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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】液体吐出装置、及びヘッドユニット
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240709BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/175 503
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020163102
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022055596
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】松本 祐介
(72)【発明者】
【氏名】山道 俊輔
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-258510(JP,A)
【文献】特開2009-196282(JP,A)
【文献】特開2011-062851(JP,A)
【文献】特開2013-094991(JP,A)
【文献】特開2018-099867(JP,A)
【文献】米国特許第10035354(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルを含むヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットの動作を制御する制御信号を出力する制御回路と、
前記ヘッドユニットに電源電圧を供給する電源回路と、
液体を貯留する液体容器と、
を備え、
前記ヘッドユニットは、
前記制御信号が入力される第1端子と、
前記電源電圧が供給される第2端子と、
前記液体容器から液体が供給される液体供給口と、
第1方向に沿って延在する第1辺と、前記第1方向と交差する第2方向に沿って延在する第2辺とを含み、前記第1端子及び前記第2端子が設けられた配線基板と、
を有し、
前記第1端子と前記第2端子とは、前記第1方向に沿って並んで位置し、
前記第2端子は、前記第2方向から見た場合に、前記第1端子と前記液体供給口との間に位置し
前記第1端子は、前記液体供給口よりも鉛直上方に位置している、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記第2端子と前記液体供給口とは、前記第1方向及び前記第2方向と異なる第3方向に沿って並んで位置している、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記ヘッドユニットと、液体が吐出される媒体との相対的位置関係に基づく位置情報信号を出力する位置情報検出器を備え、
前記ヘッドユニットは、
前記位置情報信号が入力される第3端子を有し、
前記第3端子は、前記第2方向において、前記第1端子と前記液体供給口との間に位置している、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記ヘッドユニットは、筐体を含み、
前記第1端子、前記第2端子、及び前記液体供給口は、前記筐体の一辺に沿って並んで位置している、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記第1端子、前記第2端子、及び前記液体供給口は、前記筐体の長辺に沿って並んで位置している、
ことを特徴とする請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記第1端子と前記第2端子とは、異なるコネクターに設けられている、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記第1端子は、高速伝送用コネクターに設けられている、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記高速伝送用コネクターは、USBコネクターである、
ことを特徴とする請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
制御信号が入力される第1端子と、
電源電圧が供給される第2端子と、
液体容器から液体が供給される液体供給口と、
第1方向に沿って延在する第1辺と、前記第1方向と交差する第2方向に沿って延在する第2辺とを含み、前記第1端子及び前記第2端子が設けられた配線基板と、
を有し、
前記第2端子は、前記第1端子と前記第2端子とが並ぶ前記第1方向と交差する前記第2方向から見た場合に、第前記第1端子と前記液体供給口との間に位置し
前記第1端子は、前記液体供給口よりも鉛直上方に位置している、
ことを特徴とするヘッドユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、及びヘッドユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンター等の液体吐出装置は、ヘッドユニットが有するプリントヘッドに設けられた圧電素子を駆動信号により駆動することで、キャビティーに充填されたインク等の液体をノズルから吐出し、媒体上に文字や画像を形成する。このような液体吐出装置において、液体吐出装置におけるインクの吐出を制御する制御信号は、当該処理を実行するメイン回路からケーブル等を介してヘッドユニットに供給されるとともに、ヘッドユニットから吐出されるインクは、当該インクが貯留されている液体容器からチューブ等を介してヘッドユニットに供給される。そして、ヘッドユニットは、入力される制御信号に基づくタイミングで所定の量のインクを吐出することで、媒体に所望の画像を形成する。
【0003】
例えば、特許文献1には、液体容器に貯留されたインクを吐出するヘッドユニットであって、当該インクの吐出を制御するための制御信号が、2つのケーブルにより伝搬される液体吐出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-093973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるような液体吐出装置では、ヘッドユニットには、信号転送のためのケーブルに加え、液体容器から液体を供給するためのチューブが接続されるが故に、当該ヘッドユニットのメンテナンスの際に、ケーブル、及びチューブを取り外す必要がある。このようなメンテナンス等においてケーブル、及びチューブを取り外す場合、チューブを流通する液体が漏出するおそれがある。そして、漏出した液体がケーブルや当該ケーブルが装着されるコネクターの導電部に付着した場合、ケーブルや当該ケーブルが装着されるコネクターの導電部間で短絡が生じ、その結果、液体吐出装置の動作に影響を与えるおそれがあった。このようなチューブの取り外し等に起因する液体の漏出により生じる問題に対して、特許文献1に記載の液体吐出装置では何らの記載のもなく、改善の余地があった。
【0006】
特に、近年のヘッドユニットの小型化、及びメンテナンス性向上の市場要求の高まりを受け、信号が伝搬するケーブル、及び当該ケーブルが装着されるコネクターと、インクを供給するチューブ、及び当該チューブが装着される供給口との間隔が狭くなり、チューブの取り外し等に起因して生じた液体の漏出による問題は顕著であり、そのため、漏出した液体に起因して液体吐出装置の動作の安定性が低下するおそれを低減することが、強く求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る液体吐出装置の一態様は、
液体を吐出するノズルを含むヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットの動作を制御する制御信号を出力する制御回路と、
前記ヘッドユニットに電源電圧を供給する電源回路と、
液体を貯留する液体容器と、
を備え、
前記ヘッドユニットは、
前記制御信号が入力される第1端子と、
前記電源電圧が供給される第2端子と、
液体が供給される液体供給口と、
を有し、
前記第1端子と前記第2端子とは、第1方向に沿って並んで位置し、
前記第2端子は、前記第1方向と交差する第2方向において、前記第1端子と前記液体供給口との間に位置している。
【0008】
本発明に係るヘッドユニットの一態様は、
制御信号が入力される第1端子と、
電源電圧が供給される第2端子と、
液体が供給される液体供給口と、
を有し、
前記第2端子は、前記第1端子と前記第2端子とが並ぶ第1方向と交差する第2方向において、第前記第1端子と前記液体供給口との間に位置している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】液体吐出装置の機能構成を示す図である。
図2】駆動信号COMA,COMBの波形の一例を示す図である。
図3】駆動信号VOUTの波形の一例を示す図である。
図4】駆動信号選択回路の構成を示す図である。
図5】デコーダーにおけるデコード内容を示す図である。
図6】吐出部の1個分に対応する選択回路の構成を示す図である。
図7】駆動信号選択回路の動作を説明するための図である。
図8】液体吐出装置の概略構造を示す図である。
図9】ヘッドユニットを-Z側から見た場合の分解斜視図である。
図10】ヘッドユニットを+Z側から見た場合の分解斜視図である。
図11】ヘッドユニットを+Z側から見た場合の図である。
図12】吐出ヘッドの概略構成を示す分解斜視図である。
図13】ヘッドチップの概略構造を示す断面図である。
図14】コネクター426が有する端子で伝搬する信号の一例を示す図である。
図15】ヘッドユニットを-Y側から見た場合の側面図である。
図16】ヘッドユニットを-Z側から見た場合の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて説明する。用いる図面は説明の便宜上のものである。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0011】
1.液体吐出装置の機能構成
まず、本実施形態における液体吐出装置1の機能構成について図1を用いて説明する。本実施形態における液体吐出装置1は、液体の一例としてインクを媒体に吐出することにより、媒体に所望の画像を形成するインクジェットプリンターを例に挙げ説明を行う。このような、液体吐出装置1は、外部に設けられたコンピューター等の外部機器から有線通信、又は無線通信によって画像データを受信し、受信した画像データに基づいて媒体に画像を形成する。
【0012】
図1は、液体吐出装置1の機能構成を示す図である。図1に示すように、液体吐出装置1は、制御ユニット10、ヘッドユニット20、及び搬送ユニット40を備える。制御ユニット10は、メイン制御回路11と電源回路12とを有する。
【0013】
電源回路12には、液体吐出装置1の外部に設けられた不図示の商用交流電源から交流電圧である商用電圧が入力される。そして、電源回路12は、入力される商用電圧に基づいて、電圧値が42Vの直流電圧である電圧VHVと、電圧値が5Vの直流電圧である電圧VDDとを生成し、ヘッドユニット20に出力する。このような電源回路12としては、交流電圧を直流電圧に変換するAC/DCコンバーターであって、例えば、フライバック回路等と、当該フライバック回路が出力する直流電圧の電圧値を変換するDC/DCコンバーター等を含んで構成されている。この電源回路12で生成された電圧VHV,VDDは、ヘッドユニット20に供給されることで、ヘッドユニット20が有する各種構成の電源電圧として用いられる。すなわち、電源回路12は、ヘッドユニット20に電源電圧を供給する。また、電圧VHV,VDDは、制御ユニット10及び搬送ユニット40を含む液体吐出装置1の各部の電源電圧としても用いられてもよい。なお、電源回路12は、電圧VHV,VDDの他に、制御ユニット10、ヘッドユニット20、及び搬送ユニット40を含む液体吐出装置1の各部で使用される電圧値の電圧信号を生成し、対応する各構成に出力してもよい。
