(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】線材コイル用の積載治具およびこれを用いた線材コイルの熱処理方法
(51)【国際特許分類】
B21C 47/28 20060101AFI20240709BHJP
C21D 9/52 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B21C47/28 A
C21D9/52 103B
C21D9/52 103Z
(21)【出願番号】P 2020163762
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100198247
【氏名又は名称】並河 伊佐夫
(72)【発明者】
【氏名】浅井 康一郎
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-256702(JP,A)
【文献】実開平05-046945(JP,U)
【文献】特開昭56-136763(JP,A)
【文献】特開2004-156072(JP,A)
【文献】実開昭56-081969(JP,U)
【文献】特開平06-073437(JP,A)
【文献】実開昭51-156008(JP,U)
【文献】米国特許第04423857(US,A)
【文献】韓国登録特許第10-1952825(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 45/00 - 49/00
C21D 9/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の線材コイルを上下方向に縦積みした状態で保持する線材コイル用の積載治具であって、
下側線材コイルが載置される第1の載置板と、
前記第1の載置板の上方に位置し上側線材コイルが載置される第2の載置板と、
これら載置板の間に介在し、前記第2の載置板を支持する第1の支柱と、
前記下側線材コイルの上端を閉塞する第1の蓋体と、
前記上側線材コイルの上端を閉塞する第2の蓋体と、
前記第1の載置板を板厚方向に貫通し、前記第1の載置板の下方からの上向きのガス流を前記下側線材コイルの内径穴に導く第1のガス流路と、
前記第1の支柱の内部に軸方向に沿って形成された流路を含んで構成され、前記ガス流を前記上側線材コイルの内径穴に導く第2のガス流路と、
を備えていることを特徴とする線材コイル用の積載治具。
【請求項2】
前記第1の蓋体は前記第1の支柱の軸方向に沿って移動可能に設けられ、前記下側線材コイルの上端に載置されていることを特徴とする請求項1に記載の線材コイル用の積載治具。
【請求項3】
前記第1の支柱の上方且つ前記上側線材コイルの内径穴内に第2の支柱が設けられ、前記第2の支柱に形成された開口を通じて、前記ガス流が前記上側線材コイルの内径穴に導かれることを特徴とする
請求項1または2に記載の線材コイル用の積載治具。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載の線材コイル用の積載治具を用いた線材コイルの熱処理方法であって、
前記積載治具の第1の載置板および第2の載置板に、蓋体により上端が閉塞された線材コイルがそれぞれ載置されて成る縦積みコイル体に対し、前記縦積みコイル体の下方から上向きのガス流を供給して、
前記ガス流を、前記第1のガス流路を通じて前記下側線材コイルの内径穴に、また前記第2のガス流路を通じて前記上側線材コイルの内径穴にそれぞれ導入することを特徴とする線材コイルの熱処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、縦積みされた線材コイルを熱処理する際に用いられる線材コイル用の積載治具およびこれを用いた線材コイルの熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
線材をコイル状に巻回した線材コイルの熱処理においては、加熱用もしくは冷却用のガスがコイルの外周に沿って流れ、線材コイルを形成する線材間の隙間を流れるガスはごく僅かである。このためガスが当たる線材コイルの表層部とガスが当たらない内部での温度差が大きくなり、球状化率の悪化や脱炭量の増加といった品質上の問題が生じ易い。
【0003】
線材コイル内外での温度差縮小の為、昇温・冷却速度を遅くしたり、均熱時間を延長することも考えられるが、この場合には処理時間の延長やランニングコストの増加が問題となる。また、大気冷却時の冷却速度が遅い場合には難酸洗性スケールが生じやすく酸洗性が低下する。
【0004】
