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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】昇降装置、画像形成装置及び昇降方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240709BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 451
B41J2/165 201
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021021818
(22)【出願日】2021-02-15
(65)【公開番号】P2022124196
(43)【公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】駒田 直也
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-279855(JP,A)
【文献】特開2017-177431(JP,A)
【文献】特開2010-058431(JP,A)
【文献】特開2012-213871(JP,A)
【文献】特開2009-196261(JP,A)
【文献】特開2001-146002(JP,A)
【文献】国際公開第2015/166950(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0115313(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の搬送回転部材に張架され、記録媒体を搬送する搬送部材と、
前記複数の搬送回転部材を一体的に保持する保持部と、
前記記録媒体に画像を形成するインクジェットヘッドに対して前記搬送部材が上下方向に移動するように、前記保持部を昇降する昇降部と、
前記搬送部材の搬送面と前記インクジェットヘッドのインク吐出面との間の第1距離を検出する第1距離検出部と、
を備え
前記第1距離検出部は、前記搬送面の異なる位置毎に、前記インク吐出面との間の距離を前記第1距離として検出し、
前記昇降部は、前記搬送面の異なる位置毎に検出された複数の前記第1距離に基づいて、前記記録媒体の搬送方向において前記搬送面と前記インク吐出面とが平行となるように、前記保持部を昇降す
昇降装置。
【請求項2】
前記搬送面に対して前記記録媒体を押圧する押圧部材と、
前記記録媒体の搬送方向における前記押圧部材の上流側に設けられ、前記押圧部材に前記記録媒体を案内する案内部材と、
を備え、
前記保持部は、前記複数の搬送回転部材、前記押圧部材及び前記案内部材を一体的に保持する、
請求項1に記載の昇降装置。
【請求項3】
複数の搬送回転部材に張架され、記録媒体を搬送する搬送部材と、
前記複数の搬送回転部材を一体的に保持する保持部と、
前記記録媒体に画像を形成するインクジェットヘッドに対して前記搬送部材が上下方向に移動するように、前記保持部を昇降する昇降部と、
前記搬送部材の搬送面に対して前記記録媒体を押圧する押圧部材と、
前記記録媒体の搬送方向における前記押圧部材の上流側に設けられ、前記押圧部材に前記記録媒体を案内する案内部材と、
を備え、
前記保持部は、前記複数の搬送回転部材、前記押圧部材及び前記案内部材を一体的に保持する、
昇降装置。
【請求項4】
前記インクジェットヘッドのインク吐出面のメンテナンス処理を行うメンテナンス部と、
前記保持部が降下される場合、前記上下方向における前記インク吐出面と前記搬送部材との間に、前記メンテナンス部を案内する案内部と、
を備える、
請求項1からのいずれか一項に記載の昇降装置。
【請求項5】
前記保持部の昇降量を制限する制限部を備える、
請求項1からのいずれか一項に記載の昇降装置。
【請求項6】
前記上下方向において前記搬送面からの前記記録媒体の高さを検出する高さ検出部を備え、
前記昇降部は、検出された前記記録媒体の高さが、前記インクジェットヘッドのインク吐出面と前記搬送面との間の距離以上である場合、前記記録媒体と前記インク吐出面とが接触しないよう、前記保持部を降下させる、
請求項1からのいずれか一項に記載の昇降装置。
【請求項7】
検出された前記記録媒体の高さが、前記インク吐出面と前記搬送面の降下可能な下限位置との間の距離以上である場合、前記記録媒体の搬送を停止する搬送停止部を備える、
請求項に記載の昇降装置。
【請求項8】
複数の搬送回転部材に張架され、記録媒体を搬送する搬送部材と、
前記複数の搬送回転部材を一体的に保持する保持部と、
前記記録媒体に画像を形成するインクジェットヘッドに対して前記搬送部材が上下方向に移動するように、前記保持部を昇降する昇降部と、
前記上下方向において前記搬送部材の搬送面からの前記記録媒体の高さを検出する高さ検出部と、
前記記録媒体の搬送を停止する搬送停止部と、
を備え、
前記昇降部は、検出された前記記録媒体の高さが、前記インクジェットヘッドのインク吐出面と前記搬送面との間の距離以上である場合、前記記録媒体と前記インク吐出面とが接触しないよう、前記保持部を降下させ、
前記搬送停止部は、検出された前記記録媒体の高さが、前記インク吐出面と前記搬送面の降下可能な下限位置との間の距離以上である場合、前記記録媒体の搬送を停止させる、
昇降装置。
【請求項9】
前記記録媒体の搬送経路長について、前記保持部の昇降に伴う変化を抑制する抑制部を備える、
請求項1から8のいずれか一項に記載の昇降装置。
【請求項10】
複数の搬送回転部材に張架され、記録媒体を搬送する搬送部材と、
前記複数の搬送回転部材を一体的に保持する保持部と、
前記記録媒体に画像を形成するインクジェットヘッドに対して前記搬送部材が上下方向に移動するように、前記保持部を昇降する昇降部と、
前記記録媒体の搬送経路長について、前記保持部の昇降に伴う変化を抑制する抑制部と、
を備える、
昇降装置。
【請求項11】
