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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】蓄電セル及び蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20240709BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20240709BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20240709BHJP
   H01M 50/186 20210101ALI20240709BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/0585
H01M50/184 A
H01M50/186
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020172956
(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公開番号】P2022064371
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕介
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-135935(JP,A)
【文献】特開2005-310667(JP,A)
【文献】特開2012-059450(JP,A)
【文献】特開2012-146435(JP,A)
【文献】特開2017-016825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00- 10/39
H01M 50/00- 50/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1集電体を有する第1電極と、
第2集電体を有する第2電極と、
前記第1集電体の第1面と、前記第2集電体の第1面に接合されたシール部材と、
前記第1集電体と、前記第2集電体と、前記シール部材と、によって画定される空間と、を備える蓄電セルであって、
前記第1電極と前記第2電極とが重なり合う方向を前記蓄電セルの積層方向とし、
前記第1集電体の前記第1面及び前記第2集電体の前記第1面に沿う方向を前記蓄電セルの面方向とし、
前記シール部材は、前記第1集電体の前記第1面に接合された第1接合部と、
前記第2集電体の前記第1面に接合された第2接合部と、
前記第1接合部と前記第2接合部とを接続する接続部と、を有し、
前記空間内の圧力上昇時において、前記第1接合部における前記面方向での前記空間内側寄りの第1端部と、前記第2接合部における前記面方向での前記空間内側寄りの第2端部と、が前記空間内の圧力上昇前よりも前記積層方向に離間することを特徴とする蓄電セル。
【請求項2】
前記第1端部は、前記第1端部に前記積層方向に対向する部材と接合されていない非接合領域を有することを特徴とする請求項1に記載の蓄電セル。
【請求項3】
前記蓄電セルは、前記積層方向から見て重なり合う前記第1接合部と前記第2接合部との間に介在する介在部材を備え、
前記第1接合部の前記第1集電体と接合される面と反対側の面の前記端部は、前記介在部材と接合されていないことを特徴とする請求項2に記載の蓄電セル。
【請求項4】
前記介在部材は、前記積層方向から見て重なり合う前記第1接合部及び前記第2接合部のうちの少なくとも前記第1接合部に対して非接合とされているセパレータであることを特徴とする請求項3に記載の蓄電セル。
【請求項5】
前記セパレータは、前記第2接合部に接合されていることを特徴とする請求項4に記載の蓄電セル。
【請求項6】
前記接続部は、前記第1集電体における前記面方向の外縁に位置する端面及び前記第2集電体における前記面方向の外縁に位置する端面よりも前記面方向に沿って飛び出した位置にあることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の蓄電セル。
【請求項7】
積層された複数の蓄電セルを有し、
複数の前記蓄電セルは、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の前記蓄電セルを含む蓄電装置。
【請求項8】
前記積層方向に隣り合う前記蓄電セルの間に介在し、かつ積層方向に隣り合う前記蓄電セルそれぞれに接合される延長シール部をさらに備え、
前記積層方向の外側から見た前記蓄電装置の平面視において、前記面方向における前記延長シール部の内端面は、前記第1接合部の前記空間内側寄りに位置する内端面及び前記第2接合部の前記空間内側寄りに位置する内端面よりも外側に位置することを特徴とする請求項7に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電セル及び蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の双極型電極を有する双極型二次電池が開示されている。特許文献1の双極型二次電池は、複数の双極型電極と、電解質層の漏れを防止するシール部と、を有する。双極型電極は、集電体と、集電体の第1面に位置する正極と、集電体の第2面に位置する負極と、を含む。シール部は、隣り合う集電体に接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-97940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
