IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-波長可変光学フィルター 図1
  • 特許-波長可変光学フィルター 図2
  • 特許-波長可変光学フィルター 図3
  • 特許-波長可変光学フィルター 図4
  • 特許-波長可変光学フィルター 図5
  • 特許-波長可変光学フィルター 図6
  • 特許-波長可変光学フィルター 図7
  • 特許-波長可変光学フィルター 図8
  • 特許-波長可変光学フィルター 図9
  • 特許-波長可変光学フィルター 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】波長可変光学フィルター
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/00 20060101AFI20240709BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G02B26/00
B81B3/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020214759
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022100658
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】松下 友紀
【審査官】植田 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-045599(JP,A)
【文献】特開2015-099239(JP,A)
【文献】特開2015-068886(JP,A)
【文献】特開2017-072757(JP,A)
【文献】特開2015-194443(JP,A)
【文献】特開平06-045615(JP,A)
【文献】特開2006-084635(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0052746(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/00-26/08
G02B 6/35
B81B 1/00-7/04
B81C 1/00-99/00
G01J 3/00-4/04
G01J 7/00-9/04
G02B 5/20-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1フィルター領域と第1接合領域とを有する第1基板と、
第2フィルター領域と第2接合領域とを有する第2基板と、
前記第1基板の前記第1接合領域と、前記第2基板の前記第2接合領域と、の間に位置する接合膜と、を備え、
前記第1フィルター領域と前記第2フィルター領域とは、波長可変フィルターに対応し、
前記第1基板は、第1基体と、少なくとも1つの第1反射膜と、を有し、
前記少なくとも1つの第1反射膜は、前記第1フィルター領域内と前記第1接合領域内とで前記第1基体上に位置し、
前記第2基板は、第2基体と、少なくとも1つの第2反射膜と、を有し、
前記少なくとも1つの第2反射膜は、前記第2フィルター領域内と前記第2接合領域内とで前記第2基体上に位置し、
前記接合膜は、前記第1反射膜と前記第2反射膜とに接することで、前記第1基板と前記第2基板とを接合し、
前記接合膜は、所定の波長域の光に対し透過性を有し、
前記第1反射膜と、前記接合膜と、前記第2反射膜と、を貫く光路は、所定波長域の光に対し透過性を有し、前記波長可変フィルターを用いて一対の反射膜間のギャップに応じた波長の光を選択的に透過させて計測する波長の範囲に対して透過率のピークを有さない、波長可変光学フィルター。
【請求項2】
請求項1に記載の波長可変光学フィルターであって、
前記第1基板及び前記第2基板の少なくとも一方における前記接合膜と平面視で重なる領域に、アライメントマークが設けられている、波長可変光学フィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長可変光学フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、対向配置された一対の基板と、一対の基板において互いに対向する面に配置された一対の反射膜と、一対の基板を接合する接合膜と、を備えた波長可変フィルターが開示されている。波長可変フィルターは、一対の反射膜間のギャップに応じた波長の光を選択的に取り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-45599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、接合膜が波長可変フィルターとして機能した場合、接合膜から所定の波長の光が迷光となって一対の反射膜間に入射する恐れがあり、波長可変フィルターの信頼性が低下するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
