IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

特許7517205モータ制御装置、および、それを備えた電動パワーステアリング装置
<>
  • 特許-モータ制御装置、および、それを備えた電動パワーステアリング装置 図1
  • 特許-モータ制御装置、および、それを備えた電動パワーステアリング装置 図2
  • 特許-モータ制御装置、および、それを備えた電動パワーステアリング装置 図3
  • 特許-モータ制御装置、および、それを備えた電動パワーステアリング装置 図4
  • 特許-モータ制御装置、および、それを備えた電動パワーステアリング装置 図5
  • 特許-モータ制御装置、および、それを備えた電動パワーステアリング装置 図6
  • 特許-モータ制御装置、および、それを備えた電動パワーステアリング装置 図7
  • 特許-モータ制御装置、および、それを備えた電動パワーステアリング装置 図8
  • 特許-モータ制御装置、および、それを備えた電動パワーステアリング装置 図9
  • 特許-モータ制御装置、および、それを備えた電動パワーステアリング装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】モータ制御装置、および、それを備えた電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 21/05 20060101AFI20240709BHJP
   H02P 21/22 20160101ALI20240709BHJP
【FI】
H02P21/05
H02P21/22
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021035543
(22)【出願日】2021-03-05
(65)【公開番号】P2022135613
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大場 康平
(72)【発明者】
【氏名】松木 洋介
(72)【発明者】
【氏名】加納 遼
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-17218(JP,A)
【文献】国際公開第2010/116769(WO,A1)
【文献】特開2003-304697(JP,A)
【文献】特開2011-125134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/05
H02P 21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源(60)の電力をインバータ(70)で3相交流電力に変換しブラシレス式のモータ(80)に供給するモータ駆動システムに適用され、前記インバータに出力する正弦波状の電圧指令をベクトル制御により演算するモータ制御装置であって、
入力されたトルク指令をd軸電流指令値およびq軸電流指令値に変換するトルク指令/電流指令変換器(21)と、
弱め界磁制御におけるd軸電流指令補正値を前記直流電源の電圧および前記電圧指令の電圧振幅に応じて決定する弱め界磁制御器(40)と、
前記d軸電流指令値と前記d軸電流指令補正値とを用いて演算したd軸電流指令最終値を出力するd軸電流最終値演算器(22)と、
前記d軸電流指令最終値およびq軸電流指令値のフィードバック制御を行う電流制御器(27、28)と、
を備え、
前記弱め界磁制御器は、前記直流電源の電圧に基づいて決定された電圧振幅指令を制限する電圧振幅指令制限器(42)を有し、
前記電圧振幅指令制限器は、前記電圧指令の正弦波中心電圧を負から正にクロスするときの時間変化率と相関するモータ状態量として、前記電圧指令の電圧振幅と前記モータの回転数との積を算出し、前記モータ状態量が所定の制限開始値以上のとき、前記電圧振幅指令を電圧振幅指令制限値に制限するモータ制御装置。
【請求項2】
前記電圧振幅指令制限器は、前記モータ状態量が前記制限開始値以上のとき、前記電圧振幅指令制限値を一定値に設定する請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記電圧振幅指令制限器は、前記モータ状態量が前記制限開始値以上のとき、前記モータ状態量が大きいほど前記電圧振幅指令制限値を小さく設定する請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記電圧振幅指令制限器は、前記制限開始値を可変に設定する請求項1~3のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記電圧振幅指令制限器は、前記モータ状態量に加え、温度検出器(87)が検出した前記モータの温度に応じて前記電圧振幅指令制限値を決定する請求項1~のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
