(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】圧電駆動装置の制御方法およびマニピュレーターの制御方法
(51)【国際特許分類】
H02N 2/14 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
H02N2/14
(21)【出願番号】P 2020186344
(22)【出願日】2020-11-09
【審査請求日】2023-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 英俊
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-109679(JP,A)
【文献】特開2014-176274(JP,A)
【文献】特開2013-013218(JP,A)
【文献】特開2005-081538(JP,A)
【文献】米国特許第06979934(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子を備える振動部および伝達部を有し、前記圧電素子への通電により縦振動および屈曲振動を合成して前記振動部を振動させて前記伝達部を楕円運動させ、前記楕円運動により被駆動体を移動させる圧電駆動装置の制御方法であって、
前記屈曲振動の振幅を一定にした状態で前記縦振動の振幅を変化させることにより前記被駆動体の移動量を制御することを特徴とする圧電駆動装置の制御方法。
【請求項2】
前記屈曲振動の振幅を一定にした状態で前記縦振動の振幅を漸次大きくすることにより、停止状態の前記被駆動体の移動を開始する請求項1に記載の圧電駆動装置の制御方法。
【請求項3】
前記被駆動体が移動を開始した後、前記縦振動の振幅を一定にした状態で前記屈曲振動の振幅を漸次大きくすることにより前記被駆動体の移動速度を高める請求項2に記載の圧電駆動装置の制御方法。
【請求項4】
前記被駆動体が移動を開始した後、前記縦振動の振幅を漸次大きくしながら、前記屈曲振動の振幅を漸次大きくすることにより前記被駆動体の移動速度を高める請求項2に記載の圧電駆動装置の制御方法。
【請求項5】
前記屈曲振動の振幅を一定にした状態で前記縦振動の振幅を漸次小さくすることにより前記被駆動体の移動速度を低める請求項1ないし4のいずれか1項に記載の圧電駆動装置の制御方法。
【請求項6】
前記屈曲振動の振幅を漸次小さくしながら、前記縦振動の振幅を漸次小さくすることにより前記被駆動体の移動速度を低める請求項1ないし4のいずれか1項に記載の圧電駆動装置の制御方法。
【請求項7】
前記縦振動の振幅を漸次小さくすることにより前記被駆動体の移動速度を低めるのに先立って、前記縦振動の振幅を一定にした状態で前記屈曲振動の振幅を漸次小さくすることにより前記被駆動体の移動速度を低める請求項5または6に記載の圧電駆動装置の制御方法。
【請求項8】
前記縦振動の振幅は、前記圧電素子に印加する駆動信号の電圧値により制御する請求項1ないし7のいずれか1項に記載の圧電駆動装置の制御方法。
【請求項9】
前記縦振動の振幅は、前記圧電素子に印加する駆動信号の周波数により制御する請求項1ないし7のいずれか1項に記載の圧電駆動装置の制御方法。
【請求項10】
圧電素子を備える振動部および伝達部を有し、前記圧電素子への通電により縦振動および屈曲振動を合成して前記振動部を振動させて前記伝達部を楕円運動させ、前記楕円運動により相互連結された第1部材および第2部材を相対的に移動させるマニピュレーターの制御方法であって、
前記屈曲振動の振幅を一定にした状態で前記縦振動の振幅を変化させることにより前記第1部材と前記第2部材との相対的な移動量を制御することを特徴とするマニピュレーターの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電駆動装置の制御方法およびマニピュレーターの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載された超音波モーターは、回転軸まわりに回転可能なローター2と、ローター2の外周面に押し付けられた超音波振動子と、を有する。また、超音波振動子は、振動部と、振動部の先端部に設けられ、ローター2の外周面と接触する接触部と、を有する。このような超音波モーターでは、振動部に縦振動およびたわみ振動を同時に生じさせて接触部が楕円運動し、当該楕円運動によってローターが回転軸まわりに送り出され、ローターが回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された超音波モーターでは、ローターを回転させる際に、振動部に縦振動およびたわみ振動を同時に生じさせるため、ローターの回転量を微小制御することが難しいという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の圧電駆動装置の制御方法は、圧電素子を備える振動部および伝達部を有し、前記圧電素子への通電により縦振動および屈曲振動を合成して前記振動部を振動させて前記伝達部を楕円運動させ、前記楕円運動により被駆動体を移動させる圧電駆動装置の制御方法であって、
前記屈曲振動の振幅を一定にした状態で前記縦振動の振幅を変化させることにより前記被駆動体の移動量を制御する。
【0006】
本発明のマニピュレーターの制御方法は、圧電素子を備える振動部および伝達部を有し、前記圧電素子への通電により縦振動および屈曲振動を合成して前記振動部を振動させて前記伝達部を楕円運動させ、前記楕円運動により相互連結された第1部材および第2部材を相対的に移動させるマニピュレーターの制御方法であって、
