(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】隔壁スタッド、隔壁、隔壁の施工方法及び隔壁スタッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
E04B 2/74 20060101AFI20240709BHJP
E04B 2/82 20060101ALI20240709BHJP
E04C 3/32 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
E04B2/74 541G
E04B2/82 501T
E04B2/74 511A
E04B2/74 531Z
E04C3/32
(21)【出願番号】P 2021008579
(22)【出願日】2021-01-22
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】永松 英夫
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】実公昭62-022583(JP,Y2)
【文献】実開昭49-104112(JP,U)
【文献】実開昭49-142419(JP,U)
【文献】実公平1-1425(JP,Y2)
【文献】実公昭55-43208(JP,Y2)
【文献】特開平10-68187(JP,A)
【文献】実開昭59-58130(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/74
E04B 2/82
E04C 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の空間を複数の部屋に仕切る一対の板材を含む隔壁を設置するために、各板材の裏面に沿って上下方向に起立するように設置される隔壁スタッドであって、
設置された状態で上を向く第1端部とその反対側の第2端部とを有し、被挿通部材が前記第1端部から前記第2端部に向けて挿通することを許容する挿通空間を含む中空空間を取り囲むスタッド壁部と、
前記中空空間内に配置されており、前記第1端部から前記第2端部に向けて挿通される前記被挿通部材を前記スタッド壁部の外部に案内するガイド部と、を備え、
前記スタッド壁部には、前記スタッド壁部を貫通し、前記挿通空間内の前記被挿通部材を前記スタッド壁部の外部に引き出すための引出開口部が形成されており、
前記ガイド部は、前記第1端部から前記第2端部に向かって前記挿通空間内を挿通される前記被挿通部材を前記引出開口部に案内するガイド面を有する、隔壁スタッド。
【請求項2】
前記挿通空間の内周面と前記ガイド部の外周端との間の寸法は、前記被挿通部材の通過を阻止することが可能な寸法に抑えられている、請求項1に記載の隔壁スタッド。
【請求項3】
前記ガイド部は、前記引出開口部を画定する前記スタッド壁部の内周縁のうち最も前記第2端部よりの引出開口端部と連続する連続端部を有する、請求項1又は2に記載の隔壁スタッド。
【請求項4】
前記ガイド部は、前記連続端部と反対の側の自由端部とを有し、
前記ガイド部は、前記自由端部から前記引出開口端部までの寸法が、前記スタッド壁部において前記引出開口部が形成されている壁部と前記引出開口部と反対の側の壁部との距離よりも大きい、請求項3に記載の隔壁スタッド。
【請求項5】
前記スタッド壁部は、前記引出開口部から前記スタッド壁部の外部に引き出される前記被挿通部材の先端部が接続されるスタッド側設備機器を前記スタッド壁部の外面に取り付けるための取付部を有し、
前記取付部は、前記引出開口部よりも前記第2端部側に前記スタッド側設備機器を取り付け可能な位置に配置されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の隔壁スタッド。
【請求項6】
前記取付部に取り付けられる前記スタッド側設備機器をさらに備える、請求項5に記載の隔壁スタッド。
【請求項7】
前記板材を前記スタッド壁部に固定するために当該板材及び当該スタッド壁部をそれらの外側から貫通するように配置される少なくとも一つの固定部と前記被挿通部材との接触を抑制するための接触抑制部をさらに備え、
前記接触抑制部は、前記スタッド壁部の前記中空空間を、前記板材及び前記スタッド壁部を貫通した固定部の先端部が存在する固定部突出空間と前記挿通空間とに仕切るように配置される、請求項1~6のいずれか1項に記載の隔壁スタッド。
【請求項8】
建物における天井と床との間の空間を複数の部屋に仕切る一対の板材と、
各板材の裏面に沿って設置された状態で前記第1端部が前記天井を向き、前記第2端部が前記床を向く姿勢で、前記被挿通部材が前記第1端部から前記第2端部に向けて挿通することを許容する請求項1~7のいずれか1項に記載の少なくとも一つの隔壁スタッドと、を備え、
前記引出開口部は、前記スタッド壁部のうち前記板材に面する壁部とは異なる壁部に形成されている、隔壁。
【請求項9】
建物における天井と床との間の空間を複数の部屋に仕切る一対の板材を備える隔壁の施工方法であって、
前記第1端部が上を向き、前記第2端部が下を向き、かつ、各板材に面する壁部とは異なる壁部に前記引出開口部が位置するように、請求項1~7のいずれか1項に記載の少なくとも一つの隔壁スタッドを設置する工程と、
前記板材の裏面に前記少なくとも一つの隔壁スタッドが沿うように当該板材を設置する工程と、
前記板材を設置する工程の後に、前記スタッド壁部の前記挿通空間に前記第1端部から前記第2端部に向かって前記被挿通部材を挿通し、前記ガイド部により前記被挿通部材を前記引出開口部に案内し、前記引出開口部から前記被挿通部材の先端部を前記スタッド壁部の外部に引き出す工程と、を備える隔壁の施工方法。
【請求項10】
建物内の空間を複数の部屋に仕切る隔壁に含まれる板材の裏面に沿って設置された状態で上を向く第1端部とその反対側の下を向く第2端部とを有するとともに、前記第1端部から前記第2端部に向けて被挿通部材が挿通することを許容する挿通空間を含む中空空間が内部に形成され、前記被挿通部材を前記中空空間から外部に引き出すことが可能な隔壁スタッドの製造方法であって、
前記中空空間を取り囲む管壁を有する中空管を準備する工程と、
前記管壁において、前記挿通空間の内部を挿通する前記被挿通部材を前記中空管の外部に引き出すための引出開口部が形成されるべき開口部形成領域を設定し、前記開口部形成領域のうち最も前記第2端部よりの引出開口端部を除く切断縁を切断することにより、前記切断縁により前記管壁の他の部分から切り離されたガイド部構成体を形成する工程と、
前記引出開口端部を折り目として前記ガイド部構成体を前記中空管の前記中空空間の内部に折り曲げることにより、前記ガイド部構成体が前記中空管の内部を挿通する前記被挿通部材を前記引出開口部に案内するガイド部を形成すると同時に、前記ガイド部から前記被挿通部材を前記中空管の外部に引き出すための前記引出開口部を形成する工程と、を備える、隔壁スタッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隔壁スタッド、隔壁、隔壁の施工方法及び隔壁スタッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物構造物の空間を仕切ることにより、当該空間を小空間に分ける隔壁が知られている。隔壁は、界壁と間仕切壁とを含む。界壁は、建物を各施設に分ける壁であり、例えば集合住宅において各住戸を仕切る。前記界壁は床から天井裏まで延びる壁で構成されている。一方、間仕切壁は、各施設を複数の部屋に分ける壁であり、例えば各住戸内を複数の部屋に仕切る。前記間仕切壁は、床から室内の天井材の下まで延びる壁で構成されている。
【0003】
特許文献1には、間仕切壁の室内側に、間仕切壁とは別のふかし壁を付設し、間仕切壁ではなく当該ふかし壁に設備機器を取り付けるとともにふかし壁に配線用の中空層を形成した構成において中空層の共鳴現象による遮音性能の低下を抑制するための技術が開示されている。前記間仕切壁は一対の間仕切壁用の板材を有する。また、前記ふかし壁は一対のふかし壁用の板材を有する。
【0004】
前記一対の間仕切り壁用の板材は、互いに隣接する部屋の間に設置され、当該隣接する部屋の室内空間のそれぞれに面している。各間仕切り壁用の板材は、前記室内空間に面している表面と、前記室内空間とは反対側に面している裏面と、を有する。各間仕切り壁用の板材は、複数の隔壁スタッドによって前記裏面から支持されることにより、立直状態を保っている。一対の間仕切り壁用の板材の裏面の間にはスペースが設けられている。当該スペースには、複数の隔壁スタッドと、断熱材及び遮音材と、が配置されている。前記一対のふかし壁用の板材それぞれは、前記一対の間仕切り壁用の板材それぞれよりも部屋の内側に設置されている。各ふかし壁用の板材と各間仕切り壁用の板材との間には空間が形成されており、設備機器はふかし壁用の板材の当該空間に面する裏面に取り付けられている。このように間仕切壁内に設備機器を取り付ける代わりに、ふかし壁内に設備機器を取り付けることにより、間仕切壁に設備機器を取り付けるための取付穴をあけることによる遮音性能及び耐火性能の低下が防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ふかし壁は間仕切壁よりも部屋の内側に付設されるため、室内空間が狭くなる。また、ふかし壁を施工することにより施工の手間が増えるとともにコストが上昇する。
