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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】噴霧器
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/08 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
A61M15/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021004063
(22)【出願日】2021-01-14
(65)【公開番号】P2022108870
(43)【公開日】2022-07-27
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢部 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】広部 輝久
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-231932(JP,A)
【文献】国際公開第2009/057572(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/002398(WO,A1)
【文献】特開2013-208391(JP,A)
【文献】特表2004-500201(JP,A)
【文献】国際公開第2011/111687(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を噴霧するための噴霧ノズルと、
先端と基端を有し、前記噴霧ノズルが前記先端に取り付けられ、前記先端と前記基端とを結ぶ軸に沿って延びる中空部を有するバレルと、
前記バレルの前記基端に設けられたフィンガーグリップと、
前記バレル内に配置され、前記バレル内を摺動可能なガスケットと、
前記ガスケットの基端側に設けられ、その先端側が前記バレルの前記中空部に挿入されたロッドと、
前記ロッドにスライド可能に取り付けられ、前記ロッドに当接して前記ロッドを先端側に押圧することが可能なプランジャと、を備え、
前記プランジャは、前記フィンガーグリップに当接される当接部と、基端側の端部に設けられた第1の押圧面とを備え、
前記ロッドは基端側の端部に第2の押圧面を備え、
前記当接部は前記フィンガーグリップに当接することで、前記ガスケットが前記バレルの前記先端と前記基端との間に位置する状態で前記プランジャの先端側への動きを規制する、噴霧器。
【請求項2】
前記第1の押圧面および前記第2の押圧面の少なくとも一方には、操作者が押圧する順序が表示されている、請求項1に記載の噴霧器。
【請求項3】
前記第1の押圧面と前記第2の押圧面とは近接して設けられており、
前記第2の押圧面の面積は前記第1の押圧面の面積よりも大きい、請求項1または請求項2に記載の噴霧器。
【請求項4】
前記第1の押圧面は前記第2の押圧面よりも基端側に位置している、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の噴霧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧器に関し、より詳しくは噴霧により薬剤を投与する器具に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤を投与する方法には種々の方法があるが、その一つに鼻腔投与がある。鼻腔投与は各々の鼻孔に通常は同量の薬剤を噴霧する方法である。鼻腔投与には投与に皮下注射のような痛みを伴わないという優れた特性がある。
【0003】
鼻腔投与では、各々の鼻腔に薬剤を噴霧するので、2回の投与操作が必要である。一つの噴霧器で2回の薬剤投与を可能にした噴霧器としてたとえば特許文献1(国際公開第2012/002398)に記載の噴霧器がある。特許文献1に記載の噴霧器においては、1回目の投与操作の後、ロッドを回転させることで2回目の投与操作が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2012/002398
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の噴霧器において1回目の投与操作の後に2回目の投与操作を行なうためには、ロッドを回転させる必要がある。ロッドを回転させるためには、操作者は一方の手で薬液が貯蔵されたバレルを把持し、他方の手でロッドを回転させる必要がある。そのため、操作者は、1回目の投与を終えた後、噴霧器を持ち替えて両方の手で噴霧器を操作する必要がある。
