(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】給電制御装置、車載制御装置及び給電制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20240709BHJP
H02H 6/00 20060101ALI20240709BHJP
H02H 5/04 20060101ALI20240709BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H02J1/00 306F
H02J1/00 304H
H02H6/00 150
H02H5/04
B60R16/02 645A
(21)【出願番号】P 2020180893
(22)【出願日】2020-10-28
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】山根 卓真
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-36461(JP,A)
【文献】特開2015-57017(JP,A)
【文献】特開2012-125072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00-1/16
H02H 5/00-6/00
B60R 16/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線を介した給電を制御する給電制御装置であって、
処理を実行する処理部を備え、
前記処理部は、
前記複数の電線を介して電流を通流させ、
前記複数の電線の電線温度中の1つが温度閾値以上である場合、前記複数の電線の中で、電線温度が前記温度閾値未満である正常電線を介して流れる電流の電流値の平均値を低下させる
給電制御装置。
【請求項2】
前記処理部は、複数の電線温度中の1つが遮断閾値以上である場合、電線温度が遮断閾値以上である電線を介した電流の通流を停止させ、
前記温度閾値は前記遮断閾値未満である
請求項1に記載の給電制御装置。
【請求項3】
前記複数の電線を介して流れる電流の電流経路それぞれに配置されている複数のスイッチと、
前記複数のスイッチそれぞれをオン又はオフに切替える複数の切替え回路と
を備え、
前記処理部は、
各切替え回路に、スイッチをオン及びオフに交互に切替えるPWM制御を行わせることによって電線を介して電流を通流させ、
前記正常電線に対応するスイッチの前記切替え回路が行う前記PWM制御のデューティを低下させることによって、前記正常電線を介して流れる電流の電流値の平均値を低下させる
請求項1又は請求項2に記載の給電制御装置。
【請求項4】
直流電源から前記複数の電線を介して複数の負荷に電流が流れ、
前記処理部は、
前記直流電源の電圧値を取得し、
各切替え回路に関して、取得した電圧値に基づいて、負荷に関連する関連値の平均値が目標値となる前記PWM制御のデューティを算出し、
各切替え回路が行う前記PWM制御のデューティを、算出したデューティに変更し、
前記正常電線に対応する負荷の前記目標値を低下させることによって、前記PWM制御のデューティを低下させ、
前記関連値は、負荷に流れる電流の電流値、負荷に印加される電圧の電圧値、又は、負荷に供給される電力である
請求項3に記載の給電制御装置。
【請求項5】
前記複数の電線を介して流れる電流の電流経路それぞれに配置された複数のスイッチと、
前記複数のスイッチそれぞれをオン又はオフに切替える複数の切替え回路と
を備え、
前記処理部は、
各切替え回路にスイッチをオンに切替えさせることによって電線を介して電流を通流させ、
前記正常電線に対応するスイッチの前記切替え回路に、スイッチをオン及びオフに交互に切替えるPWM制御を行わせることによって、前記正常電線を介して流れる電流の電流値の平均値を低下させる
請求項1又は請求項2に記載の給電制御装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記正常電線の電流値の平均値を低下させた後、電線温度が前記温度閾値以上の温度となった異常電線の電線温度が前記温度閾値未満の温度に低下した場合、前記正常電線の電流値の平均値を上昇させる
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の給電制御装置。
【請求項7】
前記処理部は、前記正常電線の電流値の平均値を低下させた後、前記正常電線の電線温度に基づいて、前記正常電線の電流値の平均値を更に低下させるか否かを判定する
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の給電制御装置。
【請求項8】
前記処理部は、
前記複数の電線を介して流れる電流の電流値を取得し、
取得した複数の電流値に基づいて、複数の電線温度を算出する
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の給電制御装置。
【請求項9】
複数の負荷の動作を制御する車載制御装置であって、
前記複数の負荷の作動を指示する指示データを受信する受信部と、
処理を実行する処理部と
を備え、
前記処理部は、
前記受信部が前記指示データを受信した場合、複数の電線を介して前記複数の負荷に電流を通流させ、
前記複数の電線の電線温度中の1つが温度閾値以上の温度となった場合、前記複数の電線の中で、電線温度が前記温度閾値未満である正常電線を介して流れる電流の電流値の平均値を低下させる
車載制御装置。
【請求項10】
複数の電線を介した給電を制御する給電制御方法であって、
前記複数の電線を介して電流を通流させるステップと、
前記複数の電線の電線温度中の1つが温度閾値以上の温度となった場合、前記複数の電線の中で、電線温度が前記温度閾値未満である正常電線を介して流れる電流の電流値の平均値を低下させるステップと
をコンピュータに実行させる給電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、給電制御装置、車載制御装置及び給電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、電線を介して直流電源から負荷への給電を制御する給電制御装置(特許文献1を参照)が搭載されている。特許文献1に記載の給電制御装置では、電線を介して流れる電流の電流経路にスイッチが配置されている。スイッチをオン又はオフに切替えることによって、直流電源から負荷への給電が制御される。スイッチがオンである場合、電線を介して、直流電源から負荷に電流が流れ、電線の電線温度が上昇する。スイッチがオフである場合、電線を介した電流の通流が停止する。このため、電線温度は低下する。
【0003】
電線温度を繰り返し算出する。スイッチがオンである状態で電線温度が遮断閾値以上の温度となった場合、スイッチをオフに切替える。これにより、電線温度が異常な温度となることが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両には、同時に作動させる複数の負荷が搭載されている。同時に作動させる複数の負荷について、全ての動作が停止した場合に車両の運転に支障を与える可能性がある。同時に作動させる複数の負荷の例として、2つのヘッドライトが挙げられる。動作を停止する操作を運転者が行っていない状態で両方のヘッドライトの動作(点灯)が停止した場合、車両の運転に支障を与える可能性がある。
【0006】
同時に作動させる複数の負荷への給電を制御する給電制御装置では、例えば、複数の電線を介して複数の負荷に電力が供給される。複数の電線を介して流れる電流の電流経路それぞれに複数のスイッチが配置されている。各電線の電線温度を算出する。1つの電線の電線温度が遮断閾値以上の温度となった場合、この電線の電流経路に配置されたスイッチをオフに切替える。この構成では、できる限り、全ての電線温度が、遮断閾値以上である高い温度となることを避ける必要がある。
【0007】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、全ての電線温度が高い温度となる可能性が低い給電制御装置、車載制御装置及び給電制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る給電制御装置は、複数の電線を介した給電を制御する給電制御装置であって、処理を実行する処理部を備え、前記処理部は、前記複数の電線を介して電流を通流させ、前記複数の電線の電線温度中の1つが温度閾値以上である場合、前記複数の電線の中で、電線温度が前記温度閾値未満である正常電線を介して流れる電流の電流値の平均値を低下させる。
【0009】
本開示の一態様に係る車載制御装置は、複数の負荷の動作を制御する車載制御装置であって、前記複数の負荷の作動を指示する指示データを受信する受信部と、処理を実行する処理部とを備え、前記処理部は、前記受信部が前記指示データを受信した場合、複数の電線を介して前記複数の負荷に電流を通流させ、前記複数の電線の電線温度中の1つが温度閾値以上の温度となった場合、前記複数の電線の中で、電線温度が前記温度閾値未満である正常電線を介して流れる電流の電流値の平均値を低下させる。
【0010】
本開示の一態様に係る給電制御方法は、複数の電線を介した給電を制御する給電制御方法であって、前記複数の電線を介して電流を通流させるステップと、前記複数の電線の電線温度中の1つが温度閾値以上の温度となった場合、前記複数の電線の中で、電線温度が前記温度閾値未満である正常電線を介して流れる電流の電流値の平均値を低下させるステップとをコンピュータに実行させる。
【0011】
なお、本開示を、このような特徴的な処理部を備える給電制御装置として実現することができるだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとする給電制御方法として実現したり、かかるステップをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムとして実現したりすることができる。また、本開示を、給電制御装置の一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現したり、給電制御装置を含む給電制御システムとして実現したりすることができる。
【発明の効果】
【0012】
上記の態様によれば、全ての電線温度が高い温度となる可能性が低い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態1における制御システムの要部構成を示すブロック図である。
【
図2】個別ECUの要部構成を示すブロック図である。
【
図3】スイッチ装置の要部構成を示すブロック図である。
【
図4】マイコンの要部構成を示すブロック図である。
【
図7】電線の温度算出処理の手順を示すフローチャートである。
【
図8】負荷の給電制御処理の手順を示すフローチャートである。
