(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】駆動波形決定方法、駆動波形決定プログラム、液体吐出装置および駆動波形決定システム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/015 20060101AFI20240709BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 401
B41J2/01 451
(21)【出願番号】P 2020189263
(22)【出願日】2020-11-13
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】豊福 篤
(72)【発明者】
【氏名】村山 寿郎
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-213696(JP,A)
【文献】特開平9-174835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1吐出特性と、前記第1吐出特性とは異なる第2吐出特性と、に基づいて、液体を吐出する液体吐出ヘッドに設けられる駆動素子に印加される駆動パルスの波形を決定する駆動波形決定方法であって、
前記第1吐出特性の条件を設定する第1工程と、
前記駆動パルスの波形に波形候補を用いた場合における前記第1吐出特性および前記第2吐出特性を取得する第2工程と、
前記第1吐出特性が前記条件を満足するか否かを判定する第3工程と、
前記第3工程で満足すると判定された場合、前記第2吐出特性を用いて優劣比較を行うことにより前記波形候補を評価する第4工程と、を有し、
少なくとも前記第2工程、前記第3工程および前記第4工程を繰り返すことで最適化処理を行い、前記駆動パルスの波形を決定する、
ことを特徴とする駆動波形決定方法。
【請求項2】
前記第3工程で満足しないと判定された場合、前記第4工程を行わない、
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動波形決定方法。
【請求項3】
前記第2工程は、前記駆動パルスの波形に前記波形候補を用いた場合における前記第1吐出特性および前記第2吐出特性とは異なる第3吐出特性をさらに取得し、
前記第4工程は、前記第3工程で満足すると判定された場合、前記第2吐出特性および前記第3吐出特性を用いて優劣比較を行うことにより前記波形候補を評価し、
前記最適化処理として多目的最適化処理を行う、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の駆動波形決定方法。
【請求項4】
記憶回路に記憶された取得対象を前記駆動パルスの仮波形として取得する第5工程をさらに有し、
前記第4工程は、前記波形候補の前記第2吐出特性および前記第3吐出特性のほか、前記仮波形の前記第2吐出特性および前記第3吐出特性を用いて優劣比較を行うことにより、前記波形候補を評価する、
ことを特徴とする請求項3に記載の駆動波形決定方法。
【請求項5】
前記第4工程は、前記仮波形の前記第2吐出特性よりも前記波形候補の前記第2吐出特性が優れ、かつ、前記仮波形の前記第3吐出特性よりも前記波形候補の前記第3吐出特性が優れる場合、前記仮波形を前記第5工程での取得対象から除外し、かつ、前記波形候補を前記第5工程での取得対象として前記記憶回路に記憶させる、
ことを特徴とする請求項4に記載の駆動波形決定方法。
【請求項6】
前記第4工程は、前記仮波形の前記第2吐出特性よりも前記波形候補の前記第2吐出特性が劣り、かつ、前記仮波形の前記第3吐出特性よりも前記波形候補の前記第3吐出特性が劣る場合、前記波形候補を前記第5工程での取得対象として前記記憶回路に記憶しない、
ことを特徴とする請求項4または5に記載の駆動波形決定方法。
【請求項7】
前記第4工程は、前記仮波形の前記第2吐出特性よりも前記波形候補の前記第2吐出特性が優れ、かつ、前記仮波形の前記第3吐出特性よりも前記波形候補の前記第3吐出特性が劣る場合、前記仮波形を前記第5工程での取得対象から除外せず、かつ、前記波形候補を前記第5工程での取得対象として前記記憶回路に記憶する、
ことを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の駆動波形決定方法。
【請求項8】
少なくとも前記第2工程、前記第3工程、前記第4工程を複数回行った後、前記記憶回路に前記第5工程での取得対象として記憶された前記波形候補に基づいて、前記駆動パルスの波形を決定する第6工程をさらに有し、
ことを特徴とする請求項4から7のいずれか1項に記載の駆動波形決定方法。
【請求項9】
前記第1工程は、前記第1吐出特性の許容範囲を前記条件として設定する、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の駆動波形決定方法。
【請求項10】
前記第1工程は、前記条件を設定するか否かの選択が可能である、
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の駆動波形決定方法。
【請求項11】
前記第1工程は、ユーザーからの前記条件に関する指示を受け付ける情報を表示装置に表示させた後、前記指示に基づいて、前記条件を設定する、
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の駆動波形決定方法。
【請求項12】
前記第1吐出特性は、前記液体吐出ヘッドからの液体の吐出量である、
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の駆動波形決定方法。
【請求項13】
前記第1吐出特性は、前記液体吐出ヘッドからの液体の吐出速度である、
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の駆動波形決定方法。
【請求項14】
前記第2吐出特性は、前記液体吐出ヘッドからの液体の吐出角度である、
ことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の駆動波形決定方法。
【請求項15】
前記第2吐出特性は、前記液体吐出ヘッドからの液体の主滴に後続するサテライトの発生量である、
ことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の駆動波形決定方法。
【請求項16】
前記第2吐出特性は、前記液体吐出ヘッドの駆動周波数である、
ことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の駆動波形決定方法。
【請求項17】
第1吐出特性に基づいて、液体を吐出する液体吐出ヘッドに設けられる駆動素子に印加される駆動パルスの波形を決定する駆動波形決定方法であって、
前記第1吐出特性の条件を設定する第1工程と、
前記駆動パルスの波形に波形候補を用いた場合における前記第1吐出特性を取得する第2工程と、
前記第1吐出特性が前記条件を満足するか否かを判定する第3工程と、
前記第3工程で満足すると判定された場合、前記第1吐出特性を用いて探索を行うことにより前記波形候補を評価する第4工程と、を有し、
前記第4工程の評価結果を用いて、前記駆動パルスの波形を決定する、
ことを特徴とする駆動波形決定方法。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1項に記載の駆動波形決定方法をコンピューターに実行させる、
ことを特徴とする駆動波形決定プログラム。
【請求項19】
液体を吐出するための駆動素子を有する液体吐出ヘッドと、
