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特許7517215温度測定方法、温度測定装置、及び電池システム
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  • 特許-温度測定方法、温度測定装置、及び電池システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】温度測定方法、温度測定装置、及び電池システム
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/16 20060101AFI20240709BHJP
   G01K 1/143 20210101ALI20240709BHJP
   G01K 1/08 20210101ALI20240709BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G01K1/16
G01K1/143
G01K1/08 N
H01M10/48 301
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021047790
(22)【出願日】2021-03-22
(65)【公開番号】P2022146693
(43)【公開日】2022-10-05
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加茂 吉朗
(72)【発明者】
【氏名】山中 篤
(72)【発明者】
【氏名】東福寺 智子
(72)【発明者】
【氏名】相島 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】福原 吉樹
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/067903(WO,A1)
【文献】特開2010-287550(JP,A)
【文献】実開昭60-29251(JP,U)
【文献】実開平4-30447(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組電池の電池セルの温度を測定する温度測定方法であって、
弾性変形し少なくとも一端が閉口端である管状のケースに、前記閉口端から所定の間隔を開けた位置で固定されるように温度センサを差し込み、
前記閉口端と前記温度センサが固定される位置との間の前記ケースの中空部分に流体を封入し、
前記閉口端の近傍の前記ケースの部分を、前記電池セルの間に挟み入れ前記電池セルの電極の中央部分に接触させた状態で、前記温度センサにより温度を測定する
ことを特徴とする温度測定方法。
【請求項2】
組電池の電池セルの温度を測定する温度測定装置であって、
弾性変形し少なくとも一端が閉口端である管状のケースと、
前記閉口端から所定の間隔を開けた位置で前記ケースに差し込まれて固定された温度センサと、
前記閉口端と前記温度センサが固定される位置との間の前記ケースの中空部分に封入された流体と、を備える
ことを特徴とする温度測定装置。
【請求項3】
組電池と、
前記組電池を構成する電池セルの間に挟み入れられた温度測定装置と、を備え、
前記温度測定装置は、
弾性変形し少なくとも一端が閉口端である管状のケースと、
前記閉口端から所定の間隔を開けた位置で前記ケースに差し込まれて固定された温度センサと、
前記閉口端と前記温度センサが固定される位置との間の前記ケースの中空部分に封入された流体と、を備え、
前記閉口端の近傍の前記ケースの部分を前記電池セルの電極の中央部分に接触させた状態で、前記電池セルの間に取り付けられている
ことを特徴とする電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組電池の電池セルの温度を測定する温度測定方法及び温度測定装置、並びに組電池の電池セルの温度を測定する機能を備えた電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電池パック内のセルの温度が異常に上昇した場合において、その異常を早期に検出することが可能な電池システムが開示されている。この電池システムでは、電池パックは複数の単電池と、隣り合う単電池の間に配置された吸熱部材と、単電池又は吸熱部材の温度を計測する温度センサと、を含み、吸熱部材は使用条件で相変化する相変化材料を含んでいる。そして、温度の経時変化から、単電池又は吸熱部材の温度が異常に上昇しているか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-145060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池セルは、電極の中央部分が最も温度が高くなる。このため、充放電制御の効率化を図る目的等のため、電極の中央部分において電池セルの温度を測定することが望ましい。
【0005】