【
図9】電流低減処理の手順を示すフローチャートである。
【
図10】電流低減処理の手順を示すフローチャートである。
【
図11】個別ECUの動作例を示すタイミングチャートである。
【
図12】実施形態2における個別ECUの要部構成を示すブロック図である。
【
図13】マイコンの要部構成を示すブロック図である。
【
図14】実施形態3における給電制御処理の手順を示すフローチャートである。
【
図15】電流低減処理の手順を示すフローチャートである。
【
図16】電流低減処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0015】
(1)本開示の一態様に係る給電制御装置は、複数の電線を介した給電を制御する給電制御装置であって、処理を実行する処理部を備え、前記処理部は、前記複数の電線を介して電流を通流させ、前記複数の電線の電線温度中の1つが温度閾値以上である場合、前記複数の電線の中で、電線温度が前記温度閾値未満である正常電線を介して流れる電流の電流値の平均値を低下させる。
【0016】
(2)本開示の一態様に係る給電制御装置では、前記処理部は、複数の電線温度中の1つが遮断閾値以上である場合、電線温度が遮断閾値以上である電線を介した電流の通流を停止させ、前記温度閾値は前記遮断閾値未満である。
【0017】
(3)本開示の一態様に係る給電制御装置は、前記複数の電線を介して流れる電流の電流経路それぞれに配置されている複数のスイッチと、前記複数のスイッチそれぞれをオン又はオフに切替える複数の切替え回路とを備え、前記処理部は、各切替え回路に、スイッチをオン及びオフに交互に切替えるPWM制御を行わせることによって電線を介して電流を通流させ、前記正常電線に対応するスイッチの前記切替え回路が行う前記PWM制御のデューティを低下させることによって、前記正常電線を介して流れる電流の電流値の平均値を低下させる。
【0018】
(4)本開示の一態様に係る給電制御装置では、直流電源から前記複数の電線を介して複数の負荷に電流が流れ、前記処理部は、前記直流電源の電圧値を取得し、各切替え回路に関して、取得した電圧値に基づいて、負荷に関連する関連値の平均値が目標値となる前記PWM制御のデューティを算出し、各切替え回路が行う前記PWM制御のデューティを、算出したデューティに変更し、前記正常電線に対応する負荷の前記目標値を低下させることによって、前記PWM制御のデューティを低下させ、前記関連値は、負荷に流れる電流の電流値、負荷に印加される電圧の電圧値、又は、負荷に供給される電力である。
【0019】
(5)本開示の一態様に係る給電制御装置は、前記複数の電線を介して流れる電流の電流経路それぞれに配置された複数のスイッチと、前記複数のスイッチそれぞれをオン又はオフに切替える複数の切替え回路とを備え、前記処理部は、各切替え回路にスイッチをオンに切替えさせることによって電線を介して電流を通流させ、前記正常電線に対応するスイッチの前記切替え回路に、スイッチをオン及びオフに交互に切替えるPWM制御を行わせることによって、前記正常電線を介して流れる電流の電流値の平均値を低下させる。
【0020】
(6)本開示の一態様に係る給電制御装置では、前記処理部は、前記正常電線の電流値の平均値を低下させた後、電線温度が前記温度閾値以上の温度となった異常電線の電線温度が前記温度閾値未満の温度に低下した場合、前記正常電線の電流値の平均値を上昇させる。
【0021】
(7)本開示の一態様に係る給電制御装置では、前記処理部は、前記正常電線の電流値の平均値を低下させた後、前記正常電線の電線温度に基づいて、前記正常電線の電流値の平均値を更に低下させるか否かを判定する。
【0022】
(8)本開示の一態様に係る給電制御装置では、前記処理部は、前記複数の電線を介して流れる電流の電流値を取得し、取得した複数の電流値に基づいて、複数の電線温度を算出する。
【0023】
(9)本開示の一態様に係る車載制御装置は、複数の負荷の動作を制御する車載制御装置であって、前記複数の負荷の作動を指示する指示データを受信する受信部と、処理を実行する処理部とを備え、前記処理部は、前記受信部が前記指示データを受信した場合、複数の電線を介して前記複数の負荷に電流を通流させ、前記複数の電線の電線温度中の1つが温度閾値以上の温度となった場合、前記複数の電線の中で、電線温度が前記温度閾値未満である正常電線を介して流れる電流の電流値の平均値を低下させる。
【0024】
(10)本開示の一態様に係る給電制御方法は、複数の電線を介した給電を制御する給電制御方法であって、前記複数の電線を介して電流を通流させるステップと、前記複数の電線の電線温度中の1つが温度閾値以上の温度となった場合、前記複数の電線の中で、電線温度が前記温度閾値未満である正常電線を介して流れる電流の電流値の平均値を低下させるステップとをコンピュータに実行させる。
【0025】
上記の一態様に係る給電制御装置、車載制御装置及び給電制御方法にあっては、1つの電線温度が温度閾値以上の温度となった場合、電線温度が温度閾値未満である正常電線を介して流れる電流の電流値の平均値を低下させる。このため、正常電線の電線温度が高い温度となる可能性は低い。結果、全ての電線温度が高い温度となる可能性は低い。
【0026】
上記の一態様に係る給電制御装置にあっては、1つの電線温度が遮断閾値以上の温度となった場合、電線温度が遮断閾値以上である電線を介した電流の通流を停止させる。これにより、電線温度が異常に高い温度となることはない。
【0027】
上記の一態様に係る給電制御装置にあっては、切替え回路がPWM制御を行うことによって、電線を介した電流の通流が実現される。正常電線に対応するスイッチの切替え回路が行うPWM制御のデューティを低下させることによって、正常電線の電流値の平均値を低下させる。
【0028】
上記の一態様に係る給電制御装置にあっては、直流電源の電圧値に基づいて、関連値の平均値が目標値となるPWM制御のデューティを算出し、PWM制御のデューティを算出したデューティに変更する。正常電線に対応する負荷の目標値を低下させる。これにより、PWM制御のデューティが低下し、正常電線の電流値の平均値が低下する。
【0029】
上記の一態様に係る給電制御装置にあっては、切替え回路がスイッチをオンに切替えることによって、電線を介して電流が通流する。正常電線を介して流れる電流の電流経路に配置されたスイッチの切替え回路がPWM制御を行うことによって、正常電線を介して流れる電流の電流値の平均値が低下する。
【0030】
上記の一態様に係る給電制御装置にあっては、正常電線の電流値の平均値が低下した後、異常電線の電線温度が温度閾値未満の温度に低下したと仮定する。これは、異常電線が正常電線に戻ったことを意味する。従って、異常電線の電線温度が温度閾値未満の温度に低下した場合、正常電線の電流値の平均値を、例えば、元の平均値に上昇させる。
【0031】
上記の一態様に係る給電制御装置にあっては、正常電線の電流値の平均値を低下させた後、正常電線の電線温度に基づいて、正常電線の電流値の平均値を更に低下させるか否かを判定する。このため、正常電線の電線温度が、高い温度に上昇する可能性が更に低い。
【0032】
上記の一態様に係る給電制御装置にあっては、電線を介して流れる電流の電流値に基づいて電線温度を算出する。
【0033】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る制御システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0034】
(実施形態1)
<制御システムの構成>
図1は、実施形態1における制御システム1の要部構成を示すブロック図である。制御システム1は車両Cに搭載されている。制御システム1は、統合ECU10、個別ECU11a、複数の個別ECU11b、直流電源12、アクチュエータ13、2つのセンサ14a,14b及び2つの負荷B1,B2を備える。直流電源12は、例えばバッテリである。
図1では、電力を供給する接続線を太線で示している。データ又は信号が伝播する接続線を細線で示している。
【0035】
統合ECU10は、個別ECU11aと、複数の個別ECU11bとに接続されている。個別ECU11aは、直流電源12の正極と、2つの電線W1,W2の一端と、センサ14aとに接続されている。電線W1,W2それぞれの他端は、負荷B1,B2の一端に接続されている。直流電源12の負極と、負荷B1,B2の他端とは接地されている。個別ECU11bには、アクチュエータ13及びセンサ14bが各別に接続されている。
【0036】
負荷B1,B2は電気機器である。個別ECU11aは、2つの負荷B1,B2を同時に作動させる。個別ECU11aは、2つの負荷B1,B2の動作を同時に停止させる。
ここで、「同時」は厳密な同時のみを意味しない。「同時」には実質的な同時も含まれる。2つの負荷B1,B2が行う作動に関して、最初の作動が行われたタイミングと、最後の作動が行われたタイミングとの差が誤差範囲内の値である場合、2つの負荷B1,B2が作動するタイミングは実質的に同時である。2つの負荷B1,B2が行う動作の停止に関して、最初の動作の停止が行われたタイミングと、最後の動作の停止が行われたタイミングとの差が誤差範囲内の値である場合、2つの負荷B1,B2が動作を停止するタイミングは実質的に同時である。
【0037】
アクチュエータ13も電気機器である。個別ECU11bは、アクチュエータ13の動作を示す制御信号をアクチュエータ13に出力する。アクチュエータ13は、制御信号が入力された場合、入力された制御信号が示す動作を行う。
【0038】
センサ14a,14bそれぞれは、車両Cに関する車両データを繰り返し生成する。車両データは、車両Cの周辺が写っている画像のデータ、車両Cの速度を示すデータ、又は、車両Cに搭載されたスイッチがオンであるか否かを示すデータ等である。センサ14aは、車両データを生成する都度、生成した車両データを個別ECU11aに出力する。同様に、センサ14bは、車両データを生成する都度、生成した車両データを個別ECU11bに出力する。個別ECU11a,11bそれぞれは、車両データが入力される都度、入力された車両データを統合ECU10に送信する。
【0039】
統合ECU10は、個別ECU11a及び複数の個別ECU11b中の少なくとも1つから受信した一又は複数の車両データに基づいて、2つの負荷B1,B2の動作を決定する。ここで、動作は作動又は動作の停止である。統合ECU10は、2つの負荷B1,B2の動作を決定した場合、決定した動作を指示する指示データを個別ECU11aに送信する。個別ECU11aは、統合ECU10から指示データを受信した場合、受信した指示データが指示する動作を2つの負荷B1,B2に行わせる。
【0040】
