(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】LIDAR装置
(51)【国際特許分類】
G01S 17/931 20200101AFI20240709BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20240709BHJP
G01S 17/34 20200101ALI20240709BHJP
【FI】
G01S17/931
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
G01S17/34
(21)【出願番号】P 2020158544
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】豊田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】別府 太郎
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-507326(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0107607(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0179024(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0086550(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102015109160(DE,A1)
【文献】特開2017-150902(JP,A)
【文献】国際公開第2012/117542(WO,A1)
【文献】特開2006-329971(JP,A)
【文献】特開平07-325154(JP,A)
【文献】特表2019-525183(JP,A)
【文献】特開平10-147197(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0312125(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
17/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周囲に照射したレーザ光の反射光を受光するLIDAR装置(10,20)において、
前記車両の周囲に前記レーザ光を照射する照射処理を実行し、
前記照射処理は、前記レーザ光の照射方向を走査する走査処理および分解能調整処理(S22,S24;S22a,S24a;S22b,S24b)を含み、
前記走査処理は、垂直方向にレーザ光の照射方向を周期的に走査する処理を含み、
前記走査処理によって垂直方向に走査されるレーザ光の1周期における照射方向には、前記垂直方向において互いに隣接するA方向(OP6j)およびB方向(OP7j)と、前記垂直方向において互いに隣接するC方向(OP5j)およびD方向(OP4j)と、の4つの方向が含まれ、
前記分解能調整処理は、前記A方向および前記B方向の角度差よりも前記C方向および前記D方向の角度差を小さくする処理と、前記車両の状態を示す変数である状態変数を入力として前記C方向および前記D方向の角度差を可変とする可変処理と、を含
み、
前記走査処理によって垂直方向に走査されるレーザ光の1周期において垂直上方向との角度差が大きい方向の順に並べて番号を付与した場合、前記A方向、前記B方向、前記C方向、および前記D方向のそれぞれに付与される前記番号は、前記可変処理による角度差の変更によって変化しないLIDAR装置。
【請求項2】
前記状態変数としての車速を取得する車速取得処理(S12)を実行し、
前記可変処理は、前記車速取得処理によって取得された前記車速が大きい場合に小さい場合よりも前記C方向および前記D方向の角度差を小さくする処理を含む請求項1記載のLIDAR装置。
【請求項3】
前記可変処理は、前記状態変数としての前記車両が前進する距離が長くなるほど前記C方向および前記D方向の角度差を大きくする処理を含む請求項1または2記載のLIDAR装置。
【請求項4】
前記車両の進行方向前方に前記車両の走行を妨げる物体が検知されていないことをトリガとして、前記分解能調整処理を実行する請求項2記載のLIDAR装置。
【請求項5】
垂直上方向と前記A方向とのなす角度が垂直上方向と前記D方向とのなす角度よりも小さく、
前記C方向および前記D方向は、前記レーザ光を路面に照射する方向である請求項1~4のいずれか1項に記載のLIDAR装置。
【請求項6】
前記状態変数としての車速を取得する車速取得処理(S12)を実行し、
前記分解能調整処理は、前記C方向(OP5j)に照射されたレーザ光が路面に到達する地点および前記車両の位置間の距離と、前記D方向(OP4j)に照射されたレーザ光が路面に到達する地点および前記車両の位置間の距離とを、前記車速が大きい場合に小さい場合よりも大きくする処理を含む請求項5記載のLIDAR装置。
【請求項7】
前記垂直方向における前記レーザ光の照射方向の数は、10個以下であって、前記C方向と前記D方向とのそれぞれに照射されたレーザ光が50m以上先の路面に垂直な面に到達する到達点同士の差が20cm以下である請求項5または6記載のLIDAR装置。
【請求項8】
前記路面に照射する方向に照射された前記レーザ光のうち少なくとも2つが前記車両の外部の物体により反射された反射光を受光することを条件に、前記車両の走行を妨げるおそれがある物体が存在すると判定する判定処理を実行する請求項7記載のLIDAR装置。
【請求項9】
前記走査処理は、前記A方向および前記B方向よりも垂直下方向側において、垂直方向において隣接する2つの方向同士の
垂直方向における角度差が前記A方向および前記B方向の
垂直方向における角度差よりも小さい3つ以上の方向にレーザの照射方向を走査する処理を含み、
前記3つ以上の方向には、第1方向(OP2j)、第2方向(OP3j)、および第3方向(OP4j)が含まれ、
前記第1方向、前記第2方向、および前記第3方向は、前記レーザ光を路面に照射する方向であり、
前記第1方向および前記第2方向は、前記C方向および前記D方向であり、
前記第2方向および前記第3方向は、垂直方向において互いに隣接し、
前記分解能調整処理は、前記第1方向および前記第2方向の前記
垂直方向における角度差と、前記第2方向および前記第3方向の前記
垂直方向における角度差とを互いに異なる値に設定する処理を含む請求項5~8のいずれか1項に記載のLIDAR装置。
【請求項10】
前記第3方向と前記垂直上方向とのなす角度は、前記第1方向と前記垂直上方向とのなす角度よりも小さく、
前記分解能調整処理は、前記第1方向および前記第2方向の前記
垂直方向における角度差よりも前記第2方向および前記第3方向の前記
垂直方向における角度差を小さくする処理を含む請求項9記載のLIDAR装置。
【請求項11】
前記第1方向、前記第2方向、および前記第3方向へのレーザ光の照射パターンは、前記車両の進行方向における路面へのレーザ光の到達位置間の間隔が均等となるパターンである請求項10記載のLIDAR装置。
【請求項12】
車速を取得する車速取得処理(S12)を実行し、
前記分解能調整処理は、
前記C方向および前記D方向に照射されたレーザ光が路面に到達する地点および前記車両間の距離を前記車速取得処理によって取得された前記車速が大きい場合に小さい場合よりも大きくする処理と、
前記距離が小さい場合に大きい場合よりも前記レーザ光の1測距点当たりの照射エネルギ量を小さくする低減処理(S50)と、
前記距離が小さい場合に大きい場合よりも、前記3つ以上の方向に照射するレーザ光の1フレーム当たりの照射回数を増加させる密度増加処理(S50)と、を含む請求項
9~11のいずれか1項に記載のLIDAR装置。
【請求項13】
車速を取得する車速取得処理を実行し、
前記分解能調整処理は、
前記C方向および前記D方向に照射されたレーザ光が路面に到達する地点および前記車両間の距離を前記車速取得処理によって取得された前記車速が大きい場合に小さい場合よりも大きくする処理と、
前記距離が小さい場合に大きい場合よりも前記レーザ光の1測距点当たりの照射エネルギ量を小さくする低減処理(S52)と、
前記距離が小さい場合に大きい場合よりも、単位時間当たりのフレーム数を増加させるフレーム増加処理(S52)と、を含む請求項5~1
