(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】車両の走行支援システム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/08 20120101AFI20240709BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20240709BHJP
B60W 10/04 20060101ALI20240709BHJP
B60W 10/18 20120101ALI20240709BHJP
B60W 10/184 20120101ALI20240709BHJP
B60W 30/02 20120101ALI20240709BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20240709BHJP
B60W 40/068 20120101ALI20240709BHJP
B60W 40/12 20120101ALI20240709BHJP
B60W 50/10 20120101ALI20240709BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20240709BHJP
【FI】
B60W30/08
B60T7/12 F
B60W10/00 120
B60W10/184
B60W30/02
B60W40/02
B60W40/068
B60W40/12
B60W50/10
B60W50/14
(21)【出願番号】P 2021021275
(22)【出願日】2021-02-12
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 究
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-088230(JP,A)
【文献】特開2017-144975(JP,A)
【文献】特開2004-074892(JP,A)
【文献】特開2013-129254(JP,A)
【文献】特開2018-083447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/08
B60T 7/12
B60W 10/04
B60W 10/184
B60W 30/02
B60W 40/02
B60W 40/068
B60W 40/12
B60W 50/10
B60W 50/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行時に運転者の車両操作を支援する車両の走行支援システムであって、
実行装置
と、前記車両の走行する道路を複数の走行エリアに区分して記憶している記憶装置と、を備え、
前記記憶装置は、
基準車速適正値が複数の前記走行エリア毎に記憶されているマップを有しており、
前記実行装置は、
前記車両のタイヤの温度であるタイヤ温度を
、前記車両が発進してからの走行距離が長いほど高い温度をとして取得する温度取得処理と、
複数の前記走行エリアの中から、前記車両の走行している走行エリアである走行中エリアを特定する特定処理と、
複数の候補値のうちの最も小さい値を車速適正値
として設定する適正値設定処理と、
前記車速適正値を前記運転者に報知すること、及び、
前記車両の車速が前記車速適正値を超えた場合には前記車両を減速させること、のうちの少なくとも一方を行う支援処理と、を実行するようになっており、
前記実行装置は、前記適正値設定処理において、
前記タイヤ温度が低いほど小さな値となるタイヤ温度補正係数と前記マップから取得した前記走行中エリアに対応する前記基準車速適正値との積を前記候補値の1つとして導出する
車両の走行支援システム。
【請求項2】
前記実行装置は、
前記車両の走行する路面の状態である路面状態として、路面μを取得する路面状態取得処理を実行し、
前記適正値設定処理において、前記路面μが
予め設定されている判定値未満である場合には、
前記複数の候補値のうちから設定された前記車速適正値よりも小さな値を新たに車速適正値として設定する
請求項1に記載の車両の走行支援システム。
【請求項3】
前記実行装置は、前記適正値設定処理において、
降水量が多いほど小さい値となる降水量補正係数と前記マップから取得した前記走行中エリアに対応する前記基準車速適正値との積を前記候補値の1つとして導出する
請求項1又は2に記載の車両の走行支援システム。
【請求項4】
前記車両には、前記運転者が選択可能な走行モードとして、第1走行モード及び第2走行モードが用意されており、
前記第1走行モードは、前記第2走行モードと比較し、車速が高くなることを抑制する走行モードであり、
前記実行装置は、前記適正値設定処理において、前記運転者によって前記第1走行モードが選択されている場合には、前記運転者によって前記第2走行モードが選択されている場合よりも小さい値を
前記基準車速適正値として導出する
請求項1~請求項3のうち何れか一項に記載の車両の走行支援システム。
【請求項5】
前記支援処理は、前記車両のカーブへの侵入に備えて当該車両を減速させることを前記運転者に要求する旋回準備制御を含んでおり、
前記実行装置は、前記支援処理において、前記運転者によって前記第1走行モードが選択されている場合には、前記運転者によって前記第2走行モードが選択されている場合よりもカーブの手前から前記旋回準備制御を開始する
請求項4に記載の車両の走行支援システム。
【請求項6】
前記実行装置は、前記車両の外部に設けられている第1実行装置と、前記車両に設けられている第2実行装置と、を含み、
前記第1実行装置及び前記第2実行装置は、互いに情報の送受信が可能であり、
前記各処理のうち、前記支援処理を含む一部の処理を前記第2実行装置が実行し、残りの処理を前記第1実行装置が実行する
請求項1~請求項5のうち何れか一項に記載の車両の走行支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の自動走行時における車速制御の一例が記載されている。すなわち、車両にカーブを走行させる場合には、当該カーブの曲率又はカーブの走行履歴を基に、当該カーブを車両が走行する際の適正な車速である適正車速が導出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような適正車速は、カーブを走行する際における車両の状態によって変わりうる。こうした課題は、車両のカーブ走行時に限ったことではなく、車両が直進路を走行する場合でも生じうる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための車両の走行支援システムは、車両の走行時に運転者の車両操作を支援するシステムである。この走行支援システムは、実行装置と、前記車両の走行する道路を複数の走行エリアに区分して記憶している記憶装置と、を備え、前記記憶装置は、基準車速適正値が複数の前記走行エリア毎に記憶されているマップを有しており、前記実行装置は、前記車両のタイヤの温度であるタイヤ温度を、前記車両が発進してからの走行距離が長いほど高い温度をとして取得する温度取得処理と、複数の前記走行エリアの中から、前記車両の走行している走行エリアである走行中エリアを特定する特定処理と、複数の候補値のうちの最も小さい値を車速適正値として設定する適正値設定処理と、前記車速適正値を前記運転者に報知すること、及び、前記車両の車速が前記車速適正値を超えた場合には前記車両を減速させること、のうちの少なくとも一方を行う支援処理と、を実行するようになっており、前記実行装置は、前記適正値設定処理において、前記タイヤ温度が低いほど小さな値となるタイヤ温度補正係数と前記マップから取得した前記走行中エリアに対応する前記基準車速適正値との積を前記候補値の1つとして導出する。
【0006】
タイヤ温度が低いほど、タイヤのグリップ力が小さい。タイヤのグリップ力が小さいほど、車両挙動の安定性が低下しやすい。そこで、上記構成では、タイヤ温度が低いほど小さい値が車速適正値の候補値として導出され、複数の候補値のうちの最も小さい値が車速適正値として設定される。そして、支援処理によって、車速適正値が運転者に報知されたり、車速が車速適正値を超えないように車両が減速されたりする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1実施形態の走行支援システムの概略を示す構成図。
【
図2】同走行支援システムのサーバが管理するサーキット場のコースを示す図。
【
図4】走行エリア毎の基準車速適正値を示すマップ。
【
