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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】リアクトルユニット
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20240709BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H02M3/155 Y
H01F37/00 M
H01F37/00 S
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020218312
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022103584
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2023-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 喜博
(72)【発明者】
【氏名】芝 健史郎
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-188033(JP,A)
【文献】国際公開第2018/193588(WO,A1)
【文献】特開2013-125857(JP,A)
【文献】特開2010-10453(JP,A)
【文献】国際公開第2019/097574(WO,A1)
【文献】特開2017-153269(JP,A)
【文献】特開2001-257120(JP,A)
【文献】特開2007-227640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00- 3/44
H01F 27/08-27/22
H01F 30/00-38/12
H01F 38/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリアクトルと、
内部に冷媒が流通し、前記冷媒への放熱によって前記リアクトルを冷却する冷却器と、を備え、複数の前記リアクトルは前記冷媒の流れの方向に沿って一列に並んで配置されており、
前記冷却器は、前記冷却器の外面のうちの1つの面であるリアクトル冷却面を有し、前記リアクトルは前記リアクトル冷却面に搭載されており、前記リアクトル冷却面から突き出るボスをさらに有し、
前記リアクトルは、前記リアクトル冷却面に対向する第1面と、前記第1面とは反対側の面である第2面とを有し、
前記第2面を覆い、前記リアクトル冷却面に熱的に接触する金属プレートをさらに備え、
前記金属プレートは、複数の前記リアクトルの全てを覆う蓋部と、前記蓋部の周縁につながり前記リアクトルから離れた位置で前記リアクトルを側方から覆う側壁部と、前記側壁部の下縁につながり前記リアクトルから離れる側に突出する縁部とを有し、
前記金属プレートの前記縁部を前記ボスに固定する固定部材をさらに備える、リアクトルユニット。
【請求項2】
弾性力を有する放熱部材をさらに備え、
前記放熱部材は、前記第1面と前記リアクトル冷却面との間と、前記第2面と前記金属プレートとの間と、の少なくともいずれか一方に配置されている、請求項1に記載のリアクトルユニット。
【請求項3】
前記放熱部材は、ゲル素材を含む、請求項2に記載のリアクトルユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リアクトルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリアクトルユニットは、たとえば、特開2017-153269号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-153269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献に記載のリアクトルユニットでは、リアクトルが冷却器の外面のうちの1つの面であるリアクトル冷却面に配置されている。リアクトルの冷却器に対向する側の面から冷却器へ放熱され、反対側の面からは大気放熱しかできない。
【0005】
