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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】熱制御デバイス
(51)【国際特許分類】
   F28F 13/00 20060101AFI20240709BHJP
   F28F 21/08 20060101ALI20240709BHJP
   F28F 27/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
F28F13/00
F28F21/08 Z
F28F27/00 511Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020180103
(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公開番号】P2022071254
(43)【公開日】2022-05-16
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】小宅 教文
(72)【発明者】
【氏名】福井 健二
(72)【発明者】
【氏名】山内 崇史
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-093530(JP,A)
【文献】特開平02-171594(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0277324(US,A1)
【文献】特開平03-099197(JP,A)
【文献】特開2019-125701(JP,A)
【文献】特開2019-019747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D20/00,21/00
F28F13/00-13/18,21/08,27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と第2部材との間における熱の移動を制御する熱制御デバイスであって、
前記第1部材と前記第2部材のそれぞれに接続される一対の部材であって、前記一対の部材の一方の部材と他方の部材との間隔が変更可能な一対の部材と、
前記一対の部材のそれぞれに接続され、自身の温度変化によって変形する変形部材と、
前記第1部材、前記第2部材、および、前記一対の部材とは別に設けられ、前記変形部材に熱を供給することで、前記変形部材の温度を変更可能な熱供給部と、を備え、
前記変形部材の変形によって前記一方の部材と前記他方の部材との前記間隔が変更されることで、前記第1部材と前記第2部材との間における熱流量が変化する、
熱制御デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の熱制御デバイスであって、
前記変形部材は、
自身の温度変化によって膨張または収縮する熱変形部であって、前記熱供給部からの熱が供給される熱変形部と、
前記熱変形部と前記一方の部材とに接続される第1断熱部と、
前記熱変形部と前記他方の部材とに接続される第2断熱部と、を備える、
熱制御デバイス。
【請求項3】
請求項2に記載の熱制御デバイスであって、
前記熱変形部は、形状記憶合金から形成される、
熱制御デバイス。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の熱制御デバイスは、さらに、
前記一方の部材と前記他方の部材との前記間隔を調整する調整部を備え、
前記調整部は、
前記変形部材の変形によって前記一方の部材と前記他方の部材との前記間隔が広げられるとき、前記間隔が広くなることを抑制し、
前記変形部材の変形によって前記一方の部材と前記他方の部材との前記間隔が狭められるとき、前記間隔が狭くなることを抑制する、
熱制御デバイス。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の熱制御デバイスであって、
前記一方の部材は、前記第1部材に接続される一方の接続部と、前記一方の接続部から前記他方の部材に向かって延伸する一方の延伸部と、を備え、
前記他方の部材は、前記第2部材に接続される他方の接続部と、前記他方の接続部から前記一方の部材に向かって延伸しており、先端が前記一方の延伸部の先端と前記一方の接続部との間に位置する他方の延伸部と、を備え、
前記一方の延伸部の先端と前記他方の延伸部の先端との間には、前記変形部材の変形によって変更される前記間隔が形成されており、
前記一方の接続部と前記他方の接続部との間の距離が前記変形部材の変形によって長くなるとき、前記間隔は狭くなる、
熱制御デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱制御デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、2つの部材の間における熱の移動を制御する熱制御デバイスが知られている。例えば、非特許文献1、2には、2つの部材のそれぞれに接続される一対の伝熱部材の間隔を変更することで、2つの部材の間における熱流量を制御する技術が開示されている。非特許文献3には、一対の伝熱部材の一方が自身の温度によって放射率が変化することで、2つの部材の間における輻射伝熱での熱流量を制御する技術が開示されている
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Menglong Hao、Efficient thermal management of Li-ion batteries with a passive interfacial thermal regulator based on a shape memory alloy、Nature Energy、2018、vol.3、p.899-906
【文献】Mahmoud Elzouka、High Temperature Near-Field NanoThermoMechanical Rectification & Sidy Ndao、Scientific Reports、2017、vol.7、Article number:44901
【文献】Philippe Ben-Abdallah、Near-Field Thermal Transistor、PHYSICAL REVIEW LETTERS、2014、vol.112, Issue 4、044301
