(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/48 20060101AFI20240709BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20240709BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20240709BHJP
【FI】
H01L23/48 P
H01L25/04 C
(21)【出願番号】P 2020169833
(22)【出願日】2020-10-07
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【氏名又は名称】田中 勝也
(72)【発明者】
【氏名】中村 龍之介
【審査官】花田 尚樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-120657(JP,A)
【文献】特開2000-243472(JP,A)
【文献】特開2019-197777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/48
H01L 25/00 -25/16
H10B 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路パターンを有する基板と、
前記回路パターン上に配置される半導体チップと、
前記基板を収容するケースと、
前記半導体チップと電気的に接続される金属製の帯状の端子と、を備え、
前記端子は、
一方側に位置する第1端部を含み、前記ケース内に配置される第1領域と、
他方側に位置する第2端部を含み、前記ケース外であって前記ケースの外表面に沿うように配置される第2領域と、を含み、
前記第2領域は、前記端子の厚さ方向において、
前記ケースの外表面との距離が第1の距離である第1部分と、
前記ケースの外表面との距離が前記第1の距離よりも長い第2の距離である第2部分と、を含
み、
前記第2領域には、前記端子の厚さ方向に突出する突出部が形成されている、半導体装置。
【請求項2】
前記第1部分は、前記第2端部を含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記突出部は、前記第2領域の幅方向の少なくともいずれか一方の縁部に形成されている、
請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記突出部は、前記第2領域の幅方向の両縁部に形成されている、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記突出部は、前記端子の幅方向に見て前記第2端部に至るまで延びている、
請求項1から
請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2領域は、前記端子の長手方向に湾曲した形状を有する、請求項1から
請求項5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2領域は、前記端子の幅方向に湾曲した形状を有する、請求項1から
請求項6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2領域の前記第1領域側の境界部分には、幅方向に延びるスリットが形成されている、請求項1から
請求項7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記スリットは、前記端子の厚さ方向の両側に形成されている、
請求項8に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
絶縁基板上に半導体チップを実装した半導体モジュールが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に開示のパワーデバイスチップの実装構造は、半導体チップと電気的に接続されるソース端子およびドレイン端子と、モジュール基板を収納する箱型の外殻ケースと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示のパワーデバイスチップの実装構造において、ソース端子およびドレイン端子の一部は、外殻ケースの外部に露出している。露出した部分は、外殻ケースの外表面に沿うように折り曲げられている。露出した部分は、外部との電気的な接続を確保する圧着端子と接触させた状態で、ボルトによりねじ止めされる。ここで、ソース端子またはドレイン端子の露出した部分と圧着端子との密着性が低いと、露出した部分と圧着端子との間で接触不良が生じるおそれがある。そうすると、ソース端子またはドレイン端子と圧着端子との間における電気的な導通が確保されず、結果的に半導体装置の信頼性を損ねるおそれがある。