線材コイル内外での温度差を縮小させるための手段として、下記特許文献1では、線材コイルの上端を閉塞する閉塞板(蓋部)を設けることで、線材コイルの内径穴の下方から上向きに吹き込んだガスを、線材コイルの内径側から外径側に外向きに流通させ、線材コイルを短時間で且つ均一に加熱する点が開示されている。しかしながら特許文献1に記載のものは線材コイルの多段積みを行わないことを前提としたものであり、特許文献1には多段積みされた線材コイルを均一に加熱(冷却)するための具体的な構成は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような事情を背景とし、多段積みされた線材コイルにおける熱処理時のガス流れを改善して、線材コイル内外の温度差を縮小することができる線材コイル用の積載治具およびこれを用いた線材コイルの熱処理方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、下記のように本発明に想到した。
この発明の第1の局面の線材コイル用の積載治具は、次のように規定される。即ち、
複数の線材コイルを上下方向に縦積みした状態で保持する線材コイル用の積載治具であって、
下側線材コイルが載置される第1の載置板と、
前記第1の載置板の上方に位置し上側線材コイルが載置される第2の載置板と、
これら載置板の間に介在し、前記第2の載置板を支持する第1の支柱と、
前記下側線材コイルの上端を閉塞する第1の蓋体と、
前記上側線材コイルの上端を閉塞する第2の蓋体と、
前記第1の載置板を板厚方向に貫通し、前記第1の載置板の下方からの上向きのガス流を前記下側線材コイルの内径穴に導く第1のガス流路と、
前記第1の支柱の内部に軸方向に沿って形成された流路を含んで構成され、前記ガス流を前記上側線材コイルの内径穴に導く第2のガス流路と、
を備えている。
【0008】
このように規定される第1の局面の線材コイル用の積載治具によれば、第1のガス流路により下側線材コイルの内径穴にガス流を導くことができ、また第2のガス流路により上側線材コイルの内径穴にガス流を導くことができる。即ち、縦積みされたそれぞれの線材コイルの内径穴にガス流を導くことができる。
それぞれの線材コイルの内径穴内に送り込まれたガスは、線材コイルの内径穴の上端部からの流出が蓋体によって阻止され、線材コイルを構成する線材の隙間を通って、内径側から外径側に流通することとなる。このように第1の局面の線材コイル用の積載治具では、多段積みされた何れの線材コイルにおいても熱処理時のガス流れが改善され、コイル内外の温度差を縮小することができる。
【0009】
この発明の第2の局面は次のように規定される。即ち、
第1の局面で規定の線材コイル用の積載治具において、前記第1の蓋体を前記第1の支柱の軸方向に沿って移動可能に設け、前記第1の蓋体を前記下側線材コイルの上端に載置する。
このように規定される第2の局面の線材コイル用の積載治具によれば、荷崩れ等で下側線材コイルの上端の位置が変化した場合でも、第1の蓋体がそれに追従するため、下側線材コイルの上端を閉塞する状態が良好に維持される。
【0010】
この発明の第3の局面は次のように規定される。即ち、
第1または第2の局面で規定の線材コイル用の積載治具において、前記第1の支柱の上方且つ前記上側線材コイルの内径穴内に第2の支柱が設けられ、前記第2の支柱に形成された開口を通じて、前記ガス流が前記上側線材コイルの内径穴に導かれる。
このように規定される第3の局面の線材コイル用の積載治具によれば、第2の支柱により上側線材コイルの荷崩れが抑制されるとともに、第2の支柱に形成された開口により上側線材コイルの内径穴へのガス流の吹き出し方向を制御することができる。
【0011】
この発明の第4の局面は次のように規定される。即ち、
第1~第3のいずれかの局面で規定の線材コイル用の積載治具を用いた線材コイルの熱処理方法であって、
前記積載治具の第1の載置板および第2の載置板に、蓋体により上端が閉塞された線材コイルがそれぞれ載置されて成る縦積みコイル体に対し、前記縦積みコイル体の下方から上向きのガス流を供給して、
前記ガス流を、前記第1のガス流路を通じて前記下側線材コイルの内径穴に、また前記第2のガス流路を通じて前記上側線材コイルの内径穴にそれぞれ導入する。
このように規定される線材コイルの熱処理方法によれば、第1の局面と同等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態の線材コイル用の積載治具を示した斜視図である。
【
図2】
図1の線材コイル用の積載治具の縦断面図である。
【