同様に、統合ECU10は、個別ECU11a及び複数の個別ECU11b中の少なくとも1つから受信した一又は複数の車両データに基づいて、一又は複数のアクチュエータ13の動作を決定する。統合ECU10は、一又は複数のアクチュエータ13の動作を決定した場合、決定した動作を指示する指示データを一又は複数の個別ECU11bに送信する。個別ECU11bは、統合ECU10から指示データを受信した場合、制御信号を、個別ECU11bに接続されているアクチュエータ13に出力する。制御信号が示す動作は、個別ECU11bが受信した指示データが指示する動作である。前述したように、アクチュエータ13は、入力された制御信号が示す動作を行う。
【0041】
直流電源12は、個別ECU11a及び電線W1を介して負荷B1に電力を供給する。直流電源12は、更に、個別ECU11a及び電線W2を介して負荷B2に電力を供給する。個別ECU11aは、2つの電線W1,W2を介した2つの負荷B1,B2への給電を制御する。個別ECU11aは給電制御装置として機能する。負荷B1に電力が供給された場合、負荷B1は作動する。負荷B1への給電が停止された場合、負荷B1は動作を停止する。同様に、負荷B2に電力が供給された場合、負荷B2は作動する。負荷B2への給電が停止された場合、負荷B2は動作を停止する。
【0042】
個別ECU11aは、2つの負荷B1,B2に電力を供給することによって、2つの負荷B1,B2を同時に作動させる。個別ECU11aは、2つの負荷B1,B2への給電を停止することによって、2つの負荷B1,B2の動作を同時に停止させる。
このように、個別ECU11aは、2つの負荷B1,B2への給電を制御することによって、2つの負荷B1,B2の動作を制御する。個別ECU11aは車載制御装置としても機能する。
【0043】
負荷B1,B2の種類は同一である。負荷B1,B2それぞれは、LED(Light Emitting Diode)を有するヘッドライト、白熱電球を有するヘッドライト、又は、ワイパーを駆動するワイパーモータ等である。負荷B1の輝度値又は回転速度等は、負荷B1に関連する関連値の平均値に応じて異なる。同様に、負荷B2の輝度値又は回転速度等は、負荷B2に関連する関連値の平均値に応じて異なる。平均値は、一定期間内において関連値を平均することによって算出される。関連値の第1例は、負荷B1又は負荷B2に供給される電流の電流値である。関連値の第2例は、負荷B1又は負荷B2に印加される電圧の電圧値である。関連値の第3例は、負荷B1又は負荷B2に供給される電力である。
【0044】
LEDを有するヘッドライトに関しては、ヘッドライトを介して流れる電流の電流値の平均値が大きい程、輝度値が大きい。白熱電球を有するヘッドライトに関しては、ヘッドライトに供給される電力の平均値が大きい程、輝度値が大きい。ワイパーモータに関しては、ワイパーモータに印加される電圧の電圧値が高い程、回転速度が速い。
【0045】
個別ECU11aは、負荷B1,B2それぞれについて、直流電源12の両端間の電圧値に応じて、関連値の平均値を調整する。以下では、直流電源12の両端間の電圧値を電源電圧値と記載する。個別ECU11aは、電線W1,W2の電線温度を繰り返し算出する。個別ECU11aは、算出した電線W1,W2の電線温度に応じて、電線W1,W2を介して流れる電流の電流値を各別に調整する。
【0046】
<個別ECU11aの構成>
図2は個別ECU11aの要部構成を示すブロック図である。個別ECU11aは、マイクロコンピュータ(以下、マイコンという)20、電圧検出部21、温度検出部22及び2つのスイッチ装置G1,G2を有する。スイッチ装置G1,G2は、直流電源12の正極に接続されている。スイッチ装置G1,G2それぞれは、更に、電線W1,W2の一端に接続されている。スイッチ装置G1,G2は、更に、マイコン20に接続されている。電圧検出部21は直流電源12の正極に接続されている。電圧検出部21及び温度検出部22はマイコン20に接続されている。マイコン20は、更に、統合ECU10及びセンサ14aに接続されている。
【0047】
スイッチ装置G1はスイッチ30(
図3参照)を有する。スイッチ装置G1のスイッチ30は、直流電源12の正極から負荷B1に流れる電流の電流経路に配置されている。スイッチ装置G1のスイッチ30がオンに切替わった場合、電流は、直流電源12の正極からスイッチ30、電線W1及び負荷B1の順に流れる。これにより、電力が負荷B1に供給される。スイッチ装置G1のスイッチ30がオフに切替わった場合、電流の通流が停止し、負荷B1への給電が停止する。
【0048】
マイコン20は、PWM(Pulse Width Modulation)信号又はローレベル電圧をスイッチ装置G1に出力している。PWM信号は、ハイレベル電圧及びローレベル電圧を示す。PWM信号では、ローレベル電圧からハイレベル電圧への切替えが周期的に行われる。PWM信号のデューティは、1周期において、PWM信号が示す電圧がハイレベル電圧である期間が占める割合である。デューティは、ゼロを超えており、かつ、1以下である。ハイレベル電圧からローレベル電圧への切替えが行われるタイミングを調整することによって、デューティが調整される。
【0049】
なお、PWM信号では、ハイレベル電圧からローレベル電圧への切替えが周期的に行われてもよい。この場合、ローレベル電圧からハイレベル電圧への切替えが行われるタイミングを調整することによって、デューティが調整される。
【0050】
マイコン20がPWM信号をスイッチ装置G1に出力している場合において、PWM信号が示す電圧がローレベル電圧からハイレベル電圧に切替わったとき、スイッチ装置G1はスイッチ30をオフからオンに切替える。同様の場合において、PWM信号が示す電圧がハイレベル電圧からローレベル電圧に切替わったとき、スイッチ装置G1はスイッチ30をオンからオフに切替える。スイッチ装置G1は、スイッチ30及び電線W1を介して流れる電流の電線電流値を示すアナログの電流値情報をマイコン20に出力する。電流値情報は、例えば、電線W1の電線電流値に比例する電圧値である。マイコン20はPWM信号を出力している場合、負荷B1に電力が供給される。
【0051】
マイコン20がローレベル電圧を出力している場合、スイッチ装置G1はスイッチ30をオフに維持する。このため、マイコン20がローレベル電圧を出力している場合、負荷B1は動作を停止している。
【0052】
スイッチ装置G2は、スイッチ装置G1と同様に、スイッチ30を有する。マイコン20は、PWM信号又はローレベル電圧をスイッチ装置G2に出力している。スイッチ装置G2は、スイッチ装置G1と同様に作用する。スイッチ装置G1の作用の説明において、スイッチ装置G1、負荷B1及び電線W1それぞれを、スイッチ装置G2、負荷B2及び電線W2に置き換えることによって、スイッチ装置G2の作用を説明することができる。従って、スイッチ装置G2は、電線W2の電線電流値をマイコン20に出力する。
【0053】
電圧検出部21は直流電源12の電源電圧値を検出する。電圧検出部21は、検出した電源電圧値を示すアナログの電源電圧値情報をマイコン20に出力する。電源電圧値情報は、例えば、電源電圧値を分圧することによって得られる電圧値である。
温度検出部22は環境温度を検出する。環境温度は、電線W1,W2の周囲温度である。温度検出部22は、検出した環境温度を示すアナログの環境温度情報を出力する。環境温度情報は、例えば、環境温度に応じて変動する電圧値である。
センサ14aは、車両データを生成する都度、生成した車両データをマイコン20に出力する。
【0054】
マイコン20は、センサ14aから入力された車両データを統合ECU10に送信する。マイコン20は、2つの負荷B1,B2の作動又は動作の停止を指示する指示データを、統合ECU10から受信する。マイコン20は、2つの負荷B1,B2の作動を指示する指示データを受信した場合、2つのスイッチ装置G1,G2にPWM信号を出力する。これにより、2つの負荷B1,B2に電力が供給されるので、2つの負荷B1,B2は作動する。
【0055】
マイコン20は、2つの負荷B1,B2の動作の停止を指示する指示データを受信した場合、2つのスイッチ装置G1,G2にローレベル電圧を出力する。これにより、2つの負荷B1,B2への給電が停止されるので、2つの負荷B1,B2は動作を停止する。
【0056】
マイコン20は、PWM信号をスイッチ装置G1,G2に出力している場合、電圧検出部21から入力された電源電圧値情報が示す電源電圧値に基づいて、PWM信号のデューティを調整する。また、マイコン20は、スイッチ装置G1から入力された電流値情報が示す電線W1の電線電流値と、温度検出部22から入力された環境温度情報が示す環境温度と、スイッチ装置G1に出力されるPWM信号のデューティとに基づいて、電線W1の電線温度を繰り返し算出する。同様に、マイコン20は、スイッチ装置G2から入力された電流値情報が示す電線W2の電線電流値と、温度検出部22から入力された環境温度情報が示す環境温度と、スイッチ装置G2に出力されるPWM信号のデューティとに基づいて、電線W2の電線温度を繰り返し算出する。
【0057】
マイコン20は、算出した電線W1,W2の電線温度に基づいて、スイッチ装置G1,G2に出力しているPWM信号のデューティを調整する。マイコン20は、算出した電線W1の電線温度が遮断閾値以上の温度となった場合、スイッチ装置G1にローレベル電圧を出力し、スイッチ装置G1のスイッチ30をオフに切替える。同様に、マイコン20は、算出した電線W2の電線温度が遮断閾値以上の温度となった場合、スイッチ装置G2にローレベル電圧を出力し、スイッチ装置G2のスイッチ30をオフに切替える。遮断閾値は、一定値であり、予め記憶部44に記憶されている。
【0058】
<スイッチ装置G1の構成>
図3はスイッチ装置G1の要部構成を示すブロック図である。スイッチ装置G1は、スイッチ30、駆動回路31、電流出力部32及び抵抗33を有する。スイッチ30は、Nチャネル型のFET(Field Effect Transistor)である。スイッチ30のドレインは、直流電源12の正極に接続されている。スイッチ30のソースは、電線W1の一端に接続されている。前述したように、電線W1の他端は、負荷B1の一端に接続されている。スイッチ30のゲートは駆動回路31に接続されている。駆動回路31は更にマイコン20に接続されている。
【0059】
スイッチ30のドレインには、更に、電流出力部32が接続されている。電流出力部32は、更に、抵抗33の一端に接続されている。抵抗33の他端は接地されている。電流出力部32及び抵抗33間の接続ノードはマイコン20に接続されている。
【0060】
スイッチ30において、基準電位がソースの電位であるゲートの電圧値が一定電圧値以上である場合、スイッチ30はオンである。スイッチ30がオンである場合、ドレイン及びソースを介して電流が流れることが可能である。スイッチ30において、基準電位がソースの電位であるゲートの電圧値が一定電圧値未満である場合、スイッチ30はオフである。スイッチ30がオフである場合、ドレイン及びソースを介して電流が流れることはない。
【0061】
