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特許7517089トロリ線管理装置、トロリ線管理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】トロリ線管理装置、トロリ線管理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60M 1/28 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
B60M1/28 R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020184911
(22)【出願日】2020-11-05
(65)【公開番号】P2022074670
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】建山 弓弦
(72)【発明者】
【氏名】川端 正憲
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大地
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-214401(JP,A)
【文献】特開2016-205945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60M 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線路に設けられたトロリ線の少なくとも一部に対する測定結果を用いて、所定時間が経過した後の、前記少なくとも一部に含まれる複数の位置それぞれの残存直径又は摩耗量の予測値を算出する予測手段と、
前記予測値を用いた出力を行う出力手段と、
を備え、
前記トロリ線は、前記複数の位置の間隔よりも長い区間に分けて管理されており、
前記出力手段は、前記予測値が基準を満たした前記位置を要注意位置として選択し、当該要注意位置を含む前記区間を示す情報を出力し、
前記予測手段は、互いに異なるタイミングにおける複数の前記測定結果別に、前記予測値を算出し、
前記出力手段は、複数の前記予測値を用いて前記要注意位置を選択する、トロリ線管理装置。
【請求項2】
請求項に記載のトロリ線管理装置において、
前記出力手段は、少なくとも一つの前記予測値が前記基準を満たした前記位置を前記要注意位置とするトロリ線管理装置。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか一項に記載のトロリ線管理装置において、
前記出力手段は、
横軸が前記トロリ線の延在方向を示すチャートを出力し、
前記チャートに、前記要注意位置を含む前記区間を示す表示を含ませるトロリ線管理装置。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載のトロリ線管理装置において、
前記予測手段は、前記測定結果を入力の少なくとも一部として前記予測値を出力とするモデルを用いて前記予測値を算出する、トロリ線管理装置。
【請求項5】
コンピュータが、
線路に設けられたトロリ線の少なくとも一部に対する測定結果を用いて、所定時間が経過した後の、前記少なくとも一部に含まれる複数の位置それぞれの残存直径又は摩耗量の予測値を算出
前記予測値を用いた出力を行い、
前記トロリ線は、前記複数の位置の間隔よりも長い区間に分けて管理されており、
記コンピュータは
記予測値が基準を満たした前記位置を要注意位置として選択し、当該要注意位置を含む前記区間を示す情報を出力し、
互いに異なるタイミングにおける複数の前記測定結果別に、前記予測値を算出し、
複数の前記予測値を用いて前記要注意位置を選択する、トロリ線管理方法。
【請求項6】
コンピュータに、
線路に設けられたトロリ線の少なくとも一部に対する測定結果を用いて、所定時間が
経過した後の、前記少なくとも一部に含まれる複数の位置それぞれの残存直径又は摩耗量
の予測値を算出する予測処理と、
前記予測値を用いた出力を行う出力処理と、
を行わせ
前記トロリ線は、前記複数の位置の間隔よりも長い区間に分けて管理されており、
前記出力処理は、前記予測値が基準を満たした前記位置を要注意位置として選択し、当該要注意位置を含む前記区間を示す情報を出力し、
前記予測処理は、互いに異なるタイミングにおける複数の前記測定結果別に、前記予測値を算出し、
