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特許7517063印刷部材、印刷部材の製造方法、およびそれを用いた印刷物の製造方法
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  • 特許-印刷部材、印刷部材の製造方法、およびそれを用いた印刷物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】印刷部材、印刷部材の製造方法、およびそれを用いた印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41N 1/14 20060101AFI20240709BHJP
   B41M 1/08 20060101ALI20240709BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240709BHJP
   G03F 7/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B41N1/14
B41M1/08
G03F7/004 521
G03F7/00 503
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020173749
(22)【出願日】2020-10-15
(65)【公開番号】P2021066175
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2023-07-31
(31)【優先権主張番号】P 2019190823
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】飯原 明宏
(72)【発明者】
【氏名】井上 武治郎
(72)【発明者】
【氏名】金杉 和弥
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-082946(JP,A)
【文献】特開2010-205887(JP,A)
【文献】特開2012-086990(JP,A)
【文献】特開2008-150610(JP,A)
【文献】特開平11-249287(JP,A)
【文献】特開2004-191995(JP,A)
【文献】特開2015-057323(JP,A)
【文献】国際公開第2016/076286(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 1/14
B41M 1/08
G03F 7/004
G03F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、並びに、インキ反発部およびインキ着肉部からなる層を有する印刷部材であって、該層の少なくとも表面にインキ反発部およびインキ着肉部を有し、前記インキ反発部がジオルガノシロキサン単位を含み、前記インキ着肉部がシルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含み、前記インキ着肉部の平均弾性率と前記インキ反発部の平均弾性率の差が100~10000MPaである、印刷部材。
【請求項2】
前記インキ着肉部における珪素濃度に対する酸素濃度の比が1.3~2.0である、請求項1に記載の印刷部材。
【請求項3】
前記インキ着肉部における元素濃度が、珪素:23~33atom%、酸素:30~67atom%、炭素:0~47atom%である、請求項1または2に記載の印刷部材。
【請求項4】
前記インキ着肉部の平均弾性率が、100~10000MPaである請求項1~3のいずれかに記載の印刷部材。
【請求項5】
前記インキ反発部における珪素濃度に対する酸素濃度の比が0.9~1.2である、請求項1~4のいずれかに記載の印刷部材。
【請求項6】
前記インキ反発部における元素濃度が、珪素:22~26atom%、酸素:24~28atom%、炭素:48~52atom%である、請求項1~5のいずれかに記載の印刷部材。
【請求項7】
前記インキ反発部の平均弾性率が、0.001~10MPaである請求項1~6のいずれかに記載の印刷部材。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の印刷部材を製造する方法であって、インキ反発部からなる層に電子線を照射してインキ着肉部のパターンを描画する、印刷部材の製造方法。
【請求項9】
前記電子線の線量が100~3000kGyである、請求項8に記載の印刷部材の製造方法。
【請求項10】
前記電子線の加速電圧が50~150kVである、請求項8または9に記載の印刷部材の製造方法。
【請求項11】
請求項1~7のいずれかに記載の印刷部材を製造する方法であって、インキ反発部からなる層に波長125~200nmの紫外線を照射してインキ着肉部のパターンを描画する、印刷部材の製造方法。
【請求項12】
前記波長125~200nmの紫外線の露光量が300~3000mJ/cm である、請求項11に記載の印刷部材の製造方法。
【請求項13】
請求項1~7のいずれかに記載の印刷部材、インキ、および被印刷媒体を用いた印刷物の製造方法。
【請求項14】
前記インキが、活性エネルギー線硬化型インキである請求項13に記載の印刷物の製造方法。
【請求項15】
前記インキが、水溶性インキである請求項13または14に記載の印刷物の製造方法。
【請求項16】
前記被印刷媒体が、インキ成分非吸収性である請求項13~15のいずれかに記載の印刷物の製造方法。
【請求項17】
前記被印刷媒体が、食品包装用基材である請求項13~16のいずれかに記載の印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷部材、印刷部材の製造方法、およびそれを用いた印刷物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷には、凸版印刷、凹版印刷、孔版(スクリーン)印刷、平版印刷など様々な方式があり、各方式の特徴を活かして印刷が行われている。
【0003】
中でも平版印刷は、精細度の高い印刷物が得られる点や、ランニングコストを含めたトータルコストが安価である点などで他の印刷方式に比べ有利である。
【0004】
平版印刷は、インキ着肉性の画線部とインキ反発性の非画線部を印刷版のほぼ同一平面に存在させ、インキ付着性の差異を利用して画線部のみにインキを着肉させた後、紙などの被印刷媒体にインキを転写する印刷方法である。平版印刷のための印刷版(以下、平版印刷版という)には、湿し水の作用によって非画線部をインキ反発性とするものと、湿し水を用いることなく、シリコーンゴムやフッ素樹脂をインキ反発性の非画線部として使用するものとに大別される。
【0005】
シリコーンゴムやフッ素樹脂をインキ反発性の非画線部として使用する平版印刷版として、特許文献1には、インキ反発層としてシリコーンゴムを用いる水なし平版印刷版原版が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2016/076286号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の水なし平版印刷版原版は、支持体上に感熱層およびインキ反発性シリコーンゴム層がこの順に積層された多層構造であるため、印刷版を得るには露光後に現像処理を行う必要があった。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、インキ反発性、およびインキ着肉性に優れた印刷部材およびその製造方法、並びに当該印刷部材を用いた印刷物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の印刷部材は次の構成を有する。すなわち、支持体、並びに、インキ反発部およびインキ着肉部からなる層を有する印刷部材であって、該層の少なくとも表面にインキ反発部およびインキ着肉部を有し、前記インキ反発部がジオルガノシロキサン単位を含み、前記インキ着肉部がシルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含み、前記インキ着肉部の平均弾性率と前記インキ反発部の平均弾性率の差が100~10000MPaである、印刷部材、である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インキ反発性、およびインキ着肉性に優れた印刷部材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】インキ反発部およびインキ着肉部からなる層の少なくとも表面にインキ反発部およびインキ着肉部を有する印刷部材の一例を示す断面図である。
図2】インキ反発部およびインキ着肉部からなる層の少なくとも表面にインキ反発部およびインキ着肉部を有する印刷部材の一例を示す断面図である。
図3】本発明に係る印刷物の製造方法の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明に係る印刷部材は、支持体、並びに、インキ反発部およびインキ着肉部からなる層を有する印刷部材であって、該層の少なくとも表面にインキ反発部およびインキ着肉部を有する。
【0014】
本発明に用いられる支持体としては、従来平版印刷版の基板として用いられてきた寸法的に安定な公知の紙、金属、ガラス、フィルムなどを使用することができる。具体的には、上質紙、アート紙、コート紙、キャスト紙、合成紙などの紙;プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなど)がラミネートされた紙;アルミニウム(アルミニウム合金も含む)、鉄、鋼、亜鉛、銅などの金属板;ソーダライム、石英などのガラス板;シリコンウエハー;セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタールなどのプラスチックフィルム;前記金属がラミネートまたは蒸着された紙またはプラスチックフィルムなどが挙げられる。プラスチックフィルムは透明でも不透明でもよいが、不透明のフィルムが検版性を向上させる上で好ましい。
【0015】
これらの中でも、支持体の表面が金属またはプラスチックであるものを使用することが好ましい。そのような支持体として、合成紙、金属板、プラスチックフィルム、金属が蒸着またはラミネートされた紙またはプラスチックフィルム、プラスチックフィルムがラミネートされた紙または金属板などが好ましく、金属板、プラスチックフィルムがより好ましい。
【0016】
支持体と、インキ反発部およびインキ着肉部からなる層との接着力を高める目的で、支持体表面にコロナ放電処理やプラズマ処理などの表面処理を施してもよい。また、支持体と、インキ反発部およびインキ着肉部からなる層との間にプライマー層(接着層)を設けてもよい。さらにこれらを併用してもよい。
【0017】
支持体の厚みは特に限定されず、印刷に使用される印刷機に対応した厚みを選択すればよい。
【0018】
また、支持体の形状は、板状の他に、ロール状、円筒状または円柱状の支持体も使用することができる。円筒状や円柱状の支持体を用いた場合には、継ぎ目のないシームレス印刷やエンドレス印刷が可能となる。また、印刷機の版胴を円筒状や円柱状の支持体として用いてもよい。
【0019】
本発明に係る印刷部材は、インキ反発部およびインキ着肉部からなる層の少なくとも表面にインキ反発部およびインキ着肉部を有する。ここで、表面とは、インキ反発部およびインキ着肉部からなる層における支持体に対向しない面の表層から支持体方向に形成される領域をいう。
【0020】
図1および図2は、インキ反発部およびインキ着肉部からなる層の少なくとも表面にインキ反発部およびインキ着肉部を有する印刷部材の一例を示す断面図である。図1および図2はともに、支持体1上にインキ反発部およびインキ着肉部からなる層2を有しており、該層の少なくとも表面にインキ反発部3とインキ着肉部4を有している。図1では、インキ着肉部4は支持体1に対向しない面の表層から深さ方向の一部に形成されており、また、図2では、インキ着肉部4は支持体1に対向しない面の表層から支持体に対向する面の表層までインキ着肉部が形成されている。なお、図1および図2では、支持体1上にインキ反発部およびインキ着肉部からなる層2が直接設けられた例を示したが、支持体1とインキ反発部およびインキ着肉部からなる層2との接着力を高める目的で、支持体1とインキ反発部およびインキ着肉部からなる層2との間にプライマー層(接着層)を設けてもよい。
【0021】
本発明において、インキ着肉部とは、印刷部材表面にインキを展開した際にインキが付着する(インキが着肉する)部分を指し、インキ反発部とは、印刷部材表面にインキを展開した際にインキが付着しない(インキを反発する)部分を指す。インキ着肉部は支持体に対向しない面の表層から深さ方向の一部に形成されていてもよいし、支持体に対向しない面の表層から支持体に対向する面の表層までインキ着肉部が形成されていてもよい。
【0022】
本発明に係る印刷部材は、インキ反発部に含まれる粒子の含有率が0~5体積%であることが好ましい。本発明における粒子とは、大気圧25℃の環境下において粒状を示す、無機または有機の固体を指す。また、粒子の内部に大気圧25℃の環境下において流動性を示す液体を含むマイクロカプセルなどの粒子も本発明の粒子の範疇である。具体的には、膜強度を向上させる目的で添加されるシリカ粒子、検版性を付与する目的で添加される無機や有機の有色顔料、光照射により濡れ性を変化させる目的で添加されるチタニア粒子(光触媒)、耐擦過性を向上させる目的で添加されるフッ素樹脂粒子などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの粒子は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明における粒子の平均粒子径は5nm以上40μm以下が好ましく、10nm以上35μm以下がより好ましい。また、インキ反発部に含まれる粒子の平均粒子径は、印刷部材断面を電子顕微鏡により観察することで求められる。より詳しくは、超薄切片法にて得た印刷部材のインキ反発部断面を電子顕微鏡にて観察し、100個の粒子をランダムに選択して各々の等価円相当径を測長した後、その平均値を算出することでインキ反発部に含まれる粒子の平均粒子径を求めることができる。
【0023】
インキ反発性の観点からは、インキ反発部における粒子の含有率は5体積%以下であることが好ましく、3体積%以下がより好ましく、2体積%以下がさらに好ましく、0体積%が最も好ましい。インキ反発部に含まれる粒子の含有率は、印刷部材断面を電子顕微鏡により観察することで求められる。より詳しくは、連続超薄切片法にて得た印刷部材のインキ反発部断面の三次元情報から、単位体積あたりの粒子体積を算出することにより求めることができる。インキ反発部の垂直方向において、インキ反発部の支持体に対向する面の表層、支持体に対向しない面の表層、および層内部の任意の点の10点について単位体積あたりの粒子体積を算出し、その平均値をインキ反発部に含まれる粒子の含有率とする。
【0024】
本発明において、インキ着肉部の平均弾性率は、60MPa以上が好ましく、100MPa以上がより好ましく、150MPa以上がさらに好ましく、200MPa以上がさらにより好ましい。また、本発明におけるインキ着肉部の平均弾性率は、10000MPa以下が好ましく、6000MPa以下がより好ましく、2000MPa以下がさらに好ましく、1000MPa以下がさらにより好ましい。60MPa以上であればインキ着肉性がさらに向上するため好ましく、10000MPa以下であれば強靱な膜が得られ、耐刷性が向上するため好ましい。
【0025】
一方、インキ反発部の平均弾性率は、0.001~10MPaであることが好ましい。0.001MPa以上であれば、耐刷性が向上するため好ましく、10MPa以下であればインキ反発性がさらに向上するため好ましい。0.01~5MPaがより好ましく、0.1~3MPaが更に好ましい。
【0026】
また、インキ着肉部の平均弾性率とインキ反発部の平均弾性率との差は、50MPa以上が好ましく、100MPa以上がより好ましく、150MPa以上がさらに好ましく、200MPa以上がさらにより好ましい。また、本発明におけるインキ着肉部の平均弾性率とインキ反発部の平均弾性率との差は、10000MPa以下が好ましく、6000MPa以下がより好ましく、2000MPa以下がさらに好ましく、1500MPaがさらにより好ましい。インキ着肉部の平均弾性率とインキ反発部の平均弾性率との差が上記範囲内であれば、印刷部材におけるインキ反発性とインキ着肉性の双方をさらに向上することができるため好ましい。
【0027】