【0006】
本開示は上記の課題を解決するためになされたものであり、操作者が1回目の投与操作の後、持ち替えることなく2回目の投与操作を行なうことができる噴霧器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に基づく噴霧器は、薬液を噴霧するための噴霧ノズルと、先端と基端を有し、上記噴霧ノズルが上記先端に取り付けられ、上記先端と上記基端とを結ぶ軸に沿って延びる中空部を有するバレルと、上記バレルの上記基端に設けられたフィンガーグリップと、上記バレル内に配置され、上記バレル内を摺動可能なガスケットと、上記ガスケットの基端側に設けられ、その先端側が上記バレルの上記中空部に挿入されたロッドと、上記ロッドにスライド可能に取り付けられ、上記ロッドに当接して上記ロッドを先端側に押圧することが可能なプランジャとを備えている。上記プランジャは、上記フィンガーグリップに当接される当接部と、基端側の端部に設けられた第1の押圧面とを備えている。上記ロッドは基端側の端部に第2の押圧面を備えている。上記当接部は上記フィンガーグリップに当接することで、上記ガスケットが上記バレルの上記先端と上記基端との間に位置する状態で上記プランジャの先端側への動きを規制する。
【0008】
上記噴霧器において、上記第1の押圧面および上記第2の押圧面の少なくとも一方には、操作者が押圧する順序が表示されていてもよい。
【0009】
上記噴霧器において、上記第1の押圧面と上記第2の押圧面とは近接して設けられており、上記第2の押圧面の面積は上記第1の押圧面の面積よりも大きくてもよい。
【0010】
上記噴霧器において、上記第1の押圧面は上記第2の押圧面よりも基端側に位置していてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、操作者が1回目の投与操作の後、持ち替えることなく2回目の投与操作を行なうことが可能な噴霧器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態に係る噴霧器の1回目の投与操作前の状態における斜視図である。
図2】本実施の形態に係る噴霧器の1回目の投与操作前の状態における正面図である。
図3】本実施の形態に係る噴霧器の分解斜視図である。
図4】本実施の形態に係るフィンガーグリップの斜視図である。
図5】本実施の形態に係るロッドの斜視図である。
図6】本実施の形態に係るプランジャの斜視図である。
図7】本実施の形態に係る噴霧器の1回目の投与操作前の状態における基端側から見た斜視図である。
図8】本実施の形態に係る噴霧器の1回目の投与操作が終了した状態における正面図である。
図9】本実施の形態に係る噴霧器の2回目の投与操作が終了した状態における正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示に係る噴霧器の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。図1は、本実施の形態に係る噴霧器の1回目の投与操作前の状態における斜視図である。図2は、本実施の形態に係る噴霧器の1回目の投与操作前の状態における正面図である。図3は、本実施の形態に係る噴霧器の分解斜視図である。図4は、本実施の形態に係るフィンガーグリップの斜視図である。図5は、本実施の形態に係るロッドの斜視図である。図6は、本実施の形態に係るプランジャの斜視図である。図7は、本実施の形態に係る噴霧器の1回目の投与操作前の状態における基端側から見た斜視図である。
【0014】
本実施の形態に係る噴霧器は、薬液を一対の鼻腔の各々に投与するための二段階投与機構を有する噴霧器である。
【0015】
本実施の形態に係る噴霧器1は、噴霧ノズル100と、バレル200と、フィンガーグリップ300と、ガスケット400と、ロッド500と、プランジャ700とを備えている。以下の説明において、噴霧ノズル100の側を先端側、噴霧器1のロッド500の後端側を基端側という。
【0016】
噴霧ノズル100は、先端に薬液を噴霧する噴霧孔が設けられている。噴霧ノズル100の基端側にはノズル側接続部110が設けられている。ノズル側接続部110はバレル200の先端に設けられたバレル側接続部210に嵌合することで接続される。
【0017】
噴霧ノズル100の内部には、バレル200内の薬液の圧力を高めて噴霧力を付加するための図示しない圧力付加部材が設けられている。圧力付加部材は、徐々に狭くなる流路を有しており、これによって噴霧ノズル100に移送されてきた薬液の圧力を高める。
【0018】
