(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】圧電駆動装置及びロボット
(51)【国際特許分類】
H02N 2/12 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
H02N2/12
(21)【出願番号】P 2020158307
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 智明
(72)【発明者】
【氏名】梶野 喜一
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-083628(JP,A)
【文献】特開昭62-131593(JP,A)
【文献】特開2012-227467(JP,A)
【文献】特開2011-129957(JP,A)
【文献】特開2020-107657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/12
H05K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置されている複数の圧電素子と、
前記複数の圧電素子の間に設けられている第1溝部と、
前記第1溝部の側面の少なくとも一部と底部とに設けられている第1配線と、
を備え
、
前記基板を支持している支持部を有し、
前記支持部に第2配線と第2溝部とが設けられており、
前記第2配線は、前記第2溝部の側面の少なくとも一部と底部とに設けられている、
る、
圧電駆動装置。
【請求項2】
前記第1溝部は、前記基板に設けられている、
請求項1に記載の圧電駆動装置。
【請求項3】
前記基板は、シリコンである、
請求項1又は請求項2に記載の圧電駆動装置。
【請求項4】
前記第1配線及び前記第1溝部が複数あり、
複数の前記第1配線どうしを繋ぐ第
3配線と複数の前記第1溝部と連結する第
3溝部と
が設けられており、
前記第
3配線は、前記第
3溝部の側面の少なくとも一部と底部とに設けられている、
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の圧電駆動装置。
【請求項5】
前記第1配線、前記第2配線、及び前記第3配線は、共通電極用配線である、
請求項
1に記載の圧電駆動装置。
【請求項6】
前記第1配線及び前記第
2配線は、駆動電極用配線である、
請求項
1に記載の圧電駆動装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項
6の何れか一項に記載の圧電駆動装置を有する圧電モーターを備え
ている、
ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電駆動装置及びロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、圧電素子の振動を利用する圧電モーターが開発されている。このような圧電モーターとして、例えば特許文献1には、複数の圧電素子を備えた超音波振動子を有する超音波モーターが開示されている。超音波振動子は、圧電駆動装置として機能し、圧電素子に電気信号を入力することで、圧電素子の振動により、超音波振動子が振動し、その振動がローターと接触する接触部に伝達されることで、ローターを回転させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の圧電駆動装置である超音波振動子では、高い重量出力比を得るために圧電素子を小型化すると複数の圧電素子に電気信号を入力する配線が細くなり、配線抵抗が増大してしまうという課題があった。そのため、駆動効率が低下し、高い重量出力比を得ることができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
圧電駆動装置は、基板と、前記基板上に配置されている複数の圧電素子と、前記複数の圧電素子の間に設けられている第1溝部と、前記第1溝部の側面の少なくとも一部と底部とに設けられている第1配線と、を備える。
【0006】
ロボットは、上記に記載の圧電駆動装置を有する圧電モーターを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る圧電駆動装置を備える圧電モーターの概略構成を示す平面図。
