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特許7517031高圧水素に触れる中空成形品および高圧水素に触れる中空成形品の製造方法
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  • 特許-高圧水素に触れる中空成形品および高圧水素に触れる中空成形品の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】高圧水素に触れる中空成形品および高圧水素に触れる中空成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/00 20060101AFI20240709BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20240709BHJP
   C08L 91/06 20060101ALI20240709BHJP
   F17C 1/16 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B29C45/00
C08L77/00
C08L91/06
F17C1/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020163117
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2021075047
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】P 2019198209
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 翔太
(72)【発明者】
【氏名】落合 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 定之
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/168731(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/051733(WO,A1)
【文献】特開2003-127304(JP,A)
【文献】特開2002-179910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 70/00-70/88
B29C 48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧水素に触れる中空成形品であって、前記中空成形品の、中空成形品外面から深さ方向に100μmまでの平均結晶化度、および中空成形品内面から深さ方向に100μmまでの平均結晶化度が、それぞれ15%以上であることを特徴とする高圧水素に触れる中空成形品であり、前記中空成形品が、ポリアミド6樹脂(A)100重量部に対して、DSC測定による融点が245℃以下であり、光散乱測定において温度250℃から20℃/分の速度で冷却して測定した際のインバリアントQの立ち上がり時間がポリアミド6樹脂(A)のインバリアントQの立ち上がり時間よりも短いポリアミド樹脂(B)を0.01~5重量部配合してなるポリアミド樹脂組成物からなることを特徴とする中空成形品
【請求項2】
高圧水素に触れる中空成形品であって、前記中空成形品の、中空成形品外面から深さ方向に100μmまでの平均結晶化度、および中空成形品内面から深さ方向に100μmまでの平均結晶化度が、それぞれ15%以上であることを特徴とする高圧水素に触れる中空成形品であり、前記中空成形品が、ポリアミド6樹脂(A)100重量部に対し、アミド系ワックス(C)を0.01~10重量部配合してなるポリアミド樹脂組成物からなることを特徴とする中空成形品。
【請求項3】
高圧水素に触れる中空成形品であって、前記中空成形品の、中空成形品外面から深さ方向に100μmまでの平均結晶化度、および中空成形品内面から深さ方向に100μmまでの平均結晶化度が、それぞれ15%以上であることを特徴とする高圧水素に触れる中空成形品であり、前記中空成形品が、ポリアミド6樹脂(A)100重量部に対し、耐衝撃材(D)を1~50重量部配合してなるポリアミド樹脂組成物からなることを特徴とする中空成形品。
【請求項4】
高圧水素に触れる中空成形品であって、前記中空成形品の、中空成形品外面から深さ方向に100μmまでの平均結晶化度、および中空成形品内面から深さ方向に100μmまでの平均結晶化度が、それぞれ15%以上であることを特徴とする高圧水素に触れる中空成形品であり、前記中空成形品が、ポリアミド6樹脂(A)100重量部に対し、金属ハロゲン化物(E)を0.01~1重量部配合してなるポリアミド樹脂組成物からなることを特徴とする中空成形品。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載の中空成形品の製造方法であって、射出成形、押出成形、ブロー成形より選ばれたいずれかの成形方法により成形する、中空成形品の製造方法。
【請求項6】
押出成形により成形する、請求項に記載の中空成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧水素に触れる中空成形品およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、石油燃料の枯渇や、有害ガス排出量の削減の要請に対応するために、水素と空気中の酸素を電気化学的に反応させて発電する燃料電池を自動車に搭載し、燃料電池が発電した電気をモータに供給して駆動力とする燃料電池電気自動車が注目されてきている。自動車搭載用の高圧水素用タンクとして、樹脂製のライナーの外側を炭素繊維強化樹脂で補強してなる樹脂製タンクが検討されている。しかしながら、水素は分子サイズが小さいため、比較的分子サイズの大きい天然ガスなどに比べ、樹脂中を透過しやすく、また、高圧水素は常圧の水素に比べ、樹脂中に蓄積される量が多くなる。したがって、これまでの樹脂製タンクでは、高圧水素の充填および放圧を繰り返すと、タンクの変形や破壊が起こる課題があった。
【0003】
ガスバリア性に優れ、低温でも優れた耐衝撃性を有する水素タンクライナーとして、例えば、ポリアミド6、共重合ポリアミド、および耐衝撃材を含むポリアミド樹脂組成物からなる水素タンクライナーが検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、中空成形品表面から500μm内側の部分における平均球晶サイズが20μm以下であるポリアミド樹脂組成物からなる中空成形品についても検討がされている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-191871号公報
【文献】国際公開第2018/051733号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された水素タンクライナーは、外面および内面の結晶化度が低く、線膨張係数が大きくなるため、高圧水素の充填および放圧の際の温度変化によって膨張と収縮を繰り返すことで水素タンクライナーに繰り返し負荷が掛かることにより割れが生じやすく破断する懸念があった。さらに外面および内面の結晶化度が低いことから樹脂中への水素ガスの溶解が生じやすく、高圧水素の充填および放圧を繰り返すと、水素タンクライナーに欠陥点が生じる課題があった。
【0007】
特許文献2に記載された水素タンクライナーは、球晶サイズを制御することで樹脂中への水素ガスの溶解を抑制し、高圧水素の充填および放圧を繰り返しても、水素タンクライナーに欠陥点は生じない。しかしながら、外面および内面の結晶化度を制御していないため水素タンクライナーの線膨張係数が若干大きくなり高圧水素の充填および放圧の際の温度変化によって膨張と収縮を繰り返すことで中空成形品に繰り返し負荷が掛かり、割れが生じやすく破断する懸念があった。
【0008】
本発明は上記従来技術の課題に鑑み、高圧水素の充填および放圧時の際の温度変化による割れや破断が発生せず、高圧水素の充填および放圧を繰り返しても欠陥点が生じない中空成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
【0010】
高圧水素に触れる中空成形品であって、前記中空成形品の、中空成形品外面から深さ方向に100μmまでの平均結晶化度、および中空成形品内面から深さ方向に100μmまでの平均結晶化度が、それぞれ15%以上である高圧水素に触れる中空成形品である。
【0011】
また、本発明は射出成形、押出成形、ブロー成形のいずれかの成形方法により中空成形品を得る中空成形品の製造方法を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の中空成形品は、線膨張係数を小さくすることができ、高圧水素の充填および放圧時の際の温度変化による割れや破断が発生せず、かつ高圧水素の充填および放圧を繰り返しても欠陥点が生じない特徴を活かし、高圧水素に触れる中空成形品として有用に用いる事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1で使用したポリアミド6樹脂のインバリアントQの測定結果のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0015】
本発明の高圧水素に触れる中空成形品(以下、「中空成形品」と記載する場合がある)は、中空成形品外面(中空成形品の外側の表面)から深さ方向に100μmまでの平均結晶化度(以下、「中空成形品外面平均結晶化度」と記載する場合がある)、および中空成形品内面(中空成形品の内側の表面)から深さ方向に100μmまでの平均結晶化度(以下、「中空成形品内面平均結晶化度」と記載する場合がある)が、それぞれ15%以上であることを特徴とする。
【0016】