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような先行技術によっても、熱制御デバイスにおいて、熱が移動する2つの部材のそれぞれの温度に影響されることなく、2つの部材の間における熱流量を制御する技術については、なお改善の余地があった。例えば、非特許文献1の技術では、一対の伝熱部材の間隔は、一対の伝熱部材のそれぞれに接続される接続部材が変形することで変更される。この接続部材は、一対の伝熱部材のそれぞれの温度に応じて自身の温度が変化することで変形するため、例えば、一対の伝熱部材のいずれかが高温になることで接続部材が収縮すると、一対の伝熱部材は接触し、伝導伝熱によって熱が伝わる。しかしながら、一対の伝熱部材のいずれもが比較的低温である場合、伝熱部材は伸びたままで一対の伝熱部材には間隔が形成されるため、2つの部材の間において熱は移動しにくくなる。このため、非特許文献1の技術では、2つの部材のそれぞれの温度に影響されることなく、2つの部材の間における熱流量を制御することは困難である。非特許文献2の技術では、一対の伝熱部材の一方が自身の温度に応じて変形することで、一対の伝熱部材の間隔が変更される。すなわち、2つの部材の間における熱流量は、一対の伝熱部材の一方の温度によって決定されるため、熱が移動する2つの部材のそれぞれの温度に影響されることなく、2つの部材の間における熱流量を制御することは困難である。また、非特許文献2、3の技術では、輻射伝熱によって2つの部材の間において熱が移動する。このため、非特許文献2、3の技術は、輻射伝熱が有効な比較的高温での熱の移動にしか適用できず、例えば、100℃以下の比較的低温において熱を移動させることは困難である。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、2つの部材の間における熱の移動を制御する熱制御デバイスにおいて、2つの部材の温度に影響されることなく、熱流量を制御する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、第1部材と第2部材との間における熱の移動を制御する熱制御デバイスが提供される。この熱制御デバイスは、前記第1部材と前記第2部材のそれぞれに接続される一対の部材であって、前記一対の部材の一方の部材と他方の部材との間隔が変更可能な一対の部材と、前記一対の部材のそれぞれに接続され、自身の温度変化によって変形する変形部材と、前記変形部材に熱を供給することで、前記変形部材の温度を変更可能な熱供給部と、を備え、前記変形部材の変形によって前記一方の部材と前記他方の部材との前記間隔が変更されることで、前記第1部材と前記第2部材との間における熱流量が変化する。
【0008】
この構成によれば、一対の部材のそれぞれに接続される変形部材は、熱供給部から供給される熱による自身の温度変化に応じて変形する。変形部材が変形すると、一方の部材と他方の部材との間隔が変更され、第1部材と第2部材との間における熱流量が変化する。例えば、変形部材が温度の上昇によって収縮する場合、熱供給部が供給する熱によって変形部材が加熱されると、離れた状態の一方の部材と他方の部材とが接触する。これにより、一対の部材において、高温側から低温側に伝導伝熱によって熱を移動させることができる。また、熱供給部からの熱の供給がない場合、変形部材は高温にならないため伸びたままとなり、一方の部材と他方の部材とは離れた状態となる。これにより、一対の部材に高温側の部材と低温側の部材とがあっても、熱は移動しにくくなる。このように、熱供給部が供給する熱によって一対の部材の間隔が変更されるため、第1部材と第2部材とのそれぞれの温度に影響されることなく、一方の部材と他方の部材との間における伝熱の形態を変更することができる。したがって、第1部材と第2部材のそれぞれの温度によらず、第1部材と第2部材との間における熱流量を制御することができる。
【0009】
(2)上記形態の熱制御デバイスにおいて、前記変形部材は、自身の温度変化によって膨張または収縮する熱変形部であって、前記熱供給部からの熱が供給される熱変形部と、前記熱変形部と前記一方の部材とに接続される第1断熱部と、前記熱変形部と前記他方の部材とに接続される第2断熱部と、を備えてもよい。この構成によれば、自身の温度変化によって膨張または収縮する熱変形部は、第1断熱部と第2断熱部とを介して、一方の部材と他方の部材とのそれぞれに接続されている。これにより、一方の部材や他方の部材からの熱は、熱変形部に伝わりにくくなる。したがって、一方の部材と他方の部材との間隔を熱供給部が供給する熱によって制御できるため、第1部材と第2部材との間における熱流量を高精度に制御することができる。
【0010】
(3)上記形態の熱制御デバイスにおいて、前記熱変形部は、形状記憶合金から形成されてもよい。この構成によれば、熱変形部は、形状記憶合金から形成されるため、熱供給部から供給される熱によって変形した後に熱の供給が停止されることで初期状態に戻る復元力を有する。したがって、一方の部材と他方の部材との間隔を繰り返し変更することができるため、第1部材と第2部材との間における熱流量の制御を繰り返すことができる。
【0011】
(4)上記形態の熱制御デバイスは、さらに、前記一方の部材と前記他方の部材との前記間隔を調整する調整部を備え、前記調整部は、前記変形部材の変形によって前記一方の部材と前記他方の部材との前記間隔が広げられるとき、前記間隔が広くなることを抑制し、前記変形部材の変形によって前記一方の部材と前記他方の部材との前記間隔が狭められるとき、前記間隔が狭くなることを抑制してもよい。この構成によれば、熱制御デバイスは、一方の部材と他方の部材との間隔を調整する調整部を備えている。この調整部は、変形部材の変形によって間隔が広げられるとき間隔が広くなることを抑制し、変形部材の変形によって間隔が狭められるとき間隔が狭くなることを抑制する。すなわち、調整部は、一方の部材と他方の部材との間隔が初期状態に戻るための復元力を有する。これにより、一方の部材と他方の部材との間隔を繰り返し変更することができるため、第1部材と第2部材との間における熱流量の制御を繰り返すことができる。
【0012】
(5)上記形態の熱制御デバイスにおいて、前記一方の部材は、前記第1部材に接続される一方の接続部と、前記一方の接続部から前記他方の部材に向かって延伸する一方の延伸部と、を備え、前記他方の部材は、前記第2部材に接続される他方の接続部と、前記他方の接続部から前記一方の部材に向かって延伸しており、先端が前記一方の延伸部の先端と前記一方の接続部との間に位置する他方の延伸部と、を備え、前記一方の延伸部の先端と前記他方の延伸部の先端との間には、前記変形部材の変形によって変更される前記間隔が形成されており、前記一方の接続部と前記他方の接続部との間の距離が前記変形部材の変形によって長くなるとき、前記間隔は狭くなってもよい。この構成によれば、他方の延伸部の先端は、一方の延伸部の先端と一方の接続部との間に位置している。一方の部材の先端と他方の部材の先端との間には、変形部材の変形によって変更される間隔が形成されている。これにより、一方の接続部と他方の接続部との間の距離が変形部材の変形によって長くなるとき、間隔を狭くすることができる。例えば、温度が上昇することで変形部材が膨張する場合でも、変形部材の膨張によって一方の部材と他方の部材とを接触させることができる。
