(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】電力変換装置および空気調和機
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20240709BHJP
H02M 7/06 20060101ALI20240709BHJP
F24F 11/88 20180101ALI20240709BHJP
【FI】
H02M7/12 A
H02M7/06 A
H02M7/12 M
H02M7/12 W
F24F11/88
(21)【出願番号】P 2020185406
(22)【出願日】2020-11-05
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 理恵
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/006531(WO,A1)
【文献】特開2006-204056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
H02M 7/06
F24F 11/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流電源の三相を第一の直流電圧に変換する第一コンバータと、
前記三相交流電源の一相または二相を第二の直流電圧に変換する第二コンバータと、
前記三相交流電源から前記第一コンバータへ入力される三相の電流間にアンバランスが発生しているか否かを判定する判定部と、
前記アンバランスが発生しているときに、前記アンバランスを解消する制御を前記第一コンバータに対して行う制御部と、
を具備する電力変換装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記三相交流電源から前記第一コンバータへ入力される前記三相の電流に基づく値と所定の比較値とを比較することにより前記アンバランスが発生しているか否かを判定する、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記三相の電流のピーク値に基づいて、前記アンバランスが発生しているか否かを判定する、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記三相の電流の電流波形におけるゼロクロス点からピーク点までの経過時間に基づいて、前記アンバランスが発生しているか否かを判定する、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
請求項1から
4の何れか一項に記載の電力変換装置を具備する空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置および空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
コンプレッサとファンとを有する空気調和機の室外機には、コンプレッサ用のモータ(以下では「コンプレッサモータ」と呼ぶことがある)とは別に、ファン用のモータ(以下では「ファンモータ」と呼ぶことがある)が搭載される。ファンモータの負荷は、コンプレッサモータの負荷より軽いため、三相交流電源を入力電源とする空気調和機の中には、コンプレッサモータの駆動回路への入力電源として三相交流電源を用いる一方で、ファンモータの駆動回路への入力電源として、三相交流電源のうちの何れか一相を用いるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、三相交流電源でコンプレッサモータを駆動する一方で、三相交流電源のうちの何れか一相でファンモータを駆動すると、ファンモータに負荷変動が生じた場合等に、三相電源からみた負荷のバランスがくずれることがある。三相電源からみた負荷のバランスがくずれると、三相間の入力電流にばらつきが生じて電流高調波が増大する。以下では、三相間の入力電流に生じるばらつきを「アンバランス」と呼ぶことがある。
【0005】
そこで、本開示では、電流高調波を抑制できる技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の電力変換装置は、第一コンバータと、第二コンバータと、判定部と、制御部とを有する。前記第一コンバータは、三相交流電源の三相を第一の直流電圧に変換する。前記第二コンバータは、前記三相交流電源の一相または二相を第二の直流電圧に変換する。前記判定部は、前記三相交流電源から前記第一コンバータへ入力される三相の電流間にアンバランスが発生しているか否かを判定する。前記制御部は、前記アンバランスが発生しているときに、前記アンバランスを解消する制御を前記第一コンバータに対して行う。