【0007】
このような課題を解決するため、ふかし壁に設備機器を取り付ける代わりに、コンセントボックス等の設備機器を隔壁に取り付けることも考えられる。また、当該隔壁が界壁の場合には耐火性能、遮音性能を有するコンセントボックス等の設備機器を界壁に取り付けることが好ましい。しかし、この場合には、隔壁に取り付けられた設備機器に接続される電気配線等の配置に問題がある。特許文献1では、一対の間仕切壁用の板材の間にスペースが存在しているため当該スペースを利用して電気配線等を配置することが考えられるが、間仕切壁用の板材が設置された後においては、当該スペースに配置された断熱材及び遮音材が邪魔となり、電気配線等を一対の間仕切壁用の板材間に設けられた設備機器まで導く作業は容易ではない。
【0008】
そこで、本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、隔壁用の板材が取り付けられた後であっても容易に被挿通部材を配置し、かつ予め設定された位置で被挿通部材を引き出すことができる隔壁スタッド、隔壁、隔壁の施工方法及び隔壁スタッドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための隔壁スタッドは、建物内の空間を複数の部屋に仕切る一対の板材を含む隔壁を設置するために、各板材の裏面に沿って上下方向に起立するように設置される隔壁スタッドであって、設置された状態で上を向く第1端部とその反対側の第2端部とを有し、被挿通部材が前記第1端部から前記第2端部に向けて挿通することを許容する挿通空間を含む中空空間を取り囲むスタッド壁部と、前記中空空間内に配置されており、前記第1端部から前記第2端部に向けて挿通される前記被挿通部材を前記スタッド壁部の外部に案内するガイド部と、を備え、前記スタッド壁部には、前記スタッド壁部を貫通し、前記挿通空間内の前記被挿通部材を前記スタッド壁部の外部に引き出すための引出開口部が形成されており、前記ガイド部は、前記第1端部から前記第2端部に向かって前記挿通空間内を挿通される前記被挿通部材を前記引出開口部に案内するガイド面を有する。
【0010】
上記構成によれば、隔壁に含まれる一対の板材の裏面において、板材間のスペースを圧迫することなく、スタッド壁部の挿通空間に被挿通部材を第1端部から挿入することができる。しかも、スタッド壁部の挿通空間を含む中空空間にガイド部を配置するという簡易な構成により、ガイド部により被挿通部材をスタッド壁部の外部に引き出すことができる。また、ガイド部のガイド面は被挿通部材を引出開口部に案内するため、被挿通部材は引出開口部を通じてスタッド壁部の外部に容易に案内される。
【0011】
また、隔壁に含まれる一対の板材及び隔壁スタッドが設置された後であっても、スタッド壁部の内部を挿通する被挿通部材を当該内部から引き出す作業をガイド部により容易に実施することができる。例えば、被挿通部材の先端を確認しながら被挿通部材の先端をスタッド壁部の内部から外部に引き出すために、既に設置された隔壁用の板材を取り外すような作業は不要となる。
【0012】
上記隔壁スタッドにおいて、好ましくは、前記挿通空間の内周面と前記ガイド部の外周端との間の寸法は、前記被挿通部材の通過を阻止することが可能な寸法に抑えられている。
【0013】
上記構成によれば、被挿通部材は挿通空間の内周面とガイド部の外周端との間を通過することができず、第1端部側からガイド部を超えて第2端部側に挿通されない。よって、ガイド部により被挿通部材を確実に引出開口部に導くことができる。
【0014】
上記隔壁スタッドにおいて、好ましくは、前記ガイド部は、前記引出開口部を画定する前記スタッド壁部の内周縁のうち最も前記第2端部よりの引出開口端部と連続する連続端部を有する。
【0015】
上記構成によれば、被挿通部材はガイド部から引出開口端部に連続的に案内されるため、被挿通部材は当該引出開口端部から引出開口部の外部によりスムーズに引き出される。
【0016】
上記隔壁スタッドにおいて、好ましくは、前記ガイド部は、前記連続端部と反対の側の自由端部とを有し、前記ガイド部は、前記自由端部から前記引出開口端部までの寸法が、前記スタッド壁部において前記引出開口部が形成されている壁部と前記引出開口部と反対の側の壁部との距離よりも大きい。
【0017】
上記構成によれば、自由端部が連続端部を起点として第2端部側に変位しようとしても、前記自由端部から前記引出開口端部までの寸法が前記スタッド壁部において前記引出開口部が形成されている壁部と前記引出開口部と反対の側の壁部との距離よりも大きいため、自由端部がスタッド壁部に当接することにより当該当接した位置よりも第2端部側への自由端部の移動が抑制され、ガイド面の傾斜が維持される。例えば、第1端部から挿入される被挿通部材によりガイド部が第2端部の方へ押される場合でも、自由端部がスタッド壁部と当接することによりスタッド壁部に係止される状態となることにより、自由端部がさらに第2端部の方へ移動するのを抑制することができる。
【0018】
上記隔壁スタッドにおいて、好ましくは、前記スタッド壁部は、前記引出開口部から前記スタッド壁部の外部に引き出される前記被挿通部材の先端部が接続されるスタッド側設備機器を前記スタッド壁部の外面に取り付けるための取付部を有し、前記取付部は、前記引出開口部よりも前記第2端部側に前記スタッド側設備機器を取り付け可能な位置に配置されている。
【0019】
上記構成によれば、スタッド側設備機器を取付部に取り付けることにより、スタッド側設備機器がスタッド壁部の外面において引出開口部よりも第2端部側に取り付けられる。被挿通部材の先端部は、挿通方向に沿って引出開口部からスタッド壁部の外部に向かうため、当該先端部は引出開口部よりも第2端部側に引き出される。そのため、被挿通部材の先端部とスタッド側設備機器との接続が容易である。
【0020】
上記隔壁スタッドにおいて、好ましくは、前記取付部に取り付けられる前記スタッド側設備機器をさらに備える。
【0021】
上記構成によれば、スタッド側設備機器が一体となった隔壁スタッドを構成できる。
【0022】
上記隔壁スタッドにおいて、好ましくは、前記板材を前記スタッド壁部に固定するために当該板材及び当該スタッド壁部をそれらの外側から貫通するように配置される少なくとも一つの固定部と前記被挿通部材との接触を抑制するための接触抑制部をさらに備え、前記接触抑制部は、前記スタッド壁部の前記中空空間を、前記板材及び前記スタッド壁部を貫通した固定部の先端部が存在する固定部突出空間と前記挿通空間とに仕切るように配置される。
【0023】
上記構成によれば、固定部突出空間と挿通空間との間に接触抑制部が介在するため、挿通空間を挿通する被挿通部材が固定部により損傷したり、固定部により挿通が抑制されたりするのを抑制することができる。
【0024】
上記課題を解決するための隔壁は、建物における天井と床との間の空間を複数の部屋に仕切る一対の板材と、各板材の裏面に沿って設置された状態で前記第1端部が前記天井を向き、前記第2端部が前記床を向く姿勢で、前記被挿通部材が前記第1端部から前記第2端部に向けて挿通することを許容する請求項1~7のいずれか1項に記載の少なくとも一つの隔壁スタッドと、を備え、前記引出開口部は、前記スタッド壁部のうち前記板材に面する壁部とは異なる壁部に形成されている。
【0025】
上記構成によれば、引出開口部は隔壁用の板材に面する壁部とは異なる壁部に形成されているため、被挿通部材は当該板材に阻害されることなく、ガイド部により引出開口部からスタッド壁部の外部に引き出される。
【0026】
上記課題を解決するための隔壁の施工方法は、建物における天井と床との間の空間を複数の部屋に仕切る一対の板材を備える隔壁の施工方法であって、前記第1端部が上を向き、前記第2端部が下を向き、かつ、各板材に面する壁部とは異なる壁部に前記引出開口部が位置するように、上記の少なくとも一つの隔壁スタッドを設置する工程と、前記板材の裏面に前記少なくとも一つの隔壁スタッドが沿うように当該板材を設置する工程と、前記板材を設置する工程の後に、前記スタッド壁部の前記挿通空間に前記第1端部から前記第2端部に向かって前記被挿通部材を挿通し、前記ガイド部により前記被挿通部材を前記引出開口部に案内し、前記引出開口部から前記被挿通部材の先端部を前記スタッド壁部の外部に引き出す工程と、を備える。
【0027】
上記施工方法によれば、隔壁用の板材を設置する工程の後に、スタッド壁部の内部から被挿通部材の先端部を引き出す作業をガイド部により容易に実施することができる。
【0028】
また、引出開口部が前記板材に面する壁部とは異なる壁部に位置するように隔壁スタッドが配置されるため、被挿通部材は前記板材に阻害されることなく、ガイド部により引出開口部からスタッド壁部の外部に引き出される。
【0029】