双極型二次電池において、充放電によってガスが発生する場合がある。ガスが発生すると、隣り合う集電体とシール部とによって画定される空間内の圧力が上昇する。上昇した圧力を受けてシール部と集電体との接合面が端部から剥離してシール性が低下する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する蓄電セルは、第1集電体を有する第1電極と、第2集電体を有する第2電極と、前記第1集電体の第1面と、前記第2集電体の第1面に接合されたシール部材と、前記第1集電体と、前記第2集電体と、前記シール部材と、によって画定される空間と、を備える蓄電セルであって、前記第1電極と前記第2電極とが重なり合う方向を前記蓄電セルの積層方向とし、前記第1集電体の前記第1面及び前記第2集電体の前記第1面に沿う方向を前記蓄電セルの面方向とし、前記シール部材は、前記第1集電体の前記第1面に接合された第1接合部と、前記第2集電体の前記第1面に接合された第2接合部と、前記第1接合部と前記第2接合部とを接続する接続部と、を有し、前記空間内の圧力上昇時において、前記第1接合部における前記面方向での前記空間内側寄りの第1端部と、前記第2接合部における前記面方向での前記空間内側寄りの第2端部と、が前記空間内の圧力上昇前よりも前記積層方向に離間する。
【0006】
これによれば、空間内の圧力上昇時、第1端部と第2端部とが積層方向に離間することにより、蓄電セル内の空間の容積を増加させることができる。このため、第1端部と、第2端部と、が積層方向に離間するように変形できない場合に比べると、同じガス発生量に対する空間内の圧力上昇量が低減されるため、第1集電体を第1接合部から引き剥がす力、及び第2集電体を第2接合部から引き剥がす力が低減される。したがって、空間内の圧力上昇時において、シール部材と第1集電体及び第2集電体とが接合面の端部から剥離しにくくなり、シール性の低下を抑制できる。
【0007】
上記蓄電セルにおいて、前記第1端部は、前記第1端部に前記積層方向に対向する部材と接合されていない非接合領域を有するとよい。
これによれば、空間内の圧力上昇時、第1端部を、第1端部に対向する部材から積層方向に離間させることができ、第1端部と第2端部とを空間内の圧力上昇前よりも積層方向に離間させやすい。
【0008】
上記蓄電セルにおいて、前記蓄電セルは、前記積層方向から見て重なり合う前記第1接合部と前記第2接合部との間に介在する介在部材を備え、前記第1接合部の前記第1集電体と接合される面と反対側の面の前記第1端部は、前記介在部材と接合されていないとよい。
【0009】
これによれば、介在部材を用いることで第1接合部と第2接合部とを接合されていない状態にしやすい。
上記蓄電セルにおいて、前記介在部材は、前記積層方向から見て重なり合う前記第1接合部及び前記第2接合部のうちの少なくとも前記第1接合部に対して接合されていないセパレータであるとよい。
【0010】
これによれば、蓄電セルを構成するセパレータを介在部材として利用することで、介在部材を追加することなく非接合領域を形成しやすい。
上記蓄電セルにおいて、前記セパレータは、前記第2接合部に接合されているとよい。
【0011】
これによれば、第1集電体と、セパレータと、第2集電体とが積層方向に重なる蓄電セルにおいて、セパレータがシール部材に接合されることにより、面方向に沿った蓄電セル内でのセパレータの位置ずれを抑制できる。
【0012】
上記蓄電セルにおいて、前記接続部は、前記第1集電体における前記面方向の外縁に位置する端面及び前記第2集電体における前記面方向の外縁に位置する端面よりも前記面方向に沿って飛び出した位置にあるとよい。
【0013】
これによれば、例えば、接続部が面方向において第1集電体の外端面よりも空間の内側寄りに位置する場合に比べて、空間内の圧力が上昇した際、接続部が変形することで、空間の容積をより増加させることができる。したがって、空間の容積を増加させる構成として好適である。
【0014】
上記課題を解決する蓄電装置は、積層された複数の蓄電セルを有し、複数の前記蓄電セルは、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の前記蓄電セルを含むとよい。
これによれば、積層された蓄電セルについて、空間内の圧力上昇時、第1端部と第2端部とが積層方向に離間することにより、蓄電セル内の空間の容積を増加させることができる。このため、第1端部と、第2端部と、が積層方向に離間するように変形できない場合に比べると、同じガス発生量に対する空間内の圧力上昇量が低減されるため、第1集電体を第1接合部から引き剥がす力、及び積層方向に沿って第2集電体を第2接合部から引き剥がす力が低減される。したがって、空間内の圧力上昇時において、シール部材と第1集電体及び第2集電体とが接合面の端部から剥離しにくくなり、シール性の低下を抑制できる。
【0015】
上記蓄電装置において、前記積層方向に隣り合う前記蓄電セルの間に介在し、かつ積層方向に隣り合う前記蓄電セルそれぞれに接合される延長シール部をさらに備え、前記積層方向の外側から見た前記蓄電装置の平面視において、前記面方向における前記延長シール部の内端面は、前記第1接合部の前記空間内側寄りに位置する内端面及び前記第2接合部の前記空間内側寄りに位置する内端面よりも外側に位置するとよい。
【0016】
これによれば、延長シール部によって積層方向に隣り合う蓄電セルの間の隙間を封止することができるとともに、複数の蓄電セル同士を積層方向に固定することができる。また、延長シール部の内端面の位置を調整することにより、空間内の圧力上昇時には、第1接合部と第2接合部とを互いに離間するように変形させることができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、シール性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態における蓄電装置を示す断面図。
図2】蓄電セルの一部分を示す断面図。
図3】蓄電セルを示す模式平面図。
図4】変形後の蓄電セルの一部分を示す断面図。
図5】別の実施形態における蓄電セルの一部分を示す断面図。
図6】別の実施形態における変形後の蓄電セルの一部分を示す断面図。
図7】別の実施形態における蓄電セルの一部分を示す断面図。
図8】別の実施形態における蓄電セルの一部分を示す断面図。
図9】別の実施形態における蓄電セルの一部分を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、蓄電セル及び蓄電装置を具体化した一実施形態を図1図4にしたがって説明する。
