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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/20 20060101AFI20240709BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20240709BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H02K5/20
H02K7/116
H02K9/19 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020218897
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022103966
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】高村 建伍
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 響
(72)【発明者】
【氏名】藤本 祥平
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-225969(JP,A)
【文献】特開平10-112957(JP,A)
【文献】特開2013-119918(JP,A)
【文献】特開2014-225970(JP,A)
【文献】特開2022-030829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/20
H02K 7/116
H02K 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を中心として回転可能なロータを有するモータと、
前記モータに接続された伝達機構と、
前記モータを内部に収容するモータハウジング、および前記伝達機構を内部に収容する伝達機構ハウジングを有するハウジングと、
を備え、
前記伝達機構ハウジングの内部には、第1流体が収容され、
前記ハウジングは、
前記第1流体が内部に流れる第1流路と、
第2流体が内部に流れる第2流路と、
を有し、
前記第1流路は、
前記伝達機構ハウジング内の前記第1流体を前記モータハウジングの内部に供給する供給流路と、
前記モータハウジングの内部から前記伝達機構ハウジングの内部まで延びる回収流路と、
を有し、
前記第2流路の少なくとも一部は、前記モータの径方向外側に位置し、
前記回収流路の少なくとも一部は、前記第2流路の径方向外側に位置し、
前記回収流路は、
前記モータハウジングの内周面に設けられ、軸方向に延びる溝部と、
前記溝部よりも径方向外側に位置し、軸方向に延びて前記伝達機構ハウジングの内部に繋がる回収流路本体部と、
前記溝部と前記回収流路本体部とを繋ぐ接続部と、
を有し、
前記回収流路本体部の少なくとも一部は、前記第2流路の径方向外側に位置する、駆動装置。
【請求項2】
前記第2流路は、
軸方向に延び、周方向に間隔を空けて並ぶ複数の軸方向流路部と、
周方向に隣り合う前記軸方向流路部の軸方向一方側の端部同士を繋ぐ複数の第1周方向流路部と、
周方向に隣り合う前記軸方向流路部の軸方向他方側の端部同士を繋ぐ複数の第2周方向流路部と、
を有し、周方向に沿って矩形波状に延びている、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記モータハウジングと前記伝達機構ハウジングとは、互いに固定された別体であり、
前記モータハウジングは、
前記伝達機構ハウジングに固定された第1ハウジング部材と、
前記第1ハウジング部材の軸方向他方側に固定された第2ハウジング部材と、
を有し、
前記伝達機構ハウジングは、
前記第1ハウジング部材に固定された第3ハウジング部材と、
前記第3ハウジング部材の軸方向一方側に固定された第4ハウジング部材と、
を有し、
前記軸方向流路部は、前記第1ハウジング部材に設けられ、
前記第1周方向流路部は、前記第1ハウジング部材と前記第3ハウジング部材とに跨って設けられている、請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記伝達機構ハウジングは、前記モータハウジングの軸方向一方側に繋がり、
前記接続部は、前記溝部の軸方向他方側の端部と前記回収流路本体部の軸方向他方側の端部とを繋いでいる、請求項1~3のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記複数の第1周方向流路部は、前記溝部の軸方向一方側を周方向に跨ぐ第1周方向流路部を含み、
前記接続部は、周方向に隣り合う前記第2周方向流路部同士の間に位置する、請求項2または3に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記中心軸は、鉛直方向と交差する方向に延び、
前記回収流路は、前記モータの鉛直方向下側に位置し、
前記溝部の底面は、前記接続部に向かうに従って鉛直方向下側に位置する傾斜面である、請求項1から5のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記回収流路本体部の周方向の寸法は、前記接続部の周方向の寸法よりも大きい、請求項1から6のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記供給流路は、前記伝達機構ハウジングの内部から軸方向に延びる導入流路部を有し、
前記導入流路部の少なくとも一部は、前記第2流路の径方向外側に位置する、請求項1から7のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項9】
中心軸を中心として回転可能なロータを有するモータと、
前記モータに接続された伝達機構と、
前記モータを内部に収容するモータハウジング、および前記伝達機構を内部に収容する伝達機構ハウジングを有するハウジングと、
を備え、
前記伝達機構ハウジングの内部には、第1流体が収容され、
前記ハウジングは、
前記第1流体が内部に流れる第1流路と、
第2流体が内部に流れる第2流路と、
を有し、
前記第1流路は、
前記伝達機構ハウジング内の前記第1流体を前記モータハウジングの内部に供給する供給流路と、
前記モータハウジングの内部から前記伝達機構ハウジングの内部まで延びる回収流路と、
を有し、
前記第2流路の少なくとも一部は、前記モータの径方向外側に位置し、
前記回収流路の少なくとも一部は、前記第2流路の径方向外側に位置し、
前記供給流路は、前記伝達機構ハウジングの内部から軸方向に延びる導入流路部を有し、
前記導入流路部の少なくとも一部は、前記第2流路の径方向外側に位置し、
前記導入流路部は、前記回収流路と周方向に隣り合って配置されている、駆動装置。
【請求項10】
前記モータハウジングは、
前記モータの径方向外側において前記モータを囲む筒状の第1ハウジング部材と、
前記第1ハウジング部材と別体であり、前記第1ハウジング部材の軸方向他方側に固定された第2ハウジング部材と、
を有し、
前記回収流路と前記第2流路とは、それぞれ前記第1ハウジング部材と前記第2ハウジング部材とに跨って設けられている、請求項1からのいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項11】
中心軸を中心として回転可能なロータを有するモータと、
前記モータに接続された伝達機構と、
前記モータを内部に収容するモータハウジング、および前記伝達機構を内部に収容する伝達機構ハウジングを有するハウジングと、
を備え、
前記伝達機構ハウジングの内部には、第1流体が収容され、
前記ハウジングは、
前記第1流体が内部に流れる第1流路と、
第2流体が内部に流れる第2流路と、
を有し、
前記第1流路は、
前記伝達機構ハウジング内の前記第1流体を前記モータハウジングの内部に供給する供給流路と、
前記モータハウジングの内部から前記伝達機構ハウジングの内部まで延びる回収流路と、
を有し、
前記第2流路の少なくとも一部は、前記モータの径方向外側に位置し、
前記回収流路の少なくとも一部は、前記第2流路の径方向外側に位置し、
前記モータハウジングは、
前記モータの径方向外側において前記モータを囲む筒状の第1ハウジング部材と、
前記第1ハウジング部材と別体であり、前記第1ハウジング部材の軸方向他方側に固定された第2ハウジング部材と、
を有し、
前記回収流路と前記第2流路とは、それぞれ前記第1ハウジング部材と前記第2ハウジング部材とに跨って設けられ、
前記第1ハウジング部材と前記第2ハウジング部材とは、前記回収流路の径方向内側で、かつ、前記第2流路と周方向に隣り合う位置において互いに固定されている、駆動装置。
【請求項12】
前記ハウジングは、前記モータハウジングの内部と前記伝達機構ハウジングの内部とを隔てる隔壁部を有し、
前記隔壁部は、前記モータハウジングの内部と前記伝達機構ハウジングの内部とを繋ぐ貫通孔を有する、請求項1から1のいずれか一項に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両などに搭載される駆動装置のモータを冷却する構造が知られている。例えば、特許文献1には、ハウジングに冷却流路を設けて、モータを冷却する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-135844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような駆動装置においては、モータの冷却効率をさらに向上させることが求められていた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、モータの冷却効率を向上できる駆動装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の駆動装置の一つの態様は、中心軸を中心として回転可能なロータを有するモータと、前記モータに接続された伝達機構と、前記モータを内部に収容するモータハウジング、および前記伝達機構を内部に収容する伝達機構ハウジングを有するハウジングと、を備える。前記伝達機構ハウジングの内部には、第1流体が収容されている。前記ハウジングは、前記第1流体が内部に流れる第1流路と、第2流体が内部に流れる第2流路と、を有する。前記第1流路は、前記伝達機構ハウジング内の前記第1流体を前記モータハウジングの内部に供給する供給流路と、前記モータハウジングの内部から前記伝達機構ハウジングの内部まで延びる回収流路と、を有する。前記第2流路の少なくとも一部は、前記モータの径方向外側に位置する。前記回収流路の少なくとも一部は、前記第2流路の径方向外側に位置する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、駆動装置においてモータの冷却効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態の駆動装置を上側から見た断面図である。
図2図2は、一実施形態の駆動装置を後側から見た断面図である。
