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特許7517167水分検知タグ及びこれを用いた水分検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】水分検知タグ及びこれを用いた水分検知方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/04 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
G01N27/04 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021008152
(22)【出願日】2021-01-21
(65)【公開番号】P2022112346
(43)【公開日】2022-08-02
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】松保 諒
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-52604(JP,A)
【文献】特開2020-101978(JP,A)
【文献】特開2019-124657(JP,A)
【文献】特開2011-191177(JP,A)
【文献】実開昭52-43469(JP,U)
【文献】特開平9-73956(JP,A)
【文献】特開2009-49763(JP,A)
【文献】特開昭57-23847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01N 27/14 - G01N 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基材と、
前記ベース基材に設けられたアンテナ及び検知用配線と、
前記アンテナ及び前記検知用配線の端部にそれぞれ接続されて前記ベース基材に設けられ、前記検知用配線の導通状態を検出し、その検出結果を前記アンテナを介して非接触送信する検出手段とを有し、
被検知領域に取り付けられて使用され、前記被検知領域における水分の発生を検知する水分検知タグであって、
前記ベース基材は、切り離し線を介して切り離し可能に区画形成され、前記使用時に当該ベース基材から切り離される分離部を有し、
前記検知用配線は、その一部が前記分離部上に形成された状態で導通している、水分検知タグ。
【請求項2】
請求項1に記載の水分検知タグにおいて、
耐水性を具備し、前記アンテナ及び検出手段を覆うように前記ベース基材上に積層された保護層を有する、水分検知タグ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の水分検知タグにおいて、
前記ベース基材は、
当該水分検知タグが前記被検知領域に取り付けられた場合に前記被検知領域に対向して当接する取付部と、
前記取付部に折り部を介して折り畳み可能に連接し、当該水分検知タグが前記被検知領域に取り付けられた場合に前記取付部から突出した状態となる突出部とを有し、
前記アンテナ及び検出手段は、前記突出部に設けられ、
前記検知用配線は、少なくとも一部が前記取付部に設けられている、水分検知タグ。
【請求項4】
請求項3に記載の水分検知タグにおいて、
前記突出部は、二つ折り可能に構成され、
前記取付部は、前記突出部の前記二つ折りされた2つの領域のそれぞれに前記折り部を介して連接し、
前記ベース基材は、少なくとも前記突出部の該突出部が二つ折りされた場合に互いに対向する面に接着層が積層されている、水分検知タグ。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の水分検知タグが、被検知領域に取り付けられて使用され、前記被検知領域にて発生した水分の発生を検知する水分検知方法であって、
前記水分検知タグを前記折り部にて折り畳む折り工程と、
前記ベース基材から前記分離部が切り離される前に前記検知用配線の導通状態を検出する検出工程と、
前記検出工程において前記検知用配線が断線していないことが検出された場合に前記分離部を前記ベース基材から切り離す切断工程とを有する水分検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検知領域に取り付けられ、被検知領域にて水分が発生した場合にその旨を検知する水分検知タグ及びこれを用いた水分検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、マンション等の集合住宅や一般的なビル等の建物においては、空調等に用いられる配管が天井裏や壁間に配設されており、この配管を用いて水等の流体の供給や排出が行われている。このような配管は、上述したように天井裏や壁間に配設されるため、建物の構造に応じてジョイント等の接合部材を用いて繋ぎ合わされることになる。ところが、このジョイント等による接合部分においては、シリコン等によってシーリングされているものの、シーリングが不完全な場合、漏水が生じる虞れがある。また、キッチンや洗面所等の流し台の下においても、流し台につながれた配管から漏水が生じる虞がある。
