、全ての残量Q3がその閾値Qt以上である場合よりも、送液部71が液体を吸引する速度を遅くする。これにより、液体収容部21内に高い負圧が作用することを抑制できる。ここで、残量Q3が閾値Qtを下回った場合には、液体貯留部73内の液体の量がその所定量を下回った後に送液部71による送液を行う、送液部71が一度に吸引する液体の量を少なくする、送液部71が吸引する回数を増やす、送液部71が液体を吸引する速度を遅くする、の少なくとも一つを実行するようにしても良い。この場合においても、液体収容部21内に高い負圧が作用することを抑制することができる。
【0128】
送液部71による送液によって液体収容部21内の液体が使用されると、さきほど液体の残量Q3が閾値Qtを下回った液体収容部21内の液体がなくなる。これにより、その液体収容部21に対応する液体貯留部73内の液体の量が、所定量を下回る。制御部29は、液体の量が所定量を下回った液体貯留部73に対応する液体収容部21内の液体がなくなったことを、表示部19aに表示する。
【0129】
本実施形態の効果について説明する。
(1)制御部29は、液体収容部21内の液体の残量Q3に応じて送液部71の駆動制御を変更する。これにより、液体収容部21内の液体の残量Q3が少なくなったときに作用する負圧を調整できる。そのため、液体収容部21内から供給流路27内に流出する気泡の量を抑制できる。
【0130】
(2)液体収容部21内の液体の残量Q3が少なくなったときに、液体収容部21内に作用する負圧が大きくなるため、液体収容部21に気泡が流入し易くなる。そして、その気泡が液体収容部21内から供給流路27内に流出すると、噴射不良が発生する。本実施形態においては、少なくとも1つの液体収容部21内の液体の残量Q3が少なくなったときに、制御部29は、送液部71が一度に吸引する液体の量を少なくして、送液部71が吸引する回数を増やす。これにより、液体収容部21内の液体の残量Q3が少なくなったときに、送液量を変えることなく、どの液体収容部21内に作用する負圧も抑制することができる。そのため、液体収容部21から供給流路27内に流出する気泡の量を抑制することができる。
【0131】
(3)液体収容部21内の液体の残量Q3が少なくなったときに、液体収容部21内に作用する負圧が大きくなるため、液体収容部21に気泡が流入し易くなる。そして、その気泡が液体収容部21内から供給流路27内に流出すると、噴射不良が発生する。本実施形態においては、少なくとも1つの液体収容部21内の液体の残量Q3が少なくなったときに、制御部29は、送液部71が液体を吸引する速度を遅くする。これにより、液体収容部21内の液体の残量Q3が少なくなったときに、送液量を変えることなく、どの液体収容部21内に作用する負圧も抑制することができる。そのため、液体収容部21から供給流路27内に流出する気泡の量を抑制することができる。
【0132】
(4)本実施形態においては、少なくとも1つの液体収容部21内の液体の残量が閾値Qtを下回った後は、液体貯留部73内のその液体の量が所定量を下回った後に送液部71による送液が行なわれる。液体収容部21内の液体の残量Q3が閾値Qtを下回った後は、送液部71による送液が行なわれるときに、液体収容部21内に作用する負圧が大きくなる。液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回るまで送液部71による送液が停止されることにより、その間、どの液体収容部21内においても負圧が抑制される。すなわち、液体収容部21内に高い負圧を作用させる回数を減らすことができる。これにより、液体収容部21に気泡が流入し難くなるため、液体収容部21から供給流路27内に流出する気泡の量を抑制することができる。
【0133】
(5)液体噴射装置11の制御方法においても、液体収容部21内の液体の残量Q3に応じて送液部71の駆動制御を変更されるため、上記(1)に記載した液体噴射装置11と同じ効果が得られる。
【0134】
(6)液体噴射装置11の制御方法においても、少なくとも1つの液体収容部21内の液体の残量Q3が少なくなったときに、送液部71が一度に吸引する液体の量が少なくされて、送液部71が吸引する回数が増やされるため、上記(2)に記載した液体噴射装置11と同じ効果が得られる。
【0135】
(7)液体噴射装置11の制御方法においても、少なくとも1つの液体収容部21内の液体の残量Q3が少なくなったときに、送液部71が液体を吸引する速度が遅くされるため、上記(3)に記載した液体噴射装置11と同じ効果が得られる。
【0136】
(8)液体噴射装置11の制御方法においても、少なくとも1つの液体収容部21内の液体の残量が閾値Qtを下回った後は、液体貯留部73内のその液体の量が所定量を下回った後に送液部71による送液が行なわれるため、上記(4)に記載した液体噴射装置11と同じ効果が得られる。
【0137】
(第2実施形態)
以下、液体噴射装置11の第2実施形態について図面を参照して説明する。第2実施形態は第1実施形態とほぼ同じであるため、同一の構成については同一符号を付すことによって重複した説明は省略する。
【0138】
<液体の残量の算出方法と残量差分について>
図19に示すように、液体噴射装置11は、装着部14と、操作パネル19と、搬送部24と、記録部25と、メンテナンス部26と、供給流路27と、を制御する制御部29を備える。操作パネル19が有する表示部19aは、ユーザーに対して、メニューやメッセージ等を表示する。供給流路27が有する変位検出部99は、制御部29に検出結果を出力する。ICチップ22を有する液体収容部21は、装着部14に装着される。制御部29は、装着部14を介して、ICチップ22に格納されている情報を読み取る。
【0139】
制御部29は、インターフェイス部111と、CPU112と、メモリー113と、制御回路114と、駆動回路115と、カウント部116と、記憶部117と、を有する。
インターフェイス部111は、外部装置であるコンピューター119と液体噴射装置11との間でデータを送受信する。CPU112は、演算処理装置である。メモリー113は、CPU112のプログラムを格納する領域または作業領域等を確保する記憶装置であり、RAM、EEPROM等の記憶素子を有する。CPU112は、メモリー113に格納されているプログラムに従い、制御回路114を介して、装着部14、搬送部24、記録部25、およびメンテナンス部26を制御する。駆動回路115は、液体噴射ヘッド38のアクチュエーターを駆動させる駆動信号を生成する。
【0140】
カウント部116は、液体収容部21に収容される液体の量を表す収容量目安値Q1、および液体噴射ヘッド38から排出される液体の排出量を表す排出量目安値Q2pに基づいて、液体収容部21内の液体の残量Q3を算出する。
【0141】
収容量目安値Q1とは、未使用の液体収容部21における液体の収容量である。液体収容部21の出荷時において、液体収容部21における液体の収容量が一定値で管理されているときは、その値が収容量目安値Q1である。すなわち、収容量目安値Q1は、液体収容部21が装着部14に装着されたときに、液体収容部21に収容されている液体の量である。
