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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】弾性クローラ
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/253 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
B62D55/253 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021000566
(22)【出願日】2021-01-05
(65)【公開番号】P2022105926
(43)【公開日】2022-07-15
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】小松 宙夢
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-196058(JP,A)
【文献】特開平11-348848(JP,A)
【文献】特開2009-234425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/253
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性クローラであって、
無端帯状の弾性体からなるクローラ本体と、
前記クローラ本体にクローラ周方向に間隔を空けて埋設された芯体と、
前記クローラ本体の前記芯体よりもクローラ外周側に埋設されかつ前記クローラ本体に抗張力を付与するための抗張体とを含み、
前記芯体は、中心部と、前記中心部のクローラ幅方向の外側でクローラ内周側に転輪が通過可能な第1面が形成された第1基部と、前記中心部に対し前記第1基部とは反対側でクローラ内周側に転輪が通過可能な第2面が形成された第2基部と、前記第1基部からクローラ幅方向の外側に延びる第1翼部と、前記第2基部からクローラ幅方向の外側に延びる第2翼部とを有し、
クローラ幅方向の中心から前記第2翼部の先端までの距離は、クローラ幅方向の中心から前記第1翼部の先端までの距離の0.9~1.1倍であり、
前記第2面と前記抗張体とのクローラ厚さ方向の距離は、前記第1面と前記抗張体とのクローラ厚さ方向の距離の0.9~1.1倍であり、
前記第2基部のクローラ厚さ方向の厚さは、前記第1基部のクローラ厚さ方向の厚さよりも小さく、
前記第2基部の外端を含む領域には、クローラ外周側に突出する凸部が設けられる、
弾性クローラ。
【請求項2】
前記中心部には、クローラ内周側に突出する一対のガイド突起が設けられる、請求項1に記載の弾性クローラ。
【請求項3】
前記第2基部のクローラ厚さ方向の厚さは、前記第1基部のクローラ厚さ方向の厚さの0.6~0.8倍である、請求項1又は2に記載の弾性クローラ。
【請求項4】
前記凸部は、クローラ厚さ方向で最も外側に位置する最外部を有し、
前記最外部は、前記第2基部の前記外端よりもクローラ幅方向の外側に位置する、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の弾性クローラ。
【請求項5】
前記最外部における前記第2翼部のクローラ幅方向に直交する断面の断面係数は、クローラ幅方向の中心に対して前記最外部と対称の位置における前記第1翼部のクローラ幅方向に直交する断面の断面係数の0.9~1.1倍である、請求項4に記載の弾性クローラ。
【請求項6】
前記凸部は、前記最外部からクローラ幅方向の外側に延びる外側斜面と、前記最外部からクローラ幅方向の内側に延びる内側斜面とを有し、
前記最外部と前記外側斜面との接続部及び前記最外部と前記内側斜面との接続部は、それぞれ、クローラ周方向に直交する断面において、曲率半径が5mm以上の円弧状に形成される、請求項4又は5に記載の弾性クローラ。
【請求項7】
前記第2翼部のクローラ内周側は、クローラ厚さ方向に対して傾斜する傾斜内面と、クローラ厚さ方向に対して直交する直交内面とを有し、
前記凸部のクローラ幅方向の外端は、前記傾斜内面と前記直交内面との接続部よりもクローラ幅方向の外側に位置する、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の弾性クローラ。
【請求項8】
