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特許7517149感光性樹脂組成物、感光性樹脂シート、硬化膜、硬化膜の製造方法、有機EL表示装置、および電子部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、感光性樹脂シート、硬化膜、硬化膜の製造方法、有機EL表示装置、および電子部品
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/023 20060101AFI20240709BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240709BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20240709BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20240709BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G03F7/023
H05B33/14 A
H05B33/22 Z
C08G73/10
G09F9/30 348A
G09F9/30 365
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020513935
(86)(22)【出願日】2020-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2020009104
(87)【国際公開番号】W WO2020184326
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2019046742
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小森 悠佑
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 岳
(72)【発明者】
【氏名】三好 一登
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/170600(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/023
H10K 50/10
H05B 33/22
H10K 59/10
C08G 73/10
G09F 9/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、駆動回路、平坦化層、第1電極、絶縁層、発光層、および第2電極を有する有機EL表示装置であって、該平坦化層および/または絶縁層が、
ポリイミド前駆体(a)、電子求引性基を有するフェノール化合物(b)、および感光性化合物(c)を含有し、該ポリイミド前駆体(a)がイオン化ポテンシャル7.1eV未満のジアミンに由来する残基を有し、前記ポリイミド前駆体(a)を構成するジアミン残基100モル%中の、イオン化ポテンシャルが7.1eV未満のジアミンに由来する残基の含有量が5~50モル%である感光性樹脂組成物を硬化した硬化膜である有機EL表示装置
【請求項2】
ポリイミド前駆体(a)、電子求引性基を有するフェノール化合物(b)、および感光性化合物(c)を含有し、該ポリイミド前駆体(a)がイオン化ポテンシャル7.1eV未満のジアミンに由来する残基を有し、前記電子求引性基を有するフェノール化合物(b)が、一般式(1)で表される化合物(b2)を含む感光性樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)中、Aは一般式(2)で示される各構造からなる群から選ばれる2価の基を表し、aおよびbはそれぞれ独立に0~3の整数を表し、かつa+bは2~4の整数である。一般式(2)中、RおよびRはそれぞれ独立にハロゲン原子またはハロゲン原子で置換されている炭素数1~20の1価の有機基を表す。)
【請求項3】
前記イオン化ポテンシャルが7.1eV未満のジアミンに由来する残基がエーテル結合を有する請求項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記イオン化ポテンシャルが7.1eV未満のジアミンが、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、および1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼンからなる群から選ばれる1種以上のジアミンを含む請求項2または3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記電子求引性基を有するフェノール化合物(b)の含有量が、ポリイミド前駆体(a)100質量部に対して1~50質量部である請求項~4のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記電子求引性基を有するフェノール化合物(b)が、pKaが11.0以下のフェノール性水酸基を有する化合物(b1)を含む請求項~5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
さらに着色剤(d)を含有する請求項~6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項のいずれかに記載の感光性樹脂組成物から形成された感光性樹脂シート。
【請求項9】
請求項のいずれかに記載の感光性樹脂組成物または請求項8に記載の感光性樹脂シートを硬化した硬化膜。
【請求項10】
基板上に、請求項のいずれかに記載の感光性樹脂組成物または請求項に記載の感光性樹脂シートからなる感光性樹脂膜を形成する工程、該感光性樹脂膜を露光する工程、露光した感光性樹脂膜を現像する工程および現像した感光性樹脂膜を200℃以下で加熱処理する工程を含む硬化膜の製造方法。
【請求項11】
基板上に、請求項のいずれかに記載の感光性樹脂組成物または請求項に記載の感光性樹脂シートからなる感光性樹脂膜を形成する工程、該感光性樹脂膜を露光する工程、露光した感光性樹脂膜を現像する工程および現像した感光性樹脂膜を酸素濃度1%以上の雰囲気で加熱処理する工程を含む硬化膜の製造方法。
【請求項12】
基板上に、駆動回路、平坦化層、第1電極、絶縁層、発光層、および第2電極を有する有機EL表示装置であって、該平坦化層および/または絶縁層が請求項に記載の硬化膜を有する有機EL表示装置。
【請求項13】
前記平坦化層が2~5層からなる請求項12に記載の有機EL表示装置。
【請求項14】
基板上に、電極および金属配線を有し、さらに層間絶縁層および/または表面保護層を有する電子部品であって、該層間絶縁層および/または表面保護層の少なくとも一部に請求項に記載の硬化膜を有する電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示装置の平坦化層や絶縁層ならびに電子部品の層間絶縁層や表面保護層などに好適に用いることができる感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、タブレットPC、テレビなど、薄型ディスプレイを有する表示装置において、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」)表示装置を用いた製品が多く開発されている。一般に、有機EL表示装置は、基板上に、駆動回路、平坦化層、第一電極、絶縁層、発光層および第二電極を有し、対向する第一電極と第二電極との間に電圧を印加することで発光することができる。これらのうち、平坦化層用材料および絶縁層用材料としては、紫外線照射によるパターニング可能な感光性樹脂組成物が一般に用いられている。中でもポリイミド系の樹脂を用いた感光性樹脂組成物は、樹脂の耐熱性が高く、硬化膜から発生するガス成分が少ないため、高信頼性の有機EL表示装置を与えることができる点で好適に用いられている。
【0003】
通常、ポリイミドは、その前駆体の塗膜を熱的に脱水閉環させて優れた耐熱性および機械特性を有する薄膜を得る。その場合、通常300℃以上の高温焼成を必要とする。ところが、例えば白色OLED(Organic Light Emitting Diode)+カラーフィルター方式の有機EL表示装置は、カラーフィルターの耐熱性が低いため、後工程にて低温硬化プロセスが求められる。さらに、ポリイミドやポリベンゾオキサゾールは半導体素子の表面保護層や層間絶縁層等としても広く使用されている。しかし、例えば次世代メモリとして有望なMRAM(Magnetoresistive Random Access Memory;磁気抵抗メモリ)や、封止樹脂は、高温に弱い。そのため、このような素子の絶縁層、平坦化層、保護層に用いるために、200℃以下の低温での焼成で硬化した場合でもイミド化率が良好で、従来の材料を300℃前後の高温で焼成した場合と遜色ない特性が得られるポリイミド樹脂が求められている。
【0004】
イミド化の温度を低温化する技術として、重量平均分子量が3000以上、16000未満であり、特定の構造でポリアミド酸のカルボキシ基が置換されたポリイミド前駆体および光重合開始剤を含むネガ型感光性樹脂組成物が開示されている(特許文献1参照)。また、既に公知である強酸のp-トルエンスルホン酸をポリアミド酸溶液に触媒量添加する技術に加え、強塩基である1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンをポリアミド酸溶液に触媒量添加する技術(非特許文献1参照)も開示されている。このように強酸または強塩基をイミド化促進剤として用いる方法によれば、200℃以下の温度で高いイミド化率のポリイミドを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2018/037997号
【非特許文献】
【0006】
【文献】M.Uedaetal.Chem.Lett,33(9),p.1156-1157,2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、出願人が検討したところ、特許文献1に記載の組成物を200℃で焼成した硬化膜のイミド化率は十分とは言えなかった。また、強酸または非特許文献1に記載の強塩基をイミド化促進剤として用いる方法を感光性樹脂組成物に適用した場合、添加したイミド化促進剤によって感光性化合物が分解するという課題や、感光性樹脂膜を形成するための感光性樹脂組成物の溶剤乾燥工程(プリベーク)の加熱によってイミド化が進行してしまい、パターン加工性が悪化するといった課題が判明した。したがって、プリベーク時ではイミド化が進行せず、パターン加工後の感光性樹脂膜の焼成工程にてイミド化が良好に進行する材料が求められる。
【0008】
また、有機EL表示装置に対する高信頼化要求は年々厳しくなっており、平坦化層用材料および絶縁層用材料に対しても、高温、高湿、光照射といった加速条件での信頼性試験後でも高い膜物性の維持が必要であり、低温で焼成した場合でも高温で焼成した場合と遜色無い特性が得られる材料が求められている。
【0009】
そこで本発明は、200℃以下の温度で焼成した場合でもイミド化率が良好で、パターン加工性が高く、硬化膜を有機EL表示装置に用いた時の長期信頼性が高い感光性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の感光性樹脂組成物は、ポリイミド前駆体(a)、電子求引性基を有するフェノール化合物(b)、および感光性化合物(c)を含有し、該ポリイミド前駆体(a)がイオン化ポテンシャル7.1eV未満のジアミンに由来する残基を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物は、200℃以下の温度で焼成した場合でもイミド化率が良好で、パターン加工性が高く、硬化膜を有機EL表示装置に用いた時の長期信頼性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】酸(プロトン)の解離反応の反応スキームを示す図である。
図2】TFT基板の一例の断面図である。
図3】バンプを有する半導体装置のパット部分の一例の拡大断面図である。
図4】バンプを有する半導体装置の製造方法の一例を示す概略図である。
図5】実施例における有機EL表示装置の作製手順の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物は、ポリイミド前駆体(a)、電子求引性基を有するフェノール化合物(b)、および感光性化合物(c)を含有し、該ポリイミド前駆体(a)がイオン化ポテンシャル7.1eV未満のジアミンに由来する残基を有する。
【0015】
<ポリイミド前駆体(a)>
本発明の感光性樹脂組成物は、ポリイミド前駆体(a)を含有する。ポリイミド前駆体(a)は、イオン化ポテンシャルが7.1eV未満のジアミンに由来する残基を有する。ポリイミド前駆体(a)および後述の電子求引性基を有するフェノール化合物(b)を含有することにより、200℃以下の温度で焼成した場合でも高いイミド化率の硬化膜を得ることができる。また、後述する本発明の硬化膜を有機EL表示装置の平坦化層および/または絶縁層としたときの長期信頼性を向上させることができる。ポリイミド前駆体とは、加熱処理や化学処理によりポリイミドに変換される樹脂を指す。ポリイミド前駆体としては、例えば、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステルなどが挙げられる。
【0016】
本発明において、ポリイミド前駆体はアルカリ可溶性を有することが好ましい。本発明におけるアルカリ可溶性とは、ポリイミド前駆体(a)をγ-ブチロラクトンに溶解した溶液をシリコンウエハ上に塗布し、120℃で4分間プリベークを行って膜厚10μm±0.5μmのプリベーク膜を形成し、該プリベーク膜を23±1℃の2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に1分間浸漬した後、純水でリンス処理したときの膜厚減少から求められる溶解速度が50nm/分以上であることをいう。
【0017】
本発明におけるポリイミド前駆体(a)は、アルカリ可溶性を付与するため、ポリイミド前駆体(a)の構造単位中および/またはその主鎖末端に水酸基および/または酸性基を有することが好ましい。酸性基としては、例えば、カルボキシ基、フェノール性水酸基、スルホン酸基などが挙げられる。
【0018】
ポリイミド前駆体(a)は、フッ素原子を有することが好ましい。フッ素原子を有することにより、硬化膜に撥水性を付与することができる。
【0019】
本発明におけるポリイミド前駆体(a)は、下記一般式(3)で表される構造単位を有することが好ましい。
【0020】
【化1】
【0021】
