IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社JVCケンウッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】プロジェクタ
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20240709BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20240709BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20240709BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G03B21/14 D
G02B7/02 C
G02B7/02 E
G02B7/02 Z
G03B21/00 E
H04N5/74 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020208292
(22)【出願日】2020-12-16
(65)【公開番号】P2022095141
(43)【公開日】2022-06-28
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智彦
【審査官】石本 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-058671(JP,A)
【文献】国際公開第2011/099111(WO,A1)
【文献】特開2001-215610(JP,A)
【文献】特開2020-076854(JP,A)
【文献】特開2010-060806(JP,A)
【文献】特開2009-211107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K9/00-9/90
F21S2/00-45/70
G02B7/00-7/24
G03B21/00-21/10
21/12-21/13
21/134-21/30
33/00-33/16
H04N5/66-5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示素子と、
前記表示素子に表示された画像に基づく画像光を投射する投射レンズと、
前記投射レンズが嵌められる第1の開口を有し、前記第1の開口に嵌められている前記投射レンズを水平方向に変位させるための水平方向に移動自在の水平方向ステージと、
前記投射レンズが嵌められる第2の開口を有し、前記第2の開口に嵌められている前記投射レンズを垂直方向に変位させるための垂直方向に移動自在の垂直方向ステージと、
発光部と受光部とを有するフォトセンサと、
前記投射レンズが投射する画像光にケラレが発生することなく、前記投射レンズを水平方向と垂直方向とのいずれか一方の方向、または水平方向と垂直方向とを組み合わせた任意の方向に変位させることができる範囲を前記投射レンズのシフト許容範囲とし、前記シフト許容範囲と相似形であり、前記シフト許容範囲以下の大きさを有する第3の開口と、前記発光部から射出された光を通過させる貫通孔とを有するシフト許容プレートと、
を備え、
前記投射レンズは、前記第3の開口内に配置されており、
前記投射レンズを変位させていない状態で、前記投射レンズは、前記投射レンズの外周面の全周が前記第3の開口の端部において前記シフト許容プレートと非接触であり、かつ、前記発光部は前記貫通孔と対向しており、
前記水平方向ステージと前記垂直方向ステージとの少なくとも一方を移動させて前記投射レンズをいずれかの方向に変位させて、前記投射レンズの外周面が前記第3の開口の端部において前記シフト許容プレートと接触して前記シフト許容プレートを変位させたとき、前記受光部が前記発光部から射出された光を受光しない状態から受光する状態への変化、または、前記受光部が前記発光部から射出された光を受光する状態から受光しない状態への変化に基づいて、前記投射レンズが限界位置まで変位したことを検出する検出器をさらに備える
プロジェクタ。
【請求項2】
前記フォトセンサは、前記投射レンズを変位させていない状態で、前記受光部が、前記発光部から射出されて前記貫通孔を通過した光を受光せず、前記投射レンズが前記限界位置まで変位したときに、前記受光部が、前記発光部から射出された光が前記シフト許容プレートで反射した光を受光するフォトリフレクタであり
前記検出器は、前記受光部が前記発光部から射出された光を受光しない状態から受光する状態への変化に基づいて、前記投射レンズが限界位置まで変位したことを検出する
求項1に記載のプロジェクタ。
【請求項3】
前記フォトセンサは、前記投射レンズを変位させていない状態で、前記受光部が、前記発光部から射出されて前記貫通孔を通過した光を受光し、前記投射レンズが前記限界位置まで変位したときに、前記発光部から射出された光が前記シフト許容プレートで遮られて前記発光部から射出された光を受光しないフォトインタラプタであり、
