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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】車両用変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20240709BHJP
【FI】
F16H57/04 J
F16H57/04 N
F16H57/04 Q
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020173457
(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公開番号】P2022064687
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岐津 尚哉
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-027495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動歯車機構を収容するデフケースと、前記デフケースに一体回転自在に取付けられ、変速機構のファイナルドライブギヤから動力が伝達されるファイナルドリブンギヤとを有し、前記ファイナルドリブンギヤが前記差動歯車機構に対して前記デフケースの回転中心軸方向の一端部側に設置されたディファレンシャル装置と、
軸受支持部が形成された壁部を有し、底部に潤滑油が貯留される変速機ケースとを備え、
前記デフケースの回転中心軸方向の他端部を、軸受を介して前記軸受支持部に回転自在に支持する車両用変速機であって、
前記変速機ケースの前記壁部に溝部およびリブが形成されており、
前記溝部は、前記軸受支持部の内部と外部とを連通しており、
前記リブは、前記壁部から前記ファイナルドリブンギヤに向かって突出し、かつ、前記溝部から前記壁部の上端外周縁に向かって延びており、
前記ファイナルドリブンギヤの上方において、前記リブの突出方向の先端部は、前記ファイナルドリブンギヤの外周面と上下方向に対向しており、
前記リブの突出方向の先端部と前記ファイナルドリブンギヤの間に上下方向の隙間が形成されており、
前記差動歯車機構は、一対のピニオンギヤを前記デフケースに回転自在に支持するピニオンシャフトを有し、
前記リブの延びる方向の中央部付近に、前記リブから前記ファイナルドリブンギヤに向かって突出する突部が形成されており、
前記突部は、上下方向で前記ピニオンシャフトに対向していることを特徴とする車両用変速機。
【請求項2】
前記突部の下部は、下方に向かって先細り形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用変速機。
【請求項3】
前記リブの前方に、前記ファイナルドリブンギヤによって掻き上げられた潤滑油が貯留されるキャッチタンクが設置されており、
前記キャッチタンクは、前壁と、前記前壁よりも前記ファイナルドリブンギヤ側に位置する後壁とを有し、
前記後壁に、前記後壁の上端から下方に窪む切り欠きが形成されており、
前記前壁に、前記前壁の上端から前記後壁の上端よりも上方に延びる潤滑油衝突壁部が形成されており、
前記キャッチタンクは、前記切り欠きと前記ファイナルドリブンギヤが上下方向で対向し、かつ、前記ファイナルドリブンギヤの上方において、前記リブの突出方向の先端部が車幅方向で前記切り欠きの一部と重なるように設置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたディファレンシャル装置は、差動歯車機構を備えたデフケースの軸方向両端部が軸受を介してハウジングに支持されており、デフケースの外壁にデフリングギヤが設けられている。
【0003】
デフリングギヤは、軸方向の中心部より一方側に設置されているので、軸方向の中心部よりも他方側に設けられた軸受がデフリングギヤに対して軸方向に離れてしまう。このため、デフリングギヤによって掻き上げられたオイルが軸受に供給され難い。
【0004】
軸方向の中心部より他方側に設けられた軸受に潤滑油を供給する車両用ディファレンシャル装置として、特許文献1に記載されるものが知られている。
【0005】
この車両用ディファレンシャル装置において、ハウジングのデフケース(ディファレンシャルケース)の軸方向他側に臨む部分にデフケースの回転方向と対向するように延びるリブが形成されており、ハウジング内が、セパレートプレートによってデフリングギヤが配置された一側室と、リブが形成された他側室とに区分けされている。
【0006】
また、車両用ディファレンシャル装置には、セパレートプレートとリブとでデフリングギヤにより掻き上げられた潤滑油の一部を溜める油溜まり部が形成されている。さらに、車両用ディファレンシャル装置は、油溜まり部の潤滑油を少なくとも軸方向の中心部より他側に設けられた軸受に供給する連通路を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-3761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ディファレンシャル装置は、車両の低速走行域(デフリングギヤの低速回転域)においてハウジングの内部の油面が高いため、軸受を潤滑油によって容易に潤滑することができる。
【0009】
ところが、車両が高速走行域(デフリングギヤの高速回転域)においては、デフリングギヤによって掻き上げられる潤滑油量が増大するため、ハウジングの内部の油面が低下し、軸受に加わる負荷も大きくなる。このため、軸受の焼き付きを防止するために、軸受に多くの潤滑油を供給する必要がある。
【0010】
しかしながら、従来の車両用ディファレンシャル装置は、車両の走行速度域、すなわち、デフリングギヤの回転域によって軸受に供給される潤滑油量を変更する構成を有していないので、デフリングギヤの高速回転域において軸受に多くの潤滑油を供給できないおそれがある。
【0011】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、車両の走行速度域に応じて軸受の潤滑性能を向上させつつ、ギヤ部材の攪拌抵抗を低減できる車両用変速機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、差動歯車機構を収容するデフケースと、前記デフケースに一体回転自在に取付けられ、変速機構のファイナルドライブギヤから動力が伝達されるファイナルドリブンギヤとを有し、前記ファイナルドリブンギヤが前記差動歯車機構に対して前記デフケースの回転中心軸方向の一端部側に設置されたディファレンシャル装置と、軸受支持部が形成された壁部を有し、底部に潤滑油が貯留される変速機ケースとを備え、前記デフケースの回転中心軸方向の他端部を、軸受を介して前記軸受支持部に回転自在に支持する車両用変速機であって、前記変速機ケースの前記壁部に溝部およびリブが形成されており、前記溝部は、前記軸受支持部の内部と外部とを連通しており、前記リブは、前記壁部から前記ファイナルドリブンギヤに向かって突出し、かつ、前記溝部から前記壁部の上端外周縁に向かって延びており、前記ファイナルドリブンギヤの上方において、前記リブの突出方向の先端部は、前記ファイナルドリブンギヤの外周面と上下方向に対向しており、前記リブの突出方向の先端部と前記ファイナルドリブンギヤの間に上下方向の隙間が形成されており、 前記差動歯車機構は、一対のピニオンギヤを前記デフケースに回転自在に支持するピニオンシャフトを有し、前記リブの延びる方向の中央部付近に、前記リブから前記ファイナルドリブンギヤに向かって突出する突部が形成されており、前記突部は、上下方向で前記ピニオンシャフトに対向していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