図1に示すように、蓄電装置1は、複数の蓄電セル10を積層した積層体2を含んで構成されている。蓄電装置1は、例えばニッケル水素二次電池又はリチウムイオン二次電池等の二次電池である。本実施形態では、蓄電装置1がリチウムイオン二次電池である場合を例示する。蓄電セル10が積層される方向を蓄電装置1の積層方向とする。各蓄電セル10は、積層方向に重なり合う第1電極としての正極11と第2電極としての負極12を有する。また、各蓄電セル10は、シール部材14を備える。なお、正極11と負極12とが重なり合う方向を蓄電セル10の積層方向Zとすると、蓄電セル10の積層方向Zは蓄電装置1の積層方向と一致する。蓄電セル10は、積層方向Zにおける正極11と負極12の間に介在部材としてのセパレータ13を備えていてもよい。セパレータ13は、正極11と負極12とを隔離することで両極の接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオン等の電荷担体を通過させる。セパレータ13は、積層方向Zの一面に第1面13aを有し、積層方向Zの他面に第2面13bを有する。第1面13aには、後述するシール部材14の第1接合部30と溶着しないように処理がなされている。例えば、第1面13aの少なくとも第1接合部30と対向する表面には、セラミック層が設けられている。
【0020】
正極11は、第1集電体20と、正極活物質層22と、を有する。第1集電体20は、積層方向Zの一面に第1面20aを有し、積層方向Zの他面に第2面20bを有する。また、第1集電体20は、第1面20aと第2面20bに交差する第1外端面20cを縁に有する。第1集電体20の第1面20a及び第2面20bに沿う方向を蓄電セル10の面方向Xとする。第1外端面20cは、第1集電体20における面方向Xの外縁に位置する端面である。正極活物質層22は、第1集電体20の第1面20aに位置する。第1集電体20の第2面20bには、正極活物質層22が設けられていない。正極11は、例えば矩形状の電極である。
【0021】
第1集電体20は、面方向Xに沿う部位のうち、正極活物質層22と積層方向Zに重なり合う部位に第1正極部位20dを有する。蓄電セル10において、第1正極部位20dでの蓄電セル10の積層方向Zに沿う厚みは最も厚くなっている。
【0022】
負極12は、第2集電体21と、負極活物質層23と、を有する。第2集電体21は、積層方向Zの一方に第1面21aを有し、積層方向の他方に第2面21bを有する。また、第2集電体21は、第1面21aと第2面21bに交差する第2外端面21cを縁に有する。なお、第2集電体21の第1面21a及び第2面21bに沿う方向は蓄電セル10の面方向Xと一致する。第2外端面21cは、第2集電体21における面方向Xの外縁に位置する端面である。負極活物質層23は、第2集電体21の第1面21aに位置する。第2集電体21の第2面21bには、負極活物質層23が設けられていない。負極12は、例えば矩形状の電極である。
【0023】
第2集電体21は、面方向Xに沿う部位のうち、負極活物質層23と積層方向Zに重なり合う部位に第1負極部位21dを有する。
蓄電セル10において、第1集電体20の第1面20aと第2集電体21の第1面21aは積層方向Zに対向する。つまり、正極11と負極12は積層方向Zから見て重なり合っている。負極活物質層23は、セパレータ13を介して正極活物質層22と積層方向Zに対向するように配置されている。正極活物質層22及び負極活物質層23のそれぞれは矩形状である。負極活物質層23は、正極活物質層22よりも一回り大きく形成されている。積層方向Zから蓄電セル10を見た平面視において、正極活物質層22の形成領域の全体が、負極活物質層23の形成領域の内側に位置している。
【0024】
蓄電セル10は、図示しない拘束部材によって、正極活物質層22と負極活物質層23とが積層方向Zに互いに近づくように拘束荷重が加えられている。したがって、少なくとも第1集電体20の第1正極部位20d及び第2集電体21の第1負極部位21dは、拘束部材によって積層方向に拘束されている。
【0025】
積層方向に隣り合う蓄電セル10同士は、一方の蓄電セル10の第1正極部位20dの第2面20bと、他方の蓄電セル10の第1負極部位21dの第2面21bとが互いに接するように積層されることによって積層体2が構成される。これにより、複数の蓄電セル10が電気的に直列に接続される。積層体2では、積層方向Zに隣り合う蓄電セル10により互いに接する第1集電体20及び第2集電体21を電極体とする疑似的なバイポーラ電極3が形成される。すなわち、1つのバイポーラ電極3は、第1集電体20、第2集電体21、正極活物質層22、及び負極活物質層23を含む。
【0026】
蓄電装置1における積層方向Zの一端部6には、終端電極として第1集電体20が配置される。蓄電装置1における積層方向Zの他端部7には、終端電極として第2集電体21が配置される。
【0027】
蓄電装置1は、積層方向Zにおいて積層体2を挟むように配置された正極通電板60及び負極通電板70を備える。蓄電装置1は、正極通電板60及び負極通電板70からなる一対の通電体を備える。正極通電板60及び負極通電板70の各々は導電性材料で構成される。正極通電板60は、積層方向Zの一端部6において最も外側に配置された第1集電体20に電気的に接続される。負極通電板70は、積層方向Zの他端部7において最も外側に配置された第2集電体21に電気的に接続される。正極通電板60及び負極通電板70のそれぞれに設けられた端子を通じて蓄電装置1の充放電が行われる。正極通電板60を構成する材料としては、第1集電体20を構成する材料を用いることができる。正極通電板60は、積層体2に用いられた第1集電体20よりも厚い金属板で構成してもよい。負極通電板70を構成する材料としては、第2集電体21を構成する材料を用いることができる。負極通電板70は、積層体2に用いられた第2集電体21よりも厚い金属板で構成してもよい。
【0028】