前記抑制部は、搬送される前記記録媒体に付与する張力を調整する張力調整部を有する、
請求項9又は10に記載の昇降装置。
【請求項12】
前記インク吐出面と前記メンテナンス部の上面との間の第2距離を検出する第2距離検出部を備え、
前記昇降部は、前記第2距離が検出された場合、前記保持部の上昇を禁止する、
請求項に記載の昇降装置。
【請求項13】
複数の搬送回転部材に張架され、記録媒体を搬送する搬送部材と、
前記複数の搬送回転部材を一体的に保持する保持部と、
前記記録媒体に画像を形成するインクジェットヘッドに対して前記搬送部材が上下方向に移動するように、前記保持部を昇降する昇降部と、
前記インクジェットヘッドのインク吐出面のメンテナンス処理を行うメンテナンス部と、
前記保持部が降下される場合、前記上下方向における前記インク吐出面と前記搬送部材との間に、前記メンテナンス部を案内する案内部と、
前記インク吐出面と前記メンテナンス部の上面との間の第2距離を検出する第2距離検出部と、
を備え、
前記昇降部は、前記第2距離が検出された場合、前記保持部の上昇を禁止する、
昇降装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の昇降装置を備える画像形成装置。
【請求項15】
記録媒体を搬送する搬送部材を複数の搬送回転部材に張架し、
前記複数の搬送回転部材を保持部で一体的に保持し、
前記記録媒体に画像を形成するインクジェットヘッドに対して前記搬送部材が上下方向に移動するように、前記保持部を昇降する昇降方法において
前記搬送部材の搬送面の異なる位置毎に、前記搬送面と前記インクジェットヘッドのインク吐出面との間の距離を第1距離として検出し、
前記搬送面の異なる位置毎に検出された複数の前記第1距離に基づいて、前記記録媒体の搬送方向において前記搬送面と前記インク吐出面とが平行となるように、前記保持部を昇降する、
昇降方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降装置、画像形成装置及び昇降方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置、例えば、インクジェットヘッド(以降、単にヘッドと呼ぶ)のノズルからインクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、ヘッドには、定期的なメンテナンスが必要である。例えば、ヘッドのノズル面のインクをブレードやローラーなどで拭き取るワイピング処理、増粘したインクを加圧、吸引などによりノズルから排出するパージ処理などのメンテナンスが必要である。
【0003】
インクジェットプリンタでは、紙、布帛などの記録媒体とヘッドのノズル面との間隔を1~4mm程度にして画像形成(印刷)する。そのため、ヘッドを保持するキャリッジが昇降可能に構成され、メンテナンス時に、キャリッジの底面部にメンテナンスユニットが入るよう、キャリッジを上昇させている。例えば、特許文献1に記載の技術では、ヘッドの吐出位置から上方の待機位置へ移動する途中でヘッドを一時停止し、ワイピングユニットでノズル面を拭き取ることが示されている。
【0004】
また、非印刷時において、ヘッドには、ノズル面の乾燥を防ぐための保湿処理が必要である。この場合も、メンテナンス時と同様に、キャリッジの底面部に保湿ユニットが入るよう、キャリッジを上昇させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-157988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、インクジェットプリンタの中には、ヘッドを昇降可能に構成することが難しい場合がある。例えば、一回の走査で印刷を行うワンパス(シングルパス)型のインクジェットプリンタは、印刷幅分の数のヘッドをキャリッジに配置することにより、高速印刷を実現することができる。しかしながら、ワンパス型のインクジェットプリンタは、以下の理由により、ヘッドを昇降させることが難しい場合がある。
【0007】
ワンパス型のインクジェットプリンタでは、ヘッドの数が多いため、ヘッドを保持するキャリッジの重量やメンテナンス性を考慮して、例えば、インク色毎のプリントユニットとして構成し、インク色数分のプリントユニットを搬送ベルト上に等間隔に配置する。この場合、プリントユニット間の配置間隔が長くなると、記録媒体を搬送する搬送ベルトの搬送方向長さも長くなる。そのため、搬送ベルトに蛇行が発生すると、蛇行の影響を受けて、印刷の色間ずれ(色間のインクの着弾ずれ)が発生し易くなる。搬送ベルトの蛇行による色間ずれは、プリントユニット間の配置間隔が長くなるほど顕著になるため、プリントユニット間の配置間隔をできるだけ短くする構成が求められる。
【0008】
搬送ベルトの蛇行による色ずれを抑制するため、プリントユニット間の配置間隔をできるだけ短くする構成として、全ての色のプリントヘッドを1つのキャリッジにまとめて搭載する構成が考えられる。この場合、ヘッド、ヘッドを駆動する基板、ヘッドにインクを供給する流路など、ヘッドで印刷するために必要な機器や部材が全て1つのキャリッジに集中することになり、これらはかなりの重量となる。さらに、ヘッド、基板、流路などを保持するキャリッジも、下部(ノズル面)の撓みを抑制するため、剛性を高める必要があり、キャリッジ自体もかなりの重量となる。このような構成のキャリッジは、例えば、1000kg~1500kg程度の重量となるものもあり、メンテナンスのため、このような重量のキャリッジを昇降させる必要がある。
【0009】
さらに、ノズル面と記録媒体の表面との距離(印刷ギャップ)を規定範囲内(例えば、誤差200μm以内)にしないと、印画品質が低下するため、上述したような重量を有するキャリッジであっても、高精度で昇降させる必要がある。
【0010】