第1吐出特性と、前記第1吐出特性とは異なる第2吐出特性と、に基づいて、前記駆動素子に印加される駆動パルスの波形を決定する処理を行う処理回路と、有し、
前記処理回路は、
前記第1吐出特性の条件を設定する第1工程と、
前記駆動パルスの波形に波形候補を用いた場合における前記第1吐出特性および前記第2吐出特性を取得する第2工程と、
前記第1吐出特性が前記条件を満足するか否かを判定する第3工程と、
前記第3工程で満足すると判定された場合、前記第2吐出特性を用いて最適化を行うことにより前記波形候補を評価する第4工程と、を実行し、
前記処理回路は、少なくとも前記第2工程、前記第3工程、前記第4工程を繰り返すことで最適化処理を行い、前記駆動パルスの波形を決定する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項20】
液体を吐出するための駆動素子を有する液体吐出ヘッドと、
第1吐出特性と、前記第1吐出特性とは異なる第2吐出特性と、に基づいて、前記駆動素子に印加される駆動パルスの波形を決定する処理を行う処理回路と、有し、
前記処理回路は、
前記第1吐出特性の条件を設定する第1工程と、
前記駆動パルスの波形に波形候補を用いた場合における前記第1吐出特性および前記第2吐出特性を取得する第2工程と、
前記第1吐出特性が前記条件を満足するか否かを判定する第3工程と、
前記第3工程で満足すると判定された場合、前記第2吐出特性を用いて最適化を行うことにより前記波形候補を評価する第4工程と、を実行し、
前記処理回路は、少なくとも前記第2工程、前記第3工程、前記第4工程を繰り返すことで最適化処理を行い、前記駆動パルスの波形を決定する、
ことを特徴とする駆動波形決定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動波形決定方法、駆動波形決定プログラム、液体吐出装置および駆動波形決定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式のプリンター等の液体吐出装置では、一般に、圧電素子等の駆動素子に駆動パルスが印加されることにより、インク等の液体がノズルから吐出される。ここで、ノズルからのインクの吐出特性が所望の特性となるように、駆動パルスの波形が決定される。
【0003】
特許文献1に記載の技術は、駆動パルスの波形である駆動波形を決定するためのパラメーターを複数変化させて噴射特性を計測し、その計測結果に基づいて、実際に用いる駆動波形のパラメーターを決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、ユーザーが手動で駆動波形の決定を行うため、ユーザーの負担が過大となるという課題がある。この点を鑑み、ユーザーの負担を軽減するため、駆動波形の決定を自動化することが考えられる。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の技術を単に自動化しても、複数の噴射特性のすべてが最良となる駆動波形を決定することは、現実的に難しい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、本発明の駆動波形決定方法の一態様は、第1吐出特性と、前記第1吐出特性とは異なる第2吐出特性と、に基づいて、液体を吐出する液体吐出ヘッドに設けられる駆動素子に印加される駆動パルスの波形を決定する駆動波形決定方法であって、前記第1吐出特性の条件を設定する第1工程と、前記駆動パルスの波形に波形候補を用いた場合における前記第1吐出特性および前記第2吐出特性を取得する第2工程と、前記第1吐出特性が前記条件を満足するか否かを判定する第3工程と、前記第3工程で満足すると判定された場合、前記第2吐出特性を用いて優劣比較を行うことにより前記波形候補を評価する第4工程と、を有し、少なくとも前記第2工程、前記第3工程および前記第4工程を繰り返すことで最適化処理を行い、前記駆動パルスの波形を決定する。
【0008】
本発明の駆動波形決定方法の他の一態様は、第1吐出特性に基づいて、液体を吐出する液体吐出ヘッドに設けられる駆動素子に印加される駆動パルスの波形を決定する駆動波形決定方法であって、前記第1吐出特性の条件を設定する第1工程と、前記駆動パルスの波形に波形候補を用いた場合における前記第1吐出特性を取得する第2工程と、前記第1吐出特性が前記条件を満足するか否かを判定する第3工程と、前記第3工程で満足すると判定された場合、前記第1吐出特性を用いて探索を行うことにより前記波形候補を評価する第4工程と、を有し、前記第4工程の評価結果を用いて、前記駆動パルスの波形を決定する。
【0009】
本発明の駆動波形決定プログラムの一態様は、前述の態様の駆動波形決定方法をコンピューターに実行させる。
【0010】
本発明の液体吐出装置の一態様は、液体を吐出するための駆動素子を有する液体吐出ヘッドと、第1吐出特性と、前記第1吐出特性とは異なる第2吐出特性と、に基づいて、前記駆動素子に印加される駆動パルスの波形を決定する処理を行う処理回路と、有し、前記処理回路は、前記第1吐出特性の条件を設定する第1工程と、前記駆動パルスの波形に波形候補を用いた場合における前記第1吐出特性および前記第2吐出特性を取得する第2工程と、前記第1吐出特性が前記条件を満足するか否かを判定する第3工程と、前記第3工程で満足すると判定された場合、前記第2吐出特性を用いて最適化を行うことにより前記波形候補を評価する第4工程と、を実行し、前記処理回路は、少なくとも前記第2工程、前記第3工程、前記第4工程を繰り返すことで最適化処理を行い、前記駆動パルスの波形を決定する。
【0011】
本発明の駆動波形決定システムの一態様は、液体を吐出するための駆動素子を有する液体吐出ヘッドと、第1吐出特性と、前記第1吐出特性とは異なる第2吐出特性と、に基づいて、前記駆動素子に印加される駆動パルスの波形を決定する処理を行う処理回路と、有し、前記処理回路は、前記第1吐出特性の条件を設定する第1工程と、前記駆動パルスの波形に波形候補を用いた場合における前記第1吐出特性および前記第2吐出特性を取得する第2工程と、前記第1吐出特性が前記条件を満足するか否かを判定する第3工程と、前記第3工程で満足すると判定された場合、前記第2吐出特性を用いて最適化を行うことにより前記波形候補を評価する第4工程と、を実行し、前記処理回路は、少なくとも前記第2工程、前記第3工程、前記第4工程を繰り返すことで最適化処理を行い、前記駆動パルスの波形を決定する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る駆動波形決定システムの構成例を示す概略図である。
【
図3】インクの吐出特性の測定を説明するための図である。
【
図4】第1実施形態に係る駆動波形決定方法を示すフローチャートである。
【
図5】吐出特性の条件を設定するための表示の一例を示す図である。
【
図6】第1実施形態における波形候補の判定を説明するためのフローチャートである。
【
図7】第2実施形態に係る駆動波形決定システムの構成例を示す概略図である。
【
図8】第2実施形態における波形候補の判定を説明するためのフローチャートである。
【
図9】第3実施形態に係る液体吐出装置の構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法または縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0014】
1.第1実施形態
1-1.駆動波形決定システム100の概略
図1は、第1実施形態に係る駆動波形決定システム100の構成例を示す概略図である。駆動波形決定システム100は、液体の一例であるインクを吐出する際に用いる駆動パルスPDの波形を自動的に決定する。