図4】同実施形態の線材コイル用の積載治具を用いた縦積みコイル体を熱処理するための熱処理炉の構成を示した図である。
【
図5】
図4の熱処理炉における熱処理室の断面図である。
【
図6】同縦積みコイル体を冷却するための冷却装置の構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に本発明の一実施形態の線材コイル用の積載治具を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は本実施形態の線材コイル用の積載治具を示した斜視図、
図2は線材コイル用の積載治具の縦断面図である。
図1,2において、1は線材をコイル状に巻回した被熱物としての線材コイルを上下方向に2段積みした状態で保持する線材コイル用の積載治具で、下側線材コイルW1が載置される第1の載置板2と、上側線材コイルW2が載置される第2の載置板3と、これら載置板2,3の間に位置する第1の支柱4と、第2の載置板3の上方に位置する第2の支柱6と、下側線材コイルW1の上端を閉塞する第1の蓋体8と、上側線材コイルW2の上端を閉塞する第2の蓋体9と、を含んで構成されている。
【0014】
第1の載置板2は、円板状をなしており、その中心部には、周方向に延びる平面視円弧状の4つの穴10a,10b,10c,10dで構成された第1の貫通穴10と、貫通穴10の内側に位置する平面視円形の第2の貫通穴12とが形成されている。これら第1の貫通穴10および第2の貫通穴12は、
図3に示すように、平面視において、第1の載置板2上に載置された下側線材コイルW1のコイル内周面よりも内側に形成されている。
【0015】
本例において、第1の貫通穴10は第1の載置板2の下方からの上向きのガス流を下側線材コイルW1の内径穴W1aに導く第1のガス流路11を構成する。また、第2の貫通穴12は前記ガス流を上側線材コイルW2の内径穴W2aに導く第2のガス流路13の一部を構成する。
なお、第1の載置板2における第1の貫通穴10と第2の貫通穴12の間の部位は、第1の支柱4を支持する支柱支持部15とされている(
図2参照)。
【0016】
第1の支柱4は、第1の載置板2と第2の載置板3との間に介在し、第2の載置板3を支持するとともに、下側線材コイルW1の荷崩れ等による変形を抑制する。第1の支柱4の下端部は、第1の載置板2の支柱支持部15に一体的に接合されている。一方、第1の支柱4の上端部では、その上端面と外周面17とが交わる隅角部が周方向に亘って切り欠かれており、設置姿勢において上方に位置する細径部18と、それに続く上向きの段差面19が形成されている。この段差面19は、
図2に示すように、第2の載置板3の下面と接し、第2の載置板3を支持する。
【0017】
第1の支柱4は中空の円筒体であり、その内部には軸方向に沿って延びる流路26を備えている。この流路26は、第1の載置板2の第2の貫通穴12と連通して、ガス流を上側線材コイルW2の内径穴W2aに導く第2のガス流路13の一部を構成する。この第2のガス流路13を流通するガス流は、その途中で下側線材コイルW1の内径穴W1a内に流出することなく、上側線材コイルW2の内径穴W2a内に送られる。
【0018】
第1の蓋体8は、下側線材コイルW1の上端に載置され、下側線材コイルW1の上端を閉塞する。第1の蓋体8は、略円板状をなし、その周縁には荷崩れ等による下側線材コイルW1の変形を抑制するための折れ曲がり部30が形成されている。
また第1の蓋体8の中心部には円形の貫通穴32が形成されている。貫通穴32は第1の支柱4の外周面17の径よりも僅かに大きく形成されており、第1の蓋体8は、貫通穴32を挿通する第1の支柱4の外周面17にて案内され、第1の支柱4の軸方向に沿って移動可能とされている。
【0019】
第2の載置板3は、円板状をなしており、その中心部に円形の貫通穴34が形成されている。貫通穴34は第1の支柱4の細径部18に対して僅かに大きく形成されており、貫通穴34と第1の支柱4の細径部18とが嵌合した状態で、第2の載置板3は貫通穴34周りの縁部が第1の支柱4の段差面19にて支持される。
【0020】
第2の支柱6は、上側線材コイルW2の荷崩れ等による変形を抑制するとともに、内径穴W2aへのガス流の吹き出し方向を制御するもので、第1の支柱4の上方且つ上側線材コイルW2の内径穴W2a内にて第1の支柱4と同心状に配置されている。
第2の支柱6は、第1の支柱4の上端開口21の周りに間隔を隔てて立設された複数の柱状部材38と、これら柱状部材38の上端を連結する連結板39から成る。本例では、第1の支柱4の内部流路26を流通したガスが第2の支柱6の内部に導入され、隣接する柱状部材38との間に形成された開口40を通して、上側線材コイルW2の内径穴W2a内に流出する。本例では、第2の支柱6の内部空間41および開口40も第2のガス流路13の一部を構成する。