本発明の中空成形品は、樹脂材料からなることが好ましく、樹脂成分およびその他添加剤を含む樹脂組成物からなることが好ましい。また、樹脂成分は熱可塑性樹脂が好ましい。
【0017】
本発明の中空成形品は、中空成形品外面平均結晶化度、および中空成形品内面平均結晶化度が、それぞれ15%以上である。中空成形品外面平均結晶化度および中空成形品内面平均結晶化度が15%未満である中空成形品は中空成形品の線膨張係数が大きくなり、たとえば水素充填および放圧の際の温度変化によって中空成形品が膨張と収縮を繰り返すことで中空成形品に繰り返し負荷が掛かった場合に割れが生じやすく、破断の懸念がある。
【0018】
したがって、高圧水素の充填および放圧を繰り返す事によって生じる欠陥点の発生を抑制でき、かつ水素充填時の温度変化による中空成形品の膨張および収縮によって繰り返し負荷が掛かることで生じる割れの発生を抑制できることから、中空成形品外面平均結晶化度および中空成形品内面平均結晶化度は共に15%以上であり、16%以上が好ましく、17%以上がより好ましい。
【0019】
中空成形品外面平均結晶化度および中空成形品内面平均結晶化度の差は、中空成形品外面と内面での線膨張係数差を小さくする観点から、より小さい方が好ましく、5.0%以下が好ましく、4.0%以下がさらに好ましく、3.0%以下がより好ましい。通常、射出成形では中空成形品外面平均結晶化度と中空成形品内面平均結晶化度は近しい値になることが多く、押出成形やブロー成形では中空成形品外面平均結晶化度よりも中空成形品内面平均結晶化度が高くなることが多い。
【0020】
ここで中空成形品外面平均結晶化度および中空成形品内面平均結晶化度は、レーザーラマン分光法を用いて測定を行った。以下、測定例を挙げる。たとえば、ポリアミド樹脂組成物からなる中空成形品の場合は、中空成形品から試料を切り出し、切り出した試料の樹脂流れ方向と平行な面が現れるように、ミクロトームを用いて中空成形品断面の面出しを行う。面出しした試料からRENISHAW社製「in Via」を用いて中空成形品外面から深さ100μmまでおよび、中空成形品内面から深さ100μmまでをそれぞれライン上にラマンスペクトルを取得する。測定モードは顕微ラマンモードで行い、対物レンズ:×100、ビーム径:1×10μm Line、光源:半導体レーザー 785nm、レーザーパワー:100mW、回折格子:Single 1200gr/mm、スリット:65μm、検出器:CCD/RENISHAW 1024×256の設定で測定を行う。得られたラマンスペクトルから結晶性に相関するパラメータとして1635cm-1付近のC=O伸縮バンドのバンド半値幅を算出し、ポリアミド6の二軸延伸フィルムで得られたバンド半値幅と結晶化度の関係から近似プロットを行い、そこから中空成形品外面平均結晶化度および中空成形品内面平均結晶化度を算出する事ができる。ポリアミド6の二軸延伸フィルムの結晶化度については、リガク社製の回転対陰極型X線回折装置(RINT-TRIII型)を用いて、フィルム面に平行にX線を入射し、X線回折法(ルーランド法)により測定した上で、所定の計算式に基づき算出する。すなわち、広角X線回折プロファイルから、非晶域に由来する散乱領域と結晶領域に由来する散乱領域とを分離し、以下の式にしたがって、全散乱強度に対する結晶域での散乱強度の比として、結晶化度を算出する事ができる。
結晶化度=(結晶域の散乱強度)/(結晶域の散乱強度+非晶域での散乱強度)×100。
【0021】
かかる中空成形品の中空成形品外面平均結晶化度および中空成形品内面平均結晶化度を15%以上とする方法としては、そのような中空成形品が得られる限りにおいて特に制限はないが、成形方法を射出成形とした場合、高温仕様水循環型金型温調機や、カートリッチヒーターや、油循環型金型温調機等を使用し、金型温度を100℃以上に設定して成形を行う方法等があげられる。成形方法を押出成形とした場合、温度の異なる複数のサイジングダイスを使用し徐冷する方法や、中空成形品に100℃前後の熱風をあて徐冷する方法等があげられる。成形方法をブロー成形とした場合、高温仕様水循環型金型温調機や、カートリッチヒーターや、油循環型金型温調機等を使用し、金型温度を100℃以上に設定して成形を行う方法等が上げられる。
【0022】
本発明の中空成形品の厚みは特に制限はないが、0.5mm~5mmの範囲が好ましい。厚みが0.5mm以下では成形時に厚みの制御が困難になり、5mm以上では水素タンクとして用いた際に充填水素量が少なくなるため好ましくない。
【0023】
中空成形品の厚みは0.5~4mmが好ましく、0.5~3mmがより好ましく、0.5~2mmがさらに好ましい。
【0024】
本発明の中空成形品は、ポリアミド樹脂組成物からなることが好ましい。本発明の中空成形品を成形する際に用いるポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂100重量部に対し、その他の成分を0~50重量部配合してなるポリアミド樹脂組成物であることが好ましい。その他の成分が50重量部を超えると樹脂組成物全体におけるポリアミド樹脂の割合が減るため、水素タンクライナーとして用いた場合に、水素透過係数が大きくなるため、高圧水素の充填および放出によって欠陥点が生じることから好ましくない。さらに中空成形品外面平均結晶化度および中空成形品内面平均結晶化度が低下し、線膨張係数が大きくなるため好ましくない。また、ポリアミド単体でその他の成分を含まないものであってもよい。
【0025】
本発明の中空成形品は、ポリアミド樹脂を配合してなることが好ましい。本発明のポリアミド樹脂は、アミド結合を有する高分子からなる樹脂のことであり、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる原料とするものである。その原料の代表例としては、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸;ε-カプロラクタム、ω-ラウロラクタムなどのラクタム;テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン;メタキシレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン;1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂環族ジアミン;アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が挙げられる。本発明においては、これらの原料から誘導されるポリアミドホモポリマーまたはコポリマーを用いることができる。かかるポリアミド樹脂を2種以上配合してもよい。
【0026】
本発明において好ましく用いられるポリアミド樹脂(A)の具体的な例としては、ポリカプロアミド(ポリアミド6) 、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリペンタメチレンアジパミド(ポリアミド56)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ポリアミド66/6I/6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ポリアミド6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ-2-メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/M5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/5T)およびこれらの混合物ないし共重合体などが挙げられる。
【0027】
とりわけ好ましいものとしては、ポリアミド6樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミド610樹脂、ポリアミド11樹脂、ポリアミド12樹脂、ポリアミド6/66コポリマー、ポリアミド6/12コポリマーなどの例を挙げることができる。特に好ましいものとしては、ポリアミド6 樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミド610樹脂を挙げることができる。更にこれらのポリアミド樹脂を混合物として用いることも実用上好適である。
【0028】
とりわけ好ましいポリアミド樹脂の混合物としては、ポリアミド6樹脂(A)、およびDSC測定による融点が245℃以下であり、かつ光散乱測定において、温度250℃から20℃/分の速度で冷却して測定した際のインバリアントQの立ち上がり時間が、ポリアミド6樹脂(A)のインバリアントQの立ち上がり時間よりも短いポリアミド樹脂(B)(以下、ポリアミド樹脂(B)と呼ぶことがある。)を配合してなるポリアミド樹脂であって、かつ、ポリアミド6樹脂(A)100重量部に対して、ポリアミド樹脂(B)を0.01~5重量部配合してなるポリアミド樹脂組成物であることが好ましい。ポリアミド樹脂(B)を0.01重量部以上配合することにより、中空成形品外面平均結晶化度および中空成形品内面結晶化度が上昇することで線膨張係数が小さくなるため好ましい。一方、配合量を5重量部以下に抑えることで、ポリアミド(B)樹脂の自己凝集を抑制することため好ましい。ポリアミド(B)樹脂の配合量は0.1~4.5重量部が好ましく、0.5~4.5重量部がより好ましく、1.0~4.0重量部がさらに好ましい。
【0029】
本発明に用いられるポリアミド6樹脂(A)とは、6-アミノカプロン酸および/またはε-カプロラクタムを主たる原料とするポリアミド樹脂である。本発明の目的を損なわない範囲で、他の単量体が共重合されたものでもよい。ここで、「主たる原料とする」とは、ポリアミド樹脂を構成する単量体単位の合計100モル%中、6-アミノカプロン酸由来の単位またはε-カプロラクタム由来の単位を合計50モル% 以上含むことを意味する。6-アミノカプロン酸由来の単位またはε-カプロラクタム由来の単位を70モル%以上含むことがより好ましく、90モル% 以上含むことがさらに好ましい。
【0030】