上記課題を解決するための隔壁スタッドの製造方法は、建物内の空間を複数の部屋に仕切る隔壁に含まれる板材の裏面に沿って設置された状態で上を向く第1端部とその反対側の下を向く第2端部とを有するとともに、前記第1端部から前記第2端部に向けて被挿通部材が挿通することを許容する挿通空間を含む中空空間が内部に形成され、前記被挿通部材を前記中空空間から外部に引き出すことが可能な隔壁スタッドの製造方法であって、前記中空空間を取り囲む管壁を有する中空管を準備する工程と、前記管壁において、前記挿通空間の内部を挿通する前記被挿通部材を前記中空管の外部に引き出すための引出開口部が形成されるべき開口部形成領域を設定し、前記開口部形成領域のうち最も前記第2端部よりの引出開口端部を除く切断縁を切断することにより、前記切断縁により前記管壁の他の部分から切り離されたガイド部構成体を形成する工程と、前記引出開口端部を折り目として前記ガイド部構成体を前記中空管の前記中空空間の内部に折り曲げることにより、前記ガイド部構成体が前記中空管の内部を挿通する前記被挿通部材を前記引出開口部に案内するガイド部を形成すると同時に、前記ガイド部から前記被挿通部材を前記中空管の外部に引き出すための前記引出開口部を形成する工程と、を備える。
【0030】
上記製造方法によれば、中空管において引出開口端部を除く切断縁を切断することによりガイド部構成体を形成することと、このガイド部構成体を、引出開口端部を折り目として中空管の中空空間の内部に折り曲げることにより、被挿通部材を引出開口部に導くガイド部と被挿通部材の外部との連通口である引出開口部とを中空管に同時に形成することができる。つまり、引出開口部の形成のために中空管を切除する部分を利用してガイド部を形成することができる。また、引出開口端部においてガイド部構成体を中空管に連結したままにすることができるため、ガイド部を中空管に連結するための別部材が不要である。
【発明の効果】
【0031】
本発明の隔壁スタッド、隔壁、隔壁の施工方法及び隔壁スタッドの製造方法によれば、隔壁用の板材が取り付けられた後であっても板材間のスペースを圧迫することなく容易に被挿通部材を配置し、かつ予め設定された位置で被挿通部材を引き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施形態に係る隔壁スタッドを用いた建物構造体の一部断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る板材、隔壁スタッド、配管スリーブ及びコンセントボックスの関係を主に示す正面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る隔壁の平面一部断面図である。
【
図4】配管スリーブが挿通された状態の隔壁スタッドの斜視図である。
【
図5】引出開口部が形成された第1長手壁面部側から見た隔壁スタッドの側面図である。
【
図6】
図5のVI-VI切断線における断面図である。
【
図7】
図5のVII-VII切断線における断面図である。
【
図8】
図5のVIII-VIII切断線における断面図である。
【
図10】前記実施形態とは別の形態の隔壁スタッド、配管スリーブ及びコンセントボックスの関係を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0034】
図1、
図2に示す建物構造体1はその内部の空間を複数の部屋に仕切る隔壁30を有する。前記隔壁30は、互いに水平方向に隣接する部屋を仕切る壁の役割を果たす。本実施形態では複数の住戸を有する建物構造体1において隣接する住戸どうしを仕切るための界壁を隔壁30として例示する。隔壁30は、建築基準法上、耐火性能及び遮音性能を満たすことが求められる。さらに、隔壁30は、建築基準法上、建物構造体1の床の下端部から天井の上端部まで延びることが求められる。
【0035】
隔壁30の部屋内に面する側にコンセントユニット80を配置する場合、コンセントユニット80に電気配線を導く必要がある。本実施形態の隔壁30は、前記電気配線を配置するスペースを隔壁30の内部に確保することができるとともに、当該スペースに配置される電気配線をコンセントユニット80に導く構成を有する。より具体的に、前記隔壁30は、一対の板材31と、各板材31に沿って立設される少なくとも一つの第1隔壁スタッド40Aと、を備える。当該第1隔壁スタッド40Aは、内部に前記電気配線を挿通することが可能な中空空間SSを有するとともに、前記中空空間SSから前記電気配線を引き出すことが可能な構成を有する。
【0036】
前記電気配線は本実施形態では配管スリーブ70に挿通されている。前記配管スリーブ70及び前記電気配線は被挿通部材の一例である。前記配管スリーブ70は、管状部材であり、配線及び配管等が内部を挿通可能に構成されている。前記配管スリーブ70内に前記電気配線を挿通した状態で前記配管スリーブ70を所定位置まで延ばすことにより、前記電気配線を当該所定位置まで導くことができる。配管スリーブ70内に前記電気配線を挿通させることにより、断線等の損傷から前記電気配線を保護する。前記配管スリーブ70は柔軟性を有する部材から形成される。例えば、配管スリーブ70は、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の樹脂から形成される。
【0037】
以下に、本実施形態の建物構造体1についてさらに説明する。
図1~
図3に示すように、建物構造体1は、前記隔壁30に加えて、上部床スラブ2と、基礎3と、天井構造体10と、床構造体20と、鉄骨梁62と、配管スリーブ70と、を備える。
【0038】
上部床スラブ2と基礎3との間に、天井構造体10、床構造体20及び隔壁30が配置される。天井構造体10は各部屋の天井を構成する。床構造体20は各部屋の床を構成する。隔壁30は、上部床スラブ2と基礎3との間に立設されており、互いに隣接する部屋の天井構造体10の間及び床構造体20の間に位置する。これら天井構造体10、床構造体20及び隔壁30により各部屋の室内空間S1が形成される。
【0039】
上部床スラブ2は上層階の部屋の床である。上部床スラブ2は板状部材である。上部床スラブ2の板状面は水平方向に沿う。上部床スラブ2及び基礎3は、例えば、コンクリート及び軽量気泡コンクリート等から形成される。
【0040】
天井構造体10は、各部屋内の室内空間S1において上部床スラブ2側に配置される。天井構造体10は、天井材11と、機能材12と、を有する。天井材11は室内空間S1の天井面を構成する。天井材11は板状部材であり、その板状面が水平方向に沿う。天井材11は、その板状面が室内空間S1に面するように配置される。
【0041】
天井材11と上部床スラブ2と隔壁30とにより各部屋の天井裏空間S2が形成される。機能材12は、天井裏空間S2と室内空間S1との間において、遮音性能、耐火性能及び断熱性能の少なくとも一つを実現する部材である。機能材12は、天井材11の天井裏空間S2側の板状面に沿うように配置される。機能材12は、例えばガラスウール、ロックルール、セルロールファイバー、サーモウール、ウレタンフォーム及びフェノールフォーム等を挙げることができる。
【0042】
床構造体20は、各部屋内の室内空間S1において基礎3側に配置される。床構造体20は、床下地材21と、床材22と、機能材23と、を備える。床下地材21は床の下地を構成する。床下地材21は板状部材である。床下地材21の板状面は水平方向に沿う。
【0043】
床材22は板状の化粧材であり、室内空間S1の床面を構成する。床材22の板状面は水平方向に沿う。床材22は、床下地材21の上面に配置されることにより、床材22の板状面が室内空間S1に面するように配置される。
【0044】
機能材23は、機能材23の下の床下空間と室内空間S1との間において、遮音性能、耐火性能及び断熱性能の少なくとも一つを実現する部材である。機能材23は、床下地材21下面に沿うように配置される。機能材23として機能材12と同様の機能を有する材料を用いることができる。
【0045】
鉄骨梁62は、上部床スラブ2及び図外の柱と協働して、建物構造体1の躯体として機能する。
【0046】
隔壁30は、一対の板材31、複数の隔壁スタッド40と、複数のビス60と、複数のランナ部材61と、機能材63と、コンセントボックス52と、コンセントユニット80と、を備える。
【0047】
隔壁30は建物構造体1における天井と床との間の空間を複数の部屋に仕切る壁である。隔壁30により、互いに隣接する部屋が仕切られる。
【0048】
一対の板材31のうち一方の板材31は隣接する一方の部屋の室内空間S1に面し、他方の板材31は他方の部屋の室内空間S1に面する。各板材31は板状部材である。各板材31は、板状面が上下方向に沿うように設置される。一対の板材31のうち一方の板材31は、各部屋の室内空間S1に面する表面と、他方の板材31に面する裏面と、を有する。各板材31は、前記複数の隔壁スタッド40によって裏面から支持されることにより立直状態を保つ。また、一対の板材31のうちの各板材31は、左右方向に隣接して配置されることで一連の壁面を構成する。互いに左右に隣接する板材31は、互いの表面及び裏面が概ね面一となるように配置される。
【0049】