波長可変光学フィルターは、第1フィルター領域と第1接合領域とを有する第1基板と、第2フィルター領域と第2接合領域とを有する第2基板と、前記第1基板の前記第1接合領域と、前記第2基板の前記第2接合領域と、の間に位置する接合膜と、を備え、前記第1フィルター領域と前記第2フィルター領域とは、波長可変フィルターに対応し、前記第1基板は、第1基体と、少なくとも1つの第1反射膜と、を有し、前記少なくとも1つの第1反射膜は、前記第1フィルター領域内と前記第1接合領域内とで前記第1基体上に位置し、前記第2基板は、第2基体と、少なくとも1つの第2反射膜と、を有し、前記少なくとも1つの第2反射膜は、前記第2フィルター領域内と前記第2接合領域内とで前記第2基体上に位置し、前記接合膜は、前記第1反射膜と前記第2反射膜とに接することで、前記第1基板と前記第2基板とを接合し、前記接合膜は、所定の波長域の光に対し透過性を有し、前記第1反射膜と、前記接合膜と、前記第2反射膜と、を貫く光路は、所定波長域の光に対し透過性を有し、前記波長可変フィルターを用いて計測する波長の範囲に対して透過率のピークを有さない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】光学モジュールの構造を示す斜視図。
図2】光学モジュールの構造を示す斜視図。
図3】第1実施形態の波長可変光学フィルターの構造を示す断面図。
図4】波長可変光学フィルターの一部の構造を示す断面図。
図5】接合部の構成を示す断面図。
図6】接合部における波長と透過率との関係を示すグラフ。
図7】接合部における膜厚と透過スペクトルのピークとの関係を示すグラフ。
図8】接合部における光の透過の状態を示す断面図。
図9】第2実施形態の波長可変光学フィルターの構造を示す断面図。
図10】変形例の波長可変光学フィルターの構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
第1実施形態の説明をする。
【0008】
まず、図1及び図2を参照しながら、波長可変光学フィルター11を有する光学モジュール1の構造を説明する。図1は、光学モジュール1の第1蓋体3側から見た斜視図である。図2は、光学モジュール1の第2蓋体8側から見た斜視図である。
【0009】
図1に示すように、光学モジュール1は、略直方体の形状となっている。なお、図1において、光学モジュール1の下方向をZ方向とし、Z方向と直交する2方向をX方向及びY方向とする。X方向、Y方向、Z方向は、それぞれ光学モジュール1の辺に沿う方向であり、直交する方向となっている。
【0010】
光学モジュール1は、有底角筒状の筐体2を備えている。筐体2の中央には、円形の第1孔2aが形成されている。筐体2の上には、第1孔2aを塞ぐように第1蓋体3が配置されている。筐体2と第1蓋体3とは、第1低融点ガラス4により接合されている。筐体2のX方向側には、第1端子5と、第2端子6と、第3端子7と、が設置されている。筐体2のZ方向側には、第2蓋体8が配置されている。筐体2と第2蓋体8とは、第2低融点ガラス9により接合されている。
【0011】
第1蓋体3及び第2蓋体8は、光透過性を有するケイ酸ガラスによって形成されている。筐体2の材質は、第1蓋体3及び第2蓋体8と線膨張率が近い材質であれば良く、例えば、セラミックである。
【0012】
図2に示すように、筐体2のZ方向側には、四角形の第2孔2bが形成されている。第2孔2bは、第1孔2aより大きな孔となっている。筐体2のZ方向側には、第2孔2bを塞ぐように第2蓋体8が配置されている。筐体2、第1蓋体3及び第2蓋体8に囲まれた内部空間10は、密閉された空間となっている。内部空間10には、波長可変光学フィルター11が配置されている。即ち、筐体2と第1蓋体3と第2蓋体8とにより収納部が形成され、収納部の内部に波長可変光学フィルター11が収納されている。
【0013】
光学モジュール1の大きさは、例えば、Z方向の厚みが3mm程度であり、X方向の幅が15mm程度であり、Y方向の幅が15mm程度である。第2蓋体8の厚みは、1mm程度である。波長可変光学フィルター11の大きさは、例えば、Z方向の厚みが0.7mm~1.5mm程度であり、X方向及びY方向の幅が11mm~12mm程度である。
【0014】
次に、図3を参照しながら、波長可変光学フィルター11の構造を説明する。
【0015】
図3に示すように、波長可変光学フィルター11は、第1基体12a及び少なくとも1つの第1反射膜15を有する第1基板12と、第2基体13a及び少なくとも1つの第2反射膜21を有する第2基板13と、第1基板12と第2基板13との間に配置された接合膜14と、を備えている。
【0016】
具体的には、波長可変光学フィルター11は、光学フィルターとして機能するフィルター領域41と、フィルター領域41の周囲に位置する可動領域42と、波長可変光学フィルター11の最外周に位置する接合領域40と、を有する。
【0017】
第1基体12aの中央部に位置するフィルター領域41には、-Z方向に突出する円柱状の反射膜設置部12bが設けられている。反射膜設置部12bの周りの可動領域42には、円環状に凹んだ電極膜設置溝12cが設けられている。電極膜設置溝12cの周りの接合領域40には、-Z方向に突出する第1接合部12dが設けられている。
【0018】
なお、第1基板12において、フィルター領域41に相当する領域を第1フィルター領域41aとする。また、第1基板12において、接合領域40に相当する領域を第1接合領域40aとする。