共重合される他の単量体としては、例えば、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ω-ラウロラクタムなどのラクタム; テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン;メタキシレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン;1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサンビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂環族ジアミン;アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が挙げられる。これらを2種以上共重合してもよい。
【0031】
本発明に用いられるポリアミド樹脂(B)とは、DSC測定による融点が245℃以下であり、かつ光散乱測定において、温度250℃から20℃/分の速度で冷却して測定した際のインバリアントQの立ち上がり時間が、ポリアミド6樹脂(A)のインバリアントQの立ち上がり時間よりも短いポリアミド樹脂組成物であることが好ましい。
【0032】
ここで、本発明におけるポリアミド6樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)のDSC測定による融点は、次の方法により求めることができる。まず、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製DSC-7)を用い、2点校正(インジウム、鉛)、ベースライン補正を行う。サンプル量を8~10mgとして、昇温速度20℃/分の条件で昇温して得られる融解曲線の最大値を示す温度より15℃高い温度で1分間保持した後、20℃/分の降温速度で30℃まで冷却する。さらに、温度30℃で1分間保持した後、20℃/分の速度で、1回目の昇温工程と同様に、2回目の昇温工程を行う。この2回目の昇温工程において観測される融解吸熱ピーク温度を融点とする。
【0033】
ここで、本発明におけるポリアミド6樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)のインバリアントQの立ち上がり時間は、次の方法により求めることができる。まず、サンプル8~10mgをカバーガラスに挟み、リンカム社製ホットステージ「CSS-450W」に供し、温度250℃で30秒保持してサンプルを溶融させる。その後、20℃/分の速度で180℃まで降温させる。その際、大塚電子株式会社製高分子フィルムダイナミックス解析装置「DYNA-3000」を使用し、モード:1次元スキャン(1×512)、X方向:中央部4素子分を積算し1データとしてカウント、NDフィルター:5%、測定間隔:1秒、露光時間:500ミリ秒、ゴニオ角度:20度の条件で、降温開始時点を0とした時の、インバリアントQの立ち上がり時間を計測する。ここで、インバリアントQの立ち上がり時間は、降温開始時のインバリアントQの値を0とし、インバリアントQが増加し始めた時点を指す。
【0034】
図1に、後述の実施例1で使用したポリアミド6樹脂のインバリアントQの測定結果のグラフを示す。横軸は降温開始からの経過時間を表し、縦軸はインバリアントQの値を表す。図1(b)は、図1(a)の拡大図である。図1(b)において、符号1はインバリアントQの立ち上がり時間を表す。
【0035】
ポリアミド樹脂(B)は、融点およびインバリアントQの立ち上がり時間が上記の条件を満たすポリアミド樹脂であれば、特に制限はないが、一般的に、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる原料として得ることができる。その原料の代表例としては、先に上げたポリアミド樹脂の原料と同じ化合物が挙げられる。
【0036】
本発明において好ましく用いられるポリアミド樹脂(B)の具体的な例としては、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、あるいは、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリペンタメチレンアジパミド(ポリアミド56)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)およびポリテトラメチレンセバカミド(ポリアミド410)から選択される1種以上とポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)およびポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)から選択される1種以上とのコポリマーが挙げられる。これらの中でも、平均球晶サイズがより微細化し結晶化度が向上することから、ポリアミド610樹脂がより好ましい。
【0037】
ポリアミド6樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)の重合度には特に制限がないが、樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が、1.5~7.0の範囲であることが好ましい。相対粘度が1.5以上であれば、成形時のポリアミド樹脂組成物の溶融粘度が適度に高くなり、成形時の空気の巻き込みを抑制し、成形性をより向上させることができる。相対粘度は1.8以上がより好ましい。一方、相対粘度が7.0以下であれば、成形時のポリアミド樹脂組成物の溶融粘度が適度に低くなり、成形性をより向上させることができる。
【0038】
ポリアミド6 樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)のアミノ末端基量には特に制限がないが、1.0~10.0× 10-5mol/gの範囲であることが好ましい。アミノ末端基量が1.0~10.0× 10-5mol/gの範囲であれば、十分な重合度が得られ、成形品の機械強度を向上させることができる。ここで、ポリアミド樹脂のアミノ末端基量は、ポリアミド樹脂を、フェノール・エタノール混合溶媒(83.5:16.5(体積比))に溶解し、0.02N塩酸水溶液を用いて滴定することにより求めることができる。
【0039】
本発明のポリアミド樹脂組成物はポリアミド6樹脂(A)100重量部に対しアミド系ワックス(C)を0.01~10重量部含むことが好ましい。アミド系ワックス(C)を0.01重量部配合することで、成形時の離型性が向上し、かつ中空成形品外面平均結晶化度および中空成形品内面平均結晶化度が上昇することで、線膨張係数を小さくすることが出来るため好ましい。一方配合量を10重量部以下にすることで、アミド系ワックスの自己凝集を抑制できるため好ましい。アミド系ワックスの配合量は、0.1~7.0重量部が好ましく、0.5~6.0重量部がより好ましく、1.0~5.0重量部がさらに好ましい。
【0040】
アミド系ワックス(C)とは、モノカルボン酸とジアミンを反応せしめてなるアミド化合物、モノアミンと多塩基酸を反応せしめてなるアミド化合物、モノカルボン酸と多塩基酸とジアミンを反応せしめてなるアミド化合物などが挙げられる。これらは相当するアミンとカルボン酸の脱水反応等により得ることができる。
【0041】
前記モノアミンとしては炭素数5以上のモノアミンが好ましく、その具体例としては、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミンなどが例示でき、これらは2種以上を併用しても良い。中でも炭素数10以上20以下の高級脂肪族モノアミンが特に好ましい。炭素数が20より大きくなると、ポリアミド樹脂との相溶性が低下し、析出する恐れがある。
【0042】
前記モノカルボン酸は炭素数5以上の脂肪族モノカルボン酸およびヒドロキシカルボン酸が好ましく、その具体例としては、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ベヘン酸、モンタン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、安息香酸などが挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。中でも炭素数10以上30以下の高級脂肪族モノカルボン酸が特に好ましい。炭素数が30より大きくなると、ポリアミド6樹脂との相溶性が低下し、析出する恐れがある。
【0043】
前記ジアミンの具体例としてはエチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノプロパン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、トリレンジアミン、フェニレンジアミン、イソホロンジアミンなどが挙げられ、これらは2種以上を併用しても良い。なかでもエチレンジアミンが特に好適である。
【0044】
前記多塩基酸とは、二塩基酸以上のカルボン酸であり、その具体例としてはマロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ピメリン酸、アゼライン酸などの脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シクロへキサンジカルボン酸、シクロヘキシルコハク酸などの脂環式ジカルボン酸などが挙げられ、これらは2種以上を併用しても良い。
【0045】
中でも高級脂肪族モノカルボン酸、多塩基酸およびジアミンを反応せしめたアミド化合物が特に好適であり、例えば、ステアリン酸、セバシン酸およびエチレンジアミンを反応せしめてなるアミド化合物が好ましく挙げられる。その際の各成分の混合割合は、高級脂肪族モノカルボン酸2 モルに対し、多塩基酸0.18~1.0モル、ジアミン1.0モル~2.2モルの範囲が好適であり、高級脂肪族モノカルボン酸2モルに対し、多塩基酸0.5モル~1.0モル、ジアミン1.5モル~2.0モルの範囲が更に好適である。