このように上記の本発明によれば、車両の走行速度域に応じて軸受の潤滑性能を向上させつつ、ギヤ部材の攪拌抵抗を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の平面図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の平面図であり、変速機ケースを透過して要部のみを表示した車両用変速機の平面図である。
図3図3は、本発明の一実施例に係る車両用変速機のレフトケースを右方から見た図である。
図4図4は、本発明の一実施例に係る車両用変速機のライトケースを左方から見た図である。
図5図5は、本発明の一実施例に係る車両用変速機を図4のV-V方向で切った断面図である。
図6図6は、本発明の一実施例に係る車両用変速機を図4のVI-VI方向で切った断面図である。
図7図7は、本発明の一実施例に係る車両用変速機に取付けられるキャッチタンクを後斜め左方から見た図である。
図8図8は、本発明の一実施例に係る車両用変速機に取付けられるキャッチタンクを左斜め上方から見た図である。
図9図9は、本発明の一実施例に係る車両用変速機に取付けられるキャッチタンクを上方から見た図である。
図10図10は、本発明の一実施例に係る車両用変速機に取付けられるキャッチタンクを前方から見た図である。
図11図11は、本発明の一実施例に係る車両用変速機に取付けられるキャッチタンクを後方から見た図である。
図12図12(a)、(b)、(c)は、本発明の一実施例に係る車両用変速機のリブに形成された突部の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施の形態に係る車両用変速機は、差動歯車機構を収容するデフケースと、デフケースに一体回転自在に取付けられ、変速機構のファイナルドリブンギヤから動力が伝達されるファイナルドリブンギヤとを有し、ファイナルドリブンギヤが差動歯車機構に対してデフケースの回転中心軸方向の一端部側に設置されたディファレンシャル装置と、軸受支持部が形成された壁部を有し、底部に潤滑油が貯留される変速機ケースとを備え、デフケースの回転中心軸方向の他端部を、軸受を介して軸受支持部に回転自在に支持する車両用変速機であって、変速機ケースの壁部に溝部およびリブが形成されており、溝部は、軸受支持部の内部と外部とを連通しており、リブは、壁部からファイナルドリブンギヤに向かって突出し、かつ、溝部から壁部の上端外周縁に向かって延びており、ファイナルドリブンギヤの上方において、リブの突出方向の先端部は、ファイナルドリブンギヤの外周面と上下方向に対向しており、リブの突出方向の先端部とファイナルドリブンギヤの間に上下方向の隙間が形成されている。
【0016】
これにより、本発明の一実施の形態に係る車両用変速機は、車両の走行速度域に応じて軸受の潤滑性能を向上させつつ、ギヤ部材の攪拌抵抗を低減できる。
【実施例
【0017】
以下、本発明の一実施例に係る車両用変速機について、図面を用いて説明する。
図1から図12は、本発明の一実施例に係る車両用変速機を示す図である。図1から図12において、上下前後左右方向は、車両に設置された状態の車両用変速機を基準とし、車両の前後方向を前後方向、車両の左右方向(車幅方向)を左右方向、車両の上下方向(車両の高さ方向)を上下方向とする。
【0018】
まず、構成を説明する。
図1において、車両には変速機1が設置されており、変速機1にはエンジン2が連結されている。変速機1とエンジン2は、車両の図示しないエンジンルームに設置されている。
【0019】
変速機1は、変速機ケース3を備えており、変速機ケース3は、レフトケース4およびライトケース5を有する。レフトケース4とライトケース5は、ボルト41によって連結されている。
【0020】
ライトケース5の右端部は開口されており、ライトケース5の右端部には図示しないボルトによってエンジン2が連結されている。本実施例の変速機1は、車両用変速機を構成する。
【0021】
図2に示すように、レフトケース4には変速機構6が設置されている。変速機構6は、車幅方向に延びる入力軸7を有し、入力軸7にはエンジン2の動力が伝達される。
【0022】
変速機構6は、入力軸7と平行に延びるカウンタ軸8およびリバース軸9を有する。入力軸7には1速入力ギヤ7A、リバース入力ギヤ7R、2速入力ギヤ7B、3速入力ギヤ7C、4速入力ギヤ7D、5速入力ギヤ7Eおよび6速入力ギヤ7Fが設けられている。
【0023】
1速入力ギヤ7A、リバース入力ギヤ7Rおよび2速入力ギヤ7Bは、入力軸7と固定されて入力軸7と一体で回転し、入力ギヤ7C、7D、7E、7Fは、入力軸7と相対回転自在となっている。
【0024】
カウンタ軸8には1速カウンタギヤ8A、2速カウンタギヤ8B、3速カウンタギヤ8C、4速カウンタギヤ8D、5速カウンタギヤ8E、6速カウンタギヤ8F、リバースカウンタギヤ8Rおよびファイナルドライブギヤ8Gが設けられている。
【0025】
リバースカウンタギヤ8R、ファイナルドライブギヤ8Gおよび3速カウンタギヤ8Cから6速カウンタギヤ8Fは、カウンタ軸8に固定されてカウンタ軸8と一体で回転し、1速カウンタギヤ8Aおよび2速カウンタギヤ8Bは、カウンタ軸8と相対回転自在となっている。
【0026】
カウンタギヤ8Aからカウンタギヤ8Fは、入力ギヤ7Aから入力ギヤ7Fに噛み合っており、ファイナルドライブギヤ8Gは、ディファレンシャル装置10のファイナルドリブンギヤ12に噛み合っている。
【0027】
リバース軸9にリバースアイドラギヤ9A、9Bが設けられている。リバースアイドラギヤ9Aは、リバース軸9に固定されてリバース軸9と一体で回転し、リバースアイドラギヤ9Bは、リバース軸9と相対回転自在となっている。
【0028】
リバースアイドラギヤ9Aは、リバース入力ギヤ7Rに噛み合っており、リバースアイドラギヤ9Bは、リバースカウンタギヤ8Rに噛み合っている。
【0029】
入力軸7、カウンタ軸8およびリバース軸9にはそれぞれ同期装置31A、31B、31C、31Dが設置されており、同期装置31A、31B、31C、31Dは、各軸7、8、9の軸方向に移動自在となっている。
【0030】
同期装置31Aは、3速入力ギヤ7Cと4速入力ギヤ7Dの間に設置されている。同期装置31Aは、図示しない内周スプラインを有し、入力軸7の軸方向に移動自在に設けられたスリーブ31aと、スリーブ31aの内方に位置して入力軸7と一体回転自在に設けられ、スリーブ31aの内周スプラインに嵌合する外周スプラインを有する図示しないハブとを有する。
【0031】