【0019】
また、第2基板13において、フィルター領域41に相当する領域を第2フィルター領域41bとする。また、第2基板13において、接合領域40に相当する領域を第2接合領域40bとする。
【0020】
ここでは、接合膜14は、第1基板12の第1接合領域40aと、第2基板13の第2接合領域40bと、の間に配置されているとする。また、第1フィルター領域41aと第2フィルター領域41bとは、波長可変フィルター11aを構成する領域に対応しているとする。
【0021】
第1基体12aの材質は、光Lを透過する材質であればよく、例えば、ケイ酸ガラスである。ケイ酸ガラスには、例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス等の各種ガラスや、水晶等が含まれる。第1基板12の厚みは、例えば、500μm~1000μmである。
【0022】
第1基体12aの-Z方向側の表面には、表面全体に亘って第1反射膜15が配置されている。第1反射膜15についての説明は、後で詳述する。
【0023】
第1基体12aの第1フィルター領域41aには、第1反射膜15を覆うように固定電極31aが配置されている。第1基体12aの可動領域42には、第1電極32aが配置されている。
【0024】
第2基体13aのZ方向側の表面には、表面全体に亘って第2反射膜21が配置されている。第2反射膜21についての説明は、後で詳述する。
【0025】
第2基体13aにおける第2反射膜21が配置された側に対し反対側には、フィルター領域41を囲むように溝13bが設けられている。第2基体13aにおいて溝13bに囲まれた部分を可動部13cとする。可動部13cは、第1基板12の反射膜設置部12bと対向するように配置されている。
【0026】
このように、第2基板13における溝13bが形成された部分は、第2基体13aの厚みが薄くなっている。よって、可動部13cは、容易にZ方向に移動することが可能となっている。第2基体13aの材質は、光Lを透過し強度があれば特に限定されず、例えば、第1基体12aと同じ材質である。
【0027】
第2基体13aの第2フィルター領域41bには、第2反射膜21を覆うように可動電極31bが配置されている。第2基体13aの可動領域42には、第2電極32bが配置されている。
【0028】
固定電極31a及び可動電極31bの材質は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)である。なお、ITOに限定されず、IGO(Indium Gallium Oxide)、ICO(Indium doped Cadmium Oxide)などの透明で導電性のある材質を用いるようにしてもよい。
【0029】
第1電極32a及び第2電極32bの材質は、導電性を有し成膜し易い材質であればよく、例えば、ITOである。なお、ITOに限定されず、窒化タングステン(TiW)などの金属膜を用いるようにしてもよい。
【0030】
次に、図4及び図5を参照しながら、波長可変光学フィルター11の接合部45の構成について説明する。
【0031】
図4に示すように、波長可変光学フィルター11は、上記したように、第1基体12aと、第1反射膜15と、第2基体13aと、第2反射膜21と、第1基板12と第2基板13とを接合する接合膜14と、を備えている。
【0032】
図5に示すように、接合部45は、第1基体12a側に配置された複数の第1反射膜15と、第2基体13a側に配置された複数の第2反射膜21と、第1基板12と第2基板13とを接合するべく第1反射膜15と第2反射膜21とに接する接合膜14と、を備えている。
【0033】
複数の第1反射膜15及び複数の第2反射膜21は、酸化シリコン(SiO2)と酸化チタン(TiO2)とが交互に積層された多層膜ミラーになっている。本実施形態では、複数の第1反射膜15は、例えば、9層で構成されている。複数の第2反射膜21は、例えば、9層で構成されている。接合膜14は、例えば、PPSi膜(例えば、SiO2を活性化させた膜)である。
【0034】
ここで、接合膜14の膜厚をQとし、接合膜14において透過させる光Lのピーク波長をλとし、接合膜14の屈折率をnとする。接合膜14の膜厚Qは、下記の式に基づき、フィルター領域41において取り出す光Lのピーク波長の可変範囲に含まれない波長帯域に波長λの光Lのピークを有するように膜厚を設定し、好適には、波長λが波長可変フィルター11aを用いて計測する波長の範囲に対して透過率のピークを有さないように、設定する。
Q=λ/4n。
【0035】
具体的には、例えば、波長可変フィルター11aを用いて計測する際に、フィルター領域41において取り出す光Lのピーク波長を1000nmとする。接合部45では、1000nmのピーク波長の光Lを透過させたくなくので、接合膜14で透過させる光Lの波長を1000nm以外の波長帯域になるように設定する。
【0036】
次に、図6図8を参照しながら、接合部45の接合膜14の膜厚を求める方法について説明する。図6は、接合膜14の膜厚を変えたときの、接合部45における光Lの波長と透過率との関係を示すグラフである。図7は、接合膜14の厚みと透過スペクトルのピークとの関係を示すグラフである。図8は、波長可変光学フィルター11における光Lの透過状態を示す図である。