前記モータは突極性を有するモータであり、
前記d軸電流指令最終値に応じてq軸電流指令値を補正するq軸電流指令補正器(23)をさらに有する請求項1~のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項7】
前記モータは複数の巻線組(801、802)を有する多重巻線モータであり、複数の前記巻線組に対応して複数の前記インバータ(701、702)が設けられたモータ駆動システムに適用され、
複数の前記インバータに対応する複数の前記電流制御器および複数の前記弱め界磁制御器を備え、複数の前記弱め界磁制御器は、それぞれ前記電圧振幅指令制限器を有する請求項1~のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項8】
複数の前記電圧振幅指令制限器における前記電圧振幅指令制限値は、同じ値に設定されている請求項に記載のモータ制御装置。
【請求項9】
操舵アシストトルクを出力する前記モータと、
前記モータの駆動を制御する請求項1~のいずれか一項に記載のモータ制御装置と、
を備える電動パワーステアリング装置。
【請求項10】
操舵アシストトルクを出力するモータと、前記モータの駆動を制御するモータ制御装置と、を備える電動パワーステアリング装置であって、
前記モータ制御装置は、
直流電源(60)の電力をインバータ(70)で3相交流電力に変換しブラシレス式のモータ(80)に供給するモータ駆動システムに適用され、前記インバータに出力する正弦波状の電圧指令をベクトル制御により演算するものであり、
入力されたトルク指令をd軸電流指令値およびq軸電流指令値に変換するトルク指令/電流指令変換器(21)と、
弱め界磁制御におけるd軸電流指令補正値を前記直流電源の電圧および前記電圧指令の電圧振幅に応じて決定する弱め界磁制御器(40)と、
前記d軸電流指令値と前記d軸電流指令補正値とを用いて演算したd軸電流指令最終値を出力するd軸電流最終値演算器(22)と、
前記d軸電流指令最終値およびq軸電流指令値のフィードバック制御を行う電流制御器(27、28)と、
を備え、
前記弱め界磁制御器は、前記直流電源の電圧に基づいて決定された電圧振幅指令を制限する電圧振幅指令制限器(42)を有し、
前記電圧振幅指令制限器は、前記電圧指令の正弦波中心電圧を負から正にクロスするときの時間変化率と相関するモータ状態量が所定の制限開始値以上のとき、前記電圧振幅指令を電圧振幅指令制限値に制限する電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置、および、それを備えた電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、3相ブラシレスモータをベクトル制御するモータ制御装置において、高回転時に発生する逆起電力によってモータ巻線に電流が流れにくくなることを防ぐため、負のd軸電流を流すことで弱め界磁制御を行う技術が知られている。
【0003】
電動パワーステアリング装置において操舵アシストモータの駆動を制御する制御装置では、急なハンドル操作に伴ってモータの回転数を上げるために弱め界磁制御のd軸電流が急峻に流れると、ドライバが不快と感じる音や振動が発生する場合がある。例えば特許文献1には、弱め界磁制御時にd軸電流指令値の変化率を制限することで、音や振動の発生を抑えるモータ駆動制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-116849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
3相ブラシレスモータに正弦波電圧を印加してトルク制御を行うにあたり、演算装置からインバータへの正弦波電圧は連続した値ではなく、演算周期の更新周期に応じてサンプルホールドされた値が離散的に出力される。このことを原因として演算装置の更新周期に同期した信号が正弦波電圧に重畳され、正弦波電圧の時間変化率に影響する。その結果、電流脈動が発生し、音の発生原因となる。この信号の大きさは、モータ回転数および正弦波電圧の振幅に比例して増大し、ドライバが不快と感じる音が発生する。
【0006】
特許文献1の技術はd軸電流指令値の急変に着目しているのみであり、演算周期の更新周期に同期した信号が正弦波電圧に重畳することによる音への影響には着目していない。そのため、弱め界磁制御時における音に対する対策が不十分である。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、3相ブラシレスモータのベクトル制御により弱め界磁制御を行うモータ制御装置において、正弦波電圧に信号が重畳することによる音の発生を抑制するモータ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のモータ制御装置は、直流電源(60)の電力をインバータ(70)で3相交流電力に変換しブラシレス式のモータ(80)に供給するモータ駆動システムに適用され、インバータに出力する正弦波状の電圧指令をベクトル制御により演算する。このモータ制御装置は、トルク指令/電流指令変換器(21)と、弱め界磁制御器(40)と、d軸電流最終値演算器(22)と、電流制御器(27、28)と、を備える。