前記屈曲振動の振幅を一定にした状態で前記縦振動の振幅を変化させることにより前記第1部材と前記第2部材との相対的な移動量を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る圧電モーターを示す平面図である。
【
図2】圧電モーターが有する圧電アクチュエーターを示す平面図である。
【
図3】圧電アクチュエーターに印加する駆動信号を示す図である。
【
図4】圧電アクチュエーターの駆動状態を示す平面図である。
【
図5】圧電アクチュエーターの駆動状態を示す平面図である。
【
図6】駆動信号の周波数とローターの回転速度との関係を示す図である。
【
図8】第2実施形態に係る圧電駆動装置の制御方法を示す図である。
【
図9】第3実施形態に係る圧電駆動装置の制御方法を示す図である。
【
図10】本発明の第4実施形態に係るロボットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の圧電駆動装置の制御方法およびマニピュレーターの制御方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0009】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る圧電モーターを示す平面図である。
図2は、圧電モーターが有する圧電アクチュエーターを示す平面図である。
図3は、圧電アクチュエーターに印加する駆動信号を示す図である。
図4および
図5は、圧電アクチュエーターの駆動状態を示す平面図である。
図6は、駆動信号の周波数とローターの回転速度との関係を示す図である。
図7は、圧電駆動装置の制御方法を示す図である。
【0010】
なお、以下では、説明の便宜上、圧電アクチュエーターのローター側を「先端側」とも言い、ローターと反対側を「基端側」とも言う。また、互いに直交する3軸をX軸、Y軸およびZ軸とし、X軸に沿う方向をX軸方向、Y軸に沿う方向をY軸方向、Z軸に沿う方向をZ軸方向とも言う。また、各軸の矢印側を「プラス側」とも言い、矢印と反対側を「マイナス側」とも言う。
【0011】
図1に示すように、圧電モーター1は、回転軸Oまわりに回転可能な被駆動部としてのローター2と、ローター2の外周面21に当接する圧電駆動装置3と、ローター2の回転量を検出するエンコーダー9と、圧電駆動装置3の駆動を制御する制御装置7と、を有する。このような圧電モーター1では、制御装置7による制御により圧電駆動装置3が駆動し、圧電駆動装置3で生じる駆動力がローター2に伝わることによりローター2が回転軸Oまわりに回転する。ただし、圧電モーター1の構成としては、特に限定されない。例えば、ローター2の周方向に沿って複数の圧電駆動装置3を配置し、複数の圧電駆動装置3の駆動によってローター2を回転させてもよい。また、圧電駆動装置3は、ローター2の外周面21ではなく主面22に当接していてもよい。また、被駆動部は、ローター2のような回転体に限定されず、例えば、直線移動するスライダーであってもよい。
【0012】
エンコーダー9としては、特に限定されず、例えば、ローター2の回転時にその回転量を検出するインクリメンタル型のエンコーダーであってもよいし、ローター2の回転の有無に関わらず、ローター2の原点からの絶対位置を検出するアブソリュート型のエンコーダーであってもよい。エンコーダー9は、ローター2の主面22に設置されたスケール91と、スケール91と対向配置された光学素子92と、を有する。スケール91には図示しないパターンが設けられている。一方、光学素子92は、スケール91のパターンに向けて光を照射する発光素子921と、スケール91で反射した光を受光する受光素子922と、を有する。エンコーダー9は、受光素子922の受光結果に基づいてローター2の回転量、駆動速度、絶対位置等を検出することができる。ただし、エンコーダー9の構成としては、その機能を発揮できる限り特に限定されない。例えば、エンコーダー9は、撮像素子を用いたテンプレートマッチングによりローター2の回転量、駆動速度、絶対位置等を検出する構成であってもよい。
【0013】
圧電駆動装置3は、圧電アクチュエーター4と、圧電アクチュエーター4をローター2に向けて付勢する付勢部材5と、を有する。
図2に示すように、圧電アクチュエーター4は、振動部41と、振動部41を支持する支持部42と、振動部41と支持部42とを接続する接続部43と、振動部41の先端部に配置され、振動部41の振動をローター2に伝達する伝達部としての凸部44と、を有する。
【0014】
振動部41は、X軸方向を厚さ方向とし、Y軸およびZ軸を含むY-Z平面に広がる板状である。また、振動部41は、平面視で、Y軸方向を長手とする長手形状、特に本実施形態では長方形である。ただし、振動部41の形状は、その機能を発揮することができる限り、特に限定されない。また、振動部41は、駆動用の圧電素子4A~4Fと、振動部41の振動を検出する検出用の圧電素子4Gと、を有する。振動部41の中央部には、圧電素子4C、4DがY軸方向に並んで配置されている。また、圧電素子4C、4DのZ軸方向プラス側には圧電素子4A、4BがY軸方向に並んで配置され、Z軸方向マイナス側には圧電素子4E、4FがY軸方向に並んで配置されている。これら圧電素子4A~4Fは、それぞれ、通電によってY軸方向に伸縮する。ただし、駆動用の圧電素子の数や配置は、振動部41に所望の振動を励振することができれば特に限定されない。
【0015】
検出用の圧電素子4Gは、圧電素子4C、4Dの間に配置されている。圧電素子4Gは、振動部41の振動に応じた外力を受け、受けた外力に応じた検出信号を出力する。そのため、圧電駆動装置3は、圧電素子4Gから出力される検出信号に基づいて、振動部41の振動状態を検知することができる。なお、検出用の圧電素子の数や配置は、振動部41の振動を検出することができれば特に限定されない。また、検出用の圧電素子は、省略してもよい。