このように、ワンパス型のインクジェットプリンタでは、上述したような重量を有するキャリッジを高精度で昇降させる必要があるが、このようなキャリッジを高精度で昇降させることは現実的なコストではほぼ不可能である。そこで、キャリッジ(ヘッド)を昇降させることに代えて、記録媒体を搬送する搬送部を昇降させることが考えられる。
【0011】
しかしながら、搬送部が複数の部材、例えば、搬送ベルト、搬送ベルトを駆動する駆動ローラー、搬送ベルトに従動する従動ローラーなどで構成される場合、搬送部を昇降させる際に、例えば、駆動ローラーと従動ローラーとの位置関係が変化する可能性がある。
【0012】
駆動ローラーと従動ローラーとの位置関係が変化した場合、例えば、駆動ローラーと従動ローラーとの平行性が変化し、駆動ローラーと従動ローラーとにより搬送ベルトにかかるテンション(張力)が変化してしまう。駆動ローラーと従動ローラーとの平行性が変化し、搬送ベルトにかかるテンションが変化すると、記録媒体の搬送中において、搬送ベルトが幅方向の一方に寄ってしまって、駆動ローラーや従動ローラーから外れたり、搬送ベルトが蛇行したりする。
【0013】
特に、ワンパス型のインクジェットプリンタは、上述したように、記録媒体の搬送方向における搬送ベルトの長さが長くなるので、搬送ベルトにかかるテンションが大きくなる。そのため、駆動ローラーと従動ローラーとの位置関係が変化すると、搬送ベルトにかかるテンションが大きく変化する可能性がある。従って、搬送部を昇降しても、搬送に関する部材間の位置関係を保つことが望まれている。
【0014】
本発明の目的は、搬送部を昇降しても、搬送に関する部材間の位置関係を保つことが可能な昇降装置、画像形成装置及び昇降方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る昇降装置は、
複数の搬送回転部材に張架され、記録媒体を搬送する搬送部材と、
前記複数の搬送回転部材を一体的に保持する保持部と、
前記記録媒体に画像を形成するインクジェットヘッドに対して前記搬送部材が上下方向に移動するように、前記保持部を昇降する昇降部と、
前記搬送部材の搬送面と前記インクジェットヘッドのインク吐出面との間の第1距離を検出する第1距離検出部と、
を備え
前記第1距離検出部は、前記搬送面の異なる位置毎に、前記インク吐出面との間の距離を前記第1距離として検出し、
前記昇降部は、前記搬送面の異なる位置毎に検出された複数の前記第1距離に基づいて、前記記録媒体の搬送方向において前記搬送面と前記インク吐出面とが平行となるように、前記保持部を昇降する。
また、本発明に係る昇降装置は、
複数の搬送回転部材に張架され、記録媒体を搬送する搬送部材と、
前記複数の搬送回転部材を一体的に保持する保持部と、
前記記録媒体に画像を形成するインクジェットヘッドに対して前記搬送部材が上下方向に移動するように、前記保持部を昇降する昇降部と、
前記搬送部材の搬送面に対して前記記録媒体を押圧する押圧部材と、
前記記録媒体の搬送方向における前記押圧部材の上流側に設けられ、前記押圧部材に前記記録媒体を案内する案内部材と、
を備え、
前記保持部は、前記複数の搬送回転部材、前記押圧部材及び前記案内部材を一体的に保持する。
また、本発明に係る昇降装置は、
複数の搬送回転部材に張架され、記録媒体を搬送する搬送部材と、
前記複数の搬送回転部材を一体的に保持する保持部と、
前記記録媒体に画像を形成するインクジェットヘッドに対して前記搬送部材が上下方向に移動するように、前記保持部を昇降する昇降部と、
前記上下方向において前記搬送部材の搬送面からの前記記録媒体の高さを検出する高さ検出部と、
前記記録媒体の搬送を停止する搬送停止部と、
を備え、
前記昇降部は、検出された前記記録媒体の高さが、前記インクジェットヘッドのインク吐出面と前記搬送面との間の距離以上である場合、前記記録媒体と前記インク吐出面とが接触しないよう、前記保持部を降下させ、
前記搬送停止部は、検出された前記記録媒体の高さが、前記インク吐出面と前記搬送面の降下可能な下限位置との間の距離以上である場合、前記記録媒体の搬送を停止させる。
また、本発明に係る昇降装置は、
複数の搬送回転部材に張架され、記録媒体を搬送する搬送部材と、
前記複数の搬送回転部材を一体的に保持する保持部と、
前記記録媒体に画像を形成するインクジェットヘッドに対して前記搬送部材が上下方向に移動するように、前記保持部を昇降する昇降部と、
前記記録媒体の搬送経路長について、前記保持部の昇降に伴う変化を抑制する抑制部と、
を備える。
また、本発明に係る昇降装置は、
複数の搬送回転部材に張架され、記録媒体を搬送する搬送部材と、
前記複数の搬送回転部材を一体的に保持する保持部と、
前記記録媒体に画像を形成するインクジェットヘッドに対して前記搬送部材が上下方向に移動するように、前記保持部を昇降する昇降部と、
前記インクジェットヘッドのインク吐出面のメンテナンス処理を行うメンテナンス部と、
前記保持部が降下される場合、前記上下方向における前記インク吐出面と前記搬送部材との間に、前記メンテナンス部を案内する案内部と、
前記インク吐出面と前記メンテナンス部の上面との間の第2距離を検出する第2距離検出部と、
を備え、
前記昇降部は、前記第2距離が検出された場合、前記保持部の上昇を禁止する。
【0016】
本発明に係る画像形成装置は、
前記昇降装置を備える。
【0017】
本発明に係る昇降方法は、
記録媒体を搬送する搬送部材を複数の搬送回転部材に張架し、
前記複数の搬送回転部材を保持部で一体的に保持し、
前記記録媒体に画像を形成するインクジェットヘッドに対して前記搬送部材が上下方向に移動するように、前記保持部を昇降する昇降方法において、
前記搬送部材の搬送面の異なる位置毎に、前記搬送面と前記インクジェットヘッドのインク吐出面との間の距離を第1距離として検出し、
前記搬送面の異なる位置毎に検出された複数の前記第1距離に基づいて、前記記録媒体の搬送方向において前記搬送面と前記インク吐出面とが平行となるように、前記保持部を昇降する