【0003】
ここで、特許文献1には、ベース部材上に一対の導電パターンを形成しておき、水分が発生した場合にその水分によって一対の導電パターン間を短絡させ、一対の導電パターン間が絶縁状態であるか導通状態であるかをアンテナを介して読み出すことで水分の発生を検知する水分検知センサが開示されている。この技術を用いることで、上述したような漏水を検知することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-124657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたもののように、ベース部材上に一対の導電パターンを形成しておくものにおいては、一対の導電パターンがそもそも導通していないため、使用前の状態において、意図していない部分が断線している場合にその旨を検出することができないという問題点がある。特に、導電パターンがエッチングによる銅やアルミによって形成されている場合、外力が加わることで導電パターンが折れて断線してしまい、その断線が認識されていないと、水分を正確に検知することができない。また、導電パターンが銀ペースト等の導電インクを用いた印刷によって形成されている場合でも、導電インクが印刷後に乾燥して硬化した後、外力が加わることで導電パターンが折れて断線してしまい、上記同様に、水分を正確に検知することができなくなってしまう。
【0006】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、検知用配線の導通状態に基づいて水分の発生を検知する水分検知タグにおいて、検知用配線が使用前の状態において意図しない部分にて断線しているかどうかを検出することができる水分検知タグ及びこれを用いた水分検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、
ベース基材と、
前記ベース基材に設けられたアンテナ及び検知用配線と、
前記アンテナ及び前記検知用配線の端部にそれぞれ接続されて前記ベース基材に設けられ、前記検知用配線の導通状態を検出し、その検出結果を前記アンテナを介して非接触送信する検出手段とを有し、
被検知領域に取り付けられて使用され、前記被検知領域における水分の発生を検知する水分検知タグであって、
前記ベース基材は、切り離し線を介して切り離し可能に区画形成され、前記使用時に当該ベース基材から切り離される分離部を有し、
前記検知用配線は、その一部が前記分離部上に形成された状態で導通している。
【0008】
上記のように構成された本発明においては、水分検知タグの周囲にて水分が発生した場合、ベース基材に設けられた断線状態の検知用配線が導通した状態となり、その導通状態が検出手段からアンテナを介して非接触送信されることで、水分の発生が検知されることになるが、使用前の状態においては、切り離し線を介して切り離し可能に区画形成された分離部がベース基材から切り離されておらず、検知用配線が導通しているので、使用前に、検出手段において検知用配線が導通している状態であることを確認することで、検知用配線が使用前の状態において意図しない部分にて断線していないことが検出されることになる。
【0009】
また、耐水性を具備し、アンテナ及び検出手段を覆うようにベース基材上に積層された保護層を有する構成とすれば、アンテナ及び検出手段がさらに水分から保護される。
【0010】
また、ベース基材が、水分検知タグが被検知領域に取り付けられた場合に被検知領域に対向して当接する取付部と、取付部に折り部を介して折り畳み可能に連接し、水分検知タグが被検知領域に取り付けられた場合に取付部から突出した状態となる突出部とを有し、アンテナ及び検出手段が突出部に設けられ、検知用配線が、少なくとも一部が取付部に設けられていれば、発生した水分が検知しやすくなりながらもアンテナ及び検出手段に水分が付着しにくくなる。
【0011】
また、突出部が二つ折り可能に構成され、取付部が、突出部の二つ折りされた2つの領域のそれぞれに折り部を介して連接したものにおいて、ベース基材のうち少なくとも突出部の該突出部が二つ折りされた場合に互いに対向する面に接着層が積層されていれば、突出部の互いに対向する面を接着層によって互いに接着することで、突出部が取付部から突出した状態を保持しやすくなる。
【0012】
また、上述した水分検知タグが、被検知領域に取り付けられて使用され、被検知領域にて発生した水分の発生を検知する水分検知方法としては、
前記水分検知タグを前記折り部にて折り畳む折り工程と、
前記ベース基材から前記分離部が切り離される前に前記検知用配線の導通状態を検出する検出工程と、