【0046】
本発明のポリアミド樹脂組物はポリアミド6樹脂(A)100重量部に対し耐衝撃材(D)を1~50重量部配合することが好ましい。耐衝撃材(D)を1重量部以上配合することで、靱性が向上するため好ましい。一方、配合量を50重量部以下にすることで、中空成形品外面平均結晶化度および中空成形品内面平均結晶化度が上昇するため好ましい。耐衝撃材(D)の配合量は3~50重量部が好ましく、5~40重量部がより好ましく、10~30重量部がさらに好ましい。
【0047】
本発明に用いられる耐衝撃材(D)としては、たとえばオレフィン系樹脂、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴム、フッ素系ゴム、スチレン系ゴム、ニトリル系ゴム、ビニル系ゴム、ウレタン系ゴム、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、アイオノマーなどが挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。
【0048】
これらの中でも、耐衝撃性に優れることから、オレフィン系樹脂が好ましく用いられる。オレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブテン、ペンテンなどのオレフィン単量体を重合して得られる熱可塑性樹脂である。2種以上のオレフィン単量体の共重合体であってもよいし、これらのオレフィン単量体と他の単量体との共重合体であってもよい。オレフィン系樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ1-ブテン、ポリ1-ペンテン、ポリメチルペンテンなどの重合体またはこれらの共重合体;エチレン/α-オレフィン共重合体、エチレン/α,β-不飽和カルボン酸エステル共重合体、α-オレフィン/α,β-不飽和カルボン酸エステル共重合体、[(エチレンおよび/またはプロピレン)とビニルアルコールエステルとの共重合体]の少なくとも一部を加水分解して得られるポリオレフィン、(エチレンおよび/またはプロピレン)と(不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステル)との共重合体、[(エチレンおよび/またはプロピレン)と(不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステル)との共重合体]のカルボキシル基の少なくとも一部を金属塩化して得られるポリオレフィン、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素とのブロック共重合体またはその水素化物などが挙げられる。これらの中でも、エチレン/α-オレフィン共重合体、エチレン/α,β-不飽和カルボン酸エステル共重合体がより好ましく、エチレン/α-オレフィン共重合体がさらに好ましい。
【0049】
また、前記オレフィン系樹脂は、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されていてもよい。ここで、不飽和カルボン酸の誘導体とは、不飽和カルボン酸のカルボキシル基のヒドロキシ基部分を他の置換基で置換した化合物であり、不飽和カルボン酸の金属塩、酸ハロゲン化物、エステル、酸無水物、アミドおよびイミドなどである。このような変性オレフィン系樹脂を用いることにより、ポリアミド6樹脂(A)との相溶性が一層向上し、押出成形性をより向上させることができる。不飽和カルボン酸およびその誘導体としては、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メチルマレイン酸、メチルフマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸およびこれらカルボン酸の金属塩;マレイン酸水素メチル、イタコン酸水素メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸2-エチルヘキシル、メタアクリル酸ヒドロキシエチル、メタアクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチルなどの不飽和カルボン酸エステル;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ-(2,2,1)-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸、エンドビシクロ-(2,2,1)-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸無水物などの酸無水物;マレイミド、N-エチルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸などが挙げられる。これらの中でも、不飽和ジカルボン酸およびその酸無水物が好ましく、マレイン酸または無水マレイン酸が特に好ましい。
【0050】
これらの不飽和カルボン酸またはその誘導体をオレフィン系樹脂に導入する方法としては、例えば、オレフィン単量体と、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体を共重合する方法、ラジカル開始剤を用いて、未変性オレフィン系樹脂に、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体をグラフト導入する方法などを挙げることができる。不飽和カルボン酸および/またはその誘導体成分の導入量は、例えば、オレフィン系樹脂100重量部に対して、好ましくは不飽和カルボン酸および/またはその誘導体を0.1~3重量部、より好ましくは0.3重量部~2.5重量部である。0.1重量部以上とすることで、ポリアミド6樹脂(A)との相溶性が向上することで靱性が向上するため好ましい。3重量部以下とすることで、ポリアミド6樹脂(A)との異常な反応が生じてゲル化することを抑制できるため好ましい。
【0051】
エチレン/α-オレフィン共重合体としては、エチレンと炭素原子数3~20のα-オレフィンとの共重合体が好ましい。炭素数3~20のα-オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセンなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらα-オレフィンの中でも、炭素数3~12のα-オレフィンが、機械強度の向上の観点から好ましい。さらに、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、2,5-ノルボルナジエン、5-エチリデンノルボルネン、5-エチル-2,5-ノルボルナジエン、5-(1’-プロペニル)-2-ノルボルネンなどの非共役ジエンの少なくとも1種が共重合されていてもよい。不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されたエチレンと炭素数3~12のα-オレフィンとの共重合体が、ポリアミド6樹脂(A)との相溶性を一層向上させ、成形性や靭性をより向上させることができるので、より好ましい。また、より高圧の水素で充填および放圧を繰り返しても、欠陥点の発生を抑制することができる。エチレン/α-オレフィン共重合体中のα-オレフィン含有量は、好ましくは1~30モル%、より好ましくは2~25モル%、さらに好ましくは3~20モル%である。
【0052】
耐衝撃材(D)の構造は、特に限定されず、例えば、ゴムからなる少なくとも1つの層と、それとは異種の重合体からなる1つ以上の層からなる、いわゆるコアシェル型と呼ばれる多層構造体であってもよい。多層構造体を構成する層の数は、2層以上であればよく、3層以上または4層以上であってもよいが、内部に1層以上のゴム層(コア層)を有することが好ましい。多層構造体のゴム層を構成するゴムの種類は、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル成分、シリコーン成分、スチレン成分、ニトリル成分、共役ジエン成分、ウレタン成分、エチレン成分、プロピレン成分、イソブテン成分などを重合させて得られるゴムが挙げられる。多層構造体のゴム層以外の層を構成する異種の重合体の種類は、熱可塑性を有する重合体であれば特に限定されるものではないが、ゴム層よりもガラス転移温度が高い重合体が好ましい。熱可塑性を有する重合体としては、例えば、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、不飽和カルボン酸単位、不飽和グリシジル基含有単位、不飽和ジカルボン酸無水物単位、脂肪族ビニル単位、芳香族ビニル単位、シアン化ビニル単位、マレイミド単位、不飽和ジカルボン酸単位およびその他のビニル単位などを含有する重合体が挙げられる。
【0053】
本発明のポリアミド樹脂組物はポリアミド6樹脂(A)100重量部に対し金属ハロゲン化物(E)を0.01~1重量部配合してなることが好ましい。金属ハロゲン化物(E)を0.01重量部以上配合することで、成形時の滞留安定性を向上できるため好ましい。一方、1重量部以下にすることで、金属ハロゲン化物の自己凝集を抑制することができるため好ましい。金属ハロゲン化物の配合量は0.02~0.5重量部が好ましく、0.04~0.3重量部であることがより好ましい。
【0054】