各板材31は、それぞれ板状部材である表側板材31a及び裏側板材31bを重ね合わせた二重壁によって形成されている。さらに、各板材31は、床から天井裏空間S2まで延びる。本実施形態では、各板材31は基礎3の上面から上部床スラブ2の下面まで延びる。このような構成により、一対の板材31は、互いに隣接する部屋において、一方の部屋から他方の部屋に対する延焼の抑制及び音漏れの抑制を実現する。
【0050】
各板材31のうち、天井裏空間S2に延びる部分が板材上部分31Tを構成する。板材上部分31Tには、天井裏空間S2に配置される前記配管スリーブ70を中空の管状部材である前記隔壁スタッド40内に挿入するための板材上開口部33が形成される。板材上開口部33は、板材31の板状面に概ね直交する方向に板材31を貫通する。
【0051】
また、各板材31のうち、天井材11よりも下の部分が板材下部分31Bを構成する。板材下部分31Bには板材下開口部34が形成される。板材下開口部34は、前記隔壁スタッド40に取り付けられたコンセントボックス52に導かれた配管スリーブ70を前記コンセントユニット80に導くための開口である。板材下開口部34は板材31の板状面に概ね直交する方向に板材31を貫通する。
【0052】
前記コンセントボックス52は配管スリーブ70が接続されるとともに、コンセントユニット80を取り付けるための設備である。コンセントボックス52はスタッド側設備機器の一例である。コンセントボックス52は、接続部52aと、ボックス縁部52bと、を有する。接続部52aはボックス縁部52bの上面に配置されている。接続部52aは、隔壁スタッド40の外部に引き出される配管スリーブ70の先端部70aと接続される。ボックス縁部52bは、コンセントボックス52における収納空間の周囲に設けられた板状部であり、隔壁スタッド40にコンセントボックス52を取り付けるための部分としても機能する。
【0053】
前記コンセントユニット80は、電気機器が電気の供給を受けるための供給部であり、差込口を含む。具体的に、コンセントユニット80は、エアコン、テレビ、冷蔵庫等の電気機器の電気コードを前記コンセントボックス52内に接続するための差込口を含むユニットである。コンセントユニット80は、
図1及び
図3に示すように板材31を貫通した状態でコンセントボックス52に取り付けられている。
【0054】
前記板材下開口部34の形成位置は、前記コンセントボックス52内に配管スリーブ70を導くことが可能な位置である。具体的に、コンセントユニット80の板材31における設置位置は建物構造体1の設計段階において予め設定される。
【0055】
板材31としては、例えば、普通硬質石膏ボード、シージング石膏ボード及び強化石膏ボード等の石膏ボード、珪酸カルシウム板、スラグ石膏板等を想定することができる。なお、板材31の室内空間S1側の面は表面材により覆われてもよい。
【0056】
一対の板材31の裏面どうしは互いに所定の間隔を空けて対向する。当該間隔により界壁空間S3が形成される。界壁空間S3のうち隔壁スタッド40を除く空間の少なくとも一部に機能材63が配置される。隔壁30の建築基準法上の耐火性能及び遮音性能を満たすべく、機能材63として機能材12と同様の機能を有する材料を用いることができる。
【0057】
前記複数の隔壁スタッド40は複数の板材31を支持する。各隔壁スタッド40は、板材31の裏面の板状面に沿って並ぶように設置され、板材31を裏面から支持する。各隔壁スタッド40は、第1端部41Tが天井側の上を向き、その反対側の第2端部41Bが床側の下を向く立直姿勢、すなわち上下方向に延びる姿勢で設置される。本実施形態では、各隔壁スタッド40は、第1端部41Tの少なくとも一部が天井裏空間S2に突出する状態で基礎3から天井裏空間S2まで延びる。
【0058】
複数の隔壁スタッド40はランナ部材61によって立直姿勢で設置される。隔壁スタッド40の第1端部41Tは、
図1に示すように、ランナ部材61を介して鉄骨梁62に支持される。隔壁スタッド40の第2端部41Bは、ランナ部材61を介して基礎3に支持される。
【0059】
複数の隔壁スタッド40により1つの板材31が支持される。例えば、本実施形態では
図2に示すように1つの板材31の板状面に沿う左右方向の両側部分のそれぞれを各隔壁スタッド40が支持する。また、本実施形態では、1つの隔壁スタッド40が左右に互いに隣接する板材31の両方を支持する。具体的に、
図2に示すように、1つの隔壁スタッド40は、互いに隣接する板材31の境界を跨ぐように配置される。
【0060】
板材31は、前記複数のビス60により隔壁スタッド40に固定される。前記複数のビス60は、板材31及びスタッド壁部50をそれらの外側から貫通するように配置される。具体的に、前記複数のビス60は、
図7及び
図8に示すように、ビス頭まで表側板材31a及び裏側板材31bに打ち込まれた状態で、その先端部60aが、板材31及びスタッド壁部50をともに貫通するとともに中空空間SS内で終端する。また、前記複数のビス60は、板材31を隔壁スタッド40の上下方向の全体に亘って固定するように、隔壁スタッド40の上下方向に所定の間隔で配置される。ビス60は、板材31を隔壁スタッド40に固定するための固定部の一例である。
【0061】
本実施形態では、複数の隔壁スタッド40は、
図3に示すように、界壁空間S3の上面視において、一対の板材31のうち一方の板材31を支持する隔壁スタッド40と、他方の板材31を支持する隔壁スタッド40とは、交互に配置される。つまり、複数の隔壁スタッド40は、上面視において千鳥状に配置される。隔壁スタッド40の配置はこのような千鳥状に限定されず、上面視において一列に配置されてもよい。そして、一列の隔壁スタッド40が一対の板材31に挟まれた状態でそれらの両方を支持してもよい。この場合、板材31と直交する方向における界壁空間S3の厚みは、隔壁スタッド40の厚みと一致する。
【0062】
前記複数の隔壁スタッド40は、少なくとも一つの第1隔壁スタッド40Aと、複数の第2隔壁スタッド40Bとを含む。前記第1隔壁スタッド40Aは隔壁スタッドの一例である。つまり、前記少なくとも一つの第1隔壁スタッド40Aは、前記配管スリーブ70が第1端部41Tから第2端部41Bに向けて挿通することを許容するとともに、第1隔壁スタッド40A内から配管スリーブ70を引き出すことが可能な構成を有する。一方、前記第2隔壁スタッド40Bは、被挿通部材が内部に挿通されることを予定していない。このように、隔壁スタッドは、本発明の隔壁スタッド(本実施形態では第1隔壁スタッド40A)のみを含むだけでなく、他の隔壁スタッド(本実施形態では第2隔壁スタッド40B)を含んでいてもよい。
【0063】
各第1隔壁スタッド40Aは、
図1~
図8に示すように、スタッド壁部50と、ガイド部51と、取付部53と、複数の接触抑制部54と、を有する。
【0064】
図4~
図8に示すように、スタッド壁部50は中空の管状部材である。スタッド壁部50は中央部に位置する中空空間SSを取り囲む。本実施形態では、前記中空空間SSは、
図7及び
図8に示すように挿通空間TSとビス突出空間BSとに分けられている。挿通空間TSは、配管スリーブ70が挿通される空間である。配管スリーブ70は、挿通空間TSにおいて第1端部41Tから第2端部41Bに向けて挿通される。ビス突出空間BSは、板材31及びスタッド壁部50をそれらの外側から貫通する前記複数のビス60の先端部60aが存在するための空間である。ビス突出空間BSは固定部突出空間の一例である。挿通空間TSとビス突出空間BSとは接触抑制部54により仕切られている。接触抑制部54及びこれによる挿通空間TSとビス突出空間BSとの区画については後述する。
【0065】
前記スタッド壁部50は、本実施形態では、
図4、
図7及び
図8に示すように断面視が長方形状の管壁である。スタッド壁部50は、一対の短辺をそれぞれ構成する一対の第1短手壁面部a1S及び第2短手壁面部a2Sと、一対の長辺をそれぞれ構成する一対の第1長手壁面部b1S及び第2長手壁面部b2Sと、を有する。前記中空空間SSは、第1短手壁面部a1S、第1長手壁面部b1S、第2短手壁面部a2S及び第2長手壁面部b2Sが順に連結されることにより形成される。本実施形態では、第1隔壁スタッド40Aが板材31の裏面に設置された状態で、第1短手壁面部a1Sが板材31の裏面と当接する。一方、第1短手壁面部a1S以外の第2短手壁面部a2S、第1長手壁面部b1S及び第2長手壁面部b2Sは板材31と当接しない。
【0066】
スタッド壁部50には、前記配管スリーブ70を挿通空間TSに挿入するための挿入開口部55が形成される。挿入開口部55は、スタッド壁部50の上部に形成される。具体的に、
図1に示すように、スタッド壁部50は、第1端部41T側の少なくとも一部が天井裏空間S2に突出する状態で基礎3から天井裏空間S2まで延びる。スタッド壁部50のうち、天井裏空間S2に延びる部分がスタッド上部分50Tを構成する。挿入開口部55はスタッド上部分50Tにおいて、スタッド壁部50を貫通するように形成される。挿入開口部55は板材31と当接する第1短手壁面部a1Sに形成されている。当該挿入開口部55は前記板材上開口部33と連通する。よって、天井裏空間S2に配置される配管スリーブ70を板材上開口部33及び挿入開口部55を介して挿通空間TSに挿入可能である。