1のいずれか1項に記載のLIDAR装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LIDAR装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば下記特許文献1には、レーザ光の照射方向を変更可能なLIDAR装置が記載されている。詳しくは、路面に垂直な方向における照射角度が狭い代わりに遠方までレーザ光を照射するパターンと、路面に垂直な方向における照射角度が広い代わりに近距離にレーザ光を照射するパターンとを切り替え可能な装置が記載されている(Fig.1B)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2017/0356983号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両が走行する際に生じる実際のシーンの中には、特定の領域において要求される分解能が特に高くなるシーンが存在する。そしてその場合に、レーザ光の照射密度をあらゆる方向において同一とする場合には、特定の領域以外の領域においてレーザ光の照射密度が必要以上に高くなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく、LIDAR装置は、車両の周囲に照射したレーザ光の反射光を受光するLIDAR装置(10,20)において、前記車両の周囲に前記レーザ光を照射する照射処理を実行し、前記照射処理は、前記レーザ光の照射方向を走査する走査処理および分解能調整処理(S22,S24;S22a,S24a;S22b,S24b)を含み、前記走査処理は、垂直方向および水平方向の2つの方向のうちの1つの方向である所定方向にレーザ光の照射方向を走査する処理を含み、前記複数の方向には、前記所定方向において互いに隣接するA方向(OP6j)およびB方向(OP7j)と、前記所定方向において互いに隣接するC方向(OP5j)およびD方向(OP4j)と、の4つの方向が含まれ、前記分解能調整処理は、前記A方向および前記B方向の角度差よりも前記C方向および前記D方向の角度差を小さくする処理と、前記車両の状態を示す変数である状態変数を入力として前記C方向および前記D方向の角度差を可変とする可変処理と、を含む。
【0006】
上記分解能調整処理によれば、A方向付近と比較してC方向付近へのレーザ光の照射密度を高めることができる。したがって、高い分解能が要求される方向にC方向を併せることにより、レーザ光の照射回数を増加させることなく、要求される分解能を実現できる。ところで、要求される分解能を満たす最小限のレーザ光の照射密度は、車速やターゲットとする領域と車両との距離等、車両の状態に依存する傾向がある。そこで、上記構成では、車両の状態に応じてC方向およびD方向の角度差を可変とすることにより、レーザ光の照射回数を極力増加させることなく要求される分解能を満たすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態にかかる車載システムの構成を示す図。
【
図2】(a)および(b)は、垂直走査処理および水平走査処理を例示する図。
【
図3】同実施形態にかかるLIDARECUが実行する処理の手順を示す流れ図。
【
図4】(a)および(b)は、同実施形態にかかるサーチ面の設定手法を例示する図。
【
図5】同実施形態にかかる照射パターンを例示する図。
【
図6】同実施形態にかかる照射パターンを実現する照射角を例示する図。
【
図7】同実施形態にかかる照射パターンを例示する図。
【
図8】同実施形態にかかる照射パターンを実現する照射角を例示する図。
【
図9】(a)および(b)は、LIDARECUおよびADASECUが実行する処理の手順を示す流れ図。
【
図10】LIDARECUが実行する処理の一部の詳細な手順を示す流れ図。
【
図11】第2の実施形態にかかるLIDARECUが実行する処理の手順を示す流れ図。
【
図12】(a)および(b)は、同実施形態にかかるサンプリングタイミングの設定処理を例示するタイムチャート。
【
図13】第3の実施形態にかかるLIDARECUが実行する処理の手順を示す流れ図。
【
図14】第4の実施形態にかかるLIDARECUが実行する処理の手順を示す流れ図。
【
図15】同実施形態にかかる照射パターンを例示する図。
【
図16】同実施形態にかかる照射パターンを実現する照射角を例示する図。
【
図17】第5の実施形態にかかるLIDARECUが実行する処理の手順を示す流れ図。
【
図18】同実施形態にかかる照射パターンを例示する図。
【
図19】同実施形態にかかる照射パターンを実現する照射角を例示する図。
【
図20】第6の実施形態にかかる照射パターンを例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1の実施形態>
以下、LIDAR装置にかかる第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1に示す光センサ10は、たとえば近赤外線等のレーザ光を照射する。また、光センサ10は、レーザ光の反射光を受光することに基づき、レーザ光を反射した物体と車両との距離を示す変数である距離変数と、レーザ光を反射した物体との相対速度を示す変数である速度変数と、レーザ光の照射方向を示す変数である方向変数と、反射した物体の反射強度を示す変数である強度変数とを示す測距点データを生成する。測距点データに、速度変数が含まれているのは、本実施形態にかかる光センサ10が、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式にて測距点データを生成することを想定しているためである。
【0009】
詳しくは、本実施形態にかかる光センサ10は、複数の発光素子を備えており、それら複数の発光素子から照射される光の位相を調整することによって、レーザ光の照射方向を調整するフェーズドアレイ方式のセンサである。
【0010】
図2に示すように、本実施形態にかかる光センサ10は、車両VCの前端部に設けられている。そして、光センサ10は、複数の発光素子から照射される光の位相を調整することによって、水平走査処理および垂直走査処理を実行する。垂直走査処理は、
図2(a)に示すように、車両VCの前後方向であるx方向および車両の横方向であるy方向に直交する方向であるz方向とレーザ光の照射方向とのなす角度を走査する処理である。ここで、
図2の正のz方向は、垂直上方向と言い換えることができることから、垂直走査処理は、垂直上方向とレーザ光の照射方向とのなす角度を走査する処理である。水平走査処理は、
図2(b)に示すように、y方向とレーザ光の照射方向とのなす角度を操作する処理である。
図2の正のy方向は、車両VCの左方向であることから、水平走査処理は、車両VCの左方向または右方向とのなす角度を走査する処理である。なお、以下では、垂直走査処理を、レーザ光の走査方向を垂直方向とする処理であると称し、水平走査処理を、レーザ光の走査方向を水平方向とする処理であると称する。
【0011】
図2(a)には、光センサ10によって垂直方向に走査されるレーザ光の光軸OP(1j)~OP(8j)を例示している。本明細書において、光軸OPとは、レーザ光が同時に到達する領域の図心によって描かれる線とする。換言すれば、光軸OPは、レーザ光が進む平均的な方向のこととする。すなわち、レーザ光は、光センサ10から離れるにつれて広がるものであるが、その平均的な方向と垂直上方向とのなす角度が垂直走査処理によって走査される。
図2(a)には、垂直上方向と光軸OPとのなす角度が8個の異なる値となるように照射方向が走査される例を示している。
【0012】
図2(b)には、光センサ10によって、水平方向に走査されるレーザ光の光軸OP(i1),OP(i2),…を例示している。なお、「光軸OP(ij)」の表記に用いた変数iは、垂直上方向とのなす角度が互いに異なる光軸OPを区別する変数であり、変数jは、右方向または左方向とのなす角度が互いに異なる光軸OPを区別する変数である。
【0013】
光センサ10は、水平走査処理および垂直走査処理によって、水平方向および垂直方向の所定の範囲内にレーザ光を周期的に照射する。この周期が1フレームである。光センサ10は、1フレーム毎に、測距点データを生成して出力する。以下では、1フレーム分の測距点データを測距点群データと称する。
