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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】ステータ及びステータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/04 20060101AFI20240709BHJP
   H02K 15/085 20060101ALI20240709BHJP
   H02K 1/16 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H02K3/04 E
H02K15/085
H02K1/16 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021050124
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022148442
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149098
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149102
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 習
(74)【代理人】
【識別番号】100136102
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 雅子
(72)【発明者】
【氏名】菅野 友久
(72)【発明者】
【氏名】丹下 宏司
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-117844(JP,A)
【文献】特開2020-156298(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0012260(US,A1)
【文献】国際公開第2014/132288(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/00- 3/28
H02K 15/00-15/02
H02K 15/04-15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に貫通する複数のスロットを有するステータコアと、
前記スロットに配置される複数のコイル線と、
を備え、
前記コイル線は、断面形状が円形であり、
前記スロットは、径方向外側端部において、軸方向に延びる第1面と第2面とによって径方向外側に突出する凸形状を有し
つの前記コイル線は、前記第1面及び前記第2面の両方と対向する、ステータ。
【請求項2】
前記コイル線は、前記凸形状に沿って並ぶ、請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記第1面及び前記第2面は、平面である、請求項1または2に記載のステータ。
【請求項4】
前記スロットに配置される絶縁紙をさらに備え、
少なくとも1つの前記コイル線は、前記凸形状の径方向内側に配置される前記絶縁紙と接触する、請求項1または2に記載のステータ。
【請求項5】
前記第1面と前記第2面との角度は、110度以上150度以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項6】
前記スロットは、径方向外側端部の周方向両端から径方向内側に向けて延びる2つの側面をさらに有し、
2つの前記側面は、一定の周方向幅を有して軸方向に延びる平面である、請求項1~5のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項7】
2つの前記側面は、前記第1面及び前記第2面から径方向内側に向けて延び、
前記第1面と前記側面との角度、及び、前記第2面と前記側面との角度は、110度以上150度以下である、請求項6に記載のステータ。
【請求項8】
前記側面は、径方向外側端から径方向内側端まで一定の周方向幅を有して軸方向に延びる平面ある、請求項6または7に記載のステータ。
【請求項9】
前記スロットに配置される絶縁紙をさらに備え、
前記スロットは、前記第1面及び前記第2面と、前記側面とを接続する第1接続部をさらに有し、
前記第1接続部は、前記コイル線の半径と前記絶縁紙の厚さとの和を曲率半径とするR形状を有する、請求項6~8のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項10】
前記スロットに配置される絶縁紙をさらに備え、
前記スロットには、径方向に開口するスロットオープンが径方向内側に形成され、
前記スロットは、前記スロットオープンと前記側面とを接続する第2接続部をさらに有し、
前記第2接続部は、前記コイル線の半径と前記絶縁紙の厚さとの和以下を曲率半径とするR形状を有する、請求項6~9のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項11】
前記第1面と前記第2面との連結部分は、R形状を有する、請求項1~10のいずれか 1項に記載のステータ。
【請求項12】
前記コイル線は、径方向に並ぶ複数の層をなし、