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、電流高調波を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の実施例の電力変換装置及び室外機の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施例の電力変換装置の動作例の説明に供する図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施例の電力変換装置の動作例の説明に供する図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施例の電力変換装置の動作例の説明に供する図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施例の電力変換装置の動作例の説明に供する図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施例の電力変換装置の動作例の説明に供する図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施例の電力変換装置の動作例の説明に供する図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施例の電力変換装置の動作例の説明に供する図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施例の電力変換装置における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施例を図面に基づいて説明する。以下の実施例において同一の構成には同一の符号を付す。
【0010】
[実施例]
<電力変換装置の構成>
図1は、本開示の実施例の電力変換装置及び室外機の構成例を示す図である。例えば、
図1に示す電力変換装置200は、複数のモータM1,M2を有する室外機300に搭載され、室外機300と室内機とを有する空気調和機に使用可能である。
【0011】
図1において、室外機300は、電力変換装置200と、第一インバータ12と、第二インバータ22と、モータM1と、モータM2とを有する。電力変換装置200は、三相交流電源100と、第一インバータ12と、第二インバータ22とに接続される。三相交流電源100は、電力変換装置200の入力電源として用いられる。第一インバータ12はモータM1に接続され、第二インバータ22はモータM2に接続される。負荷の大きさとして、モータM2は、モータM1より小さい。モータM2の一例としてファンモータが挙げられ、モータM1の一例としてコンプレッサモータが挙げられ、ファンモータとコンプレッサモータとによって室外機300が構成される。
【0012】
電力変換装置200は、第一コンバータ11と、第二コンバータ21とを有する。第一コンバータ11の入力には、三相交流電源100のR相、S相及びT相の三相が接続される一方で、第二コンバータ21の入力には、三相交流電源100のR相、S相及びT相のうちの何れか一相または二相が接続される。
図1には、第二コンバータ21が単相電源で駆動するときに、S相の一相と三相交流電源100の中性点Nとが第二コンバータ21への入力電源として用いられ、第二コンバータ21が二相電源で駆動するときに、R相及びT相の二相が第二コンバータ21への入力電源として用いられる場合を一例に挙げる。但し、第二コンバータ21の単相電源としてR相またはT相の一相が用いられても良く、また、第二コンバータ21の二相電源として、R相及びS相の二相、または、S相及びT相の二相が用いられても良い。
【0013】
また、電力変換装置200は、ゼロクロス検出部31と、入力電圧検出部32と、入力電流検出部33と、アンバランス判定部34と、直流電圧検出部35と、制御部36と、記憶部37とを有する。ゼロクロス検出部31、入力電圧検出部32、入力電流検出部33、アンバランス判定部34、直流電圧検出部35及び制御部36は、ハードウェアとして、例えばMCU(Micro Control Unit)により実現される。記憶部37は、ハードウェアとして、例えばメモリにより実現される。
【0014】
第一コンバータ11は、制御部36からのスイッチング制御の下で、三相交流電源100のR相、S相及びT相の三相を直流電圧DC1に変換し、直流電圧DC1を第一インバータ12へ供給する。ここで、第一コンバータ11が三相交流電源100のR相、S相及びT相の三相を直流電圧DC1に変換する動作には、例えば、整流、力率改善、昇圧等が含まれる。
【0015】
第一インバータ12は、第一コンバータ11から供給される直流電圧DC1を、制御部36からのスイッチング制御の下で、U相、V相及びW相の三相交流電力に変換し、三相交流電力をモータM1へ供給する。
【0016】
第二コンバータ21は、単相電源で駆動するときは、S相の一相を直流電圧DC2に変換し、直流電圧DC2を第二インバータ22へ供給する。また、第二コンバータ21は、二相電源で駆動するときは、S相及びT相の二相を直流電圧DC2に変換し、直流電圧DC2を第二インバータ22へ供給する。なお、第二コンバータ21は、単相電源で駆動するときに、R相またはT相の一相を直流電圧DC2に変換しても良い。また、第二コンバータ21は、二相電源で駆動するときに、R相及びS相の二相、または、R相及びT相の二相を直流電圧DC2に変換しても良い。つまり、第二コンバータ21は、三相交流電源100のR相、S相及びT相のうちの一相または二相を直流電圧に変換する。
【0017】
第二インバータ22は、第二コンバータ21から供給される直流電圧DC2を、制御部36からのスイッチング制御の下で、U相、V相及びW相の三相交流電力に変換し、三相交流電力をモータM2へ供給する。
【0018】