【0014】
メイン制御回路11には、液体吐出装置1の外部に設けられたホストコンピューター等の外部機器から不図示のインターフェース回路を介して画像信号が入力される。そして、メイン制御回路11は、入力される画像信号に応じた画像を媒体に形成するための各種信号を生成し、対応する構成に出力する。
【0015】
また、メイン制御回路11は、外部機器から入力される画像信号に基づいて、当該画像信号に基づく画像が形成される媒体を搬送するための搬送制御信号PTを生成し、搬送ユニット40に出力する。また、搬送ユニット40は、搬送する媒体の搬送位置を検出する位置情報検出器41を含む。位置情報検出器41は、搬送される媒体の搬送位置を示す搬送位置情報信号TPSを生成し、メイン制御回路11に出力する。そして、メイン制御回路11は、入力される搬送位置情報信号TPSに基づいて、媒体の搬送位置を算出し、算出した媒体の搬送位置を示す位置情報信号PSを生成し、ヘッドユニット20に出力する。そして、ヘッドユニット20は、入力される位置情報信号PSに基づいて媒体の搬送位置を把握し、媒体の所望の位置にインクを吐出する。すなわち、位置情報検出器41は、ヘッドユニット20と、液体が吐出される媒体との相対的位置関係に基づく搬送位置情報信号TPSを出力する。このような位置情報検出器41としては、例えば、媒体の搬送を制御するモーターの回転角度等に基づいて媒体の搬送位置を検出するエンコーダーや、媒体の搬送位置を光により検出する各種センサー素子などが含まれる。
【0016】
ここで、位置情報検出器41が出力する搬送位置情報信号TPSが位置情報信号の一例である。また、位置情報検出器41が出力する搬送位置情報信号TPSは、制御ユニット10を介さずに直接ヘッドユニット20に供給される構成であってもよい。すなわち、位置情報検出器41が出力する搬送位置情報信号TPSに加えて搬送位置情報信号TPSに基づく位置情報信号PSも位置情報信号の一例である。
【0017】
ここで、相対的位置関係に基づく信号とは、広義には媒体とヘッドユニット20との位置関係を示す信号を意味する。すなわち、本実施形態では、液体吐出装置1が、搬送される媒体に対して外殻等に固定されたヘッドユニット20からインクが吐出される所謂ライン方式のインクジェットプリンターを例示して説明するが故に、相対的位置関係に基づく信号が、媒体Pの搬送位置を示す信号が相対的位置関係に基づく信号であるとして説明を
行うが、液体吐出装置1が、搬送される媒体に対して、媒体の搬送方向と交差する方向に沿って移動するヘッドユニット20からインクが吐出される所謂シリアル方式のインクジェットプリンターである場合、相対的位置関係に基づく信号には、媒体Pの搬送位置を示す信号に加えて搬送方向と交差する方向に沿って移動するヘッドユニット20の走査位置を示す信号も含まれる。
【0018】
また、メイン制御回路11は、外部機器から入力される画像信号に対して所定の画像処理を施した後、当該画像処理を施した信号を画像情報信号IPとしてヘッドユニット20に出力する。このメイン制御回路11から出力される画像情報信号IPは、差動信号等の電気信号であって、例えばPCIe(Peripheral Component Interconnect Express)の通信規格に準拠した信号として出力される。ここで、メイン制御回路11で実行される画像処理は、例えば、外部機器から入力される画像信号を赤、緑、青の色彩情報に変換した後、液体吐出装置1から吐出されるインクの色彩に対応する色彩情報に変換する色彩変換処理や、色彩変換処理がなされた色彩情報を二値化するハーフトーン処理等が挙げられる。なお、メイン制御回路11が実行する画像処理は、上述した色変換処理やハーフトーン処理に限るものではない。
【0019】
以上のようにメイン制御回路11は、ヘッドユニット20の動作を制御する画像情報信号IPや位置情報信号PSを生成しヘッドユニット20に出力する。このようなメイン制御回路11は、例えば、複数の機能を備えた1又は複数の半導体装置を含むSoC(System on a Chip)を含んで構成されている。このヘッドユニット20の動作を制御する画像情報信号IPを出力するメイン制御回路11が制御回路の一例であり、画像情報信号IPが制御信号の一例である。
【0020】
ヘッドユニット20は、ヘッド制御回路21、差動信号復元回路22-1~22-3、駆動信号出力回路50、及び吐出ヘッド100a~100fを備え、後述するノズルから液体の一例としてのインクを吐出する。
【0021】
ヘッド制御回路21は、メイン制御回路11から入力される画像情報信号IP、及び位置情報信号PSに基づいて、ヘッドユニット20の各部を制御するための制御信号を出力する。具体的には、ヘッド制御回路21は、画像情報信号IPと位置情報信号PSとに基づいて、吐出ヘッド100からのインクの吐出を制御する制御信号を差動信号に変換した差動信号dSCK1~dSCK3と、差動信号dSIa1~dSIan,dSIb1~dSIbn,dSIc1~dSIcn,dSId1~dSIdn,dSIe1~dSIen,dSIf1~dSIfnを生成し、差動信号復元回路22-1~22-3に出力する。
【0022】
そして差動信号復元回路22-1~22-3は、入力される差動信号dSCK1~dSCK3、及び差動信号dSIa1~dSIan,dSIb1~dSIbn,dSIc1~dSIcn,dSId1~dSIdn,dSIe1~dSIen,dSIf1~dSIfnのそれぞれを、対応するクロック信号SCK1~SCK3、及び印刷データ信号SIa1~SIan,SIb1~SIbn,SIc1~SIcn,SId1~SIdn,SIe1~SIen,SIf1~SIfnに復元し、対応する吐出ヘッド100a~100fに出力する。
【0023】
詳細には、ヘッド制御回路21は、一対の信号dSCK1+,dSCK1-を含む差動信号dSCK1と、一対の信号dSIa1+~dSIan+,dSIa1-~dSIan-を含む差動信号dSIa1~dSIanと、一対の信号dSIb1+~dSIbn+,dSIb1-~dSIbn-を含む差動信号dSIb1~dSIbnとを生成し、差動信号復元回路22-1に出力する。差動信号復元回路22-1は、入力される差動信号dSCK1を復元することで対応するシングルエンドの信号であるクロック信号SCK1を生
成し吐出ヘッド100a,100bに出力し、差動信号dSIa1~dSIanを復元することで対応するシングルエンドの信号である印刷データ信号SIa1~SIanを生成し吐出ヘッド100aに出力し、差動信号dSIb1~dSIbnを復元することで対応するシングルエンドの信号である印刷データ信号SIb1~SIbnを生成し吐出ヘッド100bに出力する。
【0024】
また、ヘッド制御回路21は、一対の信号dSCK2+,dSCK2-を含む差動信号dSCK2と、一対の信号dSIc1+~dSIcn+,dSIc1-~dSIcn-を含む差動信号dSIc1~dSIcnと、一対の信号dSId1+~dSIdn+,dSId1-~dSIdn-を含む差動信号dSId1~dSIdnとを生成し、差動信号復元回路22-2に出力する。差動信号復元回路22-2は、入力される差動信号dSCK2を復元することで対応するシングルエンドの信号であるクロック信号SCK2を生成し吐出ヘッド100c,100dに出力し、差動信号dSIc1~dSIcnを復元することで対応するシングルエンドの信号である印刷データ信号SIc1~SIcnを生成し吐出ヘッド100cに出力し、差動信号dSId1~dSIdnを復元することで対応するシングルエンドの信号である印刷データ信号SId1~SIdnを生成し吐出ヘッド100dに出力する。
【0025】
同様にヘッド制御回路21は、一対の信号dSCK3+,dSCK3-を含む差動信号dSCK3と、一対の信号dSIe1+~dSIen+,dSIe1-~dSIen-を含む差動信号dSIe1~dSIenと、一対の信号dSIf1+~dSIfn+,dSIf1-~dSIfn-を含む差動信号dSIf1~dSIfnとを生成し、差動信号復元回路22-3に出力する。差動信号復元回路22-3は、入力される差動信号dSCK3を復元することで対応するシングルエンドの信号であるクロック信号SCK3を生成し吐出ヘッド100e,100fに出力し、差動信号dSIe1~dSIenを復元することで対応するシングルエンドの信号である印刷データ信号SIe1~SIenを生成し吐出ヘッド100eに出力し、差動信号dSIf1~dSIfnを復元することで対応するシングルエンドの信号である印刷データ信号SIf1~SIfnを生成し吐出ヘッド100fに出力する。
【0026】
ここで、ヘッド制御回路21から出力される差動信号dSCK1~dSCK3と、差動信号dSIa1~dSIan,dSIb1~dSIbn,dSIc1~dSIcn,dSId1~dSIdn,dSIe1~dSIen,dSIf1~dSIfnは、それぞれが、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)転送方式の差動信号であってもよく、また、LVDS以外のLVPECL(Low Voltage Positive Emitter Coupled Logic)やCML(Current Mode Logic)等の各種の高速通信方式の差動信号であってもよい。
【0027】
なお、ヘッドユニット20は、差動信号を生成する差動信号生成回路を有し、ヘッド制御回路21が、差動信号dSCK1~dSCK3の基となる基制御信号oSCK1~oSCK3と、差動信号dSIa1~dSIan,dSIb1~dSIbn,dSIc1~dSIcn,dSId1~dSIdn,dSIe1~dSIen,dSIf1~dSIfnとの基となる基制御信号oSIa1~oSIan,oSIb1~oSIbn,oSIc1~oSIcn,oSId1~oSIdn,oSIe1~oSIen,oSIf1~dSIfnとを差動信号生成回路に出力し、差動信号生成回路が、入力される基制御信号oSCK1~oSCK3と、基制御信号oSIa1~oSIan,oSIb1~oSIbn,oSIc1~oSIcn,oSId1~oSIdn,oSIe1~oSIen,oSIf1~oSIfnとに基づいて、差動信号dSCK1~dSCK3と、差動信号dSIa1~dSIan,dSIb1~dSIbn,dSIc1~dSIcn,dSId1~dSIdn,dSIe1~dSIen,dSIf1~dSIfnとを生成し、差動信号復元回路22-1~22-3のそれぞれに出力する構成であってもよい。
【0028】
また、ヘッド制御回路21は、メイン制御回路11から入力される画像情報信号IPに基づいて、吐出ヘッド100a~100dからのインクの吐出タイミングを制御する制御信号としてラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHを生成し、吐出ヘッド100a~100dに出力する。
【0029】
さらに、ヘッド制御回路21は、メイン制御回路11から入力される画像情報信号IPに基づいて、吐出ヘッド100a~100dを駆動させる駆動信号COMA1,COMA2,COMB1,COMB2の基となる基駆動信号dA1,dB1,dA2,dB2を生成し、駆動信号出力回路50に出力する。
【0030】
駆動信号出力回路50は、駆動回路51-1,51-2を含む。駆動回路51-1には、基駆動信号dA1,dB1が入力される。そして、駆動回路51-1は、入力される基駆動信号dA1をアナログ信号に変換した後、変換されたアナログ信号を電圧VHVに基づいてD級増幅することで、駆動信号COMA1を生成し、吐出ヘッド100a,100b,100cに出力するととともに、入力される基駆動信号dB1をアナログ信号に変換した後、変換されたアナログ信号を電圧VHVに基づいてD級増幅することで、駆動信号COMB1を生成し、吐出ヘッド100a,100b,100cに出力する。また、駆動回路51-1は、電圧VDDを昇圧又は降圧することで、吐出ヘッド100a,100b,100cからインクが吐出される場合の基準電位となる基準電圧信号VBS1を生成し、吐出ヘッド100a,100b,100cに出力する。すなわち、駆動回路51-1は、駆動信号COMA1,COMB1を生成する2個のD級増幅回路と、基準電圧信号VBS1を生成する降圧回路又は昇圧回路とを含む。