【0009】
トルク指令/電流指令変換器は、入力されたトルク指令をd軸電流指令値およびq軸電流指令値に変換する。弱め界磁制御器は、弱め界磁制御におけるd軸電流指令補正値を直流電源の電圧および電圧指令の電圧振幅に応じて決定する。d軸電流最終値演算器は、d軸電流指令値とd軸電流指令補正値とを用いて演算したd軸電流指令最終値を出力する。電流制御器は、d軸電流指令最終値およびq軸電流指令値のフィードバック制御を行う。
【0010】
弱め界磁制御器は、直流電源の電圧に基づいて決定された電圧振幅指令を制限する電圧振幅指令制限器(42)を有する。電圧振幅指令制限器は、電圧指令の正弦波中心電圧を負から正にクロスするときの時間変化率と相関するモータ状態量として、電圧指令の電圧振幅とモータの回転数との積を算出し、モータ状態量が所定の制限開始値以上のとき、電圧振幅指令を電圧振幅指令制限値に制限する。
【0011】
これにより本発明では、3相ブラシレスモータのベクトル制御により弱め界磁制御を行うモータ制御装置において、正弦波電圧に信号が重畳することによる音の発生を適切に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】各実施形態のモータ制御装置が適用される電動パワーステアリング装置の構成図。
図2】二重巻線モータの構成を示す模式図。
図3】二系統モータ駆動システムの構成図。
図4】第1実施形態のモータ制御装置の制御ブロック図。
図5】モータ状態量である正弦波電圧の時間変化率を説明する図。
図6】(a)(電圧振幅×モータ回転数)-電圧振幅指令制限値マップの例、(b)同マップの別の例、(c)同マップの別の例。
図7】車速-制限開始値マップの例。
図8】第2実施形態のモータ制御装置の制御ブロック図。
図9】モータ温度-電圧振幅指令制限値マップの例。
図10】第3実施形態のモータ制御装置の制御ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態によるモータ制御装置を図面に基づいて説明する。本実施形態のモータ制御装置は、車両の電動パワーステアリング装置において操舵アシストモータを駆動するモータ駆動システムに適用される。このモータ駆動システムでは直流電源の電力がインバータで3相交流電力に変換され、ブラシレス式モータに供給される。モータ制御装置は、インバータに出力する正弦波状の電圧指令をベクトル制御により演算する。複数の実施形態で実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。また、以下の第1~第3実施形態を包括して「本実施形態」という。
【0014】
[電動パワーステアリング装置]
図1に、電動パワーステアリング装置90を含むステアリングシステム99の全体構成を示す。なお、図1の電動パワーステアリング装置90はコラムアシスト式であるが、本実施形態のモータ制御装置15は、ラックアシスト式の電動パワーステアリング装置にも同様に適用可能である。なお、図1では、第1実施形態のモータ制御装置の符号「15」を用いる。ECU10はモータ制御装置15およびインバータ70を含む。例えばECU10はモータ80と一体に構成されている。
【0015】
ステアリングシステム99は、ハンドル91、ステアリングシャフト92、ピニオンギア96、ラック軸97、車輪98および電動パワーステアリング装置90等を含む。ステアリングシャフト92の先端に設けられたピニオンギア96は、ラック軸97に噛み合っている。ラック軸97の両端には一対の車輪98が設けられている。ドライバがハンドル91を回転させると、ハンドル91に接続されたステアリングシャフト92が回転する。ステアリングシャフト92の回転運動は、ピニオンギア96によりラック軸97の直線運動に変換され、ラック軸97の変位量に応じた角度に一対の車輪98が操舵される。
【0016】
電動パワーステアリング装置90は、操舵トルクセンサ94、モータ制御装置15、インバータ70、モータ80および減速ギア89等を含む。操舵トルクセンサ94はドライバの操舵トルクを検出する。モータ制御装置15は、操舵トルク等の情報から演算された要求トルクに応じて電圧指令を演算し、インバータ70に出力する。インバータ70は、電圧指令に基づいて直流電源60の電力を3相交流電力に変換しモータ80に供給する。モータ80が出力した操舵アシストトルクは、減速ギア89を介してステアリングシャフト92に伝達される。
【0017】
モータ80は3相ブラシレスモータである。特に第3実施形態では、IPMモータに代表される、突極性を有するモータが制御対象となる。第1実施形態および第2実施形態では、突極性の有無に関係なく、IPMモータまたは通常のSPMモータのいずれが用いられてもよい。