前記出力処理は、複数の前記予測値を用いて前記要注意位置を選択する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トロリ線管理装置、トロリ線管理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電車には、トロリ線から電力が供給される。この電力の供給に際し、トロリ線は、電車に設けられたパンタグラフに接触するため、徐々に摩耗していく。このため、トロリ線の残存直径が所定値以下になると、そのトロリ線を交換する必要が出てくる。
【0003】
なお、特許文献1には、架線を撮影した検査画像を処理することにより、当該架線の磨耗領域を検出することが記載されている。特許文献1において、磨耗領域を検出する手法は複数準備される。そして、複数の検査画像に対してそれぞれに最も適した摩耗領域検出手法が選択される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-037356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トロリ線の交換スケジュールを決定するためには、トロリ線の残存直径や磨耗量を予測することが望ましい。この際、トロリ線の延在方向において、残存直径や磨耗量の予測をある程度細かい単位長さ毎に行うのが好ましい。一方、トロリ線は、例えば電柱の間など、所定の区間単位で交換されるため、この区間単位で管理されている場合がほとんどである。このため、単に残存直径や磨耗量がトロリ線の交換基準を満たすと予想される位置を、上記した単位長さを用いて示すのみでは、当該位置を当該トロリ線の管理者に十分に認識させることは難しい。
【0006】
本発明の目的の一つは、トロリ線の残存直径や磨耗量の予測をある程度細かい単位長さ毎に行う場合において、残存直径や磨耗量がトロリ線の交換基準を満たすと予想される位置を、当該トロリ線の管理者に認識させやすくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、線路に設けられたトロリ線の少なくとも一部に対する測定結果を用いて、所定時間が経過した後の、前記少なくとも一部に含まれる複数の位置それぞれの残存直径又は摩耗量の予測値を算出する予測手段と、
前記予測値を用いた出力を行う出力手段と、
を備え、
前記トロリ線は、前記複数の位置の間隔よりも長い区間に分けて管理されており、
前記出力手段は、前記予測値が基準を満たした前記位置を要注意位置として選択し、当該要注意位置を含む前記区間を示す情報を出力する、トロリ線管理装置が提供される。
【0008】
本発明によれば、コンピュータが、
線路に設けられたトロリ線の少なくとも一部に対する測定結果を用いて、所定時間が経過した後の、前記少なくとも一部に含まれる複数の位置それぞれの残存直径又は摩耗量の予測値を算出する算出工程と、
前記予測値を用いた出力を行う出力工程と、
を行い
前記トロリ線は、前記複数の位置の間隔よりも長い区間に分けて管理されており、
前記出力工程において、前記コンピュータは、前記予測値が基準を満たした前記位置を要注意位置として選択し、当該要注意位置を含む前記区間を示す情報を出力する、トロリ線管理方法が提供される。
【0009】
本発明によれば、コンピュータに、
線路に設けられたトロリ線の少なくとも一部に対する測定結果を用いて、所定時間が経過した後の、前記少なくとも一部に含まれる複数の位置それぞれの残存直径又は摩耗量の予測値を算出する予測処理と、
前記予測値を用いた出力を行う出力処理と、
を行わせ
前記トロリ線は、前記複数の位置の間隔よりも長い区間に分けて管理されており、
前記出力処理は、前記予測値が基準を満たした前記位置を要注意位置として選択し、当該要注意位置を含む前記区間を示す情報を出力する、プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、残存直径や磨耗量がトロリ線の交換基準を満たすと予想される位置を、当該トロリ線の管理者に認識させやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るトロリ線管理装置の機能構成の一例を示す図である。
図2】データ記憶部が記憶しているデータ構成の一例を示す図である。
図3】出力部が出力する情報の一例を示す図である。
図4】トロリ線管理装置のハードウェア構成例を示す図である。
図5】トロリ線管理装置が行う処理の第1例を示すフローチャートである。
図6】トロリ線管理装置が行う処理の第2例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0013】