【0005】
そこで、信頼性の向上を図ることができる半導体装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従った半導体装置は、回路パターンを有する基板と、回路パターン上に配置される半導体チップと、基板を収容するケースと、半導体チップと電気的に接続される金属製の平板状の端子と、を備える。端子は、一方側に位置する第1端部を含み、ケース内に配置される第1領域と、他方側に位置する第2端部を含み、ケース外であってケースの外表面に沿うように配置される第2領域と、を含む。第2領域は、端子の厚さ方向において、ケースの外表面との距離が第1の距離である第1部分と、ケースの外表面との距離が第1の距離よりも長い第2の距離である第2部分と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
上記半導体装置によれば、信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態1における半導体装置の概略断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す半導体装置の一部を拡大して示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す半導体装置に含まれる端子の一部を拡大して示す概略斜視図である。
【
図4】
図4は、折り曲げられる前の端子の一部を示す概略斜視図である。
【
図5】
図5は、折り曲げられる前の端子を含む半導体装置の一部を示す概略断面図である。
【
図6】
図6は、圧着端子を端子に接続した状態を示す半導体装置の一部の概略断面図である。
【
図7】
図7は、実施の形態2における半導体装置に含まれる端子の一部を示す概略斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7に示す半導体装置を長手方向に垂直な平面で切断した場合の断面図である。
【
図9】
図9は、実施の形態3における半導体装置の概略斜視図である。
【
図10】
図10は、実施の形態4における半導体装置の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。本開示に係る半導体装置は、回路パターンを有する基板と、回路パターン上に配置される半導体チップと、基板を収容するケースと、半導体チップと電気的に接続される金属製の平板状の端子と、を備える。端子は、一方側に位置する第1端部を含み、ケース内に配置される第1領域と、他方側に位置する第2端部を含み、ケース外であってケースの外表面に沿うように配置される第2領域と、を含む。第2領域は、端子の厚さ方向において、ケースの外表面との距離が第1の距離である第1部分と、ケースの外表面との距離が第1の距離よりも長い第2の距離である第2部分と、を含む。
【0010】
昨今、半導体装置の小型化が求められている。たとえば、炭化珪素(SiC)から構成される半導体層を動作層として含む半導体チップを用いることにより、耐熱性を向上させることができる。このような半導体チップを含む半導体装置は、半導体チップの集積化が容易であるため、小型化を図りやすい。
【0011】
半導体装置と外部との電気的な接続を確保するため、半導体装置に含まれる帯状の端子の一部が、ケース外に配置される。インダクタンスを低減する観点から、ケースの上部側に端子の一部を露出させることが多い。帯状の端子の、半導体装置のケース外に配置された部分は、ケースの外表面に沿って折り曲げられる。ここで、半導体装置が大型であれば、予め正確に端子を折り曲げた状態として半導体装置を組み立てることが容易である。しかし、半導体装置が小型であると、予め端子を折り曲げた状態として組み立てることが困難となる。したがって、帯状の端子の一部がケース外に配置されるように組み立てた後、帯状の端子の、ケース外に配置された部分が折り曲げて、ケースの外表面に沿う形状としている。
【0012】
しかし、帯状の端子を折り曲げる際に、ケース外に配置された部分が意図しない形状に変形してしまうおそれがある。小型化を実現した半導体装置においては、この傾向がより顕著となる。そうすると、端子と接続される相手側の部材(圧着端子)との密着性が低くなり、接触不良が生じるおそれがある。その結果、圧着端子との間における電気的な導通が確保されず、半導体装置の信頼性を損ねるおそれがある。
【0013】
