(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】金属化フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20240709BHJP
B32B 15/04 20060101ALI20240709BHJP
H01G 4/32 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B32B15/08 Z
B32B15/04 Z
H01G4/32 511D
H01G4/32 511L
(21)【出願番号】P 2020505517
(86)(22)【出願日】2019-12-23
(86)【国際出願番号】 JP2019050281
(87)【国際公開番号】W WO2020137941
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2018240794
(32)【優先日】2018-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上林 浩行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 忠司
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-189382(JP,A)
【文献】特開2006-231544(JP,A)
【文献】特開平10-128908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
H01G 2/00 - 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子基材の少なくとも片面に、金属層及びケイ素化合物層がこの順に積層された金属化フィルムであって、
前記ケイ素化合物層は、FT-IR分析で得られる、波数1030cm
-1から1130cm
-1の範囲に存在する最大強度を有するピークの強度Aと、波数1240cm
-1から1280cm
-1の範囲に存在する最大強度を有するピークの強度Bの強度比(強度A/強度B)が、
2.0以上
10.0以下であることを特徴とする、金属化フィルム。
【請求項2】
前記ケイ素化合物層は、FT-IR分析で得られる、波数870cm
-1から940cm
-1の範囲に存在する最大強度を有するピークの強度Cと、前記強度Bの強度比(強度C/強度B)が、1.0以上であることを特徴とする、請求項1に記載の金属化フィルム。
【請求項3】
高分子基材の少なくとも片面に、金属層及びケイ素化合物層がこの順に積層された金属化フィルムであって、
前記ケイ素化合物層は、FT-IR分析で得られる、870cm
-1から940cm
-1の範囲に存在する最大強度を有するピークの強度Cと、1240cm
-1から1280cm
-1の範囲に存在する最大強度を有するピークの強度Bの強度比(強度C/強度B)が、
1.8以上
10.0以下であることを特徴とする、金属化フィルム。
【請求項4】
前記金属層は、Al、Zn、Sn、Ni、Cr、Fe、Cu、Mg、Ti、Si、及びこれら金属の合金からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の金属化フィルム。
【請求項5】
前記ケイ素化合物層の表面の水接触角が70°以上95°以下であることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の金属化フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極めて高い耐湿熱性に優れた金属層を有するコンデンサ用フィルムおよびそれを用いてなるコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のデジタル家電の急速な発達に伴い、機器内部の半導体基板に多数使用されるコンデンサの特性が重要視されるようになってきている。特に、薄型ディスプレイなどのデジタル機器においては、屋外や車載用途が増えつつあり、高温高湿の過酷な環境で耐圧性、保安性が求められている。
【0003】
従来、コンデンサの耐電圧性を向上させる方法としては、フィルム上面に形成する金属薄膜を薄くして高膜抵抗とすることで、絶縁破壊時に流れる瞬時短絡電流により絶縁欠陥付近の金属薄膜を蒸発飛散させ絶縁を回復させる、いわゆる自己回復(セルフヒーリング)を機能しやすくする方法がある(特許文献1)。
【0004】
ところで、従来技術のフィルム上面に金属薄膜を薄く形成する方法は、金属層の厚みが5nmから30nmと薄いため、高温高湿の環境下では外気からの酸素や水によって、金属層が酸化あるいは水酸化して電極として機能しなくなり、容量低下、tanδの上昇を引き起こす問題がある。この問題点を改善する方法として、金属層を外気からの酸素や水から保護するために、金属層表面にアクリル樹脂を積層する技術が知られている(特許文献2)。
【0005】
また、別の改善する方法として、金属表面にSi酸化物層を積層して水分から金属層を遮断する技術が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-142252号公報(特許請求の範囲)
【文献】特開平7-26193号公報(特許請求の範囲)