【0016】
これら圧電素子4A~4Fは、圧電体を一対の電極で挟み込んだ構成である。圧電体の構成材料は、特に限定されず、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、タングステン酸ナトリウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)、タンタル酸ストロンチウムビスマス(SBT)、メタニオブ酸鉛、スカンジウムニオブ酸鉛等の圧電セラミックスを用いることができる。また、圧電体としては、上述した圧電セラミックスの他にも、ポリフッ化ビニリデン、水晶等を用いてもよい。また、圧電体の形成方法としては、特に限定されず、バルク材料から形成してもよいし、ゾル-ゲル法やスパッタリング法を用いて形成してもよい。本実施形態では、圧電体をゾル-ゲル法を用いて形成している。これにより、例えば、バルク材料から形成する場合と比べて薄い圧電体が得られ、圧電アクチュエーター4の薄型化を図ることができる。
【0017】
凸部44は、振動部41の先端部に設けられ、振動部41からY軸方向プラス側へ突出している。そして、凸部44の先端部がローター2の外周面21と接触し、付勢部材5によって押し付けられている。そのため、振動部41の振動は、凸部44を介してローター2に伝達される。支持部42は、振動部41を支持する。支持部42は、平面視で、振動部41の両側方および基端側を囲むU形状である。また、接続部43は、振動部41の屈曲振動の節となる部分、具体的にはY軸方向の中央部と支持部42とを接続している。ただし、支持部42および接続部43の構成は、それぞれ、その機能を発揮することができる限り特に限定されない。
【0018】
付勢部材5は、圧電アクチュエーター4をローター2に向けて付勢し、凸部44をローター2の外周面21に押し当てる機能を有する。
図1に示すように、付勢部材5は、圧電アクチュエーター4の支持部42を保持する保持部51と、圧電駆動装置3をステージSTに固定する基台52と、保持部51と基台52とを接続する一対のばね群53、54と、を有する。付勢部材5は、ばね群53、54の復元力を利用して圧電アクチュエーター4をローター2に向けて付勢する。ただし、付勢部材5の構成としては、圧電アクチュエーター4をローター2に向けて付勢することができれば特に限定されない。
【0019】
制御装置7は、例えば、コンピューターから構成され、情報を処理するプロセッサーと、プロセッサーに通信可能に接続されたメモリーと、外部インターフェースと、を有する。また、メモリーにはプロセッサーにより実行可能なプログラムが保存され、プロセッサーは、メモリーに記憶されたプログラムを読み込んで実行する。このような制御装置7は、図示しないホストコンピューターからの指令を受け、この指令に基づいて圧電アクチュエーター4を駆動する。
【0020】
例えば、
図3に示す駆動信号V1を圧電素子4A、4Fに印加し、駆動信号V2を圧電素子4C、4Dに印加し、駆動信号V3を圧電素子4B、4Eに印加すると、
図4に示すように、振動部41がY軸方向に伸縮振動しつつZ軸方向に屈曲振動し、これらの振動が合成されて凸部44の先端が矢印A1で示すように反時計回りに楕円軌道を描く楕円運動する。そして、凸部44の楕円運動により、ローター2が送り出され、ローター2が矢印B1で示すように時計回りに回転する。駆動信号V1、V3の波形を切り換えると、
図5に示すように、振動部41がY軸方向に伸縮振動しつつZ軸方向に屈曲振動し、これらの振動が合成されて凸部44の先端が矢印A2で示すように時計回りに楕円軌道を描く楕円運動する。そして、凸部44の楕円運動により、ローター2が送り出され、ローター2が矢印B2で示すように反時計回りに回転する。なお、前記「楕円運動」とは、軌跡が楕円と一致する運動の他にも、例えば、軌跡が円、長円等、楕円から若干ずれた運動も含む意味である。また、
図3に示すEm1、Em2、Em3は、それぞれ、駆動信号V1、V2、V3の最大電圧値であり、以下「電圧値」とも言う。
【0021】
以下では、振動部41のY軸方向への伸縮振動を「縦振動」とも言う。縦振動は、圧電素子4C、4Dへの駆動信号V2の印加により励振され、屈曲振動は、圧電素子4A、4B、4E、4Fへの駆動信号V1、V3の印加により励振される。つまり、縦振動は、駆動信号V2によって制御され、屈曲振動は、駆動信号V1、V3によって制御される。
【0022】
ここで、縦振動および屈曲振動の共振周波数がほぼ等しくなるように振動部41が設計されている。以下では、縦振動および屈曲振動の共振周波数をf0とする。駆動信号V1、V2、V3の周波数fとしては、特に限定されないが、共振周波数f0よりも高いことが好ましい。以下、この理由について簡単に説明する。
図6は、周波数fとローター2の回転速度すなわち移動速度との関係を示す図である。同図に示すように、周波数fが共振周波数f0と一致するときにローター2の回転速度が最大となり、周波数fが共振周波数f0から遠ざかるに連れてローター2の回転速度が低下する。また、共振周波数f0をピークとして、共振周波数f0よりも高周波数側では比較的なだらかにローター2の回転速度が減少するのに対して、共振周波数f0よりも低周波数側では高周波数側と比べて急激にローター2の回転速度が減少する。そのため、周波数fを共振周波数f0よりも高く設定することにより、周波数fの変化に対するローター2の駆動速度の変化の度合いを小さくでき、ローター2の回転速度を制御し易くなる。ただし、周波数fは、共振周波数f0と一致していてもよいし、共振周波数f0より低くてもよい。
【0023】