【0031】
また、駆動回路51-2には、基駆動信号dA2,dB2が入力される。駆動回路51-2は、入力される基駆動信号dA2をアナログ信号に変換した後、変換されたアナログ信号を電圧VHVに基づいてD級増幅することで、駆動信号COMA2を生成し、吐出ヘッド100d,100e,100fに出力とともに、入力される基駆動信号dB2をアナログ信号に変換した後、変換されたアナログ信号を電圧VHVに基づいてD級増幅することで、駆動信号COMB2を生成し、吐出ヘッド100d,100e,100fに出力する。また、駆動回路51-2は、電圧VDDを昇圧又は降圧することで、吐出ヘッド100d,100e,100fからインクが吐出される場合の基準電位となる基準電圧信号VBS2を生成し、吐出ヘッド100d,100e,100fに出力する。すなわち、駆動回路51-2は、駆動信号COMA2,COMB2を生成する2個のD級増幅回路と、基準電圧信号VBS2を生成する降圧回路又は昇圧回路とを含む。
【0032】
ここで、本実施形態では、駆動回路51-1が駆動信号COMA1,COMB1、及び基準電圧信号VBS1を生成し、吐出ヘッド100a,100b,100cに出力し、駆動回路51-2が駆動信号COMA2,COMB2、及び基準電圧信号VBS2を生成し吐出ヘッド100d,100e,100fに出力するとして説明を行うがこれに限るものではない。例えば、駆動回路51-1が出力する駆動信号COMA1,COMB1、及び基準電圧信号VBS1と、駆動回路51-2が出力する駆動信号COMA2,COMB2、及び基準電圧信号VBS2とが、吐出ヘッド100a~100fのそれぞれに共通に入力されてもよい。また、駆動信号出力回路50が、駆動信号COMA3,COMB3、及び基準電圧信号VBS3を生成する不図示の駆動回路51-3を含み、駆動回路51-1が駆動信号COMA1,COMB1、及び基準電圧信号VBS1を生成し、吐出ヘッド100a,100bに出力し、駆動回路51-2が駆動信号COMA2,COMB2、及び基準電圧信号VBS2を生成し、吐出ヘッド100c,100dに出力し、駆動回路51-3が駆動信号COMA3,COMB3、及び基準電圧信号VBS3を生成し、吐出ヘッド100e,100fに出力してもよい。さらに、吐出ヘッド100a~100fには、
共通の基準電圧信号VBSが供給されてもよい。なお、駆動回路51-1,51-2は、入力される基駆動信号dA1,dB1,dA2,dB2に対応するアナログ信号を電圧VHVに基づいて増幅することができればよく、A級増幅回路、B級増幅回路、又はAB級増幅回路を含んで構成されていてもよい。
【0033】
吐出ヘッド100aは、駆動信号選択回路200-1~200-nと、駆動信号選択回路200-1~200-nのそれぞれに対応するヘッドチップ300-1~300-nを有する。
【0034】
吐出ヘッド100aに含まれる駆動信号選択回路200-1には、印刷データ信号SIa1、クロック信号SCK1、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び駆動信号COMA1,COMB1が入力される。そして、吐出ヘッド100aに含まれる駆動信号選択回路200-1は、印刷データ信号SIa1に基づいて、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CHで規定されるタイミングで、駆動信号COMA1,COMB1に含まれる波形を選択又は非選択とすることで駆動信号VOUTを生成し、吐出ヘッド100aに含まれるヘッドチップ300-1に供給する。これにより、ヘッドチップ300-1が有する後述する圧電素子60が駆動し、圧電素子60の駆動に伴い対応するノズルからインクが吐出される。
【0035】
同様に、吐出ヘッド100aに含まれる駆動信号選択回路200-nには、印刷データ信号SIan、クロック信号SCK1、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び駆動信号COMA1,COMB1が入力される。そして、吐出ヘッド100aに含まれる駆動信号選択回路200-nは、印刷データ信号SIanに基づいて、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CHで規定されるタイミングで、駆動信号COMA1,COMB1に含まれる波形を選択又は非選択とすることで駆動信号VOUTを生成し、吐出ヘッド100aに含まれるヘッドチップ300-nに供給する。これにより、ヘッドチップ300-nが有する後述する圧電素子60が駆動し、圧電素子60の駆動に伴い対応するノズルからインクが吐出される。
【0036】
すなわち、駆動信号選択回路200-1~200-nのそれぞれは、駆動信号COMA,COMBを駆動信号VOUTとして対応するヘッドチップ300-1~300-nに含まれる圧電素子60に供給するか否かを切り替える。ここで、吐出ヘッド100aと吐出ヘッド100b~100fとは、入力される信号が異なるのみであり、構成、及び動作は同様である。したがって、吐出ヘッド100b~100fの構成、及び動作の説明は省略する。また、以下の説明において、吐出ヘッド100a~100fを特に区別する必要がない場合、単に吐出ヘッド100と称する場合がある。さらに、吐出ヘッド100に含まれる駆動信号選択回路200-1~200-nはいずれも同様の構成であり、ヘッドチップ300-1~300-nはいずれも同様の構成である。したがって、駆動信号選択回路200-1~200-nを区別する必要がない場合、単に駆動信号選択回路200と称し、さらに、駆動信号選択回路200は、ヘッドチップ300に対して駆動信号VOUTを供給するとして説明を行う。そして、この場合において駆動信号選択回路200には、印刷データ信号SI、クロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び駆動信号COMA,COMBが入力されるとして説明を行う。
【0037】
2.駆動信号選択回路の構成、及び動作
次に駆動信号選択回路200の構成、及び動作について説明する。前述の通り、駆動信号選択回路200は、入力される駆動信号COMA,COMBの波形を選択又は非選択とすることで、駆動信号VOUTを生成し、対応するヘッドチップ300に出力する。そこで、駆動信号選択回路200の構成、及び動作を説明するにあたり、まず、駆動信号選択回路200に入力される駆動信号COMA,COMBの波形の一例、及び駆動信号選択回
路200が出力する駆動信号VOUTの波形の一例について説明する。
【0038】
図2は、駆動信号COMA,COMBの波形の一例を示す図である。図2に示すように、駆動信号COMAは、ラッチ信号LATが立ち上がってからチェンジ信号CHが立ち上がるまでの期間T1に配置された台形波形Adp1と、チェンジ信号CHが立ち上がってからラッチ信号LATが立ち上がるまでの期間T2に配置された台形波形Adp2とを連続させた波形である。台形波形Adp1が、ヘッドチップ300に供給された場合、ヘッドチップ300が有する対応するノズルから小程度の量のインクが吐出され、台形波形Adp2が、ヘッドチップ300に供給された場合、ヘッドチップ300が有する対応するノズルから小程度の量よりも多い中程度の量のインクが吐出される。
【0039】
また、図2に示すように、駆動信号COMBは、期間T1に配置された台形波形Bdp1と、期間T2に配置された台形波形Bdp2とを連続させた波形である。台形波形Bdp1が、ヘッドチップ300に供給された場合、ヘッドチップ300が有する対応するノズルからインクは吐出されない。この台形波形Bdp1は、ノズルの開孔部付近のインクを微振動させて、インク粘度の増大を防止するための波形である。また、台形波形Bdp2が、ヘッドチップ300に供給された場合、台形波形Adp1が供給された場合と同様に、ヘッドチップ300が有する対応するノズルから小程度の量のインクが吐出される。
【0040】
ここで、図2に示すように、台形波形Adp1,Adp2,Bdp1,Bdp2のそれぞれの開始タイミング、及び終了タイミングでの電圧値は、いずれも電圧Vcで共通である。すなわち、台形波形Adp1,Adp2,Bdp1,Bdp2のそれぞれは、電圧Vcで開始し電圧Vcで終了する波形である。そして、期間T1と期間T2とからなる周期Taが、媒体に新たなドットを形成する印刷周期に相当する。
【0041】
なお、図2では、台形波形Adp1と台形波形Bdp2とが同じ波形であるとして図示しているが、台形波形Adp1と台形波形Bdp2とが異なる波形であってもよい。また、台形波形Adp1がヘッドチップ300に供給された場合と、台形波形Bdp1がヘッドチップ300に供給された場合とで、共に対応するノズルから小程度の量のインクが吐出されるとして説明を行うが、これに限るものではない。すなわち、駆動信号COMA,COMBの波形は、図2に示す一例に限られるものではなく、ヘッドチップ300が有するノズルから吐出されるインクの性質や、インクが着弾する媒体の材質等に応じて、様々な波形の組み合わせの信号が用いられてもよい。また、駆動信号COMA1と、駆動信号COMA2とは、異なる波形であってもよく、同様に、駆動信号COMB1と、駆動信号COMB2とは、異なる波形であってもよい。
【0042】
図3は、媒体に形成されるドットの大きさが大ドットLD、中ドットMD、小ドットSD、及び非記録NDのそれぞれに対応する駆動信号VOUTの波形の一例を示す図である。
【0043】
図3に示すように、媒体に大ドットLDが形成される場合の駆動信号VOUTは、周期Taにおいて、期間T1に配置された台形波形Adp1と、期間T2に配置された台形波形Adp2とを連続させた波形となっている。この駆動信号VOUTがヘッドチップ300に供給された場合、対応するノズルから、小程度の量のインクと中程度の量のインクとが吐出される。したがって、周期Taにおいて、それぞれのインクが媒体に着弾し合体することで、媒体には、大ドットLDが形成される。
【0044】
また、媒体に中ドットMDが形成される場合の駆動信号VOUTは、周期Taにおいて、期間T1に配置された台形波形Adp1と、期間T2に配置された台形波形Bdp2とを連続させた波形となっている。この駆動信号VOUTがヘッドチップ300に供給され
た場合、対応するノズルから、小程度の量のインクが2回吐出される。したがって、周期Taにおいて、それぞれのインクが媒体に着弾し合体することで、媒体には、中ドットMDが形成される。
【0045】
媒体に小ドットSDが形成される場合の駆動信号VOUTは、周期Taにおいて、期間T1に配置された台形波形Adp1と、期間T2に配置された電圧Vcで一定の波形とを連続させた波形となっている。この駆動信号VOUTがヘッドチップ300に供給された場合、対応するノズルから、小程度の量のインクが1回吐出される。したがって、周期Taにおいて、このインクが媒体に着弾し、媒体には、小ドットSDが形成される。
【0046】
媒体にドットを形成しない非記録NDに対応する駆動信号VOUTは、周期Taにおいて、期間T1に配置された台形波形Bdp1と、期間T2に配置された電圧Vcで一定の波形とを連続させた波形となっている。この駆動信号VOUTがヘッドチップ300に供給された場合、対応するノズルの開孔部付近のインクが微振動するのみで、インクは吐出されない。したがって、周期Taにおいて、インクが媒体に着弾せず、媒体には、ドットが形成されない。
【0047】