第一コンバータ11の一例として、リアクトルとスイッチング素子とダイオードとを用いて構成される各相の回路に力率改善のための昇圧機能を備えたブリッジ整流回路が挙げられる。スイッチング素子の一例として、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、FET(Field Effect Transistor)等が挙げられる。また、第二コンバータ21の一例として、ダイオードで構成されるブリッジ整流回路が挙げられる。
【0019】
ゼロクロス検出部31は、入力電源である三相交流電源100に対して、R相電流の波形(以下では「R相波形」と呼ぶことがある)、S相電流の波形(以下では「S相波形」と呼ぶことがある)、及び、T相電流の波形(以下では「T相波形」と呼ぶことがある)の各相の電流波形におけるゼロクロス点を検出し、検出結果をアンバランス判定部34及び制御部36へ出力する。以下では、R相電流、S相電流及びT相電流を「入力電流」と総称し、R相波形、S相波形及びT相波形を「入力電流波形」と総称することがある。
【0020】
入力電圧検出部32は、第一コンバータ11の入力電圧値として、R相電圧値、S相電圧値及びT相電圧値を検出し、検出結果を制御部36へ出力する。以下では、R相電圧値、S相電圧値及びT相電圧値を「入力電圧値」と総称することがある。
【0021】
入力電流検出部33は、第一コンバータ11の入力電流値として、R相電流値、S相電流値及びT相電流値を検出し、検出結果をアンバランス判定部34及び制御部36へ出力する。以下では、R相電流値、S相電流値及びT相電流値を「入力電流値」と総称することがある。
【0022】
直流電圧検出部35は、第一コンバータ11から出力される直流電圧DC1の値を検出し、検出した直流電圧値を制御部36へ出力する。
【0023】
アンバランス判定部34は、入力電流波形におけるゼロクロス点と、入力電流値とに基づいて、三相間の入力電流にアンバランスが生じているか否か、つまり、R相波形とS相波形とT相波形とがアンバランス状態にあるか否かを判定し、判定結果(以下では「アンバランス判定結果」と呼ぶことがある)を制御部36へ出力する。
【0024】
制御部36は、入力電流波形のゼロクロス点、入力電圧値、入力電流値、直流電圧値、及び、アンバランス判定結果に基づいて、第一コンバータ11に対するスイッチング制御を行う。例えば、制御部36は、ゼロクロス点が到来するタイミング(以下では「ゼロクロスタイミング」と呼ぶことがある)、または、ゼロクロスタイミングから所定時間経過後のタイミングで、スイッチング制御を行う。
【0025】
<電力変換装置の動作>
図2~
図8は、本開示の実施例の電力変換装置の動作例の説明に供する図である。
【0026】
図2には、R相波形、S相波形及びT相波形が、R相、S相及びT相の三相間においてバランスのとれた状態(以下では「三相バランス状態」と呼ぶことがある)にある場合の一例を示す。すなわち、三相バランス状態では、S相波形ISのピーク点PSの電流値と、T相波形ITのピーク点PTの電流値と、R相波形IRのピーク点PRの電流値との間において、相互の差分の絶対値のすべてが所定の閾値Y未満にある。さらに、三相バランス状態では、S相波形ISのゼロクロス点ZSからピーク点PSまでの経過時間tSと、T相波形ITのゼロクロス点ZTからピーク点PTまでの経過時間tTと、R相波形IRのゼロクロス点ZRからピーク点PRまでの経過時間tRとが互いに同一である。
【0027】
以下では、第二コンバータ21が単相電源で駆動するときの動作例1~3と、第二コンバータ21が二相電源で駆動するときの動作例4~6とに分けて説明する。また、
図3,6には、三相の入力電流波形においてピーク点の電流値の差分の絶対値(以下では「ピーク差分値」と呼ぶことがある)が閾値Y以上となるときの動作例1,4を示す。また、
図4,7には、三相の入力電流波形においてゼロクロス点からピーク点までの経過時間(以下では「ピーク点到達時間」と呼ぶことがある)が他の相と異なる相があるときの動作例2,5を示す。また、
図5,8には、三相の入力電流波形において、ピーク差分値が閾値Y以上となり、かつ、ピーク点到達時間が他の相と異なる相があるときの動作例3,6を示す。
【0028】
また以下では、R相波形のピーク点を「R相ピーク点」と呼び、S相波形のピーク点を「S相ピーク点」と呼び、T相波形のピーク点を「T相ピーク点」と呼ぶことがある。また以下では、R相ピーク点の電流値を「R相ピーク値」と呼び、S相ピーク点の電流値を「S相ピーク値」と呼び、T相ピーク点の電流値を「T相ピーク値」と呼ぶことがある。
【0029】
また以下では、
図1に示すように、第二コンバータ21が単相電源で駆動するときにS相の一相が第二コンバータ21への入力電源として用いられる場合の動作例1~3について説明する。また以下では、
図1に示すように、第二コンバータ21が二相電源で駆動するときにR相及びT相の二相が第二コンバータ21への入力電源として用いられる場合の動作例4~6について説明する。
【0030】
<動作例1(
図3)>
S相波形IS11A、T相波形IT11A及びR相波形IR11Aが
図3に示す状態にある場合において、アンバランス判定部34は、S相波形IS11AにおけるS相ピーク値PS11A、T相波形IT11AにおけるT相ピーク値PT11A、及び、R相波形IR11AにおけるR相ピーク値PR11Aを検出する。また、アンバランス判定部34は、S相波形IS11Aにおけるピーク点到達時間tS、T相波形IT11Aにおけるピーク点到達時間tT、及び、R相波形IR11Aにおけるピーク点到達時間tRを検出する。
