(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】検査装置及び検査プログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/30 20060101AFI20240709BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G01B11/30 A
G06T1/00 500A
(21)【出願番号】P 2020153254
(22)【出願日】2020-09-11
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田崎 海渡
(72)【発明者】
【氏名】相川 清史
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-131238(JP,A)
【文献】特開2018-155548(JP,A)
【文献】特開2008-058162(JP,A)
【文献】特開2013-088268(JP,A)
【文献】特開2002-055056(JP,A)
【文献】特開2017-032340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/30
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、前記プロセッサは、
対象物に光を照射する光源及び前記対象物を撮影する撮影部を備えた走査部を前記対象物に対して相対的に移動して連続的に撮影した撮影画像を表す画像情報を取得し、
前記画像情報から鏡面反射角度に
該当する位置から予め定めた画素数離れた予め定めた範囲
の領域画像を抽出し、
抽出した前記領域画像を合成して前記対象物の欠陥を検出するための欠陥検出用画像を生成する処理を行う検査装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、鏡面反射角度の検出用光源及び受光部を更に備えた前記走査部を前記対象物に対して相対的に移動して前記受光部の受光結果を取得し、前記検出用光源から照射されて前記対象物で反射された光を前記受光部で受光した際の前記走査部の位置を前記鏡面反射角度として検出する処理を行う請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記検出用光源は、非可視光の光を照射する非可視光光源である請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記対象物に対して前記領域画像を抽出した部分と未抽出部分とを異なる表示態様で前記撮影画像を表示する処理を更に行う請求項1~3の何れか1項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記領域画像の抽出部分を認識可能に表示する処理を行う請求項4に記載の検査装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記領域画像の抽出部分を未抽出部分より強調表示する処理を行う請求項5に記載の検査装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記領域画像の抽出部分に対して欠陥検出のための画像処理を行う請求項5に記載の検査装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記欠陥検出のための画像処理として、2値化処理及びエッジ処理の少なくとも一方を行う請求項7に記載の検査装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記領域画像の未抽出部分を認識可能に表示する処理を行う請求項4に記載の検査装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記領域画像の未抽出部分を抽出部分より強調表示する処理を行う請求項9に記載の検査装置。
【請求項11】
コンピュータに、
光源からの光を対象物に照射して撮影部に対して前記対象物を相対的に移動して連続的に撮影した撮影画像を表す画像情報を取得し、
前記画像情報から鏡面反射角度に
該当する位置から予め定めた画素離れた予め定めた範囲
の領域画像を抽出し、
抽出した前記領域画像を合成して前記対象物の欠陥を検出するための欠陥検出用画像を生成する処理を実行させるための検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置及び検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧延方向と略一致する方向に当該正反射成分を観測するTVカメラを配置し、光源、TVカメラ、検出対象物の相互の位置関係を変化させて、当該正反射成分を観察する物体表面欠陥検出方法が提案されている。詳細には、照明入射角度を変化させながら連続して明度を計測することにより、対象物の各測定点において明度が最大となる照明角度、すなわち正反射照明入射角度を求めて、当該正反射照明入射角度を検出対象物の全点において求めることにより、正反射照明入射角度の分布を表す画像を得ることが提案されている。
【0003】
特許文献2には、構造物の表面に発現された凹状の変状部を検査する変状部の検査装置が提案されている。検査装置は、表面の可視画像及び光切断法による距離画像を取得するための撮影を行うエリアカメラと、スリット光の照射が可能なスリット光源と、エリアカメラ及びスリット光源を同時に移動させる車輪部と、車輪部による移動量に基づいてエリアカメラの撮影時機を制御するコンピュータとを備えている。
【0004】
特許文献3には、複数のパターン投影画像を撮像するための撮像手段と、複数のパターン投影画像に基づいて、距離画像を生成可能な距離画像生成手段と、距離画像生成手段により生成された距離画像に対して、撮像手段の画角による誤差の補正を行い、XY方向の位置が高さ情報によらず等ピッチに並んだ距離画像を生成する間隔均等化処理のON/OFFを切り替えて設定可能な間隔均等化処理設定手段と、間隔均等化処理設定手段で間隔均等化処理がONに設定されている場合に、間隔均等化処理が適用された距離画像に対して所定の検査処理を実行し、間隔均等化処理がOFFに設定されている場合に、間隔均等化処理設定手段で間隔均等化処理が適用されない距離画像に対して所定の検査処理を実行する検査実行手段と、を備えた外観検査装置が提案されている。
【0005】
非特許文献1には、磁気センサ・加速度センサまたは3Dトラッキングのいずれかを用いてタブレット端末の位置及び角度の推定を行うことで、タブレット端末を用いて、角度を変えながら対象を撮影することでBRDF(Bidirectional Reflectance Distribution Function)を取得することが記載されている。
【0006】
非特許文献2には、5.0μm~2.5mmまたは7.0μm~2.5mmの狭い測定範囲で、表面の凹凸や欠陥を非接触で測定する精密測定機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10-009838号公報
【文献】特開2020-016667号公報
【文献】特開2018-112568号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】"Mobile surface reflectometry." J.Riviere, P.Peers, A.Ghosh. Computer Graphics Forum,35(1):191-202,2016.doi:10.1111/cgf.12719.