【0142】
液体収容部21が装着部14に装着されたときは、装着部14と液体収容部21とが電気的に接続される。このとき、制御部29は、装着部14を介して液体収容部21のICチップ22から、その液体収容部21に関する各種の情報を読みとってもよい。液体収容部21が出荷されるときに、その液体収容部21に収容されている液体の収容量がICチップ22内に格納されている場合は、ICチップ22から、その収容量の値を読みとって、収容量目安値Q1としてもよい。このようなときは、制御部29は、収容量目安値Q1を液体収容部21毎の個別の値として管理する。
【0143】
排出量目安値Q2pとは、液体噴射ヘッド38が排出する液体の排出量である。より詳しくは、排出量目安値Q2pとは、1ショットにおいて1つのノズル37から排出される液体の量である。なお、1つのノズル37から1回の噴射が行われることを1ショットという。制御部29は、排出量目安値Q2pを液体収容部21内の液体の種類毎の個別の値として管理する。
【0144】
排出量目安値Q2pとショット回数nとを掛け合わせることにより総排出量Q2が算出される。すなわち、カウント部116は、式Q2=Q2p×nにより総排出量Q2を算出する。なお、ショット回数nは、装着部14にその液体が収容される液体収容部21が装着されてから、1つのノズル37からその液体が噴射された回数を、全てのノズル37において合算した回数である。なお、ショット回数nには、記録によって媒体Sに対して液体が噴射された回数に加えて、フラッシングによって液体が噴射された回数が含まれる。液体噴射ヘッド38のアクチュエーターの駆動条件や、温湿度等の環境条件によって、排出量目安値Q2pが変動するときは、排出量目安値Q2pは、それらの条件によって変動する値としてもよい。さらに、排出量目安値Q2pが記録デューティーによって影響を受けるときは、排出量目安値Q2pは、記録デューティーによって変動する値としてもよい。
【0145】
吸引クリーニング等のメンテナンスによって液体噴射ヘッド38から排出される液体の量を加算して、総排出量Q2が算出されてもよい。例えば、1回のクリーニングにおける吸引量目安値Q2sと、クリーニング回数mと、を掛け合わせた値を加算して総排出量Q2が算出されてもよい。すなわち、カウント部116は、式Q2=(Q2p×n)+(Q2s×m)により総排出量Q2を算出してもよい。吸引量目安値Q2sは、1回の吸引クリーニングにおいて液体噴射ヘッド38全体から排出される液体の量である。クリーニング回数mは、装着部14にその液体が収容される液体収容部21が装着されてから、液体噴射ヘッド38に対して、吸引クリーニングが行われた回数である。吸引クリーニングにおいて、液体が吸引される強度が調整されるときは、吸引量目安値Q2sは、液体が吸引される強度によって変動する値としてもよい。
【0146】
本実施形態の液体収容部21は、その液体収容部21内の液体の残量を検知する残量センサーを備えていない。しかし、カウント部116は、収容量目安値Q1から総排出量Q2を減算する。これにより、本実施形態の液体噴射装置11は、液体収容部21内の液体の残量Q3を算出可能に構成される。すなわち、カウント部116は、式Q3=Q1-Q2により残量Q3を算出する。
【0147】
本実施形態においては、カウント部116は、4つの液体収容部21に対して、それぞれの収容量目安値Q1およびそれぞれの排出量目安値Q2pに基づいて、それぞれの液体収容部21内の液体の残量Q3を算出する。例えば、4つの液体収容体20が、それぞれ、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクを収容するとき、カウント部116は、ブラックのインクの残量Q3aと、シアンのインクの残量Q3bと、マゼンタのインクの残量Q3cと、イエローのインクの残量Q3dと、を算出する。より具体的には、例えば、ブラックのインクを収容する液体収容部21に対して、ブラックのインクの収容量目安値Q1aおよびブラックのインクの排出量目安値Q2paに基づいて、ブラックのインクの残量Q3aを算出する。
【0148】
カウント部116は、液体収容部21が装着部14に装着されてから、その液体収容部21内の液体がなくなるまで、液体噴射ヘッド38からその液体が排出される度に残量Q3の算出を行う。すなわち、図3に示す供給機構28が駆動されているときに、その液体に対応する変位検出部99によって液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ったことが検出されるまで、カウント部116は、液体収容部21内のその液体の残量Q3を算出し続ける。これにより、液体噴射装置11は、液体収容部21内の液体の残量Q3に応じて、送液部71の駆動制御を、制御部29によって変更可能に構成される。
【0149】
記憶部117は、図11に示す液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ったことを変位検出部99が検出した時の残量Q3を記憶する。すなわち、液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ったときに、記憶部117は、カウント部116によって算出された残量Q3の値を記憶する。液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ったときの液体収容部21内の液体の残量は、実際には「ゼロ」である。以降の説明では、記憶部117が記憶する残量を、残量差分ΔQという。
【0150】
本実施形態においては、記憶部117は、4つの液体収容部21に対して、それぞれの残量差分ΔQを記憶する。例えば、4つの液体収容体20が、それぞれ、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクを収容するとき、記憶部117は、ブラックのインクの残量差分ΔQaと、シアンのインクの残量差分ΔQbと、マゼンタのインクの残量差分ΔQcと、イエローのインクの残量差分ΔQdと、を記憶する。
【0151】
<排出量目安値の補正方法について>
最初に補正方法の概要について説明する。
残量差分ΔQが「ゼロ」に近い値になるように、排出量目安値Q2pが設定されて、総排出量Q2が算出されることが望ましい。より詳しくは、残量差分ΔQは、液体収容部21内の液体がなくなった後に、送液部71内の液体がなくなって、液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回るまでに使用される液体の量であるため、「ゼロ」に近いマイナスの値となることが望ましい。例えば、液体収容部21内の液体がなくなった後に、送液部71内の液体がなくなって、液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回るまでに使用される液体の量が3グラムとすると、残量差分ΔQは、-3グラムであることが望ましい。すなわち、残量差分ΔQが-3グラムになるように、排出量目安値Q2pが設定されて、総排出量Q2が算出されることが望ましい。しかし、1ショットにおいて実際に排出された液体の量である実排出量の平均値が排出量目安値Q2pよりも多かったときは、残量差分ΔQは-3グラムよりも大きな値となり、実排出量の平均値が排出量目安値Q2pよりも少なかったときは、残量差分ΔQは-3グラムよりも小さな値となる。以降の説明においては、実排出量の平均値を、実排出量Q2prと記載する。