一般式(3)中、Xは4~7価の有機基、Yは2~11価の有機基を表す。R11およびR13はそれぞれ独立に水酸基またはスルホン酸基を表し、それぞれ単一のものであっても異なるものが混在していてもよい。R12およびR14はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~20の1価の炭化水素基を示す。tおよびwはそれぞれ独立に0~3の整数を表し、vは0~6の整数を表す。
【0022】
ポリイミド前駆体(a)は、一般式(3)で表される構造単位を5~100000有することが好ましい。また、ポリイミド前駆体(a)は、一般式(3)で表される構造単位に加えて、他の構造単位を有してもよい。この場合、ポリイミド前駆体(a)は、一般式(3)で表される構造単位を、全構造単位のうち50モル%以上有することが好ましい。
【0023】
上記一般式(3)中、X(R11(COOR12は酸の残基を表す。Xは4~7価の有機基であり、なかでも芳香族環または環状脂肪族基を含有する炭素数5~40の有機基であることが好ましい。
【0024】
酸としては、ピロメリット酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸および下記に示した構造の芳香族テトラカルボン酸や、ブタンテトラカルボン酸などの脂肪族テトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸などの環状脂肪族基を含有する脂肪族テトラカルボン酸などのテトラカルボン酸などを挙げることができる。これらを2種以上用いてもよい。
【0025】
【化2】
【0026】
20は酸素原子、C(CFまたはC(CHを表す。R21およびR22はそれぞれ独立に水素原子または水酸基を表す。
【0027】
上記酸のうち、テトラカルボン酸の場合は、2つのカルボキシ基が一般式(3)における(COOR12に相当する。
これらの酸は、そのまま使用してもよいし、酸無水物または活性エステル、活性アミドとして使用してもよい。活性エステルとしては、例えば酸のカルボキシル基をN-ヒドロキシスクシンイミドと反応させて得られるN-ヒドロキシスクシンイミドエステル化合物、活性アミドとしては、例えば酸のカルボキシル基をN、N’-カルボニルジイミダゾールと反応させて得られるN-アシルイミダゾール化合物などが挙げられる。
【0028】
酸二無水物としては、具体的には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物、9,9-ビス{4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}フルオレン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、および下記に示した構造の酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物や、ブタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物などの環状脂肪族基を含有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらを2種以上用いてもよい。
【0029】
【化3】
【0030】
20は酸素原子、C(CFまたはC(CHを表す。R21およびR22はそれぞれ独立に水素原子または水酸基を表す。
【0031】
上記一般式(3)のY(R13(COOR14はジアミンの残基を表す。Yは2~11価の有機基である。本発明におけるポリイミド前駆体(a)はイオン化ポテンシャル(以下、「Ip」と記載する場合がある)が7.1eV未満のジアミンに由来する残基を有する。
【0032】
本発明において、イオン化ポテンシャル7.1eV未満のジアミンに由来する残基を有するポリイミド前駆体(a)を用いることにより、200℃以下の温度で焼成した場合でも高いイミド化率を示す硬化膜を得ることができるメカニズムは定かではないが、例えば、次のように推定することができる。すなわち、ポリイミド前駆体(a)のイミド化反応は、ジアミンに由来する残基の窒素原子が酸二無水物に由来する残基のカルボニル炭素に求核攻撃することで進行する。イオン化ポテンシャルが低い、すなわち、電子リッチなジアミンに由来する残基を有するポリイミド前駆体は、窒素原子の求核力が高い。そのため、イミド化反応の反応性が高く、200℃以下の温度でも高いイミド化率の硬化膜を得ることが出来ると推定することができる。
【0033】
イオン化ポテンシャルが7.1eV未満のジアミンとしては、2,7-ジアミノフルオレン(Ip6.48eV、文献値)、o-トリジン(Ip6.58eV、文献値)、ベンジジン(Ip6.73eV、文献値)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(Ip6.78eV、文献値)、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(Ip6.80eV、文献値)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(Ip6.84eV、計算値)、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(Ip6.88eV、文献値)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(Ip6.94eV、文献値)、p-フェニレンジアミン(Ip7.03eV、文献値)、3,3’-ジアミノジフェニルメタン(Ip7.08eV、文献値)、m-トリジン(Ip7.08eV、文献値)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(Ip7.08eV、計算値)などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0034】
200℃以下の温度で焼成した場合でも高いイミド化率をより達成しやすくできる観点から、イオン化ポテンシャルは7.0eV未満が好ましく、6.9eVがさらに好ましく、6.8eVがより好ましい。イオン化ポテンシャルの下限値は、特に限定されないが、6.0eV程度である。
【0035】
これらの中でも感度を向上させる観点から、イオン化ポテンシャルが7.1eV未満のジアミンに由来する残基がエーテル結合を有することが好ましい。中でも、イオン化ポテンシャルが7.1eV未満のジアミンが、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(Ip6.78eV、文献値)、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(Ip6.80eV、文献値)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(Ip6.84eV、計算値)、および1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(Ip7.08eV、計算値)からなる群から選ばれる1種以上のジアミンを含むことがより好ましい。
【0036】
なお、本発明におけるIpは、新訂最新ポリイミド(102ページ、安藤慎治著)記載の文献値を用いた。また、Ipの記載の無いものは、文献値と同様にGaussian09にて、汎関数にはB3LYP、基底関数系には6-311G(d)(構造最適化計算)、6-311++G(d,p)(エネルギー計算)を用いて計算で求めた値(計算値)を使用した。
【0037】
また、本発明に用いられるポリイミド前駆体(a)は、前述の特性を低下させない範囲で、イオン化ポテンシャルが7.1eV未満のジアミン残基に加えてイオン化ポテンシャルが7.1eV以上のジアミン残基を含有してもよい。イオン化ポテンシャルが7.1eV以上のジアミン残基を含有する場合、ポリイミド前駆体(a)を構成するジアミン残基100モル%中の、イオン化ポテンシャルが7.1eV未満のジアミンに由来する残基の含有量は、200℃以下の温度で焼成した場合でも高いイミド化率をより達成しやすくできる観点から、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がさらに好ましく、20モル%以上がより好ましい。また、感度をより向上させる観点から、50モル%以下が好ましく、40モル%以下がさらに好ましい。
【0038】
イオン化ポテンシャルが7.1eV以上のジアミンとしては、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル(Ip7.12eV、文献値)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(Ip7.15eV、計算値)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(Ip7.18eV、文献値)、9,9-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(Ip7.28eV、計算値)、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(Ip7.30eV、文献値)、2,2-ビス(3-アミノ-4-メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン(Ip7.32eV、計算値)、m-フェニレンジアミン(Ip7.39eV、文献値)、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(Ip7.41eV、計算値)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(Ip7.50eV、文献値)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(Ip7.55eV、文献値)、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(Ip7.68eV、文献値)、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(Ip7.88eV、計算値)、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン(Ip8.02eV、計算値)、これらの芳香族環の水素原子の少なくとも一部をアルキル基やハロゲン原子で置換した化合物などの芳香族ジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン(Ip8.15eV、文献値)、1,4-シクロヘキサンジアミン(Ip8.61eV、文献値)などの環状脂肪族基を含有する脂肪族ジアミン、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(Ip8.03eV、計算値)にようなシリコン原子含有ジアミンおよび下記に示した構造のジアミン(Ip7.16eV、計算値)などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0039】
【化4】
【0040】
これらのジアミンは、そのまま使用してもよいし、例えばジアミンのアミノ基をホスゲンと反応させて得られるジイソシアネート化合物や例えばジアミンのアミノ基をクロロトリメチルシランと反応させて得られるトリメチルシリル化ジアミンとして使用してもよい。
また、これらの樹脂の末端を、酸性基を有するモノアミン、酸無水物、酸クロリド、モノカルボン酸、活性エステル化合物により封止することにより、主鎖末端に酸性基を有する樹脂を得ることができる。
【0041】
酸性基を有するモノアミンの好ましい例としては、2-アミノ安息香酸、3-アミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸、4-アミノサリチル酸、5-アミノサリチル酸、6-アミノサリチル酸、3-アミノ-4,6-ジヒドロキシピリミジン、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、4-アミノフェノール、2-アミノチオフェノール、3-アミノチオフェノール、4-アミノチオフェノールなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0042】
酸無水物の好ましい例としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、ナジック酸無水物、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、3-ヒドロキシフタル酸無水物などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0043】
モノカルボン酸の好ましい例としては、3-カルボキシフェノール、4-カルボキシフェノール、3-カルボキシチオフェノール、4-カルボキシチオフェノール、などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0044】
酸クロリドの好ましい例としては、前記モノカルボン酸のカルボキシ基が酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物、テレフタル酸、フタル酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、1,5-ジカルボキシナフタレン、1,6-ジカルボキシナフタレン、1,7-ジカルボキシナフタレン、2,6-ジカルボキシナフタレンなどのジカルボン酸類の1つのカルボキシ基だけが酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0045】
活性エステル化合物の好ましい例としては、前記モノ酸クロリド化合物とN-ヒドロキシベンゾトリアゾールやN-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミドとの反応物などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0046】
本発明におけるポリイミド前駆体(a)は、公知の方法により合成することができる。
【0047】
ポリイミド前駆体であるポリアミド酸の製造方法としては、例えば、低温中でテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を溶剤中で反応させる方法などが挙げられる。
【0048】
同じくポリイミド前駆体であるポリアミド酸エステルの製造方法としては、前述のポリアミド酸をエステル化剤と反応させる方法の他に、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得て、その後、縮合剤の存在下でアミンと溶剤中で反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得て、その後、残りのジカルボン酸を酸クロリド化し、アミンと溶剤中で反応させる方法などが挙げられる。合成の容易さの観点から、ポリアミド酸とエステル化剤を反応させる工程を含むことが好ましい。エステル化剤としては、特に限定は無く、公知の方法を適用することができるが、得られた樹脂の精製が容易であることから、N、N―ジメチルホルムアミドジアルキルアセタールが好ましい。