ここで、電圧Vcで一定の波形とは、駆動信号VOUTとして台形波形Adp1,Adp2,Bdp1,Bdp2のいずれも選択されていない場合にヘッドチップ300に供給される電圧であって、具体的には、台形波形Adp1,Adp2,Bdp1,Bdp2の直前の電圧Vcがヘッドチップ300に保持された電圧値の波形である。そのため、駆動信号VOUTとして台形波形Adp1,Adp2,Bdp1,Bdp2のいずれも選択されていない場合には、電圧Vcが駆動信号VOUTとしてヘッドチップ300に供給されることとなる。
【0048】
次に、駆動信号選択回路200の構成、及び動作について説明する。図4は、駆動信号選択回路200の構成を示す図である。図4に示すように、駆動信号選択回路200は、選択制御回路210と、複数の選択回路230とを含む。また、図4には、駆動信号選択回路200から出力される駆動信号VOUTが供給されるヘッドチップ300の一例を図示している。図4に示すように、ヘッドチップ300は、それぞれが圧電素子60を有するm個の吐出部600を含む。
【0049】
選択制御回路210には、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及びクロック信号SCKが入力される。選択制御回路210には、シフトレジスター(S/R)212とラッチ回路214とデコーダー216との組が、ヘッドチップ300が有するm個の吐出部600の各々に対応して設けられている。すなわち、駆動信号選択回路200は、ヘッドチップ300が有するm個の吐出部600と同数のシフトレジスター212とラッチ回路214とデコーダー216との組を含む。
【0050】
印刷データ信号SIは、クロック信号SCKに同期した信号であって、m個の吐出部600の各々に対して、大ドットLD、中ドットMD、小ドットSD、及び非記録NDのいずれかを選択するための2ビットの印刷データ[SIH,SIL]を含む、合計2mビットの信号である。入力される印刷データ信号SIは、m個の吐出部600に対応して、印刷データ信号SIに含まれる2ビット分の印刷データ[SIH,SIL]毎に、シフトレジスター212に保持される。具体的には、選択制御回路210は、m個の吐出部600に対応したm段のシフトレジスター212が互いに縦続接続されるとともに、印刷データ信号SIとしてシリアルで入力された印刷データ[SIH,SIL]が、クロック信号SCKに従って順次後段に転送される。なお、図4では、シフトレジスター212を区別するために、印刷データ信号SIが入力されるシフトレジスター212を、上流側から順に1段、2段、…、m段と表記している。
【0051】
m個のラッチ回路214の各々は、m個のシフトレジスター212の各々で保持された2ビットの印刷データ[SIH,SIL]をラッチ信号LATの立ち上がりでラッチする。
【0052】
図5は、デコーダー216におけるデコード内容を示す図である。デコーダー216は、ラッチされた2ビットの印刷データ[SIH,SIL]に従い選択信号S1,S2を出力する。例えば、デコーダー216は、2ビットの印刷データ[SIH,SIL]が[1,0]の場合、選択信号S1の論理レベルを、期間T1,T2においてH,Lレベルとして出力し、選択信号S2の論理レベルを、期間T1,T2においてL,Hレベルとして選択回路230に出力する。
【0053】
選択回路230は、吐出部600のそれぞれに対応して設けられている。すなわち、駆動信号選択回路200が有する選択回路230の数は、対応するヘッドチップ300が有する吐出部600と同じm個である。図6は、吐出部600の1個分に対応する選択回路230の構成を示す図である。図6に示すように、選択回路230は、NOT回路であるインバーター232a,232bとトランスファーゲート234a,234bとを有する。
【0054】
選択信号S1は、トランスファーゲート234aにおいて丸印が付されていない正制御端に入力される一方で、インバーター232aによって論理反転されて、トランスファーゲート234aにおいて丸印が付された負制御端に入力される。また、トランスファーゲート234aの入力端には、駆動信号COMAが供給される。選択信号S2は、トランスファーゲート234bにおいて丸印が付されていない正制御端に入力される一方で、インバーター232bによって論理反転されて、トランスファーゲート234bにおいて丸印が付された負制御端に入力される。また、トランスファーゲート234bの入力端には、駆動信号COMBが供給される。そして、トランスファーゲート234a,234bの出力端が共通に接続され、この出力端から駆動信号VOUTが出力される。
【0055】
具体的には、トランスファーゲート234aは、選択信号S1がHレベルの場合、入力端と出力端との間を導通とし、選択信号S1がLレベルの場合、入力端と出力端との間を非導通とする。また、トランスファーゲート234bは、選択信号S2がHレベルの場合、入力端と出力端との間を導通とし、選択信号S2がLレベルの場合、入力端と出力端との間を非導通とする。すなわち、選択回路230は、入力される選択信号S1,S2に基づいて駆動信号COMA,COMBの波形を選択し、選択した波形の駆動信号VOUTを出力する。
【0056】
図7を用いて、駆動信号選択回路200の動作について説明する。図7は、駆動信号選択回路200の動作を説明するための図である。印刷データ信号SIに含まれる印刷データ[SIH,SIL]は、クロック信号SCKに同期してシリアルで入力されて、吐出部600に対応するシフトレジスター212において順次転送される。そして、クロック信号SCKの入力が停止すると、各シフトレジスター212には、m個の吐出部600のそれぞれに対応した2ビットの印刷データ[SIH,SIL]が保持される。なお、印刷データ信号SIに含まれる印刷データ[SIH,SIL]は、シフトレジスター212のm段、…、2段、1段の吐出部600に対応した順に入力される。
【0057】
そして、ラッチ信号LATが立ち上がると、ラッチ回路214のそれぞれは、シフトレジスター212に保持されている2ビットの印刷データ[SIH,SIL]を一斉にラッチする。なお、図7において、LT1、LT2、…、LTmは、1段、2段、…、m段のシフトレジスター212に対応するラッチ回路214によってラッチされた2ビットの印
刷データ[SIH,SIL]を示している。
【0058】
デコーダー216は、ラッチされた2ビットの印刷データ[SIH,SIL]で規定されるドットのサイズに応じて、期間T1,T2のそれぞれにおいて、選択信号S1,S2の論理レベルを図5に示す内容で出力する。
【0059】
具体的には、デコーダー216は、入力される印刷データ[SIH,SIL]が[1,1]の場合、選択信号S1を期間T1,T2においてH,Hレベルとし、選択信号S2を期間T1,T2においてL,Lレベルとする。この場合、選択回路230は、期間T1において台形波形Adp1を選択し、期間T2において台形波形Adp2を選択する。その結果、図3に示した大ドットLDに対応する駆動信号VOUTが生成される。
【0060】
また、デコーダー216は、入力される印刷データ[SIH,SIL]が[1,0]の場合、選択信号S1を期間T1,T2においてH,Lレベルとし、選択信号S2を期間T1,T2においてL,Hレベルとする。この場合、選択回路230は、期間T1において台形波形Adp1を選択し、期間T2において台形波形Bdp2を選択する。その結果、図3に示した中ドットMDに対応する駆動信号VOUTが生成される。
【0061】
また、デコーダー216は、入力される印刷データ[SIH,SIL]が[0,1]の場合、選択信号S1を期間T1,T2においてH,Lレベルとし、選択信号S2を期間T1,T2においてL,Lレベルとする。この場合、選択回路230は、期間T1において台形波形Adp1を選択し、期間T2において台形波形Adp2,Bdp2のいずれも選択しない。その結果、図3に示した小ドットSDに対応する駆動信号VOUTが生成される。
【0062】
また、デコーダー216は、入力される印刷データ[SIH,SIL]が[0,0]の場合、選択信号S1を期間T1,T2においてL,Lレベルとし、選択信号S2を期間T1,T2においてH,Lレベルとする。この場合、選択回路230は、期間T1において台形波形Bdp1を選択し、期間T2において台形波形Adp2,Bdp2のいずれも選択しない。その結果、図3に示した非記録NDに対応する駆動信号VOUTが生成される。
【0063】
以上のように、駆動信号選択回路200は、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及びクロック信号SCKに基づいて、駆動信号COMA,COMBの波形を選択し、駆動信号VOUTとして出力する。そして、駆動信号選択回路200が、駆動信号COMA,COMBの波形を選択又は非選択とすることによって、媒体に形成されるドットのサイズが制御され、その結果、液体吐出装置1において、媒体に所望のサイズのドットが形成される。
【0064】
3.液体吐出装置の構造
次に、液体吐出装置1の概略構造について説明を行う。図8は、液体吐出装置1の概略構造を示す図である。図8には、互いに直交するX方向、Y方向、及びZ方向を示す矢印を示している。Y方向は媒体Pが搬送される搬送方向に相当し、X方向はY方向と直交し水平面に平行な方向であって主走査方向に相当し、Z方向は液体吐出装置1の上下方向であって液体吐出装置1が設置された場合における鉛直方向に相当する。ここで、以下の説明において、X方向、Y方向、及びZ方向の向きを特定する場合、X方向を示す矢印の先端側を+X側、起点側を-X側と称し、Y方向を示す矢印の先端側を+Y側、起点側を-Y側と称し、Z方向を示す矢印の先端側を+Z側、起点側を-Z側と称する場合がある。
【0065】
図8に示すように、液体吐出装置1は、上述した制御ユニット10、ヘッドユニット2
0、及び搬送ユニット40に加えて、インクを貯留する液体容器5を備える。
【0066】
制御ユニット10は、前述したとおりメイン制御回路11と電源回路12とを備え、ヘッドユニット20を含む液体吐出装置1の動作を制御する。また、制御ユニット10は、メイン制御回路11と電源回路12とに加え、液体吐出装置1の各種情報を記憶する記憶回路や液体吐出装置1の外部に設けられたホストコンピューター等と通信を行うためのインターフェース回路等を備えてもよい。
【0067】
そして、制御ユニット10は、液体吐出装置1の外部に設けられたホストコンピューター等の外部機器から入力される画像信号を受信し、受信した画像信号に基づいて、媒体Pの搬送を制御するための搬送制御信号PTを生成し搬送ユニット40に出力する。搬送ユニット40は、制御ユニット10から入力される搬送制御信号PTに基づいて、媒体PをY方向に沿って搬送する。このような搬送ユニット40は、媒体Pを搬送するための不図示のローラーや、当該ローラーを回転させるモーター等を含んで構成される。
【0068】
また、搬送ユニット40は、位置情報検出器41を有する。位置情報検出器41は、搬送する媒体Pの搬送のために回転するローラーの回転角度を検出するエンコーダーや、媒体Pが所定の位置に到達したか否かを検出する位置センサーなどを含む。そして、位置情報検出器41は、エンコーダー、及び位置センサーを含む位置情報検出器41が検出した媒体Pの搬送位置を示す搬送位置情報信号TPSを生成し、制御ユニット10に出力する。制御ユニット10は、入力される搬送位置情報信号TPSに基づいて搬送制御信号PTを生成し、ヘッドユニット20に出力する。
【0069】
液体容器5は、媒体Pに吐出されるインクが貯留されている。具体的には、液体容器5は、シアンC、マゼンタM、イエローY、ブラックKの4色のインクが個別に貯留される4個の容器を含む。そして、液体容器5に貯留されているインクは、不図示のチューブ等を介して、ヘッドユニット20に供給される。なお、液体容器5が備えるインクが貯留される容器は、4個に限られるものではなく、シアンC、マゼンタM、イエローY、ブラックK以外の色のインクが貯留される容器を含んでもよく、また、シアンC、マゼンタM、イエローY、ブラックKのいずれかの容器が複数個含まれていてもよい。
