(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】車両下部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20240709BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20240709BHJP
【FI】
B62D25/20 E
B62D25/20 G
B62D25/20 F
B60K1/04 Z
(21)【出願番号】P 2020218344
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】望月 晋栄
(72)【発明者】
【氏名】堀山 和政
(72)【発明者】
【氏名】本間 旬一
(72)【発明者】
【氏名】野村 拓也
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-199881(JP,A)
【文献】特開2011-121483(JP,A)
【文献】特開2011-218910(JP,A)
【文献】特開2016-112913(JP,A)
【文献】特開2012-096789(JP,A)
【文献】特開2007-030637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08,25/14-29/04
B60K 1/00- 6/12, 7/00- 8/00,16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後端から車両前方に延びるリヤサイドメンバと、
前記リヤサイドメンバの車幅方向外側に接合されていて後輪用の揺動するサスペンションが固定されるサスペンション固定部と、
車両の床面を形成するフロアパネルの下側に取り付けられ前記サスペンション固定部よりも車両前側に位置するバッテリパックと、
前記バッテリパックと前記リヤサイドメンバとに接合されるブラケットとを備え、
前記ブラケットは、前記サスペンション固定部の車両前後方向の範囲内に配置されてい
て、
前記バッテリパックの後面は、車幅方向に延びていて、
前記ブラケットは、
前記リヤサイドメンバの底面に車両前後方向に離間した所定の2つの第1接合箇所で接合されるベース部と、
前記ベース部の縁から車両下方に張り出し所定の第2接合箇所で前記バッテリパックの後面に接合されるフランジとを有し、
前記2つの第1接合箇所は、側面視で前記リヤサイドメンバの底面に沿って配置されていることを特徴とする車両下部構造。
【請求項2】
前記ブラケットのフランジは、前記ベース部の第1接合箇所を囲うように、該ベース部の縁の一周にわたって車両下方に張り出していることを特徴とする請求項
1に記載の車両下部構造。
【請求項3】
当該車両下部構造はさらに、
前記フロアパネルの縁に沿って車両前後方向に延びるサイドシルと、
車幅方向に延びていて前記バッテリパックの下側で前記サイドシル同士を接続し前記バッテリパックに接合されるバッテリクロスメンバとを備えることを特徴とする請求項1
または2に記載の車両下部構造。
【請求項4】
前記ブラケットはさらに、前記ベース部に形成され前記第1接合箇所と前記第2接合箇所との間にわたるビードを有することを特徴とする請求項
1に記載の車両下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両下部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両は、車両の後端から車両前方に延びるリヤサイドメンバと、車両の床面を形成するフロアパネルの下側に取り付けられたバッテリパックとを有する車両下部構造を備える(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、一対のサイドメンバと、車体の床下に取り付けられたバッテリユニットとを有する電気自動車が記載されている。サイドメンバには、サスペンションアームサポートブラケットが設けられている。またバッテリユニットの下部には、桁部材が設けられている。
【0004】
この桁部材は、車幅方向に延びて一対のサイドメンバ間にわたって配置され、さらにサスペンションアームサポートブラケットの近傍に配置されている。また桁部材は、荷重伝達部材を介してサイドメンバに固定されている。荷重伝達部材は、サスペンションアームサポートブラケットおよびサイドメンバに固定されている。
【0005】
特許文献1では、一対のサイドメンバ同士が桁部材によって結合されているため、桁部材がクロスメンバに相当する剛性部材として機能することができる、としている。また特許文献1では、サスペンションアームサポートブラケットに入力する横方向の荷重が、荷重伝達部材を介して桁部材に入力されるため、サスペンションアームサポートブラケット付近の剛性を桁部材によって高めることができ、操縦安定性と乗り心地が向上する、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし特許文献1の電気自動車では、例えばバッテリユニットのサイズによってはサスペンションアームサポートブラケットの近傍に桁部材を配置できず、サスペンションアームサポートブラケットに入力される荷重を桁部材に伝達することが困難となる場合がある。
