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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】ムーブメントおよび時計
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/253 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
G04B19/253 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020153586
(22)【出願日】2020-09-14
(65)【公開番号】P2021110722
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2023-07-07
(31)【優先権主張番号】P 2020001304
(32)【優先日】2020-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 正志
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-170271(JP,A)
【文献】米国特許第3352103(US,A)
【文献】実開昭51-147480(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 19/247
G04B 19/253
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒車と、
円環状に設けられ日付を示す数字が記されたカレンダー板と、前記カレンダー板の内周側に設けられ複数の歯部を有する日歯車部と、を備える日車と、
前記筒車に係合して前記筒車の回転が伝達される日回し歯車部と、前記日回し歯車部と一体となって回転する日回し本体部と、前記日回し本体部から延設され前記日車を回転方向に付勢可能に構成された弾性部と、前記弾性部の先端に設けられ前記日歯車部の前記歯部と係合する日回し爪と、を有する日回し車と、
複数の前記歯部のうち、隣り合う歯部に係合して前記日車の回転を規制する躍制部を有する日ジャンパーと、を備え、
前記躍制部は、前記隣り合う歯部のうち、一方の歯部に係合する第1規制面と、他方の歯部に係合する第2規制面と、前記第1規制面および前記第2規制面の間に設けられる接続面とを有し、前記隣り合う歯部と係脱可能に構成され、
前記日車は、前記日回し車によって伝達された前記筒車の回転に応じて前記一方の歯部と前記第1規制面とが接触している状態で回転し、その後、前記弾性部の付勢力に応じて前記一方の歯部と前記接続面とが接触している状態で回転し、その後、前記一方の歯部と前記第2規制面とが接触している状態で回転することで、前記歯部と前記躍制部との噛合い1ピッチ分回転し、
前記日回し車は、前記日回し車の回転軌跡の接線に沿った方向に対する前記日回し爪の移動、および、前記接線と直交する方向に対する前記日回し爪の移動を規制する移動規制部を有する
ことを特徴とするムーブメント。
【請求項2】
請求項1に記載のムーブメントにおいて、
前記躍制部が前記隣り合う歯部に係合している状態で、前記日ジャンパーによる前記日車の回転を規制する規制力は、前記弾性部による前記日車を前記回転方向に付勢する付勢力より大きい
ことを特徴とするムーブメント。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のムーブメントにおいて、
前記一方の歯部と前記第1規制面とが接触している状態で回転する前記日車の回転角は、前記一方の歯部と前記接続面とが接触している状態および前記一方の歯部と前記第2規制面とが接触している状態で回転する前記日車の回転角よりも小さい
ことを特徴とするムーブメント。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のムーブメントにおいて、
平面視において、前記第1規制面と前記接続面とが成す内角の角度は130°以上、かつ、160°以下であり、前記接続面と前記第2規制面とが成す内角の角度は120°以上、かつ、150°以下である
ことを特徴とするムーブメント。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のムーブメントにおいて、
前記日車は、前記カレンダー板の前記数字が記された面に設けられ、前記カレンダー板と直交する方向に沿って突出する擦れ防止部を有する
ことを特徴とするムーブメント。
【請求項6】
請求項に記載のムーブメントにおいて、
前記移動規制部は、前記日回し本体部に形成される係合凸部と、前記日回し爪に形成される係合凹部とを備えて構成される
ことを特徴とするムーブメント。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のムーブメントを備える時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ムーブメントおよび時計に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、カレンダー機構を備えた時計が開示されている。特許文献1の時計では、日付を示す数字が表示された日車を、日回し車および日ジャンパーによって間欠的に駆動させることにより、日付を1日に1回切り替えることができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-4440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の時計では、日ジャンパーをその付勢力に抗して押し下げながら、日車を日回し車によって回転させる必要がある。そのため、24時を目標に日ジャンパーによる規制を解除しようとした場合、その1~2時間前から日車を回転させて、日ジャンパーによる規制を徐々に解除する必要がある。そうすると、この日車を回転させている最中は、日車に表示された日付の一部が日窓から外れてしまい、見た目が悪くなってしまうといった問題がある。