【0031】
図3では、T相ピーク値PT11A及びR相ピーク値PR11Aは、S相ピーク値PS11Aより小さい。一方で、
図3では、ピーク点到達時間tSとピーク点到達時間tTとピーク点到達時間tRとは、互いに同一である。
【0032】
そこで、アンバランス判定部34は、S相ピーク値PS11AとT相ピーク値PT11Aとのピーク差分値ΔPST1、及び、S相ピーク値PS11AとR相ピーク値PR11Aとのピーク差分値ΔPSR1を算出する。また、アンバランス判定部34は、ピーク差分値ΔPST1の絶対値及びピーク差分値ΔPSR1の絶対値が閾値Y以上であるか否かを判定する。
【0033】
そして、アンバランス判定部34は、ピーク差分値ΔPST1の絶対値及びピーク差分値ΔPSR1の絶対値の双方が閾値Y以上であるという条件C1が満たされるときに、三相の入力電流がアンバランス状態にあると判定する。ここでは、S相の一相が第二コンバータ21への入力電源として用いられているため、アンバランス判定部34は、S相においてT相及びR相とのアンバランスが発生していると判定する。
【0034】
一方で、アンバランス判定部34は、条件C1が満たされないときは、三相の入力電流が三相バランス状態にあると判定する。ここでは、条件C1が満たされるものとする。よって、アンバランス判定部34は、条件C1が満たされたことを示す信号をアンバランス判定結果として制御部36へ出力するとともに、S相ピーク値PS11A、T相ピーク値PT11A、R相ピーク値PR11A、ピーク差分値ΔPST1及びピーク差分値ΔPSR1を制御部36へ出力する。
【0035】
制御部36は、条件C1が満たされないことを示す信号がアンバランス判定結果としてアンバランス判定部34から入力された場合は、三相の入力電流が三相バランス状態にあるため、三相における通常の力率改善と出力電圧制御のためのスイッチング制御(以下では「通常スイッチング制御」と呼ぶことがある)を第一コンバータ11に対して行う。
【0036】
一方で、制御部36は、条件C1が満たされたことを示す信号がアンバランス判定結果としてアンバランス判定部34から入力された場合は、通常スイッチング制御の他に、
図3に示すように、T相ピーク値PT11A及びR相ピーク値PR11AがS相ピーク値PS11Aと同一になり、かつ、T相波形IT11A及びR相波形IR11Aが、基準電流波形としてのS相波形IS11Aに沿うように、T相及びR相における追加のスイッチング制御を第一コンバータ11に対して行う。T相における追加のスイッチング制御(
図3に示すT相制御)では、制御部36は、T相において、T相ピーク値PT11AをT相ピーク値PT11Bに増加させることによりピーク差分値ΔPST1を0(ゼロ)にするスイッチング制御を行って、T相波形IT11AをT相波形IT11Bに変化させる。また、R相における追加のスイッチング制御(
図3に示すR相制御)では、制御部36は、R相において、R相ピーク値PR11AをR相ピーク値PR11Bに増加させることによりピーク差分値ΔPSR1を0(ゼロ)にするスイッチング制御を行って、R相波形IR11AをR相波形IR11Bに変化させる。よって、このような追加のスイッチング制御によって、R相、S相及びT相の三相間におけるアンバランスは解消され、R相、S相及びT相の三相の入力電流は三相バランス状態となる。
【0037】
なお、
図3に示すT相制御及びR相制御は、T相波形IT11A、R相波形IR11Aのそれぞれの正の値の半周期におけるスイッチング制御である。しかし、図には示していないが、負の値の半周期においてもスイッチング制御が行われる。以下の
図4~
図8についても、同様に、負の値の半周期においてもスイッチング制御が行われる。
【0038】
<動作例2(
図4)>
S相波形IS12A、T相波形IT12A及びR相波形IR12Aが
図4に示す状態にある場合において、アンバランス判定部34は、S相波形IS12AにおけるS相ピーク値、T相波形IT12AにおけるT相ピーク値、及び、R相波形IR12AにおけるR相ピーク値を検出する。また、アンバランス判定部34は、S相波形IS12Aにおけるピーク点到達時間tSA1、T相波形IT12Aにおけるピーク点到達時間tTA1、及び、R相波形IR12Aにおけるピーク点到達時間tRA1を検出する。
【0039】
図4では、ピーク点到達時間tTA1及びピーク点到達時間tRA1は互いに同一で、かつ、ピーク点到達時間tSA1より短い。一方で、
図4では、T相ピーク値とR相ピーク値とS相ピーク値とは、互いに同一である。
【0040】
そこで、アンバランス判定部34は、第二コンバータ21の単相電源であるS相のピーク点到達時間tSA1と、S相以外の二相のピーク点到達時間tTA1,tRA1のそれぞれとを比較して、到達時間の差が許容値Zの範囲内であるか否かを判定する。そして、アンバランス判定部34は、ピーク点到達時間tSA1とピーク点到達時間tTA1との差、及び、ピーク点到達時間tSA1とピーク点到達時間tRA1との差の何れもが許容値Zの範囲内にあるときは、ピーク点到達時間tSA1と、ピーク点到達時間tTA1と、ピーク点到達時間tRA1とが互いに同一であると判定する。一方で、アンバランス判定部34は、ピーク点到達時間tSA1とピーク点到達時間tTA1との差、及び、ピーク点到達時間tSA1とピーク点到達時間tRA1との差の少なくとも一方が許容値Zの範囲内にないときは、ピーク点到達時間tSA1と、ピーク点到達時間tTA1と、ピーク点到達時間tRA1とが互いに同一でないと判定する。