前記凸部のクローラ幅方向の外端は、クローラ周方向に直交する断面において、曲率半径が5mm以上の円弧状に形成される、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の弾性クローラ。
【請求項9】
前記クローラ本体は、クローラ幅方向の第1エッジと第2エッジとを有し、
前記芯体は、前記第1エッジの側に前記第1翼部が位置する第1状態と、前記第2エッジの側に前記第1翼部が位置する第2状態とが、クローラ周方向で交互に現れるように配置される、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の弾性クローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端帯状の弾性クローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性体からなるクローラ本体と、クローラ本体に埋設された芯材と、クローラ本体の芯材よりもクローラ外周面側に埋設された抗張体とを含む弾性クローラが知られている。例えば、下記特許文献1は、クローラ本体に埋設された第1芯材が、第1抗張体に接近して配された第1翼部と、第2抗張体から離間して配された第2翼部とを含むことにより、耐久性と軽量化とを両立した弾性クローラを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-199174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の弾性クローラは、第2翼部が第1翼部よりもクローラ幅方向の長さが小さく、弾性クローラが異物に乗り上げた場合に、クローラ本体の第1翼部付近に応力が集中し、クローラ本体にクラックや欠け等が生じる耳切れという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、耐久性と軽量化と耐耳切れ性とをバランスよく向上させ得る弾性クローラを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は弾性クローラであって、無端帯状の弾性体からなるクローラ本体と、前記クローラ本体にクローラ周方向に間隔を空けて埋設された芯体と、前記クローラ本体の前記芯体よりもクローラ外周側に埋設されかつ前記クローラ本体に抗張力を付与するための抗張体とを含み、前記芯体は、中心部と、前記中心部のクローラ幅方向の外側でクローラ内周側に転輪が通過可能な第1面が形成された第1基部と、前記中心部に対し前記第1基部とは反対側でクローラ内周側に転輪が通過可能な第2面が形成された第2基部と、前記第1基部からクローラ幅方向の外側に延びる第1翼部と、前記第2基部からクローラ幅方向の外側に延びる第2翼部とを有し、クローラ幅方向の中心から前記第2翼部の先端までの距離は、クローラ幅方向の中心から前記第1翼部の先端までの距離の0.9~1.1倍であり、前記第2面と前記抗張体とのクローラ厚さ方向の距離は、前記第1面と前記抗張体とのクローラ厚さ方向の距離の0.9~1.1倍であり、前記第2基部のクローラ厚さ方向の厚さは、前記第1基部のクローラ厚さ方向の厚さよりも小さく、前記第2基部の外端を含む領域には、クローラ外周側に突出する凸部が設けられることを特徴とする。
【0007】
本発明の弾性クローラにおいて、前記中心部には、クローラ内周側に突出する一対のガイド突起が設けられるのが望ましい。
【0008】
本発明の弾性クローラにおいて、前記第2基部のクローラ厚さ方向の厚さは、前記第1基部のクローラ厚さ方向の厚さの0.6~0.8倍であるのが望ましい。
【0009】
本発明の弾性クローラにおいて、前記凸部は、クローラ厚さ方向で最も外側に位置する最外部を有し、前記最外部は、前記第2基部の前記外端よりもクローラ幅方向の外側に位置するのが望ましい。
【0010】
本発明の弾性クローラにおいて、前記最外部における前記第2翼部のクローラ幅方向に直交する断面の断面係数は、クローラ幅方向の中心に対して前記最外部と対称の位置における前記第1翼部のクローラ幅方向に直交する断面の断面係数の0.9~1.1倍であるのが望ましい。
【0011】
本発明の弾性クローラにおいて、前記凸部は、前記最外部からクローラ幅方向の外側に延びる外側斜面と、前記最外部からクローラ幅方向の内側に延びる内側斜面とを有し、前記最外部と前記外側斜面との接続部及び前記最外部と前記内側斜面との接続部は、それぞれ、クローラ周方向に直交する断面において、曲率半径が5mm以上の円弧状に形成されるのが望ましい。