【0005】
そこで、特許文献1において、日付を短時間で切り替えるために、日回し車に、日車を回転させるための付勢力を蓄積可能な弾性部を設けることが考えられる。すなわち、日回し車の弾性部に付勢力を蓄積しておき、日車の歯部が日ジャンパーの先端部の規制面を乗り越えた際に、当該付勢力により日車を回転させることで、日付を短時間で切り替えることが考えられる。
しかし、この場合も、日車が回転し始めてから、日車の歯部が日ジャンパーの先端部の規制面を乗り越えるまでは、日車に表示された日付の一部が日窓から外れてしまうので、見た目が悪くなってしまう。
【0006】
特許文献1において、日車が回転し始めてから、日車の歯部が日ジャンパーの先端部の規制面を乗り越えるまでの時間を短くするために、規制面の角度を急にすることも考えられるが、この場合、日ジャンパーの先端部における規制面と対をなす面の角度が緩くなってしまい、当該面による日車の回転を規制する力が弱くなってしまう。そうすると、例えば、時計を落下させる等して、時計が衝撃を受けた際に、日ジャンパーによる日車の回転の規制が外れてしまい、日付の表示がずれてしまうおそれがある。
そのため、日付を短時間で切り替え可能であり、かつ、日車の不測の回転を抑制できるムーブメントおよび時計が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のムーブメントは、筒車と、円環状に設けられ日付を示す数字が記されたカレンダー板と、前記カレンダー板の内周側に設けられ複数の歯部を有する日歯車部と、を備える日車と、前記筒車に係合して前記筒車の回転が伝達される日回し歯車部と、前記日回し歯車部と一体となって回転する日回し本体部と、前記日回し本体部から延設され前記日車を回転方向に付勢可能に構成された弾性部と、前記弾性部の先端に設けられ前記日歯車部の前記歯部と係合する日回し爪と、を有する日回し車と、複数の前記歯部のうち、隣り合う歯部に係合して前記日車の回転を規制する躍制部を有する日ジャンパーと、を備え、前記躍制部は、前記隣り合う歯部のうち、一方の歯部に係合する第1規制面と、他方の歯部に係合する第2規制面と、前記第1規制面および前記第2規制面の間に設けられる接続面とを有し、前記隣り合う歯部と係脱可能に構成され、前記日車は、前記日回し車によって伝達された前記筒車の回転に応じて前記一方の歯部と前記第1規制面とが接触している状態で回転し、その後、前記弾性部の付勢力に応じて前記一方の歯部と前記接続面とが接触している状態で回転し、その後、前記一方の歯部と前記第2規制面とが接触している状態で回転することで、前記歯部と前記躍制部との噛合い1ピッチ分回転する。
【0008】
本開示の時計は、前記ムーブメントを備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の時計を示す正面図。
図2】第1実施形態のムーブメントの要部を示す平面図。
図3】第1実施形態の日車を示す平面図。
図4図3のIV-IV線に沿った断面図。
図5】第1実施形態の日回し車を示す平面図。
図6】第1実施形態の日ジャンパーを示す平面図。
図7】日車、日回し車、日ジャンパーの動作を示す平面図。
図8】日車、日回し車、日ジャンパーの動作を示す平面図。
図9】日車、日回し車、日ジャンパーの動作を示す平面図。
図10】日車、日回し車、日ジャンパーの動作を示す平面図。
図11】第1実施形態の日車の回転角を示す図。
図12】第2実施形態の日車の回転角を示す図。
図13】第3実施形態の日回し車を示す平面図。
図14】第3実施形態の日ジャンパーを示す平面図。
図15】第3実施形態の日車、日回し車、日ジャンパーの動作を示す平面図。
図16】第3実施形態の日車、日回し車、日ジャンパーの動作を示す平面図。
図17】第3実施形態の日車、日回し車、日ジャンパーの動作を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
以下、第1実施形態に係る時計1を図面に基づいて説明する。
図1は、時計1を示す正面図である。
図1に示すように、時計1は、ユーザーの手首に装着される腕時計であり、円筒状の外装ケース2を備え、外装ケース2の内周側に、文字板3が配置されている。外装ケース2の二つの開口のうち、表面側の開口は、カバーガラスで塞がれており、裏面側の開口は裏蓋で塞がれている。
【0011】
また、時計1は、外装ケース2内に収容されたムーブメント10(図2)と、時刻情報を表示する時針4A、分針4B、秒針4Cとを備えている。文字板3には、カレンダー小窓3Aが設けられており、カレンダー小窓3Aから、日車14に記された数字141Aが視認可能となっている。また、文字板3には、時刻を指示するためのアワーマーク3Bが設けられている。
【0012】
外装ケース2の側面には、りゅうず7が設けられている。りゅうず7は、時計1の中心に向かって押し込まれた0段位置から1段位置および2段位置に引き出されて移動することができる。
りゅうず7を0段位置で回転すると、図示略のぜんまいを巻き上げることができる。りゅうず7を1段位置に引いて回転すると、日車14を移動して日付を合わせることができる。りゅうず7を2段位置に引くと秒針4Cが停止し、2段位置でりゅうず7を回転すると、時針4A、分針4Bが移動して時刻を合わせることができる。りゅうず7による日車14や時針4A、分針4Bの修正方法は、従来の機械時計と同様であるため説明を省略する。
【0013】
[ムーブメント]
図2は、時計1のムーブメント10の要部を示す平面図である。具体的には、図2は、ムーブメント10の要部を文字板3側から見た平面図である。なお、図2では、日車14において、後述する数字141Aや擦れ防止部141Bは省略している。
図2に示すように、ムーブメント10は、地板11と、筒車12と、日車ガイド板13と、日車14と、日回し車15と、日ジャンパー16と、図示略の輪列、ぜんまい、香箱、日車押さえ等と、を備えて構成されている。なお、本実施形態ではムーブメント10は、一般的な調速機構を備える機械時計のムーブメントとして構成されている。
【0014】
[地板]