【0049】
重合溶剤としては特に限定は無く、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、などのアルキルアセテート類、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトンなどのケトン類、ブチルアルコール、イソブチルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、乳酸ブチル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ガンマブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、ジアセトンアルコール、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N,N-ジメチルイソ酪酸アミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルプロピレン尿素、デルタバレロラクトン、2-フェノキシエタノール、2-ピロリドン、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコールブチルエーテル、トリアセチン、安息香酸ブチル、シクロヘキシルベンゼン、ビシクロヘキシル、o-ニトロアニソール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、N-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン、N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、N,N,N’,N’-テトラメチル尿素、3-メチル-2-オキサゾリジノンなどが挙げられる。
【0050】
<電子求引性基を有するフェノール化合物(b)>
本発明の感光性樹脂組成物は、電子求引性基を有するフェノール化合物(b)(以下、単に「フェノール化合物(b)」と記載する場合がある)を含有する。前述のポリイミド前駆体(a)およびフェノール化合物(b)を含有することにより、200℃以下の温度で焼成した場合でも高いイミド化率の硬化膜を得ることができ、さらに後述する本発明の硬化膜を有機EL表示装置の平坦化層および/または絶縁層としたときの長期信頼性を向上させることができる。
【0051】
電子求引性基とは、化学便覧基礎編改訂5版II-379~II-380(日本化学会編、丸善株式会社発行)において定義されるハメットの置換基定数σ が正の値である置換基である。電子求引性基を有するフェノール化合物(b)は、分子内に電子求引性基を有することで、フェノール性水酸基の酸性度が高くなり、酸触媒として作用し、ポリイミド前駆体(a)のイミド化を促進することができる。
【0052】
電子求引性基の具体例としては、スルホニル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、スルホン酸アミド基、スルホン酸イミド基、カルボキシル基、カルボニル基、カルボン酸エステル基、シアノ基、ハロゲン基、トリフルオロメチル基、ニトロ基などを挙げることができるが、これらに限定されず、公知の任意の電子求引性基であればよい。中でも、ポリイミド前駆体(a)のイミド化をより促進させる観点から、カルボニル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基、スルホニル基が好ましく、トリフルオロメチル基、スルホニル基が特に好ましい。
【0053】
フェノール化合物(b)の好ましい形態としては、フェノール化合物(b)が、密度汎関数法に基づく量子化学計算により求められる酸解離定数(pKa)が11.0以下のフェノール系水酸基を有する化合物(b1)を含有することが好ましい。pKaが11.0以下のフェノール系水酸基を有する化合物(b1)は、該計算により求められる無置換フェノールの酸性度(pKa=12.2)と比較してフェノール性水酸基の酸性度が高い。一方、イミド化促進剤として公知であるスルホン酸化合物(pKa<0)ほど酸性度は高くないため、後述の感光性樹脂組成物の溶剤乾燥工程(プリベーク)ではイミド化は促進せず、パターン加工後の感光性樹脂膜の焼成工程にてイミド化を促進する効果を高めることができる。pKaの下限値は、特に限定されないが、1.0程度である。
【0054】
酸解離定数(pKa)は、酸解離定数の逆数の対数値であり、多段解離の場合、第1段の解離定数(すなわちpKa1)を採用する。また、本発明における酸解離定数(pKa)としては、密度汎関数法(DFT法)に基づく量子化学計算により算出される酸解離定数を採用する。このような量子化学計算には、電子計算機にて、Gaussian09にて、汎関数にはB3LYP、基底関数系には6-311G(d)(構造最適化計算)、6-311++G(d,p)(エネルギー計算および振動解析)を用いて計算で求めた値を使用する。また、このような量子化学計算に際しては、図1に記載の酸(式:HAで表される酸)の酸解離反応(プロトンの解離反応)の反応スキームに示す熱力学量の計算を行う。なお、図1中、HAは酸を示し、Aは酸のイオンを示し、Hは水素イオン(プロトン)を示す。また、図1中、式:HA(aq)→H(aq)+A(aq)は水中でのプロトンの解離反応を示し、式:HA(g)→H(g)+A(g)は気相中でのプロトンの解離反応を示す。
【0055】
まず、Gaussian09を用いて、HAの気相中でのGibbsの自由エネルギーG gas(HA)を求めた後、SMD溶媒和モデルによりHAの気相中と水中のGibbsの自由エネルギー差ΔG solv(HA)を計算する。なお、SMD溶媒和モデルにおいて、分子キャビティをRADII=UAHFに指定する。同様にして、Aの気相中でのGibbsの自由エネルギーG gas(A)を求めた後、Aの気相中と水中のGibbsの自由エネルギー差ΔG solv(A)を計算する。次いで、得られた値を用い、数式(1)~(4)に基づき、pKaを算出する。なお本計算に関して、HのGibbsの自由エネルギーG gas(H)は-6.275kcal/mol、Hの気相中と水中のGibbsの自由エネルギー差ΔG solv(H)は-1112.5kJ/mol、気体定数(R)は8.314J/(K・mol)=0.0821atm・L/(K・mol)、絶対温度(T)は298.15Kとする。
【0056】
【数1】
【0057】
pKaが11.0以下のフェノール系水酸基を有する化合物(b1)の具体例としては、ビスフェノールS(pKa=9.8)、ビスフェノールAF(pKa=10.8)、4-(トリフルオロメチル)フェノール(pKa=10.5)などが挙げられる。
【0058】
フェノール化合物(b)の別の好ましい形態として、フェノール化合物(b)が、一般式(1)で表される化合物(b2)を含むことが好ましい。
【0059】
【化5】
【0060】
一般式(1)中、Aは一般式(2)で示される各構造からなる群から選ばれる2価の基を表し、aおよびbはそれぞれ独立に0~3の整数を表し、かつa+bは2~4の整数である。一般式(2)中、RおよびRはそれぞれ独立にハロゲン原子またはハロゲン原子で置換されている炭素数1~20の1価の有機基を表す。
【0061】
一般式(1)で表される化合物(b2)は耐熱性が高く、またフェノール性水酸基を2つ以上有するため、後述する本発明の硬化膜を有機EL表示装置の平坦化層および/または絶縁層としたときの長期信頼性を向上させる効果をより高めることができる。
【0062】
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、ビスフェノールS(pKa=9.8)、ビスフェノールAF(pKa=10.8)、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン(pKa=11.3)などが挙げられる。
【0063】
フェノール化合物(b)の含有量は、ポリイミド前駆体(a)100質量部に対して1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましい。このような範囲とすることで、200℃以下の温度で焼成した場合でも高いイミド化率を達成しやすくなる。また、フェノール化合物(b)の含有量は、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。このような範囲とすることで、アルカリ現像後の残膜率低化を抑制しやすくすることができる。
【0064】
<感光性化合物(c)>
本発明の感光性樹脂組成物は、感光性化合物(c)を含有する。感光性化合物(c)としては、光酸発生剤(c1)や、光重合開始剤(c2)などが挙げられる。光酸発生剤(c1)は、光照射により酸を発生する化合物であり、光重合開始剤(c2)は、露光により結合開裂および/または反応し、ラジカルを発生する化合物である。
【0065】
光酸発生剤(c1)を含有することにより、光照射部に酸が発生して光照射部のアルカリ水溶液に対する溶解性が増大し、光照射部が溶解するポジ型のレリーフパターンを得ることができる。また、光酸発生剤(c1)と後述するエポキシ化合物または熱架橋剤を含有することにより、光照射部に発生した酸がエポキシ化合物や熱架橋剤の架橋反応を促進し、光照射部が不溶化するネガ型のレリーフパターンを得ることができる。一方、光重合開始剤(c2)および後述するラジカル重合性化合物を含有することにより、光照射部においてラジカル重合が進行し、光照射部が不溶化するネガ型のレリーフパターンを得ることができる。
【0066】
光酸発生剤(c1)としては、例えば、キノンジアジド化合物、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩などが挙げられる。光酸発生剤を2種以上含有することが好ましく、2種以上含有する場合には、より高感度な感光性樹脂組成物を得ることができる。後述する本発明の硬化膜を有機EL表示装置の平坦化層および/または絶縁層としたときの長期信頼性の観点から、光酸発生剤(c1)としては特にキノンジアジド化合物が好ましい。
【0067】
キノンジアジド化合物としては、ポリヒドロキシ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステルで結合したもの、ポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がスルホンアミド結合したもの、ポリヒドロキシポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合および/またはスルホンアミド結合したものなどが挙げられる。これらポリヒドロキシ化合物やポリアミノ化合物の官能基全体の50モル%以上がキノンジアジドのスルホン酸で置換されていることが好ましい。
【0068】
キノンジアジド構造としては、5-ナフトキノンジアジドスルホニル基、4-ナフトキノンジアジドスルホニル基のいずれも好ましく用いられる。同一分子中に4-ナフトキノンジアジドスルホニル基、5-ナフトキノンジアジドスルホニル基を有するナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を含有してもよいし、4-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物と5-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を含有してもよい。4-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物は水銀灯のi線領域に吸収を持っており、i線露光に適している。5-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物は水銀灯のg線領域まで吸収が伸びており、g線露光に適している。
【0069】
露光する波長によって4-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物、5-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を選択することが好ましいが、高感度化の観点から4-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を含むことが好ましい。一方、後述する本発明の硬化膜を有機EL表示装置の平坦化層および/または絶縁層としたときの長期信頼性の観点からは、5-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物が好ましい。ただし、本発明においては、前述のポリイミド前駆体(a)およびフェノール化合物(b)を含有することにより、長期信頼性を向上することができるため、4-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を好適に用いることができる。
【0070】
上記キノンジアジド化合物は、フェノール性水酸基を有する化合物と、キノンジアジドスルホン酸化合物とから、任意のエステル化反応によって合成することができる。これらのキノンジアジド化合物を使用することにより、解像度、感度、残膜率がより向上する。
【0071】
本発明において、光酸発生剤(c1)のうち、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩は、露光によって発生した酸成分を適度に安定化させるため好ましい。中でもスルホニウム塩が好ましい。さらに増感剤などを必要に応じて含有することもできる。
【0072】
本発明において、光酸発生剤(c1)を用いる場合の含有量は、高感度化の観点から、ポリイミド前駆体(a)100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは10質量部以上であり、25質量部以上がさらに好ましい。硬化膜の耐薬品性をより向上させる観点から、100質量部以下が好ましい。後述する本発明の硬化膜を有機EL表示装置の平坦化層および/または絶縁層としたときの長期信頼性を向上させる観点からは、光酸発生剤(c1)の含有量は少ない方が好ましいが、本発明においては、前述のポリイミド前駆体(a)およびフェノール化合物(b)を含有することにより、長期信頼性を向上することができるため、高感度化のために光酸発生剤(c1)の含有量を増加することができる。
【0073】