図3図3は、一実施形態のモータハウジングのうち第1ハウジング部材の一部を示す斜視図である。
図4図4は、一実施形態のモータハウジングのうち第2ハウジング部材の一部を示す斜視図である。
図5図5は、一実施形態のオイル供給路の一部を示す断面斜視図である。
図6図6は、一実施形態のハウジングの一部を示す断面図である。
図7図7は、一実施形態のハウジングの一部を示す斜視図である。
図8図8は、一実施形態の第1樋部を示す斜視図である。
図9図9は、一実施形態の第2樋部を軸方向一方側から見た図である。
図10図10は、一実施形態のモータハウジングの一部を示す断面斜視図である。
図11図11は、一実施形態の第2流路の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明では、実施形態の駆動装置が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、鉛直方向を規定して説明する。つまり、以下の実施形態において説明する鉛直方向に関する相対位置関係は、駆動装置が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合に少なくとも満たしていればよい。
【0010】
図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向である。+Z側は、鉛直方向上側であり、-Z側は、鉛直方向下側である。以下の説明では、鉛直方向上側を単に「上側」と呼び、鉛直方向下側を単に「下側」と呼ぶ。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって駆動装置が搭載される車両の前後方向である。以下の実施形態において、+X側は、車両における前側であり、-X側は、車両における後側である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の左右方向、すなわち車幅方向である。以下の実施形態において、+Y側は、車両における左側であり、-Y側は、車両における右側である。前後方向および左右方向は、鉛直方向と直交する水平方向である。
【0011】
なお、前後方向の位置関係は、以下の実施形態の位置関係に限られず、+X側が車両の後側であり、-X側が車両の前側であってもよい。この場合には、+Y側は、車両の右側であり、-Y側は、車両の左側である。また、本明細書において、「平行な方向」は略平行な方向も含み、「直交する方向」は略直交する方向も含む。
【0012】
適宜図に示す中心軸J1は、鉛直方向と交差する方向に延びる仮想軸である。より詳細には、中心軸J1は、鉛直方向と直交するY軸方向、つまり車両の左右方向に延びている。以下の説明においては、特に断りのない限り、中心軸J1に平行な方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸J1を中心とする周方向、つまり中心軸J1の軸回りを単に「周方向」と呼ぶ。本実施形態において、左側(+Y側)は「軸方向一方側」に相当し、右側(-Y側)は「軸方向他方側」に相当する。
【0013】
適宜図に示す矢印θは、周方向を示している。以下の説明においては、周方向のうち軸方向一方側(+Y側)から見て中心軸J1を中心として反時計回りに進む側、すなわち矢印θが向く側(+θ側)を「周方向一方側」と呼び、周方向のうち軸方向一方側から見て中心軸J1を中心として時計回りに進む側、すなわち矢印θが向く側と逆側(-θ側)を「周方向他方側」と呼ぶ。
【0014】
図1および図2に示す本実施形態の駆動装置100は、車両に搭載され、車軸64を回転させる駆動装置である。駆動装置100が搭載される車両は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)などのモータを動力源とする車両である。図1および図2に示すように、駆動装置100は、モータ20と、伝達機構60と、モータ20を内部に収容するモータハウジング11および伝達機構60を内部に収容する伝達機構ハウジング12を有するハウジング10と、ベアリング71~76と、インバータユニット80と、ポンプ94と、を備える。モータハウジング11と伝達機構ハウジング12とは、互いに固定された別体である。伝達機構ハウジング12は、モータハウジング11の軸方向一方側に固定されている。つまり、伝達機構ハウジング12は、モータハウジング11の軸方向一方側に繋がっている。ベアリング71~76は、例えば、ボールベアリングである。
【0015】
モータ20は、駆動装置100を駆動する部分である。モータ20は、軸方向に延びる中心軸J1を中心として回転可能なロータ30と、ステータ40と、を有する。ロータ30は、シャフト31と、ロータ本体32と、を有する。シャフト31は、中心軸J1を中心として回転可能である。シャフト31は、ベアリング71,72,73,74によって回転可能に支持されている。これにより、ベアリング71,72,73,74は、ロータ30を回転可能に支持している。
【0016】
本実施形態においてシャフト31は、中空シャフトである。シャフト31は、中心軸J1を中心として軸方向に延びる円筒状である。シャフト31には、シャフト31の内部とシャフト31の外部とを繋ぐ孔部33が設けられている。シャフト31は、モータハウジング11の内部と伝達機構ハウジング12の内部とに跨って延びている。シャフト31の軸方向一方側の端部は、伝達機構ハウジング12の内部に突出している。シャフト31の軸方向一方側の端部には、減速装置61が接続されている。
【0017】
本実施形態においてシャフト31は、第1シャフト部材31aと、第2シャフト部材31bと、が軸方向に連結されて構成されている。第1シャフト部材31aは、モータハウジング11の内部に収容されている。第1シャフト部材31aには、孔部33が設けられている。第2シャフト部材31bは、第1シャフト部材31aの軸方向一方側に連結されている。第2シャフト部材31bの外径は、第1シャフト部材31aの外径よりも小さい。第2シャフト部材31bの軸方向他方側の端部は、第1シャフト部材31aの軸方向一方側の端部における内部に嵌め合わされている。第2シャフト部材31bは、モータハウジング11の内部から伝達機構ハウジング12の内部まで延びている。第1シャフト部材31aと第2シャフト部材31bとは、例えば、スプライン嵌合により互いに連結されている。第1シャフト部材31aは、ベアリング71,72によって回転可能に支持されている。第2シャフト部材31bは、ベアリング73,74によって回転可能に支持されている。
【0018】
ロータ本体32は、シャフト31の外周面に固定されている。より詳細には、ロータ本体32は、第1シャフト部材31aの外周面に固定されている。図示は省略するが、ロータ本体32は、ロータコアと、ロータコアに固定されたロータマグネットと、を有する。
【0019】
ステータ40は、ロータ30の径方向外側に位置する。ステータ40は、モータハウジング11の内部に固定されている。ステータ40は、ステータコア41と、コイルアセンブリ42と、を有する。ステータコア41は、ロータ30を囲む環状である。コイルアセンブリ42は、周方向に沿ってステータコア41に取り付けられる複数のコイル42cを有する。複数のコイル42cは、図示しないインシュレータを介してステータコア41に取り付けられている。図示は省略するが、コイルアセンブリ42は、各コイル42cを結束する結束部材などを有してもよいし、各コイル42c同士を繋ぐ渡り線を有してもよい。コイルアセンブリ42は、ステータコア41から軸方向一方側に突出するコイルエンド42aと、ステータコア41から軸方向他方側に突出するコイルエンド42bと、を有する。
【0020】
伝達機構60は、モータ20に接続されている。伝達機構60は、ロータ30の回転を車両の車軸64に伝達する。図1に示すように、本実施形態の伝達機構60は、モータ20に接続された減速装置61と、減速装置61に接続された差動装置62と、を有する。
【0021】
減速装置61は、第1ギヤ61aと、第2ギヤ61bと、第3ギヤ61cと、ギヤシャフト61dと、を有する。第1ギヤ61aは、シャフト31のうち伝達機構ハウジング12の内部に位置する部分に固定されている。第2ギヤ61bおよび第3ギヤ61cは、ギヤシャフト61dに固定されている。第2ギヤ61bは、第1ギヤ61aと噛み合っている。ギヤシャフト61dは、中心軸J1と平行に延びるギヤ軸J2を中心として軸方向に延びている。ギヤ軸J2は、中心軸J1よりも下側に位置する仮想軸である。ギヤ軸J2は、例えば、中心軸J1よりも後側(-X側)に位置する。ギヤシャフト61dは、ベアリング75,76によって回転可能に支持されている。
【0022】
差動装置62は、リングギヤ62aを有する。リングギヤ62aは、第3ギヤ61cと噛み合っている。リングギヤ62aの下側の端部は、伝達機構ハウジング12内に貯留されたオイルOに浸漬している。リングギヤ62aが回転することで、オイルOがかき上げられる。かき上げられたオイルOは、例えば、減速装置61および差動装置62に潤滑油として供給される。差動装置62は、差動軸J3回りに車軸64を回転させる。差動軸J3は、中心軸J1と平行に延びる仮想軸である。
【0023】
モータハウジング11は、ロータ30およびステータ40を内部に収容している。モータハウジング11は、第1ハウジング部材13と、第2ハウジング部材14と、を有する。本実施形態において、第1ハウジング部材13は第1ハウジング部材に相当し、第2ハウジング部材14は第2ハウジング部材に相当する。
【0024】
第1ハウジング部材13は、モータ20の径方向外側においてモータ20を囲む筒状の部材である。本実施形態において第1ハウジング部材13の内周面は、中心軸J1を中心とする円筒状である。第1ハウジング部材13は、軸方向他方側に開口している。第1ハウジング部材13は、伝達機構ハウジング12に固定されている。第1ハウジング部材13の内部には、ステータコア41が嵌め合わされている。第1ハウジング部材13は、径方向に広がる第1対向壁部13aと、第1対向壁部13aの径方向外周縁部から軸方向他方側に延びる周壁部13bと、第1対向壁部13aに設けられたベアリング保持部13cと、を有する。
【0025】
第1対向壁部13aは、伝達機構ハウジング12と軸方向に対向している。第1対向壁部13aは、伝達機構ハウジング12の軸方向他方側に位置する。第1対向壁部13aは、伝達機構ハウジング12に固定されている。第1対向壁部13aは、第1対向壁部13aを軸方向に貫通する孔13dを有する。孔13dは、中心軸J1を中心とする円形状の孔である。孔13dには、第2シャフト部材31bが軸方向に通されている。
【0026】
図2に示すように、第1対向壁部13aは、第1対向壁部13aを軸方向に貫通する貫通孔13eを有する。貫通孔13eは、第1対向壁部13aと後述する第2対向壁部15aとの軸方向の間に位置する空間Sと、モータハウジング11の内部とを繋ぐ貫通孔である。貫通孔13eは、第1対向壁部13aのうちベアリング保持部13cよりも下側に位置する部分に設けられている。貫通孔13eの下側の端部は、周壁部13bの内周面に繋がっている。
