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特許7517212エアクリーナの交換時期設定装置及びエアクリーナの交換時期設定方法
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  • 特許-エアクリーナの交換時期設定装置及びエアクリーナの交換時期設定方法 図1
  • 特許-エアクリーナの交換時期設定装置及びエアクリーナの交換時期設定方法 図2
  • 特許-エアクリーナの交換時期設定装置及びエアクリーナの交換時期設定方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】エアクリーナの交換時期設定装置及びエアクリーナの交換時期設定方法
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/09 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
F02M35/09
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021043918
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022143424
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】力武 俊介
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-285011(JP,A)
【文献】特開2013-036382(JP,A)
【文献】特開2018-100653(JP,A)
【文献】特開2015-041304(JP,A)
【文献】実開昭59-083144(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0197794(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行路の路面情報を取得する路面情報取得部と、
前記走行路が舗装されていない悪路であるか否かを判定する悪路判定部と、
エアクリーナの交換時期を設定する交換時期設定部と、
を有し、
前記交換時期設定部は、前記悪路判定部によって悪路と判定された悪路走行距離が所定の距離以上であった場合に、エアクリーナの交換時期を第1走行距離の到達時期に設定し、前記悪路走行距離が所定の距離より短い場合には、前記交換時期を前記第1走行距離よりも長い第2走行距離の到達時期に設定するエアクリーナの交換時期設定装置。
【請求項2】
前記交換時期設定部は、前記第1走行距離に到達する前に所定の時間が経過することが予測された場合、前記時間が経過する時期をエアクリーナの交換時期に設定する請求項1に記載のエアクリーナの交換時期設定装置。
【請求項3】
前記交換時期設定部は、前記悪路走行距離に加えて、車両に搭載された排ガス再循環装置の使用率を考慮して前記交換時期を設定する請求項1又は2に記載のエアクリーナの交換時期設定装置。
【請求項4】
走行路の路面情報を取得し、
前記走行路が舗装されていない悪路であるか否かを判定し、
悪路と判定された悪路走行距離が所定の距離以上であった場合に、エアクリーナの交換時期を第1走行距離の到達時期に設定し、前記悪路走行距離が所定の距離より短い場合には、前記交換時期を前記第1走行距離よりも長い第2走行距離の到達時期に設定する、
エアクリーナの交換時期設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアクリーナの交換時期設定装置及びエアクリーナの交換時期設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、汚損係数Kと走行区間の距離との乗算値に基づいてエアクリーナの汚損度の増加分を算出し、走行区間ごとに算出された増加分の積算値をエアクリーナの汚損度として算出する汚損度推定装置が開示されている。また、特許文献1の汚損度推定装置では、渋滞が生じている場合、上下方向の加速度の振幅が大きい場合、及びアクセル開度データの振幅が大きい場合に汚損度の増加分が大きくなるように算出している。そして、汚損度が通知閾値よりも大きい場合にエアクリーナの交換を推奨する通知を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-100653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、交換時期になった時点でユーザに通知されるため、交換時期に近づいていることをユーザが知り得ない。また、車両の走行距離に基づいてエアクリーナの交換時期を設定すれば、エアクリーナの使用状態が考慮されていないため、エアクリーナの寿命に近づく前に交換されてしまう場合がある。
【0005】
本発明は、エアクリーナの使用状態を考慮しつつ、交換時期を事前にユーザが確認可能なエアクリーナの交換時期設定装置及びエアクリーナの交換時期設定方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係るエアクリーナの交換時期設定装置は、走行路の路面情報を取得する路面情報取得部と、前記走行路が舗装されていない悪路であるか否かを判定する悪路判定部と、エアクリーナの交換時期を設定する交換時期設定部と、を有し、前記交換時期設定部は、前記悪路判定部によって悪路と判定された悪路走行距離が所定の距離以上であった場合に、エアクリーナの交換時期を第1走行距離の到達時期に設定し、前記悪路走行距離が所定の距離より短い場合には、前記交換時期を前記第1走行距離よりも長い第2走行距離の到達時期に設定する。