前記検出器は、前記受光部が前記発光部から射出された光を受光する状態から受光しない状態への変化に基づいて、前記投射レンズが限界位置まで変位したことを検出する
請求項1に記載のプロジェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズシフト機能を備えるプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタは、画像光を投射する位置を変位させるために、投射レンズを水平方向及び垂直方向に変位させるレンズシフト機能を備えることがある。レンズシフト機能を備えるプロジェクタは、投射レンズを水平方向または垂直方向の変位の限界位置を超えて変位させると、投射する画像光にケラレが発生する。そこで、プロジェクタは、水平方向及び垂直方向の変位の限界位置を超えない範囲で投射レンズを変位させることが必要である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-173460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プロジェクタは、投射レンズを変位させるための駆動源としてパルスモータを用い、パルスモータのパルス数に基づいて水平方向または垂直方向の変位の限界位置を超えない範囲で投射レンズを変位させる構成を備えることがある。しかしながら、この構成では、パルスモータが何らかの不具合で脱調すると、投射レンズの正確な位置を検出することができず、投射レンズが限界位置を超えて変位してしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、投射レンズが限界位置を超えて変位することをほぼ確実に防止することができ、ケラレのない画像光を投射することができるプロジェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、表示素子と、前記表示素子に表示された画像に基づく画像光を投射する投射レンズと、前記投射レンズが嵌められる第1の開口を有し、前記第1の開口に嵌められている前記投射レンズを水平方向に変位させるための水平方向に移動自在の水平方向ステージと、前記投射レンズが嵌められる第2の開口を有し、前記第2の開口に嵌められている前記投射レンズを垂直方向に変位させるための垂直方向に移動自在の垂直方向ステージと、発光部と受光部とを有するフォトセンサと、前記投射レンズが投射する画像光にケラレが発生することなく、前記投射レンズを水平方向と垂直方向とのいずれか一方の方向、または水平方向と垂直方向とを組み合わせた任意の方向に変位させることができる範囲を前記投射レンズのシフト許容範囲とし、前記シフト許容範囲と相似形であり、前記シフト許容範囲以下の大きさを有する第3の開口と、前記発光部から射出された光を通過させる貫通孔とを有するシフト許容プレートとを備えるプロジェクタを提供する。
【0007】
上記のプロジェクタにおいて、前記投射レンズは、前記第3の開口内に配置されており、前記投射レンズを変位させていない状態で、前記投射レンズは、前記投射レンズの外周面の全周が前記第3の開口の端部において前記シフト許容プレートと非接触であり、かつ、前記発光部は前記貫通孔と対向しており、前記水平方向ステージと前記垂直方向ステージとの少なくとも一方を移動させて前記投射レンズをいずれかの方向に変位させて、前記投射レンズの外周面が前記第3の開口の端部において前記シフト許容プレートと接触して前記シフト許容プレートを変位させたとき、前記受光部が前記発光部から射出された光を受光しない状態から受光する状態への変化、または、前記受光部が前記発光部から射出された光を受光する状態から受光しない状態への変化に基づいて、前記投射レンズが限界位置まで変位したことを検出する検出器をさらに備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明のプロジェクタによれば、投射レンズが限界位置を超えて変位することをほぼ確実に防止することができ、ケラレのない画像光を投射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】プロジェクタにおける表示素子と投射レンズの有効像円との関係を示す図である。
図2】表示素子が投射レンズの有効像円の中央に位置している状態から、有効像円を、水平方向に最大シフト量だけ変位した状態と、垂直方向に最大シフト量だけ変位した状態とを示す図である。
図3】有効像円の表示素子の周囲の全方向のシフト許容範囲を示す図である。
図4】有効像円を垂直方向のシフト量を考慮せず水平方向に最大シフト量だけ変位させ、有効像円を水平方向のシフト量を考慮せず垂直方向に最大シフト量だけ変位させたときに発生するケラレを示す図である。