本開示の半導体装置においては、端子の第2領域と圧着端子とを接触させる際に、圧着端子側から押圧することにより、まず第1の距離である第1部分がケースの外表面と接触する。その後、圧着端子側からさらに押圧することにより、第2部分とケースの外表面との距離が近くなっていく。この時、第2領域において押圧時における反力を生じさせることができる。よって、この反力により、相手側の部材である圧着端子との密着性を高めることができる。したがって、端子と圧着端子との接触不良が生じるおそれを低減して、端子と圧着端子との間における電気的な導通を確保することができる。その結果、信頼性の向上を図ることができる。
【0014】
上記半導体装置において、第1部分は、第2端部を含んでもよい。このようにすることにより、帯状の端子において、端子の長手方向に第1部分および第2部分を形成することができる。したがって、第1部分および第2部分を容易に形成することができる。
【0015】
上記半導体装置において、第2領域には、端子の厚さ方向に突出する突出部が形成されていてもよい。このようにすることにより、第2領域の剛性を高めることができる。よって、端子のケース外に配置された部分を折り曲げて第2領域を形成する際に、第2領域の意図しない変形を抑制して、密着性を高めることができる。
【0016】
上記半導体装置において、突出部は、第2領域の幅方向の少なくともいずれか一方の縁部に形成されていてもよい。このようにすることにより、第2領域の剛性を高めながら、突出部を含む第2領域をケースの外表面に沿う形状とすることが容易となる。
【0017】
上記半導体装置において、突出部は、第2領域の幅方向の両縁部に形成されていてもよい。このようにすることにより、第2領域の剛性をより高めることができる。よって、折り曲げ時において意図しない変形をより抑制して、密着性をより高めることができる。
【0018】
上記半導体装置において、突出部は、端子の幅方向に見て第2端部に至るまで延びていてもよい。第2端部は、最も端に位置するため、変形しやすい。このようにすることにより、第2端部を含む部分の剛性をより高めることができ、折り曲げ時において意図しない第2端部の変形を抑制することが容易となる。
【0019】
上記半導体装置において、第2領域は、端子の長手方向に湾曲した形状を有してもよい。このようにすることにより、第1部分と第2部分との間隔を広くすることが容易となる。よって、上記構成の端子を容易に製造することができる。
【0020】
上記半導体装置において、第2領域は、端子の幅方向に湾曲した形状を有してもよい。このようにすることにより、第1部分と第2部分との間隔を比較的狭くすることが容易となる。したがって、押圧時における反力をより強めることができ、密着性をより高めることができる。
【0021】
上記半導体装置において、第2領域の第1領域側の境界部分には、幅方向に延びるスリットが形成されていてもよい。このようにすることにより、端子を折り曲げて第2領域をケースの外表面に沿う形状とする際に、屈曲部の応力集中を緩和して、端子が損傷するおそれを低減することができる。
【0022】
上記半導体装置において、スリットは、端子の厚さ方向の両側に形成されていてもよい。このようにすることにより、端子の折り曲げ時において、端子が損傷するおそれをより低減することができる。
【0023】
[本開示の実施形態の詳細]
次に、本開示の半導体装置の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付しその説明は繰り返さない。
【0024】
(実施の形態1)
本開示の実施の形態1における半導体装置の構成について説明する。
図1は、実施の形態1における半導体装置の概略断面図である。
図2は、
図1に示す半導体装置の一部を拡大して示す概略断面図である。
図3は、
図1に示す半導体装置に含まれる端子の一部を拡大して示す概略斜視図である。
【0025】
図1、
図2および
図3を参照して、実施の形態1における半導体装置11aは、放熱板12と、放熱板12上に配置されるケース13aと、放熱板12上に配置される基板17aと、半導体チップ21a,21bと、板状の端子(バスバー)19a,19b,19cと、樹脂部29aと、を備える。
【0026】
放熱板12は、金属製である。放熱板12は、たとえば銅製である。放熱板12の表面には、ニッケル等のめっき処理が施されてもよい。放熱板12の外形形状は、厚さ方向に見て、X方向に延びる辺を長辺とし、Y方向(
図3参照)に延びる辺を短辺とした長方形である。放熱板12の他方の主面12bには、たとえば、放熱を効率的に行う放熱フィン(図示しない)等が取り付けられる場合がある。放熱板12の厚さ方向および基板17aの厚さ方向は、Z方向である。
【0027】