【0007】
請求項1に係るエアクリーナの交換時期設定装置では、路面情報取得部は、車両の走行路の路面情報を取得する。また、悪路判定部は、路面情報取得部によって取得された情報に基づいて走行路が悪路であるか否かについて判定する。ここでいう悪路とは、舗装されていない道路などを指し、舗装された道路よりも大気中に砂埃などが舞いやすくエアクリーナが劣化しやすい道路を含む概念である。交換時期設定部は、エアクリーナの交換時期を設定する。ここで、交換時期設定部は、悪路走行距離が所定の距離以上であった場合に第1走行距離の到達時期をエアクリーナの交換時期に設定する。また、交換時期設定部は、悪路走行距離が所定の距離より短い場合には、第1走行距離よりも長い第2走行距離の到達時期をエアクリーナの交換時期に設定する。このように、車両の走行距離に基づいてエアクリーナの交換時期が設定されるため、ユーザがエアクリーナの交換時期までに走行可能な走行距離を把握することができる。
【0008】
また、悪路走行距離に応じて交換時期までの車両の走行距離を変化させることにより、より寿命に近い状態までエアクリーナを使用することができる。
【0009】
請求項2に係るエアクリーナの交換時期設定装置は、請求項1において、前記交換時期設定部は、前記第1走行距離に到達する前に所定の時間が経過することが予測された場合、前記時間が経過する時期をエアクリーナの交換時期に設定する。
【0010】
請求項2に係るエアクリーナの交換時期設定装置では、第1走行距離に到達する前であっても、所定の時間が経過する時期をエアクリーナの交換時期に設定することで、経時劣化したエアクリーナが使用され続けるのを抑制することができる。
【0011】
請求項3に係るエアクリーナの交換時期設定装置は、請求項1又は2において、前記交換時期設定部は、前記悪路走行距離に加えて、車両に搭載された排ガス再循環装置の使用率を考慮して前記交換時期を設定する。
【0012】
請求項3に係るエアクリーナの交換時期設定装置では、排ガス再循環装置(EGR:Exhaust Gas Recirculation)の使用率を考慮してエアクリーナの交換時期を設定することで、より細かくエアクリーナの劣化状態を推定することができる。すなわち、排ガス再循環装置の使用率が高い場合、エアクリーナに取り込まれる空気の量が相対的に少なくなる。この場合、排ガス再循環装置の使用率が低い場合と比較して交換時期までの走行距離を長く設定することで、エアクリーナを長く使用することができる。
【0013】
請求項4に係るエアクリーナの交換時期設定方法は、走行路の路面情報を取得し、前記走行路が舗装されていない悪路であるか否かを判定し、悪路と判定された悪路走行距離が所定の距離以上であった場合に、エアクリーナの交換時期を第1走行距離の到達時期に設定し、前記悪路走行距離が所定の距離より短い場合には、前記交換時期を前記第1走行距離よりも長い第2走行距離の到達時期に設定する。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明に係るエアクリーナの交換時期設定装置及びエアクリーナの交換時期設定方法では、エアクリーナの使用状態を考慮しつつ、交換時期を事前にユーザが確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係るエアクリーナの交換時期設定装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2】実施形態に係るエアクリーナの交換時期設定装置の機能構成を示すブロック図である。
図3】実施形態におけるエアクリーナの交換時期設定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施形態に係るエアクリーナの交換時期設定装置10(以下、適宜「交換時期設定装置10」と称する。)について、図面を参照して説明する。
【0017】
本実施形態の交換時期設定装置10は、車両に搭載されており、エアクリーナの交換時期を設定する装置である。また、エアクリーナの交換時期が近づいたタイミングでユーザへ交換時期を通知する。なお、ユーザが任意のタイミングでエアクリーナの交換時期を取得できるようにしてもよい。
【0018】
(交換時期設定装置10のハードウェア構成)
図1は、交換時期設定装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。この図1に示されるように、交換時期設定装置10は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)20、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)24、ストレージ26、通信I/F(通信インタフェース)28及び入出力I/F(入出力インタフェース)30を含んで構成されている。各構成は、バス32を介して相互に通信可能に接続されている。
【0019】