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、搬送部を昇降しても、搬送に関する部材間の位置関係を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の主要部を概略的に示す図である。
図2図1に示した画像形成装置の制御系の主要部を示す図である。
図3図1に示した画像形成装置の搬送部、保持部及び昇降部を示す斜視図である。
図4図1に示した画像形成装置の搬送部及び保持部を示す斜視図である。
図5図1に示した画像形成装置のメンテナンス部及び案内部を示す斜視図である。
図6図1図5に示した画像形成装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図1は、インクジェットプリンタ100(本発明の「画像形成装置」)の主要部の概略構成を示す図である。インクジェットプリンタ100は、搬送部10、インクジェットヘッド(以降、単にヘッドと呼ぶ)21を有するキャリッジ部20、メンテナンス部30、制御部90(図2を参照)などを備える。また、インクジェットプリンタ100は、図示を省略しているが、記録媒体であるメディアMを供給する供給部、印刷したメディアMに後処理を行う後処理部なども備える。
【0022】
インクジェットプリンタ100は、制御部90による制御により、メディアMを供給部から搬送部10に供給し、搬送部10に搬送されるメディアMにキャリッジ部20のヘッド21により印刷(画像形成)し、印刷されたメディアMを後処理部に搬送する。ここでは、メディアMは、例えば、帯状の布帛である。なお、メディアMとしては、布帛のほか、普通紙や塗工紙といった紙又はシート状の樹脂など、表面に着弾したインクを定着させることが可能な種々の媒体を用いることができる。
【0023】
供給部は、図示を省略しているが、例えば、メディアMを巻き出しローラーにロール状に格納する巻き出し機であり、巻き出しローラーを回転させることでメディアMを搬送部10へ搬送する。
【0024】
搬送部10は、詳細な構成は後述するが、搬送ベルト11(本発明の「搬送部材」)、駆動ローラー12(本発明の「搬送回転部材」)、従動ローラー13(本発明の「搬送回転部材」)などの複数の搬送に関する部材を有する。搬送部10は、複数の搬送に関する部材の搬送動作によりメディアMを搬送する。具体的には、搬送部10は、供給部から供給されたメディアMをキャリッジ部20の下方に搬送し、キャリッジ部20で印刷されたメディアMを後処理部に搬送する。
【0025】
キャリッジ部20は、一回の走査で印刷を行うワンパス型のインクジェットプリンタとして機能するよう構成されている。キャリッジ部20の内部構成の詳細な図示は省略するが、キャリッジ部20の内部には、メディアMの幅方向において、印刷幅分の数のヘッド21が配置され、メディアMの搬送方向において、インク色数分のヘッド21が配置されている。さらに、キャリッジ部20には、ヘッド21だけでなく、ヘッド21を駆動する駆動基板、ヘッド21にインクを供給するインク流路など、ヘッド21で印刷するために必要な機器や部材が多数配置されている。
【0026】
ヘッド21は、キャリッジ部20の底面側にノズル面21a(本発明の「インク吐出面」)を有し、ノズル面21aは、キャリッジ部20の底面と同一面となるように配置されている。ヘッド21には、インク流路からインクが供給される。ヘッド21は、駆動基板により駆動され、ノズル面21aのノズルからインクを吐出して、搬送されるメディアMに印刷を行う。
【0027】
キャリッジ部20は、ノズル面21aと搬送面11a(又は、メディアMの表面)との間の第1距離を検出する距離検出部22(本発明の「第1距離検出部」)を備えている。ここでは、距離検出部22は、搬送面11aの異なる位置毎に、ノズル面21aと搬送面11aとの間の第1距離を検出するように、上方から見て、キャリッジ部20の四隅に配置されている。距離検出部22としては、反射型レーザー測長センサーなどが適用可能である。また、ここでは、距離検出部22は、ノズル面21aとメンテナンス部30の上面との間の第2距離を検出する検出部(本発明の「第2距離検出部」)を兼ねているが、第1距離とは別に第2距離を検出するよう、別の検出部を設けるようにしてもよい。
【0028】
メディアMに印刷を行う際には、印画品質が低下しないようにするため、距離検出部22を用いて、ノズル面21aとメディアMの表面との距離(印刷ギャップ)が規定範囲内(例えば、誤差200μm以内)になるように制御されている。
【0029】
なお、キャリッジ部20は、上述したように、ヘッド21で印刷するために必要な機器や部材が多数配置されているため、かなりの重量となる。さらに、これらを保持するキャリッジ部20も、その底面(ノズル面21a)の撓みを抑制するため、その剛性を高める必要があり、キャリッジ自体もかなりの重量となる。
【0030】
メンテナンス部30は、キャリッジ部20のヘッド21のメンテナンス処理を定期的に行う。メンテナンス部30は、例えば、ヘッド21のノズル面21aのインクをブレードやローラーなどで拭き取るワイピング処理、増粘したインクを加圧、吸引などによりノズルから排出するパージ処理、ノズル面の乾燥を防ぐ保湿処理などを行う。ワイピング処理、パージ処理、保湿処理などにより、キャリッジ部20のヘッド21の表面状態を維持する。
【0031】
詳細は後述するが、上述したメンテナンス処理を行うため、メンテナンス部30は、キャリッジ部20の下部に移動可能に構成されている。
【0032】
後処理部は、キャリッジ部20で印刷されたメディアMの後処理、例えば、メディアMの乾燥処理や乾燥後のメディアMの巻き取りなどを行う。
【0033】
図2は、インクジェットプリンタ100の制御系の主要部を示すブロック図である。インクジェットプリンタ100は、図2に示すように、制御部90を備える。
【0034】
制御部90は、CPU(Central Processing Unit)91、RAM(Random Access Memory)92、ROM(Read Only Memory)93、記憶部94などを有する。