第1集電体20及び第2集電体21は、化学的に不活性な電気伝導体である。第1集電体20及び第2集電体21を構成する材料としては、例えば、金属材料、導電性樹脂材料、導電性無機材料等を用いることができる。導電性樹脂材料としては、例えば、導電性高分子材料又は非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂等が挙げられる。第1集電体20及び第2集電体21は、前述した金属材料又は導電性樹脂材料を含む1以上の層を含む複数層を備えてもよい。第1集電体20及び第2集電体21の表面に、メッキ処理又はスプレーコート等の公知の方法により被覆層を形成してもよい。第1集電体20及び第2集電体21は、例えば、板状、箔状、シート状、フィルム状、メッシュ状等の形態に形成されていてもよい。第1集電体20及び第2集電体21を金属箔とする場合、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、チタン箔、又はステンレス鋼箔等を用いることができる。第1集電体20及び第2集電体21としてステンレス鋼箔を用いる場合、例えばJIS G 4305:2015にて規定されるSUS304、SUS316、SUS301、SUS304等を用いると、第1集電体20及び第2集電体21の機械的強度を確保することができる。第1集電体20及び第2集電体21は、上記金属の合金箔又はクラッド箔であってもよい。本実施形態において、第1集電体20はアルミニウム箔であり、第2集電体21は銅箔である。第1集電体20及び第2集電体21は、箔状である場合、厚みを例えば、1μm~100μmとすればよい。
【0029】
正極活物質層22は、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵及び放出し得る正極活物質を含む。正極活物質としては、層状岩塩構造を有するリチウム複合金属酸化物、スピネル構造の金属酸化物、ポリアニオン系化合物などを採用すればよい。また、正極活物質としては、2種以上の正極活物質を併用してもよい。本実施形態において、正極活物質層22は複合活物質としてのオリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO)を含む。
【0030】
負極活物質層23は、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵及び放出可能である単体、合金、又は、炭素、金属化合物、リチウムと合金化可能な元素もしくはその化合物等が挙げられる。炭素としては天然黒鉛、人造黒鉛、あるいはハードカーボン(難黒鉛化性炭素)又はソフトカーボン(易黒鉛化性炭素)が挙げられる。人造黒鉛としては、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ等が挙げられる。リチウムと合金化可能な元素の例としては、シリコン(ケイ素)及びスズが挙げられる。本実施形態において、負極活物質層23は炭素系材料としての黒鉛を含む。
【0031】
正極活物質層22及び負極活物質層23は、必要に応じて電気伝導性を高めるための導電助材、結着剤、電解質(ポリマーマトリクス、イオン伝導性ポリマー、電解液等)、イオン伝導性を高めるための電解質支持塩(リチウム塩)等をさらに含み得る。活物質層に含まれる成分又は成分の配合比及び活物質層の厚さは特に限定されず、リチウムイオン二次電池についての公知の知見が適宜参照され得る。活物質層の厚みは、例えば2μm~150μmである。第1集電体20及び第2集電体21の表面に活物質層を形成させるために、ロールコート法等の公知の方法を用いてもよい。正極11又は負極12の熱安定性を向上させるために、第1集電体20及び第2集電体21の表面(片面又は両面)又は正極活物質層22及び負極活物質層23の表面に耐熱層を設けてもよい。耐熱層は、例えば、無機粒子と結着剤とを含み、その他に増粘剤等の添加剤を含んでもよい。
【0032】
導電助剤は、正極11又は負極12の導電性を高めるために添付される。導電助剤は、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト等である。
結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸等のアクリル系樹脂、スチレン―ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩、水溶性セルロースエステル架橋体、デンプン―アクリル酸グラフト重合体が挙げられる。これらの結着剤は、単独で又は複数で用いられ得る。溶媒としては、例えば、水、N―メチル―2―ピロドリン(NMP)等が用いられる。
【0033】
セパレータ13は、例えば、電解質を吸収保持するポリマーを含む多孔性シート又は不織布であってもよい。セパレータ13を構成する材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリエステル等が挙げられる。セパレータ13は、単層構造又は多層構造を有してもよい。多層構造は、例えば、接着層、耐熱層としてのセラミック層等を有してもよい。セパレータ13には、電解質が含浸されてもよく、セパレータ13自体を高分子ゲル電解質又は無機型電解質等の電解質で構成してもよい。
【0034】
セパレータ13に含浸される電解質としては、例えば、非水溶媒と非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む液体電解質(電解液)、又はポリマーマトリックス中に保持された電解質を含む高分子ゲル電解質等が挙げられる。
【0035】
セパレータ13に電解液が含浸される場合、その電解質塩として、LiClO、LiAsFLiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(FSO、LiN(CFSO、等の公知のリチウム塩を使用できる。また、非水溶媒として、環状カーボネート類、環状エステル類、鎖状カーボネート類、鎖状エステル類、エーテル類等の公知の溶媒を使用できる。なお、これら公知の溶媒材料を二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0036】