CPU20は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU20は、ROM22又はストレージ26からプログラムを読み出し、RAM24を作業領域としてプログラムを実行する。CPU20は、ROM22又はストレージ26に記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。
【0020】
ROM22は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM24は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ26は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。本実施形態では、ROM22又はストレージ26には、交換時期設定処理を行うためのプログラム及び各種データなどが格納されている。
【0021】
通信I/F28は、交換時期設定装置10が図示しないサーバなどの機器と通信するためのインタフェースであり、たとえば、CAN(Controller Area Network)、イーサネット(登録商標)、LTE(Long Term Evolution)、FDDI(Fiber Distributed Data Interface)、Wi-Fi(登録商標)などの規格が用いられる。また、通信I/F28は、運転者が所持する携帯端末Pと通信可能に構成されている。
【0022】
入出力I/F30には、前方カメラ42、加速度センサ44、エンジンECU46及びセンタディスプレイ48が電気的に接続されている。
【0023】
前方カメラ42は、車両の前部に設けられており、車両前方を撮像する。加速度センサ44は、車両の加速度を検出する。特に、本実施形態の加速度センサ44は、車両に入力された上下方向の加速度を検出する。
【0024】
エンジンECU46は、車両のエンジンを制御するための制御装置であり、エンジンの総回転数、エンジンの負荷使用率などの情報を保有している。また、エンジンECU46は、排ガス再循環装置(EGR)の使用率についての情報も保有している。そして、交換時期設定装置10は、入出力I/F30を介してエンジンECU46から上記の情報を取得できるように構成されている。
【0025】
センタディスプレイ48は、車室の前部において運転者から見える位置に設けられており、種々の情報が表示される。例えば、センタディスプレイ48には、エアクリーナの交換時期についての情報などが表示される。
【0026】
(交換時期設定装置10の機能構成)
交換時期設定装置10は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。交換時期設定装置10が実現する機能構成について図2を参照して説明する。
【0027】
図2に示されるように、交換時期設定装置10は、機能構成として、交換情報取得部52、路面情報取得部54、悪路判定部56、悪路走行距離記憶部58、交換時期設定部60及び通知部62を含んで構成されている。なお、各機能構成は、CPU20がROM22又はストレージ26に記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0028】
交換情報取得部52は、エアクリーナの交換に関する情報を取得する。具体的には、交換情報取得部52は、エアクリーナを交換した時期を取得する。例えば、前回のエアクリーナの交換した時期についての情報が図示しないサーバ又はストレージ26に記憶されている。そして、交換情報取得部52は、サーバ又はストレージ26からエアクリーナを交換した時期についての情報を取得する。
【0029】
また、交換情報取得部52は、エアクリーナを交換してから走行した走行距離についても取得する。
【0030】
路面情報取得部54は、走行路の路面情報を取得する。具体的には、路面情報取得部54は、前方カメラ42によって撮像された画像情報と、加速度センサ44によって検出された車両上下方向の加速度とを走行路の路面情報として取得する。
【0031】
また、本実施形態の路面情報取得部54は、前方カメラ42によって撮像された画像情報を解析することで得られる走行路の凹凸のデータを取得する。さらに、路面情報取得部54は、加速度センサ44によって検出された車両上下方向の加速度から算出された上下振動の時間平均についての情報を取得する。
【0032】
悪路判定部56は、走行路が舗装されていない悪路であるか否かを判定する。具体的には、悪路判定部56は、路面情報取得部54によって取得された走行路の凹凸のデータと、上下振動の時間平均とに基づいて、走行路が悪路であるか否かについて判定する。例えば、悪路判定部56は、路面情報取得部54によって取得された情報から、走行路の凹凸が所定の閾値よりも大きい場合で、かつ上下振動の時間平均が所定の閾値以上である場合に、悪路であると判定してもよい。
【0033】
悪路判定部56による判定は、所定の時間おきに行ってもよい。また、前方カメラ42及び加速度センサ44の少なくとも一方からの情報に基づいて走行路の凹凸が多くなった場合に悪路判定部56による判定を開始してもよい。
【0034】
悪路走行距離記憶部58は、悪路判定部56によって悪路と判定された走行路を走行した総走行距離を算出してストレージ26などの記憶部に記憶する。例えば、悪路走行距離記憶部58は、悪路判定部56によって悪路を走行していると判定された時点から、悪路ではないと判定される前の間に走行した走行距離を算出する。そして、悪路走行距離記憶部58は、算出された走行距離と記憶部に記憶された総走行距離との和を新たな総走行距離として記憶部に記憶させてもよい。