周方向に隣り合う前記層において、前記コイル線の中心を結ぶ仮想線同士の周方向距離は、コイル線の直径未満である整列部を構成する、請求項1~11のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項13】
前記整列部は、径方向外側端部に位置する、請求項12に記載のステータ。
【請求項14】
前記スロットには、径方向に開口するスロットオープンが径方向内側に形成され、
前記スロットオープンと径方向に対向する前記層の径方向幅は、前記スロットの周方向端に位置する前記層の径方向幅以上である、請求項12または13に記載のステータ。
【請求項15】
前記スロットには、径方向に開口するスロットオープンが径方向内側に形成され、
前記スロットに配置され、前記スロットオープンと前記コイル線との間に配置されるウ エッジをさらに備え、
前記整列部は、前記ウエッジと接触する、請求項12~14のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項16】
前記ステータコアは、一体型であり、
前記コイル線は、分布巻きである、請求項1~15のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項17】
軸方向に貫通する複数のスロットを有するステータコアを備えるステータの製造方法であって、
断面形状が円形のコイル線を環状に巻きつけて、コイルを形成する工程と、
前記コイルをスロットに挿入する工程と、
を備え、
前記スロットは、径方向外側端部において、軸方向に延びる平面である第1面と第2面とによって径方向外側に突出する凸形状を有し
つの前記コイル線は、前記第1面及び前記第2面の両方と対向する、ステータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ及びステータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ティースを有するステータコアと、ティース間のスロットに配置されるコイル線と、を備えるステータが知られている。このようなステータとして、例えば、特開2001-298917号公報(特許文献1)には、ティース部を周方向に湾曲させ、ティース部にコイル線を巻回した構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-298917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1には、スロット内でコイル線のデッドスペースを抑えて、占積率を向上させることが開示されている。本発明者は、上記特許文献1とは別の観点から、占積率を向上することを課題とした。
【0005】
本発明は、占積率を向上する、ステータ及びステータの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点からのステータは、軸方向に貫通する複数のスロットを有するステータコアと、スロットに配置される複数のコイル線と、を備え、コイル線は、断面形状が円形であり、スロットは、径方向外側端部において、軸方向に延びる第1面と第2面とによって径方向外側に突出する凸形状を有し、少なくとも1つのコイル線は、第1面及び第2面と対向する。
【0007】
本発明の第2の観点からのステータの製造方法は、軸方向に貫通する複数のスロットを有するステータコアを備えるステータの製造方法であって、断面形状が円形のコイル線を環状に巻きつけて、コイルを形成する工程と、コイルをスロットに挿入する工程と、を備え、スロットは、径方向外側端部において、軸方向に延びる平面である第1面と第2面とによって径方向外側に突出する凸形状を有し、少なくとも1つのコイル線は、第1面及び第2面と対向する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、占積率を向上する、ステータ及びステータの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態のステータの軸方向に垂直な断面の模式図である。
図2図2は、図1の拡大図である。
図3図3は、図2の拡大図である。
図4図4は、実施形態のステータの製造方法を示すフローチャートである。
図5図5は、変形例1のステータを示し、図3に対応する模式図である。
図6図6は、変形例2のステータを示し、図2に対応する模式図である。
図7図7は、変形例3のスロットを示す模式図である。
図8図8は、変形例4のスロットを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0011】
また、以下の説明において、ステータ1の中心軸が延びる方向、すなわちスロット24の貫通方向を「軸方向」とする。軸方向に沿った一側を下(後)側、他側を上(前)側とする。上下(前後)方向は、位置関係を特定するために用いるためであって、実際の方向を限定するものではない。すなわち、下方向は重力方向を必ずしも意味するものではない。軸方向は、特に限定されず、鉛直方向、水平方向、これらの方向に交差する方向などを含む。
【0012】
また、ステータ1の中心軸に直交する方向を「径方向」とする。さらに、ステータ1の中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」とする。