【0015】
図1に示すように、駆動波形決定システム100は、液体吐出装置200と、測定装置300と、「コンピューター」の一例である情報処理装置400と、を有する。以下、
図1に基づいて、これらを順次説明する。
【0016】
1-1a.液体吐出装置200
液体吐出装置200は、インクジェット方式により印刷媒体に印刷するプリンターである。印刷媒体は、液体吐出装置200が印刷可能な媒体であればよく、特に限定されず、例えば、各種紙、各種布または各種フィルム等である。なお、液体吐出装置200は、シリアル型のプリンターでもよいし、ライン型のプリンターでもよい。
【0017】
図1に示すように、液体吐出装置200は、液体吐出ヘッド210と移動機構220と電源回路230と駆動信号生成回路240と駆動回路250と記憶回路260と処理回路270とを有する。
【0018】
液体吐出ヘッド210は、インクを印刷媒体に向けて吐出する。
図1では、液体吐出ヘッド210の構成要素として、「駆動素子」の一例である複数の圧電素子211が図示される。図示しないが、液体吐出ヘッド210は、圧電素子211のほか、インクを収容するキャビティと、当該キャビティに連通するノズルと、有する。ここで、圧電素子211は、キャビティごとに設けられており、当該キャビティの圧力を変化させることにより、当該キャビティに対応するノズルからインクを吐出させる。なお、圧電素子211に代えて、キャビティ内のインクを加熱するヒーターを駆動素子として用いてもよい。
【0019】
図1に示す例では、液体吐出装置200が有する液体吐出ヘッド210の数が1個であるが、当該数は、2個以上でもよい。この場合、例えば、2個以上の液体吐出ヘッド210がユニット化される。液体吐出装置200がシリアル型である場合、印刷媒体の幅方向の一部にわたり複数のノズルが分布するように、液体吐出ヘッド210またはこれを2個以上含むユニットが用いられる。また、液体吐出装置200がライン型である場合、印刷媒体の幅方向での全域にわたり複数のノズルが分布するように、2個以上の液体吐出ヘッド210を含むユニットが用いられる。
【0020】
移動機構220は、液体吐出ヘッド210と印刷媒体との相対的な位置を変化させる。より具体的には、液体吐出装置200がシリアル型である場合、移動機構220は、印刷媒体を所定方向に搬送する搬送機構と、液体吐出ヘッド210を当該印刷媒体の搬送方向に直交する軸に沿って反復的に移動させる移動機構と、を有する。また、液体吐出装置200がライン型である場合、移動機構220は、2個以上の液体吐出ヘッド210を含むユニットの長手方向に交差する方向に印刷媒体を搬送する搬送機構を有する。
【0021】
電源回路230は、図示しない商用電源から電力の供給を受け、所定の各種電位を生成する。生成した各種電位は、液体吐出装置200の各部に適宜に供給される。例えば、電源回路230は、電源電位VHVとオフセット電位VBSとを生成する。オフセット電位VBSは、液体吐出ヘッド210等に供給される。また、電源電位VHVは、駆動信号生成回路240等に供給される。
【0022】
駆動信号生成回路240は、液体吐出ヘッド210が有する各圧電素子211を駆動するための駆動信号Comを生成する回路である。具体的には、駆動信号生成回路240は、例えば、DA変換回路と増幅回路とを有する。駆動信号生成回路240では、当該DA変換回路が処理回路270からの後述の波形指定信号dComをデジタル信号からアナログ信号に変換し、当該増幅回路が電源回路230からの電源電位VHVを用いて当該アナログ信号を増幅することにより駆動信号Comを生成する。ここで、駆動信号Comに含まれる波形のうち、圧電素子211に実際に供給される波形の信号が駆動パルスPDである。なお、駆動パルスPDについては、後に詳述する。
【0023】
駆動回路250は、後述の制御信号SIに基づいて、複数の圧電素子211のそれぞれについて、駆動信号Comに含まれる波形のうちの少なくとも一部を駆動パルスPDとして供給するか否かを切り替える。駆動回路250は、各圧電素子211を駆動するための駆動信号および基準電圧を出力するIC(Integrated Circuit)チップである。
【0024】
記憶回路260は、処理回路270が実行する各種プログラムと、処理回路270が処理する印刷データ等の各種データと、を記憶する。記憶回路260は、例えば、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリーとROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)またはPROM(Programmable ROM)等の不揮発性メモリーとの一方または両方の半導体メモリーを含む。印刷データは、例えば、情報処理装置400から供給される。なお、記憶回路260は、処理回路270の一部として構成されてもよい。
【0025】
処理回路270は、液体吐出装置200の各部の動作を制御する機能と、各種データを処理する機能と、を有する。処理回路270は、例えば、1個以上のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを含む。なお、処理回路270は、CPUに代えて、または、CPUに加えて、FPGA(field-programmable gate array)等のプログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。
【0026】
処理回路270は、記憶回路260に記憶されるプログラムを実行することにより、液体吐出装置200の各部の動作を制御する。ここで、処理回路270は、液体吐出装置200の各部の動作を制御するための信号として、制御信号Sk、SIおよび波形指定信号dCom等の信号を生成する。
【0027】
制御信号Skは、移動機構220の駆動を制御するための信号である。制御信号SIは、駆動回路250の駆動を制御するための信号である。具体的には、制御信号SIは、駆動回路250が駆動信号生成回路240からの駆動信号Comを駆動パルスPDとして液体吐出ヘッド210に対して供給するか否かを所定の単位期間ごとに指定する。この指定により、液体吐出ヘッド210から吐出されるインク量等が指定される。波形指定信号dComは、駆動信号生成回路240で生成される駆動信号Comの波形を規定するためのデジタル信号である。
【0028】
1-1b.測定装置300
測定装置300は、駆動パルスPDを実際に用いたときの液体吐出ヘッド210からのインクの吐出特性を測定するための装置である。当該吐出特性としては、例えば、吐出速度、吐出角度、吐出量、サテライトの数および安定性等が挙げられる。なお、以下では、液体吐出ヘッド210からのインクの吐出特性を単に「吐出特性」という場合がある。
【0029】
本実施形態の測定装置300は、液体吐出ヘッド210から吐出されたインクの飛翔中の状態を撮像する撮像装置である。具体的には、測定装置300は、例えば撮像光学系および撮像素子を有する。撮像光学系は、少なくとも1つの撮像レンズを含む光学系であり、プリズム等の各種の光学素子を含んでもよいし、ズームレンズまたはフォーカスレンズ等を含んでもよい。撮像素子は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサーまたはCMOS(Complementary MOS)イメージセンサー等である。測定装置300による撮像画像を用いた吐出特性の測定については、後に詳述する。
【0030】