【文献】”4D InSpecR サーフェイスゲージ”、[令和2年8月13日検索]、インターネット<URL:http://www.enablekk.com/products/inspec/index.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
正反射の画像を撮影した場合、撮影部の受光量が飽和して、適切な画像が得られない場合があった。そこで、本発明は、正反射の画像を撮影する場合に比べて、対象物の外観表面の欠陥の検査に適した画像を得ることが可能な検査装置及び検査プログラムを提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、第1態様に係る検査装置は、プロセッサを備え、前記プロセッサは、対象物に光を照射する光源及び前記対象物を撮影する撮影部を備えた走査部を前記対象物に対して相対的に移動して連続的に撮影した撮影画像を表す画像情報を取得し、前記画像情報から鏡面反射角度に該当する位置から予め定めた画素数離れた予め定めた範囲の領域画像を抽出し、抽出した前記領域画像を合成して前記対象物の欠陥を検出するための欠陥検出用画像を生成する処理を行う。
【0011】
また、第2態様に係る検査装置は、第1態様に係る検査装置において、前記プロセッサは、鏡面反射角度の検出用光源及び受光部を更に備えた前記走査部を前記対象物に対して相対的に移動して前記受光部の受光結果を取得し、前記検出用光源から照射されて前記対象物で反射されて前記受光部で受光した光の受光強度が予め定めた閾値以上の前記走査部の位置を前記鏡面反射角度として検出する処理を行う。
【0012】
また、第3態様に係る検査装置は、第2態様に係る検査装置において、前記検出用光源は、非可視光の光を照射する非可視光光源である。
【0013】
また、第4態様に係る検査装置は、第1態様~第3態様の何れか1の態様に係る検査装置において、前記プロセッサは、前記対象物に対して前記領域画像を抽出した部分と未抽出部分とを異なる表示態様で前記撮影画像を表示する処理を更に行う。
【0014】
また、第5態様に係る検査装置は、第4態様に係る検査装置において、前記プロセッサは、前記領域画像の抽出部分を認識可能に表示する処理を行う。
【0015】
また、第6態様に係る検査装置は、第5態様に係る検査装置において、前記プロセッサは、前記領域画像の抽出部分を未抽出部分より強調表示する処理を行う。
【0016】
また、第7態様に係る検査装置は、第5態様に係る検査装置において、前記プロセッサは、前記領域画像の抽出部分に対して欠陥検出のための画像処理を行う。
【0017】
また、第8態様に係る検査装置は、第7態様に係る検査装置において、前記プロセッサは、前記欠陥検出のための画像処理として、2値化処理及びエッジ処理の少なくとも一方を行う。
【0018】
また、第9態様に係る検査装置は、第4態様に係る検査装置において、前記プロセッサは、前記領域画像の未抽出部分を認識可能に表示する処理を行う。
【0019】
また、第10態様に係る検査装置は、第9態様に係る検査装置において、前記プロセッサは、前記領域画像の未抽出部分を抽出部分より強調表示する処理を行う。
【0020】
また、第11態様に係る検査プログラムは、コンピュータに、光源からの光を対象物に照射して撮影部に対して前記対象物を相対的に移動して連続的に撮影した撮影画像を表す画像情報を取得し、前記画像情報から鏡面反射角度に該当する位置から予め定めた画素離れた予め定めた範囲の領域画像を抽出し、抽出した前記領域画像を合成して前記対象物の欠陥を検出するための欠陥検出用画像を生成する処理を実行させる。
【発明の効果】
【0021】
第1態様によれば、正反射の画像を撮影する場合に比べて、対象物の外観表面の欠陥の検査に適した画像を得ることが可能な検査装置を提供できる。
【0022】
第2態様によれば、BRDFを取得して鏡面反射角度を検出する場合に比べて、鏡面反射角度の位置を容易に検出できる。
【0023】
第3態様によれば、撮影画像に鏡面反射角度の検出用の光源の光が写り込むことなく、鏡面反射角度の位置を検出できる。
【0024】
第4態様によれば、領域画像の抽出部分と未抽出部分を確認しながら、走査部を移動することが可能となる。