本開示では、リアクトルの冷却能力を向上できるリアクトルユニットが提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従ったリアクトルユニットは、リアクトルと、冷却器とを備えている。冷却器の内部に冷媒が流通し、冷却器は冷媒への放熱によってリアクトルを冷却する。冷却器は、冷却器の外面のうちの1つの面であるリアクトル冷却面を有している。リアクトルはリアクトル冷却面に搭載されている。リアクトルは、リアクトル冷却面に対向する第1面と、第1面とは反対側の面である第2面とを有している。リアクトルユニットはさらに、第2面を覆い、リアクトル冷却面に熱的に接触する金属プレートを備えている。
【0007】
リアクトルの第1面から冷却器への放熱によって、リアクトルが冷却される。リアクトルの第2面から冷却器への放熱経路を金属プレートで形成することによって、リアクトルが冷却される。第1面と第2面との両面から冷却器へ放熱されるので、リアクトルの冷却能力を向上することができる。
【0008】
従来は大気放熱しかできなかった第2面から冷却器への放熱を可能にし、第2面の冷却を促進することで、リアクトルの第1面と第2面との温度差を減少できる。これによりリアクトルの中央のコア温度を下げることができるので、リアクトルの出力を増大することができる。
【0009】
上記のリアクトルユニットは、弾性力を有する放熱部材をさらに備えていてもよい。放熱部材は、第1面とリアクトル冷却面との間と、第2面と金属プレートとの間と、の少なくともいずれか一方に配置されていてもよい。リアクトルと冷却器、および/または、リアクトルと金属プレートとの間に放熱部材を挟むことで、リアクトルから冷却器への熱伝導効率を向上でき、リアクトルの冷却性能を向上できる。リアクトルと冷却器、および/または、リアクトルと金属プレートとの間の放熱部材を弾性体にすることで、運動エネルギーを減衰させるダンパーの機能を放熱部材に持たせることができる。これにより、リアクトルの振動の伝達を減衰でき、騒音および振動を低減することができる。
【0010】
上記のリアクトルユニットにおいて、放熱部材は、ゲル素材を含んでいてもよい。放熱部材をシート状に形成してもよいが、ゲル素材を含む放熱部材を適用することで、放熱部材のリアクトル、冷却器および金属プレートへの接触面積を増加できる。リアクトルから冷却器への熱伝導効率を向上できるので、リアクトルの冷却性能をさらに向上することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示に従えば、リアクトルの冷却能力を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係るリアクトルを備える車両の全体構成図である。
図2】リアクトルの斜視図である。
図3図2中のIII-III線に沿うリアクトルの断面図である。
図4】リアクトルユニットの平面図である。
図5】リアクトルユニットの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一部品には、同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0014】
<全体構成>
図1は、実施形態に係るリアクトルLを備える車両1000の全体構成図である。車両1000は、電気自動車である。車両1000は、ハイブリッド自動車または燃料電池自動車であってもよい。
【0015】
図1に示されるように、車両1000は、モータ駆動システム100と、駆動輪310と、車速センサ320とを備えている。モータ駆動システム100は、モータジェネレータ110と、電力制御装置(PCU:Power Control Unit)120と、バッテリ130と、監視ユニット135と、システムメインリレーSR1,SR2と、制御装置140と、電流センサ160と、回転角センサ(レゾルバ)165と、温度センサ167とを備えている。
【0016】
モータジェネレータ110は、たとえば、車両1000の駆動輪310を駆動するためのトルクを発生する駆動用電動機である。モータジェネレータ110は、交流回転電機であり、たとえば、永久磁石が埋設されたロータを備える永久磁石型同期電動機として構成される。モータジェネレータ110は、発電機の機能をさらに備えてもよく、電動機および発電機の機能を併せ持つように構成されてもよい。
【0017】
バッテリ130は、ニッケル水素電池またはリチウムイオン電池などの二次電池によって構成される。二次電池は、正極と負極との間に液体電解質を有する二次電池であってもよいし、固体電解質を有する二次電池(全固体電池)であってもよい。バッテリ130は、電気二重層キャパシタ等によって構成されてもよい。
