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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/25 20160101AFI20240709BHJP
   H02K 3/50 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H02K11/25
H02K3/50 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021045669
(22)【出願日】2021-03-19
(65)【公開番号】P2022144595
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】上野 駿
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-004496(JP,A)
【文献】特開2008-029127(JP,A)
【文献】特開2018-121389(JP,A)
【文献】特開2021-136849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/25
H02K 3/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアに巻き付けられた複数の巻線によって構成され、前記ステータコアの端面から突出するように配置されているコイルエンド部を有するコイルと、
長さ方向の一端部に前記巻線が接続される口線と、
第1の面及び前記第1の面の反対側の面である第2の面を有し、短辺と長辺を有する角形形状で構成される温度センサと、を備え、
前記口線は、複数の導線を束ねて構成され、前記長さ方向の他端部にいずれかの相が結線される中性線と、前記長さ方向の他端部に電源が接続される出力線を含み、
前記温度センサは、前記第1の面が前記中性線または前記出力線のいずれかに臨み、前記第2の面が前記コイルエンド部に臨むように、前記口線と前記コイルエンド部に挟み込まれて配置され、
前記第1の面は、前記ステータコアの径方向において複数の前記導線を跨いでおり、
前記第2の面は、前記ステータコアの前記径方向において複数の前記巻線を跨いでおり、
前記温度センサは、少なくとも第1温度センサと第2温度センサを含み、
前記第1温度センサと前記第2温度センサは、前記ステータコアの前記径方向と前記第1温度センサ及び前記第2温度センサの短辺方向が略平行となるように隣り合って配置される
回転電機。
【請求項2】
前記第1の面における前記ステータコアの前記径方向に沿った距離は、前記口線の導線径の少なくとも2倍以上である
請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記第2の面における前記ステータコアの前記径方向に沿った距離は、前記コイルの巻線径の少なくとも2倍以上である
請求項1に記載の回転電機。
【請求項4】
前記口線は可撓性を有するスリーブで部分的に被覆され、
前記温度センサの前記第1の面は、前記口線の前記導線が露出する部位に配置される
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項5】
前記口線は、前記長さ方向の他端部に三相が結線される前記中性線と、前記長さ方向の他端部に三相電源の第1相電源が接続される第1相用の出力線と、第2相電源が接続される第2相用の出力線と、第3相電源が接続される第3相用の出力線を含み、
前記第1温度センサ及び前記第2温度センサの前記第1の面はそれぞれ異なるように、前記第1相用の出力線、前記第2相用の出力線、前記第3相用の出力線、または前記中性線のうちいずれか1つに臨み、前記第1温度センサ及び前記第2温度センサの前記第2の面は、前記コイルエンド部に臨むように、前記口線と前記コイルエンド部に挟み込まれて配置される
請求項に記載の回転電機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機の運転による温度上昇によって、回転電機に故障が発生したり回転電機の寿命が短くなることがあった。近年では、車両等に使用する駆動モータや発電機等を含む回転電機は高出力化が著しく、回転電機への負担も増加してしまうため、この種の回転電機では適切な温度測定をすることが重要となる。
【0003】