3速入力ギヤ7Cには外周スプラインが形成されたドグ7cが設けられており、ドグ7cは、3速入力ギヤ7Cと一体で回転する。4速入力ギヤ7Dには外周スプラインが形成されたドグ7dが設けられており、ドグ7dは、4速入力ギヤ7Dと一体で回転する。
【0032】
スリーブ31aにはシフト機構の3速-4速用のシフトフォーク34A(図3参照)が嵌合されており、3速-4速用のシフトフォーク34Aによってスリーブ31aが3速入力ギヤ7C側に移動されると、スリーブ31aの内周スプラインがドグ7cの外周スプラインに嵌合する。
【0033】
これにより、3速入力ギヤ7Cがスリーブ31aを介して入力軸7に連結され、入力軸7の回転が3速入力ギヤ7Cから3速カウンタギヤ8Cを介してカウンタ軸8に伝達される。
【0034】
これにより、エンジン2の動力は、入力軸7、3速入力ギヤ7C、3速カウンタギヤ8Cからカウンタ軸8に伝達された後、ファイナルドライブギヤ8Gからファイナルドリブンギヤ12に伝達される。
【0035】
ディファレンシャル装置10に伝達されたエンジン2の動力は、左右の図示しないドライブシャフトを介して図示しない左右の駆動前輪に伝達される。
【0036】
なお、同期装置31B、31C、31Dは、同期装置31Aと同様の構成と機能を有しており、詳しい説明は省略する。
【0037】
また、図3に示すように、同期装置31C、31Dのスリーブにはシフトフォーク34B、34Cが嵌合され、同期装置31Bのスリーブには図示しないシフトフォークが嵌合されている。
【0038】
そして、これらシフトフォーク34A、34B、34Cおよび図示しないシフトフォークは、複数のシフトヨーク群34Yの中でシフトフォーク34A、34B、34Cおよび図示しないシフトフォークに対応するシフトヨークを介してシフトアンドセレクト軸36(図1参照)によって操作される。
【0039】
図2に示すように、ディファレンシャル装置10は、ライトケース5に設けられた膨出壁部5Aとレフトケース4に収容されている。膨出壁部5Aは、ライトケース5の隔壁5Wから右方に膨出している。
【0040】
すなわち、ライトケース5の隔壁5Wは、膨出壁部5Aの膨出方向の先端よりもレフトケース4側に位置している。隔壁5Wは、隔壁を構成しており、レフトケース4の内部とライトケース5の内部は、隔壁5Wによって仕切られている。
【0041】
レフトケース4は、縦壁4Wと、縦壁4Wの前端部から左方に延びる後壁4Rと、後壁4Rの左端部から前方に延びる左側壁4Lと、左側壁4Lの前端からライトケース5に向かって延びる前壁4Fとを有する。図1に示すように、後壁4Rと左側壁4Lは、リブ42によって連結されている。
【0042】
図2に示すように、変速機構6は、後壁4Rと左側壁4Lと前壁4Fと隔壁5Wとによって囲まれる変速機構室4Mに収容されている。本実施例の膨出壁部5Aおよび隔壁5Wは、変速機ケースの壁部を構成する。
【0043】
図5に示すように、ディファレンシャル装置10は、デフケース11と、デフケース11の外周部に取付けられ、デフケース11と一体で回転するファイナルドリブンギヤ12とを有する。
【0044】
デフケース11の内部には差動歯車機構13が収容されている。デフケース11には開口部11hが形成されている。デフケース11の内部は、開口部11hを通してデフケース11の外部と連通しており、差動歯車機構13は、開口部11hを通して外部から目視できる。
【0045】
差動歯車機構13は、一対のピニオンギヤ14A、14Bと、ピニオンギヤ14A、14Bを回転可能に支持するピニオンシャフト15と、一対のサイドギヤ16Aとを備えている。なお、サイドギヤは、右側のサイドギヤ16Aのみを図示している。
【0046】
ピニオンギヤ14A、14Bは、デフケース11の回転中心軸Cを挟んで互いに対向して設置されている。ファイナルドリブンギヤ12の回転中心軸Cとデフケース11の回転中心軸Cは、同一方向であり、回転中心軸Cの方向は、車幅方向である。
【0047】
ピニオンギヤ14A、14Bは、それぞれがデフケース11の回転時に、デフケース11の回転中心軸Cを中心として公転するとともに、ピニオンシャフト15の軸線を中心として自転する。
【0048】
サイドギヤ16Aおよび図示しないサイドギヤは、ピニオンギヤ14A、14Bに噛合っている。サイドギヤ16Aおよび図示しないサイドギヤの内周部には、左右のドライブシャフトの基端部がそれぞれ嵌合しており、ドライブシャフトは、サイドギヤ16Aおよび図示しないサイドギヤと一体回転する。
【0049】
ドライブシャフトの先端部(左右両端部)には、左右の駆動前輪が設けられており、駆動前輪は、ドライブシャフトと一体回転する。本実施例の車両は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両である。
【0050】
ディファレンシャル装置10は、ファイナルドライブギヤ8Gからファイナルドリブンギヤ12に動力が伝達されると、デフケース11がファイナルドリブンギヤ12と一体で回転する。
【0051】
このとき、ピニオンギヤ14A、14Bを介してサイドギヤ16Aおよび図示しないサイドギヤが互いに差動回転可能に回転する。変速機構6に入力されたエンジン2の動力(回転速度)は、変速機構6で変速され、差動歯車機構13から左右のドライブシャフトおよび駆動前輪に差動回転可能に伝達される。
【0052】
ファイナルドリブンギヤ12は、差動歯車機構13に対してデフケース11の回転中心軸Cの方向の左端部11a側に設置されている。デフケース11の左端部11aは、デフケースの回転中心軸方向の一端部を構成する。
【0053】
図2図3図5図6に示すように、レフトケース4の縦壁4Wには軸受支持部4aが形成されている。図5に示すように、デフケース11の左端部11aは、軸受17Aを介して軸受支持部4aに回転自在に支持されている。
【0054】
また、縦壁4Wには図示しないオイルシールが設けられている。縦壁4Wには左側のドライブシャフトが貫通されるように図示しない開口が形成されており、オイルシールは、開口部と左側のドライブシャフトの間に設置されている。
【0055】
図2図4から図6に示すように、ライトケース5の膨出壁部5Aには軸受支持部5aが形成されている。図5図6に示すように、デフケース11の右端部11bは、軸受17Bを介して軸受支持部5aに回転自在に支持されている。
【0056】
また、膨出壁部5Aの内部には図示しないオイルシールが設けられており、オイルシールは、右側のドライブシャフトと膨出壁部5Aの間に設置されている。
【0057】
このようにデフケース11は、レフトケース4とライトケース5に回転自在に支持されており、ファイナルドリブンギヤ12は、差動歯車機構13に対してレフトケース4の縦壁4W側に設置されている。
【0058】
図3図4に示すように、レフトケース4とライトケース5の底部、すなわち、変速機ケース3の底部には潤滑油Oが貯留されており、エンジン2が停止した状態で潤滑油Oの油面は、軸受支持部4a、5aの下端と上端との間に位置している。
【0059】
図5に示すように、ライトケース5の膨出壁部5Aには溝部5bが形成されており、溝部5bは、軸受支持部5aの内部と外部とを連通している。これにより、溝部5bを通して軸受支持部5aの内部に設置される軸受17Bに潤滑油が供給される。また、軸受支持部5aの内部に導入された潤滑油がオイルシールに供給される。
【0060】