【0008】
このような場合には、サスペンションアームサポートブラケットが設けられたサイドメンバの剛性を高めることができない。このため特許文献1の電気自動車では、サイドメンバの振動に起因する車体の捩り振動やフロアパネルのフロア振動を抑制できず、車両の操縦安定性(操安性)やNV(Noise and Vibration)特性を向上させることが困難となる。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑み、リヤサイドメンバの剛性を高めて、車両の操安性やNV特性を向上させることができる車両下部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の代表的な構成は、車両の後端から車両前方に延びるリヤサイドメンバと、リヤサイドメンバの車幅方向外側に接合されていて後輪用の揺動するサスペンションが固定されるサスペンション固定部と、車両の床面を形成するフロアパネルの下側に取り付けられサスペンション固定部よりも車両前側に位置するバッテリパックと、バッテリパックとリヤサイドメンバとに接合されるブラケットとを備え、ブラケットは、サスペンション固定部の車両前後方向の範囲内に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リヤサイドメンバの剛性を高めて、車両の操安性やNV特性を向上させることができる車両下部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例に係る車両下部構造の概要を示す図である。
【
図2】
図1の車両下部構造の一部を他の方向から見た状態を示す図である。
【
図3】
図1の車両下部構造の一部をさらに他の方向から見た状態を示す図である。
【
図4】
図1の車両下部構造のブラケットを示す図である。
【
図5】
図4(a)のブラケットの各断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態の代表的な構成は、車両の後端から車両前方に延びるリヤサイドメンバと、リヤサイドメンバの車幅方向外側に接合されていて後輪用の揺動するサスペンションが固定されるサスペンション固定部と、車両の床面を形成するフロアパネルの下側に取り付けられサスペンション固定部よりも車両前側に位置するバッテリパックと、バッテリパックとリヤサイドメンバとに接合されるブラケットとを備え、ブラケットは、サスペンション固定部の車両前後方向の範囲内に配置されていることを特徴とする。
【0014】
上記構成では、リヤサイドメンバにサスペンション固定部が接合されている。このため、リヤサイドメンバは、例えば車両走行中にサスペンション固定部を介して車幅方向や車両前後方向の荷重を受ける。そこで上記構成では、サスペンション固定部よりも車両前側に位置するバッテリパックとリヤサイドメンバとをブラケットで接合している。このため、ブラケットは、バッテリパックとリヤサイドメンバの間を補強しつつ、バッテリパックおよびリヤサイドメンバに支持されるため支持剛性も高くなる。
【0015】
さらに上記構成では、サスペンション固定部の車両前後方向の範囲内にブラケットを配置している。このため、ブラケットは、サスペンション固定部からリヤサイドメンバに伝達される荷重を受けることができ、この荷重を車幅方向や車両前後方向に分散させることができる。したがって上記構成によれば、リヤサイドメンバの車両前後方向および車幅方向の剛性を高めて、リヤサイドメンバの振動に起因する車体の捩り振動やフロアパネルのフロア振動を小さくして、車両の操安性やNV特性を向上させることができる。
【0016】
上記のバッテリパックの後面は、車幅方向に延びていて、ブラケットは、リヤサイドメンバの底面に車両前後方向に離間した所定の2つの第1接合箇所で接合されるベース部と、ベース部の縁から車両下方に張り出し所定の第2接合箇所でバッテリパックの後面に接合されるフランジとを有し、2つの第1接合箇所は、側面視でリヤサイドメンバの底面に沿って配置されているとよい。
【0017】
このように、ブラケットのベース部は、車両前後方向に離間した2つの第1接合箇所でリヤサイドメンバの車両前後方向に延びる底面に接合される。またブラケットのフランジは、第2接合箇所でバッテリパックの車幅方向に延びる後面に接合される。このため、ブラケットは、リヤサイドメンバおよびバッテリパックに接合されこれらを補強することで、リヤサイドメンバの車両前後方向および車幅方向の剛性を高め、さらにサスペンション固定部の支持剛性も高めることができる。また上記構成では、ブラケットのベース部の第1接合箇所を、側面視でリヤサイドメンバの底面に沿って配置しているため、ブラケットの剛性を高めて、ブラケットが折れたり曲がったりすることを抑制できる。