マイコン20は、駆動回路31にPWM信号又はローレベル電圧を出力する。駆動回路31は、PWM信号が示す電圧がローレベル電圧からハイレベル電圧に切替わった場合、スイッチ30において、基準電位が接地電位であるゲートの電圧値を上昇させる。これにより、スイッチ30において、基準電位がソースの電位であるゲートの電圧値は一定電圧値以上の電圧値となり、スイッチ30はオンに切替わる。駆動回路31は、PWM信号が示す電圧がハイレベル電圧からローレベル電圧に切替わった場合、スイッチ30において、基準電位が接地電位であるゲートの電圧値を低下させる。これにより、スイッチ30において、基準電位がソースの電位であるゲートの電圧値は一定電圧値未満の電圧値となり、スイッチ30はオフに切替わる。
【0062】
以上のように、駆動回路31にPWM信号が出力されている場合、駆動回路31は、スイッチ30をオン及びオフに交互に切替えるPWM制御を行う。PWM制御のデューティは、一定期間において、スイッチ30がオンである期間が占める割合である。PWM制御のデューティはPWM信号のデューティと一致する。
【0063】
駆動回路31は、マイコン20が駆動回路31にローレベル電圧を出力した場合、スイッチ30において、基準電位が接地電位であるゲートの電圧値を低下させる。これにより、スイッチ30はオフに切替わる。
【0064】
電流出力部32は、スイッチ30のドレインから電流を引き込み、引き込んだ電流を抵抗33に出力する。電流出力部32が出力する電流の電流値は、電線W1の電線電流値に比例し、(電線W1の電線電流値)/(所定数)で表される。抵抗33の両端間の電圧値が電流値情報としてマイコン20に出力される。電流値情報は、(電線W1の電線電流値)・(抵抗33の抵抗値)/(所定数)で表される。「・」は積を示す。抵抗33の抵抗値及び所定数は一定値であるため、電流値情報は電線W1の電線電流値を示す。
【0065】
<スイッチ装置G2の構成>
スイッチ装置G2は、スイッチ装置G1と同様に構成される。従って、スイッチ装置G2も、スイッチ30、駆動回路31、電流出力部32及び抵抗33を有する。マイコン20は、スイッチ装置G2の駆動回路31にPWM信号又はローレベル電圧を出力する。スイッチ装置G1の構成の説明において、スイッチ装置G1及び電線W1をスイッチ装置G2及び電線W2に置き換えることによって、スイッチ装置G2の構成を説明することができる。従って、スイッチ装置G2が出力する電流値情報は、電線W2の電線電流値を示す。
【0066】
スイッチ装置G1のスイッチ30がオンである場合、電流は、直流電源12の正極からスイッチ30及び電線W1を介して流れる。スイッチ装置G2のスイッチ30がオンである場合、電流は、直流電源12の正極からスイッチ30及び電線W2を介して流れる。従って、2つの電線W1,W2を介して流れる電流経路それぞれに2つのスイッチ30が配置されている。2つのスイッチ装置G1,G2それぞれでは、駆動回路31は、スイッチ30をオン又はオフに切替える。スイッチ装置G1,G2それぞれの駆動回路31は切替え回路として機能する。
【0067】
<マイコン20の構成>
図4はマイコン20の要部構成を示すブロック図である。マイコン20は、A/D変換部40,41、入力部42、通信部43、記憶部44、制御部45、2つの出力部H1,H2及び2つのA/D変換部J1,J2を有する。これらは内部バス46に接続されている。A/D変換部40,41それぞれは、更に、電圧検出部21及び温度検出部22に接続されている。入力部42は、更に、センサ14aに接続されている。通信部43は、更に、統合ECU10に接続されている。出力部H1,H2それぞれは、更に、スイッチ装置G1,G2の駆動回路31に接続されている。A/D変換部J1,J2それぞれは、更に、スイッチ装置G1,G2の接続ノードに接続されている。
【0068】
A/D変換部40には、電圧検出部21からアナログの電源電圧値情報が入力される。A/D変換部40は、入力されたアナログの電源電圧値情報を、デジタルの電源電圧値情報に変換する。制御部45は、A/D変換部40からデジタルの電源電圧値情報を取得する。
【0069】
A/D変換部41には、温度検出部22からアナログの環境温度情報が入力される。A/D変換部41は、入力されたアナログの環境温度情報を、デジタルの環境温度情報に変換する。制御部45は、A/D変換部41からデジタルの環境温度情報を取得する。
【0070】
センサ14aは入力部42に車両データを繰り返し出力する。
通信部43は、制御部45の指示に従って、車両データを統合ECU10に送信する。通信部43は、統合ECU10から、2つの負荷B1,B2の作動又は動作の停止を指示する指示データを受信する。通信部43は受信部として機能する。
【0071】
出力部H1,H2それぞれは、制御部45の指示に従って、PWM信号をスイッチ装置G1,G2の駆動回路31に出力する。出力部H1,H2それぞれが出力しているPWM信号のデューティは、制御部45によって調整される。出力部H1,H2それぞれは、更に、制御部45の指示に従って、ローレベル電圧をスイッチ装置G1,G2の駆動回路31に出力する。
【0072】
スイッチ装置G1,G2それぞれの接続ノードからA/D変換部J1,J2にアナログの電流値情報が入力される。A/D変換部J1,J2それぞれは、入力されたアナログの電圧値情報をデジタルの電流値情報に変換する。制御部45は、A/D変換部J1,J2それぞれからデジタルの電流値情報を取得する。A/D変換部J1,J2それぞれから取得した電流値情報は、電線W1,W2の電線電流値を示す。
【0073】
記憶部44は不揮発性メモリである。記憶部44には、コンピュータプログラムPが記憶されている。制御部45は処理を実行する処理素子、例えばCPU(Central Processing Unit)を有する。制御部45は処理部として機能する。制御部45の処理素子は、コンピュータプログラムPを実行することによって、車両データ送信処理、2つの温度算出処理、2つの給電制御処理及び電流低減処理等を並行して実行する。
【0074】
車両データ送信処理は、車両データを統合ECU10に送信する処理である。2つの温度算出処理それぞれは電線W1,W2の電線温度を算出する処理である。2つの給電制御処理それぞれは、負荷B1,B2への給電を制御する処理である。電流低減処理は、電線W1,W2中の1つの電線の電線電流値を低減する処理である。
【0075】
なお、コンピュータプログラムPは、制御部45の処理素子が読み取り可能に、非一時的な記憶媒体Aに記憶されていてもよい。この場合、図示しない読み出し装置によって記憶媒体Aから読み出されたコンピュータプログラムPが記憶部44に書き込まれる。記憶媒体Aは、光ディスク、フレキシブルディスク、磁気ディスク、磁気光ディスク又は半導体メモリ等である。光ディスクは、CD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、又は、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)等である。磁気ディスクは、例えばハードディスクである。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部装置からコンピュータプログラムPをダウンロードし、ダウンロードしたコンピュータプログラムPを記憶部44に書き込んでもよい。
【0076】
制御部45が有する処理素子の数は、1に限定されず、2以上であってもよい。制御部45が有する処理素子の数が2以上である場合、複数の処理素子が協同して、車両データ送信処理、2つの温度算出処理、2つの給電制御処理及び電流低減処理等を実行してもよい。
【0077】
制御部45は、2つの温度算出処理それぞれを周期的に実行する。2つの温度算出処理それぞれでは、制御部45は、電線W1,W2の電線温度を算出する。2つの温度算出処理それぞれでは、制御部45は、電線温度と環境温度との温度差を算出する。
【0078】
電線W1の電線温度の算出では、制御部45は、前回算出した先行温度差ΔTpと、電線W1の電線電流値Iwと、環境温度Taと、PWM信号のデューティDとを以下に示す数式[1],[2]に代入することによって、温度差ΔTwを算出する。
ΔTw=ΔTp・exp(-Δt/τr)
+Rth・Rw・D・Iw2 ・(1-exp(-Δt/τr))・・・[1]
Rw=Ro・(1+κ・(Ta+ΔTp-To))・・・[2]
【0079】
数式[1],[2]で用いられている変数及び定数を説明する。変数及び定数の説明では、変数又は定数の単位も併せて示している。ΔTw、ΔTp、Ta、Iw、Rw、Rth及びDそれぞれは、前述したように、算出した温度差(℃)、先行温度差(℃)、環境温度(℃)、電線W1の電線電流値(A)、電線W1の電線抵抗(Ω)、電線W1の電線熱抵抗(℃/W)及びPWM信号のデューティである。Δtは、温度差ΔTwを算出する周期(s)、即ち、温度算出処理が実行される周期である。τrは、電線W1の電線放熱時定数(s)である。
【0080】
Toは所定の温度(℃)である。Roは温度Toおける電線抵抗(Ω)である。κは電線W1の電線抵抗温度係数(/℃)である。温度差ΔTw、先行温度差ΔTp、電線電流値Iw及び環境温度Taは変数である。周期Δt、電線放熱時定数τr、電線熱抵抗Rth、電線抵抗Ro、電線抵抗温度係数κ及び温度Toは、予め設定されている定数である。
【0081】
数式[1]の第1項の値は、周期Δtが長い程、低下するので、数式[1]の第1項は電線W1の放熱を表す。また、数式[1]の第2項の値は、周期Δtが長い程、上昇するので、数式[1]の第2項は電線W1の発熱を表す。
制御部45は、電線W1の電線温度と同様に、電線W2の電線温度を算出する。
【0082】
記憶部44には、2つの電線W1,W2に対応する2つの先行温度差が記憶されている。2つの先行温度差それぞれは、制御部45によって変更される。また、記憶部44には、電線W1,W2の電線温度を示す電線温度テーブルQ1が記憶されている。
【0083】
図5は電線温度テーブルQ1の内容を示す図表である。
図5に示すように、電線温度テーブルQ1では、電線W1,W2の電線温度が示されている。電線温度テーブルQ1に示されている電線温度それぞれは、制御部45によって変更される。
【0084】
2つの給電制御処理それぞれでは、制御部45は、負荷B1,B2に関連する関連値の平均値を目標値に調整する。電流低減処理では、制御部45は、少なくとも1つの目標値を変更する。電線W1,W2それぞれは負荷B1,B2に対応する。記憶部44には、2つの負荷B1,B2に対応する2つの目標値と、2つの目標値の初期値とを示す目標値テーブルQ2が記憶されている。
【0085】
図6は目標値テーブルQ2の内容を示す図表である。
図6に示すように、目標値テーブルQ2では、2つの負荷B1,B2に対応する2つの目標値と、2つの目標値の初期値とが示されている。目標値テーブルQ2に示す2つの目標値それぞれは、制御部45によって変更される。