前記検出工程において前記検知用配線が断線していないことが検出された場合に前記分離部を前記ベース基材から切り離す切断工程とを有するものが考えられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水分が発生した場合に断線状態の2本の検知用配線が導通した状態となり、その導通状態が非接触送信されることで水分の発生が検知される水分検知タグにおいて、ベース基材が、切り離し線を介して切り離し可能に区画形成され、使用時に当該ベース基材から切り離される分離部を有し、検知用配線の一部が、分離部上に形成された状態で導通しているため、使用前に、検出手段において検知用配線が導通している状態であることを確認することで、検知用配線が使用前の状態において意図しない部分にて断線しているかどうかを検出することができる。
【0014】
また、耐水性を具備し、アンテナ及び検出手段を覆うようにベース基材上に積層された保護層を有するものにおいては、アンテナ及び検出手段をさらに水分から保護することができる。
【0015】
また、ベース基材が、水分検知タグが被検知領域に取り付けられた場合に被検知領域に対向して当接する取付部と、取付部に折り部を介して折り畳み可能に連接し、水分検知タグが被検知領域に取り付けられた場合に取付部から突出した状態となる突出部とを有し、アンテナ及び検出手段が突出部に設けられ、検知用配線が、少なくとも一部が取付部に設けられているものにおいては、発生した水分を検知しやすくしながらもアンテナ及び検出手段に水分が付着しにくくすることができる。
【0016】
また、突出部が二つ折り可能に構成され、取付部が、突出部の二つ折りされた2つの領域のそれぞれに折り部を介して連接したものにおいて、ベース基材のうち少なくとも突出部の該突出部が二つ折りされた場合に互いに対向する面に接着層が積層されているものにおいては、突出部の互いに対向する面を接着層によって互いに接着することで、突出部が取付部から突出した状態を保持しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の水分検知タグの第1の実施の形態を示す図であり、(a)は表面から見た図、(b)は(a)に示したA-A’断面図、(c)は(a)に示したB-B’断面図、(d)は(a)に示した防水シートを取り除いた構成を示す図である。
図2図1に示した水分検知タグの使用前の状態と使用時の状態とを説明するための図である。
図3図1に示した水分検知タグの使用形態の一例を示す図である。
図4図1に示した水分検知タグが図3に示したように床面に取り付けられた状態にて配管から水漏れが発生した場合の作用を説明するための図であり、(a)は配管から水漏れが発生していないときの状態を示す図、(b)は配管から水漏れが発生したときの状態を示す図である。
図5図1に示した水分検知タグを用いて配管からの水漏れを検知するためのシステムの一例を示す図である。
図6図5に示したシステムにおいて図1に示した水分検知タグが図3に示したように床面に貼着された場合の配管からの水漏れを検知する方法を説明するためのフローチャートである。
図7】本発明の水分検知タグの第2の実施の形態を示す図であり、(a)は表面から見た図、(b)は(a)に示したA-A’断面図、(c)は(a)に示したB-B’断面図、(d)は(a)に示した防水シートを取り除いた構成を示す図である。
図8図7に示した水分検知タグの使用形態の一例を示す図である。
図9図7に示した水分検知タグが図8に示したように使用された場合の特有の効果を説明するための図である。
図10】本発明の水分検知タグの他の実施の形態を示す図である。
図11】本発明の水分検知タグの他の実施の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の水分検知タグの第1の実施の形態を示す図であり、(a)は表面から見た図、(b)は(a)に示したA-A’断面図、(c)は(a)に示したB-B’断面図、(d)は(a)に示した防水シート20aを取り除いた構成を示す図である。
【0020】
本形態における水分検知タグは図1に示すように、ベース基材10の表裏に耐水性を具備する防水シート20a,20bが積層、貼着され、さらに防水シート20b上に剥離紙40が剥離可能に貼着されて構成された水分検知タグ1である。
【0021】
ベース基材10は、例えばフィルム等の非導電性材料から構成されており、長方形の形状を有している。ベース基材10の一方の面には、通信用のアンテナ12及び検知用配線13が形成されているとともに、検出手段となるICチップ11が搭載されている。ベース基材10には、1つの端辺に沿って切り離し線となる2本のミシン目14a,14bが空隙を介して直列に並ぶように形成されており、ミシン目14a,14bとミシン目14a,14bが沿うベース基材10の端辺との間が、ミシン目14a,14bによってベース基材10から切り離し可能に区画形成された分離部15となっている。
【0022】
アンテナ12は、ベース基材10の一方の面に、2つの二等辺三角形の導体が空隙を介して並ぶようにして形成されている。