なお、本実施形態では、測定装置300が飛翔中のインクを撮像するが、印刷媒体等に着弾したインクを撮像した結果に基づいて液体吐出ヘッド210からのインクの吐出量等の吐出特性を測定することも可能である。また、測定装置300は、液体吐出ヘッド210からのインクの吐出特性に応じた測定結果を得ることができればよく、撮像装置に限定されず、例えば、液体吐出ヘッド210から吐出されたインクの質量を測定する電子天秤等でもよい。さらに、液体吐出ヘッド210からのインクの吐出特性を測定するための情報源としては、測定装置300からの情報のほか、液体吐出ヘッド210で生じる残留振動の波形を検出した結果を用いてもよい。当該残留振動は、圧電素子211の駆動後に液体吐出ヘッド210におけるインクの流路に残留する振動であり、例えば、圧電素子211からの電圧信号として検出される。なお、吐出特性は、液体吐出ヘッド210からのインクの吐出状態に関する特性であればよく、前述の特性のほか、液体吐出ヘッド210の駆動周波数等も含む概念である。
【0031】
1-1c.情報処理装置400
情報処理装置400は、液体吐出装置200および測定装置300の動作を制御するコンピューターである。ここで、情報処理装置400が液体吐出装置200および測定装置300のそれぞれに無線または有線により互いに通信可能に接続される。なお、この接続には、インターネットを含む通信網が介在してもよい。
【0032】
本実施形態の情報処理装置400は、駆動波形決定プログラムの一例であるプログラムPを実行するコンピューターの一例である。プログラムPは、液体の一例であるインクを吐出する液体吐出ヘッド210に設けられる圧電素子211に印加される駆動パルスPDの波形を決定する駆動波形決定方法を情報処理装置400に実行させる。
【0033】
図1に示すように、情報処理装置400は、表示装置410と、入力装置420と、記憶回路430と、処理回路440と、を有する。これらは、互いに通信可能に接続される。
【0034】
表示装置410は、処理回路440による制御のもとで各種の画像を表示する。ここで、表示装置410は、例えば、液晶表示パネルまたは有機EL(electro-luminescence)表示パネル等の各種の表示パネルを有する。なお、表示装置410は、情報処理装置400の外部に設けられてもよい。また、表示装置410は、液体吐出装置200の構成要素であってもよい。
【0035】
入力装置420は、ユーザーからの操作を受け付ける機器である。例えば、入力装置420は、タッチパッド、タッチパネルまたはマウス等のポインティングデバイスを有する。ここで、入力装置420は、タッチパネルを有する場合、表示装置410を兼ねてもよい。なお、入力装置420は、情報処理装置400の外部に設けられてもよい。また、入力装置420は、液体吐出装置200の構成要素であってもよい。
【0036】
記憶回路430は、処理回路440が実行する各種プログラム、および処理回路440が処理する各種データを記憶する装置である。記憶回路430は、例えば、ハードディスクドライブまたは半導体メモリーを有する。なお、記憶回路430の一部または全部は、情報処理装置400の外部の記憶装置またはサーバー等に設けてもよい。
【0037】
本実施形態の記憶回路430には、プログラムP、吐出特性情報D1および波形候補情報D2が記憶される。吐出特性情報D1は、前述の測定装置300を用いた実測により液体吐出ヘッド210からのインクの吐出特性を測定した結果に関する情報である。ここで、吐出特性情報D1には、測定装置300による測定結果を示す情報のほか、測定に用いた波形、温度等の測定条件に関する情報等が適宜に含まれる。
【0038】
波形候補情報D2は、測定装置300による測定に用いた駆動パルスPDの波形である「波形候補」のうち「仮波形」として記憶される波形候補に関する情報である。当該仮波形は、後述の波形決定部411での評価により決定される。ここで、波形候補情報D2には、仮波形でない波形候補が含まれないようにするか、または、仮波形でない波形候補が含まれてもよいが、仮波形でない波形候補と仮波形である波形候補とを識別し得るよう、例えば、これらの波形候補のいずれかにフラグ等の識別子が付加される。また、波形候補情報D2は、当該仮波形に関する情報のほか、前述の吐出特性情報D1に含まれる吐出特性に関する情報との対応関係を示す情報等が適宜に含まれる。なお、プログラムP、吐出特性情報D1および波形候補情報D2の一部または全部は、情報処理装置400の外部の記憶装置またはサーバー等に記憶されてもよい。
【0039】
処理回路440は、情報処理装置400の各部、液体吐出装置200および測定装置300を制御する機能、および各種データを処理する機能を有する装置である。処理回路440は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを有する。なお、処理回路440は、単一のプロセッサーで構成されてもよいし、複数のプロセッサーで構成されてもよい。また、処理回路440の機能の一部または全部を、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで実現してもよい。
【0040】
処理回路440は、記憶回路430からプログラムPを読み込んで実行することにより、波形決定部441として機能する。
【0041】
波形決定部411は、駆動パルスPDの波形候補を用いて液体吐出ヘッド210を駆動させ、その駆動時における吐出特性を測定装置300に測定させ、その測定結果を用いて駆動パルスPDの波形を決定する。ここで、当該吐出特性として、2以上の吐出特性が用いられる。波形決定部411は、当該2以上の吐出特性のうち、一部の吐出特性の条件を設定し、当該波形候補が当該条件を満たす場合、残部の吐出特性を用いて優劣比較を行うことにより当該波形候補を評価し、その評価結果を用いて駆動パルスPDの波形を決定する。
【0042】
本実施形態では、当該2以上の吐出特性として、当該一部の吐出特性である第1吐出特性と、当該残部の吐出特性である第2吐出特性および第3吐出特性が用いられる。これらの吐出特性の種類は、前述の吐出特性の種類から適宜選択されるが、本実施形態では、第1吐出特性が吐出量および吐出速度のうちの一方または両方であり、第2吐出特性または第3吐出特性が吐出角度、サテライト発生量または駆動周波数である。また、波形決定部411は、当該評価の結果に応じて、波形候補を波形候補情報D2に含まれる仮波形として記憶回路430に記憶し、当該仮波形に基づいて駆動パルスPDの波形を決定する。以下、駆動パルスPDの波形の決定に関する事項について詳細に説明する。
【0043】
1-2.駆動パルスPDの波形例
図2は、駆動パルスPDの波形の一例を示す図である。
図2には、駆動パルスPDの電位の経時的変化、すなわち駆動パルスPDの電圧波形が示される。なお、駆動パルスPDの波形は、
図2に示す例に限定されず、任意である。
【0044】
図2に示すように、駆動パルスPDは、単位期間Tuごとに駆動信号Comに含まれる。
図2に示す例では、駆動パルスPDの電位Eは、基準となる電位E1から電位E2に上昇した後に、電位E1よりも低い電位E3に低下し、その後、電位E1に戻る。
【0045】
より具体的に説明すると、駆動パルスPDの電位Eは、まず、タイミングt0からタイミングt1までの期間にわたり電位E1に維持された後、タイミングt1からタイミングt2までの期間にわたり電位E2に上昇する。そして、駆動パルスPDの電位Eは、タイミングt2からタイミングt3までの期間にわたり電位E2に維持された後、タイミングt3からタイミングt4までの期間にわたり電位E3に降下する。その後、タイミングt4からタイミングt5までの期間にわたり電位E3に維持された後、タイミングt5からタイミングt6までの期間にわたり電位E1に上昇する。