【0014】
図1に戻り、LIDARECU20は、光センサ10によるレーザの照射パターンを制御する処理を実行する。また、LIDARECU20は、光センサ10によって生成された測距点データを取り込み、車両の周囲の物体を認知する処理を実行する。LIDARECU20は、CPU22、ROM24および周辺回路26を備えており、それらが通信線28によって通信可能とされているものである。ここで、周辺回路26は、内部の動作を規定するクロック信号を生成する回路や、電源回路、リセット回路等を含む。LIDARECU20は、ROM24に記憶されたプログラムをCPU22が実行することにより、照射パターンを制御する処理や物体を認知する処理を実行する。
【0015】
LIDARECU20は、車両VC内のローカルネットワーク30を介して、車速センサ40によって検出される車速SPDや、ウィンカー42の状態信号Swin、操舵角センサ44によって検出される操舵角θsを取り込む。また、LIDARECU20は、ローカルネットワーク30を介して、地図データ46と、全地球測位システム(GPS48)からの位置データDgpsとを取り込む。LIDARECU20は、ADASECU50と通信可能とされている。
【0016】
ADASECU50は、ユーザによる車両VCの運転を支援する処理を実行する。本実施形態では、運転支援として、前方車両との距離が所定値以上となることを優先しつつ、目標車速となるように車両VCの走行を制御するいわゆるアダプティブクルーズコントロール等、自動車専用道路における運転支援を例示する。特に、本実施形態にかかる運転支援は、自動車専用道路において障害物を検知する場合に、ユーザにその旨を報知する処理を含む。なお、ADASECU50は、CPU52、ROM54および周辺回路56を備えており、それらが通信線58を介して通信可能とされている。
【0017】
図3に、障害物のうち特に、路面からの高さである垂直方向の距離が小さい低背物の検知のための処理の手順を示す。ここでの低背物としては、たとえば落下物等、自ら動作することのない物体を想定している。
図3に示す処理は、ROM24に記憶されたプログラムをCPU22がたとえば所定周期で繰り返し実行することにより、実現される。なお、以下では、先頭に「S」が付与された数字によって各処理のステップ番号を表現する。
【0018】
図3に示す一連の処理において、CPU22は、まず、車両VCの進行方向に障害物や先行車が認知されているか否かを判定する(S10)。そして、CPU22は、障害物や先行車が認知されていないと判定する場合(S10:NO)、車両VCの進行方向における低背物を早期に検知するための処理を実行する。すなわち、CPU22は、まず、車速SPDを取得する(S12)。そして、CPU22は、車両VCに対する低背物の検知対象とする距離であるサーチ距離Lを設定する(S14)。CPU22は、車速SPDが高い場合に低い場合よりもサーチ距離Lを大きい値に設定する。これは、低背物を検知してから低背物が位置する位置に車両VCが到達するまでの時間が、車速SPDが高い場合に低い場合よりも短くなることを抑制するための設定である。本実施形態において、CPU22は、サーチ距離Lを車速SPDに比例して連続的に大きくする。
【0019】
次にCPU22は、位置データDgpsや、地図データ46が保持する情報のうち位置データDgpsが示す位置に関する情報、さらには、操舵角θs、およびウィンカーの状態信号Swinを取得する(S16)。そして、CPU52は、地図データ46が保持する情報のうち位置データDgpsが示す位置に関する情報や、光センサ10による測距点データに基づく車線の認知結果等に基づき、走行レーンを判定する(S18)。CPU22は、たとえば地図データ46によって車両VCが片側2車線の道路を走行していることが認知される場合、測距点データに基づき、2車線のうちの右側の車線を走行しているのか左側の車線を走行しているのかを判定する。
【0020】
次にCPU22は、車両VCからサーチ距離Lだけ進行方向前方において低背物を検知するためのレーザ光の照射を行う領域であるサーチ面を設定する(S20)。CPU22は、車両VCが走行することで到達する領域を含むようにサーチ面を設定する。換言すれば、サーチ面は、車両VCの予想される走行軌跡と交わるように設定される。
【0021】
詳しくは、CPU22は、操舵角θsやウィンカーの状態信号Swin等の車両VCの運転状態を示す変数の値を参照してサーチ面を設定する。
たとえば、車両VCが直進走行している場合、CPU22は、
図4(a)に例示するように、水平方向において、サーチ面Ssの水平方向の両端を、車両VCが走行している車線の両端に設定する。これに対し、操舵角θsが右旋回側の角度であったり、ウィンカーの状態信号Swinが右折時の状態であったりするなど、車両VCが右側の車線に車線変更をすることが予測される場合、CPU22は、
図4(b)に示すように、サーチ面Ssの水平方向の両端を、車両VCが走行している車線とその右隣の車線との両端に設定する。
【0022】
なお、CPU22は、サーチ面Ssを、路面に垂直な面とする。すなわち、CPU22は、地図データ46が保持する情報のうち位置データDgpsが示す位置に関する情報に基づき、車両VCが走行している路面の勾配情報を取得し、勾配情報に応じてサーチ面Ssを路面に垂直な面に設定する。
【0023】
図3に戻り、CPU22は、第1測距レンジのレーザ光の照射パターンを設定する(S22)。第1測距レンジの照射パターンは、低背物を検知するために、垂直方向の分解能を所定以上とする要求を満たすパターンである。次に、CPU22は、第2測距レンジのレーザ光の照射パターンを設定する(S24)。第2測距レンジの照射パターンは、第1測距レンジの照射パターンと比較して垂直方向の分解能が低いパターンである。第2測距レンジの照射パターンは、第1測距レンジの照射パターンよりも遠方の検知限界に設定されるパターンを含む。
【0024】
以下、これについて
図5~
図7に基づき説明する。
図5において、光軸OP(2j),OP(3j),OP(4j),OP(5j)は、第1測距レンジの照射パターンに従った光軸であり、光軸OP(1j),OP(6j),OP(7j),OP(8j)は、第2測距レンジの照射パターンに従った光軸である。
【0025】
図5に示すように、第1測距レンジの照射パターンでは、第2測距レンジの照射パターンと比較して高密度でレーザ光を照射するパターンとなっている。ここで、レーザ光の密度とは、単位角度当たりの光軸OPの数のこととする。ただし、ここでの単位角度は、垂直方向における角度とする。また、本実施形態では、水平方向における単位角度当たりの光軸OPの数の第1測距レンジの測距パターンにおける数を第2測距レンジの測距パターンにおける数以上としている。したがって、レーザ光の密度を、単位立体角当たりの光軸OPの数と定義しても、本実施形態において、第1測距レンジの照射パターンでは、第2測距レンジの照射パターンと比較して高密度でレーザ光を照射するパターンとなっている。
【0026】
これは、低解像度なLIDARにおいて限られたリソースを有効活用するための設定である。すなわち、本実施形態では、垂直上方向とのなす角度が互いに異なる光軸OPの数が1桁であり、比較的低解像度なLIDARを想定している。そのため、垂直上方向とのなす角度が互いに異なる光軸OPのうちの互いに隣接する光軸OP同士の垂直方向の角度差をすべて同一とする場合には、低背物を迅速にとらえるうえで不十分となるおそれがある。
【0027】
図5には、サーチ面Ssのうち路面70の垂直上方向であって且つ路面70との距離が規定値Lh以下の領域に4本の光軸OP(2j),OP(3j),OP(4j),OP(5j)のそれぞれに沿って進むレーザ光が到達する例を示した。ここで、規定値Lhを、本実施形態では、光センサ10によるレーザ光の照射位置と路面70との垂直方向における距離以下とする。これにより、低背物が存在する領域に集中的にレーザ光を照射することができる。
【0028】
さらに、本実施形態では、第1測距レンジの照射パターンにおいては、光軸OPに沿って進むレーザ光のサーチ面Ssへの到達位置A,B,C,Dのうちの互いに隣接するもの同士の距離が規定量Δ以下とされている。ここで、規定量Δは、20cm以下であることが望ましく、10cm以下であることがより望ましい。詳しくは、本実施形態では、垂直方向における到達位置Aと路面70との距離x、垂直方向における到達位置Aと到達位置Bとの距離y、垂直方向における到達位置Bと到達位置Cとの距離z、垂直方向における到達位置Cと到達位置Dとの距離wを規定量Δとする。