【0023】
検知用配線13は、一方の端部がICチップ11に接続され、そこからベース基材10の端辺のうちミシン目14a,14bが沿う端辺に向かって互いに並行して延びた検知配線部13a,13bと、検知配線部13a,13bの他方の端部間をベース基材10の分離部15において互いに導通する導通部13cとから構成されている。なお、ベース基材10に形成されたミシン目14a,14bは、検知配線部13a,13bが形成された領域を空隙としてその空隙を介して直列に並ぶように形成されている。
【0024】
ICチップ11は、2つのアンテナ端子(不図示)と、2つの検知用端子(不図示)とが設けられており、これらアンテナ端子及び検知用端子が設けられた面が搭載面となって、ベース基材10のアンテナ12及び検知用配線13が形成された面に搭載され、異方性導電ペースト(不図示)によって固定されている。ICチップ11のアンテナ端子はそれぞれアンテナ12に接続され、ICチップ11の検知用端子は、検知用配線13の両端部に接続されており、異方性導電ペーストによって、アンテナ端子がアンテナ12に、検知用端子が検知用配線13にそれぞれ導通している。ICチップ11は、アンテナ12を介した非接触通信によって得た電力による電流を検知用配線13に流すことで検知用配線13間の抵抗値を検出し、その抵抗値に基づいて検知用配線13間の導通状態を検出し、その検出結果をデジタル情報に変換してアンテナ12を介して非接触送信する。
【0025】
防水シート20a,20bは、本願発明にて保護層となるものである。
【0026】
防水シート20aは、ベース基材10のアンテナ12及び検知用配線13が設けられた面において検知用配線13の導通部13cを含む一部が表出するように積層され、粘着層30aによって貼着されている。防水シート20aとしては、防水シート20aの一方の面に粘着層30aが積層された防水タック紙を使用することができる。
【0027】
防水シート20bは、ベース基材10の防水シート20aとは反対側の面の全面に積層され、本願発明の接着層となる粘着層30cによって貼着されている。防水シート20bとしては、防水シート20bの一方の面に粘着層30bが積層された防水タック紙を使用することができる。また、防水シート20bには、ベース基材10のミシン目14a,14bに対向してミシン目(不図示)が形成されている。
【0028】
これにより、アンテナ13及びICチップ11が防水シート20a,20bによって覆われた状態となることで、アンテナ12及びICチップを水分から保護することができる。
【0029】
剥離紙40は、剥離台紙(不図示)の一方の面に剥離剤(不図示)が塗布されて構成され、粘着層30bによって防水シート20bに剥離可能に貼着されている。
【0030】
以下に、上記のように構成された水分検知タグ1の使用方法及びその際の作用について説明する。
【0031】
図2は、図1に示した水分検知タグ1の使用前の状態と使用時の状態とを説明するための図である。なお、図2においては、説明をわかりやすくするために防水シート20aの図示は省略している。図3は、図1に示した水分検知タグ1の使用形態の一例を示す図である。
【0032】
図1に示した水分検知タグ1においては、図2(a)に示すように、上述したように検知用配線13が導通した状態となっている。そのため、使用前に、例えば、水分検知タグ1にリーダライタを近接させ、ICチップ11にて検知用配線13の抵抗値を検出することで、検知用配線13が使用前の状態において意図しない部分にて断線しているかどうかを検出することができる。
【0033】
その後、水分検知タグ1を使用する際に、図2(b)に示すようにミシン目14a,14bを破断していくことによって分離部15が切り離されると、図2(c)に示すように、検知用配線13が、分離部15にて検知配線部13a,13bとに分離されて断線した状態となる。
【0034】
そして、図1に示した水分検知タグ1が、例えば図3に示すように、配管2が設置された被検知領域となる床面3に取り付けられ、配管2からの水漏れを検知するために使用される。その場合、剥離紙40が剥離され、表出した粘着層30bによって水分検知タグ1が床面3に貼着、固定されることになるが、剥離紙40が剥離される前にベース基材10から分離部15が分離される場合、剥離紙40においても、ベース基材10のミシン目14a,14bに対向してミシン目が形成されていることが好ましい。また、水分検知タグ1は、後述するように、検知用配線13の導通状態を検出することで水分の発生を検知するため、ベース基材10の検知用配線13が防水シート20aで覆われていない側が配管2に近接する向きで水分検知タグ1が床面3に貼着されることが好ましい。
【0035】
図4は、図1に示した水分検知タグ1が図3に示したように床面3に取り付けられた状態にて配管2から水漏れが発生した場合の作用を説明するための図であり、(a)は配管2から水漏れが発生していないときの状態を示す図、(b)は配管2から水漏れが発生したときの状態を示す図である。なお、図4においては、説明をわかりやすくするために防水シート20aの図示を省略している。