【0046】
このような波形の駆動パルスPDは、タイミングt1からタイミングt2までの期間において液体吐出ヘッド210の圧力室を増大させ、タイミングt3からタイミングt4までの期間において当該圧力室の容積を急激に減少させる。このような圧力室の容積の変化により、当該圧力室内のインクの一部がノズルから液滴として吐出される。
【0047】
以上のような駆動パルスPDの波形は、前述の各期間に対応するパラメーターp1、p2、p3、p4、p5、p6およびp7を用いた関数で表すことが可能である。駆動パルスPDの波形が当該関数で定義される場合、各パラメーターを変化させることにより、駆動パルスPDの波形を調整することができる。駆動パルスPDの波形を調整することにより、液体吐出ヘッド210からのインクの吐出特性を調整することができる。
【0048】
1-3.インクの吐出特性の測定
前述の情報処理装置400の波形決定部441は、駆動パルスPDを実際に用いて液体吐出ヘッド210を駆動させ、測定装置300からの撮像情報に基づいて、液体吐出ヘッド210からのインクの吐出特性を測定する。その測定結果は、吐出特性情報D1として記憶回路430に記憶される。
【0049】
図3は、インクの吐出特性の測定を説明するための図である。
図3に示すように、本実施形態の測定装置300は、液体吐出ヘッド210のノズルNから吐出されたインクの液滴DR1、DR2、DR3およびDR4の飛翔中の状態を吐出方向に対して直交または交差する方向から撮像する。
【0050】
液滴DR1は、メインの液滴である。これに対し、液滴DR2、DR3およびDR4のそれぞれは、液滴DR1よりも小径のサテライトと呼ばれる液滴であり、液滴DR1の発生に伴って液滴DR1に後続して発生する。なお、液滴DR2、DR3およびDR4の発生の有無、数または大きさ等は、前述の駆動パルスPDの波形に応じて異なる。
【0051】
液体吐出ヘッド210からのインクの吐出量は、例えば、測定装置300の撮像画像を用いて、液滴DR1の直径LBに基づいて算出される。また、液体吐出ヘッド210からのインクの吐出速度は、例えば、液滴DR1を連続的に撮像し、所定時間後の液滴DR1の移動距離LCと当該所定時間とに基づいて算出される。
図3では、当該所定時間後の液滴DR1が二点鎖線で示される。また、液体吐出ヘッド210からのインクのアスペクト比(LA/LB)をインクの吐出特性として算出することもできる。当該所定時間前後の液滴DR1の位置関係により、液体吐出ヘッド210からのインクの吐出角度を求めることもできる。
【0052】
1-4.駆動パルスPDの波形決定の流れ
図4は、第1実施形態に係る駆動波形決定方法を示すフローチャートである。
図4に示すように、まず、「第1工程」の一例であるステップS101において、波形決定部441は、ユーザーからの入力等に応じて、吐出特性の条件を設定する。
【0053】
そして、ステップS102において、波形決定部441は、駆動パルスPDの波形候補を設定する。この設定は、特に限定されないが、例えば、ステップS101での設定内容または後述のステップS106での判定結果に基づいて行われる。なお、ステップS102で設定される波形候補は、ランダムに生成されてもよい。
【0054】
次に、ステップS103において、波形決定部441は、駆動パルスPDの波形候補を用いて液体吐出ヘッド210を駆動させる。そして、「第2工程」の一例であるステップS104において、波形決定部441は、前述のようにして、測定装置300を用いて、液体吐出ヘッド210からのインクの吐出特性を測定することにより、当該吐出特性を取得する。取得した当該吐出特性は、吐出特性情報D1として記憶回路430に記憶される。
【0055】
次に、「第5工程」の一例であるステップS105において、波形決定部441は、記憶回路430から波形候補情報D2を読み込むことにより、仮波形を取得する。なお、当該仮波形は、波形候補情報D2に含まれる仮波形として後述のステップS106で記憶回路430に記憶された波形候補である。したがって、1回目の試行では、仮波形の設定が行われずに、ステップS106に移行する。
【0056】
その後、ステップS106において、波形決定部441は、ステップS101で設定された条件と、ステップS105で取得した仮波形と、ステップS104で取得した吐出特性と、を用いて、波形候補を駆動パルスPDの仮波形として用いるか否かを判定する。なお、1回目の試行では、波形候補が仮波形として記憶回路430に記憶される。
【0057】
次に、ステップS107において、波形決定部441は、前述のステップS102からステップS106までの処理の試行数が所定の設定数に達したか否かを判断する。当該試行数が所定の設定数に達しない場合、波形決定部441は、前述のステップS102に戻る。当該設定数は、特に限定されないが、好適な駆動パルスPDの波形を効率的に得る観点から、20以上700以下であることが好ましく、50以上500以下であることがより好ましい。好適な駆動パルスPDの波形を得る観点から20以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましい。波形の探索精度と、所要時間や消費インク量のバランスから、700以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましい。
【0058】
一方、当該試行数が所定の設定数に達した場合、「第6工程」の一例であるステップS108において、波形決定部441は、記憶回路430に仮波形として記憶された波形候補に基づいて、駆動パルスPDの波形を決定する。
【0059】
ここで、波形決定部441は、記憶回路430に記憶された仮波形の数が1つである場合、記憶回路430に記憶された仮波形を駆動パルスPDの波形として決定する。また、波形決定部441は、記憶回路430に記憶された仮波形の数が複数である場合、記憶回路430に記憶された複数の仮波形のそれぞれを駆動パルスPDの波形として決定してもよいし、当該複数の仮波形のうち所定の方法により選択された1以上の仮波形を駆動パルスPDの波形として決定してもよい。決定した駆動パルスPDの波形に関する情報は、例えば、表示装置410に表示される。
【0060】
1-4a.吐出特性の条件の設定
以下、前述のステップS101の具体例を説明する。
図5は、吐出特性の条件を設定するための表示の一例を示す図である。前述のステップS101では、波形決定部411は、例えば、
図5に示すようなGUI(Graphical User Interface)用の画像GUを表示装置410に表示させる。画像GUには、表示領域R1と表示領域R2とボタンBSとボタンBCとが含まれる。
【0061】
表示領域R1は、「第1吐出特性」の一例である吐出量の条件を設定するための領域である。
図5に示す例では、表示領域R1は、ボタンBTS1とボックス群BTA1とを含む。ボタンBTS1は、吐出量の条件を設定するか否かを選択するためのボタンである。
図5に示す例では、ボタンBTS1は、吐出量の条件を設定することを選択するための「ON」ボタンと、吐出量の条件を設定しないことを選択するための「OFF」ボタンと、を含んでおり、これらのボタンののうちの一方がユーザーにより選択される。ボックス群BTA1は、吐出量の条件として吐出量の範囲を入力するためのウイジェット群である。
図5に示す例では、ボックス群BTA1は、当該範囲の下限値および上限値を入力可能な複数のスピンボックスで構成される。
【0062】
表示領域R2は、「第1吐出特性」の他の一例である吐出速度の条件を設定するための領域である。