【0018】
[二系統モータ駆動システム]
次に図2図3を参照し、二系統モータ駆動システムの構成例について説明する。このモータ駆動システムにおけるモータ80は、図3に示すように、二組の3相巻線組801、802を有する二重巻線モータである。3相巻線組801、802は電気的特性が同等であり、共通のステータに互いに例えば電気角30[deg]ずらして配置されている。これに応じて、振幅が等しく位相が30[deg]ずれた相電流が巻線組801、802に通電される。
【0019】
二組の巻線組801、802に対応して設けられた二つのインバータ701、702は、各巻線組801、802に3相交流電力を供給する。第1インバータ701は、第1巻線組801のU1、V1、W1端子に接続されている。第2インバータ702は、第2巻線組802のU2、V2、W2端子に接続されている。
【0020】
図3に二系統モータ駆動システム100の構成を示す。第1インバータ701に対応する一群の構成要素の単位を第1系統といい、第2インバータ702に対応する一群の構成要素の単位を第2系統という。第1系統の構成要素の符号または信号の末尾に「1」を付し、第2系統の構成要素の符号または信号の末尾に「2」を付して記す。二系統は冗長的に設けられており、一方の系統が故障した場合、他方の正常な系統でモータ80の駆動を継続することができる。
【0021】
各系統のインバータ701、702は、実線で示すように、二つの直流電源601、602に個別に接続されてもよいし、破線で示すように、一つの直流電源(例えば601)に並列に接続されてもよい。二系統のインバータ701、702が個別の直流電源601、602に接続されるシステム構成は「完全二系統」と呼ばれている。二系統のインバータ701、702が共通の直流電源に並列に接続されるシステム構成は「駆動二系統」と呼ばれている。完全二系統システムでは、一方の直流電源が失陥した場合にも駆動を継続可能である。以下、図3について、完全二系統システム構成を前提として説明する。
【0022】
各系統の構成は同様であるため、代表として第1系統の構成について説明する。第2系統の構成については、第1系統の構成の説明における末尾の「1」を「2」に読み替えて同様に解釈する。インバータ701の入力側には、直流電源601の電圧Vdc1を検出する電圧検出器651、および、入力電圧を平滑化する平滑コンデンサ661が設けられている。以下、直流電源の電圧を「電源電圧」と記す。
【0023】
インバータ701からモータ80への3相電流経路には、相電流Iu1、Iv1、Iw1を検出する電流検出器751が設けられている。また図3の構成例では、モータ80の電気角を検出する回転角検出器851、852が系統毎に設けられており、それぞれ電気角θ1、θ2を検出する。一つの回転角検出器が供用される構成では、例えば電気角θ1に基づき、電気角θ2が「θ2=θ1+30[deg]」として算出されてもよい。
【0024】
図3においてモータ制御装置の符号は、第1実施形態のモータ制御装置の符号「15」を用いる。モータ制御装置15は、マイコンやプリドライバ等で構成され、図示しないCPU、ROM、I/O、および、これらの構成を接続するバスライン等を備えている。モータ制御装置15は、予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理や、専用の電子回路によるハードウェア処理による制御を実行する。
【0025】
モータ制御装置15は、第1系統制御部151及び第2系統制御部152を含む。各系統の制御部151、152の構成は、図4に示す一系統のモータ制御装置15の構成に相当する。第1系統制御部151は、要求トルクのうち第1系統が分担するトルク指令trq1*を取得する。また第1系統制御部151は、電圧検出器651、電流検出器751および回転角検出器851から、電源電圧Vdc1、相電流Iu1、Iv1、Iw1、回転角θ1を取得する。
【0026】
第1系統制御部151は、これらの情報に基づいて、インバータ701に出力する電圧指令をベクトル制御により演算する。インバータ701は、U相、V相、W相の各相上下アームのスイッチング素子がブリッジ接続されて構成されている。インバータ701は、電圧指令に基づいて各スイッチング素子が動作することで、直流電源601の電力を3相交流電力に変換して、モータ80の第1巻線組801に供給する。
【0027】
図4を参照して後述する構成要素に関し、二系統のモータ駆動システムにおいてモータ制御装置15は、二つのインバータ701、702に対応する二組の電流制御器および二つの弱め界磁制御器を備える。二つの弱め界磁制御器は、それぞれ電圧振幅指令制限器を有する。ここで、第1系統制御部151および第2系統制御部152の電圧振幅指令制限値Vamp*_limは、同じ値に設定されている。これにより音の抑制に関する系統間のバランスが確保される。その他、第1系統制御部151および第2系統制御部152は、基本的に系統毎の情報に基づき、独立して電圧指令を演算する。ただし必要に応じて、系統間で互いに情報を通信して協調制御を行ってもよい。