しかしながら、電極の中央部分は充電等に伴う膨張量が大きい。このため、電極の中央部分に温度センサを直接配置すると、電極の膨張によって温度センサの接触部分の接触圧力が過度に上昇する虞がある。延いては、電池セルの電極箔が破れる危険性が高まる虞がある。
【0006】
本開示は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、接触圧力の過度な上昇を抑制しつつ、組電池の電池セルの電極の中央部部分の温度を測定することが可能な温度測定方法、及び温度測定装置を提供することを目的とする。また、本開示は、組電池の電池セルの電極の中央部部分の温度を測定する機能を備えた電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る温度測定方法は、組電池の電池セルの温度を測定する方法である。この温度測定方法では、弾性変形し少なくとも一端が閉口端である管状のケースに、ケースの閉口端から所定の間隔を開けた位置で固定されるように電極を差し込み、ケースの閉口端と温度センサが固定される位置との間のケースの中空部分に流体を封入する。そして、閉口端の近傍のケースの部分を、電池セルの間に挟み入れ電池セルの電極の中央部分に接触させた状態で、温度センサにより温度を測定する。
【0008】
本開示の一態様に係る温度測定装置は、組電池の電池セルの温度を測定する装置である。この温度測定装置は、弾性変形し少なくとも一端が閉口端である管状のケースと、温度センサと、流体と、を備えている。温度センサは、ケースの閉口端から所定の間隔を開けた位置でケースに差し込まれて固定されている。流体は、ケースの閉口端と温度センサが固定される位置との間のケースの中空部分に封入されている。
【0009】
本開示の一態様に係る電池システムは、組電池と、組電池を構成する電池セルの間に挟み入れられた温度測定装置とを備える。温度測定装置は、弾性変形し少なくとも一端が閉口端である管状のケースと、閉口端から所定の間隔を開けた位置でケースに差し込まれて固定された温度センサと、閉口端と温度センサが固定される位置との間のケースの中空部分に封入された流体と、を備える。温度測定装置は、閉口端の近傍の前記ケースの部分を電池セルの電極の中央部分に接触させた状態で、電池セルの間に取り付けられている。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る温度測定方法、温度測定装置、及び電池システムによれば、組電池の電池セルが膨張し、電池セルの電極の中央部分の膨張量が大きくなったとしても、接触圧力の過度な上昇を抑制しつつ、電池セルの電極の中央部分の温度を測定することができる。延いては、電池セルの電極の箔破れを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態に係る温度測定方法が用いられる組電池の例を示す概念図である。
図2】本実施の形態に係る温度測定装置の構成について説明するための概念図である。
図3】本実施の形態に係る温度測定装置の機能について説明するための概念図である。
図4】本実施の形態に係る温度測定方法を説明するための概念図である。
図5図4に示す温度測定方法において、電池セルが充電等により膨張した場合の例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。ただし、以下に示す実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲などの数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数が特定される場合を除いて、その言及した数に、本開示に係る思想が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態において説明する構成等は、特に明示した場合や原理的に明らかにそれに特定される場合を除いて、本開示に係る思想に必ずしも必須のものではない。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を附しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0013】
1.電池セル
本実施の形態に係る温度測定方法は、組電池の電池セルに対して用いられる。図1は、本実施の形態に係る温度測定方法が用いられる組電池10の例を示す概念図である。図1は、組電池10の上面図を示している。図1に示す組電池10では、複数の電池セル100が直列に導線20で接続されてパッケージ200の内に収められている。
【0014】
ただし、本実施の形態に係る温度測定方法が用いられる組電池10は、その他の構成の組電池10であっても良い。例えば、電池セル100の接続に並列接続が含まれていても良い。あるいは、異なる形状のパッケージ200に、複数の電池セル100が異なる態様で納められて組電池10が構成されていても良い。
【0015】