【0025】
第5態様によれば、領域画像の抽出部分を認識しながら走査部を移動させることが可能となる。
【0026】
第6態様によれば、領域画像の抽出部分と未抽出部分の位置を確認しながら、未抽出部分へ走査部を移動させることができる。
【0027】
第7態様によれば、画像処理に有無により、領域画像の抽出部分を認識することが可能となる。
【0028】
第8態様によれば、抽出部分と未抽出部分とを異なる表示態様としつつ対象物の表面の欠陥を分かり易くすることが可能となる。
【0029】
第9態様によれば、領域画像の未抽出部分を認識しながら走査部を移動させることが可能となる。
【0030】
第10態様によれば、領域画像の抽出部分と未抽出部分の位置を確認しながら、未抽出部分へ走査部を移動させることができる。
【0031】
第11態様によれば、正反射の画像を撮影する場合に比べて、対象物の外観表面の欠陥の検査に適した画像を得ることが可能な検査プログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本実施形態に係る検査装置の全体構成を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る検査装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態に係る検査装置における情報処理部の機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】本実施形態に係る検査装置による鏡面反射角度の検出の有無例を示す図である。
【
図5】領域画像の抽出と合成、及び画像を抽出した部分と未抽出の部分とが異なる表示態様となるように画像処理を行った一例を示す図である。
【
図6】本実施形態に係る検査装置の情報処理部で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る検査装置の全体構成を示す図であり、
図2は、本実施形態に係る検査装置の概略構成を示すブロック図である。
【0034】
検査装置10は、検査対象の対象物16に対して一定の角度と距離を保ちながら対象物16に沿って移動させながら撮影を行うことで対象物16の外観表面の欠陥を検出するための欠陥検出用画像を出力する。なお、本実施形態では、対象物16の外観表面に発生したヒケ、ウェルドライン、傷等を欠陥の一例とする。
【0035】
検査装置10は、走査部12及び情報処理部14を備えており、走査部12に備えた撮影部の一例としてのカメラ20によって撮影された撮影結果に対して情報処理部14が画像処理を施して対象物16の外観表面の欠陥を検出するための欠陥検出用画像を生成する処理を行う。
【0036】
走査部12に、カメラ20、受光部の一例としてのレーザセンサ22、光源の一例としての白色光源24、検出用光源及び非可視光光源の一例としての非可視光レーザ光源26、通信I/F(インタフェース)部28、並びに制御部30を備えている。
【0037】
カメラ20は、エリアセンサ等の撮像素子を備えて、対象物16を撮影することによって撮影画像を表す画像情報を生成する。
【0038】
レーザセンサ22は、対象物16の方向から走査部12に入射される非可視光のレーザを検出する。
【0039】
白色光源24は、カメラ20によって対象物16を撮影するために、白色の光を対象物16に照射する。白色光源24の光軸は、
図1に示すように、カメラ20の光軸に交わる方向に傾いて配置されている。例えば、カメラ20の光軸に交わる方向に1~2度の傾きを持って配置されている。これにより、対象物16の反射光がカメラ20に入射し易くなる。白色光源24の一例として、タングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、発光ダイオード、陰極線管等を適用できる。
【0040】
非可視光レーザ光源26は、対象物16に非可視光レーザを照射する。非可視光レーザ光源26の光軸も、白色光源24と同様に、