【0018】
監視ユニット135は、バッテリ130の電圧(バッテリ電圧)VB、バッテリ130の入出力電流(バッテリ電流)IB、およびバッテリ130の温度(バッテリ温度)TBを検出し、それらの検出結果を示す信号を制御装置140に出力する。
【0019】
システムメインリレーSR1は、バッテリ130の正極端子および電力線PL1の間に接続される。システムメインリレーSR2は、バッテリ130の負極端子および電力線NLの間に接続される。システムメインリレーSR1,SR2は、制御装置140からの制御信号により開閉状態が切り替わる。
【0020】
PCU120は、バッテリ130から供給される直流電力を昇圧するとともに交流電力に変換してモータジェネレータ110に供給する。また、PCU120は、モータジェネレータ110により発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ130に供給する。すなわち、バッテリ130は、PCU120を経由してモータジェネレータ110との間で電力を授受することができる。
【0021】
PCU120は、コンデンサC1と、昇降圧コンバータ121と、コンデンサC2と、インバータ122と、電圧センサ123とを含む。
【0022】
コンデンサC1は、電力線PL1および電力線NLの間に接続される。コンデンサC1は、バッテリ電圧VBを平滑化して昇降圧コンバータ121に供給する。なお、コンデンサC1の両端の電圧を検出する電圧センサを設け、当該電圧センサの検出値をバッテリ電圧VBとして用いてもよい。
【0023】
昇降圧コンバータ121は、制御装置140からの制御信号S1,S2に従って、バッテリ電圧VBを昇圧し、昇圧した電圧を電力線PL2,NLに供給する。また、昇降圧コンバータ121は、制御装置140からの制御信号S1,S2に従って、インバータ122から供給された電力線PL2,NLの間の直流電圧を降圧してバッテリ130を充電する。
【0024】
具体的には、昇降圧コンバータ121は、リアクトルLと、スイッチング素子Q1,Q2と、ダイオードD1,D2とを含む。リアクトルLは、スイッチング素子Q1,Q2の接続ノードと電力線PL1との間に接続される。スイッチング素子Q1,Q2および後述するスイッチング素子Q3~Q8の各々は、たとえば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ、またはバイポーラトランジスタなどを用いることができる。ダイオードD1,D2は、スイッチング素子Q1,Q2のコレクタ-エミッタ間に逆並列にそれぞれ接続される。
【0025】
コンデンサC2は、電力線PL2と電力線NLとの間に接続されている。コンデンサC2は、昇降圧コンバータ121から供給された直流電圧を平滑化してインバータ122に供給する。電圧センサ123は、コンデンサC2の両端の電圧、すなわち昇降圧コンバータ121とインバータ122とを結ぶ電力線PL2,NL間の電圧(以下「システム電圧」とも称する)VHを検出し、その検出結果を示す信号を制御装置140に出力する。
【0026】
インバータ122は、U相アーム221と、V相アーム222と、W相アーム223とを含む。各相アームは、電力線PL2と電力線NLとの間に互いに並列に接続されている。U相アームは、互いに直列に接続されたスイッチング素子Q3,Q4を有する。V相アーム222は、互いに直列に接続されたスイッチング素子Q5,Q6を有する。W相アーム223は、互いに直列に接続されたスイッチング素子Q7,Q8を有する。各スイッチング素子Q3~Q8のコレクタ-エミッタ間には、ダイオードD3~D8が逆並列にそれぞれ接続されている。
【0027】
各相アームの中間点は、モータジェネレータ110の各相コイルの各相端に接続されている。スイッチング素子Q3,Q4の中間点は、モータジェネレータ110のU相コイルの一方端に接続されている。スイッチング素子Q5,Q6の中間点は、モータジェネレータ110のV相コイルの一方端に接続されている。スイッチング素子Q7,Q8の中間点は、モータジェネレータ110のW相コイルの一方端に接続されている。モータジェネレータ110のU相、V相およびW相の3つのコイルの他方端は、中性点に共通接続されている。
【0028】
インバータ122は、システム電圧VHが供給されると、制御装置140からの制御信号S3~S8に従って、直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータ110を駆動する。これにより、モータジェネレータ110は、トルク指令値Trqcomに従ったトルクを発生するように、インバータ122により制御される。