【
図2】第1実施形態に係る圧電駆動装置の概略構成を示す平面図。
【
図6】圧電駆動装置の製造方法を示すフローチャート。
【
図7】第2実施形態に係る圧電駆動装置の概略構成を示す平面図。
【
図9】第3実施形態に係る圧電駆動装置の概略構成を示す平面図。
【
図11】第4実施形態に係る圧電駆動装置を備えたロボットの概略構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.第1実施形態
先ず、第1実施形態に係る圧電駆動装置3について、圧電駆動装置3を備える圧電モーター1を一例として挙げ、
図1~
図5を参照して説明する。
尚、説明の便宜上、以降における
図6及び
図11を除く各図には、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、及びZ軸を図示している。また、X軸に沿った方向を「X方向」、Y軸に沿った方向を「Y方向」、Z軸に沿った方向を「Z方向」と言う。また、各軸の矢印側を「プラス側」、矢印と反対側を「マイナス側」、X方向のプラス側を「上」、X方向のマイナス側を「下」とも言う。
【0009】
圧電モーター1は、
図1に示すように、円盤状をなしその中心軸Oまわりに回転可能な被駆動部材としてのローター2と、ローター2の外周面21に当接する圧電駆動装置3と、を有する。このような圧電モーター1では、圧電駆動装置3を屈曲振動させるとローター2がX軸と平行な中心軸Oまわりに回転する。
【0010】
また、ローター2にエンコーダー9が設けられており、エンコーダー9によって、ローター2の挙動、特に、回転量および角速度が検出できる。エンコーダー9は、ローター2の上面に固定されたスケール91と、スケール91の上側に設けられた光学素子92と、を有する。また、スケール91は、円板状をなし、その上面に図示しないパターンが設けられている。一方、光学素子92は、スケール91のパターンに向けて光を照射する発光素子921と、スケール91のパターンを撮像する撮像素子922と、を有する。このような構成のエンコーダー9では、撮像素子922により取得されるパターンの画像をテンプレートマッチングすることにより、ローター2の回転量、駆動速度、絶対位置等を検出することができる。
【0011】
本実施形態の圧電駆動装置3は、振動する圧電アクチュエーター4と、圧電アクチュエーター4をローター2に向けて付勢する付勢部材5と、圧電アクチュエーター4の駆動を制御する制御装置7と、を有する。
【0012】
圧電アクチュエーター4は、振動体41と、振動体41を支持する支持部42と、振動体41と支持部42とを接続する接続部43と、振動体41に接続され、振動体41の振動をローター2に伝達する凸部44と、を有する。
【0013】
振動体41は、
図2に示すように、X方向を厚さ方向とし、Y軸およびZ軸を含むY-Z平面に広がる板状をなし、Y方向に伸縮しながらZ方向に屈曲することによりS字状に屈曲振動する。また、振動体41は、X方向からの平面視で、伸縮方向であるY方向を長手とする長手形状となっている。
【0014】
また、振動体41は、基板60と、基板60上に配置され、振動体41を屈曲振動させるための駆動用の5つの圧電素子7A~7Eと、を有する。
【0015】
圧電素子7Cは、基板60のZ方向の中央部において、基板60の長手方向であるY方向に沿って配置されている。また、圧電素子7Cに対して基板60のZ方向のプラス側には、圧電素子7A,7Bが基板60の長手方向に並んで配置され、Z方向のマイナス側には、圧電素子7D,7Eが基板60の長手方向に並んで配置されている。
【0016】
圧電素子7A~7Eは、それぞれ、
図3に示すように、基板60上に配置された第1電極71と、第1電極71上に配置された圧電体72と、圧電体72上に配置された第2電極73と、を有する。尚、第2電極73上には、電極間のショートを防止するための絶縁層74が設けられている。第1電極71、圧電体72、及び第2電極73は、それぞれ、圧電素子7A~7Eに個別に設けられている。第2電極73は、電気信号に基づき、駆動用の圧電素子7A~7Eの各圧電体72を振動させる駆動用電極である。また、圧電素子7A~7Eのそれぞれの第1電極71は、後述する第1溝部61に設けられた第1配線81によって電気的に接続されている共通電極である。