地板11は、筒車12や図示略の輪列、香箱等を軸支している。また、本実施形態では、地板11と、図示略の日押え板との間に日車14が配置されている。これにより、日車14は、地板11と日車押さえとにより保持されることで、鉛直方向の移動が規制されている。
【0015】
[筒車]
筒車12は、図示略のぜんまいの動力が輪列を介して伝達され、12時間で一回転するように構成されている。また、本実施形態では、筒車12は、日回し中間車12Aを有している。日回し中間車12Aは、後述する日回し車15の日回し歯車部151と係合するように構成されている。これにより、筒車12の回転が、日回し車15に伝達されるようになっている。
【0016】
[日車ガイド板]
日車ガイド板13は、日車14の内周側に配置され、後述する日歯車部142の歯部143と一部が接触している。これにより、日車14は、平面方向の移動が日車ガイド板13によって規制され、日車ガイド板13に沿って回転するように構成されている。
また、本実施形態では、日車ガイド板13には、後述する日ジャンパー16のバネ部165の先端と当接して、当該バネ部165を支持する支持面131が設けられている。
【0017】
[日車]
図3は、文字板3側から見た日車14を示す平面図であり、図4は、図3におけるIV-IVに沿った日車14の断面図である。なお、分かりやすくするために、図4において数字141Aと擦れ防止部141Bとは、厚さを誇張して示している。
図3図4に示すように、日車14は、カレンダー板141と、日歯車部142とを備え、日回し車15により付勢されて、反時計回り方向に回転するように構成されている。
カレンダー板141は、円環状に設けられており、文字板3側の面に、日付を示す数字141Aと、擦れ防止部141Bとが設けられている。本実施形態では、擦れ防止部141Bは、カレンダー板141の外周縁に沿って円環状に設けられており、カレンダー板141と直交する方向に沿って突出している。また、数字141Aおよび擦れ防止部141Bは、印刷により形成されている。
なお、数字141Aおよび擦れ防止部141Bは、上記構成に限られず、例えば、シール等が貼付されることにより設けられていてもよい。また、擦れ防止部141Bは、例えば、カレンダー板141の外周縁と数字141Aとの間に設けられていてもよく、複数の突出部が間欠的に配置されて構成されていてもよい。
【0018】
ここで、本実施形態では、カレンダー板141の面に直交する方向において、擦れ防止部141Bの厚さが、数字141Aの厚さよりも大きくなるように、数字141Aおよび擦れ防止部141Bが設けられている。
これにより、例えば、カレンダー板141の反り等により、カレンダー板141と文字板3との位置関係がずれてしまい、カレンダー板141に文字板3が接触したとしても、文字板3はカレンダー板141の擦れ防止部141Bに接触することになるので、文字板3と数字141Aとが接触してしまうことを抑制できる。そのため、文字板3と数字141Aとが接触することで、数字141Aが擦れて見えにくくなってしまうことを抑制できる。
【0019】
日歯車部142は、カレンダー板141の内周側に、カレンダー板141と一体に設けられており、複数の歯部143を備える。本実施形態では、日歯車部142には、歯部143が31個設けられている。すなわち、日車14は、歯部143の噛合いピッチとして31ピッチで1周するように構成されており、歯部143のピッチ角は約11.6°とされている。ここで、本開示では、ピッチは、複数の歯部143のうち隣り合う歯部143で規定される間隔を意味する。また、ピッチ角は、隣り合う歯部143のうち、一方の歯部143と日車14の回転中心とを結んだ線分と、他方の歯部143と日車14の回転中心とを結んだ線分との成す角を意味する。
また、歯部143は、後述する日回し車15の日回し爪155、および、日ジャンパー16の躍制部164と噛合うように構成されている。歯部143と、日回し爪155および躍制部164との噛合いの詳細については、後述する。
【0020】
[日回し車]
図5は、日回し車15を示す正面図である。なお、図5では、日回し車15を裏蓋側から見ている。
図5に示すように、日回し車15は、筒車12および日車14に係合して、筒車12の回転を日車14に伝達可能に構成されている。本実施形態では、日回し車15は、日回し歯車部151と、日回し本体部152、日回し軸部153と、弾性部154と、日回し爪155と、を備えている。
【0021】
日回し歯車部151は、筒車12の日回し中間車12Aと係合可能に構成されており、筒車12の回転が伝達される。
日回し本体部152は、日回し歯車部151の裏蓋側に配置されており、日回し軸部153により日回し歯車部151に固定されている。これにより、筒車12から日回し歯車部151に回転が伝達されると、日回し本体部152は日回し歯車部151と一体となって回転するように構成されている。また、日回し本体部152には、弾性部154が撓んだ際に、後述する日回し爪155の第2係合面155Bと係合する日回し本体部係合面152Aが設けられている。
【0022】
日回し軸部153は、所謂軸部材であり、前述したように日回し歯車部151と日回し本体部152とを固定している。本実施形態では、日回し軸部153は、地板11に軸支されている。これにより、日回し車15は、地板11に軸支される。
弾性部154は、日回し本体部152から円弧状に延設されており、弾性変形可能に構成されている。
日回し爪155は、弾性部154の先端に設けられている。そして、日回し爪155は、日車14の歯部143と係合する第1係合面155Aと、前述した日回し本体部係合面152Aと係合する第2係合面155Bとを有している。
【0023】
[日ジャンパー]
図6は、日ジャンパー16を文字板3側から見た平面図である。
図6に示すように、日ジャンパー16は、日車14の回転を規制するものであり、日ジャンパー基部161と、日ジャンパー軸部162と、日ジャンパー腕部163と、躍制部164と、バネ部165とを有する。
日ジャンパー基部161は、日ジャンパー軸部162によって、地板11に軸支されている。