【0035】
CPU91は、ROM93に記憶された各種制御用のプログラムや設定データを読み出してRAM92に記憶させ、当該プログラムを実行して各種の演算処理を行う。
【0036】
RAM92は、CPU91に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。なお、RAM92は、不揮発性メモリーを含んでいてもよい。
【0037】
ROM93は、CPU91により実行される各種制御用のプログラムや設定データなどを格納する。なお、ROM93に代えて、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリーなどの書き換え可能な不揮発性メモリーが用いられてもよい。
【0038】
記憶部94には、入出力インターフェース80を介して外部装置200から入力されたプリントジョブ(画像形成処理命令)やプリントジョブに係る画像データが記憶される。記憶部94としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)が用いられ、また、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などが併用されてもよい。
【0039】
入出力インターフェース80は、外部装置200と制御部90との間のデータの送受信を媒介する。入出力インターフェース80は、例えば、各種シリアルインターフェース、各種パラレルインターフェースのいずれか、又は、これらの組み合わせで構成される。
【0040】
外部装置200は、例えば、パーソナルコンピューターであり、入出力インターフェース80を介して、プリントジョブや画像データなどを制御部90に供給する。
【0041】
制御部90には、搬送部10、キャリッジ部20、メンテナンス部30、後述する昇降部50、入出力インターフェース80が、それぞれ接続されている。制御部90は、インクジェットプリンタ100の全体動作を統括制御しており、搬送部10、キャリッジ部20、メンテナンス部30、後述する昇降部50、入出力インターフェース80は、制御部90に制御されて、所定の処理を実行する。また、制御部90には、距離検出部22や後述する高さ検出部18も接続されている。
【0042】
ところで、ワンパス型のインクジェットプリンタにおいて、上述したような重量を有するキャリッジ部を高精度で昇降させることは、現実的なコストではほぼ不可能である。キャリッジ部に代えて、搬送部を昇降させることが考えられるが、搬送部が駆動ローラー、従動ローラー、搬送ベルトなどを有する場合、搬送部を昇降させる際に、駆動ローラーと従動ローラーとの位置関係が変化する可能性がある。駆動ローラーと従動ローラーとの位置関係が変化した場合、駆動ローラーと従動ローラーとの平行性が変化し、搬送ベルトにかかるテンションが変化し、搬送ベルトが駆動ローラーや従動ローラーから外れたり、搬送ベルトが蛇行したりする可能性がある。従って、搬送部を昇降しても、搬送に関する部材間の位置関係を保つことが望まれている。
【0043】
そこで、本実施の形態において、インクジェットプリンタ100は、搬送ベルト11(本発明の「搬送部材」)と、搬送部フレーム40(本発明の「保持部」)と、昇降部50と、を有する昇降装置60を備える。
【0044】
詳細は後述するが、搬送ベルト11は、駆動ローラー12及び従動ローラー13に張架され、メディアMを搬送する。搬送部フレーム40は、駆動ローラー12及び従動ローラー13を一体的に保持する。また、昇降部50は、メディアMに画像を形成するヘッド21に対して搬送ベルト11が上下方向に移動するように、搬送部フレーム40を昇降する。
【0045】
また、昇降装置60は、以下の昇降方法を実施するよう構成されている。具体的には、搬送ベルト11を駆動ローラー12及び従動ローラー13に張架し、駆動ローラー12及び従動ローラー13を搬送部フレーム40で一体的に保持し、ヘッド21に対して搬送ベルト11が上下方向に移動するように搬送部フレーム40を昇降する。
【0046】
搬送部10、搬送部フレーム40及び昇降部50について、図1と共に、図3及び図4も参照して説明を行う。図3は、インクジェットプリンタ100の搬送部10、搬送部フレーム40及び昇降部50を示す斜視図である。図4は、インクジェットプリンタ100の搬送部10及び搬送部フレーム40を示す斜視図である。
【0047】
なお、本実施の形態においては、昇降部50で搬送部10を昇降させるので、キャリッジ部20は、位置が固定されており、ここでは、インクジェットプリンタ100の筐体である一対の固定フレーム101の間に固定されている。
【0048】
搬送部10は、搬送ベルト11、駆動ローラー12、従動ローラー13、押圧ローラー14(本発明の「押圧部材」)、ガイドバー15、ガイドローラー16、固定ガイドローラー17などを有する。なお、図示は省略するが、駆動ローラー12と従動ローラー13との間には、搬送ベルト11の搬送面11aを下方から支持するプラテンが設けられている。
【0049】
搬送部フレーム40は、一対のフレーム部材からなり、一対の固定フレーム101の間に、後述する昇降部50を介して、昇降可能に設けられている。一対の搬送部フレーム40は、その間に、駆動ローラー12、従動ローラー13、押圧ローラー14及びガイドローラー16を回転可能に保持し、また、ガイドバー15、プラテンを保持する。固定ガイドローラー17は、一対の固定フレーム101の間に回転可能に保持されている。
【0050】
つまり、搬送部フレーム40は、駆動ローラー12、従動ローラー13、押圧ローラー14、ガイドバー15、ガイドローラー16及びプラテンを一体的に保持し、互いの位置関係、例えば、平行性が変わらないようにしている。例えば、駆動ローラー12及び従動ローラー13は、互いに位置関係が変わらないように搬送部フレーム40に保持されている。そのため、駆動ローラー12と従動ローラー13との平行性は変化せず、搬送ベルト11のテンションが変化したり、搬送ベルト11の幅方向のテンションが偏ったりすることが防止される。