【0012】
本発明の弾性クローラにおいて、前記第2翼部のクローラ内周側は、クローラ厚さ方向に対して傾斜する傾斜内面と、クローラ厚さ方向に対して直交する直交内面とを有し、
前記凸部のクローラ幅方向の外端は、前記傾斜内面と前記直交内面との接続部よりもクローラ幅方向の外側に位置するのが望ましい。
【0013】
本発明の弾性クローラにおいて、前記凸部のクローラ幅方向の外端は、クローラ周方向に直交する断面において、曲率半径が5mm以上の円弧状に形成されるのが望ましい。
【0014】
本発明の弾性クローラにおいて、前記クローラ本体は、クローラ幅方向の第1エッジと第2エッジとを有し、前記芯体は、前記第1エッジの側に前記第1翼部が位置する第1状態と、前記第2エッジの側に前記第1翼部が位置する第2状態とが、クローラ周方向で交互に現れるように配置されるのが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の弾性クローラにおいて、芯体は、中心部と、前記中心部のクローラ幅方向の外側でクローラ内周側に転輪が通過可能な第1面が形成された第1基部と、前記中心部に対し前記第1基部とは反対側でクローラ内周側に転輪が通過可能な第2面が形成された第2基部と、前記第1基部からクローラ幅方向の外側に延びる第1翼部と、前記第2基部からクローラ幅方向の外側に延びる第2翼部とを有し、クローラ幅方向の中心から前記第2翼部の先端までの距離は、クローラ幅方向の中心から前記第1翼部の先端までの距離の0.9~1.1倍である。
【0016】
このような芯体は、第1翼部の先端と第2翼部の先端とのクローラ幅方向の位置が等しいので、弾性クローラが異物に乗り上げた場合にもクローラ本体に作用する応力を第1翼部と第2翼部とに均等に分散することができる。このため、弾性クローラは、クローラ本体の第1翼部付近に応力が集中することを抑制し、耐耳切れ性を向上させることができる。
【0017】
本発明の弾性クローラにおいて、前記第2面と前記抗張体とのクローラ厚さ方向の距離は、前記第1面と前記抗張体とのクローラ厚さ方向の距離の0.9~1.1倍であり、前記第2基部のクローラ厚さ方向の厚さは、前記第1基部のクローラ厚さ方向の厚さよりも小さい。
【0018】
このような弾性クローラは、弾性クローラに大きな外力が作用した場合にも、第2基部と抗張体との間の弾性体が収縮することで芯体に作用する力を分散することができ、耐久性を向上させることができる。また、第2基部は、第1基部よりも小さく形成することができるので、弾性クローラを軽量化することができる。
【0019】
本発明の弾性クローラにおいて、前記第2基部の外端を含む領域には、クローラ外周側に突出する凸部が設けられている。このような芯体は、弾性クローラに急激な外力が作用したときにも、第1基部よりも厚さが小さく、応力が集中し易い第2基部の外端付近が折損することを抑制し、弾性クローラの耐久性を向上させることができる。このため、本発明の弾性クローラは、耐久性と軽量化と耐耳切れ性とをバランスよく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の弾性クローラの一実施形態を示す斜視図である。
図2】弾性クローラのクローラ周方向に直交する断面図である。
図3】芯体の部分拡大図である。
図4】芯体及び抗張体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。
図1は、本実施形態の弾性クローラ1を示す斜視図である。図1に示されるように、本実施形態の弾性クローラ1は、クローラ本体2と、クローラ本体2に埋設された芯体3と、クローラ本体2に抗張力Fを付与するための抗張体4とを含んでいる。このような弾性クローラ1は、例えば、建設機械等の走行体として好適に用いられる。
【0022】
クローラ本体2は、例えば、ゴム等の弾性体からなる。本実施形態のクローラ本体2は、クローラ周方向に延び、かつ、略一定の幅を有する無端帯状である。クローラ本体2は、例えば、クローラ幅方向の第1エッジ2aと第2エッジ2bとを有している。
【0023】