図1は、実施形態に係るトロリ線管理装置10の機能構成の一例を示す図である。本図に示すトロリ線管理装置10は、予測部110及び出力部120を備えている。
【0014】
予測部110は、線路に設けられたトロリ線の少なくとも一部に対する測定結果を用いて、所定時間が経過した後のトロリ線の残存直径又は摩耗量(以下、残存直径と記載)の予測値を算出する。トロリ線のうち予測値の算出対象となる領域は、上記した少なくとも一部である。そして、予測部110は、上記した予測値を、対象となる領域に含まれる複数の位置毎に算出する。
【0015】
後述するように、予測部110は、トロリ線の残存直径の予測値を算出する際、トロリ線に関する測定結果又はこの測定結果を処理したデータを用いる。トロリ線に関する測定は定期的に行われる。そして、予測値の算出対象となる「所定時間」は、例えばこの測定間隔を単位時間として、当該単位時間の整数倍として定義される。
【0016】
出力部120は、予測部110が算出した予測値を用いた出力を行う。トロリ線は、例えば電柱の間など、所定の区間単位で交換されるため、この区間単位で管理される。この区間は、上記した複数の位置の間隔よりも長い。そして出力部120は、予測値が基準を満たした位置を要注意位置として選択し、当該要注意位置を含む区間を示す情報を出力する。例えば予測値が残存直径を示す場合、要注意位置は、予測値が第1の基準値以下となった位置である。また予測値が磨耗量を示す場合、要注意位置は、予測値が第2の基準値以上となった位置である。出力部120による出力は、例えばトロリ線の管理者が見るディスプレイに対して行われる。
【0017】
トロリ線を管理する際の区間の長さは、例えば数十m以上である。一方、予測値の算出対象となる位置の間隔は、例えば1m以下、好ましくは50cm以下、さらに好ましくは10cmである。このため、上記した要注意位置をそのまま示す情報を出力しても、トロリ線の管理担当者はその位置を把握しにくい。これに対して本実施形態において出力部120は、上記したように、要注意位置を含む区間を示す情報を出力する。従って、トロリ線の管理担当者はその位置を把握しやすい。
【0018】
なお、トロリ線の上記した各位置や各区間は、例えば基準地点からの距離を用いて定義(管理)されている。この定義は、例えばデータ記憶部130に記憶されている。このため、出力部120は、要注意位置が特定されると、当該要注意位置を含む区間を特定することができる。
【0019】
また、予測値の算出対象となる位置の間隔は、等間隔であるのが好ましい。一方、トロリ線の管理に関する上記した区間は、互いに異なる場合が多い。
【0020】
本実施形態において、予測部110は、機械学習により生成されたモデルを用いて、上記した予測値を算出する。このモデルはモデル記憶部140に記憶されている。モデルは、例えばトロリ線管理装置10とは異なる装置を用いて生成されている。このモデルの目的変数(出力)は上記した予測値である。一方、このモデルの説明変数(入力)の項目については、他の図を用いて後述する。
【0021】
予測部110が用いる入力値(説明変数の具体的な値)は、データ記憶部130に記憶されている。この入力値は、例えば保守用の車両が線路を走行したときに測定されたデータ、またはこれらのデータを処理した値である。データ記憶部130のデータ構成についても、他の図を用いて後述する。
【0022】
図2は、データ記憶部130が記憶しているデータ構成の一例を示す図である。データ記憶部130は、測定タイミング別かつ測定位置(例えば基準地点からの距離)別に、トロリ線に関する測定結果及び/又は測定結果を処理したデータすなわち予測部110が用いる入力値を記憶している。測定タイミングは、例えば年月日単位で管理されている。また測定位置は、例えば線路の延在方向(すなわちトロリ線の延在方向)において、基準地点からの距離として定義される。また、データ記憶部130が記憶している入力値(すなわちモデル記憶部140が記憶しているモデルで用いられる説明変数)は、例えば測定時の残存直径(又は磨耗量)、測定時の車両の速度、測定時のトロリ線の高さ、パンタグラフのうち測定時にトロリ線が接触していた位置(線路の幅方向の位置)、測定時のパンタグラフとトロリ線の接触圧、及び測定位置の周囲における予め定められた部品の有無である。ここでの「部品」は、例えば特定のコネクタであるが、これに限定されない。
【0023】
なお、測定結果の処理は、トロリ線管理装置10が行ってもよいし、トロリ線管理装置10とは異なる装置が行ってもよい。
【0024】