図5】走行モードと、モード補正係数及び減速距離との関係を示すテーブル。
【
図6】サーバのCPUが実行する処理ルーチンを説明するフローチャート。
【
図7】同走行支援システムの車両制御装置のCPUが実行する処理ルーチンを説明するフローチャート。
【
図8】第2実施形態の走行支援システムで用いられる、走行モードと、モード補正係数及び減速距離及び減速度要求値との関係を示すテーブル。
【
図9】同走行支援システムのサーバのCPUが実行する処理ルーチンの一部を説明するフローチャート。
【
図10】同走行支援システムの車両制御装置のCPUが実行する処理ルーチンを説明するフローチャート。
【
図11】第3実施形態の走行支援システムのサーバのCPUが実行する処理ルーチンの一部を説明するフローチャート。
【
図12】同走行支援システムの車両制御装置のCPUが実行する処理ルーチンを説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1実施形態)
以下、車両の走行支援システム、及び、車両の走行支援方法の第1実施形態を
図1~
図7に従って説明する。
【0027】
<全体構成>
図1に示すように、走行支援システム10は、車外に設置されているサーバ20のサーバ制御装置21と、車両30に搭載されている車両制御装置40とを備えている。サーバ20は、
図2に示すサーキット場100のコース101を走行する車両30の車両制御装置40と各種の情報の送受信を行うことができる。すなわち、コース101を複数の車両30が走行している場合、サーバ20は、各車両30の車両制御装置40と各種の情報の送受信を行う。
【0028】
<車両30の構成>
図1に示すように、車両30は、車両制御装置40に加え、車両側通信装置31、駆動装置32及び制動装置33を備えている。駆動装置32は、車両30の駆動力を調整する。制動装置33は、車両30の制動力を調整する。
【0029】
車両側通信装置31は、車両制御装置40から出力された情報をサーバ20に送信する。また、車両側通信装置31は、サーバ20から送信された情報を受信して車両制御装置40に出力する。
【0030】
車両制御装置40は、CPU41と、ROM42と、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリである記憶装置43と、周辺回路44とを備えている。CPU41、ROM42、記憶装置43及び周辺回路44は、ローカルネットワーク45を介して通信可能とされている。CPU41は、車両側通信装置31を通じて、サーバ制御装置21と各種の情報の送受信を行うことができる。ROM42は、CPU41が実行する制御プログラムを記憶している。記憶装置43は、各種のマップ及びテーブルなどを記憶している。周辺回路44は、内部の動作を規定するクロック信号を生成する回路、電源回路及びリセット回路などを含んでいる。
【0031】
車両30は、運転者によって操作されるモード操作部35を備えている。モード操作部35は、車両30の走行モードMDを運転者に選択させるための操作部である。本実施形態では、複数の走行モードMDが用意されている。すなわち、運転者は、モード操作部35を操作することによって、複数の走行モードMDの中から1つの走行モードを選択できる。
【0032】
例えば、3つの走行モードが走行モードMDとして用意されている。3つの走行モードのうち、第1走行モードMD1は初心者用の走行モードであり、第2走行モードMD2は中級者用の走行モードであり、第3走行モードMD3は上級者用の走行モードである。第1走行モードMD1は、第2走行モードMD2と比較し、車両30の移動速度である車速が高くなることを抑制する走行モードである。また、第2走行モードMD2は、第3走行モードMD3と比較し、車速が高くなることを抑制する走行モードである。ここでいう初心者、中級者及び上級者とは、
図2に示すコース101を車両30に走行させる際における車両操作のレベルである。
【0033】
車両30は、車両制御装置40に検出信号を出力する各種のセンサを備えている。センサとしては、例えば、車速センサ51、前後加速度センサ52、横加速度センサ53、ヨーレートセンサ54及び操舵角センサ55を挙げることができる。車速センサ51は、車速Vを検出し、検出結果に応じた検出信号を出力する。前後加速度センサ52は、車両30の前後加速度Gxを検出し、検出結果に応じた検出信号を出力する。横加速度センサ53は、車両30の横加速度Gyを検出し、検出結果に応じた検出信号を出力する。ヨーレートセンサ54は、車両30のヨーレートYrを検出し、検出結果に応じた検出信号を出力する。操舵角センサ55は、車両30のステアリングホイールの操舵角Strを検出し、検出結果に応じた検出信号を出力する。
【0034】
車両30は、GPS受信機60を備えている。GPS受信機60は、車両30の現在の位置座標CPに関する信号であるGPS信号をGPS衛星から受信し、当該GPS信号を車両制御装置40に出力する。車両制御装置40は、GPS信号を基に車両30の現在の位置座標CPを取得し、位置座標CPに関する情報である位置情報を、車両側通信装置31を介してサーバ20に送信する。
【0035】
本実施形態では、車両制御装置40は、
図2に示すコース101を車両30が走行している場合、車速適正値VLを基に、運転者の車両操作を支援する。例えば、車両制御装置40は、車速適正値VLを運転者に報知したり、車速Vが車速適正値VLを越えた場合には車両30を減速させたりする。車速適正値VLとは、コース101を車両30が走行する際の適正な車速である。詳しくは後述するが、車速適正値VLは、適宜変更される。また、車両操作とは、操舵、アクセル操作及びブレーキ操作のうち、少なくとも操舵を含んでいる。
【0036】
<サーバ20の構成>
図1に示すように、サーバ20は、サーバ制御装置21に加え、サーバ側通信装置28を備えている。サーバ側通信装置28は、サーバ制御装置21から出力された情報を車両30に送信する。また、サーバ側通信装置28は、車両30から送信された情報を受信してサーバ制御装置21に出力する。
【0037】
サーバ制御装置21は、CPU22と、ROM23と、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリである記憶装置24と、周辺回路25とを備えている。CPU22、ROM23、記憶装置24及び周辺回路25は、ローカルネットワーク26を介して通信可能とされている。CPU22は、サーバ側通信装置28を通じて、車両制御装置40と各種の情報の送受信を行うことができる。ROM23は、CPU22が実行する制御プログラムを記憶している。記憶装置24は、車速適正値VLを設定するために必要な各種の情報を記憶している。周辺回路25は、内部の動作を規定するクロック信号を生成する回路、電源回路及びリセット回路などを含んでいる。
【0038】
記憶装置24は、
図2に示すコース101を複数の走行エリアARに区分して記憶している。
図3には、コース101の一部分が模式的に示されている。
図3に示すように、複数の走行エリアAR(1,1),・・・,(1,N),(2,1),・・・,(2,N),(3,1),・・・,(3,N),(4,1),・・・,(4,N)が、記憶装置24に記憶されている。なお、「N」は、車両30の進行方向X1におけるコース101の分割数である。本実施形態では、「N」として、「5」以上の整数が設定されている。
【0039】
本実施形態では、進行方向X1における同一位置に、複数の走行エリアARが設定されている。例えば、4つの走行エリアAR(1,1),AR(2,1),AR(3,1),AR(4,1)は、進行方向X1で同一位置に位置している。これら各走行エリアAR(1,1),AR(2,1),AR(3,1),AR(4,1)のうち、走行エリアAR(1,1)が最も外方Y1に位置し、走行エリアAR(2,1)が2番目に外方Y1に位置している。また、走行エリアAR(3,1)が3番目に外方Y1に位置し、走行エリアAR(4,1)が最も内方Y2に位置している。また、走行エリアAR(1,1)よりも進行方向X1に走行エリア(1,2)が位置し、走行エリアAR(2,1)よりも進行方向X1に走行エリア(2,2)が位置している。
【0040】
また、
図4に示すように、記憶装置24は、車速適正値VLの基準である基準車速適正値VLbが複数の走行エリアAR毎に記憶されているマップMPを有している。例えば、
図4に示すように、走行エリアAR(1,1)の基準車速適正値VLbとして「110km/h」が設定されている。走行エリアAR(1,2)の基準車速適正値VLbとして「110km/h」が設定されている。走行エリアAR(1,3)の基準車速適正値VLbとして「100km/h」が設定されている。走行エリアAR(2,1)の基準車速適正値VLbとして「130km/h」が設定されている。走行エリアAR(3,1)の基準車速適正値VLbとして「130km/h」が設定されている。