印刷部材のインキ着肉部やインキ反発部の弾性率は、先端鋭利な探針を用いて極僅かな荷重にて分析を行う原子間力顕微鏡を用いたフォースボリューム法での分析が好適である。先端曲率半径が5~20nmのシリコン製または窒化珪素製の探針を使用し、1~20nNの荷重で分析することで、下層や支持体の影響を排除した各部のみの正確な弾性率を測定することができる。フォースボリューム法は、探針(カンチレバー)を垂直移動させ、層表面に押し当ててから離す、という一連の動作を繰り返しながら探針を2次元走査する。その際、1サイクル毎にフォースカーブを取得しているため、その解析により弾性率などの力学物性のマッピングを調べることができる。平均弾性率は、25μm(縦:5μm×横:5μm)の測定範囲における、4096点(縦:64点×横:64点)の測定点で得られた各弾性率の相加平均値を算出することにより求めることができる。
【0028】
本発明において、インキ反発部はジオルガノシロキサン単位を含むことが好ましく、インキ着肉部はシルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが好ましい。インキ反発部がジオルガノシロキサン単位を含むことでインキ反発性をさらに向上することができ、インキ着肉部がシルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことでインキ着肉性がさらに向上するため好ましい。インキ反発部におけるジオルガノシロキサン単位の含有率は90質量%以上であることが好ましく、92質量%以上がより好ましく、94質量%以上がさらに好ましい。インキ反発部におけるジオルガノシロキサン単位が90質量%以上であればインキ反発性をさらに向上することができるため好ましい。インキ反発部におけるジオルガノシロキサン単位の含有率は、FT-IR-ATR法による分析と飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)による分析とを併用することにより測定することができる。
【0029】
また、インキ反発部におけるジオルガノシロキサン単位や、インキ着肉部におけるシルセスキオキサン構造、およびガラス構造は、FT-IR-ATR分析により確認することができる。FT-IR-ATR分析において、ジオルガノシロキサン単位は1256、1085、790cm-1付近の吸収帯などにシグナルが現れ、また、シルセスキオキサン構造やガラス構造は1271、1133、995cm-1付近の吸収帯などにシグナルが現れる。
【0030】
本発明において、インキ着肉部の元素濃度比は、珪素:23~33atom%、酸素:30~67atom%、炭素:0~47atom%の範囲内であることが好ましい。珪素:23atom%以上、酸素30atom%以上、炭素:47atom%以下であればインキ着肉性がさらに向上し、珪素:33atom%以下、酸素67atom%以下、炭素:0atom%以上であれば強靱な膜が得られ、耐刷性が向上するため好ましい。また、インキ着肉部における珪素濃度に対する酸素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は、1.3~2.0の範囲内であることが好ましい。1.3以上であればインキ着肉性がさらに向上するため好ましく、2.0以下であれば強靱な膜が得られ、耐刷性が向上するため好ましい。
【0031】
一方、インキ反発部における元素濃度が、珪素:22~26atom%、酸素:24~28atom%、炭素:48~52atom%の範囲内であることが好ましく、この範囲内であればインキ反発性がさらに向上するため好ましい。また、インキ反発部における珪素濃度に対する酸素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は、0.9~1.2の範囲内であることが好ましく、この範囲内であればインキ反発性がさらに向上するため好ましい。
【0032】
インキ着肉部やインキ反発部における元素濃度は、X線光電子分光法での分析により測定することができる。また、得られた酸素濃度値を珪素濃度値で割ることで酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)を算出することができる。
【0033】
インキ反発部における珪素濃度は、25~50質量%であることが好ましい。インキ反発部中の珪素濃度が25質量%以上であれば、インキ反発性をさらに向上させる上で好ましく、30質量%以上がより好ましく、35質量%以上がさらにより好ましい。また、珪素濃度が50質量%以下であればインキ反発部のインキ反発性や耐刷性をさらに向上させる上で好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下であればさらにより好ましい。インキ反発部中の珪素濃度は、前述したX線光電子分光法を用いて元素分析することにより求めることができる。
【0034】
本発明において、インキ着肉部の表面に接触させた液粘度が20センチストークスである12マイクロリットルのジメチルシリコーンオイルの接触後10分経過時点のスポット径が、20~37mmであることが好ましい。本発明における接触後10分経過時点のスポット径とは、接触後10分経過時点のジメチルシリコーンオイルのスポット形状において、最長となる径の長さを意味する。例えば、接触後10分経過時点のジメチルシリコーンオイルのスポット形状が真円である場合には、円の直径がスポット径となり、楕円形の場合は、長軸となる。本評価は、接触させる層に対するジメチルシリコーンオイルの浸透(膨潤)の程度を表している。インキ反発部にジメチルシリコーンオイルが接触した場合には、層中に速やかに浸透するためジメチルシリコーンオイルは濡れ広がりにくくなり、経時後のスポット径としては小さくなる。一方、インキ着肉部にジメチルシリコーンオイルが接触した場合には、層中への浸透が大きく抑制されるため、ジメチルシリコーンオイルは濡れ広がりやすくなり、経時後のスポット径としては大きくなる。10分経過時点のスポット径が20mm以上であれば良好なインキ着肉性が得られ、22mm以上がより好ましく、24mm以上が更に好ましい。また、10分経過時点のスポット径が37mm以下であれば耐刷性が良好となり、35mm以下がより好ましく、33mm以下がさらに好ましい。
【0035】
液粘度が20センチストークスである市販のジメチルシリコーンオイルとしては、KF-96-20cs(信越化学工業(株)製)、DOWSIL(登録商標)SH200 Fluid 20CS(東レ・ダウコーニング(株)製)、WACKER(登録商標)SILICONE FLUID AK 20(旭化成ワッカーシリコーン(株)製)、Element14(登録商標)PDMS 20-JC(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、DMS-T12(GELEST Inc.製)などを挙げることができ、これら何れのジメチルシリコーンオイルを用いて評価した場合も、経時後のスポット径は同等の値が得られる。
【0036】
インキ反発部およびインキ着肉部からなる層の平均膜厚は4~30μmであることが好ましい。インキ反発部およびインキ着肉部からなる層の平均膜厚を4μm以上とすることで印刷部材のインキ反発性や耐傷性、耐刷性が十分となり、30μm以下とすることで経済的見地から不利となりにくい。インキ反発部およびインキ着肉部からなる層の平均膜厚は、断面TEM観察により求めることができる。より詳しくは、印刷部材から超薄切片法によって試料を作製し、加速電圧100kV、倍率2000倍の条件でTEM観察を行う。垂直断面のTEM写真において、インキ反発部およびインキ着肉部からなる層からランダムに選んだ10箇所について膜厚を計測し、その数平均値を算出することにより、平均膜厚を求めることができる。
【0037】
本発明におけるインキ反発部としてはシリコーンゴムが好ましい。本発明におけるシリコーンゴムとは、60質量%以上がシロキサン化合物の架橋体から構成されている層のことを指す。インキ反発部中のシロキサン化合物の架橋体の含有率は、FT-IR-ATR法による分析と飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)による分析とを併用することにより測定することができる。
【0038】
印刷部材の生産性を高める点で、インキ反発部中にビニル基を有することが好ましい。後述するジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物に含まれる全固形分中の全SiH基数よりも過剰数のビニル基を含ませることによりビニル基を有するインキ反発部を得ることができる。インキ反発部中のビニル基濃度は、0.5~15質量%であることが好ましい。インキ反発部中のビニル基濃度が0.5質量%以上であれば印刷部材の生産性が向上し、15質量%以下であればインキ反発性の低下を抑制できるため好ましい。1~12質量%がより好ましく、1.5~10質量%が更に好ましい。インキ反発部中のビニル基の存在は、インキ反発部をFT-IR-ATR法により分析することで確認することができる。
【0039】
次に、本発明に係る印刷部材前駆体について説明する。
【0040】
印刷部材前駆体は、支持体、並びに、ジオルガノシロキサン単位含有層を有する。より好ましくは、ジオルガノシロキサン単位含有層はジオルガノシロキサン単位を含む単一層である。本発明に係るジオルガノシロキサン単位含有層としては、これまでに水なし平版印刷版原版のインキ反発層として開示された、従来公知の付加反応型、縮合反応型、付加反応-縮合反応併用型のインキ反発性シリコーンゴム層を用いることができる。
【0041】
以下に、本発明で用いられるジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物の具体例を挙げるが、これらに限定されない。
【0042】
本発明に用いられる付加反応型のジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物としては、分子内に2個以上のビニル基を有するシロキサン化合物、分子内に3個以上のSiH基を有するシロキサン化合物および反応触媒を含むことが好ましい。さらに、反応抑制剤やシランカップリング剤を含んでもよい。
【0043】
分子内に2個以上のビニル基を有するシロキサン化合物としては、例えば、分子両末端にビニル基を有するジオルガノポリシロキサン、オルガノビニルポリシロキサン、オルガノビニルシロキサン・ジオルガノシロキサン共重合体、分子内にジオルガノビニルシロキシ基を2個以上有する化合物が挙げられる。中でも、分子両末端にビニル基を有するジオルガノポリシロキサン、オルガノビニルシロキサン・ジオルガノシロキサン共重合体が好ましい。これらを2種以上含有してもよい。
【0044】
分子両末端にビニル基を有するジオルガノポリシロキサンやオルガノビニルシロキサン・ジオルガノシロキサン共重合体は、直鎖状、環状、分岐状、網状の分子構造を有する。また、珪素原子と結合している有機基は同じであっても異なっていてもよく、それぞれ脂肪族不飽和結合を含まない一価の有機基を示す。脂肪族不飽和結合を含まない一価の有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフロロプロピル基などのハロゲン化アルキル基などが挙げられる。
【0045】
前記脂肪族不飽和結合を含まない一価の有機基中、全体の50モル%以上がメチル基であることが、印刷部材のインキ反発性の面で好ましい。また、分子内に2個以上のビニル基を有するシロキサン化合物の重量平均分子量としては、30,000以上が耐刷性や耐傷性を向上させる点で好ましく、塗工性を向上させる点で、300,000以下が好ましい。なお、重量平均分子量はGPCを用い、ポリスチレン換算で測定を行い、得ることができる。
【0046】
分子内に2個以上のビニル基を有するシロキサン化合物の含有率は、ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物に含まれる全固形分中、60質量%以上であればインキ反発部においてインキ反発性を向上させる点で好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。また、ジオルガノシロキサン単位含有層の硬化性を確保する点で、99質量%以下が好ましい。
【0047】
ここで、ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物に含まれる全固形分とは、ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物を塗布し、乾燥(揮発成分を除去)した後に残存する成分を表す。
【0048】
分子内に3個以上のSiH基を有するシロキサン化合物としては、例えば、オルガノハイドロポリシロキサン、オルガノハイドロシロキサン・ジオルガノシロキサン共重合体、分子内にジオルガノハイドロシロキシ基を3個以上有する化合物が挙げられる。中でも、オルガノハイドロポリシロキサン、オルガノハイドロシロキサン・ジオルガノシロキサン共重合体が好ましい。これらを2種以上含有してもよい。分子内のSiH基数としては、ジオルガノシロキサン単位含有層の硬化性を向上させる上で5個以上が好ましく、6個以上がより好ましい。
【0049】
オルガノハイドロポリシロキサンやオルガノハイドロシロキサン・ジオルガノシロキサン共重合体は、直鎖状、環状、分岐状、網状の分子構造を有する。また、珪素原子と結合している有機基は同じであっても異なっていてもよく、それぞれ脂肪族不飽和結合を含まない一価の有機基を示す。脂肪族不飽和結合を含まない一価の有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフロロプロピル基などのハロゲン化アルキル基などが挙げられる。
【0050】
分子内に3個以上のSiH基を有するシロキサン化合物の含有率としては、ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物に含まれる全固形分中、0.5質量%以上であればジオルガノシロキサン単位含有層の硬化性を向上させる上で好ましく、1質量%以上がより好ましい。また、10質量%以下がインキ反発性を向上させる上で好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0051】
また、本発明に係るジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物に含まれる全固形分中のSiH基に由来するH基濃度としては、0.001~0.04質量%であることが好ましい。ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物に含まれる全固形分中のSiH基に由来するH基濃度が0.001質量%以上であればジオルガノシロキサン単位含有層の硬化性を向上させる上で好ましい。また、ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物に含まれる全固形分中のSiH基に由来するH基濃度が0.04質量%以下であればインキ反発部におけるインキ反発性を向上させる上で好ましい。
【0052】
ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物に含まれる全固形分中のSiH基に由来するH基濃度と、前述のインキ反発部の平均弾性率との関係で言えば、ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物に含まれる全固形分中のSiH基に由来するH基濃度が0.001質量%の時に平均弾性率がおおよそ0.001MPaとなる。また、ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物に含まれる全固形分中のSiH基に由来するH基濃度が0.04質量%の時に平均弾性率がおおよそ10MPaとなる。
【0053】
反応触媒としては、ヒドロシリル化反応触媒として公知のものを用いることができるが、反応性が高い点から白金、ロジウムを含有することが好ましい。具体的には、白金単体、担体(アルミナ、シリカ、カーボンブラック等)に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、白金-オレフィン錯体、白金-ビニルシラン錯体、白金-ビニルシロキサン錯体、白金-ホスフィン錯体、白金-ホスファイト錯体、白金-アセチルアセトン錯体、白金-アセト酢酸アルキルエステル錯体、白金-マロン酸ジアルキルエステル錯体、また、Ashbyらの米国特許第3159601号公報および米国特許第3159662号公報に記載された白金-炭化水素複合体、並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号公報に記載された白金アルコラ-ト触媒も挙げられる。また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh、RhCl、RhAl、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・2HO、NiCl、TiCl等が挙げられる。これらの反応触媒は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