【0029】
モータジェネレータ110のトルク指令値が正(Trqcom>0)の場合、インバータ122は、制御装置140からの制御信号S3~S8に従ったスイッチング素子Q3~Q8のスイッチング動作により、直流電圧を交流電圧に変換して正のトルクを出力するようにモータジェネレータ110を駆動する。これにより、モータジェネレータ110は、正のトルクを発生するように駆動される。
【0030】
モータジェネレータ110のトルク指令値が零(Trqcom=0)の場合、インバータ122は、制御装置140からの制御信号S3~S8に従ったスイッチング素子Q3~Q8のスイッチング動作により、直流電圧を交流電圧に変換してトルクが零になるようにモータジェネレータ110を駆動する。これにより、モータジェネレータ110は、零のトルクを発生するように駆動される。
【0031】
モータジェネレータ110のトルク指令値が負(Trqcom<0)の場合、インバータ122は、制御装置140からの制御信号S3~S8に従ったスイッチング素子Q3~Q8のスイッチング動作により、直流電圧を交流電圧に変換して負のトルクを出力するようにモータジェネレータ110を駆動する。これにより、モータジェネレータ110は、負のトルクを発生するように駆動される。
【0032】
電流センサ160は、モータジェネレータ110に流れる三相電流(モータ電流)iu,iv,iwを検出し、その検出結果を示す信号を制御装置140に出力する。
【0033】
回転角センサ(レゾルバ)165は、モータジェネレータ110の回転角θを検出し、その検出結果を示す信号を制御装置140に出力する。制御装置140は、回転角センサ165によって検出された回転角θの変化速度から、モータジェネレータ110の回転数(回転速度)Nmを検出することができる。
【0034】
温度センサ167は、モータジェネレータ110の温度TMを検出し、その検出結果を示す信号を制御装置140に出力する。
【0035】
車速センサ320は、車両1000の速度(車速)Vを検出し、その検出結果を示す信号を制御装置140に出力する。
【0036】
制御装置140は、外部に設けられた電子制御ユニット(上位ECU:図示せず)から入力されたトルク指令値Trqcom、監視ユニット135によって検出されたバッテリ電圧VB、電圧センサ123によって検出されたシステム電圧VH、電流センサ160からのモータ電流iu,iv,iwおよび回転角センサ165からの回転角θに基づいて、モータジェネレータ110がトルク指令値Trqcomに従ったトルクを出力するように、昇降圧コンバータ121およびインバータ122の動作を制御する。制御装置140は、昇降圧コンバータ121およびインバータ122を制御するための制御信号S1~S8を生成して、昇降圧コンバータ121およびインバータ122へ出力する。
【0037】
昇降圧コンバータ121の昇圧動作時には、制御装置140は、コンデンサC2の出力電圧VHをフィードバック制御し、出力電圧VHが電圧指令VHrとなるように制御信号S1,S2を生成する。
【0038】
また、制御装置140は、車両1000が回生制動モードに入ったことを示す信号RGEを上位ECUから受けると、モータジェネレータ110で発電された交流電圧を直流電圧に変換するように制御信号S3~S8を生成してインバータ122へ出力する。これにより、インバータ122は、モータジェネレータ110で発電された交流電圧を直流電圧に変換して昇降圧コンバータ121へ供給する。制御装置140は、インバータ122から供給された直流電圧を降圧するように制御信号S1,S2を生成し、昇降圧コンバータ121へ出力する。これにより、モータジェネレータ110が発電した交流電圧は、直流電圧に変換され、降圧されてバッテリ130に供給される。
【0039】
さらに、制御装置140は、システムメインリレーSR1,SR2の開閉状態を切り替えるための制御信号を生成してシステムメインリレーSR1,SR2へ出力する。
【0040】
<リアクトルLの構成>
図1に示される車両1000に備えられるリアクトルLについて説明する。図2は、リアクトルLの斜視図である。図3は、図2中のIII-III線に沿うリアクトルLの断面図である。
【0041】
図2,3に示されるリアクトルLは、リング状のコア4と、コア4の2か所に巻回されたコイル3a,3bとを有する、受動素子である。2個のコイル3a,3bを区別なく表すときにはコイル3と表記する。