【0070】
ヘッドユニット20は、X方向に並んで配置された吐出ヘッド100a~100fを備える。ヘッドユニット20が備える吐出ヘッド100a~100fは、X方向に沿って、媒体Pの幅以上となるように、-X側から+X側に向かって、吐出ヘッド100a、吐出ヘッド100b、吐出ヘッド100c、吐出ヘッド100d、吐出ヘッド100e、吐出ヘッド100fの順に並んで配置されている。そして、ヘッドユニット20は、液体容器5から供給されたインクを吐出ヘッド100a~100fのそれぞれに分配するとともに、制御ユニット10から入力される画像情報信号IP、及び位置情報信号PSに基づいて動作することで、吐出ヘッド100a~100fのそれぞれから、媒体Pの所望の位置に液体容器5から供給されたインクを吐出させる。なお、ヘッドユニット20が有する吐出ヘッド100は6個に限られるものではなく、5個以下、又は7個以上であってもよい。
【0071】
以上のように、液体吐出装置1では、制御ユニット10が、ホストコンピューター等から入力される画像信号に基づく画像情報信号IPと、媒体の搬送位置に基づく位置情報信号PSと、を生成する。そして、制御ユニット10は、生成した画像情報信号IPと位置情報信号PSとに基づいて、ヘッドユニット20の動作を制御する。これにより、吐出ヘッド100a~100fのそれぞれが吐出したインクが、媒体Pの所望の位置に着弾する。その結果、媒体Pに所望の画像が形成される。
【0072】
4.ヘッドユニットの構造
次に、ヘッドユニット20の構造について説明する。図9は、ヘッドユニット20を-Z側から見た場合の分解斜視図である。また、図10は、ヘッドユニット20を+Z側から見た場合の分解斜視図である。
【0073】
図9及び図10に示すように、ヘッドユニット20は、液体容器5から供給されるインクをヘッドユニット20の内部に導入する導入構造体G1と、導入されたインクを吐出ヘッド100に導入する供給流路部G2と、インクを吐出する複数の吐出ヘッド100を有する液体吐出部G3と、吐出ヘッド100からのインクの吐出を制御する吐出制御部G4と、導入構造体G1、供給流路部G2、液体吐出部G3、及び吐出制御部G4を収容するヘッド収容部G5とを備える。そして、ヘッドユニット20において、導入構造体G1、供給流路部G2、液体吐出部G3、及び吐出制御部G4がZ方向に沿って、-Z側から+Z側に向かい、吐出制御部G4、導入構造体G1、供給流路部G2、液体吐出部G3の順に積層されるとともに、ヘッド収容部G5は、積層された吐出制御部G4、導入構造体G1、供給流路部G2、及び液体吐出部G3を収容するように位置している。そして、導入構造体G1、供給流路部G2、液体吐出部G3、吐出制御部G4、及びヘッド収容部G5は、不図示の接着剤やネジ等の固定手段によって互いに固定される。
【0074】
図9及び図10に示すように、導入構造体G1は、ヘッドユニット20に供給されるインクの種類の数に応じた複数の第1導入口SI1と、当該インクの種類の数及びヘッドユニット20が有する吐出ヘッド100の数に応じた複数の第1排出口DI1とを有する。なお、図9及び図10では、導入構造体G1が、8個の第1導入口SI1と、24個の第1排出口DI1とを有する場合を図示している。
【0075】
第1導入口SI1のそれぞれは、導入構造体G1の-Z側の面において、導入構造体G1の-Y側の辺に沿って並んで位置している。そして、第1導入口SI1のそれぞれには、図8に示す液体容器5からインクが供給される不図示のチューブ等が接続される。また、第1排出口DI1のそれぞれは、導入構造体G1の+Z側の面に位置している。そして、導入構造体G1の内部には、第1導入口SI1のいずれかと、第1排出口DI1の少なくともいずれかと、を連通するインク流路が形成されている。ここで、チューブ等が接続され、液体容器5から液体が供給される第1導入口SI1が液体供給口の一例である。
【0076】
供給流路部G2は、ヘッドユニット20が有する吐出ヘッド100の数に応じた複数の液体供給ユニットU2を有する。また、複数の液体供給ユニットU2のそれぞれは、ヘッドユニット20に供給されるインクの種類の数に応じた複数の第2導入口SI2と、ヘッドユニット20に供給されるインクの種類の数に応じた複数の第2排出口DI2とを有する。なお、図9及び図10では、供給流路部G2が、6個の液体供給ユニットU2を有し、6個の液体供給ユニットU2のそれぞれが、4個の第2導入口SI2と、4個の第2排出口DI2とを有する場合を図示している。
【0077】
第2導入口SI2のそれぞれは、液体供給ユニットU2の-Z側に位置している導入構造体G1が有する複数の第1排出口DI1と接続される。すなわち、供給流路部G2は、導入構造体G1が有する第1排出口DI1のそれぞれに対応する第2導入口SI2を有する。また、第2排出口DI2は、液体供給ユニットU2の-Z側に位置している。そして、液体供給ユニットU2の内部には、1個の第2導入口SI2と1個の第2排出口DI2とを連通するインク流路が形成されている。
【0078】
液体吐出部G3は、吐出ヘッド100a~100fと支持部材35とを有する。吐出ヘッド100a~100fのそれぞれは、支持部材35の+Z側に位置し、不図示の接着剤やネジ等の固定手段によって支持部材35に固定されている。また、支持部材35には、複数の第3導入口SI3に対応する開口部が形成されている。また、6個の吐出ヘッド1
00a~100fのそれぞれの-Z側には、複数の第3導入口SI3が位置している。この複数の第3導入口SI3が、支持部材35に形成された開口部を挿通することで、複数の第3導入口SI3が液体吐出部G3の-Z側に露出する。そして、第3導入口SI3のそれぞれは、供給流路部G2が有する第2排出口DI2と接続される。すなわち、液体吐出部G3は、供給流路部G2が有する第2排出口DI2のそれぞれに対応する第3導入口SI3を有する。
【0079】
ここで、液体容器5に貯留されているインクがヘッドユニット20が有する吐出ヘッド100に供給されるまでの流れについて説明する。液体容器5に貯留されているインクは、不図示のチューブ等を介して、導入構造体G1が有する第1導入口SI1に供給される。第1導入口SI1に供給されたインクは、導入構造体G1の内部に設けられた不図示のインク流路によって分配された後、第1排出口DI1を介して液体供給ユニットU2が有する第2導入口SI2に供給される。そして、第2導入口SI2に供給されたインクは、液体供給ユニットU2の内部に設けられたインク流路、及び第2排出口DI2を介して、液体吐出部G3が有する6個の吐出ヘッド100のそれぞれの第3導入口SI3に供給される。すなわち、導入構造体G1、及び液体供給ユニットU2は、第1排出口DI1からヘッドユニット20に供給されたインクを、ヘッドユニット20が有する複数の吐出ヘッド100のそれぞれに分配し供給する分配流路部材として機能する。
【0080】
ここで、ヘッドユニット20が有する吐出ヘッド100a~100fのヘッドユニット20における配置の一例について説明する。図11は、ヘッドユニット20を+Z側から見た場合の図である。図11に示すように、ヘッドユニット20が有する吐出ヘッド100a~100fは、それぞれが、X方向に並んで配置された6個のヘッドチップ300を有する。また、各ヘッドチップ300は、供給されるインクを媒体Pに吐出する複数のノズルNを有する。この各ヘッドチップ300が有する複数のノズルNは、Z方向に垂直な方向であって、且つX方向とY方向とが成す平面において、列方向RDに沿って並んで配置されている。以下の説明において、列方向RDに沿って並んで配置された複数のノズルNのことをノズル列と称する場合がある。なお、吐出ヘッド100a~100fのそれぞれが有するヘッドチップ300の数は6個に限られるものではない。
【0081】
次に、吐出ヘッド100の構造の一例について説明する。図12は、吐出ヘッド100の概略構成を示す分解斜視図である。図12に示すように、吐出ヘッド100は、フィルター部110、シール部材120、配線基板130、ホルダー140、6個のヘッドチップ300、及び固定板150を備える。そして、吐出ヘッド100は、Z方向に沿って-Z側から+Z側に向かい、フィルター部110、シール部材120、配線基板130、ホルダー140、固定板150の順に重ね合されて構成されるとともに、ホルダー140と固定板150との間に6個のヘッドチップ300が収容される。
【0082】
フィルター部110は、向かい合う2辺がX方向に沿って延在し、向かい合う2辺が列方向RDに沿って延在する略平行四辺形状である。フィルター部110は、4個のフィルター113と、4個の第3導入口SI3とを備える。4個の第3導入口SI3は、フィルター部110の-Z側に位置し、フィルター部110の内部に位置する4個のフィルター113に対応して設けられている。このフィルター113は、第3導入口SI3から供給されるインクに含まれる気泡や異物を捕集する。
【0083】
シール部材120は、フィルター部110の+Z側に位置し、向かい合う2辺がX方向に沿って延在し、向かい合う2辺が列方向RDに沿って延在する略平行四辺形状である。シール部材120の四隅には、フィルター部110から供給されたインクが流れる貫通孔125が設けられている。このようなシール部材120は、例えば、ゴム等の弾性部材によって形成されている。そして、シール部材120は、フィルター部110の+Z側の面
に設けられ、第3導入口SI3とフィルター113を介して連通する不図示の液体排出口と、後述するホルダー140の液体導入口145との間を液密に連通させる。
【0084】
配線基板130は、シール部材120の+Z側に位置し、向かい合う2辺がX方向に沿って延在し、向かい合う2辺が列方向RDに沿って延在する略平行四辺形状である。また、配線基板130の四隅には、シール部材120が有する貫通孔125を塞がないように設けられた切欠部135が形成されている。配線基板130には、吐出ヘッド100に供給された駆動信号COMA,COMBや電圧VHV等の各種信号をヘッドチップ300に伝搬するための配線が形成されている。
【0085】
ホルダー140は、配線基板130の+Z側に位置し、向かい合う2辺がX方向に沿って延在し、向かい合う2辺が列方向RDに沿って延在する略平行四辺形状である。ホルダー140は、第1ホルダー部材141、第2ホルダー部材142、及び第3ホルダー部材143を有する。第1ホルダー部材141、第2ホルダー部材142、及び第3ホルダー部材143は、Z方向に沿って、-Z側から+Z側に向かい第1ホルダー部材141、第2ホルダー部材142、第3ホルダー部材143の順に積層されている。また、第1ホルダー部材141と第2ホルダー部材142との間、及び第2ホルダー部材142と第3ホルダー部材143との間は、接着剤等によって接着されている。
【0086】
また、第3ホルダー部材143の内部には、+Z側に不図示の開口部が形成されている。この第3ホルダー部材143に形成された不図示の開口部は、ヘッドチップ300を収容するための収容空間として機能する。ここで、第3ホルダー部材143の内部に形成される収容空間は、6個のヘッドチップ300のそれぞれを個別に収容可能な複数の空間であってもよく、6個のヘッドチップ300を共通に収容可能な1つの空間であってもよい。また、ホルダー140には、6個のヘッドチップ300のそれぞれに対応するスリット孔146が設けられている。このスリット孔146には、駆動信号COMA,COMBや電圧VHV等の各種信号をヘッドチップ300に伝搬するためのフレキシブル配線基板346が挿通される。そして、第3ホルダー部材143の内部に形成された収容空間に収容された6個のヘッドチップ300は、接着剤等によりホルダー140に固定される。
【0087】