【0027】
本実施形態においてベアリング保持部13cは、第1対向壁部13aの軸方向他方側の面に設けられている。ベアリング保持部13cは、第1対向壁部13aの軸方向他方側の面から軸方向他方側に突出している。図3に示すように、ベアリング保持部13cは、中心軸J1を中心とする円筒状である。ベアリング保持部13cは、ベアリング保持部13cを径方向に貫通する貫通部13fを有する。本実施形態において貫通部13fは、ベアリング保持部13cのうち中心軸J1よりも上側で、かつ、後側(-X側)に位置する部分を径方向に貫通している。貫通部13fは、ベアリング保持部13cの内周面からベアリング保持部13cの外周面まで、後側かつ斜め上側に延びている。図1に示すように、ベアリング保持部13cは、ベアリング72を内部に保持している。
【0028】
第2ハウジング部材14は、第1ハウジング部材13と別体である。第2ハウジング部材14は、第1ハウジング部材13の軸方向他方側に固定されている。第2ハウジング部材14は、第1ハウジング部材13の軸方向他方側の開口を塞いでいる。図4に示すように、第2ハウジング部材14は、径方向に広がる蓋壁部14aと、蓋壁部14aの径方向外周縁部から軸方向一方側に延びる周壁部14bと、を有する。図1に示すように、周壁部14bの軸方向一方側の端部は、第1ハウジング部材13における周壁部13bの軸方向他方側の端部に接触している。蓋壁部14aは、蓋壁部14aの軸方向一方側の面から軸方向他方側に窪む凹部14cを有する。凹部14cのうち軸方向一方側部分は、ベアリング71を内部に保持するベアリング保持部14dである。
【0029】
本実施形態においてモータハウジング11には、インバータユニット80が取り付けられている。インバータユニット80は、モータハウジング11の後側の面に固定されている。図示は省略するが、インバータユニット80は、ステータ40に電気的に接続されたインバータ回路を有する。
【0030】
伝達機構ハウジング12は、減速装置61と差動装置62とを内部に収容している。図2に示すように、伝達機構ハウジング12は、モータハウジング11よりも下側に突出している。伝達機構ハウジング12の内面のうち下側に位置する底面は、モータハウジング11の内面のうち下側に位置する底面よりも下側に位置する。伝達機構ハウジング12は、第1ハウジング部材13に固定された第3ハウジング部材15と、第3ハウジング部材15の軸方向一方側に固定された第4ハウジング部材16と、を有する。
【0031】
第3ハウジング部材15は、径方向に広がる第2対向壁部15aと、第2対向壁部15aの径方向外周縁部から軸方向一方側に延びる周壁部15bと、第2対向壁部15aに設けられたベアリング保持部15c,15dと、を有する。第2対向壁部15aは、第1対向壁部13aと軸方向に対向している。第2対向壁部15aは、第1対向壁部13aの軸方向一方側に固定されている。第2対向壁部15aは、第2対向壁部15aを軸方向に貫通する孔15fを有する。孔15fは、中心軸J1を中心とする円形状の孔である。孔15fには、第2シャフト部材31bが軸方向に通されている。
【0032】
第2対向壁部15aは、第2対向壁部15aの軸方向他方側の面から軸方向一方側に窪む凹部15eを有する。凹部15eの内周縁は、例えば、軸方向に見て、中心軸J1を中心とする円形状である。凹部15eの軸方向他方側の開口は、第1対向壁部13aによって塞がれている。第1対向壁部13aと第2対向壁部15aとの軸方向の間には、空間Sが設けられている。空間Sは、凹部15eの内部によって構成されている。
【0033】
図2に示すように、第2対向壁部15aは、第2対向壁部15aを軸方向に貫通する貫通孔15hを有する。貫通孔15hは、第1対向壁部13aと第2対向壁部15aとの軸方向の間に位置する空間Sと、伝達機構ハウジング12の内部とを繋ぐ貫通孔である。貫通孔15hは、第2対向壁部15aのうちベアリング保持部15cよりも下側に位置する部分に設けられている。貫通孔15hは、凹部15eの底面の下側の端部に設けられている。凹部15eの底面は、凹部15eの内面のうち軸方向一方側に位置し軸方向他方側を向く面である。貫通孔15hの下側の端部は、凹部15eの内周面に繋がっている。貫通孔15hは、例えば、第1対向壁部13aに設けられた貫通孔13eの軸方向一方側に隙間を空けて対向して配置されている。
【0034】
本実施形態では、第1対向壁部13aと第2対向壁部15aとによって、モータハウジング11の内部と伝達機構ハウジング12の内部とを隔てる隔壁部19が構成されている。つまり、ハウジング10は、隔壁部19を有する。隔壁部19は、モータハウジング11の内部と伝達機構ハウジング12の内部とを繋ぐ貫通孔19aを有する。貫通孔19aは、隔壁部19を軸方向に貫通している。本実施形態において貫通孔19aは、第1対向壁部13aに設けられた貫通孔13eと凹部15eの下側の端部と第2対向壁部15aに設けられた貫通孔15hとによって構成されている。
【0035】
本実施形態においてベアリング保持部15c,15dは、第2対向壁部15aの軸方向一方側の面に設けられている。ベアリング保持部15c,15dは、第2対向壁部15aの軸方向一方側の面から軸方向一方側に突出している。図5に示すように、ベアリング保持部15cは、中心軸J1を中心とする円筒状である。ベアリング保持部15dは、ギヤ軸J2を中心とする円筒状である。図1に示すように、ベアリング保持部15cは、ベアリング73を内部に保持している。ベアリング保持部15dは、ベアリング75を内部に保持している。
【0036】
第4ハウジング部材16は、径方向に広がる蓋壁部16aと、蓋壁部16aの径方向外周縁部から軸方向他方側に延びる周壁部16bと、蓋壁部16aに設けられたベアリング保持部16c,16dと、を有する。周壁部16bの軸方向他方側の端部は、第3ハウジング部材15の周壁部15bの軸方向一方側の端部と軸方向に接触している。
【0037】
本実施形態においてベアリング保持部16c,16dは、蓋壁部16aの軸方向他方側の面に設けられている。ベアリング保持部16c,16dは、蓋壁部16aの軸方向他方側の面から軸方向他方側に突出している。図示は省略するが、ベアリング保持部16cは、中心軸J1を中心とする円筒状である。ベアリング保持部16dは、ギヤ軸J2を中心とする円筒状である。ベアリング保持部16cは、ベアリング74を内部に保持している。ベアリング保持部16dは、ベアリング76を内部に保持している。
【0038】
伝達機構ハウジング12の内部には、オイルOが収容されている。オイルOは、伝達機構ハウジング12内の下部領域に貯留されている。オイルOは、モータ20を冷却する冷媒として使用される。オイルOは、減速装置61および差動装置62に対して潤滑油としても使用される。オイルOとしては、例えば、冷媒および潤滑油の機能を奏するために、比較的粘度の低いオートマチックトランスミッション用潤滑油(ATF:Automatic Transmission Fluid)と同等のオイルを用いることが好ましい。本実施形態においてオイルOは、第1流体に相当する。
【0039】
本実施形態において伝達機構ハウジング12には、ポンプ94が取り付けられている。ポンプ94は、伝達機構ハウジング12の下側の面に取り付けられている。ポンプ94は、後述する第2供給流路92内にオイルOを流すポンプである。本実施形態においてポンプ94は、電動ポンプである。なお、ポンプ94は、シャフト31またはギヤシャフト61dによって回転させられる機械式のポンプであってもよい。
【0040】
図示は省略するが、第1ハウジング部材13と第2ハウジング部材14との軸方向の間、第1ハウジング部材13と第3ハウジング部材15との軸方向の間、および第3ハウジング部材15と第4ハウジング部材16との軸方向の間は、シール部材によってシールされている。シール部材は、例えば、液体ガスケットなどである。
【0041】
本実施形態において第1ハウジング部材13と第2ハウジング部材14と第3ハウジング部材15と第4ハウジング部材16とは、ボルトで固定されている。より詳細には、図6に示すように、第1ハウジング部材13と第2ハウジング部材14とは、ボルト10aによって互いに固定されている。第1ハウジング部材13と第3ハウジング部材15とは、ボルト10bによって互いに固定されている。第3ハウジング部材15と第4ハウジング部材16とは、ボルト10cによって互いに固定されている。ボルト10a、ボルト10b、およびボルト10cは、それぞれ中心軸J1を囲んで複数設けられている。
【0042】
複数のボルト10aは、第1ハウジング部材13の外周面に設けられた複数の突出部13kと第2ハウジング部材14の外周面に設けられた複数の突出部14kとをそれぞれ固定している。突出部13kは、第1ハウジング部材13の外周面のうち軸方向他方側の端部に設けられている。突出部13kは、径方向外側に突出している。図7に示すように、複数の突出部13kは、周方向に沿って間隔を空けて配置されている。突出部13kは、突出部13kの軸方向他方側の面から軸方向一方側に窪む雌ネジ穴13pを有する。本実施形態において雌ネジ穴13pは、突出部13kを軸方向に貫通している。なお、雌ネジ穴13pは、軸方向一方側に底部を有する穴であってもよい。
【0043】
突出部14kは、第2ハウジング部材14の外周面のうち軸方向一方側の端部に設けられている。突出部14kは、径方向外側に突出している。複数の突出部14kは、周方向に沿って間隔を空けて配置されている。突出部14kの軸方向一方側の面は、突出部13kの軸方向他方側の面と接触している。突出部14kは、突出部14kを軸方向に貫通する固定孔14pを有する。軸方向に見て、固定孔14pと雌ネジ穴13pとは、互いに重なっている。ボルト10aは、軸方向他方側から固定孔14pに通されて、雌ネジ穴13pに締め込まれている。これにより、第1ハウジング部材13と第2ハウジング部材14とがボルト10aで固定されている。
【0044】
複数のボルト10bは、第1ハウジング部材13の外周面に設けられた複数の突出部13mと第3ハウジング部材15の外周面に設けられた複数の突出部15mとをそれぞれ固定している。突出部13mは、第1ハウジング部材13の外周面のうち軸方向一方側の端部に設けられている。突出部13mは、径方向外側に突出している。複数の突出部13mは、周方向に沿って間隔を空けて配置されている。突出部13mの周方向位置は、突出部13kの周方向位置に対してずれている。突出部13mの周方向位置は、例えば、周方向に隣り合う突出部13k同士の間における周方向の中央位置である。突出部13mは、突出部13mを軸方向に貫通する固定孔13qを有する。
【0045】
突出部15mは、第3ハウジング部材15の外周面のうち軸方向他方側の端部に設けられている。突出部15mは、径方向外側に突出している。複数の突出部15mは、周方向に沿って間隔を空けて配置されている。突出部15mの軸方向他方側の面は、突出部13mの軸方向一方側の面と接触している。突出部15mは、突出部15mの軸方向他方側の面から軸方向一方側に窪む雌ネジ穴15qを有する。本実施形態において雌ネジ穴15qは、突出部15mを軸方向に貫通している。なお、雌ネジ穴15qは、軸方向一方側に底部を有する穴であってもよい。