基板17aは、たとえばはんだから構成される第1接合材23aにより放熱板12の一方の主面12a上に接合される。基板17aは、導電性を有する回路パターン16aと、絶縁性を有する絶縁板14aと、金属板18aと、を含む。絶縁板14aの厚さ方向の一方側の面上に回路パターン16aが配置され、絶縁板14aの厚さ方向の他方側の面上に金属板18aが配置される。すなわち、基板17aは、金属板18a、絶縁板14aおよび回路パターン16aを積層した構成である。回路パターン16aは、それぞれ間隔をあけて配置される第1回路板15aと、第2回路板15bと、第3回路板15cと、を含む。本実施形態においては、回路パターン16aは、銅配線である。
【0028】
半導体チップ21a,21bは、炭化珪素(SiC)から構成される半導体層を動作層として含む。このような半導体チップ21a,21bは、耐熱性が高い。よって、高集積化を図ることが容易となる。半導体チップ21a,21bは、いわゆる縦型の半導体チップであり、たとえば金属-酸化物-半導体電界効果型トランジスタ(MOSFET)である。半導体チップ21a,21bはそれぞれ、厚さ方向の一方側に位置するソース電極およびゲート電極(いずれも図示せず)と、厚さ方向の他方側に位置するドレイン電極(図示せず)と、を含む。半導体チップ21aは、第1回路板15a上に配置される。半導体チップ21aのドレイン電極が、たとえばはんだから構成される第2接合材22aにより第1回路板15aに接合される。半導体チップ21bは、第2回路板15b上に配置される。半導体チップ21bのドレイン電極が、たとえばはんだから構成される第2接合材22bにより第2回路板15bに接合される。半導体チップ21aのソース電極は、ワイヤ24aにより第2回路板15bに接続される。半導体チップ21bのソース電極は、ワイヤ24bにより第3回路板15cに接続される。ワイヤ24a,24bとして、アルミニウム太線を採用してもよいし、リボンワイヤを採用してもよい。
【0029】
なお、半導体チップ21a,21bは、Si(シリコン)から構成される半導体層を動作層として含むものでもよい。半導体チップ21a,21bは、炭化珪素(SiC)から構成される半導体層を動作層として含む方がより好ましい。
【0030】
ケース13aは、放熱板12に取り付けられる。ケース13aは、たとえば接着剤により放熱板12に固定される。ケース13aは、たとえば絶縁性を有する樹脂製である。ケース13aは、基板17aを収容する。ケース13aは、基板17aを取り囲むように配置される四角筒状の側壁部31aと、側壁部31aの一方側の開孔を閉塞して基板17aを覆うように配置される板状の蓋部32aと、を含む。側壁部31aと蓋部32aとは、着脱自在に構成されていてもよい。蓋部32aのY方向の中央には、図示しない凸状部が形成されている。蓋部32aには、厚さ方向に貫通する第1貫通孔33a,33b,33cが形成されている。第1貫通孔33a,33b,33cはそれぞれX方向に間隔をあけて配置されている。第1貫通孔33a,33b,33cはそれぞれ、端子19a,19b,19cを差し込むことができる。第1貫通孔33a,33b,33cにより、端子19a,19b,19cの一部をケース13a外に配置させることができる。この場合、端子19a,19b,19cの一部は、ケース13a外において、半導体チップ21a,21bの上方の領域に露出することになる。蓋部32aは、厚さ方向に凹む凹部34a,34b,34cを有する。凹部34a,34b,34cは、外表面36aから凹むように形成されている。凹部34a,34b,34cの形状は、ナット35a,35b,35cを埋設することができ、後述するボルトの胴部を収容することができる形状である。凹部34a,34b,34cについても、それぞれX方向に間隔をあけて配置されている。凹部34a,34b,34c内にはそれぞれ、ナット35a,35b,35cが埋設されている。ナット35a,35b,35cは、後述するボルトと共に、端子19a,19b,19cと後述する圧着端子との接触状態を維持するために使用される。
【0031】
樹脂部29aは、放熱板12およびケース13aによって取り囲まれる空間28aに配置される。樹脂部29aは、基板17a、半導体チップ21a,21b等、ケース13a内に配置される部材を封止する。本実施形態においては、樹脂部29aを構成する樹脂は、たとえばエポキシ樹脂である。
【0032】
端子19a,19b,19cはそれぞれ、金属製である。端子19a,19b,19cは、それぞれ屈曲した帯状の形状を有する。本実施形態においては、端子19a,19b,19cは、それぞれたとえば、帯状の銅板を折り曲げて形成される。端子19a,19b,19cの厚さは、それぞれ1mm以上5mm以下である。具体的には、端子19a,19b,19cの厚さは、1mm以上1.5mm以下である。半導体装置11aは、端子19a,19b,19cによって外部との電気的な接続を確保する。端子19aと第1回路板15aとが接合されている。端子19bと第2回路板15bとが接合されている。端子19cと第3回路板15cとが接合されている。