【0013】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、熱制御デバイスを備える装置、熱制御デバイスおよび熱制御デバイスを備える装置の制御方法、熱制御デバイスによる熱流の制御方法、これらの制御方法を実行させるコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、そのコンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態の熱制御デバイスの模式図である。
図2】第1実施形態の熱制御デバイスの作動を説明する図である。
図3】第2実施形態の熱制御デバイスの作動を説明する図である。
図4】第3実施形態の熱制御デバイスの模式図である。
図5】第3実施形態の熱制御デバイスの作動を説明する図である。
図6】第4実施形態の熱制御デバイスの作動を説明する図である。
図7】第5実施形態の熱制御デバイスの模式図である。
図8】第6実施形態の熱制御デバイスの模式図である。
図9】第7実施形態の熱制御デバイスの斜視図である
図10】第7実施形態の熱制御デバイスの正面図と側面図である。
図11】第7実施形態の熱制御デバイスについての第1の計算結果である。
図12】第7実施形態の熱制御デバイスについての第2の計算結果である。
図13】第1実施形態の熱制御デバイスの変形例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の熱制御デバイス1の模式図である。第1実施形態の熱制御デバイス1は、一対の部材10、20と、変形部材30と、熱供給部35と、を備える。本実施形態の熱制御デバイス1は、図1に示すように、離れた位置に配置されている第1部材Aと第2部材Bとの間における熱の移動を制御する。熱制御デバイス1は、第1部材Aと第2部材Bとの間における熱流量を抑制する。
【0016】
一対の部材10、20のうちの一方の部材10は、略直方体形状の部材であって、連結部11を介して第1部材Aに熱的に接続されている。一方の部材10は、熱伝導性が優れている金属、例えば、銅などから形成されており、自身の温度が第1部材Aと同じ程度の温度となるように連結部11によって第1部材Aに接続されている。一対の部材10、20のうちの他方の部材20は、一方の部材10に比べ小さい略直方体形状の部材であって、連結部21を介して第2部材Bに熱的に接続されている。他方の部材20は、第2部材Bとの熱的な接続を維持したまま、一方の部材10に対して移動可能である(図1の白抜き矢印M20)。他方の部材20は、一方の部材10と同様に、熱伝導性が優れている金属、例えば、銅などから形成されており、自身の温度が第2部材Bと同じ程度の温度になるように連結部21によって第2部材Bに接続されている。一方の部材10と他方の部材20とは、図1に示すように、一方の部材10の側面12と、他方の部材20の側面22とが対向するように配置されている。これにより、一方の部材10の側面12と他方の部材20の側面22との間隔Gpが変更可能である。図1の状態では、間隔Gpは、0より大きく、一方の部材10と他方の部材20とは離れた状態となっている。
【0017】
変形部材30は、熱変形部31と、第1断熱部32と、第2断熱部33と、を備える。熱変形部31は、自身の温度が上昇すると膨張し温度が低下すると収縮する材料、例えば、形状記憶合金から形成されている。本実施形態の熱変形部31は、棒状の部材であって、一方の部材10と他方の部材20との両方に亘るように配置されている。熱変形部31では、一方の側31aに第1断熱部32が設けられており、他方の側に第2断熱部33が設けられている。
【0018】
第1断熱部32と第2断熱部33とは、熱変形部31に比べ熱伝導性が低い材料から形成されている。第1断熱部32は、一方の部材10の上面13に接続する。第2断熱部33は、他方の部材20の上面23に接続する。第1断熱部32と第2断熱部33のそれぞれは、熱変形部31に比べ熱伝導性が低い材料から形成されている。なお、第1断熱部32と第2断熱部33は、熱変形部31と他方の部材20との間の熱流量を小さくするものであればよく、必ずしも断熱しなくてもよい。
【0019】
熱供給部35は、熱変形部31に接続されている、例えば、熱伝導性が高い金属から形成されるブロック状の部材である。本実施形態では、熱供給部35にはヒータ35aのような発熱体が内蔵されており、図示しない外部の電源から供給される電力によって熱を発生する。熱供給部35で発生する熱は、熱変形部31に伝導伝熱によって伝わり、熱変形部31の温度を上昇させる。このように、熱変形部31は、第1断熱部32を介して接続される一方の部材10の温度、および、第2断熱部33を介して接続される他方の部材20の温度にかかわらず、熱供給部35から供給される熱量に応じて変形する。本実施形態では、熱供給部35は、ヒータ35aが発生する熱によって「能動的に」温度を上昇させることで、熱変形部31に熱を伝えるとしたが、熱供給部35の温度を上昇させる方法は、これに限定されない。例えば、エンジンや電池などの他の装置で発生する熱が熱供給部35に伝わることで「受動的に」温度が上昇し、熱変形部31に熱が伝わってもよい。すなわち、他の装置の作動状況に応じて熱変形部31の温度が上昇してもよい。
【0020】
図2は、第1実施形態の熱制御デバイス1の作動を説明する図である。図2では、図面の都合から、第1部材Aと第2部材Bのそれぞれを省略し、連結部11、21のそれぞれに、第1部材Aの温度と第2部材Bの温度とを比較した状態(「高温側」、「低温側」)を示している。図2では、第1部材Aが「高温側」であり、第2部材Bが「低温側」となっている。図2(a)は、ヒータ35aが発熱し熱供給部35が比較的高温となっているときの熱制御デバイス1の状態を示している。本実施形態では、図2(a)に示す熱制御デバイスの1の状態を初期状態とする。高温となっている熱供給部35から熱変形部31に熱が供給されると、熱変形部31の温度は上昇し、熱変形部31は、膨張する。熱変形部31が膨張すると、一方の部材10と他方の部材20との間には、間隔Gpが形成される。この状態において、「高温側」の一方の部材10から「低温側」の他方の部材20には、対流伝熱と輻射伝熱によって熱が移動する(図2(a)の点線矢印H11参照)。しかしながら、比較的低温の条件下、例えば、100℃以下の条件下では、輻射伝熱では熱は移動しにくい。
