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  • 特許-車両制御装置および車両制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】車両制御装置および車両制御方法
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/40 20150101AFI20240709BHJP
   E05B 77/54 20140101ALI20240709BHJP
   E05F 15/689 20150101ALI20240709BHJP
   E05F 15/73 20150101ALI20240709BHJP
   G07C 5/00 20060101ALI20240709BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
E05F15/40
E05B77/54
E05F15/689
E05F15/73
G07C5/00 Z
G08G1/16 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020159423
(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公開番号】P2022052906
(43)【公開日】2022-04-05
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】江端 貞
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-183652(JP,A)
【文献】特開2020-126362(JP,A)
【文献】特開2017-155422(JP,A)
【文献】米国特許第10168706(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00-15/79
E05B 77/54
G07C 5/00
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周囲を撮像した画像および自車両の挙動を示す情報を少なくとも含む車両情報を取得する車両情報取得部と、
所定期間内に所定回数以上の自車両に対する妨害運転が検知された他車両を妨害車両として特定する妨害車両特定部と、
前記取得した車両情報に基づいて、自車両が停止し、かつ、前記妨害車両特定部が特定した妨害車両が自車両の周囲で停止した特定状態であるか否かを判定する特定状態判定部と、
前記特定状態であると判定した場合、自車両のドアウィンドウを閉じた状態で自車両のドアをロックする施錠制御部と、を備えることを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
自車両の周囲を撮像した画像および自車両の挙動を示す情報を少なくとも含む車両情報を取得する車両情報取得部と、
前記取得した車両情報に基づいて、自車両が停止し、自車両の通行を妨害する妨害車両が自車両の周囲で停止し、かつ、自車両の周囲で停止する妨害車両から乗員が降りた場合、または、自車両の周囲で停止する妨害車両の乗員が自車両に近づく場合に特定状態であると判定する特定状態判定部と、
前記特定状態であると判定した場合、自車両のドアウィンドウを閉じた状態で自車両のドアをロックする施錠制御部と、を備えることを特徴とする車両制御装置。
【請求項3】
前記施錠制御部は、前記特定状態ではないと判定した場合、通常の解除操作によるドアまたはドアウィンドウのロックの解除を有効化し、前記特定状態であると判定した場合、前記通常の解除操作によるドアまたはドアウィンドウのロックの解除を無効化することを特徴とする請求項1または2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
自車両の周囲を撮像した画像および自車両の挙動を示す情報を少なくとも含む車両情報を取得するステップと、
前記取得した車両情報に基づいて、所定期間内に所定回数以上の自車両に対する妨害運転が検知された他車両を妨害車両として特定するステップと、
前記取得した車両情報に基づいて、自車両が停止し、かつ、前記特定した妨害車両が自車両の周囲で停止した特定状態であるか否かを判定するステップと、