図4に示すように、ライトケース5にはリブ5Bが設けられている。図5図6に示すように、リブ5Bは、隔壁5Wおよび膨出壁部5Aからファイナルドリブンギヤ12に向かって突出している。
【0061】
図4に示すように、リブ5Bは、隔壁5Wおよび膨出壁部5Aにおいて溝部5bから隔壁5Wの上端外周縁5wに向かって延びている。
【0062】
図5に示すように、リブ5Bは、溝部5bから隔壁5Wの上端外周縁5wに向かうに従って隔壁5Wからの突出量が増大している。すなわち、リブ5Bの隔壁5Wからの突出量は、溝部5b側よりも上端外周縁5w側の方が大きい。
【0063】
ファイナルドリブンギヤ12の上方において、リブ5Bの突出方向の先端部5pは、ファイナルドリブンギヤ12の外周面12aと上下方向に対向している。リブ5Bの突出方向の先端部5pとファイナルドリブンギヤ12の外周面12aの間には上下方向の隙間18が形成されている。
【0064】
また、リブ5Bの突出方向の先端部5pは、ファイナルドリブンギヤ12の車幅方向の中央部まで延びている。
【0065】
図4図5に示すようにリブ5Bの延びる方向の中央部付近には筒状の突部5sが形成されており、突部5sは、リブ5Bからファイナルドリブンギヤ12に向かって突出している。
【0066】
図5図6に示すように、突部5sは、上下方向でピニオンシャフト15に対向している。換言すれば、突部5sとピニオンシャフト15は、同一の鉛直直線が通過可能なように変速機ケース3に設けられている。なお、突部5sは、ライトケース5を鋳型によって成形する際に用いられる型抜き用のエジェクタピンの座面である。
【0067】
図3図4に示すように、レフトケース4とライトケース5の上部にはキャッチタンク19が設置されている。キャッチタンク19は、デフケース11の回転中心軸Cに対してファイナルドリブンギヤ12から水平方向に離れ、かつ、デフケース11の回転中心軸Cよりも上方に設置されている。
【0068】
すなわち、キャッチタンク19は、デフケース11の回転中心軸Cに対して前方斜め上方に設置されている。
【0069】
図7から図11に示すように、キャッチタンク19は、潤滑油貯留部20と、潤滑油貯留部よりも容積が小さい潤滑油導入部21とを有する。
【0070】
潤滑油貯留部20は、底壁20A、前壁20B、後壁20C、左側壁20Dおよび右側壁20Eを有する。
【0071】
図10図11に示すように、底壁20Aは、デフケース11の回転中心軸Cの方向に延びている。
【0072】
図7図8に示すように、前壁20Bは、デフケース11の回転中心軸Cの方向と直交する底壁20Aの幅方向の前端部20f(他端部)から上方に延びており、後壁20Cは、デフケース11の回転中心軸Cの方向と直交する底壁20Aの幅方向の後端部20r(一端部)から上方に延びている。
【0073】
左側壁20Dは、底壁20Aの延びる方向の左端部20m(一端部)から上方に延びており、前壁20Bの左端部と後壁20Cの左端部とに連絡されている。
【0074】
右側壁20Eは、底壁20Aの延びる方向の右端部20n(他端部)から上方に延びており、前壁20Bの右端部と後壁20Cの右端部とに連絡されている。
【0075】
図7から図11に示すように、潤滑油導入部21は、底壁21A、前壁21B、後壁21Cおよび右側壁21Dを有する。
【0076】
図10図11に示すように、底壁21Aは、デフケース11の回転中心軸Cの方向に延びている。底壁21Aは、底壁20Aよりも上方に位置しており、潤滑油貯留部20の右側壁20Eによって底壁20Aの右端部20nに連絡されている。
【0077】
図8図10に示すように、前壁21Bは、デフケース11の回転中心軸Cの方向と直交する底壁21Aの幅方向の前端部21f(他端部)から上方に延びており、潤滑油貯留部20の前壁20Bに連絡されている。
【0078】
図7図11に示すように、後壁21Cは、デフケース11の回転中心軸Cの方向と直交する底壁21Aの幅方向の後端部21r(一端部)から上方に延びており、潤滑油貯留部20の後壁20Cに連絡されている。
【0079】
右側壁21Dは、底壁21Aの延びる方向の右端部21n(他端部)から上方に延びており、前壁21Bの右端部と後壁21Cの右端部とに連絡されている。
【0080】
図3に示すように、前壁20B(および前壁21B)は、後壁20C(および後壁21C)に対してデフケース11の回転中心軸Cと反対側に位置し、デフケース11の回転中心軸Cと直交する方向で後壁20C(および後壁21C)に対向している。
【0081】
図7に示すように、前壁20B、21B、後壁20C、21C、左側壁20Dおよび右側壁21Dの上端には開口部19aが形成されている。
【0082】
図9に示すように、潤滑油貯留部20の底壁20Aと潤滑油導入部21の底壁21Aは、デフケース11の回転中心軸Cの方向に延びており、前後方向の長さに対してデフケース11の回転中心軸Cの長さが大きく形成されている。
【0083】
キャッチタンク19の潤滑油導入部21は、ファイナルドリブンギヤ12の上方を覆うようにデフケース11の回転中心軸Cの方向に延びている(図6参照)。
【0084】
キャッチタンク19の潤滑油貯留部20は、潤滑油導入部21からデフケース11の回転中心軸Cの方向に延び、かつ、デフケース11の回転中心軸Cの方向の左側面12b(一側面)に対向するように潤滑油導入部21から下方に延びている(図10図11参照)。
【0085】
具体的には、潤滑油貯留部20の底壁21Aは、潤滑油導入部21の底壁20Aよりも下方に位置しており、潤滑油貯留部20の底壁21Aと潤滑油貯留部20の底壁20Aが潤滑油貯留部20の右側壁20Eによって連絡されている。
【0086】
これにより、ファイナルドリブンギヤ12の左側面12b側に空間を利用して潤滑油貯留部20を設置でき、潤滑油貯留部20の容積を大きくして、多くの潤滑油をキャッチタンク19に貯留できる。
【0087】
ファイナルドリブンギヤ12によって掻き上げられた潤滑油は、潤滑油導入部21に導入された後、潤滑油導入部21から潤滑油貯留部20に導かれて潤滑油貯留部20に貯留される。本実施例のファイナルドリブンギヤ12は、ギヤ部材を構成する。
【0088】
キャッチタンク19に貯留される潤滑油の油面が潤滑油貯留部20の底壁20Aよりも高くなると、潤滑油導入部21に潤滑油が貯留される。
【0089】
図7図11に示すように潤滑油導入部21の後壁21Cには切り欠き21aが形成されており、切り欠き21aは、後壁21Cの上端21bから下方に窪んでいる。
【0090】
図7図10図11に示すように、潤滑油導入部21の前壁21Bには潤滑油衝突壁部21cが形成されており、潤滑油衝突壁部21cは、前壁21Bの上端21dから後壁21Cの上端21bよりも上方に延びている。
【0091】
図2図11に示すように、キャッチタンク19は、切り欠き21aと潤滑油衝突壁部21cとファイナルドリブンギヤ12とが上下方向で対向するように設置されている。換言すれば、キャッチタンク19は、切り欠き21aと潤滑油衝突壁部21cとファイナルドリブンギヤ12とがデフケース11の回転中心軸Cの方向で重なるように設置されている。
【0092】
また、キャッチタンク19は、ファイナルドリブンギヤ12の上方において、リブ5Bの突出方向の先端部5pが車幅方向で切り欠き21aの一部と重なるように設置されている(図6参照)。