【0013】
また以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示す場合がある。よって、各構成要素の寸法及び比率は実際のものと必ずしも同じではない。また、同様の目的で、特徴とならない部分を省略して図示する場合がある。
【0014】
(ステータ)
図1及び図2に示すように、ステータ1は、モータの構成部品であって、図示しないロータと相互作用して回転トルクを発生させる。本実施形態のステータ1は、いくつかのスロット24を跨いでコイル線を巻きつける分布巻きとされる。ステータ1は、コイル10と、ステータコア20と、ウエッジ30と、絶縁紙40と、を備える。
【0015】
<コイル>
コイル10は、コイル線11が環状に巻きけられてなる。コイル線11は、断面形状が円形のコイル線(以下、丸線とも言う)である。
【0016】
コイル10は、二つのコイル辺部と、コイル渡り部と、を有する。二つのコイル辺部は、スロット24内に収容される。図1及び図2において、スロット24内に配置されるコイル線11は、コイル10のコイル辺部である。図1及び図2に示されるコイル線11の直径は、全て同じである。
【0017】
具体的には、一方のコイル辺部が収納されるスロット24と、他方のコイル辺部が収納されるスロット24とは、異なる。一方のコイル辺部が収納されるスロット24と、他方のコイル辺部が収納されるスロット24とは、図1に示すように別のスロットを介して周方向に配置されてもよく、隣り合っていてもよい(図示せず)。
【0018】
コイル渡り部は、二つのコイル辺部を繋ぐ。またコイル渡り部は、ステータコア20の軸方向両側に配置される。具体的には、軸方向上側に位置するコイル渡り部は、二つのコイル辺部の上端部を連結する上側コイルエンドである。軸方向下側に位置するコイル渡り部は、コイル辺部の下端部を連結する下側コイルエンドである。
【0019】
<ステータコア>
ステータコア20は、一体型である。ステータコア20は、中空の円柱形状に形成される。ステータコア20は、薄い珪素鋼鈑を重ねて形成される。ステータコア20は、コアバック21と、複数のティース22と、複数のアンブレラ23と、複数のスロット24と、を含む。
【0020】
コアバックは、環状である。複数のティース22は、コアバック21から径方向に延びる。また複数のティース22は、周方向に複数配置される。
【0021】
アンブレラ23は、ティース22の径方向内端部に接続され、周方向両側に延びる。アンブレラ23の周方向の幅は、ティース22の径方向内端部の周方向の幅よりも大きい。
【0022】
複数のスロット24は、周方向に隣り合うティース22間に設けられる。また複数のスロット24は、軸方向に貫通する。本実施形態のスロット24は、軸方向視において略長方形状である。
【0023】
図2に示すように、スロット24は、スロットオープン241と、側面242と、第1面243aと、第2面243bと、第1接続部244と、第2接続部245と、第3接続部246と、を有する。スロットオープン241は、径方向内側端部に位置する。側面242は、周方向両端に位置する。第1面243a及び第2面243bは、径方向外側端部に位置する。第1接続部244は、第1面243a及び第2面243bと、側面242とを接続する。第2接続部245は、スロットオープン241と側面242とを接続する。第3接続部246は、第1面243aと第2面243bとを接続する。本実施形態では、スロットオープン241、側面242、第1面243a、第2面243b、第1接続部244、第2接続部245及び第3接続部246で、スロット24の外形が画定される。
【0024】
スロットオープン241は、径方向内側に形成され、径方向に開口する。スロットオープン241は、スロット24においてコイル辺部を収容する空間の周方向幅よりも小さい。
【0025】
側面242は、径方向外側端部の周方向両端から、径方向内側に向けて延びる。ここでは、側面242は、2つ配置される。2つの側面242は、一定の周方向幅を有して軸方向に延びる平面である。本実施形態の2つの側面242は、径方向外側端から径方向内側端まで一定の周方向幅を有して軸方向に延びる平面である。側面242は、平面からなることが好ましい。
【0026】
図2では、2つの側面242は、スロット24の周方向外側端に位置する。すなわち、周方向外側端には、2つの側面242のみ位置する。2つの側面242の周方向幅は、常に一定である。
【0027】
第1面243a及び第2面243bは、径方向外側端部に位置する。すなわち、第1面243a及び第2面243bは、径方向外側端部に位置する径方向外側端面243を構成する。径方向外側端部において、第1面243aと第2面243bとによって径方向外側に突出する凸形状をなす。図2及び図3では、径方向外側端面243は、軸方向視において三角形状を有する。
【0028】
第1面243a及び第2面243bは、軸方向に延びる。第1面243a及び第2面243bは、曲面であってもよいが、平面であることが好ましい。本実施形態の第1面243a及び第2面243bは、平面からなる。なお、第1面243a及び第2面243bが曲面の場合、スロット24の内側に向かって湾曲する曲面であってもよく、スロット24の外側に向かって湾曲する曲面であってもよい。