前記特定状態であると判定した場合、自車両のドアウィンドウを閉じた状態で自車両のドアをロックするステップと、を備えることを特徴とする車両制御方法。
【請求項5】
自車両の周囲を撮像した画像および自車両の挙動を示す情報を少なくとも含む車両情報を取得するステップと、
前記取得した車両情報に基づいて、自車両の通行を妨害する妨害車両を特定するステップと、
前記取得した車両情報に基づいて、自車両が停止し、前記特定した妨害車両が自車両の周囲で停止し、かつ、自車両の周囲で停止する妨害車両から乗員が降りた場合、または、自車両の周囲で停止する妨害車両の乗員が自車両に近づく場合に特定状態であると判定するステップと、
前記特定状態であると判定した場合、自車両のドアウィンドウを閉じた状態で自車両のドアをロックするステップと、を備えることを特徴とする車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置および車両制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、意図的に車間を詰めて走行したり、意図的に急ブレーキを踏んだりすることで他車両の走行を妨害し、危険を誘発させる煽り運転が社会問題として注目されている。また、他車両を強制的に停車させて他車両の乗員に危害を加える事件も発生しており、事件を未然に防ぐための対策が望まれる。例えば、煽り運転をする可能性の高い車両を検知し、検知した車両が自車両の前方に移動した場合、自車両のドアや窓を閉じることで自車両の乗員の安全を確保する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-126362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
煽り運転をする可能性の高い車両が自車両の前方に移動したことを条件にした場合、不必要にドアや窓が閉じられてしまい、利便性を損なうおそれがある。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、自車両の乗員の安全の確保と利便性の確保を両立させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の車両制御装置は、自車両の周囲を撮像した画像および自車両の挙動を示す情報を少なくとも含む車両情報を取得する車両情報取得部と、取得した車両情報に基づいて、自車両が停止し、かつ、自車両の通行を妨害する妨害車両が自車両の周囲で停止した特定状態であるか否かを判定する特定状態判定部と、特定状態であると判定した場合、自車両のドアウィンドウを閉じた状態で自車両のドアをロックする施錠制御部と、を備える。
【0007】
本発明の別の態様は、車両制御方法である。この方法は、自車両の周囲を撮像した画像および自車両の挙動を示す情報を少なくとも含む車両情報を取得するステップと、取得した車両情報に基づいて、自車両の通行を妨害する妨害車両を特定するステップと、取得した車両情報に基づいて、自車両が停止し、かつ、特定した妨害車両が自車両の周囲で停止した特定状態であるか否かを判定するステップと、特定状態であると判定した場合、自車両のドアウィンドウを閉じた状態で自車両のドアをロックするステップと、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、自車両の乗員の安全の確保と利便性の確保を両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る車両制御装置の機能構成を模式的に示すブロック図である。
図2】実施の形態に係る車両制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。かかる実施の形態に示す具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0012】
実施の形態を詳細に説明する前に概要を述べる。本実施の形態は、煽り運転などによって自車両の通行を妨害する妨害車両を検知するとともに、自車両が停止し、かつ、自車両の周囲で妨害車両が停止した特定状態となった場合に、自車両のドアウィンドウを閉じた状態で自車両のドアをロックする車両制御装置である。本実施の形態によれば、妨害車両の乗員が降りて自車両のドアやドアウィンドウを開けて自車両の乗員に危害を加える事態となることを防止し、自車両の乗員の安全を確保する。また、自車両と妨害車両の双方が停止した場合にドアやドアウィンドウをロックすることで、不必要にロックが発生することによる利便性の低下を防ぐ。