日ジャンパー軸部162は、地板11に軸支されている。ここで、本実施形態では、図2に示すように、日ジャンパー軸部162は、平面視で、日車14と重なる位置に配置されている。
【0024】
日ジャンパー腕部163は、日ジャンパー基部161から延設されている。
躍制部164は、日ジャンパー腕部163の先端に設けられており、日車14の歯部143に係脱可能とされている。
また、躍制部164は、隣り合う歯部143の一方に係合して日車14の反時計回り方向の回転を規制する第1規制面164Aと、他方の歯部143に係合して日車14の時計回り方向の回転を規制する第2規制面164Bと、第1規制面164Aおよび第2規制面164Bの間に設けられ平面とされた接続面164Cと、を有する。本実施形態では、躍制部164は、第1規制面164Aと接続面164Cとが成す内角の角度θ1が130°以上、かつ、160°以下となり、接続面164Cと第2規制面164Bとが成す内角の角度θ2が120°以上、かつ、150°以下となるように構成されている。
【0025】
バネ部165は、日ジャンパー基部161からU字状に延設され、弾性変形可能に構成されている。本実施形態では、前述したように、バネ部165の先端は、日車ガイド板13の支持面131に当接して、支持されている。
また、本実施形態では、バネ部165は、躍制部164が日車14の歯部143と係合している状態で弾性変形するように構成されている。これにより、バネ部165が躍制部164を日車14に向かって付勢し、躍制部164が日車14の歯部143と係合して、日車14の回転を規制する。
【0026】
[日車、日回し車、日ジャンパーの動作]
次に、日車14、日回し車15、および、日ジャンパー16の動作について、図7図10に基づいて説明する。
図7に示すように、筒車12の回転に応じて、筒車12の日回し中間車12Aと係合する日回し歯車部151が、反時計回り方向に回転して、日回し爪155の第1係合面155Aが日車14の歯部143と係合する。この際、前述したように、日車14の回転は、日ジャンパー16によって規制されている。具体的には、日車14は、日ジャンパー16の躍制部164と隣り合う歯部143A,143Bとが係合することで、回転が規制されている。
【0027】
次に、図8に示すように、日回し爪155の第1係合面155Aと、日車14の歯部143とが係合した状態で、筒車12の回転に応じて日回し車15が回転すると、弾性部154が徐々に撓む。これにより、弾性部154には、日回し爪155を介して、日車14を反時計回り方向に回転させる付勢力が徐々に蓄積される。
ここで、本実施形態では、日ジャンパー16の躍制部164が隣り合う歯部143A,143Bに係合している状態で、日ジャンパー16による日車14の回転を規制する規制力は、弾性部154による日車14を回転方向に付勢する付勢力より大きくなるように、日回し車15および日ジャンパー16は構成されている。そのため、弾性部154による付勢力によって日車14は回転せず、弾性部154は撓み続ける。そして、日回し車15がさらに回転すると、日回し爪155の第2係合面155Bと、日回し本体部152の日回し本体部係合面152Aとが接触する。
【0028】
次に、図9に示すように、日回し爪155の第2係合面155Bと、日回し本体部152の日回し本体部係合面152Aとが接触した状態で、筒車12の回転に応じて日回し車15が回転すると、日回し爪155を介して筒車12の回転が日車14に伝達されるので、日車14は強制的に反時計回り方向に回転する。
そうすると、歯部143Aによって躍制部164の第1規制面164Aが付勢され、日ジャンパー16のバネ部165が弾性変形し、日ジャンパー軸部162を中心にして、日ジャンパー腕部163が反時計回り方向に回転する。そして、歯部143Aと、躍制部164の第1規制面164Aとが接触する箇所が、第1規制面164A上を移動して、第1規制面164Aと接続面164Cとの間の頂点に至る。この際、他方の歯部143Bと、躍制部164の第2規制面164Bとの係合は解除される。これにより、躍制部164と歯部143A,143Bとの係合状態が解除される。
【0029】
そうすると、日ジャンパー16による日車14の回転の規制が解除されるので、図10に示すように、日回し車15の弾性部154に蓄積された付勢力が解放され、当該付勢力によって日車14が瞬間的に反時計回り方向に回転する。
これにより、日車14は、歯部143Aと躍制部164の接続面164Cとが接触している状態で回転し、その後、歯部143Aと躍制部164の第2規制面164Bとが接触している状態で回転する。この際、歯部143Aと躍制部164の第2規制面164Bとが接触している状態では、バネ部165によって躍制部164が日車14に近づく方向に付勢される。そのため、日車14は、第2規制面164Bおよび歯部143Aを介して、反時計回り方向に回転するように日ジャンパー16に付勢される。
そして、次の隣り合う歯部143A,143Cと躍制部164とが係合して、日車14の回転が停止する。すなわち、日車14は、歯部143と躍制部164との噛合い1ピッチ分回転する。これにより、日車14を、短時間で歯部143と躍制部164との噛合い1ピッチ分回転させることができる。
【0030】
[日車の回転角]
図11は、日車14の回転角を示す図である。なお、図11では、日車14の歯部143A,143Bと、日ジャンパー16の躍制部164とが係合している状態を実線で示し、歯部143Aと第1規制面164Aとが接触する箇所が第1規制面164Aと接続面164Cとの間の頂点に至っている状態を二点鎖線で示している。
前述したように、日車14の歯部143のピッチ角は約11.6°とされている。すなわち、日車14は、歯部143と躍制部164との噛合い1ピッチ分回転した際に、約11.6°回転する。