【0017】
圧電素子7Cは、通電によって振動体41の長手方向であるY方向に伸縮させる縦振動をする。また、圧電素子7A,7E上の第2電極73が互いに電気的に接続されており、圧電素子7B,7D上の第2電極73が互いに電気的に接続され、振動体41をZ方向に屈曲させる屈曲振動をする。そのため、圧電素子7Cと、圧電素子7A,7Eと、圧電素子7B,7Dと、にそれぞれ電気信号として位相の異なる同周波数の交番電圧を印加し、これらの伸縮タイミングをずらすことにより、振動体41をその面内においてS字状に屈曲振動させることができる。つまり、本実施形態の圧電駆動装置3は、振動体41が圧電素子7A~7Eの振動によって、Y-Z平面内で変位し振動する面内振動方式である。
【0018】
基板60の圧電素子7A~7Eが配置された面には、第1溝部61,61Cと第2溝部62とが設けられている。尚、基板60は、溝形成等において、加工精度に優れているシリコンで構成されている。
第1溝部61は、基板60の長手方向であるY方向に延在し、X方向からの平面視で、圧電素子7Aと圧電素子7Cとの間、圧電素子7Bと圧電素子7Cとの間、圧電素子7Cと圧電素子7Dとの間、及び圧電素子7Cと圧電素子7Eとの間に配置されている。尚、圧電素子7Aと圧電素子7Cとの間の第1溝部61と、圧電素子7Bと圧電素子7Cとの間の第1溝部61と、はそれぞれのY方向の端部どうしが連結している。また、
図3に示すように、第1溝部61の側面65の少なくとも一部と底部66には、第1配線81が設けられている。
ここで、圧電素子間隔を60μmとすると、素子間の配線幅は、最大でも50μmである。そのため、素子間に幅50μmで溝深さ25μmの第1溝部61を設け、第1溝部61の側面65と底部66に第1配線81を設けることで、実質的な配線幅を100μmとすることができ、配線抵抗を半減することができる。
【0019】
第1溝部61Cは、2つの圧電素子7D,7Eの間に配置され、第1溝部61が延在する方向と直交するZ方向に延在している。また、第1溝部61Cの側面65の少なくとも一部と底部66には、第1配線81Cが設けられている。
【0020】
第2溝部62は、圧電素子7Cの長手方向の両端側に、つまり、圧電素子7CのY方向のプラス側とマイナス側とにそれぞれ配置され、圧電素子7A,7Bと圧電素子7Cとの間に配置された第1溝部61と、圧電素子7Cと圧電素子7D,7Eとの間に配置された第1溝部61と、に連結している。具体的には、圧電素子7CのY方向のプラス側に配置された第2溝部62は、圧電素子7Aと圧電素子7Cとの間に配置された第1溝部61と、圧電素子7Cと圧電素子7Dとの間に配置された第1溝部61と、に連結し、圧電素子7CのY方向のマイナス側に配置された第2溝部62は、圧電素子7Bと圧電素子7Cとの間に配置された第1溝部61と、圧電素子7Cと圧電素子7Eとの間に配置された第1溝部61と、に連結している。また、
図5に示すように、第2溝部62の側面65の少なくとも一部と底部66には、第2配線82が設けられており、第1溝部61に設けられている第1配線81どうしを繋いでいる。具体的には、第2配線82は、圧電素子7A,7Bと圧電素子7Cとの間に配置された第1溝部61に設けられた第1配線81と、圧電素子7Cと圧電素子7D,7Eとの間に配置された第1溝部61に設けられた第1配線81と、を電気的に接続している。
【0021】
支持部42は、接続部43を介して振動体41となる基板60を支持している。支持部42は、X方向からの平面視で、振動体41のY方向のマイナス側を囲むU字形状となっている。また、接続部43は、振動体41の屈曲振動の節となる部分、具体的には振動体41のY方向の中央部と支持部42とを接続している。
【0022】
また、支持部42上には、6つの第3溝部63,63A,63B,63C,63D,63Eと、共通電極用端子86と、5つの駆動電極用端子87と、が設けられている。尚、6つの第3溝部63,63A,63B,63C,63D,63Eは、それぞれ接続部43にも設けられている。また、共通電極用端子86及び5つの駆動電極用端子87は、支持部42のY方向のマイナス側の端部に、Z方向に沿って並んで配置されている。