光重合開始剤(c2)としては、例えば、ベンジルケタール系光重合開始剤、α-ヒドロキシケトン系光重合開始剤、α-アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、アクリジン系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、芳香族ケトエステル系光重合開始剤、安息香酸エステル系光重合開始剤などが挙げられる。光重合開始剤(c2)を2種以上含有してもよい。感度をより向上させる観点から、α-アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤がさらに好ましい。
【0074】
α-アミノケトン系光重合開始剤としては、例えば、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、3,6-ビス(2-メチル-2-モルホリノプロピオニル)-9-オクチル-9H-カルバゾールなどが挙げられる。
【0075】
アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシドなどが挙げられる。
【0076】
オキシムエステル系光重合開始剤としては、例えば、1-フェニルプロパン-1,2-ジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニルブタン-1,2-ジオン-2-(O-メトキシカルボニル)オキシム、1,3-ジフェニルプロパン-1,2,3-トリオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン-1,2-ジオン-2-(O-ベンゾイル)オキシム、1-[4-[4-(カルボキシフェニル)チオ]フェニル]プロパン-1,2-ジオン-2-(O-アセチル)オキシム、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(O-アセチル)オキシム、1-[9-エチル-6-[2-メチル-4-[1-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルオキシ]ベンゾイル]-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(O-アセチル)オキシム又は1-(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)-1-[2-メチル-4-(1-メトキシプロパン-2-イルオキシ)フェニル]メタノン-1-(O-アセチル)オキシムなどが挙げられる。
【0077】
本発明において、光重合開始剤(c2)を用いる場合の含有量は、高感度化の観点から、ポリイミド前駆体(a)および後述のラジカル重合性化合物の合計100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは1質量部以上であり、10質量部以上がさらに好ましい。一方、解像度をより向上させ、テーパー角度を低減する観点から、50質量部以下が好ましい。後述する本発明の硬化膜を有機EL表示装置の平坦化層および/または絶縁層としたときの長期信頼性を向上させる観点からは、光重合開始剤(c2)の含有量は少ない方が好ましいが、本発明においては、前述のポリイミド前駆体(a)およびフェノール化合物(b)を含有することにより、長期信頼性を向上することができるため、高感度化のために光重合開始剤(c2)の含有量を増加することができる。
【0078】
<着色材(d)>
本発明の感光性樹脂組成物は、さらに着色材(d)を含有することが好ましい。着色剤(d)を含有させることで、感光性樹脂組成物の膜を透過する光、または感光性樹脂組成物の膜から反射する光から、着色剤(d)が吸収する波長の光を遮光する、遮光性を付与することができる。遮光性を付与することで、後述する本発明の硬化膜を有機EL表示装置の平坦化層および/または絶縁層としたときにTFTへの光の侵入による劣化や誤作動、リーク電流などを防ぐことができる。さらに、配線やTFTからの外光反射の抑制や、発光エリアと非発光エリアのコントラストを向上させることができる。
【0079】
着色材(d)としては、染料(d1)および/または顔料(d2)を使用することが好ましい。着色材(d)は少なくとも1種類含有すればよく、例えば、1種の染料または有機顔料を用いる方法、2種以上の染料または顔料を混合して用いる方法、1種以上の染料と1種以上の顔料を組み合わせて用いる方法等が挙げられる。
【0080】
本発明では400~750nmに吸収極大を持つものが好ましく選択される。
【0081】
溶剤溶解性の観点から本発明における着色剤(d)としては、染料(d1)が好ましい。一方、後述する本発明の感光性樹脂組成物または感光性樹脂シートの加熱硬化工程における着色剤の退色を抑制できる観点からは、顔料(d2)が好ましい。ただし、本発明において、前述のポリイミド前駆体(a)とフェノール化合物(b)を含有することにより、200℃以下の温度でも硬化が可能となるため、染料(d1)を用いても加熱硬化工程における着色剤の退色を抑制できる。そのため、染料(d1)も好適に用いることができる。
【0082】
本発明の感光性樹脂組成物において、着色材(d)は、(d-1)波長400nm以上490nm未満の範囲に吸収極大を持つ染料(d1-1)および/または顔料(d2-1)を含有することが好ましい。以下、それぞれ単に(d-1)成分、(d1-1)成分、(d2-1)成分という場合がある。
【0083】
本発明において、(d-1)成分として用いられる染料(d1-1)は保存安定性、硬化時、光照射時の退色の観点からポリイミド前駆体(a)を溶解する有機溶剤に可溶でかつ樹脂と相溶する染料、耐熱性、耐光性の高い染料が好ましい。(d1-1)成分は波長400nm以上490nm未満の範囲に吸収極大を持つことから、例えば、黄色染料や橙色染料などが挙げられる。染料の種類として例えば、油溶性染料、分散染料、反応性染料、酸性染料もしくは直接染料等が挙げられる。
【0084】
染料の骨格構造としては、アントラキノン系、アゾ系、フタロシアニン系、メチン系、オキサジン系、キノリン系、トリアリールメタン系、キサンテン系などが挙げられるがこれらに限定しない。これらのうち、有機溶剤に対する溶解性や耐熱性の観点から、アントラキノン系、アゾ系、メチン系、トリアリールメタン系、キサンテン系が好ましい。またこれら各染料は単独でも含金属錯塩系として用いてもよい。具体的には、Sumilan、Lanyl染料(住友化学工業(株)製) 、Orasol、Oracet、Filamid、Irgasperse染料(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)、Zapon、 Neozapon、Neptune、Acidol染料(BASF(株)製)、Kayaset、Kayakalan染料(日本化薬(株)製)、Valifast Colors染料(オリエント化学工業(株)製)、Savinyl、Sandoplast、Polysynthren、Lanasyn染料(クラリアントジャパン(株)製)、Aizen Spilon染料(保土谷化学工業(株)製)、機能性色素(山田化学工業(株)製)、Plast Color染料、Oil Color染料(有本化学工業(株)製)等のうち波長400nm以上490nm未満の範囲に吸収極大を持つものをそれぞれ入手できるが、それらに限定されるものではない。これらの染料は単独または混合することで用いられる。
【0085】
本発明において、(d-1)成分として用いられる顔料(d2-1)は、硬化時、光照射時の退色の観点から耐熱性および耐光性の高い顔料が好ましい。
【0086】
これらに用いる有機顔料の具体例をカラーインデックス(CI)ナンバーで示す。黄色顔料の例としては、ピグメントイエロー83、117、129、138、139、150、180などが挙げられる。橙色顔料の例としてはピグメントオレンジ38、43、64、71、72などが挙げられる。また、これら以外の顔料を用いることもできる。
【0087】
本発明で用いる場合の(d-1)成分の含有量は、ポリイミド前駆体(a)100質量部に対して、0.1~300質量部が好ましく、更に0.2~200質量部が好ましく、特に1~200質量部が好ましい。(d-1)成分の含有量が0.1質量部以上とすることで、対応する波長の光を吸収させることができる。また、300質量部以下とすることで、感光性着色樹脂膜と基板の密着強度や熱処理後の膜の耐熱性、機械特性を維持しつつ、対応する波長の光を吸収させることができる。
【0088】
本発明において、(d2-1)成分として用いられる有機顔料は、必要に応じて、ロジン処理、酸性基処理、塩基性基処理などの表面処理が施されているものを使用してもよい。また、場合により分散剤とともに使用することができる。分散剤は、例えば、カチオン系、アニオン系、非イオン系、両性、シリコーン系、フッ素系の界面活性剤を挙げることができる。
【0089】
本発明の感光性樹脂組成物に用いる着色材(d)は、(d―2)波長490nm以上580nm未満の範囲に吸収極大を持つ染料(d1―2)および/または顔料(d2―2)を含有することが好ましい。以下、それぞれ単に(d-2)成分、(d1-2)成分、(d2-2)成分という場合がある。
【0090】
本発明において、(d1―2)成分として用いられる染料は、保存安定性、硬化時、光照射時の退色の観点からポリイミド前駆体(a)を溶解する有機溶剤に可溶でかつ樹脂と相溶する染料、耐熱性、耐光性の高い染料が好ましい。(d1―2)成分は波長490nm以上580nm未満の範囲に吸収極大を持つことから、例えば、赤色染料や紫色染料などが挙げられる。染料の種類として例えば、油溶性染料、分散染料、反応性染料、酸性染料もしくは直接染料等が挙げられる。
【0091】
染料の骨格構造としては、アントラキノン系、アゾ系、フタロシアニン系、メチン系、オキサジン系、キノリン系、トリアリールメタン系、キサンテン系などが挙げられるがこれらに限定しない。これらのうち、有機溶剤に対する溶解性や耐熱性の観点から、アントラキノン系、アゾ系、メチン系、トリアリールメタン系、キサンテン系が好ましい。またこれら各染料は単独でも含金属錯塩系として用いてもよい。具体的には、Sumilan、Lanyl染料(住友化学工業(株)製) 、Orasol、Oracet、Filamid、Irgasperse染料(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)、Zapon、 Neozapon、Neptune、Acidol染料(BASF(株)製)、Kayaset、Kayakalan染料(日本化薬(株)製)、Valifast Colors染料(オリエント化学工業(株)製)、Savinyl、Sandoplast、Polysynthren、Lanasyn染料(クラリアントジャパン(株)製)、Aizen Spilon染料(保土谷化学工業(株)製)、機能性色素(山田化学工業(株)製)、Plast Color染料、Oil Color染料(有本化学工業(株)製)等のうち波長490nm以上580nm未満の範囲に吸収極大を持つものをそれぞれ入手できるが、それらに限定されるものではない。これらの染料は単独または混合することで用いられる。
【0092】
本発明において、(d―2)成分として用いられる顔料(d2―2)は、硬化時、光照射時の退色の観点から耐熱性および耐光性の高い顔料が好ましい。
【0093】
これらに用いる有機顔料の具体例をカラーインデックス(CI)ナンバーで示す。赤色顔料の例としては、ピグメントレッド48:1、122、168、177、202、206、207、209、224、242、254などが挙げられる。紫色顔料の例としては、ピグメントバイオレット19、23、29、32、33、36、37、38などが挙げられる。また、これら以外の顔料を用いることもできる。
【0094】
本発明で用いる場合の(d―2)成分の含有量は、ポリイミド前駆体(a)100質量部に対して、0.1~300質量部が好ましく、更に0.2~200質量部が好ましく、特に1~200質量部が好ましい。(d-2)成分の含有量が0.1質量部以上とすることで、対応する波長の光を吸収させることができる。また、300質量部以下とすることで、感光性着色樹脂膜と基板の密着強度や熱処理後の膜の耐熱性、機械特性を維持しつつ、対応する波長の光を吸収させることができる。
【0095】
本発明において、(d2-2)成分として用いられる有機顔料は、必要に応じて、ロジン処理、酸性基処理、塩基性基処理などの表面処理が施されているものを使用してもよい。また、場合により分散剤とともに使用することができる。分散剤は、例えば、カチオン系、アニオン系、非イオン系、両性、シリコーン系、フッ素系の界面活性剤を挙げることができる。
【0096】
本発明の感光性樹脂組成物に用いる着色材(d)は、(d-3)波長580nm以上800nm未満の範囲に吸収極大を持つ染料(d1-3)および/または顔料(d2-3)を含有することが好ましい。
【0097】
本発明において、(d-3)成分として用いられる染料(d1-3)は保存安定性、硬化時、光照射時の退色の観点からポリイミド前駆体(a)を溶解する有機溶剤に可溶でかつ樹脂と相溶する染料、耐熱性、耐光性の高い染料が好ましい。(d1-3)成分は波長580nm以上800nm未満の範囲に吸収極大を持つことから例えば青色染料や緑色染料などが挙げられる。
染料の種類として例えば、油溶性染料、分散染料、反応性染料、酸性染料もしくは直接染料等が挙げられる。
【0098】
染料の骨格構造としては、アントラキノン系、アゾ系、フタロシアニン系、メチン系、オキサジン系、キノリン系、トリアリールメタン系、キサンテン系などが挙げられるがこれらに限定しない。これらのうち、有機溶剤に対する溶解性や耐熱性の観点から、アントラキノン系、アゾ系、メチン系、トリアリールメタン系、キサンテン系が好ましい。またこれら各染料は単独でも含金属錯塩系として用いてもよい。具体的には、Sumilan、Lanyl染料(住友化学工業(株)製) 、Orasol、Oracet、Filamid、Irgasperse染料(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)、Zapon、 Neozapon、Neptune、Acidol染料(BASF(株)製)、Kayaset、Kayakalan染料(日本化薬(株)製)、Valifast Colors染料(オリエント化学工業(株)製)、Savinyl、Sandoplast、Polysynthren、Lanasyn染料(クラリアントジャパン(株)製)、Aizen Spilon染料(保土谷化学工業(株)製)、機能性色素(山田化学工業(株)製)、Plast Color染料、Oil Color染料(有本化学工業(株)製)等のうち波長580nm以上800nm未満の範囲に吸収極大を持つものをそれぞれ入手できるが、それらに限定されるものではない。これらの染料は単独または混合することで用いられる。
【0099】
本発明において、(d-3)成分として用いられる顔料(d2-3)は、硬化時、光照射時の退色の観点から耐熱性および耐光性の高い顔料が好ましい。
【0100】