【0037】
図6にグラフは、横軸が光Lの波長(nm)を示しており、左側から右側にいくに従って、可視光領域から赤外光領域になっている。また、縦軸が接合部45の透過率であり、下から上に行くに従って、光Lを透過する割合が高くなっている。
【0038】
具体的には、接合膜14の厚みを「0」、「0.5Q」、「Q」、「1.5Q」、「2Q」の5種類で変えたときの、接合部45を透過する光Lの波長と透過率との関係を示している。
【0039】
例えば、波長可変フィルター11aの波長帯域が、900nm~1100nmの場合を想定する。この場合の設計波長の中心を1000nmとする(λ0=1000nm)。接合部45の構成は、図5に示す通りである。このときの、接合膜14の厚み毎の透過スペクトルが、図6に示すグラフである。
【0040】
図6に示すように、接合膜14の厚みを、例えば、0にすると、波長1000nmで透過スペクトルのピークになる。例えば、接合膜14の厚みを、0.5Qにすると、波長1100nmで透過スペクトルのピークとなる。このように、接合膜14の厚みによっては、分光帯域(900nm~1100nm)の透過率を大幅に低減することができる。
【0041】
また、図7に示すように、接合膜14の厚みQと透過スペクトルのピークとの関係を見ながら、1次光、2次光、3次光のピークと重ならないように、接合膜14の厚みを設定することが好ましい。
【0042】
即ち、接合膜14の膜厚を、波長可変フィルター11aのピーク波長の可変範囲に含まれない波長帯域に光Lのピークがくるように膜厚を設定することにより、波長可変フィルター11aで計測したい(言い換えれば、取り出したい)波長の光Lが、図8に示すように、接合部45では透過しないようにすることが可能となり、接合領域40からフィルター領域41に、波長可変フィルター11aで取り出す波長の光Lが迷光となって入射することを抑えることができる。即ち、迷光が撮像素子50に入射することを抑えることができる。加えて、各波長帯域に応じた波長可変光学フィルター11を最適に設計することができる。
【0043】
以上述べたように、第1実施形態の波長可変光学フィルター11は、第1フィルター領域41aと第1接合領域40aとを有する第1基板12と、第2フィルター領域41bと第2接合領域40bとを有する第2基板13と、第1基板12の第1接合領域40aと、第2基板13の第2接合領域40bと、の間に位置する接合膜14と、を備え、第1フィルター領域41aと第2フィルター領域41bとは、波長可変フィルター11aに対応し、第1基板12は、第1基体12aと、少なくとも1つの第1反射膜15と、を有し、少なくとも1つの第1反射膜15は、第1フィルター領域41a内と第1接合領域40a内とで第1基体12a上に位置し、第2基板13は、第2基体13aと、少なくとも1つの第2反射膜21と、を有し、少なくとも1つの第2反射膜21は、第2フィルター領域41b内と第2接合領域40b内とで第2基体13a上に位置し、接合膜14は、第1反射膜15と第2反射膜21とに接することで、第1基板12と第2基板13とを接合し、接合膜14は、所定の波長域の光Lに対し透過性を有し、第1反射膜15と、接合膜14と、第2反射膜21と、を貫く光路は、所定波長域の光Lに対し透過性を有し、波長可変フィルター11aを用いて計測する波長の範囲に対して透過率のピークを有さない。
【0044】
この構成によれば、第1反射膜15と接合膜14と第2反射膜21とを含む接合領域40の光路は、波長可変フィルター11aを用いて計測する波長の範囲に対して透過率のピークを有さないので、接合領域40からフィルター領域41に、波長可変フィルター11aで取り出す波長の光Lが迷光となって入射することを抑えることができる。よって、信頼性の高い波長可変光学フィルター11を提供することができる。
【0045】
また、接合膜14の膜厚をQとし、光Lのピーク波長をλとし、接合膜14の屈折率をnとした場合、接合膜14の膜厚は、下記の式に基づいて、波長可変フィルター11aのピーク波長の可変範囲に含まれない波長帯域に光Lのピークを有するように膜厚を設定することが好ましい。Q=λ/4n。
【0046】
この構成によれば、上記式に基づいて計算することにより、波長可変フィルター11aで取り出す波長の光Lが透過しない接合膜14の厚みにすることが可能となり、接合領域40からフィルター領域41に、波長可変フィルター11aで取り出す波長の光Lが迷光となって入射することを抑えることができる。
【0047】
次に、図9を参照しながら、第2実施形態の波長可変光学フィルター111の構成について説明する。
【0048】
図9に示すように、第2実施形態の波長可変光学フィルター111は、接合領域40にアライメントマーク52を視認するための溝12a1を設ける部分が、第1実施形態の波長可変光学フィルター11と異なっている。その他の構成については概ね同様である。このため第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、その他の重複する部分については適宜説明を省略する。
【0049】