【0021】
図2(b)は、ヒータ35aが発熱していないために熱供給部35が比較的低温となっているときの熱制御デバイス1の状態を示している。熱変形部31には熱供給部35から熱が供給されないため、熱変形部31の温度は低下する。これにより、熱変形部31は収縮するため、第2断熱部33を介して熱変形部31が接続されている他方の部材20は、白抜き矢印M21の方向に移動し、図2(b)に示すように、一方の部材10と接触する。この状態において、「高温側」の一方の部材10から「低温側」の他方の部材20に向かって、主に伝導伝熱によって熱が移動する(図2(b)の点線矢印H12参照)。なお、本実施形態では、図2(a)に示す熱制御デバイス1の状態を初期状態であるとしたが、熱制御デバイス1の初期状態を、ヒータ35aが発熱していないために熱供給部35が比較的低温となっているときの図2(b)に示す状態としてもよい。
【0022】
熱制御デバイス1では、熱供給部35から供給される熱量に応じた熱変形部31の変形の度合いによって伝熱の方法が異なる。このうち、輻射伝熱における熱流量は、伝導伝熱における熱流量に比べ小さいため、伝導伝熱によって熱が移動する図2(b)の状態では熱が移動しやすい一方、対流伝熱と輻射伝熱によって熱が移動する図2(a)の状態では熱が移動しにくい。このように、熱制御デバイス1は、第1部材Aと第2部材Bとのそれぞれの温度によらず、一方の部材10と他方の部材20との間における伝熱の形態を変更することができる。
【0023】
以上説明した、本実施形態の熱制御デバイス1によれば、一方の部材10と他方の部材20のそれぞれに接続される変形部材30は、熱供給部35から供給される熱による自身の温度変化に応じて変形する。変形部材30が変形すると、一方の部材10と他方の部材20との間隔Gpが変更され、第1部材Aと第2部材Bとの間における熱流量が変化する。本実施形態では、熱変形部31は、自身の温度が上昇すると膨張し温度が低下すると収縮する材料から形成されているため、熱供給部35が供給する熱によって変形部材30が加熱されると、一方の部材10と他方の部材20との間には間隔Gpが形成される。これにより、一方の部材10と他方の部材20に高温側と低温側があっても、熱は移動しにくくなる(図2(a)参照)。また、変形部材30の温度が低下すると変形部材30は収縮するため、一方の部材10と他方の部材20とが接触する。これにより、一方の部材10と他方の部材20において、高温側から低温側に伝導伝熱によって熱を移動させることができる(図2(b)参照)。このように、熱供給部35が供給する熱によって一方の部材10と他方の部材20との間隔Gpが変更されるため、第1部材Aと第2部材Bとのそれぞれの温度に影響されることなく、一方の部材10と他方の部材20の間における伝熱の形態を変更することができる。したがって、第1部材Aと第2部材Bのそれぞれの温度によらず、第1部材Aと第2部材Bとの間における熱流量を制御することができる。
【0024】
また、本実施形態の熱制御デバイス1によれば、自身の温度変化によって変形する熱変形部31は、両側が第1断熱部32と第2断熱部33とのそれぞれを介して、一方の部材10と他方の部材20とのそれぞれに接続されている。これにより、一方の部材10や他方の部材20からの熱は、熱変形部31に伝わりにくくなる。したがって、一方の部材10と他方の部材20との間隔Gpを、熱供給部35が供給する熱によって制御できるため、第1部材Aと第2部材Bとの間における熱流量を高精度に制御することができる。
【0025】
また、本実施形態の熱制御デバイス1によれば、変形部材30の変形によって一方の部材10と他方の部材20とを接触させることができるため、第1部材Aと第2部材Bとの間において、伝導伝熱によって熱を移動させることができる。これにより、輻射伝熱が有効でない比較的低温の条件下であっても、第1部材Aと第2部材Bとの間で、熱を移動させることができる。
【0026】
また、本実施形態の熱制御デバイス1によれば、伝導伝熱によって、第1部材Aと第2部材Bとの間で熱を移動させることができる。これにより、輻射伝熱に比べ多くの熱を第1部材Aと第2部材Bとの間で移動させることができる。
【0027】
また、本実施形態の熱制御デバイス1によれば、熱変形部31は、形状記憶合金から形成されるため、熱供給部35から供給される熱によって変形した後に熱の供給が停止されることで初期状態(図2(a)の状態)に戻る復元力を有する。したがって、一方の部材10と他方の部材20との間隔Gpを繰り返し変更することができるため、第1部材Aと第2部材Bとの間における熱流量の制御を繰り返すことができる。
【0028】
<第2実施形態>
図3は、第2実施形態の熱制御デバイス2の作動を説明する図である。第2実施形態の熱制御デバイス2は、第1実施形態の熱制御デバイス1(図1)と比較すると、変形部材の特性が異なる。なお、図3では、図面の便宜上、第1部材Aと第2部材Bのそれぞれを省略し、連結部11、21のそれぞれに、第1部材Aの温度と第2部材Bの温度とを比較した状態(「高温側」、「低温側」)を示している。
【0029】
第2実施形態の熱制御デバイス2は、一対の部材10、20と、変形部材40と、を備える。変形部材40は、一方の部材10と他方の部材20とのそれぞれに接続されている部材である。変形部材40は、熱変形部41と、第1断熱部32と、第2断熱部33と、を備える。熱変形部41は、自身の温度が上昇すると収縮し温度が低下すると膨張する材料から形成されている。熱変形部41の一方の側41aには第1断熱部32が設けられており、熱変形部41の他方の側41bには第2断熱部33が設けられている。熱供給部35は、熱変形部41に接続されている。
【0030】
図3(a)は、熱供給部35が比較的高温となっているときの熱制御デバイス2の状態を示している。高温となっている熱供給部35から熱変形部41に熱が供給されると、熱変形部41の温度は上昇し、熱変形部41は収縮する。これにより、一方の部材10と他方の部材20とは、接触した状態となる。この状態において、「高温側」の一方の部材10から「低温側」の他方の部材20に向かって、主に伝導伝熱によって熱が移動する(図3(a)の点線矢印H21参照)。
【0031】