【0021】
第2の蓋体9は、上側線材コイルW2の上端に載置され、上側線材コイルW2の上端を閉塞する。第1の蓋体8と同様に、略円板状をなし、その周縁には折れ曲がり部30が形成されている。折れ曲がり部30は上側線材コイルW2の変形を抑制するほか、搬送時に蓋体9が上側線材コイルW2から落下することを防止することができる。
【0022】
本例では、このように構成された積載治具1を用い、線材コイルW1とW2とが縦積みされた縦積みコイル体44が組み立てられる。縦積みコイル体44は、例えば以下に示すような熱処理炉および冷却装置を使用することで、線材コイル内外の温度差を縮小させた熱処理を実現することができる。
【0023】
次に縦積みコイル体44の熱処理に使用される熱処理炉および冷却装置について説明する。
図4において、50は縦積みコイル体44を焼鈍処理するバッチ式の熱処理炉である。加熱炉50では、縦積みコイル体44に対する加熱→均熱→冷却の各工程が実施される。その後、加熱炉50から抽出された縦積みコイル体44に対して、後述の冷却装置80を用いて大気冷却(急冷)の工程が実施される。
なお、縦積みコイル体44の冷却工程は、必要に応じて変更が可能である。例えば、加熱炉50での冷却を省略して後述の冷却装置80のみで実施してもよいし、あるいは、加熱炉50のみで実施し後述の冷却装置80での冷却を省略してもよい。
【0024】
加熱炉50は、図中左端の装入抽出テーブル52と、熱処理室54とを備えている。熱処理室54は図中左前側に開口54aが形成されており、開口54aを通じて縦積みコイル体44の装入および抽出が行われる。開口54aは扉55によって閉塞可能とされている。扉55は、ワイヤーを介してプーリ56に懸吊され、プーリ56の回転により昇降する。
【0025】
熱処理室54は、6つの縦積みコイル体44-1,44-2,・・,44-6が収容可能とされており、各縦積みコイル体44が収容される6つのゾーンに仮想的に区画されている。各ゾーンには搬送手段としてのローラ57が配設されている。
【0026】
熱処理室54には、室内のガスを加熱する加熱手段としてのラジアントチューブバーナ68が複数設けられており、室内の各ゾーンが所定の温度設定となるようラジアントチューブバーナ68の出力が制御される。また、熱処理室54は図示を省略するガス供給配管を備えており、室内には窒素ガスやRXガスなどの還元性ガスが適宜供給可能とされている。
【0027】
図5は、縦積みコイル体44の搬送方向と直交する方向での熱処理室54の断面図で、室内に縦積みコイル体44が装入された状態を示している。
熱処理室54には、ラジアントチューブバーナ68のほか、縦積みコイル体44にガスを吹き込むためのガス循環装置70が設けられている。
【0028】
ガス循環装置70は、ダクト72と、ダクト72内部に収容された循環ファン74と、循環ファン74を回転駆動させる駆動モータ75を備えている。ダクト72は同図で示すように折れ曲がり形状をなし、その一端部には縦積みコイル体44の直下において上向きに開口したガス吹出口72aが形成されている。一方、ダクト72の他端部には下向きのガス吸込口72bが形成されている。循環ファン74は、このガス吸込口72bの直上位置に配置されている。また、77は温度センサである。本例では温度センサ77と接続された制御部(図示省略)により、温度センサ77で検出されたガスの温度が予め設定された目標雰囲気温度と一致するように、ラジアントチューブバーナ68の燃焼が制御される。
【0029】
このように構成された熱処理室54では、ガス循環装置70の循環ファン74を回転させることで、ラジアントチューブバーナ68で加熱されたガスがガス吸込口72bを通じてダクト72内に吸引され、ダクト72のガス吹出口72aから上向きに吹き出される。
そして上向きのガス流の一部が縦積みコイル体44の第1のガス流路11を通って下側線材コイルW1の内径穴W1a内に送られる。下側線材コイルW1の内径穴W1a内に送られたガスは、内径穴W1aの上端部からの流出が第1の蓋体8により阻止され、下側線材コイルW1を構成する線材の隙間を通って、矢印で示すように内径側から外径側に流通することとなり、線材コイルの内外の温度差を最小に保ちながら、下側線材コイルW1が短時間で所定の加熱温度にまで加熱される。
【0030】