反応触媒の含有率としては、ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物に含まれる全固形分中、0.0001質量%以上がジオルガノシロキサン単位含有層の硬化性を向上させる点で好ましく、0.001質量%以上がより好ましい。また、ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物のポットライフを向上させる点で、ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物に含まれる全固形分中、1質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましい。
【0055】
反応抑制剤としては、ヒドロシリル化反応抑制剤または反応遅延剤として公知のものを用いることができる。アミン化合物、アセチレン化合物が好ましく、ピリジン、ピコリン、2,2’-ジピリジル、2-ブタノンオキシムや、アセチレンアルコール、アセチレンシランなどがより好ましく挙げられる。アセチレンアルコールとしては、たとえば2-メチル-3-ブチン-2-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール、1-エチニル-1-ヘキサノール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オールなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの反応抑制剤を含有することにより、ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物のポットライフが向上する。
【0056】
反応抑制剤の含有量は、ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物に含まれる全固形分100質量部に対して、0.01質量部以上がジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物のポットライフを向上させる点で好ましく、0.1質量部以上がより好ましい。また、ジオルガノシロキサン単位含有層の硬化性を確保する点で、ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物に含まれる全固形分100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。
【0057】
シランカップリング剤としては、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、トルイルトリアセトキシシラン、キシリルトリアセトキシシラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、エチルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、トルイルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、キシリルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリアセトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリアセトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、アリルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、3-アクリロキシプロピルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、3-メタクリロキシプロピルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シランなどが挙げられるが、これらに限定されない。中でも、分子内に3個以上のSiH基を有するシロキサン化合物との反応性や下層との接着性を向上させる点や、インキ反発性の低下を抑制する点でビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シランが好ましい。
【0058】
シランカップリング剤の含有率は、ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物に含まれる全固形分中、0.5質量%以上であればプライマー層または支持体との接着性(対下層接着性)を向上させる点で好ましく、1質量%以上がより好ましい。また、インキ反発性を向上させる点で10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0059】
本発明に用いられる縮合反応型のジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物としては、分子内に2個以上のシラノール基を有するシロキサン化合物、シランカップリングを含むことが好ましい。さらに、反応触媒を含んでもよい。
【0060】
分子内に2個以上のシラノール基を有するシロキサン化合物としては、例えば、分子両末端にシラノール基を有するジオルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0061】
分子両末端にシラノール基を有するジオルガノポリシロキサンは、直鎖状、環状、分岐状、網状の分子構造を有する。また、珪素原子と結合している有機基は同じであっても異なっていてもよく、それぞれ脂肪族不飽和結合を含まない一価の有機基を示す。脂肪族不飽和結合を含まない一価の有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフロロプロピル基などのハロゲン化アルキル基などが挙げられる。
【0062】
前記脂肪族不飽和結合を含まない一価の有機基中、全体の50モル%以上がメチル基であることが、印刷部材のインキ反発性の面で好ましい。また、分子内に2個以上のシラノール基を有するシロキサン化合物の重量平均分子量としては、30,000以上が耐刷性や耐傷性を向上させる点で好ましく、塗工性を向上させる点で、300,000以下が好ましい。なお、重量平均分子量はGPCを用い、ポリスチレン換算で測定を行い、得ることができる。
【0063】
分子内に2個以上のシラノール基を有するシロキサン化合物の含有率は、ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物に含まれる全固形分中、60質量%以上であればインキ反発部におけるインキ反発性を向上させる点で好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。また、ジオルガノシロキサン単位含有層の硬化性を確保する点で、99質量%以下が好ましい。
【0064】
シランカップリング剤としては、付加反応型のジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物で例示した前記シランカップリング剤を挙げることができる。
【0065】
シランカップリング剤の含有率は、ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物に含まれる全固形分中、0.5質量%以上が硬化性や対下層接着性を向上させる点で好ましく、1質量%以上がより好ましい。また、インキ反発性を向上させる点で10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0066】
反応触媒としては、有機カルボン酸、酸類、アルカリ、アミン、金属アルコキシド、金属ジケテネート、錫、鉛、亜鉛、鉄、コバルト、カルシウム、マンガンなどの金属の有機酸塩などが挙げられる。具体的には、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸亜鉛、オクチル酸鉄などを挙げることができる。これらを2種以上含有してもよい。
【0067】
反応触媒の含有率としては、ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物の全固形分中に0.01質量%以上1質量%以下含有することが好ましい。0.01質量%以上であればジオルガノシロキサン単位含有層の硬化性や下層との接着性が良好となり、1質量%以下であればジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物の安定性が良好となる。
【0068】
本発明に用いられる付加反応-縮合反応併用型のジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物としては、分子内に2個以上のシラノール基を有するシロキサン化合物、分子内に1個以上のビニル基を有するシランカップリング剤、分子内に3個以上のSiH基を有するシロキサン化合物、反応触媒を含むことが好ましい。さらに、反応抑制剤を含んでもよい。
【0069】
分子内に2個以上のシラノール基を有するシロキサン化合物としては、縮合反応型のジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物で例示した前記シロキサン化合物を挙げることができる。
【0070】
分子内に2個以上のシラノール基を有するシロキサン化合物の含有率は、ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物に含まれる全固形分中、60質量%以上であればインキ反発部におけるインキ反発性を向上させる点で好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。また、ジオルガノシロキサン単位含有層の硬化性を確保する点で、99質量%以下が好ましい。
【0071】
分子内に1個以上のビニル基を有するシランカップリング剤としては、付加反応型のジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物で例示した前記シランカップリング剤のうち、分子内に1個以上のビニル基を有するシランカップリング剤を挙げることができる。
【0072】
分子内に1個以上のビニル基を有するシランカップリング剤の含有率は、ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物に含まれる全固形分中、0.5質量%以上が硬化性や対下層接着性を向上させる点で好ましく、1質量%以上がより好ましい。また、インキ反発性を向上させる点で10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0073】
分子内に3個以上のSiH基を有するシロキサン化合物としては、付加反応型のジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物で例示した前記シロキサン化合物を挙げることができる。
【0074】
分子内に3個以上のSiH基を有するシロキサン化合物の含有率としては、ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物に含まれる全固形分中、0.5質量%以上であればジオルガノシロキサン単位含有層の硬化性を向上させる上で好ましく、1質量%以上がより好ましい。また、10質量%以下がインキ反発性を向上させる上で好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0075】
反応触媒としては、付加反応型のジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物で例示した前記反応触媒を挙げることができる。
【0076】
反応触媒の含有率としては、ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物に含まれる全固形分中、0.0001質量%以上がジオルガノシロキサン単位含有層の硬化性を向上させる点で好ましく、0.001質量%以上がより好ましい。また、ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物のポットライフを向上させる点で、ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物に含まれる全固形分中、1質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましい。
【0077】
反応抑制剤としては、付加反応型のジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物で例示した前記反応抑制剤を挙げることができる。
【0078】
反応抑制剤の含有量は、ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物に含まれる全固形分100質量部に対して、0.01質量部以上がジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物のポットライフを向上させる点で好ましく、0.1質量部以上がより好ましい。また、ジオルガノシロキサン単位含有層の硬化性を確保する点で、ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物に含まれる全固形分100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。
【0079】
また、前記付加反応型、縮合反応型、付加反応-縮合反応併用型のジオルガノシロキサン単位含有層のインキ反発性を更に向上させる目的で、ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物に25℃での表面張力が30mN/m以下の液体を含んでもよい。液体の表面張力が30mN/m以下であれば、インキ反発部およびインキ着肉部からなる層のインキ反発部表面に前記25℃での表面張力が30mN/m以下の液体が表出し、インキの剥離を助けるためインキ反発性が向上し、地汚れ開始温度を上昇させることができる。前記液体が、25℃での表面張力が22mN/m以下の液体であることがインキ反発性を向上させる上でより好ましく、21mN/m以下であることがさらに好ましい。表面張力は、公知の測定方法である白金プレートを用いたWilhelmy法(プレート法や垂直板法と呼ばれることもある)により測定することができる。
【0080】
25℃での表面張力が30mN/m以下の液体は1気圧環境下において150℃で24時間静置したのちの質量減少が0~0.5質量%であることが好ましい。1気圧環境下において150℃で24時間静置したのちの質量減少が0~0.5質量%であれば、印刷部材前駆体や印刷部材の製造時や保管時に揮発しにくく、インキ反発性の効果を失いにくい。
【0081】
25℃での表面張力が30mN/m以下の液体の含有率としては、ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物に含まれる全固形分中、5~40質量%が好ましい。5質量%以上であればインキ反発性が顕著に向上し、40質量%以下であればジオルガノシロキサン単位含有層の強度が十分確保できるため、耐刷性を維持することができる。
【0082】
25℃での表面張力が30mN/m以下の液体としては、シリコーン化合物であることが好ましく、シリコーンオイルがより好ましい。本発明で言うシリコーンオイルとは、ジオルガノシロキサン単位含有層の架橋に携わらないポリシロキサン成分を指す。具体的には、分子鎖末端がトリメチルシリル基のポリジメチルシロキサン、環状ポリジメチルシロキサン、分子鎖末端がトリメチルシリル基のジメチルシロキサン-メチルフェニルシロキサンコポリマー、分子鎖末端がトリメチルシリル基のジメチルシロキサン-ジフェニルシロキサンコポリマーなどのジメチルシリコーンオイル類、また、アルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、エポキシポリエーテル変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、アミド変性シリコーンオイル、カルバナ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイルなどの分子内のメチル基の一部に各種有機基を導入した変性シリコーンオイル類などが挙げられる。
【0083】
25℃での表面張力が30mN/m以下の液体の分子量としては、重量平均分子量で200~100,000が好ましい。重量平均分子量が200以上であれば印刷部材の製造時や保管時における前記25℃での表面張力が30mN/m以下の液体の揮発が抑制され、100,000以下であればジオルガノシロキサン単位含有層からのブリードアウトが抑制される。1,000~10,000がより好ましい。なお、重量平均分子量はGPCを用い、ポリスチレン換算で測定を行い、得ることができる。
【0084】