【0023】
支持部42及び接続部43に設けられた第3溝部63,63A,63B,63C,63D,63Eには、それぞれの側面65の少なくとも一部と底部66に、第3配線83,83A,83B,83C,83D,83Eがそれぞれ設けられている。
第3配線83の一方の端部は、共通電極用端子86と電気的に接続されており、第3配線83の他方の端部は、圧電素子7A,7Bと圧電素子7Cとの間に配置された第1溝部61に設けられた第1配線81と電気的に接続されている。
【0024】
第3配線83Bの一方の端部は、駆動電極用端子87と電気的に接続されており、第3配線83Bの他方の端部は、圧電素子7B上に設けられた第3配線83Bと電気的に接続されている。尚、圧電素子7B上に設けられた第3配線83Bは、
図4に示すように、圧電素子7Bの絶縁層74に設けられた貫通孔67内の電極を介して、圧電素子7Bの第2電極73と電気的に接続されている。そのため、圧電素子7Bの第2電極73は、第3配線83Bを介して、駆動電極用端子87と電気的に接続される。
3つの第3配線83A,83D,83Eも第3配線83Bと同様に、一方の端部は、駆動電極用端子87と電気的に接続され、他方の端部は、それぞれ圧電素子7A,7D,7Eの第2電極73と電気的に接続されている。
【0025】
第3配線83Cの一方の端部は、駆動電極用端子87と電気的に接続されており、第3配線83Cの他方の端部は、第1溝部61Cに設けられた第1配線81Cを介して、圧電素子7C上に設けられた第1配線81Cと電気的に接続されている。尚、圧電素子7C上に設けられた第1配線81Cは、第3配線83Bと同様に、圧電素子7Cの絶縁層74に設けられた貫通孔67内の電極を介して、圧電素子7Cの第2電極73と電気的に接続されている。
【0026】
圧電素子7A~7Eの第1電極71と電気的に接続されている第1配線81、第2配線82、及び第3配線83は、共通電極用配線84であり、GNDに接地されている。また、共通電極用端子86から外部配線88を介して、制御装置7と電気的に接続されている。
【0027】
圧電素子7A~7Eの第2電極73と電気的に接続されている第1配線81C及び第3配線83A,83B,83C,83D,83Eは、駆動電極用配線85であり、駆動電極用端子87から外部配線89を介して、制御装置7と電気的に接続されている。
【0028】
凸部44は、振動体41の先端部に設けられ、振動体41からY方向のプラス側へ突出している。そして、凸部44の先端部は、ローター2の外周面21と接触している。そのため、振動体41の振動は、凸部44を介してローター2に伝達される。圧電素子7A~7Eに印加する交番電圧をそれぞれ調整することで、伸縮タイミングをずらし、
図1に示すように、ローター2を矢印B1で示すように時計回りに回転させたり、ローター2を矢印B2で示すように反時計回りに回転させたりすることができる。
【0029】
付勢部材5は、凸部44をローター2の外周面21に向けて付勢する部材である。付勢部材5は、圧電アクチュエーター4を支持する基部51に設けられたばね部513をY方向に撓ませた状態で付勢部材5を筐体等に固定することにより、ばね部513の復元力を利用して凸部44をローター2の外周面21に向けて付勢することができる。
【0030】
制御装置7は、圧電素子7A~7Eに電気信号として位相の異なる同周波数の交番電圧を印加することにより、圧電駆動装置3の駆動を制御する。
【0031】
次に、第1実施形態に係る圧電駆動装置3の製造方法について、
図6を参照して説明する。
圧電駆動装置3の製造方法は、
図6に示すように、酸化膜形成工程、第1電極形成工程、圧電体形成工程、第2電極形成工程、絶縁層形成工程、溝形成工程、配線形成工程、及び外形形成工程を含んでいる。
【0032】
1.1 酸化膜形成工程
先ず、ステップS1において、シリコン基板を準備し、シリコン基板を大気中において高温で加熱することで、シリコン基板の表面に絶縁層となる酸化膜を形成する。
【0033】
1.2 第1電極形成工程
次に、ステップS2において、金(Au)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)等の金属をスパッタ法又は蒸着法でシリコン基板の酸化膜上に成膜し、第1電極71を形成する。