【0013】
図1は、実施の形態に係る車両制御装置10の機能構成を模式的に示すブロック図である。図示する各機能ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組み合わせによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0014】
車両制御装置10は、CAN(Controller Area Network)などで構成される車載ネットワーク20を介して自車両に搭載される各種機器と接続される。車載ネットワーク20には、車載カメラ22、車載センサ24、ドアロック制御装置26、ドアウィンドウ制御装置28、ドアロック操作ボタン30、ウィンドウ開閉操作ボタン32、ウィンドウロック操作ボタン34、リセットボタン36などが接続される。車両制御装置10の機能構成を詳述する前に周辺機器について説明する。
【0015】
車載カメラ22は、自車両の周辺を撮像するよう構成され、例えば、自車両の前方を撮像するように構成される。車載カメラ22は、自車両の室外のみを撮像するように構成されてもよいし、自車両の室外および室内の双方を撮像するように構成されてもよい。車両に複数のカメラが搭載されてもよく、例えば複数のカメラのそれぞれが自車両の前方、後方、側方を撮像してもよい。車載カメラ22は、カメラの周囲360度の全てを実質的に撮像可能な全天周カメラであってもよい。車載カメラ22は、車両制御装置10とは別体であってもよいし、車両制御装置10に設けられてもよい。
【0016】
車載センサ24は、自車両に関する情報や自車両の周辺状況に関する情報を取得するための機器である。車載センサ24には、自車両の周辺に存在する物体の位置および距離を測定するためのレーダセンサ、ライダ(LiDAR;Light Detection and Ranging)などが含まれる。その他、車載センサ24の具体例として、車速センサ、舵角センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、位置情報(例えば、GNSS;Global Navigation Satellite System)センサといった自車両の挙動を示す情報を取得するためのセンサが挙げられるが、これらに限定されるものではない。車載センサ24には、自車両の周囲の音声を収集するマイクが含まれてもよい。車載センサ24の少なくとも一部は、車両制御装置10に設けられてもよい。例えば、車両制御装置10に加速度センサなどが設けられてもよい。
【0017】
ドアロック制御装置26は、自車両のドアのロック(施錠)を制御する装置である。ドアロック制御装置26は、例えば、ドアロック操作ボタン30の操作に応じてドアロックのオン状態(ロックした状態)とオフ状態(ロックを解除した状態)とを切り替えるよう構成される。ドアロック制御装置26は、自車両のドアに設けられる鍵の操作に応じてドアロックのオンオフを切り替えてもよいし、いわゆるキーレスロックなどに用いられる無線信号に基づいてドアロックのオンオフを切り替えてもよい。
【0018】
ドアロック制御装置26は、車両制御装置10の指令に基づいてドアロックのオンオフを切り替えてもよい。ドアロック制御装置26は、車両制御装置10からドアロックをオンにする指令がなされた場合、ドアロック操作ボタン30の操作を無効化し、ドアロック操作ボタン30が操作されたとしてもドアロックを解除しないようにしてもよい。ドアロック制御装置26は、車両制御装置10からドアロックをオフにする指令がなされた場合、ドアロック操作ボタン30の操作を無効化し、ドアロック操作ボタン30の操作に応じてドアロックのオンオフを切り替えるようにしてもよい。
【0019】
ドアウィンドウ制御装置28は、自車両のドアウィンドウの開閉を制御する装置である。ドアウィンドウ制御装置28は、例えば、ウィンドウ開閉操作ボタン32の操作に応じてドアウィンドウを上下に駆動させ、ドアウィンドウを閉めたり開けたりする。ドアウィンドウ制御装置28は、ウィンドウロック操作ボタン34の操作に応じて、ドアウィンドウの開閉操作を有効化または無効化する。ドアウィンドウ制御装置28は、ウィンドウロック操作ボタン34の操作によってウィンドウロックがオンとなる場合、ウィンドウ開閉操作ボタン32の操作を無効化し、ウィンドウ開閉操作ボタン32が操作されたとしてもドアウィンドウを駆動させないようにする。ドアウィンドウ制御装置28は、ウィンドウロック操作ボタン34の操作によってウィンドウロックがオフとなる場合、ウィンドウ開閉操作ボタン32の操作を有効化し、ウィンドウ開閉操作ボタン32の操作に応じてドアウィンドウが開閉されるようにする。