圧電アクチュエーター4の制御方法では、屈曲振動の振幅を一定にした状態で、縦振動の振幅を変化させることによりローター2の移動量すなわち回転速度を制御することが特徴となっている。なお、後述する説明からもわかるように、「屈曲振動の振幅を一定にした状態」とは、屈曲振動を制御する駆動信号V1、V3の電圧値Em1、Em3および周波数fを一定にした状態を意味し、必ずしも実際の振幅が一定の状態とは限らない。後述する「縦振動の振幅を一定にした状態」についても同様に、縦振動を制御する駆動信号V2の電圧値Em2および周波数fを一定にした状態を意味し、必ずしも実際の振幅が一定の状態とは限らない。以下、具体的に説明するが、本実施形態では、圧電アクチュエーター4の運転中、駆動信号V1、V2、V3の周波数fが一定に保たれていることを前提とする。前記「一定」には、経時的な変動がない場合に加えて、例えば、回路の構成上生じ得る微小な変動等が生じる場合を含む意味である。
【0024】
例えば、
図4に示すように、ローター2を矢印B1方向に回転さている最中に、駆動信号V1、V3を変化させずに駆動信号V2の電圧値Em2を高めると、屈曲振動の振幅が維持されたまま、縦振動の振幅が大きくなる。縦振動の振幅が大きくなるほど凸部44の楕円運動が大きくなり、ローター2の矢印B1方向への回転速度が速くなる。反対に、駆動信号V1、V3を変化させずに、駆動信号V2の電圧値Em2を低めると、屈曲振動の振幅が維持されたまま、縦振動の振幅が小さくなる。縦振動の振幅が小さくなるほど凸部44の楕円運動が小さくなり、ローター2の矢印B1方向への回転速度が遅くなる。このように、変化させるパラメーターを縦振動の振幅に限定することにより、圧電アクチュエーター4の駆動が安定し、ローター2の回転速度を制御し易くなる。特に、微小な縦振動とし、凸部44がローター2の外周面21と接している時間に対して離間している時間を短くするほど、ローター2を安定して低速で回転させることができ、ローター2の移動を微小制御することができる。
【0025】
次に、このような制御方法を適用し、
図7に示すように、ローター2を回転位置θ0から回転位置θ1まで回転移動させる例について代表して説明する。回転位置θ0から回転位置θ1までの回転移動中には、ローター2を停止状態から目標最高速度Mt3まで加速させる加速領域Q1と、ローター2を目標最高速度Mt3に維持する等速領域Q2と、ローター2を目標最高速度Mt3から停止状態まで減速させる減速領域Q3と、を有する。
【0026】
[加速領域Q1]
まず、ステップS1として、制御装置7は、圧電アクチュエーター4に目標電圧値Et0の駆動信号V1、V3を印加する。この状態では、付勢部材5によって凸部44がローター2に押し付けられているため、振動部41の屈曲変形が許容されず、振動部41に屈曲振動は生じない。つまり、この状態は、自動車に例えると、アクセルを踏みながらブレーキを強く踏み、自動車の発進を阻止している状態に等しい。目標電圧値Et0は、凸部44とローター2との摩擦力に勝って屈曲振動が生じない程度に低く設定されている。なお、
図7では、電圧値Em1、Em3を漸次大きくすることにより目標電圧値Et0としているが、これに限定されず、初めから目標電圧値Et0の電圧値Em1、Em3を印加してもよい。
【0027】
次に、ステップS2として、制御装置7は、電圧値Em1、Em3を一定に維持することにより屈曲振動の振幅を一定にした状態で、圧電アクチュエーター4に駆動信号V2を印加する。これにより、振動部41に縦振動が生じる。さらには、当該縦振動によって凸部44がローター2から離間することによりステップS1で抑制されていた屈曲振動が生じ、これらが合成されることにより凸部44が楕円運動する。その結果、ローター2が矢印B1まわりに回転する。
【0028】
ここで、本ステップでは、制御装置7は、縦振動の振幅が漸次大きくなるように駆動信号V2の電圧値Em2を目標電圧値Et2まで漸次大きくする。これにより、縦振動の振幅が徐々に多くなり、それに伴って凸部44の楕円運動が徐々に大きくなってローター2の回転速度が徐々に上昇する。そのため、ローター2の急発進が抑制され、ローター2の回転開始がスムーズとなる。また、縦振動の振幅だけを変化させることにより、屈曲振動の振幅と縦振動の振幅の両方を変化させる場合と比べて、圧電アクチュエーター4の振動状態が安定して変化する。そのため、ローター2の回転量および回転速度を精度よく制御することができる。
【0029】
また、縦振動の開始によりローター2の回転を開始することによりステップS1の状態が安定する。Y軸方向に正確に縦振動させることは困難であり、Y軸方向に対して若干傾いてしまう場合がある。このように、縦振動がY軸方向に対して傾いてしまうと、縦振動にローター2を回転させる力成分が含まれてしまい、縦振動だけでローター2が回転してしまう場合がある。そこで、ステップS1において縦振動を開始せず、ステップS2において縦振動を開始することにより、ステップS1においてローター2の意図しない回転が生じることを効果的に抑制することができる。
【0030】
次に、ステップS3として、制御装置7は、電圧値Em2を一定に維持することにより縦振動の振幅を一定にした状態で、駆動信号V1、V3の電圧値Em1、Em3を目標電圧値Et1まで漸次大きくする。これにより、屈曲振動の振幅が徐々に大きくなり、それに伴ってローター2の回転速度が上昇する。このように、屈曲振動の振幅だけを変化させることにより、屈曲振動の振幅と縦振動の振幅の両方を変化させる場合と比べて、圧電アクチュエーター4の振動状態が安定して変化し、ローター2の回転量および回転速度を精度よく制御することができる。また、前のステップS2のように、屈曲振動の振幅を一定にした状態で縦振動の振幅を漸次大きくする場合と比べて、ローター2の回転速度を急峻に上昇させ易くなる。