【0093】
ファイナルドリブンギヤ12の回転速度は、車両の走行速度に比例して速くなり、ファイナルドリブンギヤ12によって掻き上げられる潤滑油量と飛距離はファイナルドリブンギヤ12の回転速度が速くなるにつれて増大する。
【0094】
本実施例のキャッチタンク19は、ファイナルドリブンギヤ12の回転域が中速回転域にある場合、すなわち、車両が中速走行域にある場合に最も多くの潤滑油が貯留可能な位置に設置されている。
【0095】
図7から図11に示すように、潤滑油貯留部20の左側壁20Dにはピン22が設けられており、ピン22は、左側壁20Dからレフトケース4側に突出している(図2参照)。ピン22は、左側壁20Dから先端に向かうに従って先細り形状に形成されている。
【0096】
図2に示すように、後壁4Rと左側壁4Lの連絡部には止め穴4bが形成されており、ピン22は、止め穴4bに嵌合される。ピン22は、先細り形状に形成されているので、ピン22を止め穴4bに容易に嵌合できるとともに、ピン22を止め穴4bに嵌合したときに、ピン22が止め穴4bに沿って上下方向に移動自在となる。
【0097】
図7から図11に示すように、潤滑油貯留部20の前壁20Bには突出片20Jが設けられており、突出片20Jは、前壁20Bの上端21dから上方に延びている。
【0098】
突出片21Jには押圧板部23aが設けられており、押圧板部23aは、突出片20Jから前方に突出している。押圧板部23aにはブラッシュクリップ23bが設けられており、ブラッシュクリップ23bは、押圧板部23aから左方に突出している。
【0099】
図7から図9に示すように、潤滑油貯留部20の後壁20Cには押圧板部24aが設けられており、押圧板部24aは、後壁20Cから後方に突出している。押圧板部24aにはブラッシュクリップ24bが設けられており、ブラッシュクリップ24bは、押圧板部24aから左方に突出している。
【0100】
押圧板部23aとブラッシュクリップ23bは、底壁20A、21Aの延びる方向、すなわち、キャッチタンク19の車幅方向の中間領域に設けられており、押圧板部24aとブラッシュクリップ24bと前後方向に離れて設置されている。
【0101】
また、押圧板部23aおよびブラッシュクリップ23bと、押圧板部24aおよびブラッシュクリップ24bとは、車幅方向に近づいて設置されている。
【0102】
レフトケース4の縦壁4Wと後壁4Rの連絡部には嵌合穴が形成されており、ブラッシュクリップ24bは、縦壁4Wと後壁4Rの連絡部の嵌合穴に嵌合される。
【0103】
図3に示すように、レフトケース4の左側壁4Lには膨出部4vが形成されており、膨出部4vは、左側壁4Lからライトケース5側に膨出している。膨出部4vには図示しない嵌合穴が形成されており、ブラッシュクリップ23bは、膨出部4vの嵌合穴に嵌合される。
【0104】
図7図9図11に示すように、キャッチタンク19の潤滑油貯留部20の後壁20Cの左端部で、かつ、ピン22の近傍には当て板25が設けられており、当て板25は、後壁20Cの左端部から右斜め後方に延びている。
【0105】
当て板25は、延びる方向の先端25aが後壁20Cに近接および離隔可能となるように弾性変形自在となっている。
【0106】
図9から図11に示すように、キャッチタンク19の潤滑油導入部21の右側壁21Dには当て板26が設けられており、当て板26は、右側壁21Dから前斜め右方に延びている。
【0107】
当て板26は、延びる方向の先端26aが右側壁21Dに近接および離隔可能となるように弾性変形自在となっている。
【0108】
キャッチタンク19をレフトケース4に取付けるときには、レフトケース4とライトケース5が分割された状態で作業者がキャッチタンク19をレフトケース4に挿入し、ピン22を止め穴4bに嵌合してキャッチタンク19の位置決めを行う。また、止め穴4bは、縦長に形成されているので、ピン22を止め穴4bに容易に嵌合できる。
【0109】
ピン22を止め穴4bに嵌合されたときに、当て板25は、レフトケース4の後壁4Rと後壁20Cの間で撓んだ状態(すなわち、当て板25の先端25aが後壁20Cに近接した状態)に弾性変形される。
【0110】
これにより、ピン22が止め穴4bに強く押し付けられ、キャッチタンク19の姿勢が安定される。
【0111】
次いで、作業者は、押圧板部23aまたは押圧板部24aを把持し、ブラッシュクリップ23b、24bをそれぞれ嵌合穴に嵌合する。
【0112】
ピン22の軸長は、ブラッシュクリップ23b、24bの軸長よりも長いので、ピン22が止め穴4bに嵌合された状態で、ブラッシュクリップ23b、24bを嵌合穴に嵌合できる。
【0113】
また、止め穴4bは、縦長に形成されているので、ブラッシュクリップ23b、24bを嵌合穴に嵌合する際に、ピン22を止め穴4bに沿って上下方向に移動させることができ、キャッチタンク19の姿勢を容易に調整できる。
【0114】
これに加えて、ブラッシュクリップ23b、24bを嵌合穴に嵌合するときに、ピン22が止め穴4bの奥まで嵌合されることにより、ブラッシュクリップ23b、24bを嵌合穴に嵌合するときのキャッチタンク19の位置決めを行うことができる。この結果、キャッチタンク19の組付け作業の作業性を向上できる。
【0115】
その後、レフトケース4とライトケース5をボルト41によって連結する。このとき、当て板26は、右側壁21Dとライトケース5の隔壁5Wの間で撓んだ状態(すなわち、当て板26の先端26aが右側壁21Dに近接した状態)に弾性変形される。
【0116】
これにより、ブラッシュクリップ23b、24bが嵌合穴に嵌合された状態で、当て板25、26の弾性力によってブラッシュクリップ23b、24bが嵌合穴に強く押し付けられ、キャッチタンク19の姿勢が安定される。
【0117】
また、押圧板部23aとブラッシュクリップ23bは、キャッチタンク19の車幅方向の中間領域に設けられており、押圧板部23aおよびブラッシュクリップ23bと、押圧板部24aおよびブラッシュクリップ24bとは、車幅方向に近づいて設置されている。
【0118】
これに加えて、押圧板部23aとブラッシュクリップ23bがキャッチタンク19の車幅方向の中間領域に設けられることにより、組付け時のキャッチタンク19の前後方向の撓みを吸収する。これらの構成により、キャッチタンク19をレフトケース4およびライトケース5に強固に取付けることができ、キャッチタンク19の姿勢をより一層安定させることができる。
【0119】
図8図9に示すように、潤滑油貯留部20の底壁20Aには排出孔20aが形成されており、潤滑油貯留部20に貯留された潤滑油は、排出孔20aから排出される。
【0120】
図3図4図7図8に示すように、潤滑油貯留部20の前壁20Bは、湾曲壁部20cと垂直壁部20dとを有する。
【0121】
湾曲壁部20cは、底壁20Aの前端部20fから上方に向かうに従って後壁20Cから離れるように広がっている。垂直壁部20dは、湾曲壁部20cの上端から上方に直線状に延びている。
【0122】
図9図10に示すように、前壁20Bには排出孔20bが形成されている。排出孔20bは、湾曲壁部20cの延びる方向の中央部よりも上方に設けられており、排出孔20aよりも上方に位置している。
【0123】