バレル200は、先端270と基端280とを有している。バレル200には、噴霧ノズル100が先端270に取り付けられる。バレル200は、先端270と基端280とを結ぶ軸(以下、「バレル中心軸」という)に沿って延びる中空部240を有している。中空部240は円筒状の空間である。中空部240には図示しない薬液が貯留される。
【0019】
バレル200の先端270にはバレル側接続部210が設けられている。バレル側接続部210には、噴霧ノズル100のノズル側接続部110が接続される。これによりバレル200に噴霧ノズル100が接続される。
【0020】
バレル200の基端280には円盤状のフランジ230が設けられている。フランジ230は、バレル中心軸と直交する面においてバレル中心軸から離れる方向にバレル本体220から突出する。
【0021】
フランジ230には、本実施の形態では別部材のフィンガーグリップ300が嵌合される。フィンガーグリップは、操作者が投与操作をする際に、操作者が指を係止するための突起である。本実施の形態のような別部材のフィンガーグリップ300を設けずに、フランジ230そのものをフィンガーグリップとしてもよい。
【0022】
フィンガーグリップ300は、本実施の形態では長円形の平面形状を有している。フィンガーグリップ300の平面形状は操作者が指を係止することができる形状であれば他の形状としてもよい。たとえばフィンガーグリップ300の平面形状は、円形、楕円形、矩形であってもよい。
【0023】
フィンガーグリップ300は、先端側の面に略円形の切り欠き部310を有している。切り欠き部310にはバレル本体220の基端側が挿入される。切り欠き部310はフィンガーグリップ300の一方の側面に向かって開放している。
【0024】
切り欠き部310の一方の側面側には、挿入されたバレル本体220の基端側を保持する一対のバレル保持部320が設けられている。バレル保持部320は相互に対向して設けられており、バレル保持部320の間隔はバレル本体220の外径より小さい。
【0025】
フィンガーグリップ300には、バレル保持部320につながり、バレル本体220を案内する一対の傾斜面330が設けられている。傾斜面330の間隔は、フィンガーグリップ300の側面に近づくに従って広がる。バレル本体220を傾斜面330に沿わせて挿入することで、バレル200にフィンガーグリップ300を容易に取り付けることができる。
【0026】
フィンガーグリップ300は、フランジ230が挿入されるスリット340を有している。スリット340にフランジ230が挿入されることで、バレル200に取り付けられたフィンガーグリップ300がバレル中心軸方向にずれることを防ぐ。
【0027】
フィンガーグリップ300の基端側の面には貫通孔350が設けられている。貫通孔350と切り欠き部310とは各々の中心軸が重なるように設けられている。貫通孔350にはロッド500が貫通する。
【0028】
バレル200の中空部240にはガスケット400が設けられている。ガスケット400はバレル200の中空部240を水密を保ったまま摺動可能である。バレル200およびガスケット400の材質は、バレル200内に貯留される薬液と反応することがなく、バレル200内をガスケット400が液密に摺動可能となるような材料が選択される。ガスケット400の材料としては、熱可塑性エラストマーおよびゴムが挙げられる。
【0029】
ガスケット400にはネジ孔が設けられている。ネジ孔にはロッド500の先端側のネジ510が螺合する。これによりロッド500の先端側にガスケット400が固定される。ガスケット400とロッド500とは合成樹脂などで一体に成型してもよい。
【0030】
ロッド500は、ガスケット400の基端側に設けられ、ガスケット400およびロッド500の先端側はバレル200の中空部240に挿入される。ロッド500は、ロッド500の基端側に設けられた基端リブ540を有している。
【0031】
ロッド500は、バレル200に挿入された際にバレル中心軸と重なる軸(以下、この軸を「ロッド中心軸」という)に沿って延びるロッド本体を有している。ロッド本体は、ロッド中心軸に沿って延びる4つの第1補強リブ520で構成される。ロッド本体は4つの第1補強リブ520で構成された十字の断面を有している。十字の断面の中心とロッド中心軸とは一致する。90°の角度をなして隣り合う一対の第1補強リブ520の間には、第2補強リブ530が設けられている。第2補強リブ530はロッド中心軸方向の複数の位置に設けられている。
【0032】
