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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】車両用空調システム
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
B60H1/22 611D
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020201836
(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公開番号】P2022089439
(43)【公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大尭
(72)【発明者】
【氏名】西山 将弘
【審査官】塩田 匠
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-143468(JP,A)
【文献】特開昭61-135812(JP,A)
【文献】特開2012-224198(JP,A)
【文献】特開2009-208619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00-3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱された熱媒体を熱源として車室内を暖房する第1暖房装置と、
前記第1暖房装置とは別の熱源で車室内を暖房する複数の第2暖房装置と、
複数の前記第2暖房装置の作動数に応じて前記第1暖房装置の前記熱源の出力を低減し、前記第1暖房装置の前記熱源の出力を低減するにあたって外気温度に応じて前記第1暖房装置の前記熱源の出力の低減可能な下限を設定する制御装置と、
を備える、
車両用空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱された熱媒体を熱源として車室内を暖房する第1暖房装置と、第1暖房装置の熱媒体とは別の熱源で車室内を暖房する複数の第2暖房装置とを備える車両用空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調システムは、車両の車室内を冷房又は暖房するシステムである。車両空調システムは、加熱された熱媒体(水等)を熱源として車室内を暖房する第1暖房装置(通常の空調装置)と、第1暖房装置とは別の熱媒体で車室内を暖房する第2暖房装置(例えばシートヒータ等)とを備える。
【0003】
例えば、特許文献1に開示される車両用空調システムでは、シートヒータ等の第2暖房装置が作動している場合には、エンジンの間欠許可水温(必要な暖房能力を得るためにエンジンの冷却水温を維持する水温)を低下させて第1暖房装置の暖房能力を低減させている。これにより、車室内の快適性を維持しつつ車両の燃費を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-224198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年の車両用空調システムでは、シートヒータ、輻射ヒータ等の複数の第2暖房装置を備える場合もある。特許文献1の車両用空調システムでは、複数の第2暖房装置を備える構成については開示されていない。複数の第2暖房装置を備える車両用空調システムでは、複数の第2暖房装置が作動していれば、車室内の快適性を維持しつつ第1暖房装置の暖房能力をさらに低減して車両の燃費を向上させる余地がある。
【0006】
そこで、本発明は、車室内の快適性を維持しつつ車両の燃費を向上させることができる車両用空調システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両用空調システムは、加熱された熱媒体を熱源として車室内を暖房する第1暖房装置と、第1暖房装置とは別の熱源で車室内を暖房する複数の第2暖房装置と、複数の第2暖房装置の作動数に応じて第1暖房装置の出力を低減し、第1暖房装置の出力を低減するにあたって外気温度に応じて第1暖房装置の出力の低減可能な下限を設定する制御装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、車室内の快適性を維持しつつ車両の燃費を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の一例である車両用空調システムを示す模式図である。
図2】制御装置の構成を示すブロック図である。
図3】空調装置の出力下限と外気温度との相関を示すグラフである。
図4】制御装置による出力低減制御の流れを示すフローチャートである。
図5】実施形態の他の一例である車両用空調システムの効果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、方向、数値等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等に合わせて適宜変更することができる。
【0011】
図1を用いて、実施形態の一例である車両用空調システム10について説明する。図1は、車両用空調システム10を示す模式図である。
【0012】
車両用空調システム10は、車両11に搭載され、車両11の車室内12の空調を行う装置である。車両用空調システム10によれば、詳細は後述するが、車室内12の快適性を維持しつつ車両11の燃費を向上させることができる。
【0013】