図1に示すように、カメラ20の光軸に交わる方向に傾いて配置されている。例えば、カメラ20の光軸に交わる方向に1~2度の傾きをもって配置されている。これにより、対象物16の反射光がカメラ20に入射し易くなる。本実施形態では、非可視光レーザを対象物16に照射し、対象物16で反射した非可視光レーザをレーザセンサ22で受光することにより、鏡面反射角度を検出する。すなわち、対象物16に対して走査部12を移動し、鏡面反射する位置になるとレーザセンサ22が非可視光レーザを検出するので、非可視光レーザを検出した位置が鏡面反射角度となる。
【0041】
通信I/F部28は、情報処理部14と通信を行うインタフェースであり、カメラ20により撮影して生成した画像情報を情報処理部14に送信する。また、情報処理部14からの送信される情報を受信する。
【0042】
制御部30は、カメラ20、レーザセンサ22、白色光源24、及び非可視光レーザ光源26の駆動を制御し、撮影した画像情報を情報処理部14への送信を制御する。
【0043】
一方、情報処理部14は、プロセッサの一例としてのCPU(Central Processing Unit)14A、ROM(Read Only Memory)14B、RAM(Random Access Memory)14C、ストレージ14D、操作部14E、表示部14F、及び通信回線I/F(インタフェース)部14Gを備えている。CPU14Aは、情報処理部14の全体の動作を司る。ROM14Bは、各種制御プログラムや各種パラメータ等が予め記憶される。RAM14Cは、CPU14Aによる各種プログラムの実行時のワークエリア等として用いられる。ストレージ14Dは、各種のデータやアプリケーション・プログラム等が記憶される。操作部14Eは各種の情報を入力するために用いられる。表示部14Fは、各種の情報を表示するために用いられる。通信回線I/F部14Gは、走査部12に接続可能され、走査部12と各種データの送受信を行う。以上の情報処理部14の各部はシステムバス14Hにより電気的に相互に接続されている。なお、本実施の形態に係る情報処理部14では、ストレージ14Dを記憶部として適用しているが、これに限らず、ハードディスクやフラッシュメモリ等の他の不揮発性の記憶部を適用してもよい。
【0044】
以上の構成により、本実施の形態に係る情報処理部14は、CPU14Aにより、ROM14B、RAM14C、及びストレージ14Dに対するアクセス、操作部14Eを介した各種データの取得、表示部14Fに対する各種情報の表示を各々実行する。また、情報処理部14は、CPU14Aにより、通信回線I/F部14Gを介した各種データの送受信の制御を実行する。
【0045】
情報処理部14は、具体的には、走査部12を対象物16に対して相対的に移動して連続的に撮影した撮影画像を表す画像情報を取得し、画像情報から鏡面反射角度に対して予め定めた範囲に該当する領域画像を抽出する。そして、抽出した領域画像を合成して対象物16の欠陥を検出するための欠陥検出用画像を生成する処理を行う。
【0046】
ここで、情報処理部14のCPU14AがROM14Bに記憶されたプログラムを実行することにより実現される機能構成について説明する。
図3は、本実施形態に係る検査装置10における情報処理部14の機能構成を示す機能ブロック図である。
【0047】
情報処理部14は、画像取得部32、鏡面反射検出部34、画像合成部36、及び画像処理部38の機能を有する。
【0048】
画像取得部32は、走査部12のカメラ20によって撮影されて生成された画像情報を走査部12から取得する処理を行う。
【0049】
鏡面反射検出部34は、非可視光レーザ光源26と対象物16とカメラ20の鏡面反射角度を検出する。鏡面反射角度の検出は、
図4に示すように、非可視光レーザ光源26から対象物16に照射されて反射された非可視光レーザをレーザセンサ22が検出したか否かにより検出する。
図4の例では、走査部12が丸の位置で非可視光レーザがレーザセンサ22により検出され、バツの位置へ移動した場合は非可視光レーザがレーザセンサ22によって検出されない。鏡面反射角度の検出は、例えば、レーザセンサ22の検出結果を取得して、非可視光レーザの受光強度が予め定めた閾値以上の場合に鏡面反射角度を検出する。或いは、非可視光レーザ光源26の出力強度と、レーザセンサ22の受光強度の比率を用いて鏡面反射角度を検出してもよい。なお、対象物16によって反射率が異なるため、基準となるベース面での鏡面反射角度での受光強度を検出し、ベース面での非可視光レーザの受光強度を基準に閾値を設定してもよい。