【0051】
搬送ベルト11は、駆動ローラー12と従動ローラー13との間にループ状に張架され、駆動ローラー12が回転駆動することにより、矢印A方向に一定速度で回転走行し、搬送面11aによりメディアMを搬送する。
【0052】
駆動ローラー12は、後述する制御部90の制御により、回転駆動され、駆動ローラー12が回転駆動することにより、搬送ベルト11を矢印A方向に回転走行させる。従動ローラー13は、搬送ベルト11の回転走行に伴って回転する。上述したように、駆動ローラー12及び従動ローラー13は、搬送部フレーム40に回転可能に保持され、搬送ベルト11は、駆動ローラー12と従動ローラー13とにより、一定のテンションがかかるように、回転走行可能に支持されている。
【0053】
ガイドバー15、ガイドローラー16及び固定ガイドローラー17(本発明の「案内部材」)は、メディアMの搬送方向における押圧ローラー14の上流側に設けられ、押圧ローラー14にメディアMを案内する。供給部がメディアMを固定ガイドローラー17へ供給すると、メディアMは、固定ガイドローラー17、ガイドローラー16及びガイドバー15を順に経由して、押圧ローラー14に導かれる。
【0054】
押圧ローラー14は、搬送ベルト11の搬送面11aに対してメディアMを押圧する。搬送ベルト11の搬送面11aには、例えば、メディアMを貼り付けるための地張剤が塗布されており、搬送ベルト11は、押圧ローラー14の押圧と地張剤とによりメディアMを搬送面11aに貼り付けて搬送する。
【0055】
昇降部50は、対面する固定フレーム101と搬送部フレーム40との間に配置され、ヘッド21に対して搬送ベルト11が上下方向に移動するように、搬送部フレーム40を昇降する。昇降部50は、固定フレーム101と搬送部フレーム40が対面する2箇所の間において、メディアMの搬送方向の上流側と下流側とにそれぞれ配置され、合計4箇所に配置されている。つまり、昇降部50は、上方から見て搬送部10の四隅となる位置に配置されている。
【0056】
昇降部50は、昇降モーター51、ボールネジ52、リテーナー53、リニアガイド54などを有する。なお、4つの昇降部50の構成は同じであるので、ここでは、1つの昇降部50に符号を付し、他の昇降部50には符号は付さず、省略する。
【0057】
昇降モーター51は、制御部90の制御により回転駆動され、ボールネジ52を回転する。ボールネジ52は、昇降モーター51により回転されると、ボールネジ52に螺合されたリテーナー53をボールネジ52の軸方向に移動させる。ボールネジ52は、軸方向が上下方向(鉛直方向)となるように配置されている。
【0058】
リテーナー53は、搬送部フレーム40の外面に固定されており、リテーナー53がボールネジ52の軸方向に移動(昇降)すると、搬送部フレーム40が昇降する。リニアガイド54は、一対のレールからなり、長手方向が上下方向(鉛直方向)となるように固定フレーム101の内面に固定されている。リニアガイド54は、リテーナー53が移動(昇降)可能にリテーナー53を保持している。
【0059】
昇降部50は、以上の構成により、ヘッド21と搬送ベルト11との間における上下方向の距離が変動するように搬送部フレーム40を昇降する。
【0060】
制御部90は、昇降部50を制御し、搬送部フレーム40を昇降する際には、上述した距離検出部22に検出された第1距離に基づいて、搬送部フレーム40を昇降する。特に、本実施の形態の場合、搬送ベルト11の搬送面11aに地張剤を塗布しており、地張剤はメディアMに応じて塗布厚が異なる。そのため、距離検出部22に検出された第1距離(搬送面11a上のメディアMの表面とノズル面21aとの間の距離)に基づいて、搬送部フレーム40を昇降することで、所望の印刷ギャップで印刷を行うことができる。
【0061】
また、本実施の形態においては、距離検出部22がキャリッジ部20の四隅に配置されている。そのため、制御部90は、昇降部50を制御し、四隅に配置された距離検出部22毎に検出された複数の第1距離に基づいて、メディアMの搬送方向において搬送面11aとノズル面21aとが平行(面平行)となるように、搬送部フレーム40を昇降する。なお、距離検出部22はキャリッジ部20の四隅(4箇所)に配置されているが、面平行とするには、少なくとも3箇所に距離検出部22を配置すればよい。
【0062】
上述したように、制御部90は、昇降部50を制御し、距離検出部22に検出された第1距離に基づいて、搬送部フレーム40を昇降する。もし、距離検出部22などの故障により、第1距離が正しく検出されない場合を考慮して、昇降部50は、搬送部フレーム40の昇降量を制限する下限ストッパ55、上限ストッパ56(本発明の「制限部」)を備えている。また、昇降モーター51やリテーナー53などの故障により、昇降部50が搬送部フレーム40を正しく昇降できない場合にも、搬送部フレーム40の昇降量を制限する下限ストッパ55、上限ストッパ56を使用できる。下限ストッパ55及び上限ストッパ56は、固定フレーム101の内面に固定されており、上方から見て、搬送部10の四隅に対応する位置に配置されている。
【0063】
搬送部フレーム40を上昇させたとき、距離検出部22などの故障により、正しく昇降量が制御できず、搬送部フレーム40が上限ストッパ56に当接した場合には、上限ストッパ56が搬送部フレーム40の上昇を制限する。このとき、昇降モーター51の回転を停止させてもよい。これにより、搬送ベルト11の搬送面11aがキャリッジ部20の底面(ノズル面21a)に衝突しないようにすることができる。
【0064】
また、搬送部フレーム40を降下させたとき、距離検出部22などの故障により、正しく昇降量が制御できず、搬送部フレーム40が下限ストッパ55に当接した場合には、下限ストッパ55が搬送部フレーム40の降下を制限する。このとき、昇降モーター51の回転を停止させてもよい。これにより、リテーナー53がリニアガイド54から外れないようにすることができる。