ロッド500の基端側の一部には第1補強リブ520に代えて係合レール580が設けられている。係合レール580はロッド本体に沿って設けられ、ロッド中心軸に沿って延びる。係合レール580は後述するプランジャ700の被係合溝790と係合する。これによりプランジャ700がロッド中心軸方向にスライド可能な状態で、ロッド500はプランジャ700を保持する。
【0033】
係合レール580の先端側に対向して当接面582が設けられている。当接面582は第1補強リブ520の基端側の端面で構成されている。当接面582にはプランジャ700の先端側の端部が当接する。プランジャ700を先端側に押圧する押圧力は当接面582を介してロッド500に伝わる。これによりプランジャ700を押圧することでロッド500を先端側に移動させることができる。
【0034】
ロッド500の先端側にはネジ510が設けられている。ロッド500の基端側には基端リブ540が設けられている。基端リブ540の基端側の面は、操作者がロッド500を先端側に押圧するための第2の押圧面550を構成する。本実施の形態において第2の押圧面550は平面である。第2の押圧面550には、操作者が押圧する順序を意味する「2」の文字が記載されている。操作者はこの表示にしたがって、2回目の投与操作においてロッド500の第2の押圧面550を押圧することができる。2回目の投与操作において操作者は第2の押圧面550のみを押圧する。
【0035】
第2の押圧面550に並ぶように後述する第1の押圧面720が設けられる。第2の押圧面550には、第1の押圧面720を受け入れる図5に示すような窪みが設けられている。第2の押圧面550の窪みの形状は図5に示すように略台形ある。窪みの形状は半円形、三角形などの形状としても良い。
【0036】
プランジャ700は、ロッド500にスライド可能に取り付けられている。より詳細には、プランジャ700は、ロッド500の係合レール580とプランジャ700の被係合溝790が係合することで、ロッド中心軸方向にスライド自在にロッド500に取り付けられている。
【0037】
本実施の形態においては、ロッド500に係合レール580を設け、プランジャ700に被係合溝790を設けた。逆にロッド500に被係合溝を設け、プランジャ700に係合レールを設けてもよい。また、プランジャ700がロッド500に対して直線運動が可能な構造であれば、係合溝と係合レールとを用いた連結に限定されない。たとえば、ロッド500とプランジャ700の一方に被係合溝を設け、ロッド500とプランジャ700の他方に被係合溝に係合する複数個の(たとえば2個の)突起を設けることで、プランジャ700がロッド500に対してスライドできるようにしてもよい。
【0038】
プランジャ700はフィンガーグリップ300に当接される当接部710を有している。当接部710は、フィンガーグリップ300の貫通孔350の周縁部に当接する。当接部710は半円形の外周形状を有するフランジとして形成されている。当接部710はロッド中心軸に直交する方向に突出している。当接部710は貫通孔350の周縁部に当接することができる形状であればどのような形状でもよい。
【0039】
プランジャ700の基端側の端部には第1の押圧面720が設けられている。第1の押圧面720は、ロッド中心軸と直交する面に沿って延びる平面である。第1の押圧面720の形状は図6に示すような略扇形である。第1の押圧面720は、図7に示すように、ロッド500の第2の押圧面550の窪みに嵌まり込む。言い換えると、第1の押圧面720と第2の押圧面550とは近接して配置される。第1の押圧面720の形状は、第1の押圧面720の窪みの形状に応じて異なる形状としてもよい。
【0040】
図7に示すように、第2の押圧面550の面積は第1の押圧面720の面積よりも大きい。1回目の投与操作においては、第1の押圧面720と第2の押圧面550の両方を押圧してもよい一方、第2の投与操作においては、第2の押圧面550のみを押圧する必要がある。第2の押圧面550の面積が第1の押圧面720の面積よりも大きいことで、第2の押圧面550のみを選択的に押圧する操作が容易となる。なお、第1の押圧面720の面積と第2の押圧面550の面積とを同じ大きさとしたり、第1の押圧面720の面積を第2の押圧面550の面積よりも大きくすることも可能である。
【0041】
図1および図2に示すように、プランジャ700の先端側の端部が当接面582に当接した状態において、第1の押圧面720は第2の押圧面550よりも基端側に位置している。第1の押圧面720には、操作者が押圧する順序を意味する「1」の文字が記載されている。操作者はこの表示にしたがって、1回目の投与操作においてプランジャ700の第1の押圧面720を押圧することができる。プランジャ700の第1の押圧面720を押圧することによりロッド500も同時に移動するので、操作者は第1の押圧面720と第2の押圧面550とを同時に押圧しても良い。