【0029】
これは、垂直方向に隣接する光軸OP間の角度差を調整することによって実現されるものである。
すなわち、たとえば、互いに隣接する光軸OP(2j)および光軸OP(3j)の角度差と、光軸OP(3j)およびOP(4j)の角度差とを仮に同一とする場合、上記距離y,zは互いに異なったものとなる。詳しくは、距離yの方が距離zよりも大きくなる。したがって、隣接する光軸OP同士の角度差を同一とする場合、サーチ面Ssにおいて隣接する到達位置間の距離を規定量Δ以下とする分解能の制約を守るためには、レーザ光の垂直方向の互いに異なる方向への照射回数を増加させる必要がある。
【0030】
これに対し、本実施形態では、
図6に示すように、垂直上方向との角度差が大きくなるほど、第1測距レンジにおける隣接する光軸OP同士の角度差を小さくした。すなわち、垂直方向における光軸OP(2j)および光軸OP(3j)間の角度差α、垂直方向における光軸OP(3j)および光軸OP(4j)間の角度差β、ならびに垂直方向における光軸OP(4j)および光軸OP(5j)間の角度差γに「α<β<γ」の関係を設定した。これにより、第1測距レンジにおける垂直方向の互いに異なる方向へのレーザ光の照射回数を増加させることなく、分解能の制約を満たすことができる。
【0031】
なお、第2測距レンジの照射パターンに従った光軸OPのうちの隣接するもの同士の垂直方向における角度差は、いずれも同じ角度差εとされており、これは、第1測距レンジの照射パターンに従った光軸OPのうちの隣接するもの同士の垂直方向における角度差のいずれよりも大きい。これにより、第1測距レンジの照射パターンを第2測距レンジの照射パターンと比較して高密度な照射パターンとしている。
【0032】
ところで、
図6に例示した、垂直上方向との角度差が大きくなるほど第1測距レンジにおける隣接する光軸OP同士の角度差を小さくする設定は、路面70が平坦であったためであり、あらゆる路面70に対して一般的に成り立つ設定ではない。
【0033】
図7に、車両VCの進行方向前方で路面70が上り坂となっている場合を例示する。
図7に示す例では、垂直上方向との角度差が最も大きくなる光軸OP(2j)および隣接する光軸OP(3j)の垂直方向における角度差αが、光軸OP(3j)および光軸OP(4j)の垂直方向における角度差βよりも大きい。さらに、光軸OP(3j)および光軸OP(4j)の垂直方向における角度差βが、光軸OP(4j)および光軸OP(5j)の垂直方向における角度差γよりも大きい。これは、路面70に垂直なサーチ面Ssの法線方向であって車両VCの進む側の方向を正とする方向Dnとの垂直方向においてなす角度が、光軸OP(2j),OP(3j),OP(4j),OP(5j)の順に大きくなることに起因している。すなわち、垂直方向において上記方向Dnとのなす角度が小さいほど、光軸OPがサーチ面Ssに到達するまでの距離が小さい。そして小さい半径によって一定の長さの弧を描くうえで必要な回転角度は、大きい半径によって一定の長さの弧を描くうえで必要な回転角度よりも大きくなる。そのため、第1測距レンジにおいて、光軸OP(2j)および光軸OP(3j)間の垂直方向における角度差αが最大となる。
【0034】
ちなみに、
図5においては、サーチ面Ssの法線方向であって車両VCの進む側の方向を正とする方向との垂直方向においてなす角度が最大となる第1測距レンジにおける光軸OPは、光軸OP(2j)となっている。なお、
図7においては、光軸OP(2j)および光軸OP(3j)間の垂直方向における角度差αは、第2測距レンジの照射パターンに従った光軸OPのうちの隣接するもの同士の垂直方向における角度差εよりも小さい。
【0035】
さらに、CPU22は、第1測距レンジの照射パターンにおいて、互いに隣接する光軸OP間の垂直方向における角度差を、車速SPDが低い場合に高い場合よりも大きくする。これは、車速SPDが低い場合に高い場合よりもサーチ距離Lが小さい値に設定されることに鑑みた設定である。
【0036】
図8に、サーチ距離Lが「L1」の場合の互いに隣接する光軸OP間の垂直方向における角度差θ1よりも、サーチ距離Lが「L1+ΔL」の場合の互いに隣接する光軸OP間の垂直方向における角度差θ2の方が小さくなっている例を示す。この関係は、「L1」が
図8の距離xと比較して十分に大きい場合には一般に成り立つ。すなわち、サーチ距離Lが大きい場合には小さい場合よりもサーチ面Ssの法線方向とのなす角度が小さくなるようにレーザ光の照射方向を変更することによって角度差が大きくなる効果よりも、サーチ距離Lが長くなることに起因して角度差が大きくなる効果の方が大きい。これは、
図8において、tanθ=x/L1、tan(θ+θ1)=(x+Δx)/L1として、「x」および「Δx」を固定値とすると、「L1」が「x」よりも十分大きい場合、θ1のL1による微分係数が負となるからである。なお、この結論は、平坦路においてのみ成立するものではなく、光センサ10からサーチ面Ssに下した垂線の長さを「L1」とする場合、サーチ距離Lの増加によって「L1」が長くなる限り、同一の結論となる。
【0037】
なお、サーチ距離Lは、車速SPDに応じてたとえば50~200mに設定することが望ましい。また、本実施形態において、第2測距レンジによる照射パターンでは、車速SPDに応じて角度差を可変としなくてよい。
【0038】
図9に、第1測距レンジおよび第2測距レンジの照射パターンによって照射されたレーザ光の反射光を利用する処理の手順を示す。
図9(a)に示す処理は、ROM24に記憶されたプログラムをCPU22がたとえば所定周期で繰り返し実行することにより実現される。また、
図9(b)に示す処理は、ROM54に記憶されたプログラムをCPU52がたとえば所定周期で繰り返し実行することにより実現される。
【0039】
図9(a)に示すように、CPU22は、まず、光センサ10によって生成された測距点群データを取得する(S30)。そして、CPU22は、測距点群データが示すレーザ光を反射した物体の位置同士の距離が所定値以下となる測距点同士をグループ化するクラスタリング処理を実行する(S32)。なお、本実施形態では、他の測距点データが示す物体の位置との距離が所定値以下となるものが存在しない測距点データについては、いずれのグループにも属さないものとして排除する。
【0040】
次にCPU22は、クラスタリング処理の結果に基づき、低背物があるか否かを判定する(S34)。ここで、CPU22は、クラスタリング処理によってグループ化された測距点データの中に、第1測距レンジの照射パターンによるレーザ光の反射光に基づく測距点データが2点以上含まれるグループがあることに基づき、低背物があると判定する。
【0041】
CPU22は、低背物があると判定する場合(S34:YES)、フラグFが「1」であるか否かを判定する(S35)。フラグFは、後述のトラッキングモードである場合に「1」となり、そうではない場合に「0」となる。CPU22は、フラグFが「0」であると判定する場合(S35:NO)、低背物を監視すべく、低背物付近におけるレーザ光の照射密度を上昇させる低背物のトラッキングモードに移行し、フラグFに「1」を代入する(S36)。これにより、
図3のS10の処理において肯定判定されることとなる。
【0042】
一方、CPU22は、フラグFが「1」であると判定する場合(S35:YES)、トラッキングモードにおいて低背物を所定回数検知したか否かを判定する(S37)。そしてCPU22は、未だ所定回数検知されていないと判定する場合(S37:NO)には、S36の処理に移行する。
【0043】
図10に、S36の処理の詳細な手順を示す。なお、
図10において、
図3に示した処理に対応する処理については、便宜上同一のステップ番号を付与している。
図10に示す一連の処理において、CPU22は、S32の処理によって検知した低背物と車両VCとの距離を、サーチ距離Lに代入することによってサーチ距離Lを設定する(S14a)。車両VCが走行するにつれて車両VCと低背物との距離が小さくなることから、CPU22は、車両VCが前進する距離が長くなるのに伴ってサーチ距離Lを小さい値へと変えていく。次にCPU22は、上記サーチ面Ssを設定する(S20a)。そして、CPU22は、S22,S24の処理を実行する。なお、S24の処理が完了する場合、