特許文献1に記載の回転電機は、巻線たるコイルと、口線たる中性線および出力線と、温度検出素子とを備える。中性線は、長さ方向の一端部にコイルが接続され、且つ長さ方向の他端部で三相が結線される。出力線は、長さ方向の一端部にコイルが接続され、且つ長さ方向の他端部に電源が入力される。温度検出素子は、型部材によって成型された樹脂内に封止され、樹脂を介して中性線に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-121389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の回転電機では、回転電機の最大温度は設計や運転条件等により口線またはコイルエンド部のどちらにもなり得る。そのため、共通の温度センサによって口線とコイルエンド部の両方の高温状態を検出できる構成が求められている。しかし、口線とコイルエンド部の間で温度センサの位置が偏ると、共通の温度センサでいずれかの高温状態が正しく検出できなくなる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであって、口線とコイルエンド部のいずれかの高温状態を共通の温度センサで検出できる回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、回転電機であって、ステータコアに巻き付けられた複数の巻線によって構成され、ステータコアの端面から突出するように配置されているコイルエンド部を有するコイルと、長さ方向の一端部に巻線が接続される口線と、第1の面及び第1の面の反対側の面である第2の面を有し、短辺と長辺を有する角形形状で構成される温度センサと、を備え、口線は、複数の導線を束ねて構成され、長さ方向の他端部にいずれかの相が結線される中性線と、長さ方向の他端部に電源が接続される出力線を含み、温度センサは、第1の面が中性線または出力線のいずれかに臨み、第2の面がコイルエンド部に臨むように、口線とコイルエンド部に挟み込まれて配置され、第1の面は、ステータコアの径方向において複数の導線を跨いでおり、第2の面は、ステータコアの径方向において複数の巻線を跨いでおり、温度センサは、少なくとも第1温度センサと第2温度センサを含み、第1温度センサと第2温度センサは、ステータコアの径方向と第1温度センサ及び第2温度センサの短辺方向が略平行となるように隣り合って配置される
【0008】
上記の回転電機において、第1の面におけるステータコアの径方向に沿った距離は、口線の導線径の少なくとも2倍以上であってもよい。上記の回転電機において、第2の面におけるステータコアの径方向に沿った距離は、コイルの巻線径の少なくとも2倍以上であってもよい。
【0009】
上記の回転電機において、口線は可撓性を有するスリーブで部分的に被覆され、温度センサの第1の面は口線の導線が露出する部位に配置されてもよい。
【0011】
上記の回転電機において、口線は、長さ方向の他端部に三相が接続される中性線と、長さ方向の他端部に三相電源の第1相電源が入力される第1相用の出力線と、第2相電源が入力される第2相用の出力線と、第3相電源が入力される第3相用の出力線を含み、第1温度センサ及び第2温度センサの第1の面はそれぞれ異なるように、第1相用の出力線、第2相用の出力線、または第3相用の出力線、または中性線のうちいずれか1つに臨み、第1温度センサ及び第2温度センサの第2の面は、コイルエンド部に臨むように、口線とコイルエンド部に挟み込まれて配置されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、口線とコイルエンド部のいずれかの高温状態を共通の温度センサで検出できる回転電機を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の回転電機の構成例を示す断面図である。
図2】本実施形態の回転電機をコイルエンド部側からみた図である。
図3】(a)は、口線とコイルエンド部との間に温度センサを配置した状態を示す斜視図である。(b)は、口線をコイルエンド部に当接させて温度センサを固定した状態を示す斜視図である。
図4】本実施形態における温度センサを示す斜視図である。
図5】比較例の口線をコイルエンド部に配置した様子を示す斜視図である。
図6】本実施形態における口線の導線部とコイルエンド部の間に丸形形状の温度センサを配置した状態を示す図である。
図7】本実施形態における口線の導線部とコイルエンド部の間に角形形状の温度センサを配置した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
実施形態では説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造や要素については、簡略化または省略して説明する。また、図面において、同じ要素には同じ符号を付す。なお、図面に示す各要素の形状、寸法などは模式的に示したもので、実際の形状、寸法などを示すものではない。
【0015】
図1は、本実施形態の回転電機1の構成例を示す断面図である。また、図2は、本実施形態の回転電機1をコイルエンド部側からみた図である。