【0031】
[等速領域Q2]
次に、ステップS4として、制御装置7は、電圧値Em1、Em2、Em3を目標電圧値Et1、Et2に維持し、ローター2の回転速度を目標最高速度Mt3に維持する。
【0032】
[減速領域Q3]
次に、ステップS5として、制御装置7は、駆動信号V2の電圧値Em2を一定に維持することにより縦振動の振幅を一定にした状態で、駆動信号V1、V3の電圧値Em1、Em3を漸次小さくする。つまり、屈曲振動の振幅を漸次小さくする。これにより、ローター2の回転速度が低下する。このように、屈曲振動の振幅だけを変化させることにより、屈曲振動の振幅と縦振動の振幅の両方を変化させる場合と比べて、圧電アクチュエーター4の振動状態が安定して変化し、ローター2の回転量および回転速度を精度よく制御することができる。また、次のステップS6のように、屈曲振動の振幅を一定にした状態で縦振動の振幅を漸次小さくする場合と比べて、ローター2の回転速度を急峻に低下させ易くなる。制御装置7は、本ステップをローター2の回転速度が目標回転速度Mt1に到達するまで継続する。
【0033】
ローター2の回転速度が目標回転速度Mt1に到達すると、ステップS6として、制御装置7は、駆動信号V1、V3の電圧値Em1、Em3を一定に維持することにより屈曲振動の振幅を一定にした状態で、駆動信号V2の電圧値Em2を漸次小さくする。つまり、縦振動の振幅を漸次小さくする。これにより、ローター2の回転速度がさらに低下する。このように、縦振動の振幅だけを変化させることにより、屈曲振動の振幅と縦振動の振幅の両方を変化させる場合と比べて、圧電アクチュエーター4の振動状態が安定して変化し、ローター2の回転量および回転速度を精度よく制御することができる。特に、微小な縦振動とし、凸部44がローター2の外周面21と接している時間に対して離間している時間を短くすることにより、ローター2を安定して低速で回転させることができ、ローター2の移動を微小制御し易くなる。制御装置7は、本ステップをローター2の回転速度が目標回転速度Mt2に到達するまで継続する。
【0034】
ローター2の回転速度が目標回転速度Mt2に到達すると、ステップS7として、制御装置7は、駆動信号V1、V2、V3の電圧値Em1、Em2、Em3を一定に維持することによりローター2の回転速度を目標回転速度Mt2に維持する。目標回転速度Mt2は、十分に低い速度に設定される。これにより、ローター2を十分に低い速度で安定して回転させることができる。そして、制御装置7は、ローター2が回転位置θ1となったところで圧電アクチュエーター4への駆動信号V1、V2、V3の印加を停止する。このような方法によれば、停止直前でローター2を十分に低い速度で安定して回転させているため、回転位置θ1に対する停止位置のずれをより小さく抑えることができる。そのため、優れた位置制御が可能で停止位置を変更するための再駆動等が不要となる。したがって、例えば、後述するロボット1000に適用した場合には、ロボット作業のサイクルタイムを短縮することができる。
【0035】
以上、圧電モーター1について説明した。このような圧電モーター1に適用された圧電駆動装置3の制御方法は、圧電素子4A~4Fを備える振動部41および伝達部としての凸部44を有し、圧電素子4A~4Fへの通電により縦振動および屈曲振動を合成して振動部41を振動させて凸部44を楕円運動させ、凸部44の楕円運動により被駆動体であるローター2を移動させる圧電駆動装置3の制御方法であって、屈曲振動の振幅を一定にした状態で縦振動の振幅を変化させることによりローター2の移動量を制御する。このように、変化させるパラメーターを縦振動の振幅に限定することにより、屈曲振動の振幅と縦振動の振幅の両方を制御する場合と比べて、圧電アクチュエーター4の振動状態が安定して変化し、ローター2の回転量を制御し易くなる。特に、微小な縦振動とし、凸部44がローター2の外周面21と接している時間に対して離間している時間を短くするほど、ローター2を安定して低速で回転させることができ、ローター2の移動を微小制御することができる。
【0036】
また、前述したように、圧電駆動装置3の制御方法では、屈曲振動の振幅を一定にした状態で縦振動の振幅を漸次大きくすることにより、停止状態のローター2の移動を開始する(ステップS2)。これにより、ローター2の急発進が抑制され、ローター2の回転開始がスムーズとなる。そのため、ローター2の回転移動を精度よく制御することができる。
【0037】
また、前述したように、圧電駆動装置3の制御方法では、ローター2が移動を開始した後、縦振動の振幅を一定にした状態で屈曲振動の振幅を漸次大きくすることによりローター2の回転速度すなわち移動速度を高める(ステップS3)。このように、屈曲振動の振幅だけを変化させることにより、屈曲振動の振幅と縦振動の振幅の両方を制御する場合と比べて、圧電アクチュエーター4の振動状態が安定して変化し、ローター2の回転速度を精度よく制御することができる。また、前のステップS2のように、屈曲振動の振幅を一定にした状態で、縦振動の振幅を漸次大きくする場合と比べて、より急峻にローター2の回転速度を上昇させ易くなる。
【0038】
また、前述したように、圧電駆動装置3の制御方法では、屈曲振動の振幅を一定にした状態で縦振動の振幅を漸次小さくすることにより、ローター2の移動速度を低める(ステップS6)。このように、縦振動の振幅だけを変化させることにより、屈曲振動の振幅と縦振動の振幅の両方を制御する場合と比べて、圧電アクチュエーター4の振動状態が安定して変化し、ローター2の回転速度を精度よく制御することができる。特に、微小な縦振動とし、凸部44がローター2の外周面21と接している時間に対して離間している時間を短くすることにより、ローター2を安定して低速で回転させることができ、ローター2の移動を微小制御し易くなる。