【文献】特開平10-83930号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2のように、アクリル樹脂を積層する方法は、例えば温度85℃、湿度85%RHといった従来よりも過酷な高温高湿の環境下では、アクリル樹脂自体の酸素や水分の遮断性が不足し、金属層全体が酸化あるいは水酸化し、大きく容量低下する問題があった。また、特許文献3のように、金属表面にSi酸化物層を積層する方法は、Si酸化物層が硬く壊れやすい層であるため、コンデンサ素子作製時のフィルム搬送や巻き取り、プレス加工によって、Si酸化物層にクラックや割れなどの欠点が発生し、欠点部から金属層が酸化あるいは水酸化し、容量低下する問題があった。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、温度85℃、湿度85%RHの過酷な環境に対して十分な耐湿性を発現し、フィルム搬送や後工程で加工不良を起こしにくく、耐湿性を維持することが可能な金属化フィルムを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用する。すなわち、以下である。
(1) 高分子基材の少なくとも片面に、金属層及びケイ素化合物層がこの順に積層された金属化フィルムであって、
前記ケイ素化合物層は、FT-IR分析で得られる、波数1030cm-1から1130cm-1の範囲に存在する最大強度を有するピークの強度Aと、波数1240cm-1から1280cm-1の範囲に存在する最大強度を有するピークの強度Bの強度比(強度A/強度B)が、1.0以上であることを特徴とする、金属化フィルム。
(2) 高分子基材の少なくとも片面に、金属層及びケイ素化合物層がこの順に積層された金属化フィルムであって、
前記ケイ素化合物層は、FT-IR分析で得られる、870cm-1から940cm-1の範囲に存在する最大強度を有するピークの強度Cと、1240cm-1から1280cm-1の範囲に存在する最大強度を有するピークの強度Bの強度比(強度C/強度B)が、1.0以上であることを特徴とする、金属化フィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、極めて高い耐湿性および耐酸化性に優れた金属化フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の金属化フィルムの一例を示した平面図、断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[金属化フィルム]
本発明の金属化フィルムは、高分子基材の少なくとも片面に、金属層及びケイ素化合物層がこの順に積層された金属化フィルムであって、前記ケイ素化合物層は、FT-IR分析で得られる、波数1030cm-1から1130cm-1の範囲に存在する最大強度を有するピークの強度Aと、波数1240cm-1から1280cm-1の範囲に存在する最大強度を有するピークの強度Bの強度比(強度A/強度B)が、1.0以上であることを特徴とする、金属化フィルムである。以下、この態様の金属化フィルムを、本発明1という。
【0013】
また別の態様の本発明の金属化フィルムは、高分子基材の少なくとも片面に、金属層及びケイ素化合物層がこの順に積層された金属化フィルムであって、前記ケイ素化合物層は、FT-IR分析で得られる、870cm-1から940cm-1の範囲に存在する最大強度を有するピークの強度Cと、1240cm-1から1280cm-1の範囲に存在する最大強度を有するピークの強度Bの強度比(強度C/強度B)が、1.0以上であることを特徴とする、金属化フィルムである。以下、この態様の金属化フィルムを、本発明2という。
【0014】
さらに本発明1と本発明2とを総称して、以下、本発明という。
【0015】
図1に本発明の金属化フィルムの一例の断面図と平面図を示す。本発明の金属化フィルムは、高分子基材1の片面に金属層2およびケイ素化合物層3がこの順に積層されている。
図1の態様の本発明の金属化フィルムにおける金属層2の形成面には、長手方向の端部に連続した非蒸着マージン4が形成されている。一方、この態様の本発明の金属化フィルムにおける、非蒸着マージン4に対向する長手方向の端部は、金属層2が形成されている。ここで、長手方向とは高分子基材1の巻き取り方向のことであり、幅方向とは長手方向に直交する方向のことをいう。また、本明細書においては、非蒸着マージン4が施された側の端部を非蒸着マージン側端部5、金属層がある側の端部を電極側端部6と称する。
【0016】
本発明の金属化フィルムは、金層層の上にケイ素化合物層を積層することによって、ケイ素化合物層が金属層表面への水や酸素の付着を抑制するため、高度な耐湿性を有するものとなる。
【0017】
本発明において、FT-IR分析とは、対象物に赤外線を照射し、透過また反射して得られる赤外吸収スペクトルから、分子の構造や官能基を把握することが可能な分析である。分析方法、手順の詳細は、実施例に示す通りである。
【0018】
本発明において、波数1030cm-1から1130cm-1の範囲に存在する最大強度を有するピークとは、ケイ素化合物層に含まれるシロキサン結合(Si-O-Si結合)に帰属する吸収ピークである。さらに波数1240cm-1から1280cm-1の範囲に存在する最大強度を有するピークとは、ケイ素化合物層に含まれるトリメチルシリル基(SiCH3)由来のSi-C結合に帰属する吸収ピークである。すなわち、これら2つのピーク強度比の変化からケイ素化合物層の存在および結合状態を把握することができる。
【0019】
本発明1のケイ素化合物層は、FT-IR分析で得られる波数1030cm-1から1130cm-1の範囲に存在する最大強度を有するピークの強度Aと、波数1240cm-