本実施形態の回転電機1は、車両などに搭載されて電動機や発電機として使用される。また本実施形態の回転電機1は、例えば、三相交流のインナーロータ型モータとして以下に説明するが回転電機1は複相のモータの場合に限定されず、例えば単相であってもよい。
【0016】
本実施形態の回転電機1は、有底筒状のハウジング部材10aと10bの開口部同士を接合させたハウジング10と、ハウジング10に軸受11を介して回転自在に支承されて複数の磁極を有する回転軸(シャフト)12を備えている。また、回転電機1は、回転軸12に保持(固定)された円筒状のロータ(回転子)13と、ロータ13に対向配置されてハウジング10に保持されたステータ(固定子)20とを備えている。
ハウジング10は例えば、鋳造品からなり、ロータ13及びステータ20を収容するモータハウジングとして機能する。
【0017】
回転軸12は、ロータ13のロータコアの中心に設けられたシャフト穴を回転軸線Aの方向に貫通し、ロータ13の回転軸線A上に位置する。回転軸12は、ロータ13とともに回転軸線Aを中心にして回転駆動する。以下、回転軸線Aの延在方向(X方向)を、単に軸方向という。また、回転軸線Aを中心にした周方向を単に周方向という。また、回転軸線Aを中心にした径方向を単に径方向という。
【0018】
ステータ20は、円筒状に形成されたステータコア(固定子鉄心)14を備える。
ステータコア14の内周には、径方向内側に突出する複数のティース部14aが周方向に沿って設けられ、ティース部14aの間にはそれぞれスロット14bが形成される。
さらに、ステータコア14は、ティース部14aにそれぞれ複数の巻線(素線)によって構成されるコイル15が巻回される。コイル15には、ステータコア14の端面から突出するようにコイルエンド部16が備えられている。
【0019】
また、コイル15は、それぞれ電気的位相の異なる三相のコイルからなる。電気的位相の異なる三相として、ステータコア14の外周側から順にU相、V相、及びW相のコイルが備えられ、ステータコア14のティース部14aにそれぞれ巻線によって分布巻きされる。
【0020】
図5は、比較例の口線50をコイルエンド部51に配置した様子を示す斜視図である。
比較例における回転電機も本実施形態における回転電機1と同様に、三相交流のインナーロータ型モータとして説明する。
【0021】
比較例の口線50は、長さ方向の一端部にコイルが接続され、且つ長さ方向の他端部で三相が結線される不図示の中性線と、長さ方向の一端部にコイルが接続され、且つ長さ方向の他端部に電源が入力される複数の出力線とで構成されるものとして説明する。
口線50における各相の出力線として、U相のコイル用の出力線50U、V相のコイル用の出力線50V、W相のコイル用の出力線50Wを含む。
【0022】
なお、口線50の長さ方向の一端部と他端部の一部を除き口線50は、所定の厚みを有するゴムや樹脂等の可撓性を有する素材で構成されるスリーブ(保護材)によって被覆されている。
比較例のコイルエンド部51及びステータコア52の配置や機能は、本実施形態のコイルエンド部16及びステータコア14と同様である。
【0023】
本実施形態における温度センサ(サーミスタ)40の固定方法として、口線30とコイルエンド部16との間に挟み込むように温度センサ40が配置される。以下に、図3及び図4を参照して説明する。
【0024】
図3は、本実施形態における温度センサ40の固定方法を示す斜視図である。(a)は、口線30とコイルエンド部16との間に温度センサ40を配置した状態を示す斜視図である。(b)は、口線30をコイルエンド部16に当接させて温度センサ40を挟み込んで固定した状態を示す斜視図である。
なお、説明の簡略化のために、図3及び図5で示しているような口線30及びコイルエンド部16は一部表記を省略している。本来であれば、口線30の中性線及び出力線は導線30aの束、即ち複数の導線を束ねて構成され、コイル15及びコイルエンド部16は巻線16aの束、即ち複数の巻線を束ねて構成されている。
【0025】
本実施形態における口線30は、中性線及び複数の出力線により構成される。中性線は、不図示ではあるが長さ方向の一端部がステータコア14に巻き付けられた巻線であるコイル15に接続され、且つ長さ方向の他端部で三相が結線される。複数の出力線は、長さ方向の一端部にコイル15が接続され、且つ長さ方向の他端部に電源が入力される。また、複数の出力線の他端部に電源に接続するための端子部を備える。
口線30における各相の出力線として、U相のコイル(15)用の出力線30U、V相のコイル(15)用の出力線30V、W相のコイル(15)用の出力線30Wを含む。
【0026】