【0020】
ドアウィンドウ制御装置28は、車両制御装置10の指令に基づいてドアウィンドウの開閉を制御してもよい。ドアウィンドウ制御装置28は、車両制御装置10からウィンドウロックをオンにする指令がなされた場合、ドアウィンドウを閉めた状態にしてからロックするようにしてもよい。ドアウィンドウ制御装置28は、車両制御装置10からウィンドウロックをオンにする指令がなされた場合、ウィンドウロック操作ボタン34の操作を無効化し、ウィンドウロック操作ボタン34が操作されたとしてもウィンドウロックを解除しないようにしてもよい。ドアウィンドウ制御装置28は、車両制御装置10からウィンドウロックをオフにする指令がなされた場合、ウィンドウロック操作ボタン34の操作を有効化し、ウィンドウロック操作ボタン34の操作に応じてウィンドウロックのオンオフを切り替えるようにしてもよい。
【0021】
ドアロック操作ボタン30は、自車両のドアロックのオンオフを切り替えるための操作入力部であり、例えば、自車両の運転席のドア付近に設けられる。ウィンドウ開閉操作ボタン32は、自車両のドアウィンドウを開閉するための操作入力部であり、例えば、自車両の運転席のドア付近や、運転席以外の座席のドア付近に設けられる。ウィンドウロック操作ボタン34は、自車両のドアウィンドウのロックのオンオフを切り替えるための操作入力部であり、例えば、自車両の運転席のドア付近に設けられる。
【0022】
リセットボタン36は、車両制御装置10の指令に基づいて自車両のドアやドアウィンドウがロックされた場合に、ロック状態を強制的に解除するリセット操作をするための操作入力部である。リセットボタン36は、ドアロック操作ボタン30やウィンドウロック操作ボタン34などを用いる通常の解除操作とは異なる特殊な解除操作をするためのボタンとも言える。リセットボタン36は、ドアやドアウィンドウを操作するためのボタン30、32,34とは異なる場所に配置され、例えば、センターコンソールといった運転席のドアから離れた場所に設けられる。
【0023】
リセットボタン36は、リセット操作に特化した専用ボタンであってもよいし、自車に設けられる他の操作に用いる入力操作部がリセットボタンとして兼用されてもよい。例えば、自車両のナビゲーション装置用の操作ボタンがリセットボタン36として機能してもよい。また、リセットボタン36として機能しうる複数の入力操作部を同時操作することでリセット操作が有効となってもよい。その他、ドアロック操作ボタン30やウィンドウロック操作ボタン34をリセットボタン36と同時に操作することでリセット操作が有効となってもよい。
【0024】
つづいて、車両制御装置10の機能構成を詳述する。車両制御装置10は、車両情報取得部12、妨害運転検知部13、妨害車両特定部14、特定状態判定部16および施錠制御部18を備える。
【0025】
車両情報取得部12は、自車両に関する車両情報を取得する。車両情報取得部12は、車両情報として自車両の周囲を撮像した画像を車載カメラ22から取得する。車両情報取得部12は、車両情報として自車両の挙動を示す情報を車載センサ24から取得する。車両情報取得部12は、自車両の挙動を示す情報として、自車両の加速度、自車両のアクセル、ブレーキ、ハンドルの操作情報などを取得する。車両情報取得部12は、車両情報として車両の周囲に関する情報を車載センサ24から取得してもよい。車両情報取得部12は、レーダやライダから車両の周囲に存在する物体までの距離情報を取得してもよい。
【0026】