同様に、上向きのガス流の他の一部が縦積みコイル体44の第2のガス流路13を通って上側線材コイルW2の内径穴W2a内に送られる。上側線材コイルW2の内径穴W2a内に送られたガスは、内径穴W2aの上端部からの流出が第2の蓋体9により阻止され、上側線材コイルW2を構成する線材の隙間を通って、矢印で示すように内径側から外径側に流通することとなり、線材コイルの内外の温度差を最小に保ちながら、上側線材コイルW2もまた短時間で所定の加熱温度にまで加熱される。
【0031】
加熱炉50では、加熱に続いて、均熱および冷却が行われる。冷却の工程においても加熱の工程と同様に線材コイルW1,W2を構成する線材の隙間を通って、所定温度のガスが内径側から外径側に流通することとなり、線材コイルの内外の温度差を最小に保ちながら、下側線材コイルW1および上側線材コイルW2の冷却が行われる。
【0032】
図6は、縦積みコイル体44を冷却するための冷却装置80の構成を示した図で、処理室81内に縦積みコイル体44が装入された状態を示している。同図において、82は縦積みコイル体44に対して上向きの冷風(大気)を供給するブロア装置で、ブロア装置82のガス吹出口82aは、縦積みコイル体44の直下に配置されている。84は処理室81の側壁上部に形成されたガス排出用の配管である。
【0033】
このように構成された本例の冷却装置80では、加熱されていない大気が冷却用のガスとして、ガス吸込口82bから取り込まれ、ブロア装置82のガス吹出口82aから上向きに吹き出される。
そして上向きのガス流の一部が縦積みコイル体44の第1のガス流路11を通って下側線材コイルW1の内径穴W1a内に送られ、また上向きのガス流の他の一部が縦積みコイル体44の第2のガス流路13を通って上側線材コイルW2の内径穴W2a内に送られることから、この冷却の工程においても加熱の工程と同様に線材コイルW1,W2を構成する線材の隙間を通って、冷却用のガスが内径側から外径側に流通することとなり、線材コイルの内外の温度差を最小に保ちながら、下側線材コイルW1および上側線材コイルW2の冷却が行われる。なお、冷却に用いられたガスは、ガス排出用の配管84を通じて室外に排出される。
【0034】
以上のように本実施形態の積載治具1によれば、多段積みされた下側線材コイルW1および上側線材コイルW2におけるガス流れが改善され、熱処理時のコイル内外の温度差を縮小することができる。よって本実施形態の積載治具1によれば、温度差縮小のために昇温速度・冷却速度を敢えて遅くする必要なく、急速加熱・急速冷却が実現可能となり、熱処理時間を短くしランニングコストの低減を図ることができる。また急速冷却をすることで難酸洗性スケールの生成が抑えられ酸洗性を向上させることができる。
【0035】
また本実施形態の線材コイル用の積載治具1では、第1の蓋体8が第1の支柱4の軸方向に沿って移動可能に設けられ、下側線材コイルW1の上端に載置されているため、荷崩れ等で下側線材コイルW1の上端の位置が変化した場合でも、第1の蓋体8がそれに追従して、下側線材コイルW1の上端を閉塞する状態を維持することができる。
【0036】
また本実施形態の線材コイル用の積載治具1では、第1の支柱4の上方且つ上側線材コイルW2の内径穴W2a内に第2の支柱6が設けられ、第2の支柱6に形成された開口40を通じて、ガス流を上側線材コイルW2の内径穴W2aに導いている。
このようにすることで、第2の支柱6が上側線材コイルW2の荷崩れ等による変形を抑制するとともに、第2の支柱6に形成された開口40により上側線材コイルW2の内径穴W2aへのガス流の吹き出し方向を制御することができる。
【0037】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれらはあくまでも一例示である。例えばガス流を通過させるため第1の載置板に形成される第1の貫通穴および第2の貫通穴の形状や大きさは、上記実施形態に限定されるものではなく適宜変更可能である。また上側線材コイルの内径穴内に設けられる第2の支柱の形状や大きさも適宜変更可能であり、場合によっては第2の支柱を設けない構成を採用することも可能である等、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において様々変更を加えた形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 線材コイル用の積載治具
2 第1の載置板
3 第2の載置板
4 第1の支柱
6 第2の支柱
8 第1の蓋体
9 第2の蓋体
11 第1のガス流路
13 第2のガス流路
26 流路
40 開口
44 縦積みコイル体
W1 下側線材コイル
W2 上側線材コイル
W1a,W1b 内径穴