【0086】
<車両データ送信処理>
車両データ送信処理では、制御部45は、センサ14aから入力部42に車両データが入力されるまで待機する。制御部45は、入力部42に車両データが入力された場合、入力部42に入力された車両データを取得する。次に、制御部45は、通信部43に指示して、取得した車両データを統合ECU10に送信させ、車両データ送信処理を終了する。制御部45は、車両データ送信処理を終了した後、再び車両データ送信処理を実行する。
【0087】
<電線W1の温度算出処理>
図7は、電線W1の温度算出処理の手順を示すフローチャートである。制御部45は、電線W1の温度算出処理を周期的に実行する。電線W1の温度算出処理では、制御部45は、A/D変換部J1から、電線W1の電線電流値を示す電流値情報を取得する(ステップS1)。出力部H1がPWM信号のデューティを出力している場合においては、PWM信号がハイレベル電圧を示す期間に制御部45は電流値情報を取得する。次に、制御部45は、記憶部44から電線W1の先行温度差を読み出す(ステップS2)。この先行温度差は、前回の温度算出処理で算出された温度差である。制御部45は、ステップS2を実行した後、環境温度情報をA/D変換部41から取得する(ステップS3)。
【0088】
制御部45は、複数の数値を数式[1],[2]に代入することによって、環境温度と電線W1の電線温度との温度差を算出する(ステップS4)。複数の数値は、ステップS1で取得した電流値情報が示す電線W1の電線電流値、ステップS2で読み出した先行温度差、ステップS3で取得した環境温度情報が示す環境温度、及び、出力部H1が出力しているPWM信号のデューティである。出力部H1がローレベル電圧を出力している場合、デューティはゼロである。次に、制御部45は、記憶部44に記憶されている先行温度差を、ステップS4で算出した温度差に変更する(ステップS5)。変更後の先行温度差は、次回の温度算出処理で用いられる。制御部45は、ステップS5を実行した後、ステップS3で取得した環境温度情報が示す環境温度に、ステップS4で算出した温度差を加算することによって、電線W1の電線温度を算出する(ステップS6)。
【0089】
次に、制御部45は、電線温度テーブルQ1における電線W1の電線温度を、ステップ
S6で算出した電線温度に変更する(ステップS7)。制御部45は、ステップS7を実
行した後、電線W1の温度算出処理を終了する。
【0090】
<電線W2の温度算出処理>
制御部45は、電線W2の温度算出処理を周期的に実行する。電線W2の温度算出処理は、電線W1の温度算出処理と同様である。電線W1の温度算出処理の説明において、出力部H1、A/D変換部J1及び電線W1それぞれを、出力部H2、A/D変換部J2及び電線W2に置き換えることによって、電線W2の温度算出処理を説明することができる。
従って、制御部45は、2つの電線W1,W2の電線電流値を取得し、取得した2つの電線電流値に基づいて、2つの電線W1,W2の温度を算出する。
【0091】
<負荷B1の給電制御処理>
図8は負荷B1の給電制御処理の手順を示すフローチャートである。負荷B1の給電制御処理では、まず、制御部45は、負荷B1を作動させるか否かを判定する(ステップS11)。ステップS11では、制御部45は、通信部43が、2つの負荷B1,B2の作動を指示する指示データを受信した場合、負荷B1を作動させると判定する。制御部45は、通信部43が、2つの負荷B1,B2の作動を指示する指示データを受信していない場合、負荷B1を作動させないと判定する。制御部45は、負荷B1を作動させないと判定した場合(S11:NO)、ステップS11を再び実行し、通信部43が、2つの負荷B1,B2の作動を指示する指示データを受信するまで待機する。
【0092】
制御部45は、負荷B1を作動させると判定した場合(S11:YES)、A/D変換部40から電源電圧値情報を取得し(ステップS12)、目標値テーブルQ2から、負荷B1の目標値を読み出す(ステップS13)。次に、制御部45は、ステップS12で取得した電源電圧値情報が示す電源電圧値に基づいて、関連値の平均値が、ステップS13で読み出した目標値となるPWM信号のデューティを算出する(ステップS14)。
【0093】
例えば、負荷B1が、LEDを有するヘッドライトである場合、負荷B1の輝度は、電線W1の電線電流値の平均値が大きい程、大きい。負荷B1が、LEDを有するヘッドライトである場合、関連値は電線電流値である。目標値は電流値である。スイッチ装置G1のスイッチ30がオンである場合に流れる電流の電線電流値をスイッチ電流値と記載する。スイッチ電流値は、ステップS12で取得した電源電圧値情報が示す電源電圧値に基づいて算出される。制御部45は、ステップS13で読み出した目標値を、電源電圧値に基づいて算出したスイッチ電流値で除算する。これにより、PWM信号のデューティが算出される。
【0094】
例えば、負荷B1が、白熱電球を有するヘッドライトである場合、負荷B1の輝度は、負荷B1に供給される電力の平均値が大きい程、大きい。負荷B1が、白熱電球を有するヘッドライトである場合、関連値は、負荷B1に供給される電力である。目標値も電力である。スイッチ装置G1のスイッチ30がオンである場合に負荷B1に供給される電力を負荷電力と記載する。負荷電力は、ステップS12で取得した電源電圧値情報が示す電源電圧値に基づいて算出される。制御部45は、ステップS13で読み出した目標値を、電源電圧値に基づいて算出した負荷電力で除算する。これにより、PWM信号のデューティが算出される。
【0095】
例えば、負荷B1がワイパーモータである場合、負荷B1の回転速度は、負荷B1に印加される電圧の平均値が高い程、速い。負荷B1がワイパーモータである場合、関連値は、負荷B1に印加される電圧の電圧値である。目標値も電圧値である。スイッチ装置G1のスイッチ30がオンである場合に負荷B1に印加される電圧値を負荷電圧値と記載する。負荷電圧値は、ステップS12で取得した電源電圧値情報が示す電源電圧値に基づいて算出される。制御部45は、ステップS13で読み出した目標値を、電源電圧値に基づいて算出した負荷電圧値で除算する。これにより、PWM信号のデューティが算出される。
【0096】
次に、制御部45は、出力部H1に指示して、ステップS14で算出したデューティを有するPWM信号を出力させる(ステップS15)。これにより、スイッチ装置G1の駆動回路31は、PWM信号が示す電圧に従って、スイッチ30のPWM制御を行う。駆動回路31が行うPWM制御のデューティは、ステップS14で算出したデューティに調整される。駆動回路31がスイッチ30のPWM制御を行うことによって、電線W1を介して電流が通流し、関連値の平均値は目標値に調整される。
【0097】
制御部45は、ステップS15を実行した後、電線温度テーブルQ1に示されている電線W1の電線温度を読み出す(ステップS16)。次に、制御部45は、ステップS16で読み出した電線W1の電線温度が遮断閾値以上であるか否かを判定する(ステップS17)。制御部45は、電線W1の電線温度が遮断閾値未満であると判定した場合(S17:NO)、負荷B1の動作を停止させるか否かを判定する(ステップS18)。ステップS18では、制御部45は、通信部43が、2つの負荷B1,B2の動作の停止を指示する指示データを受信した場合、負荷B1の動作を停止させると判定する。制御部45は、通信部43が、2つの負荷B1,B2の動作の停止を指示する指示データを受信していない場合、負荷B1の動作を停止させないと判定する。
【0098】
制御部45は、電線W1の電線温度が遮断閾値以上であると判定した場合(S17:YES)又は負荷B1の動作を停止させると判定した場合(S18:YES)、出力部H1にローレベル電圧を出力させることによって、電線W1を介した負荷B1への給電を停止させる(ステップS19)。出力部H1がローレベル電圧を出力した場合、スイッチ装置G1の駆動回路31はスイッチ30をオフに切替える。これにより、負荷B1への給電が停止する。制御部45は、ステップS19を実行した後、負荷B1の給電制御処理を終了する。
【0099】
負荷B1の動作を停止させると判定した後に給電制御処理を終了した場合、制御部45は、再び給電制御処理を実行する。電線温度が遮断閾値以上であると判定した後に給電制御処理を終了した場合、所定の条件が満たされるまで、給電制御処理を再開しない。所定の条件は、例えば、電線温度が環境温度に近い値になることである。
【0100】
制御部45は、負荷B1の動作を停止させないと判定した場合(S18:NO)、A/D変換部40から電源電圧値情報を取得する(ステップS20)。次に、制御部45は、目標値テーブルQ2が示すスイッチ装置G1の目標値を読み出す(ステップS21)。制御部45は、ステップS14と同様に、ステップS20で取得した電源電圧値情報が示す電源電圧値に基づいて、関連値の平均値が、ステップS21で読み出した目標値となるPWM信号のデューティを算出する(ステップS22)。次に、制御部45は、出力部H1が出力しているPWM信号のデューティを、ステップS22で算出したデューティに変更し(ステップS23)、ステップS16を再び実行する。
【0101】
以上のように、電線温度が遮断閾値未満である状態で、通信部43が2つの負荷B1,B2の動作の停止を指示する指示データを受信していない場合、電源電圧値に基づいて、関連値の平均値が目標値となるようにPWM信号のデューティが調整される。直流電源12の正極が車両Cのスタータに接続されていると仮定する。直流電源12はスタータに電力を供給する。スタータの作動によって、直流電源12の電源電圧値が低下した場合、デューティが上昇し、関連値の平均値は目標値に維持される。スタータの動作の停止によって、直流電源12の電源電圧値が上昇した場合、デューティは低下し、関連値の平均値は目標値に維持される。
【0102】
また、電線温度が遮断閾値以上の温度に上昇した場合、スイッチ装置G1の駆動回路31は、スイッチ30をオフに切替える。これにより、電線W1を介した電流の通流が停止し、電線W1の電線温度は低下する。このため、電線W1が異常に高い温度になることが防止される。
【0103】
<負荷B2の給電制御処理>
制御部45は、負荷B2の給電制御処理を、負荷B1の給電制御処理と同様に実行する。負荷B1の給電制御処理の説明において、負荷B1,B2以外の負荷B1を負荷B2に置き換える。更に、スイッチ装置G1、出力部H1及び電線W1それぞれをスイッチ装置G2、出力部H2及び電線W2に置き換える。これにより、負荷B2の給電制御処理を説明することができる。従って、制御部45は、スイッチ装置G2の駆動回路31に関して、取得した電源電圧値情報が示す電源電圧値に基づいて、関連値の平均値が目標値となるPWM信号(PWM制御)のデューティを算出し、駆動回路31が行うPWM制御のデューティを、算出したデューティに変更する。負荷B2の給電制御処理の効果は、負荷B1の給電制御処理の効果と同様である。
【0104】