図5】ベースに、投射レンズ及びマスク部材を含む各種の部品が取り付けられた状態を示す平面図である。
図6図5における投射レンズ及びマスク部材を取り外し、ベースに、投射レンズを変位させるための水平方向ステージ及び垂直方向ステージを含む各種の部品が取り付けられた状態を示す平面図である。
図7図6における水平方向ステージ及び垂直方向ステージを取り外し、ベースに、シフト許容プレートが取り付けられた状態を示す平面図である。
図8図7におけるシフト許容プレートを取り外した状態を示す平面図である。
図9】投射レンズ20を変位していない状態における、発光部とシフト許容プレートに形成された貫通孔との位置関係を示す部分拡大平面図である。
図10A】発光部が貫通孔と対向している状態で、受光部が発光部から射出された光を受光しないことを示す図である。
図10B】発光部が貫通孔と対向していない状態で、受光部が発光部から射出された光を受光することを示す図である。
図11】投射レンズ20を変位していない状態における、投射レンズと開口との位置関係を示す部分平面図である。
図12】投射レンズ20を右方向に変位させて、投射レンズの外周面が開口の右側端部においてシフト許容プレートに接触した状態を示す部分平面図である。
図13】右方向に変位した投射レンズ20がシフト許容プレートを右方向に押して変位させた状態を示す部分平面図である。
図14図13の状態における発光部と貫通孔との位置関係を示す部分拡大平面図である。
図15】投射レンズ20を上方向に変位させて、投射レンズの外周面が開口の上側端部においてシフト許容プレートに接触した状態を示す部分平面図である。
図16】上方向に変位した投射レンズ20がシフト許容プレートを上方向に押して変位させた状態を示す部分平面図である。
図17図16の状態における発光部と貫通孔との位置関係を示す部分拡大平面図である。
図18】投射レンズ20を左上方向に変位させて、左上方向に変位した投射レンズ20がシフト許容プレートを左上方向に押して変位させた状態を示す部分平面図である。
図19図18の状態における発光部と貫通孔との位置関係を示す部分拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態のプロジェクタについて、添付図面を参照して説明する。図1に示すように、プロジェクタは、例えば液晶表示素子である表示素子1を備える。表示素子1は、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)と称される反射型液晶表示素子であってもよい。後述するように、プロジェクタは、表示素子1に表示された画像に基づく画像光をスクリーン等に投射するための投射レンズを備える。図1は、表示素子1と投射レンズの有効像円2との関係を示している。投射レンズを水平方向または垂直方向に変位させて有効像円2が表示素子1から外れると、投射する画像光にケラレが発生する。
【0011】
図2は、表示素子1が投射レンズの有効像円2の中央に位置している状態から、有効像円2を、水平方向(左右方向)に最大シフト量だけ変位した状態と、垂直方向(上下方向)に最大シフト量だけ変位した状態とを示している。プロジェクタは、投射レンズを水平方向のみに変位させるときには、左最大シフト量から右最大シフト量までの範囲で投射レンズを左右方向に変位させることができる。プロジェクタは、投射レンズを垂直方向のみに変位させるときには、上最大シフト量から下最大シフト量までの範囲で投射レンズを上下方向に変位させることができる。
【0012】
図3は、有効像円2の表示素子1の周囲の全方向のシフト許容範囲3を示している。投射する画像光にケラレが発生することなく、投射レンズを水平方向と垂直方向とのいずれか一方の方向、または水平方向と垂直方向とを組み合わせた任意の方向に変位させるときの投射レンズを変位させることができる範囲は、図3に示すシフト許容範囲3となる。シフト許容範囲3は図3に示す形状を有する。
【0013】
仮に、プロジェクタが、投射レンズが左最大シフト量まで変位したことを検出するセンサと、右最大シフト量まで変位したことを検出するセンサと、上最大シフト量まで変位したことを検出するセンサと、下最大シフト量まで変位したことを検出するセンサを備えるとする。すると、図4に示すように、プロジェクタは、投射レンズを、垂直方向のシフト量を考慮することなく、左右最大シフト量だけ水平方向に変位させることができる。また、プロジェクタは、水平方向のシフト量を考慮することなく、上下最大シフト量だけ垂直方向に変位させることができる。
【0014】
ところが、投射レンズを図4に示す範囲で変位させると、表示素子1の左右端部にハッチングを付して示すように、有効像円2が表示素子1から外れる場合が発生する。よって、プロジェクタが上記の上下左右の4つのセンサを備える構成では、画像光におけるケラレの発生を防止することができない。
【0015】