【0067】
また、スタッド壁部50には引出開口部56が形成される。引出開口部56は、前記挿通空間TSに挿通される前記配管スリーブ70を、前記ガイド部51を介してスタッド壁部50の外部に引き出すための開口である。引出開口部56は、スタッド壁部50を貫通するように形成される。引出開口部56から引き出された配管スリーブ70の先端部70aは、スタッド壁部50に取り付けられる前記コンセントボックス52に接続される。引出開口部56は、スタッド壁部50の下部に形成される。具体的に、
図1に示すように、前記スタッド壁部50のうち、天井材11よりも下の部分がスタッド下部分50Bを構成する。引出開口部56はスタッド下部分50Bに形成される。
【0068】
さらに説明すると、前記引出開口部56は、
図1に示すように、スタッド壁部50のうち、前記コンセントボックス52の取付位置よりも上方に形成される。具体的に、コンセントユニット80の室内空間S1における設置位置は予め設定される。この設置位置に基づいて、コンセントユニット80に接続される前記コンセントボックス52の隔壁スタッド40における取付位置もまた予め設定される。前記引出開口部56の形成位置は、当該取付位置に取り付けられたコンセントボックス52よりも上方となるように予め設定される。
【0069】
また、引出開口部56は、板材31が当接する第1短手壁面部a1S以外の第2短手壁面部a2S、第1長手壁面部b1S及び第2長手壁面部b2Sの少なくともいずれか一つの壁面部に形成される。本実施形態では、引出開口部56は第1長手壁面部b1Sに形成される。当該第1長手壁面部b1Sには前記引出開口部56が形成されるとともに、コンセントボックス52が取り付けられる。
【0070】
前記引出開口部56の形状は限定されないが、本実施形態では前記引出開口部56の形状は2対の対向する辺を有する長方形状である。1対の対向する辺は第1短手壁面部a1S及び第2短手壁面部a2Sに平行である。もう1対の対向する辺は第1短手壁面部a1S及び第2短手壁面部a2Sに対して概ね直交する。
【0071】
スタッド壁部50は、
図2、
図4及び
図6に示すように、コンセントボックス52をスタッド壁部50の外面に取り付けるための取付部53を有する。前記取付部53は、スタッド壁部50の外面において、引出開口部56よりも第2端部41B側にコンセントボックス52を取り付け可能な位置に配置される。より具体的には、取付部53は、コンセントボックス52の接続部52aが引出開口部56よりも第2端部41B側に位置するように配置される。取付部53にコンセントボックス52が取り付けられることにより、コンセントボックス52が取り付けられた第1隔壁スタッド40Aが構成される。
【0072】
本実施形態では、取付部53は、スタッド壁部50の外面に設定された取付面53aと、コンセントボックス52を前記取付面53aに取り付けるボックス用ビス53bと、を有する。コンセントボックス52のボックス縁部52bがボックス用ビス53bにより取付面53aに固定されることにより、コンセントボックス52がスタッド壁部50に取り付けられる。
【0073】
前記コンセントボックス52は、引出開口部56よりも下方の部分において前記取付部53に取り付けられ、引出開口部56からスタッド壁部50の外部に引き出される配管スリーブ70の先端部70aとコンセントボックス52の接続部52aとが接続される。当該接続により配管スリーブ70内の電気配線とコンセントボックス52とが物理的に接続される。
【0074】
ガイド部51は、
図4~
図6に示すように、配管スリーブ70をスタッド壁部50の挿通空間TS(
図7及び
図8)から外部に案内する。ガイド部51は、中空空間SSの内部に配置される。ガイド部51は、第1端部41Tを向くガイド面51Sを有する。当該ガイド面51Sには第1端部41Tから第2端部41Bに向かって挿通空間TS内を挿通される配管スリーブ70が当接可能である。前記ガイド面51Sは、引出開口部56と反対の側から引出開口部56に向かうにつれて第2端部41B側に変位するように傾斜する。これにより、ガイド面51Sは、挿通空間TS内を挿通される配管スリーブ70を当該ガイド面51Sに沿って引出開口部56に案内することが可能である。
【0075】
前記ガイド部51の特徴としては、配管スリーブ70を挿通空間TSから引出開口部56にスムーズに案内する第1の特徴と、当該ガイド部51を超えた第2端部41Bへの配管スリーブ70の通過を阻止する第2の特徴とが挙げられる。
【0076】
第1の特徴は次の構成により実現される。ガイド面51Sの傾斜角度θは、配管スリーブ70が第1端部41Tから第2端部41Bに向かって挿通空間TS内を挿通される挿通方向に沿って引出開口部56に案内され易くなるように設定されていることが好ましい。傾斜角度θは、水平面とガイド面51Sとのなす角である。前記傾斜角度は、例えば0度を超えて90未満であり、好ましくは20度以上60度未満である。
【0077】
さらに、第1の特徴は次の構成により実現される。
図6に示すように、ガイド部51は、第1長手壁面部b1Sに形成される引出開口部56の引出開口端部56aからスタッド壁部50の中空空間SSに延びる。当該ガイド部51は、引出開口端部56aと連続する連続端部51bと反対の側の自由端部51aとを有する。引出開口端部56aは、引出開口部56を画定するスタッド壁部50の内周縁のうち最も第2端部41B側の端部である。このガイド部51は、前記ガイド面51Sの傾斜状態を維持可能なように構成されている。具体的に、自由端部51aから引出開口端部56aまでの寸法LGが、引出開口部56が形成される第1長手壁面部b1Sと引出開口部56と反対の側の第2長手壁面部b2Sとの距離LWよりも大きい。したがって、自由端部51aが連続端部51bを起点として揺動したとしても、自由端部51aが第2長手壁面部b2Sに当接することにより、ガイド面51Sの揺動を抑えることができる。
【0078】
また、第2特徴は次の構成により実現される。挿通空間TSの内周面とガイド部51の外周端との間の寸法は、配管スリーブ70の通過を阻止することが可能な寸法に抑えられる。具体的に、
図7及び
図8に示すように、スタッド壁部50の上面視において、挿通空間TSの内周面とガイド部51の外周端との間の最大寸法Lは、配管スリーブ70の断面における最小寸法Dよりも小さい。本実施形態では、最大寸法Lは寸法L1~L3のうちのいずれか一つである。
【0079】
前記挿通空間TSの内周面と前記ガイド部51の外周端との間において配管スリーブ70の通過を阻止可能な前記寸法はゼロも含む。具体的に、スタッド壁部50の内周面とガイド部51の外周端の少なくとも一部が連続していてもよい。本実施形態では、前記ガイド部51は、
図4~
図6に示すように、引出開口端部56aと連続する。
【0080】
前記の
図4~
図6のようにガイド部51とスタッド壁部50とが引出開口端部56aにおいて連続している構成について
図7を用いてさらに説明する。
図7では、引出開口端部56aにおいて、ガイド部51とスタッド壁部50とが連続しており、前記挿通空間TSの内周面と前記ガイド部51の外周端との間の前記寸法はゼロである。一方、引出開口端部56aを除く部分において、前記挿通空間TSの内周面と前記ガイド部51の外周端との間の前記寸法が配管スリーブ70の通過を阻止することが可能な寸法に抑えられる。つまり前記寸法のうち最大寸法Lが配管スリーブ70の断面における最小寸法Dより小さい。
【0081】
具体的に説明すると、
図7では、上面視において、前記挿通空間TSは長方形状であり、前記ガイド部51もまた長方形状である。また、上面視において、前記挿通空間TSの各辺と前記ガイド部51の各辺とが概ね平行となるように、前記挿通空間TSに前記ガイド部51が収まっている。前記挿通空間TS及び前記ガイド部の2対の対向する辺のうち、1対の対向する辺は第1短手壁面部a1S及び第2短手壁面部a2Sに平行であり、もう1対の対向する辺は第1長手壁面部b1S及び第2長手壁面部b2Sに平行である。前記挿通空間TSの内周面と前記ガイド部51の外周端との間の前記寸法は、
図7では、前記長方形状の挿通空間TSの内周面と前記長方形状の前記ガイド部51の外周端との間により定義される。
【0082】
図7の例では、前記寸法には次の3つの寸法L1~L3が含まれる。1つ目の寸法L1は、挿通空間TSのうち前記ビス突出空間BSに面する内周面とガイド部51の前記ビス突出空間BS側の外周端との間の寸法である。前記ビス突出空間BSは、中空空間SSのうち第1短手壁面部a1S側に位置する。2つ目の寸法L2は、挿通空間TSのうち第2長手壁面部b2Sに面する内周面とガイド部51の第2長手壁面部b2S側の外周端との寸法である。3つ目の寸法L3は、挿通空間TSのうち第2短手壁面部a2Sに面する内周面とガイド部51の第2短手壁面部a2S側の外周端との寸法である。これらの寸法L1~L3のうち最大寸法Lが配管スリーブ70の最小寸法Dよりも小さくなるように設定される。これにより、配管スリーブ70は挿通空間TSの内周面とガイド部51の外周端との間の通過を阻止される。
【0083】