また、前記付加反応型、縮合反応型、付加反応-縮合反応併用型のジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物には、ゴム強度を向上させる目的でシリカ粒子や、ビニル基、SiH基、シラノール基などの官能基を有するシリコーンレジンなどの公知の補強剤を含有してもよい。
【0085】
さらに、前記付加反応型、縮合反応型、付加反応-縮合反応併用型のジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物には、塗工性の向上を目的に溶剤を含有してもよい。
【0086】
溶剤としては、例えば、脂肪族、脂環族、芳香族の炭化水素や、ハロゲン化炭化水素、鎖状または環状のエーテル化合物などが挙げられる。中でも、経済性や安全性を向上させる点で、脂肪族または脂環族の炭化水素が好ましい。また、ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物に含まれる固形分の溶解性を向上させる点で、溶剤の溶解度パラメーターは、16.4(MPa)1/2以下が好ましく、15.4(MPa)1/2以下がより好ましく、14.4(MPa)1/2以下がさらに好ましい。溶解度パラメーターはFedors推算法を用いて算出できる。また、安全性や取り扱い性を向上させる点で、1気圧における沸点が60℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましい。一方、塗液の乾燥性を向上させる点で、1気圧における沸点が150℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましい。このような溶剤の具体例としては、炭素数が6~9の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素や、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素などを挙げることができる。これら溶剤の2種以上を混合して用いてもよいし、これら溶剤があらかじめ混合された以下に代表されるような市販の溶剤を用いてもよい。
【0087】
分岐状脂肪族炭化水素の混合物:例えば、マルカゾール8(丸善石油化学(株)製)、“アイソパー”(登録商標)C、“アイソパー”(登録商標)E(いずれもエクソンモービルケミカル社製)、IPソルベント1016(出光興産(株)製)、“アイソゾール”(登録商標)200(JX日鉱日石エネルギー(株)製)が挙げられ、各社から入手可能である。
【0088】
脂環族炭化水素の混合物:例えば、エクソールDSP80/100、エクソールDSP100/140、エクソールD30、(いずれもエクソンモービルケミカル社製)、CS揮発油(JX日鉱日石エネルギー(株)製)が挙げられ、各社から入手可能である。
【0089】
また、前述の溶剤以外の溶剤を混合して用いることもできるが、ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物の溶解性を向上させる点で、前述の溶剤が全溶剤中、80体積%以上含まれることが好ましく、90体積%以上含まれることがより好ましい。
【0090】
以下に、ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物の具体的な作製方法を記載するが、これに限定されない。
【0091】
例えば、容器中に溶剤、分子内に2個以上のビニル基を有するシロキサン化合物、分子内に3個以上のSiH基を有するシロキサン化合物、25℃での表面張力が30mN/m以下の液体、反応抑制剤、シランカップリング剤を投入し、成分が均一になるまで攪拌する。さらに、反応触媒を投入し、成分が均一になるまで攪拌することでジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物を得ることができる。
【0092】
硬化性維持の観点で、反応触媒はジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物の塗布直前に投入することが好ましい。
【0093】
ジオルガノシロキサン単位含有層は、前述したジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物を支持体または支持体上に設けられた別の層に塗布することで形成できる。
【0094】
また、本発明の印刷部材前駆体には、接着性、検版性、耐傷性、耐刷性などの向上を目的として、前記支持体と前記ジオルガノシロキサン単位含有層との間にプライマー層を有してもよい。
【0095】
プライマー層としては、例えば特開2004-199016号公報、特開2004-334025号公報、特開2006-276385号公報などに断熱層として記載されたプライマー層が挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
プライマー層の平均膜厚としては、0.1μm以上が印刷部材の耐傷性、耐刷性、検版性などを向上させる点で好ましい。また、希釈溶剤が揮発しやすく生産性が優れる点で、30μm以下が好ましく、0.2~20μmがより好ましい。
【0097】
次に、印刷部材前駆体の製造方法について説明する。
【0098】
支持体上にプライマー層を設ける場合には、支持体上にプライマー層形成用組成物を塗布し、加熱下または非加熱下で乾燥、硬化することにより支持体上にプライマー層を形成することができる。
【0099】
プライマー層形成用組成物の塗布には、スリットダイコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ワイヤーバーコーターなどを用いることができるが、スリットダイコーターが好ましい。
【0100】
加熱する場合には、熱風乾燥機、赤外線乾燥機などを用いることができ、50~250℃の温度で30秒~10分間乾燥することが好ましい。
【0101】
ジオルガノシロキサン単位含有層は、支持体上または支持体上に設けられたプライマー層上に前記ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物を塗布し、加熱下または非加熱下で乾燥、硬化することにより形成する。
【0102】
ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物を塗布する際、支持体表面やプライマー層表面に付着した水分を可能な限り除去することが、接着性を向上させる点で好ましい。
【0103】
ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物の塗布には、スリットダイコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ワイヤーバーコーターなどを用いることができるが、スリットダイコーターが好ましい。
【0104】
加熱する場合には熱風乾燥機、赤外線乾燥機などを用いることができ、50~200℃の温度で30秒~10分間乾燥することが好ましい。
【0105】
本発明の印刷部材前駆体は、ジオルガノシロキサン単位含有層表面を保護する目的でジオルガノシロキサン単位含有層上にカバーフィルムもしくは合紙またはその両方を設けてもよい。
【0106】
カバーフィルムとしては、厚み100μm以下のフィルムが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、セロファンなどを挙げることができる。
【0107】
合紙は、秤量30~120g/mのものが好ましく、より好ましくは30~90g/mである。秤量30g/m以上であれば機械的強度が十分であり、120g/m以下であれば経済的に有利であるばかりでなく、印刷部材前駆体や印刷部材と合紙の積層体が薄くなり、作業性が有利になる。好ましく用いられる合紙の例として、例えば、情報記録原紙40g/m(名古屋パルプ(株)製)、金属合紙30g/m(名古屋パルプ(株)製)、未晒しクラフト紙50g/m(中越パルプ工業(株)製)、NIP用紙52g/m(中越パルプ工業(株)製)、純白ロール紙45g/m(王子製紙(株)製)、クルパック73g/m(王子製紙(株)製)などが挙げられ、各社より入手できるがこれらに限定されるものではない。
【0108】
次に、前記印刷部材前駆体から印刷部材を製造する方法について説明する。印刷部材前駆体のジオルガノシロキサン単位含有層上にカバーフィルムや合紙が設けられている場合には、印刷部材の製造前に予めこれらを取り除く。本発明に係る印刷部材は、前記印刷部材前駆体に電子線または波長125~260nmの紫外線を照射することにより得ることができる。紫外線の波長は、125nm~200nmがより好ましい。ここで、波長125~260nmの紫外線とは、波長125~260nmにおいてピーク波長を有する紫外線をいう。インキ反発部に電子線または波長125~260nmの紫外線を照射すると、照射部分のジオルガノシロキサン単位含有層の少なくとも表面がシルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含む構造に変化することによって、インキ反発性がインキ着肉性に変化する。
【0109】
中でも、製版用のマスクが不要となる点から、電子線描画装置や波長125~260nmの紫外線レーザー描画装置などを用いて、インキ着肉部のパターンを直接描画することが好ましい。
【0110】
電子線照射装置は、走査型のスキャンビーム方式と非走査型のエリアビーム方式を挙げることができ、これらいずれの方式も好適に用いることができる。一般的に、300keV以上の高エネルギー装置にスキャンビーム方式が用いられ、300keV以下の低エネルギー装置にはエリアビーム方式が用いられる場合が多い。
【0111】
電子線描画装置は、スポットビーム方式、可変成形ビーム(矩形ビーム)方式、キャラクタープロジェクション方式などを挙げることができ、これらいずれの方式も好適に用いることができる。またこれら方式を組み合わせてもよい。スポットビーム方式は超高精細(数十~数百nm)のパターニングが行えることが最大のメリットであるが、一方で印刷部材の生産性(スループット)が低くなるデメリットを有している。印刷部材の製造においては、高解像度とされる4000dpiであってもその最小ドットサイズは約6μm程度であり、スポットビーム方式よりも精細度に劣る可変成形ビーム方式を用いたとしても精細度としては十分であり、これにより印刷部材の生産性を高めることができる。
【0112】
電子線の線量としては、100~3000kGyであることが好ましく、500~2000kGyであることがより好ましい。100kGy以上であれば電子線照射部分のインキ着肉性がさらに向上するため好ましく、3000kGy以下であれば生産性や耐刷性に優れるため好ましい。
【0113】
また、電子線の加速電圧としては、50~150kVであることが好ましく、75~125kGyであることがより好ましい。50kGy以上であれば生産性に優れるため好ましく、150kGy以下であれば低線量でインキ着肉性がさらに向上し、また電子線の浸透深さが浅くなるため支持体やプライマー層へのダメージを抑制できるため好ましい。
【0114】
波長125~260nmの紫外線照射装置は、照射光のピーク波長が125~260nmの範囲に含まれる、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、およびエキシマランプなどを挙げることができる。これらの中では低圧水銀ランプ、エキシマランプが好ましい。波長125~260nmのエキシマランプとしては、Ar(126nm)、Kr(146nm)、F(153nm)、ArBr(165nm)、Xe(172nm)、ArCl(175nm)、ArF(193nm)、KrBr(207nm)、KrCl(222nm)、KrF(248nm)、XeI(253nm)、HgXe(254nm)、Cl(259nm)などの希ガスエキシマランプや希ガスハロゲンエキシマランプが挙げられるが、これらに限定されない。中でも、印刷部材の生産性を向上させる点で、Ar(126nm)、Kr(146nm)、F(153nm)、ArBr(165nm)、Xe(172nm)、ArCl(175nm)、ArF(193nm)などの波長125~200nmの真空紫外線エキシマランプを使用することがより好ましい。
【0115】
波長125~260nmの紫外線レーザーとしては、アレキサンドライトレーザーの第3高調波(252nm)、Nd:YAGレーザーの第5高調波(213nm)、Nd:YVOレーザーの第5高調波(213nm)、Nd:YLFレーザーの第5高調波(211nm)などの固体レーザー、Fレーザー(157nm)、ArFレーザー(193nm)、KClレーザー(222nm)、KrFレーザー(248nm)などの気体レーザーなどが挙げられるが、これらに限定されない。中でも、印刷部材の生産性を向上させる点で、Fレーザー(157nm)、ArFレーザー(193nm)などの波長125~200nmの真空紫外線レーザーを使用することがより好ましい。
【0116】
波長125~260nmの紫外線の露光量としては、300~3000mJ/cmであることが好ましく、500~2000mJ/cmであることがより好ましい。300mJ/cm以上であれば紫外線照射部分のインキ着肉性がさらに向上するため好ましく、3000mJ/cm以下であれば生産性や耐刷性に優れるため好ましい。
【0117】
電子線や波長125~200nmの紫外線の照射はオゾン発生の抑制や酸素などによる照射線のエネルギー損失抑制の点で、窒素ガス中や真空中で行なうことが好ましい。
【0118】
得られた印刷部材を積み重ねて保管する場合には、インキ反発部およびインキ着肉部からなる層の表面を保護する目的で、印刷部材と印刷部材の間に合紙を挟んでおくことが好ましい。
【0119】
次に、印刷部材とインキと被印刷媒体を用いて印刷物を製造する方法について説明する。本発明に係る印刷部材は、水なし印刷に好適に使用することができる。
【0120】
本発明に係る印刷物の製造方法は、本発明に係る印刷部材、インキ、および被印刷媒体を用いる。具体的には、印刷部材の表面にインキを付着させる工程と、前記インキを直接またはブランケットを介して被印刷媒体に転写する工程を含むことが好ましい。
【0121】
図3を用いて本発明に係る印刷物の製造方法の一形態を説明する。なお、以下ではブランケット胴8を使用した例を説明するが、本発明はこれに限定されず、ブランケット胴8を使用せずにインキローラー5から版胴7に装着された印刷部材6にインキを付着させた後、インキを直接被印刷媒体に転写しても構わない。また、以下では被印刷媒体9の上方からインキを供給する例を説明するが、被印刷媒体9の下方からインキを供給しても構わない。
【0122】
はじめに、インキローラー5にインキを供給する。インキローラー5に供給されたインキは、版胴7との接点において、版胴7に装着された印刷部材6に付着する。印刷部材6に付着したインキはブランケット胴8との接点において、ブランケット胴8の表面に転写する。ブランケット胴8に付着したインキは、圧胴10上に配置された被印刷媒体9との接点において、被印刷媒体9に転写する。被印刷媒体9を必要に応じて乾燥することにより、印刷物が得られる。インキローラーや各胴の回転スピードは特に限定されるものではなく、印刷物に要求される品質、インキの性質等に応じて、適宜設定することができる。
【0123】
本発明に係る印刷物の製造に用いられる印刷機としては、例えば、枚葉方式または輪転方式などの公知の直刷り印刷機やオフセット印刷機が挙げられるが、印刷時の印刷部材へのダメージ抑制により多くの印刷物が得られる点から、オフセット印刷機が好ましい。オフセット印刷機は、フィーダー部、印刷部およびデリバリー部により構成される。印刷部は、少なくとも、インキ供給部、版胴、ブランケット胴および圧胴を有する。
【0124】
オフセット印刷機としては、揺動ローラーおよび/または版胴に冷却機構が備わったオフセット印刷機が耐地汚れ性を向上させる点で好ましい。
【0125】
油溶性または水溶性の酸化重合型インキを用いた印刷の場合、被印刷媒体に転写されたインキが自然乾燥または加熱処理により乾燥および/または硬化することによって、印刷物が得られる。
【0126】
一方、油溶性または水溶性の活性エネルギー線硬化型インキを用いた印刷の場合は、被印刷媒体に転写されたインキは活性エネルギー線照射装置からの活性エネルギー線により瞬時に硬化し、印刷物が得られるため好ましい。
【0127】
活性エネルギー線としては、可視光線、紫外線(UV)、電子線(EB)、X線、粒子線などが挙げられるが、線源の扱いやすさなどの点から紫外線や電子線が好ましい。
【0128】
紫外線により硬化させる場合は、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LED等の紫外線照射装置が好ましく用いられるが、例えばメタルハライドランプを用いる場合、80~150W/cmの照度を有するランプによって、コンベアーによる搬送速度が50~150m/minで硬化させることが生産性の面から好ましい。特に、被印刷媒体としてプラスチックフィルムや金属を含む被印刷媒体を用いる場合、活性エネルギー線による発熱によって被印刷媒体が伸縮しやすくなるため、発熱の少ない電子線、またはLEDを用いた紫外線照射装置(LED-UV)を好ましく用いることができる。