【0152】
排出量目安値Q2pは非常に小さな値であり、ショット回数nは非常に大きな値であるため、それらを掛け合わせて算出される総排出量Q2の精度は高くない。そのため、残量差分ΔQが「ゼロ」に近い値にならない場合がある。制御部29は、残量差分ΔQに基づいて、排出量目安値Q2pを補正する。すなわち、制御部29は、実際に液体がなくなったときの総排出量Q2と収容量目安値Q1との差である残量差分ΔQに基づいて実排出量Q2prを算出して、実排出量Q2prで排出量目安値Q2pを置き換える。より詳しくは、制御部29は、式Q2pr=Q2p×Q1÷(Q1-ΔQ)によって、実排出量Q2prを算出する。液体収容部21内の液体がなくなった後に、送液部71内の液体がなくなって、液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回るまでに使用される液体の量が3グラムのときは、制御部29は、式Q2pr=Q2p×Q1÷(Q1-(ΔQ+3グラム))によって、実排出量Q2prを算出してもよい。そして、今まで装着されていた液体収容部21の代わりに次に交換される液体収容部21において、カウント部116は、算出された実排出量Q2prを排出量目安値Q2pとして、総排出量Q2を算出する。このようにして、液体収容部21が交換される毎に、排出量目安値Q2pが補正される。そして、次に記憶部117に記憶される残量差分ΔQが、「ゼロ」に近づく。これにより、残量Q3の算出精度が向上するため、制御部29が送液部71の駆動制御を変更するタイミングの精度を上げることができる。
【0153】
制御部29は、排出量目安値Q2pの補正を所定回数行った後は、カウント部116による残量Q3の算出結果に基づいて、液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ったことを変位検出部99が検出するよりも先にユーザーに報知する。液体噴射装置11は、残量Q3の算出精度が向上することにより、液体収容部21内の液体がなくなる付近において、液体収容部21内に高い負圧が作用する前に、液体収容部21が交換時期であることを表示部19aに表示可能に構成される。所定回数は1回でもよい。複数回の排出量目安値Q2pの補正が行なわれて、残量Q3の算出精度がより向上した後に、液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ったことを変位検出部99が検出するよりも先にユーザーに報知してもよい。
【0154】
制御部29は、残量差分ΔQに基づいて、1回のクリーニングにおける実吸引量Q2srを算出してもよい。例えば、算出された実排出量Q2prによって複数回の排出量目安値Q2pの補正が行なわれても、残量差分ΔQが、「ゼロ」に近づかないときは、制御部29は、実吸引量Q2srを算出することにより、吸引量目安値Q2sの補正が行なわれてもよい。
【0155】
次に図20に示すフローチャートを参照し、液体噴射装置11の制御方法において、制御部29が、記憶部117が記憶する液体の残量Q3である残量差分ΔQに基づいて排出量目安値Q2pを補正するときの、排出量目安値Q2pの補正方法について、各ステップにおける制御部29が実行する制御を順に説明する。なお、ユーザーによって液体噴射装置11に新しい液体収容部21が装着されると、制御部29は、本フローを開始する。
【0156】
本実施形態においては、制御部29は、4種類の液体に対して、それぞれの液体に対応する残量差分ΔQに基づいて、それぞれの液体に対応する排出量目安値Q2pを補正する。例えば、4つの液体収容体20が、それぞれ、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクを収容するとき、制御部29は、ブラックのインクの排出量目安値Q2paと、シアンのインクの排出量目安値Q2pbと、マゼンタのインクの排出量目安値Q2pcと、イエローのインクの排出量目安値Q2pdと、を補正する。より具体的には、例えば、制御部29は、ブラックのインクを収容する液体収容部21に対して、ブラックのインクの残量差分ΔQaに基づいて、ブラックのインクの排出量目安値Q2paを補正する。
【0157】
ステップS301において、制御部29は、液体噴射装置11に装着された液体収容部21の収容量目安値Q1を取得する。なお、液体収容部21が液体噴射装置11に装着されたばかりのときの総排出量Q2は、「ゼロ」である。
【0158】
ステップS302において、液体噴射ヘッド38によって記録またはフラッシングが行われると、制御部29は、排出量目安値Q2pとショット回数nより、使用された液体の排出量を算出して、総排出量Q2に加算する。なお、その液体の種類が収容されている液体収容部21が、液体噴射装置11に初めて装着されたときは、排出量目安値Q2pは、排出量目安値の初期値を排出量目安値Q2pとして使用する。例えば、その初期値は、あらかじめ実験等により決められた値であり、図19に示すメモリー113に格納されている値である。液体噴射装置11に今まで装着されていた液体収容部21内の液体がなくなって、その液体収容部21が新しい液体収容部21に交換されたときは、今まで装着されていた液体収容部21における後述するステップS306のときに算出された排出量目安値Q2pを使用する。
【0159】
ステップS303において、制御部29は、収容量目安値Q1から、総排出量Q2を減算して、残量Q3を算出する。すなわち、液体噴射装置11の制御方法において、制御部29は、液体収容部21に収容される液体の量を表す収容量目安値Q1および液体噴射ヘッド38から排出される液体の排出量を表す排出量目安値Q2pに基づいて、液体収容部21内の液体の残量Q3を算出する。
【0160】
ステップS304において、制御部29は、液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ったか否かを判定する。液体貯留部73内の液体の量が所定量以上のときは、ステップS302に移行する。液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ったときは、ステップS305に移行する。
【0161】