本発明に用いられる金属ハロゲン化物(E)としてはたとえば、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどのアルカリ金属ハロゲン化物、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどのアルカリ土類金属ハロゲン化物;ヨウ化マンガン(II)、臭化マンガン(II)、塩化マンガン(II)などの第7族金属ハロゲン化物;ヨウ化鉄(II)、臭化鉄(II)、塩化鉄(II)などの第8族金属ハロゲン化物;ヨウ化コバルト(II)、臭化コバルト(II)、塩化コバルト(II)などの第9族金属ハロゲン化物;ヨウ化ニッケル(II)、臭化ニッケル(II)、塩化ニッケル(II)などの第10族金属ハロゲン化物;ヨウ化銅(I)、臭化銅(I)、塩化銅(I)などの第11族金属ハロゲン化物;ヨウ化亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛などの第12族金属ハロゲン化物;ヨウ化アルミニウム(III)、臭化アルミニウム(III)、塩化アルミニウム(III)などの第13族金属ハロゲン化物;ヨウ化スズ(II)、臭化スズ(II)、塩化スズ(II)などの第14族金属ハロゲン化物;三ヨウ化アンチモン、三臭化アンチモン、三塩化アンチモン、ヨウ化ビスマス(III)、臭化ビスマス(III)、および塩化ビスマス(III)などの第15族金属ハロゲン化物などが挙げられる。これらを2種以上併用することができる。これらの中でも、入手が容易で、ポリアミド6樹脂(A)への分散性に優れ、ラジカルとの反応性がより高く、かつ、滞留安定性をより向上させるという観点から、アルカリ金属ハロゲン化物および/またはヨウ化銅が好ましい。ガス発生量を低減させるという観点から、アルカリ金属ハロゲン化物中でもアルカリ金属ヨウ化物がより好ましく用いられる。
【0055】
本発明の中空成形品を形成するポリアミド樹脂組成物には、その特性を損なわない範囲で、必要に応じて、前記成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)および成分(E)以外のその他の成分を配合しても構わない。その他の成分としては、例えば、充填材、前記(A)および(B)以外の熱可塑性樹脂、各種添加剤、結晶核剤を上げることができる。
【0056】
例えば、充填材を配合することにより、成形品の強度、寸法安定性等を向上させることができる。充填材の形状は、繊維状であっても非繊維状であってもよく、繊維状充填材と非繊維状充填材を組み合わせて用いてもよい。繊維状充填材としては、例えば、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などが挙げられる。非繊維状充填材としては、例えば、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩;アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの金属炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属硫酸塩;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物;ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素および炭化珪素などが挙げられる。これらは中空であってもよい。また、これら繊維状および/または非繊維状充填材を、カップリング剤で予備処理して使用してもよく、より優れた機械特性を得る観点において好ましい。カップリング剤としては、例えば、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などが挙げられる。
【0057】
熱可塑性樹脂としては、例えば、前記成分(A)および成分(B)以外のポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスルホン樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂やABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリアルキレンオキサイド樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。かかる熱可塑性樹脂を2種以上配合することも可能である。なお、前記成分(A)および成分(B)以外のポリアミド樹脂を配合する場合には、ポリアミド樹脂(A)100重量部に対し、4重量部以下が好ましい。
【0058】
各種添加剤としては、例えば、着色防止剤、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミンなどの酸化防止剤、エチレンビスステアリルアミドや高級脂肪酸エステルなどの離型剤、可塑剤、熱安定剤、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤、発泡剤などが挙げられる。
【0059】
結晶核剤としては、無機系結晶核剤および有機系結晶核剤が上げられる。
【0060】
無機系結晶核剤の具体例としては、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト、マイカ、合成マイカ、クレイ、ゼオライト、シリカ、グラファイト、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、硫化カルシウム、窒化ホウ素、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウムおよびフェニルホスホネートの金属塩などが挙げられ、これらは1種でもよく、2種以上を併用してもよい。これらの無機系結晶核剤は、樹脂組成物中での分散性を向上させるために、有機物で修飾されていることが好ましい。
【0061】
有機系結晶核剤の具体例としては、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸カルシウム、安息香酸マグネシウム、安息香酸バリウム、テレフタル酸リチウム、テレフタル酸ナトリウム、テレフタル酸カリウム、シュウ酸カルシウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸カルシウム、オクタコサン酸ナトリウム、オクタコサン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、トルイル酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、サリチル酸亜鉛、アルミニウムジベンゾエート、カリウムジベンゾエート、リチウムジベンゾエート、ナトリウムβ-ナフタレート、ナトリウムシクロヘキサンカルボキシレートなどの有機カルボン酸金属塩、p-トルエンスルホン酸ナトリウム、スルホイソフタル酸ナトリウムなどの有機スルホン酸塩、ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、トリメシン酸トリス(t-ブチルアミド)などのカルボン酸アミド、エチレン-アクリル酸またはメタクリル酸コポリマーのナトリウム塩、スチレン-無水マレイン酸コポリマーのナトリウム塩などのカルボキシル基を有する重合体のナトリウム塩またはカリウム塩(いわゆるアイオノマー)、ベンジリデンソルビトールおよびその誘導体、ナトリウム-2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェートなどのリン化合物金属塩および2,2-メチルビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニルナトリウムなどが挙げられる。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
【0062】
次に、本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法について説明する。本発明のポリアミド樹脂組成物は溶融状態の製造や溶液状態での製造などが上げられる。生産性の観点から、溶融状態での製造が好ましく使用できる。溶融状態での製造については、押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロールによる溶融混練等が使用でき、生産性の点から、連続的に製造可能な押出機による溶融混練が好ましく使用できる。押出機としては、単軸押出機、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機、二軸単軸複合押出機等が挙げられる。これらの押出機を複数組み合わせてもよい。混練性、反応性、生産性の向上の点から、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機が好ましく、二軸押出機がより好ましい。
【0063】
二軸押出機を用いた溶融混練方法としては、たとえば、ポリアミド6樹脂(A)と必要に応じて、ポリアミド樹脂(B)、アミド系ワックス(C)、耐衝撃材(D)、金属ハロゲン化物(E)、および(A)~(E)以外の成分を予備混合して、シリンダー温度がポリアミド6樹脂(A)の融点以上に設定された二軸押出機に供給して溶融混練する手法が挙げられる。原料の混合順序に特に制限はなく、全ての原料を上記の方法により溶融混練する方法、一部の原料を上記の方法により溶融混練し、さらに残りの原料を配合して溶融混練する方法、あるいは一部の原料を溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。また押出機途中で真空状態に曝して発生するガスを除去する方法も好ましく使用される。
【0064】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、回転成形、圧縮成形、真空成形等から選ばれる任意の方法により成形して成形品を得ることが可能である。成形方法としては中空成形品を成形するにあたっては、長さ方向への制限がないことから押出成形が最も好ましい。
【0065】
本発明の中空成形品は、他の中空成形品または成形品と溶着してもよい。例えば、円筒形状の中空成形品を形成する場合は、中空成形品を円筒の高さに対し垂直方向に半分に縦割りにした形状の成形体2つを溶着により接合することによって中空成形品を形成する方法、中空成形品を円筒の高さに対し水平方向に半分に横割りにした形状の成形体2つを溶着により接合することによって中空成形品を形成する方法、中空成形品の両端部をふさぐ、半円状、楕円状などの形状をしている鏡板2つと、筒状の胴部を溶着により接合することによって中空成形品を形成する方法等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0066】