なお、中空空間SSの全てが挿通空間TSである場合には、前記スタッド壁部50の内周面とガイド部51の外周端との間の寸法が、ガイド部51の外周端の全体に亘って配管スリーブ70の通過を阻止することが可能な寸法に抑えられる。前記寸法は、具体的に、第1短手壁面部a1Sの内周面とガイド部51の第1短手壁面部a1S側の外周端との間の寸法、第2短手壁面部a2Sの内周面とガイド部51の第2短手壁面部a2S側の外周端との間の寸法、第1長手壁面部b1Sの内周面とガイド部51の第1長手壁面部b1S側の外周端との間の寸法、第2長手壁面部b2Sの内周面とガイド部51の第2長手壁面部b2S側の外周端との間の寸法である。
【0084】
前記ガイド部51は、本実施形態では、スタッド壁部50の引出開口部56に相当する部分を切断することにより形成される。具体的に、引出開口部56は、第1長手壁面部b1Sにおいて引出開口部56に相当する部分のうち引出開口端部56aを除く切断縁91(
図9)を切断することにより形成される。引出開口端部56aを除いて切り離された部分がガイド部51を構成する。当該切り離された部分を引出開口端部56aを折り目として折り曲げることにより、中空空間SS内にガイド部51が配置される。
【0085】
前記ガイド部51は本実施形態では
図4及び
図6に示すように断面視において薄板状の部材である。本実施形態では、薄板状のスタッド壁部50において前記切り離された部分により薄板状の当該ガイド部51が形成されている。この場合、ガイド面51Sは平面状に構成される。
【0086】
図4、
図7及び
図8に示すように、前記複数の接触抑制部54のぞれぞれは、配管スリーブ70の前記ビス突出空間BSへの侵入を規制することにより、配管スリーブ70と前記ビス突出空間BSに突出するビス60との接触を抑制する。具体的に、前記複数の接触抑制部54は、前記中空空間SSを、前記複数の接触抑制部54が配管スリーブ70の挿通を許容する挿通空間TSと、配管スリーブ70の挿通を阻止するビス突出空間BSとに区画する。
図7及び
図8に示すように、各ビス60の先端部60aは、スタッド壁部50のうち板材31が当接する第1短手壁面部a1Sからスタッド壁部50内のビス突出空間BSに突出する。複数の接触抑制部54は、隔壁スタッド40の長手方向に間欠的に設けられている。各接触抑制部54の間隔は、配管スリーブ70の剛性に応じて配管スリーブ70に許容される最小の曲率半径に基づいてビス突出空間BS内に配管スリーブ70の一部が入り込むことが困難となる間隔に設定されている。より好ましくは、各接触抑制部54は、ビス突出空間BSに突出するビス60の先端部60aを覆うように、前記ビス突出空間BSと前記挿通空間TSとの間に介在することにより、配管スリーブ70とビス60との接触を確実に阻止する。
【0087】
前記複数の接触抑制部54は、
図4に示すように、スタッド壁部50の上下方向に並ぶ。複数の接触抑制部54は、ガイド部51よりも第1端部41T側に配置される。
【0088】
前記接触抑制部54は、本実施形態では、
図4に示すように、スタッド壁部50において、開口部54aに相当する部分のうち折り返し端部54bを除く切断縁95(
図9)が切断された部分により形成される。前記開口部54aは、前記接触抑制部54が形成されることによりスタッド壁部50の一部が開口した部分である。前記接触抑制部54の形状は限定されないが、本実施形態では前記接触抑制部54の形状は2対の対向する辺を有する長方形状である。1対の対向する辺は第1短手壁面部a1S及び第2短手壁面部a2Sに平行である。もう1対の対向する辺は第1短手壁面部a1S及び第2短手壁面部a2Sに対して概ね直交する。
【0089】
前記複数の隔壁スタッド40のうち第2隔壁スタッド40Bは、前記第1隔壁スタッド40Aと同様に中空の管状部材であり、スタッド壁部50を有する。しかし、第2隔壁スタッド40Bは、前記第1隔壁スタッド40Aとは異なり、配管スリーブ70が挿通空間TS内に挿通されることを予定されていない。よって、第2隔壁スタッド40Bのスタッド壁部50には挿入開口部55及び引出開口部56は形成されておらず、かつ、第2隔壁スタッド40Bは、ガイド部51、取付部53及び接触抑制部54を有していない。
【0090】
ランナ部材61は、隔壁スタッド40が上下方向に立設し、かつ、複数の隔壁スタッド40が上述のように千鳥配置されるように複数の隔壁スタッド40を位置決めした状態で隔壁スタッド40と躯体(鉄骨梁62及び上部床スラブ2)とを連結する。ランナ部材61は、下側ランナ61aと、上側ランナ61bと、ランナ固定金具61cと、を有する。下側ランナ61a及び上側ランナ61bにはそれぞれ、隔壁スタッド40の第1端部41T及び第2端部41Bが取り付けられる。上側ランナ61bは、ランナ固定金具61cにより隔壁スタッド40の上端に固定される。
【0091】
次に、本実施形態に係る隔壁30の施工方法について説明する。この施工方法は、(1)隔壁スタッドを準備する工程、(2)建築構造物の骨組みを配置する工程、(3)板材及び第1隔壁スタッドに開口を形成する工程、(4)配管スリーブの第1隔壁スタッド内への挿入及び第1隔壁スタッド内からの引き出しを行う工程、(5)配管スリーブとコンセントボックスとの接続を含む。
【0092】
(1)隔壁スタッドを準備する工程
複数の隔壁スタッド40(第1隔壁スタッド40A及び第2隔壁スタッド40B)を準備する。引出開口部56の形成及びガイド部51の折り曲げを含む加工をスタッド壁部50に行うことにより第1隔壁スタッド40Aを準備する。一方、第2隔壁スタッド40Bについてはスタッド壁部50に前記加工を施さない。以下では、第1隔壁スタッド40Aを準備する方法、つまり製造方法について説明する。
【0093】
第1隔壁スタッド40Aを準備する工程は、(1-1)ガイド部及び引出開口部を形成する工程、(1-2)接触抑制部を形成する工程、(1-3)コンセントボックスをスタッド壁部に取り付ける工程を含む。
【0094】
(1-1)ガイド部及び引出開口部を形成する工程
図9に示すように、中空空間SSを取り囲む管壁を有する中空管90を準備する。当該管壁は、中空空間SSを取り囲む。中空管90の管壁は、
図4に示されたガイド部51、接触抑制部54及び引出開口部56が形成される前のスタッド壁部50に相当する。中空管90は、中空管第1端部90Tから中空管第2端部90Bに向けて延びる管状部材である。中空管第1端部90T及び中空管第2端部90Bはそれぞれ、スタッド壁部50の第1端部41T及び第2端部41Bに相当する。中空管90の管壁は、第1短手壁面部a1S、第1長手壁面部b1S、第2短手壁面部a2S及び第2長手壁面部b2Sを有する。
【0095】
中空管90の管壁において、引出開口部56が形成される予定の位置に第1開口部形成領域R1(開口部形成領域の一例)を設定する。
【0096】
第1開口部形成領域R1は、前記引出開口部56及び前記ガイド部51の形成位置、形状及び寸法等に基づいて予め設定されている。前記引出開口部56の形成位置は、中空管90のうち板材31とは異なる方向を向く第1長手壁面部b1Sに設定されている。また、前記引出開口部56の形成位置は、中空管90におけるコンセントボックス52の予め設定された取付位置よりも上方である。前記ガイド部51の寸法は、前記ガイド部51が中空空間SS(
図7及び
図8)に配置された場合に、前記配管スリーブ70が挿通される挿通空間TSの内周面とガイド部51の外周端との間の寸法が配管スリーブ70の通過を阻止することが可能に設定される。また、前記ガイド部51の寸法は、前記ガイド部51が中空空間SSに配置された場合に、第2長手壁面部b2Sから第1長手壁面部b1Sに向かうにつれて中空管第2端部90B側に変位する傾斜を維持可能に設定される。
【0097】
前記第1開口部形成領域R1についてさらに説明すると、前記第1開口部形成領域R1において、中空管90の管壁において、前記引出開口部56の周縁に相当する部分のうち引出開口端部56aを除いた部分が切断縁91として設定される。引出開口端部56aは、前記引出開口部56の周縁に相当する部分において最も中空管第2端部90Bに近い部分である。
【0098】
本実施形態では、前記切断縁91は、第1切断縁91a、第2切断縁91b及び第3切断縁91cを有する。第1~第3切断縁91a~91c及び引出開口端部56aにより囲まれる領域が前記引出開口部56を構成する。また、第1切断縁91a及び第3切断縁91cの寸法は、前記ガイド部51の自由端部51a(
図6)から引出開口端部56aまでの寸法LGに相当する。第1切断縁91a及び第3切断縁91cの寸法が、第1長手壁面部b1Sと第2長手壁面部b2Sとの距離LW(
図6)よりも大きくなるように第1開口部形成領域R1が設定される。
【0099】
次に、中空管90の管壁において前記切断縁91を切断する。切断縁91により前記管壁の他の部分から切り離された部分がガイド部構成体92を構成する。
【0100】
次に、引出開口端部56aを折り目としてガイド部構成体92を中空管90の中空空間SSの内部に折り曲げることにより、ガイド部51及び引出開口部56が形成される。ガイド部構成体92は、中空空間SSにおいて、前記ガイド部51が第2長手壁面部b2Sから第1長手壁面部b1Sに向かうにつれて中空管第2端部90B側に変位するように折り曲げられる。