妨害運転検知部13は、車両情報取得部12が取得する車両情報に基づいて、自車両に対する他車両の妨害運転を検知する。妨害運転検知部13は、自車両と他車両の距離に基づいて妨害運転を検知する。例えば、自車両の走行中に自車両と他車両の距離が所定の車間距離未満となる場合、妨害運転であると検知してもよい。妨害運転であるか否かの閾値となる所定の車間距離は、固定値であってもよいし、自車両の車速の増加に応じて大きくなるように設定される可変値であってもよい。所定の車間距離は、車速に応じた停止距離(例えば、車速に応じた空走距離と制動距離の合計値)に基づいて定められてもよく、例えば、停止距離の20%~40%程度の値を閾値としてもよい。例えば、自車両が時速50kmで走行している場合、停止距離32mの半分未満となる5mや10mの車間距離で他車両が自車両の後方に接近する場合、妨害運転であると検知してもよい。なお、自車両の後方に他車両が接近する場合だけでなく、自車両の前方に他車両が所定の車間距離未満の距離で割り込むように接近する場合についても妨害運転であると検知してもよい。また、走行中の自車両の側方に他車両が1m以下や0.5m以下の距離で接近する場合、いわゆる「幅寄せ」と言われる場合に妨害運転であると検知してもよい。
【0027】
妨害運転検知部13は、自車両の挙動にさらに基づいて妨害運転を検知してもよい。例えば、自車両の前方の他車両が急ブレーキをかけることで、自車両と他車両の車間距離が急減し、衝突回避のために自車両が急ブレーキをかけた場合に妨害運転であると検知してもよい。また、他車両の妨害運転を回避するために自車両が左右にふらつく場合に妨害運転であると検知してもよい。例えば、後方から接近する他車両を回避するために自車両が車線変更したにも拘わらず、他車両も自車両の後方に追従するように車線変更をし、そのような車線変更が繰り替えされることで自車両が左右に頻繁に車線変更する場合に妨害運転であると検知してもよい。
【0028】
妨害運転検知部13は、車両情報取得部12が取得する車両情報に基づいて他車両の挙動を解析し、解析した他車両の挙動に基づいて妨害運転を検知してもよい。妨害運転検知部13は、車載カメラ22が撮像した画像や車載センサ24が検出する他車両との距離に基づいて他車両の挙動を解析してもよい。妨害運転検知部13は、例えば、自車両の周囲で他車両が左右に頻繁にふらつくように蛇行走行をしている場合に妨害運転であると検知してもよい。他車両が自車両の後方に接近してハイビームを5秒以上や10秒以上などの長時間にわたって連続的または断続的に照射する場合や、他車両が自車両の後方に接近してウィンカーを5秒以上や10秒以上などの長時間にわたって継続的に点滅させている場合に妨害運転であると検知してもよい。その他、他車両が自車両の周囲でクラクションを5秒以上や10秒以上などの長時間にわたって連続的または断続的に使用する場合に妨害運転であると検知してもよい。
【0029】
妨害車両特定部14は、自車両の通行を妨害する妨害車両を特定する。妨害車両特定部14は、妨害運転検知部13によって妨害運転が検知された他車両を妨害車両として特定する。妨害車両特定部14は、所定期間内に所定回数以上の妨害運転が検知された他車両を妨害車両として特定してもよい。例えば、所定期間(5分間や10分間など)に同一の他車両から複数回(2回以上、3回以上など)の妨害運転を受けた場合、その他車両を妨害車両として特定してもよい。
【0030】
妨害車両特定部14は、妨害運転が検知された場合、妨害運転が検知された他車両を個体識別するための情報を特定する。妨害車両特定部14は、例えば、他車両を撮像した画像に含まれる他車両のナンバープレートに記載される自動車登録番号を読み取ることで他車両の個体識別をしてもよい。妨害車両特定部14は、他車両の形状、大きさ、色といった外観上の特徴に基づいて他車両の個体識別をしてもよい。妨害車両特定部14は、妨害運転が検知された場合、検知された妨害運転の内容と、妨害運転をしている他車両の個体識別情報とを対応付けて記憶してもよい。
【0031】
特定状態判定部16は、自車両が停止し、かつ、妨害車両特定部14が特定した妨害車両が自車両の周囲で停止した特定状態であるか否かを判定する。特定状態判定部16は、自車両が停止した場合、車両情報取得部12が取得する車両情報に基づいて、自車両の周囲に妨害車両が停止しているか否かを判定する。特定状態判定部16は、例えば、妨害車両特定部14が特定した妨害車両の個体識別情報に基づいて、車載カメラ22が撮像した画像に妨害車両が含まれるか否かを判定する。特定状態判定部16は、車載カメラ22が撮像した画像に妨害車両が含まれる場合、妨害車両の位置が時間経過とともに変化しているか否かを判定する。特定状態判定部16は、妨害車両の位置が不変である場合、妨害車両が自車両の周囲で停止しているとみなし、特定状態であると判定する。特定状態判定部16は、妨害車両の位置が変化する場合、妨害車両が自車両の周囲で停止していないとみなし、非特定状態であると判定する。特定状態判定部16は、自車両の周囲で停止していた妨害車両が移動して自車両から離れた場合、非特定状態であると判定してもよい。