溶着方法としては、たとえば、熱板溶着、振動溶着、赤外線溶着、レーザー溶着および赤外線にて溶着部を温めた後に振動溶着を行う赤外線/振動溶着により選ばれた溶着方法が好ましく用いられる。
【0067】
本発明の中空成形品は、高圧水素の充填および放圧を繰り返しても欠陥点の発生が抑制される優れた特徴を活かして、高圧水素に触れる中空成形品に用いられる。ここでいう高圧水素に触れる中空成形品とは、常圧以上の圧力の水素に触れる中空成形品である。高圧水素の充填および放圧を繰り返したときの欠陥点の発生を抑制する効果を奏することから、圧力20MPa以上の水素に触れる中空成形品用途に好ましく用いられ、30MPa以上の水素に触れる中空成形品用途により好ましく用いられる。一方、圧力200MPa以下の水素に触れる中空成形品用途に好ましく用いられ、150MPa以下の水素に触れる中空成形品用途により好ましく用いられ、100MPa以下の水素に触れる中空成形品用途にさらに好ましく用いられる。高圧水素に触れる中空成形品としては、例えば、高圧水素用ホース、高圧水素用タンク、高圧水素用タンクライナー、高圧水素用パイプ、高圧水素用チューブ等が挙げられる。中でも、高圧水素用タンク、高圧水素用タンクライナー等の高圧水素容器に好ましく使用することができる。
【0068】
特に好ましい態様は、樹脂製ライナーの外側を炭素繊維強化樹脂で補強してなる高圧水素用タンクの樹脂製ライナーとして、本発明の高圧水素に触れる中空成形品を使用する態様である。すなわち、本発明の中空成形品は、中空成形品の表層に、炭素繊維強化樹脂(CFRP)補強層が積層されてなる、高圧水素用タンクとして用いることができる。
【0069】
タンクライナーの表層に、CFRP補強層を積層していることにより、高圧に耐えうる強度や弾性率を発現させることができるので好ましい。CFRP補強層は、炭素繊維とマトリクス樹脂により構成される。炭素繊維としては、曲げ特性および強度の観点から、炭素繊維単体の引張弾性率が50~700GPaのものが好ましく、比剛性の観点をも考慮すると、200~700GPaのものがより好ましく、コストパフォーマンスの観点をも考慮すると200~450GPaのものが最も好ましい。また、炭素繊維単体の引張強さは、1500~7000MPaが好ましく、比強度の観点から、3000~7000MPaが好ましい。また、炭素繊維の密度は、1.60~3.00が好ましく、軽量化の観点から1.70~2.00がより好ましく、コストパフォーマンスの面より1.70~1.90が最も好ましい。さらに、炭素繊維の繊維径は、一本当たり5~30μmが好ましく、取り扱い性の観点から5~20μmがより好ましく、さらに軽量化の観点から、5~10μmが最も好ましい。炭素繊維を単体で用いても良いし、炭素繊維以外の強化繊維を組み合わせて用いてもよい。炭素繊維以外の強化繊維としては、ガラス繊維やアラミド繊維などが挙げられる。また、炭素繊維とマトリックス樹脂の割合を炭素繊維強化樹脂補強層材料中の炭素繊維の体積分率Vfで規定すると、剛性の観点からVfは20~80%が好ましく、生産性や要求剛性の観点からVfが40~80%であることが好ましい。
【0070】
CFRP補強層を構成するマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂であっても熱可塑性樹脂であってもよい。マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂の場合、その主材は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂などを例示することができる。これらの1種類だけを使用しても、2種類以上を混合して使用してもよい。エポキシ樹脂が特に好ましい。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、イソシアネート変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂などがあげられる。熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂に採用する場合、熱硬化性樹脂成分に適切な硬化剤や反応促進剤を添加することが可能である。
【0071】
マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂の場合、その主材は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、PPS樹脂、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂などが例示できる。これら熱可塑性樹脂は、単独でも、2種類以上の混合物でも、共重合体でも良い。混合物の場合には相溶化剤を併用しても良い。また、難燃剤として臭素系難燃剤、シリコン系難燃剤、赤燐などを加えても良い。
【0072】
CFRP補強層を高圧水素用タンクライナーの表層に積層する方法としては、公知のフィラメントワインディング(以下FW)法、テープワインディング(以下TW)法、シートワインディング(以下SW)法、ハンドレイアップ法、RTM(Resin Transfer Molding)法などを例示することができる。これら成形法のうち、単一の方法のみで成形してもよいし、2種類以上の成形法を組み合わせて成形しても良い。特性の発現性や生産性および成形性の観点から、FW法、TW法およびSW法から選ばれた方法が好ましい。これらFW法、SW法およびTW法は、基本的には、ストランド状の炭素繊維にマトリックス樹脂を付与してライナーに積層するという観点では、同一の成形法であり、炭素繊維をライナーに対して、フィラメント(糸)形態、テープ(糸をある程度束ねたテープ状)形態およびシート(テープをある程度束ねたシート状)形態のいずれの形態で巻き付けるかによって名称が異なる。ここでは、最も基本的なFW法に関して詳細を説明するが、TW法やSW法にも適用できる内容である。
【0073】
FW法において、マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂の場合、あらかじめ樹脂を塗布した状態(未硬化)の炭素繊維を直接ライナーに巻き付けることも可能であるし、ライナーに巻き付ける直前に炭素繊維に樹脂を塗布することも可能である。これらの場合、ライナーに炭素繊維および未硬化のマトリックス樹脂を巻き付けた後、樹脂を硬化させるためにバッチ炉(オーブン)や連続硬化炉などで使用樹脂に適した条件での樹脂硬化処理を行う必要がある。
【0074】
FW法において、マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂の場合、あらかじめ樹脂が塗布(含浸)された炭素繊維を直接ライナーに巻き付けて高圧水素用タンク形状とすることが可能である。この場合、ライナーに巻き付ける直前に、樹脂が塗布された炭素繊維を、熱可塑性樹脂の融点以上に昇温することが必要である。また、ライナーに巻き付ける直前に、炭素繊維に溶融させた熱可塑性樹脂を塗布することも可能である。この場合、熱硬化性樹脂に適用したような樹脂硬化工程は不要である。
【0075】
前記FW法、TW法、SW法などで本発明の高圧水素用タンクを得る場合、最も重要なことは、炭素繊維の繊維配向設計である。FW法、TW法およびSW法では、炭素繊維ストランド(連続繊維)や予め炭素繊維ストランドに樹脂を含浸させたプリプレグなどを、ライナーに巻き付けて成形する。設計時にはライナー胴部における連続繊維方向と積層厚みを設計ファクターとして、要求特性を満足する剛性および強度を満足するように設計することが好ましい。
【0076】
また、高圧水素用タンクとしては、バルブがインサート成形またはOリングにより固定されたタンクライナーが好ましい。バルブをインサート成形またはOリングにより固定することにより、高圧水素の気密性が高まるので好ましい。ここでバルブは、高圧水素の充填口や放出口の役割を成す。バルブとして使用される金属部品の材質としては、炭素鋼、マンガン鋼、クロムモリブデン鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金等を例示できる。炭素鋼として、圧力配管用炭素鋼鋼管、高圧配管用炭素鋼鋼管、低温配管用鋼管、機械構造用炭素鋼鋼材を例示できる。マンガン鋼では、高圧ガス容器用継目無鋼管、機械構造用マンガン鋼鋼材、マンガンクロム鋼鋼材を例示できる。クロムモリブデン鋼や低合金鋼では、高圧ガス容器用継目無鋼管、機械構造用合金鋼鋼管、ニッケルクロムモリブデン鋼鋼材、クロムモリブデン鋼材を例示できる。ステンレス鋼では、圧力用ステンレス鋼鍛鋼品、配管用ステンレス鋼管、ステンレス鋼棒、熱間圧延ステンレス鋼板および鋼帯、冷間圧延ステンレス鋼板および鋼帯を例示できる。アルミニウム合金では、アルミニウムおよびアルミニウム合金の板、条、棒、線、継目無管、鍛造品を例示できる。また、炭素鋼に対しては、焼きなまし、焼きならし、マンガン鋼に対しては、焼きならし、焼き入れ焼きもどし、クロムモリブデン鋼や低合金鋼に対しては、焼き入れ焼きもどし、ステンレス鋼に対しては固溶化処理、アルミニウム合金に対しては、焼き入れ焼きもどしを施した材料を適用しても良い。さらに、アルミニウム合金に対しては、溶体化処理およびT6時効処理を施したものを適用しても良い。
【0077】
本発明の高圧水素用タンクの最も好ましい態様は、本発明のポリアミド樹脂組成物からなるタンクライナーの表層に、CFRP補強層が積層されてなり、かつ該タンクライナーにバルブがインサート成形またはOリングにより固定されてなる、高圧水素用タンクである。
【実施例
【0078】