【0046】
軸方向に見て、固定孔13qと雌ネジ穴15qとは、互いに重なっている。ボルト10bは、軸方向他方側から固定孔13qに通されて、雌ネジ穴15qに締め込まれている。これにより、第1ハウジング部材13と第3ハウジング部材15とがボルト10bで固定されている。
【0047】
このように、本実施形態において第1ハウジング部材13と第3ハウジング部材15とは、第1ハウジング部材13と第2ハウジング部材14とを固定するボルト10aと同じ側から締め込まれたボルト10bによって互いに固定されている。つまり、第1ハウジング部材13と第3ハウジング部材15とを固定するボルト10bは、第1ハウジング部材13と第2ハウジング部材14とを固定するボルト10aと同じ向きに固定孔13qおよび雌ネジ穴15qに挿し込まれている。
【0048】
図6に示すように、ボルト10cは、第3ハウジング部材15の外周面のうち軸方向一方側の端部に設けられた突出部15nと第4ハウジング部材16の外周面のうち軸方向他方側の端部に設けられた突出部16nとを固定している。図示は省略するが、突出部15nと突出部16nとは、それぞれ周方向に間隔を空けて複数ずつ設けられている。突出部15nおよび突出部16nは、径方向外側に突出している。突出部15nおよび突出部16nの周方向位置は、突出部13mおよび突出部15mの周方向位置と同じであってもよいし、周方向にずれた位置であってもよい。
【0049】
突出部15nは、突出部15nの軸方向一方側の面から軸方向他方側に窪む雌ネジ穴15rを有する。本実施形態において雌ネジ穴15rは、突出部15nを軸方向に貫通している。なお、雌ネジ穴15rは、軸方向他方側に底部を有する穴であってもよい。突出部16nは、突出部16nを軸方向に貫通する固定孔16rを有する。ボルト10cは、固定孔16rに軸方向一方側から通されて、雌ネジ穴15rに締め込まれている。これにより、第3ハウジング部材15と第4ハウジング部材16とがボルト10cで固定されている。
【0050】
このように、本実施形態において第3ハウジング部材15と第4ハウジング部材16とは、第1ハウジング部材13と第2ハウジング部材14とを固定するボルト10aおよび第1ハウジング部材13と第3ハウジング部材15とを固定するボルト10bが締め込まれる側と逆側から締め込まれたボルト10cによって互いに固定されている。つまり、第3ハウジング部材15と第4ハウジング部材16とを固定するボルト10cは、第1ハウジング部材13と第2ハウジング部材14とを固定するボルト10aおよび第1ハウジング部材13と第3ハウジング部材15とを固定するボルト10bとは異なる向きに固定孔16rおよび雌ネジ穴15rに挿し込まれている。
【0051】
上述したように、本実施形態では、第1ハウジング部材13と第3ハウジング部材15とは、軸方向のうち第1ハウジング部材13と第2ハウジング部材14とがボルト10aで固定される側と同じ側からボルト10bで固定されている。そのため、第1ハウジング部材13と第2ハウジング部材14とを固定する作業と、第1ハウジング部材13と第3ハウジング部材15とを固定する作業とを、軸方向の同じ側、つまり本実施形態では軸方向他方側から行うことができる。これにより、ハウジング10の組立作業性を向上できる。
【0052】
ここで、本実施形態において伝達機構ハウジング12は、モータハウジング11よりも径方向外側に突出した形状となっている。このような場合、モータハウジング11に対して伝達機構ハウジング12が位置する側、つまり軸方向一方側からボルトを挿し込んで第1ハウジング部材13と第3ハウジング部材15とを固定しようとすると、伝達機構ハウジング12自体との干渉を避けるために、ボルトの固定部をより径方向外側に配置する必要などが生じる。そのため、ハウジング10が大型化しやすい。
【0053】
これに対して、例えば、第1ハウジング部材13と第3ハウジング部材15と第4ハウジング部材16とを軸方向一方側から挿し込まれるボルトによって共締めすれば、ハウジング10が大型化することを抑制しつつ、第1ハウジング部材13と第3ハウジング部材15とを固定できる。しかし、この場合には、ボルトを外してモータハウジング11と伝達機構ハウジング12とを分離しようとした際に、伝達機構ハウジング12を構成する第3ハウジング部材15と第4ハウジング部材16とも分離する。そのため、モータハウジング11に固定されていない状態では、伝達機構ハウジング12を組み合わされた状態で扱うことができない。これにより、ハウジング10の組み立て性が悪くなりやすい。また、駆動装置100のメンテナンスを行う際、および伝達機構60を交換する際などに、作業性が悪くなりやすい。
【0054】
また、第1ハウジング部材13と第3ハウジング部材15との軸方向の間に設けられるシール部材と第3ハウジング部材15と第4ハウジング部材16との軸方向の間に設けられるシール部材とでは、好適にシール性を維持するために必要なボルトによる軸力が異なる場合がある。そのため、第1ハウジング部材13と第3ハウジング部材15と第4ハウジング部材16とを同一のボルトで共締めすると、各ハウジング部材間のそれぞれに配置されたシール部材に好適に軸力を加えにくい場合がある。そのため、各ハウジング部材間のシール性が低下する、およびボルトの軸力の調整が困難になる、などの問題が生じやすい。
【0055】
以上に述べた第1ハウジング部材13と第3ハウジング部材15と第4ハウジング部材16とを軸方向一方側から挿し込まれるボルトによって共締めする場合における問題点は、第1ハウジング部材13と第2ハウジング部材14と第3ハウジング部材15とを軸方向他方側から挿し込まれるボルトによって共締めする場合についても同様である。
【0056】
上記問題に対して、本実施形態によれば、上述したように、第1ハウジング部材13と第3ハウジング部材15とは、軸方向のうち第1ハウジング部材13と第2ハウジング部材14とがボルト10aで固定される側と同じ側からボルト10bで固定されている。そのため、ボルト10bによって固定される部分の位置をより径方向外側の位置に変更しなくても、ボルト10bが伝達機構ハウジング12と干渉することを抑制できる。これにより、ハウジング10が大型化することを抑制しつつ、第1ハウジング部材13と第3ハウジング部材15とをボルト10bで固定できる。また、ボルト10bを外しても、第1ハウジング部材13と第3ハウジング部材15とが分離するのみで、第3ハウジング部材15と第4ハウジング部材16とが分離することがない。そのため、モータハウジング11に固定されていない状態であっても、伝達機構ハウジング12を組み合わされた状態で扱うことができる。これにより、ハウジング10の組み立て性が悪くなることを抑制できる。また、駆動装置100のメンテナンスを行う際、および伝達機構60を交換する際などに、作業性が悪くなることを抑制できる。また、ボルト10bとボルト10cとでそれぞれ軸力を変えることができるため、第1ハウジング部材13と第3ハウジング部材15との間に位置するシール部材と、第3ハウジング部材15と第4ハウジング部材16との間に位置するシール部材とに、それぞれ個別に異なる軸力を加えることができる。これにより、各ハウジング部材間のシール性を容易に確保することができ、ボルト10b,10cの軸力の調整も容易にできる。これは、第1ハウジング部材13と第2ハウジング部材14との間のシール部材についても同様である。
【0057】
また、例えば、モータハウジング11と伝達機構ハウジング12との間に、別のハウジング部材を配置して、当該別のハウジング部材に対してモータハウジング11と伝達機構ハウジング12とを固定すれば、モータハウジング11と伝達機構ハウジング12とをそれぞれ組み立てられた状態で分離することも可能となる。しかし、この場合、当該別のハウジング部材を設ける分、ハウジング10を構成する部品点数が増加する。これに対して、本実施形態によれば、上述したように、当該別の部材を設けることなく、モータハウジング11と伝達機構ハウジング12とのそれぞれを組み立てられた状態で分離することが可能である。したがって、ハウジング10を構成する部品点数が増加することを抑制できる。また、当該別の部材を設けなくてよいため、駆動装置100の重量を低減できる。これにより、本実施形態のように駆動装置100の構造を、モータ20を水Wによって冷却する水冷構造とする場合であっても、駆動装置100全体の重量が増加することを抑制できる。
【0058】
なお、図7に二点鎖線で示すように、第1ハウジング部材13に設けられた突出部13mは、軸方向に延びていてもよい。この場合、突出部13mの軸方向他方側の端部を、突出部13kに近づけることができる。これにより、第1ハウジング部材13と第3ハウジング部材15とを固定する作業とを軸方向他方側から行う際に、ボルト10bを締め込むための治具および工具を使用する位置を、第1ハウジング部材13と第2ハウジング部材14とを固定する作業を行う際における治具および工具を使用する位置に近づけることができる。また、治具および工具などの軸方向の寸法を短くできる。これらにより、第1ハウジング部材13と第3ハウジング部材15とをボルト10bで固定する作業の作業性を向上できる。特に、ボルト10bを好適に締め込んで、好適に軸力を生じさせることができる。
【0059】
図7に二点鎖線で示す突出部13mにおける軸方向他方側の端部は、例えば、第1ハウジング部材13の軸方向の中心よりも軸方向他方側に位置する。図7に二点鎖線で示す突出部13mにおける軸方向他方側の端部は、例えば、突出部13kの軸方向一方側の端部よりも軸方向一方側に位置する。これにより、突出部13mが突出部13kと干渉することを抑制できる。
【0060】
図3および図4に示すように、本実施形態において第1ハウジング部材13と第2ハウジング部材14とは、上述した複数のボルト10aとは異なるボルト10dによっても固定されている。図3に示すように、第1ハウジング部材13は、周壁部13bの軸方向他方側の端面から軸方向一方側に窪む雌ネジ穴13iを有する。雌ネジ穴13iは、後述する溝部93aと後述する第2流路50の第2周方向流路部52bとの周方向の間に位置する。雌ネジ穴13iは、後述する回収流路本体部93cの径方向内側に位置する。
【0061】
図4に示すように、第2ハウジング部材14は、第2ハウジング部材14を軸方向に貫通する固定孔14eを有する。固定孔14eは、後述する接続部93bと後述する第2流路50の第2周方向流路部52bとの周方向の間に位置する。固定孔14eは、後述する回収流路本体部93cの径方向内側に位置する。固定孔14eに軸方向他方側から通されたボルト10dが雌ネジ穴13iに締め込まれている。これにより、本実施形態において第1ハウジング部材13と第2ハウジング部材14とは、後述する回収流路93の径方向内側で、かつ、第2流路50と周方向に隣り合う位置において互いに固定されている。
【0062】
ハウジング10は、第1樋部17を有する。第1樋部17は、第1対向壁部13aと第2対向壁部15aとの軸方向の間に位置する。つまり、第1樋部17は、空間Sに位置する。図8に示すように、第1樋部17は、上側に開口し、軸方向に延びる樋状である。第1樋部17内には、オイルOが流れる。第1樋部17は、内部にオイルOを貯留可能なリザーバである。本実施形態において第1樋部17は、中心軸J1よりも後側(-X側)に位置する。第1樋部17は、孔13dの後側に位置する。