【0129】
電子線により硬化させる場合は、100~500eVのエネルギー線を有する電子線照射装置が好ましく用いられる。
【0130】
本発明に好ましく用いることができるインキとしては、以下に記載のインキなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0131】
<インキ-1> 油溶性酸化重合型インキ
油溶性酸化重合型インキとしては、例えば、特開昭48-004107号公報、特開平01-306482号公報などで開示された油性洗浄液で洗浄可能な公知の油溶性酸化重合型インキが挙げられる。また、特開2005-336301号公報、特開2005-126579号公報、特開2011-144295号公報、特開2012-224823号公報などで開示された、溶剤成分を従来の鉱物油(石油)成分から植物油成分に置き換えた、大豆油インキや植物油インキ、ならびにNon-VOCインキなどと称される環境低負荷型のインキも油溶性酸化重合型インキに含まれる。
【0132】
<インキ-2> 水溶性酸化重合型インキ
水溶性酸化重合型インキとしては、例えば、特開2009-57461号公報、特許第4522094号公報などで開示された水または水系洗浄液で洗浄可能な公知の水溶性酸化重合型インキが挙げられる。
【0133】
<インキ-3> 油溶性活性エネルギー線硬化型インキ
油溶性活性エネルギー線硬化型インキとしては、例えば、特許第5158274号公報、特開2012-211230号公報などで開示された油性洗浄液で洗浄可能な公知の活性エネルギー線硬化型インキが挙げられる。また、活性エネルギー線硬化型インキには省電力(減灯)UV印刷やLED-UV印刷に使用される高感度UVインキも含まれる。
【0134】
<インキ-4> 水溶性活性エネルギー線硬化型インキ
水溶性活性エネルギー線硬化型インキとしては、例えば、特開2017-52817号公報、国際公開第2017/047817号、国際公開第2017/090663号などで開示された水または水系洗浄液で洗浄可能な公知の水溶性活性エネルギー線硬化型インキが挙げられる。
【0135】
上記のインキの中でも、油溶性または水溶性の活性エネルギー線硬化型インキは、被印刷媒体に転写後、活性エネルギー線の照射により瞬時に硬化するため、直ちに裏面の印刷や後加工が行えるといった従来の酸化重合型インキにはないメリットを有しているため好ましい。しかしながら、活性エネルギー線硬化型インキは、従来の酸化重合型インキとは異なりインキ中に地汚れ防止成分を一切含まないか、またはごく少量しか含まないため、印刷時に地汚れが発生しやすい欠点を有している。本発明の印刷部材は高いインキ反発性を有するため、油溶性活性エネルギー線硬化型インキおよび水溶性活性エネルギー線硬化型インキを好適に使用することができる。また、印刷機の各種ローラー、ブランケット、印刷部材などに付着したインキを洗浄する際、油溶性酸化重合型インキや油溶性活性エネルギー線硬化型インキなどの油溶性インキでは、揮発性が高く有害な有機溶剤を使用することから人体や環境への負荷が大きい。これに対し、水溶性酸化重合型インキや水溶性活性エネルギー線硬化型インキなどの水溶性インキは、水単独、または水を主成分とする洗浄液で洗浄することが可能であることから、揮発性が高く有害な有機溶剤を使用する必要がなく、人体や環境への負荷を著しく抑制できる点で好ましい。とりわけ、水溶性活性エネルギー線硬化型インキをより好適に使用することができる。
【0136】
被印刷媒体としては、上質紙、アート紙、コート紙、キャスト紙、合成紙、新聞用紙などの紙類、アルミニウムやアルミニウム合金、鉄、鋼、亜鉛、銅などの金属類、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタールなどのプラスチックフィルム類、またはこれら紙類、金属類、プラスチックフィルム類の複合体(金属が蒸着またはラミネートされた紙またはプラスチックフィルム、プラスチックフィルムがラミネートされた紙または金属、紙がラミネートされた金属またはプラスチックフィルム)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0137】
中でも、本発明に係る印刷物の製造方法では、被印刷面が金属またはプラスチックフィルムで構成される、合成紙、金属類、プラスチックフィルム類、金属が蒸着またはラミネートされた紙またはプラスチックフィルム、プラスチックフィルムがラミネートされた紙または金属などのインキ成分非吸収性の被印刷媒体への印刷に好適である。
【0138】
上記のうち、被印刷面がプラスチックフィルムで構成される、合成紙、プラスチックフィルム類、プラスチックフィルムがラミネートされた紙または金属などの被印刷媒体の被印刷面は、接着性向上の点でプライマー樹脂のコーティングや、コロナ放電処理、プラズマ処理などの表面処理を施してもよい。
【0139】
被印刷媒体は、枚葉状、ロール状のいずれも用いることができる。軟包装用の薄膜フィルムに印刷する場合は、ロール状フィルムを用い、ロールトゥロールで印刷することが好ましい。
【0140】
被印刷媒体上のインキ塗膜(インキ硬化膜)の厚みは0.1~50μmであることが好ましい。インキ塗膜の厚みが上記範囲内であることにより、良好な印刷品質を保ちつつ、インキコストを低減させることが出来る。
【0141】
本発明の印刷部材は現像工程が不要であり、従来の現像工程で用いられる前処理薬品や後処理薬品などを使用する必要がない。このため、印刷部材への前処理薬品や後処理薬品の付着や浸透がなく、印刷工程においてこれら薬品の印刷部材から印刷物への移行がないことから、薬品の含有量に厳しい食品包装用途の印刷に特に好適に用いることができる。
【実施例
【0142】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。また、各実施例・比較例における評価は次の方法で行った。
【0143】
<各実施例・比較例における評価方法>
(1)電子線または波長125~260nmの紫外線照射部(インキ着肉部)および電子線または紫外線未照射部(インキ反発部)の平均弾性率、平均弾性率差
各実施例、比較例に記載の方法で得られた印刷部材の電子線または波長125~260nmの紫外線照射部および電子線または紫外線未照射部の平均弾性率を以下の分析法により評価、算出した。
分析装置:走査型プローブ顕微鏡(SPM):NanoScopeV dimension Icon(Bruker社製)
探針:シリコンカンチレバー(ばね定数=6N/m)
先端曲率半径:8nm
荷重:5~20nN
走査モード:フォースボリューム(コンタクトモード)
走査範囲:電子線または波長125~260nmの紫外線照射部および電子線または紫外線未照射部のそれぞれ任意の25μm(縦:5μm×横:5μm)
走査範囲内での測定点:4096点(縦:64点×横:64点)
測定環境:室温、大気中。
【0144】
得られた全測定点(4096点)における弾性率の相加平均値を平均弾性率とし、 電子線または波長125~260nmの紫外線照射部の平均弾性率から電子線または紫外線未照射部の平均弾性率を除した数値を平均弾性率差とした。
【0145】
(2)スポット径の測定
水平器を用いて水平にしたホットプレート(プレート温度:30℃)上に印刷部材を置いた。印刷部材の表面温度が30℃になっていることを確認後、印刷部材の電子線または波長125~260nmの紫外線照射部の表面の任意の1箇所に、ジメチルシリコーンオイル:KF-96-20cs(信越化学工業(株)製、液粘度:20センチストークス)を12マイクロリットル接触させ、接触後10分経過時点のスポット径を測定した。スポット径は、接触後10分経過時点のジメチルシリコーンオイルのスポット形状のうち、径が最長となる箇所を測長することによって求めた。
【0146】
(3)印刷方法
各実施例、比較例に記載の方法で得た印刷部材を、LED-UVオフセット輪転印刷機:MHL13A((株)ミヤコシ製)に装着し、以下に示す条件で20,000mの印刷を行った。
【0147】
<印刷条件>
インキローラー:#8000(明和ゴム工業(株)製)
ブランケット:T626W((株)金陽社製)
水溶性UVインキ:UV171 NH TBS 墨((株)T&K TOKA製)
インキ成分非吸収性の被印刷媒体:“エンブレット”(登録商標)PTM-12(ロール状2軸延伸PETフィルム、厚み:12μm、印刷面:易接着処理、ユニチカ(株)製)
版面温度:25~28℃
印刷速度:100m/分。
【0148】
<インキ硬化条件>
UV波長:385nm
UV照射強度:8W/cm
【0149】
(3-1)電子線または波長125~260nmの紫外線照射部におけるインキ着肉性の評価
印刷開始から500m付近の印刷物を切り出し、5枚重ねにしたコート紙:OK“トップコート”(登録商標)+(王子製紙(株)製)上に置き、ベタ部の墨反射濃度を分光濃度計“スペクトロアイ”(エックスライト社製)にて測定した。インキ着肉性の評点は以下の通りとした。
A:墨反射濃度1.4以上
B:墨反射濃度1.1以上1.4未満
C:墨反射濃度0.8以上1.1未満
D:墨反射濃度0.5以上0.8未満
E:墨反射濃度0.5未満。
【0150】
(3-2)電子線または紫外線未照射部におけるインキ反発性の評価
印刷開始から500m付近の印刷物を切り出し、5枚重ねにしたOK“トップコート”(登録商標)+上に置き、白ベタ部墨反射濃度を“スペクトロアイ”にて測定した。反射濃度が低い方がインキ反発性は良好であり、反射濃度:0.00が最良である。反射濃度:0.01以上の場合には白ベタ部に地汚れが発生しており、数値が高くなるほど地汚れの程度がひどくなる。
【0151】
(3-3)電子線または波長125~260nmの紫外線照射部における耐刷性の評価
印刷開始から5,000m毎の印刷物を切り出し、5枚重ねにしたOK“トップコート”(登録商標)+上に置き、ベタ部墨反射濃度を“スペクトロアイ”にて測定した。電子線または波長125~260nmの紫外線照射部における耐刷性の評点は以下の通りとした。
A:20,000mでも墨反射濃度の低下なし
B:15,000mで墨反射濃度の低下なし、20,000mで墨反射濃度が低下
C:10,000mで墨反射濃度の低下なし、15,000mで墨反射濃度が低下
D:5,000mで墨反射濃度の低下なし、10,000mで墨反射濃度が低下
E:5,000mで墨反射濃度が低下。
【0152】
(3-4)電子線または紫外線未照射部における耐刷性の評価
印刷開始から5,000m毎の印刷物を切り出し、5枚重ねにしたOK“トップコート”(登録商標)+上に置き、白ベタ部墨反射濃度を“スペクトロアイ”にて測定した。電子線または紫外線未照射部における耐刷性の評点は以下の通りとした。
A:20,000mでも墨反射濃度の上昇なし
B:15,000mで墨反射濃度の上昇なし、20,000mで墨反射濃度が上昇
C:10,000mで墨反射濃度の上昇なし、15,000mで墨反射濃度が上昇
D:5,000mで墨反射濃度の上昇なし、10,000mで墨反射濃度が上昇
E:5,000mで墨反射濃度が上昇。
【0153】
(4)電子線または波長125~260nmの紫外線照射部および電子線または紫外線未照射部の元素分析
(4-1)元素濃度
各実施例、比較例に記載の方法で得られた印刷部材の電子線または波長125~260nmの紫外線照射部および電子線または紫外線未照射部の元素分析を以下の分析法により評価、算出した。
分析装置:走査型X線光電子分光分析装置(ESCA system ULVAC PHI 5700(ULVAC-PHI社製))
真空度:1.33×10-6Pa以下
X線源:Mg線源
スキャン:ナロースキャン
測定元素:C1s、O1s、Si2p、Ti2p
X線入射角度:45度。
【0154】
電子線または波長125~260nmの紫外線照射部および電子線または紫外線未照射部のそれぞれ任意の1箇所について測定した。得られた測定データをデータ解析ソフト:“PHI MultiPak”(商標)(ULVAC-PHI社製)を用い、スムージング補正:Point9、バックグラウンド補正:OFF SETにて各元素のスペクトルを表示し、ベースラインを引いて得たスペクトル面積から各元素濃度値(atom%)を算出した。
【0155】
(4-2)酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)
上記(4-1)で求めた酸素濃度値を珪素濃度値で割ることで酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)を算出した。
【0156】
(5)FT-IR-ATR法による分析
各実施例、比較例に記載の方法で得られた印刷部材の電子線または波長125~260nmの紫外線照射部および電子線または紫外線未照射部の任意の1箇所について、赤外線吸収を以下の方法により分析した。
分析装置:FTS-55A(Bio-Rad Diglab製)
光源:特殊セラミックス
検知器:MCT
パージ:窒素ガス
分解能:4cm-1
積算回数:512回
測定方法:ATR(減衰全反射)法
測定波長範囲:4000~600cm-1
付属装置:一回反射型ATR測定付属装置(The SeagullTM)
偏光:なし
IRE:Ge(屈折率:4.0)
入射角度:45度。
【0157】
[実施例1]
厚さ0.24mmの脱脂したアルミ基板(三菱アルミ(株)製)上に、下記のプライマー層形成用組成物-1を塗布し、200℃で90秒間乾燥し、平均膜厚10μmのプライマー層を設けた。
【0158】
<プライマー層形成用組成物-1>
容器中に下記(a-1)成分を投入し、スリーワンモーターにて攪拌しながら(b-1)、(c-1)、(d-1)、(e-1)成分を順次ゆっくりと投入し、成分が均一になるまで攪拌混合した。得られた混合液中に(f-1)、(g-1)成分を投入して10分間攪拌混合することでプライマー層形成用組成物-1を得た。
(a-1)酸化チタン分散液:“タイペーク”(登録商標)CR-50(石原産業(株)製)のN,N-ジメチルホルムアミド分散液(酸化チタン50質量%):60.0質量部
(b-1)エポキシ樹脂:“jER”(登録商標)1010(三菱化学(株)製):35.0質量部
(c-1)ポリウレタン:“サンプレン”(登録商標)LQ-T1331D(三洋化成工業(株)製、固形分濃度:20質量%):375.0質量部
(d-1)N,N-ジメチルホルムアミド:730.0質量部
(e-1)メチルエチルケトン:250.0質量部
(f-1)アルミキレート:“アルミキレート”ALCH-TR(川研ファインケミカル(株)製):10.0質量部
(g-1)レベリング剤:“ディスパロン”(登録商標)LC951(楠本化成(株)製、固形分:10質量%):1.0質量部。
【0159】
<(a-1)酸化チタン分散液の作製>
ジルコニアビーズ:“YTZ”(登録商標)ボール(φ1mm、(株)ニッカトー製)1,600.0gを充填した密閉可能なガラス製規格瓶中に、N,N-ジメチルホルムアミド:700.0g、“タイペーク”(登録商標)CR-50:700.0gを投入し、密閉後、小型ボールミル回転架台(アズワン(株)製)にセットし、0.4m/秒の回転速度で7日間分散することで、(a-1)酸化チタン分散液を得た。
【0160】
次いで、下記のジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物-1を前記プライマー層上に塗布し、140℃で80秒間加熱し、平均膜厚20.0μmのジオルガノシロキサン単位含有層を設けることで印刷部材前駆体を得た。
【0161】
<ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物-1>
容器中に下記(a-2)および(b-2)成分を投入し、成分が均一になるまで攪拌混合した。得られた溶液を乾燥窒素で20分間バブリングすることで溶液中の水分を除去した。得られた溶液中に(c-2)および(d-2)成分を投入して10分間攪拌混合した。塗布直前に(e-2)成分を投入し攪拌混合することでジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物-1を得た。
(a-2)イソパラフィン系溶剤:“アイソパー”(登録商標)E(エクソンモービルケミカル社製):299.00質量部
(b-2)分子内に2個以上のシラノール基を有するシロキサン化合物(両末端ジメチルヒドロキシシロキシ-ポリジメチルシロキサン):DMS-S35(GELEST Inc.製、重量平均分子量:49,000、分子内のシラノール基数:2.0個):95.98質量部
(c-2)シランカップリング剤:ビニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン(GELEST Inc.製):3.0質量部
(d-2)シランカップリング剤:テトラキス(メチルエチルケトキシミノ)シラン(固形分濃度:50質量%):2.0質量部
(e-2)反応触媒(有機錫化合物):ジブチル錫ジアセテート:0.02質量部。
【0162】