図2又は図3に示すように、積層方向Zに沿って外側から蓄電セル10を見た平面視において、シール部材14は、第1集電体20の縁部及び第2集電体21の縁部に沿って延びる。積層方向Zに沿って外側から蓄電セル10を見た平面視において、シール部材14は、正極活物質層22及び負極活物質層23の周囲を取り囲む矩形枠状である。シール部材14は、積層方向Zにおける第1集電体20と第2集電体21との間に位置する。シール部材14は、第1集電体20及び第2集電体21に接合される。シール部材14は、絶縁材料を含み、第1集電体20と第2集電体21との間を絶縁することによって短絡を防止する。
【0037】
シール部材14は、第1接合部30と、第2接合部31と、接続部32と、を有する。第1接合部30は、積層方向Zにおいて第1集電体20とセパレータ13との間に位置する。
【0038】
第1接合部30は、積層方向Zにセパレータ13と対向する第1面30aを有する。また、第1接合部30は、積層方向Zに第1集電体20と対向する第2面30bを有する。第1接合部30の第1面30aは、第2面30bの積層方向Zの反対側に位置する。また、第1接合部30は、面方向Xにおける正極活物質層22寄りに第1内端面30cを有し、第1面30aは、第1内端面30cと交差する部分に第1端部30dを有する。換言すると、第1端部30dは、第1接合部30の第1面30aにおける面方向Xでの空間S内側寄りの一端である。第1面30aは、セパレータ13の第1面13aと接合していない。第2面30bは、第1集電体20の第1面20aと接合している。第1接合部30の第1面30aは、セパレータ13の第1面13aに形成されたセラミック層により、セパレータ13に溶着されていない。つまり、第1接合部30とセパレータ13とは接合されていない。また、第1接合部30の第2面30bは、第1集電体20の第1面20aと溶着されて接合されている。第1接合部30の第2面30bと第1集電体20の第1面20aとが、第1接合部30と第1集電体20との接合面となる。
ここで第1集電体20について説明する。第1集電体20は、面方向Xに沿う部位のうち、第1接合部30と積層方向Zから見て重なり合う部位に第2正極部位20eを有する。蓄電セル10において、第2正極部位20eでの蓄電セル10の積層方向Zに沿う厚みは最も薄くなっている。また、第1集電体20は、面方向Xに沿う部位のうち、第1正極部位20dと第2正極部位20eとを接続する部位に第3正極部位20fを有している。
【0039】
第2接合部31は、積層方向Zにおいて第2集電体21とセパレータ13との間に位置する。第2接合部31は、積層方向Zにセパレータ13と対向する第1面31aを有する。また、第2接合部31は、積層方向Zに第2集電体21と対向する第2面31bを有する。第2接合部31の第1面31aは、第2面31bの積層方向Zの反対側に位置する。また、第2接合部31は、面方向Xにおける負極活物質層23寄りに第2内端面31cを有し、第1面31aは、第2内端面31cと交差する部分に第2端部31dを有する。換言すると、第2端部31dは、第2接合部31の第1面31aにおける面方向Xでの空間S内側寄りの一端である。第1面31aは、セパレータ13の第2面13bと接合している。第2面31bは、第2集電体21の第1面21aと接合している。第2接合部31は、例えば、第1面31aがセパレータ13の第2面13bと溶着されて接合され、第2面31bが第2集電体21の第1面21aと溶着されて接合されている。第2接合部31の第2面31bと第2集電体21の第1面21aとが、第2接合部31と第2集電体21との接合面となる。
【0040】
ここで第2集電体21について説明する。第2集電体21は、面方向Xに沿う部位のうち、第2接合部31と積層方向Zから見て重なり合う部位に第2負極部位21eを有する。第2正極部位20eと第2負極部位21eとは積層方向Zから見て重なり合っている。また、第2集電体21は、面方向Xに沿う部位のうち、第1負極部位21dと第2負極部位21eとを接続する部位に第3負極部位21fを有している。
【0041】
シール部材14において、第1接合部30と第2接合部31とは積層方向Zから見て重なり合っている。本実施形態では、第1接合部30と第2接合部31との全体は、セパレータ13の一部を介して積層方向Zから見て重なり合っている。
【0042】
また、セパレータ13は、その外縁に第2正極部位20e及び第1接合部30と、第2負極部位21e及び第2接合部31との間に介在する介在部33を有する。積層方向Zに沿って外側から蓄電セル10を見た平面視において、介在部33は、正極活物質層22及び負極活物質層23の周囲を取り囲む矩形枠状である。また、介在部33は、第1接合部30に対し接合されていない。また、介在部33は、第2接合部31に対し接合されている。つまり、第1面30aの第1端部30dと、第1端部30dに対向するセパレータ13の第1面13aとは、接合されていない。したがって、第1端部30dは、当該第1端部30dに積層方向Zに対向するセパレータ13と接合されていない非接合領域を有する。蓄電セル10において、ガスの発生等がなく空間S内の圧力が上昇していない状態における空間Sの内圧P1での、第1接合部30の第1端部30dと、第2接合部31の第2端部31dとの間の積層方向Zへの寸法を寸法L1とする。内圧P1の状態では、例えば、寸法L1は積層方向Zの第1接合部30と第2接合部31との間に介在するセパレータ13の厚さにほぼ等しい。特に、内圧P1が大気圧に対して負圧である場合は、第1接合部30及び第2接合部31が積層方向Zに互いに近づくように大気圧によって押圧されるため、寸法L1は積層方向Zのセパレータ13の厚さに等しくなる。
【0043】
接続部32は、第1接合部30と第2接合部31とを接続する。接続部32は、第1集電体20の第1外端面20c及び第2集電体21の第2外端面21cよりも面方向Xに沿って飛び出した部位である。接続部32は、面方向Xに沿って第1接合部30に連続する第1連続部15と、面方向Xに沿って第2接合部31に連続する第2連続部16と、第1連続部15及び第2連続部16に連続する第3連続部17と、を有する。
【0044】
積層方向Zに沿う接続部32の断面形状は第1接合部30から第2接合部31へ折り曲げられた形状である。接続部32において、積層方向Zにおける第1連続部15と第2連続部16との間にはセパレータ13の一部が介在している。
【0045】