図3(b)は、熱供給部35が比較的低温となっているときの熱制御デバイス2の状態を示している。熱変形部41には熱供給部35から熱が供給されないため、熱変形部41の温度は低下する。これにより、熱変形部41は膨張するため、第2断熱部33を介して熱変形部31が接続されている他方の部材20は、白抜き矢印M22の方向に移動し、図3(b)に示すように、一方の部材10と他方の部材20との間には、間隔Gpが形成される。この状態において、「高温側」の一方の部材10から「低温側」の他方の部材20には、対流伝熱と輻射伝熱によって熱が移動する(図3(b)の点線矢印H22参照)。
【0032】
熱制御デバイス2では、熱供給部35から供給される熱量に応じた熱変形部41の変形の度合いによって伝熱の方法が異なる。具体的には、伝導伝熱によって熱が移動する図3(a)の状態では熱が移動しやすい一方、対流伝熱と輻射伝熱によって熱が移動する図3(b)の状態では熱が移動しにくい。このように、熱制御デバイス2は、第1部材Aと第2部材Bとのそれぞれの温度によらず、一方の部材10と他方の部材20との間における伝熱の形態を変更することができる。
【0033】
以上説明した、本実施形態の熱制御デバイス2によれば、一方の部材10と他方の部材20とを接続する変形部材40の熱変形部41は、自身の温度が上昇すると収縮し温度が低下すると膨張する材料から形成されている。これにより、熱供給部35が供給する熱によって変形部材40が加熱されると、一方の部材10と他方の部材20とが接触し、一方の部材10と他方の部材20において高温側から低温側に伝導伝熱によって熱を移動させることができる(図3(a)参照)。また、変形部材40の温度が低下すると変形部材40は膨張するため、一方の部材10と他方の部材20との間には間隔Gpが形成される。これにより、一方の部材10と他方の部材20において高温側と低温側があっても、熱は移動しにくくなる(図3(b)参照)。このように、熱供給部35が供給する熱によって一方の部材10と他方の部材20との間隔Gpが変更されるため、第1部材Aと第2部材Bとのそれぞれの温度に影響されることなく、一方の部材10と他方の部材20の間における伝熱の形態を変更することができる。したがって、第1部材Aと第2部材Bのそれぞれの温度によらず、第1部材Aと第2部材Bとの間における熱流量を制御することができる。
【0034】
<第3実施形態>
図4は、第3実施形態の熱制御デバイス3の模式図である。第3実施形態の熱制御デバイス4は、第1実施形態の熱制御デバイス1(図1)と比較すると、一方の部材および他方の部材の形状が異なる。
【0035】
第3実施形態の熱制御デバイス3は、一対の部材15、25と、変形部材50と、熱供給部35と、を備える。一対の部材15、25のうちの一方の部材15は、連結部11を介して第1部材Aに熱的に接続されている。他方の部材25は、連結部21を介して第2部材Bに熱的に接続されたまま、図4に示す白抜き矢印M20の方向に移動可能である。一対の部材15、25のそれぞれは、熱伝導性が優れている金属、例えば、銅などから形成されている。なお、図4には、一対の部材15、25が互いに対向する方向をx軸方向とし、一対の部材15、25に対して変形部材50が配置される方向をz軸方向とし、z軸とz軸とのそれぞれに直交する方向をy軸方向とする。
【0036】
一方の部材15は、接続部16と、延伸部17と、を備える。接続部16は、自身の温度が、第1部材Aと同じ程度の温度となるように、連結部11を介して第1部材Aに熱的に接続されている。延伸部17は、接続部16において、他方の部材25側に設けられている。延伸部17は、接続部16から他方の部材25の方向、すなわち、x軸のプラス方向に向かって延伸したのち、図4に示すように、先端17aが、z軸のマイナス方向に延びている。延伸部17の先端17aには、図4に示すように、接続部16側に接触面17bが形成されている。接触面17bは、x軸方向に対して傾斜している。
【0037】
他方の部材25は、接続部26と、延伸部27と、を備える。接続部26は、自身の温度が、第2部材Bと同じ程度の温度となるように、連結部21を介して第2部材Bに熱的に接続されている。延伸部27は、接続部26において、一方の部材15の接続部16側に設けられている。延伸部27は、接続部26から接続部16の方向、すなわち、x軸のマイナス方向に向かって延伸したのち、図4に示すように、先端27aが、z軸のプラス方向に延びている。延伸部27の先端27aには、図4に示すように、接続部26側に接触面27bが形成されている。接触面27bは、x軸方向に対して傾斜しており、接触面17bに対向している。
【0038】
本実施形態では、変形部材50は、一対の部材15、25のそれぞれに接続されており、熱変形部31と、第1断熱部32と、第2断熱部53と、を備える。熱変形部31は、第1実施形態の熱変形部31と同様に、自身の温度が上昇すると膨張し温度が低下すると収縮する材料、例えば、形状記憶合金から形成されている。第1断熱部32は、接続部16の上面18に接続されている。熱変形部31の他方の側31bには、第2断熱部53が設けられている。第2断熱部53は、熱変形部31に比べ熱伝導性が低い材料から形成されている。第2断熱部53は、熱変形部31の他方の側31bと、接続部26の上面28と、接続部26の側面29とに接続する。
【0039】
図5は、本実施形態の熱制御デバイス3の作動を説明する図である。本実施形態では、熱変形部31の変形によって変更される間隔Gpは、一方の部材15の接触面17bと、他方の部材25の接触面27bとによって形成される(図5(b)の間隔Gp参照)。
【0040】
図5(a)は、熱供給部35が比較的高温となっているときの熱制御デバイス3の状態を示している。高温となっている熱供給部35から熱変形部31に熱が供給されると、熱変形部31の温度は上昇し、熱変形部31は、膨張する。熱変形部31が膨張すると、一方の部材15の接続部16と、他方の部材25の接続部26とは離れる一方、接触面17bと接触面27bとは接触する。この状態において、「高温側」の一方の部材15から「低温側」の他方の部材25には、主に伝導伝熱によって熱が移動する(図5(a)の点線矢印H31参照)。
【0041】
図5(b)は、熱供給部35が比較的低温となっているときの熱制御デバイス2の状態を示している。熱変形部31には熱供給部35から熱が供給されないため、変形部材50の温度は低下し、収縮する。熱変形部31が収縮すると、他方の部材25は、白抜き矢印M23の方向に移動する。これにより、一方の部材15の接続部16と、他方の部材25の接続部26とは近づく一方、接触面17bと接触面27bとは離れることで、間隔Gpが形成される。この状態において、「高温側」の一方の部材15から「低温側」の他方の部材25に向かって、対流伝熱と輻射伝熱によって熱が移動する(図5(b)の点線矢印H32参照)。
【0042】