ステップS305において、制御部29が、液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ったことを変位検出部99が検出した時の残量Q3を残量差分ΔQとして、記憶部117に記憶する。そして、ステップS306において、制御部29は、その残量差分ΔQに基づいて、実排出量Q2prを算出し、次から使用する排出量目安値Q2pとする。すなわち、液体噴射装置11の制御方法において、制御部29が、液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ったことを変位検出部99が検出した時の残量Q3を記憶し、記憶された残量Q3に基づいて、排出量目安値Q2pを補正する。なお、このとき、後述する図21に示すフローのステップS409において、液体噴射装置11は記録ジョブの受付を停止する。
【0162】
ステップS307において、制御部29は、排出量目安値Q2pの補正回数に1を加える。なお、補正回数の初期値は「ゼロ」であり、その液体の種類が収容されている液体収容部21が、液体噴射装置11に初めて装着されたときの本フローのステップS307において、補正回数は、「ゼロ」から1に変化する。
【0163】
ステップS308において、ユーザーによって液体噴射装置11から液体のなくなった液体収容部21が取り出されると、制御部29は、本フローを終了する。そして、その後、液体のなくなった液体収容部21が、その液体の種類が収容されている新しい液体収容部21に、ユーザーによって交換されると、制御部29は、再度、本フローを開始する。
【0164】
<送液部の駆動制御方法と報知制御方法について>
最初に、液体噴射装置11における送液部71、液体貯留部73、および表示部19aの動作を説明する。なお、排出量目安値Q2pの補正が所定回数行なわれていないときと、排出量目安値Q2pの補正が所定回数行なわれた後とで、液体噴射装置11の動作が異なる。本実施形態においては、どの種類の液体に対しても、排出量目安値Q2pの補正が所定回数行なわれていないときと、少なくとも1つの種類の液体に対して、排出量目安値Q2pの補正が所定回数行なわれた後とで、液体噴射装置11の動作が異なる。制御部29は、少なくとも1つの種類の液体に対して、排出量目安値Q2pの補正が所定回数行なわれていれば、その液体の種類に対応する閾値Qtに応じた制御を行う。より詳しくは、例えば、4種類の液体のうち、ブラックのインクのみに対して、排出量目安値Q2paの補正が所定回数行なわれていれば、ブラックのインクに対応する閾値Qtaのみに応じて、制御部29は液体噴射装置11の制御を変更する。
【0165】
図14に示すように、カウント部116によって算出される液体収容部21内の液体の残量Q3が閾値Qt以上である場合には、送液部71によって、吸引動作と吐出動作とが交互に連続して行われる。これにより、制御部29は、液体収容部21から送液部71と液体貯留部73とを通じて液体噴射ヘッド38へ、図14に示す破線の矢印の方向に液体を送る。本実施形態においては、カウント部116によって算出されるどの液体収容部21内の液体の残量Q3も閾値Qt以上である場合には、送液部71によって、吸引動作と吐出動作とが交互に連続して行われる。
【0166】
制御部29は、図20に示す排出量目安値Q2pの補正が所定回数行なわれていないときは、カウント部116によって算出される液体収容部21内の液体の残量Q3が閾値Qtを下回っても、変位検出部99により被検出部97bが検出されるまで、制御を変更しない。本実施形態においては、どの種類の液体に対しても排出量目安値Q2pの補正が所定回数行なわれていないときは、カウント部116によって算出されるどの液体収容部21内の液体の残量Q3が閾値Qtを下回っても、変位検出部99により被検出部97bが検出されるまで、制御部29は制御を変更しない。
【0167】
制御部29は、図20に示す排出量目安値Q2pの補正を所定回数行った後は、カウント部116による算出結果に基づいて、液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ったことを変位検出部99が検出するよりも先にユーザーに報知する。本実施形態においては、少なくとも1つの種類の液体に対して排出量目安値Q2pの補正が所定回数行なわれた後は、カウント部116によって算出される液体収容部21内のその液体の残量Q3が閾値Qtを下回った場合に、制御部29は、液体収容部21が交換時期であることを図1に示す表示部19aに表示する。そして、制御部29は、液体収容部21内の液体の残量Q3に応じて送液部71の駆動制御を変更する。より詳しくは、制御部29は、残量Q3がその閾値Qt以上である場合よりも、送液部71が一度に吸引する液体の量を少なくするとともに、送液部71が吸引する回数を増やす。そして、制御部29は、残量Q3がその閾値Qt以上である場合よりも、送液部71が液体を吸引する速度を遅くする。ここで、残量Q3が閾値Qtを下回った場合には、送液部71が一度に吸引する液体の量を少なくする、送液部71が吸引する回数を増やす、送液部71が液体を吸引する速度を遅くする、の少なくとも一つを実行するようにしても良い。
【0168】
液体収容部21内の液体がなくなって、送液部71から液体貯留部73へ液体が送られなくなり、液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ると、変位検出部99により被検出部97bが検出される。このとき、液体がなくなった液体収容部21が、ユーザーによって新しい液体収容部21に交換されるまで、液体噴射装置11は、記録ジョブの受付を停止する。
【0169】
次に、図21に示すフローチャートを参照し、液体噴射装置11の制御方法において、制御部29が、送液部71の駆動を制御するときの液体噴射装置11の制御方法について、各ステップにおける制御部29が実行する制御を順に説明する。なお、液体噴射装置11の装着部14に新しい液体収容部21が装着されて、液体貯留部73の液室93内に液体が貯留されてから、制御部29は、本フローを開始する。すなわち、液体収容部21内の液体の残量Q3が閾値Qt以上であり、液体貯留部73内の液体の量が所定量以上のときに、本フローが開始される。なお、排出量目安値Q2pは液体の種類毎に補正されるため、制御部29によって、本フローは液体の種類毎において、並行して実行される。
【0170】
ステップS401において、制御部29は、排出量目安値Q2pの補正を所定回数行ったか否かを判定する。制御部29は、すでに排出量目安値Q2pの補正を所定回数行っているときは、ステップS404に移行する。制御部29は、まだ排出量目安値Q2pの補正を所定回数行っていないときは、ステップS402に移行する。
【0171】
制御部29が、すでに排出量目安値Q2pの補正を所定回数行っているときは、ステップS404において、制御部29は、送液部71によって、吸引動作と吐出動作とを交互に連続して行う。そして、ステップS405において、制御部29は、液体収容部21内の液体の残量Q3が閾値Qtを下回ったか否かを判定する。残量Q3が閾値Qt以上のときは、制御部29は、残量Q3が閾値Qtを下回るまで、ステップS404の制御を継続する。残量Q3が閾値Qtを下回ったときは、ステップS406に移行する。