【0050】
画像合成部36は、画像取得部32が取得した画像情報から、鏡面反射角度に対して予め定めた範囲に該当する領域画像を抽出し、抽出した領域画像を順次合成する。例えば、鏡面反射検出部34が検出した鏡面反射角度の位置(例えば、
図4の丸の位置)における画像情報から鏡面反射角度の近傍の予め定めた位置の領域画像を抽出する。走査部12の移動と共に領域画像を順次抽出して合成することにより、領域画像の合成によって対象物16の画像を生成する。例えば、
図5に示すように、走査部12の位置及び角度を変えながら連続的に対象物16を撮影し、レーザセンサ22で非可視光レーザを検出した位置の画像情報を合成対象の画像とする。そして、当該画像情報から鏡面反射角度の近傍の予め定めた位置の領域画像を抽出して順次合成する。例えば、撮影画像中で最も明るい画素位置または領域を鏡面反射位置として鏡面反射の位置から予め定めた画素数離れた領域を領域画像として抽出する。
図5の例では、実線で囲んだ領域画像、点線で囲んだ領域画像、及び一点鎖線で囲んだ領域画像を抽出して合成した例を示す。抽出した各領域画像を合成することにより、鏡面反射角度から予め定めた範囲となる領域画像で構成された対象物16の画像を生成する。これにより、
図5に示すように、鏡面反射角度近傍の領域画像を合成することで、対象物16の外観表面の状態が分かり易い画像が得られる。
【0051】
画像処理部38は、対象物16に対して領域画像を抽出した部分と未抽出の部分とが異なる表示態様となるようにカメラ20の撮影画像の画像処理を行う。すなわち、撮影済の箇所を画像上で認識可能なように、表示態様を変化させる画像処理を行う。例えば、
図5に示すように、抽出済の領域を認識可能とするために、実線、点線、及び一点鎖線で抽出済の領域を枠で囲ってもよい。或いは、抽出済の領域の枠の色や点滅等により、未抽出の領域よりも抽出済の領域を強調表示してもよい。或いは、未抽出の領域を認識可能とするために、未抽出の領域を枠で囲ってもよい。或いは、未抽出の領域の枠の色や点滅等により、抽出済の領域よりも未抽出の領域を強調表示してもよい。或いは、領域画像の抽出部分に対して、欠陥検出のための画像処理を行うことによって、領域画像を抽出した部分と未抽出の部分とが異なる表示態様となるようにしてもよい。欠陥検出のための画像処理の一例としては、2値化処理及びエッジ処理の少なくとも一方の画像処理を適用することにより、対象物16の外観表面の樹脂のヒケや、ウェルドライン、傷等が分かり易くなる。
【0052】
続いて、上述のように構成された本実施形態に係る検査装置10の情報処理部14で行われる具体的な処理について説明する。
図6は、本実施形態に係る検査装置10の情報処理部14で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、
図6の処理は、ユーザが操作部14E等を操作して対象物16の検査開始を指示した場合に開始する。
【0053】
ステップ100では、CPU14Aが、白色光源24及び非可視光レーザ光源26の点灯を開始してステップ102へ移行する。すなわち、走査部12に対して白色光源24及び非可視光レーザ光源26の点灯指示を送信することで各光源の点灯を開始する。
【0054】
ステップ102では、CPU14Aが、画像情報を取得してステップ104へ移行する。すなわち、画像取得部32が、走査部12のカメラ20によって撮影されて生成された画像情報を走査部12から取得する処理を行う。
【0055】
ステップ104では、CPU14Aが、鏡面反射角度を検出したか否かを判定する。該判定は、例えば、鏡面反射検出部34が、レーザセンサ22の検出結果を取得して、非可視光レーザの受光強度が予め定めた閾値以上であるか否かを判定する。或いは、非可視光レーザ光源26の出力強度と、レーザセンサ22の受光強度の比率を用いて鏡面反射角度を検出したか否かを判定してもよい。該判定が肯定された場合にはステップ106へ移行し、否定された場合には上述のステップ102に戻って上述の処理を繰り返す。