出力線30Uの長さ方向の一端部には、U相用のコイル(15)が接続される。また、出力線30Uの他端部には、三相電源の内のU相電源に接続するための端子部がカシメによって固定される。出力線30Vの長さ方向の一端部には、V相用のコイル(15)が接続される。また、出力線30Vの他端部には、三相電源の内のV相電源に接続するための端子部がカシメによって固定される。出力線30Wの長さ方向の一端部には、W相用のコイル(15)が接続される。また、出力線30Wの他端部には、三相電源の内のW相電源に接続するための端子部がカシメによって固定される。なお、図3(b)及び図5中の破線で示している矢印は、出力線30U、出力線30V、出力線30Wの端子部方向を示している。
【0027】
また、口線30の長さ方向の一部は、所定の厚みを有するゴムや樹脂等の可撓性を有する素材で構成されるスリーブ31によって被覆されている。
なお、本実施形態では、スリーブ31によって部分的に被覆している口線30の箇所をスリーブ部と呼び、口線30の出力線の各相でスリーブ部31U、スリーブ部31V、スリーブ部31Wと呼ぶ。また、スリーブ31によって被覆されていない箇所を、口線30の導線部と呼ぶ。なお、図3に示しているように、本実施形態の口線30は、例えば出力線の場合は可撓性が必要な端子部周辺をスリーブ31で被覆している。中性線も不図示であるが可撓性が必要な箇所周辺をスリーブ31で被覆している。本実施形態では、当該スリーブ31で被覆されている箇所以外は導線が露出している導線部として構成される。
【0028】
図4は、本実施形態における温度センサ40を示す斜視図である。
本実施形態の温度センサ40は、短辺と長辺を有する角形形状(扁平形状)に構成される。温度センサ40は、感温素子である温度測定部(温度検出部)41と、温度測定部41を封止している外装材42と、温度測定部41に接続されるリード線43により構成されうる。さらに、温度センサ40は、第1の面44と、第1の面44の反対側の面である第2の面45を有する形状で構成される。温度センサ40の第1の面44は、口線30に接触する平面であり、温度センサ40の第2の面45は、コイルエンド部16に接触する平面である。なお、口線30に接触とは、口線30の中性線、出力線30U、出力線30V、出力線30Wのいずれか1つに接触することをいう。
【0029】
さらに、本実施形態の温度センサ40は、第1温度センサ40aと、第2温度センサ40bを含む。
第1温度センサ40aは、感温素子である温度測定部41aと、温度測定部41aを封止している外装材42aと、温度測定部41aに接続されるリード線43aにより構成されうる。第2温度センサ40bは、感温素子である温度測定部41bと、温度測定部41bを封止している外装材42bと、温度測定部41bに接続されるリード線43bにより構成されうる。
【0030】
第1温度センサ40aは、第1の面44aと、第1の面44aの反対側の面である第2の面45aを有する形状で構成される。第1温度センサ40aの第1の面44aは、口線30に接触する平面であり、第1温度センサ40aの第2の面45aは、コイルエンド部16に接触する平面である。また、第2温度センサ40bは、第1の面44bと、第1の面44bの反対側の面である第2の面45bを有する形状で構成される。第2温度センサ40bの第1の面44bは、口線30に接触する平面であり、第2温度センサ40bの第2の面45bは、コイルエンド部16に接触する平面である。
【0031】
なお、温度センサ40は、NTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタまたはPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタのいずれを使用してもよい。また、これに限らず熱電対や白金測温抵抗体を使用してもよい。
【0032】
ここで、温度センサ40で口線とコイルエンド部の温度を計測する際に比較例の口線50を使用した場合を想定する。上記のように比較例の口線50は長さ方向の一端部と他端部の一部を除きほぼ全てがスリーブで被覆されている。
したがって、口線50とコイルエンド部51の間に、本実施形態の温度センサ40を固定した場合、コイルエンド部51の高温状態が正しく検出できても、口線50はスリーブで被覆されているため、口線50の高温状態を正しく検出できない恐れがある。さらに、上記のように口線50はほぼ全てがスリーブで被覆されているため、口線50とコイルエンド部51に接触する周方向のいずれの場所に温度センサ40を固定したとしても、口線50の高温状態を正しく検出できない恐れがある。
【0033】
そこで、本実施形態においては、温度センサ40の第1の面44が、口線30の中性線、出力線30U、出力線30V、出力線30Wにおけるいずれか1つの導線部に臨み、温度センサ40の第2の面45がコイルエンド部16に臨むように、口線30の導線部とコイルエンド部16とで、挟み込むように温度センサ40が配置される。