本実施形態では、図11に示すように、歯部143Aと第1規制面164Aとが接触する箇所が、第1規制面164A上を移動して、第1規制面164Aと接続面164Cとの間の頂点に至るまでの日車14の回転角θAが約3.2°になるように構成されている。すなわち、日車14は、筒車12の回転に応じて約3.2°回転し、その後、弾性部154の付勢力により瞬間的に8.4°回転する。このように、本実施形態では、歯部143Aと第1規制面164Aとが接触している状態で回転する日車14の回転角θAは、歯部143Aと接続面164Cとが接触している状態および歯部143Aと第2規制面164Bとが接触している状態で回転する日車14の回転角よりも小さくなるように構成されている。そのため、日車14が回転し始めてから、歯部143Aが第1規制面164Aを乗り越えるまでの時間を短くできるので、日車14に記された数字141Aの一部がカレンダー小窓3Aから外れてしまう時間を短くでき、見た目が悪くなってしまうことを抑制できる。
【0031】
ここで、本実施形態では、上記のように、日車14が回転し始めてから、歯部143Aが第1規制面164Aを乗り越えるまでの時間を短くするために、第1規制面164Aの角度を急にしている。具体的には、前述したように、第1規制面164Aと接続面164Cとが成す内角の角度θ1が130°以上、かつ、160°以下となるように、躍制部164を構成している。
この際、本実施形態では、躍制部164は、第1規制面164A、第2規制面164B、および、接続面164Cを備えて構成されるので、第1規制面164Aの角度を急にしても、第2規制面164Bの角度を緩くする必要がない。すなわち、歯部143Aの先端の軌道が描く円の接線に対する第1規制面164Aの角度を大きくしても、歯部143Bの先端の軌道が描く円の接線に対する第2規制面164Bの角度を小さくする必要がない。具体的には、第1規制面164Aの角度を上記のように構成した上で、接続面164Cと第2規制面164Bとが成す内角の角度θ2を120°以上、かつ、150°以下となるように構成することができる。そのため、躍制部164により日車14の回転を規制する規制力を弱くすることなく、日車14が回転し始めてから、歯部143Aが第1規制面164Aを乗り越えるまでの時間を短くできる。
【0032】
[第1実施形態の作用効果]
このような第1実施形態では、以下の効果を得ることができる。
本実施形態では、ムーブメント10は、筒車12と、日車14と、日回し車15と、日ジャンパー16と、を備える。そして、日ジャンパー16の躍制部164は、日車14の隣り合う歯部143A,143Bのうち、一方の歯部143Aに係合する第1規制面164Aと、他方の歯部143Bに係合する第2規制面164Bと、第1規制面164Aおよび第2規制面164Bの間に設けられる接続面164Cとを有し、隣り合う歯部143A,143Bと係脱可能に構成される。そして、日車14は、日回し車15によって伝達された筒車12の回転に応じて歯部143Aと第1規制面164Aとが接触している状態で回転し、その後、日回し車15の弾性部154の付勢力に応じて歯部143Aと接続面164Cとが接触した状態で回転し、その後、歯部143Aと第2規制面164Bとが接触している状態で回転することで、歯部143と躍制部164との噛合い1ピッチ分回転する。
これにより、第1規制面164Aの角度を急にしても、第2規制面164Bの角度を緩くする必要がないので、躍制部164により日車14の回転を規制する規制力を弱くすることなく、日車14が回転し始めてから、歯部143Aが第1規制面164Aを乗り越えるまでの時間を短くできる。したがって、日付を短時間で切り替え可能であり、かつ、日車14の不測の回転を抑制できる。
【0033】
本実施形態では、躍制部164が隣り合う歯部143A,143Bに係合している状態で、日ジャンパー16による日車14の回転を規制する規制力は、弾性部154による日車14を回転方向に付勢する付勢力より大きい。
これにより、弾性部154による付勢力によって、日ジャンパー16による日車14の規制が外れることがないので、所望した時間に、確実に日車14を1ピッチ分回転させることができる。
【0034】
本実施形態では、歯部143Aと第1規制面164Aとが接触している状態で回転する日車14の回転角θAは、歯部143Aと接続面164Cとが接触している状態、および、歯部143Aと第2規制面164Bとが接触している状態で回転する日車14の回転角よりも小さい。
これにより、日車14が回転し始めてから、歯部143Aが第1規制面164Aを乗り越えるまでの時間を短くできるので、日車14に記された数字141Aの一部がカレンダー小窓3Aから外れてしまう時間を短くできる。
【0035】
本実施形態では、平面視において、第1規制面164Aと接続面164Cとが成す内角の角度θ1は130°以上、かつ、160°以下であり、接続面164Cと第2規制面164Bとが成す内角の角度θ2は120°以上、かつ、150°以下である。
そのため、日付を短時間で切り替え可能であり、かつ、日車14の不測の回転を抑制できる。
【0036】
本実施形態では、日車14は、カレンダー板141の数字141Aが記された面に設けられ、カレンダー板141と直交する方向に沿って突出する擦れ防止部141Bを有する。
これにより、例えば、カレンダー板141の反り等により、カレンダー板141と文字板3との位置関係がずれてしまい、カレンダー板141に文字板3が接触したとしても、文字板3はカレンダー板141の擦れ防止部141Bに接触することになるので、文字板3と数字141Aとが接触することで、数字141Aが擦れて見えにくくなってしまうことを抑制できる。
【0037】
[第2実施形態]
次に、本開示の第2実施形態に係るムーブメント20を図面に基づいて説明する。
第2実施形態のムーブメント20は、平面視において、日ジャンパー26の日ジャンパー軸部262が、日車14の内周側に配置される点で前述した第1実施形態と相違する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同一または同様の構成には同一符号を付し、説明を省略する。
【0038】
図12は、第2実施形態の日車14の回転角を示す図である。なお、図12では、日車14の歯部143A,143Bと、日ジャンパー26の躍制部264とが係合している状態を実線で示し、歯部143Aと第1規制面264Aとが接触する箇所が第1規制面264Aと接続面264Cとの間の頂点に至っている状態を二点鎖線で示している。