【0101】
このように中空管90において引出開口端部56aを除く切断縁91を切断することによりガイド部構成体92を形成し、このガイド部構成体92を、引出開口端部56aを折り目として中空管90の中空空間SSの内部に折り曲げることとにより、ガイド部51と引出開口部56とを中空管90に同時に形成することができる。つまり、引出開口部56の形成のために中空管90を切除する部分を利用してガイド部51を形成することができる。また、引出開口端部56aにおいてガイド部構成体92を中空管90に連結したままにすることができるため、ガイド部51を中空管90に連結するための別部材が不要である。
【0102】
(1-2)接触抑制部を形成する工程
次に、中空管90の管壁において、開口部54aが形成される予定の位置に複数の第2開口部形成領域R2を設定する。前記開口部54aの形成により切断された中空管90の管壁の一部が接触抑制部54を構成する。
【0103】
各第2開口部形成領域R2は、配管スリーブ70のビス突出空間BSへの侵入を規制するための複数の接触抑制部54が形成されるように、形成位置、形状及び寸法等が予め設定されている。また、複数の第2開口部形成領域R2は、第1開口部形成領域R1よりも第1端部41T側に設定される。
【0104】
前記第2開口部形成領域R2についてさらに説明すると、前記第2開口部形成領域R2において、前記開口部54aの周縁に相当する部分のうち折り返し端部54bを除いた部分が切断縁95として設定される。折り返し端部54bは、前記開口部54aの周縁に相当する部分において最も第1短手壁面部a1S側の端部である。
【0105】
本実施形態では、前記切断縁95は、第1切断縁95a、第2切断縁95b及び第3切断縁95cを有する。第1~第3切断縁95a~95c及び折り返し端部54bにより囲まれる領域が前記開口部54aを構成する。また、第1切断縁95a及び第3切断縁95cの寸法は、中空管90の管壁を貫通するビス60の先端部60aよりも第2短手壁面部a2Sに近い位置に接触抑制部54が配置されるように設定されている。具体的に、第1切断縁95a及び第3切断縁95cの寸法は、第1長手壁面部b1Sと第2長手壁面部b2Sとの距離と同程度の長さとなるように第2開口部形成領域R2が設定される。
【0106】
次に、中空管90の管壁において切断縁95を切断する。切断縁95により前記管壁の他の部分から切り離された部分が接触抑制部構成体96を形成する。
【0107】
次に、折り返し端部54bを折り目として接触抑制部構成体96を中空管90の中空空間SSの内部に折り曲げる。接触抑制部構成体96は、中空空間SSにおいて、第1短手壁面部a1Sに沿うように折り曲げられる。これにより、接触抑制部構成体96により接触抑制部54を形成する。
【0108】
(1-3)コンセントボックスをスタッド壁部に取り付ける工程
次に、スタッド壁部50の取付部53にコンセントボックス52を取り付ける。当該コンセントボックス52は、中空管90の管壁の外面において、引出開口部56よりも中空管第2端部90B側でコンセントボックス52を取り付け可能な位置に配置される。
【0109】
(2)建築構造物の骨組みを配置する工程
次に、
図1、
図2に示すように、柱、上部床スラブ2及び基礎3、鉄骨梁62等の建物構造体1の骨組みを配置する。基礎3側の下側ランナ61aと鉄骨梁62に取り付けられた上側ランナ61bとの間に複数の隔壁スタッド40を立設する。この複数の隔壁スタッド40に沿うように一対の板材31を立設する。一対の板材31は、一対の板材31が互いに面する裏側が複数の隔壁スタッド40に支持されるように配置される。複数のビス60により一対の板材31を複数の隔壁スタッド40に固定する。複数の隔壁スタッド40のうち第1隔壁スタッド40Aについては、コンセントユニット80が設置される各板材31の裏側に設置する。
【0110】
次に、床構造体20を設置する。天井裏空間S2となる領域に配管スリーブ70が配置される。配管スリーブ70内の電気配線は、建物構造体1の外部の電力線と接続される。なお、天井構造体10には、天井材11及び機能材12等が設けられてもよい。
【0111】
(3)板材及び第1隔壁スタッドに開口を形成する工程
次に、天井裏空間S2の配管スリーブ70を第1隔壁スタッド40A内に挿入するために、板材上部分31Tに板材上開口部33を形成し、かつ第1隔壁スタッド40Aのスタッド上部分50Tに挿入開口部55を形成する。一般に、複数のビス60により各板材31が隔壁スタッド40に固定されているため、隔壁スタッド40の設置位置は、当該複数のビス60の配置位置に基づいて特定することができる。隔壁スタッド40のうち第1隔壁スタッド40Aの設置位置は、複数のビス60に基づいて特定した隔壁スタッド40の位置と、コンセントユニット80の予め設定された位置とを総合することにより特定することができる。特定した第1隔壁スタッド40Aの位置に基づいて、板材上開口部33及び挿入開口部55の形成位置を特定する。そして、当該形成位置において板材31の表面側から第1隔壁スタッド40A及び板材31を貫通するように両者を穿孔することにより板材上開口部33及び挿入開口部55を形成する。
【0112】
また、コンセントユニット80とコンセントボックス52とを接続するための板材下開口部34を板材下部分31Bに形成する。
【0113】
(4)配管スリーブの第1隔壁スタッド内への挿入及び第1隔壁スタッド内からの引き出しを行う工程
天井裏空間S2の配管スリーブ70を板材上開口部33及び挿入開口部55から第1隔壁スタッド40A内の第2端部41Bに向かう方向に押し込む。これにより、配管スリーブ70は、第1隔壁スタッド40A内を第1端部41Tから第2端部41Bに向かう挿通方向(下方向)に進む。配管スリーブ70の先端部70aはガイド部51に当接すると、ガイド部51の傾斜に沿って引出開口部56から第1隔壁スタッド40Aの外部に引き出される。
【0114】
上記の第1隔壁スタッド40Aは板材31の裏面に配置されている。よって、板材31の裏面において、当該第1隔壁スタッド40Aのスタッド壁部50の挿通空間TSに配管スリーブ70を第1端部41Tから挿入することができる。しかも、一対の板材31間のスペースを圧迫することなく、スタッド壁部50の中空空間SSにガイド部51を配置するという簡易な構成により、ガイド部51により配管スリーブ70をスタッド壁部50の外部に引き出すことができる。ガイド部51のガイド面51Sは引出開口部56と反対の側の第2長手壁面部b2Sから引出開口部56に向かうにつれて第2端部41B側に変位するように傾斜しているため、当該ガイド面51Sは、挿通空間TS内の配管スリーブ70をその第1端部41Tから第2端部41Bに向かう挿通方向に沿いつつスムーズに引出開口部56に案内する。
【0115】
また、板材31、第1隔壁スタッド40A及び第2隔壁スタッド40Bが設置された後であっても、板材31を取り外すことなく、スタッド壁部50の内部を挿通する配管スリーブ70を当該内部から引き出す作業をガイド部51により容易に実施することができる。例えば、配管スリーブ70の先端部70aを確認しながら配管スリーブ70の先端部70aをスタッド壁部50の内部から外部に引き出すために、既に設置された板材31を取り外すような作業は不要となる。
【0116】
また、上記第1隔壁スタッド40Aにおいて、挿通空間TSの内周面とガイド部51の外周端との間の寸法は、配管スリーブ70の通過を阻止することが可能な寸法に抑えられているので、前記配管スリーブ70は第1端部41T側からガイド部51を超えて第2端部41B側に挿通されない。よって、ガイド部51により配管スリーブ70を確実に引出開口部56に導くことができる。
【0117】
また、上記第1隔壁スタッド40Aにおいて、ガイド部51は引出開口端部56aと連続しているため、配管スリーブ70はガイド部51から引出開口端部56aに連続的に案内される。よって、配管スリーブ70は当該引出開口端部56aから引出開口部56の外部によりスムーズに引き出される。
【0118】
また、上記第1隔壁スタッド40Aにおいて、自由端部51aから引出開口端部56aまでの寸法LGが、第1長手壁面部b1Sと第2長手壁面部b2Sとの距離LWよりも大きい。よって、自由端部51aは連続端部51bを起点として第2端部41B側に変位しようとしても、自由端部51aが第2長手壁面部b2Sに当接することにより当該当接した位置よりも第2端部41B側への自由端部51aの移動が抑制され、ガイド面51Sの傾斜が維持される。例えば、第1端部41Tから挿入される配管スリーブ70によりガイド部51が第2端部41Bの方へ押される場合でも、自由端部51aがスタッド壁部50と当接することによりスタッド壁部50に係止される状態となることにより、自由端部51aがさらに第2端部41Bの方へ移動するのを抑制することができる。
【0119】
また、引出開口部56は、スタッド壁部50のうち板材31に面する第1短手壁面部a1Sとは異なる第1長手壁面部b1Sに形成されている。よって、配管スリーブ70は板材31に阻害されることなく、ガイド部51により引出開口部56からスタッド壁部50の外部に引き出される。
