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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】乗員拘束装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/18 20060101AFI20240709BHJP
   B60R 21/2338 20110101ALI20240709BHJP
【FI】
B60R21/18
B60R21/2338
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020187674
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2022077053
(43)【公開日】2022-05-23
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】小ヶ口 晃
(72)【発明者】
【氏名】陶山 洋士
(72)【発明者】
【氏名】吉仲 久和
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0151986(US,A1)
【文献】特開2010-264965(JP,A)
【文献】特開2017-178144(JP,A)
【文献】特開2007-276514(JP,A)
【文献】特開2015-107721(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102012014600(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102017209417(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/18
B60R 21/2338
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の身体に沿って引き回されるウェビングと、
前記ウェビングのうち、前記乗員の肩から腰にかけての領域に設けられ、ガス供給により該ウェビングと該乗員との間で膨張展開するエアバッグと、
を備え、
前記エアバッグは、膨張展開時の長手方向が前記ウェビングの延在方向と交差し、横方向に膨張展開する横方向展開部、及び該横方向展開部から下方に延出する複数の縦チャンバを有し、
前記複数の縦チャンバは車幅方向内側ほど長いことを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項2】
前記エアバッグは、前記ウェビングに沿って延在し、車幅方向の最も内側に位置する縦チャンバの下端に連なり、前記複数の縦チャンバ及び前記横方向展開部にガスを供給するガス通過部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の乗員拘束装置。
【請求項3】
前記エアバッグは、乗員側の第1基布、及び反乗員側の第2基布を有し、
前記複数の縦チャンバを覆うように前記第1基布にテザーが取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗員拘束装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の乗員を拘束する乗員拘束装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の衝突、横転等の緊急時にシートベルトを引き締めて車両乗員を拘束するシートベルト装置として、シートベルトに沿ってエアバッグを設け、車両緊急時にエアバッグをガスで膨張させるようにしたシートベルト装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-178144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、シートベルトと乗員との間にエアバッグを展開し、乗員を効果的に拘束する乗員拘束装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の乗員拘束装置は、乗員の身体に沿って引き回されるウェビングと、前記ウェビングのうち、前記乗員の肩から腰にかけての領域に設けられ、ガス供給により該ウェビングと該乗員との間で膨張展開するエアバッグと、を備え、前記エアバッグは、膨張展開時の長手方向が前記ウェビングの延在方向と交差し、横方向に膨張展開する横方向展開部、及び該横方向展開部から下方に延出する複数の縦チャンバを有するものである。
【0006】
本発明の一態様では、前記複数の縦チャンバは車幅方向内側ほど長い。
【0007】
本発明の一態様では、前記エアバッグは、前記ウェビングに沿って延在し、車幅方向の最も内側に位置する縦チャンバの下端に連なり、前記複数の縦チャンバ及び前記横方向展開部にガスを供給するガス通過部をさらに備える。
【0008】
本発明の一態様では、前記エアバッグは、乗員側の第1基布、及び反乗員側の第2基布を有し、前記複数の縦チャンバを覆うように前記第1基布にテザーが取り付けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の乗員拘束装置では、シートベルトと乗員との間にエアバッグを展開し、乗員を効果的に拘束できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1Aは、実施形態に係る乗員拘束装置の使用状態を模式的に示した正面図であり、図1Bはエアバッグが展開された状態を示す正面図である。
図2】エアバッグの平面図である。
図3】エアバッグの平面図である。