【0034】
これによって、口線30及びコイルエンド部16のいずれかが高温状態になった場合であっても、温度センサ40の両面はコイルエンド部16と、導線が露出している部位である口線30の導線部のそれぞれに接触している。そのため、口線30とコイルエンド部16のいずれかの高温状態を共通の温度センサ(一つの温度センサ)で検出することが可能となる。
なお、温度センサ40の固定位置は、図3に示している位置に限らず、口線30の導線部とコイルエンド部16とが接触する箇所であれば、コイルエンド部16の周方向のいずれの場所に配置してもよい。
【0035】
温度センサ40の第1温度センサ40aと第2温度センサ40bの配置を以下に説明する。まず、温度センサ40の第1温度センサ40aの第1の面44aを、口線30の中性線、出力線30U、出力線30V、出力線30Wにおけるいずれか1つの導線部に臨むように配置する。さらに、第1温度センサ40aの第2の面45aをコイルエンド部16に臨むように配置する。
【0036】
次に、第2温度センサ40bの第1の面44bを、口線30の中性線、出力線30U、出力線30V、出力線30Wにおけるいずれか1つの導線部に臨むように配置する。さらに、第2温度センサ40bの第2の面45bをコイルエンド部16に臨むように配置する。
また、図3に示しているように、第1温度センサ40a及び第2温度センサ40bの短辺をステータコア14の径方向に沿って配置することが好ましい。即ち、ステータコア14の径方向と第1温度センサ40a及び第2温度センサ40bの短辺方向が略平行となるように配置することが好ましい。口線とコイルエンド部の間で、温度センサの位置が口線側あるいはコイルエンド部側に偏ってしまうと、共通の温度センサでいずれかの高温状態が正しく検出できなくなる可能性があるためである。
【0037】
このとき、温度センサ40はスリーブ31に接触しないように配置することが好ましい。そのため、第1温度センサ40a及び第2温度センサ40bは、中性線のスリーブ部、スリーブ部31U、スリーブ部31V、スリーブ部31Wのそれぞれに接触しないように配置する。
【0038】
さらに、第1温度センサ40aと第2温度センサ40bはそれぞれ異なるように、口線30の中性線、出力線30U、出力線30V、出力線30Wにおけるいずれか1つの導線部に臨むように配置する。これにより、2線または二相以上の口線の温度を測定することが可能となるため、正確な温度管理が可能となる。
【0039】
回転電機1におけるコイル15を構成する導線には、横断面形状が円形の丸線(丸形導線)と、横断面形状が矩形の角線(角形導線)とがある。
丸線を巻回して成る丸線コイルの場合は、各相のコイル15に対しワニスを用いて含浸処理をして固定する。そのため、ワニス処理後の口線30の端子部周辺は可撓性を確保することが重要である。なお、本実施形態ではコイル15を構成する導線は丸線を使用する。
【0040】
本実施形態では、口線30の端子部周辺にのみスリーブ31を被覆しているため、丸線のコイルであっても本実施形態の口線30を使用することができる。さらに端子部周辺にのみスリーブ31で被覆することで、口線30に使用するスリーブの量を削減することができる。
【0041】
本実施形態における、口線30は、丸線としてのエナメル線またはエナメルがコーティングされた丸線からなる。さらにコイルエンド部16も含むコイル15にも例えば、エナメル等がコーティングされている。
このように、本実施形態における口線30及びコイル15はそれぞれ絶縁処理されている。そのため、口線30とコイルエンド部16が接触したとしても短絡することはない。
【0042】
エナメル線またはエナメルがコーティングされた丸線は、角線からなる口線に比べて変形し易いことから、容易に成形される。さらに比較例の口線50に比べスリーブの量も削減されるため口線30の製造コストの低減及び生産性の向上も可能となる。
【0043】
図6は、丸形形状とした場合の温度センサ40を口線30の導線部とコイルエンド部16の間に挟み込むように配置した状態を示す図である。図7は、角形形状とした場合の温度センサ40を口線30の導線部とコイルエンド部16の間に挟み込みように配置した状態を示す図である。
本実施形態の口線30及びコイルエンド部16を含むコイル15は上記のように丸線を使用している。そのため、図6に示しているように、本実施形態の温度センサ40を丸形形状にした場合、配置または固定した際にコイルエンド部16の複数の巻線16aに温度センサ40の全部または一部が埋没してしまう可能性がある。さらに、配置時には埋没していなかったとしても、回転電機1の使用による振動等でコイルエンド部16に埋没してしまう可能性がある。
【0044】