1から1280cm-1の範囲に存在する最大強度を有するピークの強度Bの強度比(強度A/強度B)が、1.0以上である。ケイ素化合物層の強度比(強度A/強度B)が1.0以上であることにより、ケイ素化合物層3にはSi-C結合よりも結合エネルギーが高いSi-O-Si結合の含有比率が大きくなるため、金属層表面への水や酸素の付着を抑制でき、耐湿性を向上することができる。強度A/強度Bが1.0未満である場合は、ケイ素化合物層全体の結合が弱くなるため、温度85℃、湿度85%RHの過酷な環境下では層が破壊され、高度な耐湿性は得られない。また、波数1240cm-1から1280cm-1の範囲にピークが存在しない場合は、有機成分であるSiCH3を含有しないケイ素化合物層となるため、柔軟性が損なわれ、コンデンサ素子の作製中にクラックや割れなどの欠点が発生しやすく、耐湿性を悪化させる原因となる。なお、ケイ素化合物層に含まれるSiCH3由来のSi-C結合を完全に除去することは難しく、微量残留するため、強度A/強度Bの上限は10.0以下となる。従って、強度A/強度Bは1.0以上であり、2.0以上が好ましく、また上限については特に限定はされないが、10.0以下が好ましい。
【0020】
ここで、ケイ素化合物層のFT-IR分析で測定する位置に非蒸着マージンオイルを形成する際のフッ素オイルが付着している状態で、前述の強度Aや強度B、後述する強度Cを測定する場合は、ケイ素化合物層と非蒸着マージン部のそれぞれについてFT-IR分析で測定し、両者の差スペクトルを使用することで、前述の強度Aや強度B、後述する強度Cを求めることができる。なお、ケイ素化合物層へのフッ素オイルの付着は、X線光電子分光法(XPS)分析で判断することができる。ケイ素化合物層の表面からXPS分析を行い、得られた元素組成比において、フッ素原子が1.0%以上の場合にフッ素オイルが付着していると判断する。
【0021】
本発明の金属化フィルムは、高分子基材の少なくとも片面に、金属層及びケイ素化合物層がこの順に積層された金属化フィルムである。そのため本発明の金属化フィルムは、高分子基材の片面のみまたは両面に金属層を設けることができ、ケイ素化合物層は、金属層を設けた高分子基材の片側のみまたは両側に設けても構わない。具体的な構成として、以下の(i)~(v)のいずれでも構わない。
(i)高分子基材/金属層/ケイ素化合物層
(ii)ケイ素化合物層/金属層/高分子基材/金属層
(iii)ケイ素化合物層/金属層/高分子基材/ケイ素化合物層
(iv)ケイ素化合物層/金属層/高分子基材/金属層/ケイ素化合物層
これらの中でも生産性の観点から(i)の構成が好ましい。
【0022】
[高分子基材]
本発明に用いられる高分子基材は、金属層が蒸着などにより形成できるものであれば特に限定されないが、ポリエチレン、無延伸あるいは延伸ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、シクロオレフィン系ポリマー、ノルボルネン系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、液晶ポリマーなどの単体、またはこれら2種以上の混合物並びにポリマーアロイからなる有機高分子フィルムが好ましく、コンデンサを形成した場合の耐電圧特性、誘電正接特性、絶縁抵抗特性に優れる点から、無延伸あるいは延伸のポリプロピレン系フィルムが特に好ましく用いられる。ポリプロピレン系フィルムは、ポリプロピレンのホモポリマーからなるフィルム以外に、プロピレンと他のαーオレフィン(例えばエチレン、ブテンなど)の共重合体からなるフィルムであっても、またポリプロピレンと他のα-オレフイン重合体(例えばポリエチレン、ポリブテンなど)とのブレンド品からなるフィルムであっても構わない。
【0023】
高分子基材には本発明の目的とする特性に支障を及ぼさない範囲で公知の添加剤として、滑剤や可塑剤などが含まれてもよい。また、高分子基材の表面はコロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理などの表面処理、或いは、接着剤のコーティング層、樹脂コーティング層、溶融押し出しによる樹脂層が積層されていても構わない。なお、高分子基材の表面に形成される接着剤のコーティング層、樹脂コーティング層、溶融押し出しによる樹脂層は、高分子基材に含まれる(高分子基材の一部である)。
【0024】
本発明で使用する高分子基材の厚みは、特に制限はなく、コンデンサを使用する用途に応じて適宜決定できるが、コンデンサの小型化、高容量化の観点から、0.1μm以上10μm以下が良く、好ましくは1μm以上7μm以下である。
【0025】
[金属層]
本発明の金属化フィルムに用いる事のできる金属層の材質としては、特に限定されないが、Al、Zn、Sn、Ni、Cr、Fe、Cu、Mg、Ti、Si、及びこれら金属の合金からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むものを用いることが好ましい。これらの中でも、均一で安定した導電性金属の蒸着膜を得る観点から、Zn単体、またはZnとAlの積層品、またはZnとAlの合金、Al単体を用いることが好ましい。
【0026】
金属層の厚みは電気特性、機械特性の観点から、1nm以上、50nm以下が好ましい。導電性が十分に確保できる観点から金属層の厚みは1nm以上、50nm以下が好ましく、さらには絶縁破壊時の自己回復性5nm以上30nm以下がより好ましい。金属層の厚みは、通常は透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察により測定することが可能である。