図9のS36の処理を完了する。
【0044】
図9に戻り、CPU22は、所定回数検知したと判定する場合(S37:YES)、ローカルネットワーク30を介して、ADASECU50に低背物が存在する旨、通知する(S38)。なお、CPU22は、S38の処理を完了する場合や、S34の処理によって否定判定する場合には、
図9(a)に示す一連の処理を一旦終了する。ちなみに、トラッキングモードにおいて低背物を検知できなくなる場合、CPU22は、トラッキングモードを終了し、低背物の検知履歴を消去すればよい。
【0045】
これに対し、
図9(b)に示すように、ADASECU50のCPU52は、低背物がある旨の通知があるか否かを判定する(S40)。そしてCPU52は、通知があると判定する場合(S40:YES)、
図1に示すスピーカ60を操作することによって、ユーザに低背物がある旨を報知する報知処理を実行する(S42)。なお、CPU52は、S42の処理を完了する場合や、S40の処理において否定判定する場合には、
図9(b)に示す一連の処理を一旦終了する。
【0046】
ここで、本実施形態の作用および効果について説明する。
CPU22は、車両VCの前方に障害物や先行車を認知していない場合、車両VCの将来の走行軌跡と低背物とがぶつかる場合にその低背物を迅速に検知すべく、所定距離だけ進行方向前方において路面70との距離が所定値Lh以下の領域に照射するレーザ光の密度を高める。これにより、限られたリソースを有効に活用して低背物を迅速に検知することができる。
【0047】
以上説明した本実施形態によれば、さらに以下に記載する作用および効果が得られる。
(1)CPU22は、低背物等の存在が検知されていない場合、車速SPDが高い場合に低い場合よりもサーチ面Ssと車両VCとの距離であるサーチ距離Lを大きい値に設定した。これにより、車両VCが低背物を検知してから低背物の存在する位置に到達するまでに十分な時間を確保できる。
【0048】
(2)CPU22は、低背物等の存在が検知されていない場合、第1測距レンジにおいて、車速SPDが高い場合に低い場合よりも隣接する光軸OP間の角度差を小さくした。これにより、路面70から規定値Lh以内の領域に照射されるレーザ光の照射密度が車速SPDの大小によって変動することを抑制できる。
【0049】
(3)CPU22は、低背物等の存在が検知された後のトラッキングモードにおいて、車両VCが前進する距離が長くなるのに伴ってサーチ距離Lを小さい値へと変更した。これにより、低背物の存在が検知されている位置と車両VCとの距離をサーチ距離Lとすることができ、ひいては、低背物が検知されている領域におけるレーザ光の照射密度を狙いとする密度に制御できる。
【0050】
(4)CPU22は、第1測距レンジにおける隣接する光軸OP同士の垂直方向における角度差を、サーチ面Ssの法線方向とのなす角度が大きい場合に小さい場合よりも小さくした。これにより、第1測距レンジに割り振る光軸OPの数を多くすることなく、隣接する光軸OPがサーチ面Ssに到達する際の到達位置同士の距離を、規定量Δ以下とすることができる。
【0051】
(5)CPU22は、第1測距レンジにおける隣接する光軸OPがサーチ面Ssに到達する際の到達位置同士の距離を規定量Δに統一した。これにより、路面70付近の物体をより高精度の捉えることが可能となる。
【0052】
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0053】
図11に、本実施形態にかかるLIDARECU20が実行する処理の手順を示す。
図11に示す処理は、ROM24に記憶されたプログラムをCPU22がたとえば所定周期で繰り返し実行することにより実現される。なお、
図11に示す処理のうち
図3に示した処理に対応する処理については、便宜上、同一のステップ番号を付与してその説明を省略する。
【0054】
図11に示す一連の処理において、CPU22は、S14の処理が完了する場合、FMCWにおけるレーザ光の周波数を変更する周期であるサンプリング周期Tsと、第1測距レンジにおける測距点数Nrとを設定する(S50)。ここで、測距点数Nrとは、レーザ光の照射方向の種類の数のこととする。すなわち、垂直方向および水平方向の2つの走査方向のうちの少なくとも1つの走査方向が互いに異なる光軸OPの数のこととする。
【0055】
詳しくは、CPU22は、
図12(b)に示す車速SPDが小さい場合には、
図12(a)に示す車速SPDが大きい場合よりも、サンプリング周期Tsを小さくする。すなわち、サーチ距離Lが小さい場合には大きい場合と比較して、第1測距レンジにおけるレーザ光の1測距点当たりの照射エネルギを小さくしてもよいことから、サンプリング周期Tsを短くすることにより1測距点当たりのレーザ光の照射エネルギを小さくする。
【0056】
そして、CPU22は、
図11に示すように、車速SPDが低い場合に高い場合よりも測距点数Nrを大きくする。これは、サンプリング周期Tsを小さくしたために、1フレーム内に収まるサンプリング周期Tsの数が増加することを活かす設定である。
【0057】
CPU22は、S50の処理が完了する場合、S16の処理に移行する。
このように、本実施形態によれば、サーチ距離Lが小さい場合には大きい場合と比較して、サンプリング周期Tsを小さくすることにより、1測距点当たりのレーザ光の照射エネルギ量が必要な量に対して過剰となることを抑制できる。そして、サンプリング周期Tsを小さくする場合に、測距点数Nrを増加させることにより、第1測距レンジにおけるレーザ光の照射密度を向上させることができる。
【0058】
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、第2の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0059】
図13に、本実施形態にかかるLIDARECU20が実行する処理の手順を示す。
図13に示す処理は、ROM24に記憶されたプログラムをCPU22がたとえば所定周期で繰り返し実行することにより実現される。なお、
図13に示す処理のうち
図11に示した処理に対応する処理については、便宜上、同一のステップ番号を付与してその説明を省略する。
【0060】
図11に示す一連の処理において、CPU22は、S14の処理が完了する場合、サンプリング周期Tsと、単位時間当たりのフレーム数であるフレームレートRfとを設定する。(S52)。ここで、CPU22は、車速SPDが低い場合に高い場合よりもサンプリング周期Tsを小さくする。また、CPU22は、車速SPDが低い場合に高い場合よりもフレームレートRfを大きい値に設定する。この処理は、サンプリング周期Tsを小さくしたために、1フレームの周期を短くできることに鑑みた設定である。
【0061】
CPU22は、S52の処理が完了する場合、S16の処理に移行する。
このように、本実施形態では、サンプリング周期Tsを小さくする場合に、フレームレートRfを大きくすることにより、第1測距レンジおよび第2測距レンジにおけるレーザ光の照射密度を向上させることができる。
【0062】
<第4の実施形態>
以下、第4の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0063】
本実施形態において、LIDARECU20は、路面標示を検知することに特化したレーザ光の走査を実行する。
図14に、本実施形態にかかるLIDARECU20が実行する処理の手順を示す。
図14に示す処理は、ROM24に記憶されたプログラムをCPU22がたとえば所定周期で繰り返し実行することにより実現される。なお、
図14において、
図3に示した処理に対応する処理については、便宜上同一のステップ番号を付与している。
【0064】
図14に示す一連の処理において、CPU22は、まず路面標示検知モードであるか否かを判定する(S60)。CPU22は、たとえばADASECU50から路面標示検知モードの実行指令が出されている場合に、路面標示検知モードであると判定すればよい。本実施形態において、ADASECU50は、路面標示が未だ検知されていない所定の条件下、路面の表示を検知すべく、LIDARECU20に路面標示検知モードに移行するように指示することとする。CPU22は、路面標示検知モードであると判定する場合、S12,S16,S18の処理を実行した後、路面検知モードに移行した後に路面標示を検知したか否かを判定する(S62)。