電池セル100は、典型的には、充電可能な2次電池である。例えば、リチウムイオン電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、全固体電池等が例示される。ただし、その他の電池であっても良い。また、図1に示す電池セル100の形状は角型であるが、その他の形状であっても良い。例えば、円筒型やラミネート型であっても良い。
【0016】
パッケージ200は、典型的には、合成樹脂、アルミニウム合金、あるいはビニールにより構成される。
【0017】
電池セル100は、一般に、電極の中央部分が最も温度が高くなる。このため、充電制御の効率化を図る目的等のため、電極の中央部分において電池セル100の温度を測定することが望ましい。また、電池セル100は、充電等により膨張する。このとき、電極の中央部分は充電等に伴う膨張量が大きい。また、一般に、電極の膨張により、電池セル100自体も膨張する。
【0018】
例えば、図1に示す電池セル100において、一点鎖線で囲む部分110が電池セル100の電極の中央部分にあたるとする。この場合、部分110が最も温度が高くなり、また充電等に伴う膨張量が大きい。
【0019】
2.温度測定装置
本実施の形態に係る温度測定方法では、温度測定装置により電池セル100の温度を測定する。以下、本実施の形態に係る温度測定装置について説明する。
【0020】
図2は、本実施の形態に係る温度測定装置300の構成について説明するための概念図である。温度測定装置300は、ケース310と、温度センサ320と、流体330と、を備えている。
【0021】
ケース310は、弾性変形し少なくとも一端が閉口端である管状の物体である。図2では、ケース310は、閉口端311を有している。ケース310は、典型的には、ゴムや合成樹脂材料により構成される。図2では、ケース310は、中空の円筒型であるが、その他の管状の形状であっても良い。例えば、中空の直方体の形状であっても良い。
【0022】
温度センサ320は、接触部分の温度変化を検出することが可能なセンサ、あるいは接触部分の温度を検出することが可能なセンサである。温度センサ320は、典型的には、サーミスタ、熱電対である。
【0023】
温度センサ320は、リード線321を有し、リード線321を介して接触部分の温度の変化、あるいは接触部分の温度の検出情報を電気信号として出力する。リード線321を介して電気信号を取得することで、間接的又は直接的に温度センサ320の接触部分の温度を測定することができる。ただし、その他の方法で温度センサ320の検出情報を取得することができるように構成されていても良い。例えば、温度センサ320は小型アンテナを有し、通信により検出情報を出力するように構成されていても良い。
【0024】
温度センサ320は、ケース310の閉口端311から所定の間隔を開けた位置で固定されるように差し込まれる。図2では、流体330の流出を防ぐことが可能なシール材340により閉口端311から所定の間隔を開けた位置で固定されている。
【0025】
流体330は、閉口端311と温度センサ320が固定される位置との間のケース310の中空部分に封入される。流体330は、例えば、水、水素ガス、ヘリウムガス、液体金属等である。ここで、流体330は、ケース310の接触部分の温度変化を短時間で伝達することができる程度に十分な熱伝導率を有する物質であることが望ましい。また、流体330は、温度による体積変化の少ない物質であることが望ましい。
【0026】
流体330は、熱伝導により、閉口端311の近傍のケース310の接触部分の温度と同等の温度となる。また、流体330は、温度センサ320と接触している。これにより、温度センサ320は、流体330を介して、閉口端311の近傍のケース310の接触部分の温度変化あるいは温度を検出することができる。
【0027】
なお、温度測定装置300を構成するにあたって、ケース310への温度センサ320の差し込み及び固定と、流体330の封入と、は都度適当な順序で行われて良い。例えば、温度センサ320をケース310に差し込んで固定した後、流体330を充填して封入しても良いし、流体330をケース310に流し込んだ後、流体330を封入するように温度センサ320をケース310に差し込んで固定しても良い。
【0028】
以下、温度測定装置300の機能について説明する。
【0029】
図3は、温度測定装置300の機能を説明するための概念図である。図3では、通常状態の温度測定装置300(図3上部)と、閉口端311の近傍のケース310の部分に接触圧力(太い矢印)がかかる場合の温度測定装置300(図3下部)の例と、を示している。ここで、矢印の長さは接触圧力の大きさに対応している。つまり、図3下部に示す例では、閉口端311が最も接触圧力が大きく、閉口端311から距離を隔てるほど接触圧力が小さくなる場合を示している。
【0030】