【0027】
金属層の形成方法は、真空蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティング法等があるが、形成速度が速く、経済的に有利である観点から真空蒸着法が好ましい。真空蒸着法は、真空中で冷却ロールに密着した高分子基材に蒸着源から金属を蒸着させ、高分子基材表面に金属層を形成する方法である。この蒸着源には、抵抗加熱式のボート式や輻射あるいは高周波加熱によるルツボ形式や、電子ビーム加熱による方式などがあるが、特に限定されず、適宜選択すればよい。
【0028】
[ケイ素化合物層]
次に、ケイ素化合物層について詳細を説明する。本発明におけるケイ素化合物層は、ケイ素化合物を含む層であり、ケイ素化合物を含みさえすれば、その層が他に何を含んでいてもかまわない。ケイ素化合物層中のケイ素化合物としては、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物、ケイ素炭化物、ケイ素酸窒化物または、それらの混合物などをあげることができる。特に、ケイ素化合物層が、酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び酸窒化ケイ素からなる群より選択される少なくとも1つのケイ素化合物を含むことが好ましい。なお、ケイ素酸化物層に含まれる成分はケイ素(Si)に限定されず、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、インジウム(In)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、パラジウム(Pd)等から形成された金属や金属酸化物を含んでも構わない。
【0029】
本発明において、金属層の上にケイ素化合物層が形成されているかどうかは、以下の蛍光X線分析(XRF分析)によるケイ素(Si)原子の検出量から確認することができる。
【0030】
本発明のケイ素化合物層は、金属層の耐湿性を向上させる観点から、XRF分析で測定されるケイ素(Si)原子の検出量が0.005μg/cm2~0.2μg/cm2であることが好ましく、さらにはケイ素(Si)原子の検出量が0.01μg/cm2~0.1μg/cm2であることが好ましい。
【0031】
また、本発明1のケイ素化合物層は、FT-IR分析で得られる、波数870cm-1から940cm-1の範囲に存在する最大強度を有するピークの強度Cと、強度Bの強度比(強度C/強度B)が、1.0以上であることが好ましい。さらに本発明2のケイ素化合物層は、FT-IR分析で得られる、波数870cm-1から940cm-1の範囲に存在する最大強度を有するピークの強度Cと、波数1240cm-1から1280cm-1の範囲に存在する最大強度を有するピークの強度Bの強度比(強度C/強度B)が、1.0以上である。ここで、波数870cm-1から940cm-1の範囲に存在する最大強度を有するピークとは、金属層にアルミニウムが含有する場合において、金属層の表面に形成されるAl-O結合に帰属する吸収ピークである。
【0032】
本発明品のケイ素化合物層は、強度Cと、強度Bの強度比(強度C/強度B)が、1.0以上であることにより、ケイ素化合物層に含まれるSi-C結合よりも金属層の表面に形成されるAl-O結合の存在比率が大きくなる。詳細は定かでは無いが、ケイ素化合物層を形成時のプラズマや熱によって、上述したSi-C結合が減少し、Si-O-Si結合が増加する一方で、Si-O-Si結合の一部が切断され、金属層の表面に存在するAl原子とO原子が結合し、Al-O結合やAl-O-Si結合を形成するため、金属層とケイ素化合物層との界面により強固な結合が形成されていると考えている。すなわち、金属層の表面にはAl-O結合により不動態となる酸化アルミニウムの形成やAl-O-Si結合によるシリケートが形成され、金属層の表面が化学的に安定化するため、温度85℃、湿度85%RHの過酷な環境に対しても酸化や水酸化の反応が起こりにくく、耐湿性を維持することが可能な金属化フィルムになると推測している。なお、ケイ素化合物層に含まれるSiCH3由来のSi-C結合を完全に除去することは難しく、微量残留するため、強度C/強度Bは10.0以下となる。従って、強度C/強度Bは1.0以上であり、また上限については特に限定されないが、10.0以下が好ましい。
【0033】
本発明の金属化フィルムの製造方法について、以下に詳細を説明する。
【0034】
本発明の金属化フィルムの製造方法は特に限定されないが、例えば、高分子基材上に長手方向に連続した非蒸着マージンを形成する工程と、金属層を設ける工程と、シリコーン組成物を加熱、蒸発させ、金属層上に塗布後、プラズマ放電処理をして強固なケイ素化合物層を形成する工程を経て作製される。これらの工程を一回のフィルム搬送で全て実施する方法として真空蒸着機を使用することが好ましい。
【0035】
高分子基材上に長手方向に連続した非蒸着マージンを形成する工程は、シリコーン系オイル、フッ素系オイル、流動パラフィンなどのオイルを用いる方法がある。この他の方法として、テープ、レーザーを用いる方法があるが、いずれの方法でも所定の幅で非蒸着部分が長手方向連続的に形成されれば良く、特に方法に限定されない。これらの中でも高速かつ簡便に非蒸着マージンを形成する方法として、フッ素オイルを用いる方法が好ましい。オイル蒸発機の中にフッ素オイルを入れて、加熱、蒸発させ、オイル蒸発器上部に設けられたスリットを通して、フィルム基材に長手方向の非蒸着マージンを形成することができる。
【0036】