図5図19を参照しながら、本実施形態のプロジェクタが採用する、水平方向または垂直方向の変位の限界位置を超えない範囲で投射レンズを変位させる構成を説明する。本実施形態のプロジェクタは、パルスモータのパルス数に基づいて水平方向または垂直方向の変位の限界位置を超えない範囲で投射レンズを変位させる構成を採用しない。本実施形態のプロジェクタは、上下左右の4つのセンサを用いる構成を採用しない。
【0016】
図5は、プロジェクタの筐体の一部であるベース100に投射レンズ20が間接的に取り付けられている状態を示している。図5以降のベース100を含む図面は、筐体の内部であるベース100の前面から各部品を見た状態(筐体外側から内部を見た状態)を示している。投射レンズ20の周囲には、投射レンズ20の外周部から不要光が外部へと漏れ出ることを防ぐ円環状のマスク部材21が装着されている。
【0017】
図6は、図5における投射レンズ20及びマスク部材21を取り外した状態を示している。図6に示すように、プロジェクタは、投射レンズ20を水平方向に変位させるための水平方向に移動自在の水平方向ステージ31と、投射レンズ20を垂直方向に変位させるための垂直方向に移動自在の垂直方向ステージ32とを備える。
【0018】
水平方向ステージ31は長円形の開口31a(第1の開口)を有し、垂直方向ステージ32は円形の開口32a(第2の開口)を有する。投射レンズ20は開口31aと開口32aとに嵌められている。
【0019】
ベース100には、ベース100に設けられた一対の爪102a及び102bによって、リードナット101が固定されている。水平方向ステージ31には、水平方向ステージ31を駆動するための水平シフトモータ311が取り付けられている。水平シフトモータ311はパルスモータである。
【0020】
水平シフトモータ311の回転は、ギア312を介して、リードナット101と噛み合うリードスクリュー313に伝達される。リードスクリュー313は、水平方向ステージ31に載せられている。よって、水平シフトモータ311が回転すると、水平方向ステージ31、水平シフトモータ311、ギア312、リードスクリュー313の全体は、水平方向(左右方向)に移動する。水平方向ステージ31は、ベース100に設けられた水平方向のレールに沿って移動する。
【0021】
垂直方向ステージ32は水平方向ステージ31に取り付けられているため、水平方向ステージ31は垂直方向ステージ32と一体的に移動する。
【0022】
水平方向ステージ31には、水平方向ステージ31に設けられた一対の爪302a及び302bによって、リードナット301が固定されている。垂直方向ステージ32には、垂直方向ステージ32を駆動するための垂直シフトモータ321が取り付けられている。垂直シフトモータ321はパルスモータである。
【0023】
垂直シフトモータ321の回転は、ギア322を介して、リードナット301と噛み合うリードスクリュー323に伝達される。リードスクリュー323は、垂直方向ステージ32に載せられている。よって、垂直シフトモータ321が回転すると、垂直方向ステージ32、垂直シフトモータ321、ギア322、リードスクリュー323の全体は、垂直方向(上下方向)に移動する。垂直方向ステージ32は、水平方向ステージ31に設けられた垂直方向のレールに沿って移動する。
【0024】
図7は、図6における水平方向ステージ31、水平シフトモータ311、ギア312、リードスクリュー313、垂直方向ステージ32、垂直シフトモータ321、ギア322、リードスクリュー323、リードナット301を取り外した状態を示している。図7に示すように、プロジェクタは、シフト許容プレート40を備える。
【0025】
シフト許容プレート40は、図3に示すシフト許容範囲3と相似形の開口40a(第3の開口)を有する。開口40aは、シフト許容範囲3の一点鎖線で示す外形線3ocよりもわずかに小さく設定されている。開口40aの大きさは、シフト許容プレート40の位置における投射レンズ20の断面積より大きい。よって、投射レンズ20は、開口40a内にシフト許容プレート40とは非接触の状態で配置される。
【0026】
投射レンズ20の直径が40mm~50mmである場合を例とし、開口40aの端部は外形線3ocから内側に1mm程度離れた位置とすればよい。シフト許容範囲3と相似形の開口40aの大きさはシフト許容範囲3以下の大きさであればよく、同じ大きさであるかわずかに小さいのがよい。開口40aをシフト許容範囲3と比較してどの程度小さくするかは設計的な事項である。
【0027】
図7において、シフト許容プレート40の右端部と、ベース100に設けられている円柱状のピン111とは、スプリング411で連結されている。シフト許容プレート40の左端部と、スプリング位置調整部品415とは、スプリング412で連結されている。スプリング位置調整部品415は、一対のねじ416a及び416bでベース100に固定されている。スプリング位置調整部品415は、ねじ416a及び416bを緩めて左右方向にスライドさせることによって、ベース100に固定する位置を調整することができる。