【0042】
本実施の形態においては、第1の押圧面720に「1」の文字、第2の押圧面550に「2」の文字を記載したが、順序を表す表示として異なる表示を記載してもよい。たとえば、第1の押圧面720に「A」の文字、第2の押圧面550に「B」の文字など、順序として操作者が理解できる文字などを記載してもよい。
【0043】
押圧する順序の表示を第1の押圧面720および第2の押圧面550の一方にのみ設けてもよい。たとえば、第1の押圧面720に第2の押圧面550に向かう矢印を記載しても良い。
【0044】
次に、図2図8および図9を参照して、本実施の形態の噴霧器1の動作について説明する。図2図8および図9はいずれも本実施の形態に係る噴霧器の正面図である。図2は、1回目の投与操作前の状態、図8は、1回目の投与操作が終了した状態、図9は、2回目の投与操作が終了した状態を示す。
【0045】
図2に示すように、本実施の形態に係る噴霧器1は、噴霧ノズル100と、バレル200と、フィンガーグリップ300と、ガスケット400と、ロッド500と、プランジャ700とを備えている。
【0046】
噴霧ノズル100はバレル200の先端270に取り付けられている。フィンガーグリップ300はバレル200の基端280に取り付けられている。ロッド500の先端側にはガスケット400が取り付けられている。バレル200の中空部240の内部には薬液が貯留されている。ガスケット400とバレル200の先端270との間は薬液で満たされている。
【0047】
ロッド500にはプランジャ700がスライド可能に取り付けられている。ロッド500の先端側およびガスケット400はバレル200の中空部240に挿入されている。
【0048】
操作者は図2に示す状態に先立ってプライミングを行なう。プライミングとは、噴霧ノズル100の先端まで薬液で満たして1回目の投与操作が可能な状態とする操作である。具体的には、操作者はロッド500およびプランジャ700を先端側に押圧して、噴霧ノズル100からエアが排出されることを確認する。図2はプライミングが終了した状態を示している。
【0049】
図2に示す状態で操作者は、一方の鼻腔に噴霧ノズル100を挿入して、1回目の投与操作を行なう。具体的には、操作者は人差し指と中指をフィンガーグリップ300に係止し、親指でプランジャ700の第1の押圧面720およびロッド500の第2の押圧面550を押圧する。操作者は第1の押圧面720のみを押圧してもよい。これによりプランジャ700、ロッド500およびガスケット400が先端側に移動して、バレル200に貯留されている薬液が噴霧ノズル100から霧状になって噴出する。
【0050】
図8に示すように、プランジャ700の当接部710がフィンガーグリップ300に当接することで1回目の投与操作が終了する。当接部710がフィンガーグリップ300に当接することにより、それ以降のプランジャ700の先端側への動きが規制される。
【0051】
次に操作者は、第1の押圧面720および第2の押圧面550を押圧していた親指をずらし、第2の押圧面550のみに親指を添える。1回目の投与操作から2回目の投与操作に移行するにあたり、操作者は噴霧器1を持ち替える必要がない。これにより1回目の投与操作から2回目の投与操作に容易に移行することができる。
【0052】
この状態で操作者は、他方の鼻腔に噴霧ノズル100を挿入して、2回目の投与操作を行なう。具体的には、操作者は人差し指と中指をフィンガーグリップ300に係止し、親指でロッド500の第2の押圧面550のみを押圧する。プランジャ700はスライド可能にロッド500に取り付けられているので、プランジャ700がロッド500に対してスライドする。これによりプランジャ700を1回目の投与操作が終了した位置に残しつつ、ロッド500およびガスケット400がさらに先端側に移動して、バレル200に貯留されている残りの薬液が噴霧ノズル100から霧状になって噴出する。2回目の投与操作が終了すると図9の状態となる。2回目の投与操作が終了した状態において、ガスケット400がバレル200の中空部の先端側に達する。
【0053】
このように投与操作を行なうことで、2回目の投与操作で必要な量の薬液をバレル200内に残しつつ、1回目の投与操作を行なうことができる。
【0054】
図2に示すプライミング終了時のガスケット400の位置から、図8に示す1回目の投与操作終了時のガスケット400の位置にガスケット400が進むことで噴出した薬液の量が1回目の投与操作で投与される薬液の量となる。また、図8に示す1回目の投与操作終了時のガスケット400の位置から、図9に示す2回目の投与操作終了時のガスケット400の位置にガスケット400が進むことで噴出した薬液の量が2回目の投与操作で投与される薬液の量となる。