湾曲壁部20cは、排出孔20bよりも上方において後壁20Cからさらに離れるように広がっている。これにより、排出孔20bを3速カウンタギヤ8Cに向かって開口できる。
【0124】
排出孔20bは、排出孔20aよりも上方に設けられているので、潤滑油貯留部20に貯留される潤滑油量が増加すると、排出孔20aに加えて、排出孔20bから潤滑油が排出される。
【0125】
排出孔20aと排出孔20bは、いずれも丸穴から構成されており、排出孔20bの開口面積は、排出孔20aの開口面積よりも大きく形成されている。なお、排出孔20bは、潤滑油貯留部20の後壁20C、左側壁20D、右側壁20Eのうちの1つ以上に形成されてもよい。
【0126】
図3に示すように、排出孔20bは、3速カウンタギヤ8Cの後斜め上方に位置している。換言すれば、3速カウンタギヤ8Cは、排出孔20bの前斜め下方に位置しており、排出孔20bから排出された潤滑油は、3速カウンタギヤ8Cに供給される。
【0127】
すなわち、3速カウンタギヤ8Cは、排出孔20bから排出される潤滑油が供給可能な位置に設置されている。なお、3速カウンタギヤ8Cは、排出孔20bの真下に設置されてもよい。
【0128】
図3に示すように、レフトケース4の縦壁4Wには溝部4dが形成されている。溝部4dは、軸受支持部4aに連通する連通部4jからキャッチタンク19に向かって延び、延びる方向の先端に開口端4pを有する。
【0129】
ファイナルドリブンギヤ12は、回転中心軸Cの方向で縦壁4Wに近接して設置されており(図5図6参照)、レフトケース4には溝部4dとファイナルドリブンギヤ12とによって囲まれるオイル通路が形成されている。
【0130】
キャッチタンク19の排出孔20aは、溝部4dの開口端4pの近傍に設置されており、開口端4pに対向している。排出孔20aから排出される潤滑油は、溝部4dに導入される。
【0131】
これにより、溝部4dを通して軸受支持部4aに潤滑油が導入され、軸受17Aが潤滑油によって潤滑される。さらに、軸受支持部4aの内部に導入された潤滑油によってオイルシールが潤滑される。
【0132】
図2に示すように、レフトケース4にはオイルガター27が収容されている。オイルガター27は、入力軸7よりも前方において、リバースアイドラギヤ9Aの上方に位置している。
【0133】
オイルガター27は、リバースアイドラギヤ9Aの上方から左方に延びるオイルガター本体27Aと、オイルガター本体27Aの左端部から後方に折れ曲がり、軸受17Cまで延びる潤滑油導入部27Bとを有する。
【0134】
入力軸7の左端部は、軸受17Cを介してレフトケース4の左側壁4Lに形成された図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。
【0135】
カウンタ軸8の左端部は、軸受17Dを介してレフトケース4の左側壁4Lに形成された軸受支持部4cに回転自在に支持されている(図2参照)。
【0136】
レフトケース4の左側壁4Lには、入力軸7の左端部を支持する軸受支持部とカウンタ軸8の左端部を支持する軸受支持部を連通する図示しない溝部が形成されている。
【0137】
オイルガター27のオイルガター本体27Aには、リバースアイドラギヤ9Aによって掻き上げられた潤滑油が導入される。オイルガター本体27Aに導入された潤滑油は、オイルガター本体27Aから潤滑油導入部27Bに流れ、潤滑油導入部27Bから軸受17Cを支持する軸受支持部に潤滑油が導入される。これにより、軸受17Cが潤滑油によって潤滑される。
【0138】
また、軸受17Cを支持する軸受支持部から溝部を介して軸受17Dを支持する軸受支持部4cに潤滑油が導入される。これにより、軸受17Dが潤滑油によって潤滑される。
【0139】
図4に示すように、ライトケース5にはリブ5Dが設けられており、リブ5Dは、ライトケース5の底壁5Cからファイナルドリブンギヤ12の外周面12aに沿って前方に延びている。
【0140】
図3に示すように、レフトケース4にはリブ4Nが形成されており、リブ4Nは、レフトケース4の底壁4Bからファイナルドリブンギヤ12の外周面12aに沿って前方に延びている
【0141】
リブ5Dは、リブ4Nに当接しており、変速機ケース3の底部に貯留された潤滑油Oは、リブ4N、5Dとファイナルドリブンギヤ12の外周面12aとの間の湾曲された空間に沿って入り込み、ファイナルドリブンギヤ12の外周面12aによって前方に円滑に掻き上げられる。
【0142】
次に、変速機1の作用を説明する。
変速機1は、ファイナルドリブンギヤ12によって掻き上げられた潤滑油が貯留されるキャッチタンク19を有し、キャッチタンク19は、潤滑油貯留部20と潤滑油導入部21とを備えている。
【0143】
潤滑油導入部21は、前壁21Bと、前壁21Bよりも後方に位置する後壁21Cとを有する。
【0144】
潤滑油導入部21の後壁21Cには切り欠き21aが形成されており、切り欠き21aは、後壁21Cの上端21bから下方に窪んでいる。
【0145】
潤滑油導入部21の前壁21Bには潤滑油衝突壁部21cが形成されており、潤滑油衝突壁部21cは、前壁21Bの上端21dから後壁21Cの上端21bよりも上方に延びている。
【0146】
ファイナルドリブンギヤ12によって掻き上げられた潤滑油は、潤滑油導入部21に導入された後、潤滑油導入部21から潤滑油貯留部20に導かれて潤滑油貯留部20に貯留される。
【0147】
車両が低速走行域にあり、ファイナルドリブンギヤ12が低速回転域にある場合には、ファイナルドリブンギヤ12によって掻き上げられた潤滑油の勢いは弱く、その飛距離も短い。
【0148】
このため、ファイナルドリブンギヤ12の低速回転域ではファイナルドリブンギヤ12によって掻き上げられた潤滑油は、後壁21Cの上端21bよりも低い位置に形成される切り欠き21aから開口部19aを通して潤滑油導入部21に導入され、潤滑油導入部21から潤滑油貯留部20に貯留される。
【0149】
ファイナルドリブンギヤ12の中速回転域では、ファイナルドリブンギヤ12の回転速度がファイナルドリブンギヤ12の低速回転域よりも速くなり、ファイナルドリブンギヤ12によって掻き上げられた潤滑油の勢いは、ファイナルドリブンギヤ12の低速回転域よりも強く、その飛距離も長い。
【0150】
また、キャッチタンク19は、ファイナルドリブンギヤ12が中速回転域にある場合に最も多くの潤滑油が貯留可能な位置に設置されている。
【0151】
ファイナルドリブンギヤ12の中速回転域では、ファイナルドリブンギヤ12によって掻き上げられた潤滑油が開口部19aを通して潤滑油導入部21に導入される。また、潤滑油導入部21の開口部19aの上方を通過しようとする潤滑油は、潤滑油衝突壁部21cに衝突して潤滑油導入部21に戻される。
【0152】
このため、潤滑油導入部21に多くの潤滑油が捕捉され、より多くの潤滑油が潤滑油貯留部20に貯留される。
【0153】
また、潤滑油導入部21に捕捉できなかった潤滑油は、キャッチタンク19よりも前方のリバース軸9側に飛散し、入力ギヤ7Aから入力ギヤ7Fの噛み合い部、カウンタギヤ8Aからカウンタギヤ8Fとの噛み合い部、リバースアイドラギヤ9Aとリバース入力ギヤ7Rの噛み合い部、リバースアイドラギヤ9Bとリバースカウンタギヤ8Rの噛み合い部等の被潤滑部に供給される。これにより、被潤滑部が潤滑される。