【0039】
また、前述したように、圧電駆動装置3の制御方法では、縦振動の振幅を漸次小さくすることによりローター2の移動速度を低めるステップS6に先立って、縦振動の振幅を一定にした状態で屈曲振動の振幅を漸次小さくすることにより、ローター2の移動速度を低める(ステップS5)。このように、屈曲振動の振幅だけを変化させることにより、屈曲振動の振幅と縦振動の振幅の両方を制御する場合と比べて、圧電アクチュエーター4の振動状態が安定して変化し、ローター2の回転速度を精度よく制御することができる。また、ステップS6のように、屈曲振動の振幅を一定にした状態で、縦振動の振幅を漸次小さくする場合と比べて、より急峻にローター2の回転速度を低下させ易くなる。
【0040】
また、前述したように、圧電駆動装置3の制御方法では、縦振動の振幅は、圧電素子4C、4Dに印加する駆動信号V2の電圧値Em2により制御する。これにより、縦振動の振幅を制御し易くなる。
【0041】
<第2実施形態>
図8は、第2実施形態に係る圧電駆動装置の制御方法を示す図である。
【0042】
本実施形態は、屈曲振動の振幅および縦振動の振幅を駆動信号V1、V2、V3の電圧値Em1、Em2、Em3ではなく周波数fにより制御すること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、
図8において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0043】
以下、本実施形態の圧電駆動装置3の制御方法について、前述した第1実施形態と同様にステップS1~S7によってローター2を回転位置θ0から回転位置θ1まで回転移動させる場合を例にして説明する。なお、以下では、駆動信号V1の周波数fを周波数f1とし、駆動信号V2の周波数fを周波数f2とし、駆動信号V3の周波数fを周波数f3とする。また、周波数f1、f2、f3は、共振周波数f0よりも高く設定される。また、圧電アクチュエーター4の運転中、駆動信号V1、V2、V3の電圧値Em1、Em2、Em3が一定に保たれる。前記「一定」には、変動がない場合に加えて、例えば、回路の構成上生じ得る微小な変動等が生じる場合を含む意味である。
【0044】
[加速領域Q1]
まず、ステップS1として、制御装置7は、圧電アクチュエーター4に目標周波数ft1の駆動信号V1、V3を印加する。この状態では、付勢部材5によって凸部44がローター2に押し付けられているため、振動部41の屈曲変形が許容されず、振動部41に屈曲振動は生じない。なお、
図8では、周波数f1、f3を漸次低くすることにより目標周波数ft1としているが、これに限定されず、初めから目標周波数ft1としてもよい。
【0045】
次に、ステップS2として、制御装置7は、周波数f1、f3を一定に維持することにより屈曲振動の振幅を一定にした状態で、圧電アクチュエーター4に駆動信号V2を印加する。これにより、振動部41に縦振動が生じる。さらには、当該縦振動によって凸部44がローター2から離間することによりステップS1で抑制されていた屈曲振動が開始され、これらが合成されることにより凸部44が楕円運動する。その結果、ローター2が矢印B1まわりに回転する。ここで、本ステップでは、制御装置7は、縦振動の振幅が漸次大きくなるように駆動信号V2の周波数f2を目標周波数ft2まで漸次低くする。これにより、凸部44の楕円運動が徐々に大きくなり、ローター2の回転速度が徐々に上昇する。そのため、ローター2の急発進が抑制され、ローター2の回転開始がスムーズとなり、ローター2の回転量および回転移動を精度よく制御することができる。
【0046】
次に、ステップS3として、制御装置7は、周波数f2を一定に維持することにより縦振動の振幅を一定にした状態で、駆動信号V1、V3の周波数f1、f3を目標周波数ft3まで漸次低くする。これにより、屈曲振動の振幅が徐々に大きくなり、それに伴ってローター2の回転速度が上昇する。
【0047】
[等速領域Q2]
次に、ステップS4として、制御装置7は、周波数f1、f2、f3を目標周波数ft2、ft3に維持し、ローター2の回転速度を目標最高速度Mt3に維持する。
【0048】
[減速領域Q3]
次に、ステップS5として、制御装置7は、駆動信号V2の周波数f2を一定に維持することにより縦振動の振幅を一定にした状態で、駆動信号V1、V3の周波数f1、f3を漸次高くする。つまり、屈曲振動の振幅を漸次小さくする。これにより、ローター2の回転速度が低下する。制御装置7は、本ステップをローター2の回転速度が目標回転速度Mt1に到達するまで継続する。
【0049】
ローター2の回転速度が目標回転速度Mt1に到達すると、ステップS6として、制御装置7は、駆動信号V1、V3の周波数f1、f3を一定に維持することにより屈曲振動の振幅を一定にした状態で、駆動信号V2の周波数f2を漸次高くする。つまり、縦振動の振幅を漸次小さくする。これにより、ローター2の回転速度がさらに低下する。制御装置7は、本ステップをローター2の回転速度が目標回転速度Mt2に到達するまで継続する。
【0050】
ローター2の回転速度が目標回転速度Mt2に到達すると、ステップS7として、制御装置7は、駆動信号V1、V2、V3の周波数f1、f2、f3を一定に維持することによりローター2の回転速度を目標回転速度Mt2に維持する。そして、制御装置7は、ローター2が回転位置θ1となったところで、圧電アクチュエーター4への駆動信号V1、V2、V3の印加を停止する。
【0051】
以上、本実施形態の圧電駆動装置3の制御方法について説明した。このような圧電駆動装置3の制御方法では、前述したように、縦振動の振幅は、圧電素子4C、4Dに印加する駆動信号V2の周波数f2により制御する。これにより、縦振動の振幅を制御し易くなる。