【0028】
[モータ制御装置]
3相ブラシレスモータのベクトル制御により弱め界磁制御を行う各実施形態のモータ制御装置の詳細な構成について、順に説明する。最初に弱め界磁制御の技術的意義について説明する。モータ回転数が高回転の条件においては、ロータ磁石磁束と回転数とに比例して発生する逆起電力がインバータ出力電力より大きくなり、モータ巻線に電流を発生させることが困難となる。この現象に対する対策として、磁石磁束を弱めるように負のd軸電流を発生させることで、高回転条件においても電流の発生が可能となる。
【0029】
ところで、3相ブラシレスモータに正弦波電圧を印加してトルク制御を行うにあたり、演算装置からインバータへの正弦波電圧は連続した値ではなく、演算周期の更新周期に応じてサンプルホールドされた値が離散的に出力される。このことを原因として演算装置の更新周期に同期した信号が正弦波電圧に重畳され、正弦波電圧の時間変化率に影響する。その結果、電流脈動が発生し、音の発生原因となる。この信号の大きさは、モータ回転数および正弦波電圧の振幅に比例して増大し、ドライバが不快と感じる音が発生する。
【0030】
そこで本実施形態のモータ制御装置では、弱め界磁制御において、演算周期の更新周期に同期した信号が正弦波電圧に重畳することに起因する音を抑制することを目的とする。モータ制御装置において電圧指令を演算する機能部が上記の「演算装置」に相当する。なお、波の現象である音と振動とは一緒に論じられることが多いため、上記の課題における「音」を「音や振動」と言い換えてもよい。ただし、ドライバが不快と感じる現象は主にモスキート音のような音であり、本明細書では音の抑制を主な目的として記載する。
【0031】
第1、第2、第3実施形態のモータ制御装置15、16、17について、図4図8図10では、簡単のため一系統のモータ駆動システムに適用される構成として図示する。モータ駆動システムの直流電源、電圧検出器、インバータ、電流検出器、回転角検出器の符号は、図3における符号末尾の「1」、「2」を削除し、60、65、70、75、85と記す。トルク指令trq*、電源電圧Vdc、3相電流Iu、Iv、Iw、電気角θの記号についても同様とする。二系統のモータ駆動システムに適用される場合、一系統の構成が二組設けられるものとして解釈すればよい。
【0032】
また、図4図8図10に示すように、回転角検出器85が検出した電気角θを時間微分する微分器86が設けられている。微分器86は、モータ制御装置15、16、17の内部に設けられてもよい。微分器86は、電気角速度に変換係数を乗じて、モータ80の回転数ωを出力する。以下、「モータ80の回転数ω」を単に「回転数ω」と記す。
【0033】
一般に、ωは回転角速度[rad/s]を表す記号として用いられるが、本明細書では便宜上「回転数ω」と記し、回転数を回転角速度と同じ意味で用いる。また、具体的な回転数の数値には言及しない。例えば[rpm]の単位で回転数を表す場合、適当な変換係数を乗じて算出すればよい。
【0034】
(第1実施形態)
図4を参照し、第1実施形態のモータ制御装置15の構成について説明する。モータ制御装置15は、ベクトル制御、電流フィードバック制御および弱め界磁制御の構成を備える。まず周知の構成として、モータ制御装置15は、トルク指令/電流指令変換器21、d軸電流最終値演算器22、3相/2相変換部24、d軸電流偏差算出器25、q軸電流偏差算出器26、d軸電流制御器27、q軸電流制御器28、2相/3相変換部29を備える。
【0035】
トルク指令/電流指令変換器21は、上位制御回路から入力されたトルク指令trq*をd軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*に変換する。記号「/」は、「/」の前の入力が「/」の後の出力に変換されることを意味する。3相/2相変換部24および2相/3相変換部29についても同様である。
【0036】
d軸電流最終値演算器22は、d軸電流指令値Id*と、弱め界磁制御器40のd軸電流補正値演算器44が演算したd軸電流指令補正値Id_fw*とを用いて演算したd軸電流指令最終値Id**を出力する。図4に示す構成例では、d軸電流最終値演算器22は、d軸電流指令値Id*と軸電流指令補正値Id_fw*とを加算する。
【0037】
3相/2相変換部24は、電気角θを用い、電流検出器75から取得した3相電流Iu、Iv、Iwをdq軸電流Id、Iqに変換する。d軸電流偏差算出器25は、d軸電流指令最終値Id**と、フィードバックされたd軸電流Idとの偏差ΔIdを算出する。q軸電流偏差算出器26は、q軸電流指令値Iq*と、フィードバックされたq軸電流Iqとの偏差ΔIqを算出する。
【0038】