【0065】
CPU22は、未だ路面標示を検知していないと判定する場合(S62:NO)、路面のうち、路面標示を検知するための領域であるサーチ領域Asを設定する(S64)。CPU22は、サーチ領域Asの図心と車両VCとの距離Lsを、車速SPDが大きい場合に小さい場合よりも大きくする。これは、車速SPDにかかわらず、車両VCが路面標示を検知してから路面標示の存在する位置に到達するまでの時間を確保するための設定である。
【0066】
一方、CPU22は、路面標示を検知したと判定する場合(S62:YES)、一度検知した路面標示の確度を上げるために、検知した路面標示を追跡するトラッキングモードに移行する(S66)。すなわち、CPU22は、サーチ領域Asを路面標示が検知された領域に設定する。これは、サーチ領域Asの図心と車両VCとの距離Lsを車両VCが前進する距離が長くなるにつれて小さくすることに相当する。この処理は、CPU22が、車速SPDと時間との関数として距離Lsを設定することによって実現される。
【0067】
CPU22は、S64,S66の処理が完了する場合、第1測距レンジのレーザ光の照射パターンを設定する(S22a)。本実施形態にかかる第1測距レンジの照射パターンは、路面標示を検知するために、サーチ領域Asにおける分解能を所定以上とする要求を満たすパターンである。次に、CPU22は、第2測距レンジのレーザ光の照射パターンを設定する(S24a)。第2測距レンジの照射パターンは、第1測距レンジの照射パターンと比較してレーザ光の照射密度が低い照射パターンである。なお、第2測距レンジの照射パターンは、サーチ領域よりも遠方の検知限界に設定されるパターンを含む。
【0068】
以下、これについて
図15,16を用いて説明する。
図15において、光軸OP(2j),OP(3j),OP(4j),OP(5j)は、第1測距レンジの照射パターンに従った光軸であり、光軸OP(1j),OP(6j),OP(7j),OP(8j)は、第2測距レンジの照射パターンに従った光軸である。
【0069】
図15に示すように、第1測距レンジの照射パターンでは、第2測距レンジの照射パターンと比較して垂直方向におけるレーザ光の照射密度が高いパターンとなっている。なお、第1測距レンジの照射パターンによる水平方向におけるレーザ光の照射密度は、第2測距レンジの照射パターンによる水平方向におけるレーザ光の密度以上となっている。特に、本実施形態において第1測距レンジの照射パターンは、車両VCの進行方向における路面へのレーザ光の到達位置間の間隔が均等となるパターンとなっている。
図15には、光軸OP(2j),OP(3j),OP(4j),OP(5j)のそれぞれに沿って進むレーザ光の路面への到達位置A,B,C,Dについて、到達位置Aおよび到達位置B間の距離x、到達位置Bおよび到達位置C間の距離y、到達位置Cおよび到達位置D間の距離zが互いに等しい規定量ΔHとなっている。規定量ΔHは、10m以下であることが望ましく、5m以下であることがより望ましい。
【0070】
これは、垂直方向において隣接する光軸OP間の角度差を調整することによって実現されるものである。
すなわち、
図16に示すように、垂直上方向との角度差が大きくなるほど、第1測距レンジにおける隣接する光軸OP同士の角度差を小さくした。すなわち、第1測距レンジにおける互いに隣接する光軸OP同士の角度差α,β,γに「α>β>γ」の関係を設定した。ここで、角度差αは、光軸OP(2j)および光軸OP(3j)の垂直方向における角度差であり、角度差βは、光軸OP(3j)および光軸OP(4j)の垂直方向における角度差であり、角度差γは、光軸OP(4j)および光軸OP(5j)の垂直方向における角度差である。これら第1測距レンジの角度差α,β,γは、第2測距レンジにおいて互いに隣接する光軸OP同士の角度差よりも小さい。
図16には、光軸OP(6j)および光軸OP(7j)の角度差と、光軸OP(7j)および光軸OP(8j)の角度差とを、ともに角度差εとし、角度差εが角度差α,β,γよりも大きいことを示した。
【0071】
図14に戻り、CPU22は、S24aの処理が完了する場合、S30,S32の処理を実行した後、S32の処理の結果を、ADASECU50に出力する(S68)。
なお、CPU22は、S68の処理を完了する場合や、S60の処理において否定判定する場合には、
図14に示す一連の処理を一旦終了する。
【0072】
このように、本実施形態では、第1測距レンジによる照射パターンによって路面上の所定の領域であるサーチ領域Asにおけるレーザ光の照射密度を高めることにより、路面標示を検知する際の分解能を高めることができる。
【0073】
<第5の実施形態>
以下、第5の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0074】
本実施形態において、LIDARECU20は、未だ先行車両や車両VCの走行を妨げる障害物を検知していない状態において、先行車両や障害物を迅速に検知するためにレーザ光を水平方向に走査する照射モードを有する。
【0075】
図17に、先行車両や障害物を迅速に検知するための本実施形態にかかる処理の手順を示す。
図17に示す処理は、ROM24に記憶されたプログラムをCPU22がたとえば所定周期で繰り返し実行することにより実現される。なお、
図17において、
図3に記載した処理に対応する処理については、便宜上同一のステップ番号を付与している。
【0076】
図17に示す一連の処理において、CPU22は、S12,S16,S18の処理を実行した後、S10の処理を実行する。そして、CPU22は、障害物や先行車両を未だ検知していないと判定する場合(S10:NO)、
図3と同様に、サーチ距離Lを車速SPDに応じて設定する(S14)。これに対しCPU22は、障害物や先行車両を検知したと判定する場合(S10:YES)、障害物や先行車両が検知されている時点と車両VCとの距離をサーチ距離Lに代入する(S14b)。S14bの処理が実行されるモードは、障害物や先行車両を追跡するトラッキングモードである。
【0077】
CPU22は、S14,S14bの処理を完了する場合には、サーチ面Ssを設定する(S20b)。本実施形態においてサーチ面Ssの水平方向の幅は、S20の処理による設定と同様である。またサーチ面Ssの垂直方向の長さについては、先行車両に想定される高さの最大値以上に設定される。
【0078】
次にCPU22は、第1測距レンジによるレーザ光の照射パターンを設定する(S22b)。また、CPU22は、第2測距レンジによるレーザ光の照射パターンを設定する(S24b)。ここで、第1測距レンジによるレーザ光の照射パターンは、先行車両や障害物を早期に検知することを狙って、車両VCの進行方向前方にレーザ光を高密度で照射するパターンである。これに対し、第2測距レンジによるレーザ光の照射パターンは、車両VCの前方のうち車両VCの将来の走行経路よりも側方にレーザ光を照射するパターンである。第2測距レンジによるレーザ光の照射パターンは、第1測距レンジによるレーザ光の照射パターンと比較して、レーザ光の照射密度が低い。
【0079】
図18に、本実施形態にかかる水平方向へのレーザ光の走査を例示する。
図18において、車両VCが走行する路面が平坦な場合、光軸OP(4,1),OP(4,2),OP(4,3),…は、路面に平行な面内に含まれる。すなわち、光軸OP(4,1),OP(4,2),OP(4,3),…に沿ったレーザ光は、路面に到達することを意図しておらず、車両VCの進行方向前方に照射することを意図している。
【0080】
図18において、光軸OP(4,p-4),OP(4,p-3),…,OP(4,p+3),OP(4,p+4)が第1測距レンジによる照射パターンである。第1測距レンジによるレーザ光の照射パターンは、車両VCの将来の走行軌跡周辺においてレーザ光を等間隔に照射することを狙っている。すなわち、サーチ距離Lだけ離間した位置に設定されるサーチ面Ssにおいて、等間隔にレーザ光を照射することを狙っている。
【0081】