図3は、出力部120が出力する情報の一例を示す図である。本図に示す例において、出力部120はチャートを出力する。このチャートにおいて、横軸はトロリ線の延在方向における、基準地点からの距離を示しており、縦軸は残存直径(又は磨耗量)を示している。なお、本図において、横軸で示されている距離は、単位区間の数で示されている。本図において、残存直径(又は磨耗量)として、現在の実測値、及び所定時間が経過した後の予測値、及び所定時間前(例えば4回前)の実測値のそれぞれが表示されている。
【0025】
また出力部120は、このチャートに、又はこのチャートに付随して、要注意位置を含む区間を示す表示を含ませている。具体的には、出力部120は、横軸のうち要注意位置を含む区間に相当する部分に、所定のマーク(例えば特定の色の線)を配置している。トロリ線の管理者は、ディスプレイに表示されたこのマークの位置を確認することにより、トロリ線の内摩耗が進んでいる位置を把握することができる。
【0026】
なお、本図において、ユーザがカーソル等を用いて特定の位置を選択する(一例としてカーソルを重ねる)と、出力部120は、当該位置におけるトロリ線の詳細情報をディスプレイ等に表示させてもよい。ここで表示される詳細情報は、例えばデータ記憶部130に記憶されている情報の少なくとも一部(例えば基準地点から測定位置までの距離を含む)であってもよいし、チャートで示されていないタイミング(例えば1回前、2回前、及び3回前)における残存直径の実測値であってもよい。
【0027】
なお、出力部120が出力する情報の表示形態は、図3に示した例に限定されない。他例えば出力部120は、表形式で情報を表示させてもよい。この場合、要注意位置に相当する値は、他の位置と異なる形態(例えばハイライト表示)で表示される。
【0028】
図4は、トロリ線管理装置10のハードウェア構成例を示す図である。トロリ線管理装置10は、バス1010、プロセッサ1020、メモリ1030、ストレージデバイス1040、入出力インタフェース1050、及びネットワークインタフェース1060を有する。
【0029】
バス1010は、プロセッサ1020、メモリ1030、ストレージデバイス1040、入出力インタフェース1050、及びネットワークインタフェース1060が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ1020などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。
【0030】
プロセッサ1020は、CPU(Central Processing Unit) やGPU(Graphics Processing Unit)などで実現されるプロセッサである。
【0031】
メモリ1030は、RAM(Random Access Memory)などで実現される主記憶装置である。
【0032】
ストレージデバイス1040は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、メモリカード、又はROM(Read Only Memory)などで実現される補助記憶装置である。ストレージデバイス1040はトロリ線管理装置10の各機能(例えば予測部110及び出力部120)を実現するプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ1020がこれら各プログラムモジュールをメモリ1030上に読み込んで実行することで、そのプログラムモジュールに対応する各機能が実現される。また、ストレージデバイス1040はデータ記憶部130及びモデル記憶部140としても機能する。
【0033】
入出力インタフェース1050は、トロリ線管理装置10と各種入出力機器とを接続するためのインタフェースである。
【0034】
ネットワークインタフェース1060は、トロリ線管理装置10をネットワークに接続するためのインタフェースである。このネットワークは、例えばLAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)である。ネットワークインタフェース1060がネットワークに接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。トロリ線管理装置10は、ネットワークインタフェース1060を介してトロリ線に関する測定結果及び/又は測定結果を処理したデータを受信してもよい。
【0035】
図5は、トロリ線管理装置10が行う処理の第1例を示すフローチャートである。トロリ線管理装置10は、例えば所定の入力がトロリ線管理装置10のユーザ(例えばトロリ線の管理者)によって行われるたびに、本図に示す処理を行う。
【0036】