【0041】
また、
図5に示すように、記憶装置24は、走行モードMDに応じたモード補正係数Hm及び減速距離Lgを設定するためのテーブルTLを有している。モード補正係数Hmは、車速適正値VLを導出する際に用いる補正係数である。運転者によって選択された走行モードMDに応じた値を車速適正値VLとして導出するために、モード補正係数Hmは用いられる。減速距離Lgは、コース101のカーブの手前での車両30の減速を支援する際に用いられるパラメータである。つまり、車両30がカーブに接近しており、車両30から当該カーブの開始位置までの距離が減速距離Lg以下になった場合には、車両30を減速させることが望ましい。本実施形態では、カーブの開始位置から、当該開始位置よりも減速距離Lgだけ手前の位置までの区間を、「減速区間」ともいう。
【0042】
図5に示すように、第1走行モードMD1用のモード補正係数Hmとして、第1モード補正係数Hm1が設定されている。例えば、第1モード補正係数Hm1を「1」とするとよい。第1走行モードMD1用の減速距離Lgとして、第1減速距離Lg1が設定されている。
【0043】
第2走行モードMD2用のモード補正係数Hmとして、第1モード補正係数Hm1よりも大きい第2モード補正係数Hm2が設定されている。第2走行モードMD2用の減速距離Lgとして、第2減速距離Lg2が設定されている。第2減速距離Lg2は、第1減速距離Lg1よりも短い。
【0044】
第3走行モードMD3用のモード補正係数Hmとして、第2モード補正係数Hm2よりも大きい第3モード補正係数Hm3が設定されている。第3走行モードMD3用の減速距離Lgとして、第3減速距離Lg3が設定されている。第3減速距離Lg3は、第2減速距離Lg2よりも短い。
【0045】
図1に示すように、サーバ20は、サーキット場100の天候に関する情報である天候情報を取得する。そのため、サーバ制御装置21は、サーキット場100における天候を把握できる。例えば、サーバ制御装置21は、雨が降っているか否かを把握できる。また、サーバ制御装置21は、雨が降っている場合にはその降水量を把握できる。また、サーバ制御装置21は、サーキット場100における風向き、及びその風量を把握できる。
【0046】
<車両30にコース101を走行させるに際して運転者の車両操作を支援するための処理の流れ>
車両30がコース101を走行している場合、車両制御装置40は、車両30の現在の位置座標CPに関する位置情報を、車両側通信装置31を介して逐次、サーバ20に送信する。そして、サーバ20のサーバ制御装置21は、車両30の位置座標CPを基に車速適正値VLaを設定し、車速適正値VLaを車両30に送信する。
【0047】
図6には、サーバ制御装置21のCPU22が実行する処理ルーチンが図示されている。CPU22は、本処理ルーチンを繰り返し実行する。
本処理ルーチンにおいて、はじめのステップS11では、CPU22は、車両30から各種情報を受信したか否かを判定する。ここでいう各種情報とは、車速適正値VL及び減速距離Lgを導出するために必要な情報である。例えば、CPU22は、車両30の現在の位置座標CP、及び、運転者によって選択された走行モードMDを受信したか否かを判定する。各種情報の受信が完了していない場合(S11:NO)、CPU22は、受信が完了するまでステップS11の判定を繰り返す。一方、各種情報の受信が完了している場合(S11:YES)、CPU22は、処理をステップS13に移行する。
【0048】
ステップS13において、CPU22は、取得した位置座標CPを基に、全ての走行エリアARの中から、現時点で車両30が走行している走行エリアである走行中エリアARDを特定する。例えば、CPU22は、取得した位置座標CPを含む走行エリアARを走行中エリアARDとして選択する。続いて、ステップS15において、CPU22は、走行中エリアARDを基に、基準車速適正値VLbを取得する。すなわち、CPU22は、走行中エリアARDに特定された走行エリアARの基準車速適正値VLbを、記憶装置24のマップMPから取得する。
【0049】
次のステップS17において、CPU22は、運転者によって選択された走行モードMDに対応するモード補正係数Hmを、
図5に示したテーブルTLから取得する。そして、ステップS19において、CPU22は、基準車速適正値VLbとモード補正係数Hmとの積を、補正後基準車速適正値VLb1として導出する。運転者によって第1走行モードMD1が選択されている場合の補正後基準車速適正値VLb1は、運転者によって第2走行モードMD2が選択されている場合の補正後基準車速適正値VLb1よりも小さい。運転者によって第2走行モードMD2が選択されている場合の補正後基準車速適正値VLb1は、運転者によって第3走行モードMD3が選択されている場合の補正後基準車速適正値VLb1よりも小さい。
【0050】
続いて、ステップS21において、CPU22は、車両30のタイヤの温度であるタイヤ温度TMPtyを取得する。例えば、CPU22は、車両30におけるコース101の周回回数に基づいたタイヤの温度の推定値をタイヤ温度TMPtyとして取得する。車両30がコース101上で発進してからの車両30の走行距離が長いほど、タイヤの温度が高くなると推測できる。車両30におけるコース101の周回回数が増えると、車両30の走行距離が長くなる。そこで、CPU22は、周回回数が多いほど大きい値をタイヤ温度TMPtyとして取得する。これにより、コース101上で車両30が発進してからの走行距離が長いほど高い温度をタイヤ温度TMPtyとして取得できる。なお、周回回数が「1」である場合、例えば、CPU22は、外気温又は外気温に応じた温度を、タイヤ温度TMPtyとして取得するとよい。
【0051】
次のステップS23において、CPU22は、タイヤ温度TMPtyを基に、タイヤ温度補正係数Htmpを設定する。タイヤ温度補正係数Htmpは、タイヤ温度TMPtyに応じた値を車速適正値VLとして設定するための補正係数である。例えば、CPU22は、タイヤ温度TMPtyが低いほど小さい値をタイヤ温度補正係数Htmpとして設定する。そして、ステップS25において、CPU22は、補正後基準車速適正値VLb1とタイヤ温度補正係数Htmpとの積を、第1車速候補値VLa1として導出する。これにより、第1車速候補値VLa1として、タイヤ温度TMPtyが低いほど小さい値が設定される。
【0052】
続いて、ステップS27において、CPU22は、受信した天候情報を基に、降水量補正係数Hprを設定する。降水量補正係数Hprは、サーキット場100の天候に応じた値を車速適正値VLとして設定するための補正係数である。具体的には、降水量補正係数Hprは、サーキット場100における降水量に応じた値を車速適正値VLとして設定するための補正係数である。例えば、CPU22は、雨が降っている場合には、雨が降っていない場合よりも小さい値を降水量補正係数Hprとして設定する。また例えば、CPU22は、雨が降っている場合、降水量が多いほど小さい値を降水量補正係数Hprとして設定する。そして、ステップS29において、CPU22は、補正後基準車速適正値VLb1と降水量補正係数Hprとの積を、第2車速候補値VLa2として導出する。これにより、サーキット場100で雨が降っている場合、雨が降っていない場合と比較し、小さい値が第2車速候補値VLa2として設定される。また、サーキット場100で雨が降っている場合、降水量が多いほど小さい値が第2車速候補値VLa2として設定される。
【0053】
次のステップS31において、CPU22は、受信した天候情報を基に、風量補正係数Hwsを設定する。風量補正係数Hwsは、サーキット場100の天候に応じた値を車速適正値VLとして設定するための補正係数である。具体的には、風量補正係数Hwsは、サーキット場100における風量に応じた値を車速適正値VLとして設定するための補正係数である。例えば、CPU22は、風量が大きいほど小さい値を風量補正係数Hwsとして設定する。そして、ステップS33において、CPU22は、補正後基準車速適正値VLb1と風量補正係数Hwsとの積を、第3車速候補値VLa3として導出する。これにより、風量が大きいほど小さい値が第3車速候補値VLa3として設定される。
【0054】