【0034】
1.3 圧電体形成工程
次に、ステップS3において、ゾル-ゲル法やスパッタリング法を用いて第1電極71上に圧電層を形成し、その後、フォトリソグラフィー技法で圧電層と第1電極71をパタニングして圧電素子パターンを形成し、圧電体72を形成する。尚、圧電体72の構成材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、タングステン酸ナトリウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)、タンタル酸ストロンチウムビスマス(SBT)、メタニオブ酸鉛、スカンジウムニオブ酸鉛等の圧電セラミックスを用いることができる。
【0035】
1.4 第2電極形成工程
次に、ステップS4において、第1電極71と同様に、金(Au)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)等の金属をスパッタ法又は蒸着法でシリコン基板の酸化膜上に成膜し、その後、フォトリソグラフィー技法で圧電素子パターンを形成し、第2電極73を形成する。
【0036】
1.5 絶縁層形成工程
次に、ステップS5において、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により、第2電極73上にSiO2,Al2O3等の絶縁膜を成膜し、その後、フォトリソグラフィー技法で圧電素子パターンを形成し、絶縁層74を形成する。また、圧電素子7A~7Eの第2電極73と、第3配線83A,83B,83D,83E又は第1配線81Cと、の電気的な接続を図るために、第2電極73にRIE(Reactive Ion Etching)法により貫通孔67を形成する。
【0037】
1.6 溝形成工程
次に、ステップS6において、RIE法又はICP(Inductively Coupled Plasma)法等のドライエッチングにより、圧電素子7A~7Eの周辺や支持部42に相当するシリコン基板上に、所定の深さとなるようにハーフエッチングして第1溝部61、第2溝部62、及び第3溝部63等を形成する。また、シリコン基板の厚みが50μmの場合には、溝の深さは25μmが好適であり、シリコン基板の厚みが20μm~200μmの場合には、溝の深さはシリコン基板の厚みの半分となる10μm~100μmが好適である。
【0038】
1.7 配線形成工程
次に、ステップS7において、金(Au)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)等の金属をスパッタ法又は蒸着法でシリコン基板や絶縁層74上に成膜し、その後、フォトリソグラフィー技法で配線パターンを形成し、第1配線81、第2配線82、及び第3配線83等を形成する。なお、溝の側面65に金属を成膜する場合には、溝の側面65への回り込み性の良いプラズマCVD法を用いるのが好ましい。また、スパッタ法の場合には、シリコン基板を斜めに配置し回転させながら成膜することが好ましい。また、配線の厚みとしては、2μmが好適であるが、0.5μm~5μmの範囲にあれば構わない。
【0039】
1.8 外形形成工程
次に、ステップS8において、フォトリソグラフィー技法で振動体41、支持部42、及び接続部43が一体となっている圧電アクチュエーター外形パターンを形成し、RIE法又はICP法等のドライエッチングにより、圧電アクチュエーター4の外形を形成する。
【0040】
以上によって、基板60上に配置されている複数の圧電素子7A~7Eの間に配置されている第1溝部61、圧電素子7Cの周辺に配置されている第2溝部62、及び支持部42に配置されている第3溝部63のそれぞれの溝部の側面65の少なくとも一部と底部66とに第1配線81、第2配線82、及び第3配線83が設けられた圧電駆動装置3を得ることができる。
【0041】
上述したような圧電駆動装置3によれば、基板60上に配置されている複数の圧電素子7A~7Eの間に配置されている第1溝部61の側面65の少なくとも一部と底部66とに第1配線81が設けられているので、圧電素子7A~7Eの間の狭い領域において、第1配線81の断面積を大きくすることができ、配線抵抗を下げることができる。そのため、駆動効率を高め、高い重量出力比を有する圧電駆動装置3を得ることができる。