温度センサ40の全部または一部がコイルエンド部16に埋没してしまうと、コイルエンド部16が高温状態となった場合には正しく検出できても、口線30の温度が高温状態となった場合には正しく検出することができない可能性がある。なお、図6ではコイルエンド部16に埋没しているが、口線30の配置方向等によっては口線30に温度センサ40の一部または全部が埋没してしまう可能性もある。
【0045】
本実施形態の温度センサ40によれば、角型形状の温度センサ40である。そのため、口線30の導線部とコイルエンド部16の間に配置しても、温度センサ40の第1の面44は口線30の複数の導線30aを跨ぐように配置され、温度センサ40の第2の面はコイルエンド部16の複数の巻線16aを跨ぐように配置されている。これにより、温度センサ40は口線30やコイルエンド部16に埋没することはない。
温度センサ40が口線30やコイルエンド部16に埋没せずに口線30およびコイルエンド部16の境界に配置されるので、口線30とコイルエンド部16のいずれかが高温状態になっても共通の温度センサである温度センサ40で正しく検出することができる。
【0046】
また、口線30やコイルエンド部16に埋没しないために、本実施形態の温度センサ40の外装材42の短辺における距離は、口線30の導線30aの径(導線径)またはコイルエンド部16の巻線16aの径(巻線径)の2倍以上の距離とする。また、口線30の導線30aの径またはコイルエンド部16の巻線16aの径の3倍以上の距離とすると好ましい。
【0047】
このように、温度センサ40の外装材42の短辺における距離を、口線30の導線30aまたはコイルエンド部16の巻線16aの径の2倍以上の距離とすることで、コイルエンド部16の複数の巻線16aに対して安定して配置することができる。
【0048】
また、回転電機は三相交流の場合に限定されず、例えば単相2線式若しくは3線式を含む二相交流であってもよいし、五相交流などの構成であってもよい。例えば、二相交流の場合を例にすると、二相交流における口線についても、上記のように中性線と1つ以上の出力線とで構成することができる。中性線は、長さ方向の一端部がステータコアに巻き付けられた巻線であるコイルに接続され、且つ長さ方向の他端部でいずれかの相に結線される。出力線は、長さ方向の一端部がコイルに接続され、且つ長さ方向の他端部に電源が入力される。なお、二相交流の場合であっても、温度センサの配置等は本実施形態と同様に、温度センサの第1の面が、中性線または1つ以上の出力線のうちいずれか1つの導線部に臨み、温度センサの第2の面がコイルエンド部に臨むようにし、口線の導線部とコイルエンド部とで挟むように配置することができる。
【0049】
以上、上記で説明したように本実施形態の温度センサ40を、口線30の導線部とコイルエンド部16の間に挟み込むように配置することで、口線30とコイルエンド部16のどちらかが高温状態になったとしても、共通の温度センサによって高温状態を検出することができる。
【0050】
また、例えば、コイルエンド部にブラケットで押し付けて温度センサを固定する等の方法では、追加でブラケット分のコストがかかる問題があるが、本実施形態の温度センサ40の固定方法によると、ブラケットを使用しないため、コストが増加することがない。
さらに、本実施形態の口線30は、スリーブ31の量を低減することができるため口線30の製造コストを低減することも可能となる。
【0051】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0052】
例えば、温度センサを2つ以上としてもよく、第1温度センサ40aと第2温度センサ40bに加え、第3温度センサを設けるようにしてもよい。
また、温度センサ40の第1の面44は口線の中性線、出力線30U、出力線30V、出力線30Wにおけるいずれか1つの導線部に臨み、第2の面45がコイルエンド部16に臨むように、口線30とコイルエンド部16に挟み込まれて配置している。しかし、これに限らず、温度センサ40の第1の面44はコイルエンド部16に臨み、第2の面45が口線の中性線、出力線30U、出力線30V、出力線30Wにおけるいずれか1つの導線部に臨むように、口線30とコイルエンド部16に挟み込まれて配置してもよい。
【0053】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0054】
1…回転電機、14…ステータコア、15…コイル、16…コイルエンド部、30U…U相のコイル用の出力線、30V…V相のコイル用の出力線、30W…W相のコイル用の出力線、31U…U相のコイル用の出力線のスリーブ部、31V…V相のコイル用の出力線のスリーブ部、31W…W相のコイル用の出力線のスリーブ部、40a…第1温度センサ、40b…第2温度センサ

図1
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図7