続いて、ステップS35において、CPU22は、第1車速候補値VLa1、第2車速候補値VLa2及び第3車速候補値VLa3を基に、車速適正値VLaを導出する。例えば、CPU22は、第1車速候補値VLa1、第2車速候補値VLa2及び第3車速候補値VLa3のうち、最も小さい値を車速適正値VLaとして導出する。例えば、3つの車速候補値VLa1,VLa2,VLa3のうち、第1車速候補値VLa1が最も小さい場合、タイヤ温度TMPtyが低いほど小さい値が車速適正値VLaとして設定される。また例えば、3つの車速候補値VLa1,VLa2,VLa3のうち、第2車速候補値VLa2が最も小さい場合、降水量が多いほど小さい値が車速適正値VLaとして設定される。また例えば、3つの車速候補値VLa1,VLa2,VLa3のうち、第3車速候補値VLa3が最も小さい場合、風量が大きいほど小さい値が車速適正値VLaとして設定される。
【0055】
次のステップS37において、CPU22は、運転者によって選択された走行モードMDに対応した減速距離Lgを、
図5に示したテーブルTLから取得する。そして、ステップS39において、CPU22は、走行中エリアARD及び減速距離Lgを基に、減速区間に車両30が入っているか否かを判定する。車両30が減速区間に入っている場合、車両30のカーブへの侵入に備えて車両30を減速させることが望ましい。上述したように、カーブの開始位置よりも減速距離Lgだけ手前の位置から、当該開始位置までの区間が、減速区間として設定される。減速距離Lgは、運転者によって選択された走行モードMDに応じた長さである。そのため、運転者によって選択された走行モードMDによって、減速区間の進行方向X1の寸法が異なる。そして、走行中エリアARDが減速区間に含まれている場合は、車両30が減速区間に入っていると見なす。一方、走行中エリアARDが減速区間に含まれていない場合は、車両30が減速区間に入っていると見なさない。
【0056】
車両30が減速区間に入っているとの判定をなしている場合(S39:YES)、CPU22は、処理をステップS41に移行する。ステップS41において、CPU22は、減速フラグFLGgにオンをセットする。そして、CPU22は、処理をステップS45に移行する。
【0057】
一方、ステップS39において、車両30が減速区間に入っているとの判定をなしていない場合(NO)、CPU22は、処理をステップS43に移行する。ステップS43において、CPU22は、減速フラグFLGgにオフをセットする。そして、CPU22は、処理をステップS45に移行する。
【0058】
ステップS45において、CPU22は、車速適正値VLa及び減速フラグFLGgをサーバ側通信装置28から車両30に送信させる送信処理を実行する。その後、CPU22は、本処理ルーチンを一旦終了する。
【0059】
車両制御装置40のCPU41は、サーバ20から車速適正値VLaを受信すると、車速適正値VLを決定する。そして、CPU41は、その車速適正値VL及び減速フラグFLGgを基に、運転者の車両操作の支援を行う。
【0060】
図7には、車両制御装置40のCPU41が実行する処理ルーチンが図示されている。CPU41は、本処理ルーチンを繰り返し実行する。
本処理ルーチンにおいて、はじめのステップS51では、CPU41は、車速適正値VLa及び減速フラグFLGgを受信したか否かを判定する。車速適正値VLa及び減速フラグFLGgの受信が完了していない場合(S51:NO)、CPU41は、受信が完了するまでステップS51の判定を繰り返し実行する。一方、車速適正値VLa及び減速フラグFLGgの受信が完了している場合(S51:YES)、CPU41は、処理をステップS53に移行する。
【0061】
ステップS53において、CPU41は、走行中エリアARDの路面状態を取得する。本実施形態では、CPU41は、路面μの推定値を路面状態として取得する。例えば、車両30の車輪に駆動力が入力されている場合、CPU41は、当該駆動力と当該車輪のスリップ量とを基に、路面μの推定値を導出できる。
【0062】
そして、ステップS55において、CPU41は、車速適正値VLaと路面状態とを基に、車速適正値VLを導出する。例えば、CPU41は、路面状態として導出した路面μの推定値がμ判定値以上であるか否かを判定する。μ判定値として、路面が低μ路であるか否かの判断基準として設定されている。路面μの推定値がμ判定値未満である場合は、路面が低μ路であると見なす。路面μの推定値がμ判定値以上である場合は、路面が低μ路であると見なさない。CPU41は、路面μの推定値がμ判定値未満である場合は正の値を調整値H3として設定する。一方、CPU41は、路面μの推定値がμ判定値以上である場合は「0」を調整値H3として設定する。そして、CPU41は、車速適正値VLaから調整値H3を引いた値を車速適正値VLとして導出する。
【0063】
このように車速適正値VLを導出すると、CPU41は、コース101を走行する車両30の運転者の車両操作を支援する支援処理を実行する。本実施形態では、支援処理は、速度支援制御と、旋回準備制御とを含んでいる。
【0064】
すなわち、ステップS57において、CPU41は、速度支援制御を実施する。本実施形態では、CPU41は、車速適正値VLを運転者に報知する。また、CPU41は、車速Vが車速適正値VLを越えている場合、駆動装置32及び制動装置33のうちの少なくとも一方を制御することにより、車両30を減速させる。
【0065】
次のステップS59において、CPU41は、サーバ20から受信した減速フラグFLGgにオンがセットされているか否かを判定する。減速フラグFLGgにオンがセットされている場合(S59:YES)、CPU41は、処理をステップS61に移行する。一方、減速フラグFLGgにオフがセットされている場合(S59:NO)、CPU41は、本処理ルーチンを一旦終了する。
【0066】
ステップS61において、CPU41は、車両30を減速させることを運転者に要求する旋回準備制御を実施する。例えば、CPU41は、ブレーキ操作を行うことを運転者に要求する。すなわち、CPU41は、車両30が減速区間に入っているとの判定がなされている場合には、車両30を減速させるための車両操作を行うことを運転者に要求する。そして、CPU41は、本処理ルーチンを一旦終了する。
【0067】
<対応関係>
本実施形態における事項と、上記「課題を解決するための手段」の欄に記載した事項との対応関係は、次の通りである。
【0068】
ステップS21が、車両30のタイヤの温度であるタイヤ温度TMPtyを取得する「温度取得処理」に対応する。ステップS19,S25,S29,S33,S35及びS55が、車速適正値VLを設定する「適正値設定処理」に対応する。本実施形態では、複数の車速候補値を導出し、各車速候補値に基づいて車速適正値VLが設定される。特に、ステップS25が、タイヤ温度TMPtyが低いほど小さい値を第1車速候補値VLa1として導出するための処理に対応する。ステップS29,S33が、天候情報に基づいた車速候補値VLa2,VLa3を導出するための処理に対応する。ステップS19が、運転者によって選択された走行モードMDを基に車速適正値VLを設定するための処理に対応する。ステップS55が、路面状態を基に車速適正値VLを設定するための処理に対応する。
【0069】
ステップS57,S61が、「支援処理」に対応する。特に、ステップS57が、車速適正値VLを運転者に報知すること、及び、車速Vが車速適正値VLを超えた場合には車両を減速させること、のうちの少なくとも一方を行う「速度支援制御」に対応する。また、ステップS61が、車両30のカーブへの侵入に備えて車両30を減速させることを運転者に要求する「旋回準備制御」に対応する。
【0070】
ステップS13が、複数の走行エリアARの中から、走行中エリアARDを特定する「特定処理」に対応する。ステップS53が、路面状態として、路面μを取得する「路面状態取得処理」に対応する。
【0071】
サーバ制御装置21の記憶装置24が、車両30の走行する道路を複数の走行エリアARに区分して記憶している「記憶装置」に対応する。サーバ制御装置21のCPU22及び車両制御装置40のCPU41が、上記各処理を実行する「実行装置」に対応する。また、車両制御装置40のCPU41が、上記各処理のうち、支援処理を含む一部の処理を実行する「第2実行装置」に対応し、サーバ制御装置21のCPU22が、残りの処理を実行する「第1実行装置」に対応する。
【0072】
各車速候補値VLa1~VLa3が、「車速適正値の候補値」に対応する。各車速候補値VLa1~VLa3のうち、第1車速候補値VLa1が、タイヤ温度TMPtyが低いほど小さい値に導出された「候補値」に対応する。
【0073】
<第1実施形態における作用及び効果>
(1-1)車両30が