【0172】
ステップS406において、制御部29は、液体収容部21が交換時期であることを表示部19aに表示する。すなわち、液体噴射装置11の制御方法において、制御部29は、排出量目安値Q2pの補正を所定回数行った後は、カウント部116による算出結果である液体の残量Q3に基づいて、液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ったことを検出部の一例である変位検出部99が検出するよりも先にユーザーに報知する。また、制御部29は、液体収容部21が交換時期であることを外部装置であるコンピューター119のディスプレイに表示させることによって、ユーザーに報知してもよい。
【0173】
ステップS407において、制御部29は、送液部71が一度に吸引する液体の量を少なくするとともに、送液部71が吸引する回数を増やし、吸引する速度を遅くして、吸引動作と吐出動作とを交互に連続して行う。すなわち、液体噴射装置11の制御方法において、制御部29は、液体収容部21内の液体の残量Q3が閾値Qtを下回った場合には、残量Q3がその閾値Qt以上である場合よりも、送液部71が一度に吸引する液体の量を少なくするとともに、送液部71が吸引する回数を増やす。そして、液体噴射装置11の制御方法において、制御部29は、残量Q3がその閾値Qt以上である場合よりも、送液部71が液体を吸引する速度を遅くする。
【0174】
本フローは液体の種類毎において、制御部29によって、並行して実行される。本実施形態においては、4種類の液体が使用される。そのため、制御部29によって、4つのフローが並行して実行される。そして、その4種類の液体に対応する4つの送液部71は、1つの変圧流路48に接続されている。そのため、4種類の液体のうちの1種類の液体のフローにおいて、制御部29が、ステップS407を実行すると、4つの送液部71全ての駆動制御が変更される。すなわち、本実施形態においては、制御部29は、少なくとも1つの液体収容部21内の液体の残量Q3が閾値Qtを下回った後は、その残量Q3がその閾値Qt以上である場合よりも、送液部71が一度に吸引する液体の量を少なくするとともに、送液部71が吸引する回数を増やす。そして、制御部29は、その残量Q3がその閾値Qt以上である場合よりも、送液部71が液体を吸引する速度を遅くする。
【0175】
前述したように、それぞれの送液部71は、それぞれ別の変圧流路48に接続されてもよい。そしてその変圧流路48のそれぞれが、それぞれ別の供給機構28と繋がってもよい。これにより、液体収容部21毎に送液部71の駆動を制御することができる。すなわち、それぞれの液体収容部21内の液体の残量Q3に応じて、その液体収容部21に対応するそれぞれの送液部71の駆動制御のみを変更することができる。
【0176】
ステップS408において、制御部29は、液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ったか否かを判定する。液体貯留部73内の液体の量が所定量以上のときは、制御部29は、液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回るまで、ステップS407の制御を継続する。液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ったときは、ステップS409に移行する。
【0177】
ステップS409において、制御部29は、表示部19aに、液体収容部21内の液体がなくなったことを表示する。そして、制御部29は、記録ジョブの受付を停止して、フローを終了する。液体噴射装置11の装着部14に新しい液体収容部21が装着されて、液体貯留部73の液室93内にその液体が貯留されると、制御部29は、本フローを再度開始する。
【0178】
制御部29が、まだ排出量目安値Q2pの補正を所定回数行っていないときは、ステップS402において、制御部29は、送液部71によって、吸引動作と吐出動作とを交互に連続して行う。そして、ステップS403において、制御部29は、液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ったか否かを判定する。液体貯留部73内の液体の量が所定量以上のときは、制御部29は、液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回るまで、ステップS402の制御を継続する。液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ったときは、ステップS409に移行する。
【0179】
以上のように、液体噴射装置11の制御方法において、制御部29は、液体収容部21内の液体の残量Q3に応じて送液部71の駆動制御を変更する。
本実施形態の作用について説明する。
【0180】
液体噴射装置11において、制御部29は、ユーザーによって4つの液体収容部21が装着部14に装着されたことを確認すると、初期化動作を行なって、記録ジョブの受付を開始する。
【0181】
カウント部116は、液体噴射ヘッド38からその液体が排出される度に4つの液体収容部21に対して、収容量目安値Q1および排出量目安値Q2pに基づいて、残量Q3の算出を行う。そして、カウント部116は、液体収容部21が装着部14に装着されてから、その液体収容部21内の液体がなくなるまで、液体噴射ヘッド38からその液体が排出される度に残量Q3の算出を行う。これにより、制御部29は、液体噴射装置11に装着された4つの液体収容部21内の、それぞれの液体の残量Q3を常に把握することができる。さらに、制御部29は、液体噴射装置11に装着された4つの液体収容部21内の、それぞれの液体の残量Q3が、それぞれの閾値Qt以上であるか否かを常に把握することができる。
【0182】
それぞれの閾値Qtは、それぞれの液体収容部21内の液体がなくなる付近において、液体収容部21内に高い負圧が作用するときの液体の量に設定される。そのため、制御部29は、液体噴射装置11に装着された4つの液体収容部21内に、高い負圧が作用しているか否かを常に検知することができる。
【0183】
記憶部117は、液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ったことを変位検出部99が検出した時の液体収容部21内の液体の残量Q3を残量差分ΔQとして記憶し、制御部29は、記憶部117が記憶する残量差分ΔQに基づいて排出量目安値Q2pを補正する。これにより、収容量目安値Q1および排出量目安値Q2pに基づいて、液体収容部21内の液体の残量Q3を算出するカウント部116の算出精度を向上させることができる。
【0184】
4つの液体収容部21内のどの液体の残量Q3も閾値Qt以上である場合には、吸引動作と吐出動作とが交互に連続して行われることにより、液体収容部21から送液部71と液体貯留部73とを通じて液体噴射ヘッド38へ液体が送られる。これにより、どの液体収容部21内にも高い負圧が作用していない期間においては、効率よく液体噴射ヘッド38へ液体を送ることができる。