ここで、本明細書において、クローラ周方向は、弾性クローラ1の回転方向であり、図1の符号aで示される方向に相当する。また、クローラ幅方向は、弾性クローラ1が車両に装着されるときの駆動輪(図示省略)の軸方向であり、図1の符号bで示される方向に相当する。さらに、クローラ厚さ方向は、クローラ周方向a及びクローラ幅方向bに直交する方向であり、図1の符号cで示される方向に相当する。クローラ厚さ方向cのうち、無端帯状の弾性クローラ1の内側が、クローラ内周側ciとされ、無端帯状の弾性クローラ1の外側が、クローラ外周側coとされる。
【0024】
本実施形態のクローラ本体2は、クローラ外周側coの外周面2oとクローラ内周側ciの内周面2iとを有している。クローラ本体2の外周面2oには、例えば、複数のラグ5が形成されている。このような弾性クローラ1は、悪路走破性と振動、騒音性能及び乗り心地性能とを両立することができる。
【0025】
本実施形態の芯体3は、クローラ本体2に、クローラ周方向aに間隔を空けて埋設されている。芯体3は、クローラ本体2を構成する弾性体よりも硬質の材料からなるのが望ましい。芯体3は、例えば、鋼、鋳鉄等の金属材料により形成されている。芯体3は、硬質樹脂により形成されていてもよい。このような芯体3は、弾性クローラ1に好適に用いられ、クローラ本体2を補強し、クローラ本体2の形状を保持することができる。
【0026】
抗張体4は、クローラ本体2の芯体3よりもクローラ外周側coに埋設されるのが望ましい。抗張体4は、例えば、クローラ周方向aに延びる複数の金属コード6がクローラ幅方向bに並べられている。このような抗張体4は、クローラ本体2のクローラ幅方向bに均等に、抗張力Fを付与することができる。
【0027】
図2は、弾性クローラ1のクローラ周方向aに直交する断面図である。図2に示されるように、本実施形態の芯体3は、中心部7と、第1基部8と、第2基部9と、第1翼部10と、第2翼部11とを有している。中心部7は、例えば、クローラ幅方向bの中心CL上に位置し、駆動輪(図示省略)からの駆動力を弾性クローラ1に伝達している。ここで、中心CLは、クローラ本体2のクローラ幅方向bの中央位置である。
【0028】
中心部7には、例えば、クローラ内周側ciに突出する一対のガイド突起7aが設けられている。このようなガイド突起7aは、駆動輪や転輪(図示省略)のクローラ幅方向bの位置を規制し、脱輪を防止することができる。
【0029】
本実施形態の第1基部8には、中心部7のクローラ幅方向bの外側でクローラ内周側ciに転輪が通過可能な第1面8aが形成されている。すなわち、第1基部8は、第1面8aが形成された部分である。本実施形態の第2基部9は、中心部7に対し第1基部8とは反対側でクローラ内周側ciに転輪が通過可能な第2面9aが形成されている。すなわち、第2基部9は、第2面9aが形成された部分である。
【0030】
第1面8aと抗張体4とのクローラ厚さ方向cの距離L1と第2面9aと抗張体4とのクローラ厚さ方向cの距離L2とは、略等しいのが望ましい。第2面9aと抗張体4との距離L2は、好ましくは、第1面8aと抗張体4との距離L1の0.9~1.1倍である。
【0031】
ここで、第1面8a又は第2面9aと抗張体4との距離L1、L2は、第1面8a又は第2面9aと、抗張体4の複数の金属コード6の中心との距離の平均として求められる。このような芯体3は、通常走行時に転輪等から受ける外力をクローラ幅方向bでバランスよく抗張体4に分散することができ、脱輪の防止することに役立つ。
【0032】
本実施形態の第2基部9のクローラ厚さ方向cの厚さt2は、第1基部8のクローラ厚さ方向cの厚さt1よりも小さい。これにより、第1基部8は、抗張体4に接近して配され、抗張体4から抗張力Fを受ける。一方、第2基部9は、抗張体4から離間して配され、抗張体4から抗張力Fを受けない。
【0033】
このような弾性クローラ1は、第2基部9が抗張力Fを受けないので、弾性クローラ1に大きな外力が作用した場合にも、第2基部9と抗張体4との間の弾性体が収縮することで芯体3に作用する力を分散することができる。このため、芯体3には、大きな力が作用することが抑制され、弾性クローラ1の耐久性を向上させることができる。また、第2基部9は、第1基部8よりも小さく形成することができるので、弾性クローラ1を軽量化することができる。
【0034】
第2基部9の厚さt2は、好ましくは、第1基部8の厚さt1の0.6~0.8倍である。第2基部9の厚さt2が第1基部8の厚さt1の0.6倍以上であることで、芯体3の強度が維持され、弾性クローラ1の耐久性を向上させることに役立つ。第2基部9の厚さt2が第1基部8の厚さt1の0.8倍以下であることで、大きな外力が作用したときに収縮する弾性体を確保することができ、弾性クローラ1の耐久性を向上させることができる。