【0041】
そして、アンバランス判定部34は、R相、S相及びT相の三相間において、ピーク点到達時間が他の二相とは異なる一相が存在するという条件C2が満たされるときに、三相の入力電流がアンバランス状態にあると判定する。また、アンバランス判定部34は、ピーク点到達時間が他の二相とは異なる一相において他の二相とのアンバランスが発生していると判定する。ここでは、S相の一相が第二コンバータ21への入力電源として用いられているため、アンバランス判定部34は、S相においてT相及びR相とのアンバランスが発生しているとみなす。
【0042】
一方で、アンバランス判定部34は、条件C2が満たされないとき、つまり、R相、S相及びT相の三相間においてピーク点到達時間が互いに同一であるときは、三相の入力電流が三相バランス状態にあると判定する。ここでは、条件C2が満たされるものとする。よって、アンバランス判定部34は、条件C2が満たされたことを示す信号をアンバランス判定結果として制御部36へ出力するとともに、ピーク点到達時間tSA1、ピーク点到達時間tTA1及びピーク点到達時間tRA1を制御部36へ出力する。
【0043】
制御部36は、条件C2が満たされないことを示す信号がアンバランス判定結果としてアンバランス判定部34から入力された場合は、通常スイッチング制御を第一コンバータ11に対して行う。
【0044】
一方で、制御部36は、条件C2が満たされたことを示す信号がアンバランス判定結果としてアンバランス判定部34から入力された場合は、通常スイッチング制御の他に、
図4に示すように、ピーク点到達時間tTA1,tRA1がピーク点到達時間tSA1と同一になり、かつ、T相波形IT12A及びR相波形IR12Aが、基準電流波形としてのS相波形IS12Aに沿うように、T相及びR相における追加のスイッチング制御を第一コンバータ11に対して行う。T相における追加のスイッチング制御(
図4に示すT相制御)では、制御部36は、T相において、ピーク点到達時間tTA1をピーク点到達時間tTB1に増加させることにより、T相におけるピーク点到達時間の長さをピーク点到達時間tSA1の長さに一致させるスイッチング制御を行って、T相波形のピーク点PTを
図4に示すように時刻軸上で後方に移動させる。T相波形のピーク点PTが時刻軸上で後方に移動することにより、T相波形IT12AはT相波形IT12Bに変化する。また、R相における追加のスイッチング制御(
図4に示すR相制御)では、制御部36は、R相において、ピーク点到達時間tRA1をピーク点到達時間tRB1に増加させることにより、R相におけるピーク点到達時間の長さをピーク点到達時間tSA1の長さに一致させるスイッチング制御を行って、R相波形のピーク点PRを
図4に示すように時刻軸上で後方に移動させる。R相波形のピーク点PRが時刻軸上で後方に移動することにより、R相波形IR12AはR相波形IR12Bに変化する。よって、このような追加のスイッチング制御によって、R相、S相及びT相の三相間におけるアンバランスは解消され、R相、S相及びT相の三相の入力電流は三相バランス状態となる。
【0045】
<動作例3(
図5)>
動作例3は、動作例1と動作例2とを組み合わせた動作例である。
【0046】
すなわち、T相波形IT13A、S相波形IS13A及びR相波形IR13Aが
図5に示す状態にある場合、T相波形IT13AにおけるT相ピーク値、及び、R相波形IR13AにおけるR相ピーク値は、S相波形IS13AにおけるS相ピーク値より小さい。また、S相ピーク値とT相ピーク値とのピーク差分値の絶対値、及び、S相ピーク値とR相ピーク値とのピーク差分値の絶対値の双方が閾値Y以上である。
【0047】
また、T相波形IT13A、S相波形IS13A及びR相波形IR13Aが
図5に示す状態にある場合、T相波形IT13Aにおけるピーク点到達時間及びR相波形IR13Aにおけるピーク点到達時間は互いに同一で、かつ、S相波形IS13Aにおけるピーク点到達時間より短い。なお、各相のピーク点到達時間が互いに同一であるか否かの判定は、上記のように、各相間でのピーク点到達時間差が許容値Zの範囲内にあるか否かを判定することによって行われ、各相間でのピーク点到達時間差が許容値Zの範囲内にあれば、各相のピーク点到達時間が互いに同一であるとみなされる。
【0048】
よって、アンバランス判定部34は、三相の入力電流がアンバランス状態にあると判定し、判定結果を制御部36へ出力する。
【0049】
そこで、制御部36は、通常スイッチング制御の他に、
図5に示すように、T相波形IT13A及びR相波形IR13Aが、基準電流波形としてのS相波形IS13Aに沿うように、T相及びR相における追加のスイッチング制御を第一コンバータ11に対して行う。
【0050】
T相における追加のスイッチング制御(
図5に示すT相制御)では、制御部36は、T相において、T相ピーク値を増加させることにより、S相ピーク値とT相ピーク値とのピーク差分値を0(ゼロ)にするスイッチング制御を行う。また、T相における追加のスイッチング制御では、制御部36は、T相において、T相波形IT13Aにおけるピーク点到達時間を増加させることにより、T相におけるピーク点到達時間の長さをS相におけるピーク点到達時間の長さに一致させるスイッチング制御を行う。これにより、T相波形IT13AはT相波形IT13Bに変化する。