【0056】
ステップ106では、CPU14Aが、鏡面反射角度に対して予め定めた領域画像を画像情報から抽出してステップ108へ移行する。すなわち、画像合成部36が、鏡面反射検出部34が検出した鏡面反射角度の位置における画像情報から鏡面反射角度の近傍の予め定めた範囲に該当する領域画像を抽出する。例えば、鏡面反射角度に該当する位置から数画素離れた予め定めた範囲の領域画像を抽出する。
【0057】
ステップ108では、CPU14Aが、抽出した領域画像を合成してステップ110へ移行する。すなわち、画像合成部36が、走査部12の移動と共に順次抽出した領域画像を合成することにより、鏡面反射角度に対応する画像よりも見易い鏡面反射角度近傍の領域画像で構成された対象物16の画像を生成する。
【0058】
ステップ110では、CPU14Aが、画像処理を行ってステップ112へ移行する。本実施形態では、画像処理部38が、対象物16に対して領域画像を抽出した部分と未抽出の部分とが異なる表示態様となるようにカメラ20の撮影画像の画像処理を行う。画像処理された画像を表示部14Fに表示することで、領域画像が抽出されていない部分を確認しながら走査部12の移動が行われる。
【0059】
ステップ112では、CPU14Aが、対象物16の検査終了であるか否かを判定する。該判定は、例えば、ユーザが操作部14E等を操作して検査終了を指示したか否かを判定する。該判定が否定された場合にはステップ102に戻って上述の処理を繰り返し、判定が肯定された場合に一連の処理を終了する。
【0060】
なお、上記の実施形態では、走査部12及び情報処理部14を分離した構成として説明したが、これに限るものではない。例えば、走査部12及び情報処理部14を一体構成とした形態としてもよい。或いは、走査部12及び情報処理部14の構成のうちの一部を分離した形態としてもよい。例えば、走査部12及び情報処理部14を一体構成として、表示部14Fを分離した形態としてもよい。
【0061】
また、上記の実施形態では、走査部12を対象物16に対して移動する例を説明したが、これに限るものではなく、対象物16を走査部12に対して移動する形態としてもよい。
【0062】
また、上記の実施形態では、非可視光レーザ光源26を用いて鏡面反射角度を検出するようにしたが、これに限るものではない。例えば、赤外光レーザ光源や他の色のレーザ光源を用いて鏡面反射角度を検出してもよい。或いは、発光ダイオード等の可視光を照射する可視光光源を用いて鏡面反射角度を検出してもよい。可視光光源を用いる場合には、鏡面反射角度を検出した時点で撮影時に消灯して撮影を行うことで撮影画像への可視光の映り込みが防止される。
【0063】
また、上記の実施形態において、CPUをプロセッサの一例として説明したが、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU: Graphics Processing Unit、ASIC: Application Specific Integrated Circuit、FPGA: Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス等)を含むものである。
【0064】
また、上記の実施形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサの各動作の順序は上記各実施形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0065】
また、上記の実施形態に係る検査装置10の情報処理部14で行われる処理は、ソフトウエアで行われる処理としてもよいし、ハードウエアで行われる処理としてもよいし、双方を組み合わせた処理としてもよい。また、情報処理部14の各部で行われる処理は、プログラムとして記憶媒体に記憶して流通させるようにしてもよい。
【0066】
また、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0067】
10 検査装置
12 走査部
14 情報処理部
14A CPU
20 カメラ
22 レーザセンサ
24 白色光源
26 非可視光レーザ光源