本実施形態では、前述した第1実施形態と同様、日車14の歯部143のピッチ角は約11.6°とされている。すなわち、日車14は、歯部143と躍制部264との噛合い1ピッチ分回転した際に、約11.6°回転する。
そして、本実施形態では、平面視において、日ジャンパー26の日ジャンパー軸部262が、日車14の内周側に配置されている。すなわち、平面視で、日ジャンパー26を構成する日ジャンパー基部261、日ジャンパー軸部262、日ジャンパー腕部263、躍制部264が、日車14と重ならない位置に配置されている。そのため、例えば、メンテナンス時等において、日ジャンパー26を交換したり、位置を微調整したりする場合において、日車14を取り外さなくても、日ジャンパー26の各構成を視認できるので、交換や調整作業を容易にすることができる。
【0039】
ここで、本実施形態では、図12に示すように、歯部143Aと第1規制面264Aとが接触する箇所が、第1規制面264A上を移動して、第1規制面264Aと接続面264Cとの間の頂点に至るまでの日車14の回転角θBは約4.5°とされている。すなわち、日車14は、筒車12の回転に応じて約4.5°回転し、その後、弾性部154の付勢力により瞬間的に7.1°回転する。このように、本実施形態においても、歯部143Aと第1規制面264Aとが接触している状態で回転する日車14の回転角θBは、歯部143Aと接続面264Cとが接触している状態、および、歯部143Aと第2規制面264Bとが接触している状態で回転する日車14の回転角よりも小さくなるように構成されている。そのため、日車14が回転し始めてから、歯部143Aが第1規制面264Aを乗り越えるまでの時間を短くできるので、日車14に記された数字141Aの一部がカレンダー小窓3Aから外れてしまう時間を短くでき、見た目が悪くなってしまうことを抑制できる。
【0040】
なお、前述した第1実施形態のように、平面視で、日ジャンパー16の日ジャンパー軸部162を、日車14と重なる位置に配置した方が、歯部143Aと第1規制面164Aとが接触している状態で回転する日車14の回転角θAが小さくなるので、日車14に記された数字141Aの一部がカレンダー小窓3Aから外れてしまう時間を短くできる。
【0041】
[第2実施形態の作用効果]
このような第2実施形態では、以下の効果を得ることができる。
本実施形態では、平面視において、日ジャンパー26の日ジャンパー軸部262が、日車14の内周側に配置される。そのため、日車14を取り外さなくても、日ジャンパー軸部262を視認できるので、日ジャンパー26の交換や調整作業を容易にすることができる。
【0042】
[第3実施形態]
次に、本開示の第3実施形態に係るムーブメント30を図面に基づいて説明する。
第3実施形態のムーブメント30は、日回し本体部352の日回し本体部係合面352Aに係合凸部352Bが形成され、日回し爪355の第2係合面355Bに係合凹部355Cが形成される点で第1、2実施形態と相違する。なお、第3実施形態において、第1、2実施形態と同一または同様の構成には同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0043】
[日回し車]
図13は、日回し車35を示す正面図である。なお、図13では、日回し車35を裏蓋側から見ている。
図13に示すように、本実施形態の日回し車35は、前述した第1実施形態の日回し車15と同様に、筒車12および日車14に係合して、筒車12の回転を日車14に伝達可能に構成されている。本実施形態では、日回し車35は、日回し歯車部351と、日回し本体部352、日回し軸部353と、弾性部354と、日回し爪355と、を備えている。なお、日回し歯車部351、日回し軸部353、および、弾性部354は、前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0044】
日回し本体部352は、日回し歯車部351の裏蓋側に配置されており、日回し軸部353により日回し歯車部351に固定されている。また、日回し本体部352には、弾性部354が撓んだ際に、後述する日回し爪355の第2係合面355Bと係合する日回し本体部係合面352Aが設けられている。そして、本実施形態では、日回し本体部係合面352Aには、日回し爪355に向かって突出する係合凸部352Bが形成されている。係合凸部352Bは、弾性部354が撓んで第2係合面355Bと日回し本体部係合面352Aとが係合した際に、後述する日回し爪355に形成された係合凹部355Cと係合するように形成されている。
【0045】
日回し爪355は、弾性部354の先端に設けられ、日車14の歯部143と係合する第1係合面355Aと、前述した日回し本体部係合面352Aと係合する第2係合面355Bとを有している。そして、本実施形態では、第2係合面355Bには、前述した係合凸部352Bと係合可能な係合凹部355Cが形成されている。
【0046】
[日ジャンパー]
図14は、日ジャンパー36を文字板3側から見た平面図である。
図14に示すように、日ジャンパー36は、日車14の回転を規制するものであり、日ジャンパー基部361と、日ジャンパー軸部362と、日ジャンパー腕部363と、躍制部364と、バネ部365とを有する。なお、日ジャンパー基部361、日ジャンパー軸部362、日ジャンパー腕部363、および、バネ部365は、前述した第1実施形態と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0047】
躍制部364は、日ジャンパー腕部363の先端に設けられており、日車14の歯部143に係脱可能とされている。
また、躍制部364は、隣り合う歯部143の一方に係合して日車14の反時計回り方向の回転を規制する第1規制面364Aと、他方の歯部143に係合して日車14の時計回り方向の回転を規制する第2規制面364Bと、第1規制面364Aおよび第2規制面364Bの間に設けられ平面とされた接続面364Cと、を有する。そして、本実施形態では、第2規制面364Bは、2つの平面部364D,364Eと、当該2つの平面部364D,364Eを接続させる曲面部364Fと、を有する。
【0048】