図5に示す例では、表示領域R2は、ボタンBTS2とボックス群BTA2とを含む。ボタンBTS2は、吐出速度の条件を設定するか否かを選択するためのボタンである。
図5に示す例では、ボタンBTS2は、吐出速度の条件を設定することを選択するための「ON」ボタンと、吐出速度の条件を設定しないことを選択するための「OFF」ボタンと、を含んでおり、これらのボタンのうちの一方がユーザーにより選択される。ボックス群BTA2は、吐出速度の条件として吐出速度の範囲を入力するためのウイジェット群である。
図5に示す例では、ボックス群BTA2は、当該範囲の下限値および上限値を入力可能な複数のスピンボックスで構成される。
【0063】
ボタンBSは、駆動パルスPDの波形を決定するための処理を開始するためのボタンである。ボタンBSへの操作が行われると、表示領域R1および表示領域R2に設定された条件のもとで、前述のステップS102に移行することにより、駆動パルスPDの波形を決定するための処理が開始される。ボタンBCは、当該処理をキャンセルするためのボタンである。ボタンBCへの操作が行われると、画像GUの表示の終了とともに当該処理がキャンセルされる。
【0064】
1-4b.波形候補の評価
以下、前述のステップS106の具体例を説明する。
図6は、第1実施形態における波形候補の判定を説明するためのフローチャートである。
図6では、n回目の試行における「波形候補」がf(n)と表記され、ステップS105での取得対象である「仮波形」として記憶回路430に記憶されたm個の波形候補がf(k)と表記される。nは、1以上、前述のステップS107での設定数以下の自然数である。mは、0以上n-1以下の自然数である。kは、1以上m以下の自然数である。
【0065】
また、
図6では、駆動パルスPDの波形に波形候補f(n)を用いた場合における第1吐出特性がα(n)と表記され、駆動パルスPDの波形に波形候補f(k)を用いた場合における第1吐出特性がα(k)と表記される。同様に、駆動パルスPDの波形に波形候補f(n)を用いた場合における第2吐出特性がβ(n)と表記され、駆動パルスPDの波形に波形候補f(k)を用いた場合における第2吐出特性がβ(k)と表記される。また、駆動パルスPDの波形に波形候補f(n)を用いた場合における第3吐出特性がγ(n)と表記され、駆動パルスPDの波形に波形候補f(k)を用いた場合における第3吐出特性がγ(k)と表記される。なお、
図6中の不等号「<」または「>」は、大きいほうが優れた特性であることを示す。
【0066】
前述のステップS106は、
図6に示すように、「第3工程」の一例であるステップS301と、「第4工程」の一例であるステップS302と、を含む。ステップS301は、第1吐出特性α(n)がステップS101での条件を満足するか否かを判定する。ステップS302は、ステップS301で満足すると判定された場合、第2吐出特性β(n)、第2吐出特性β(k)、第3吐出特性γ(n)および第3吐出特性γ(k)を用いて優劣比較を行うことにより波形候補f(n)を評価する。以下、
図6に基づいて、これらのステップについて詳述する。
【0067】
ステップS301では、
図6に示すように、まず、ステップS201において、波形決定部411は、第1吐出特性α(n)が前述のステップS101での条件を満たすか否かを判断する。
【0068】
当該条件を満たさない場合、ステップS202において、波形決定部411は、波形候補f(n)をステップS105での取得対象である仮波形として記憶回路430に記憶せずに、前述のステップS107に移行する。
【0069】
一方、当該条件を満たす場合、ステップS302が行われる。具体的には、当該条件を満たす場合、まず、ステップS203において、波形決定部411は、kを1に設定する。その後、ステップS204において、波形決定部411は、第2吐出特性β(k)よりも第2吐出特性β(n)が優れ、かつ、第3吐出特性γ(k)よりも第3吐出特性γ(n)が優れるか否かを判断する。すなわち、ステップS204では、波形候補f(n)が波形候補f(k)に比して完全に優れるか否かが判定される。
【0070】
ステップS204での判断結果が肯定である場合、ステップS205において、波形決定部411は、波形候補f(k)をステップS105での取得対象から除外し、かつ、波形候補f(n)をステップS105での取得対象として記憶回路430に記憶させた後、前述のステップS107に移行する。
【0071】
一方、ステップS204での判断結果が否定である場合、ステップS206において、波形決定部411は、第2吐出特性β(k)よりも第2吐出特性β(n)が劣り、かつ、第3吐出特性γ(k)よりも第3吐出特性γ(n)が劣るか否かを判断する。すなわち、ステップS206では、波形候補f(k)が波形候補f(n)に比して完全に劣るか否かが判定される。
【0072】
ステップS206での判断結果が肯定である場合、ステップS207において、波形決定部411は、波形候補f(n)をステップS105での取得対象である仮波形として記憶回路430に記憶せずに、前述のステップS107に移行する。
【0073】
一方、ステップS206での判断結果が否定である場合、ステップS208において、波形決定部411は、k=mであるか否かを判断する。ここで、ステップS204およびステップS206の両方での判断結果が否定であるため、波形候補f(n)は、波形候補f(k)に対して、第2吐出特性および第3吐出特性のうちの一方の吐出特性について優れるが、他方の吐出特性について劣るという関係となる。つまり、波形候補f(n)は、波形候補f(k)に対して、パレート最適である。k=mである場合、m個の波形候補f(1)~f(m)のすべてに対して、波形候補f(n)が前述の関係になる。
【0074】
ステップS208での判断結果が肯定である場合、ステップS209において、波形決定部411は、波形候補f(k)をステップS105での取得対象から除外せず、かつ、波形候補f(n)をステップS105での取得対象として記憶回路430に記憶した後、前述のステップS107に移行する。
【0075】
一方、ステップS208での判断結果が否定である場合、ステップS210において、波形決定部411は、kをk+1に設定した後、前述のステップS204に移行する。
【0076】
以上のステップS302が繰り返されることにより、記憶回路430には、第1吐出特性α(n)、第2吐出特性β(n)および第3吐出特性γ(n)が所望の条件を満たすm個の波形候補f(1)~f(m)が仮波形として記憶される。このため、ステップS108において、ステップS302の評価結果として当該仮波形を用いることにより、第1吐出特性α(n)、第2吐出特性β(n)および第3吐出特性γ(n)が所望の条件を満たす駆動パルスPDの波形が決定される。
【0077】
以上のように、駆動波形決定システム100は、液体吐出ヘッド210と処理回路440とを有する。液体吐出ヘッド210は、「液体」の一例であるインクを吐出するための「駆動素子」の一例である圧電素子211を有する。処理回路440は、第1吐出特性α(n)と、第1吐出特性α(n)とは異なる第2吐出特性β(n)と、に基づいて、圧電素子211に印加される駆動パルスPDの波形を決定する処理を行う。
【0078】
ここで、処理回路440は、前述のように、「第1工程」の一例であるステップS101と、「第2工程」の一例であるステップS104と、「第3工程」の一例であるステップS301と、「第4工程」の一例であるステップS302と、「第6工程」の一例であるステップS108と、を実行する。すなわち、処理回路440は、これらのステップを含む駆動波形決定方法を実行する。
【0079】