【0033】
端子19a,19b,19cはそれぞれ、ケース13a内に配置される第1領域41a,41b,41cと、ケース13a外であってケース13a、具体的には蓋部32aの外表面36aに沿うように配置される第2領域42a,42b,42cと、を含む。第1領域41a,41b,41cはそれぞれ、端子19a,19b,19cの一方側に位置する第1端部43a,43b,43cを含む。第2領域42a,42b,42cはそれぞれ、端子19a,19b,19cの他方側に位置する第2端部44a,44b,44cを含む。
【0034】
ここで、端子19aの具体的な構成について説明する。
図4は、折り曲げられる前の端子19aの一部を示す概略斜視図である。
図5は、折り曲げられる前の端子19aを含む半導体装置11aの一部を示す概略断面図である。なお、端子19b,19cの構成は、端子19aの構成と同様であるため、それらの説明を省略する。
【0035】
図4および
図5を併せて参照して、端子19aは、屈曲部49a,50aにおいて第2領域42aが折り曲げられた形状である。第2領域42aは、Z方向においてケース13aの外側に向かって湾曲した形状である。すなわち、第2領域42aは、端子19aの長手方向に湾曲した形状を有する。端子19aの第2領域42aの一部において、端子19aの外表面51aおよび端子19aの内表面52aは、端子19aの幅方向であるY方向に見て、円弧面を有する。
【0036】
第2領域42aには、端子19aの厚さ方向に貫通する第2貫通孔45aが形成されている。第2貫通孔45aは、ボルトの軸部を差し込むことができるように構成されている。端子19aの第2領域42aの第1領域41a側の境界部分46aには、幅方向に延びるスリット47a,48aが形成されている。スリット47a,48aはそれぞれ、板状の端子19aの肉厚を減ずるように形成されている。スリット47aは、端子19aの厚さ方向の一方側(外表面51a側)に形成されており、スリット48aは、端子19aの厚さ方向の他方側(内表面52a側)に形成されている。スリット47aは、端子19aの長手方向に間隔をあけて複数形成されている。このようにして、境界部分46aにおける端子19aの厚さ方向の両側において、表面積を増大させることとしている。
【0037】
端子19aの第2領域42aには、端子19aの厚さ方向に突出する突出部53a,54aが形成されている。突出部53a,54aは、第2端部44aが位置する領域に形成されている。突出部53a,54aは、第2領域42aの幅方向の両縁部55a,56aに形成されている。突出部53a,54aは、端子19aの幅方向に見て第2端部44aに至るまで延びている。突出部53a,54aはそれぞれX-Z平面に沿う形状である。
【0038】
端子19aは、第2領域42aは、端子19aの厚さ方向において、ケース13aの外表面36aとの距離が第1の距離D1である第1部分57aと、ケース13aの外表面36aとの距離が第1の距離D1よりも長い第2の距離D2である第2部分58aと、を含む。第1部分57aは、第2端部44aを含むよう構成されている。すなわち、第2領域42aにおいては、長手方向の中央側が外部側に突出する凸状となっている。
【0039】
次に、半導体装置11aの製造方法について、簡単に説明する。実施の形態1における半導体装置11aの製造方法では、まず基板搭載工程が実施される。この工程では、第1回路板15a、第2回路板15b上にそれぞれ半導体チップ21a,21bを配置した基板17aが放熱板12上に搭載される。この場合、はんだから構成される第1接合材23aを放熱板12と金属板18aとの間に配置し、はんだから構成される第2接合材22a,22bを第1回路板15a、第2回路板15bと半導体チップ21a,21bとの間にそれぞれ配置しておく。このような状態で加熱し、第1接合材23aおよび第2接合材22a,22bを溶融させる。このようにして、基板17aと放熱板12を接合し、第1回路板15a、第2回路板15bと半導体チップ21a,21bとを接合する。その後、端子19aの第1端部43aを含む第1領域41aと第1回路板15aとを接合し、端子19bの第1端部43bを含む第1領域41bと第2回路板15bとを接合し、端子19cの第1端部43cを含む第1領域41cと第3回路板15cとを接合する。また、ワイヤ24aにより、半導体チップ21aのソース電極と第2回路板15bとを接続する。ワイヤ24bにより、半導体チップ21bのソース電極と第3回路板15cとを接続する。
【0040】