また、ホルダー140の上面の四隅には、4個の液体導入口145が設けられている。液体導入口145のそれぞれは、シール部材120に設けられた貫通孔125と接続される。これにより、第3導入口SI3から供給されたインクが、液体導入口145に供給される。そして、液体導入口145に供給されたインクは、6個のヘッドチップ300に対応して分配された後、6個のヘッドチップ300に供給される。
【0088】
固定板150は、ホルダー140の+Z側に位置し、6個のヘッドチップ300が収容される第3ホルダー部材143の内部に形成された収容空間を封止する。固定板150は、平面部151、第1折曲部152、第2折曲部153、及び第3折曲部154を有する。平面部151は、向かい合う2辺がX方向に沿って延在し、向かい合う2辺が列方向RDに沿って延在する略平行四辺形状である。平面部151には、ヘッドチップ300を露出させるための6個の開口部155が形成されている。そして、ヘッドチップ300は、平面部151に開口部155を介して2列のノズル列が露出するように固定板150に固定される。
【0089】
第1折曲部152は、平面部151のX方向に沿って延在する一方の辺と接続し-Z側に折り曲げられた平面部151と一体の部材であり、第2折曲部153は、平面部151の列方向RDに沿って延在する一方の辺と接続し-Z側に折り曲げられた平面部151と一体の部材であり、第3折曲部154は、平面部151の列方向RDに沿って延在する他方の辺と接続し-Z側に折り曲げられた平面部151と一体の部材である。
【0090】
ヘッドチップ300は、ホルダー140の+Z側であって固定板150の-Z側に位置する。そして、ヘッドチップ300は、ホルダー140の第3ホルダー部材143と固定板150とで形成された収容空間に収容されるとともに、第3ホルダー部材143、及び固定板150に固定される。
【0091】
ここで、ヘッドチップ300の構造の一例について説明する。図13は、ヘッドチップ300の概略構造を示す断面図である。なお、図13に示す断面図は、ヘッドチップ300を少なくとも1つのノズルNを含むように列方向RDと垂直な方向に切断した場合を示している。図13に示すように、ヘッドチップ300は、インクを吐出する複数のノズルNが設けられたノズルプレート310と、連通流路355、個別流路353、及びリザーバーRを画定する流路形成基板321と、圧力室Cを画定する圧力室基板322と、保護基板323と、コンプライアンス部330と、振動板340と、圧電素子60と、フレキシブル配線基板346と、リザーバーR及び液体導入口351を画定するケース324と、を有する。そして、ヘッドチップ300には、ホルダー140に設けられた不図示の液体排出口から液体導入口351を介してインクが供給される。
【0092】
ヘッドチップ300に供給されたインクは、リザーバーR、個別流路353、圧力室C、及び連通流路355を含み構成されたインク流路350を介して、ノズルNに到達する。そして、圧電素子60の駆動に伴い、ノズルNから吐出される。
【0093】
具体的には、インク流路350は、流路形成基板321、圧力室基板322、ケース324が、Z方向に沿って積層されることで構成されている。液体導入口351からケース324の内部に導入されたインクは、リザーバーRに貯留される。リザーバーRは、ノズル列を構成する複数のノズルNのそれぞれに対応する複数の個別流路353に連通する共通流路である。リザーバーRに貯留されたインクは、個別流路353を介して圧力室Cに供給される。
【0094】
圧力室Cは、貯留されるインクに圧力を加えることで、圧力室Cに供給されるインクを連通流路355を介してノズルNから吐出する。圧力室Cの-Z側には、圧力室Cを封止するように振動板340が位置し、振動板340の-Z側には、圧電素子60が位置している。圧電素子60は、圧電体と、圧電体の両面に形成された一対の電極とによって構成されている。そして、圧電素子60が有する一対の電極の一方に駆動信号VOUTが供給され、圧電素子60が有する一対の電極の他方に基準電圧信号VBSが供給されると、圧電体は一対の電極間に生じた電位差により変位し、その結果、圧電体を含む圧電素子60が駆動する。そして、圧電素子60の駆動に伴い、圧電素子60が設けられた振動板340が変形することで、圧力室Cの内圧が変化する。その結果、圧力室Cに貯留されているインクが、連通流路355を介してノズルNから吐出される。
【0095】
また、流路形成基板321の+Z側には、ノズルプレート310と、コンプライアンス部330とが固定されている。ノズルプレート310は、連通流路355の+Z側に位置している。ノズルプレート310には、複数のノズルNが列方向RDに沿って並設されている。コンプライアンス部330は、リザーバーR及び個別流路353の+Z側に位置し、封止膜331と、支持体332とを含む。封止膜331は、可撓性を有する膜状部材であり、リザーバーR及び個別流路353の+Z側を封止する。そして、封止膜331の外周縁が枠状の支持体332によって支持されている。また、支持体332の+Z側は、固定板150の平面部151に固定されている。以上のように構成されたコンプライアンス部330は、ヘッドチップ300を保護するとともに、リザーバーRの内部や個別流路253の内部におけるインクの圧力変動を低減する。
【0096】
ここで、圧電素子60、振動板340、ノズルN、個別流路353、圧力室C、及び連通流路355を含む構成が上述した吐出部600に相当する。
【0097】
図12に戻り、吐出ヘッド100は、液体容器5から供給されるインクを複数のノズルNに対して分配するとともに、フレキシブル配線基板346を介して供給される駆動信号VOUT、及び基準電圧信号VBSに基づき生じる圧電素子60の駆動によりノズルNからインクを吐出する。ここで、駆動信号VOUTを出力する駆動信号選択回路200は、配線基板130に設けられていてもよく、また、ヘッドチップ300のそれぞれに対応するフレキシブル配線基板346に設けられていてもよい。
【0098】
図9、及び図10に戻り、吐出制御部G4は、導入構造体G1の-Z側に位置し、配線基板410と配線基板420とを含む。
【0099】
配線基板410は、面411と、面411の反対側に位置する面412とを含み、向かい合う2辺がX方向に沿って延在し、向かい合う2辺がY方向に沿って延在する略矩形上である。そして、配線基板410は、面412が導入構造体G1、供給流路部G2、及び液体吐出部G3側を向き、面411が導入構造体G1、供給流路部G2、及び液体吐出部G3とは反対側を向くように配置される。配線基板410の面411には、駆動信号COMA,COMBを出力する駆動信号出力回路50が設けられている。具体的には、面411には、駆動信号出力回路50が出力する駆動信号COMA1,COMB1,COMA2,COMB2のそれぞれを出力する4組のD級増幅回路であって、詳細には、D級増幅回路の動作を制御する半導体装置と、当該半導体装置から出力される信号を増幅する1対のトランジスターと、一対のトランジスターの中点に出力される信号を平滑するコイル及びコンデンサーと、の組が、X方向に沿って4組、並設されている。
【0100】
また、配線基板410の面412には、コネクター413が設けられている。コネクター413は、吐出ヘッド100に出力する駆動信号出力回路50で生成された駆動信号COMA1,COMB1,COMA2,COMB2が伝搬するとともに、駆動信号出力回路50が出力する駆動信号COMA1,COMA2,COMB1,COMB2の基となる基駆動信号dA1,dB1,dA2,dB2を含む複数の信号が伝搬する。
【0101】
配線基板420は、面421と、面421の反対側に位置する面422とを含み、向かい合う2辺がX方向に沿って延在し、向かい合う2辺がY方向に沿って延在する略矩形上である。また、配線基板420の-Y側には、導入構造体G1が有する第1導入口SI1が通過するための切欠部427が形成されている。そして、配線基板420は、配線基板410の+Z側であって、鉛直方向であるZ方向に沿って、面421が鉛直方向の上方である-Z側を向き、面422が鉛直方向の下方である+Z側を向くように設けられている。すなわち、配線基板420は、配線基板410と、導入構造体G1、供給流路部G2、及び液体吐出部G3との間に位置している。
【0102】
図9及び図10に示すように、配線基板420の面421には、半導体装置423、コネクター424,425,426が設けられている。
【0103】
コネクター424は、配線基板410に設けられたコネクター413と接続される。このようなコネクター424としては、配線基板410と配線基板420とを電気的に接続するBtoB(Board To Board)コネクターが用いられる。そして、コネクター424は、配線基板420の+X側の領域において、且つ配線基板420の-Y側の辺に沿って位置している。
【0104】
半導体装置423は、前述したヘッド制御回路21の少なくとも一部を構成する回路部
品であって、例えば、SoCで構成されている。半導体装置423は、コネクター424よりも配線基板420の-X側の領域であって、好ましくは、-Z側から+Z側に吐出制御部G4を見た場合に、配線基板420と重ならない位置に設けられている。
【0105】
コネクター426には、ヘッドユニット20の電源電圧として機能する電圧VHV,VDDと、媒体Pの搬送位置を示す位置情報信号PSとが入力される。すなわち、コネクター426は、ヘッドユニット20の電源電圧である電圧VHVが供給される端子と、ヘッドユニット20の電源電圧である電圧VDDが供給される端子と、媒体Pの搬送位置を示す位置情報信号PSが入力される端子とを含む複数の端子を有する。そして、コネクター426は、半導体装置423の-Y側であって、切欠部427の-X側において、ヘッドユニット20の電源電圧である電圧VHVが供給される端子と、ヘッドユニット20の電源電圧である電圧VDDが供給される端子と、媒体Pの搬送位置を示す位置情報信号PSが入力される端子とを含む複数の端子がX方向に沿って並ぶように配置される。
【0106】
図14は、コネクター426が有する端子で伝搬する信号の一例を示す図である。なお、図14では、X方向に沿って並ぶ端子を、-X側から+X側に向かい順に端子426-1,426-2,…,426-7,426-8と称する。図14に示すように、コネクター426が有する複数の端子の内、端子426-1には、ヘッドユニット20の基準電位を示すグラウンド信号GNDが伝搬する。また、端子426-1の+X側に位置する端子426-2には、ヘッドユニット20の電源電圧である電圧VDDが伝搬する。また、端子426-2の+X側に位置する端子426-3には、ヘッドユニット20の基準電位を示すグラウンド信号GNDが伝搬する。また、端子426-3の+X側に位置する端子426-4には、ヘッドユニット20の電源電圧である電圧VHVが伝搬する。
【0107】
さらに、端子426-4の+X側に位置する端子426-5~426-8には、媒体Pの搬送位置を示す位置情報信号PSが伝搬する。具体的には、端子426-4の+X側に位置する端子426-5には、位置情報信号PSとして、媒体Pはインクの吐出領域にまで搬送されてきたことを示す印刷前位置情報信号PS-ppが伝搬し、端子426-5の+X側に位置する端子426-6には、位置情報信号PSとして、搬送ユニット40により搬送される媒体Pが、エンコーダー等により搬送位置を検出するための基準位置に到達したことを示す搬送基準位置情報信号PS-bpが伝搬し、端子426-6の+X側に位置する端子426-7,426-8には、基準位置に媒体Pが到達した後の搬送位置を示すエンコーダー等により検出された搬送位置情報信号PS-enc1,PS-enc2が伝搬する。
【0108】