第1連続部15は、積層方向Zのセパレータ13寄りに第1内面15aを有する。また、第1連続部15は、積層方向Zの第1集電体20寄りに第1外面15bを有する。第1内面15aは、セパレータ13の第1面13aと接合されていない。第1外面15bは、蓄電セル10の外部に露出している。
【0046】
第2連続部16は、積層方向Zのセパレータ13寄りに第2内面16aを有する。また、第2連続部16は、積層方向Zの第2集電体21寄りに第2外面16bを有する。第2内面16aは、セパレータ13の第2面13bと接合されている。第2外面16bは、蓄電セル10の外部に露出している。
【0047】
上記構成のシール部材14は、第1集電体20と第2集電体21とシール部材14とによって画定される空間Sを封止する。シール部材14は、空間Sに収容された電解液の外部への流出を抑制する。また、シール部材14は、外部から空間S内への水分の侵入を抑制する。本実施形態では、シール部材14の材料は酸変性ポリエチレンである。なお、シール部材14の材料は、酸変性ポリプロピレンであってもよい。シール部材14は、可撓性を有する。
【0048】
蓄電セル10は、セル構成部材としての筒部材18を備える。図示しないが、筒部材18を軸方向に沿って外側から見た軸方向視において、筒部材18は扁平形状である。本実施形態では、筒部材18は、電解液を注入するために用いられる。筒部材18は、シール部材14と第1集電体20との間に介在している。筒部材18は、通路18aと、閉塞部18bと、を有する。通路18aは、周壁18eによって形成されている。筒部材18の軸方向における、空間Sの外部寄りの外端部18cは、第3連続部17の第3外面17bよりも外側に位置する。筒部材18の外端部18cは、閉塞部18bによって閉塞されている。なお、閉塞部18bは、筒部材18の外端部18cが熱によって溶着されることにより形成されている。閉塞部18bは、第3連続部17の第3外面17bよりも外側において通路18aを閉塞している。筒部材18の軸方向における、外端部18cと反対側の内端部18dは、第1接合部30の第1内端面30cよりも内側に位置する。筒部材18の内端部18dは、空間Sに向けて開口している。通路18aは、閉塞部18bから空間Sの内側に向かってシール部材14を面方向Xに貫通して設けられている。通路18aのうち、積層方向Zにシール部材14及び第1集電体20と重なる部分は、第1集電体20及びシール部材14と溶着されることにより接合されている。すなわち、当該通路18aが重なる部分においては、シール部材14と第1集電体20とは直接接合されておらず、筒部材18を介して接合がなされる。筒部材18の内端部18d寄りの一部分は、積層方向Zにおける第1集電体20の第2正極部位20e及び第3正極部位20fと、第2集電体21の第2負極部位21e及び第3負極部位21fとの間に位置する。
【0049】
したがって、筒部材18の内端部18d寄りの一部は、積層方向Zに第1集電体20及び第2集電体21と重なり合う。筒部材18の内端部18d寄りの一部は、第1集電体20のうち、第3正極部位20fにおける第1面20aに非接合である。筒部材18の内端部18dは開口している。
【0050】
次に、本実施形態の作用について説明する。
例えば、蓄電セル10の充放電によって空間S内にガスが発生し、空間S内の圧力が上昇する場合がある。図2又は図4に示すように、空間S内の圧力が上昇すると、空間Sから空間Sの外部へ向けた力が生じる。すると、蓄電セル10は、空間Sの容積を増加させるように変形する。このとき、第1集電体20と、第2集電体21には、積層方向Zに沿って互いに離間させる力が作用する。拘束部材によって拘束されていない第2正極部位20e及び第3正極部位20fと、第2負極部位21e及び第3負極部位21fは積層方向Zに沿って互いに離間するように変形する。第2正極部位20eに接合された第1接合部30は、第1端部30dを含め、第1接合部30の第1面30aに対向する部材であるセパレータ13と接合されていないため、第2正極部位20eに追従して変形する。第2負極部位21e及びセパレータ13に接合された第2接合部31は、セパレータ13と共に第2負極部位21eに追従して変形する。つまり、第1接合部30の第1端部30dと、第2接合部31の第2端部31dとが積層方向Zに離間する。このとき、シール部材14の接続部32は積層方向Zに広がりつつ、面方向Xに縮まるように変形する。その結果、蓄電セル10において、積層方向Zに重なり合う第1接合部30と第2接合部31とを積層方向Zに離間する方向へ変形させることが許容される。その結果、第1接合部30の第1端部30dと、第2接合部31の第2端部31dとの間の積層方向Zへの寸法は、空間S内の圧力上昇前に比べて大きくなる。すなわち、ガスの発生等により空間S内の圧力が上昇した状態における空間Sの内圧は、内圧P1よりも大きい内圧P2となる。内圧P2での、第1接合部30の第1端部30dと、第2接合部31の第2端部31dとの間の積層方向Zへの寸法を寸法L2とすると、寸法L2は寸法L1よりも大きくなる。
【0051】
このようにシール部材14、第1集電体20、及び第2集電体21が変形することによって、空間Sの容積が増加するため、空間S内の圧力上昇量が抑制され、積層方向Zに沿って第1集電体20から引き剥がす力、及び積層方向Zに沿って第2集電体21を第2接合部31から引き剥がす力が低減される。
【0052】
本実施形態では、以下の効果を得ることができる。
(1)空間S内の圧力上昇時、蓄電セル10では、第1接合部30と第2接合部31とを寸法L1が拡大するように変形させることができる。蓄電セル10における寸法L1が拡大するのに伴い、第1接合部30と第2接合部31とを互いに離間するように変形させることができるとともに、蓄電セル10内の空間Sの容積を増加させることができる。このため、第1接合部30及び第2接合部31が互いに離間するように変形できない場合に比べると、同じガス発生量に対する空間S内の圧力上昇量が低減されるため、積層方向Zに沿って第1集電体20を第1接合部30から引き剥がす力、及び積層方向Zに沿って第2集電体21を第2接合部31から引き剥がす力が低減される。したがって、空間S内の圧力上昇時において、シール部材14と第1集電体20及び第2集電体21とが接合面の端部から剥離しにくくなり、シール性の低下を抑制できる。
【0053】