まずトロリ線管理装置10の予測部110は、データ記憶部130から、トロリ線に関する測定結果及び/又は測定結果を処理したデータ(以下、測定結果と記載)のうち、所定期間前の測定結果を読み出す。ここで、所定期間は予測部110が予め記憶していてもよいし、トロリ線管理装置10のユーザによって入力されてもよい(ステップS10)。また予測部110は、モデル記憶部140からモデルを読み出す。なお、ステップS10において、ユーザは、読みだすべき測定結果を直接指定してもよい。
【0037】
次いで予測部110は、モデル記憶部140から読み出したモデルに、データ記憶部130から読み出した測定結果を入力することにより、トロリ線の残存直径の予測値を、当該トロリ線の複数の位置それぞれについて算出する(ステップS20)。ただし、各位置について算出される予測値は一つである。ここで予測値の算出対象となる位置の間隔は、上記したように、例えば1m以下であり、トロリ線が管理されている区間よりも長い。言い換えると、一つの区間は、予測値の算出対象となる位置を複数含んでいる(ステップS20)。
【0038】
次いで出力部120は、ステップS20で算出された予測値を用いて、要注意位置を選択する。上記したように、例えば予測値が残存直径を示す場合、要注意位置は、予測値が基準値以下となった位置である(ステップS30)。次いで出力部120は、要注意位置を含む区間を特定し(ステップS40)、この特定した区間を示す出力情報を生成する。出力情報の一例は、例えば図3に示したチャートである(ステップS50)。その後、出力部120は、出力情報を出力する。出力情報の出力先の一例は、上記したように、トロリ線の管理者が見るディスプレイである(ステップS60)。
【0039】
図6は、トロリ線管理装置10が行う処理の第2例を示すフローチャートである。本図に示すフローチャートは、以下の点を除いて図5に示したとおりである。
【0040】
まず予測部110は、複数のタイミングにおける測定結果を読み出す。言い換えると、予測部110は、第1の期間前の測定結果、第2の期間前の測定結果・・・・を読み出す(ステップS12)。次いで予測部110は、複数のタイミングそれぞれの測定結果を用いて、所定時間が経過した後のトロリ線の残存直径の予測値を複数回算出する。ここでの「所定期間」は、複数のタイミングのいずれに対しても同じ値となる。言い換えると、予測部110は、互いに異なるタイミングで測定された複数の測定結果のそれぞれ別に、現在から同一の時間が経過した後(例えば1か月後)のトロリ線の残存直径の予測値を、トロリ線の複数の位置それぞれに対して算出する(ステップS22)。この際、予測部110が用いるモデルは、複数のタイミング別に準備されていてもよい。
【0041】
そして出力部120は、複数の予測値を用いて要注意位置を選択する。例えば出力部120は、複数の予測値のうち最悪値(例えば予測された残存直径の最小値)を選択し、当該最悪値が基準を満たした場合に当該位置を要注意地として選択する(ステップS30)。この処理は、少なくとも一つの予測値が基準を満たした位置を、要注意位置として選択することを意味する。
【0042】
その後の処理は、図5を用いて説明したとおりである。
【0043】
以上、本実施形態によれば、トロリ線管理装置10は、トロリ線に関する測定結果を用いて、所定時間が経過した後の当該トロリ線の残存直径の予測値を、トロリ線の複数の位置それぞれについて算出する。一方、トロリ線は複数の区間に分けて管理されているが、この区間は、予測値が算出される位置の間隔よりも長い。そこで出力部120は、予測値が基準を満たした位置(要注意位置)があった場合、当該要注意位置を含む区間を選択し、特外区間を示す情報を出力する。したがって、トロリ線の管理者は、残存直径や磨耗量がトロリ線の交換基準を満たすと予想される位置(区間)を認識しやすい。
【0044】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0045】
また、上述の説明で用いた複数のフローチャートでは、複数の工程(処理)が順番に記載されているが、各実施形態で実行される工程の実行順序は、その記載の順番に制限されない。各実施形態では、図示される工程の順番を内容的に支障のない範囲で変更することができる。また、上述の各実施形態は、内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。
【0046】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下に限られない。
1.線路に設けられたトロリ線の少なくとも一部に対する測定結果を用いて、所定時間が経過した後の、前記少なくとも一部に含まれる複数の位置それぞれの残存直径又は摩耗量の予測値を算出する予測手段と、