【0042】
2.第2実施形態
次に、第2実施形態に係る圧電駆動装置3aについて、
図7及び
図8を参照して説明する。
【0043】
本実施形態の圧電駆動装置3aは、第1実施形態の圧電駆動装置3に比べ、圧電アクチュエーター4aに第1溝部61Cと、第3溝部63,63A,63B,63C,63D,63Eと、が設けられていないこと以外は、第1実施形態の圧電駆動装置3と同様である。尚、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。また、
図7及び
図8では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0044】
本実施形態の圧電駆動装置3aは、
図7に示すように、圧電アクチュエーター4aの基板60の圧電素子7A~7Eが配置された面に、第1溝部61と第2溝部62とが設けられている。
【0045】
第1溝部61は、基板60の長手方向であるY方向に延在し、X方向からの平面視で、圧電素子7Aと圧電素子7Cとの間、圧電素子7Bと圧電素子7Cとの間、圧電素子7Cと圧電素子7Dとの間、及び圧電素子7Cと圧電素子7Eとの間に配置されている。尚、圧電素子7Aと圧電素子7Cとの間の第1溝部61と、圧電素子7Bと圧電素子7Cとの間の第1溝部61と、はそれぞれのY方向の端部どうしが連結している。また、
図8に示すように、第1溝部61の側面65の少なくとも一部と底部66には、第1配線81が設けられている。
【0046】
第2溝部62は、圧電素子7CのY方向のプラス側とマイナス側とにそれぞれ配置され、圧電素子7A,7Bと圧電素子7Cとの間に配置された第1溝部61と、圧電素子7Cと圧電素子7D,7Eとの間に配置された第1溝部61と、に連結している。また、第2溝部62の側面65の少なくとも一部と底部66には、第2配線82が設けられており圧電素子7A,7Bと圧電素子7Cとの間に配置された第1溝部61に設けられた第1配線81と、圧電素子7Cと圧電素子7D,7Eとの間に配置された第1溝部61に設けられた第1配線81と、を電気的に接続している。
【0047】
このような構成とすることで、前述した第1実施形態と同等の効果を得ることができる。また、第1実施形態に比べ、圧電アクチュエーター4aに第1溝部61Cと、第3溝部63,63A,63B,63C,63D,63Eと、を形成しないので、溝部における配線の断線等の発生確率が減少するので、製造歩留まりの向上を図ることができる。
【0048】
3.第3実施形態
次に、第3実施形態に係る圧電駆動装置3bについて、
図9及び
図10を参照して説明する。
【0049】
本実施形態の圧電駆動装置3bは、第1実施形態の圧電駆動装置3に比べ、圧電アクチュエーター4bに第1溝部61Cと、第2溝部62と、第3溝部63,63A,63B,63C,63D,63Eと、が設けられていないこと以外は、第1実施形態の圧電駆動装置3と同様である。尚、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。また、
図9及び
図10では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0050】
本実施形態の圧電駆動装置3bは、
図9に示すように、圧電アクチュエーター4bの基板60の圧電素子7A~7Eが配置された面に、第1溝部61が設けられている。
【0051】
第1溝部61は、基板60の長手方向であるY方向に延在し、X方向からの平面視で、圧電素子7Aと圧電素子7Cとの間、圧電素子7Bと圧電素子7Cとの間、圧電素子7Cと圧電素子7Dとの間、及び圧電素子7Cと圧電素子7Eとの間に配置されている。尚、圧電素子7Aと圧電素子7Cとの間の第1溝部61と、圧電素子7Bと圧電素子7Cとの間の第1溝部61と、はそれぞれのY方向の端部どうしが連結している。また、
図10に示すように、第1溝部61の側面65の少なくとも一部と底部66には、第1配線81が設けられている。尚、圧電素子7Cの両側の第1溝部61に設けられた第1配線81は、それぞれY方向の端部で第2配線82によって電気的に接続されている。
【0052】