本例の車両11は、車載バッテリーに充電してモーターを動力として走行する電気車両とするが、これに限定されない。車両11は、例えばエンジンを走行用動力源とした車両又はハイブリッド車両であってもよい。車室内12は、車体を床面として屋根及び側壁で覆われている。
【0014】
車両用空調システム10は、後述するヒータ22によって加熱された熱媒体である水を熱源として車室内12を暖房する第1暖房装置としての空調装置20と、空調装置20の熱源とは別の熱源で車室内12を暖房する複数の第2暖房装置としてのシートヒータ31及び輻射ヒータ32と、車室内12の空気温度を検出する内気温度センサ41と、車両11の外部の空気温度を検出する外気温度センサ42と、詳細は後述する制御装置(ECU:Electronic Control Unit)50とを備える。
【0015】
第1暖房装置としての空調装置20は、車室内12に空気を送風する空気通路21と、ヒータ22を熱源としての水を熱媒体とするヒータ回路23と、冷媒を熱媒体とし、後述する蒸発器24を含む冷凍サイクル回路(図示なし)とを備える。なお、第1暖房装置としての空調装置20は、高温冷媒を熱源とし、凝縮器としての熱交換器を空気通路21に配置して車室内12を暖房する構成であってもよい。
【0016】
空気通路21は、空気を調和し、調和した空気を車室内12に送風する通路である。空気通路21は、ヒータ回路23に接続される後述するヒータコア25と、冷凍サイクル回路に接続される蒸発器(エバポレータ)24と、車室内12の空気(内気)の導入、又は車両11の外部の空気(外気)の導入を切替える内外気切替ドア26と、ヒータコア25への送風、又は蒸発器24への送風を切替えるエアミックスドア27と、車室内12に向かう空気流を発生させる送風機28とを有する。
【0017】
ヒータ回路23は、ヒータ22によって加熱された水を熱源として循環させて、ヒータコア25によって空気通路21を通過する空気を加熱する回路である。ヒータ回路23は、出力が調整可能に構成され、ヒータ回路23を循環する水を加熱するヒータ22と、上述したように空気通路21に設けられ、空気通路21を通過する空気を加熱するヒータコア25と、ヒータ回路23の水を循環させるポンプ29とを有する。
【0018】
第2暖房装置としてのシートヒータ31は、乗員のシート(図示なし)に設けられるヒータであって、通電することによって熱が発生する暖房装置である。シートヒータ31は、空調装置20のヒータ22とは別の熱源によって車室内12(シート)を暖房する。第2暖房装置としては、ハンドルを加熱するステアリングヒータ、シートの首の部分から温風を吹き出すネックヒータ等であってもよい。
【0019】
別の第2暖房装置としての輻射ヒータ32は、車室内12のインストルメントパネルの表面に設けられ、輻射熱の熱源となる熱源光を乗員の膝に向けて照射するヒータであって、通電することによって輻射熱が発生する暖房装置である。輻射ヒータ32は、空調装置20のヒータ22とは別の熱源によって車室内12を暖房する。
【0020】
輻射ヒータ32は、インストルメントパネルの表面に設けられ、乗員の脛に向けて熱源光を照射してもよい。輻射ヒータ32は、コンソールの側面又はドアトリムに設けられ、乗員の腕、腿の外側又は脇腹に向けて熱源光を照射してもよい。
【0021】
また、輻射ヒータ32は、インパネアンダーカバーに設けられ、足先に向けて熱源光を照射してもよい。輻射ヒータ32は、乗員のシートのヘッドレスト周辺に設けられて、乗員の首元に向けて熱源光を照射してもよい。輻射ヒータ32は、フロントシートの背面に設けられ、リヤシートに着座する乗員の足元、脛又は膝に向けて熱源光を照射してもよい。
【0022】
本例では、第2暖房装置としてシートヒータ31及び輻射ヒータ32の2つを備える構成としたが、これに限定されない。3以上の第2暖房装置を備える構成であってもよい。
【0023】
内気温度センサ41は、車室内12に設けられ、車室内12の空気温度を検出するセンサである。外気温度センサ42は、車両11の外部に設けられ、車両11の外部の空気温度を検出するセンサである。
【0024】
図2及び図3を用いて、制御装置50について説明する。図2は、制御装置50の構成を示すブロック図である。図3は、ヒータ22の出力下限と外気温度との相関を示すグラフである。
【0025】
制御装置50は、演算処理部であるCPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の記憶部を有し、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行う。
【0026】
制御装置50は、シートヒータ31、輻射ヒータ32、内気温度センサ41、外気温度センサ42等に接続されて、これらから送信される信号を受信する。また、制御装置50は、ヒータ22、冷凍サイクル回路の各機器、内外気切替ドア26、エアミックスドア27、送風機28等に接続され、これらに信号を送信する。
【0027】
本発明は、暖房時の空調に関するので、以下では、暖房運転について説明し、冷房運転の説明については省略する。
【0028】
制御装置50は、第2暖房装置(シートヒータ31及び輻射ヒータ32)の作動数を取得する作動数取得部51と、第2暖房装置の作動数に応じて第1暖房装置(空調装置20)の出力を低減する出力低減部52と、車両11の外気温度を取得する外気温度取得部53と、空調装置20の出力を低減するにあたって、外気温度に応じて空調装置20の出力の低減可能な下限を設定する出力下限設定部54とを含む。
【0029】
作動数取得部51は、シートヒータ31及び輻射ヒータ32の作動数を取得する機能を有する。具体的には、作動数取得部51は、シートヒータ31及び輻射ヒータ32が作動していない場合は作動数0、シートヒータ31又は輻射ヒータ32が作動している場合は作動数1、又はシートヒータ31及び輻射ヒータ32が作動している場合は作動数2を取得する。