金属層を設ける工程は、例えば、亜鉛とアルミニウムの合金膜を形成する場合、高分子基材を真空蒸着機内の巻出軸から巻出して高分子基材を冷却ドラム上で冷却しながら、亜鉛とアルミニウムがそれぞれ入った蒸着源から誘導加熱法もしくは抵抗加熱法、電子ビーム法などにより加熱・溶融させ、両金属を同時に蒸着することで形成できる。それぞれの蒸着源の温度を調整することで形成される金属層の組成を制御することができる。また、厚みはフィルム搬送速度により所望の厚みになるよう調整できる。
【0037】
ケイ素化合物層を形成する工程は、シリコーン組成物を含む塗料を乾燥後の厚みが所望の厚みになるように溶媒で固形分濃度を調整しリバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、スピンコート法などにより塗布し、加熱、蒸発させる方法や真空中において点状もしくは細いスリット状のノズルから加熱したシリコーン組成物を噴霧し、プラズマ放電処理をして形成する方法などがある。真空蒸着機で金属層を形成する場合、同じ蒸着機内でケイ素化合物層を形成でき、生産性や均一性に優れる観点から、後者方法である点状もしくは細いスリット状のノズルから加熱したシリコーン組成物を噴霧し、プラズマ放電処理をして強固なケイ素化合物層を形成する方法が好ましい。
【0038】
本発明のシリコーン組成物とは、シリコーンを70重量%以上、好ましくは85重量%以上含む樹脂組成物のことを言う。本発明に用いられるシリコーン組成物は、金属層上に噴霧されたシリコーン組成物をプラズマ放電処理でSi-C結合を切断し、Si-O-Si結合の形成を促進させる観点から、主鎖にシロキサン結合(Si-O-Si)、側鎖にメチル基を有するジメチルポリシロキサンまたは側鎖にフェニル基を有するメチルフェニルシリコーンが好ましく、耐湿性の観点からフェニルメチルジメチルポリシロキサンがより好ましい。また、プラズマ放電処理でSi-O-Si結合の形成が促進するようにメチル基の一部を有機官能基に置き換えた有機変性シリコーンが好ましい。有機変性シリコーンには、側鎖の一部を有機官能基にした側鎖型や主鎖の両末端を有機官能基にした両末端型、側鎖と末端を有機官能基にした両末端側鎖型があるが、プラズマ放電処理による均一性の観点から両末端型が好ましい。シリコーン組成物としては、例えば、アミノ変性シリコーンやアルキル変性シリコーン、シラノール変性シリコーン、フェニル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーンなどが好ましく、中でもシラノール変性シリコーンは、側鎖のOH基がプラズマ放電処理で脱水縮合し、Si-O-Si結合の形成を促進させるためより好ましい。
【0039】
金属層表面に噴霧されたシリコーン組成物をプラズマ放電処理する際に用いられるガス種は特に限定されないが、例えば、O2、Ar、CO、CO2、H2などが挙げられる。特に好ましくはO2やAr、あるいはこれらの1種以上を含む混合ガスである。プラズマ放電処理の電力密度は、10W・min/m2以上にすることが好ましく、Si-O-Si結合の形成を促進させる観点から、35W・min/m2以上がより好ましい。プラズマ放電電極には、異常放電が無く、安定放電が可能なターゲット材料として、CuまたはAl、あるいはステンレスを使用することが好ましい。
【0040】
また、金属層表面に噴霧されたシリコーン組成物のプラズマ放電処理において、上述以外に効率良くSi-C結合を切断し、Si-O-Si結合の形成を促進させる方法としては、高分子基材の両面から同時にプラズマ放電処理する方法や高分子基材の金属層を形成しない面側から40℃以上のヒーターで加熱処理しながらシリコーン組成物をプラズマ放電処理する方法などがある。また、金属層表面にAl-O結合やAl-O-Si結合を形成する方法としては、シリコーン組成物を噴霧する前の金属層表面をプラズマ放電処理する方法がある。この場合、プラズマ放電電極に使用するターゲット材料として、CuまたはAl、あるいはステンレスを使用することが好ましく、Al-O結合を促進させる観点からAlがより好ましい。
【0041】
本発明の金属化フィルム中のケイ素化合物層は、その表面の水接触角が70°以上95°以下であることが好ましい。シリコーン組成物がプラズマ放電で十分に処理され、Si-O-Si結合を促進することにより、ケイ素化合物層の表面の水接触角を70°以上、95°以下とすることが可能である。ケイ素化合物層の表面の水接触角が95°より大きい場合、プラズマ放電処理が不十分であるため、水や酸素がケイ素化合物層を透過しやすく、金属層が酸化や水酸化し、十分な耐湿性は得られない。ケイ素化合物層の表面の水接触角が70°未満になると、ケイ素化合物層の表面に水や酸素が吸着しやすくなり、結果的に耐湿性は悪化する。すなわち、ケイ素化合物層の表面の水接触角は70°以上、95°以下が好ましく、処理の均一性が良い範囲として、水接触角は85°以上、95°以下がより好ましい。
【0042】
このようにして得られた金属化フィルムはコンデンサ用フィルムとして好ましく用いることが出来、公知の方法で積層もしくは巻回してコンデンサを得ることができる。
【0043】
例えば、巻回型フィルムコンデンサの場合を例示する。幅方向に金属層と非蒸着マージンを有する金属化フィルムのロールにおいて、各金属層の中央部と各非蒸着マージンの中央部をスリットし、左側もしくは右側に非蒸着マージンを有する巻取リールを作製する。次に、左側に非蒸着マージンを有するリールと、右側に非蒸着マージンを有するリールを使用し、金属層端部を非蒸着マージンより外側にずらして重ね合わせ、巻回する。こうして得られた巻回体をプレスし、両端面にメタリコンを溶射して外部電極とし、メタリコンにリード線を溶接して巻回型コンデンサ素子を得ることができる。さらに外装ケース入りのコンデンサ素子の場合は、コンデンサ素子をエポキシ樹脂などの耐熱性、難燃性を有する樹脂製外装ケースに入れ、2液性注型エポキシ樹脂を充填、加熱、硬化して作製することができる。