【0036】
図1に示した水分検知タグ1が図3に示したように床面3に貼着された状態で配管2から水漏れが発生していない場合は、図4(a)に示すように、検知配線部13a,13bが導通しておらず、それにより検知用配線13が非導通状態となっている。
【0037】
一方、図1に示した水分検知タグ1が図3に示したように床面3に貼着された状態において、配管2において水漏れが発生すると、発生した水漏れによる水分が配管2を伝わって床面3に溜まり、その後、図4(b)に示すように、ベース基材10の端辺から水分検知タグ1上に水分13dが乗り上げてくる。すると、ベース基材10上にて互いに並行する検知配線部13a,13b間において、発生した水分13dによって短絡が生じ、それにより、検知用配線13が導通状態となる。そして、この検知用配線13の導通状態を検出することで、配管2から水漏れが発生した旨が検知されることになる。
【0038】
このように、配管2から水漏れが発生していない場合は、検知用配線13が非導通状態となっており、一方、配管2から水漏れが発生している場合は、検知用配線13が導通状態となるため、検知用配線13の導通状態を検出することで、配管2から水漏れが発生していることを検知することができる。
【0039】
以下に、上述した作用を利用して水分検知タグ1を用いて配管2からの水漏れの発生を検知する具体的な方法について説明する。
【0040】
図5は、図1に示した水分検知タグ1を用いて配管2からの水漏れを検知するためのシステムの一例を示す図である。
【0041】
図1に示した水分検知タグ1を用いて図3に示した配管2からの水漏れを検知するためのシステムとしては、図5に示すように、水分検知タグ1に対して非接触通信が可能な読取手段となるリーダライタ5と、リーダライタ5と有線または無線を介して接続された処理手段となる管理用パソコン6とを有するシステムが考えられる。なお、読取手段のみならず処理手段が内蔵されたハンディターミナルをリーダライタとして用いることも考えられ、その場合、管理用パソコンが不要となる。
【0042】
図6は、図5に示したシステムにおいて図1に示した水分検知タグ1が図3に示したように床面3に貼着された場合の配管2からの水漏れを検知する方法を説明するためのフローチャートである。
【0043】
図1に示した水分検知タグ1においては、リーダライタ5が水分検知タグ1に近接され、リーダライタ5にて水分検知タグ1が検出されると(ステップ1)、まず、リーダライタ5から、水分検知タグ1に電力が供給されるとともに、検知用配線13の導通状態の検出及びその検出結果の送信をする旨の命令が水分検知タグ1に対して送信される(ステップ2)。
【0044】
リーダライタ5から供給された電力が水分検知タグ1にて得られるとともに、リーダライタ5から送信された命令が水分検知タグ1のアンテナ12を介してICチップ11にて受信されると(ステップ3)、リーダライタ5から供給された電力によって検知用配線13に電流が供給される。
【0045】
ICチップ11においては、供給された電流を用いて検知用配線13の抵抗値が検出されることで、検知用配線13の導通状態が検出されることになる(ステップ4)。ここで、水分検知タグ1が図3に示したように床面3に貼着され、配管2から水漏れが発生していない場合は、検知用配線13が非導通状態となっている。その状態においては、リーダライタ5から供給された電力によって検知用配線13に電流が供給されても、検知用配線13が非導通状態となっていることから検知用配線13には電流が流れず、それにより、ICチップ11において検出される抵抗値は、ほぼ無限大となる。
【0046】
ICチップ11においては、検出された抵抗値がほぼ無限大である場合は、検知用配線13が非導通状態になっていると判断され、その判断結果が検知用配線13の導通状態の検出結果としてデジタル情報に変換されてアンテナ12を介してリーダライタ5に非接触送信される(ステップ5)。なお、検知用配線13が導通状態である場合にICチップ11にて検出される抵抗値が、後述するように、検知配線部13aと検知配線部13bとが水分13dによって短絡した抵抗値、すなわち、最大でも、検知配線部13aと検知配線部13bとがICチップ11と接続された端部とは反対側の端部にて互いに接続された抵抗値となることから、ICチップ11において、検知用配線13が非導通状態であると判断するための抵抗値として、ほぼ無限大ではなく、検知配線部13aと検知配線部13bとがICチップ11と接続された端部とは反対側の端部にて互いに接続された抵抗値よりも大きな一定の閾値以上のものを用いてもよい。
【0047】