【0018】
上記のブラケットのフランジは、ベース部の第1接合箇所を囲うように、ベース部の縁の一周にわたって車両下方に張り出しているとよい。
【0019】
このように、ブラケットは、ベース部の縁の一周にわたってフランジが車両下方に張り出して、さらにフランジがベース部の第1接合箇所を囲んでいる。このため、ブラケットは、剛性が高くなり、車両上下方向に変形することを抑制し、さらにサスペンション固定部の剛性も向上させることができる。また、ブラケットにフランジを設けることで剛性を高めているため、ベース部を厚くする必要がなく、ブラケット自体の厚さを厚くしないで済む。
【0020】
上記の車両下部構造はさらに、フロアパネルの縁に沿って車両前後方向に延びるサイドシルと、車幅方向に延びていてバッテリパックの下側でサイドシル同士を接続しバッテリパックに接合されるバッテリクロスメンバとを備えるとよい。
【0021】
このように、車幅方向に延びるバッテリクロスメンバにバッテリパックが接合されているため、バッテリパックの車幅方向の剛性を高めることができる。そしてブラケットは、バッテリパックに接合されているため、車幅方向の剛性が向上し、サスペンション固定部の剛性も高めることができる。
【0022】
上記のブラケットはさらに、ベース部に形成され第1接合箇所と第2接合箇所との間にわたるビードを有するとよい。
【0023】
これにより、ブラケットは、リヤサイドメンバの底面から第1接合箇所を介してベース部に伝達される荷重を、ベース部のビードを介して第2接合箇所に伝達し、さらに第2接合箇所を介してバッテリパックの後面に伝達し分散させることができる。このため、ブラケットの支持剛性を高めることができ、サスペンション固定部の剛性も高めることができる。
【実施例】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0025】
図1は、本発明の実施例に係る車両下部構造100の概要を示す図である。
図1(a)は、車両下部構造100を車両後方の斜め下方から見た状態を示している。
図1(b)は、
図1(a)の車両下部構造100の一部を拡大して示す図である。
【0026】
なお車両下部構造100は、左右対称な構造となっているため、以下では、車幅方向右側の構造のみ説明する。また以下各図において、車両前後方向をそれぞれ矢印Front、Back、車幅方向の左右をそれぞれ矢印Left、Right、車両上下方向をそれぞれ矢印Up、Downで例示する。
【0027】
車両下部構造100は、
図1(a)に示すように車両の床面を形成するフロアパネル102と、リヤサイドメンバ104と、サスペンション固定部106とを備える。リヤサイドメンバ104は、車両の例えば後端から車両前方に延びる部材である。リヤサイドメンバ104の車幅方向外側には、不図示の後輪を収容するホイールハウス108が配置されている。サスペンション固定部106は、
図1(a)に示すようにリヤサイドメンバ104の車幅方向外側に接合されていて、後輪用の揺動するサスペンション(不図示)が固定される。
【0028】
車両下部構造100はさらに、バッテリパック110と、サイドシル112と、バッテリクロスメンバ114とを備える。バッテリパック110は、フロアパネル102の下側に取り付けられサスペンション固定部106よりも車両前側に位置していて、車両前後方向に延びる側面116と、車幅方向に延びる後面118とを有する。
【0029】
サイドシル112は、フロアパネル102の縁に沿って車両前後方向に延びていて、リヤサイドメンバ104よりも車幅方向外側に位置している。バッテリクロスメンバ114は、車幅方向に延びていてバッテリパック110の下側で左右のサイドシル112同士を接続し、さらにバッテリパック110に接合される。
【0030】
ここで車両下部構造100では、リヤサイドメンバ104にサスペンション固定部106が接合されているため、例えば車両走行中にサスペンション固定部106を介してリヤサイドメンバ104が車幅方向や車両前後方向の荷重を受ける。そこで車両下部構造100では、リヤサイドメンバ104の剛性を高めて、リヤサイドメンバ104の振動に起因する車体の捩り振動やフロアパネル102のフロア振動を抑制する構成を採用した。
【0031】
すなわち車両下部構造100はさらに、ブラケット120を備える。ブラケット120は、
図1(a)に示すバッテリパック110の後面118と、リヤサイドメンバ104の車両前後方向に延びる底面122とに接合(例えば締結)される部材である。このため、ブラケット120は、バッテリパック110とリヤサイドメンバ104の間を補強しつつ、バッテリパック110およびリヤサイドメンバ104に支持されるため支持剛性も高くなる。
【0032】
またブラケット120は、