【0044】
本発明の金属化フィルムを用いて構成されるコンデンサは、外装コンデンサ、無外装コンデンサ、あるいは無含浸(乾式)コンデンサ、として使用され、例えば、一般家電や自動車や電車の電装用及びエンジン、モーター制御用コンデンサなどに用いられ、過酷環境に使用されるコンデンサにも適用される。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、以下において、実施例1~4、7、8は、参考例1~4、7、8と読み替えるものとする。
【0046】
[評価方法]
次に、本発明に用いる測定法及び評価法について説明する。
【0047】
(1)膜抵抗の測定方法
ヘビーエッジ部(非蒸着マージンに対向する長手方向の端部側の金属層が厚い部分のことを、ヘビーエッジ部という)の膜抵抗を測定する場合は、非蒸着マージンに対向する長手方向の金属層端部から幅方向に3mm、長手方向に250mmを切り出し、測定サンプルとした。ヘビーエッジ部以外の膜抵抗を測定する場合は、長手方向の非蒸着マージンと金属膜の界面から幅方向に5mm、長手方向に250mmを切り出し、測定サンプルとした。
【0048】
4端子法により、100mmの電極間の金属膜抵抗を測定し、測定値に(測定幅/電極間距離)を掛けて、幅10mm、電極間距離10mm当たりの膜抵抗を算出した。単位はΩ/□と表示する。
【0049】
(2)金属層のZn量、Al量およびケイ素化合物層のSi量
理学電気工業(株)製の自動蛍光X線分析装置(RIX3000)を用いて試料板の上にフィルムをのせ、10mmφの測定面積でZn、Al、Si元素のそれぞれの含有量を測定した。
【0050】
(3)水接触角測定
温度23℃、相対湿度65%の条件下で、接触角計CA-D型(協和界面科学(株)製)にて、金属層またはケイ素化合物層上での水の接触角を測定した。測定には、5個の平均値を用いた。
【0051】
(4)FT-IR測定
ケイ素化合物層のFT-IR測定は、ATR(Attenuated Total Refrection)法を用いた。
【0052】
まずサンプルが無い状態で圧力0.1MPa以下まで測定セル内をポンプで排気し、以下の測定条件でベースライン測定を行った。次に、各水準サンプルのケイ素化合物層をATR結晶に圧着し、圧力0.1MPa以下まで測定セル内をポンプで排気後、以下の測定条件で吸収スペクトルを測定した。各水準サンプルについて、n=2回ずつ測定を実施した。
【0053】
得られた吸収スペクトルから、解析ソフトを使用して、波数1030cm-1から1130cm-1の範囲に存在する最大強度を有するピークの強度Aと、波数1240cm-1から1280cm-1の範囲に存在する最大強度を有するピークの強度B、波数870cm-1から940cm-1の範囲に存在する最大強度を有するピークの強度Cをそれぞれ得た。各水準サンプルの強度A/強度Bおよび強度C/強度Bの強度比の平均値を表1に示す。
【0054】
測定条件
・装置 :FT/IR-6100(日本分光株式会社製)
・光源 :高輝度セラミック
・検知器 :TGS
・パージ :窒素ガス
・分解能 :4cm-1
・積算回数:32回
・測定方法:減衰全反射(Attenuated Total Refrection,ATR)法
・測定波長:4,000cm-1~600cm-1
・付属装置:ATR PRO450-S
・ATR結晶:Geプリズム
・入射角度 :45度
・解析ソフト:Spectra Manager Version2(日本分光(株)製)。
【0055】
(5)耐湿性評価
各水準の蒸着フィルムから作製されたコンデンサ素子各10個を、温度85℃、相対湿度85%の雰囲気下で、電圧310VACとなるように交流電圧を印加し、1000時間経過後の静電容量変化率ΔC/C×100(%)を測定した。
【0056】
ここで、C(μF)は耐湿性試験前の静電容量、ΔC(μF)は耐湿性試験後の静電容量変化量(=耐湿性試験後の静電容量(μF)-耐湿性試験前の静電容量(μF))であり、静電容量変化率ΔC/C×100は増加方向を+、減少方向を-で表した。10個の素子の測定値の平均を算出し、静電容量変化率が-10~+10%のものを良好と判断した。
【0057】
(6)静電容量測定方法
(5)耐湿性評価におけるコンデンサ素子の静電容量は、安藤電気株式会社製TYPE
AG-4311 LCRMETERを用いて、1VAC×1kHzを荷電して測定した。
【0058】
(実施例1)
高分子基材として幅640mm、厚み6.0μmの2軸延伸ポリプロピレンフィルム(東レ(株)製:トレファン(登録商標)2172)を用いた。まず真空蒸着機上室内を減圧し、予めオイル蒸発器の中に供給しておいたフッ素系オイルを90℃以上に加熱し、オイル蒸発器上部に設けられたスリットを通して、高分子基材の長手方向に幅3.0mmの非蒸着マージンを形成した。
【0059】
次いで、減圧された真空蒸着機下室に位置する冷却ロール下部で、アルミニウム、亜鉛の順にスリットを通して加熱蒸着し、膜抵抗がヘビーエッジ部で2~3Ω/□、アクティブ部で8~10Ω/□となるようにスリットを通して蒸着し、アルミニウムと亜鉛の混合金属層を形成した。なお、アルミニウムと亜鉛の含有比率は、重量比3:97になるように各金属の蒸着源の温度を調整した。
【0060】