制御部45は、負荷B1,B2の給電制御処理のステップS15を実行することによって、2つの電線W1,W2を介して電流を通流させる。また、制御部45は、負荷B1,B2の給電制御処理のステップS17,S18を実行する。このため、制御部45は、2つの電線W1,W2の電線温度中の1つが遮断閾値以上である場合、電線温度が遮断閾値である電線を介して電流の通流を停止させる。
【0105】
2つの負荷B1,B2の作動を指示する指示データを通信部43が受信した場合、負荷B1,B2の給電制御処理のステップS15において、制御部45は、出力部H1,H2にPWM信号を出力させる。このため、2つの負荷B1,B2は同時に作動する。2つの負荷B1,B2の動作の停止を指示する指示データを通信部43が受信した場合、負荷B1,B2の給電制御処理のステップS19において、制御部45は、出力部H1,H2にローレベル電圧を出力させる。このため、2つの負荷B1,B2は同時に動作を停止する。
【0106】
<電流低減処理>
図9及び
図10は電流低減処理の手順を示すフローチャートである。電流低減処理では、制御部45は、2つの負荷B1,B2の中で少なくとも1つの負荷が作動しているか否かを判定する(ステップS31)。ステップS31では、制御部45は、2つの出力部H1,H2中の少なくとも1つがPWM信号を出力している場合、少なくとも1つの負荷が作動していると判定する。制御部45は、2つの出力部H1,H2が出力電圧をローレベル電圧に維持している場合、少なくとも1つの負荷B1,B2が作動していないと判定する。制御部45は、少なくとも1つの負荷が作動していないと判定した場合(S31:NO)、ステップS31を再び実行し、2つの負荷B1,B2中の少なくとも1つが作動するまで待機する。
【0107】
制御部45は、少なくとも1つの負荷が作動していると判定した場合(S31:YES)、目標値テーブルQ2が示す全ての目標値が初期値であるか否かを判定する(ステップS32)。制御部45は、全ての目標値が初期値であると判定した場合(S32:YES)、電線温度テーブルQ1が示す全ての電線温度を読み出す(ステップS33)。次に、制御部45は、ステップS33で読み出した電線温度の中に、温度閾値以上である電線温度があるか否かを判定する(ステップS34)。温度閾値は、一定値であり、予め記憶部44に記憶されている。温度閾値は遮断閾値未満である。
【0108】
制御部45は、温度閾値以上である電線温度があると判定した場合(S34:YES)、全ての負荷B1,B2の中で、電線温度が温度閾値未満である正常電線に対応する負荷を選択する(ステップS35)。正常電線は、電線W1,W2に含まれている。なお、全ての電線温度が温度閾値以上である場合、ステップS35では、制御部45は、全ての負荷B1,B2中の1つを選択する。
【0109】
ステップS35で選択された負荷に対応する電線を選択電線と記載する。選択電線は、通常、正常電線である。温度閾値以上である電線温度があると制御部45が判定した時点において、電線温度が温度閾値以上である電線を異常電線と記載する。
【0110】
次に、制御部45は、目標値テーブルQ2において、ステップS35で選択した負荷の目標値を低下させる(ステップS36)。制御部45が、例えば、負荷B1の目標値を低下させた場合においては、目標値の低下と同時に電源電圧値が変動していない限り、出力部H1が出力しているPWM信号のデューティは低下する。これにより、スイッチ装置G1の駆動回路31が行うPWM制御のデューティが低下する。結果、選択電線の電線電流値の平均値が低下する。電源電圧値が一定である場合においては、目標値が小さい程、PWM信号のデューティは小さい。
制御部45は、温度閾値以上である電線温度がないと判定した場合(S34:NO)、又は、ステップS36を実行した後、電流低減処理を終了する。
【0111】
制御部45は、全ての目標値が初期値ではないと判定した場合(S32:NO)、電線温度テーブルQ1において、異常電線の電線温度を読み出す(ステップS37)。次に、制御部45は、ステップS37で読み出した異常電線の電線温度が温度閾値未満であるか否かを判定する(ステップS38)。制御部45は、異常電線の電線温度が温度閾値未満であると判定した場合(S38:YES)、全ての目標値を初期値に変更し(ステップS39)、電流低減処理を終了する。
【0112】
従って、制御部45は、選択電線に対応する負荷の目標値を初期値未満の値に低下させた後、異常電線の電線温度が温度閾値未満の温度に低下した場合、目標値を初期値に戻す。目標値が初期値に戻った場合、直流電源12の電源電圧値が一定値である限り、選択電線の電線電流値の平均値は上昇する。異常電線の電線温度が温度閾値未満の温度に低下することは、異常電線が正常電線に戻ったことを意味する。
【0113】
制御部45は、異常電線の電線温度が温度閾値以上であると判定した場合(S38:NO)、電線温度テーブルQ1において選択電線の電線温度を読み出し(ステップS40)、読み出した選択電線の電線温度に基づいて、初期値未満である目標値を更に低下させるか否かを判定する(ステップS41)。ステップS41では、制御部45は、例えば、選択電線の電線温度が温度閾値以上である場合、目標値を更に低下させると判定する。制御部45は、選択電線の電線温度が温度閾値未満である場合、目標値を更に低下させないと判定する。
【0114】
制御部45は、目標値を更に低下させると判定した場合(S41:YES)、初期値未満である目標値を更に低下させる(ステップS42)。制御部45は、目標値を更に低下させないと判定した場合(S41:NO)、又は、ステップS42を実行した後、電流低減処理を終了する。
制御部45は、電流低減処理を終了した後、再び、電流低減処理を実行し、負荷B1,B2の少なくとも1つが作動するまで待機する。
【0115】
<個別ECU11aの動作例>
図11は、個別ECU11aの動作例を示すタイミングチャートである。
図11には、スイッチ装置G1,G2の駆動回路31に出力されるPWM信号の電圧の推移と、電線W1,W2の電線温度の推移が示されている。ここでは、電源電圧値は一定値に維持されていると仮定する。
図11では、ハイレベル電圧及びローレベル電圧それぞれを「H」及び「L」で示している。遮断閾値及び温度閾値それぞれはTth及びTdで示されている。
【0116】
マイコン20の2つの出力部H1,H2がPWM信号をスイッチ装置G1,G2の駆動回路31にした場合、電線W1,W2を介して負荷B1,B2に電力が供給され、電線W1,W2の電線温度は上昇する。電源電圧値が一定である場合、電線W1,W2の電線温度は、通常、
図11に示すように、温度閾値Td未満の値で安定する。
【0117】
異常が発生し、電線W1の電線温度が上昇したと仮定する。電線W1の電線温度が温度閾値Td以上の温度となった場合、制御部45は、電流低減処理のステップS35においてスイッチ装置G2を選択し、出力部H2がスイッチ装置G2の駆動回路31に出力しているPWM信号のデューティを低下させる。これにより、電線W2の電線温度は、より低い温度に低下する。これにより、電線W2の電線温度が遮断閾値以上の温度となる可能性は低下する。
【0118】
電線W1の電線温度が遮断閾値以上の温度となった場合、制御部45は、負荷B1の給電制御処理のステップS19を実行し、出力部H1はローレベル電圧をスイッチ装置G1の駆動回路31に出力する。これにより、スイッチ装置G1の駆動回路31はスイッチ30をオフに切替える。これにより、電線W1を介した電流の通流は停止するので、電線W1の電線温度は低下する。
【0119】
<個別ECU11aの効果>
個別ECU11aでは、電線W1,W2中の1つの電線温度が温度閾値以上の温度となった場合、正常電線が選択電線として選択され、選択電線の電線電流値の平均値を低下させる。このため、選択電線の電線温度が、遮断閾値以上である高い温度となる可能性は低い。結果、全ての電線W1,W2の電線温度が高い温度となる可能性は低い。
また、選択電線の電線電流値の平均値を低下させた後、選択電線の電線温度に基づいて、選択電線の電線電流値の平均値を更に低下させるか否かを判定させる。このため、選択電線が、遮断閾値以上である高い温度となる可能性は更に低い。
【0120】
更に、電線W1,W2中の1つの電線温度が遮断閾値以上の温度となった場合、電線温度が遮断閾値以上である電線を介した電流の通流を停止させる。これにより、電線温度が異常に高い温度となることはない。
電線W1,W2の電線温度が遮断閾値以上の温度となった場合、全ての負荷B1,B2の動作が不意に停止する可能性がある。しかしながら、選択電線の電線電流値の平均値を低下させるので、全ての負荷B1,B2の両方が不意に停止する可能性は低い。
【0121】
(実施形態2)
実施形態1における制御システム1では、直流電源12が電力を供給する負荷の数は2である。しかしながら、直流電源12が電力を供給する負荷の数は3以上であってもよい。
以下では、実施形態2について、実施形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施形態1と共通している。このため、実施形態1と共通する構成部には実施形態1と同一の参照符号を付し、その構成部の説明を省略する。
【0122】
<個別ECU11aの構成>
図12は、実施形態2における個別ECU11aの要部構成を示すブロック図である。実施形態2における制御システム1を実施形態1における制御システム1と比較した場合、負荷の数が異なる。実施形態2における制御システム1は、n個の負荷B1,B2,・・・,Bnを備える。ここで、nは3以上の整数である。個別ECU11aは、電線Wi一端に接続されている。電線Wiの他端は負荷Biの一端に接続されている。負荷Biの他端は接地されている。ここで、iは、3以上であり、かつ、n以下である範囲に属する任意の整数である。従って、iは、3,4,・・・,nのいずれであってもよい。
【0123】
直流電源12は、n個の電線W1,W2,・・・,Wnを介してn個の負荷B1,B2,・・・,Bnに電力を供給する。負荷Biは負荷B1と同様に作用する。全ての負荷B1,B2,・・・,Bnの種類は同一である。関連値の第1例は、負荷Buに供給される電流の電流値である。関連値の第2例は、負荷Buに印加される電圧の電圧値である。関連値の第3例は、負荷Buに供給される電力である。ここで、uは、1以上であり、かつ、n以下である範囲に属する任意の整数である。従って、uは、1,2,・・・,nのいずれであってもよい。
【0124】
個別ECU11aは、n個の電線W1,W2,・・・Wnを介したn個の負荷B1,B2,・・・,Bnへの給電を制御する。個別ECU11aは、n個の負荷B1,B2,・・・,Bnへの給電を制御することによって、n個の負荷B1,B2,・・・,Bnの動作を制御する。
【0125】