【0042】
コア4は、2個のU字コア4a,4bと、2個のI字コア4cと、4個のスペーサ6を有している。2個のU字コア4a,4bは、U字の腕の先端が対向するように配置され、先端同士の間にI字コア4cが挟まれるように配置されている。U字コア4a,4bの先端とI字コア4cの間に、スペーサ6が挟まれている。U字コア4a,4bとI字コア4cとは、スペーサ6で接合されており、コア4の全体はリング状を成している。
【0043】
I字コア4cの部分は、リング状のコア4において、一対の平行部分をなす。その平行部分(I字コア4c)は、2個の筒部を有するボビン5で覆われており、そのボビン5の夫々の筒部にコイル3a,3bが巻回されている。2個のコイル3a,3bは、1本の平角線で作られており、電気的には1個のコイルに相当する。一対のコイル3a,3bの間に空隙が確保されている。コイル3は四角筒状をなしており、コア4の断面も矩形である。
【0044】
<リアクトルユニット1の構成>
図4は、リアクトルユニット1の平面図である。図4に示されるように、リアクトルユニット1は、複数(実施形態では4個)のリアクトルL(La,Lb,Lc,Ld)を備えている。リアクトルユニット1は、多相昇圧コンバータで用いられる。多相昇圧コンバータは、複数(4個)の昇圧回路が並列に接続されたデバイスであり、夫々の昇圧回路が1個のリアクトルLを備えている。4個の昇圧回路の4個のリアクトルLが、リアクトルユニット1に集約されている。図4および後述する図5では、リアクトルLのボビン5の図示は省略されている。
【0045】
リアクトルユニット1は、複数のリアクトルLを冷却する冷却器10を備えている。冷却器10は、高さが薄い偏平な中空の箱型であり、平面視において矩形状の形状を有している。冷却器10の一つの側板に、4個のリアクトルLが取り付けられている。4個のリアクトルLは、冷却器10の長手方向に沿って一列に並んで配置されている。
【0046】
リアクトルユニット1は、多相昇圧コンバータの筐体の内部でリアクトルLが冷却器10の上に搭載される姿勢で保持される。リアクトルLは冷却器10の上に位置し、冷却器10がリアクトルLの下に位置する。そのため、図4に示される上方からの平面視においては、リアクトルLと重なる冷却器10の一部分は見えていない。
【0047】
冷却器10の内部に、冷媒の流路13が形成されている。冷媒は、水、または、LLC(Long Life Coolant)である。冷却器10は、図示しない冷媒供給口と冷媒排出口とを、たとえば側面に有している。冷媒供給口と冷媒排出口とにおいて、流路13は、図示しない循環装置につながっている。冷媒は、循環装置から冷媒供給口を通じて流路13に供給される。冷媒は、流路13を流れる間に、リアクトルLから熱を吸収する。冷媒は、冷媒排出口を通じて循環装置に戻される。冷却器10は、流路13を流れる冷媒への放熱によって、リアクトルLを冷却する。
【0048】
図5は、リアクトルユニット1の部分断面図である。冷却器10は、流路13と外部とを隔てる一対の側板を有している。側板は、熱伝導率の高い材料、たとえば金属材料製である。リアクトルLが取り付けられている側板を上板15と称する。上板15と向かい合う側板を底板14と称する。4個のリアクトルLは、上板15の外面(上板15の上面)に搭載されている。底板14に、冷却器10の冷却対象である他の機器、たとえばインバータ、が取り付けられていてもよい。
【0049】
上板15の上面と底板14の下面とは、冷却器10の外面を構成している。冷却器10の外面のうちの1つの面である上板15の上面は、リアクトルLが搭載されている実施形態のリアクトル冷却面に相当する。冷却器10は、内部に冷媒を流通させ、外部にリアクトルLを配置して、リアクトルLを冷却する。冷却器10は、上板15の上面から上方に突き出るボス18を有している。ボス18は、熱伝導性に優れる材料で形成されている。ボス18は、上板15と同じ材料で形成されていてもよい。ボス18は、上板15と一体に形成されていてもよい。
【0050】
流路13中に示される矢印Fは、冷媒の流れる方向を示す。4個のリアクトルLは、冷媒の流れの方向に沿って一列に並んでいる。上板15の内面(上板15の下面であって、流路13側の表面)に、上板15の熱伝導効率を高めてリアクトルLの冷却性能を向上するために、フィンが設けられてもよい。
【0051】