[日車、日回し車、日ジャンパーの動作]
次に、日車14、日回し車35、および、日ジャンパー36の動作について、図15図17に基づいて説明する。
図15に示すように、前述した第1実施形態と同様に、筒車12の回転に応じて、筒車12の日回し中間車12Aと係合する日回し歯車部351が、反時計回り方向に回転して、日回し爪355の第1係合面355Aが日車14の歯部143と係合する。この際、日車14の回転は、日ジャンパー36によって規制されている。具体的には、日車14は、日ジャンパー36の躍制部364と隣り合う歯部143A,143Bとが係合することで、回転が規制されている。
【0049】
次に、図16に示すように、日回し爪355の第1係合面355Aと、日車14の歯部143とが係合した状態で、筒車12の回転に応じて日回し車35が回転すると、弾性部354が徐々に撓む。これにより、弾性部354には、日回し爪355を介して、日車14を反時計回り方向に回転させる付勢力が徐々に蓄積される。そして、日回し車35がさらに回転すると、日回し爪355の第2係合面355Bと、日回し本体部352の日回し本体部係合面352Aとが係合する。この際、本実施形態では、前述したように、日回し本体部係合面352Aに形成された係合凸部352Bと、日回し爪355の第2係合面355Bに形成された係合凹部355Cとが係合する。これにより、日回し車35の回転軌跡の接線に沿った方向に対する日回し爪355の移動が規制されるとともに、日回し車35の回転軌跡の接線と直交する方向、つまり、日回し車35の回転中心に向けた方向に対する日回し爪355の移動が規制される。すなわち、係合凸部352Bおよび係合凹部355Cは、日回し車35の回転軌跡の接線に沿った方向および当該接線と直交する方向に対する日回し爪355の移動を規制する本開示の移動規制部356を構成する。
【0050】
次に、図17に示すように、日回し爪355の第2係合面355Bと、日回し本体部352の日回し本体部係合面352Aとが係合した状態で、筒車12の回転に応じて日回し車35が回転すると、日回し爪355を介して筒車12の回転が日車14に伝達されるので、日車14は強制的に反時計回り方向に回転する。
そうすると、歯部143Aによって躍制部364の第1規制面364Aが付勢され、日ジャンパー36のバネ部365が弾性変形し、日ジャンパー軸部362を中心にして、日ジャンパー腕部363が反時計回り方向に回転する。そして、歯部143Aと、躍制部364の第1規制面364Aとが接触する箇所が、第1規制面364A上を移動して、第1規制面364Aと接続面364Cとの間の頂点に至る。この際、他方の歯部143Bと、躍制部364の第2規制面364Bとの係合は解除される。これにより、躍制部364と歯部143A,143Bとの係合状態が解除される。
そうすると、日ジャンパー36による日車14の回転の規制が解除されるので、前述した第1実施形態と同様に、日車14が噛合い1ピッチ分回転する。
【0051】
[第3実施形態の作用効果]
このような第3実施形態では、以下の効果を得ることができる。
本実施形態では、日回し車35は、当該日回し車35の回転軌跡の接線に沿った方向に対する日回し爪355の移動、および、接線と直交する方向に対する日回し爪355の移動を規制する移動規制部356を有している。
これにより、日回し爪355と日回し本体部352とが接触した際に、日回し車35の回転規制の接線と直交する方向に対する日回し爪355の移動を規制することができる。そのため、前述した接線と直交する方向、つまり、日回し車35の回転中心に向けた方向に日回し爪355が移動してしまい、日回し爪355と日車14の歯部143との係合状態が解除されてしまうことを抑制できる。したがって、日回し爪355によって日車14をより確実に回転させることができる。
【0052】
本実施形態では、移動規制部356は、日回し本体部352に形成される係合凸部352Bと、日回し爪355に形成される係合凹部355Cとを備えて構成される。
これにより、日回し本体部352に形成される係合凸部352Bと、日回し爪355に形成される係合凹部355Cとによって、日回し爪355の2方向に対する移動を同時に規制することができる。そのため、日回し爪355の移動を規制する移動規制部356の構造を簡素にすることができる。
【0053】
[変形例]
なお、本開示は前述の実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれるものである。
【0054】
前述した各実施形態では、ムーブメント10,20,30は、一般的な調速機構を備える機械時計のムーブメントとして構成されていたが、これに限られない。例えば、発電機等を備える電子制御式機械時計のムーブメントとして構成されていてもよい。
前述した各実施形態では、日車14のカレンダー板141に、擦れ防止部141Bが設けられていたが、これに限られず、カレンダー板に擦れ防止部材が設けられない場合も、本開示に含まれる。
【0055】
前述した各実施形態では、ムーブメント10,20,30は、日付を示す数字141Aが記された日車14を備えて構成されていたが、これに限られない。例えば、ムーブメントは、日車14に加えて、曜日を示す文字が示された曜車を備えて構成されていてもよい。この場合、ムーブメントは、当該曜車を回転させるための曜回し車や、曜車の回転を規制する曜ジャンパーを備えて構成されていてもよい。
【0056】
前述した各実施形態では、日車14の日歯車部142には、歯部143が31個設けられており、歯部143のピッチ角は約11.6°とされていたが、これに限られない。例えば、日付の十の位と一の位とを、それぞれ別の日車に記された数字によって表示するビッグデイト表示のような場合は、それぞれの日車に記された数字に応じて歯部が設けられていてもよい。この場合、それぞれの日車のピッチ角は、それぞれの歯部の数に応じた角度になる。
【0057】