統合ECU10は、個別ECU11a及び複数の個別ECU11b中の少なくとも1つから受信した一又は複数の車両データに基づいて、n個の負荷B1,B2,・・・,Bnの動作を決定する。統合ECU10は、決定した動作を指示する指示データを個別ECU11aに送信する。個別ECU11aに送信される指示データは、n個の負荷B1,B2,・・・,Bnの作動又は動作の停止を示す。
【0126】
個別ECU11aは、n個の負荷B1,B2,・・・,Bnの作動を指示する指示データを受信した場合、n個の負荷B1,B2,・・・,Bnを同時に作動させる。個別ECU11aは、n個の負荷B1,B2,・・・,Bnの動作の停止を指示する指示データを受信した場合、n個の負荷B1,B2,・・・,Bnの動作を同時に停止させる。前述したように、「同時」は厳密な同時のみを意味しない。「同時」には実質的な同時も含まれる。
【0127】
実施形態2における個別ECU11aを、実施形態1における個別ECU11aと比較した場合、スイッチ装置の数が異なる。実施形態2における個別ECU11aは、n個のスイッチ装置G1,G2,・・・,Gnを有する。スイッチ装置Giはスイッチ装置G1と同様に構成されている。スイッチ装置Giのスイッチ30のドレイン及びソースそれぞれは、直流電源12の正極と、電線Wiの一端に接続されている。
【0128】
マイコン20は、スイッチ装置Giの駆動回路31にPWM信号又はローレベル電圧を出力する。スイッチ装置G1の構成の説明において、スイッチ装置G1及び電線W1をスイッチ装置Gi及び電線Wiに置き換えることによって、スイッチ装置Giの構成を説明することができる。従って、スイッチ装置Giが出力する電流値情報は、電線Wiを介して流れる電流の電線電流値を示す。
【0129】
スイッチ装置Giのスイッチ30がオンである場合、電流は、直流電源12の正極からスイッチ30及び電線Wiを介して流れる。従って、n個の電線W1,W2,・・・,Wnを介して流れる電流経路それぞれにn個のスイッチ30が配置されている。スイッチ装置Giでは、駆動回路31は、スイッチ30をオン又はオフに切替える。スイッチ装置Giの駆動回路31は切替え回路として機能する。
【0130】
<マイコン20の構成>
図13はマイコン20の要部構成を示すブロック図である。実施形態2におけるマイコン20を実施形態1におけるマイコン20と比較した場合、出力部及びA/D変換部の数が異なる。実施形態2におけるマイコン20は、n個の出力部H1,H2,・・・,Hn及びn個のA/D変換部J1,J2,・・・,Jnを有する。
【0131】
通信部43は、制御部45の指示に従って、車両データを統合ECU10に送信する。通信部43は、統合ECU10から、n個の負荷B1,B2,・・・,Bnの作動又は動作の停止を指示する指示データを受信する。
【0132】
出力部Hiは、制御部45の指示に従って、PWM信号をスイッチ装置Giの駆動回路31に出力する。出力部Hiが出力しているPWM信号のデューティは、制御部45によって調整される。出力部Hiは、更に、制御部45の指示に従って、ローレベル電圧をスイッチ装置Giの駆動回路31に出力する。
【0133】
スイッチ装置Giの接続ノードからA/D変換部Jiにアナログの電流値情報が入力される。A/D変換部Jiは、入力されたアナログの電圧値情報をデジタルの電流値情報に変換する。制御部45は、A/D変換部Jiからデジタルの電流値情報を取得する。A/D変換部Jiから取得した電流値情報は電線Wiの電線電流値を示す。
【0134】
制御部45は、コンピュータプログラムPを実行することによって、車両データ送信処理、n個の温度算出処理、n個の給電制御処理及び電流低減処理等を並行して実行する。n個の温度算出処理それぞれは、電線W1,W2,・・・,Wnの電線温度を算出する処理である。n個の給電制御処理それぞれは、負荷B1,B2,・・・,Bnへの給電を制御する処理である。電流低減処理は、電線W1,W2,・・・,Wn中のk個の電線の電線電流値を低減する処理である。ここで、kは、2以上であり、かつ、n未満である範囲に属する整数である。
【0135】
電線温度テーブルQ1では、n個の電線W1,W2,・・・,Wnの電線温度が示されている。電線温度テーブルQ1に示されている電線温度それぞれは、制御部45によって変更される。目標値テーブルQ2では、n個の負荷B1,B2,・・・,Bnに対応するn個の目標値と、n個の目標値の初期値とが示されている。目標値テーブルQ2に示すn個の目標値それぞれは、制御部45によって変更される。
【0136】
<電線Wiの温度算出処理>
制御部45は電線Wiの温度算出処理を周期的に実行する。電線Wiの温度算出処理は、電線W1の温度算出処理と同様である。電線W1の温度算出処理の説明において、出力部H1、A/D変換部J1及び電線W1を、出力部Hi、A/D変換部Ji及び電線Wiに置き換えることによって、電線Wiの温度算出処理を説明することができる。
従って、制御部45は、n個の電線W1,W2,・・・,Wnの電線電流値を取得し、取得したn個の電線電流値に基づいて、n個の電線W1,W2,・・・,Wnの温度を算出する。
【0137】
<負荷B1,B2の給電制御処理>
負荷B1,B2の給電制御処理のステップS11では、制御部45は、通信部43が、n個の負荷B1,B2,・・・,Bnの作動を指示する指示データを受信した否かに基づいて、実施形態1と同様に、負荷B1又は負荷B2を作動させるか否かを判定する。ステップS18では、制御部45は、通信部43が、n個の負荷B1,B2,・・・,Bnの動作の停止を指示する指示データを受信した否かに基づいて、実施形態1と同様に、負荷B1又は負荷B2の動作を停止させるか否かを判定する。
【0138】
<負荷Biの給電制御処理>
制御部45は、負荷Biの給電制御処理を、負荷B1の給電制御処理と同様に実行する。負荷B1の給電制御処理の説明において、負荷B1,B2,・・・,Bn以外の負荷B1を負荷Biに置き換える。更に、スイッチ装置G1、出力部H1及び電線W1それぞれをスイッチ装置Gi、出力部Hi及び電線Wiに置き換える。これにより、負荷Biの給電制御処理を説明することができる。従って、制御部45は、スイッチ装置Giの駆動回路31に関して、取得した電源電圧値情報が示す電源電圧値に基づいて、関連値の平均値が目標値となるPWM信号(PWM制御)のデューティを算出し、駆動回路31が行うPWM制御のデューティを、算出したデューティに調整する。負荷Biの給電制御処理の効果は、負荷B1の給電制御処理の効果と同様である。
【0139】
制御部45は、負荷B1,B2,・・・,Bnの給電制御処理のステップS15を実行することによって、n個の電線W1,W2,・・・,Wnを介して電流を通流させる。また、制御部45は、負荷B1,B2,・・・,Bnの給電制御処理のステップS17,S19を実行する。このため、制御部45は、n個の電線W1,W2,・・・,Wnの電線温度中の1つが遮断閾値以上である場合、電線温度が遮断閾値である電線を介して電流の通流を停止させる。
【0140】
n個の負荷B1,B2,・・・,Bnの作動を指示する指示データを通信部43が受信した場合、負荷B1,B2,・・・,Bnの給電制御処理のステップS15において、制御部45は、出力部H1,H2,・・・,HnにPWM信号を出力させる。このため、n個の負荷B1,B2,・・・,Bnは同時に作動する。n個の負荷B1,B2,・・・,Bnの動作の停止を指示する指示データを通信部43が受信した場合、負荷B1,B2,・・・,Bnの給電制御処理のステップS19において、制御部45は、出力部H1,H2,・・・,Hnにローレベル電圧を出力させる。このため、n個の負荷B1,B2,・・・,Bnは同時に動作を停止する。
【0141】
<電流低減処理>
実施形態2における電流低減処理のステップS31では、制御部45は、n個の出力部H1,H2,・・・,Hn中の少なくとも1つがPWM信号を出力しているか否かに基づいて、実施形態1と同様に、n個の負荷B1,B2,・・・,Bnの中で少なくとも1つの負荷が作動しているか否かを判定する。
【0142】
ステップS35では、制御部45は、全ての負荷B1,B2,・・・,Bnの中で、電線温度が温度閾値未満であるk個の正常電線に対応するk個の負荷を選択する。ここで、k個の正常電線は、n個の電線W1,W2,・・・,Wnに含まれている。なお、正常電線の数がk未満である場合、ステップS35では、制御部45は、全ての正常電線に対応する負荷を選択するとともに、不足分の負荷を、一又は複数の異常電線に対応する一又は複数の負荷から選択する。ステップS36では、制御部45は、目標値テーブルQ2において、ステップS35で選択したk個の負荷の目標値を低下させる。
【0143】
ステップS40では、制御部45は、電線温度テーブルQ1においてk個の選択電線の電線温度を読み出す。制御部45は、ステップS41では、ステップS40で読み出したk個の選択電線の電線温度に基づいて、初期値未満であるk個の目標値を更に低下させるか否かを判定する。ステップS41では、制御部45は、例えば、k個の選択電線の電線温度の少なくとも1つが温度閾値以上である場合、k個の目標値を更に低下させると判定する。制御部45は、k個の選択電線の電線温度が温度閾値未満である場合、k個の目標値を更に低下させないと判定する。ステップS42では、制御部45は、初期値未満であるk個の目標値を更に低下させる。
【0144】
なお、ステップS41では、制御部45は、ステップS40で読み出したk個の選択電線の電線温度に基づいて、初期値未満であるk個の目標値を更に低下させるか否かを各別に判定してもよい。この場合、ステップS41では、k個の目標値の中で、低下させるべき一又は複数の目標値を低下させる。
【0145】
<個別ECU11aの効果>
実施形態2における個別ECU11aは、実施形態1における個別ECU11aが奏する効果を同様に奏する。従って、全ての電線W1,W2,・・・,Wnの電線温度が、遮断閾値以上である高い温度となる可能性は低い。また、n個の電線W1,W2,・・・,Wn中のk個の電線の電線温度が遮断閾値以上の温度になる可能性は低い。従って、k個の負荷の動作が不意に停止する可能性は低い。整数kは、作動が指示されている限り、作動が継続されることが望まれている負荷の最低限の数である。
【0146】
(実施形態3)
実施形態1では、制御部45は、負荷B1,B2を作動させる場合、スイッチ装置G1,G2の駆動回路31がPWM制御を行う。しかしながら、負荷B1,B2を作動させる場合においては、スイッチ装置G1,G2のスイッチ30をオンに固定してもよい。即ち、PWM制御のデューティを1に固定してもよい。
以下では、実施形態3について、実施形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施形態1と共通している。このため、実施形態1と共通する構成部には実施形態1と同一の参照符号を付し、その構成部の説明を省略する。
【0147】
<個別ECU11aのマイコン20の構成>