これらに用いる有機顔料の具体例をカラーインデックス(CI)ナンバーで示す。青色顔料の例としてはピグメントブルー15(15:3、15:4、15:6など)、21、22、60、64などが挙げられる。緑色顔料の例としてはピグメントグリーン7、10、36、47、58などが挙げられる。また、これら以外の顔料を用いることもできる。
【0101】
本発明において、(d-3)成分の含有量は、ポリイミド前駆体(a)100質量部に対して、0.1~300質量部が好ましく、更に0.2~200質量部が好ましく、特に1~200質量部が好ましい。(d-3)成分の含有量が0.1質量部以上とすることで、対応する波長の光を吸収させることができる。また、300質量部以下とすることで、感光性着色樹脂膜と基板の密着強度や熱処理後の膜の耐熱性、機械特性を維持しつつ、対応する波長の光を吸収させることができる。
【0102】
本発明において、(d2-3)成分として用いられる有機顔料は、必要に応じて、ロジン処理、酸性基処理、塩基性基処理などの表面処理が施されているものを使用してもよい。また、場合により分散剤とともに使用することができる。分散剤は、例えば、カチオン系、アニオン系、非イオン系、両性、シリコーン系、フッ素系の界面活性剤を挙げることができる。
【0103】
また、本発明において(d-1)成分、(d-2)成分、(d-3)成分を併用することで、黒色化が可能である。黒色化は光学濃度(OD値)で表すことができ、好ましくはOD値0.3以上、より好ましくは0.6以上、さらに好ましくは1.0以上である。
【0104】
<熱発色性化合物>
本発明の感光性樹脂組成物は、さらに熱発色性化合物を含有してもよい。熱発色性化合物は加熱処理により発色し、350nm以上、700nm以下に吸収極大を有する熱発色性化合物であり、より好ましくは加熱処理により発色し、350nm以上、500nm以下に吸収極大を有する熱発色性化合物である。前述の(d-1)成分の代わり、または(d-1)成分と併用して、熱発色性化合物を使用することにより、感光性樹脂組成物の露光波長領域350-450nmの吸収が抑制され、感度の低下を抑えることが出来る。
【0105】
本発明において、熱発色性化合物は、120℃より高温で発色する化合物が好ましく、180℃より高温で発色する熱発色性化合物がより好ましい。熱発色性化合物の発色温度が高いほど高温条件下での耐熱性に優れ、また長時間の紫外光および可視光の照射により退色することが少なく耐光性に優れる。
【0106】
本発明において、熱発色性化合物は、一般の感熱色素または感圧色素であってもよいし、その他の化合物であってもよい。熱発色性化合物の例としては、加熱処理時に系中に共存する酸性基の作用により、その化学構造や電荷状態を変化させることによって発色するもの、あるいは空気中の酸素の存在により熱酸化反応等を起こして発色するもの等が挙げられる。
【0107】
熱発色性化合物の骨格構造としては、トリアリールメタン骨格、ジアリールメタン骨格、フルオラン骨格、ビスラクトン骨格、フタリド骨格、キサンテン骨格、ローダミンラクタム骨格、フルオレン骨格、フェノチアジン骨格、フェノキサジン骨格、スピロピラン骨格等が挙げられる。中でも、熱発色温度が高く耐熱性に優れるためトリアリールメタン骨格が好ましい。
【0108】
トリアリールメタン骨格の具体例としては、2,4’,4’’-メチリデントリスフェノール、4,4’,4’’-メチリデントリスフェノール、4,4’-[(4-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(ベンゼンアミン)、4,4’-[(4-アミノフェニル)メチレン]ビスフェノール、4,4’-[(4-アミノフェニル)メチレン]ビス[3,5-ジメチルフェノール]、4,4’-[(2-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3,6-トリメチルフェノール]、4-[ビス(4-ヒドロキシフェニル)メチル]-2-メトキシフェノール、4,4’-[(2-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2-メチルフェノール]、4,4’-[(4 -ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2-メチルフェノール]、4-[ビス(4-ヒドロキシフェニル)メチル]-2-エトキシフェノール、4,4’-[(4-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,6-ジメチルフェノール]、2,2’-[(4-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5-ジメチルフェノール]、4,4’-[(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)メチレン]ビス[2,6-ジメチルフェノール]、2,2’-[(2-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3,5-トリメチルフェノール]、4,4’-[(4-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3,6-トリメチルフェノール]、4,4’-[(2-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2-シクロヘキシル-5-メチルフェノール]、4,4’-[(4-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2-シクロヘキシル-5-メチルフェノール]、4,4’-[(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2-シクロヘキシル-5-メチルフェノール]、4,4’-[(3,4-ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2-メチルフェノール]、4,4’-[(3,4-ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,6-ジメチルフェノール]、4,4’-[(3,4-ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3,6-トリメチルフェノール]、等が挙げられる。これらは単独でもしくは混合して用いられる。なお、トリアリールメタン骨格を有する水酸基含有化合物は当該化合物にナフトキノンジアジドのスルホン酸をエステル結合させて、キノンジアジド化合物として用いてもよい。
【0109】
本発明において、熱発色性化合物を含有する場合の含有量は、ポリイミド前駆体(a)100質量部に対して、5~80質量部が好ましく、特に10~60質量部が好ましい。熱発色性化合物の含有量が5質量部以上であれば、硬化膜の紫外可視光領域における透過率を低下させることができる。また80質量部以下であれば、硬化膜の耐熱性や強度を維持し、吸水率を低減することができる。
<ポリイミド前駆体(a)以外の樹脂>
本発明における感光性樹脂組成物は、ポリイミド前駆体(a)以外の樹脂を含有してもよい。ポリイミド前駆体(a)以外の樹脂(a)としては、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリアミドイミド、ポリアミドイミド前駆体、ポリアミド、酸性基を有するラジカル重合性モノマーの重合体、フェノール樹脂などが挙げられるが、これに限定されない。これらの樹脂はアルカリ可溶性を有することが好ましく、これらの樹脂を2種以上含有してもよい。これらの樹脂の中でも、現像密着性が高いこと、耐熱性に優れ、高温下におけるアウトガス量が少ないことによって、後述する硬化膜を有機EL表示装置に用いた時の長期信頼性が高いことから、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール前駆体またはそれらの共重合体がより好ましい。ここで、ポリベンゾオキサゾール前駆体とは、加熱処理や化学処理によりポリベンゾオキサゾールに変換される樹脂を指し、例えば、ポリヒドロキシアミドなどが挙げられる。
【0110】
<ラジカル重合性化合物>
本発明の感光性樹脂組成物は、さらに、ラジカル重合性化合物を含有してもよい。
ラジカル重合性化合物とは、分子中に複数のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物をいう。露光時、前述の光重合開始剤(c2)から発生するラジカルによって、ラジカル重合性化合物のラジカル重合が進行し、光照射部が不溶化することにより、ネガ型のパターンを得ることができる。さらにラジカル重合性化合物を含有することにより、光照射部の光硬化が促進されて、感度をより向上させることができる。加えて、熱硬化後の架橋密度が向上することから、硬化膜の硬度を向上させることができる。
【0111】
ラジカル重合性化合物としては、ラジカル重合の進行しやすい、(メタ)アクリル基を有する化合物が好ましい。露光時の感度向上及び硬化膜の硬度向上の観点から、(メタ)アクリル基を分子内に二つ以上有する化合物がより好ましい。ラジカル重合性化合物の二重結合当量としては、露光時の感度向上及び硬化膜の硬度向上の観点から、80~400g/molが好ましい。
【0112】
ラジカル重合性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-(3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、1,3,5-トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌル酸、1,3-ビス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌル酸、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(3-(メタ)アクリロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス(4-(メタ)アクリロキシフェニル)フルオレンまたはそれらの酸変性体、エチレンオキシド変性体、プロピレンオキシド変性体などが挙げられる。
【0113】
本発明の感光性樹脂組成物において、ラジカル重合性化合物の含有量は、感度をより向上させ、テーパー角度を低減する観点から、ポリイミド前駆体(a)およびラジカル重合性化合物の合計100質量部に対して、15質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましい。一方、硬化膜の耐熱性をより向上させ、テーパー角度を低減する観点から、65質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましい。
【0114】
<熱架橋剤>
本発明の感光性樹脂組成物は、さらに、熱架橋剤を含有してもよい。熱架橋剤とは、アルコキシメチル基、メチロール基、エポキシ基、オキセタニル基などの熱反応性の官能基を分子内に少なくとも2つ有する化合物を指す。熱架橋剤を含有することによりポリイミド前駆体(a)またはその他添加成分を架橋し、熱硬化後の膜の耐熱性、耐薬品性および折り曲げ耐性を向上させることができる。一方、低温焼成時のイミド化率向上および後述する本発明の硬化膜を有機EL表示装置の平坦化層および/または絶縁層としたときの長期信頼性を向上させる観点から、エポキシ基およびオキセタニル基を含まない熱架橋剤が好ましい。これは、エポキシ基およびオキセタニル基等のフェノール性水酸基と反応する熱架橋剤を本発明の感光性樹脂組成物が含有する場合、フェノール化合物(b)のフェノール水酸基と熱架橋剤が反応し、本発明の効果が小さくなるためと推定される。
【0115】
アルコキシメチル基またはメチロール基を少なくとも2つ有する化合物の好ましい例としては、DML-PC、DML-PEP、DML-OC、DML-OEP、DML-34X、DML-PTBP、DML-PCHP、DML-OCHP、DML-PFP、DML-PSBP、DML-POP、DML-MBOC、DML-MBPC、DML-MTrisPC、DML-BisOC-Z、DML-BisOCHP-Z、DML-BPC、DML-BisOC-P、DMOM-PC、DMOM-PTBP、DMOM-MBPC、TriML-P、TriML-35XL、TML-HQ、TML-BP、TML-pp-BPF、TML-BPE、TML-BPA、TML-BPAF、TML-BPAP、TMOM-BP、TMOM-BPE、TMOM-BPA、TMOM-BPAF、TMOM-BPAP、HML-TPPHBA、HML-TPHAP、HMOM-TPPHBA、HMOM-TPHAP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、“NIKALAC”(登録商標)MX-290、“NIKALAC”MX-280、“NIKALAC”MX-270、“NIKALAC”MX-279、“NIKALAC”MW-100LM、“NIKALAC”MX-750LM(以上、商品名、(株)三和ケミカル製)が挙げられる。
【0116】
エポキシ基を少なくとも2つ有する化合物の好ましい例としては、“エポライト”(登録商標)40E、“エポライト”100E、“エポライト”200E、“エポライト”400E、“エポライト”70P、“エポライト”200P、“エポライト”400P、“エポライト”1500NP、“エポライト”80MF、“エポライト”4000、“エポライト”3002(以上、共栄社化学(株)製)、“デナコール”(登録商標)EX-212L、“デナコール”EX-214L、“デナコール”EX-216L、“デナコール”EX-850L(以上、ナガセケムテックス(株)製)、GAN、GOT(以上、日本化薬(株)製)、“エピコート”(登録商標)828、“エピコート”1002、“エピコート”1750、“エピコート”1007、YX8100-BH30、E1256、E4250、E4275(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、“エピクロン”(登録商標)EXA-9583、HP4032(以上、DIC(株)製)、VG3101(三井化学(株)製)、“テピック”(登録商標)S、“テピック”G、“テピック”P(以上、日産化学工業(株)製)、“デナコール”EX-321L(ナガセケムテックス(株)製)、NC6000(日本化薬(株)製)、“エポトート”(登録商標)YH-434L(東都化成(株)製)、EPPN502H、NC3000(日本化薬(株)製)、“エピクロン”(登録商標)N695、HP7200(以上、DIC(株)製)などが挙げられる。
【0117】
オキセタニル基を少なくとも2つ有する化合物の好ましい例としては、例えば、エタナコールEHO、エタナコールOXBP、エタナコールOXTP、エタナコールOXMA(以上、宇部興産(株)製)、オキセタン化フェノールノボラックなどが挙げられる。
熱架橋剤は2種類以上を組み合わせて含有してもよい。
【0118】