【0185】
制御部29が、排出量目安値Q2pの補正を所定回数行った後は、排出量目安値Q2pの補正が所定回数行なわれた液体収容部21内の液体の残量Q3が閾値Qtを下回った場合には、制御部29は、カウント部116による算出結果である液体の残量Q3に基づいて、ユーザーに報知する。これにより、液体収容部21内の液体がなくなる付近において、液体収容部21内に高い負圧が作用する前に、液体収容部21が交換時期であることをユーザーに報知することができる。
【0186】
制御部29は、いずれかの液体収容部21内の液体の残量Q3が閾値Qtを下回った場合には、全ての残量Q3がその閾値Qt以上である場合よりも、送液部71が一度に吸引する液体の量を少なくするとともに、送液部71が吸引する回数を増やす。そして、制御部29は、全ての残量Q3がその閾値Qt以上である場合よりも、送液部71が液体を吸引する速度を遅くする。これにより、液体収容部21内に高い負圧が作用することを抑制できる。ここで、残量Q3が閾値Qtを下回った場合には、送液部71が一度に吸引する液体の量を少なくする、送液部71が吸引する回数を増やす、送液部71が液体を吸引する速度を遅くする、の少なくとも一つを実行するようにしても良い。この場合においても、液体収容部21内に高い負圧が作用することを抑制することができる。
【0187】
送液部71による送液によって液体収容部21内の液体が使用されると、さきほど液体の残量Q3が閾値Qtを下回った液体収容部21内の液体がなくなる。これにより、その液体収容部21に対応する液体貯留部73内の液体の量が、所定量を下回る。制御部29は、液体の量が所定量を下回った液体貯留部73に対応する液体収容部21内の液体がなくなったことを、表示部19aに表示する。
【0188】
本実施形態の効果について説明する。
液体噴射装置11においては、第1実施形態における(1)~(3)と同じ効果が得られる。
【0189】
(9)記憶部117は、液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ったことを変位検出部99が検出した時の液体収容部21内の液体の残量Q3を残量差分ΔQとして記憶し、制御部29は、記憶部117が記憶する残量差分ΔQに基づいて排出量目安値Q2pを補正する。これにより、収容量目安値Q1および排出量目安値Q2pに基づいて、液体収容部21内の液体の残量Q3を算出するカウント部116の算出精度を向上させることができる。そして、送液部71の駆動制御を液体収容部21内の液体の残量Q3に応じて正しいタイミングで変更できる。すなわち、液体収容部21内に高い負圧が作用する前に、送液部71の駆動制御を変更することにより、液体収容部21内に作用する負圧を調整できる。そのため、液体収容部21内から供給流路27内に流出する気泡の量を抑制することができる。
【0190】
(10)制御部29は、排出量目安値Q2pの補正を所定回数行なうことにより、排出量目安値Q2pに基づいて液体収容部21内の液体の残量Q3を算出するカウント部116の算出精度を、より向上させることができる。これにより、液体収容部21内に高い負圧が作用する前に、液体収容部21が交換時期であることをユーザーに報知することができる。そして、液体収容部21内の液体がなくなる付近において、液体収容部21内に高い負圧が作用する前に、ユーザーによって液体収容部21が交換されることによって、液体収容部21内から供給流路27内に流出する気泡の量を抑制することができる。
【0191】
液体噴射装置11の制御方法においては、第1実施形態における(5)~(7)と同じ効果が得られる。
(11)液体噴射装置11の制御方法においても、液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ったことを変位検出部99が検出した時の液体収容部21内の液体の残量Q3が残量差分ΔQとして記憶され、記憶部117が記憶する残量差分ΔQに基づいて排出量目安値Q2pが補正される。そのため、上記(9)に記載した液体噴射装置11と同じ効果が得られる。
【0192】
(12)液体噴射装置11の制御方法においても、排出量目安値Q2pの補正が所定回数行なわれるため、上記(10)に記載した液体噴射装置11と同じ効果が得られる。
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0193】
・液体収容部21においては、本実施形態のように、容器13から取り外し可能に載置される液体収容体20が交換可能であってもよいし、液体収容部21全体が、液体が収容されるタンクであってもよい。また、液体収容体20は、袋状の収容体に液体が収容される液体パックであってもよいし、箱状の収容体に液体が収容されるタンクであってもよい。密閉系の液体収容部21に液体が収容されていれば、液体収容部21内に負圧が作用する場合があるため、密閉系の液体収容部21であればよい。
【0194】
・制御部29は、液体収容部21内の液体の残量Q3が減るにつれて、送液部71が一度に吸引する液体の量を徐々に少なくするとともに、送液部71が吸引する回数を徐々に増やしてもよい。
【0195】
・制御部29は、液体収容部21内の液体の残量Q3が減るにつれて、送液部71が液体を吸引する速度を徐々に遅くしてもよい。
・液体の残量Q3において、第1の閾値と第2の閾値とが設定されてもよい。制御部29は、液体収容部21内の液体の残量Q3が第1の閾値を下回った場合には、送液部71の駆動制御において、第1の変更を実行し、残量Q3が第2の閾値を下回った場合には、送液部71の駆動制御において、第2の変更を実行してもよい。例えば、残量Q3が第1の閾値を下回った場合には、送液部71が一度に吸引する液体の量を少なくするとともに、送液部71が吸引する回数を増やし、残量Q3が第2の閾値を下回った場合には、送液部71が液体を吸引する速度を遅くしてもよい。また、液体の残量Q3において、さらに第3の閾値が設定されてもよい。すなわち、制御部29が、送液部71の駆動制御を変更する閾値は複数あってもよい。
【0196】
・第2の閾値は、第1の閾値よりも小さく、液体貯留部73内の液体の量が所定量を下回ったことを変位検出部99が検出した時の液体収容部21内の液体の残量よりも大きいとき、残量Q3が第2の閾値を下回った場合に、液体収容部21が新しい液体収容部21に交換されるまで、記録ジョブの受付が停止されてもよい。このとき、制御部29は、表示部19aに、液体収容部21内の液体がなくなったことを表示してもよい。
【0197】