熱制御デバイス3では、熱供給部35から供給される熱量に応じた熱変形部31の変形の度合いによって伝熱の方法が異なる。具体的には、伝導伝熱によって熱が移動する図5(a)の状態では熱が移動しやすい一方、対流伝熱と輻射伝熱によって熱が移動する図5(b)の状態では熱が移動しにくい。このように、熱制御デバイス3は、第1部材Aと第2部材Bとのそれぞれの温度によらず、一方の部材10と他方の部材20との間における伝熱の形態を変更することができる。
【0043】
以上説明した、本実施形態の熱制御デバイス3によれば、他方の部材25の延伸部27の先端27aは、一方の部材15の延伸部17の先端17aと接続部16との間に位置している。一方の部材15の先端17aと他方の部材25の先端27aとの間には、変形部材50の変形によって変更することができる間隔Gpが形成されている。これにより、一方の部材15の接続部16と他方の部材25の接続部26との間の距離が変形部材50の変形によって長くなるときでも、間隔Gpを狭くすることができる。したがって、熱変形部31の特性に合わせて、一方の部材15と他方の部材25との間における伝熱の形態を変更することができる。
【0044】
<第4実施形態>
図6は、第4実施形態の熱制御デバイス4の作動を説明する図である。第4実施形態の熱制御デバイス4は、第3実施形態の熱制御デバイス3(図4)と比較すると、変形部材の特性が異なる。
【0045】
第4実施形態の熱制御デバイス4は、一対の部材15、25と、変形部材60と、熱供給部35と、を備える。変形部材60は、一対の部材15、25のそれぞれに接続されており、熱変形部41と、第1断熱部32と、第2断熱部53と、を備える。熱変形部41は、第2実施形態の熱変形部と同様に、自身の温度が上昇すると収縮し温度が低下すると膨張する材料から形成されている。本実施形態では、熱変形部41の一方の側41aは、第1断熱部32を介して一方の部材15の接続部16が接続されており、他方の側41bは、第2断熱部53を介して他方の部材25の接続部26が接続されている。
【0046】
本実施形態では、熱変形部41の変形によって変更される間隔Gpは、一方の部材15の接触面17bと、他方の部材25の接触面27bとによって形成される(図6(a)の間隔Gp参照)。図6(a)は、熱供給部35が比較的高温となっているときの熱制御デバイス4の状態を示している。高温となっている熱供給部35から熱変形部41に熱が供給されると、熱変形部41の温度は上昇し、熱変形部41は、収縮する。熱変形部41が収縮すると、一方の部材15の接続部16と、他方の部材25の接続部26とは近づく一方、接触面17bと接触面27bとは離れる。この状態において、「高温側」の一方の部材15から「低温側」の他方の部材25に向かって、対流伝熱と輻射伝熱によって熱が移動する(図6(a)の点線矢印H41参照)。
【0047】
図6(b)は、熱供給部35が比較的低温となっているときの熱制御デバイス4の状態を示している。熱変形部41には熱供給部35から熱が供給されないため、熱変形部41の温度は低下し、膨張する。熱変形部41が膨張すると、他方の部材25は、白抜き矢印M24の方向に移動する。これにより、一方の部材15の接続部16と、他方の部材25の接続部26とは離れる一方、接触面17bと接触面27bとは接触する。この状態において、「高温側」の一方の部材15から「低温側」の他方の部材25に向かって、主に伝導伝熱によって熱が移動する(図6(a)の点線矢印H42参照)。
【0048】
熱制御デバイス4では、熱供給部35から供給される熱量に応じた熱変形部41の変形の度合いによって伝熱の方法が異なる。具体的には、伝導伝熱によって熱が移動する図6(b)の状態では熱が移動しやすい一方、対流伝熱と輻射伝熱によって熱が移動する図6(a)の状態では熱が移動しにくい。このように、熱制御デバイス4では、第1部材Aと第2部材Bとのそれぞれの温度によらず、一方の部材15と他方の部材25との間における伝熱の形態を変更することができる。
【0049】
以上説明した、本実施形態の熱制御デバイス4によれば、一方の部材15の接続部16と他方の部材25の接続部26との間の距離が変形部材60の変形によって長くなるときでも、間隔Gpを狭くすることができる。したがって、熱変形部41の特性に合わせて、一方の部材15と他方の部材25との間における伝熱の形態を変更することができる。
【0050】
<第5実施形態>
図7は、第5実施形態の熱制御デバイス5の作動を説明する図である。第5実施形態の熱制御デバイス5は、第1実施形態の熱制御デバイス1(図1)と比較すると、一対の部材の間隔を調整する調整部を備える点が異なる。
【0051】
本実施形態の熱制御デバイス5は、第1部材Aと第2部材Bとの間における熱の移動を制御する装置であって、一対の部材10、20と、変形部材30と、熱供給部35と、ばね71と、を備える。ばね71は、一方の部材10と他方の部材20とに接続されている。ばね71は、変形部材30の変形によって一方の部材10と他方の部材20との間隔Gpが狭められるとき、間隔Gpが狭くなることを抑制するように、一方の部材10と他方の部材20とを付勢する。ばね71は、特許請求の範囲の「調整部」に該当する。
【0052】
以上説明した、本実施形態の熱制御デバイス5によれば、一方の部材10と他方の部材20との間隔Gpを調整するばね71を備えている。ばね71は、変形部材30の変形によって一方の部材10と他方の部材20との間隔Gpが狭められるとき、間隔Gpが狭くなることを抑制する。すなわち、ばね71は、一方の部材10と他方の部材20との間隔Gpが図7に示す初期状態に戻るための復元力を有する。これにより、一方の部材10と他方の部材20との間隔Gpを繰り返し変更することができるため、第1部材Aと第2部材Bとの間における熱流量の制御を繰り返すことができる。
【0053】
<第6実施形態>
図8は、第6実施形態の熱制御デバイス6の作動を説明する図である。第6実施形態の熱制御デバイス6は、第1実施形態の熱制御デバイス1(図1)と比較すると、一対の部材の間隔を調整する調整部を備える点が異なる。
【0054】
本実施形態の熱制御デバイス6は、第1部材Aと第2部材Bとの間における熱の移動を制御する装置であって、一対の部材10、20と、変形部材30と、熱供給部35と、ばね72と、を備える。ばね72は、他方の部材20と第2部材Bとに接続されている。ばね72は、変形部材30の変形によって一方の部材10と他方の部材20との間隔Gpが狭められるとき、間隔Gpが狭くなることを抑制するように、他方の部材20を付勢する。ばね72は、特許請求の範囲の「調整部」に該当する。
【0055】