ここで、コネクター426に含まれる複数の端子の内、電圧VHVが供給される端子426-4が第2端子の一例であり、電圧VDDが供給される端子426-2が第2端子の他の一例である。また、位置情報信号PSとしての印刷前位置情報信号PS-ppが伝搬する端子426-5、搬送基準位置情報信号PS-bpが伝搬する端子426-6、搬送位置情報信号PS-enc1,PS-enc2が伝搬する端子426-7,426-8の少なくともいずれかが第3端子の一例である。
【0109】
図9及び図10に戻り、コネクター425には、制御ユニット10が出力する画像情報信号IPが入力される。すなわち、コネクター425は、入力される画像情報信号IPが伝搬する複数の端子を有する。そして、コネクター425は、半導体装置423の-Y側であって、且つコネクター426の-X側において、画像情報信号IPが入力される複数の端子がX方向に沿って並ぶように配置される。すなわち、コネクター425とコネクター426とは、配線基板410の-Y側の辺に沿ってコネクター425が-X側、コネクター426が+X側に位置するように並んで設けられている。
【0110】
ここで、前述の通り、コネクター425に入力される画像情報信号IPは、差動信号等の電気信号であって、例えばPCIe等の高速通信の通信規格に準拠した信号である。そのため、コネクター425、及びコネクター425に接続されるケーブルは、数Gbpsの信号を安定して伝搬することが可能な構成であることが好ましく、例えば、コネクター425は、このような高速通信に適したHDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)通信規格に準拠した高速信号の伝搬が可能なHDMIコネクターや、USB(Universal Serial Bus)通信規格に準拠した高速信号の伝搬が可能なUSBコネクター等の高速伝送用コネクターが用いられることが好ましく、また、コネクター425に接続されるケーブルは、HDMI通信規格に準拠した高速信号の伝搬が可能なHDMIケーブルや、USB通信規格に準拠した高速信号の伝搬が可能なUSBケーブル等の、高速伝送用ケーブルであることが好ましい。すなわち、コネクター425は、高速伝送用コネクターであって、画像情報信号IPは、当該高速伝送用コネクターに含まれる複数の端子を伝搬する。
【0111】
以上のように、PCIeの通信規格に準拠した画像情報信号IPが入力されるコネクター425として、HDMI通信規格に準拠した信号の伝搬が可能なHDMIコネクターや、USB通信規格に準拠した信号の伝搬が可能なUSBコネクター等の高速伝搬用コネクターを用いることで、コネクター425に画像情報信号IPが伝搬するケーブルが取り付けられた場合における接触抵抗等の影響を低減することができる。さらに、コネクター425として、HDMIコネクターやUSBコネクターなどの高速伝送用コネクターを用いることで、コネクター425に接続され画像情報信号IPを伝搬するケーブルも、HDMIケーブルやUSBケーブル等の高速伝送用ケーブルを用いることが可能となり、その結果、ケーブルを伝搬する画像情報信号IPにノイズが重畳するおそれも低減する。
【0112】
また、コネクター425としてHDMIコネクターやUSBコネクターを用いることで、適合するHDMIケーブル、又はUSBケーブルの着脱が容易となり、ヘッドユニット20の交換などの液体吐出装置1のメンテナンス性を向上させることができる。すなわち、画像情報信号IPが入力されるコネクター425として高速伝送用コネクターを用いることで、伝搬される画像情報信号IPの信号精度、及びヘッドユニット20のメンテナンス性が向上する。
【0113】
また、コネクター425としてHDMIコネクターを用いた場合、HDMIコネクターがUSBコネクターよりも多くの端子を有するが故に、画像情報信号IPを複数の差動信号をパラレル形式に伝搬することが可能となり、コネクター425としてUSBコネクターを用いた場合と比較して、さらなる伝搬速度の向上が可能となる。一方で、コネクター425として、USBコネクターを用いた場合、USBコネクターの端子間隔がHDMIコネクターの端子間隔よりも広いが故に、仮に、液体容器5から供給されるインクが第1導入口SI1の近傍で漏れ出したインクが、コネクター425に付着した安倍であっても、コネクター425が有する端子間で短絡等の異常が生じるおそれが低減し、その結果、インクがコネクター425に付着することに起因して液体吐出装置1の動作の安定性が低下するおそれが低減する。ここで、コネクター425に含まれる複数の端子の内、画像情報信号IPが入力される端子が第1端子の一例である。
【0114】
ここで、本実施形態では、コネクター426には、ヘッドユニット20の電源電圧として機能する電圧VHV,VDDと、媒体Pの搬送位置を示す位置情報信号PSとが入力される端子がコネクター426に含まれ、制御ユニット10が出力する画像情報信号IPが入力される端子がコネクター425に含まれるとして説明を行ったが、ヘッドユニット20の電源電圧として機能する電圧VHV,VDDと、媒体Pの搬送位置を示す位置情報信号PSとが入力される端子と、制御ユニット10が出力する画像情報信号IPが入力される端子と、が1つのコネクターに含まれていてもよい。
【0115】
しかしながら、本実施形態に示すように、ヘッドユニット20の電源電圧として機能する電圧VHV,VDDと、媒体Pの搬送位置を示す位置情報信号PSとが入力される端子と、制御ユニット10が出力する画像情報信号IPが入力される端子とを異なるコネクターに含まれるとすることで、PCIe等の高速通信の通信規格に準拠した画像情報信号IPと、電圧値が大きく画像情報信号IPと比較して通信速度が低速な電圧VHV,VDD、及び位置情報信号PSとが相互に干渉するおそれが低減する。その結果、画像情報信号IP、電圧VHV,VDD、及び位置情報信号PSに基づいてヘッドユニット20で生成される各種信号の精度が向上し、液体吐出装置1の動作の安定性がさらに向上する。
【0116】
ヘッド収容部G5は、開口孔451,452,453が形成された筐体450を含む。筐体450は、Z方向に沿ってみた場合に、X方向に沿って延在する一対の長辺と、Y方向に沿って延在する一対の短辺とを含む略矩形状であり、例えば、アルミなどの金属、若しくは樹脂により形成されている。また、筐体450の+Z側には、開口部454が形成されている。この開口部454には、導入構造体G1、供給流路部G2、液体吐出部G3、及び吐出制御部G4が収容される。すなわち、開口部454は、導入構造体G1、供給流路部G2、液体吐出部G3、及び吐出制御部G4を収容する主要空間として機能する。そして、開口部454に収容された導入構造体G1、供給流路部G2、液体吐出部G3、及び吐出制御部G4は、不図示の接着剤やネジ等の固定手段により筐体450と固定される。ここで、開口部454は、導入構造体G1、供給流路部G2、及び液体吐出部G3を収容した状態で、液体吐出部G3が有する支持部材35より封止される構成であってもよい。
【0117】
開口孔451,452,453は、筐体450の-Y側において、X方向に沿って-X側から+X側に向かい開口孔451、開口孔452、開口孔453の順に並んで位置している。開口孔451には、収容空間に収容された吐出制御部G4が有するコネクター425が挿通する。開口孔452には、収容空間に収容された吐出制御部G4が有するコネクター426が挿通する。また、開口孔453には、導入構造体G1が有する第1導入口SI1が、配線基板420の切欠部427を通過した後、挿通する。すなわち、筐体450の内部に収容された導入構造体G1、供給流路部G2、及び液体吐出部G3にインクを供給する第1導入口SI1や、液体吐出部G3、及び吐出制御部G4に各種信号を伝搬するためのコネクター425,426を、ヘッドユニット20の外部に露出するための開口である。これにより、導入構造体G1、供給流路部G2、液体吐出部G3、及び吐出制御部G4を、筐体450にて保護するとともに、ヘッドユニット20の交換などが容易となり、液体吐出装置1のメンテナンス性を向上させることができる。なお、図9及び図10では、開口孔453が2つであるとして図示しているが、開口孔453は、1つであってもよく、また、3つ以上であってもよい。
【0118】
ここで、筐体450に収容された状態におけるコネクター425、コネクター426、及び第1導入口SI1のヘッドユニット20における配置について図15、及び図16を用いて説明する。図15は、ヘッドユニット20を-Y側から見た場合の側面図である。図16は、ヘッドユニット20を-Z側から見た場合の上面図である。
【0119】
図15及び図16に示すように、ヘッドユニット20において、コネクター425,426と第1導入口SI1とは、筐体450のX方向に延在し、-Y側に位置する一辺であって、筐体450の-Y側に位置する長辺に沿って、-X側から+X側に向かいコネクター425、コネクター426、第1導入口SI1の順に並んで位置している。
【0120】
すなわち、電源電圧としての電圧VHV,VDDが供給される端子と、媒体Pの搬送位置を示す位置情報信号PSとが入力される端子とを含むコネクター426は、X方向と交
差するY方向から見た場合に、画像情報信号IPが入力される端子を含むコネクター425と、液体容器5からインクが供給される第1導入口SI1との間に位置している。
【0121】
画像情報信号IPは、液体吐出装置1の動作を制御するための重要な信号であり、特に、画像情報信号IPが数GHzの転送を可能とする高速通信に準拠した信号である場合、電圧振幅が非常に小さい。そのため、画像情報信号IPが伝搬するコネクター425に含まれる端子に液体容器5から第1導入口SI1に導入されるインクが漏れ出し付着した場合、電源電圧としての電圧VHV,VDDが供給される端子や、媒体Pの搬送位置を示す位置情報信号PSとが入力される端子に液体容器5から第1導入口SI1に導入されるインクが漏れ出し付着した場合と比較して、液体吐出装置1に誤動作が生じるおそれが高まる。
【0122】
電源電圧としての電圧VHV,VDDが供給される端子と、媒体Pの搬送位置を示す位置情報信号PSとが入力される端子とを含むコネクター426が、X方向と交差するY方向から見た場合に、画像情報信号IPが入力される端子を含むコネクター425と、液体容器5からインクが供給される第1導入口SI1との間に位置することで、画像情報信号IPが入力される端子を含むコネクター425と、液体容器5からインクが供給される第1導入口SI1とを離して設けることが可能となり、その結果、液体容器5から第1導入口SI1に導入されるインクが漏れ出した場合であっても、当該インクが画像情報信号IPが入力される端子を含むコネクター425に付着するおそれが低減し、その結果、液体吐出装置1に誤動作が生じるおそれが低減される。
【0123】
さらに、図15に示すように、Z方向において、コネクター426と第1導入口SI1とが並ぶ図15に示す方向αとコネクター425とコネクター426とが並ぶX方向とが異なる方向となるように、コネクター425,426、及び第1導入口SI1が位置している。これにより、コネクター425と、第1導入口SI1とをさらに離して設けることが可能となり、その結果、液体容器5から第1導入口SI1に導入されるインクが漏れ出した場合であっても、当該インクが画像情報信号IPが入力される端子を含むコネクター425に付着するおそれがさらに低減し、その結果、液体吐出装置1に誤動作が生じるおそれがさらに低減される。
【0124】
また、図15に示すように、第1導入口SI1は、コネクター425とコネクター426とが並ぶX方向に沿った方向において、コネクター425とコネクター426よりも+Z側に位置している。換言すれば、Z方向において、コネクター425,426は、第1導入口SI1よりも鉛直上方に位置している。
【0125】
液体容器5から第1導入口SI1に導入されるインクが漏れ出した場合、当該インクは重力の影響により鉛直下方に移動する。第1導入口SI1よりも鉛直上方に位置していることにより、液体容器5から第1導入口SI1に導入されるインクが漏れ出した場合であっても、当該インクがコネクター425,426に付着するおそれがさらに低減し、その結果、液体吐出装置1に誤動作が生じるおそれがさらに低減される。