【0029】
図3に示すように、第1面243aと第2面243bとの角度θ1は、110度以上150度以下であることが好ましく、120度であることが最も好ましい。角度θ1は、第1面243aの延びる方向と、第2面243bの延びる方向との交差する角度である。
【0030】
2つの側面242は、第1面243a及び第2面から径方向内側に向けて延びる。第1面243aと側面242との角度θ2、及び、第2面243bと側面242との角度θ3は、110度以上150度以下であることが好ましく、120度であることが最も好ましい。角度θ2は、第1面243aの延びる方向と、側面242の延びる方向との交差する角度である。角度θ3は、第2面243bの延びる方向と、側面242の延びる方向との交差する角度である。
【0031】
第1接続部244は、第1面243a及び第2面243bと、側面242とを接続する。詳細には、第1接続部244は、第1面243aの周方向外側端及び第2面243bの周方向外側端と、側面242の径方向外側端とを接続する。ここでは、第1接続部244は、2つ配置される。
【0032】
第1接続部244は、コイル線11の半径と絶縁紙40の厚さとの和を曲率半径とするR形状を有する。これにより、第1接続部244にコイル線11を配置できるので、占積率をより向上できる。曲率半径は0.6mm程度が好ましい。
【0033】
図2に示すように、第2接続部245は、スロットオープン241の周方向両端と、側面242の径方向内側端とを接続する。ここでは、第2接続部245は、2つ配置される。
【0034】
第2接続部245は、コイル線11の半径と絶縁紙40の厚さとの和以下を曲率半径とするR形状を有する。これにより、第2接続部245にコイル線を配置できるので、占積率をより向上できる。また、アンブレラ23の強度を向上できる。曲率半径は0.6mm以上0.7mm以下が好ましい。
【0035】
図3に示すように、第3接続部246は、第1面243aと第2面243bとを接続する。すなわち、第3接続部246は、第1面243aと第2面243bとを連結する連結部分である。第3接続部246は、R形状を有する。図3では、第3接続部246の径方向位置と、第1面243a及び第2面243bと対向するコイル線11aの径方向位置とは、同じである。
【0036】
本実施形態では、仮想線Vと直交する水平線Wと第1面243aとの角度θ4は、15度以上35度以下が好ましく、30度が最も好ましい。仮想線Vと直交する水平線Wと第2面243bとの角度θ5は、15度以上35度以下が好ましく、30度が最も好ましい。角度θ4は、第1面243aの延びる方向と、水平線Wの延びる方向との交差する角度である。角度θ5は、第2面243bの延びる方向と、水平線Wの延びる方向との交差する角度である。なお、仮想線Vは、後述する径方向に並ぶコイル線11の中心を結ぶ線である。
【0037】
<ウエッジ>
ウエッジ30は、スロット24に配置される。本実施形態では、ウエッジ30は、スロット24内に配置されたコイル10と、スロットオープン241との間に配置される。ウエッジ30は、スロットオープン241を塞ぐ。ウエッジ30は、ステータコア20とコイル10とを絶縁する。ウエッジ30の軸方向長さは、スロット24の軸方向長さよりも大きい。
【0038】
本実施形態のウエッジ30は、軸方向視においてU字形状である。詳細には、周方向に延びる周方向部と、周方向部の両端部から径方向外側に向けて延びる2つの径方向部と、を含む。周方向部及び径方向部は、1つの部材で構成されてもよく、互いに異なる部材が接続されてもよい。
【0039】
<絶縁紙>
絶縁紙40は、スロット24に配置される。絶縁紙40は、スロット24に挿入されるコイル10を被覆する。絶縁紙40は、スロット24において径方向内側を除く空間を区画するティース22に沿って配置される。本実施形態の絶縁紙40は、U字形状である。詳細には、図1に示すように、周方向に延びる周方向部と、周方向部の両端部から径方向内側に向けて延びる2つの径方向部と、を含む。図1では、絶縁紙40の開口とウエッジ30の開口とは、互いに反対の方向である。絶縁紙40の厚さは、限定されないが、例えば0.2mmである。
【0040】
なお、絶縁紙40は、ステータコア20の軸方向一側の端面から突出して折り返されたカフス部(図示せず)を有してもよく、絶縁紙40は、ステータコア20の軸方向他側の端面から突出して折り返されたカフス部(図示せず)を有してもよい。
【0041】
<コイル線の配置>
図3に示すように、スロット24は、径方向外側端部において、軸方向に延びる第1面243aと第2面243bとによって径方向外側に突出する凸形状を有する。図3に示すように、少なくとも1つのコイル線11aは、第1面243a及び第2面243bと対向する。すなわち、コイル線11aは、第1面243a及び第2面243bの両方に対向する。このように、スロット24の径方向外側端部において、径方向外側に突出する凸形状を構成する第1面243a及び第2面243bに対向するように、少なくとも1つのコイル線11aを配置することによって、占積率を向上できる。
【0042】
本実施形態では、少なくとも1つのコイル線11aは、凸形状の径方向内側に配置される絶縁紙40と接触する。
【0043】