以下、実施例を挙げて本発明の効果をさらに具体的に説明する。実施例1、2、19および36は参考例である。なお、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。各実施例および比較例における評価は、次の方法で行った。
【0079】
(1)引張破断伸度(靱性)
各実施例および比較例により得られたペレットを、実施例および比較例に示した方法にて射出成形、押出成形またはブロー成形を行い、射出成形および押出成形の場合は直径100mm、長さ300mm、厚さ1mmt、2mmt、または3mmtの円筒状中空成形品、ブロー成形の場合は直径100mm、長さ300mm、厚さ3mmtの中空成形品をそれぞれ成形した。得られた円筒状中空成形品または中空成形品のストレート部から長さ100mm、幅10mm、厚さ1mmt、2mmt、または3mmtの短冊状試験片を作製した。作製した試験片について、支点間距離80mm、引張速度50mm/min、温度23℃×相対湿度50RH%条件下で引張破断伸度を測定した。
【0080】
(2)平均結晶化度
各実施例および比較例により得られたペレットを、実施例および比較例に示した方法にて射出成形、押出成形またはブロー成形を行い、(1)と同様に、円筒状中空成形品、または中空成形品を成形した。得られた円筒状中空成形品または中空成形品のストレート部から試料を切り出し、切り出した試料の樹脂流れ方向と平行になる断面が露出するように、ミクロトームを用いて面出しを行った。面出しした試料からRENISHAW社製「in Via」を用いて中空成形品外面から深さ100μmまで、および中空成形品内面から深さ100μmまでをそれぞれライン上にラマンスペクトルを取得した。測定モードは顕微ラマンモードで行い、対物レンズ:×100、ビーム径:1×10μm Line、光源:半導体レーザー 785nm、レーザーパワー:100mW、回折格子:Single 1200gr/mm、スリット:65μm、検出器:CCD/RENISHAW 1024×256の設定で測定を行った。得られたラマンスペクトルから結晶性に相関するパラメータとして1635cm-1付近のC=O伸縮バンドのバンド半値幅を算出し、ポリアミド6の二軸延伸フィルムで得られたバンド半値幅と結晶化度の関係から近似プロットを行い、そこから中空成形品外面平均結晶化度および中空成形品内面平均結晶化度を算出した。ポリアミド6の二軸延伸フィルムの結晶化度については、リガク社製の回転対陰極型X線回折装置(RINT-TRIII型)を用いて、フィルム面に平行にX線を入射し、X線回折法(ルーランド法)により測定した上で、所定の計算式に基づき算出した。すなわち、広角X線回折プロファイルから、非晶域に由来する散乱領域と結晶領域に由来する散乱領域とを分離し、以下の式にしたがって、全散乱強度に対する結晶域での散乱強度の比として、結晶化度を算出した。
結晶化度=(結晶域の散乱強度)/(結晶域の散乱強度+非晶域での散乱強度)×100
【0081】
(3)線膨張係数
各実施例および比較例により得られたペレットを、実施例および比較例に示した方法にて射出成形、押出成形またはブロー成形を行い、(1)と同様に、円筒状中空成形品、または中空成形品を成形した。得られた円筒中空成形品または中空成形品のストレート部から長手方向10mm×円周方向5mm×厚さ1mmt、2mmt、または3mmtのサンプルを切り出し、TMAを用いて温度条件-70℃~105℃まで5℃/minで昇温した。その際の-60℃~80℃までの線膨張率を測定した。
【0082】
(4)高圧水素の充填および放圧繰り返し特性(欠陥点)
各実施例および比較例により得られたペレットを実施例および比較例に示した方法にて射出成形、押出成形またはブロー成形を行い、(1)と同様に、円筒状中空成形品、または中空成形品を成形した。得られた円筒中空成形品または中空成形品のストレート部から長手方向10mm×円周方向30mm×厚さ1mmt、または2mmt、または3mmtのサンプルを切り出し、X-CT解析を行い、欠陥点の有無を確認した。欠陥点のないサンプルをオートクレーブに入れた後、オートクレーブ中に水素ガスを圧力30MPaまで3分間かけて注入し、2時間保持した後、1分間かけて常圧になるまで減圧した。これを1サイクルとして700サイクル繰り返した。700サイクル繰り返した後の中空成形品について、同様にX線CT解析を行い、10μm以上の欠陥点の有無を観察した。
【0083】
(5)融点
各実施例および比較例において配合したポリアミド6樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)について、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製DSC-7)を用い、2点校正(インジウム、鉛)、ベースライン補正を行った後、サンプル量を8~10mgとして、昇温速度20℃/分の条件で昇温して得られる融解曲線の最大値を示す温度より15℃高い温度で1分間保持した後、降温速度20℃/分の条件で30℃まで冷却した。さらに、30℃で1分間保持した後、20℃/分の速度で2回目の昇温工程を行った。この2回目の昇温工程において、観測された融解吸熱ピーク温度を融点とした。
【0084】
(6)インバリアントQの立ち上がり時間
各実施例および比較例において配合したポリアミド6樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)について、8~10mgをカバーガラスに挟み、リンカム社製ホットステージ「CSS-450W」に供し、温度250℃で30秒保持し、サンプルを溶融させた。その後、20℃/分の速度で、180℃まで降温させた。その際、大塚電子株式会社製高分子フィルムダイナミックス解析装置「DYNA-3000」を使用し、モード:1次元スキャン(1×512)、X方向:中央部4素子分を積算し1データとしてカウント、NDフィルター:5%、測定間隔:1秒、露光時間:500ミリ秒、ゴニオ角度:20度の条件で、降温開始時点を0とした時の、インバリアントQの立ち上がり時間を計測した。
【0085】
各実施例および比較例に用いた原料と略号を以下に示す。
ポリアミド6樹脂1:ポリアミド6樹脂(融点223℃、樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硝酸溶液中の25℃における相対粘度2.70、インバリアントQの立ち上がり時間175秒)
ポリアミド6樹脂2:ポリアミド6(融点223℃、樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硝酸溶液中の25℃における相対粘度4.40、インバリアントQの立ち上がり時間180秒)
ポリアミド610樹脂:ポリアミド610樹脂(融点226℃、樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硝酸溶液中の25℃における相対粘度2.70、インバリアントQの立ち上がり時間165秒)
ポリアミド6/ポリアミド66共重合体:ポリアミド6/ポリアミド66共重合体(融点190℃、樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中25℃における相対粘度4.20)
アミド系ワックス:エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物「“ライトアマイド”WH-255」(共栄社化学(株)、融点255℃)
耐衝撃材1:無水マレイン酸変性エチレン/1―ブテン共重合体「“タフマー”(登録商標)MH5020」
金属ハロゲン化物1:ヨウ化銅(I)(和光純薬工業(株)製)
金属ハロゲン化物2:ヨウ化カリウム(和光純薬工業(株)製)。
【0086】
[実施例1~16]
表1に記載の原料を、シリンダー温度を270℃に設定し、ニーディングゾーンを2つ設けたスクリューアレンジとし、スクリュー回転数150rpmとした2軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30α-35BW-7V)(L/D=45(なお、ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さであり、Dはスクリューの直径である))に供給して溶融混練し、ダイから吐出後のガットを10℃に温調した水を満たした冷却バス中を15秒間かけて通過させることで急冷し構造を固定した後、ストランドカッターでペレタイズしペレットを得た。得られたペレットを用いて1000トンの射出成形機と油循環型金型温調機を2台使用し、樹脂温度270℃、冷却時間180秒、金型温度120℃の条件で射出成形を行い、直径100mm、長さ300mm、厚さ3mmtの円筒状中空成形品を成形した。
【0087】
[実施例17]
表1に記載の原料を、シリンダー温度を270℃に設定し、ニーディングゾーンを2つ設けたスクリューアレンジとし、スクリュー回転数150rpmとした2軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30α-35BW-7V)(L/D=45(なお、ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さであり、Dはスクリューの直径である))に供給して溶融混練し、ダイから吐出後のガットを10℃に温調した水を満たした冷却バス中を15秒間かけて通過させることで急冷し構造を固定した後、ストランドカッターでペレタイズしペレットを得た。得られたペレットを用いて1000トンの射出成形機と油循環型金型温調機を2台使用し、樹脂温度270℃、冷却時間180秒、金型温度120℃の条件で射出成形を行い、直径100mm、長さ300mm、厚さ1mmtの円筒状中空成形品を成形した。
【0088】
[実施例18]