前記予測値を用いた出力を行う出力手段と、
を備え、
前記トロリ線は、前記複数の位置の間隔よりも長い区間に分けて管理されており、
前記出力手段は、前記予測値が基準を満たした前記位置を要注意位置として選択し、当該要注意位置を含む前記区間を示す情報を出力する、トロリ線管理装置。
2.上記1に記載のトロリ線管理装置において、
前記予測手段は、互いに異なるタイミングにおける複数の前記測定結果別に、前記予測値を算出し、
前記出力手段は、複数の前記予測値を用いて前記要注意位置を選択する、トロリ線管理装置。
3.上記2に記載のトロリ線管理装置において、
前記出力手段は、少なくとも一つの前記予測値が前記基準を満たした前記位置を前記要注意位置とするトロリ線管理装置。
4.上記1~3のいずれか一項に記載のトロリ線管理装置において、
前記出力手段は、
横軸が前記トロリ線の延在方向を示すチャートを出力し、
前記チャートに、前記要注意位置を含む前記区間を示す表示を含ませるトロリ線管理装置。
5.上記1~4のいずれか一項に記載のトロリ線管理装置において、
前記予測手段は、前記測定結果を入力の少なくとも一部として前記予測値を出力とするモデルを用いて前記測定値を算出する、トロリ線管理装置。
6.コンピュータが、
線路に設けられたトロリ線の少なくとも一部に対する測定結果を用いて、所定時間が経過した後の、前記少なくとも一部に含まれる複数の位置それぞれの残存直径又は摩耗量の予測値を算出する算出工程と、
前記予測値を用いた出力を行う出力工程と、
を行い
前記トロリ線は、前記複数の位置の間隔よりも長い区間に分けて管理されており、
前記出力工程において、前記コンピュータは、前記予測値が基準を満たした前記位置を要注意位置として選択し、当該要注意位置を含む前記区間を示す情報を出力する、トロリ線管理方法。
7.上記6に記載のトロリ線管理方法において、
前記コンピュータは、
前記予測工程において、互いに異なるタイミングにおける複数の前記測定結果別に、前記予測値を算出し、
前記出力工程において、複数の前記予測値を用いて前記要注意位置を選択する、トロリ線管理方法。
8.上記7に記載のトロリ線管理方法において、
前記コンピュータは、前記出力工程において、少なくとも一つの前記予測値が前記基準を満たした前記位置を前記要注意位置とするトロリ線管理方法。
9.上記6~8のいずれか一項に記載のトロリ線管理方法において、
前記コンピュータは、前記出力工程において、
横軸が前記トロリ線の延在方向を示すチャートを出力し、
前記チャートに、前記要注意位置を含む前記区間を示す表示を含ませるトロリ線管理方法。
10.上記6~9のいずれか一項に記載のトロリ線管理方法において、
前記コンピュータは、前記予測工程において、前記測定結果を入力の少なくとも一部として前記予測値を出力とするモデルを用いて前記測定値を算出する、トロリ線管理方法。
11.コンピュータに、
線路に設けられたトロリ線の少なくとも一部に対する測定結果を用いて、所定時間が経過した後の、前記少なくとも一部に含まれる複数の位置それぞれの残存直径又は摩耗量の予測値を算出する予測処理と、
前記予測値を用いた出力を行う出力処理と、
を行わせ
前記トロリ線は、前記複数の位置の間隔よりも長い区間に分けて管理されており、
前記出力処理は、前記予測値が基準を満たした前記位置を要注意位置として選択し、当該要注意位置を含む前記区間を示す情報を出力する、プログラム。
12.上記11に記載のプログラムにおいて、
前記予測処理は、互いに異なるタイミングにおける複数の前記測定結果別に、前記予測値を算出し、
前記出力処理は、複数の前記予測値を用いて前記要注意位置を選択する、プログラム。
13.上記12に記載のプログラムにおいて、
前記出力処理は、少なくとも一つの前記予測値が前記基準を満たした前記位置を前記要注意位置とするプログラム。
14.上記11~13のいずれか一項に記載のプログラムにおいて、
前記出力処理は、
横軸が前記トロリ線の延在方向を示すチャートを出力し、
前記チャートに、前記要注意位置を含む前記区間を示す表示を含ませるプログラム。
15.上記11~14のいずれか一項に記載のプログラムにおいて、
前記予測処理は、前記測定結果を入力の少なくとも一部として前記予測値を出力とするモデルを用いて前記測定値を算出する、プログラム。
【符号の説明】
【0047】
10 トロリ線管理装置
110 予測部
120 判断部
130 データ記憶部
140 モデル記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6