【0154】
ファイナルドリブンギヤ12の高速回転域では、ファイナルドリブンギヤ12の回転速度がファイナルドリブンギヤ12の中速回転域よりも速くなり、ファイナルドリブンギヤ12によって掻き上げられた潤滑油の勢いは、ファイナルドリブンギヤ12の中速回転域よりさらに強く、その飛距離もさらに長い。
【0155】
ファイナルドリブンギヤ12の高速回転域ではファイナルドリブンギヤ12によって掻き上げられた潤滑油が開口部19aを通して潤滑油導入部21に導入される。また、潤滑油導入部21の開口部19aの上方を通過しようとする潤滑油は、潤滑油衝突壁部21cに衝突して潤滑油導入部21に戻される。
【0156】
このため、潤滑油導入部21に多くの潤滑油が捕捉され、より多くの潤滑油が潤滑油貯留部20に貯留される。
【0157】
また、潤滑油導入部21に捕捉できなかった潤滑油は、キャッチタンク19よりも前方のリバース軸9側に飛散し、入力ギヤ7Aから入力ギヤ7Fの噛み合い部等の被潤滑部に供給される。
【0158】
以上のことから、ファイナルドリブンギヤ12の中速回転域および高速回転域で多くの潤滑油をキャッチタンク19に貯留して、ファイナルドリブンギヤ12の攪拌抵抗や潤滑油に浸かるカウンタギヤの攪拌抵抗を低減でき、変速機1の動力伝達効率が低下することを防止できる。
【0159】
また、ファイナルドリブンギヤ12の中速回転域および高速回転域では、リバースアイドラギヤ9Aによって掻き上げられた潤滑油に加えて、ファイナルドリブンギヤ12によってリバース軸9側に飛散された潤滑油がオイルガター27に供給される。
【0160】
これにより、オイルガター27から軸受17C、17Dに供給される潤滑油量を増大でき、軸受17C、17Dを潤滑油によって潤滑できる。このため、軸受17C、17Dに焼き付けが発生することを防止できる。
【0161】
一方、潤滑油貯留部20の底壁20Aには排出孔20aが形成されており、排出孔20aよりも上方において、潤滑油貯留部20の前壁20Bには排出孔20bが形成されている。
【0162】
これにより、車両の低速走行域においてファイナルドリブンギヤ12が低速回転域にある場合には、排出孔20aのみから潤滑油を排出することにより、潤滑油貯留部20に一定量の潤滑油を貯留できる。このため、潤滑油の油面を低くして、ファイナルドリブンギヤ12等の攪拌抵抗を低減できる。
【0163】
また、車両の中速走行域においてファイナルドリブンギヤ12が中速回転域にある場合、または、車両の高速走行域においてファイナルドリブンギヤ12が高速回転域にある場合には、排出孔20aと排出孔20bの両方から潤滑油を排出することにより、潤滑油貯留部20に貯留される潤滑油量が過剰になることを防止できる。
【0164】
このため、被潤滑部を潤滑することができる充分な量の潤滑油を確保でき、被潤滑部の潤滑性能が低下することを防止できる。
【0165】
このように本実施例の変速機1は、キャッチタンク19に貯留される潤滑油量の車両の走行速度域に応じて調整でき、ファイナルドリブンギヤ12やカウンタギヤの攪拌抵抗の低減を図りつつ、被潤滑部の潤滑性能が低下することを防止できる。
【0166】
また、排出孔20aは、潤滑油貯留部20の底壁20Aに形成されているので、潤滑油貯留部20に貯留される潤滑油の油面が高くなると、潤滑油の圧力によって排出孔20aから排出される潤滑油量が多くなるとともに、排出速度が速くなる。
【0167】
潤滑油貯留部20に貯留される潤滑油の油面が低くなると、油面が高い場合よりも排出孔20aから排出される潤滑油量が少なくなるとともに、排出速度が遅くなる。このように潤滑油貯留部20の底壁20Aに排出孔20aを形成することにより、排出孔20aから排出される潤滑油量と排出速度を制御できる。
【0168】
また、排出孔20aから排出された潤滑油は、開口端4pから溝部4dに導入されて溝部4dを流れ、連通部4jから軸受支持部4aの内部に導入される。このため、軸受支持部4aの内部に設置される軸受17Aが潤滑油によって潤滑されるとともに、軸受支持部4aの内部に導入された潤滑油によってオイルシールが潤滑される。
【0169】
排出孔20bから排出された潤滑油は、3速カウンタギヤ8C側に排出される。これにより、3速カウンタギヤ8Cと3速入力ギヤ7Cの噛み合い部が潤滑される。
【0170】
排出孔20bの開口面積は、排出孔20aの開口面積よりも大きく形成されているので、排出孔20bよりも上方において潤滑油の油面が低い場合でも排出孔20bから潤滑油を確実に排出できる。
【0171】
また、3速カウンタギヤ8Cと3速入力ギヤ7Cの噛み合い部を潤滑する潤滑油は、3速入力ギヤ7Cに隣接するドグ7cの回転によってドグ7cからオイルガター27に供給される。これにより、オイルガター27に供給される潤滑油量が増大する。
【0172】
次に、本実施例の変速機1の効果を説明する。
本実施例の変速機1は、差動歯車機構13を収容するデフケース11と、デフケース11に一体回転自在に取付けられ、変速機構6のファイナルドライブギヤ8Gから動力が伝達されるファイナルドリブンギヤ12とを有し、ファイナルドリブンギヤ12が差動歯車機構13に対してデフケース11の回転中心軸Cの方向の一端部側(レフトケース4側)に設置されたディファレンシャル装置10を備えている。
【0173】
また、変速機1は、軸受支持部5aが形成された膨出壁部5Aを有し、底部に潤滑油Oが貯留されるライトケース5を備えており、デフケース11の回転中心軸Cの方向の右端部11bを、軸受17Bを介して軸受支持部5aに回転自在に支持している。
【0174】
ライトケース5の膨出壁部5Aおよび隔壁5Wには溝部5bが形成されており、溝部5bは、軸受支持部5aの内部と外部とを連通している。
【0175】
ライトケース5の膨出壁部5Aおよび隔壁5Wにはリブ5Bが形成されており、リブ5Bは、膨出壁部5Aおよび隔壁5Wからファイナルドリブンギヤ12に向かって突出し、かつ、溝部5bから隔壁5Wの上端外周縁5wに向かって延びている。
【0176】
これに加えて、ファイナルドリブンギヤ12の上方において、リブ5Bの突出方向の先端部5pは、ファイナルドリブンギヤ12の外周面12aと上下方向に対向しており、リブ5Bの突出方向の先端部5pとファイナルドリブンギヤ12の間に上下方向の隙間18が形成されている。
【0177】
これにより、ファイナルドリブンギヤ12の低速回転域においてファイナルドリブンギヤ12によって掻き上げられる潤滑油量が少なく、その勢いが弱い場合には、ファイナルドリブンギヤ12によって掻き上げられる潤滑油を、隙間18を通して前方に飛散させてキャッチタンク19に貯留させることができる。
【0178】
ファイナルドリブンギヤ12の低速回転域においては、潤滑油Oの油面は、軸受支持部4a、5aの下部が浸かる高さとなっているので、軸受17A、17Bを潤滑油によって潤滑でき、軸受17A、17Bに焼き付けが発生することを防止できる。これに加えて、オイルシールを潤滑でき、オイルシールの摩耗を抑制できる。
【0179】
また、ファイナルドリブンギヤ12の中速回転域においては、ファイナルドリブンギヤ12によって掻き上げられる潤滑油量が多く、その勢いもファイナルドリブンギヤ12の低速回転域よりも強い。
【0180】