以上説明した、本実施形態の熱制御デバイス6によれば、熱制御デバイス6は、一方の部材10と他方の部材20との間隔Gpを調整するばね72を備えている。ばね72は、変形部材30の変形によって一方の部材10と他方の部材20との間隔Gpが狭められるとき、間隔Gpが狭くなることを抑制する。すなわち、ばね72は、一方の部材10と他方の部材20との間隔Gpが図8に示す初期状態に戻るための復元力を有する。これにより、一方の部材10と他方の部材20との間隔Gpを繰り返し変更することができるため、第1部材Aと第2部材の間における熱流量の制御を繰り返すことができる。
【0056】
<第7実施形態>
図9は、第7実施形態の熱制御デバイス7の斜視図である。図10は、第7実施形態の熱制御デバイス7の正面図と上面図である。第7実施形態の熱制御デバイス7は、第1実施形態の熱制御デバイス1(図1)と比較すると、変形部材の形状、および、一方の部材の形状が異なる。
【0057】
第7実施形態の熱制御デバイス7は、一対の部材80、90と、変形部材100と、熱供給部105と、を備える。一対の部材80、90のうちの一方の部材80は、第1部材Aに接続され、他方の部材90は、第2部材Bに接続されている。
【0058】
一対の部材80、90のうちの一方の部材80は、略直方体形状の部材であって、熱制御デバイス7において、z軸方向のマイナス側に位置している(図9参照)。他方の部材90は、直方体形状の部材であって、熱制御デバイス7において、z軸方向のプラス側に位置している(図9参照)。一方の部材80と他方の部材90との間には、板ばね73が設けられている。板ばね73は、一方の部材80と他方の部材90とが離れるように、一方の部材80と他方の部材90とに弾性力を作用させる。これにより、板ばね73を挟んで積層されている一方の部材80と他方の部材90とは、相対位置を変更可能である。
【0059】
変形部材100は、熱変形部101と、第1断熱部102と、第2断熱部103と、を備える。熱変形部101は、線状の部材であって、本実施形態では、熱制御デバイス7の上面図である図10(b)に示すように、2本備えている。熱変形部101は、温度が上昇すると収縮し温度が低下すると膨張する形状記憶合金から形成されている。
【0060】
第1断熱部102は、断熱材から形成されている平板形状の部材である。本実施形態では、変形部材100は、2個の第1断熱部102を備えており、図10(b)に示すように、一方の部材80の側面80a、80bのそれぞれに設けられている。第2断熱部103は、断熱材から形成されている円柱形状の部材である。本実施形態では、変形部材100は、4個の第2断熱部103を備えており、図10(b)に示すように、他方の部材90の側面90a、90bのそれぞれに2つずつx軸方向に突出するように設けられている。すなわち、本実施形態では、1個の第1断熱部102と2つの第2断熱部103との組み合わせの1つは、熱制御デバイス7のx軸のプラス方向に設けられ、1個の第1断熱部102と2つの第2断熱部103とのもう1つの組み合わせは、熱制御デバイス7のx軸のマイナス方向に設けられている。なお、第1断熱部102と第2断熱部103とのそれぞれは、断熱材から形成されるとしたが、これらの材料は断熱材に限定されず、熱変形部101に比べ熱伝導性が低い材料から形成されていればよい。
【0061】
熱供給部105は、熱発生部106と、2個の接続部107と、2個の伝熱部108と、を備える。熱発生部106は、一方の部材80および他方の部材90に対してy軸のマイナス方向に、一方の部材80および他方の部材90から離して配置されている。熱発生部106は、例えば、図示しないヒータによって熱を発生する。2個の接続部107は、熱発生部106のx軸方向の両端のそれぞれに接続されている。2個の接続部107のそれぞれは、熱発生部106からy軸のプラス方向に延伸している。2個の接続部107のそれぞれは、2個の伝熱部108のそれぞれに熱発生部106で発生した熱を伝える。なお、熱供給部105の温度を上昇させる方法は、ヒータによる発熱に限定されず、第1実施形態の熱供給部35の説明で述べたように、他の装置において発生する熱が伝わることで温度が上昇してもよい。
【0062】
2個の伝熱部108のそれぞれは、一方の部材80に設けられる第1断熱部102を介して一方の部材80に接続されている板状の部材である。1つの伝熱部108には、2つの溝108aが形成されている。溝108aは、z軸方向に沿うように形成されており、他方の部材90に設けられている第2断熱部103が挿通されている。これにより、他方の部材90は、2つの伝熱部108によってガイドされて、z軸方向に沿って移動可能となっている。
【0063】
2個の伝熱部108のそれぞれには、第1断熱部102が接続されている側とは反対側の主面に、線状の熱変形部101が配置されている。熱変形部101は、伝熱部108に接触しており、伝熱部108の熱が伝わりやすくなっている。熱変形部101は、両端が伝熱部108に固定されつつ、2つの第2断熱部103に引っ掛けられている。熱変形部101が伝熱部108の熱によって温度が上昇し収縮すると、他方の部材90をz軸のマイナス方向に引き下げる力が、第2断熱部103を介して他方の部材90に作用する。これにより、一方の部材80と他方の部材90との間隔が変更される。一方の部材80と他方の部材90との間隔が変更されることで、一方の部材80と他方の部材90との間の伝熱の形態を変更することができる。
【0064】
具体的には、熱制御デバイス7では、熱供給部105が比較的高温となっているとき、熱変形部101の温度は上昇し、熱変形部101は収縮する。このとき、板ばね73の弾性力に抗して一方の部材80と他方の部材90とが接触すると、一方の部材80と他方の部材90との間では、伝導伝熱によって熱が移動する。また、熱供給部105が比較的低温となっているとき、熱変形部101の温度が低下し熱変形部101が膨張すると、一方の部材80と他方の部材90との間に間隔が形成される。これにより、一方の部材80と他方の部材90との間では、対流伝熱と輻射伝熱によって熱が移動する。熱変形部101は、第1断熱部102と第2断熱部103とのそれぞれによって一方の部材80と他方の部材90とのそれぞれつながっているため、一方の部材80の熱と他方の部材90の熱は、熱変形部101に伝わりにくい。
【0065】
次に、本実施形態の熱制御デバイス7について、伝熱の状態を評価する評価試験について説明する。この評価試験では、図9および図10に示す熱制御デバイス7において、一方の部材80の温度、他方の部材90の温度、および、熱発生部106の温度を所定の温度に設定し、一方の部材80と他方の部材90における温度分布を計算した。
【0066】