表1に記載の原料を、シリンダー温度を270℃に設定し、ニーディングゾーンを2つ設けたスクリューアレンジとし、スクリュー回転数150rpmとした2軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30α-35BW-7V)(L/D=45(なお、ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さであり、Dはスクリューの直径である))に供給して溶融混練し、ダイから吐出後のガットを10℃に温調した水を満たした冷却バス中を15秒間かけて通過させることで急冷し構造を固定した後、ストランドカッターでペレタイズしペレットを得た。得られたペレットを用いて1000トンの射出成形機と油循環型金型温調機を2台使用し、樹脂温度270℃、冷却時間180秒、金型温度120℃の条件で射出成形を行い、直径100mm、長さ300mm、厚さ2mmtの円筒状中空成形品を成形した。
【0089】
[比較例1]
表2に記載の原料を、シリンダー温度を270℃に設定し、ニーディングゾーンを2つ設けたスクリューアレンジとし、スクリュー回転数150rpmとした2軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30α-35BW-7V)(L/D=45(なお、ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さであり、Dはスクリューの直径である))に供給して溶融混練し、ダイから吐出後のガットを10℃に温調した水を満たした冷却バス中を15秒間かけて通過させることで急冷し構造を固定した後、ストランドカッターでペレタイズしペレットを得た。得られたペレットを用いて1000トンの射出成形機と水循環型金型温調機を2台使用し、樹脂温度270℃、冷却時間180秒、金型温度30℃に設定し樹脂を賦形した10秒後に80℃の熱媒を流して加熱する条件で射出成形を行い、直径100mm、長さ300mm、厚さ3mmtの円筒状中空成形品を成形した。
【0090】
[比較例2~6]
表2に記載の原料を、シリンダー温度を270℃に設定し、ニーディングゾーンを2つ設けたスクリューアレンジとし、スクリュー回転数150rpmとした2軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30α-35BW-7V)(L/D=45(なお、ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さであり、Dはスクリューの直径である))に供給して溶融混練し、ダイから吐出後のガットを10℃に温調した水を満たした冷却バス中を15秒間かけて通過させることで急冷し構造を固定した後、ストランドカッターでペレタイズしペレットを得た。得られたペレットを用いて1000トンの射出成形機と水循環型金型温調機を2台使用し、樹脂温度270℃、冷却時間180秒、金型温度80℃の条件で射出成形を行い、直径100mm、長さ300mm、厚さ3mmtの円筒状中空成形品を成形した。
【0091】
[実施例19~33]
表3に記載の原料を、シリンダー温度を270℃に設定し、ニーディングゾーンを2つ設けたスクリューアレンジとし、スクリュー回転数150rpmとした2軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30α-35BW-7V)(L/D=45(なお、ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さであり、Dはスクリューの直径である))に供給して溶融混練し、ダイから吐出後のガットを10℃に温調した水を満たした冷却バス中を15秒間かけて通過させることで急冷し構造を固定した後、ストランドカッターでペレタイズしペレットを得た。得られたペレットを用いて押出成形機を用いて樹脂温度250℃で押出成形を行い、直径100mm、長さ300mm、厚さ3mmtの円筒状中空成形品を成形した。このとき、サイジングダイスにヒーターを2つ取り付け、押出機吐出口側に近いヒーターの設定温度150℃、もう片方のヒーターの設定温度80℃の条件で押出成形を行った。
【0092】
[実施例34]
表3に記載の原料を、シリンダー温度を270℃に設定し、ニーディングゾーンを2つ設けたスクリューアレンジとし、スクリュー回転数150rpmとした2軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30α-35BW-7V)(L/D=45(なお、ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さであり、Dはスクリューの直径である))に供給して溶融混練し、ダイから吐出後のガットを10℃に温調した水を満たした冷却バス中を15秒間かけて通過させることで急冷し構造を固定した後、ストランドカッターでペレタイズしペレットを得た。得られたペレットを用いて押出成形機を用いて樹脂温度250℃で押出成形を行い、直径100mm、長さ300mm、厚さ1mmtの円筒状中空成形品を成形した。このとき、サイジングダイスにヒーターを2つ取り付け、押出機吐出口側に近いヒーターの設定温度150℃、もう片方のヒーターの設定温度80℃の条件で押出成形を行った。
【0093】
[実施例35]
表3に記載の原料を、シリンダー温度を270℃に設定し、ニーディングゾーンを2つ設けたスクリューアレンジとし、スクリュー回転数150rpmとした2軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30α-35BW-7V)(L/D=45(なお、ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さであり、Dはスクリューの直径である))に供給して溶融混練し、ダイから吐出後のガットを10℃に温調した水を満たした冷却バス中を15秒間かけて通過させることで急冷し構造を固定した後、ストランドカッターでペレタイズしペレットを得た。得られたペレットを用いて押出成形機を用いて樹脂温度250℃で押出成形を行い、直径100mm、長さ300mm、厚さ2mmtの円筒状中空成形品を成形した。このとき、サイジングダイスにヒーターを2つ取り付け、押出機吐出口側に近いヒーターの設定温度150℃、もう片方のヒーターの設定温度80℃の条件で押出成形を行った。
【0094】
[比較例7~10]
表4に記載の原料を、シリンダー温度を270℃に設定し、ニーディングゾーンを2つ設けたスクリューアレンジとし、スクリュー回転数150rpmとした2軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30α-35BW-7V)(L/D=45(なお、ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さであり、Dはスクリューの直径である))に供給して溶融混練し、ダイから吐出後のガットを10℃に温調した水を満たした冷却バス中を15秒間かけて通過させることで急冷し構造を固定した後、ストランドカッターでペレタイズしペレットを得た。得られたペレットを用いて押出成形機を用いて樹脂温度250℃で押出成形を行い、直径100mm、長さ300mm、厚さ3mmtの円筒状中空成形品を成形した。このとき、サイジングダイスにヒーターを取り付け、設定温度80℃にて押出成形を行った。
【0095】
[実施36~50]
表5に記載の原料を、シリンダー温度を270℃に設定し、ニーディングゾーンを2つ設けたスクリューアレンジとし、スクリュー回転数150rpmとした2軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30α-35BW-7V)(L/D=45(なお、ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さであり、Dはスクリューの直径である)))に供給して溶融混練し、ダイから吐出後のガットを10℃に温調した水を満たした冷却バス中を15秒間かけて通過させることで急冷し構造を固定した後、ストランドカッターでペレタイズしペレットを得た。得られたペレットを用いてブロー成形機と油循環型金型温調機を2台用いて樹脂温度250℃、冷却時間180秒、金型温度120℃の条件でブロー成形を行い、直径100mm、長さ300mm、厚さ3mmtの中空成形品を成形した。
【0096】
[比較例11~14]
表6に記載の原料を、シリンダー温度を270℃に設定し、ニーディングゾーンを2つ設けたスクリューアレンジとし、スクリュー回転数150rpmとした2軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30α-35BW-7V)(L/D=45(なお、ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さであり、Dはスクリューの直径である))に供給して溶融混練し、ダイから吐出後のガットを10℃に温調した水を満たした冷却バス中を15秒間かけて通過させることで急冷し構造を固定した後、ストランドカッターでペレタイズしペレットを得た。得られたペレットを用いてブロー成形機と水循環型金型温調機を2台用いて樹脂温度250℃、冷却時間180秒、金型温度30℃の条件でブロー成形を行い、直径100mm、長さ300mm、厚さ3mmtの中空成形品を成形した。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】
【0101】
【表5】
【0102】
【表6】
【0103】
以上の結果から、高圧水素に触れる中空成形品であって、中空成形品外面平均結晶化度および中空成形品内面平均結晶化度を15%以上にすることで、線膨張係数が小さく、高圧水素の充填および放圧を繰り返しても欠陥点の発生を抑制出来る中空成形品を初めて得ることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の中空成形品は中空成形品外面平均結晶化度および中空成形品内面平均結晶化度を高めることで、線膨張係数を小さくすることが出来、高圧水素の充填および放圧を繰り返しても欠陥点の発生を抑制出来るため、高圧水素に触れる中空成形品として極めて有用である。
【符号の説明】
【0105】
1 インバリアントQの立ち上がり時間
図1