電流制御器27、28は、d軸電流指令最終値Id**およびq軸電流指令値Iq*のフィードバック制御を行う。詳しくは、d軸電流制御器27は、d軸電流偏差ΔIdを0に近づけるようにPI演算等によりd軸電圧指令値Vd*を演算する。q軸電流制御器28は、q軸電流偏差ΔIqを0に近づけるようにPI演算等によりq軸電圧指令値Vq*を演算する。
【0039】
2相/3相変換部29は、電気角θを用い、dq軸電圧指令値Vd*、Vq*を3相の電圧指令に変換してインバータ70に出力する。固定座標系の3相電圧指令は正弦波電圧となる。なお、電圧指令に基づくデューティ比の演算やPWMによるパルス信号の生成についてはインバータ70の中に含めるものとし、詳細な説明を省略する。
【0040】
さらにモータ制御装置15は、本実施形態に特有の構成として、弱め界磁制御器40および電圧振幅出力演算器46を備える。弱め界磁制御器40は、弱め界磁制御におけるd軸電流指令補正値Id_fw*を、電源電圧Vdcおよび電圧指令の電圧振幅Vampに応じて決定する。電圧振幅出力演算器46は、d軸電圧指令値Vd*およびq軸電圧指令値Vq*に基づき、式(1)により電圧指令の電圧振幅Vampを算出する。
Vamp=√(Vd*2+Vq*2) ・・・(1)
【0041】
弱め界磁制御器40は、電圧振幅指令決定器41、電圧振幅指令制限器42、電圧振幅偏差算出器43およびd軸電流補正値演算器44を有する。電圧振幅指令決定器41は、電源電圧Vdcに基づいてVamp*を決定する。電圧振幅指令制限器42は、電圧振幅指令決定器41が決定した電圧振幅指令Vamp*を「モータ状態量」に応じて制限し、制限後電圧振幅指令Vamp**を出力する。
【0042】
本実施形態では、「モータ状態量」として電圧振幅Vampと回転数ωとの積が用いられる。電圧振幅指令制限器42は、電圧振幅Vampおよび回転数ωを取得し、それらに基づいて算出されたモータ状態量に応じて電圧振幅指令Vamp*を制限する。「モータ状態量」は正弦波電圧の形状を相対的に比較するための指標であり、「電圧指令の正弦波中心電圧を負から正にクロスするときの時間変化率と相関する量」と定義される。モータ状態量として電圧振幅Vampと回転数ωとの積が用いられることの意義は後述する。
【0043】
電圧振幅指令制限器42は、入力された電圧振幅指令Vamp*を電圧振幅指令制限値Vamp*_limと比較し、小さい方の値を制限後電圧振幅指令Vamp**として出力する。「Vamp*<Vamp*_lim」のとき、電圧振幅指令制限器42は、式(2.1)により、入力された電圧振幅指令Vamp*をそのまま出力する。
Vamp**=Vamp* ・・・(2.1)
【0044】
一方、「Vamp*≧Vamp*_lim」のとき、電圧振幅指令制限器42は、式(2.2)により、電圧振幅指令制限値Vamp*_limを出力する。
Vamp**=Vamp*_lim ・・・(2.2)
【0045】
電圧振幅偏差算出器43は、制限後電圧振幅指令Vamp**と、電圧振幅出力演算器46からフィードバックされた電圧指令Vampとの偏差ΔVampを算出する。d軸電流補正値演算器44は、電圧指令偏差ΔVampを0に近づけるようにPI演算等によりd軸電流指令補正値Id_fw*を演算する。
【0046】
図5を参照し、モータ状態量について説明する。図5の上から順に、振幅及び周波数の異なる4パターンの正弦波電圧<1>~<4>を示す。電圧が正弦波中心電圧(すなわち0[V])を負から正にクロスするタイミングをt=0とすると、各正弦波電圧は、時間tの関数V(t)として、電圧振幅Vampおよび周波数fを含む式(3)で表される。式中の角度単位は[rad]とする。
V(t)=Vamp×sin(2πf)t ・・・(3)
【0047】
4パターンの基準となる電圧<1>の電圧振幅VampをAとし、周波数fの2π倍をNとする。つまり、Vamp=A、2πf=Nであり、電圧<1>は式(4.1)で表される。
1(t)=AsinNt ・・・(4.1)
【0048】
電圧<2>は、電圧<1>に対し電圧振幅Vampを2倍にし、周波数fを(1/2)にしたものである。つまり、Vamp=2A、2πf=(N/2)、である。電圧<2>は式(4.2)で表される。
2(t)=2Asin(N/2)t ・・・(4.2)
【0049】
電圧<3>は、電圧<1>に対し電圧振幅Vampを等倍に、周波数fを2倍にしたものである。つまり、Vamp=A、2πf=2N、である。電圧<3>は式(4.3)で表される。
3(t)=Asin2Nt ・・・(4.3)
【0050】
電圧<4>は、電圧<1>に対し電圧振幅Vampを2倍に、周波数fを等倍にしたものである。つまり、Vamp=2A、2πf=N、である。電圧<4>は式(4.4)で表される。
4(t)=2AsinNt ・・・(4.4)
【0051】
モータ状態量は、「電圧指令の正弦波中心電圧を負から正にクロスするときの時間変化率と相関する量」と定義される。負から正にクロスするときの時間変化率であるため、正の値となる。一般に式(1)で表される電圧関数のt=0での時間変化率は、式(3)を微分してt=0を代入することにより、式(5)で表される。図5においてt=0での正弦波の傾きがこの値に相当する。