その後、ケース13aを取り付けるケース取り付け工程が実施される。この工程では、基板17aを取り囲むようにしてケース13aが取り付けられる。ケース13aの取り付けに際しては、第1貫通孔33a,33b,33cを利用し、第1貫通孔33a,33b,33cに端子19a,19b,19cの第2領域42a,42b,42cが差し込まれる。ここで、端子19a,19b,19cの第2領域42a,42b,42cは、ケース13a外に露出した状態となっている。ケース13aは、放熱板12上に接着剤等により取り付けられる。
【0041】
次に、放熱板12およびケース13aによって構成される空間28aに樹脂を注入する。樹脂の注入は、ケース13aに形成された図示しない孔を利用して行う。そして、注入した樹脂を硬化させ、樹脂部29aを形成する。
【0042】
その後、端子19a,19b,19cの第2領域42a,42b,42cをそれぞれケース13aの外表面36aに沿うように折り曲げる。このようにして、実施の形態1における半導体装置11aを得る。
【0043】
ここで、半導体装置11aの端子19aと半導体装置11aの外部との電気的な接続を確保する圧着端子とを接続する場合について説明する。
図6は、圧着端子を端子19aに接続した状態を示す半導体装置11aの一部の概略断面図である。
【0044】
図6を併せて参照する。圧着端子61aは、金属製である。圧着端子61aは、板状であって、厚さ方向の一方側に位置する外表面62aおよび厚さ方向の他方側に位置する内表面63aを含む。また、圧着端子61aには、厚さ方向に貫通する第3貫通孔64aが形成されている。第3貫通孔64aは、ボルト66aの胴部68aを差し込むことができる大きさに開孔している。また、端子19aと圧着端子61aとは、頭部67aおよび胴部68aを含むボルト66aにより圧着されている。具体的には、端子19aの第2貫通孔45aおよび圧着端子61aの第3貫通孔64aにボルト66aの胴部68aを差し込み、ボルト66aを回転させてボルト66aをナット35aが位置する側に押し進め、ボルト66aを締め付けていく。この時、圧着端子61aは、ボルト66aの頭部67aと外表面62aとが接触した状態で、矢印Zで示す向きと反対側の向きである端子19a側へ押圧される。
【0045】
上記半導体装置11aによると、端子19aの第2領域42aと圧着端子61a、具体的には端子19aの第2領域42aの外表面51aと圧着端子61aの内表面63aとを接触させる際に、圧着端子61a側から押圧することにより、まず第1の距離である第1部分57aがケース13aの外表面36aと接触する。その後、圧着端子61a側からさらに押圧することにより、第2部分58aとケース13aの外表面36aとの距離が近くなっていく。この時、第2領域42aにおいて押圧時における反力、この場合、具体的には矢印Zで示す向きに生じる反力を生じさせることができる。よって、この反力により、相手側の部材である圧着端子61aとの密着性を高めることができる。この場合、端子19aの第2領域42aの外表面51aと圧着端子61aの内表面63aとの密着性を高めることができる。したがって、端子19aと圧着端子61aとの接触不良が生じるおそれを低減して、端子19aと圧着端子61aとの間における電気的な導通を確保することができる。端子19b,19cと圧着端子との接続についても同様である。その結果、信頼性の向上を図ることができる。
【0046】
上記半導体装置11aにおいて、第1部分57aは、第2端部44aを含む。よって、上記帯状の端子19aにおいて、長手方向に第1部分57aおよび第2部分58aを形成することができる。したがって、上記半導体装置11aは、第1部分57aおよび第2部分58aを容易に形成することができる半導体装置となっている。
【0047】
上記半導体装置11aにおいて、第2領域42aには、端子19aの厚さ方向に突出する突出部53a,54aが形成されている。よって、第2領域42aの剛性を高めることができる。したがって、上記半導体装置11aは、端子19aのケース13a外に配置された部分を折り曲げて第2領域42aを形成する際の第2領域42aの意図しない変形を抑制して、密着性を高めることができる半導体装置となっている。
【0048】
上記半導体装置11aにおいて、突出部53a,54aは、第2領域42aの幅方向の両縁部55a,56aに形成されている。よって、第2領域42aの剛性をより高めることができる。したがって、上記半導体装置11aは、折り曲げ時において意図しない変形をより抑制して、密着性をより高めることができる半導体装置となっている。
【0049】