熱架橋剤を含有する場合の含有量は、溶剤を除く感光性樹脂組成物全量100質量%中に、1質量%以上30質量%以下が好ましい。熱架橋剤の含有量が1質量部以上であれば、硬化膜の耐薬品性および折り曲げ耐性をより高めることができる。また、熱架橋剤の含有量が30質量部以下であれば、硬化膜からのアウトガス量をより低減し、有機EL表示装置の長期信頼性をより高めることができ、感光性樹脂組成物の保存安定性にも優れる。
【0119】
<溶剤>
本発明の感光性樹脂組成物は、さらに、溶剤を含有してもよい。溶剤を含有することにより、ワニスの状態にすることができ、塗布性を向上させることができる。
【0120】
溶剤としては、γ-ブチロラクトンなどの極性の非プロトン性溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、ジアセトンアルコールなどのケトン類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチルなどのエステル類、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、ぎ酸n-ペンチル、酢酸i-ペンチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸i-プロピル、酪酸n-ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸エチル等の他のエステル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド等のアミド類、3-メチル-2-オキサゾリジノンなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0121】
溶剤を含有する場合の含有量は、特に限定されないが、溶剤を除く感光性樹脂組成物全量100質量部に対して、100~3000質量部が好ましく、150~2000質量部がさらに好ましい。また、溶剤全量100質量%中における沸点180℃以上の溶剤が占める割合は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。沸点180℃以上の溶剤の割合を20質量%以下にすることにより、熱硬化後のアウトガス量をより低減することができ、有機EL装置の長期信頼性をより高めることができる。
【0122】
<密着改良剤>
本発明の感光性樹脂組成物は、さらに、密着改良剤を含有してもよい。密着改良剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、チタンキレート剤、アルミキレート剤、芳香族アミン化合物とアルコキシ基含有ケイ素化合物を反応させて得られる化合物などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの密着改良剤を含有することにより、樹脂膜を現像する場合などに、シリコンウエハ、酸化インジウムスズ(ITO)、SiO、窒化ケイ素などの下地基材との現像密着性を高めることができる。また、洗浄などに用いられる酸素プラズマ、UVオゾン処理に対する耐性を高めることができる。密着改良剤を含有する場合の含有量は、溶剤を除く感光性樹脂組成物全量100質量%中に、0.01~10質量%が好ましい。
【0123】
<界面活性剤>
本発明の感光性樹脂組成物は、さらに、必要に応じて界面活性剤を含有してもよく、基板との濡れ性を向上させることができる。界面活性剤としては、例えば、東レ・ダウコーニング(株)のSHシリーズ、SDシリーズ、STシリーズ、ビックケミー・ジャパン(株)のBYKシリーズ、信越化学工業(株)のKPシリーズ、日油(株)のディスフォームシリーズ、DIC(株)の“メガファック(登録商標)”シリーズ、住友スリーエム(株)のフロラードシリーズ、旭硝子(株)の“サーフロン(登録商標)”シリーズ、“アサヒガード(登録商標)”シリーズ、オムノヴァ・ソルーション社のポリフォックスシリーズなどのフッ素系界面活性剤、共栄社化学(株)のポリフローシリーズ、楠本化成(株)の“ディスパロン(登録商標)”シリーズなどのアクリル系および/またはメタクリル系の界面活性剤などが挙げられる。
【0124】
界面活性剤を含有する場合の含有量は、溶剤を除く感光性樹脂組成物全量100質量%中に、好ましくは0.001~1質量%である。
【0125】
<無機粒子>
本発明の感光性樹脂組成物は、さらに、無機粒子を含有してもよい。無機粒子の好ましい具体例としては、例えば、酸化珪素、酸化チタン、チタン酸バリウム、アルミナ、タルクなどが挙げられる。無機粒子の一次粒子径は100nm以下が好ましく、60nm以下がより好ましい。
【0126】
無機粒子を含有する場合の含有量は、溶剤を除く感光性樹脂組成物全量100質量%中に、好ましくは5~90質量%である。
【0127】
<感光性樹脂組成物の製造方法>
次に、本発明の感光性樹脂組成物を製造する方法について説明する。例えば、ポリイミド前駆体(a)、フェノール化合物(b)および感光性化合物(c)と、必要により、着色材(d)、熱発色性化合物、ラジカル重合性化合物、熱架橋剤、溶剤、密着改良剤、界面活性剤、無機粒子などを溶解させることにより、本発明の感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0128】
溶解方法としては、撹拌や加熱が挙げられる。加熱する場合、加熱温度は感光性樹脂組成物の性能を損なわない範囲で設定することが好ましく、通常、室温~80℃である。また、各成分の溶解順序は特に限定されず、例えば、溶解性の低い化合物から順次溶解させる方法が挙げられる。また、界面活性剤や一部の密着改良剤など、撹拌溶解時に気泡を発生しやすい成分については、他の成分を溶解してから最後に添加することにより、気泡の発生による他成分の溶解不良を防ぐことができる。
【0129】
得られた感光性樹脂組成物は、濾過フィルターを用いて濾過し、ゴミや粒子を除去することが好ましい。フィルター孔径は、例えば0.5μm、0.2μm、0.1μm、0.07μm、0.05μm、0.02μmなどが挙げられるが、これらに限定されない。濾過フィルターの材質には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン(NY)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが挙げられる。中でも、ポリエチレンやナイロンが好ましい。
【0130】
<感光性樹脂膜、感光性樹脂シート>
本発明の感光性樹脂シートは、本発明の感光性樹脂組成物から形成された感光性樹脂シートである。本発明の感光性樹脂シートは、例えば、ポリエチレンテレフタラートなどの剥離性基材上に本発明の感光性樹脂組成物を塗布および乾燥することにより得ることができる。
【0131】
本発明において、感光性樹脂膜は、本発明の感光性樹脂組成物を塗布して感光性樹脂組成物の塗布膜を得て、乾燥することにより得ることができる。また、感光性樹脂シートを感光性樹脂膜としてもよい。
【0132】
本発明の感光性樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、スリットコート法、ディップコート法、スプレーコート法、印刷法などが挙げられる。これらの中でも、少量の塗布液で塗布を行うことができ、コスト低減に有利であることから、スリットコート法が好ましい。スリットコート法に必要とされる塗布液の量は、例えば、スピンコート法と比較すると、1/5~1/10程度である。塗布に用いるスリットノズルとしては、例えば、大日本スクリーン製造(株)製「リニアコーター」、東京応化工業(株)製「スピンレス」、東レエンジニアリング(株)製「TSコーター」、中外炉工業(株)製「テーブルコータ」、東京エレクトロン(株)製「CSシリーズ」「CLシリーズ」、サーマトロニクス貿易(株)製「インライン型スリットコーター」、平田機工(株)製「ヘッドコーターHCシリーズ」など、複数のメーカーから上市されているものを選択することができる。塗布速度は、10mm/秒~400mm/秒の範囲が一般的である。塗布膜の膜厚は、樹脂組成物の固形分濃度、粘度などによって異なるが、通常、乾燥後の膜厚が0.1~10μm、好ましくは0.3~5μmになるように塗布される。
【0133】
塗布に先立ち、感光性樹脂組成物を塗布する基材を、予め前述した密着改良剤で前処理してもよい。前処理方法としては、例えば、密着改良剤をイソプロパノール、エタノール、メタノール、水、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、アジピン酸ジエチルなどの溶媒に0.5~20質量%溶解させた溶液を用いて、基材表面を処理する方法が挙げられる。基材表面の処理方法としては、スピンコート法、スリットダイコート法、バーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、蒸気処理法などの方法が挙げられる。
【0134】
塗布後、必要に応じて減圧乾燥処理を施す。
【0135】
減圧乾燥速度は、真空チャンバー容積、真空ポンプ能力やチャンバーとポンプ間の配管径等にもよるが、例えば、塗布基板のない状態で、真空チャンバー内が60秒経過後40Paまで減圧される条件等に設定することが好ましい。一般的な減圧乾燥時間は、30秒から100秒程度であることが多く、減圧乾燥終了時の真空チャンバー内到達圧力は、塗布基板のある状態で通常100Pa以下である。到達圧を100Pa以下にすることにより塗布膜表面のべた付きを低減した乾燥状態にすることができ、これにより、続く基板搬送における表面汚染やパーティクルの発生を抑制することができる。
【0136】
塗布後または減圧乾燥後、塗布膜を加熱乾燥することが一般的である。この工程をプリベークとも言う。乾燥はホットプレート、オーブン、赤外線などを使用する。ホットプレートを用いる場合、プレート上に直接、もしくは、プレート上に設置したプロキシピン等の治具上に塗布膜を保持して加熱する。加熱時間は1分間~数時間が好ましい。加熱温度は塗布膜の種類や目的により様々であるが、プリベーク時の溶剤乾燥を促進する観点から、80℃以上が好ましく、90℃以上がさらに好ましい。一方、プリベーク時のイミド化進行を低減する観点から150℃以下が好ましく、140℃以下がさらに好ましい。本発明における感光性樹脂組成物は、前述のポリイミド前駆体(a)およびフェノール化合物(b)を含有することにより、プリベーク時ではイミド化の進行が抑えられるが、200℃以下の温度で焼成した場合でも高いイミド化率の硬化膜を得ることができる。
【0137】
感光性樹脂膜および感光性樹脂シートは、パターンを形成することができる。例えば、感光性樹脂膜および感光性樹脂シートに、所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射することにより露光し、現像することにより、所望のパターンを形成することができる。
【0138】
露光に用いられる化学線としては、紫外線、可視光線、電子線、X線などが挙げられる。本発明においては、水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いることが好ましい。ポジ型の感光性を有する場合、露光部が現像液に溶解する。ネガ型の感光性を有する場合、露光部が硬化し、現像液に不溶化する。
【0139】
露光後、ポジ型の場合は露光部を、ネガ型の場合は非露光部を、現像液により除去することによって所望のパターンを形成する。現像液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。これらのアルカリ水溶液に、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを1種以上添加してもよい。現像方式としては、スプレー、パドル、浸漬、超音波等の方式が挙げられる。
【0140】
次に、現像によって形成したパターンを、蒸留水によりリンス処理することが好ましい。エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを蒸留水に加えてリンス処理してもよい。
【0141】
<硬化膜>
本発明の硬化膜は、本発明の感光性樹脂組成物または本発明の感光性樹脂シートを硬化した硬化膜である。本発明の感光性樹脂組成物や本発明の感光性樹脂シートを加熱硬化することにより、耐熱性の低い成分を除去できるため、耐熱性および耐薬品性をより向上させることができる。特に、本発明の感光性樹脂組成物または本発明の感光性樹脂シートは、ポリイミド前駆体を含み、加熱硬化によりイミド環を形成するため、耐熱性および耐薬品性をより向上させることができる。
【0142】
本発明の硬化膜は、例えば、基板上に、駆動回路、平坦化層、第1電極、絶縁層、発光層および第2電極を有する有機EL表示装置における平坦化層および/または絶縁層に好適に用いることができる。
【0143】
また、本発明の硬化膜は、例えば、基板上に、電極、金属配線、層間絶縁層および/または表面保護層を有する電子部品における層間絶縁層および/または表面保護層に好適に用いることができる。
【0144】
<硬化膜の製造方法>
本発明の硬化膜の製造方法の第一の態様は、基板上に、本発明の感光性樹脂組成物または本発明の感光性樹脂シートからなる感光性樹脂膜を形成する工程、該感光性樹脂膜を露光する工程、露光した感光性樹脂膜を現像する工程および現像した感光性樹脂膜を200℃以下で加熱処理する工程を含む。
【0145】
本発明の硬化膜の製造方法の第二の態様は、基板上に、本発明の感光性樹脂組成物または本発明の感光性樹脂シートからなる感光性樹脂膜を形成する工程、該感光性樹脂膜を露光する工程、露光した感光性樹脂膜を現像する工程および現像した感光性樹脂膜を酸素濃度1%以上の雰囲気で加熱処理する工程を含む。なお、本発明において、酸素濃度は体積濃度を表す。
【0146】
本発明の硬化膜の製造方法における感光性樹脂膜を形成する工程、感光性樹脂膜を露光する工程、および露光した感光性樹脂膜を現像する工程については、上記<感光性樹脂膜、感光性樹脂シート>の項目に記載のとおりである。
【0147】
本発明の硬化膜の製造方法の第一の態様は、感光性樹脂膜を200℃以下で加熱処理する工程を含む。本発明の感光性樹脂組成物は、ポリイミド前駆体(a)およびフェノール化合物(b)を含有することにより、200℃以下で加熱処理した場合でも高いイミド化率の硬化膜を得ることができる。特に、感光性樹脂組成物がさらに着色剤(d)を含有する場合には、着色剤(d)の退色をより抑制しやすい観点から、200℃以下で加熱処理することが好ましい。
【0148】
本発明の硬化膜の製造方法において、加熱処理する工程における温度は、段階的に昇温させてもよいし、連続的に昇温させてもよい。
【0149】
本発明の硬化膜の製造方法において、加熱硬化時の雰囲気は、硬化膜から発生するアウトガス量をより低減させ、硬化膜を有機EL表示装置の平坦化層および/または絶縁層としたときの長期信頼性を高める観点から不活性ガス雰囲気が好ましい。不活性ガスの具体例としては、窒素やアルゴンなどが挙げられる。
【0150】