第2実施形態の波長可変光学フィルター111は、アライメント基板51上に配置されたアライメントマーク52を基準に位置合わせを行うために、第1基体12aにおいてアライメントマーク52と平面視(図9では、紙面上側から下側に見た方向)で重なる領域に、深く掘り込んだ凹部としての溝12a1が設けられている。第1基体12aの表面には、第1反射膜15が形成されている。具体的には、溝12a1の中には、第1反射膜15aが形成されている。第1反射膜15aより内側は、例えば、空洞(言い換えれば、空気層)となっている。
【0050】
第1基体12aに溝12a1が設けられ、第1基体12aの厚みが設定されていることにより、帯域以外の光Lは透過できる、言い換えれば、他の領域と見え方を変えることができるため、目視やカメラでアライメントマーク52を視認することができる。よって、接合領域40をアライメントとした位置合わせを行うことができる。溝12a1において透過する光Lの波長は、図6に示すように、波長600nm~800nmの可視光領域である。
【0051】
このように、アライメント時は、可視光を用いてアライメントを行うことができる。これにより、アライメント基板51と波長可変光学フィルター111との位置合わせにおいて、精度が高いアライメントが可能となる。その後は、波長可変光学フィルター11として可視光(帯域外の光L)をカットして計測すれば、迷光を低減した計測が可能となる。なお、第2基体13aの接合領域に溝12a1を設けるようにしてもよい。
【0052】
また、図9に示すように、第1基体12aにおける溝12a1のフィルター領域41側に、第1反射膜15bを埋め込んでおくようにしてもよい。これによれば、接合領域40から入射した光Lを、よりフィルター領域41側に透過しないようにすることができる。即ち、受光素子(図示せず)に光Lが入射することを抑えることができる。
【0053】
以上述べたように、第2実施形態の波長可変光学フィルター111は、第1基板12及び第2基板13の少なくとも一方の基板における接合膜14と平面視で重なる領域において、アライメントマーク52と重なる領域に溝12a1が設けられている。
【0054】
この構成によれば、接合膜14におけるアライメントマーク52と重なる領域に溝12a1が設けられているので、波長可変フィルター11aに影響を与えることなく、例えば、アライメントマーク52に基づいて第1基板12や第2基板13の位置合わせを行うことができる。
【0055】
以下、上記実施形態の変形例を説明する。
【0056】
なお、第2実施形態の波長可変光学フィルター111は、上記した構成に限定されず、図10に示す構成でもよい。図10は、変形例の波長可変光学フィルター211の構成を示す断面図である。
【0057】
図10に示すように、変形例の波長可変光学フィルター211は、第1基体12aの溝12a1の底部に金属膜53が配置されている。金属膜53の厚みは、例えば、アライメントマーク52が視認できる程度に設計されている。これによれば、溝12a1に起因して光Lが乱反射し、第1基体12aを突き抜けて、フィルター領域41に光Lが入射することをより抑えることができる。
【0058】
また、図示はしないが、波長可変光学フィルター11において、第1基板12と第2基板13との位置合わせを行うために、第1基体12a及び第2基体13aの少なくとも一方の基体の接合領域40に、アライメントマークを設けるようにしてもよい。この場合も、可視光においてアライメントマークが視認できるように、溝などが設けられていることが好ましい。
【0059】
このように、第1基板12及び第2基板13の少なくとも一方の基板における接合膜14と平面視で重なる領域に、アライメントマークが設けられていることが好ましい。この構成によれば、接合膜14と重なる位置にアライメントマークが設けられているので、波長可変フィルター11aに影響を与えることなく、例えば、アライメントマークに基づいて第1基板12と第2基板13との位置合わせを行うことができる。
【0060】
また、図9及び図10に示すように、溝12a1の中を空洞にすることに限定されず、可視光の光Lを透過できる範囲で、第1反射膜15aとは別の膜を配置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…光学モジュール、2…筐体、2a…第1孔、2b…第2孔、3…第1蓋体、4…第1低融点ガラス、5…第1端子、6…第2端子、7…第3端子、8…第2蓋体、9…第2低融点ガラス、10…内部空間、11…波長可変光学フィルター、11a…波長可変フィルター、12…第1基板、12a…第1基体、12a1…溝、12b…反射膜設置部、12c…電極膜設置溝、12d…第1接合部、13…第2基板、13a…第2基体、13b…溝、13c…可動部、14…接合膜、15,15a,15b…第1反射膜、21…第2反射膜、31a…固定電極、31b…可動電極、32a…第1電極、32b…第2電極、40…接合領域、40a…第1接合領域、40b…第2接合領域、41…フィルター領域、41a…第1フィルター領域、41b…第2フィルター領域、42…可動領域、51…アライメント基板、52…アライメントマーク、53…金属膜、111,211…波長可変光学フィルター。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10