このような構成とすることで、前述した第1実施形態と同等の効果を得ることができる。また、第1実施形態に比べ、圧電アクチュエーター4bに第1溝部61Cと、第2溝部62と、第3溝部63,63A,63B,63C,63D,63Eと、を形成しないので、溝部における配線の断線等の発生確率が減少するので、製造歩留まりの向上を図ることができる。
【0053】
4.第4実施形態
次に、第4実施形態に係る圧電駆動装置3,3a,3bを備えているロボット1000について、
図11を参照して説明する。尚、以下の説明では、圧電駆動装置3を備えた圧電モーター1を適用した構成を例示して説明する。
【0054】
ロボット1000は、
図11に示すように、精密機器やこれを構成する部品の給材、除材、搬送および組立等の作業を行うことができる。ロボット1000は、6軸ロボットであり、床や天井に固定されるベース1010と、ベース1010に回動自在に連結されたアーム1020と、アーム1020に回動自在に連結されたアーム1030と、アーム1030に回動自在に連結されたアーム1040と、アーム1040に回動自在に連結されたアーム1050と、アーム1050に回動自在に連結されたアーム1060と、アーム1060に回動自在に連結されたアーム1070と、これらアーム1020,1030,1040,1050,1060,1070の駆動を制御する制御装置1080と、を有する。
【0055】
また、アーム1070にはハンド接続部が設けられており、ハンド接続部にはロボット1000に実行させる作業に応じたエンドエフェクター1090が装着される。また、各関節部のうちの全部または一部には圧電モーター1が搭載されており、この圧電モーター1の駆動によって各アーム1020,1030,1040,1050,1060,1070が回動する。なお、圧電モーター1は、エンドエフェクター1090に搭載され、エンドエフェクター1090の駆動に用いられてもよい。
【0056】
制御装置1080は、コンピューターで構成され、例えば、プロセッサー(CPU)、メモリー、I/F(インターフェイス)等を有する。そして、プロセッサーが、メモリーに格納されている所定のプログラムを実行することで、ロボット1000の各部の駆動を制御する。なお、前記プログラムは、I/Fを介して外部のサーバーからダウンロードしてもよい。また、制御装置1080の構成の全部または一部は、ロボット1000の外部に設けられ、LAN(ローカルエリアネットワーク)等の通信網を介して接続された構成となっていてもよい。
【0057】
このようなロボット1000は、前述したように、圧電モーター1を備えている。すなわち、ロボット1000は、圧電アクチュエーター4と、圧電アクチュエーター4の振動を制御する制御装置7と、を備え、圧電アクチュエーター4を振動させて圧電アクチュエーター4に当接するローター2を駆動する圧電駆動装置3を有している。このうち、圧電アクチュエーター4は、基板60上に配置されている複数の圧電素子7A~7Eの間に設けられている第1溝部61の側面65と底部66とに第1配線81が設けられているので、第1配線81の断面積が増え、配線抵抗を下げることができる。このようなロボット1000によれば、圧電駆動装置3において、配線抵抗の小さい配線構造としているため、駆動効率が高くなり、高い重量出力比を有する圧電駆動装置3を実現することができる。その結果、高い重量出力比が可能なロボット1000が得られる。
【符号の説明】
【0058】
1…圧電モーター、2…ローター、3,3a,3b…圧電駆動装置、4…圧電アクチュエーター、5…付勢部材、7A,7B,7C,7D,7E…圧電素子、7…制御装置、9…エンコーダー、21…外周面、41…振動体、42…支持部、43…接続部、44…凸部、51…基部、60…基板、61,61C…第1溝部、62…第2溝部、63,63A,63B,63C,63D,63E…第3溝部、65…側面、66…底部、71…第1電極、72…圧電体、73…第2電極、74…絶縁層、81,81C…第1配線、82…第2配線、83,83A,83B,83C,83D,83E…第3配線、84…共通電極用配線、85…駆動電極用配線、86…共通電極用端子、87…駆動電極用端子、88,89…外部配線、91…スケール、92…光学素子、513…ばね部、921…発光素子、922…撮像素子、1000…ロボット、B1…矢印、B2…矢印、O…中心軸。