本発明の硬化膜の製造方法の第一の態様において、不活性ガス雰囲気中の酸素濃度は5%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、0.5%以下がさらに好ましく、0.01%以下が特に好ましい。
【0151】
本発明の硬化膜の製造方法の第一の態様において、加熱処理する工程における加熱時間 は、アウトガス量をより低減させる観点から、30分間以上が好ましい。なお、本発明において、加熱時間とは加熱処理工程における最高到達温度での保持時間を表す。また、硬化膜の膜靭性を向上させる観点から3時間以下が好ましい。加熱処理の方法としては、例えば、200℃で30分間熱処理する方法や、150℃、200℃で各30分間ずつ熱処理する方法、室温から200℃まで2時間かけて直線的に昇温しながら熱処理する方法などが挙げられる。
【0152】
本発明の硬化膜の製造方法の第二の態様は、現像した感光性樹脂膜を酸素濃度1%以上の雰囲気で加熱処理する工程を含む。本発明の感光性樹脂組成物は、ポリイミド前駆体(a)およびフェノール化合物(b)を含有することにより、硬化膜を有機EL表示装置の平坦化層および/または絶縁層としたときの長期信頼性を向上させることができるため、酸素濃度1%以上でも好適に加熱硬化させることができる。
【0153】
本発明の硬化膜の製造方法の第二の態様において、加熱処理工程における温度は、硬化膜から発生するアウトガス量をより低減させる観点から、180℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、230℃以上がさらに好ましく、250℃以上が特に好ましい。一方、硬化膜の膜靭性を向上させる観点から、前記温度は500℃以下が好ましく、450℃以下がより好ましい。
【0154】
本発明の硬化膜の製造方法の第二の態様において、感光性樹脂組成物がさらに着色剤(d)を含有する場合、着色剤(d)の退色を抑制しやすい観点から、加熱処理工程における温度は230℃以下が好ましく、200℃以下がさらに好ましい。
【0155】
本発明の硬化膜の製造方法の第二の態様において、加熱処理する工程における加熱時間は、アウトガス量をより低減させる観点から、30分間以上が好ましい。また、硬化膜の膜靭性を向上させる観点から3時間以下が好ましい。加熱処理の方法としては、例えば、250℃で30分間熱処理する方法や、150℃、250℃で各30分間ずつ熱処理する方法、室温から300℃まで2時間かけて直線的に昇温しながら熱処理する方法などが挙げられる。
【0156】
<感光性樹脂組成物、感光性樹脂シートおよび硬化膜の適用例>
本発明の感光性樹脂組成物、感光性樹脂シートおよび硬化膜は、半導体素子の表面保護層や層間絶縁層、有機エレクトロルミネッセンス(Electroluminescence:以下ELと記す)素子の絶縁層、有機EL素子を用いた表示装置の駆動用薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下TFTと記す)基板の平坦化層、回路基板の配線保護絶縁層、固体撮像素子のオンチップマイクロレンズや各種ディスプレイ・固体撮像素子用平坦化層に好適に用いられる。例えば、耐熱性の低いMRAM、次世代メモリとして有望なポリマーメモリ(Polymer Ferroelectric RAM:PFRAM)や相変化メモリ(Phase Change RAM:PCRAM、Ovonics Unified Memory:OUM)などの表面保護層や層間絶縁層として好適である。また、基板上に形成された第一電極と、前記第一電極に対向して設けられた第二電極とを含む表示装置、例えば、LCD、ECD、ELD、有機電界発光素子を用いた表示装置(有機電界発光装置)などの絶縁層にも用いることができる。以下、有機EL表示装置および半導体装置、半導体電子部品を例に説明する。
【0157】
<有機EL表示装置>
本発明の有機EL表示装置は、基板上に、駆動回路、平坦化層、第1電極、絶縁層、発光層および第2電極を有する有機EL表示装置であって、平坦化層および/または絶縁層が本発明の硬化膜を有する。有機発光材料は一般にガス成分や水分に弱く、これらに曝されることで発光輝度低下や画素シュリンクを引き起こす。ここで画素シュリンクとは、画素の端部から発光輝度が低下する、もしくは不点灯となる現象を指す。本発明の有機EL表示装置が、本発明の硬化膜を有機EL表示装置の平坦化層および/または絶縁層に含むことで長期信頼性を向上させることができる。特に絶縁層は有機発光材料と隣り合うため、平坦化層よりも長期信頼性に対する影響が大きい。したがって、長期信頼性の高い有機EL表示装置を得るためには本発明の硬化膜を少なくとも絶縁層に含むことが好ましい。
【0158】
アクティブマトリックス型の表示装置を例に挙げると、ガラスや各種プラスチックなどの基板上に、TFTと、TFTの側方部に位置しTFTと接続された配線とを有し、その上に凹凸を覆うようにして平坦化層を有し、さらに平坦化層上に表示素子が設けられている。表示素子と配線とは、平坦化層に形成されたコンタクトホールを介して接続される。特に、近年有機EL表示装置のフレキシブル化が主流になっているため、前述の駆動回路を有する基板が樹脂フィルムを含む有機EL表示装置であることが好ましい。本発明の感光性樹脂組成物または感光性シートを硬化した硬化膜をそのようなフレキシブルディスプレイの絶縁層、平坦化層として用いると、折り曲げ耐性に優れるため特に好ましく用いられる。本発明の感光性樹脂組成物または感光性シートを硬化した硬化膜との密着性を向上させる観点から、樹脂フィルムとしてはポリイミドが特に好ましい。
【0159】
本発明の硬化膜を前記平坦化層として用いる場合の膜厚は、1.0~5.0μmが好ましく、より好ましくは2.0μm以上である。平坦化層を前述の範囲内とすることで、高精細化により密集したTFTや配線の平坦度を向上させることができる。平坦化層が厚膜化すると、アウトガスが増加し、有機EL表示装置の長期信頼性が低下する原因となるが、本発明の硬化膜は厚膜化した場合でも長期信頼性を向上させることができる。また高精細化のため、TFTや配線を膜厚方向にも配置できることから、前記平坦化層は多層であることが好ましく、前記平坦化層が2~5層からなることがより好ましい。
【0160】
図2にTFT基板の一例の断面図を示す。基板6上に、ボトムゲート型またはトップゲート型のTFT(薄膜トランジスタ)1が行列状に設けられており、このTFT1を覆う状態でTFT絶縁層3が形成されている。また、このTFT絶縁層3上にTFT1に接続された配線2が設けられている。さらにTFT絶縁層3上には、配線2を埋め込む状態で平坦化層4が設けられている。平坦化層4には、配線2に達するコンタクトホール7が設けられている。そして、このコンタクトホール7を介して、配線2に接続された状態で、平坦化層4上にITO(透明電極)5が形成されている。ここで、ITO5は、表示素子(例えば有機EL素子)の電極となる。そしてITO5の周縁を覆うように絶縁層8が形成される。有機EL素子は、基板6と反対側から発光光を放出するトップエミッション型でもよいし、基板6側から光を取り出すボトムエミッション型でもよい。このようにして、各有機EL素子にこれを駆動するためのTFT1を接続したアクティブマトリックス型の有機EL表示装置が得られる。
【0161】
かかるTFT絶縁層3、平坦化層4および/または絶縁層8は、前述の通り本発明の感光性樹脂組成物または感光性樹脂シートからなる感光性樹脂膜を形成する工程、前記感光性樹脂膜を露光する工程、露光した感光性樹脂膜を現像する工程および現像した感光性樹脂膜を加熱処理する工程により形成することができる。これらの工程を有する製造方法より、有機EL表示装置を得ることができる。
【0162】
<電子部品>
本発明の電子部品は、基板上に、電極および金属配線を有し、さらに層間絶縁層および/または表面保護層を有する電子部品であって、該層間絶縁層および/または表面保護層のうち少なくとも一部に本発明の硬化膜を有する。
【0163】
電子部品の具体例としては、トランジスタ、ダイオード、集積回路(以下、IC)、メモリなどの半導体を有する能動部品、抵抗、キャパシタ、インダクタなどの受動部品が挙げられる。以下、半導体を用いた電子部品を半導体装置と称する場合がある。
【0164】
電子部品内の硬化膜の具体例としては、半導体のパッシベーション膜、半導体素子、TFTなどの表面保護膜、2~10層の高密度実装用多層配線における層間絶縁膜、タッチパネルディスプレーの絶縁膜、保護膜などが挙げられるが、これに制限されず、様々な構造をとることができる。
【0165】
半導体装置を例に説明すると、本発明の硬化膜は機械特性に優れるため、実装時も封止樹脂からの応力を緩和することでき、low-k層のダメージを抑制し、高信頼性の半導体装置を提供できる。
【0166】
図3に、バンプを有する半導体装置のパッド部分の一例の拡大断面図を示す。シリコンウエハ9に、入出力用のAlパッド10およびビアホールを有するパッシベーション層11が形成されている。さらに、パッシベーション層11上に絶縁層12が形成され、さらに、Cr、Ti等からなる金属層13がAlパッド10と接続されるように形成され、電解めっき等でAl、Cu等からなる金属配線14が形成されている。ハンダバンプ18の周辺に位置する金属層13をエッチングすることにより、各パッド間を絶縁する。絶縁されたパッドにはバリアメタル16とハンダバンプ18が形成されている。絶縁膜15を加工する際に、スクライブライン17が形成される。
【0167】
次に、半導体装置の製造方法について図面を用いて説明する。図4に、バンプを有する半導体装置の製造方法の一例を示す。3aの工程において、Alパッド10およびパッシベーション層11が形成されたシリコンウエハ9上に本発明の感光性樹脂組成物を塗布し、フォトリソ工程を経て、パターン形成された絶縁層12を形成する。ついで、3bの工程において、スパッタリング法により金属層13を形成する。3cの工程において、金属層13の上にメッキ法により金属配線14を成膜する。次に、3d’の工程において、本発明の感光性樹脂組成物を塗布し、3dの工程において、フォトリソ工程を経て絶縁層15のパターンを形成する。この際に、絶縁層15を構成する樹脂組成物は、スクライブライン17において、厚膜加工される。絶縁層15の上にさらに配線(いわゆる再配線)を形成することができる。2層以上の多層配線構造を形成する場合は、上記の工程を繰り返して行うことにより、2層以上の再配線が、本発明の硬化膜からなる層間絶縁層により分離された多層配線構造を形成することができる。多層配線構造の層数には上限はないが、10層以下のものが多く用いられる。次いで、3eの工程において、バリアメタル16を形成し、3fの工程において、ハンダバンプ18を形成する。そして、最後のスクライブライン17に沿ってダイシングしてチップ毎に切り分け、バンプを有する半導体装置を得ることができる。
【実施例
【0168】
以下、実施例等をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、実施例中の各評価は以下の方法により行った。
【0169】
(1)イミド化率
各実施例および比較例により得られたワニスを、スピンコーター(MS-A100;ミカサ(株)製)を用いて、シリコンウエハ上に任意の回転数でスピンコーティング法により塗布した。次に、ホットプレート(SCW-636;大日本スクリーン製造(株)製)を用いて120℃で2分間ベークし、膜厚2.0μmのプリベーク膜を作製した。なお、膜厚は、大日本スクリーン製造(株)製ラムダエースSTM-602を用いて、屈折率1.63の条件で測定した。得られたプリベーク膜を3つにカットし、1つ目は何も処理せず、2つ目はイナートオーブンCLH-21CD-S(光洋サーモシステム(株)製)を用いて200℃にて酸素濃度0.01%の窒素雰囲気下で1時間加熱処理し、3つ目は250℃にて酸素濃度0.01%の窒素雰囲気下で1時間加熱処理し、感光性樹脂組成物プリベーク膜、200℃および250℃の硬化膜を作製した。
【0170】
フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光社製)を用いて、ATR法により、得られたプリベーク膜、200℃および250℃の硬化膜の赤外線吸収スペクトルを得た。数式(5)に基づき、250℃で1時間加熱した後の硬化膜をイミド化率100%として、各サンプルのポリイミドC-N-Cに由来する1371cm-1の吸収強度(A(1371cm-1))と、ベンゼン環に由来する1437cm-1の吸収強度(A(1437cm-1))との比から、プリベーク膜および200℃の硬化膜それぞれのイミド化率(%)を計算した。数式(5)中、X(%)はイミド化率を表す。200℃の硬化膜のイミド化率が90%以上であった場合は「A」、90%未満75%以上であった場合は「B」、75%未満であった場合は「C」と判定した。なお、200℃の硬化膜のイミド化率が75%以上であってもプリベーク膜のイミド化率が30%以上であった場合は「C」と判定した。
【0171】
【数2】
【0172】
(2)感度(パターン加工性)
各実施例および比較例により得られたワニスを、塗布現像装置ACT-8(東京エレクトロン(株)製)を用いて、8インチシリコンウェハー上にスピンコート法により塗布し、120℃で2分間ベークをして膜厚3.0μmのプリベーク膜を作製した。なお、膜厚は、大日本スクリーン製造(株)製ラムダエースSTM-602を用いて、屈折率1.63の条件で測定した。その後、露光機i線ステッパーNSR-2005i9C(ニコン社製)を用いて、10μmのコンタクトホールのパターンを有するマスクを介して、露光量50~300mJ/cmの範囲で5mJ/cm毎に露光した。露光後、前記ACT-8の現像装置を用いて、2.38質量%のテトラメチルアンモニウム水溶液(以下TMAH、多摩化学工業(株)製)を現像液として、膜減り量が0.5μmになるまで現像した後、蒸留水でリンスを行い、振り切り乾燥し、パターンを得た。
【0173】
得られたパターンをFDP顕微鏡MX61(オリンパス(株)製)を用いて倍率20倍で観察し、コンタクトホールの開口径を測定した。コンタクトホールの開口径が10μmに達した最低露光量を求め、これを感度とした。感度が150mJ/cm未満であった場合は「S」、150mJ/cm以上200mJ/cm未満であった場合は「A」、200mJ/cm以上250mJ/cm未満であった場合は「B」、250mJ/m以上であった場合は「C」と判定した。
【0174】
(3)残膜率
(2)感度評価と同様にして得られた膜厚3.0μmのプリベーク膜をACT-8の現像装置を用いて、2.38質量%のTMAH水溶液を現像液として、60秒間現像した後、蒸留水でリンスを行い、振り切り乾燥し、現像膜を得た。プリベーク膜に対する現像膜の膜厚の割合を残膜率とした(残膜率=(現像膜の膜厚)/(プリベーク膜の膜厚)×100)。残膜率が80%以上であった場合は「A」、80%未満65%以上であった場合は「B」、65%未満であった場合は「C」と判定した。
【0175】
(4)有機EL表示装置の長期信頼性評価