このため、図4に示すように、ファイナルドリブンギヤ12によって掻き上げられる潤滑油の一部(O1で示す)をリブ5Bに衝突させることができる。
【0181】
リブ5Bに衝突した潤滑油O1は、リブ5Bを伝って落下し、溝部5bから軸受支持部5aを通して軸受17Bに導入される。これにより、潤滑油Oの油面が軸受支持部5aよりも低くなった場合でも、軸受17Bとオイルシールを潤滑油によって確実に潤滑できる。
【0182】
また、車両の高速走行域においてファイナルドリブンギヤ12によって掻き上げられる潤滑油量は、ファイナルドリブンギヤ12が中速回転域にある場合よりも多く、その勢いはファイナルドリブンギヤ12が中速回転域にある場合よりも強い。
【0183】
このため、ファイナルドリブンギヤ12によって掻き上げられる潤滑油を、ファイナルドリブンギヤ12の中速回転域よりも多くリブ5Bに衝突させることができる。
【0184】
リブ5Bに衝突した潤滑油は、リブ5Bを伝って落下し、溝部5bから軸受支持部5aを通して軸受17Bに導入される。
【0185】
これにより、潤滑油Oの油面が軸受支持部5aよりも低くなり、かつ、ファイナルドリブンギヤ12が高速回転した場合に、軸受17Bとオイルシールに多くの潤滑油を供給して、軸受17Bとオイルシールを潤滑油によって確実に潤滑できる。
【0186】
すなわち、ファイナルドリブンギヤ12が高速回転域になるほど、軸受17Bとオイルシールに供給される潤滑油量を増大でき、軸受17Bの焼き付けが発生することを防止できるとともに、オイルシールが摩耗することを抑制できる。このため、変速機1の信頼性が低下することを防止できる。
【0187】
このように、本実施例の変速機1は、ファイナルドリブンギヤ12の回転域、すなわち、車両の走行速度域に応じて軸受17Bに供給される潤滑油量を調整でき、軸受17Bやオイルシールの潤滑性能を向上しつつ、ファイナルドリブンギヤ12の攪拌抵抗を低減できる。
【0188】
また、本実施例の変速機1によれば、差動歯車機構13は、一対のピニオンギヤ14A、14Bをデフケース11に回転自在に支持するピニオンシャフト15を有する。
【0189】
また、リブ5Bの延びる方向の中央部付近に、リブ5Bからファイナルドリブンギヤ12に向かって突出する突部5sが形成されており、突部5sは、上下方向でピニオンシャフト15に対向している。
【0190】
これにより、リブ5Bを伝って落下する潤滑油の一部を、突部5sに伝わせ、開口部11hを通してピニオンシャフト15に導くことができる。このため、ピニオンシャフト15を潤滑油によって潤滑できる。このため、差動歯車機構13の潤滑性能を向上でき、結果的にディファレンシャル装置10の潤滑性能を向上できる。
【0191】
また、ライトケース5を鋳型によって成形する際に用いられる型抜き用のエジェクタピンの座面を、ピニオンシャフト15に潤滑油を導く突部5sとして利用することにより、リブ5Bにピニオンシャフト15の潤滑用の専用の突部を形成することを不要にできる。このため、ライトケース5の軽量化を図ることができる。
【0192】
なお、本実施例の突部5sは、筒状に形成され、車幅方向から見た場合に円形に形成されているが、このような形状に限定されるものではなく、突部の下部が下方に向かって先細り形状に形成されてもよい。
【0193】
例えば、図12(a)に示すように、リブ5Bの延びる方向の中央部付近に、リブ5Bからファイナルドリブンギヤ12に向かって突出する逆三角形状の突部5xを形成してもよい。
【0194】
このようにすれば、リブ5Bを伝って落下する潤滑油の一部を潤滑油O2で示すように突部5xの下端に集め、ピニオンシャフト15に向かって効果的に導くことができ、差動歯車機構13の潤滑性能をより効果的に向上できる。
【0195】
また、図12(b)に示すように、リブ5Bの延びる方向の中央部付近に、リブ5Bからファイナルドリブンギヤ12に向かって突出する菱形形状の突部5yを形成してもよい。
【0196】
このようにすれば、リブ5Bを伝って落下する潤滑油の一部を潤滑油O2で示すように突部5yの下端に集め、ピニオンシャフト15に向かって効果的に導くことができ、差動歯車機構13の潤滑性能をより効果的に向上できる。
【0197】
また、図12(c)に示すように、リブ5Bの延びる方向の中央部付近に、リブ5Bからファイナルドリブンギヤ12に向かって突出し、その下部が下方に向かって先細り形状となる突部5zを形成してもよい。
【0198】
このようにすれば、リブ5Bを伝って落下する潤滑油の一部を潤滑油O2で示すように突部5zの下端に集め、ピニオンシャフト15に向かって効果的に導くことができ、差動歯車機構13の潤滑性能をより効果的に向上できる。
【0199】
また、本実施例の変速機1によれば、リブ5Bの前方に設置されたキャッチタンク19は、切り欠き21aとファイナルドリブンギヤ12とが上下方向で対向し、かつ、ファイナルドリブンギヤ12の上方において、リブ5Bの突出方向の先端部5pが車幅方向で切り欠き21aと重なるように設置されている。
【0200】
これにより、ファイナルドリブンギヤ12の中速回転域および高速回転域において、ファイナルドリブンギヤ12によって掻き上げられた潤滑油の一部をリブ5Bに衝突させることができるとともに、リブ5Bと車幅方向でリブ5Bと重ならない位置を通った潤滑油の一部をキャッチタンク19に貯留できる。
【0201】
これにより、ファイナルドリブンギヤ12の中速回転域および高速回転域において、軸受17Bやオイルシールを確実に潤滑して、軸受17Bやオイルシールの潤滑性能を向上できるとともに、キャッチタンク19に潤滑油を確実に貯留して、ファイナルドリブンギヤ12の攪拌抵抗を低減できる。
【0202】
本実施例の変速機1は、FF車両に適用されているが、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)車両に適用されてもよい。
【0203】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0204】
1...変速機(車両用変速機)、3...変速機ケース、5A...膨出壁部(壁部)、5a...軸受支持部、5B...リブ、5b...溝部、5p...先端部(リブの突出方向の先端部)、5s,5x,5y、5z...突部、5W...隔壁(壁部)、5w...上端外周縁(壁部の上端外周縁)、6... 変速機構、10...ディファレンシャル装置、11...デフケース、11a...左端部(デフケースの回転中心軸方向の一端部)、11b...右端部(デフケースの回転中心軸方向の他端部)、12...ファイナルドリブンギヤ(ギヤ部材)、12a...外周面(ファイナルドリブンギヤの外周面)、12b...左側面、13...差動歯車機構、14A,14B...ピニオンギヤ、15...ピニオンシャフト、17B...軸受、18...隙間(リブの突出方向の先端部とファイナルドリブンギヤの間の上下方向の隙間)、19...キャッチタンク、21a...切り欠き、21B...前壁(キャッチタンクの前壁)、21C...後壁(キャッチタンクの後壁)、21c...潤滑油衝突壁部、C...デフケースの回転中心軸
図1
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図12