図3に示すように、ケース310にかかる接触圧力により、ケース310は変形する。また、温度センサ320は、接触圧力の圧力差により接触圧力が低い部分に移動する。一方で、流体330は、ケース310に封入された状態であり、温度センサ320と接触したままである。このため、温度センサ320は、移動後においても流体330を介して、閉口端311の近傍のケース310の接触部分の温度変化あるいは温度を検出することができる。延いては、温度測定装置300は、閉口端311の近傍のケース310の部分の温度を測定することができる。
【0031】
このように、温度測定装置300は、ケース310が変形することにより、ケース310の接触部分の接触圧力が過度に上昇することを抑制する。また、ケース310が接触圧力により変形するとき、温度センサ320は、接触圧力の圧力差により接触圧力が低い部分に移動する。これにより、温度測定装置300は、温度センサ320によりケース310の変形が阻害されることを防ぎ、温度センサ320のためにケース310の接触部分の接触圧力が過度に上昇することを抑制する。さらに、閉口端311の近傍のケース310の部分が変形しても、温度測定装置300は、閉口端311の近傍のケース310の部分の温度を測定することができる。
【0032】
なお、ケース310の変形は弾性変形であるため、接触圧力がかからなくなれば、温度測定装置300は、通常状態に戻る。
【0033】
3.温度測定方法
図4は、本実施の形態に係る温度測定方法を説明するための概念図である。図4では、本実施の形態に係る温度測定方法により、組電池10の電池セル100の温度を測定する場合の例を示している。ここで、図4に示す一点鎖線で囲む部分110は、それぞれの電池セル100の電極の中央部分にあたる部分である。
【0034】
本実施の形態に係る温度測定方法は、温度測定装置300により行われる。図4に示すように、閉口端311の近傍のケース310の部分を、電池セル100の間に挟み入れ電池セル100の電極の中央部分110に接触させた状態とする。そして、温度センサ320により温度を測定する。
【0035】
電池セル100の電極の中央部分110と接触するケース310の部分には流体330が封入されており、温度センサ320は、流体330を介して、電池セル100の電極の中央部分110の温度変化あるいは温度を検出することができる。延いては、電池セル100の電極の中央部分110の温度を測定することができる。
【0036】
図5は、本実施の形態に係る温度測定方法において、電池セル100が充電等により膨張した場合の例を示す概念図である。図5では、電池セル100が充電等により膨張し、パッケージ200及び温度測定装置300に図に示すような接触圧力(太い矢印)がかかる場合を示している。図5に示すように、一般に、電池セル100は、電極の中央部分110の膨張量が大きい。
【0037】
図5に示すように、本実施の形態に係る温度測定方法では、ケース310が接触圧力により変形する。また、温度センサ320は、接触圧力の圧力差により接触圧力が低い部分に移動する。これにより、電池セル100とケース310との接触部分の接触圧力が、電池セル100の膨張により過度に上昇することを抑制する。また、温度センサ320が移動することで、温度センサ320によりケース310の変形が阻害されることを防ぎ、温度センサ320のために電池セル100とケース310との接触部分の接触圧力が過度に上昇することを抑制する。延いては、電池セル100の電極の箔破れを防ぐことができる。
【0038】
さらに図5に示すように、電池セル100の膨張によりケース310が変形しても、電池セル100の電極の中央部分110には、流体330が封入されているケース310の部分を接触したままとすることができる。これにより、本実施の形態に係る温度測定方法では、電池セル100が膨張しても、電池セル100の電極の中央部分110の温度を測定することができる。
【0039】
4.効果
以上説明したように、本実施の形態に係る温度測定方法、及び温度測定装置300によれば、電池セル100が膨張し、電池セル100の電極の中央部分110の膨張量が大きくなったとしても、接触圧力の過度な上昇を抑制しつつ、電池セル100の電極の中央部分110の温度を測定することができる。延いては、電池セル100の電極の箔破れを防ぐことができる。
【0040】
5.電池システム
温度測定装置300は組電池10に対して必要なときのみ取り付けられても良いし、一つのパッケージとして一体化されてもよい。温度測定装置300が組電池10と一体化される場合には、組電池10の電池セル100の温度を測定する機能を備えた電池システムが構成される。本実施の形態に係る電池システムによれば、組電池10の使用中における電池セル100の電極の中央部分110の温度を常時監視することができる。
【0041】
なお、本実施の形態に係る温度測定方法は、単電池がパッケージングされている場合の単電池に対して、あるいは複数の電池セル100を含んだ複数のモジュールにより組電池10が構成されている場合のモジュールに対して好適に用いられても良い。
【符号の説明】
【0042】
10 組電池
100 電池セル
110 電極の中央部分
200 パッケージ
300 温度測定装置
310 ケース
311 閉口端
320 温度センサ
330 流体
図1
図2
図3
図4
図5