(d/dt)V(0)=Vamp×2πf×cos(2πf)t
=Vamp×2πf ・・・(5)
【0052】
したがって、各電圧<1>~<4>のt=0での時間変化率は、式(6.1)~(6.4)で表される。正弦波の形状が同じであれば、電圧振幅の大きさに関係なくt=0での時間変化率は同じ値となる。
電圧<1>:(d/dt)V1(0)=AN ・・・(6.1)
電圧<2>:(d/dt)V2(0)=AN ・・・(6.2)
電圧<3>:(d/dt)V3(0)=2AN ・・・(6.3)
電圧<4>:(d/dt)V4(0)=2AN ・・・(6.4)
【0053】
モータ状態量Gは、t=0での時間変化率に相関する量として、例えばt=0での時間変化率に変換係数を乗じて算出される。回転数ωと周波数fとの関係を「ω=2πf」で表すと、モータ状態量Gは、式(5)を変形した式(7)で定義される。なお、モータ状態量の記号「G」は、gradientに由来する。
G=Vamp×2πf=Vamp×ω ・・・(7)
【0054】
仮に制限開始値G0が「AN<G0≦2AN」の範囲に設定された場合、電圧<1>、<2>では電圧振幅指令Vamp*が制限されず、電圧<3>、<4>では電圧振幅指令Vamp*が制限される。例えば電圧<2>および電圧<4>はいずれも電圧振幅が2Aであるが、相対的に回転数の低い電圧<2>の電圧振幅指令Vamp*は制限されず、相対的に回転数の高い電圧<4>の電圧振幅指令Vamp*は制限される。
【0055】
このように本実施形態の弱め界磁制御器40は、モータ状態量Gが制限開始値G0以上のときに電圧振幅指令Vamp*を制限することで、電圧指令の周波数が高い領域ほど電圧振幅が制限される。よって、弱め界磁制御を行うモータ制御装置において、正弦波電圧に重畳する信号に起因する音の発生を抑制することができる。特に電動パワーステアリング装置90ではドライバが不快と感じる音が抑制され、運転中の快適性が向上する。
【0056】
また、モータ状態量は、図5に示すような正弦波電圧のt=0での時間変化率を直接検出して求めてもよい。しかし、他の用途にも使用される電圧振幅Vampおよび回転数ωの情報を用いることで、専用の微分器等の構成を必要とせず、簡易な構成でモータ状態量を算出することができる。
【0057】
続いて図6(a)、(b)、(c)を参照し、モータ状態量Gと電圧振幅指令制限値Vamp*_limとのマップの例を示す。マップの横軸は、電圧振幅Vampと回転数ωとの積であるモータ状態量Gである。各マップに共通して電圧振幅指令制限器42は、モータ状態量Gが制限開始値G0以上のとき、電圧振幅指令制限値Vamp*_limを設定する。
【0058】
モータ状態量G=0、すなわちVamp=0またはω=0のときモータ80は停止しており、制限の必要が無い。したがって、制限開始値G0は、最小の場合、0よりわずかに大きな値に設定され得る。その場合、電圧振幅指令制限器42は、実質的にモータ80の全動作状態において電圧振幅指令Vamp*を制限する。図6(a)に示す例では、電圧振幅指令制限器42は、モータ状態量Gが制限開始値G0以上のとき、電圧振幅指令制限値Vamp*_limを一定値に設定する。これにより制御を簡素化し、演算負荷を低減することができる。
【0059】
図6(b)、(c)に示す例では、電圧振幅指令制限器42は、モータ状態量Gが制限開始値G0以上のとき、モータ状態量Gが大きいほど電圧振幅指令制限値Vamp*_limを小さく設定する。特に図6(b)に示す例では、モータ状態量Gが大きくなるにつれて電圧振幅指令制限値Vamp*_limが直線的に小さくなる。図6(c)に示す例では、モータ状態量Gが大きくなるにつれて電圧振幅指令制限値Vamp*_limが段階的に小さくなる。これにより、モータ状態量Gに応じて、音の抑制程度を細かく調整することができる。
【0060】
また、電圧振幅指令制限器42は、車速やモータ80の角加速度等の情報に応じて制限開始値G0を可変に設定してもよい。例えば低速走行時には急操舵や大トルクの操舵によってモータ状態量Gが大きくなる傾向があるのに対し、高速走行時のモータ状態量Gは比較的小さい。そのため図7に示すように、電圧振幅指令制限器42は、車速が大きいときほど制限開始値G0を小さく設定してもよい。
【0061】
(第2実施形態)
次に図8図9を参照し、第2実施形態について説明する。図8に示すように、第2実施形態では、モータ駆動システムにモータ80の温度Tmを検出する温度検出器87が設けられている。温度検出器87は直接温度を検出するものに限らず、通電により発生するジュール熱を相電流検出値から算出し、ジュール熱による温度上昇を初期温度に加算してモータ温度Tmを推定するものを含む。このように電流等の検出値に基づいて推定されたモータ温度Tmも「温度検出器が検出したモータの温度」と解釈する。
【0062】