図2に示したコース101を走行する場合、車両30の走行開始時点では、タイヤの温度が比較的低い。タイヤの温度が低いほど、タイヤのグリップ力が小さい。タイヤのグリップ力が小さいほど車両挙動の安定性が低下しやすい。そのため、タイヤの温度が低い場合には、タイヤの温度が高い場合と比較して車速Vを低く抑えることが望ましい。
【0074】
本実施形態では、タイヤ温度TMPtyが低いほど小さい値が第1車速候補値VLa1として導出され、当該第1車速候補値VLa1に基づいて車速適正値VLが設定される。このため、タイヤ温度TMPtyが低いほど小さい値を車速適正値VLとして設定できる。すなわち、同じコース101を車両30が走行する際においてもタイヤ温度TMPtyが異なる場合には、タイヤのグリップ力が相違している可能性があるため、異なる値を車速適正値VLとして設定できる。
【0075】
したがって、本実施形態によれば、車両30の状態、具体的には車両30のタイヤのグリップ力を考慮した値を車速適正値VLとして設定できる。そのため、そのときのタイヤのグリップ力を考慮して運転者の車両操作を支援できる。
【0076】
(1-2)本実施形態では、車両30の走行距離と相関する車両30におけるコース101の周回回数を基に、タイヤ温度TMPtyが取得される。これにより、タイヤの温度を検出するセンサを車両30が搭載していなくても、タイヤ温度TMPtyに応じた値を車速適正値VLとして設定できる。
【0077】
(1-3)運転者が慣れていないコース101を車両で走行する場合、車両30の安全を確保する上では車速Vを低く抑えることが望ましい。一方、同じコース101での車両走行を繰り返していくと、コース101を車両30で走行するための車両操作の運転者の慣れ度合いが高くなる。このように慣れ度合いが高い場合には、慣れ度合いが高くない場合と比較し、あまり車速Vを低く抑えなくてもよい。
【0078】
本実施形態では、車両30がコース101を走行した周回回数が増えるほど大きい値を車速適正値VLとして設定できる。すなわち、コース101を車両30で走行するための車両操作の運転者の慣れ度合いが高いほど大きい値を、車速適正値VLとして設定できるといえる。したがって、本実施形態では、慣れ度合いに応じた値を車速適正値VLとして設定できる。また、慣れ度合いを考慮して運転者の車両操作を支援できる。
【0079】
なお、この場合、コース101における車両30の周回回数が、車両30の走行している道路を車両30で走行するための車両操作の運転者の慣れ度合いの指標に対応する。この場合、周回回数を計測する処理が、慣れ度合いの指標を取得する「指標取得処理」に対応する。
【0080】
(1-4)車両30がコース101を走行する場合、コース101を区分することによって設定された複数の走行エリアARの中から、走行中エリアARDが特定される。そして、走行中エリアARDに対応する基準車速適正値VLbに基づいて車速適正値VLが設定される。したがって、車両30の走行しているエリアに応じた値を車速適正値VLとして設定できる。また、走行中エリアARDをも考慮して運転者の車両操作を支援できる。
【0081】
(1-5)μ値の小さい道路を車両30が走行する場合、車両挙動が乱れやすい。言い換えると、車両挙動の安定性を確保するためには、走行する路面μが小さい場合には車速Vを低く抑えることが好ましい。そこで、本実施形態では、路面μが小さい場合は、路面μが小さくない場合と比較して小さい値を車速適正値VLとして設定できる。そのため、路面μをも考慮して運転者の車両操作を支援できる。
【0082】
(1-6)サーキット場100の天候も変われば、車両挙動の安定性を確保した上でコース101を車両30に走行させるための適正な車速は変わりうる。例えば、降水量が多いほど、運転者の視界が悪化し、車両30を走行させにくくなる。また例えば、風量が大きいほど、車両30に作用する外力が大きくなり、ひいては車両挙動の安定性が低下しやすい。
【0083】
この点、本実施形態では、雨が降っているか否かの判定結果に応じた値、又は、風量に応じた値を、車速適正値VLとして設定できる。すなわち、天候をも考慮した値を車速適正値VLとして設定できる。これにより、天候をも考慮して運転者の車両操作を支援できる。
【0084】
(1-7)本実施形態では、運転者によって選択された走行モードMDに応じた値が車速適正値VLとして設定される。すなわち、支援処理を実行することにより、自身が選択した走行モードMDに応じた支援を運転者に対して行うことができる。
【0085】
例えば、コース101での車両走行に自信のない運転者が第1走行モードMD1を選択したとする。この場合、第1走行モードMD1以外の他の走行モードMD2,MD3が選択されている場合と比較し、小さい値が車速適正値VLとして設定される。この状態で運転者が車両操作を行っている場合、車速適正値VLが運転者に通知される。そのため、通知されている車速適正値VLに従って運転者が車両操作を行うことにより、コース101を安全に車両30に走行させることができる。
【0086】
また例えば、コース101での車両走行に多少の自信を持つ運転者が第2走行モードMD2を選択したとする。この場合、第1走行モードMD1が選択されている場合と比較し、大きい値が車速適正値VLとして設定される。この状態で運転者が車両操作を行っている場合、車速適正値VLが運転者に通知される。この場合、第1走行モードMD1が選択されている場合と比較し、支援処理が介入されにくい。そのため、通知されている車速適正値VLに従って運転者が車両操作を行うことにより、コース101で車両30を走行させることを運転者に楽しませることができる。
【0087】
(1-8)車両30を減速させる場合、その減速度が大きいほど、車両30の挙動の安定性が低下しやすい。そのため、初心者用の走行モードである第1走行モードMD1が運転者に選択されている場合には、他の走行モードが選択されている場合よりも、車両30の減速度が大きくならないように、運転者の車両操作を支援することが望ましい。
【0088】
また、カーブへの侵入に備えて車両30を減速させる場合、減速の開始位置からカーブの開始位置までの距離が短いと、車両30の減速度が大きくなりやすい。一方、当該距離が長いと、車両30の減速度が大きくなりにくい。つまり、車両操作に対する技量の低い運転者が車両操作を行う場合、車両操作に対する技量の高い運転者が車両操作を行う場合と比較し、よりカーブの手前から、車両30の減速の開始を通知できるようにするのが望ましい。
【0089】
本実施形態では、車両30が減速区間に入ったとの判定がなされると、旋回準備制御によって、車両30を減速させるための車両操作を行うことが運転者に対して要求される。第1走行モードMD1が運転者によって選択されている場合には、他の走行モードMD2,MD3が選択されている場合よりも減速区間の進行方向X1における寸法が大きい。そのため、第1走行モードMD1が運転者によって選択されている場合には、他の走行モードMD2,MD3が選択されている場合と比較し、よりカーブの手前から旋回準備制御が開始される。これにより、第1走行モードMD1が運転者によって選択されている場合には、他の走行モードMD2,MD3が選択されている場合と比較し、車両30の減速度を大きくしなくても十分に車速を低くした状態で車両30をカーブに進入させることができる。
【0090】
すなわち、本実施形態では、カーブの手前を車両30が走行する場合において、運転者が選択した走行モードに応じた支援を運転者に対して行うことができる。
(1-9)本実施形態では、サーバ制御装置21と車両制御装置40との協働によって、車速適正値VLが設定される。そのため、車速適正値VLを設定するための各処理を1つの制御装置に実行させる場合と比較し、各制御装置21,40の制御負荷を低減できる。
【0091】
(第2実施形態)
車両の走行支援システム、及び、車両の走行支援方法の第2実施形態を
図8~
図10に従って説明する。以下の説明においては、第1実施形態と相違している部分について主に説明するものとし、第1実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0092】
<サーバ20の構成>
サーバ制御装置21の記憶装置24は、
図8に示すテーブルTL1を有している。
図8に示すように、テーブルTL1は、走行モードMDに応じて、モード補正係数Hm、減速距離Lg及び減速度要求値DecRを設定するためのものである。本実施形態では、車両30のカーブへの侵入に備えての車両30の減速を支援する減速支援制御が実施される。減速度要求値DecRとは、減速支援制御中における車両30の減速度の目標値である。
【0093】