図1(a)に示すサスペンション固定部106の車両前後方向の範囲La内に配置されている。このため、ブラケット120は、サスペンション固定部106からリヤサイドメンバ104に伝達される荷重を確実に受けることができ、この荷重を車幅方向や車両前後方向に分散させることができる。
【0033】
ブラケット120は、
図1(b)に示すベース部124とフランジ126とを有する。ベース部124には、2つの第1接合箇所128、130が形成されている。ベース部124は、これらの第1接合箇所128、130でリヤサイドメンバ104の底面122に接合される(
図2(b)参照)。一例として、ブラケット120のベース部124とリヤサイドメンバ104の底面122とは、不図示の締結ボルトが第1接合箇所128、130に形成された貫通孔をリヤサイドメンバ104の底面122とともに貫通し、さらにナットなどと螺合することにより締結される。
【0034】
ブラケット120のフランジ126は、
図1(b)に示すようにベース部124の第1接合箇所128、130を囲うように、ベース部124の縁132の一周にわたって縁132から車両下方に張り出している。また、フランジ126は、2つの第2接合箇所134、136でバッテリパック110の後面118に接合される(
図2(a)参照)。一例として、ブラケット120のフランジ126とバッテリパック110の後面118とは、不図示の締結ボルトが第2接合箇所134、136に形成された貫通孔をバッテリパック110の後面118とともに貫通し、さらにナットなどと螺合することにより締結される。
【0035】
図2は、
図1の車両下部構造100の一部を他の方向から見た状態を示す図である。
図2(a)は、車両下部構造100のブラケット120およびその周辺を車両下方から見た下面図である。
図2(b)は、
図2(a)のA矢視図である。
【0036】
ブラケット120では、
図2(b)に示す側面視でベース部124の第1接合箇所128、130が車両前後方向に離間していて、さらにリヤサイドメンバ104の底面122に沿って配置されている。このため、ブラケット120の剛性を高めて、ブラケット120が折れたり曲がったりすることを抑制できる。
【0037】
またブラケット120では、ベース部124の第1接合箇所128、130での不図示の締結ボルトの軸方向128a、130a(
図2(b)参照)と、フランジ126の第2接合箇所134、136での不図示の締結ボルトの軸方向134a、136a(
図2(a)参照)とが異なる方向となっている。このため、ブラケット120は、曲げ変形を生じやすい状況にある。
【0038】
そこでブラケット120では、
図2(b)に示すようにフランジ126の幅寸法Lbを大きくしたり、フランジ126が車両前側に向かうほど車両下側に曲がる角部138の曲率半径を大きくして曲率を小さくしたりすることで、曲げ変形が発生することを低減している。さらにブラケット120では、ベース部124の角部140の形状を急峻に屈曲しないような形状とすることで、角部140に応力が集中することも回避している。
【0039】
図3は、
図1の車両下部構造100の一部をさらに他の方向から見た状態を示す図である。
図3は、
図2(a)のB矢視図であって、車両下部構造100のブラケット120およびその周辺を車両後方から見た状態を示している。
【0040】
ブラケット120では、フランジ126の車幅方向に離間した第2接合箇所134、136で、バッテリパック110の車幅方向に延びる後面118とフランジ126とが接合されている。なお
図3では、ブラケット120およびその周辺を車両後方から見ているため、
図2(a)に示すベース部124の第1接合箇所128、130がフランジ126によって隠された状態となっている。
【0041】
このように車両下部構造100では、
図2および
図3に示すように、ブラケット120のベース部124が車両前後方向に離間した2つの第1接合箇所128、130でリヤサイドメンバ104の車両前後方向に延びる底面122に接合される。またブラケット120のフランジ126は、第2接合箇所134、136でバッテリパック110の車幅方向に延びる後面118に接合される。このため、ブラケット120は、リヤサイドメンバ104およびバッテリパック110に接合されこれらを補強することで、リヤサイドメンバ104の車両前後方向および車幅方向の剛性を高め、さらにサスペンション固定部106の支持剛性も高めることができる。
【0042】
また車両下部構造100では、
図1(a)に示すように車幅方向に延びるバッテリクロスメンバ114にバッテリパック110が接合されているため、バッテリパック110の車幅方向の剛性を高めることができる。そしてブラケット120は、バッテリパック110に接合されているため、車幅方向の剛性が向上し、サスペンション固定部106の剛性も高めることができる。
【0043】
さらにブラケット120は、