得られた印刷部材前駆体のジオルガノシロキサン単位含有層上に、印刷パターン状の開口部を有するマスクを配置し、窒素雰囲気中で電子線を加速電圧:100kV、線量:1200kGyにてパターン状に照射することで、インキ反発部およびインキ着肉部からなる層を有する印刷部材を得た。
【0163】
インキ反発部(電子線未照射部)をFT-IR-ATR法により分析した結果、ジメチルシロキサン単位に帰属される吸収帯(1256、1085、790cm-1)にシグナルが検出され、ジオルガノシロキサン単位の存在が確認された。また、ビニル基に帰属される吸収帯(3055、1599、1408、960cm-1)にはシグナルが検出されず、ビニル基の存在は確認できなかった。一方、インキ着肉部(電子線照射部)をFT-IR-ATR分析した結果、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造に帰属される吸収帯(1271、1133、995cm-1)にシグナルが検出され、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認された。
【0164】
また、電子線未照射部分のジオルガノシロキサン単位濃度は99質量%、珪素濃度は36.7質量%であった。
【0165】
電子線照射部の平均弾性率は890MPa、電子線未照射部の平均弾性率は1MPaであり、その差は889MPaであった。また、電子線照射部の元素濃度比率は珪素:24atom%、酸素:38atom%、炭素:38atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.6であった。電子線未照射部の元素濃度比率は珪素:24atom%、酸素:26atom%、炭素:50atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.1であった。また、電子線照射部のスポット径は31mmであった。
【0166】
[実施例2]
ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物-1を、下記ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物-2に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で印刷部材の作製、評価を行った。
【0167】
<ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物-2>
容器中に下記(a-3)、(b-3)および(c-3)成分を投入し、成分が均一になるまで攪拌混合した。得られた溶液を乾燥窒素で20分間バブリングすることで溶液中の水分を除去した。得られた溶液中に(d-3)成分を投入して10分間攪拌混合した。塗布直前に(e-3)成分を投入し攪拌混合することでジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物-2を得た。
(a-3)“アイソパー”(登録商標)E:295.00質量部
(b-3)分子内に2個以上のビニル基を有するシロキサン化合物(両末端ジメチルビニルシロキシ-ポリジメチルシロキサン):DMS-V35(GELEST Inc.製、重量平均分子量:49,500、分子内のビニル基数:2.0個):91.00質量部
(c-3)分子内に3個以上のSiH基を有するシロキサン化合物(両末端トリメチルシロキシ-メチルハイドロシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー):HMS-301(GELEST Inc.製、重量平均分子量:1,950、SiH基に由来するH基濃度:0.41質量%、分子内のSiH基数:8.0個):6.0質量部
(d-3)ビニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン:3.0質量部
(e-3)反応触媒(白金混合物):XC94-C4326(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、固形分濃度:1質量%):5.0質量部。
【0168】
電子線未照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1256、1085、790cm-1にシグナルが検出され、ジメチルシロキサン単位の存在が確認された。また、3055、1599、1408、960cm-1にはシグナルが検出されず、ビニル基の存在は確認できなかった。一方、電子線照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出され、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認された。
【0169】
また、電子線未照射部のジオルガノシロキサン単位濃度は97質量%、珪素濃度は36.8質量%であった。
【0170】
電子線照射部の平均弾性率は870MPa、電子線未照射部の平均弾性率は1MPaであり、その差は869MPaであった。また、電子線照射部の元素濃度比率は珪素:24atom%、酸素:38atom%、炭素:38atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.6であった。電子線未照射部の元素濃度比率は珪素:24atom%、酸素:26atom%、炭素:50atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.1であった。また、電子線照射部のスポット径は30mmであった。
【0171】
[実施例3]
ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物-1を、下記ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物-3に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で印刷部材の作製、評価を行った。
【0172】
<ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物-3>
容器中に下記(a-4)、(b-4)、(c-4)および(d-4)成分を投入し、成分が均一になるまで攪拌混合した。得られた溶液を乾燥窒素で20分間バブリングすることで溶液中の水分を除去した。塗布直前に(e-4)成分を投入し攪拌混合することでジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物-3を得た。
(a-4)“アイソパー”(登録商標)E:293.5質量部
(b-4)分子内に3個以上のビニル基を有するシロキサン化合物(両末端トリメチルシロキシ-ビニルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー):VDT-954(GELEST Inc.製、重量平均分子量:225,000、ビニル基濃度:4.29質量%、分子内のビニル基数:357.2個):94.0質量部
(c-4)分子内に3個以上のSiH基を有するシロキサン化合物(両末端トリメチルシロキシ-ポリメチルハイドロシロキサン):HMS-993(GELEST Inc.製、重量平均分子量:2,250、SiH基に由来するH基濃度:1.56質量%、分子内のSiH基数:35.2個):6.0質量部
(d-4)反応抑制剤:2-メチル-3-ブチン-2-オール:1.5質量部
(e-4)XC94-C4326:5.0質量部。
【0173】
電子線未照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1256、1085、790cm-1にシグナルが検出され、ジメチルシロキサン単位の存在が確認された。また、3055、1599、1408、960cm-1にもシグナルが検出され、ビニル基の存在が確認された。ビニル基濃度は1.5質量%であった。一方、電子線照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出され、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認された。
【0174】
また、電子線未照射部のジオルガノシロキサン単位濃度は92質量%、珪素濃度は37.7質量%であった。
【0175】
電子線照射部の平均弾性率は1160MPa、電子線未照射部の平均弾性率は2MPaであり、その差は1158MPaであった。また、電子線照射部の元素濃度比率は珪素:24atom%、酸素:40atom%、炭素:36atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.7であった。電子線未照射部の元素濃度比率は珪素:24atom%、酸素:25atom%、炭素:51atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.0であった。また、電子線照射部のスポット径は33mmであった。
【0176】
[実施例4]
ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物-1を、下記ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物-4に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で印刷部材の作製、評価を行った。
【0177】
<ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物-4>
容器中に下記(a-5)、(b-5)および(c-5)成分を投入し、成分が均一になるまで攪拌混合した。得られた溶液を乾燥窒素で20分間バブリングすることで溶液中の水分を除去した。得られた溶液中に(d-5)成分を投入して30分間攪拌混合した。塗布直前に(e-5)成分を投入し攪拌混合することでジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物-4を得た。
(a-5)“アイソパー”(登録商標)E:295.00質量部
(b-5)DMS-S35:91.00質量部
(c-5)HMS-301:6.0質量部
(d-5)ビニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン:3.0質量部
(e-5)XC94-C4326:5.0質量部。
【0178】
電子線未照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1256、1085、790cm-1にシグナルが検出され、ジメチルシロキサン単位の存在が確認された。また、3055、1599、1408、960cm-1にはシグナルが検出されず、ビニル基の存在は確認できなかった。一方、電子線照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出され、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認された。
【0179】
また、電子線未照射部のジオルガノシロキサン単位濃度は98質量%、珪素濃度は37.1質量%であった。
【0180】
電子線照射部の平均弾性率は870MPa、インキ反発部(電子線未照射部)の平均弾性率は1MPaであり、その差は869MPaであった。また、電子線照射部の元素濃度比率は珪素:24atom%、酸素:38atom%、炭素:38atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.6であった。電子線未照射部の元素濃度比率は珪素:24atom%、酸素:26atom%、炭素:50atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.1であった。また、電子線照射部のスポット径は30mmであった。
【0181】
[実施例5]
電子線の線量を1200kGyから800kGyに変更した以外は実施例2と同様の方法で印刷部材の作製、評価を行った。
【0182】
電子線照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出され、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認された。
【0183】
電子線照射部の平均弾性率は150MPa、電子線未照射部の平均弾性率は1MPaであり、その差は149MPaであった。また、電子線照射部の元素濃度比率は珪素:24atom%、酸素:32atom%、炭素:44atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.3であった。また、電子線照射部のスポット径は21mmであった。
【0184】
[実施例6]
電子線の線量を1200kGyから800kGyに変更した以外は実施例3と同様の方法で印刷部材の作製、評価を行った。
【0185】
電子線照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出され、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認された。
【0186】
電子線照射部の平均弾性率は720MPa、電子線未照射部の平均弾性率は2MPaであり、その差は718MPaであった。また、電子線照射部の元素濃度比率は珪素:24atom%、酸素:36atom%、炭素:40atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.5であった。また、電子線照射部のスポット径は28mmであった。
【0187】
[実施例7]
実施例2と同様の方法で印刷部材前駆体の作製を行った。
【0188】
電子線描画装置を用い、上記印刷部材前駆体のジオルガノシロキサン単位含有層に窒素雰囲気中で加速電圧:100kV、線量:1200kGyにて電子線描画を行うことで印刷部材を得た。
【0189】
電子線照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出され、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認された。
【0190】
電子線照射部の平均弾性率は870MPa、電子線未照射部の平均弾性率は1MPaであり、その差は869MPaであった。また、電子線照射部の元素濃度比率は珪素:24atom%、酸素:38atom%、炭素:38atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.6であった。また、電子線照射部のスポット径は30mmであった。
【0191】
印刷開始から500m付近の印刷物を抜き出して観察したところ、AM600lpi(解像度:8500dpi)の網点部分において0.5~99.5%の網点が忠実に再現されており、従来の一般的なオフセット印刷部材(AM175lpi、解像度:2400dpi、再現可能網点:1~99%)に比べ著しく高精細な画像を再現できることが確認された。
【0192】
[実施例8]
実施例1と同様の方法で印刷部材前駆体の作製を行った。
【0193】
得られた印刷部材前駆体のジオルガノシロキサン単位含有層上に、印刷パターン状の開口部を有するマスクを配置し、真空中でXeエキシマランプ(ウシオ電気(株)製)を用いて、波長:172nmの紫外線を露光量:600mJ/cmにてパターン状に照射することで、インキ反発部およびインキ着肉部からなる層を有する印刷部材を得た。
【0194】
インキ着肉部(紫外線照射部)をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出され、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認された。
【0195】
紫外線照射部の平均弾性率は730MPa、紫外線未照射部の平均弾性率は1MPaであり、その差は729MPaであった。また、紫外線照射部の元素濃度比率は珪素:25atom%、酸素:43atom%、炭素:32atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.7であった。また、紫外線照射部のスポット径は28mmであった。
【0196】
[実施例9]
実施例2と同様の方法で印刷部材前駆体の作製を行った。
【0197】
得られた印刷部材前駆体のジオルガノシロキサン単位含有層上に、印刷パターン状の開口部を有するマスクを配置し、真空中でXeエキシマランプを用いて、波長:172nmの紫外線を露光量:600mJ/cmにてパターン状に照射することで印刷部材を得た。
【0198】
紫外線照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出され、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認された。
【0199】