第2実施形態のモータ制御装置16において、電圧振幅指令制限器42はモータ温度Tmをさらに取得する。電圧振幅指令制限器42は、電圧振幅Vampと回転数ωとの積であるモータ状態量Gに加え、モータ温度Tmに応じて電圧振幅指令制限値Vamp*_limを決定する。
【0063】
図9に、モータ状態量Gを固定したときのモータ温度Tmと電圧振幅指令制限値Vamp*_limとのマップの例を示す。モータ温度Tmが臨界温度Tmc以下の領域では、電圧振幅指令制限値Vamp*_limは一定である。モータ温度Tmが臨界温度Tmcを超える領域では、モータ温度Tmが高くなるほど電圧振幅指令制限値Vamp*_limが小さく設定される。これによりモータ80の耐熱保護が図られる。さらに、磁気飽和等の温度特性が考慮されてもよい。
【0064】
(第3実施形態)
次に10を参照し、第3実施形態について説明する。第3実施形態の制御対象のモータ80は突極性を有するモータである。突極性を有するモータは主にIPMモータであるため、図10には「IPMモータ80」と記す。ただし例外的に、径外側の面が凸曲面状の永久磁石がロータ表面に設けられたインセット型SPMモータは、突極性を有するモータに含まれる。突極性を有するモータは、式(8)の第2項においてd軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqとが異なるため、モータトルクにリラクタンストルクが含まれる。式(8)中のpは極対数、φは逆起電力定数である。
trq=p×φ×Iq+p×(Ld-Lq)×Id×Iq ・・・(8)
【0065】
第3実施形態のモータ制御装置17は、第1実施形態のモータ制御装置15の構成に加え、トルク指令/電流指令変換器21とq軸電流偏差算出器26との間に、q軸電流指令補正器23をさらに有する。q軸電流指令補正器23は、d軸電流指令最終値演算器22が出力したd軸電流指令最終値Id**に応じてq軸電流指令値Iq*を補正し、補正後q軸電流指令値Iq**を出力する。
【0066】
q軸電流指令補正器23は、トルク指令/電流指令変換器21が算出したd軸電流指令値Id*が制限されたことによる式(8)のトルク変化を補償するようにq軸電流指令値Iq*を補正する。例えばq軸電流指令補正器23は、d軸電流指令最終値Id**と補正係数とのマップを有しており、d軸電流指令最終値Id**に応じた補正係数をq軸電流指令値Iq*に乗除することで、補正後q軸電流指令値Iq**を算出する。これにより、d軸電流指令値Id*の制限にかかわらず、要求トルクを適切に実現することができる。なお第3実施形態は、上述の第2実施形態と組み合わされてもよい。
【0067】
(その他の実施形態)
(a)本発明におけるモータ制御量として、電圧指令の電圧振幅とモータの回転数との積に限らず、それと比例する量や正の相関を有する量が用いられてもよい。正弦波電圧の形状が反映される値であれば、モータ制御量として用いることができる。
【0068】
(b)本発明による弱め界磁制御は、動作の干渉や矛盾が生じない限り、特許文献1等に開示された他の弱め界磁制御と組み合わせて用いられてもよい。
【0069】
(c)制御対象となるモータは、図2に示す二重巻線モータの他、三組以上の複数の巻線組を有する多重巻線モータであってもよい。モータ制御装置は、三組以上の巻線組に対応する三系統以上のインバータが設けられたモータ駆動システムに適用されてもよい。複数系統のモータ駆動システムにおいてモータ制御装置は、複数のインバータ70に対応する複数の電流制御器27、28および複数の弱め界磁制御器40を備える。複数の弱め界磁制御器40は、それぞれ電圧振幅指令制限器42を有する。また、電圧振幅指令制限値Vamp*_limは、同じ値に設定されることが好ましい。
【0070】
(d)本発明のモータ制御装置は、電動パワーステアリング装置の操舵アシストモータに限らず、車両に搭載される他の用途のモータや、車両以外のシステムのモータに適用されてもよい。
【0071】
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【0072】
本開示に記載のモータ制御装置及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載のモータ制御装置及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載のモータ制御装置及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0073】
15、16、17・・・モータ制御装置、
21・・・トルク指令/電流指令変換器、
22・・・d軸電流最終値演算器、
27・・・d軸電流制御器、
28・・・q軸電流制御器、
40・・・弱め界磁制御器、
42・・・電圧振幅指令制限器、
60(601、602)・・・直流電源、
70(701、702)・・・インバータ、
80・・・モータ、
90・・・電動パワーステアリング装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10