図8に示すように、第1走行モードMD1用の減速度要求値DecRは、第1減速度要求値Dec1である。第2走行モードMD2用の減速度要求値DecRは、第2減速度要求値Dec2である。第3走行モードMD3用の減速度要求値DecRは、第3減速度要求値Dec3である。車両30が減速する場合、その減速度が大きいほど車両挙動の安定性が低下しやすい。そのため、第1減速度要求値Dec1は、第2減速度要求値Dec2及び第3減速度要求値Dec3よりも小さい。第3減速度要求値Dec3は、第1減速度要求値Dec1及び第2減速度要求値Dec2よりも大きい。
【0094】
<車両30にコース101を走行させるに際して運転者の車両操作を支援するための処理の流れ>
図9は、サーバ制御装置21のCPU22が実行する処理ルーチンの一部分が図示されている。CPU22は、本処理ルーチンを繰り返し実行する。
【0095】
本処理ルーチンにおいて、CPU22は、
図6に示したステップS11~S35と同等の処理を実行する。CPU22は、ステップS35の処理を実行すると、処理をステップS37に移行する。ステップS37において、CPU22は、運転者によって選択された走行モードMDに応じた減速距離Lgを取得する。続いて、ステップS38において、CPU22は、運転者によって選択された走行モードMDに応じた減速度要求値DecRを、
図8に示したテーブルTL1から取得する。
【0096】
次のステップS39において、CPU22は、走行中エリアARD及び減速距離Lgを基に、減速区間に車両30が入っているか否かを判定する。車両30が減速区間に入っているとの判定をなしている場合(S39:YES)、CPU22は、処理をステップS41に移行する。ステップS41において、CPU22は、減速フラグFLGgにオンをセットする。そして、CPU22は、処理をステップS45に移行する。
【0097】
一方、ステップS39において、車両30が減速区間に入っているとの判定をなしていない場合(NO)、CPU22は、処理をステップS43に移行する。ステップS43において、CPU22は、減速フラグFLGgにオフをセットする。そして、CPU22は、処理をステップS45に移行する。
【0098】
ステップS45において、CPU22は、車速適正値VLa、減速度要求値DecR及び減速フラグFLGgをサーバ側通信装置28から車両30に送信させる送信処理を実行する。その後、CPU22は、本処理ルーチンを一旦終了する。
【0099】
図10には、車両制御装置40のCPU41が実行する処理ルーチンが図示されている。CPU41は、本処理ルーチンを繰り返し実行する。
本処理ルーチンにおいて、はじめのステップS71では、CPU41は、車速適正値VLa、減速度要求値DecR及び減速フラグFLGgを受信したか否かを判定する。車速適正値VLa、減速度要求値DecR及び減速フラグFLGgの受信が完了していない場合(S71:NO)、CPU41は、受信が完了するまでステップS71の判定を繰り返し実行する。一方、車速適正値VLa、減速度要求値DecR及び減速フラグFLGgの受信が完了している場合(S71:YES)、CPU41は、処理をステップS73に移行する。
【0100】
ステップS73において、CPU41は、上記ステップS53と同様に、走行中エリアARDの路面状態として、路面μの推定値を取得する。そして、ステップS75において、CPU41は、上記ステップS55と同様に、車速適正値VLを導出する。
【0101】
次のステップS77において、CPU41は、サーバ20から受信した減速フラグFLGgにオフがセットされているか否かを判定する。減速フラグFLGgにオフがセットされている場合(S77:YES)、CPU41は、処理をステップS79に移行する。ステップS79において、CPU41は、ステップS57と同様に、速度支援制御を実施する。その後、CPU41は、本処理ルーチンを一旦終了する。
【0102】
一方、ステップS77において減速フラグFLGgにオンがセットされている場合(NO)、CPU41は、処理をステップS81に移行する。ステップS81において、CPU41は、減速支援制御を実施する。例えば、CPU41は、車両30の減速度が減速度要求値DecRよりも小さくならないように制動装置33及び駆動装置32を駆動させる。この場合、運転者のブレーキ操作によって車両30の減速度が減速度要求値DecRよりも大きい場合、CPU41は、車両30を減速させるための駆動を制動装置33及び駆動装置32に指示しなくてもよい。その後、CPU41は、本処理ルーチンを一旦終了する。
【0103】
本実施形態では、車両30が減速区間に入っているとの判定がなされていない場合には、支援処理として、速度支援制御が実施される。すなわち、車速適正値VLに基づいた支援が運転者に対して行われる。一方、車両30が減速区間に入っているとの判定がなされている場合には、支援処理として、減速支援制御が実施される。すなわち、車速適正値VLではなく、減速度要求値DecRに基づいた支援が運転者に対して行われる。
【0104】
<対応関係>
本実施形態における事項と、上記「課題を解決するための手段」の欄に記載した事項との対応関係は、次の通りである。
【0105】
ステップS21が、「温度取得処理」に対応する。ステップS19,S25,S29,S33,S35及びS75が、「適正値設定処理」に対応する。本実施形態では、複数の車速候補値を導出し、各車速候補値に基づいて車速適正値VLが設定される。特に、ステップS25が、タイヤ温度TMPtyが低いほど小さい値を第1車速候補値VLa1として導出するための処理に対応する。ステップS29,S33が、天候情報に基づいた車速候補値VLa2,VLa3を導出するための処理に対応する。ステップS19が、運転者によって選択された走行モードMDを基に車速適正値VLを設定するための処理に対応する。ステップS75が、路面状態を基に車速適正値VLを設定するための処理に対応する。
【0106】
ステップS77~S81が、「支援処理」に対応する。特に、ステップS79が、車速適正値VLを運転者に報知すること、及び、車速Vが車速適正値VLを超えた場合には車両を減速させること、のうちの少なくとも一方を行う「速度支援制御」に対応する。また、ステップS81が、車両30のカーブへの侵入に備えて車両30の減速を制御する「減速支援制御」に対応する。ステップS13が、「特定処理」に対応する。ステップS73が、「路面状態取得処理」に対応する。ステップS38が、減速度要求値DecRを設定する「減速度要求値設定処理」に対応する。
【0107】
サーバ制御装置21の記憶装置24が、車両30の走行する道路を複数の走行エリアARに区分して記憶している「記憶装置」に対応する。サーバ制御装置21のCPU22及び車両制御装置40のCPU41が、上記各処理を実行する「実行装置」に対応する。また、車両制御装置40のCPU41が、「第2実行装置」に対応し、サーバ制御装置21のCPU22が、「第1実行装置」に対応する。
【0108】
各車速候補値VLa1~VLa3が、「車速適正値の候補値」に対応する。各車速候補値VLa1~VLa3のうち、第1車速候補値VLa1が、タイヤ温度TMPtyが低いほど小さい値に導出された「候補値」に対応する。
【0109】
<第2実施形態における作用及び効果>
本実施形態では、上記第1実施形態における効果(1-1)~(1-7)及び(1-9)と同等の効果に加え、以下に示す効果をさらに得ることができる。
【0110】
(2-1)車両30がカーブに接近すると、車両30のカーブへの侵入に備えて減速支援制御が実施される。これにより、減速度要求値DecRを基に車両30の減速が制御される。その結果、車両30を減速させるための車両操作を運転者が行ったか否かに拘わらず、車速Vを十分に低くしてから車両30をカーブに進入させることを抑制できる。
【0111】
(2-2)車両30を減速させる場合、その減速度が大きいほど車両挙動の安定性が低下しやすい。この点、本実施形態では、運転者が第1走行モードMD1を選択している場合には、運転者が他の走行モードMD2を選択している場合と比較して小さい値が減速度要求値DecRとして設定される。
【0112】
ここで、車両操作に対する技量の低い運転者は、第2走行モードMD2及び第3走行モードMD3よりも第1走行モードMD1を選択する可能性が高い。
そして、第1走行モードMD1が運転者に選択されている場合には、他の走行モードMD2,MD3が選択されている場合と比較し、車両30がカーブに進入する前段階において車両30の減速度が大きくなることを抑制できる。その結果、カーブへの侵入に備えた車両30の減速中において、運転者は安心して操舵を行うことができる。
【0113】
(第3実施形態)