一方、水分検知タグ1が図3に示したように床面3に貼着され、配管2から水漏れが発生している場合は、上述したように、検知配線部13aと検知配線部13bとが水分13dによって短絡することで検知用配線13が導通状態となっているため、ICチップ11においては、検知配線部13aと検知配線部13bとが水分13dが付着した領域間で接続された抵抗値が検出されることになる。
【0048】
検知配線13aと検知配線部13bとが水分13dによって短絡することで検知用配線13が導通状態となっている場合は、上述したように、検出される抵抗値は、最大でも検知配線部13aと検知配線部13bとがICチップ11と接続された端部とは反対側の端部にて互いに接続された抵抗値となることから、ICチップ11においては、検出された抵抗値が、検知配線部13aと検知配線部13bとがICチップ11と接続された端部とは反対側の端部にて互いに接続された抵抗値以下である場合は、検知用配線13が導通状態にあると判断され、その判断結果が検知用配線13の導通状態の検出結果としてデジタル情報に変換されてアンテナ12を介してリーダライタ5に非接触送信される。なお、検知用配線13が非導通状態となっている場合にICチップ11にて検出される抵抗値が、上述したようにほぼ無限大となることから、ICチップ11において、検知用配線13が導通状態にあると判断するための抵抗値として、検知配線部13aと検知配線部13bとがICチップ11と接続された端部とは反対側の端部にて互いに接続された抵抗値ではなく、それのよりも大きな一定の閾値以下のものを用いてもよい。
【0049】
このように、リーダライタ5においては、水分検知タグ1にて検出された検知用配線13の導通状態を、アンテナ12を介して非接触送信させることになる。
【0050】
上記のようにして水分検知タグ1からリーダライタ5に非接触送信された検出結果がリーダライタ5にて受信されると(ステップ6)、リーダライタ5にて受信された検出結果は管理用パソコン6に転送される(ステップ7)。
【0051】
リーダライタ5から転送されてきた検出結果が管理用パソコン6にて受信されると(ステップ8)、管理用パソコン6において、水分検知タグ1からリーダライタ5に非接触送信され、管理用パソコン6に転送されてきた検出結果に基づいて、配管2から水漏れが発生しているかどうかが判断されることになる(ステップ9)。具体的には、リーダライタ5から管理用パソコン6に転送されてきた検出結果において、検知用配線13が非導通状態である場合は配管2から水漏れが発生していないと判断され、検知用配線13が導通状態である場合は配管2から水漏れが発生していると判断されることになる。
【0052】
(第2の実施の形態)
図7は、本発明の水分検知タグの第2の実施の形態を示す図であり、(a)は表面から見た図、(b)は(a)に示したA-A’断面図、(c)は(a)に示したB-B’断面図、(d)は(a)に示した防水シート120aを取り除いた構成を示す図である。
【0053】
本形態における水分検知タグは図7に示すように、図1に示したものに対してベース基材110及び防水シート120a,120bの構成が異なる水分検知タグ101である。
【0054】
本形態における水分検知タグ101のベース基材110には、折り部となる3組のミシン目116a~116cが設けられている。3組のミシン目116a~116cは、ベース基材110の中央部分において一方向に向かって空隙を介して直列に並んだ1組のミシン目116aが設けられるとともに、ミシン目116aの両側に並行して延びるように2組のミシン目116b,116cがそれぞれ設けられており、2組のミシン目116b,116cのそれぞれも、一方向に向かって2つの空隙を介して直列に並んで設けられている。このように3組のミシン目116a~116cが設けられたベース基材110は、ミシン目116bとミシン目116cとで挟まれた領域が突出部118となり、ミシン目116b,116cとベース基材110の端辺とで挟まれた領域がそれぞれ取付部117a,117bとなる。そして、ICチップ11及びアンテナ12が、ミシン目116aとミシン目116cとの間に設けられていることから突出部118に設けられ、検知配線部13a,13bの一部と導通部13cとが取付部117bに設けられたものとなる。なお、検知配線部13a,13bは、少なくとも一部が取付部117a,117bに設けられていればよく、その全部が取付部117a,117bに設けられたものであってもよい。
【0055】
防水シート120aには、ミシン目116a~116cに対向するようにミシン目121a~121cが設けられ、防水シート120bにも、ミシン目116a~116cに対向するようにミシン目(不図示)が設けられている。
【0056】