(2)第1端部30dは、セパレータ13に対する非接合領域を有するため、空間S内の圧力上昇時において、第1端部30dを含む第1接合部30をセパレータ13から離間させることができ、第1端部30dと、第2端部31dと、を空間S内の圧力上昇前よりも積層方向Zに離間させやすい。
【0054】
(3)第1接合部30と第2接合部31の間にセパレータ13の介在部33を介在させているため、シール部材14に特殊な加工をすることなく、第1接合部30と第2接合部31とが互いに接合されていない状態にしやすい。
【0055】
(4)蓄電セル10を構成するセパレータ13を介在部材として利用することで、介在部材を追加することなく第1端部30dに非接合領域を形成しやすく、第1接合部30と第2接合部31とが互いに接合されていない状態にしやすい。
【0056】
(5)第1集電体20と、セパレータ13と、第2集電体21とが積層方向Zに重なる蓄電セル10において、セパレータ13の第2面13bが第2接合部31の第1面31aに接合されることにより、蓄電セル10内での面方向Xへのセパレータ13の位置ずれを抑制できる。
【0057】
(6)本実施形態では、接続部32が第1集電体20の第1外端面20c及び第2集電体21の第2外端面21cよりも面方向Xに沿って飛び出している。例えば、接続部32が面方向Xにおいて第1外端面20c及び第2外端面21cよりも空間Sの内側寄りに位置する場合に比べて、空間S内の圧力が上昇した際、接続部32が変形することで、空間Sの容積をより増加させることができる。したがって、空間Sの容積を増加させる構成として好適である。
【0058】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。また、実施形態のシール部材14を第1シール部材14と記載する場合もある。
【0059】
図5又は図6に示すように、蓄電装置1は、第2シール部材40を備えていてもよい。第2シール部材40は、シール部本体41と、複数の延長シール部42と、を有する。シール部本体41は、積層方向Zの外側から蓄電装置1を見た平面視が矩形枠状である。また、シール部本体41は、第1シール部材14を取り囲む。シール部本体41の内面41aは、各第1シール部材14の接続部32の外端面32cに接合している。
【0060】
延長シール部42の各々は、シール部本体41の内面41aから面方向Xに沿って蓄電装置1の内側に向けて延びている。延長シール部42の各々は、積層方向Zの外側から蓄電装置1を見た平面視が、シール部本体41よりも一回り小さい矩形枠状である。延長シール部42の各々は、積層方向Zに隣り合う第1シール部材14同士の間に位置する基部43と、基部43から面方向Xに突出し、かつ積層方向Zに隣り合う第1集電体20と第2集電体21との間に位置する先端部44と、を有している。
【0061】
各基部43は、積層方向Zに第1連続部15と対向する第1面43aを有し、積層方向Zに第2連続部16と対向する第2面43bを有する。また、各先端部44は、積層方向Zに第2集電体21と対向する第1面44aを有し、積層方向Zに第1集電体20と対向する第2面44bを有する。延長シール部42の各々は、基部43の第2面43bと先端部44の第1面44aとを繋ぐ第1段差面42aを有する。同様に、延長シール部42の各々は、基部43の第1面43aと先端部44の第2面44bとを繋ぐ第2段差面42bを有する。
【0062】
延長シール部42の各々において、基部43の第1面43aは、第1連続部15の第1外面15bに接合されている。また、延長シール部42の各々において、基部43の第2面43bは、第2連続部16の第2外面16bに接合されている。
【0063】
延長シール部42の各々において、先端部44の第1面44aは、第2集電体21の第2面21bのうち第2負極部位21eに位置する部位に接合されている。また、延長シール部42の各々において、先端部44の第2面44bは、第1集電体20の第2面20bのうち第2正極部位20eに位置する部位に接合されている。
【0064】
延長シール部42の各々において、第1段差面42aは、第2集電体21の第2外端面21cに接合されている。また、延長シール部42の各々において、第2段差面42bは、第1集電体20の第1外端面20cに接合されている。
【0065】
したがって、延長シール部42の各々は、積層方向Zに隣り合う蓄電セル10間の隙間Gをシールしている。
積層方向Zの外側から見た蓄電装置1の平面視において、面方向Xにおける延長シール部42の内端面42cは、第1接合部30の第1内端面30c及び第2接合部31の第2内端面31cよりも外側、かつ第1集電体20の第1外端面20c及び第2集電体21の第2外端面21cよりも内側に位置する。なお、延長シール部42は先端部44を有しておらず、基部43だけの構成であってもよい。この場合、延長シール部42の内端面42cは、面方向Xにおいて、第1集電体20の第1外端面20c及び第2集電体21の第2外端面21cと同じ位置又は外側に位置する。
【0066】
さて、上記構成において、空間S内の圧力が上昇すると、空間Sから空間Sの外部へ向けた力が生じる。すると、蓄電セル10は、面方向Xにおける延長シール部42の内端面42cよりも空間S寄りの部位において、空間Sの容積を増加させるように変形する。このとき、第1集電体20の第2正極部位20eの一部及び第3正極部位20fと、第2集電体21の第2負極部位21eの一部及び第3負極部位21fには、積層方向Zに沿って互いに離間させる力が作用する。第2正極部位20eに接合された第1接合部30は、第2正極部位20eに追従して変形する。第2負極部位21eに接合された第2接合部31は、第2負極部位21eに追従して変形する。つまり、第1接合部30の第1端部30dと、第2接合部31の第2端部31dとが積層方向Zに離間する。その結果、蓄電セル10において、積層方向Zに重なり合う第1接合部30の一部と第2接合部31の一部とを積層方向Zに離間する方向へ変形させることが許容される。その結果、第1接合部30の第1端部30dと、第2接合部31の第2端部31dとの間の積層方向Zへの寸法は、空間S内の圧力上昇前に比べて大きくなる。すなわち、圧力が上昇した状態における内圧P2での寸法L2は、圧力が上昇していない状態における内圧P1での寸法L1よりも大きい。