車両の走行支援システム、及び、車両の走行支援方法の第3実施形態を
図11及び
図12に従って説明する。以下の説明においては、第1実施形態と相違している部分について主に説明するものとし、上記各実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0114】
<車両30にコース101を走行させるに際して運転者の車両操作を支援するための処理の流れ>
図11は、サーバ制御装置21のCPU22が実行する処理ルーチンの一部分が図示されている。CPU22は、本処理ルーチンを繰り返し実行する。
【0115】
本処理ルーチンにおいて、CPU22は、ステップS11において車両30から各種情報の受信が完了した場合(YES)、ステップS13において走行中エリアARDを特定する。続いて、CPU22は、ステップS15において基準車速適正値VLbを取得し、ステップS17においてモード補正係数Hmを取得する。また、CPU22は、ステップS21においてタイヤ温度TMPtyを取得し、ステップS23においてタイヤ温度補正係数Htmpを設定する。また、CPU22は、ステップS27において降水量補正係数Hprを設定し、ステップS31において風量補正係数Hwsを設定する。
【0116】
また、CPU22は、ステップS37において減速距離Lgを選択し、ステップS39において車両30が減速区間に入ったか否かを判定する。CPU22は、車両30が減速区間に入っているとの判定をなしている場合(S39:YES)、ステップS41において減速フラグFLGgにオンをセットする。一方、CPU22は、車両30が減速区間に入っているとの判定をなしていない場合(S39:NO)、ステップS43において減速フラグFLGgにオフをセットする。
【0117】
そして、ステップS45において、CPU22は、基準車速適正値VLb、各補正係数Hm,Htmp,Hpr,Hws及び減速フラグFLGgをサーバ側通信装置28から車両30に送信させる。その後、CPU22は、本処理ルーチンを一旦終了する。
【0118】
図12は、車両制御装置40のCPU41が実行する処理ルーチンが図示されている。CPU41は、本処理ルーチンを繰り返し実行する。
本処理ルーチンにおいて、はじめのステップS91では、CPU41は、基準車速適正値VLb、各補正係数Hm,Htmp,Hpr,Hws及び減速フラグFLGgを受信したか否かを判定する。基準車速適正値VLb、各補正係数Hm,Htmp,Hpr,Hws及び減速フラグFLGgのうち、少なくとも1つを受信していない場合(S91:NO)、CPU41は、受信が完了するまでステップS91の判定を繰り返し実行する。一方、基準車速適正値VLb、各補正係数Hm,Htmp,Hpr,Hws及び減速フラグFLGgの受信が完了している場合(S91:YES)、CPU41は、処理をステップS93に移行する。
【0119】
ステップS93において、CPU41は、上記ステップS19と同様に、基準車速適正値VLbとモード補正係数Hmとの積を、補正後基準車速適正値VLb1として導出する。次のステップS95において、CPU41は、上記ステップS25と同様に、補正後基準車速適正値VLb1とタイヤ温度補正係数Htmpとの積を、第1車速候補値VLa1として導出する。続いて、ステップS97において、CPU41は、上記ステップS29と同様に、補正後基準車速適正値VLb1と降水量補正係数Hprとの積を、第2車速候補値VLa2として導出する。次のステップS99において、CPU41は、上記ステップS33と同様に、補正後基準車速適正値VLb1と風量補正係数Hwsとの積を、第3車速候補値VLa3として導出する。
【0120】
そして、ステップS101において、CPU41は、上記ステップS35と同様に、第1車速候補値VLa1、第2車速候補値VLa2及び第3車速候補値VLa3を基に、車速適正値VLaを導出する。
【0121】
次のステップS103において、CPU41は、上記ステップS53と同様に、走行中エリアARDの路面状態を取得する。続いて、ステップS105において、CPU41は、上記ステップS55と同様に、車速適正値VLaと路面状態とを基に、車速適正値VLを導出する。そして、ステップS107において、CPU41は、上記ステップS57と同様に、速度支援制御を実施する。
【0122】
ステップS109において、CPU41は、上記ステップS59と同様に、減速フラグFLGgにオンがセットされているか否かを判定する。減速フラグFLGgにオンがセットされている場合(S109:YES)、CPU41は、処理をステップS111に移行する。一方、減速フラグFLGgにオフがセットされている場合(S109:NO)、CPU41は、本処理ルーチンを一旦終了する。
【0123】
ステップS111において、CPU41は、上記ステップS61と同様に、旋回準備制御を実施する。その後、CPU41は、本処理ルーチンを一旦終了する。
<対応関係>
本実施形態における事項と、上記「課題を解決するための手段」の欄に記載した事項との対応関係は、次の通りである。
【0124】
ステップS21が、「温度取得処理」に対応する。ステップS93~S101及びS105が、「適正値設定処理」に対応する。本実施形態では、複数の車速候補値を導出し、各車速候補値に基づいて車速適正値VLが設定される。特に、ステップS95が、タイヤ温度TMPtyが低いほど小さい値を第1車速候補値VLa1として導出するための処理に対応する。ステップS97,S99が、天候情報に基づいた車速候補値VLa2,VLa3を導出するための処理に対応する。ステップS93が、運転者によって選択された走行モードMDを基に車速適正値VLを設定するための処理に対応する。ステップS105が、路面状態を基に車速適正値VLを設定するための処理に対応する。
【0125】
ステップS107,S111が、「支援処理」に対応する。特に、ステップS107が、車速適正値VLを運転者に報知すること、及び、車速Vが車速適正値VLを超えた場合には車両を減速させること、のうちの少なくとも一方を行う「速度支援制御」に対応する。また、ステップS111が、「旋回準備制御」に対応する。ステップS13が、「特定処理」に対応する。ステップS103が、「路面状態取得処理」に対応する。
【0126】
サーバ制御装置21の記憶装置24が、「記憶装置」に対応する。サーバ制御装置21のCPU22及び車両制御装置40のCPU41が、「実行装置」に対応する。また、車両制御装置40のCPU41が、「第2実行装置」に対応し、サーバ制御装置21のCPU22が、「第1実行装置」に対応する。
【0127】
各車速候補値VLa1~VLa3が、「車速適正値の候補値」に対応する。各車速候補値VLa1~VLa3のうち、第1車速候補値VLa1が、タイヤ温度TMPtyが低いほど小さい値に導出された「候補値」に対応する。
【0128】
<第3実施形態における作用及び効果>
本実施形態によれば、上記第1実施形態における効果(1-1)~(1-9)と同等の効果に加え、以下の効果をさらに得ることができる。
【0129】
(3-1)本実施形態では、上記第1実施形態ではサーバ制御装置21のCPU22が実行した処理の一部を、車両制御装置40のCPU41が実行している。これにより、サーバ制御装置21の制御負荷を低減できる。
【0130】
<変更例>
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0131】
・上記各実施形態では、走行支援方法を構成する各処理を、サーバ制御装置21のCPU22と車両制御装置40のCPU41とで分担している。しかし、走行支援方法を構成する全ての処理を車両制御装置40のCPU41に実行させてもよい。
【0132】
この場合、サーバ20が管理するコース101を車両30が走行する場合、走行の開始に先立って、
図3に示した全ての走行エリアAR、
図4に示したマップMP、
図5又は
図8に示したテーブルTL,TL1が、サーバ20から車両30に送信される。すると、受信した各種の情報が、車両制御装置40の記憶装置43に記憶される。
【0133】
この状態で車両30がコース101を走行している場合、CPU41は、上記各実施形態の場合と同様に車速適正値VLを設定できる。
この変更例においては、車両制御装置40のCPU41が、「実行装置」に対応し、記憶装置43が、「記憶装置」に対応する。
【0134】
・上記各実施形態では、減速支援制御及び旋回準備制御のうちの一方の制御のみを実施するようにしているが、減速支援制御及び旋回準備制御の双方を実施するようにしてもよい。
【0135】