【0052】
以上のような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0053】
<第3実施形態>
図9は、第3実施形態に係る圧電駆動装置の制御方法を示す図である。
【0054】
本実施形態は、圧電駆動装置3の制御方法についてステップS2、S3およびステップS5、S6が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、
図9において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。以下では、
図9に基づいてステップS2、S3、S5、S6についてのみ説明する。
【0055】
[加速領域Q1]
ステップS2として、制御装置7は、電圧値Em1、Em3を一定に維持することにより屈曲振動の振幅を一定にした状態で、縦振動の振幅が漸次大きくなるように駆動信号V2の電圧値Em2を目標電圧値Et4まで漸次大きくする。これにより、楕円運動が徐々に大きくなり、ローター2の回転が開始される。なお、目標電圧値Et4は、目標電圧値Et2よりも低く設定される。
【0056】
ステップS3として、制御装置7は、屈曲振動の振幅が漸次大きくなるように駆動信号V1、V3の電圧値Em1、Em3を目標電圧値Et1まで漸次大きくしつつ、縦振動の振幅が漸次大きくなるように駆動信号V2の電圧値Em2を目標電圧値Et2まで漸次大きくする。これにより、凸部44の楕円運動が徐々に大きくなり、それに伴ってローター2の回転速度が上昇する。このように、屈曲振動の振幅と縦振動の振幅の両方を変化させることにより、どちらか一方だけを変化させる場合と比べて、ローター2の回転速度を急峻に上昇させ易くなる。したがって、等速領域Q2がより長くなり、回転位置θ0から回転位置θ1までの移動時間を短くすることができる。
【0057】
[減速領域Q3]
次に、ステップS5として、制御装置7は、屈曲振動の振幅が漸次小さくなるように駆動信号V1、V3の電圧値Em1、Em3を漸次低くし、縦振動の振幅が漸次小さくなるように駆動信号V2の電圧値Em2を漸次低くする。これにより、凸部44の楕円運動が徐々に小さくなり、それに伴ってローター2の回転速度が低下する。このように、屈曲振動の振幅と縦振動の振幅の両方を変化させることにより、どちらか一方だけを変化させる場合と比べて、ローター2の回転速度を急峻に低下させ易くなる。したがって、等速領域Q2がより長くなり、回転位置θ0から回転位置θ1までの移動時間を短くすることができる。制御装置7は、本ステップをローター2の回転速度が目標回転速度Mt1に到達するまで継続する。
【0058】
ローター2の回転速度が目標回転速度Mt1に到達すると、ステップS6として、制御装置7は、駆動信号V1、V3の電圧値Em1、Em3を一定に維持することにより屈曲振動の振幅を一定にした状態で、駆動信号V2の電圧値Em2を漸次低くする。これにより、ローター2の回転速度がさらに低下する。
【0059】
以上、本実施形態の圧電駆動装置3の制御方法について説明した。このような圧電駆動装置3の制御方法では、前述したように、ローター2が移動を開始した後、縦振動の振幅を漸次大きくしながら、屈曲振動の振幅を漸次大きくすることによりローター2の移動速度を高める(ステップS3)。このように、屈曲振動の振幅と縦振動の振幅の両方を変化させることにより、どちらか一方だけを変化させる場合と比べて、ローター2の回転速度を急峻に上昇させ易くなる。したがって、等速領域Q2がより長くなり、回転位置θ0から回転位置θ1までの移動時間を短くすることができる。
【0060】
また、このような圧電駆動装置3の制御方法では、前述したように、屈曲振動の振幅を漸次小さくしながら、縦振動の振幅を漸次小さくすることにより、ローター2の移動速度を低める(ステップS5)。このように、屈曲振動の振幅と縦振動の振幅の両方を変化させることにより、どちらか一方だけを変化させる場合と比べて、ローター2の回転速度を急峻に低下させ易くなる。したがって、等速領域Q2がより長くなり、回転位置θ0から回転位置θ1までの移動時間を短くすることができる。
【0061】
以上のような第3実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0062】
<第4実施形態>
図10は、本発明の第4実施形態に係るロボットを示す斜視図である。
【0063】
図10に示すロボット1000は、精密機器やこれを構成する部品の給材、除材、搬送および組立等の作業を行うことができる。このようなロボット1000は、6軸多関節ロボットであり、床や天井に固定されるベース1100と、ベース1100に支持されたマニピュレーター1200と、を有する。
【0064】
マニピュレーター1200は、複数の相互連結されたアームを有することにより複数自由度で運動するロボティックアームであり、ベース1100に回動自在に連結された第1アーム1210と、第1アーム1210に回動自在に連結された第2アーム1220と、第2アーム1220に回動自在に連結された第3アーム1230と、第3アーム1230に回動自在に連結された第4アーム1240と、第4アーム1240に回動自在に連結された第5アーム1250と、第5アーム1250に回動自在に連結された第6アーム1260と、第6アーム1260に装着されたエンドエフェクター1270と、を有する。
【0065】