リアクトルLは、冷却器10の上板15に対向する下面と、下面とは反対側の面である上面とを有している。リアクトルLの下面は、実施形態の第1面に相当する。リアクトルLの上面は、実施形態の第2面に相当する。
【0052】
リアクトルユニット1は、金属プレート20をさらに備えている。金属プレート20は、熱伝導率の高い金属材料で形成されている。金属プレート20は、リアクトルLを上方から覆う蓋部21と、リアクトルLを側方から覆う側壁部22と、側壁部22から突き出る縁部23とを有している。金属プレート20は、リアクトルLの上面を覆っている。金属プレート20(蓋部21)は、リアクトルユニット1に含まれる複数(4個)のリアクトルLの全てを、上方から覆っている。
【0053】
蓋部21の周縁に、側壁部22の上縁がつながっている。側壁部22の下縁に、縁部23がつながっている。縁部23は、側壁部22に対して、リアクトルLから離れる側に突出している。蓋部21、側壁部22および縁部23は、一枚の平板を曲げ成形して一体的に形成されてもよい。金属プレート20は、蓋部21、側壁部22および縁部23を構成する別々の部材をたとえば溶接により接合して形成されてもよい。
【0054】
縁部23には、縁部23を厚み方向に貫通する貫通孔が形成されている。この貫通孔を貫通して、ボルトに代表される固定部材30が、ボス18に固定されている。固定部材30は、金属プレート20をボス18に固定している。これにより金属プレート20は、冷却器10の上板15の上面に、熱的に接触している。
【0055】
リアクトルユニット1は、放熱部材40をさらに備えている。放熱部材40は、弾性力を有している。放熱部材40は、リアクトルLの上面と金属プレート20の蓋部21との間に配置されている上側部材41と、リアクトルLの下面と冷却器10の上板15の上面との間に配置されている下側部材42とを有している。上側部材41は、リアクトルLの上面に面接触している。上側部材41は、蓋部21の下面に面接触している。下側部材42は、リアクトルLの下面に面接触している。下側部材42は、上板15の上面に面接触している。
【0056】
上側部材41と下側部材42との少なくともいずれか一方は、放熱シートで構成されていてもよい。放熱シートとしては、シリコン系のシートが用いられてもよい。
【0057】
または上側部材41と下側部材42との少なくともいずれか一方は、ゲル素材を含んで構成されていてもよい。ゲル素材は、合成樹脂であってもよい。たとえばゲル素材は、ウレタンゲル、シリコンゲルなどであってもよい。ゲル素材を蓋部21の下面に塗布することで、上側部材41が形成されてもよい。ゲル素材を上板15の上面に塗布することで、下側部材42が形成されてもよい。上側部材41と下側部材42との少なくともいずれか一方は、ゲル素材を被覆する被覆層を有してもよい。この被覆層は樹脂材料製であってもよい。
【0058】
上側部材41と下側部材42とは、同じ材料で形成されていてもよい。上側部材41と下側部材42とは、同じ熱伝導率を有する材料で形成されていてもよい。上側部材41と下側部材42とは、異なる材料で形成されていてもよい。上側部材41と下側部材42とは、異なる熱伝導率を有する材料で形成されていてもよい。
【0059】
たとえば、上側部材41を、下側部材42よりも熱伝導率の高い材料で形成してもよい。リアクトルLの上面から金属プレート20を経由して冷却器10に至る熱伝達経路は、リアクトルLの下面から冷却器10までの熱伝達経路よりも長い。上側部材41と下側部材42との熱伝導率を調整することで、上側部材41を経由してのリアクトルLの上面からの放熱量と、下側部材42を経由してのリアクトルLの下面からの放熱量との均一性を向上できる。これにより、リアクトルLの上面と下面との温度差をより小さくすることができる。
【0060】
<作用および効果>
上述した説明と一部重複する記載もあるが、本実施形態の特徴的な構成および作用効果についてまとめて記載すると、以下の通りである。
【0061】
図5に示されるように、リアクトルユニット1は、金属プレート20を備えている。金属プレート20は、リアクトルLの上面を覆っている。金属プレート20は、冷却器10の上板15の上面に熱的に接触している。
【0062】
リアクトルLの発生した熱が、リアクトルLの上面から金属プレート20へ伝達される。金属プレート20から、冷却器10へ熱が伝達されて、冷却器10の内部を流れる冷媒に廃熱される。リアクトルLの上面から冷却器10への放熱経路を金属プレート20で形成することによって、リアクトルLが冷却される。上面と下面との両方から冷却器10へ放熱されるので、リアクトルLの冷却能力を向上することができる。従来は大気放熱しかできなかったリアクトルLの上面から冷却器10への放熱を可能にし、上面の冷却を促進することで、リアクトルLの上面と下面との温度差を減少できる。これによりリアクトルLの中央のコア4の温度を下げることができるので、リアクトルLの出力を増大することができる。