上記半導体装置11aにおいて、突出部53a,54aは、端子19aの幅方向に見て第2端部44aに至るまで延びている。よって、上記半導体装置11aは、第2端部44aを含む部分の剛性をより高めることができ、折り曲げ時において意図しない第2端部44aの変形を抑制することが容易な半導体装置となっている。この場合、たとえば、第2端部44aが位置する領域の幅方向の長さを長くするよう銅板を打ち抜き、幅方向の長さが長い部分を垂直な方向に折り曲げることにより突出部53a,54aを形成することができる。
【0050】
上記半導体装置11aにおいて、第2領域42aは、端子19aの長手方向に湾曲した形状を有する。よって、第1部分57aと第2部分58aとの間隔を広くすることが容易となる。したがって、上記半導体装置11aは、上記構成の端子19aを容易に製造することができる半導体装置となっている。
【0051】
上記半導体装置11aにおいて、第2領域42aの第1領域41a側の境界部分46aには、幅方向に延びるスリット47a,48aが形成されている。よって、端子19aを折り曲げて第2領域42aをケース13aの外表面36aに沿う形状とする際に、屈曲部49a,50aの応力集中を緩和することができる。したがって、上記半導体装置11aは、端子19aが損傷するおそれを低減することができる半導体装置となっている。
【0052】
上記半導体装置11aにおいて、スリット47a,48aは、端子19aの厚さ方向の両側に形成されている。よって、上記半導体装置11aは、端子19aの折り曲げ時において、端子19aが損傷するおそれをより低減することができる半導体装置となっている。
【0053】
(実施の形態2)
次に、他の実施の形態である実施の形態2について説明する。
図7は、実施の形態2における半導体装置に含まれる端子の一部を示す概略斜視図である。
図8は、
図7に示す半導体装置を長手方向に垂直な平面で切断した場合の断面図である。実施の形態2の半導体装置は、端子の形状が異なる点において実施の形態1の場合と異なっている。
【0054】
図7および
図8を参照して、実施の形態2の半導体装置に含まれる端子19dは、長手方向に湾曲した形状ではなく、短手方向に湾曲した形状である。すなわち、第2領域42dは、端子19dの幅方向に湾曲した形状を有する。具体的には、端子19dの第2領域42dの内表面52aの幅方向の両縁部57d,58dが第1部分となっており、内表面52aの幅方向の中央部59dが第2部分となっている。
【0055】
このような構成によっても、第2領域42dにおいて押圧時における反力を生じさせることができる。よって、この反力により、端子19dと相手側の部材である圧着端子との密着性を高めることができる。したがって、端子19dと圧着端子との接触不良が生じるおそれを低減して、端子19dと圧着端子との間における電気的な導通を確保することができる。その結果、信頼性の向上を図ることができる。
【0056】
本実施形態の半導体装置においては、第1部分と第2部分との間隔を比較的狭くすることが容易となる。したがって、押圧時における反力をより強めることができ、密着性をより高めることができる半導体装置となっている。
【0057】
(実施の形態3)
次に、さらに他の実施の形態である実施の形態3について説明する。
図9は、実施の形態3における半導体装置の概略斜視図である。実施の形態3における半導体装置は、端子の並ぶ方向が異なる点において実施の形態1の場合と異なっている。
【0058】
図9を参照して、実施の形態3の半導体装置11bは、側壁部31bおよび蓋部32bを含むケース13bと、3つの端子19e,19f,19gと、を含む。端子19e,19f,19gの第2領域42e,42f,42gには、突出部54e,54f,54gが形成されている。第2領域42e,42f,42gは、長手方向に湾曲している。蓋部32bの外表面36bは、3つの凸状部37b,38b,39bを含む。凸状部37b,38b,39bはそれぞれ、X方向に延びる形状である。凸状部37b,38b,39bは、Y方向に間隔をあけて配置されている。3つの端子19e,19f,19gは、Y方向に間隔をあけて配置されている。3つの端子19e,19f,19gは、それぞれの凸状部37b,38b,39bが配置される領域に露出するように構成されている。すなわち、実施の形態3においては、3つの端子19e,19f,19gが配置される方向と、第2領域の折り曲げられる方向とが直交している。
【0059】
本実施形態の半導体装置11bにおいても、端子19e,19f,19gと圧着端子との密着性を高めることができる。したがって、端子19e,19f,19gと圧着端子との接触不良が生じるおそれを低減して、端子19e,19f,19gと圧着端子との間における電気的な導通を確保することができる。その結果、信頼性の向上を図ることができる。本実施形態においては、隣り合う端子19e,19f,19g同士の沿面距離を長くすることができるため、より信頼性の高い半導体装置となっている。