図19に示すように、本実施形態において、第1測距レンジによるレーザ光の照射パターンにおいては、水平方向において互いに隣接する光軸OP同士の角度差を一律角度差αとしている。これは、光軸OP(4,p-4)~OP(4,p+4)とサーチ面Ssの法線方向とのなす角度が小さいことから、隣接する光軸OP同士の角度差を一律同じ値としても、満足のいく精度でレーザ光を等間隔にサーチ面Ssに到達させることができることに鑑みたものである。すなわち、光軸OP(4,p-4),OP(4,p-3),…,OP(4,p+3),OP(4,p+4)のそれぞれに沿って進むレーザ光のサーチ面Ssへの到達位置A,B,…,Iは、十分な精度で等間隔となっている。
【0082】
なお、第2測距レンジによるレーザ光の照射パターンにおいては、隣接する光軸OP同士の角度差を一律角度差βとしており、これは角度差αよりも大きい値となっている。
図17に戻り、CPU22は、S30,S32の処理を実行し、S32の処理の結果、所定期間において所定回数以上、障害物や先行車両を検知したか否かを判定する(S37b)。そしてCPU22は、検知したと判定する場合(S37b:YES)、ADASECU50に、障害物や先行車両を検知した旨通知する(S38)。
【0083】
なお、CPU22は、S38の処理を完了する場合や、S37bの処理において否定判定する場合には、
図17に示す一連の処理を一旦終了する。
なお、本実施形態については水平走査処理のみを説明したが、垂直走査処理については、第1の実施形態等と同様としてもよい。
【0084】
<第6の実施形態>
以下、第6の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0085】
本実施形態では、駐車場における車両VCの駐車時に、障害物等を検知するためにレーザ光を照射するモードを有する。
図20に、本実施形態にかかるレーザ光の照射パターンを例示する。
図20においては、車両VCの前方に3つの駐車スペースPA1,PA2,PA3があり、車両VCが駐車スペースPA1,PA2,PA3に向かって進んでいる例を示す。なお、
図20に示す例では、駐車スペースPA1,PA2,PA3の検知が完了し、各駐車スペースに障害物等がないか否かを最終的に監視する処理を実行している状況を想定している。なお、サーチ面Ssは、CPU22によって、駐車スペースPA1,PA2,PA3の端部を覆うようにして設定されている。
【0086】
図20において、光軸OP(i,3),OP(i,4),…,OP(i,14)が第1測距レンジによるレーザ光の照射パターンによるものである。第1測距レンジにおいて、サーチ面Ssに直交する方向とのなす角度が最も小さい光軸OP(i,9)とこれに隣接する光軸OP(i,8)との角度差aは、互いに隣接する光軸OP同士の角度差の中で最大となっている。すなわち、たとえば、角度差aは、第1測距レンジによるレーザ光の照射パターンにおいて、正のY方向とのなす角度が最も小さい光軸OP(i,3)とこれに隣接する光軸OP(i,4)との角度差fよりも大きい。これは、光軸OPに沿ったレーザ光がサーチ面Ssに到達する位置が、水平方向において等間隔となるようにするための設定である。すなわち、本実施形態の場合、光軸OP(i,9)と光軸OP(i,3)との角度差が大きいことなどから、隣接する光軸OP間の角度差を一定とする場合には、光軸OP(i,3),OP(i,4),…,OP(i,14)に沿って進むレーザ光がサーチ面Ssに到達する位置間の間隔にばらつきが大きくなりやすい。
【0087】
なお、車両VCの進行にかかわらずサーチ面Ssを固定する期間においては、上述のトラッキングモードとなる。すなわち、車両VCが前進するにつれて、角度差a,b,…を大きくしていくことによって、光軸OPに沿って進むレーザ光がサーチ面Ssに到達する位置の変動を抑制する。ただし、駐車スペースPA1,PA2,PA3の端部と車両VCとの距離が所定距離以下となる場合には、CPU22は、サーチ面Ssを徐々に駐車スペースの奥行方向にシフトさせる。その場合、CPU22は、サーチ面Ssと車両VCとの距離であるサーチ距離Lを、車速SPDが高い場合に低い場合よりも大きくする。
【0088】
<その他の実施形態>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0089】
「低減処理について」
・レーザ光の1測距点当たりの照射エネルギ量を小さくする低減処理を実行することにとって、1フレーム当たりのレーザ光の照射回数を増加させる密度増加処理や、単位時間当たりのフレーム数を増加させるフレーム増加処理を実行することは、必須ではない。たとえば、密度増加処理やフレーム増加処理を実行しない場合であっても、車速SPDが低い場合に注意すべき視野が近距離となることに鑑みて低減処理を実行することは、エネルギ消費率を低減するうえで有効である。
【0090】
「サーチ面について」
・上記実施形態では、サーチ面Ssを路面に垂直な面としたが、路面の勾配が過度に大きくない場合などには、鉛直方向に沿った面をサーチ面としてもよい。
【0091】
・上記第1~第3の実施形態では、先行車および障害物が検知されていない場合、サーチ距離Lを車速SPDに比例して連続的に変更したが、これに限らない。たとえば、サーチ距離Lを、50m,100m,150m,200mというように複数の値に設定可能とし、車速SPDに応じてそれら何れかの値に段階的に変更してもよい。もっとも、車速SPDに応じてサーチ距離Lを変更する処理は、必須ではない。
【0092】
・
図4には、車線変更する場合に限って、走行車線以外の車線にまでサーチ面Ssを拡大する例を示したが、これに限らず、同一進行方向の車線全てに常時サーチ面Ssを設けてもよい。
【0093】
「サーチ領域について」
・上記第4の実施形態において、路面の曲率がゼロよりも大きい場合、曲率に沿ってサーチ領域Asを設定すればよい。もっとも、これに限らず、路面の曲率を直線にて近似してサーチ領域Asを設定してもよい。なお、サーチ領域Asを路面上に設定する代わりに、路面からわずかに高い位置における領域としてもよい。
【0094】
・上記第4の実施形態では、路面標示が検知されていない場合、サーチ領域Asの図心と車両VCとの距離を、車速SPDに比例して連続的に変更したが、これに限らない。たとえば、同距離Lsを、50m,100m,150m,200mというように複数の値に設定可能とし、車速SPDに応じてそれら何れかの値に段階的に変更してもよい。もっとも、車速SPDに応じて距離Lsを変更する処理は、必須ではない。
【0095】
「トラッキングモードについて」
・上記第4の実施形態では、トラッキングモードとして、サーチ領域Asを固定する処理を例示したが、この際、光軸OPに沿って進むレーザ光が路面に到達する位置を固定することは必須ではない。たとえば、路面標示が検知された領域をサーチ領域Asとして、フレーム毎に、光軸OPに沿って進むレーザ光がサーチ領域Asに到達する位置を変化させてもよい。
【0096】
・トラッキングモードとしては、LIDARECU20が対象を検知することをトリガとして実行されるものに限らない。たとえば、ADASECU50によって、所定の領域のトラッキングモードの実行指令が出される場合にトラッキングモードを実行してもよい。
【0097】
・上記各実施形態においてトラッキングモードを実行することは必須ではない。
「路面情報取得処理について」
・路面情報としては、位置データDgpsおよび地図データ46によって構成されるものに限らない。たとえば、カメラの感知した画像データに基づく進行方向前方の路面状態や、加速度センサの検出値等に基づく走行中の路面の勾配情報を取得してもよい。
【0098】
「分解能調整処理について」
(a)走査方向が垂直方向の場合について
・上記第1~第4の実施形態では、分解能を高める領域におけるレーザ光の照射方向として、垂直上方向とのなす角度が互いに異なる4つの方向を例示したが、これに限らない。たとえば、垂直上方向とのなす角度が互いに異なる5つ以上の方向としてもよい。また、たとえば垂直上方向とのなす角度が互いに異なる3つの方向としてもよい。さらにたとえば垂直上方向とのなす角度が互いに異なる2つの方向としてもよい。
【0099】
・上記第1~第3の実施形態では、分解能を高める領域におけるレーザ光の照射方向のうち垂直上方向とのなす角度が最小となる方向に進むレーザ光のサーチ面Ssへの到達位置Dと路面70との距離である規定値Lhを、光センサ10のレーザ光の照射位置と路面70との距離以下としたが、これに限らない。たとえば、規定値Lhを、タイヤの外形以下としたり、またたとえば「50cm」以下等、「1m」以下の所定値以下としたりしてもよい。
【0100】