【0030】
出力低減部52は、作動数取得部51によって取得したシートヒータ31及び輻射ヒータ32の作動数に応じて空調装置20の出力を低減する機能を有する。空調装置20の出力は、本例ではヒータ22の出力とするが、送風機28の出力であってもよい。
【0031】
また、出力低減部52は、シートヒータ31及び輻射ヒータ32の作動数が多いほどヒータ22の出力が小さくなるようにヒータ22の出力を低減する。例えば、シートヒータ31のみが作動する作動数1であれば、ヒータ22の出力を80%まで低減し、シートヒータ31及び輻射ヒータ32が作動する作動数2であれば、ヒータ22の出力を60%まで低減する。
【0032】
換言すれば、出力低減部52は、シートヒータ31及び輻射ヒータ32の作動により空調装置20の出力を低減させても車室内12の快適性を維持できる状況であれば、空調装置20のヒータ22の出力を低減して車両の燃費を向上させる。これにより、車室内12の快適性を維持しつつ車両の燃費を向上させることができる。
【0033】
外気温度取得部53は、外気温度センサ42によって検出された車両11の外気温度を取得する機能を有する。
【0034】
出力下限設定部54は、外気温度取得部53によって取得された外気温度に応じて、空調装置20のヒータ22の出力の低減可能な下限(以下、出力下限)を設定する機能を有する。具体的には、図3に示すように、ヒータ22の出力下限は、外気温度が低いほど大きくなるように設定される。なお、図3では、横軸に外気温度(℃)を示し、縦軸にヒータ22の出力下限(%)を示している。
【0035】
これにより、外気温度が低い場合に、車室内12の温度が低くなり過ぎることを防止することができる。また、外気温度が低い場合に、ヒータ22の出力下限を設定することによって、ヒータ22の出力が小さくなり過ぎることを防止して、デフロスタによる防曇能力が低下することを防止することができる。さらに、乗員の全身の温感バランスが崩れることを防止することができる。
【0036】
図4を用いて、制御装置50による第1暖房装置(空調装置20)の出力低減制御の流れについて説明する。
【0037】
図4に示すように、ステップS11において、外気温度取得部53によって車両11の外気温度を取得する。次に、ステップS12において、出力下限設定部54によって、ステップS11において取得した外気温度に応じて、空調装置20のヒータ22の出力下限を設定する。
【0038】
ステップS13において、作動数取得部51によって第2暖房装置(シートヒータ31及び輻射ヒータ32)の作動数を取得する。ステップS14において、出力低減部52によって、ステップS13において取得したシートヒータ31及び輻射ヒータ32の作動数に応じてヒータ22の出力の低減量を決定する。このとき、ステップS12において設定したヒータ22の出力下限を下回らないようにする。
【0039】
ステップS15において、空調装置20の目標吹出口温度、目標風量、目標内外気切替ドア開度、目標エアミックスドア開度、目標ヒータ出力値を算出する。このとき、ステップS14において決定したヒータ22の出力の低減量を反映して目標ヒータ出力値を補正する。そして、ステップS15において算出した目標吹出口温度、目標風量、目標内外気切替ドア開度、目標エアミックスドア開度、目標ヒータ出力値となるように、ヒータ22、冷凍サイクル回路の各機器、内外気切替ドア26、エアミックスドア27、送風機28等を調整する。
【0040】
図5を用いて、実施形態の他の一例である車両用空調システムの効果について説明する。図5(A)及び図5(B)では、シートヒータ及び輻射ヒータがどちらも作動していない場合を一点鎖線で表し、シートヒータのみが作動した場合を破線で表し、シートヒータ及び輻射ヒータが作動した場合を実線で表している。
【0041】
本例の車両用空調システムは、第2暖房装置(シートヒータ及び輻射ヒータ)が設けられ、第1暖房装置(空調装置)の熱媒体としての水がエンジン排熱によって加熱される構成とする。
【0042】
本例では、シートヒータ及び輻射ヒータの作動数に応じて空調装置の出力を低減させるにあたって、図5(A)に示すように、エンジンの間欠運転の開始時期を早める制御を行う。本制御では、エンジン排熱によって加熱される水の温度が上昇しないうちにエンジンを停止させることによって、エンジン排熱によって加熱される水の温度が上昇せずに空調装置の出力(暖房能力)が低下する。また、シートヒータ及び輻射ヒータの作動数に応じて空調装置の出力を低減させるにあたって、図5(B)に示すように、空調装置の風量を低下させる制御を行う。
【0043】
図5(C)に示すように、上記制御を行うことによって、シートヒータのみが作動した場合は、シートヒータ及び輻射ヒータがどちらも作動していない場合よりも燃費が2.4%向上し、シートヒータ及び輻射ヒータが作動した場合は、シートヒータのみが作動した場合よりも燃費が5.5%向上した。
【0044】
なお、本発明は上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0045】
10 車両用空調システム、11 車両、12 車室内、20 空調装置(第1暖房装置)、21 空気通路、22 ヒータ、23 ヒータ回路、24 蒸発器、25 ヒータコア、26 内外気切替ドア、27 エアミックスドア、28 送風機、29 ポンプ、30 ヒータ回路、31 シートヒータ(第2暖房装置)、32 輻射ヒータ(第2暖房装置)、41 内気温度センサ、42 外気温度センサ、50 制御装置、51 作動数取得部、52 出力低減部、53 外気温度取得部、54 出力下限設定部
図1
図2
図3
図4
図5