【0063】
リアクトルLの上方に配置される金属プレート20が、リアクトルLを遮蔽する遮蔽板としても機能することで、リアクトルLに外部から負荷が入力されることを抑制でき、リアクトルLの信頼性を向上できる。加えて、リアクトルLの振動が外部の機器へ伝わることを金属プレート20が抑制することで、外部の機器の信頼性も向上することができる。
【0064】
図5に示されるように、リアクトルユニット1は、放熱部材40を備えている。放熱部材40は、弾性力を有している。放熱部材40は、リアクトルLの下面と冷却器10の上板15との間に配置されている下側部材42と、リアクトルLの上面と金属プレート20の蓋部21との間に配置されている上側部材41とを有している。
【0065】
リアクトルLと冷却器10との間に下側部材42を挟み、リアクトルLと金属プレート20との間に上側部材41を挟むことで、リアクトルLから冷却器10への熱伝導効率を向上でき、リアクトルLの冷却性能を向上できる。放熱部材40を弾性体にすることで、運動エネルギーを減衰させるダンパーの機能を放熱部材40に持たせることができる。これにより、リアクトルLの振動の伝達を減衰でき、騒音および振動を低減することができる。
【0066】
図5に示される放熱部材40は、ゲル素材を含んでいる。ゲル素材を含む放熱部材40を適用することで、放熱部材40のリアクトルL、冷却器10および金属プレート20への接触面積を増加できる。リアクトルLから冷却器10への熱伝導効率を向上できるので、リアクトルLの冷却性能をさらに向上することができる。
【0067】
なお、これまでの実施形態においては、放熱部材40が上側部材41と下側部材42とを有しており、リアクトルLの上面と下面との両方に放熱部材40が設けられる例について説明した。放熱部材40は、リアクトルLの上面と下面とのいずれか一方に設けられてもよい。リアクトルLの発熱、リアクトルLの発生する振動に対応して、放熱部材40を設ける部位を適宜変更することが可能である。リアクトルLの下面が、放熱部材40を介さずに直接に冷却器10の上板15の上面に接触してもよい。リアクトルLの上面が、放熱部材40を介さずに直接に金属プレート20の蓋部21の下面に接触してもよい。
【0068】
金属プレート20は、蓋部21、側壁部22および縁部23を有する形状に限られるものではない。金属プレート20を介して、リアクトルLの上面から冷却器10への放熱を実現できるのであれば、金属プレート20は任意の形状を有していてもよい。冷却器10への金属プレート20の固定もまた任意であり、実施形態の固定部材30を用いる例に替えて、金属プレート20とボス18との嵌め合い、金属プレート20を上板15にたとえば溶接などで直接に接合するなどを適用してもよい。
【0069】
実施形態では、リアクトルLは冷却器10の上に位置し、リアクトルLの下面が冷却器10の上板15の上面に対向する例を説明した。リアクトルLは、冷却器10の下に配置されてもよい。この場合、リアクトルLの下面を覆い冷却器10の底板14に熱的に接触する金属プレート20を適用することで、リアクトルLの冷却性能を向上できる上述した効果を、同様に得ることができる。
【0070】
リアクトルLの下面が冷却器10の上板15の上面と対向し、リアクトルLの上面が金属プレート20によって覆われる実施形態の構成とすることで、金属プレート20の重量を比較的自由に設計可能になり、弾性力を有する放熱部材40のバネ定数も比較的自由に選択可能とできる。したがって、所望の領域でダイナミックダンパ効果を得ることができる。
【0071】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0072】
1 リアクトルユニット、3,3a,3b コイル、4 コア、4a,4b U字コア、4c I字コア、5 ボビン、6 スペーサ、10 冷却器、13 流路、14 底板、15 上板、18 ボス、20 金属プレート、21 蓋部、22 側壁部、23 縁部、30 固定部材、40 放熱部材、41 上側部材、42 下側部材、100 モータ駆動システム、1000 車両、L リアクトル。
図1
図2
図3
図4
図5