図11は、熱制御デバイス7についての第1の計算結果である。図11は、一方の部材80の温度が20℃であり、他方の部材90の温度が90℃であるときに、熱発生部106の温度を20℃に設定したときの熱制御デバイス7の温度分布を示している。この温度設定では、熱制御デバイス7の熱変形部101は低温となるため、一方の部材80と他方の部材90とを接触させるほど収縮しない。これにより、一方の部材80と他方の部材90との間では、対流伝熱と輻射伝熱によって熱が伝わる。しかしながら、輻射伝熱による伝熱量は比較的小さいため、図11に示すように、一方の部材80と他方の部材90のそれぞれでの温度分布は、設定温度から大きく変化しないことが確認された。
【0067】
図12は、熱制御デバイス7についての第2の計算結果である。図12は、一方の部材80の温度が20℃であり、他方の部材90の温度が90℃であるときに、熱発生部106の温度を90℃に設定したときの熱制御デバイス7の温度分布を示している。この温度設定では、熱制御デバイス7の変形部材100は、熱制御デバイス7の熱変形部101は高温となるため収縮し、一方の部材80と他方の部材90とを接触させる。これにより、一方の部材80と他方の部材90との間で、主に伝導伝熱によって熱が伝わる。したがって、図12に示すように、一方の部材80において、他方の部材90側に向かうにしたがって温度が低下しており、他方の部材90において、一方の部材80側に向かうにしたがって温度が上昇することが確認された。
【0068】
以上説明した、本実施形態の熱制御デバイス7によれば、熱制御デバイス7は、一方の部材80と他方の部材90との間隔を調整することが可能な板ばね73を備えている。板ばね73は、変形部材100の変形によって一方の部材80と他方の部材90との間隔Gpが狭められるとき、間隔Gpが狭くなることを抑制する。すなわち、板ばね73は、一方の部材80と他方の部材90との間隔が初期状態に戻るための復元力を有する。これにより、一方の部材80と他方の部材90との間隔を繰り返し変更することができるため、第1部材Aと第2部材の間における熱流量の制御を繰り返すことができる。
【0069】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0070】
[変形例1]
上述の実施形態では、変形部材に熱を供給する熱供給部は、ヒータによって発生した熱によって温度を上昇させることで、熱変形部に熱を伝えるとした。しかしながら、熱供給部の温度を上昇させる方法は、これに限定されない。
【0071】
図13は、第1実施形態の熱制御デバイス1の変形例の模式図である。図13に示す熱制御デバイス1は、一対の部材10、20と、変形部材30と、熱供給部36と、を備える。熱供給部36は、流体F13が流れる配管であって、この配管に加熱された流体F13が流れると、配管を介して流体F13の熱が変形部材30に伝わる。変形部材30は、この熱量に応じて変形し、一方の部材10と他方の部材20との間隔Gpを変更する。これにより、第1部材Aと第2部材Bのそれぞれの温度によらず、第1部材Aと第2部材Bとの間における熱流量を制御することができる。また、熱供給部は、輻射伝熱によって変形部材に熱を供給してもよいし、上述したように、他の装置において発生する熱が伝わることで受動的に温度が上昇することで、熱変形部に熱が伝わってもよい。
【0072】
また、熱制御デバイスは、熱供給部の温度が低下することで、一方の部材と他方の部材の間における伝熱の形態が変更されてもよい。例えば、第1実施形態において、熱供給部35が室温の場合に熱変形部31が膨張しているため、一方の部材10と他方の部材20との間には間隔Gpが形成されている(初期状態)とする。熱供給部35の温度が低下すると、熱供給部35から熱変形部31に冷熱が供給されるため、熱変形部31の温度が室温より低くなる。これにより、熱変形部31が収縮し、一方の部材10と他方の部材20とが接触する。このような場合でも、熱制御デバイス1は、第1部材Aと第2部材Bとのそれぞれの温度によらず、一方の部材10と他方の部材20との間における伝熱の形態を変更することができる。
【0073】
[変形例2]
上述の実施形態では、変形部材は、自身の温度変化によって膨張または収縮する熱変形部と、熱変形部の両側に設けられ、一方の部材と他方の部材とのそれぞれに接続される断熱部とを備えるとした。しかしながら、変形部材の構成は、これに限定されない。例えば、熱変形部が一方の部材または他方の部材に直接接続されていてもよい。この場合、熱変形部と一方の部材または他方の部材と接触する接触面積は、小さい方が望ましい。この接触面積は、小さい方が熱変形部の温度が一方の部材または他方の部材に影響されにくくなるため、第1部材Aと第2部材Bとの間における熱流量の制御を高精度に行うことができる。
【0074】
[変形例3]
第5実施形態および第6実施形態では、一方の部材10と他方の部材20との間隔を調整するばね71、72を備えるとした。しかしながら、一対の部材の間隔を調整する部材は、ばねを限定されない。磁力によって間隔を調整してもよい。また、第5実施形態および第6実施形態では、ばねは、変形部材の変形によって一方の部材と他方の部材との間隔が狭められるとき、間隔が狭くなることを抑制するとした。ばねは、変形部材の変形によって一方の部材と他方の部材との間隔が広げられるとき、間隔が広くなることを抑制する圧縮ばねであってもよい。
【0075】
[変形例4]
第5実施形態、第6実施形態、および、第7実施形態が備えるばねは、第3実施形態および第4実施形態に適用してもよい。
【0076】
[変形例5]
上述の実施形態では、熱変形部は、形状記憶合金から形成されるとした。しかしながら、熱変形部を形成する材料はこれに限定されない。自身の温度変化によって変形する材料から形成されていればよく、温度変化による変形量が大きい方が望ましい。
【0077】
[変形例6]
上述の実施形態では、一対の部材のうち他方の部材のみが移動可能であるとした。しかしながら、一対の部材の両方が移動可能であってもよい。
【0078】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0079】
1,2,3,4,5,6,7…熱制御デバイス
10,15,80…一方の部材
16…(一方の部材の)接続部
17…(一方の部材の)延伸部
17a…(一方の延伸部の)先端
18…上面
20,25,90…他方の部材
26…(他方の部材の)接続部
27…(他方の部材の)延伸部
27a…(他方の延伸部の)先端
30,40,50,60,100…変形部材
31,41,101…熱変形部
32,102…第1断熱部
33,53,103…第2断熱部
35,36,105…熱供給部
A…第1部材
B…第2部材
Gp…間隔
図1
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