【0032】
特定状態判定部16は、自車両が停止し、かつ、妨害車両が自車両の周囲で停止するだけでなく、さらに妨害車両から乗員が降りた場合に特定状態であると判定してもよい。特定状態判定部16は、自車両が停止し、妨害車両が自車両の周囲で停止するだけでなく、さらに妨害車両の乗員が自車両に近づく場合に特定状態であると判定してもよい。特定状態判定部16は、車載カメラ22が撮像した画像に基づいて、妨害車両から降りる人物や、自車両に近づく人物を検出してもよい。特定状態判定部16は、妨害車両から降りた人物が自車両の周囲に存在している場合、妨害車両の位置が変化したとしても継続して特定状態であると判定してもよい。特定状態判定部16は、妨害車両に乗員が戻った場合や自車両の周囲に人物が存在しなくなった場合、非特定状態であると判定してもよい。
【0033】
施錠制御部18は、特定状態判定部16が特定状態であると判定した場合、ドアロック制御装置26にドアロックをオンにする指令を送信する。施錠制御部18は、特定状態であると判定された場合、ドアロック制御装置26にドアロック操作ボタン30の操作を無効化する指令を送信し、ドアが強制ロック状態となるようにしてもよい。つまり、ドアロック操作ボタン30を操作することによるドアロックの通常の解除操作が不可となるようにしてもよい。
【0034】
施錠制御部18は、その後、特定状態判定部16が非特定状態であると判定した場合、ドアロック制御装置26にドアロック操作ボタン30の操作を有効化する指令を送信してもよい。つまり、ドアロック操作ボタン30を操作することによるドアロックの通常の解除操作が可能となるようにしてもよい。施錠制御部18は、非特定状態であると判定された場合、ドアロック制御装置26にドアロックをオフにする指令を送信してもよいし、送信しなくてもよい。後者の場合、特定状態が解除された後もドアロックがオンの状態を継続してもよい。
【0035】
施錠制御部18は、非特定状態であると判定された場合、特定状態となる直前のドアロックの状態に復旧するための指令をドアロック制御装置26に送信してもよい。施錠制御部18は、特定状態であると判定された場合、ドアロック制御装置26からドアロックのオンオフの状態を取得して記憶してもよい。特定状態であると判定された時点でドアロックがオンであれば、施錠制御部18は、非特定状態になってからもドアロックのオン状態が継続されるようにしてもよい。一方、特定状態であると判定された時点でドアロックがオフであれば、施錠制御部18は、非特定状態になってからドアロックがオフとなるようにドアロック制御装置26に指令を送信してもよい。
【0036】
施錠制御部18は、特定状態判定部16が特定状態であると判定した場合、ドアウィンドウ制御装置28にドアウィンドウを閉めてウィンドウロックをオンにする指令を送信する。施錠制御部18は、特定状態であると判定された場合、ドアウィンドウ制御装置28にウィンドウロック操作ボタン34の操作を無効化する指令を送信し、ドアウィンドウが強制ロック状態となるようにしてもよい。つまり、ウィンドウロック操作ボタン34を操作することによるウィンドウロックの通常の解除操作が不可となるようにしてもよい。
【0037】
施錠制御部18は、その後、特定状態判定部16が非特定状態であると判定した場合、ドアウィンドウ制御装置28にウィンドウロック操作ボタン34の操作を有効化する指令を送信してもよい。つまり、ウィンドウロック操作ボタン34を操作することによるウィンドウロックの通常の解除操作が可能となるようにしてもよい。施錠制御部18は、非特定状態であると判定された場合、ドアウィンドウ制御装置28にウィンドウロックをオフにする指令を送信してもよいし、送信しなくてもよい。後者の場合、非特定状態となってからもウィンドウロックのオン状態が継続してもよい。
【0038】
施錠制御部18は、非特定状態であると判定された場合、特定状態となる直前のウィンドウロックの状態に復旧するための指令をドアウィンドウ制御装置28に送信してもよい。施錠制御部18は、特定状態であると判定された場合、ドアウィンドウ制御装置28からウィンドウロックのオンオフの状態を取得して記憶してもよい。特定状態であると判定された時点でウィンドウロックがオンであれば、施錠制御部18は、非特定状態となってからもウィンドウロックのオン状態が継続されるようにしてもよい。一方、特定状態であると判定された時点でウィンドウロックがオフであれば、施錠制御部18は、非特定状態となってからウィンドウロックがオフとなるようにドアウィンドウ制御装置28に指令を送信してもよい。