【0126】
ここで、コネクター425とコネクター426とが並ぶX方向が第1方向の一例であり、X方向と交差するY方向が第2方向の一例であり、コネクター426と第1導入口SI1とが並ぶ方向αが第3方向の一例である。
【0127】
5.作用効果
以上のように、本実施形態における液体吐出装置1では、ヘッドユニット20は、
電源電圧としての電圧VHV,VDDが供給される端子と、媒体Pの搬送位置を示す位置情報信号PSとが入力される端子とを含むコネクター426が、液体容器5からインクが
供給される第1導入口SI1とを有し、電源電圧としての電圧VHV,VDDが供給される端子と、媒体Pの搬送位置を示す位置情報信号PSとが入力される端子とを含むコネクター426が並ぶX方向と交差するY方向から見た場合に、コネクター425と第1導入口SI1との間にコネクター426が位置する。これにより、液体吐出装置1を制御するにあたり需要な信号であって、高い周波数、且つ電圧振幅の小さな画像情報信号IPが入力される端子を含むコネクター425と、液体容器5からインクが供給される第1導入口SI1とを離して設けることができる。その結果、液体容器5から第1導入口SI1に導入されるインクが漏れ出した場合であっても、当該インクが、画像情報信号IPが入力される端子を含むコネクター425に付着するおそれが低減する。したがって、液体容器5から第1導入口SI1に導入されるインクが漏れ出した場合であっても、当該漏れ出したインクにより、液体吐出装置1に誤動作が生じるおそれが低減される。
【0128】
以上、実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば、上記の実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0129】
本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0130】
上述した実施形態から以下の内容が導き出される。
【0131】
液体吐出装置の一態様は、
液体を吐出するノズルを含むヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットの動作を制御する制御信号を出力する制御回路と、
前記ヘッドユニットに電源電圧を供給する電源回路と、
液体を貯留する液体容器と、
を備え、
前記ヘッドユニットは、
前記制御信号が入力される第1端子と、
前記電源電圧が供給される第2端子と、
液体が供給される液体供給口と、
を有し、
前記第1端子と前記第2端子とは、第1方向に沿って並んで位置し、
前記第2端子は、前記第1方向と交差する第2方向において、前記第1端子と前記液体供給口との間に位置している。
【0132】
この液体吐出装置によれば、制御信号が入力される第1端子と、液体が供給される液体供給口と、の間に電源電圧が供給される第2端子が位置することで、制御信号が入力される第1端子と、液体が供給される液体供給口と、を離して設けることが可能となり、その結果、液体が供給される液体供給口からインクが漏れ出した場合であっても、制御信号が入力される第1端子に漏れ出したインクが付着するおそれが低減し、液体吐出装置の動作の安定性が低下するおそれを低減することができる。
【0133】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記第2端子と前記液体供給口とは、前記第1方向及び前記第2方向と異なる第3方向に沿って並んで位置していてもよい。
【0134】
この液体吐出装置によれば、制御信号が入力される第1端子と、液体が供給される液体供給口と、をさらに離して設けることが可能となり、その結果、液体が供給される液体供給口からインクが漏れ出した場合であっても、制御信号が入力される第1端子に漏れ出したインクが付着するおそれがさらに低減し、液体吐出装置の動作の安定性が低下するおそれをさらに低減することができる。
【0135】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記第1端子は、前記液体供給口よりも鉛直上方に位置していてもよい。
【0136】
液体が供給される液体供給口からインクが漏れ出した場合、漏れ出したインクは、呪力により鉛直下方に移動する。この液体吐出装置によれば、液体が供給される液体供給口よりも制御信号が入力される第1端子が鉛直上方に位置することで、液体が供給される液体供給口からインクが漏れ出した場合であっても、制御信号が入力される第1端子に漏れ出したインクが付着するおそれがさらに低減し、液体吐出装置の動作の安定性が低下するおそれをさらに低減することができる。
【0137】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記ヘッドユニットと、液体が吐出される媒体との相対的位置関係に基づく位置情報信号を出力する位置情報検出器を備え、
前記ヘッドユニットは、
前記位置情報信号が入力される第3端子を有し、
前記第3端子は、前記第2方向において、前記第1端子と前記液体供給口との間に位置していてもよい。
【0138】
この液体吐出装置によれば、制御信号が入力される第1端子と、液体が供給される液体供給口と、の間に電源電圧が供給される第2端子に加えて位置情報信号が入力される第3端子が位置することで、制御信号が入力される第1端子と、液体が供給される液体供給口と、をさらに離して設けることが可能となり、その結果、液体が供給される液体供給口からインクが漏れ出した場合であっても、制御信号が入力される第1端子に漏れ出したインクが付着するおそれがさらに低減し、液体吐出装置の動作の安定性が低下するおそれをさらに低減することができる。
【0139】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記ヘッドユニットは、筐体を含み、
前記第1端子、前記第2端子、及び前記液体供給口は、前記筐体の一辺に沿って並んで位置していてもよい。
【0140】
この液体吐出装置によれば、制御信号が入力される第1端子と、電源電圧が供給される第2端子と、液体が供給される液体供給口とを、筐体の一辺に沿って配置することで、メンテナンス等において、ヘッドユニットを取り外す際の作業性を向上させることができる。すなわち、液体吐出装置のメンテナンス性を向上させることができる。
【0141】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記第1端子、前記第2端子、及び前記液体供給口は、前記筐体の長辺に沿って並んで位置していてもよい。
【0142】
この液体吐出装置によれば、制御信号が入力される第1端子と、電源電圧が供給される第2端子と、液体が供給される液体供給口とを、筐体の長辺に沿って配置することで、メンテナンス等において、ヘッドユニットを取り外す際の作業性を向上させることができる
とともに、制御信号が入力される第1端子と、電源電圧が供給される第2端子と、液体が供給される液体供給口との相互の間隔を広くすることが可能となり、液体が供給される液体供給口からインクが漏れ出した場合であっても、制御信号が入力される第1端子に漏れ出したインクが付着するおそれがさらに低減する。すなわち、液体吐出装置のメンテナンス性を向上させるとともに、制御信号が入力される第1端子に漏れ出したインクが付着するおそれをさらに低減し、液体吐出装置の動作の安定性が低下するおそれをさらに低減することができる。
【0143】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記第1端子と前記第2端子とは、異なるコネクターに設けられていてもよい。
【0144】
この液体吐出装置によれば、制御信号が入力される第1端子と、電源電圧が供給される第2端子との間隔を広くすることが可能となり、したがって、制御信号が入力される第1端子と液体が供給される液体供給口との間隔を広くすることができる。したがって、制御信号が入力される第1端子に漏れ出したインクが付着するおそれをさらに低減し、液体吐出装置の動作の安定性が低下するおそれをさらに低減することができる。
【0145】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記第1端子は、高速伝送用コネクターに設けられていてもよい。
【0146】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記高速伝送用コネクターは、USBコネクターであってもよい。
【0147】
この液体吐出装置によれば、制御信号が入力される第1端子を含むUSBコネクターと当該USBコネクターに取り付けられるケーブルとの着脱が容易となり、その結果、液体吐出装置のメンテナンス性をさらに向上することができる。
【0148】
ヘッドユニットの一態様は、
制御信号が入力される第1端子と、
電源電圧が供給される第2端子と、
液体が供給される液体供給口と、
を有し、
前記第2端子は、前記第1端子と前記第2端子とが並ぶ第1方向と交差する第2方向において、第前記第1端子と前記液体供給口との間に位置している。
【0149】
このヘッドユニットによれば、制御信号が入力される第1端子と、液体が供給される液体供給口と、の間に電源電圧が供給される第2端子が位置することで、制御信号が入力される第1端子と、液体が供給される液体供給口と、を離して設けることが可能となり、その結果、液体が供給される液体供給口からインクが漏れ出した場合であっても、制御信号が入力される第1端子に漏れ出したインクが付着するおそれが低減し、ヘッドユニットの動作の安定性が低下するおそれを低減することができる。
【符号の説明】
【0150】
1…液体吐出装置、5…液体容器、10…制御ユニット、11…メイン制御回路、12…電源回路、20…ヘッドユニット、21…ヘッド制御回路、22-1,22-2,22-3…差動信号復元回路、35…支持部材、40…搬送ユニット、41…位置情報検出器、50…駆動信号出力回路、51-1,51-2,51-3…駆動回路、60…圧電素子、100…吐出ヘッド、110…フィルター部、113…フィルター、120…シール部材、125…貫通孔、130…配線基板、135…切欠部、140…ホルダー、141…第1ホルダー部材、142…第2ホルダー部材、143…第3ホルダー部材、145…液
体導入口、146…スリット孔、150…固定板、151…平面部、152…第1折曲部、153…第2折曲部、154…第3折曲部、155…開口部、200…駆動信号選択回路、210…選択制御回路、212…シフトレジスター、214…ラッチ回路、216…デコーダー、230…選択回路、232a,232b…インバーター、234a,234b…トランスファーゲート、253…個別流路、300…ヘッドチップ、310…ノズルプレート、321…流路形成基板、322…圧力室基板、323…保護基板、324…ケース、330…コンプライアンス部、331…封止膜、332…支持体、340…振動板、346…フレキシブル配線基板、350…インク流路、351…液体導入口、353…個別流路、355…連通流路、410…配線基板、411,412…面、413…コネクター、420…配線基板、421,422…面、423…半導体装置、424,425,426…コネクター、426-1~426-7…端子、427…切欠部、450…筐体、451,452,453…開口孔、454…開口部、600…吐出部、C…圧力室、DI1…第1排出口、DI2…第2排出口、G1…導入構造体、G2…供給流路部、G3…液体吐出部、G4…吐出制御部、G5…ヘッド収容部、P…媒体、R…リザーバー、SI1…第1導入口、SI2…第2導入口、SI3…第3導入口、U2…液体供給ユニット
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