次いで、同一蒸着機内でアルミニウムと亜鉛の混合金属層上に、フェニルメチルジメチルポリシロキサン( 東レダウコーニング株式会社製SH702)を加熱蒸着してケイ素化合物層を形成し、続けて高分子基材両面に、酸素ガスを微量供給しながら250kHz、5.0kWのパルスDC電源を用いて、片面の処理電力密度E=25.5W・min/m2でプラズマ放電処理を施し、これを巻取軸で巻き取りアルミニウム、亜鉛の合金の金属化フィルムを得た。なお、ケイ素化合物層は、含有するSi量が0.035~0.045μg/cm2の範囲になるように、シロキサンの加熱温度を調整した。得られた金属化フィルムについて、上述した(1)~(4)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0061】
次いで、得られた金属化フィルムをフィルム幅14mm、非蒸着マージン幅1.5mmになるように裁断し、リールを作製した。得られたリール2つを互いに非蒸着マージンが反対面になるよう重ね、ずらし幅を1.0mmとして巻回し、素子を作製した。ここで、作製後のフィルムコンデンサの静電容量は500PFになるように巻回長さを調整した。次に、得られた素子を圧力25kg/cm2、温度105℃、プレス時間5分の条件でプレスして素子を扁平型にし、メタリコン処理、電極端子のはんだ付けを行い、フィルムコンデンサを作製した。得られたフィルムコンデンサ素子をエポキシ樹脂製外装ケースに入れ、2液性注型エポキシ樹脂を充填して温度100℃で2時間加熱、硬化して、外装ケース入りのフィルムコンデンサ素子を作製した。得られた外装ケース入りのフィルムコンデンサ素子について、(5)、(6)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0062】
(実施例2)
実施例1のケイ素化合物層の形成において、高分子基材両面のプラズマ放電処理を片面の処理電力密度E=45.5W・min/m2とする以外は、実施例1と同様にして金属化フィルムを得た。得られた金属化フィルムについて、上述した(1)~(4)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0063】
次いで、得られた金属化フィルムを使用し実施例1と同様にして外装ケース入りのフィルムコンデンサ素子を作製した。得られた外装ケース入りのフィルムコンデンサ素子について、(5)、(6)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
(実施例3)
実施例1のケイ素化合物層の形成において、フェニルメチルジメチルポリシロキサンの替わりに、ジメチルポリシロキサン(東レダウコーニング株式会社製SH200、10cs)を用いる以外は、実施例1と同様にして金属化フィルムを得た。得られた金属化フィルムについて、上述した(1)~(4)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0065】
次いで、得られた金属化フィルムを使用し実施例1と同様にして外装ケース入りのフィルムコンデンサ素子を作製した。得られた外装ケース入りのフィルムコンデンサ素子について、(5)、(6)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
(実施例4)
実施例1のケイ素化合物層の形成において、フェニルメチルジメチルポリシロキサンの替わりに、ジメチルポリシロキサン(東レダウコーニング株式会社製SH200、10cs)を用い、さらに高分子基材両面のプラズマ放電処理を片面の処理電力密度E=45.5W・min/m2とする以外は、実施例1と同様にして金属化フィルムを得た。得られた金属化フィルムについて、上述した(1)~(4)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
次いで、得られた金属化フィルムを使用し実施例1と同様にして外装ケース入りのフィルムコンデンサ素子を作製した。得られた外装ケース入りのフィルムコンデンサ素子について、(5)、(6)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0068】
(実施例5)
実施例1のケイ素化合物層の形成において、フェニルメチルジメチルポリシロキサンの替わりに、主鎖の両末端をOH基にした両末端型のシラノール変性シリコーン(信越化学工業株式会社製X-21-5841)を用いる以外は、実施例1と同様にして金属化フィルムを得た。得られた金属化フィルムについて、上述した(1)~(4)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0069】
次いで、得られた金属化フィルムを使用し実施例1と同様にして外装ケース入りのフィルムコンデンサ素子を作製した。得られた外装ケース入りのフィルムコンデンサ素子について、(5)、(6)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0070】
(実施例6)
実施例1のケイ素化合物層の形成において、フェニルメチルジメチルポリシロキサンの替わりに、主鎖の両末端をOH基にした両末端型のシラノール変性シリコーン(信越化学工業株式会社製X-21-5841)を用い、さらに高分子基材両面の片面のプラズマ放電処理を処理電力密度E=45.5W・min/m2とする以外は、実施例1と同様にして金属化フィルムを得た。得られた金属化フィルムについて、上述した(1)~(4)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0071】