【0055】
1回目の投与操作で投与される薬液の量と、2回目の投与操作で投与される薬液の量とを等しくする場合には、これらが等しくなるように、図2に示す1回目の投与操作前の状態におけるフィンガーグリップ300とプランジャ700の当接部710との距離などを調節する。
【0056】
2回目の投与操作で投与される量は、噴霧器1のプランジャ700の寸法とバレル200などの寸法によって定まる。2回目の投与操作で必要な投与量に応じて、噴霧器1のこれらの寸法を決定する。
【0057】
上記のとおり本開示に基づく噴霧器1は、薬液を噴霧するための噴霧ノズル100と、先端270と基端280とを有し、噴霧ノズル100が先端270に取り付けられ、先端270と基端280を結ぶ軸に沿って延びる中空部240を有するバレル200と、バレル200の基端280に設けられたフィンガーグリップ300と、バレル200内に配置されバレル200内を摺動可能なガスケット400と、ガスケット400の基端側に設けられその先端側がバレル200の中空部240に挿入されたロッド500と、ロッド500にスライド可能に取り付けられ、ロッド500に当接してロッド500を先端側に押圧することが可能なプランジャ700とを備えている。プランジャ700は、フィンガーグリップ300に当接される当接部710と、基端側の端部に設けられた第1の押圧面720とを備えている。ロッド500は基端側の端部に第2の押圧面550を備えている。当接部710はフィンガーグリップ300に当接することで、ガスケット400がバレル200の先端270と基端280との間に位置する状態でプランジャ700の先端側への動きを規制する。
【0058】
上記噴霧器1においては、プランジャ700の第1の押圧面720を押圧することで、プランジャ700の当接部710がフィンガーグリップ300に当接するまで、1回目の投与操作を行なうことができる。操作者は噴霧器1を持ち替えること無く、第2の押圧面550を押圧することで2回目の投与操作を行なうことが可能となる。
【0059】
また、噴霧器1において、第1の押圧面720および第2の押圧面550の少なくとも一方には、操作者が押圧する順序が表示されている。押圧する順序が表示されているので、操作者は押圧する順序の表示にしたがって、第1の押圧面720を押圧し、続いて第2の押圧面550を押圧することができる。
【0060】
また、噴霧器1において、第1の押圧面720と第2の押圧面550とは近接して設けられており、第2の押圧面550の面積は第1の押圧面720の面積よりも大きい。
【0061】
1回目の投与操作においては、第1の押圧面720と第2の押圧面550の両方を押圧してもよい一方、第2の投与操作においては、第2の押圧面550のみを押圧する必要がある。第1の押圧面720と第2の押圧面550とが近接して設けられていることで、1回目の投与操作において第1の押圧面720と第2の押圧面550の両方を押圧することが容易となる。また、第2の押圧面550の面積が第1の押圧面720の面積よりも大きいことで、第2の投与操作において第2の押圧面550のみを選択的に押圧する操作が容易となる。
【0062】
また、噴霧器1において、第1の押圧面720は第2の押圧面550よりも基端側に位置している。
【0063】
噴霧器1において、第1の押圧面720は第2の押圧面550よりも基端側に位置しているので、第1の投与操作において、操作者は第1の押圧面720に先ず触れることとなる。これにより第1の投与操作において、操作者が第2の押圧面550のみを押圧する操作ミスを減らすことができる。
【0064】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
1 噴霧器、100 噴霧ノズル、110 ノズル側接続部、200 バレル、210 バレル側接続部、220 バレル本体、230 フランジ、240 中空部、270 先端、280 基端、300 フィンガーグリップ、310 切り欠き部、320 バレル保持部、330 傾斜面、340 スリット、350 貫通孔、400 ガスケット、500 ロッド、510 ネジ、520 第1補強リブ、530 第2補強リブ、540 基端リブ、550 第2の押圧面、580 係合レール、582 当接面、700 プランジャ、710 当接部、720 第1の押圧面、790 被係合溝。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9