【0035】
また、悪路走行距離記憶部58は、車両の外部の図示しないサーバなどに総走行距離を記憶する構成としてもよい。
【0036】
交換時期設定部60は、悪路走行距離記憶部58に記憶された情報を含む情報に基づいてエアクリーナの交換時期を設定する。本実施形態の交換情報取得部52は一例として、悪路走行距離記憶部58に記憶された情報、交換情報取得部52によって取得された情報、及びエンジンECU46の情報に基づいてエアクリーナの交換時期を設定する。
【0037】
具体的には、交換時期設定部60は、悪路走行距離記憶部58に記憶された悪路の総走行距離が所定の距離以上であった場合に、エアクリーナの交換時期を第1走行距離の到達時期に設定する。また、交換時期設定部60は、悪路の総走行距離が所定の距離より短い場合には、エアクリーナの交換時期を第1走行距離よりも長い第2走行距離の到達時期に設定する。
【0038】
さらに、交換時期設定部60は、第1走行距離に到達する前に所定の時間が経過することが予測された場合、所定の時間が経過する時期をエアクリーナの交換時期に設定する。すなわち、交換時期設定部60は、交換情報取得部52から取得された情報に基づいて前回のエアクリーナの交換時期から現在までの時間を算出し、交換後に経過した時間が所定の時間に近づいている場合には、この時間をエアクリーナの交換時期に設定する。所定の時間として、例えば、3年から6年の間の期間をエアクリーナの交換時期として設定される。
【0039】
さらにまた、交換時期設定部60は、車両に搭載されたEGRの使用率を考慮してエアクリーナの交換時期を設定する。例えば、EGRの使用率が高い状態では、多くの排ガスが再利用されているため、エアクリーナを通過する外気の量が減少する。この場合、EGRの使用率が低い状態と比較してエアクリーナの寿命が延びるため、第1走行距離及び第2走行距離は、EGRの使用率が低い状態よりも長い距離に設定される。
【0040】
通知部62は、交換時期設定部60によって設定されたエアクリーナの交換時期が近づいた場合に、携帯端末P及びセンタディスプレイ48に表示することによって通知を行う。通知部62による通知は、例えば、エアクリーナの交換が行われるまでの間、断続的に通知してもよい。また、通知部62は、エアクリーナの交換時期に近づくにつれて表示を変更してもよい。
【0041】
(作用)
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0042】
(交換時期設定処理の一例)
図3は、交換時期設定装置10による交換時期設定処理の流れの一例を示すフローチャートである。この交換時期設定処理は、CPU20がROM22又はストレージ26からプログラムを読み出して、RAM24に展開することによって実行される。
【0043】
図3に示されるように、CPU20は、ステップS102でエアクリーナの交換情報を取得する。具体的には、CPU20は、交換情報取得部52の機能によってエアクリーナを交換した時期及び走行距離についての情報を取得する。
【0044】
CPU20は、ステップS104でエアクリーナを交換してから経過した時間が所定時間に近づいているか否かについて判定する。具体的には、CPU20は、交換情報取得部52の機能によって取得されたエアクリーナの交換時期から経過した時間が所定時間に近づいている場合は、ステップS104が肯定判定となり、ステップS114の処理へ移行する。また、CPU20は、エアクリーナの交換時期から経過した時間が所定時間に近づいていない場合は、ステップS104が否定判定となり、ステップS108の処理へ移行する。本実施形態では一例として、予め設定された所定時間の30日前となっている場合にステップS104が肯定判定となる。
【0045】
CPU20は、ステップS104が肯定判定となった場合、すなわち、所定時間までの残り時間(残り日数)が30日未満となった場合、ステップS114の処理へ移行し、所定時間が経過する時期をエアクリーナの交換時期として設定する。エアクリーナの交換時期の設定は、交換時期設定部60により行われる。
【0046】
一方、CPU20は、ステップS104で否定判定となった場合、すなわち、所定時間までの残り時間(残り日数)が30日以上である場合、ステップS106の処理へ移行し、悪路走行距離を取得する。具体的には、CPU20は、悪路走行距離記憶部58に記憶された悪路の総走行距離を取得する。
【0047】
続いて、CPU20は、ステップS108で悪路走行距離が所定距離以上であるか否かについて判定する。具体的には、CPU20は、悪路走行距離記憶部58に記憶された悪路の総走行距離と、予め設定された所定距離とを比較し、悪路の総走行距離が所定距離以上であった場合に、ステップS108が肯定判定されてステップS110の処理へ移行する。
【0048】
一方、CPU20は、ステップS108で悪路の総走行距離が所定距離未満であった場合、ステップS108が否定判定されてステップS112の処理へ移行する。なお、予め設定される所定距離について、車種やエアクリーナの種類に応じて異なる距離を設定してもよい。
【0049】
CPU20は、ステップS110で交換時期設定部60の機能により第1走行距離をエアクリーナの交換時期として設定する。一方、CPU20は、ステップS112で交換時期設定部60の機能により第2走行距離をエアクリーナの交換時期として設定する。このとき、第2走行距離は、第1走行距離よりも長い距離に設定されている。そして、CPU20は、交換時期設定処理を終了する。