【0039】
施錠制御部18は、リセットボタン36が操作された場合、ドアロックおよびウィンドウロックの強制ロック状態を解除する指令をドアロック制御装置26およびドアウィンドウ制御装置28に送信してもよい。施錠制御部18は、リセットボタン36が操作された場合、ドアロック制御装置26にドアロック操作ボタン30の操作を有効化する指令を送信し、ドアウィンドウ制御装置28にウィンドウロック操作ボタン34の操作を有効化する指令を送信してもよい。施錠制御部18は、リセットボタン36が操作された場合、ドアロック制御装置26にドアロックをオフにする指令を送信し、ドアウィンドウ制御装置28にウィンドウロックをオフにする指令を送信してもよい。
【0040】
施錠制御部18は、自車両に異常が発生した場合、ドアロックおよびウィンドウロックの強制ロック状態を解除するとともに、ドアロックおよびウィンドウロックをオフにするようにしてもよい。例えば、事故や衝突などによる衝撃が加速度センサにて検知された場合、乗員が自車両から脱出することを妨げないようにドアロックまたはウィンドウロックをオフにする指令をドアロック制御装置26およびドアウィンドウ制御装置28に送信してもよい。施錠制御部18は、そのほか、自車両の故障を示す情報を車載ネットワーク20を通じて取得した場合、ドアロックおよびウィンドウロックをオフにするようにしてもよい。
【0041】
図2は、実施の形態に係る車両制御方法を示すフローチャートである。車両情報取得部12は、車載カメラ22や車載センサ24などから車両情報を取得する(S10)。妨害運転検知部13は、取得した車両情報に基づいて妨害運転を検知する(S12)。妨害車両特定部14は、妨害運転が検知された場合(S12のY)、妨害運転が検知された他車両を妨害車両として特定する(S14)。妨害車両特定部14は、所定期間内に所定回数以上の妨害運転が検知された他車両を妨害車両として特定してもよい。S12にて妨害運転が検知されない場合(S12のN)、S14の処理をスキップする。
【0042】
つづいて、自車両が停止しており(S16のY)、妨害車両が自車両の周囲で停止している場合(S18のY)、特定状態判定部16は、特定状態であると判定する(S20)。施錠制御部18は、特定状態であると判定された場合に、強制ロック状態でなければ、つまり、非強制ロック状態であれば(S22のY)、ドアおよびドアウィンドウを強制ロックする(S24)。施錠制御部18は、強制ロック状態であれば(S22のN)、S24の処理をスキップする。
【0043】
特定状態判定部16は、自車両が停止していない場合(S16のN)、または、妨害車両が自車両の周囲で停止していない場合(S18のN)、特定状態ではない、つまり、非特定状態であると判定する(S26)。施錠制御部18は、非特定状態であると判定された場合に、強制ロック状態であれば(S28のY)、ドアおよびドアウィンドウの強制ロックを解除する(S30)。施錠制御部18は、非強制ロック状態であれば(S28のN)、S28の処理をスキップする。
【0044】
本実施の形態によれば、自車両に対して妨害運転をする妨害車両が自車両の周囲で停止し、かつ、自車両が停止する特定状態となる場合、自車両のドアを強制的にロックし、自車両のドアウィンドウを強制的に閉じて自車両のドアウィンドウを強制的にロックすることができる。これにより、妨害車両の乗員が降りて停止中の自車両のドアやドアウィンドウを開けることで、自車両の乗員に危害を加えることができる状態となることを防止して乗員の安全を確保できる。
【0045】
本実施の形態によれば、ドアやドアウィンドウを強制ロック状態とする場合、ドアロック操作ボタン30やウィンドウロック操作ボタン34による通常の解除操作が不可となる。これにより、自車両の乗員が冷静な判断をすることができなくなり、誤ってドアやドアウィンドウのロックを解除してしまうことを防止して乗員の安全を確保できる。
【0046】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、各表示例に示す構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。