ステップS101は、第1吐出特性α(n)の条件を設定する。ステップS104は、駆動パルスPDの波形に波形候補f(n)を用いた場合における第1吐出特性α(n)および第2吐出特性β(n)を取得する。ステップS301は、第1吐出特性α(n)がステップS101での条件を満足するか否かを判定する。ステップS302は、ステップS301で満足すると判定された場合、第2吐出特性β(n)を用いて優劣比較を行うことにより波形候補f(n)を評価する。ステップS108は、その時点で記憶回路430に記憶されている取得対象として記憶された波形候補に基づき、駆動パルスPDの波形を決定する。ステップS108での当該波形候補は、互いにパレート最適の関係にある。当該波形候補の中から駆動パルスPDを決定する際、ユーザーが選択しても良いし、自動的に選択しても良い。ステップS108でユーザーが駆動波形候補の中から駆動パルスPDを決定する場合には、ステップS108の前に、記憶回路430に記憶されている互いにパレート最適な関係にある波形候補を表示装置410に表示させるステップを介在しても良い。当該ステップにおいて、パレート最適な関係にある波形候補の吐出特性のみを散布図として表示しても良い。また、当該ステップにおいて、互いにパレート最適な関係にある波形候補の吐出特性と、それ以外の波形候補の吐出特性とを、シンボルの色や大きさや種類の少なくとも一部を異ならせた上で、散布図として同時に表示しても良い。
【0080】
このように、本実施形態では、
図4のステップS103~S107を繰り返すことで最適化処理を行う。特に、本実施形態では、最適化処理として多目的最適化処理を行う。これにより、互いにパレート最適の関係にある波形候補を得ることができる。
【0081】
以上の駆動波形決定システム100では、これらのステップの実行により駆動パルスPDの波形を自動的に決定することができる。このため、駆動パルスPDの決定におけるユーザーの時間的およびコスト的な負担を低減することができる。しかも、第1吐出特性α(n)が条件を満足する場合に第2吐出特性β(n)を用いて優劣比較を行う、つまり第1吐出特性α(n)に制約をつけた上で最適化処理を行うので、第1吐出特性α(n)が条件を満足したうえで、第2吐出特性β(n)の最適解が得られる。このため、当該最適解を用いることにより、所望の第1吐出特性α(n)および第2吐出特性β(n)を満たす駆動パルスPDの波形を得ることができる。
【0082】
これに対し、仮に、第1吐出特性α(n)も優劣比較の対象とすると、決定された駆動パルスPDの波形を用いた場合における第1吐出特性α(n)が所望値から大きく外れる可能性がある。例えば、第1吐出特性α(n)が、液体吐出ヘッド210からのインクの吐出量または吐出速度等の吐出特性である場合のように、単に大きいか小さいほどよいことを示す特性でない場合、当該可能性がある。
【0083】
本実施形態の駆動波形決定方法は、前述のように、ステップS301で満足しないと判定された場合、ステップS302を行わない。このため、前述の条件を満たす駆動パルスPDの波形を効率的に決定することができる。
【0084】
また、前述のように、ステップS104は、駆動パルスPDの波形に波形候補f(n)を用いた場合における第1吐出特性α(n)および第2吐出特性β(n)とは異なる第3吐出特性γ(n)をさらに取得する。ステップS302は、ステップS301で満足すると判定された場合、第2吐出特性β(n)および第3吐出特性γ(n)を用いた優劣比較を行うことにより波形候補f(n)を評価する。つまり、最適化として、多目的最適化を行うことになる。このため、第1吐出特性α(n)が条件を満足したうえで、第2吐出特性β(n)および第3吐出特性γ(n)の最適解が得られる。このため、当該最適解を用いることにより、所望の第1吐出特性α(n)、第2吐出特性β(n)および第3吐出特性γ(n)を満たす駆動パルスPDの波形を得ることができる。
【0085】
本実施形態の駆動波形決定方法は、前述のように、「第5工程」の一例であるステップS105をさら有する。ステップS105は、記憶回路430に記憶された取得対象である波形候補f(k)を駆動パルスPDの仮波形として取得する。ステップS302は、波形候補f(n)の第2吐出特性β(n)および第3吐出特性γ(n)のほか、当該仮波形の第2吐出特性β(k)および第3吐出特性γ(k)を用いて優劣比較を行うことにより、波形候補f(n)を評価する。このため、当該最適解としてパレート最適な解を得ることができる。
【0086】
具体的には、ステップS301は、前述のように、当該仮波形の第2吐出特性β(k)よりも波形候補f(n)の第2吐出特性β(n)が優れ、かつ、当該仮波形の第3吐出特性γ(k)よりも波形候補f(n)の第3吐出特性γ(n)が優れる場合、波形候補f(k)をステップS105での取得対象から除外し、かつ、波形候補f(n)をステップS105での取得対象として記憶回路430に記憶させる。
【0087】
また、前述のように、ステップS301は、当該仮波形の第2吐出特性β(k)よりも波形候補f(n)の第2吐出特性β(n)が劣り、かつ、当該仮波形の第3吐出特性γ(k)よりも波形候補f(n)の第3吐出特性γ(n)が劣る場合、波形候補f(n)をステップS105での取得対象として記憶回路430に記憶しない。
【0088】
さらに、前述のように、ステップS301は、当該仮波形の第2吐出特性β(k)よりも波形候補f(n)の第2吐出特性β(n)が優れ、かつ、当該仮波形の第3吐出特性γ(k)よりも波形候補f(n)の第3吐出特性γ(n)が劣る場合、波形候補f(k)をステップS105での取得対象から除外せず、かつ、波形候補f(n)をステップS105での取得対象として記憶回路430に記憶する。
【0089】
また、前述のように、ステップS108は、ステップS104、ステップS301およびステップS302を含む処理を複数回行った後、記憶回路430にステップS105での取得対象として記憶された波形候補f(k)に基づいて、駆動パルスPDの波形を決定する。このため、当該処理を1回しか行わない場合に比べて最適な駆動パルスPDの波形が得られる。
【0090】
ここで、ステップS101は、前述のように、第1吐出特性α(n)の許容範囲を前述の条件として設定する。このため、当該許容範囲を満たす駆動パルスPDを得ることができる。
【0091】
また、ステップS101は、前述のように、前述の条件を設定するか否かの選択が可能である。このため、ユーザーが駆動パルスPDの決定に関する知見を有する場合には、ユーザーによる手動で第1吐出特性α(n)の適切な条件を設定することができる。一方、ユーザーが駆動パルスPDの決定に関する知見を有しない場合には、ユーザーによる手動によらず自動的に第1吐出特性α(n)の条件を設定することができる。このため、ユーザービリティに優れるという利点がある。また、前述の条件が複数の条件を含む場合、当該複数の条件のうちの1以上を必要に応じて選択することができる。
【0092】
本実施形態の駆動波形決定方法は、前述のように、ステップS101は、ユーザーからの前述の条件に関する指示を受け付ける「情報」の一例である画像GUを表示装置410に表示させた後、当該指示に基づいて、前述の条件を設定する。このため、表示装置による表示によらず当該設定を行う構成に比べて、ユーザービリティに優れるという利点がある。
【0093】