前述した第3実施形態では、日回し車35の日回し本体部352に係合凸部352Bが形成され、日回し爪355に係合凹部355Cが形成されていたが、これに限られない。例えば、日回し本体部に係合凹部が形成され、日回し爪に係合凸部が形成されていてもよい。さらに、日回し本体部および日回し爪の両方に、係合可能とされる係合段差部が形成されていてもよく、日回し車の回転軌跡の接線に沿った方向に対する日回し爪の移動、および、接線と直交する方向に対する日回し爪の移動を規制可能に構成されていればよい。
【0058】
[本開示のまとめ]
本開示のムーブメントは、筒車と、円環状に設けられ日付を示す数字が記されたカレンダー板と、前記カレンダー板の内周側に設けられ複数の歯部を有する日歯車部と、を備える日車と、前記筒車に係合して前記筒車の回転が伝達される日回し歯車部と、前記日回し歯車部と一体となって回転する日回し本体部と、前記日回し本体部から延設され前記日車を回転方向に付勢可能に構成された弾性部と、前記弾性部の先端に設けられ前記日歯車部の前記歯部と係合する日回し爪と、を有する日回し車と、複数の前記歯部のうち、隣り合う歯部に係合して前記日車の回転を規制する躍制部を有する日ジャンパーと、を備え、前記躍制部は、前記隣り合う歯部のうち、一方の歯部に係合する第1規制面と、他方の歯部に係合する第2規制面と、前記第1規制面および前記第2規制面の間に設けられる接続面とを有し、前記隣り合う歯部と係脱可能に構成され、前記日車は、前記日回し車によって伝達された前記筒車の回転に応じて前記一方の歯部と前記第1規制面とが接触している状態で回転し、その後、前記弾性部の付勢力に応じて前記一方の歯部と前記接続面とが接触している状態で回転し、その後、前記一方の歯部と前記第2規制面とが接触している状態で回転することで、前記歯部と前記躍制部との噛合い1ピッチ分回転する。
これにより、第1規制面の角度を急にしても、第2規制面の角度を緩くする必要がないので、躍制部により日車の回転を規制する規制力を弱くすることなく、日車が回転し始めてから、歯部が第1規制面を乗り越えるまでの時間を短くできる。したがって、日付を短時間で切り替え可能であり、かつ、日車の不測の回転を抑制できる。
【0059】
本開示のムーブメントにおいて、前記躍制部が前記隣り合う歯部に係合している状態で、前記日ジャンパーによる前記日車の回転を規制する規制力は、前記弾性部による前記日車を前記回転方向に付勢する付勢力より大きくてもよい。
これにより、弾性部による付勢力によって、日ジャンパーによる日車の規制が外れることがないので、所望した時間に、確実に日車を1ピッチ分回転させることができる。
【0060】
本開示のムーブメントにおいて、前記一方の歯部と前記第1規制面とが接触している状態で回転する前記日車の回転角は、前記一方の歯部と前記接続面とが接触している状態および前記一方の歯部と前記第2規制面とが接触している状態で回転する前記日車の回転角よりも小さくてもよい。
これにより、日車が回転し始めてから、歯部が第1規制面を乗り越えるまでの時間を短くできる。
【0061】
本開示のムーブメントにおいて、平面視において、前記第1規制面と前記接続面とが成す内角の角度は130°以上、かつ、160°以下であり、前記接続面と前記第2規制面とが成す内角の角度は120°以上、かつ、150°以下であってもよい。
【0062】
本開示のムーブメントにおいて、前記日車は、前記カレンダー板の前記数字が記された面に設けられ、前記カレンダー板と直交する方向に沿って突出する擦れ防止部を有していてもよい。
これにより、例えば、カレンダー板の反り等により、カレンダー板と文字板との位置関係がずれてしまい、カレンダー板に文字板が接触したとしても、文字板はカレンダー板の擦れ防止部に接触することになる。そのため、文字板と数字とが接触することで、数字が擦れて見えにくくなってしまうことを抑制できる。
【0063】
本開示のムーブメントにおいて、前記日回し車は、前記日回し車の回転軌跡の接線に沿った方向に対する前記日回し爪の移動、および、前記接線と直交する方向に対する前記日回し爪の移動を規制する移動規制部を有していてもよい。
これにより、日回し爪と日回し本体部とが接触した際に、日回し車の回転軌跡の接線と直交する方向に対する日回し爪の移動を規制することができる。そのため、前述した接線と直交する方向、つまり、日回し車の回転中心に向けた方向に日回し爪が移動してしまい、日回し爪と日車の歯部との係合状態が解除されてしまうことを抑制できる。したがって、日回し爪によって日車をより確実に回転させることができる。
【0064】
本開示のムーブメントにおいて、前記移動規制部は、前記日回し本体部に形成される係合凸部と、前記日回し爪に形成される係合凹部とを備えて構成されていてもよい。
これにより、日回し本体部に形成される係合凸部と、日回し爪に形成される係合凹部とによって、日回し爪の2方向に対する移動を同時に規制することができる。そのため、日回し爪の移動を規制する移動規制部の構造を簡素にすることができる。
【0065】
本開示の時計は、前記ムーブメントを備える。
【符号の説明】
【0066】
1…時計、2…外装ケース、3…文字板、3A…カレンダー小窓、3B…アワーマーク、4A…時針、4B…分針、4C…秒針、7…りゅうず、10,20,30…ムーブメント、11…地板、12…筒車、12A…日回し中間車、13…日車ガイド板、14…日車、15,35…日回し車、16,26,36…日ジャンパー、141…カレンダー板、141A…数字、141B…擦れ防止部、142…日歯車部、143…歯部、151,351…日回し歯車部、152,352…日回し本体部、152A,352A…日回し本体部係合面、352B…係合凸部、153,353…日回し軸部、154,354…弾性部、155,355…日回し爪、155A,355A…第1係合面、155B,355B…第2係合面、355C…係合凹部、356…移動規制部、161,261,361…日ジャンパー基部、162,262,362…日ジャンパー軸部、163,263,363…日ジャンパー腕部、164,264,364…躍制部、164A,264A,364A…第1規制面、164B,264B,364B…第2規制面、164C,264C,364C…接続面、364D…平面部、364E…平面部、364F…曲面部、165,365…バネ部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17