【0065】
昇降部50では、上述した下限ストッパ55、上限ストッパ56を用いて、搬送部フレーム40の昇降量を制限するが、下限ストッパ55、上限ストッパ56に加えて、接触式のリミットスイッチを用いてもよい。例えば、搬送部フレーム40が下限側のリミットスイッチに接触すると、昇降モーター51の回転を停止させ、また、搬送部フレーム40が上限側のリミットスイッチに接触すると、昇降モーター51の回転を停止させればよい。さらに、接触式のリミットスイッチに代えて、非接触式のリミットスイッチを用いてもよい。
【0066】
また、昇降部50は、メディアMのキャリッジ部20(ヘッド21)の接触を避けるため、上下方向におけるメディアMの高さを検出する高さ検出部18を備えている。メディアMは、地張剤が塗布された搬送面11aに押圧ローラー14により押圧されて貼り付けられるが、正しく貼り付かず、搬送面11aから浮いた状態となる可能性もある。メディアMが搬送面11aから浮いた状態を検出するため、高さ検出部18は、メディアMの搬送方向におけるヘッド21の上流側において、搬送面11aからのメディアMの高さを検出する。高さ検出部18としては、透過型レーザー変位センサーなどが適用可能である。
【0067】
高さ検出部18は、一対の搬送部フレーム40の内面に配置され、押圧ローラー14とキャリッジ部20との間のメディアMの高さを検出するように配置されている。
【0068】
制御部90は、昇降部50を制御し、高さ検出部18で検出された高さに基づいて、以下のように制御する。
【0069】
印刷中において、高さ検出部18で検出されたメディアMの高さが、ノズル面21aと搬送面11aとの間の距離以上である場合には、メディアMとノズル面21aとが接触しないように、搬送部フレーム40を降下させる。つまり、搬送部フレーム40を降下させることにより、メディアMの高さよりノズル面21aと搬送面11aとの間の距離を大きくすることができる。これにより、キャリッジ部20の下部を通過するメディアMがノズル面21aに接触することを防止することができる。そして、メディアMにおいて、上述した条件を満たす高さの部分がキャリッジ部20の下部を通過したら、搬送部フレーム40を規定の高さまで上昇させる。
【0070】
また、搬送部フレーム40(搬送面11a)の降下量に限度がある場合には、制御部90は、高さ検出部18で検出された高さに基づいて、以下のように制御する(搬送停止部)。
【0071】
印刷中において、高さ検出部18で検出されたメディアMの高さが、ノズル面21aと搬送面11aの降下可能な位置との間の距離以上である場合には、メディアMの搬送を停止する。具体的には、駆動ローラー12の回転駆動を停止し、搬送ベルト11の走行を停止して、メディアMの搬送を停止する。この場合、搬送部フレーム40を降下させて、搬送面11aを降下可能な位置としても、検出されたメディアMの高さが、ノズル面21aと搬送面11aの降下可能な位置との間の距離より高くなるので、メディアMの搬送を停止する。これにより、メディアMがノズル面21aに接触することを防止することができる。
【0072】
昇降部50により、固定されたキャリッジ部20に対し、搬送部10を降下させた場合、キャリッジ部20の下部にメンテナンス部30を移動可能となる。メンテナンス部30の移動について、図1と共に図5を参照して説明を行う。図5は、インクジェットプリンタ100のメンテナンス部30及び案内部を示す斜視図である。
【0073】
メンテナンス部30は、インクジェットプリンタ100の印刷時には、メディアMの搬送方向においてヘッド21に隣接する位置、例えば、ここでは、メディアMの搬送方向の下流側においてヘッド21に隣接する位置に配置されている。
【0074】
ヘッド21にメンテナンス処理が必要な場合、制御部90は、昇降部50を制御して、搬送部フレーム40を降下させ、搬送部10を降下させる。搬送部10が降下されると、メンテナンス部30は、上下方向におけるノズル面21aと搬送ベルト11(搬送面11a)との間に案内される。
【0075】
ここでは、メンテナンス部30を、メディアMの搬送方向の下流側においてヘッド21に隣接する位置からキャリッジ部20の下部まで案内するため、固定フレーム101の内面にはガイドレール102(本発明の「案内部」)が設けられている。ここでは、一対の固定フレーム101の両内面にそれぞれ2つのガイドレール102が、つまり、合計4つのガイドレールが設けられている。
【0076】
メンテナンス部30において、固定フレーム101の内面に対面する側面には、ガイドレール102に案内される案内ローラー31が設けられている。案内ローラー31は、両側面において、メディアMの搬送方向の上流側と下流側にそれぞれ配置されており、ガイドレール102の数に対応して、合計4箇所に配置されている。
【0077】
このようなガイドレール102及び案内ローラー31を用いて、搬送部10を降下させたときに、キャリッジ部20の下部にメンテナンス部30を案内することができる。
【0078】
そして、キャリッジ部20の下部にメンテナンス部30が移動したとき、制御部90は、検出対象がメンテナンス部30であると設定されて、上述した距離検出部22を用いて、ノズル面21aとメンテナンス部30の上面との間の第2距離を検出する。距離検出部22が第2距離を検出しているとき、制御部90は、搬送部フレーム40の上昇を禁止するよう昇降部50を制御する。これにより、メンテナンス部30のメンテナンス時に、誤って搬送部10が上昇して、メンテナンス部30に接触することを防止することができる。後述する図6は、キャリッジ部20の下部にメンテナンス部30が移動したときの状態を示している。
【0079】