前述のように、液体吐出ヘッド210からのインクの吐出特性としては、例えば、液体吐出ヘッド210からのインクの吐出量、液体吐出ヘッド210からのインクの吐出速度、液体吐出ヘッド210からのインクの吐出角度、液体吐出ヘッド210からのインクの主滴に後続するサテライトの発生量、液体吐出ヘッド210の駆動周波数等が挙げられる。これらのうち、本実施形態の第1吐出特性α(n)は、液体吐出ヘッド210からのインクの吐出量と、液体吐出ヘッド210からのインクの吐出速度と、のうちの一方または両方の特性である。当該特性は、単に大きかったり小さかったりすればよいという特性ではなく、優劣比較の対象として適していない。また、当該特性は、数値化しやすく、かつ、ユーザーにとって把握しやすいので、第1吐出特性α(n)の許容範囲をユーザーによる手動で設定するのに好適である。一方、本実施形態の第2吐出特性β(n)または第3吐出特性γ(n)は、液体吐出ヘッド210からのインクの吐出角度、液体吐出ヘッド210からのインクの主的に後続するサテライトの発生量、または、液体吐出ヘッド210の駆動周波数である。このような第2吐出特性β(n)および第3吐出特性γ(n)は、一方の特性が優れると、他方の特性が劣るというトレードオフの関係となる場合があるため、優劣比較、すなわち多目的最適化に好適である。
【0094】
2.第2実施形態
以下、本発明の第2実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0095】
図7は、第2実施形態に係る駆動波形決定システムの構成例を示す概略図である。駆動波形決定システム100Aは、情報処理装置400に代えて情報処理装置400Aを有する以外は、前述の第1実施形態の駆動波形決定システム100と同様である。また、情報処理装置400Aは、プログラムPに代えて、「駆動波形決定プログラム」の一例であるプログラムP1を用いる以外は、前述の第1実施形態の情報処理装置400と同様である。
【0096】
処理回路440は、記憶回路430からプログラムP1を読み込んで実行することにより、波形決定部441Aとして機能する。波形決定部441Aは、波形候補の評価に関する処理が異なる以外は、前述の第1実施形態の波形決定部441と同様である。以下、波形決定部441Aでの処理について説明する。
【0097】
図8は、第2実施形態における波形候補の判定を説明するためのフローチャートである。当該判定は、ステップS302に代えてステップS302Aを「第4工程」の一例として行う以外は、前述の第1実施形態での判定と同様である。ステップS302Aは、ステップS211を追加した以外は、前述の第1実施形態でのステップS302と同様である。
図8に示すように、ステップS205の後、ステップS211において、波形決定部411Aは、k=mであるか否かを判断する。
【0098】
ここで、ステップS205では、k=kで波形候補f(k)を波形候補f(n)に置き換えるのみである。ステップS211において、k=mであれば、それ以前のk=1~m-1では、波形候補f(k)の置き換えが行われておらず、更に、k=mで波形候補f(n)が波形候補f(k)より完全に優れていることが確定する。したがって、ステップS211での判断結果が肯定である場合、ステップS302Aの処理を終了し、前述のステップS107に移行する。
【0099】
一方、ステップS211での判断結果が否定である場合、ステップS210に移行する。そうすると、k=kで波形候補f(k)を波形候補f(n)で置き換えを行った後でも、k=k+1~mでも波形候補f(k)を波形候補f(n)で置き換えることが可能となる。ただし、ステップS205またはステップS209において、すでに同一の波形候補f(n)が記憶回路430に記憶される場合、1の波形候補f(n)のみが仮波形として記憶回路430に記憶される。
【0100】
以上の第2実施形態によっても、前述の第1実施形態と同様、ユーザーの時間的およびコスト的な負担を軽減しつつ、駆動パルスPDの波形を決定することができる。
【0101】
3.第3実施形態
図9は、第3実施形態に係る液体吐出装置200Bの構成例を示す概略図である。液体吐出装置200Bは、表示装置280、入力装置290および測定装置300Bを有するとともに、プログラムPの実行を行う以外は、前述の液体吐出装置200と同様である。
【0102】
表示装置280は、前述の第1実施形態における表示装置410と同様に構成される。入力装置290は、前述の第1実施形態における入力装置420と同様に構成される。測定装置300Bは、前述の第1実施形態における測定装置300と同様に構成される。なお、表示装置280、入力装置290および測定装置300Bのうちの少なくとも1つは、液体吐出装置200の外部に設けられてもよい。
【0103】
本実施形態の記憶回路260には、プログラムP、吐出特性情報D1および波形候補情報D2が記憶される。本実施形態の処理回路270は、コンピューターの一例であり、プログラムPを実行することにより、波形決定部271として機能する。
【0104】
波形決定部271は、前述の第1実施形態の波形決定部441と同様、駆動パルスPDの波形を決定する。以上のように、処理回路270は、前述の第1実施形態の処理回路440と同様、駆動波形決定方法を実行する。
【0105】
以上の第3実施形態によっても、前述の第1実施形態と同様、ユーザーの時間的およびコスト的な負担を軽減しつつ、駆動パルスPDの波形を決定することができる。なお、本実施形態において、プログラムPに代えて前述の第2実施形態のプログラムP1を用いてもよい。
【0106】
4.変形例
以上、本発明の駆動波形決定方法、駆動波形決定プログラム、液体吐出装置および駆動波形決定システムについて図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されない。また、本発明の各部の構成は、前述した実施形態の同様の機能を発揮する任意の構成に置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
【0107】
3-1.変形例1
前述の形態では、第4工程において第2吐出特性および第3吐出特性を用いて優劣比較を行う、所謂多目的最適化処理を行う構成が例示されるが、当該構成に限定されない。例えば、第4工程において第2吐出特性のみを用いて優劣比較を行う、所謂単目的最適化でもよい。また、第4工程は、第2吐出特性を用いた最適化を行わずに、第1吐出特性の条件の範囲内で探索を行うことにより波形候補を評価してもよい。当該探索には、例えば、マルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC法)が用いられる。
【0108】
3-2.変形例2
前述の実施形態では、プログラムPは、インストールされる記憶回路と同一の装置に設けられる処理回路により実行される構成が例示されるが、当該構成に限定されず、インストールされる記憶回路と異なる装置に設けられる処理回路により実行されてもよい。例えば、第1実施形態のように、情報処理装置400の記憶回路430に記憶されるプログラムPを液体吐出装置200の処理回路270により実行してもよい。
【符号の説明】
【0109】
100…駆動波形決定システム、100A…駆動波形決定システム、200…液体吐出装置、200B…液体吐出装置、210…液体吐出ヘッド、211…圧電素子(駆動素子)、260…記憶回路、270…処理回路、280…表示装置、400…情報処理装置(コンピューター)、400A…情報処理装置(コンピューター)、410…表示装置、430…記憶回路、440…処理回路、P…プログラム(駆動波形決定プログラム)、P1…プログラム(駆動波形決定プログラム)、PD…駆動パルス、S101…ステップ(第1工程)、S104…ステップ(第2工程)、S105…ステップ(第5工程)、S108…ステップ(第6工程)、S301…ステップ(第3工程)、S302…ステップ(第4工程)、S302A…ステップ(第4工程)、f(n)、f(k)…波形候補、α(n)、α(k)…第1吐出特性、β(n)、β(k)…第2吐出特性、γ(n)、γ(k)…第3吐出特性。