【0060】
なお、上記の実施の形態においては、突出部は、第2領域の幅方向の両縁部に形成されていることとしたが、これに限らず、突出部は、幅方向の少なくともいずれか一方の縁部に形成されていてもよい。このようにすることにより、第2領域の剛性を高めながら、突出部を含む第2領域をケースの外表面に沿う形状とすることが容易となる。なお、突出部は、縁部ではなく、たとえば内表面のいずれかの位置に形成されていてもよい。
【0061】
(実施の形態4)
次に、さらに他の実施の形態である実施の形態4について説明する。
図10は、実施の形態4における半導体装置の概略斜視図である。実施の形態4における半導体装置は、端子が突出部を含まない点において実施の形態3の場合と異なっている。
【0062】
図10を参照して、実施の形態4の半導体装置11cは、実施の形態4の半導体装置11cは、側壁部31cおよび蓋部32cを含むケース13cと、3つの端子19h,19i,19jと、を含む。蓋部32cの外表面36cは、3つの凸状部37c,38c,39cを含む。凸状部37c,38c,39cはそれぞれ、X方向に延びる形状である。凸状部37c,38c,39cは、Y方向に間隔をあけて配置されている。3つの端子19h,19i,19jは、Y方向に間隔をあけて配置されている。3つの端子19h,19i,19jは、それぞれの凸状部37c,38c,39cが配置される領域に露出するように構成されている。すなわち、実施の形態4においては、3つの端子19h,19i,19jが配置される方向と、第2領域42h,42i,42jの折り曲げられる方向とが直交している。また、第2領域42h,42i,42jに突出部が形成されていない。
【0063】
本実施形態の半導体装置11cにおいても、端子19e,19f,19gと圧着端子との密着性を高めることができる。したがって、端子19e,19f,19gと圧着端子との接触不良が生じるおそれを低減して、端子19e,19f,19gと圧着端子との間における電気的な導通を確保することができる。その結果、信頼性の向上を図ることができる。本実施形態においては、突出部が形成されていないため、ケースの蓋部の外表面が平面であっても、ケースの蓋部の外表面に沿う形状とすることが容易である。
【0064】
(他の実施の形態)
なお、上記の実施の形態においては、半導体チップにおいて、動作層をSiCから構成される半導体層を含むこととしたが、これに限らず、動作層として他の半導体層、たとえば窒化ガリウムまたは酸化ガリウムから構成される半導体層を含むこととしてもよい。また、半導体チップにおいて、動作層をSiから構成される半導体層を含むこととしてもよい。
【0065】
また、上記の実施の形態において、端子の数や半導体チップの数は特に限定されるものではない。また、上記の実施の形態において、端子にスリットが形成されていなくともよく、端子の厚さ方向の少なくともいずれか一方にスリットが形成されていてもよい。
【0066】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本開示の半導体装置は、信頼性の向上を図ることが求められる場合に特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0068】
11a,11b,11c 半導体装置
12 放熱板
12a,12b 主面
13a,13b,13c ケース
14a 絶縁板
15a,15b,15c 回路板
16a 回路パターン、
17a 基板
18a 金属板
19a,19b,19c,19d,19e,19f,19g,19h,19i,19j 端子
21a,21b 半導体チップ
22a,22b 第2接合材
23a 第1接合材
24a,24b ワイヤ
28a 空間
29a 樹脂部
31a,31b,31c 側壁部
32a,32b,32c 蓋部
33a,33b,33c 第1貫通孔
34a,34b,34c 凹部
35a,35b,35c ナット
36a,51a,62a 外表面
37b,37c,38b,38c,39b,39c 凸状部
41a,41b,41c 第1領域
42a,42b,42c,42d,42e,42f,42g,42h,42i,42j 第2領域
43a,43b,43c 第1端部
44a,44b,44c 第2端部
45a 第2貫通孔
46a 境界部分
47a,48a スリット
49a,50a 屈曲部
52a,63a 内表面
53a,54a 突出部
55a,57d,56a,58d 縁部
57a 第1部分
59d 中央部
58a 第2部分
61a 圧着端子
64a 第3貫通孔
66a ボルト
67a 頭部
68a 胴部
D1 第1の距離
D2 第2の距離