出力部H1,H2それぞれは、制御部45の指示に従って、PWM信号及びローレベル電圧に加えて、ハイレベル電圧を出力する。スイッチ装置G1,G2それぞれの駆動回路31は、ハイレベル電圧が入力されている場合、スイッチ30をオンに固定する。
【0148】
<負荷B1の給電制御処理>
図14は、実施形態3における負荷B1の給電制御処理の手順を示すフローチャートである。実施形態3における負荷B1の給電制御処理では、実施形態1における負荷B1の給電制御処理と同様に、ステップS11,S16~S19を同様に実行する。このため、ステップS11,S16~S19の説明を省略する。
【0149】
実施形態3における負荷B1の給電制御処理では、制御部45は、負荷B1を作動させると判定した場合(S11:YES)、駆動回路31に、スイッチ装置G1のスイッチ30をオンに切替えさせる(ステップS51)。ステップS51では、制御部45は、出力部H1に指示して、ハイレベル電圧をスイッチ装置G1の駆動回路31にハイレベル電圧を出力させる。これにより、駆動回路31はスイッチ30をオンに切替える。制御部45は、ステップS51を実行した後、ステップS16を実行する。
【0150】
制御部45は、負荷B1の動作を停止させないと判定した場合(S18:NO)、ステップS16を実行する。従って、電線温度が遮断閾値未満である状態で通信部43が2つの負荷B1,B2の動作の停止を指示する指示データを受信していない場合、スイッチ30はオンに固定されている。
【0151】
<負荷B2の給電制御処理>
制御部45は、負荷B2の給電制御処理を、負荷B1の給電制御処理と同様に実行する。負荷B1の給電制御処理の説明において、負荷B1,B2以外の負荷B1を負荷B2に置き換える。更に、スイッチ装置G1、出力部H1及び電線W1それぞれをスイッチ装置G2、出力部H2及び電線W2に置き換える。これにより、負荷B2の給電制御処理を説明することができる。
【0152】
以上のように、制御部45は、スイッチ装置G1,G2それぞれの駆動回路31にスイッチ30をオンさせる。これにより、電流は、電線W1,W2それぞれを介して通流する。
【0153】
<電線W1,W2の温度算出処理>
電線W1の温度算出処理のステップS4に関して、出力部H1がハイレベル電圧を出力している場合、数式[1]のデューティDは1である。同様に、電線W2の温度算出処理のステップS4に関して、出力部H2がハイレベル電圧を出力している場合、数式[1]のデューティDは1である。
【0154】
<電流低減処理>
図15及び
図16は電流低減処理の手順を示すフローチャートである。実施形態3における電流低減処理では、実施形態1における電流低減処理と同様に、ステップS31,S33~S35,S37,S38,S40を同様に実行する。このため、ステップS31,S33~S35,S37,S38,S40の説明を省略する。
【0155】
実施形態3における電流低減処理において、制御部45は、2つの負荷B1,B2の中で少なくとも1つの負荷が作動していると判定した場合(S31:YES)、2つの出力部H1,H2中の少なくとも1つの出力部がPWM信号を出力しているか否かを判定する(ステップS61)。制御部45は、少なくとも1つの出力部がPWM信号を出力していると判定した場合(S61:YES)、ステップS33を実行する。制御部45は、少なくとも1つの出力部がPWM信号を出力していないと判定した場合(S61:NO)、ステップS37を実行する。
【0156】
制御部45は、ステップS35を実行した後、出力部H1,H2の一方に指示して、2つのスイッチ装置G1,G2の中で、ステップS35で選択した負荷に対応するスイッチ装置の駆動回路31にPWM信号を出力させる(ステップS62)。これにより、PWM信号が入力された駆動回路31は、スイッチ30のPWM制御を行う。結果、選択電線の電線電流値の平均値が低下する。ここで、PWM信号のデューティは、予め設定されている値である。なお、PWM信号のデューティは、実施形態1と同様に、目標値テーブルQ2において示される目標値と、直流電源12の電源電圧値とに基づいて算出されたデューティであってもよい。制御部45は、ステップS61を実行した後、電流低減処理を終了する。
制御部45は、電流低減処理を終了した後、再び、電流低減処理を実行し、負荷B1,B2の少なくとも1つが作動するまで待機する。
【0157】
制御部45は、異常電線の電線温度が温度閾値未満であると判定した場合(S38:YES)、全てのスイッチ装置G1,G2の駆動回路31に指示して、スイッチ30をオンに固定させる(ステップS63)。ステップS63では、制御部45は、全ての出力部H1,H2にハイレベル電圧を出力させる。これにより、全てのスイッチ30がオンに固定される。選択電線の電線電流値の平均値は上昇する。制御部45は、ステップS63を実行した後、電流低減処理を終了する。
【0158】
制御部45は、ステップS40を実行した後、ステップS40で読み出した選択電線の電線温度に基づいて、出力部H1,H2の1つが出力しているPWM信号のデューティを更に低下させるか否かを判定する(ステップS64)。ステップS64では、制御部45は、例えば、選択電線の電線温度が温度閾値以上である場合、デューティを更に低下させると判定する。制御部45は、選択電線の電線温度が温度閾値未満である場合、デューティを更に低下させないと判定する。
【0159】
制御部45は、デューティを更に低下させると判定した場合(S64:YES)、PWM信号のデューティを更に低下させる(ステップS65)。制御部45は、デューティを更に低下させないと判定した場合(S64:NO)、又は、ステップS65を実行した後、電流低減処理を終了する。
制御部45は、電流低減処理を終了した後、再び、電流低減処理を実行し、負荷B1,B2の少なくとも1つが作動するまで待機する。
【0160】
<個別ECU11aの効果>
実施形態3における個別ECU11aは、実施形態1における個別ECU11aが奏する効果の中で、電源電圧値に基づいてPWM信号のデューティを変更することによって得られる効果を除く他の効果を同様に奏する。従って、電線W1,W2の電線温度が、遮断閾値以上である高い温度となる可能性は低い。
【0161】
<変形例>
実施形態2において、実施形態1の構成を、負荷の数がnである構成に拡張したように、実施形態3の構成を、負荷の数がnである構成に拡張してもよい。この場合、実施形態2において、負荷B1,B2,・・・,Bnの給電制御処理及び電流低減処理等を実施形態3と同様に実行する。指示データは、n個の負荷B1,B2,・・・,Bnの作動又は動作の停止を指示する。電流低減処理のステップS31では、制御部45は、n個の負荷B1,B2,・・・,Bnの中で少なくとも1つの負荷が作動しているかを判定する。
【0162】
電流低減処理のステップS35では、実施形態2と同様に、制御部45は、全ての負荷B1,B2,・・・,Bnの中で、電線温度が温度閾値未満であるk個の正常電線に対応するk個の負荷を選択する。なお、正常電線の数がk未満である場合、ステップS35では、制御部45は、全ての正常電線に対応する負荷を選択するとともに、不足分の負荷を、一又は複数の異常電線に対応する一又は複数の負荷から選択する。
【0163】
ステップS62では、ステップS35を実行した後、出力部H1,H2,・・・,Hn中のk個の出力部に指示して、ステップS35で選択したk個の負荷に対応するk個のスイッチ装置の駆動回路31にPWM信号を出力させる。ステップS63では、制御部45は、全てのスイッチ装置G1,G2,・・・,Gnの駆動回路31に指示して、スイッチ30をオンに固定させる。
【0164】
ステップS40では、制御部45は、電線温度テーブルQ1においてk個の選択電線の電線温度を読み出す。制御部45は、ステップS64では、ステップS40で読み出したk個の選択電線の電線温度に基づいて、k個のPWM信号のデューティを更に低下させるか否かを判定する。ステップS64では、制御部45は、例えば、k個の選択電線の電線温度の少なくとも1つが温度閾値以上である場合、k個のPWM信号のデューティを更に低下させると判定する。制御部45は、k個の選択電線の電線温度が温度閾値未満である場合、k個のPWM信号のデューティを更に低下させないと判定する。ステップS64では、制御部45は、k個のPWM信号のデューティを更に低下させる。
【0165】
なお、ステップS64では、制御部45は、ステップS40で読み出したk個の選択電線の電線温度に基づいて、k個のPWM信号のデューティを更に低下させるか否かを各別に判定してもよい。この場合、ステップS64では、k個のPWM信号のデューティの中で、低下させるべき一又は複数のPWM信号のデューティを低下させる。
【0166】
実施形態1~3において、選択電線の電線電流値の平均値を低下させる場合に、異常電線の電線電流値の平均値も低下させてもよい。また、電線電流値を調整する方法は、PWM制御のデューティを調整する方法に限定されない。電流経路に可変抵抗が配置されている場合、可変抵抗の抵抗値を調整することによって、電線電流値を調整してもよい。電線温度を算出する装置は、個別ECU11aに限定されない。例えば、統合ECU10が電線温度を算出してもよい。給電を制御する給電制御装置は、統合ECU10と通信する個別ECU11aに限定されない。異常電線の数は、1に限定されず、2以上であってもよい。異常電線の数が2以上である場合、電流低減処理のステップS38では、全ての異常電線の電線温度が温度閾値未満であるか否かを判定する。
【0167】
個別ECU11a及び複数の個別ECU11bそれぞれに接続されているセンサの数は、1に限定されず、2以上であってもよい。各個別ECU11bに接続されているアクチュエータ13の数は、1に限定されず、2以上であってもよい。
スイッチ30は、Nチャネル型のFETに限定されず、半導体スイッチ又はリレー接点等であってもよい。半導体スイッチとして、Nチャネル型のFETの他に、Pチャネル型のFET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)及びバイポーラトランジスタ等がある。
【0168】
開示された実施形態1~3はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0169】
1 制御システム
10 統合ECU
11a 個別ECU(給電制御装置、車載制御装置)
11b 個別ECU
12 直流電源
13 アクチュエータ
14a,14b センサ
20 マイコン
21 電圧検出部
22 温度検出部
30 スイッチ
31 駆動回路(切替え回路)
32 電流出力部
33 抵抗
40,41 A/D変換部
42 入力部
43 通信部(受信部)
44 記憶部
45 制御部(処理部)
46 内部バス
A 記憶媒体
B1,B2,・・・,Bn 負荷
C 車両
G1,G2,・・・,Gn スイッチ装置
H1,H2,・・・,Hn 出力部
J1,J2,・・・,Jn A/D変換部
P コンピュータプログラム
Q1 電線温度テーブル
Q2 目標値テーブル
W1,W2,・・・,Wn 電線