なお、図示は省略するが、インクジェットプリンタ100は、メンテナンス作業を行う作業者の足場(キャットウォーク)を備えていてもよい。足場は、例えば、搬送ベルト11の幅よりも長い幅を有する水平台であり、搬送ベルト11を跨ぐように、一対の固定フレーム101の間に固定される。また、足場は、例えば、メディアMの搬送方向において、キャリッジ部20の上流側及び/又は下流側に配置する。図1を参照して、具体的な配置例を説明すると、キャリッジ部20の上流側においては、固定ガイドローラー17の上方に足場を配置し、キャリッジ部20の下流側においては、メンテナンス部30の上方に足場を配置する。このように、足場は、搬送部10及びキャリッジ部20と干渉しないように配置される。
【0080】
キャリッジ部20は、固定フレーム101に固定されているため動かせないが、上述した足場に作業者が乗ることができるため、キャリッジ部20の上面又は側面から、キャリッジ部20内部のヘッド21の調整、交換などの作業を行うことができる。これにより、搬送部10などに影響を与えることなく、キャリッジ部20のメンテナンスを行うことができる。
【0081】
以上説明したように、本実施の形態において、インクジェットプリンタ100は、搬送ベルト11と搬送部フレーム40と昇降部50とを有する昇降装置60を備える。搬送ベルト11は、駆動ローラー12及び従動ローラー13に張架され、メディアMを搬送する。搬送部フレーム40は、駆動ローラー12及び従動ローラー13を一体的に保持する。昇降部50は、メディアMに画像を形成するヘッド21に対して搬送ベルト11が上下方向に移動するように、搬送部フレーム40を昇降する。
【0082】
このように構成した実施の形態によれば、昇降装置60は、搬送部10を昇降しても、駆動ローラー12と従動ローラー13との位置関係を保つことができる。そのため、駆動ローラー12と従動ローラー13との平行性は変化することはなく、搬送ベルト11のテンションが変化したり、搬送ベルト11の幅方向のテンションが偏ったりすることが防止される。この結果、メディアMの搬送中において、搬送ベルト11が幅方向の一方に寄ってしまって、駆動ローラー12や従動ローラー13から外れたり、搬送ベルト11が蛇行したりすることも防止される。
【0083】
<変形例>
図6は、図1図5に示したインクジェットプリンタ100の変形例を示す図である。図1図5に示したインクジェットプリンタ100の変形例として、図6に示す構成を用いることができる。
【0084】
具体的には、搬送部フレーム40の昇降に伴い、上記実施の形態では、メディアMの搬送方向におけるヘッド21の上流側において、メディアMの搬送経路長が変化する。メディアMの搬送経路長が変化すると、搬送経路長が変化するときにメディアMを引っ張ったり、押し戻したりすることになり、メディアMに張力がかかったり、メディアMがたるんだりする。これにより、メディアMの搬送に支障がでる可能性がある。
【0085】
そこで、本変形例では、メディアMの搬送方向におけるヘッド21の上流側において、帯状のメディアMの搬送経路長について、搬送部フレーム40の昇降に伴う変化を抑制する抑制部70を備えるようにしている。
【0086】
抑制部70は、固定ガイドローラー17とガイドローラー16との間に配置されている。抑制部70は、固定ガイドローラー71、エアサスペンション72及びダンサーローラー73(本発明の「張力調整部」)を備えている。
【0087】
固定ガイドローラー71は、一対の固定フレーム101の間に固定されており、ダンサーローラー73より上方となる位置に配置されている。エアサスペンション72は、下端側が固定フレーム101に固定され、上端側がダンサーローラー73に取り付けられ、ダンサーローラー73(メディアM)に付与する張力を調整している。ダンサーローラー73は、エアサスペンション72の上端側に上下動可能に取り付けられている。また、ダンサーローラー73は、固定ガイドローラー17及び固定ガイドローラー71より下方において、上下動可能に配置されている。
【0088】
従って、固定ガイドローラー17及び固定ガイドローラー71の上面側を通過するメディアMは、固定ガイドローラー17と固定ガイドローラー71との間のダンサーローラー73の張力により下方に引っ張られている。
【0089】
そして、搬送部フレーム40の下降に伴い、メディアMが搬送方向下流側に引っ張られると、メディアMが引っ張られる力に応じて、エアサスペンション72の先端部が上方に移動する。これにより、メディアMの搬送方向におけるヘッド21の上流側において、搬送経路長が変化しないようにしている。
【0090】
また、搬送部フレーム40の上昇に伴い、メディアMが搬送方向上流側に押し戻されると、メディアMがたるまないように、エアサスペンション72の先端部が下方に移動する。これにより、メディアMの搬送方向におけるヘッド21の上流側において、搬送経路長が変化しないようにしている。
【0091】
このように、本変形例においては、抑制部70がメディアMに付与する張力を調整するので、搬送部フレーム40が昇降しても、メディアMの搬送方向におけるヘッド21の上流側において、搬送経路長を変化しないようにすることができる。
【0092】
上記実施の形態では、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその要旨、又は、その主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0093】
10 搬送部
11 搬送ベルト
12 駆動ローラー
13 従動ローラー
14 押圧ローラー
15 ガイドバー
16 ガイドローラー
17 固定ガイドローラー
18 高さ検出部
20 キャリッジ部
21 インクジェットヘッド
22 距離検出部
30 メンテナンス部
40 搬送部フレーム
50 昇降部
51 昇降モーター
52 ボールネジ
53 リテーナー
54 リニアガイド
55 下限ストッパ
56 上限ストッパ
60 昇降装置
70 抑制部
71 固定ガイドローラー
72 エアサスペンション
73 ダンサーローラー
90 制御部
100 インクジェットプリンタ
101 固定フレーム
102 ガイドレール
図1
図2
図3
図4
図5
図6