【0047】
上述の実施の形態では、例示的な機能ブロックを示しながら、車両制御装置10が提供する各種機能の実現および各種機能の関係性について示した。上述の機能ブロックの境界は、説明の便宜のために任意に決められたものであり、各種機能および各種機能の関係性が適切に実現される限り、上述の機能ブロックとは別の境界が決められてもよい。また、車両制御装置10が提供する各種機能は、単一の装置で実現されてもよいし、複数の装置の連携によって実現されてもよい。したがって、特定の装置が特定の機能を提供するということは、特定の機能が単一の装置で実現される場合と、特定の機能が複数の装置で実現される場合とを含み、特定の機能が特定の装置のみによって実現されなければならないことを必ずしも意味しない。
【0048】
上述の実施の形態に係る車両制御装置10は、例えば、自車両に搭載される電子制御ユニット(ECU;Electronic Control Unit)として実装されることができる。車両制御装置10は、ドライブレコーダが設けられる車両に搭載されてもよい。車両制御装置10は、妨害運転の検知を契機としてドライブレコーダにイベント信号を送信してもよい。車両制御装置10は、特定状態であることを条件にドライブレコーダにイベント信号を送信してもよい。この場合、妨害運転を検知した場合や特定状態と判定された場合に車両の周囲を撮像した画像をイベントデータとして記録することができる。なお、車両制御装置10がドライブレコーダの機能を備えてもよく、妨害運転を検知した場合や特定状態である場合に車両の周囲を撮像した画像をイベントデータとして記録してもよい。車両制御装置10は、ドライブレコーダとして実現されてもよい。
【0049】
別の実施の形態において、車両制御装置10は、妨害運転検知部13および妨害車両特定部14の少なくとも一方を備えなくてもよい。妨害運転検知部13および妨害車両特定部14の少なくとも一方は、車両制御装置10とは別の装置(自車両に搭載されるドライブレコーダなど)に設けられてもよい。
【0050】
別の実施の形態では、妨害運転検知部13が車両制御装置10とは別の装置に設けられてもよい。例えば、ドライブレコーダが妨害運転検知部13の機能を有してもよい。ドライブレコーダは、自車両の周囲を撮像した画像および自車両の挙動を示す情報を少なくとも含む車両情報を取得し、取得した車両情報に基づいて、自車両に対する他車両の妨害運転を検知してもよい。妨害車両特定部14は、ドライブレコーダから妨害運転の検知信号を取得し、妨害運転の検知信号を取得した際に自車両の周囲に存在する他車両を妨害車両として特定してもよい。妨害車両特定部14は、妨害運転の検知信号を取得した際に周囲に存在する他車両を妨害車両の候補として記憶しておき、妨害車両の候補として所定期間内に所定回数以上カウントされた他車両を妨害車両として特定してもよい。
【0051】
別の実施の形態では、妨害運転検知部13および妨害車両特定部14の双方が車両制御装置10とは別の装置に設けられてもよい。例えば、ドライブレコーダが妨害運転検知部13および妨害車両特定部14の機能を有してもよい。ドライブレコーダは、自車両の周囲を撮像した画像および自車両の挙動を示す情報を少なくとも含む車両情報を取得し、取得した車両情報に基づいて、自車両の通行を妨害する妨害車両を特定してもよい。ドライブレコーダは、妨害車両を検知したことを示す情報や、妨害車両の個体識別情報を車両制御装置10に送信してもよい。特定状態判定部16は、ドライブレコーダなどの他の装置から取得する情報に基づいて、特定状態であるか否かを判定してもよい。
【0052】
上述の実施の形態は、プログラムとして提供されてもよい。本実施の形態のある態様は、自車両の周囲を撮像した画像および自車両の挙動を示す情報を少なくとも含む車両情報を取得する機能と、自車両が停止し、かつ、自車両の通行を妨害する妨害車両が自車両の周囲で停止した特定状態であるか否かを判定する機能と、前記特定状態であると判定した場合、自車両のドアウィンドウを閉じた状態で自車両のドアをロックする機能と、をコンピュータに実現させることを特徴とするプログラムであってもよい。
【符号の説明】
【0053】
10…車両制御装置、12…車両情報取得部、13・・・妨害運転検知部、14…妨害車両特定部、16…特定状態判定部、18…施錠制御部。
図1
図2