【0067】
したがって、第2シール部材40の延長シール部42によって積層方向Zに隣り合う蓄電セル10の間の隙間Gを封止することができる。さらに、第2シール部材40により、複数の蓄電セル10同士を積層方向Zに固定することができる。また、延長シール部42の内端面42cの位置を調整することにより、空間S内の圧力上昇時には、第1接合部30と第2接合部31とを互いに離間するように変形させることができる。
【0068】
なお、蓄電装置1は、第2シール部材40を有しない構成であってもよい。例えば、第1シール部材14を備える蓄電セル10を積層方向Zに一体化する構成において、積層方向Zに隣り合う第1シール部材14同士を溶着させて一体化してもよい。具体的には、積層方向Zに隣り合う蓄電セル10の接続部32に対して入熱する。すると、積層方向Zに隣り合う接続部32同士が一体化され、延長シール部42が形成される。この場合、延長シール部42は、一方の蓄電セル10の第2集電体21と他方の蓄電セル10の第1集電体20との間に位置する。
【0069】
図7に示すように、シール部材14における積層方向Zに第1接合部30と第2接合部31とが重なり合う部分において、第1接合部30と第2接合部31との間にセパレータ13が介在されていなくてもよい。この場合、第1接合部30の第1面30aと第2接合部31の第1面31aとが接合しないように切れ込み45を形成する。そして、この切れ込み45は、第1接合部30と第2接合部31とを積層方向Zに互いに接合させず、第1端部30dと、第2端部31dと、を非接合としている。切れ込み45は、例えば、第1接合部30の第1面30aと、第2接合部31の第1面31aとが互いに溶着しないように、第1集電体20と第1接合部30及び第2集電体21と第2接合部31とを溶着あるいは接着して形成され得る。
【0070】
図8に示すように、シール部材14は、第1接合部30と、第2接合部31と、それら第1接合部30と第2接合部31との間に介在する介在シール部50と、を有していてもよい。このシール部材14を構成する場合、第1接合部30を第1集電体20の第1面20aに予め接合し、第2接合部31を第2集電体21の第1面21aに予め接合しておく。そして、第1集電体20と第2集電体21とを積層する際に、第1接合部30と第2接合部31との間に介在シール部50を配置し、第1接合部30、第2接合部31、及び介在シール部50に対して入熱する。すると、第1接合部30と、第2接合部31と、介在シール部50とが一体化され、シール部材14が形成される。
【0071】
介在シール部50は、第1接合部30における空間S内側寄りの第1端部30d、及び第2接合部31における空間S内側寄りの第2端部31dよりも、空間S外側においてのみ介在しており、一部は第1集電体20の第1外端面20c及び第2集電体21の第2外端面21cよりも面方向Xに沿って飛び出している。すなわち、介在シール部50は、第1接合部30における空間S内側寄りの第1端部30d、及び第2接合部31における空間S内側寄りの第2端部31dにおいて、一体化されることがない。この場合、接続部32は介在シール部50によって構成され、積層方向Zから見たとき、第1接合部30及び第2接合部31と、接続部32は一部が重複している。セパレータ13は、第2接合部31の第1面31aにおいて、介在シール部50よりも空間S内側寄りの部分に接合されている。第1接合部30の第1面30aとセパレータ13とは、介在シール部50の積層方向Zに沿う厚みによって離間しており、互いに接合されていない。すなわち、本形態における内圧P1での寸法L1は、介在シール部50の積層方向Zに沿う厚みにほぼ等しい。
【0072】
図9に示すように、図8に示す第1シール部材14を備える蓄電セル10を積層方向Zに一体化する構成において、積層方向Zに隣り合う介在シール部50同士を溶着させて一体化してもよい。この場合、介在シール部50同士を溶着すると、積層方向Zに隣り合う蓄電セル10のうち、一方の蓄電セル10の第1集電体20と、他方の蓄電セル10の第2集電体21との間に位置する部分に、介在シール部50の一部が入り込み、入り込んだ部位によって延長シール部42が構成される。
【0073】
○ 実施形態において、正極11を第1電極とし、負極12を第2電極としたが、これに限られない。例えば、負極12を第1電極とし、正極11を第2電極としてもよい。
○ 実施形態において、第1接合部30と第2接合部31との間に介在させるのはセパレータ13に限らず、板状の別部材を介在させてもよい。
【0074】
○ 第1集電体20、第2集電体21、及びシール部材14は、平面視が円形状、楕円状、六角形状であってもよい。
○ セル構成部材は、空間S内に発生したガスを外部へ排出するために用いられてもよい。
【0075】
○ シール部材14において、接続部32は、第1集電体20の第1外端面20c及び第2集電体21の第2外端面21cから飛び出していなくてもよい。この場合、接続部32は、積層方向Zにおいて第2正極部位20eと第2負極部位21eの間に位置する。
【0076】
○ セパレータ13の介在部33は、第2接合部31に接合されていなくてもよい。
○ 実施形態では、第1接合部30の全体と第2接合部31の全体が積層方向Zに重なり合っていたが、第1接合部30と第2接合部31とは、一部が積層方向Zに重なり合っていてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1…蓄電装置、10…蓄電セル、11…第1電極としての正極、12…第2電極としての負極、13…介在部材としてのセパレータ、13a…第1面、13b…第2面、14…シール部材、18…筒部材、20…第1集電体、20a…第1面、20c…端面としての第1外端面、21…第2集電体、21a…第1面、21c…端面としての第2外端面、30…第1接合部、30c…内端面としての第1内端面、30d…第1端部、31…第2接合部、31c…内端面としての第2内端面、31d…第2端部、32…接続部、42…延長シール部、S…空間、X…面方向、Z…積層方向。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9