【0063】
第1樋部17は、第1対向壁部13aと第2対向壁部15aとを繋いでいる。本実施形態において第1樋部17は、第1対向壁部13aの軸方向一方側(+Y側)の面から軸方向一方側に突出する第1部分17aと、第2対向壁部15aの軸方向他方側(-Y側)の面から軸方向他方側に突出する第2部分17bと、を有する。第1部分17aの軸方向一方側の端部と第2部分17bの軸方向他方側の端部とは、互いに繋がっている。第2部分17bの軸方向の寸法は、第1部分17aの軸方向の寸法よりも大きい。
【0064】
第1樋部17は、上側を向く底面17cと、底面17cの前後方向の両側から上側に突出する一対の側面17d,17eと、を有する。底面17cおよび一対の側面17d,17eは、軸方向に延びている。底面17cおよび一対の側面17d,17eは、第1対向壁部13aと第2対向壁部15aとを繋いでいる。一対の側面17d,17eは、軸方向に間隔を空けて対向して配置されている。側面17dは、側面17eの前側(+X側)に位置する。
【0065】
底面17cは、前後方向に対して鉛直方向に傾いている。底面17cは、前側(+X側)に向かうに従って下側に位置する。本実施形態において底面17cは、第1対向壁部13aに設けられた第1孔部13gに近づくに従って下側に位置する傾斜面である。そのため、重力を利用して第1樋部17内のオイルOを底面17cに沿って第1孔部13g内に導きやすい。第1孔部13gは、第1対向壁部13aを軸方向に貫通している。第1孔部13gは、例えば、円形状の孔である。第1孔部13gは、第1樋部17の内部のうち前側の端部に開口している。第1孔部13gは、底面17cと側面17dとに繋がっている。
【0066】
図5に示すように、第1樋部17は、第1対向壁部13aの軸方向一方側の面のうち第1孔部13gの下側に位置する部分と第2対向壁部15aの軸方向他方側の面のうち第2孔部15gの下側に位置する部分とに繋がっている。第2孔部15gは、第2対向壁部15aを軸方向に貫通している。第2孔部15gは、例えば、円形状の孔である。第2孔部15gは、第1樋部17の内部のうち後側(-X側)の端部と、第2樋部18の内部のうち前側(+X側)の端部とに開口している。
【0067】
図2に示すように、ハウジング10は、第2樋部18を有する。第2樋部18は、伝達機構ハウジング12の内部に位置する。図5および図9に示すように、第2樋部18は、上側に開口し、軸方向に延びる樋状である。第2樋部18内には、オイルOが流れる。第2樋部18は、内部にオイルOを貯留可能なリザーバである。本実施形態において第2樋部18は、中心軸J1よりも後側(-X側)に位置する。第2樋部18は、ベアリング保持部15dの上側に位置する。図5に示すように、第2樋部18の前側(+X側)の端部は、第1樋部17の後側の端部の軸方向一方側(+Y側)に位置する。
【0068】
図2に示すように、第2樋部18は、第1対向壁部13aと第2対向壁部15aとを繋いでいる。本実施形態において第2樋部18は、第2対向壁部15aの軸方向一方側(+Y側)の面から軸方向一方側に突出する第1部分18aと、蓋壁部16aの軸方向他方側(-Y側)の面から軸方向他方側に突出する第2部分18bと、を有する。第1部分18aの軸方向一方側の端部と第2部分18bの軸方向他方側の端部とは、互いに繋がっている。
【0069】
図9に示すように、第2樋部18は、上側を向く底面18cと、底面18cの前後方向の両側から上側に突出する一対の側面18d,18eと、を有する。底面18cおよび一対の側面18d,18eは、軸方向に延びている。底面18cおよび一対の側面18d,18eは、第2対向壁部15aと蓋壁部16aとを繋いでいる。一対の側面18d,18eは、軸方向に間隔を空けて対向して配置されている。
【0070】
側面18dは、側面18eの前側(+X側)に位置する。側面18dは、鉛直方向に対して前後方向に傾いている。側面18dは、上側に向かうに従って前側(+X側)に位置する。本実施形態において側面18dは、第2孔部15gに近づくに従って下側に位置する傾斜面である。そのため、第2樋部18内に入ったオイルOを、重力を利用して側面18dに沿って第2孔部15g内まで導きやすい。
【0071】
側面18eは、鉛直方向に対して前後方向に傾いている。側面18dは、上側に向かうに従って後側(-X側)に位置する。底面18cは、前後方向に対して鉛直方向に傾いている。底面18cは、後側(-X側)に向かうに従って下側に位置する。
【0072】
図5に示すように、第2樋部18は、第2対向壁部15aの軸方向一方側の面のうち第2孔部15gの下側に位置する部分に繋がっている。第2樋部18には、供給孔部18f,18gが設けられている。供給孔部18fは、第2樋部18の内部とベアリング保持部15cの内部とを繋いでいる。そのため、第2樋部18内に入ったオイルOの一部が供給孔部18fを介してベアリング保持部15c内のベアリング73に供給される。図9に示すように、供給孔部18fは、側面18dに開口している。供給孔部18fは、側面18dから前側(+X側)かつ斜め下側向きに延びている。
【0073】
供給孔部18gは、第2樋部18の内部とベアリング保持部15dの内部とを繋いでいる。そのため、第2樋部18内に入ったオイルOの一部が供給孔部18gを介してベアリング保持部15d内のベアリング75に供給される。供給孔部18gは、底面18cに開口している。供給孔部18gは、底面18cから下側かつ斜め前側(+X側)向きに延びている。
【0074】
図2に示すように、ハウジング10は、第1流路90と、第2流路50と、を有する。第1流路90は、第1流体としてのオイルOが内部に流れる流路である。第2流路50は、第2流体としての水Wが内部に流れる流路である。
【0075】
なお、本明細書において「流路」とは、流体が流れる経路を意味する。したがって、「流路」とは、定常的に一方向に向かう流体の流動を作る「流路」のみならず、流体を一時的に滞留させる経路および流体が滴り落ちる経路をも含む概念である。流体を一時的に滞留させる経路とは、例えば、流体を貯留するリザーバなどを含む。
【0076】
第1流路90は、第1供給流路91と、第2供給流路92と、回収流路93と、を有する。第1供給流路91および第2供給流路92は、伝達機構ハウジング12内のオイルOをモータハウジング11の内部に供給する供給流路である。
【0077】
第1供給流路91は、かき上げ経路91aと、シャフト供給経路91bと、シャフト内経路91cと、ロータ内経路90aと、を有する。かき上げ経路91aは、差動装置62のリングギヤ62aの回転によって伝達機構ハウジング12内のオイルOがかき上げられて、第2樋部18内に入る経路である。シャフト供給経路91bは、第2樋部18内のオイルOが、蓋壁部16aに設けられた図示しない流路を通ってベアリング保持部16c内に流入し、ベアリング保持部16c内からシャフト31内に流入する経路である。シャフト供給経路91bにおいてベアリング保持部16c内にオイルOが流入することで、ベアリング保持部16cに保持されたベアリング74にオイルOが供給される。本実施形態のシャフト供給経路91bにおいては、シャフト31のうち軸方向一方側の端部からオイルOが流入する。
【0078】
シャフト内経路91cは、シャフト31の軸方向一方側の端部からシャフト31内に流入したオイルOがシャフト31内を軸方向他方側に流れる経路である。ロータ内経路90aは、シャフト31内のオイルOが、孔部33からロータ本体32の内部を通過してステータ40に飛散する経路である。このように、第1供給流路91によってロータ30およびステータ40にオイルOが供給される。
【0079】
図1に示すように、第2供給流路92は、導入流路部92aと、連結流路部92bと、シャフト内経路92cと、ロータ内経路90aと、を有する。導入流路部92aは、伝達機構ハウジング12の内部から軸方向に延びている。より詳細には、導入流路部92aは、伝達機構ハウジング12の内部から軸方向他方側に延び、第2対向壁部15a、第1対向壁部13a、および周壁部13bを通って、第2ハウジング部材14まで延びている。導入流路部92a内には、ポンプ94によって伝達機構ハウジング12内から吸引されたオイルOが流入する。導入流路部92a内においてオイルOは、軸方向他方側に流れる。
【0080】
図3に示すように、導入流路部92aの流路断面は、周方向に長い長円形状である。導入流路部92aの周方向の寸法は、後述する回収流路本体部93cの周方向の寸法、後述する第1周方向流路部52aの周方向の寸法、および後述する第2周方向流路部52bの周方向の寸法よりも小さい。そのため、導入流路部92aの周方向の寸法を比較的小さくできる。これにより、導入流路部92a内を流れるオイルOに生じる圧力損失を低減できる。したがって、ポンプ94によって導入流路部92a内にオイルOを送りやすくできる。
【0081】
導入流路部92aは、例えば、中心軸J1よりも前側(+X側)かつ下側に位置する。導入流路部92aの少なくとも一部は、第2流路50の径方向外側に位置する。本実施形態では、導入流路部92aのうち軸方向両端部を除くほぼ全体が、第2流路50の径方向外側に位置する。導入流路部92aは、第2流路50の下側に位置する。
【0082】
図1に示すように、連結流路部92bは、第2ハウジング部材14の蓋壁部14aに設けられている。連結流路部92bは、導入流路部92aの軸方向他方側の端部から上側に延びて、凹部14cに繋がる。これにより、凹部14c内にオイルOが流入する。凹部14c内に流入したオイルOの一部は、ベアリング保持部14dに保持されたベアリング71に供給される。凹部14c内に流入したオイルOの他の一部は、シャフト31内に軸方向他方側から流入する。シャフト内経路92cは、シャフト31の軸方向他方側の端部からシャフト31内に流入したオイルOがシャフト31内を軸方向一方側に流れる経路である。このように、本実施形態においては、第1供給流路91と第2供給流路92とによって、シャフト31内に軸方向両側からオイルOが流入する。そのため、例えば、シャフト31内の一端部のみからオイルOを流入させる場合に比べて、シャフト31の軸方向の全体にオイルOを好適に流すことができる。つまり、シャフト31内の一端部から流入したオイルOがシャフト31内の他端部に到達せずシャフト31内の全体にオイルOが行きわたらないことを抑制できる。したがって、シャフト31の軸方向両端部を支持するベアリング71,74のそれぞれにオイルOを好適に供給しやすい。シャフト内経路92cを流れるオイルOは、シャフト内経路91cと同様に、ロータ内経路90aを流れて、ロータ30およびステータ40に供給される。
【0083】
第1供給流路91および第2供給流路92によって、ステータ40に供給されたオイルOは、ステータ40から熱を奪う。ステータ40を冷却したオイルOは、下側に落下して、モータハウジング11内の下部領域に溜まる。モータハウジング11内の下部領域に溜ったオイルOは、隔壁部19の貫通孔19aまたは回収流路93を介して、伝達機構ハウジング12の内部に戻る。