なお、これら第1~第6アーム1210~1260およびエンドエフェクター1270のうちから任意に選択したものを第1部材とし、この第1部材を除いた中から任意に選択したものを第2部材とすることができる。また、例えば、エンドエフェクター1270内に、相対的に移動可能な複数の部材、例えば、ワークを把持するための一対の爪が存在する場合には、一方の爪を第1部材とし、他方の爪を第2部材とすることができる。図示の構成では、第1アーム1210を第1部材R1とし、第2アーム1220を第2部材R2としている。
【0066】
また、ロボット1000は、ベース1100と第1アーム1210との関節に配置され、ベース1100に対して第1アーム1210を回動させる第1アーム回動機構1310と、第1アーム1210と第2アーム1220との関節に配置され、第1アーム1210に対して第2アーム1220を回動させる第2アーム回動機構1320と、第2アーム1220と第3アーム1230との関節に配置され、第2アーム1220に対して第3アーム1230を回動させる第3アーム回動機構1330と、第3アーム1230と第4アーム1240との関節に配置され、第3アーム1230に対して第4アーム1240を回動させる第4アーム回動機構1340と、第4アーム1240と第5アーム1250との関節に配置され、第4アーム1240に対して第5アーム1250を回動させる第5アーム回動機構1350と、第5アーム1250と第6アーム1260との関節に配置され、第5アーム1250に対して第6アーム1260を回動させる第6アーム回動機構1360と、エンドエフェクター1270を駆動するエンドエフェクター駆動機構1370と、を有する。また、ロボット1000は、これら第1~第6アーム回動機構1310~1360およびエンドエフェクター駆動機構1370の駆動を制御するロボット制御部1400を有する。
【0067】
第1~第6アーム回動機構1310~1360およびエンドエフェクター駆動機構1370の一部または全部には、その動力源として圧電モーター1が搭載されており、圧電モーター1の駆動によって対象の第1~第6アーム1210~1260およびエンドエフェクター1270が駆動する。また、圧電モーター1の制御には、前述した圧電駆動装置3の制御方法が適用されている。したがって、ロボット1000は、上述した圧電駆動装置3の制御方法による効果を享受することができ、高い信頼性を発揮することができる。
【0068】
以上のように、ロボット1000に適用されたマニピュレーター1200の制御方法は、圧電素子4A~4Fを備える振動部41および凸部44を有し、圧電素子4A~4Fへの通電により縦振動および屈曲振動を合成して振動部41を振動させて凸部44を楕円運動させ、凸部44の楕円運動により相互連結された第1部材R1および第2部材R2を相対的に移動させるマニピュレーター1200の制御方法であって、屈曲振動の振幅を一定にした状態で縦振動の振幅を変化させることにより第1部材R1と第2部材R2との相対的な移動量を制御する。このように、変化させるパラメーターを縦振動の振幅に限定することにより、屈曲振動の振幅と縦振動の振幅の両方を制御する場合と比べて、圧電アクチュエーター4の振動状態が安定して変化し、ローター2の回転量を制御し易くなる。特に、微小な縦振動とし、凸部44がローター2の外周面21と接している時間に対して離間している時間を短くするほど、ローター2を安定して低速で回転させることができ、マニピュレーター1200の駆動を微小制御することができる。
【0069】
このような第4実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0070】
以上、本発明の圧電駆動装置の制御方法およびマニピュレーターの制御方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、各実施形態を適宜組み合わせてもよい。特に、第1、第2、第3駆動信号の電圧値と周波数との両方を変化させることにより、縦振動および屈曲振動の振幅を制御してもよい。また、前述した実施形態では、圧電駆動装置をロボットに適用した構成について説明したが、圧電駆動装置は、ロボット以外の、駆動力を必要とする各種電子デバイス、例えば、プリンター、プロジェクター等に適用することもできる。
【符号の説明】
【0071】
1…圧電モーター、2…ローター、3…圧電駆動装置、4…圧電アクチュエーター、4A…圧電素子、4B…圧電素子、4C…圧電素子、4D…圧電素子、4E…圧電素子、4F…圧電素子、4G…圧電素子、5…付勢部材、7…制御装置、9…エンコーダー、21…外周面、22…主面、41…振動部、42…支持部、43…接続部、44…凸部、51…保持部、52…基台、53…ばね群、54…ばね群、91…スケール、92…光学素子、921…発光素子、922…受光素子、1000…ロボット、1100…ベース、1200…マニピュレーター、1210…第1アーム、1220…第2アーム、1230…第3アーム、1240…第4アーム、1250…第5アーム、1260…第6アーム、1270…エンドエフェクター、1310…第1アーム回動機構、1320…第2アーム回動機構、1330…第3アーム回動機構、1340…第4アーム回動機構、1350…第5アーム回動機構、1360…第6アーム回動機構、1370…エンドエフェクター駆動機構、1400…ロボット制御部、A1…矢印、A2…矢印、B1…矢印、B2…矢印、Em1…電圧値、Em2…電圧値、Em3…電圧値、Et0…目標電圧値、Et1…目標電圧値、Et2…目標電圧値、Et4…目標電圧値、Mt1…目標回転速度、Mt2…目標回転速度、Mt3…目標最高速度、O…回転軸、Q1…加速領域、Q2…等速領域、Q3…減速領域、R1…第1部材、R2…第2部材、ST…ステージ、V1…駆動信号、V2…駆動信号、V3…駆動信号、f…周波数、f0…共振周波数、f1…周波数、f2…周波数、f3…周波数、ft1…目標周波数、ft2…目標周波数、ft3…目標周波数、S1~S7…ステップ、θ0…回転位置、θ1…回転位置