【0050】
以上のように、本実施形態の交換時期設定装置10では、悪路走行距離が所定の距離以上であった場合に交換時期設定部60が第1走行距離の到達時期をエアクリーナの交換時期に設定する。また、交換時期設定部60は、悪路走行距離が所定の距離より短い場合には、第1走行距離よりも長い第2走行距離の到達時期をエアクリーナの交換時期に設定する。このように、車両の走行距離に基づいてエアクリーナの交換時期が設定されるため、ディーラーなどに判断してもらうことなく、ユーザがエアクリーナの交換時期までに走行可能な走行距離を把握することができる。
【0051】
また、悪路走行距離に応じて交換時期までの車両の走行距離を変化させることにより、より寿命に近い状態までエアクリーナを使用することができる。この結果、エアクリーナの使用状態を考慮しつつ、交換時期を事前にユーザが確認することができる。
【0052】
さらに、本実施形態では、第1走行距離に到達する前であっても、所定の時間が経過する時期をエアクリーナの交換時期に設定することで、経時劣化したエアクリーナが使用され続けるのを抑制することができる。
【0053】
さらにまた、本実施形態では、EGRの使用率を考慮してエアクリーナの交換時期を設定することで、より細かくエアクリーナの劣化状態を推定することができる。すなわち、排ガス再循環装置の使用率が高い場合、エアクリーナに取り込まれる空気の量が相対的に少なくなる。この場合、排ガス再循環装置の使用率が低い場合と比較して交換時期までの走行距離を長く設定することで、エアクリーナを長く使用することができる。
【0054】
以上、実施形態に係るエアクリーナの交換時期設定装置10について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、悪路判定部56は、路面情報取得部54によって取得された走行路の凹凸のデータと、上下振動の時間平均とに基づいて、走行路が悪路であるか否かについて判定したが、これに限定されない。すなわち、悪路判定部56は、路面情報取得部54によって取得された走行路の凹凸のデータのみに基づいて走行路が悪路であるか否かについて判定してもよい。また、悪路判定部56は、加速度センサ44から取得された上下振動の時間平均のみに基づいて走行路が悪路であるか否かについて判定してもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、交換時期設定部60は、第1走行距離に到達する前に所定の時間が経過することが予測された場合、所定時間が経過する時期をエアクリーナの交換時期に設定したが、これに限定されない。例えば、走行距離のみをエアクリーナの交換時期として設定してもよい。この場合、交換後に経過した時間にかかわらず、エアクリーナの交換時期が第1走行距離又は第2走行距離に設定されるため、ユーザが交換時期を把握し易い。
【0056】
さらに、上記実施形態では、交換時期設定部60は、車両に搭載されたEGRの使用率を考慮してエアクリーナの交換時期を設定したが、これに限定されない。例えば、EGRの使用率にかかわらずにエアクリーナの交換時期を設定してもよい。ただし、EGRの使用率を考慮せずにエアクリーナの交換時期を設定する場合、余裕を見て第1走行距離及び第2走行距離を短く設定する必要が生じるため、EGRの使用率を考慮する場合よりも交換時期までの走行距離が短くなる。このため、エアクリーナを寿命まで正しく使用するためにEGRの使用率を考慮するのが好ましい。
【0057】
また、交換時期設定部60は、EGRの使用率に加えて、エンジンの総回転数、吸入空気量の総和、エンジンの負荷使用率などの情報を考慮してエアクリーナの交換時期を設定してもよい。より多くの情報を考慮してエアクリーナの交換時期を設定することで、エアクリーナの劣化状況を正確に判断することができるため、結果としてエアクリーナの交換時期をより寿命に近い時期に設定することができ、交換頻度を下げることができる。
【0058】
さらに、上記実施形態でCPU20がプログラムを読み込んで実行した交換時期設定処理を、CPU20以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、交換時期設定処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせで実行してもよく、例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0059】
さらに、上記実施形態では、ストレージ26に種々のデータを記憶させる構成としたが、これに限定されない。例えば、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的記録媒体を記憶部としてもよい。この場合、これらの記録媒体に各種プログラム及びデータなどが格納されることとなる。
【0060】
さらにまた、上記実施形態では、交換時期設定装置10が車両に設けられた構成について説明したが、これに限定されない。例えば、サービスセンターやディーラーなどに交換時期設定装置10を設けてもよい。この場合、交換時期設定装置10は、所定の通信手段によって車両及びサーバなどから情報を取得してもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 エアクリーナの交換時期設定装置
54 路面情報取得部
56 悪路判定部
60 交換時期設定部
図1
図2
図3