【0084】
図2に示すように、回収流路93は、モータハウジング11の内部から伝達機構ハウジング12の内部まで延びている。本実施形態において回収流路93は、第3ハウジング部材15と第1ハウジング部材13と第2ハウジング部材14とに跨って設けられている。回収流路93は、モータ20の下側に位置する。回収流路93は、溝部93aと、接続部93bと、回収流路本体部93cと、を有する。溝部93aは、モータハウジング11の内周面に設けられている。本実施形態において溝部93aは、第1ハウジング部材13の内周面のうち下側に位置する部分から下側に窪んでいる。溝部93aは、軸方向に延びている。溝部93aの軸方向一方側の端部は、塞がれている。溝部93aの軸方向他方側の端部は、周壁部13bの軸方向他方側の端面に開口している。溝部93aの軸方向他方側の端部は、接続部93bに繋がっている。
【0085】
溝部93aの底面は、軸方向他方側に向かうに従って下側に位置する。つまり、溝部93aの底面は、接続部93bに向かうに従って下側に位置する傾斜面である。そのため、溝部93a内に入ったオイルOを、重力を利用して溝部93aの底面に沿って接続部93bに導きやすくできる。溝部93aの底面は、溝部93aの内面のうち径方向外側に位置し径方向内側を向く面である。本実施形態において溝部93aの底面は、上側を向く。図10に示すように、溝部93aの周方向の寸法は、貫通孔13eの周方向の寸法よりも小さい。
【0086】
接続部93bは、溝部93aと回収流路本体部93cとを繋いでいる。接続部93bは、溝部93aの軸方向他方側の端部93fに繋がっている。本実施形態において接続部93bは、第2ハウジング部材14の周壁部14bに設けられている。接続部93bは、周壁部14bの内周面のうち下側に位置する部分から下側に延びている。接続部93bは、上側に開口している。図2に示すように、接続部93bの下側の端部は、回収流路本体部93cの軸方向他方側の端部93gに繋がっている。これにより、接続部93bは、溝部93aの軸方向他方側の端部93fと回収流路本体部93cの軸方向他方側の端部93gとを繋いでいる。
【0087】
回収流路本体部93cは、溝部93aよりも径方向外側に位置する。本実施形態において回収流路本体部93cは、溝部93aの下側に位置する。回収流路本体部93cは、軸方向に延びて伝達機構ハウジング12の内部に繋がっている。回収流路本体部93cの軸方向一方側の端部93pは、伝達機構ハウジング12の内部に開口している。本実施形態において回収流路本体部93cは、第2ハウジング部材14と第1ハウジング部材13と第3ハウジング部材15とに跨って設けられている。つまり、回収流路本体部93cは、第1ハウジング部材13に設けられた第1部分93hと、第2ハウジング部材14に設けられた第2部分93iと、第3ハウジング部材15に設けられた第3部分93jと、を有する。第1部分93hの軸方向一方側の端部93kは、第3部分93jの軸方向他方側の端部に繋がっている。第1部分93hの軸方向他方側の端部93mは、第2部分93iの軸方向一方側の端部に繋がっている。回収流路本体部93cは、接続部93bの下側の端部から軸方向一方側に延びて、第1ハウジング部材13および第3ハウジング部材15を軸方向に貫通して、伝達機構ハウジング12の内部に開口している。回収流路本体部93cは、隔壁部19の貫通孔19aよりも下側に位置する。
【0088】
図3および図4に示すように、回収流路本体部93cの流路断面は、周方向に長い形状である。回収流路本体部93cの周方向の寸法は、溝部93aの周方向の寸法および接続部93bの周方向の寸法よりも大きい。そのため、回収流路本体部93c内に流せるオイルOの流量を多くできる。これにより、モータハウジング11内から伝達機構ハウジング12内に戻せるオイルOの量を多くできる。
【0089】
回収流路本体部93cの少なくとも一部は、第2流路50の径方向外側に位置する。これにより、回収流路93の少なくとも一部は、第2流路50の径方向外側に位置する。図10に示すように、回収流路本体部93cの一部は、第2流路50のうち溝部93aを周方向に挟んで配置された後述する一対の軸方向流路部51と、第2流路50のうち溝部93aの軸方向一方側に位置する後述する第1周方向流路部52cと、第2流路50のうち接続部93bを周方向に挟んで配置された後述する一対の第2周方向流路部52bとの下側に位置する。本実施形態では、上述したように回収流路本体部93cの周方向の寸法が溝部93aの周方向の寸法および接続部93bの周方向の寸法よりも大きいため、回収流路本体部93cを溝部93aおよび接続部93bよりも周方向に突出させることができる。そのため、回収流路本体部93cを第2流路50の径方向外側に容易に配置することができる。
【0090】
回収流路本体部93cは、導入流路部92aの周方向一方側(+θ側)に隣り合って配置されている。つまり、本実施形態において導入流路部92aは、回収流路93と周方向に隣り合って配置されている。本実施形態においてモータハウジング11のうち回収流路本体部93cおよび導入流路部92aが設けられた部分は、モータハウジング11の他の部分よりも下側に突出している。
【0091】
回収流路本体部93cには、回収流路本体部93cの内部を周方向に仕切る仕切壁部93dが設けられている。仕切壁部93dは、第1部分93hの軸方向一方側の端部93pから軸方向他方側に向かって、軸方向に延びている。本実施形態においては、仕切壁部93dは、第1部分93hの軸方向一方側の端部93kから、第1部分93hの軸方向の中央部まで延びている。言い換えれば、仕切壁部93dは、第1ハウジング部材13の軸方向一方側の端部から、第1ハウジング部材13の軸方向の中央部まで延びている。仕切壁部93dは、周方向に長い回収流路本体部93cをほぼ周方向に2等分している。仕切壁部93dによって、ハウジング10のうち回収流路本体部93cが設けられた部分の強度を向上できる。また、ボルト10bの軸力を、より好適に第1ハウジング部材13と第3ハウジング部材15とに伝えることができる。
【0092】
なお、仕切壁部93dは、第1部分93hの軸方向中央部、つまり第1ハウジング部材13の軸方向中央部まで延びていなくてもよい。例えば、仕切壁部93dの軸方向他方側の端部93rは、第1部分93hの軸方向一方側の端部93kよりも軸方向他方側に位置し、かつ、第1部分93hの軸方向他方側の端部93mよりも軸方向一方側に位置するならば、いずれの位置に配置されてもよい。
【0093】
図3に示すように、回収流路本体部93cは、径方向内側に窪む窪み部93eを有する。窪み部93eは、回収流路本体部93cのうち軸方向他方側部分の周方向中央部に位置する。モータハウジング11のうち窪み部93eが設けられた部分の外周面は径方向内側に窪んでいる。これにより、例えば、第1ハウジング部材13と第3ハウジング部材15とを固定するボルト10bが回収流路本体部93cと干渉することを抑制できる。
【0094】
図1および図2に示すように、第2流路50の少なくとも一部は、モータ20の径方向外側に位置する。本実施形態では、第2流路50のうち軸方向両端部を除くほぼ全体が、モータ20の径方向外側に位置する。第2流路50のうち下側に位置する部分は、回収流路本体部93cとモータ20との径方向の間に位置する。図10および図11に示すように、本実施形態において第2流路50は、周方向に沿って矩形波状に延びている。第2流路50は、複数の軸方向流路部51と、複数の第1周方向流路部52aと、複数の第2周方向流路部52bと、を有する。
【0095】
複数の軸方向流路部51は、軸方向に延びている。複数の軸方向流路部51は、周方向に間隔を空けて並んでいる。本実施形態において軸方向流路部51は、モータハウジング11に設けられている。より詳細には、軸方向流路部51は、第1ハウジング部材13に設けられている。図10に示すように、複数の軸方向流路部51のうち下側に位置する2つの軸方向流路部51は、溝部93aを周方向に挟んで配置されている。
【0096】
図1に示すように、複数の軸方向流路部51は、仕切壁部51dによって軸方向に2つに分断された軸方向流路部51cを含む。軸方向流路部51cは、上流側流路部51aと、下流側流路部51bと、を有する。本実施形態において上流側流路部51aは、軸方向流路部51cのうち仕切壁部51dよりも軸方向一方側に位置する部分である。本実施形態において下流側流路部51bは、軸方向流路部51cのうち仕切壁部51dよりも軸方向他方側に位置する部分である。
【0097】
図10に示すように、第1周方向流路部52aおよび第2周方向流路部52bは、周方向に延びている。複数の第1周方向流路部52aは、周方向に間隔を空けて並んでいる。複数の第2周方向流路部52bは、周方向に間隔を空けて並んでいる。第1周方向流路部52aは、周方向に隣り合う軸方向流路部51の軸方向一方側の端部同士を繋いでいる。第2周方向流路部52bは、周方向に隣り合う軸方向流路部51の軸方向他方側の端部同士を繋いでいる。第1周方向流路部52aと第2周方向流路部52bとによって軸方向流路部51の軸方向両側の端部同士が交互に繋がれることで、第2流路50が矩形波状となっている。
【0098】
複数の第1周方向流路部52aは、溝部93aの軸方向一方側を周方向に跨ぐ第1周方向流路部52cを含む。第1周方向流路部52cは、複数の第1周方向流路部52aのうちで最も下側に位置する第1周方向流路部52aである。第1周方向流路部52cの周方向の寸法は、他の第1周方向流路部52aの周方向の寸法よりも大きい。第1周方向流路部52cの周方向他方側(-θ側)部分の上側には、貫通孔13eが位置する。
【0099】
複数の第2周方向流路部52bは、溝部93aの軸方向他方側の端部および接続部93bを周方向に挟む一対の第2周方向流路部52bを含む。つまり、本実施形態において溝部93aの軸方向他方側の端部および接続部93bは、周方向に隣り合う第2周方向流路部52b同士の間に位置する。
【0100】
図11に示すように、本実施形態において第1周方向流路部52aは、モータハウジング11と伝達機構ハウジング12とに跨って設けられている。より詳細には、第1周方向流路部52aは、第1ハウジング部材13と第3ハウジング部材15とに跨って設けられている。第1周方向流路部52aは、第1ハウジング部材13の軸方向一方側の端面に設けられた部分と、第3ハウジング部材15の軸方向他方側の端面から軸方向一方側に窪む溝とが軸方向に連結されて構成されている。
【0101】
本実施形態において第2周方向流路部52bは、第1ハウジング部材13と第2ハウジング部材14とに跨って設けられている。つまり、本実施形態において第2流路50は、第1ハウジング部材13と第2ハウジング部材14とに跨って設けられている。第2周方向流路部52bは、第1ハウジング部材13の軸方向他方側の端面に設けられた部分と、第2ハウジング部材14の軸方向一方側の端面から軸方向他方側に窪む溝とが軸方向に連結されて構成されている。
【0102】