・上記第1~第3の実施形態では、分解能を高める領域において光軸の方向に進むレーザ光のサーチ面Ssへの到達位置A,B,C,Dについて、路面と到達位置Aとの距離、到達位置A,B間の距離、到達位置B,C間の距離、および到達位置C,D間の距離を同一としたが、これに限らない。互いに隣接する到達位置同士の距離は、要求される分解能を満たせばよい。そして限られたレーザ光のリソースによって分解能を効率的に満たすうえでは、垂直方向において互いに隣接する一対の光軸の複数の組同士で、一対の光軸間の角度差を互いに等間隔とする代わりに、上記実施形態において例示した要領で不均一とすることが有効である。
【0101】
もっとも、要求される分解能を満たすことができるのであれば、垂直上方向において互いに隣接する一対の光軸の複数の組同士で一対の光軸間の角度差を不均一とすること自体、必須ではない。その場合であっても、第1測距レンジにおけるレーザ光の照射密度を第2測距レンジにおけるレーザ光の照射密度よりも高くすることは低背物の検知等にとって有効である。
【0102】
・
図3においては、車両の走行を妨げる物体や先行車両が検知されていないことを条件に走行中の車線の前方の低背物の有無を監視するための分解能調整処理を実行したが、これに限らない。たとえば、走行中の車線に隣接する車線を走行する車両が自車両を追い越した直後、追い越した車両をトラッキングする処理と、走行中の車線の前方の低背物の有無を監視するための分解能調整処理とを、時分割で実行するなどしてもよい。
【0103】
・
図3においては、垂直下方向側、すなわち負のz方向側の所定の領域における分解能を高める処理として、自ら動作する能力を有しない低背物の有無を監視するための処理を例示したが、これに限らない。たとえば、子供の存在の検知等のための処理であってもよい。その場合、上記規定値Lhを、子供の身長程度としてもよい。
【0104】
・
図14の処理では、路面標示を検知するために、路面に等間隔にレーザを照射する例を示したが、これに限らない。たとえば低背物を検知するために路面にレーザ光を等間隔に照射してもよい。
【0105】
(b)走査方向が水平方向の場合について
・
図17の処理では、第1測距レンジによるレーザ光の照射パターンとして、第2測距レンジによるレーザ光の照射パターンと比較して、水平方向における光軸OP同士の角度差が小さいものの光軸OP同士の角度差を等間隔とする例を示したが、これに限らない。
【0106】
(c)そのほか
・たとえば第1~第4の実施形態において、第1測距レンジによるレーザ光の水平方向の照射パターンについては、第5の実施形態やその変更例の照射パターンを採用してもよい。
【0107】
「光センサについて」
・上記実施形態では、光センサ10として、FMCW方式にて測距を行うためのセンサを例示したが、これに限らない。たとえば、TOF(Time of Flight)方式によって測距を行うためのセンサであってもよい。
【0108】
・垂直方向の光軸の数としては、上記実施形態において例示した数である8個に限らない。たとえば、7個であってもよく、またたとえば9個であってもよい。もっとも、垂直方向における光軸の数が1桁であることも必須ではない。
【0109】
・上記実施形態では、フェーズドアレイによってレーザ光の照射方向を変更可能な装置を例示したが、これに限らない。たとえば、MEMSミラーを備え、MEMSミラーによってレーザ光の照射方向を変更可能な装置であってもよい。
【0110】
・フェーズドアレイによってレーザ光の照射方向を変更可能な装置としては、フェーズドアレイのみによってレーザ光の照射方向を変更する装置に限らない。たとえば、
図21に示すように、光センサ10に、フェーズドアレイによってレーザ光の照射方向を調整する装置であるフェーズドアレイ装置12から出力されたレーザ光の方向を変更するデバイス14を備える装置であってもよい。
図21に示す例では、デバイス14によってレーザ光の照射方向を変更しない場合のレーザ光の照射領域を、照射領域A2としている。そして、デバイス14によってレーザ光の照射方向を変更することによって、照射領域が、照射領域A1,A3に変更される。これにより、フェーズドアレイ単体では実現できない広い領域にレーザ光を照射することが可能となる。なお、デバイス14は、フォトニクス結晶や液晶によって構成すればよい。
【0111】
・デバイス14を用いる光センサとしては、
図21に示したものに限らない。たとえば、フェーズドアレイ装置12に代えて、発光素子とMEMSミラーとを備えた装置を用いてもよい。その場合であっても、デバイス14によって、視野を拡大できる。
【0112】
・上記実施形態では、垂直方向へのレーザ光の走査を単一の光センサ10によって実現する例を示したが、これに限らない。たとえば、光軸OP(2j),OP(4j)と光軸OP(3j),OP(5j)とで、レーザ光を照射する光センサを各別としてもよい。換言すれば、第1測距レンジの照射パターンにおいて互いに垂直方向とのなす角度が異なるレーザ光の照射方向を、複数の光センサによって実現してもよい。その場合であっても、互いに隣接する光軸間の角度差を等間隔とする代わりに、上記実施形態において例示した要領で不均一とすることが、限られたレーザ光のリソースによって分解能に対する要求を効率的に満たすうえで有効である。
【0113】
「LIDARECUについて」
・LIDARECUとしては、CPUとROMとを備えて、ソフトウェア処理を実行するものに限らない。たとえば、上記実施形態においてソフトウェア処理されたものの少なくとも一部を、ハードウェア処理する専用のハードウェア回路(たとえばASIC等)を備えてもよい。すなわち、LIDARECUは、以下の(a)~(c)のいずれかの構成であればよい。(a)上記処理の全てを、プログラムに従って実行する処理装置と、プログラムを記憶するROM等のプログラム格納装置とを備える。(b)上記処理の一部をプログラムに従って実行する処理装置およびプログラム格納装置と、残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備える。(c)上記処理の全てを実行する専用のハードウェア回路を備える。ここで、処理装置およびプログラム格納装置を備えたソフトウェア実行装置や、専用のハードウェア回路は複数であってもよい。
【0114】
「LIDAR装置について」
・LIDAR装置におけるLIDARECUと光センサ10との役割分担は、上記実施形態において例示したものに限らない。たとえば光センサ10において受光した信号をLIDARECU20が受け取り、これに基づきLIDARECU20によって測距点データを生成してもよい。
【0115】
・上記実施形態では、光センサ10とLIDARECU20とを互いに通信可能な別の装置としたが、これに限らず、一体としてもよい。
・LIDARECU20とADASECU50との役割分担としては、上記実施形態において例示したものに限らない。たとえば、低背物が存在する旨の判定処理をADASECU50が実行することにしてもよい。
【0116】
・LIDARECU20とADASECU50とを一体としてもよい。
「報知処理について」
・上記実施形態では、低背物がある旨を報知する報知処理として、スピーカ60を介して音声情報を出力する処理を例示したが、これに限らず、たとえばヘッドアップディスプレイ等の表示装置を操作して視覚情報を出力する処理としてもよい。
【0117】
「運転支援処理について」
・運転支援処理としては、低背物がある旨等を報知する報知処理に限らない。たとえば、ブレーキアクチュエータを操作対象とする減速処理であってもよい。もっとも、運転支援のための所定の電子機器としては、報知装置やブレーキアクチュエータに限らず、たとえば駆動系装置であってもよい。これは、たとえば車載原動機の出力を制限することで実現できる。
【0118】
「ADASECUについて」
・上記実施形態では、LIDARECU20による低背物の認知結果を、運転支援処理の入力とする最終的な認知結果としたが、これに限らない。たとえばカメラによる画像データ、ミリ波レーダ、およびソナー等に基づく認知結果と併せて運転支援処理の入力とする最終的な認知結果を生成してもよい。
【符号の説明】
【0119】
10…光センサ
12…フェーズドアレイ装置
14…デバイス
20…LIDARECU
28…通信線
30…ローカルネットワーク
50…ADASECU
58…通信線
60…スピーカ
70…路面