・液体噴射装置11は、インク以外の他の液体を噴射する液体噴射装置11であってもよい。液体噴射装置11から微小量の液滴となって噴射される液体の状態としては、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。ここでいう液体は、液体噴射装置11から噴射させることができるような材料であればよい。例えば、液体は、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属、金属融液、のような流状体を含むものとする。液体は、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなども含むものとする。液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置11の具体例としては、例えば、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造等に用いられる電極材や色材等の材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する装置がある。液体噴射装置11は、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。液体噴射装置11は、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ、光学レンズ、などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する装置であってもよい。液体噴射装置11は、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する装置であってもよい。
【0198】
以下に、上述した実施形態及び変更例から把握される技術的思想及びその作用効果を記載する。
(A)液体噴射装置は、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体を収容する交換可能な液体収容部から前記液体噴射ヘッドへ前記液体を供給する供給流路と、前記供給流路に設けられ、前記液体収容部から前記液体を吸引し、前記液体噴射ヘッドに前記液体を送る送液部と、前記送液部の駆動を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記液体収容部内の前記液体の残量に応じて前記送液部の駆動制御を変更する。
【0199】
この構成によれば、制御部は、液体収容部内の残量に応じて送液部の駆動制御を変更する。これにより、液体収容部内の液体の残量が少なくなったときに作用する負圧を調整できる。そのため、液体収容部内から供給流路内に流出する気泡の量を抑制できる。
【0200】
(B)上記液体噴射装置において、前記制御部は、前記液体収容部内の前記液体の残量が閾値を下回った場合には、前記閾値以上である場合よりも、前記送液部が一度に吸引する前記液体の量を少なくするとともに、前記送液部が吸引する回数を増やしてもよい。
【0201】
この構成によれば、液体収容部内の液体の残量が少なくなったときに、液体収容部内に作用する負圧が大きくなるため、液体収容部に気泡が流入し易くなる。そして、その気泡が液体収容部内から供給流路内に流出すると、噴射不良が発生する。そのため、液体収容部内の液体の残量が少なくなったときに、制御部は、送液部が一度に吸引する液体の量を少なくして、送液部が吸引する回数を増やす。これにより、液体収容部内の液体の残量が少なくなったときに、送液量を変えることなく、液体収容部内に作用する負圧を抑制することができる。そのため、液体収容部から供給流路内に流出する気泡の量を抑制することができる。
【0202】
(C)上記液体噴射装置において、前記制御部は、前記液体収容部内の前記液体の残量が閾値を下回った場合には、前記閾値以上である場合よりも、前記送液部が前記液体を吸引する速度を遅くしてもよい。
【0203】
この構成によれば、液体収容部内の液体の残量が少なくなったときに、液体収容部内に作用する負圧が大きくなるため、液体収容部に気泡が流入し易くなる。そして、その気泡が液体収容部内から供給流路内に流出すると、噴射不良が発生する。そのため、液体収容部内の液体の残量が少なくなったときに、制御部は、送液部が液体を吸引する速度を遅くする。これにより、液体収容部内の液体の残量が少なくなったときに、送液量を変えることなく、液体収容部内に作用する負圧を抑制することができる。そのため、液体収容部から供給流路内に流出する気泡の量を抑制することができる。
【0204】
(D)上記液体噴射装置は、前記供給流路において、前記送液部と前記液体噴射ヘッドとの間に設けられ、前記液体を貯留可能な液体貯留部と、前記液体貯留部内の前記液体の量を検出可能な検出部と、を備え、前記制御部は、前記液体収容部内の前記液体の残量が閾値以上の場合には、前記液体貯留部内の前記液体の量が所定量を下回る前に前記送液部による送液を行い、前記液体収容部内の前記液体の残量が前記閾値を下回った後は、前記液体貯留部内の前記液体の量が前記所定量を下回った後に前記送液部による送液を行ってもよい。
【0205】
この構成によれば、液体収容部内の液体の残量が閾値を下回った後は、液体貯留部内の液体の量が所定量を下回った後に送液部による送液が行なわれる。液体収容部内の液体の残量が閾値を下回った後は、送液部による送液が行なわれると、液体収容部内に作用する負圧が大きくなる。液体貯留部内の液体の量が所定量を下回るまで送液部による送液が停止されることにより、その間、液体収容部内に作用する負圧を抑制することができる。すなわち、液体収容部内に高い負圧を作用させる回数を減らすことができる。これにより、液体収容部に気泡が流入し難くなるため、液体収容部から供給流路内に流出する気泡の量を抑制することができる。
【0206】
(E)上記液体噴射装置は、前記供給流路において、前記送液部と前記液体噴射ヘッドとの間に設けられ、前記液体を貯留可能な液体貯留部と、前記液体貯留部内の前記液体の量を検出可能な検出部と、を備え、前記制御部は、前記液体収容部に収容される前記液体の量を表す収容量目安値および前記液体噴射ヘッドから排出される前記液体の排出量を表す排出量目安値に基づいて、前記液体収容部内の前記液体の残量を算出するカウント部と、前記液体貯留部内の前記液体の量が所定量を下回ったことを前記検出部が検出した時の前記残量を記憶する記憶部と、を有し、前記記憶部が記憶する前記残量に基づいて前記排出量目安値を補正してもよい。
【0207】
この構成によれば、記憶部は、液体貯留部内の液体の量が所定量を下回ったことを検出部が検出した時の液体収容部内の液体の残量を記憶し、制御部は、記憶部が記憶するその残量に基づいて排出量目安値を補正する。これにより、収容量目安値および排出量目安値に基づいて、液体収容部内の液体の残量を算出するカウント部の算出精度を向上させることができる。そして、送液部の駆動制御を液体収容部内の液体の残量に応じて正しいタイミングで変更できる。すなわち、液体収容部内に高い負圧が作用する前に、送液部の駆動制御を変更することにより、液体収容部内に作用する負圧を調整できる。そのため、液体収容部内から供給流路内に流出する気泡の量を抑制することができる。
【0208】