【0120】
また、配管スリーブ70の先端部70aは、挿通方向に沿うとともにガイド面51Sの傾斜に沿って引出開口部56からスタッド壁部50の外部に向かうため、当該先端部70aは引出開口部56よりも第2端部41B側から引き出される。
【0121】
(5)配管スリーブとコンセントボックスとの接続
次に、板材下開口部34を介して配管スリーブ70の先端部70aとコンセントボックス52の接続部52aとを接続する。コンセントボックス52は引出開口部56よりも第2端部41B側において取付部53に取り付けられているため、引出開口部56よりも第2端部41B側から引き出される前記配管スリーブ70の先端部70aとコンセントボックス52との接続が容易である。その後、コンセントボックス52にコンセントユニット80を接続する。
【0122】
なお、コンセントボックス52は最終的に隔壁スタッド40に取り付けられればよく、コンセントボックス52の取付タイミングは限定されない。例えば、隔壁スタッド40が板材31の裏面に設置された後において、コンセントボックス52が取付部53に取り付けられてもよい。
【0123】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下の態様を採用することもできる。
【0124】
(A)隔壁と隔壁スタッドとの関係について
本発明の隔壁スタッドは、実施形態のように隔壁に含まれる板材を支持するものに限らず、内部に被挿通部材を挿通させて引き出すことを専ら目的として前記板材の支持には寄与していないもの(ビス60が設けられていない)でもよい。その一例として、複数の隔壁スタッドには、板材を支持する隔壁スタッドと、内部に被挿通部材を挿通させて引き出すことを専ら目的とした隔壁スタッドとが混在していてもよい。
【0125】
図10の例では、複数の隔壁スタッド40には、複数の板材31を支持する複数の第2隔壁スタッド40Bと、前記複数の板材31を支持せず内部に配管スリーブ70を挿通させて引き出すことを専ら目的とした少なくとも1つの第1隔壁スタッド40Cと、が含まれる。複数の第2隔壁スタッド40Bには複数のビス60により複数の板材31が固定されている。一方、少なくとも1つの第1隔壁スタッド40Cは前記複数の板材31の裏面に沿って立設されているものの、前記複数の板材31を支持していない。
図10の例では、第1隔壁スタッド40Cは、板材31の裏面に沿って第2隔壁スタッド40Bから所定距離離れた位置に隣接して配置されている。当該第1隔壁スタッド40Cには板材31が固定されておらず、板材31を当該第1隔壁スタッド40Cに固定するためのビス60も配置されていない。当該第1隔壁スタッド40C内には配管スリーブ70が挿通され、ガイド部51により引出開口部56から配管スリーブ70が引き出される。当該第1隔壁スタッド40Cには、引出開口部56よりも上においてビス60が貫通していないため、配管スリーブ70に対するビス60による不具合を考慮する必要がない。そのため、当該第1隔壁スタッド40Cにおいては、接触抑制部54を省略することができる。
【0126】
なお、板材31の取り付け後における第1隔壁スタッド40Cの正面視における位置は、前記複数のビス60により特定した第2隔壁スタッド40Bに対する第1隔壁スタッド40Cの位置として予め設定された寸法に基づいて特定される。
【0127】
(B)隔壁スタッドが支持する隔壁について
本発明に係る隔壁は、上記実施形態の板材31を含む界壁に限定されず、その他の界壁、例えば間仕切壁であってもよい。間仕切壁に含まれる一対の板材は間仕切壁用スタッドに固定することで支持される。当該間仕切壁用スタッドは上記第1隔壁スタッド40Aと同様に構成される。具体的に、当該間仕切壁用スタッドは、挿通空間に挿通される被挿通部材を外部に引き出す引出開口部が形成されるとともに、被挿通部材を挿通空間から外部に案内するガイド部を有する。間仕切壁は二重壁ではなく1枚の壁から構成されてもよい。また、間仕切壁は、床から天井構造体10の上まで延びておらず、床から天井材の下面まで延びるように構成されてもよい。
【0128】
(C)ガイド部について
(C1)ガイド部を構成する部材について
本発明に係るガイド部を構成する部材は、スタッド壁部と一体のものに限定されず、スタッド壁部とは別部材により構成されるものであってもよい。別部材によりガイド部が形成される場合、ガイド部の形状はスタッド壁部と一体に形成された場合のように板状に限定されず、例えば、ガイド部は、引出開口部に向かってガイド面が傾斜する案内方向と直交する直交方向から見て三角形状、台形形状等であってもよい。つまり、挿通空間内を挿通される被挿通部材を引出開口部に案内するガイド面をガイド部が有していれば、ガイド面以外のガイド部の形状は限定されない。
【0129】
(C2)ガイド部の態様について
本発明に係るガイド部は、引出開口端部において連続する連続端部と、引出開口部と反対側の自由端部と、を有する態様に限定されない。例えば、引出開口部の形成されたスタッド壁部とは異なる方向に向くスタッド壁部に接続されていてもよい。
【0130】
(C3)ガイド面の構成について
本発明のガイド面は、平面に限定されず、前記案内方向と直交する直交方向から見て例えば湾曲した曲面であってもよい。具体的に、前記直交方向から見て、ガイド面は、自由端部から連続端部に向かうにつれて第2端部側に変位するように湾曲していてもよい。また、
図6のX方向から見た前記ガイド部の形状も限定されない。当該X方向から見て、前記ガイド面が下に凸となる姿勢で、あるいは上に凸となる姿勢で湾曲していてもよい。
【0131】
(C4)ガイド面の保持について
本発明のガイド面の傾斜を維持する態様は、上記実施形態のようにガイド部51の自由端部51aがスタッド壁部50に当接することにより傾斜を維持する態様に限定されない。例えば、ガイド部の自由端部がスタッド壁部50に固定されていてもよい。さらには、ガイド部の残りの部分もスタッド壁部50に固定されていてもよい。また、ガイド部の一端がスタッド壁部と連続し、かつ他端がスタッド壁部と離隔している構成において、例えばガイド部の剛性が大きいため他端から一端に向かうガイド面の傾斜が維持される態様も含まれる。
【0132】
(C5)ガイド面の面方向について
本発明のガイド面の面方向の態様は、上記実施形態のように第2長手壁面部b2Sから引出開口部56に向かうにつれて第1端部41T側から第2端部41B側に変位するように傾斜する態様に限定されない。具体的に、ガイド面は、第1端部から第2端部に向かって挿通空間内を挿通される被挿通部材を引出開口部に案内するものであればよい。例えば、本発明のガイド面は水平方向に沿っていてもよい。この水平方向に沿ったガイド面を有するガイド部は、スタッド壁部において引出開口端部を除いて切り離された部分を直角に折り曲げることにより形成することができる。
【0133】
(D)接触抑制部について
(D1)接触抑制部の配置位置について
本発明において、複数の接触抑制部は、複数のビスの先端部と被挿通部材との接触を抑制する位置に配置されるのであれば、その上下方向の位置は限定されない。前記複数の接触抑制部は、複数のビスの先端部がスタッド壁部内に突出している複数のビス突出位置それぞれに配置されてもよいし、当該複数のビス突出位置に対して上下方向にずれた状態で配置されてもよい。
【0134】
(D2)接触抑制部を構成する部材について
本発明に係る接触抑制部を構成する部材は、スタッド壁部と一体のものに限定されず、スタッド壁部とは別部材により構成されるものであってもよい。
【0135】
(E)被挿通部材について
本発明において、被挿通部材は電気配線が挿通された配管スリーブ70に限定されず、ガス配管、通信配線、給水配管、排水配管等の配線及び配管を挿通された配管スリーブであってもよい。さらには、被挿通部材は、配管スリーブに収容されない状態の配線及び配管であってもよい。また、被挿通部材の種類に応じて、室内空間S1側で物理的接続及び接点の形成などの処理をするためのスタッド側設備も適宜選択可能である。
【0136】
(F)引出開口部の形成位置
本発明では、被挿通部材が隔壁スタッドの内部から引き出されるのであれば、スタッド壁部に引出開口部が形成されるかは限定されない。例えば、板材と当接するスタッド壁部に引出開口部が形成されてもよい。
【符号の説明】
【0137】
1 :建物構造体
5 :スタッド壁部
30 :隔壁
31 :板材
40A :第1隔壁スタッド(隔壁スタッド)
41T :第1端部
41B :第2端部
50 :スタッド壁部
51 :ガイド部
51S :ガイド面
51a :自由端部
51b :連続端部
52 :コンセントボックス(スタッド側設備)
53 :取付部
54 :接触抑制部
56 :引出開口部
56a :引出開口端部
60 :ビス(固定部)
60a :先端部
70 :配管スリーブ(被挿通部材)
70a :先端部
90 :中空管
91 :切断縁
92 :ガイド部構成体
BS :ビス突出空間(固定部突出空間)
LG :寸法
LW :距離
R1 :第1開口部形成領域(開口部形成領域)
SS :中空空間
TS :挿通空間