・運転者によって選択されている走行モードMDによって、減速支援制御及び旋回準備制御の中から、実施する制御を選択するようにしてもよい。例えば、第1走行モードMD1が選択されている場合には、減速支援制御及び旋回準備制御の双方を実施するようにしてもよい。また例えば、第2走行モードMD2が選択されている場合には、減速支援制御及び旋回準備制御のうち、減速支援制御のみを実施するようにしてもよい。また例えば、第3走行モードMD3が選択されている場合には、減速支援制御及び旋回準備制御のうち、旋回準備制御のみを実施するようにしてもよい。
【0136】
・減速距離Lgを、運転者によって選択された走行モードMDに応じて変更しなくてもよい。
・減速度要求値DecRを、運転者によって選択された走行モードMDに応じて可変させなくてもよい。
【0137】
・支援処理は、減速支援制御及び旋回準備制御の何れをも含んでいなくてもよい。
・上記各実施形態では、第1車速候補値VLa1、第2車速候補値VLa2及び第3車速候補値VLa3のうち、最も小さい値を車速適正値VLaとして導出しているが、これに限らない。すなわち、第1車速候補値VLa1、第2車速候補値VLa2及び第3車速候補値VLa3に基づいて車速適正値VLaを導出できればよい。例えば、複数の車速候補値VLa1,VLa2,VLa3の平均値を、車速適正値VLとして導出してもよい。また例えば、複数の車速候補値VLa1,VLa2,VLa3のうち、2番目に小さい値を、車速適正値VLとして導出してもよい。
【0138】
・上記各実施形態では、運転者によって選択された走行モードMDに応じて車速適正値VLを可変できるようにしているが、これに限らない。すなわち、運転者によって選択された走行モードMDに応じて車速適正値VLを可変させなくてもよい。
【0139】
・上記各実施形態では、サーキット場100における降水量に応じて車速適正値VLを可変できるようにしているが、これに限らない。すなわち、サーキット場100における降水量に応じて車速適正値VLを可変させなくてもよい。
【0140】
・上記各実施形態では、サーキット場100における風量に応じて車速適正値VLを可変できるようにしているが、これに限らない。すなわち、サーキット場100における風量に応じて車速適正値VLを可変させなくてもよい。
【0141】
・上記各実施形態では、サーキット場100における天候に応じて車速適正値VLを可変できるようにしているが、これに限らない。すなわち、サーキット場100における天候に応じて車速適正値VLを可変させなくてもよい。
【0142】
・路面μの推定値に応じて車速適正値VLを補正するのであれば、上記各実施形態で説明した手法とは異なる手法で路面μの推定値に応じて車速適正値VLを補正してもよい。例えば、路面μの推定値が小さいほど補正量が大きくなるように車速適正値VLを補正してもよい。
【0143】
・路面μの推定値に応じて車速を可変させなくてもよい。この場合、路面状態取得処理を省略してもよい。
・走行中エリアARDに応じて車速適正値VLを可変させなくてもよい。この場合、特定処理を実行しなくてもよい。
【0144】
・上記各実施形態では、周回回数を基にタイヤ温度TMPtyを取得しているが、これに限らない。例えば、車両30がコース101上で発進してからの走行距離を計測し、計測した走行距離に応じた値を、タイヤ温度TMPtyとして取得するようにしてもよい。
【0145】
・車両30がコース101上で発進してからの走行距離を基に、タイヤ温度TMPtyを取得するのは一例である。例えば、タイヤの温度を検出する検出系を車両30が備えている場合、タイヤの温度の検出値を、タイヤ温度TMPtyとして取得してもよい。
【0146】
・速度支援制御では、車速適正値VLを運転者に報知するのであれば、車速Vが車速適正値VLを超えた場合に車両30を減速させる制御を実施しなくてもよい。
・速度支援制御では、車速Vが車速適正値VLを超えた場合に車両30を減速させる制御を実施するのであれば、車速適正値VLを運転者に報知する制御を実施しなくてもよい。
【0147】
・上記第1実施形態及び第3実施形態において、旋回準備制御の実施中にブレーキ操作を運転者が行っている場合は、速度支援制御を実施しなくてもよい。
・上記各実施形態では、車両30として、運転者が選択可能な走行モードMDとして3つの走行モードMD1~MD3を有する車両を適用しているが、これに限らない。例えば、運転者が選択可能な走行モードMDとして2つの走行モードを有する車両を車両30に適用してもよい。また例えば、運転者が選択可能な走行モードMDとして4つ以上の走行モードを有する車両を車両30に適用してもよい。
【0148】
・上記各実施形態では、車両30として、走行モードMDを運転者が選択できない車両を適用してもよい。この場合、走行モードに応じて車速適正値VLを可変させることはできない。
【0149】
・上記実施形態では、サーキット場100のコース101を走行する場合について説明しているが、これに限らない。例えば、公道を車両30が走行する場合に走行支援システムを適用してもよい。すなわち、車両30が道路を走行している場合、タイヤ温度TMPtyが取得される。そして、タイヤ温度TMPtyが低いほど小さい値が車速適正値の候補値として導出され、当該候補値に基づいて車速適正値VLが設定される。この場合であっても、車速適正値VLに基づいて支援処理が実行される。
【0150】
・走行支援システム10は、CPUとプログラムを格納するメモリとを備えて、ソフトウェア処理を実行するものに限らない。すなわち、走行支援システム10は、以下(a)~(c)の何れかの構成であればよい。
(a)走行支援システム10は、コンピュータプログラムに従って各種処理を実行する一つ以上のプロセッサを備えている。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROMなどのメモリを含んでいる。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリ、すなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含んでいる。
(b)走行支援システム10は、各種処理を実行する一つ以上の専用のハードウェア回路を備えている。専用のハードウェア回路としては、例えば、特定用途向け集積回路、すなわちASIC又はFPGAを挙げることができる。なお、ASICは、「Application Specific Integrated Circuit」の略記であり、FPGAは、「Field Programmable Gate Array」の略記である。
(c)走行支援システム10は、各種処理の一部をコンピュータプログラムに従って実行するプロセッサと、各種処理のうちの残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備えている。
【0151】
次に、上記各実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)車両の走行時に運転者の車両操作を支援する車両の走行支援システムであって、
実行装置を備え、
前記実行装置は、
特定のコースを前記車両が走行する場合、当該コースを当該車両で走行するための車両操作の前記運転者の慣れ度合いの指標を取得する指標取得処理と、
前記車両が走行する際の適正な車速である車速適正値を設定する適正値設定処理と、
前記車速適正値を前記運転者に報知すること、及び、前記車速が前記車速適正値を超えた場合には前記車両を減速させること、のうちの少なくとも一方を行う支援処理と、を実行するようになっており、
前記実行装置は、前記適正値設定処理において、前記車速適正値の候補値として、前記指標から推測される前記慣れ度合いが低いほど小さい値を導出し、当該候補値に基づいて前記車速適正値を設定する、車両の走行支援システム。
【0152】
運転者が慣れていないコースを車両で走行する場合、車両の安全を確保する上では車速が高くなることを抑制するのが望ましい。そこで、上記構成では、特定のコースを車両で走行する際の車両操作を運転者が慣れていない場合には、当該コースを車両で走行する際の車両操作を運転者が慣れている場合よりも小さい値が車速適正値として設定される。そして、支援処理によって、車速適正値が運転者に報知されたり、車速が車速適正値を超えないように車両が減速されたりする。すなわち、上記構成によれば、運転者の慣れ度合いに応じた値を車速適正値として設定できるようになる。
【符号の説明】
【0153】
10…走行支援システム
20…サーバ
21…サーバ制御装置
22…CPU
24…記憶装置
30…車両
40…車両制御装置
41…CPU
43…記憶装置
100…サーキット場
101…コース