【0028】
シフト許容プレート40の上端部と、ベース100に設けられている円柱状のピン113とは、スプリング413で連結されている。シフト許容プレート40の下端部と、スプリング位置調整部品417とは、スプリング414で連結されている。スプリング位置調整部品417は、一対のねじ418a及び418bでベース100に固定されている。スプリング位置調整部品417は、ねじ418a及び418bを緩めて上下方向にスライドさせることによって、ベース100に固定する位置を調整することができる。
【0029】
シフト許容プレート40は、スプリング位置調整部品415及び417のベース100に対する位置を調整することによって、ベース100に対する取り付け位置が調整されている。シフト許容プレート40は、スプリング411~414によって、上下及び左右方向に所定量だけ変位可能である。
【0030】
シフト許容プレート40の右上角には突出部401が形成されている。突出部401の位置は限定されない。突出部401には貫通孔402が形成されている。ベース100には、突出部401と対向するように基板121が取り付けられている。貫通孔402の役割について後述する。
【0031】
図8は、図7におけるシフト許容プレート40及びスプリング411~414を取り外した状態を示している。図8に示すように、ベース100には、正方形の角を丸めたような形状を有する開口100aが形成されている。投射レンズ20より射出される画像光は、開口100aを通ってスクリーン等に投射される。
【0032】
ベース100には、開口100aの端部に近接して基板121が取り付けられている。基板121には、フォトセンサの一例であるフォトリフレクタ122と検出器125とが実装されている。フォトリフレクタ122は、発光部123と受光部124とを有する。一例として、発光部123はLEDであり、受光部124はフォトトランジスタである。
【0033】
図9は、投射レンズ20をいずれの方向にも変位させていない状態における、図7の突出部401付近の部分拡大平面図である。この状態で、発光部123はちょうど貫通孔402と対向している。発光部123の中心と貫通孔402の中心とが一致していることが望ましい。
【0034】
図10Aに示すように、発光部123が貫通孔402に臨んでいる状態では、発光部123から射出された光は貫通孔402を通過する。よって、受光部124は発光部123から射出された光を受光しない。シフト許容プレート40がいずれかの方向に変位すると、貫通孔402の位置がずれるから、発光部123は貫通孔402と対向しない状態となる。図10Bに示すように、突出部401の貫通孔402以外の部分が発光部123と対向すると、発光部123から射出された光は突出部401で反射する。よって、受光部124は発光部123から射出された光を受光する。
【0035】
即ち、検出器125は、受光部124が発光部123から射出された光を受光して受光部124から所定値以上の電流が供給されると、受光部124が光を受光しない状態から受光する状態への変化に基づいて、シフト許容プレート40がいずれかの方向に限界位置まで変位したことを検出する。検出器125は、基板121以外のところに実装されていてもよい。検出器125は電圧検出器で構成することができる。検出器125は、マイクロプロセッサで構成されていてもよい。
【0036】
図11図19を用いて、投射レンズ20を変位させたときに、検出器125が、投射レンズ20が限界位置まで変位したことをどのように検出するかを説明する。図示していないコントローラが投射レンズ20をいずれの方向にも変位させていない状態においては、図11に示すように、投射レンズ20の中心は開口40aの中心と一致している。この状態で、投射レンズ20の外周面20sの全周は、開口40aの端部においてシフト許容プレート40と所定の距離だけ離れており、シフト許容プレート40と非接触である。
【0037】
コントローラが投射レンズ20を右方向に変位させるために、水平シフトモータ311を回転させて水平方向ステージ31を右方向に移動させたとする。すると、図12に示すように、投射レンズ20の外周面20sは開口40aの右側端部においてシフト許容プレート40に接触する。この状態において、開口40aはシフト許容範囲3の外形線3ocよりもわずかに小さいため、投射レンズ20は右方向の限界位置まで変位していない。このとき、発光部123は貫通孔402と対向している。
【0038】
コントローラが水平シフトモータ311をさらに回転させて水平方向ステージ31をさらに右方向に移動させると、図13に示すように、投射レンズ20はシフト許容プレート40を右方向に押して変位させる。すると、図14の部分拡大平面図に示すように、貫通孔402が発光部123よりも右側にずれて、受光部124が発光部123から射出された光を受光する。検出器125は、受光部124から所定値以上の電流が供給されることによって、シフト許容プレート40がいずれかの方向に限界位置まで変位したことを検出する。