【0051】
また、R相における追加のスイッチング制御(
図5に示すR相制御)では、制御部36は、R相において、R相ピーク値を増加させることにより、S相ピーク値とR相ピーク値とのピーク差分値を0(ゼロ)にするスイッチング制御を行う。また、R相における追加のスイッチング制御では、制御部36は、R相において、R相波形IR13Aにおけるピーク点到達時間を増加させることにより、R相におけるピーク点到達時間の長さをS相におけるピーク点到達時間の長さに一致させるスイッチング制御を行う。これにより、R相波形IR13AはR相波形IR13Bに変化する。
【0052】
このような追加のスイッチング制御によってT相波形IT13AがT相波形IT13Bに変化し、かつ、R相波形IR13AがR相波形IR13Bに変化することにより、R相、S相及びT相の三相間におけるアンバランスは解消され、R相、S相及びT相の三相の入力電流は三相バランス状態となる。
【0053】
<動作例4(
図6)>
S相波形IS21A、T相波形IT21A及びR相波形IR21Aが
図6に示す状態にある場合において、アンバランス判定部34は、S相波形IS21AにおけるS相ピーク値PS21A、T相波形IT21AにおけるT相ピーク値PT21A、及び、R相波形IR21AにおけるR相ピーク値PR21Aを検出する。また、アンバランス判定部34は、S相波形IS21Aにおけるピーク点到達時間tS、T相波形IT21Aにおけるピーク点到達時間tT、及び、R相波形IR21Aにおけるピーク点到達時間tRを検出する。
【0054】
図6では、S相ピーク値PS21Aは、T相ピーク値PT21A及びR相ピーク値PR21Aより小さい。一方で、
図6では、ピーク点到達時間tSとピーク点到達時間tTとピーク点到達時間tRとは、互いに同一である。
【0055】
そこで、アンバランス判定部34は、S相ピーク値PS21AとT相ピーク値PT21Aとのピーク差分値ΔPST2、及び、S相ピーク値PS21AとR相ピーク値PR21Aとのピーク差分値ΔPSR2を算出する。また、アンバランス判定部34は、ピーク差分値ΔPST2の絶対値及びピーク差分値ΔPSR2の絶対値が閾値Y以上であるか否かを判定する。
【0056】
そして、アンバランス判定部34は、ピーク差分値ΔPST2の絶対値及びピーク差分値ΔPSR2の絶対値の双方が閾値Y以上であるという条件C3が満たされるときに、三相の入力電流がアンバランス状態にあると判定する。ここでは、R相及びT相の二相が第二コンバータ21への入力電源として用いられているため、アンバランス判定部34は、R相及びT相においてS相とのアンバランスが発生していると判定する。
【0057】
一方で、アンバランス判定部34は、条件C3が満たされないときは、三相の入力電流が三相バランス状態にあると判定する。ここでは、条件C3が満たされるものとする。よって、アンバランス判定部34は、条件C3が満たされたことを示す信号をアンバランス判定結果として制御部36へ出力するとともに、S相ピーク値PS21A、T相ピーク値PT21A、R相ピーク値PR21A、ピーク差分値ΔPST2及びピーク差分値ΔPSR2を制御部36へ出力する。
【0058】
制御部36は、条件C3が満たされないことを示す信号がアンバランス判定結果としてアンバランス判定部34から入力された場合は、通常スイッチング制御を第一コンバータ11に対して行う。
【0059】
一方で、制御部36は、条件C3が満たされたことを示す信号がアンバランス判定結果としてアンバランス判定部34から入力された場合は、通常スイッチング制御の他に、
図6に示すように、S相ピーク値PS21Aが、T相ピーク値PT21AまたはR相ピーク値PR21Aと同一になり、かつ、S相波形IS21Aが、基準波形としてのT相波形IT21AまたはR相波形IR21Aに沿うように、S相における追加のスイッチング制御を第一コンバータ11に対して行う。S相における追加のスイッチング制御(
図6に示すS相制御)では、制御部36は、S相において、S相ピーク値PS21AをS相ピーク値PS21Bに増加させることにより、ピーク差分値ΔPST2またはピーク差分値ΔPSR2を0(ゼロ)にするスイッチング制御を行って、S相波形IS21AをS相波形IS21Bに変化させる。よって、このような追加のスイッチング制御によって、R相、S相及びT相の三相間におけるアンバランスは解消され、R相、S相及びT相の三相の入力電流は三相バランス状態となる。
【0060】
<動作例5(
図7)>
S相波形IS22A、T相波形IT22A及びR相波形IR22Aが
図7に示す状態にある場合において、アンバランス判定部34は、S相波形IS22AにおけるS相ピーク値、T相波形IT22AにおけるT相ピーク値、及び、R相波形IR22AにおけるR相ピーク値を検出する。また、アンバランス判定部34は、S相波形IS22Aにおけるピーク点到達時間tSA2、T相波形IT22Aにおけるピーク点到達時間tTA2、及び、R相波形IR22Aにおけるピーク点到達時間tRA2を検出する。
【0061】
図7では、ピーク点到達時間tTA2及びピーク点到達時間tRA2は互いに同一で、かつ、ピーク点到達時間tSA2より長い。一方で、
図7では、T相ピーク値とR相ピーク値とS相ピーク値とは、互いに同一である。なお、各相のピーク点到達時間が互いに同一であるか否かの判定は、上記のように、各相間でのピーク点到達時間差が許容値Zの範囲内にあるか否かを判定することによって行われ、各相間でのピーク点到達時間差が許容値Zの範囲内にあれば、各相のピーク点到達時間が互いに同一であるとみなされる。