図4図3のIV-IV線断面の模式図である。
図5】ウェビングの取付例を示す図である。
図6図1BのVI-VI線断面の模式図である。
図7】別の実施形態に係るエアバッグの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1~6を参照して実施の形態に係るエアバッグ及び乗員拘束装置を説明する。図1Aは、車両用シート1に適用された乗員拘束装置の使用状態(装着状態)を模式的に示した正面図であり、図1Bはエアバッグ10が展開された状態を示す正面図である。
【0012】
リトラクタ2から引き出されたウェビングWは、ショルダアンカ7を通って引き回され、トング4で折り返され、その端部がアンカープレート6に定着されている。アンカープレート6は、図示しない車体の固定部に固定される。
【0013】
リトラクタ2は、例えばBピラーに設置されるが、これに限定されず、Cピラーやシートバック内等に設置されてもよい。乗員拘束装置の使用状態において、ウェビングWは、乗員Pの車幅方向外側の肩部から、車幅方向内側の腰部にかけて斜めに、かつ前方から乗員Pの上体に装着される。
【0014】
ウェビングWのトング4よりもショルダアンカ7側には、エアバッグ10が装着されている。エアバッグ10は、インフレータからのガスが供給されると、図1Bに示すように、乗員PとウェビングWとの間で膨張展開する。膨張完了状態のエアバッグ10は、横方向に展開する横方向展開部11と、横方向展開部11から下方に延在する複数の縦チャンバ12~15とを有する。縦チャンバ12~15は、それぞれ上部が横方向展開部11に連通している。
【0015】
例えば、インフレータは、トング4が着脱されるバックル9側で車体の固定部に固定されたり、アンカープレート6側でフロアに固定されたりする。ウェビングに沿って延在するガス通過部(図示略)の一端を縦チャンバ12の下端部に連結し、ガス通過部の他端をガス導入口とする。
【0016】
インフレータをバックル9側に設ける場合、バックル9にインフレータのガス噴出口が連通されたガス供給パイプ連結穴を設け、トング4にガス供給パイプを設け、トング4をバックル9に装着すると、ガス供給パイプがガス供給パイプ連結穴に挿入されるようにする。インフレータから噴出したガスは、ガス供給パイプを介してガス通過部のガス導入口に導かれ、エアバッグ10が膨張する。
【0017】
インフレータをアンカープレート6側に設ける場合、インフレータから発生したガスをガス通過部のガス導入口に導くフレキシブルホース(チューブ)がウェビングWに沿って設けられる。
【0018】
インフレータをBピラー内などに配置し、フレキシブルホースを用いて、横方向展開部11の上方からガスを供給してもよい。
【0019】
縦チャンバ12~15は上下方向の長さが異なっており、車幅方向内側ほど長くなっている。すなわち、縦チャンバ12が最も長く、縦チャンバ15が最も短い。言い換えれば、縦チャンバの下端は、縦チャンバ12の下端が最も下側に位置し、縦チャンバ15の下端が最も上側に位置する。
【0020】
図2図3に示すように、エアバッグ10は、2枚の基布10a、10bを重ね合わせ、それらの周縁を縫合部21a~21gによって縫合することにより袋状に製作される。基布10a、10bは、横方向展開部11に対応する横長の略々矩形状の領域と、縦チャンバ12~15に対応する略々台形状の領域とを有する。
【0021】
基布10a、10bの上縁部が縫合部21aによって縫合され、側縁部が縫合部21b、21cによって縫合され、下縁部が縫合部21d~21gによって縫合されている。なお、説明の便宜上、インフレータからのガスを供給するガス通過部の連結箇所の図示は省略している。エアバッグ10の膨張展開時、基布10aは反乗員側に位置し、基布10bは乗員側に位置する。
【0022】
縫合部21dの一端は縫合部21bの下端に連結し、縫合部21dの他端から上側(横方向展開部11側)に向かって線状縫合部22aが延びている。線状縫合部22aと平行になるように、縫合部21eの一端から上側に向かって線状縫合部22bが延びており、縫合部21eの他端から上側に向かって線状縫合部23aが延びている。
【0023】
線状縫合部23aと平行になるように、縫合部21fの一端から上側に向かって線状縫合部23bが延びており、縫合部21fの他端から上側に向かって線状縫合部24aが延びている。線状縫合部24aと平行になるように、縫合部21gの一端から上側に向かって線状縫合部24bが延びており、縫合部21gの他端は縫合部21cの下端に連結されている。
【0024】
縫合部21b、縫合部21d及び線状縫合部22aで囲まれた部分が縦チャンバ12となる。線状縫合部22b、縫合部21e及び線状縫合部23aで囲まれた部分が縦チャンバ13となる。線状縫合部23b、縫合部21f及び線状縫合部24aで囲まれた部分が縦チャンバ14となる。線状縫合部24b、縫合部21g及び縫合部21cで囲まれた部分が縦チャンバ15となる。
【0025】
線状縫合部22aの上端と線状縫合部22bの上端とが連結され、線状縫合部22aと線状縫合部22bとの間の領域は非膨張領域となる。線状縫合部23aの上端と線状縫合部23bの上端とが連結され、線状縫合部23aと線状縫合部23bとの間の領域は非膨張領域となる。線状縫合部24aの上端と線状縫合部24bの上端とが連結され、線状縫合部24aと線状縫合部24bとの間の領域は非膨張領域となる。
【0026】
図3図4に示すように、基布10b側には、縦チャンバ12~15を覆うように、略々台形状のテザー30が取り付けられている。テザー30の一対の側縁部の一方が、縫合部21cよりも周縁側の領域で、縫合部25により基布10a、10bに縫合され、側縁部の他方が、縫合部21bよりも周縁側の領域で、縫合部26により基布10a、10bに縫合されている。縫合部25,26は、図2では図示を省略している。