次いで、得られた金属化フィルムを使用し実施例1と同様にして外装ケース入りのフィルムコンデンサ素子を作製した。得られた外装ケース入りのフィルムコンデンサ素子について、(5)、(6)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0072】
(実施例7)
実施例1のケイ素化合物層の形成において、フェニルメチルジメチルポリシロキサンの替わりに、アルキル変性シリコーン(東レダウコーニング株式会社製BY16-846)を用いる以外は、実施例1と同様にして金属化フィルムを得た。得られた金属化フィルムについて、上述した(1)~(4)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0073】
次いで、得られた金属化フィルムを使用し実施例1と同様にして外装ケース入りのフィルムコンデンサ素子を作製した。得られた外装ケース入りのフィルムコンデンサ素子について、(5)、(6)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
(実施例8)
実施例1のケイ素化合物層の形成において、フェニルメチルジメチルポリシロキサンの替わりに、アルキル変性シリコーン(東レダウコーニング株式会社製BY16-846)を用い、さらに高分子基材両面のプラズマ放電処理を片面の処理電力密度E=45.5W・min/m2とする以外は、実施例1と同様にして金属化フィルムを得た。得られた金属化フィルムについて、上述した(1)~(4)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0075】
次いで、得られた金属化フィルムを使用し実施例1と同様にして外装ケース入りのフィルムコンデンサ素子を作製した。得られた外装ケース入りのフィルムコンデンサ素子について、(5)、(6)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0076】
(比較例1)
実施例1のケイ素化合物層の形成しない以外は、実施例1と同様にして金属化フィルムを得た。得られた金属化フィルムについて、上述した(1)~(4)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0077】
次いで、得られた金属化フィルムを使用し実施例1と同様にして外装ケース入りのフィルムコンデンサ素子を作製した。得られた外装ケース入りのフィルムコンデンサ素子について、(5)、(6)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0078】
(比較例2)
実施例1のケイ素化合物層の形成において、高分子基材両面のプラズマ放電処理を施さない以外は、実施例1と同様にして金属化フィルムを得た。得られた金属化フィルムについて、上述した(1)~(4)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0079】
次いで、得られた金属化フィルムを使用し実施例1と同様にして外装ケース入りのフィルムコンデンサ素子を作製した。得られた外装ケース入りのフィルムコンデンサ素子について、(5)、(6)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0080】
(比較例3)
実施例3のケイ素化合物層の形成において、高分子基材両面のプラズマ放電処理を施さない以外は、実施例3と同様にして金属化フィルムを得た。得られた金属化フィルムについて、上述した(1)~(4)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0081】
次いで、得られた金属化フィルムを使用し実施例1と同様にして外装ケース入りのフィルムコンデンサ素子を作製した。得られた外装ケース入りのフィルムコンデンサ素子について、(5)、(6)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0082】
(比較例4)
実施例1のケイ素化合物層の形成において、高分子基材のフェニルメチルジメチルポリシロキサン表面を処理電力密度E=6.5W・min/m2でプラズマ放電処理を施し、フェニルメチルジメチルポリシロキサンを形成しない側の高分子基材表面にプラズマ放電処理を施さない以外は、実施例1と同様にして金属化フィルムを得た。得られた金属化フィルムについて、上述した(1)~(4)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0083】
次いで、得られた金属化フィルムを使用し実施例1と同様にして外装ケース入りのフィルムコンデンサ素子を作製した。得られた外装ケース入りのフィルムコンデンサ素子について、(5)、(6)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0084】
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の金属化フィルムは、高温、高湿環境に対する耐湿性に優れているので、例えば、過酷な環境で使用される自動車や電車の電装用及びエンジン、モーターの制御用やインバータ平滑コンデンサ、照明用などに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0086】
1 高分子基材
2 金属層
3 ケイ素化合物層
4 非蒸着マージン
5 非蒸着マージン側端部
6 電極側端部