【0035】
クローラ幅方向bの中心CLから第1基部8の外端8bまでの距離L3とクローラ幅方向bの中心CLから第2基部9の外端9bまでの距離L4は、略等しいのが望ましい。中心CLから第2基部9の外端9bまでの距離L4は、好ましくは、中心CLから第1基部8の外端8bまでの距離L3の0.9~1.1倍である。このような芯体3は、転輪をクローラ幅方向bでバランスよく支持することができ、弾性クローラ1の耐久性を向上させることに役立つ。
【0036】
本実施形態の第1翼部10は、第1基部8からクローラ幅方向bの外側に延びている。本実施形態の第2翼部11は、第2基部9からクローラ幅方向bの外側に延びている。すなわち、第1基部8の外端8bは、第1翼部10と第1基部8との境界部に相当する。また、第2基部9の外端9bは、第2翼部11と第2基部9との境界部に相当する。
【0037】
クローラ幅方向bの中心CLから第1翼部10の先端10aまでの距離L5とクローラ幅方向bの中心CLから第2翼部11の先端11aまでの距離L6は、略等しいのが望ましい。中心CLから第2翼部11の先端11aまでの距離L6は、クローラ幅方向bの中心CLから第1翼部10の先端10aまでの距離L5の0.9~1.1倍である。
【0038】
このような芯体3は、第1翼部10の先端10aと第2翼部11の先端11aとのクローラ幅方向bの位置が等しいので、弾性クローラ1が異物に乗り上げた場合にもクローラ本体2に作用する応力を第1翼部10と第2翼部11とに均等に分散することができる。このため、弾性クローラ1は、クローラ本体2の第1翼部10付近に応力が集中することを抑制し、耐耳切れ性を向上することができる。
【0039】
本実施形態の第2基部9の外端9bを含む領域には、クローラ外周側coに突出する凸部12が設けられている。このような芯体3は、弾性クローラ1に急激な外力が作用したときにも、第1基部8よりも厚さが小さく、応力が集中し易い第2基部9の外端9b付近が折損することを抑制し、弾性クローラ1の耐久性を向上させることができる。このため、本実施形態の弾性クローラ1は、耐久性と軽量化と耐耳切れ性とをバランスよく向上させることができる。
【0040】
図3は、芯体3の部分拡大図である。図3に示されるように、凸部12は、例えば、クローラ厚さ方向cで最も外側に位置する最外部12aを有している。本実施形態の最外部12aは、第2基部9との外端9bよりもクローラ幅方向bの外側に位置している。このような凸部12は、第2翼部11の折損が発生し易い部分の断面係数を大きくすることができ、弾性クローラ1の耐久性をより向上させることができる。
【0041】
凸部12は、例えば、最外部12aからクローラ幅方向bの外側に延びる外側斜面12bと、最外部12aからクローラ幅方向bの内側に延びる内側斜面12cとを有している。本実施形態の最外部12aと外側斜面12bとの接続部12d及び最外部12aと内側斜面12cとの接続部12eは、それぞれ、クローラ周方向aに直交する断面において、円弧状に形成されている。
【0042】
最外部12aと外側斜面12bとの接続部12dは、好ましくは、曲率半径R1が5mm以上の円弧状に形成されている。最外部12aと内側斜面12cとの接続部12eは、好ましくは、曲率半径R2が5mm以上の円弧状に形成されている。このような凸部12は、接続部12d、12eに応力が集中することを抑制し、弾性クローラ1の耐久性を向上させることに役立つ。
【0043】
外側斜面12b側の曲率半径R1と内側斜面12c側の曲率半径R2とは、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。また、最外部12aは、例えば、その全体が円弧状に形成されてもよい。この場合の最外部12aは、外側斜面12bと内側斜面12cとの接続部である。
【0044】
凸部12のクローラ幅方向bの外端12fは、クローラ周方向aに直交する断面において、好ましくは、曲率半径R3が5mm以上の円弧状に形成されている。凸部12のクローラ幅方向bの内端12gは、クローラ周方向aに直交する断面において、好ましくは、曲率半径R4が5mm以上の円弧状に形成されている。このような凸部12は、外端12f及び内端12gに応力が集中することを抑制し、弾性クローラ1の耐久性を向上させることに役立つ。