上記のように構成された水分検知タグ101においても、図1に示したものと同様に、使用前に、例えば、水分検知タグ101にリーダライタを近接させ、ICチップ11にて検知用配線13間の抵抗値を検出することで、検知用配線13が使用前の状態において意図しない部分にて断線しているかどうかを検出することができる。具体的には、まず、折り畳み工程として、水分検知タグ101をミシン目116a~16c,121a~121cにて折り畳み、次に、検出工程として、ベース基材110から分離部15が切り離される前に検知用配線13の導通状態を検出し、検出工程にて検知用配線13が断線していないことが検出された場合に、切断工程として分離部15をベース基材110から切り離すことになる。この際、分離部15がベース基材110の側端辺と折り部となるミシン目116cとの間にて、被検知領域に対向する部分に側端部が含まれるように形成されているため、折り部に衝撃を与えずにベース基材110から分離部15を安定して切り離すことができる。
【0057】
図8は、図7に示した水分検知タグ101の使用形態の一例を示す図である。
【0058】
図7に示した水分検知タグ101は、例えば図8に示すように、配管2が設置された被検知領域となる床面3に取り付けられ、配管2からの水漏れを検知するために使用される。その場合、剥離紙40が剥離され、粘着層30bが表出した面が内側となるようにベース基材110及び防水シート120a,120bがミシン目116a,121aにて二つ折りされるとともに、粘着層30bが表出した面が外側となるようにベース基材110及び防水シート120a,120bがミシン目116b,116c,121b,121cにて谷折りに折り曲げられる。
【0059】
そして、図8に示すように、ベース基材110の取付部117a,117bが防水シート120bを介して床面3に対向して当接し、ベース基材110の突出部118が取付部117a,117bから突出して床面3上に起立するようにして粘着層30bによって床面3に貼着、固定される。この際、水分検知タグ101は、図1に示したものと同様に、検知用配線13の導通状態を検出することで水分の発生を検知するため、図8に示すように、ベース基材110の取付部117a,117bのうち検知用配線13が設けられた取付部117bが配管2に近接する向きで水分検知タグ101が床面3に貼着されることが好ましい。
【0060】
上記のようにして床面3に固定された水分検知タグ101においても、第1の実施の形態にて示したものと同様に、配管2から水漏れが発生した場合、水漏れによる水分が検知配線部13a,13bに付着して検知用配線13が短絡することにより、水漏れが検知されることになる。
【0061】
ここで、図7に示した水分検知タグ101が図8に示したように使用された場合の特有の効果について説明する。
【0062】
図9は、図7に示した水分検知タグ101が図8に示したように使用された場合の特有の効果を説明するための図である。
【0063】
図7に示した水分検知タグ101が、図8に示したように、ベース基材110の取付部117a,117bが防水シート120bを介して床面3に対向して当接し、ベース基材110の突出部118が取付部117a,117bから突出して床面3上に起立するようにして粘着層30bによって床面3に貼着、固定された状態においては、上述したようにアンテナ12及びICチップ11が突出部118に設けられていることで、図9に示すように、水分検知タグ101の周囲の床面3にて発生した水分13dがベース基材110上に乗り上げてきても、乗り上げてきた水分13dがアンテナ12及びICチップ11に付着しにくくなり、アンテナ12及びICチップ11を水分から保護することができる。
【0064】
また、ベース基材110の取付部117a,117bが防水シート120bを介して床面3に対向して当接し、ベース基材110の突出部118が取付部117a,117bから突出して床面3上に起立するようにして粘着層30bによって床面3に貼着、固定された状態において、二つ折りされた突出部118が、防水シート120bのベース基材110との積層面とは反対側の面に積層された粘着層30bによって互いに対向する面が互いに接着された状態となれば、突出部118が取付部117a,117bから突出して床面3上に起立した状態を保持しやすくすることができる。なお、本形態においては、ベース基材110の床面3への取付面に防水シート120bが積層されているため、防水シート120bのとの積層面とは反対側の面に積層された粘着層30bが接着層となって、突出部118が二つ折りされた場合に互いに対向する面が互いに接着されることになるが、ベース基材110の床面3への取付面に防水シート120bが積層されていない場合は、上述したように、ベース基材110のアンテナ12及び検知用配線13が設けられていない面に積層された粘着層30cが接着層となって、突出部118が二つ折りされた場合に互いに対向する面が互いに接着されることになる。
【0065】
なお、本形態においては、ベース基材110及び防水シート120a,120bを折り曲げる折り部としてミシン目116a~116c,121a~121cを例に挙げて説明したが、ベース基材110及び防水シート120a,120bを折り曲げる折り部として、スリットや筋押し等を適用してもよい。
【0066】
(他の実施の形態)