第1周方向流路部52aによって連結された一対の軸方向流路部51同士を周方向に仕切る仕切壁部52dの軸方向一方側の端部は、第1ハウジング部材13の軸方向一方側の端面よりも軸方向他方側に離れて配置されている。第2周方向流路部52bによって連結された一対の軸方向流路部51同士を周方向に仕切る仕切壁部52eの軸方向他方側の端部は、第1ハウジング部材13の軸方向他方側の端面よりも軸方向一方側に離れて配置されている。
【0103】
軸方向流路部51内においては、水Wが軸方向に流れる。周方向に隣り合う軸方向流路部51内において水Wが流れる向きは、互いに逆向きである。第1周方向流路部52a内および第2周方向流路部52b内においては、水Wが周方向一方側向き(+θ向き)に流れる。第1周方向流路部52aは、水Wが軸方向一方側向きに流れる軸方向流路部51の軸方向一方側の端部と水Wが軸方向他方側向きに流れる軸方向流路部51の軸方向一方側の端部とを繋いでいる。第2周方向流路部52bは、水Wが軸方向他方側向きに流れる軸方向流路部51の軸方向他方側の端部と水Wが軸方向一方側向きに流れる軸方向流路部51の軸方向他方側の端部とを繋いでいる。
【0104】
図1に示すように、第2流路50は、流入流路部53aと、流出流路部53bと、を有する。本実施形態において流入流路部53aおよび流出流路部53bは、インバータユニット80の内部を通っている。流入流路部53aには、駆動装置100の外部から水Wが流入する。流入流路部53aに流入した水Wは、上流側流路部51aに流入する。上流側流路部51aに流入した水Wは、軸方向流路部51と第1周方向流路部52aと第2周方向流路部52bとによって構成された矩形波状の流路に沿って流れつつ、モータ20の周囲を一周し、下流側流路部51bから流出流路部53b内に流入する。流出流路部53b内に流入した水Wは、駆動装置100の外部に流出する。
【0105】
図2に示すように、ハウジング10は、オイル供給路95を有する。オイル供給路95は、伝達機構ハウジング12の内部から第2対向壁部15aを軸方向に貫通して延びている。本実施形態においてオイル供給路95は、第1対向壁部13aを軸方向に貫通してモータハウジング11の内部まで延びている。図5に示すように、オイル供給路95は、ベアリング保持部13cに保持されたベアリング72にオイルOを供給する供給口13hを有する。本実施形態において供給口13hは、第1孔部13gのうち第1対向壁部13aの軸方向他方側の面に開口する開口部である。供給口13hは、モータハウジング11の内部に開口している。図3に示すように、供給口13hは、中心軸J1よりも上側に位置する。供給口13hは、貫通部13fの内部に開口している。軸方向に見て、供給口13hは、貫通部13fと重なっている。
【0106】
本実施形態においてオイル供給路95は、第1孔部13gと、第2孔部15gと、第1樋部17と、第2樋部18と、を有する。図5において破線の矢印で示すように、リングギヤ62aによってかき上げられて第2樋部18内に入ったオイルOの一部は、第2孔部15gを通って、空間S内の第1樋部17内に流入する。第1樋部17内に流入したオイルOは、第1樋部17内を流れて、第1孔部13gを通り、供給口13hからモータハウジング11内に供給される。供給口13hから吐出されたオイルOは、貫通部13fを介して、ベアリング保持部13cの内部に流入し、ベアリング72に供給される。
【0107】
本実施形態によれば、第2流路50の少なくとも一部は、モータ20の径方向外側に位置する。そのため、第2流路50内を流れる水Wによってモータ20を冷却することができる。本実施形態では、第2流路50内を流れる水Wによってステータ40を冷却することができる。また、回収流路93の少なくとも一部は、第2流路50の径方向外側に位置する。そのため、回収流路93を第2流路50に近づけて配置することができる。これにより、第2流路50内を流れる水Wによって、回収流路93内を通るオイルOを冷却しやすい。したがって、回収流路93から伝達機構ハウジング12内に流入するオイルOの温度を下げることができる。そのため、伝達機構ハウジング12内から第1供給流路91および第2供給流路92によってモータハウジング11の内部に供給されるオイルOの温度を比較的低くすることができる。これにより、モータハウジング11内に収容されたモータ20に比較的低温のオイルOを供給することができる。したがって、比較的低温のオイルOによってモータ20を好適に冷却することができる。このように、本実施形態では、水WとオイルOとによってモータ20を好適に冷却することができる。したがって、モータ20の冷却効率を向上できる。また、オイルOを冷却するためにオイルクーラなどの冷却器を設けなくてもモータ20を冷却しやすくできる。そのため、冷却器が設けられていない分だけ、駆動装置100の部品点数を少なくできる。
【0108】
また、本実施形態によれば、第2流路50は、周方向に沿って矩形波状に延びている。そのため、ハウジング10のうち第2流路50が設けられる部分を広くすることができ、第2流路50内を流れる水Wによってモータ20をより好適に冷却することができる。したがって、モータ20の冷却効率をより向上できる。また、本実施形態のようにハウジング10が複数の部材に分かれている場合には、ハウジング10を構成する各部材によって第2流路50を構成することで、第2流路50を容易に作りやすい。具体的に本実施形態では、第1ハウジング部材13を軸方向に貫通する孔を設けて、当該孔の軸方向両側を第2ハウジング部材14と第3ハウジング部材15とによって塞ぐことで、第2流路50を容易に作ることができる。
【0109】
また、本実施形態によれば、第1周方向流路部52aは、第1ハウジング部材13と第3ハウジング部材15とに跨って設けられている。そのため、例えば第1周方向流路部52aの全体が第3ハウジング部材15に設けられている場合に比べて、第3ハウジング部材15が軸方向に大型化することを抑制できる。これにより、駆動装置100が軸方向に大型化することを抑制できる。また、第2流路50をステータ40よりも軸方向一方側まで好適に延ばせるため、第2流路50によって冷却できるステータ40の範囲を広くすることができる。これにより、第2流路50内を流れる水Wによってモータ20をより好適に冷却できる。
【0110】
また、本実施形態によれば、回収流路93は、モータハウジング11の内周面に設けられ、軸方向に延びる溝部93aと、溝部93aよりも径方向外側に位置し、軸方向に延びて伝達機構ハウジング12の内部に繋がる回収流路本体部93cと、溝部93aと回収流路本体部93cとを繋ぐ接続部93bと、を有する。そのため、第1供給流路91および第2供給流路92によってモータハウジング11内に供給されたオイルOの少なくとも一部を、溝部93aから回収流路93内に流入させることができる。また、溝部93aに流入したオイルOを、接続部93bおよび回収流路本体部93cを介して、伝達機構ハウジング12内に送ることができる。これにより、回収流路93によって、モータハウジング11内にオイルOを伝達機構ハウジング12内に戻しやすくできる。また、本実施形態によれば、回収流路本体部93cの少なくとも一部は、第2流路50の径方向外側に位置する。そのため、回収流路本体部93c内を流れるオイルOを、第2流路50内を流れる水Wによって冷却しやすい。
【0111】
また、本実施形態によれば、接続部93bは、溝部93aの軸方向他方側の端部と回収流路本体部93cの軸方向他方側の端部とを繋いでいる。つまり、接続部93bによって溝部93aと回収流路本体部93cとを繋ぐ位置を、伝達機構ハウジング12から軸方向に比較的離れた位置にすることができる。そのため、オイルOが接続部93bから回収流路本体部93cに流入して伝達機構ハウジング12内に到達するまでに流れる距離を長くできる。これにより、回収流路本体部93c内を流れるオイルOを、第2流路50内を流れる水Wによって冷却できる時間を長くできる。したがって、回収流路本体部93c内を流れるオイルOを、第2流路50内を流れる水Wによって好適に冷却できる。そのため、より低温のオイルOをモータ20に供給しやすくできる。これにより、モータ20の冷却効率をより向上できる。
【0112】
また、本実施形態によれば、複数の第1周方向流路部52aは、溝部93aの軸方向一方側を周方向に跨ぐ第1周方向流路部52cを含む。接続部93bは、周方向に隣り合う第2周方向流路部52b同士の間に位置する。このように、軸方向のうち接続部93bが設けられる側と反対側において、第1周方向流路部52cによって溝部93aを跨がせることで、接続部93bを、第2流路50に干渉することなく、第2流路50よりも径方向内側から第2流路50よりも径方向外側まで延ばすことができる。これにより、第2流路50に干渉することなく、回収流路本体部93cの少なくとも一部を、第2流路50の径方向外側に配置することができる。
【0113】
また、本実施形態によれば、第2供給流路92は、伝達機構ハウジング12の内部から軸方向に延びる導入流路部92aを有する。導入流路部92aの少なくとも一部は、第2流路50の径方向外側に位置する。そのため、導入流路部92aを第2流路50に近づけて配置することができる。これにより、第2流路50内を流れる水Wによって、導入流路部92a内を通るオイルOを冷却しやすい。したがって、第2供給流路92によってモータハウジング11の内部に供給されるオイルOの温度を比較的低くすることができる。そのため、モータハウジング11内に収容されたモータ20を、オイルOによってより好適に冷却することができる。したがって、モータ20の冷却効率をより向上できる。
【0114】
また、本実施形態によれば、導入流路部92aは、回収流路93と周方向に隣り合って配置されている。そのため、導入流路部92aと回収流路93とをまとめて配置することができる。これにより、ハウジング10の構造が複雑化することを抑制できる。
【0115】
また、本実施形態によれば、回収流路93と第2流路50とは、それぞれ第1ハウジング部材13と第2ハウジング部材14とに跨って設けられている。そのため、回収流路93および第2流路50をそれぞれ軸方向に大きくできる。これにより、回収流路93のうち第2流路50に近づけて配置される部分を多くしやすい。したがって、第2流路50内を流れる水Wによって、回収流路93内を流れるオイルOをより冷却しやすくできる。また、第2流路50を軸方向に大きくできることで、第2流路50内を流れる水Wによって冷却できるモータ20の範囲を軸方向に広くできる。これにより、第2流路50内を流れる水Wによって、ステータコア41の全体およびステータコア41から軸方向両側に突出するコイルエンド42a,42bを冷却しやすくできる。以上により、モータ20の冷却効率をより向上できる。
【0116】
また、本実施形態によれば、第1ハウジング部材13と第2ハウジング部材14とは、回収流路93の径方向内側で、かつ、第2流路50と周方向に隣り合う位置において互いに固定されている。本実施形態では、雌ネジ穴13iに締め込まれたボルト10dによって、第1ハウジング部材13と第2ハウジング部材14とが当該位置において互いに固定されている。これにより、第1ハウジング部材13と第2ハウジング部材14とを、回収流路93と第2流路50との両方に近い位置で固定できる。したがって、第1ハウジング部材13と第2ハウジング部材14とのうち回収流路93をそれぞれ構成する部分同士が互いに離れることを抑制できる。また、第1ハウジング部材13と第2ハウジング部材14とのうち第2流路50をそれぞれ構成する部分同士が互いに離れることを抑制できる。これにより、回収流路93内からオイルOが漏れること、および第2流路50内から水Wが漏れることを抑制することができる。また、回収流路93内から漏れたオイルOが第2流路50内に浸入して水Wと混ざることを抑制できる。また、第2流路50内から漏れた水Wが回収流路93内に浸入してオイルOと混ざることを抑制できる。