【0062】
そこで、アンバランス判定部34はピーク点到達時間tSA2と、ピーク点到達時間tTA2と、ピーク点到達時間tRA2とが互いに同一であるか否かを判定する。
【0063】
そして、アンバランス判定部34は、R相、S相及びT相の三相間において、ピーク点到達時間が他の二相とは異なる一相が存在するという条件C2が満たされるときに、三相の入力電流がアンバランス状態にあると判定する。また、アンバランス判定部34は、ピーク点到達時間が他の一相とは異なる二相において他の一相とのアンバランスが発生していると判定する。ここでは、R相及びT相の二相が第二コンバータ21への入力電源として用いられているため、アンバランス判定部34は、R相及びT相においてS相とのアンバランスが発生していると判定する。
【0064】
一方で、アンバランス判定部34は、条件C2が満たされないとき、つまり、R相、S相及びT相の三相間においてピーク点到達時間が互いに同一であるときは、三相の入力電流が三相バランス状態にあると判定する。ここでは、条件C2が満たされるものとする。よって、アンバランス判定部34は、条件C2が満たされたことを示す信号をアンバランス判定結果として制御部36へ出力するとともに、ピーク点到達時間tSA2、ピーク点到達時間tTA2及びピーク点到達時間tRA2を制御部36へ出力する。
【0065】
制御部36は、条件C2が満たされないことを示す信号がアンバランス判定結果としてアンバランス判定部34から入力された場合は、通常スイッチング制御を第一コンバータ11に対して行う。
【0066】
一方で、制御部36は、条件C2が満たされたことを示す信号がアンバランス判定結果としてアンバランス判定部34から入力された場合は、通常スイッチング制御の他に、
図7に示すように、ピーク点到達時間tSA2が、ピーク点到達時間tTA2またはピーク点到達時間tRA2と同一になり、かつ、S相波形IS22Aが、基準波形としてのT相波形IT22AまたはR相波形IR22Aに沿うように、S相における追加のスイッチング制御を第一コンバータ11に対して行う。S相における追加のスイッチング制御(
図7に示すS相制御)では、制御部36は、S相において、ピーク点到達時間tTA2をピーク点到達時間tTB2に増加させることにより、S相におけるピーク点到達時間の長さをピーク点到達時間tTA2またはピーク点到達時間tRA2の長さに一致させるスイッチング制御を行って、S相波形のピーク点PSを
図7に示すように時刻軸上で後方に移動させる。S相波形のピーク点PSが時刻軸上で後方に移動することにより、S相波形IS22AはS相波形IS22Bに変化する。よって、このような追加のスイッチング制御によって、R相、S相及びT相の三相間におけるアンバランスは解消され、R相、S相及びT相の三相の入力電流は三相バランス状態となる。
【0067】
<動作例6(
図8)>
動作例6は、動作例4と動作例5とを組み合わせた動作例である。
【0068】
すなわち、T相波形IT23A、S相波形IS23A及びR相波形IR23Aが
図8に示す状態にある場合、T相波形IT23AにおけるT相ピーク値、及び、R相波形IR23AにおけるR相ピーク値は、S相波形IS23AにおけるS相ピーク値より大きい。また、S相ピーク値とT相ピーク値とのピーク差分値の絶対値、及び、S相ピーク値とR相ピーク値とのピーク差分値の絶対値の双方が閾値Y以上であり、かつ、T相ピーク値とR相ピーク値とのピーク差分値の絶対値が閾値Y未満である。
【0069】
また、T相波形IT23A、S相波形IS23A及びR相波形IR23Aが
図8に示す状態にある場合、T相波形IT23Aにおけるピーク点到達時間及びR相波形IR23Aにおけるピーク点到達時間は互いに同一で、かつ、S相波形IS23Aにおけるピーク点到達時間より長い。なお、各相のピーク点到達時間が互いに同一であるか否かの判定は、上記のように、各相間でのピーク点到達時間差が許容値Zの範囲内にあるか否かを判定することによって行われ、各相間でのピーク点到達時間差が許容値Zの範囲内にあれば、各相のピーク点到達時間が互いに同一であるとみなされる。
【0070】
よって、アンバランス判定部34は、三相の入力電流がアンバランス状態にあると判定し、判定結果を制御部36へ出力する。
【0071】
そこで、制御部36は、通常スイッチング制御の他に、
図8に示すように、S相波形IS23Aが、基準電流波形としてのT相波形IT23AまたはR相波形IR23Aに沿うように、S相における追加のスイッチング制御を第一コンバータ11に対して行う。
【0072】
S相における追加のスイッチング制御(
図8に示すS相制御)では、制御部36は、S相において、S相ピーク値を増加させることにより、S相ピーク値とT相ピーク値とのピーク差分値、または、S相ピーク値とR相ピーク値とのピーク差分値を0(ゼロ)にするスイッチング制御を行う。また、S相における追加のスイッチング制御では、制御部36は、S相において、S相波形IS23Aにおけるピーク点到達時間を増加させることにより、S相におけるピーク点到達時間の長さをT相及びR相におけるピーク点到達時間の長さに一致させるスイッチング制御を行う。これにより、S相波形IS23AはS相波形IS23Bに変化する。
【0073】