紫外線照射部の平均弾性率は720MPa、紫外線未照射部の平均弾性率は1MPaであり、その差は719MPaであった。また、紫外線照射部の元素濃度比率は珪素:25atom%、酸素:43atom%、炭素:32atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.7であった。また、紫外線照射部のスポット径は28mmであった。
【0200】
[実施例10]
実施例3と同様の方法で印刷部材前駆体の作製を行った。
【0201】
得られた印刷部材前駆体のジオルガノシロキサン単位含有層上に、印刷パターン状の開口部を有するマスクを配置し、真空中でXeエキシマランプを用いて、波長:172nmの紫外線を露光量:600mJ/cmにてパターン状に照射することで印刷部材を得た。
【0202】
紫外線照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出され、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認された。
【0203】
紫外線照射部の平均弾性率は740MPa、紫外線未照射部の平均弾性率は2MPaであり、その差は738MPaであった。また、紫外線照射部の元素濃度比率は珪素:25atom%、酸素:42atom%、炭素:33atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.7であった。また、紫外線照射部のスポット径は28mmであった。
【0204】
[実施例11]
実施例4と同様の方法で印刷部材前駆体の作製を行った。
【0205】
得られた印刷部材前駆体のジオルガノシロキサン単位含有層上に、印刷パターン状の開口部を有するマスクを配置し、真空中でXeエキシマランプを用いて、波長:172nmの紫外線を露光量:600mJ/cmにてパターン状に照射することで印刷部材を得た。
【0206】
紫外線照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出され、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認された。
【0207】
紫外線照射部の平均弾性率は720MPa、紫外線未照射部の平均弾性率は1MPaであり、その差は719MPaであった。また、紫外線照射部の元素濃度比率は珪素:25atom%、酸素:43atom%、炭素:32atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.7であった。また、紫外線照射部のスポット径は28mmであった。
【0208】
[実施例12]
実施例2と同様の方法で印刷部材前駆体の作製を行った。
【0209】
エキシマレーザー描画装置(波長:157nm)を用い、上記印刷部材前駆体のジオルガノシロキサン単位含有層に真空中で露光量:300mJ/cmにて紫外線描画を行うことで印刷部材を得た。
【0210】
紫外線照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出され、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認された。
【0211】
紫外線照射部の平均弾性率は1870MPa、紫外線未照射部の平均弾性率は1MPaであり、その差は1869MPaであった。また、紫外線照射部の元素濃度比率は珪素:29atom%、酸素:57atom%、炭素:14atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は2.0であった。また、紫外線照射部のスポット径は35mmであった。
【0212】
印刷開始から500m付近の印刷物を抜き出して観察したところ、AM600lpi(解像度:8500dpi)の網点部分において0.5~99.5%の網点が忠実に再現されており、従来の一般的なオフセット印刷部材(AM175lpi、解像度:2400dpi、再現可能網点:1~99%)に比べ著しく高精細な画像を再現できることが確認された。
【0213】
[実施例13]
実施例2と同様の方法で印刷部材前駆体の作製を行った。
【0214】
得られた印刷部材前駆体のジオルガノシロキサン単位含有層上に、印刷パターン状の開口部を有するマスクを配置し、真空中でArエキシマランプ(ウシオ電気(株)製)を用いて、波長:126nmの紫外線を露光量:600mJ/cmにてパターン状に照射することで印刷部材を得た。
【0215】
紫外線照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出され、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認された。
【0216】
紫外線照射部の平均弾性率は720MPa、紫外線未照射部の平均弾性率は1MPaであり、その差は719MPaであった。また、紫外線照射部の元素濃度比率は珪素:25atom%、酸素:43atom%、炭素:32atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.7であった。また、紫外線照射部のスポット径は28mmであった。
【0217】
[実施例14]
実施例2と同様の方法で印刷部材前駆体の作製を行った。
【0218】
得られた印刷部材前駆体のジオルガノシロキサン単位含有層上に、印刷パターン状の開口部を有するマスクを配置し、真空中でKrエキシマランプ(ウシオ電気(株)製)を用いて、波長:146nmの紫外線を露光量:600mJ/cmにてパターン状に照射することで印刷部材を得た。
【0219】
紫外線照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出され、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認された。
【0220】
紫外線照射部の平均弾性率は720MPa、紫外線未照射部の平均弾性率は1MPaであり、その差は719MPaであった。また、紫外線照射部の元素濃度比率は珪素:25atom%、酸素:43atom%、炭素:32atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.7であった。また、紫外線照射部のスポット径は28mmであった。
【0221】
[実施例15]
実施例2と同様の方法で印刷部材前駆体の作製を行った。
【0222】
得られた印刷部材前駆体のジオルガノシロキサン単位含有層上に、印刷パターン状の開口部を有するマスクを配置し、真空中でArFエキシマランプ(ウシオ電気(株)製)を用いて、波長:193nmの紫外線を露光量:600mJ/cmにてパターン状に照射することで印刷部材を得た。
【0223】
紫外線照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出され、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認された。
【0224】
紫外線照射部の平均弾性率は650MPa、紫外線未照射部の平均弾性率は1MPaであり、その差は649MPaであった。また、紫外線照射部の元素濃度比率は珪素:25atom%、酸素:42atom%、炭素:33atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.7であった。また、紫外線照射部のスポット径は27mmであった。
【0225】
[実施例16]
紫外線の照射を真空中から大気圧中(N:100%)に変更した以外は実施例9と同様の方法で印刷部材の作製、評価を行った。
【0226】
紫外線照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出され、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認された。
【0227】
紫外線照射部の平均弾性率は700MPa、紫外線未照射部の平均弾性率は1MPaであり、その差は699MPaであった。また、紫外線照射部の元素濃度比率は珪素:25atom%、酸素:42atom%、炭素:33atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.7であった。また、紫外線照射部のスポット径は28mmであった。
【0228】
[実施例17]
紫外線の照射を真空中から大気圧中(大気:100%)に変更した以外は実施例9と同様の方法で印刷部材の作製、評価を行った。
【0229】
紫外線照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出され、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認された。
【0230】
紫外線照射部の平均弾性率は110MPa、紫外線未照射部の平均弾性率は1MPaであり、その差は109MPaであった。また、紫外線照射部の元素濃度比率は珪素:24atom%、酸素:31atom%、炭素:45atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.3であった。また、紫外線照射部のスポット径は21mmであった。
【0231】
[実施例18]
ジオルガノシロキサン単位含有層の平均膜厚を20.0μmから40.0μmに変更したこと以外は実施例9と同様の方法で印刷部材の作製、評価を行った。
【0232】
紫外線照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出され、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認された。
【0233】
紫外線照射部の平均弾性率は720MPa、紫外線未照射部の平均弾性率は1MPaであり、その差は719MPaであった。また、紫外線照射部の元素濃度比率は珪素:25atom%、酸素:43atom%、炭素:32atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.7であった。紫外線未照射部の元素濃度比率は珪素:24atom%、酸素:26atom%、炭素:50atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.1であった。また、紫外線照射部のスポット径は28mmであった。
【0234】
[実施例19]
ジオルガノシロキサン単位含有層の平均膜厚を20.0μmから10.0μmに変更したこと以外は実施例9と同様の方法で印刷部材の作製、評価を行った。
【0235】
紫外線照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出され、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認された。
【0236】
紫外線照射部の平均弾性率は720MPa、紫外線未照射部の平均弾性率は1MPaであり、その差は719MPaであった。また、紫外線照射部の元素濃度比率は珪素:25atom%、酸素:43atom%、炭素:32atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.7であった。紫外線未照射部の元素濃度比率は珪素:24atom%、酸素:26atom%、炭素:50atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.1であった。また、紫外線照射部のスポット径は28mmであった。
【0237】
[実施例20]
ジオルガノシロキサン単位含有層の平均膜厚を20.0μmから5.0μmに変更したこと以外は実施例9と同様の方法で印刷部材の作製、評価を行った。
【0238】
紫外線照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出され、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認された。
【0239】
紫外線照射部の平均弾性率は720MPa、紫外線未照射部の平均弾性率は1MPaであり、その差は719MPaであった。また、紫外線照射部の元素濃度比率は珪素:25atom%、酸素:43atom%、炭素:32atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.7であった。紫外線未照射部の元素濃度比率は珪素:24atom%、酸素:26atom%、炭素:50atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.1であった。また、紫外線照射部のスポット径は28mmであった。
【0240】
[実施例21]
ジオルガノシロキサン単位含有層の平均膜厚を20.0μmから2.5μmに変更したこと以外は実施例9と同様の方法で印刷部材の作製、評価を行った。
【0241】
紫外線照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出され、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認された。
【0242】
紫外線照射部の平均弾性率は720MPa、紫外線未照射部の平均弾性率は1MPaであり、その差は719MPaであった。また、紫外線照射部の元素濃度比率は珪素:25atom%、酸素:43atom%、炭素:32atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.7であった。紫外線未照射部の元素濃度比率は珪素:24atom%、酸素:26atom%、炭素:50atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.1であった。また、紫外線照射部のスポット径は28mmであった。
【0243】
[実施例22]
厚さ0.25mmの脱脂したポリエチレンテレフタレートフィルム:“ルミラー(登録商標)”#250-X10s(東レ(株)製)上に、下記のプライマー層形成用組成物-2を塗布し、100℃で30秒間乾燥し、平均膜厚0.5μmのプライマー層を設けた。
【0244】
<プライマー層形成用組成物-2>
容器中に下記(a-6)、(b-6)および(c-6)成分を投入し、成分が均一になるまで攪拌混合した。得られた混合液中に(d-6)成分を投入し、5分間攪拌することでプライマー層形成用組成物-2を得た。
(a-6)メチルエチルケトン:900.0質量部
(b-6)エポキシ樹脂:“jER”(登録商標)1007(三菱化学(株)製):90.0質量部
(c-6)ヘキサメチレンジイソシアネート:10.0質量部
(d―6)ジブチル錫ジアセテート:0.1質量部。
【0245】
次いで、実施例2に記載のジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物-2を前記プライマー層上に塗布し、100℃で60秒間加熱し、平均膜厚20.0μmのジオルガノシロキサン単位含有層を設けることで印刷部材前駆体を得た。
【0246】
得られた印刷部材前駆体のジオルガノシロキサン単位含有層上に、印刷パターン状の開口部を有するマスクを配置し、真空中でXeエキシマランプを用いて、波長:172nmの紫外線を露光量:600mJ/cmにてパターン状に照射することで印刷部材を得た。
【0247】
紫外線未照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1256、1085、790cm-1にシグナルが検出され、ジメチルシロキサン単位の存在が確認された。また、3055、1599、1408、960cm-1にはシグナルが検出されず、ビニル基の存在は確認できなかった。一方、紫外線照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出され、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認された。
【0248】
紫外線照射部の平均弾性率は720MPa、紫外線未照射部の平均弾性率は1MPaであり、その差は719MPaであった。また、紫外線照射部の元素濃度比率は珪素:25atom%、酸素:43atom%、炭素:32atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.7であった。紫外線未照射部の元素濃度比率は珪素:24atom%、酸素:26atom%、炭素:50atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.1であった。また、紫外線照射部のスポット径は28mmであった。
【0249】
[実施例23]
円筒状アルミ合金支持体の表面に、円筒スリットダイコーター(東レエンジニアリング(株)製)を用いて実施例1に記載のプライマー層形成用組成物-1を塗布し、200℃で300秒間乾燥し、平均膜厚10μmのプライマー層を設けた。
【0250】