図5に有機EL表示装置の作製手順の概略図を示す。まず、38mm×46mmの無アルカリガラス基板19に、ITO透明導電膜10nmをスパッタ法により基板全面に形成し、第一電極(透明電極)20としてエッチングした。また同時に、第二電極を取り出すための補助電極21も形成した。得られた基板をセミコクリーン56(商品名、フルウチ化学(株)製)で10分間超音波洗浄してから、超純水で洗浄した。次にこの基板全面に、表2および表3に示す感光性樹脂組成物をスピンコート法により塗布し、120℃のホットプレート上で2分間プリベークした。この膜にフォトマスクを介してUV露光した後、2.38質量%TMAH水溶液で現像し、不要な部分を溶解させ、純水でリンスした。得られた樹脂パターンを、イナートオーブンCLH-21CD-S(光洋サーモシステム(株)製)を用いて酸素濃度0.01%の窒素雰囲気下200℃で1時間加熱処理した。このようにして、幅70μm、長さ260μmの開口部が幅方向にピッチ155μm、長さ方向にピッチ465μmで配置され、それぞれの開口部が第一電極を露出せしめる形状の絶縁層22を、基板有効エリアに限定して形成した。このようにして、1辺が16mmの四角形である基板有効エリアに絶縁層開口率25%の絶縁層を形成した。絶縁層の厚さは約1.0μmであった。
【0176】
次に、前処理として窒素プラズマ処理を行った後、真空蒸着法により発光層を含む有機EL層23を形成した。なお、蒸着時の真空度は1×10-3Pa以下であり、蒸着中は蒸着源に対して基板を回転させた。まず、正孔注入層として化合物(HT-1)を10nm、正孔輸送層として化合物(HT-2)を50nm蒸着した。次に発光層に、ホスト材料としての化合物(GH-1)とドーパント材料としての化合物(GD-1)を、ドープ濃度が10%になるようにして40nmの厚さに蒸着した。次に、電子輸送材料として化合物(ET-1)と化合物(LiQ)を体積比1:1で40nmの厚さに積層した。有機EL層で用いた化合物の構造を以下に示す。
【0177】
【化6】
【0178】
次に、化合物(LiQ)を2nm蒸着した後、MgおよびAgを体積比10:1で10nm蒸着して第二電極(非透明電極)24とした。最後に、低湿窒素雰囲気下でキャップ状ガラス板をエポキシ樹脂系接着剤を用いて接着することで封止をし、1枚の基板上に1辺が5mmの四角形であるトップエミッション方式の有機EL表示装置を4つ作製した。なお、ここで言う膜厚は水晶発振式膜厚モニターにおける表示値である。
【0179】
作製した有機EL表示装置を、発光面を上にして80℃に加熱したホットプレートに載せ、波長365nm、照度0.6mW/cmのUV光を照射した。照射直後(0時間)、250時間、500時間、1000時間経過後に、有機EL表示装置0.625mAの直流駆動により発光させ、発光画素の面積に対する発光部の面積率(画素発光面積率)を測定した。この評価方法による1000時間経過後の画素発光面積率として、80%以上であった場合は「S」、80%未満70%以上であった場合は「A」、70%未満60%以上であった場合は「B」、60%未満であった場合は「C」と判定した。
【0180】
合成例1 ヒドロキシル基含有ジアミン化合物(α)の合成
2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(以降BAHFと呼ぶ)18.3g(0.05モル)をアセトン100mL、プロピレンオキシド17.4g(0.3モル)に溶解させ、-15℃に冷却した。ここに3-ニトロベンゾイルクロリド20.4g(0.11モル)をアセトン100mLに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、-15℃で4時間反応させ、その後室温に戻した。析出した白色固体をろ別し、50℃で真空乾燥した。
【0181】
固体30gを300mLのステンレスオートクレーブに入れ、メチルセロソルブ250mLに分散させ、5%パラジウム-炭素を2g加えた。ここに水素を風船で導入して、還元反応を室温で行った。約2時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認して反応を終了させた。反応終了後、濾過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、下記式で表されるヒドロキシル基含有ジアミン化合物(α)(Ip7.16eV、計算値)を得た。
【0182】
【化7】
【0183】
合成例2 キノンジアジド化合物(c-1)の合成
乾燥窒素気流下、TrisP-PA(商品名、本州化学工業(株)製)21.22g(0.05モル)と5-ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド36.27g(0.135モル)を1,4-ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4-ジオキサン50gと混合したトリエチルアミン15.18gを、系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間撹拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、ろ液を水に投入した。その後、析出した沈殿をろ過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、下記式で表されるキノンジアジド化合物(c-1)を得た。
【0184】
【化8】
【0185】
合成例3 アルカリ可溶性樹脂(a-1)の合成
乾燥窒素気流下、ODPA31.02g(0.10モル)をNMP500gに溶解させた。ここにBAHF23.81g(0.065モル)、o-トリジン4.25g(0.02モル)、とSiDA1.24g(0.005モル)をNMP50gとともに加えて、40℃で2時間反応させた。次に末端封止剤としてMAP2.18g(0.02モル)をNMP5gとともに加え、50℃で2時間反応させた。その後、N,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタール32.39g(0.22モル)をNMP50gで希釈した溶液を投入した。投入後、50℃で3時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水3Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、ポリイミド前駆体(a-1)を得た。
【0186】
合成例4~15、比較合成例1~3
アミン成分、酸成分を表1に記載の通り変更した以外は合成例3と同様にしてポリイミド前駆体(a-2)~(a-13)、(a’-1)~(a’-3)を得た。
【0187】
各合成例、比較合成例、実施例、比較例で用いた化合物の名称と、HMOM-TPHAP、VG3101Lについては構造式を以下に示す。
o-トリジン:o-トリジン(Ip6.58eV、文献値)
DAE:4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(Ip6.78eV、文献値)(エーテル結合を有するジアミン)
MDA:4,4’-ジアミノジフェニルメタン(Ip6.94eV、文献値)
TDE-R:1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(Ip7.08eV、計算値)(エーテル結合を有するジアミン)
BAHF:2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(Ip7.88eV、計算値)
SiDA:1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(Ip8.03eV、計算値)
MAP:3-アミノフェノール
ODPA:3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物
6FDA:2,2-ビス(3,4-ジカルポキシフェニル)ヘキサフルオ口プロパン二無水物
b-1:ビスフェノールAF(pKa=10.8)((b1)および(b2)の要件を満たす電子求引性基を有するフェノール化合物(b))
b-2:ビスフェノールS(pKa=9.8)((b1)および(b2)の要件を満たす電子求引性基を有するフェノール化合物(b))
b-3:4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン(pKa=11.3)((b2)の要件を満たす電子求引性基を有するフェノール化合物(b))
b-4:4-(トリフルオロメチル)フェノール(pKa=10.5)((b1)の要件を満たす電子求引性基を有するフェノール化合物(b))
b-5:3-(トリフルオロメチル)フェノール(pKa=11.2)(電子求引性基を有するフェノール化合物(b))
b’-1:ビスフェノールA(pKa=11.6)(電子求引性基を有さないフェノール化合物)
b’-2:パラクレゾール(pKa=12.8)(電子求引性基を有さないフェノール化合物)
GBL:γ-ブチロラクトン
NMP:N-メチルピロリドン
TsOH:p-トルエンスルホン酸
DBU:1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン
【0188】
【化9】
【0189】
実施例1
ポリイミド前駆体(a-1)10.0g、フェノール化合物(b-1)2.0g、キノンジアジド化合物(c-1)2.0gをGBL30gに加えてポジ型感光性樹脂組成物のワニスを得た。得られたワニスを用いて前記のようにイミド化率、感度、残膜率、有機EL表示装置の長期信頼性の評価を行った。
【0190】
実施例2~23、比較例1~7、比較例10~15
ポリイミド前駆体(a)、フェノール化合物(b)、感光性化合物(c)、その他添加剤を表2に記載の通り変更した以外は実施例1と同様にしてポジ型感光性樹脂組成物のワニスを得た。得られたワニスを用いて前記のようにイミド化率、感度、残膜率、有機EL表示装置の長期信頼性の評価を行った。
【0191】
実施例24
実施例2で得られたワニスを用いて、樹脂パターンの加熱処理温度を200℃から250℃に変更した以外は、実施例2と同様にして有機EL表示装置の長期信頼性の評価を行った。
【0192】
実施例25
実施例2で得られたワニスを用いて、樹脂パターンの加熱処理雰囲気を酸素濃度0.01%の窒素雰囲気下から酸素濃度1%の窒素雰囲気下に変更した以外は、実施例2と同様にして有機EL表示装置の長期信頼性の評価を行った。
【0193】
実施例26
実施例2で得られたワニスを用いて、樹脂パターンの加熱処理雰囲気を酸素濃度0.01%の窒素雰囲気下から酸素濃度5%の窒素雰囲気下に変更した以外は、実施例2と同様にして有機EL表示装置の長期信頼性の評価を行った。
【0194】
実施例27
実施例2で得られたワニスを用いて、樹脂パターンの加熱処理雰囲気を酸素濃度0.01%の窒素雰囲気下から酸素濃度21%の大気雰囲気下に変更した以外は、実施例2と同様にして有機EL表示装置の長期信頼性の評価を行った。
【0195】
実施例28
ポリイミド前駆体(a-2)10.0g、フェノール化合物(b-1)2.0g、キノンジアジド化合物(c-1)2.0g、4,4’,4’’-メチリデントリスフェノール(e-1)2.5g、Valifast Red 1308(d1-2-1)1.5g、Oil Blue 613(d1-3-1)2.5gをGBL30gに加えてポジ型感光性樹脂組成物のワニスを得た。得られたワニスを用いて前記のようにイミド化率、感度、残膜率、有機EL表示装置の長期信頼性の評価を行った。なお、樹脂パターンの加熱処理雰囲気は酸素濃度21%の大気雰囲気下、加熱処理温度は200℃とした。
【0196】
続いて(1)イミド化率と同様の方法で、無アルカリガラス基板上に膜厚1.0μmの200℃で加熱処理した硬化膜を作製した。透過濃度計(X-Rite 361T(V);X-Rite社製)を用いて、作製した硬化膜の入射光強度(I0)および透過光強度(I)をそれぞれ測定した。遮光性の指標として、OD値を下記式により算出したところ、OD値は0.6であった。
OD値=log10(I0/I)。
【0197】
実施例29
実施例28で得られたワニスを用いて、樹脂パターンの加熱処理温度を200℃から250℃に変更した以外は、実施例28と同様にして有機EL表示装置の長期信頼性の評価を行った。
【0198】
続いて、加熱処理温度を200℃から250℃に変更した以外は実施例28と同様にして硬化膜のOD値を算出したところ、加熱処理中に一部着色剤の退色が進行し、OD値は0.3であった。
【0199】
比較例8
ポリイミド前駆体(a’-1)10.0g、キノンジアジド化合物(c-1)2.0gをGBL30gに加えた。そこにTsOH1.0gを加えてポジ型感光性樹脂組成物のワニスを得た。得られたワニスを用いて前記のようにイミド化率、感度、残膜率、有機EL表示装置の長期信頼性の評価を行った。
【0200】
比較例9
ポリイミド前駆体(a’-1)10.0g、キノンジアジド化合物(c-1)2.0gをGBL30gに加えた。そこにDBU1.0gを加えたところ、ワニスは黒色化し、キノンジアジド化合物の分解物が析出したため、評価を中止した。
【0201】
比較例16
比較例1で得られたワニスを用いて、樹脂パターンの加熱処理温度を200℃から250℃に変更した以外は、比較例1と同様にして有機EL表示装置の長期信頼性の評価を行った。
【0202】
比較例17
比較例1で得られたワニスを用いて、樹脂パターンの加熱処理雰囲気を酸素濃度0.01%から酸素濃度1%の窒素雰囲気下に変更した以外は、比較例1と同様にして有機EL表示装置の長期信頼性の評価を行った。
【0203】
比較例18
比較例1で得られたワニスを用いて、樹脂パターンの加熱処理雰囲気を酸素濃度0.01%から酸素濃度5%の窒素雰囲気下に変更した以外は、比較例1と同様にして有機EL表示装置の長期信頼性の評価を行った。
【0204】
比較例19
比較例1で得られたワニスを用いて、樹脂パターンの加熱処理雰囲気を酸素濃度0.01%の窒素雰囲気下から酸素濃度21%の大気雰囲気下に変更した以外は、比較例1と同様にして有機EL表示装置の長期信頼性の評価を行った。
【0205】
各実施例および比較例の組成および評価結果を表2~5に示す。
【0206】
【表1】
【0207】
【表2-1】
【0208】
【表2-2】
【0209】
【表3】
【0210】
【表4-1】
【0211】
【表4-2】
【0212】
【表5-1】
【0213】
【表5-2】
【符号の説明】
【0214】
1:TFT(薄膜トランジスタ)
2:配線
3:TFT絶縁層
4:平坦化層
5:ITO(透明電極)
6:基板
7:コンタクトホール
8:絶縁層
9:シリコンウエハ
10:Alパッド
11:パッシベーション層
12:絶縁層
13:金属(Cr、Ti等)層
14:金属配線(Al、Cu等)
15:絶縁層
16:バリアメタル
17:スクライブライン
18:ハンダバンプ
19:無アルカリガラス基板
20:第一電極(透明電極)
21:補助電極
22:絶縁層
23:有機EL層
24:第二電極(非透明電極)
図1
図2
図3
図4
図5