(F)上記液体噴射装置において、前記制御部は、前記排出量目安値の補正を所定回数行った後は、前記カウント部による算出結果に基づいて、前記液体貯留部内の前記液体の量が所定量を下回ったことを前記検出部が検出するよりも先にユーザーに報知してもよい。
【0209】
この構成によれば、制御部が排出量目安値の補正を所定回数行なうことにより、排出量目安値に基づいて液体収容部内の液体の残量を算出するカウント部の算出精度を、より向上させることができる。これにより、液体収容部内に高い負圧が作用する前に、液体収容部が交換時期であることをユーザーに報知することができる。そして、液体収容部内の液体がなくなる付近において、液体収容部内に高い負圧が作用する前に、ユーザーによって液体収容部が交換されることによって、液体収容部内から供給流路内に流出する気泡の量を抑制することができる。
【0210】
(G)液体噴射装置の制御方法は、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体を収容する交換可能な液体収容部から前記液体噴射ヘッドへ前記液体を供給する供給流路と、前記供給流路に設けられ、前記液体収容部から前記液体を吸引し、前記液体噴射ヘッドに前記液体を送る送液部と、を備える液体噴射装置の制御方法であって、前記液体収容部内の前記液体の残量に応じて前記送液部の駆動制御を変更する。
【0211】
この方法によれば、上記(A)の液体噴射装置と同じ効果が得られる。
(H)上記液体噴射装置の制御方法において、前記液体収容部内の前記液体の残量が閾値を下回った場合には、前記閾値以上である場合よりも、前記送液部が一度に吸引する前記液体の量を少なくするとともに、前記送液部が吸引する回数を増やしてもよい。
【0212】
この方法によれば、上記(B)の液体噴射装置と同じ効果が得られる。
(I)上記液体噴射装置の制御方法において、前記液体収容部内の前記液体の残量が閾値を下回った場合には、前記閾値以上である場合よりも、前記送液部が前記液体を吸引する速度を遅くしてもよい。
【0213】
この方法によれば、上記(C)の液体噴射装置と同じ効果が得られる。
(J)上記液体噴射装置の制御方法において、前記液体噴射装置は、前記供給流路において、前記送液部と前記液体噴射ヘッドとの間に設けられ、前記液体を貯留可能な液体貯留部と、前記液体貯留部内の前記液体の量を検出可能な検出部と、を備え、前記液体収容部内の前記液体の残量が閾値以上の場合には、前記液体貯留部内の前記液体の量が所定量を下回る前に前記送液部による送液を行い、前記液体収容部内の前記液体の残量が前記閾値を下回った後は、前記液体貯留部内の前記液体の量が前記所定量を下回った後に前記送液部による送液を行ってもよい。
【0214】
この方法によれば、上記(D)の液体噴射装置と同じ効果が得られる。
(K)上記液体噴射装置の制御方法において、前記液体噴射装置は、前記供給流路において、前記送液部と前記液体噴射ヘッドとの間に設けられ、前記液体を貯留可能な液体貯留部と、前記液体貯留部内の前記液体の量を検出可能な検出部と、を備え、前記液体収容部に収容される前記液体の量を表す収容量目安値および前記液体噴射ヘッドから排出される前記液体の排出量を表す排出量目安値に基づいて、前記液体収容部内の前記液体の残量を算出し、前記液体貯留部内の前記液体の量が所定量を下回ったことを前記検出部が検出した時の前記残量を記憶し、記憶された前記残量に基づいて前記排出量目安値を補正するとともに、前記排出量目安値の補正を所定回数行った後は、前記算出の結果に基づいて、前記液体貯留部内の前記液体の量が所定量を下回ったことを前記検出部が検出するよりも先にユーザーに報知してもよい。
【0215】
この方法によれば、上記(E)および(F)の液体噴射装置と同じ効果が得られる。
【符号の説明】
【0216】
11…液体噴射装置、12…外装体、13…容器、13a…レール係合部、13b…脚部、14…装着部、15…前蓋、16…媒体収容体、17…装着口、18…排出トレイ、19…操作パネル、19a…表示部、20…液体収容体、20a…取っ手部、21…液体収容部、22…ICチップ、23…媒体収容部、24…搬送部、25…記録部、26…メンテナンス部、27…供給流路、27a…第1流路、27b…第2流路、27c…第3流路、27d…第4流路、28…供給機構、29…制御部、31…枠体、31a…挿入口、31b…案内レール、32…接続部、33…流路ユニット、34…供給口、35…案内枠、36…媒体支持部、37…ノズル、38…液体噴射ヘッド、39…キャリッジ、40…ガイド軸、41…上流側流路、42…下流側流路、43…接続流路、44…供給チューブ、46…変圧機構、46a…大気開放弁、47…駆動源、48…変圧流路、49…キャップ、50…昇降機構、51…吸引部、53f…第1接続機構、53s…第2接続機構、54…アーム、55…係合部、56…基板接続部、56a…案内凸部、57…電気回線、58…ブロック、59a…第1位置決め突部、59b…第2位置決め突部、60…押出機構、60a…枠部材、60b…押圧部、60c…付勢部、61…液受部、63…接続構造、63f…第1接続構造、63s…第2接続構造、64…回路基板、64a…凹部、64g…案内凹部、65…識別部、66a…第1位置決め穴、66b…第2位置決め穴、67…付勢受部、68…係合溝、68a…第1傾斜溝、68b…係止溝、68c…第2傾斜溝、68d…係合壁部、70…吸引側一方向弁、71…送液部、72…吐出側一方向弁、73…液体貯留部、75…変圧室、76…送液室、77…ダイアフラム、78…流路形成部材、78a…送液用凹部、78b…吸引側凹部、78c…吐出側凹部、78d…液体貯留部用凹部、78e…第1案内部、79…ばね座、80…第1コイルばね、82…吸引側弁体、82a…貫通孔、82b…環状突部、83…吸引側固定部材、84…第2コイルばね、85…吸引側弁室、87…フィルム部材、88…吐出側弁室、89…吐出側弁体、89a…当接部、90…吐出側固定部材、92…可撓性部材、92a…閉鎖部、93…液室、94…変位部材、94a…第1被案内部、94b…第2被案内部、95…固定部材、95a…第2案内部、96…第1付勢部材、97…レバー部、97a…軸、97b…被検出部、98…第2付勢部材、99…検出部の一例である変位検出部、103…圧力調整弁、111…インターフェイス部、112…CPU、113…メモリー、114…制御回路、115…駆動回路、116…カウント部、117…記憶部、119…コンピューター、D…変位方向、n…ショット回数、m…クリーニング回数、Q1…収容量目安値、Q1a…収容量目安値、Q2…排出総量、Q2s…吸引量目安値、Q2sr…実吸引量、Q2p…排出量目安値、Q2pa…排出量目安値、Q2pb…排出量目安値、Q2pc…排出量目安値、Q2pd…排出量目安値、Q2pr…実排出量、Q3…残量、Q3a…残量、Q3b…残量、Q3c…残量、Q3d…残量、Qt…閾値、Qta…閾値、Qtb…閾値、Qtc…閾値、Qtd…閾値、S…媒体、ΔQ…残量差分、ΔQa…残量差分、ΔQb…残量差分、ΔQc…残量差分、ΔQd…残量差分。
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