【0027】
テザー30の中央領域は、テザー41~43により、基布10a、10bに連結されている。
【0028】
例えば、矩形のテザー41の中央部を、線状縫合部22aと線状縫合部22bとの間の領域で、縫合部51により基布10a、10bに縫合する。縫合部51は、図2では図示を省略しているが、線状縫合部22a、22bと平行に延びる。テザー41の一対の長辺が、縫合部27によりテザー30に縫合される。
【0029】
同様に、矩形のテザー42の中央部を、線状縫合部23aと線状縫合部23bとの間の領域で、縫合部52により基布10a、10bに縫合する。縫合部52は、図2では図示を省略しているが、線状縫合部23a、23bと平行に延びる。テザー42の一対の長辺が、縫合部28によりテザー30に縫合される。
【0030】
同様に、矩形のテザー43の中央部を、線状縫合部24aと線状縫合部24bとの間の領域で、縫合部53により基布10a、10bに縫合する。縫合部53は、図2では図示を省略しているが、線状縫合部24a、24bと平行に延びる。テザー43の一対の長辺が、縫合部29によりテザー30に縫合される。
【0031】
ウェビングWをエアバッグ10に取り付ける方法は特に限定されないが、例えば、図5に示すように、基布10a上に矩形の基布60,61を配置し、基布60,61の一対の辺縁部と基布10aとを縫合部70、71で縫合し、基布10aと基布60,61との間にウェビングWを通すようにする。
【0032】
ウェビングWの延在方向と、横方向展開部11の長手方向Lとの交差角度θは45°以上65°以下であることが好ましい。この長手方向Lは、膨張状態の横方向展開部11のうち、ウェビングWの拘束力を受ける部分を円筒とみなした場合の円筒中心軸方向ということができる。
【0033】
エアバッグ10にウェビングWを取り付け、ガス通過部のガス導入口にガス供給パイプ又はフレキシブルホースを連結し、エアバッグ10を折り畳んだ折り畳み体をバッグカバー(図示略)で包囲することで、図1Aに示すような乗員拘束装置となる。
【0034】
車両の衝突検知時等の緊急時に、インフレータからガスが噴出し、ガス通過部を介してエアバッグ10にガスが供給され、図1Bに示すように、横方向展開部11及び縦チャンバ12~15がウェビングWと乗員Pとの間で膨張展開する。横方向展開部11は、ウェビングWと交差し、その長手方向が横方向、例えば水平方向となるように展開し、乗員Pの肩部及び胸部等の人体耐性の高い領域を拘束する。
【0035】
横方向展開部11から下方に延出する縦チャンバ12~15は、図6に示すように、テザー30、41~43により面剛性が向上し、ウェビングWからの荷重が分散される。縦チャンバ12~15が拘束する部位は、横方向展開部11が拘束する部位よりも人体耐性が低いため、ウェビングWからの荷重を分散することで、適切な拘束力となる。
【0036】
上記実施形態では、縦チャンバ12~15は、車幅方向内側ほど長くなる構成について説明したが、全て同じ長さとしてもよい。但し、縦チャンバ12~15は、ウェビングWと乗員Pとの間に位置していればよいため、乗員上体に斜め方向に装着されるウェビングWの傾きに合わせて、車幅方向外側ほど短くして、エアバッグの容量を削減することが好ましい。
【0037】
上記実施形態では、横方向展開部11から、4つの縦チャンバ12~15が下方に延在する構成について説明したが、縦チャンバの数は4に限定されず、2や3でもよく、5以上であってもよい。
【0038】
エアバッグ10の横方向展開部11が、ステアリングホイールに設けられた運転席用エアバッグや、助手席とインストルメントパネルとの間で膨張展開する助手席用エアバッグと接触し、高い拘束力を発揮するようにしてもよい。
【0039】
上記実施形態では、横方向展開部11の下方に、上下方向に延在する縦チャンバ12~15を横方向に並べて配置する構成について説明したが、図7に示すエアバッグ10Aのように、横方向展開部11の下方に、横方向に延在する横チャンバ16~19を上下方向に並べて配置する構成としてもよい。
【0040】
この例では、基布10a、10bの下縁部が縫合部21hによって縫合され、縫合部21hの一端が縫合部21bの下端に連結し、他端が縫合部21cの下端に連結する。
【0041】
基布10a、10bを縫合する縫合部81~84が、互いに間隔を空けて平行に横方向に延びている。縫合部81と縫合部82との間の領域が横チャンバ16となる。縫合部82と縫合部83との間の領域が横チャンバ17となる。縫合部83と縫合部84との間の領域が横チャンバ18となる。縫合部84と縫合部21hとの間の領域が横チャンバ19となる。
【0042】
縫合部81~84は上側ほど長くなっており、横チャンバ16~19は横方向の長さが上側ほど長くなっている。
【0043】
乗員側の基布10bには、上記実施形態で説明したテザー30と同様のテザーが横チャンバ16~19を覆うように取り付けられている。
【0044】
縫合部81~84の一端が縫合部21bに連結されていてもよい。あるいはまた、縫合部81~84の他端が縫合部21cに連結されていてもよい。
【0045】
このようなエアバッグ10Aによっても、横チャンバ16~19により、ウェビングWからの荷重が分散され、乗員を効率良く拘束できる。
【0046】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の態様とされてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 車両用シート
2 リトラクタ
4 トング
6 アンカープレート
7 ショルダアンカ
9 バックル
10 エアバッグ
11 横方向展開部
12~15 縦チャンバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7