上述した実施の形態においては、ベース基材10,110の1つの端辺に沿って2本のミシン目14a,14bが空隙を介して直列に並ぶように形成されることで、分離部15がベース基材10,110から切り離し可能に区画形成され、分離部15にて検知配線部13a,13bが導通して検知用配線13が導通した状態となっている例を説明したが、ベース基材10,110から切り離し可能に区画形成される分離部の構成はこれに限らない。
【0067】
図10及び図11は、本発明の水分検知タグの他の実施の形態を示す図であり、ベース基材上の構成のみを示す。
【0068】
図10(a)に示すように、ベース基材210から突出したタブ状の分離部215を有する構成としてもよい。分離部215は、ミシン目214によってベース基材210から切り離し可能に区画形成されており、両端がICチップ12に接続された検知用配線213は、分離部215にて検知配線部213a,213bが導通部213cを介して導通していることで導通した状態となっている。なお、ミシン目214は、カット部が検知配線部213a,213b上に形成されないようにする必要がある。
【0069】
このように構成された水分検知タグにおいては、使用前に、上述した実施の形態に示したものと同様に分離部215がベース基材210から切り離されていない状態にて検知用配線213の導通状態を確認し、その後、ミシン目214によって分離部215をベース基材210から切り離すことによって検知用配線213を非導通状態とすることになる。
【0070】
また、図10(b)に示すように、ベース基材310の外形から内側に凹むように分離部315を設けてもよい。分離部315は、ミシン目314によってベース基材310から切り離し可能に区画形成されており、両端がICチップ12に接続された検知用配線313は、分離部315にて検知配線部313a,313bが導通部313cを介して導通していることで導通した状態となっている。なお、ミシン目314は、カット部が検知配線部313a,313b上に形成されないようにする必要がある。
【0071】
このように構成された水分検知タグにおいても、使用前に、上述した実施の形態に示したものと同様に分離部315がベース基材310から切り離されていない状態にて検知用配線313の導通状態を確認し、その後、ミシン目314によって分離部315をベース基材310から切り離すことによって検知用配線313を非導通状態とすることになる。
【0072】
上述したように分離部は、切り離し線となるミシン目を介してベース基材から切り離し可能に区画形成され、検知用配線が分離部にて導通した状態となっていればよく、上述した形態に限らず、ベース基材の角部に三角形状に形成される等、様々な形態のものが考えられる。また、図10(a),(b)に示したような形態においては、分離部215,315が、水分検知タグが被検知領域に取り付けられた場合に被検知領域に対向する部分に形成されていないため、検知用配線213,313が分離部215,315により切り取られる形状を考慮せずに検知用配線のデザインを所望のものとしやすくなる。
【0073】
また、図11に示すように、検知用配線413が、ICチップ11に接続された端部から並行して延びた後、互いに離れる方向に延び、その後、ICチップ11と接続された端部とは反対側の端部が互いに対向する方向に向かってくる検知配線部413a,413bが、ベース基材410の分離部415にて導通部413cを介して互いに導通したものとしてもよい。この場合、分離部415は、図10(b)に示したものと同様に、ベース基材410の外形から内側に凹むようにミシン目414によって区画形成されることになる。
【0074】
このように構成された水分検知タグにおいては、検知用配線413を構成する検知配線部413a,413b間の分離後の距離を調整しやすいものとなる。
【0075】
なお、上述した実施の形態においては、ベース基材から分離部を切り離し可能とするための切り離し線がミシン目のみから構成されたものを例に挙げて説明したが、分離部がベース基材から切り離された状態とならなければその一部にスリットを用いてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1,101 水分検知タグ
2 配管
3 床面
5 リーダライタ
6 管理用パソコン
10,110,210,310,410 ベース基材
11 ICチップ
12 アンテナ
13,213,313,413 検知用配線
13a,13b,213a,213b,313a,313b,413a,413b 検知配線部
13c,213c,313c,413c 導通部
13d 水分
14a,14b,116a~116c,121a~121c,214,314,414 ミシン目
15,215,315,415 分離部
20a,20b,120a,120b 防水シート
30a~30c 粘着層
40 剥離紙
117a,117b 取付部
118 突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11