【0045】
本実施形態の第2翼部11のクローラ内周側ciは、クローラ厚さ方向cに対して傾斜する傾斜内面11bと、クローラ厚さ方向cに対して直交する直交内面11cとを有している。凸部12のクローラ幅方向bの外端12fは、傾斜内面11bと直交内面11cとの接続部11dよりもクローラ幅方向bの外側に位置するのが望ましい。このような凸部12は、第2翼部11の折損が発生し易い部分の断面係数を大きくすることができ、弾性クローラ1の耐久性をより向上させることができる。
【0046】
傾斜内面11bと直交内面11cとの接続部11dは、クローラ周方向aに直交する断面において、好ましくは、曲率半径R5が5mm以上の円弧状に形成されている。このような第2翼部11は、接続部11dに応力が集中することを抑制し、弾性クローラ1の耐久性を向上させることに役立つ。
【0047】
図2に示されるように、最外部12aにおける第2翼部11の断面係数は、クローラ幅方向bの中心CLに対して最外部12aと対称の位置10bにおける第1翼部10の断面係数に略等しいのが望ましい。最外部12aにおける第2翼部11の断面係数は、好ましくは、対称の位置10bにおける第1翼部10の断面係数の0.9~1.1倍である。
【0048】
ここで、第1翼部10及び第2翼部11の断面係数は、それぞれ、第1翼部10及び第2翼部11のクローラ幅方向bに直交する断面の断面係数である。また、第1翼部10の対称の位置10bは、クローラ幅方向bの中心CLから対称の位置10bまでの距離L7が、クローラ幅方向bの中心CLから最外部12aまでの距離L8に等しい位置である。また、最外部12aがクローラ幅方向bに延びる平面を含む場合の最外部12aまでの距離L8は、最外部12aを構成する部分のクローラ幅方向bの中央位置までの距離である。
【0049】
図4は、芯体3及び抗張体4の斜視図である。図1及び図4に示されるように、芯体3は、第1エッジ2aの側に第1翼部10が位置する第1状態S1と、第2エッジ2bの側に第1翼部10が位置する第2状態S2とが、クローラ周方向aで交互に現れるように配置されるのが望ましい。このような弾性クローラ1は、第1エッジ2a側と第2エッジ2b側とのいずれかに大きな外力が作用したときにも、耐久性と耐耳切れ性とを向上させることができる。
【0050】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施され得る。
【実施例
【0051】
図1ないし図4に示される実施例の弾性クローラが試作された。比較対象として、クローラ幅方向の両側が第1基部及び第1翼部である芯体が対称形の比較例1の弾性クローラと、第2翼部がない芯体の比較例2の弾性クローラとが試作された。試作された弾性クローラを用いて、耐久性と、軽量化と、耐耳切れ性とがテストされた。テスト方法は、以下のとおりである。
【0052】
<耐久性>
試作された弾性クローラをテスト車両であるクローラ式建設機械に装着し、駆動輪と弾性クローラとの間に異物を噛み込ませた駆動させたときに、芯体が損傷するまでの回数が測定された。結果は、比較例1を100とする指数で示され、数値が大きいほど、耐久性に優れていることを示す。
【0053】
<軽量化>
試作された弾性クローラの1本分の重量が測定された、結果は、重量の逆数が比較例1を100とする指数で示され、数値が大きいほど、重量が軽く、軽量化に優れていることを示す。
【0054】
<耐耳切れ性>
試作された弾性クローラをテスト車両であるクローラ式建設機械に装着し、高さ20cmの縁石に、縁石が伸びた方向に対して弾性クローラの幅方向が20°となる角度で乗り上げたときに、耳切れが発生するまでの回数が測定された。結果は、比較例1を100とする指数で示され、数値が大きいほど、耐耳切れ性に優れていることを示す。
【0055】
テストの結果が表1に示される。
【表1】
【0056】
テストの結果、実施例の弾性クローラは、比較例1に対して軽量化に優れており、比較例2に対して、耐久性及び耐耳切れ性に優れており、耐久性と、軽量化と、耐耳切れ性とをバランスよく向上させていることが確認された。
【符号の説明】
【0057】
1 弾性クローラ
2 クローラ本体
3 芯体
4 抗張体
7 中心部
8 第1基部
8a 第1面
9 第2基部
9a 第2面
9b 外端
10 第1翼部
11 第2翼部
12 凸部
図1
図2
図3
図4