【0039】
コントローラが投射レンズ20を上方向に変位させるために、垂直シフトモータ321を回転させて垂直方向ステージ32を上方向に移動させたとする。すると、図15に示すように、投射レンズ20の外周面20sは開口40aの上側端部においてシフト許容プレート40に接触する。この状態において、投射レンズ20は上方向の限界位置まで変位していない。このとき、発光部123は貫通孔402と対向している。
【0040】
コントローラが垂直シフトモータ321をさらに回転させて垂直方向ステージ32をさらに上方向に移動させると、図16に示すように、投射レンズ20はシフト許容プレート40を上方向に押して変位させる。すると、図17の部分拡大平面図に示すように、貫通孔402が発光部123よりも上側にずれて、受光部124が発光部123から射出された光を受光する。検出器125は、受光部124から所定値以上の電流が供給されることによって、シフト許容プレート40がいずれかの方向に限界位置まで変位したことを検出する。
【0041】
図18は、コントローラが投射レンズ20を左上方向に変位させるために、水平方向ステージ31及び垂直方向ステージ32を左上方向に移動させ、投射レンズ20がシフト許容プレート40を左上方向に押して変位させた状態を示している。
【0042】
この場合、図19の部分拡大平面図に示すように、貫通孔402が発光部123よりも左上側にずれて、受光部124が発光部123から射出された光を受光する。検出器125は、受光部124から所定値以上の電流が供給されることによって、シフト許容プレート40がいずれかの方向に限界位置まで変位したことを検出する。
【0043】
このように、コントローラが投射レンズ20を任意の方向に変位させるために、水平方向ステージ31と垂直方向ステージ32とのうちの一方または双方を移動させる。投射レンズ20の外周面20sが開口40aのいずれかの位置の端部においてシフト許容プレート40に接触した後にシフト許容プレート40を変位させると、検出器125はシフト許容プレート40が限界位置まで変位したことを検出する。
【0044】
検出器125が、シフト許容プレート40が限界位置まで変位したことを検出した時点で、コントローラは投射レンズ20の変位を停止させる。よって、投射レンズ20は限界位置を超えて変位しない。
【0045】
このようにして、本実施形態のプロジェクタによれば、投射レンズ20が限界位置を超えて変位することをほぼ確実に防止することができる。よって、本実施形態のプロジェクタによれば、投射レンズ20をいずれの方向に変位させても、ケラレのない画像光を投射することができる。本実施形態のプロジェクタによれば、1つのフォトセンサ(フォトリフレクタ122)で周方向の全ての方向における投射レンズ20の変位の限界位置を検出することができる。投射レンズ20が限界位置を超えて変位することをほぼ確実に防止する構成を、低コストの簡単な構成で実現することができる。
【0046】
本実施形態においては、フォトセンサとしてフォトリフレクタ122を用いているが、フォトインタラプタを用いてもよい。フォトリフレクタ122を用いる構成においては、投射レンズ20を変位させていない状態で、受光部124は、発光部123から射出されて貫通孔402を通過した光を受光しない。投射レンズ20が限界位置まで変位すると、受光部124は、発光部123から射出された光がシフト許容プレート40で反射した光を受光する。
【0047】
フォトセンサとしてフォトインタラプタを用いる場合には、発光部と受光部とが突出部401を挟んで対向するように配置される。フォトインタラプタを用いる場合においては、投射レンズ20を変位させていない状態で、受光部は、発光部から射出されて貫通孔402を通過した光を受光する。投射レンズ20が限界位置まで変位すると、発光部から射出された光がシフト許容プレート40で遮られるので、受光部は、発光部から射出された光を受光しない。
【0048】
フォトインタラプタよりもフォトリフレクタ122を用いる方が好ましい。フォトリフレクタ122を用いれば、発光部123と受光部124とを突出部401の一方側に配置すればよいため、構成が簡略化される。
【0049】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更である。
【符号の説明】
【0050】
1 表示素子
3 シフト許容範囲
20 投射レンズ
31 水平方向ステージ
31a 開口(第1の開口)
32 垂直方向ステージ
32a 開口(第2の開口)
40 シフト許容プレート
40a 開口(第3の開口)
122 フォトリフレクタ(フォトセンサ)
123 発光部
124 受光部
401 突出部
402 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19