【0117】
また、本実施形態によれば、隔壁部19は、モータハウジング11の内部と伝達機構ハウジング12の内部とを繋ぐ貫通孔19aを有する。そのため、モータハウジング11内に供給されたオイルOを、回収流路93に加えて、貫通孔19aからも伝達機構ハウジング12内に戻すことができる。これにより、モータハウジング11内から伝達機構ハウジング12内に戻されるオイルOの量を多くできる。
【0118】
例えば、本実施形態のようにハウジング10が、モータハウジング11を構成する2つの別部材と、伝達機構ハウジング12を構成する2つの別部材とによって構成されている場合、モータハウジング11と伝達機構ハウジング12とが分割されて設けられている。このような場合、従来では、モータハウジング11と伝達機構ハウジング12とのそれぞれにおいて別々にベアリングを潤滑させるための構造を設けていた。そのため、ハウジング10の構造が複雑化する、または潤滑油の供給が不要な比較的高価なベアリングを用いるなどにより、駆動装置100の製造コストが増加する問題があった。潤滑油の供給が不要な比較的高価なベアリングとは、例えば、半固体状のグリスが設けられたベアリングである。
【0119】
これに対して、本実施形態によれば、ハウジング10は、伝達機構ハウジング12の内部から第2対向壁部15aを軸方向に貫通して延びるオイル供給路95を有する。オイル供給路95は、モータハウジング11における第1対向壁部13aに保持されたベアリング72にオイルOを供給する供給口13hを有する。供給口13hは、中心軸J1よりも上側に位置する。そのため、供給口13hから吐出されるオイルOを重力によって落下させて、中心軸J1回りに回転可能なロータ30を支持するベアリングのうちモータハウジング11に設けられたベアリング72に供給できる。つまり、オイル供給路95によって、伝達機構ハウジング12内のオイルOの一部をモータハウジング11に設けられたベアリング72に供給することができる。このように伝達機構ハウジング12に設けられたベアリング潤滑構造を利用してモータハウジング11に設けられたベアリング72を潤滑させることができる。つまり、駆動装置100において、モータハウジング11と伝達機構ハウジング12とを分離可能に構成しつつ、伝達機構ハウジング12内のオイルOを用いて、モータハウジング11に設けられたベアリング72を潤滑可能にできる。そのため、ハウジング10の構造が複雑化することを抑制でき、ベアリング72として潤滑油の供給が不要なベアリングを用いる必要もない。したがって、駆動装置100の製造コストが増加することを抑制できる。
【0120】
また、本実施形態によれば、ベアリング保持部13cは、第1対向壁部13aの軸方向他方側の面に設けられている。オイル供給路95は、第1対向壁部13aを軸方向に貫通してモータハウジング11の内部まで延びている。供給口13hは、モータハウジング11の内部に開口している。そのため、ベアリング保持部13cに保持されるベアリング72がモータハウジング11の内部に位置する場合であっても、オイル供給路95によって、ベアリング72にオイルOを供給できる。
【0121】
また、本実施形態によれば、ベアリング保持部13cは、ベアリング保持部13cを径方向に貫通する貫通部13fを有する。供給口13hは、貫通部13fの内部に開口している。そのため、供給口13hから吐出されたオイルOが貫通部13fからベアリング保持部13cの内部に容易に供給されやすい。これにより、ベアリング72にオイルOをより供給しやすくできる。
【0122】
また、本実施形態によれば、オイル供給路95は、第1対向壁部13aを軸方向に貫通する第1孔部13gと、第2対向壁部15aを軸方向に貫通する第2孔部15gと、第1対向壁部13aと第2対向壁部15aとの軸方向の間に位置し、第1対向壁部13aと第2対向壁部15aとを繋ぐ第1樋部17と、を有する。第1樋部17は、第1対向壁部13aの軸方向一方側の面のうち第1孔部13gの下側に位置する部分と第2対向壁部15aの軸方向他方側の面のうち第2孔部15gの下側に位置する部分とに繋がっている。そのため、伝達機構ハウジング12内のオイルOを、第2孔部15g、第1樋部17、および第1孔部13gをこの順に介して、モータハウジング11内に供給することができる。これにより、伝達機構ハウジング12内のオイルOを、より好適にモータハウジング11内のベアリング72に供給することができる。
【0123】
また、本実施形態によれば、オイル供給路95は、伝達機構ハウジング12の内部に位置する第2樋部18を有する。第2樋部18は、第2対向壁部15aの軸方向一方側の面のうち第2孔部15gの下側に位置する部分に繋がっている。そのため、例えばリングギヤ62aによるかき上げによって伝達機構ハウジング12内に飛散したオイルOの一部を第2樋部18で受け止めることができる。また、第2樋部18で受け止めたオイルOの少なくとも一部を、第2孔部15g内に流すことができる。これにより、伝達機構ハウジング12内のオイルOを、第2孔部15g、第1樋部17、および第1孔部13gをこの順に介して、より好適にモータハウジング11内のベアリング72に供給できる。
【0124】
また、本実施形態によれば、第2対向壁部15aは、第1対向壁部13aと第2対向壁部15aとの軸方向の間に位置する空間Sと、伝達機構ハウジング12の内部とを繋ぐ貫通孔15hを有する。そのため、例えば第1樋部17内から漏れたオイルOを、貫通孔15hを介して、伝達機構ハウジング12内に戻すことができる。これにより、空間S内にオイルOが溜まることを抑制できる。
【0125】
また、本実施形態によれば、第1対向壁部13aは、第1対向壁部13aと第2対向壁部15aとの軸方向の間に位置する空間Sと、モータハウジング11の内部とを繋ぐ貫通孔13eを有する。そのため、貫通孔13eと空間Sと貫通孔15hとによって、モータハウジング11の内部と伝達機構ハウジング12の内部とを繋げることができる。これにより、上述した貫通孔19aが構成され、モータハウジング11内に供給されたオイルOの少なくとも一部を、伝達機構ハウジング12内に戻すことができる。
【0126】
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の技術的思想の範囲内において、他の構成および他の方法を採用することもできる。第1流路は、供給流路と回収流路とを有するならば、どのような構成であってもよい。上述した実施形態において供給流路としては、第1供給流路91と第2供給流路92とが設けられる構成としたが、これに限られない。供給流路としては、第1供給流路91と第2供給流路92とのうちのいずれか一方のみが設けられてもよい。
【0127】
モータハウジングの内部から伝達機構ハウジングの内部まで延びる回収流路は、少なくとも一部が第2流路の径方向外側に位置するならば、どのような構成であってもよい。モータハウジングが第1ハウジング部材と第2ハウジング部材とを有している場合、モータハウジングにおいて回収流路は第1ハウジング部材のみに設けられてもよい。溝部の形状および大きさと、接続部の形状および大きさと、回収流路本体部の形状および大きさとは、特に限定されない。溝部および接続部は、設けられなくてもよい。
【0128】
第2流路は、どのような形状であってもよい。第1周方向流路部は、第1ハウジング部材と第3ハウジング部材とに跨って設けられなくてもよい。第2周方向流路部は、第1ハウジング部材と第2ハウジング部材とに跨って設けられなくてもよい。第2流路は、例えば、周方向に延び軸方向に間隔を空けて並ぶ複数の流路部の軸方向端部同士が連結されて、軸方向に沿って矩形波状に延びていてもよい。第2流路は、螺旋状に延びていてもよい。
【0129】
第1流路の内部に流れる第1流体の種類と第2流路の内部に流れる第2流体の種類とは、特に限定されない。第1流体と第2流体とは、同じ種類の流体であってもよい。第1流体は、絶縁液であってもよいし、水であってもよい。第1流体が水である場合、ステータの表面には絶縁処理が施されてもよい。第2流体は、オイルであってもよい。
【0130】
伝達機構ハウジングの内部から前記第2対向壁部を軸方向に貫通して延びるオイル供給路は、中心軸よりも上側に位置しベアリングにオイルを供給する供給口を有するならば、どのような構成であってもよい。モータハウジングの第1対向壁部に設けられるベアリング保持部が第1対向壁部の軸方向一方側の面、つまり第1対向壁部のうち伝達機構ハウジング側を向く面に設けられている場合、オイル供給路は、第2対向壁部のみを貫通し、第1対向壁部を貫通しなくてもよい。この場合、例えば、オイル供給路の供給口は、第1対向壁部と第2対向壁部との間の空間に開口している。オイル供給路は、第1孔部、第2孔部、第1樋部、第2樋部の少なくとも1つを有しなくてもよい。オイル供給路は、例えば、パイプなどの管状の部材で構成されてもよい。オイル供給路は、設けられなくもよい。
【0131】
ハウジングを構成するハウジング部材の数は、特に限定されない。ハウジングは、2つのハウジング部材が互いに固定されて構成されていてもよいし、3つのハウジング部材が互いに固定されて構成されていてもよいし、5つ以上のハウジング部材が互いに固定されて構成されていてもよい。ハウジングを構成するハウジング部材は、モータハウジングの一部と伝達機構ハウジングの一部とを有するハウジング部材を含んでもよい。
【0132】
本発明が適用される駆動装置の用途は、特に限定されない。駆動装置は、例えば、車軸を回転させる用途以外の用途で車両に搭載されてもよいし、車両以外の機器に搭載されてもよい。駆動装置が用いられる際の姿勢は、特に限定されない。モータの中心軸は、鉛直方向と直交する水平方向に対して傾いていてもよいし、鉛直方向に延びてもよい。以上、本明細書において説明した構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0133】
10…ハウジング、11…モータハウジング、12…伝達機構ハウジング、13…第1ハウジング部材、14…第2ハウジング部材、15…第3ハウジング部材、16…第4ハウジング部材、19…隔壁部、19a…貫通孔、20…モータ、30…ロータ、50…第2流路、51,51c…軸方向流路部、52a,52c…第1周方向流路部、52b…第2周方向流路部、60…伝達機構、90…第1流路、91…第1供給流路(供給流路)、92…第2供給流路(供給流路)、92a…導入流路部、93…回収流路、93a…溝部、93b…接続部、93c…回収流路本体部、100…駆動装置、J1…中心軸、O…オイル(第1流体)、W…水(第2流体)
図1
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