次いで、円筒スリットダイコーターを用いて実施例2に記載のジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物-2を前記プライマー層上に塗布し、140℃で300秒間加熱し、平均膜厚20.0μmのジオルガノシロキサン単位含有層を設けることで印刷部材前駆体を得た。
【0251】
得られた印刷部材前駆体のジオルガノシロキサン単位含有層上に、印刷パターン状の開口部を有するマスクを配置し、真空中でXeエキシマランプを用いて、波長:172nmの紫外線を露光量:600mJ/cmにてパターン状に照射することで印刷部材を得た。
【0252】
上記印刷部材を版胴として用い、またブランケットとして筒状ブランケット(表面ゴム:NBR、(株)金陽社製)を用いた以外は、前記<各実施例・比較例における評価方法>の(3)印刷方法と同様の条件で印刷し、印刷物の評価を行った。
【0253】
本実施例では、ブランケット・印刷部材ともに繋ぎ目のない円筒部材を用いているため、ステップバック印刷方式(間欠式)を用いることなく、通常の連続印刷方式でのシームレス印刷が可能であった。
【0254】
[実施例24]
ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物-1を、下記ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物-5に変更したこと以外は実施例8と同様の方法で印刷部材の作製、評価を行った。
【0255】
<ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物-5>
容器中に下記(a-7)および(b-7)成分を投入し、成分が均一になるまで攪拌混合した。得られた溶液を乾燥窒素で20分間バブリングすることで溶液中の水分を除去した。得られた溶液中に(c-7)および(d-7)成分を投入して10分間攪拌混合した。塗布直前に(e-7)成分を投入し攪拌混合することでジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物-5を得た。
(a-7)“アイソパー”(登録商標)E:299.00質量部
(b-7)分子内に2個以上のシラノール基を有するシロキサン化合物(両末端ジメチルヒドロキシシロキシ-ポリジメチルシロキサン):TF-13(東レ・ダウコーニング(株)製、重量平均分子量:400,000、分子内のシラノール基数:2.0個):99.98質量部
(c-7)ビニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン:0.75質量部
(d-7)テトラキス(メチルエチルケトキシミノ)シラン(固形分濃度:50質量%):0.25質量部
(e-7)ジブチル錫ジアセテート:0.02質量部。
【0256】
紫外線未照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1256、1085、790cm-1にシグナルが検出され、ジメチルシロキサン単位の存在が確認された。また、3055、1599、1408、960cm-1にはシグナルが検出されず、ビニル基の存在は確認できなかった。一方、紫外線照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出され、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認された。
【0257】
また、紫外線未照射部分のジオルガノシロキサン単位濃度は100質量%、珪素濃度は40.8質量%であった。
【0258】
紫外線照射部の平均弾性率は710MPa、紫外線未照射部の平均弾性率は0.004MPaであり、その差は709.996MPaであった。また、紫外線照射部の元素濃度比率は珪素:25atom%、酸素:42atom%、炭素:33atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.7であった。紫外線未照射部の元素濃度比率は珪素:24atom%、酸素:26atom%、炭素:50atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.1であった。また、紫外線照射部のスポット径は28mmであった。
【0259】
[実施例25]
ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物-2を、下記ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物-6に変更したこと以外は実施例9と同様の方法で印刷部材の作製、評価を行った。
【0260】
<ジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物-6>
容器中に下記(a-8)、(b-8)、(c-8)および(d-8)成分を投入し、成分が均一になるまで攪拌混合した。得られた溶液を乾燥窒素で20分間バブリングすることで溶液中の水分を除去した。得られた溶液中に(e-8)成分を投入して10分間攪拌混合した。塗布直前に(f-8)成分を投入し攪拌混合することでジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物-6を得た。
(a-8)“アイソパー”(登録商標)E:295.00質量部
(b-8)DMS-V35:75.26質量部
(c-8)HMS-301:4.96質量部
(d-8)チタニア粒子:ST-21(石原産業(株)製、X線粒径:20nm):17.3質量部
(e-8)ビニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン:2.48質量部
(f-8)XC94-C4326:5.0質量部。
【0261】
なお、本実施例のジオルガノシロキサン単位含有層中におけるチタニア粒子の含有率は5体積%である。
【0262】
紫外線未照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1256、1085、790cm-1にシグナルが検出され、ジメチルシロキサン単位の存在が確認された。また、3055、1599、1408、960cm-1にはシグナルが検出されず、ビニル基の存在は確認できなかった。一方、紫外線照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出され、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認された。
【0263】
また、紫外線未照射部分のジオルガノシロキサン単位濃度は80質量%、珪素濃度は30.4質量%であった。
【0264】
紫外線照射部の平均弾性率は740MPa、紫外線未照射部の平均弾性率は13MPaであり、その差は727MPaであった。また、紫外線照射部の元素濃度比率は珪素:23atom%、酸素:45atom%、炭素:28atom%、チタニウム:4atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.9であった。紫外線未照射部の元素濃度比率は珪素:22atom%、酸素:30atom%、炭素:44atom%、チタニウム:4atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.4であった。また、紫外線照射部のスポット径は28mmであった。
【0265】
[実施例26]
電子線の線量を1200kGyから100kGyに変更した以外は実施例3と同様の方法で印刷部材の作製、評価を行った。
【0266】
電子線照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出され、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認された。
【0267】
電子線照射部の平均弾性率は210MPa、電子線未照射部の平均弾性率は2MPaであり、その差は208MPaであった。また、電子線照射部の元素濃度比率は珪素:24atom%、酸素:30atom%、炭素:46atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.3であった。また、電子線照射部のスポット径は20mmであった。
【0268】
[実施例27]
電子線の線量を1200kGyから3000kGyに変更した以外は実施例2と同様の方法で印刷部材の作製、評価を行った。
【0269】
電子線照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出され、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認された。
【0270】
電子線照射部の平均弾性率は9700MPa、電子線未照射部の平均弾性率は1MPaであり、その差は9699MPaであった。また、電子線照射部の元素濃度比率は珪素:32atom%、酸素:64atom%、炭素:4atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は2.0であった。また、電子線照射部のスポット径は37mmであった。
【0271】
[実施例28]
電子線の加速電圧を100kVから50kVに変更した以外は実施例2と同様の方法で印刷部材の作製、評価を行った。
【0272】
電子線照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出され、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認された。
【0273】
電子線照射部の平均弾性率は900MPa、電子線未照射部の平均弾性率は1MPaであり、その差は899MPaであった。また、電子線照射部の元素濃度比率は珪素:24atom%、酸素:39atom%、炭素:37atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.6であった。また、電子線照射部のスポット径は31mmであった。
【0274】
[実施例29]
電子線の加速電圧を100kVから150kVに変更した以外は実施例2と同様の方法で印刷部材の作製、評価を行った。
【0275】
電子線照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出され、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認された。
【0276】
電子線照射部の平均弾性率は690MPa、電子線未照射部の平均弾性率は1MPaであり、その差は689MPaであった。また、電子線照射部の元素濃度比率は珪素:24atom%、酸素:36atom%、炭素:40atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.5であった。また、電子線照射部のスポット径は28mmであった。
【0277】
[実施例30]
紫外線の露光量を600mJ/cmから300mJ/cmに変更した以外は実施例9と同様の方法で印刷部材の作製、評価を行った。
【0278】
紫外線照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出され、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認された。
【0279】
紫外線照射部の平均弾性率は120MPa、紫外線未照射部の平均弾性率は1MPaであり、その差は119MPaであった。また、紫外線照射部の元素濃度比率は珪素:25atom%、酸素:32atom%、炭素:43atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.3であった。また、紫外線照射部のスポット径は21mmであった。
【0280】
[実施例31]
紫外線の露光量を600mJ/cmから3000mJ/cmに変更した以外は実施例9と同様の方法で印刷部材の作製、評価を行った。
【0281】
紫外線照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出され、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認された。
【0282】
紫外線照射部の平均弾性率は9500MPa、紫外線未照射部の平均弾性率は1MPaであり、その差は9499MPaであった。また、紫外線照射部の元素濃度比率は珪素:31atom%、酸素:62atom%、炭素:7atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は2.0であった。また、紫外線照射部のスポット径は37mmであった。
【0283】
[比較例1]
実施例2と同様の方法で印刷部材前駆体の作製を行った。
【0284】
得られた印刷部材前駆体のジオルガノシロキサン単位含有層上に、印刷パターン状の開口部を有するマスクを配置し、真空中でXeBrエキシマランプ(ウシオ電気(株)製)を用いて、波長:283nmの紫外線を露光量:3000mJ/cmにてパターン状に照射することで印刷部材を得た。
【0285】
紫外線照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出されず、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認できなかった。
【0286】
紫外線照射部の平均弾性率は3MPa、紫外線未照射部の平均弾性率は1MPaであり、その差は2MPaであった。また、紫外線照射部の元素濃度比率は珪素:24atom%、酸素:26atom%、炭素:50atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.1であった。また、紫外線照射部のスポット径は8mmであった。
【0287】
得られた印刷部材を用いて印刷したところ、印刷部材の紫外線照射部分にインキの付着が一切認められず、印刷部材中にインキ着肉部が形成されていなかった。
【0288】
[比較例2]
実施例2と同様の方法で印刷部材前駆体の作製を行った。
【0289】
得られた印刷部材前駆体のジオルガノシロキサン単位含有層上に、印刷パターン状の開口部を有するマスクを配置し、真空中でXeClエキシマランプ(ウシオ電気(株)製)を用いて、波長:308nmの紫外線を露光量:3000mJ/cmにてパターン状に照射することで印刷部材を得た。
【0290】
紫外線照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出されず、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認できなかった。
【0291】
紫外線照射部の平均弾性率は2MPa、紫外線未照射部の平均弾性率は1MPaであり、その差は1MPaであった。また、紫外線照射部の元素濃度比率は珪素:24atom%、酸素:26atom%、炭素:50atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.1であった。また、紫外線照射部のスポット径は8mmであった。
【0292】
得られた印刷部材を用いて印刷したところ、印刷部材の紫外線照射部分にインキの付着が一切認められず、印刷部材中にインキ着肉部が形成されていなかった。
【0293】
[比較例3]
実施例2と同様の方法で印刷部材前駆体の作製を行った。
【0294】
得られた印刷部材前駆体のジオルガノシロキサン単位含有層上に、印刷パターン状の開口部を有するマスクを配置し、真空中でXeIエキシマランプ(ウシオ電気(株)製)を用いて、波長:253nmの紫外線を露光量:3000mJ/cmにてパターン状に照射することで印刷部材を得た。
【0295】
紫外線照射部をFT-IR-ATR分析した結果、1271、1133、995cm-1にシグナルが検出されず、シルセスキオキサン構造および/またはガラス構造を含むことが確認できなかった。
【0296】
紫外線照射部の平均弾性率は2MPa、紫外線未照射部の平均弾性率は1MPaであり、その差は1MPaであった。また、紫外線照射部の元素濃度比率は珪素:24atom%、酸素:26atom%、炭素:50atom%であり、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は1.1であった。また、紫外線照射部のスポット径は8mmであった。
【0297】
得られた印刷部材を用いて印刷したところ、印刷部材の紫外線照射部分にインキの付着が一切認められず、印刷部材中にインキ着肉部が形成されていなかった。
【0298】
実施例1~31および比較例1~3について、評価結果を表1に示す。
【0299】
【表1】
【符号の説明】
【0300】
1 支持体
2 インキ反発部およびインキ着肉部からなる層
3 インキ反発部
4 インキ着肉部
5 インキローラー
6 印刷部材
7 版胴
8 ブランケット胴
9 被印刷媒体
10 圧胴
図1
図2
図3