図1(b)に示すようにベース部124の縁132の一周にわたってフランジ126が車両下方に張り出して、さらにフランジ126がベース部124の第1接合箇所128、130を囲んでいる。このため、ブラケット120は、剛性が高くなり、車両上下方向に変形することを抑制し、さらにサスペンション固定部106の剛性も向上させることができる。また、ブラケット120にフランジ126を設けることで剛性を高めているため、ベース部124を厚くする必要がなく、ブラケット120自体の厚さを厚くしないで済む。
【0044】
図4は、
図1の車両下部構造100のブラケット120を示す図である。
図4(a)は、ブラケット120を模式的に示した下面図である。
図4(b)は、
図1(b)のブラケット120の一部を示す図である。
図5は、
図4(a)のブラケット120の各断面を示す図である。
【0045】
ブラケット120は、
図4(a)に示すようにベース部124に形成された複数のビード142、144、146、148を有する。ビード142は、
図4(a)および
図5(a)のC-C断面に示すように、ベース部124の第1接合箇所128と、第2接合箇所136が形成されたフランジ126とベース部124の境界となる縁132との間にわたって直線状に延びている。
【0046】
ビード144は、
図4(a)および
図5(b)のD-D断面に示すように、ベース部124の第1接合箇所128と、第2接合箇所134が形成されたフランジ126とベース部124の境界となる縁132との間にわたって直線状に延びている。またビード146は、
図4(a)および
図5(c)のE-E断面に示すように、ベース部124の第1接合箇所130と、第2接合箇所134が形成されたフランジ126とベース部124の境界となる縁132との間にわたって直線状に延びている。
【0047】
またブラケット120では、
図4(b)に示すようにビード142、144と、ビード142、144間に位置する面150との間で段差を設けている。さらにブラケット120では、ビード144、146と、ビード144、146間に位置する面152との間で段差を設けている。このため、これらビード142、144、146の剛性を高めることができる。
【0048】
これにより、ブラケット120は、リヤサイドメンバ104の底面122から第1接合箇所128、130を介してベース部124に伝達される荷重を、ベース部124のビード142、144、146を介してフランジ126の第2接合箇所134、136に伝達できる。さらに、ブラケット120は、フランジ126の第2接合箇所134、136に伝達された荷重をバッテリパック110の後面118に伝達し分散させることができる。このため、ブラケット120の支持剛性を高めることができ、サスペンション固定部106の剛性も高めることができる。
【0049】
さらにビード148は、
図4(a)および
図5(d)のF-F断面に示すように、ベース部124の第1接合箇所128と第1接合箇所130との間にわたって直線状に延びている。このため、ブラケット120では、
図2(b)に示す側面視でリヤサイドメンバ104の底面122に沿って配置された第1接合箇所128、130の間で、ビード148を介して荷重を車両前後方向に分散させることができる。このようにベース部124に形成された複数のビード142、144、146、148は、荷重伝達経路として機能することができる。
【0050】
このため、ブラケット120は、サスペンション固定部106からリヤサイドメンバ104に伝達される荷重を確実に受けることができ、さらにこの荷重を車幅方向や車両前後方向に分散させることができる。したがって車両下部構造100によれば、リヤサイドメンバ104の車両前後方向および車幅方向の剛性を高めて、リヤサイドメンバ104の振動に起因する車体の捩り振動やフロアパネル102のフロア振動を小さくして、車両の操安性やNV特性を向上させることができる。
【0051】
なお車両下部構造100では、ブラケット120のベース部124に車両前後方向に離間した2つの第1接合箇所128、130を形成し、ブラケット120のフランジ126に車幅方向に離間した2つの第2接合箇所134、136を形成したが、これに限定されない。一例として、所定の第1接合箇所および第2接合箇所を3つ以上形成してもよい。
【0052】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、車両下部構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
100…車両下部構造、102…フロアパネル、104…リヤサイドメンバ、106…サスペンション固定部、108…ホイールハウス、110…バッテリパック、112…サイドシル、114…バッテリクロスメンバ、116…バッテリパックの側面、118…バッテリパックの後面、120…ブラケット、122…リヤサイドメンバの底面、124…ベース部、126…フランジ、128、130…第1接合箇所、128a、130a、134a、136a…軸方向、132…ベース部の縁、134、136…第2接合箇所、138、140…角部、142、144、146、148…ビード、150、152…ビード間の面