このような追加のスイッチング制御によってS相波形IS23AがS相波形IS23Bに変化することにより、R相、S相及びT相の三相間におけるアンバランスは解消され、R相、S相及びT相の三相の入力電流は三相バランス状態となる。
【0074】
<電力変換装置における処理手順>
図9は、本開示の実施例の電力変換装置における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0075】
図9において、ステップS300では、制御部36は、第二コンバータ21が、単相電源で駆動しているか、または、二相電源で駆動しているかを判定する。例えば、第二コンバータ21が単相電源または二相電源の何れで駆動しているかの情報(以下では「電源情報」と呼ぶことがある)は予め記憶部37に記憶されており、制御部36は、記憶部37に記憶された電源情報を参照することにより、第二コンバータ21が、単相電源で駆動しているか、または、二相電源で駆動しているかを判定する。第二コンバータ21が単相電源で駆動しているときは(ステップS300:Yes)、処理はステップS305へ進み、第二コンバータ21が二相電源で駆動しているときは(ステップS300:No)、処理はステップS320へ進む。
【0076】
ステップS305では、アンバランス判定部34は、R相、S相及びT相の三相のうち、単相電源として用いられている一相に他の二相とのアンバランスが発生しているか否か、つまり、単相アンバランスが発生しているか否かを判定する。単相アンバランスが発生しているときは(ステップS305:Yes)、処理はステップS310へ進み、単相アンバランスが発生していないとき、つまり、R相、S相及びT相の三相が三相バランス状態にあるときは(ステップS305:No)、処理はステップS315へ進む。
【0077】
ステップS310では、制御部36は、通常スイッチング制御に加えて、R相、S相及びT相の三相のうち、単相電源として用いられている一相以外の他の二相における追加のスイッチング制御を第一コンバータ11に対して行う。
【0078】
また、ステップS320では、アンバランス判定部34は、R相、S相及びT相の三相のうち、二相電源として用いられている二相に他の一相とのアンバランスが発生しているか否か、つまり、二相アンバランスが発生しているか否かを判定する。二相アンバランスが発生しているときは(ステップS320:Yes)、処理はステップS325へ進み、二相アンバランスが発生していないとき、つまり、R相、S相及びT相の三相が三相バランス状態にあるときは(ステップS320:No)、処理はステップS315へ進む。
【0079】
ステップS325では、制御部36は、通常スイッチング制御に加えて、R相、S相及びT相の三相のうち、二相電源として用いられている二相以外の他の一相における追加のスイッチング制御を第一コンバータ11に対して行う。
【0080】
一方で、ステップS315では、制御部36は、第一コンバータ11に対して、追加のスイッチング制御を行わず、通常スイッチング制御のみを行う。
【0081】
なお、
図9には、第二コンバータ21に供給される電源が単相電源と二相電源との間で切り換えられる場合のフローチャートが示されている。しかし、第二コンバータ21に供給される電源は、単相電源または二相電源の何れか一方に固定されていても良い。第二コンバータ21に供給される電源が単相電源または二相電源の何れか一方に固定されている場合、
図9のフローチャートからステップS300が削除され、
図9のフローチャートは、単相電源の場合のフローチャート(ステップS305,S310,S315)と、二相電源の場合のフローチャート(ステップS320,S325,S315)との別個の二つのフローチャートに分かれる。
【0082】
以上、実施例について説明した。
【0083】
以上のように、本開示の電力変換装置(実施例の電力変換装置200)は、第一コンバータ(実施例の第一コンバータ11)と、第二コンバータ(実施例の第二コンバータ21)と、判定部(実施例のアンバランス判定部34)と、制御部(実施例の制御部36)とを有する。第一コンバータは、三相交流電源(実施例の三相交流電源100)の三相を第一の直流電圧に変換する。第二コンバータは、三相交流電源の一相または二相を第二の直流電圧に変換する。判定部は、三相交流電源から第一コンバータへ入力される三相の電流間にアンバランスが発生しているか否かを判定する。制御部は、三相の電流間にアンバランスが発生しているときに、アンバランスを解消する制御を第一コンバータに対して行う。
【0084】
例えば、判定部は、三相交流電源から第一コンバータへ入力される三相の電流のピーク値に基づいて、アンバランスが発生しているか否かを判定する。
【0085】
また例えば、判定部は、三相交流電源から第一コンバータへ入力される三相の電流の電流波形におけるゼロクロス点からピーク点までの経過時間に基づいて、アンバランスが発生しているか否かを判定する。
【0086】
こうすることで、三相交流電源から第一コンバータへ入力される三相の電流を三相バランス状態に保つことができるため、電流高調波を抑制できる。特に、大きさの異なる複数の負荷を駆動するための電力変換装置において電流高調波を抑制できる。
【符号の説明】
【0087】
200 電力変換装置
11 第一コンバータ
21 第二コンバータ
31 ゼロクロス検出部
32 入力電圧検出部
33 入力電流検出部
34 アンバランス判定部
35 直流電圧検出部
36 制御部
37 記憶部