コイル線11は、凸形状に沿って並ぶ。ここでは、第1面243aに沿って3本のコイル線11が並ぶとともに、第2面243bに沿って3本のコイル線11が並ぶ。
【0044】
図2に示すように、スロット24内に配置されるコイル10のコイル線11は、径方向に並ぶ複数の層X1~X5をなす。層をなす列の数は限定されないが、4列以上6列以下が好ましく、5列がより好ましい。図2では、周方向左側から右側に向けて、層をX1~X5としている。
【0045】
周方向に隣り合う層において、コイル線11の中心を結ぶ仮想線V同士の周方向距離Lは、コイル線11の直径未満である整列部を構成する。整列部は、スロット24内においてコイル線11が俵積みされた部分である。換言すると、整列部は、3つのコイル線11を互いに接触させて、3つのコイル線11の中心C1、C2、C3が軸方向視において正三角形になるように配置される。これにより、側面242が一定の周方向幅を有して軸方向に延びる平面であるスロット24に、コイル線11を俵積みにできるので、占積率をより向上できる。
【0046】
整列部は、径方向外側端部に位置する。径方向外側端部とは、スロット24の径方向中心よりも外側を指す。スロット24の径方向外側では、コイル線を俵積みし易いので、占積率を向上したステータを容易に実現できる。
【0047】
図2及び図3では、整列部は、スロット24の径方向外側端面243に位置する。換言すると、コイル線11が俵積みされた整列部は、第1面243a及び第2面243bと対向する。さらに換言すると、第1面243a及び第2面243bと対向するコイル線11aは、整列部を構成する。これにより、スロット24の径方向外側端面243に、コイル線を俵積みすることができので、占積率をより向上できる。
【0048】
本実施形態では、整列部は、スロット24の第1面243a及び第2面243bの径方向内側に配置される絶縁紙40と接触する。
【0049】
また、第3接続部246と対応する層は、整列部を構成する。すなわち、第1面243a及び第2面243bと対向するコイル線11aを含む層は、整列部を構成する。
【0050】
また、本実施形態では、整列部は、径方向内側端部に位置する。径方向内側端部とは、径方向中心よりも内側を指す。
【0051】
図2では、整列部は、ウエッジ30と接触する。これにより、スロットオープン241近傍に、コイル線11を俵積みすることができるので、占積率をより向上できる。
【0052】
また、コイル線11は、第1接続部244の径方向内側に配置される絶縁紙40と接触する。ここでは、第1接続部244の径方向内側に配置される絶縁紙40と接触するコイル線11は、整列部を構成する。
【0053】
また、コイル線11は、第2接続部245の径方向内側に配置される絶縁紙40と接触する(図示せず)。第2接続部245の径方向内側に配置される絶縁紙40と接触するコイル線11は、整列部を構成する。
【0054】
本実施形態では、スロットオープン241と対向する層X3はウエッジ30と接触する。そして、その層X3と周方向に隣接する層X2、X4は、スロット24の径方向外側端面243に配置される絶縁紙40と接触してもよく、接触しなくてもよい。なお、ここでは、スロットオープン241と対向する層X3は、周方向中心に位置する層である。
【0055】
また、スロットオープン241と対向する層X3はスロット24の径方向外側端面243に配置される絶縁紙40と接触するが、絶縁紙40と接触しなくてもよい。スロットオープン241と対向する層X3と周方向に隣接する層X2、X4は、図2ではウエッジ30と接触していないが、ウエッジ30と接触してもよい。
【0056】
また、周方向両端に位置する層X1、X5は、側面242の径方向内側に配置される絶縁紙40と接触する。さらに、周方向両端に位置する層X1、X5の径方向最も外側に位置するコイル線11は、第1接続部244の径方向内側に配置される絶縁紙40と接触する。
【0057】
なお、図2では、コイル線11の全体が整列部を構成するが、コイル線11の一部が整列部を構成し、かつ残部が整列部を構成しなくてもよい。
【0058】
スロットオープン241と径方向に対向する層X3の径方向幅は、スロット24の周方向端に位置する層X1、X5の径方向幅以上である。なお、図2では、スロットオープン241と径方向に対向する層X3の径方向幅は、スロット24の周方向端に位置する層X1、X5の径方向幅より大きい。スロットオープン241と径方向に対向する層X3を構成するコイル線11をスロット24内に多く配置できるので、占積率を向上できる。
【0059】
また、スロットオープン241と径方向に対向する層X3の径方向幅は、その層X3と周方向に隣接する層X2、X4の径方向幅以上である。なお、図2では、スロットオープン241と径方向に対向する層X3の径方向幅は、層X2、X4の径方向幅よりも大きい。
【0060】
(ステータの製造方法)
図1図4を参照して、本実施形態の軸方向に貫通する複数のスロット24を有するステータコア20を備えるステータ1の製造方法について説明する。詳細には、環状のコアバック21と、コアバック21から径方向に延びるとともに、周方向に複数配置されるティース22と、ティース22の径方向内端部に接続されるとともに、周方向両側に延びるアンブレラ23と、周方向に隣り合うティース22間に設けられ、軸方向に貫通するスロット24と、を含む一体型のステータコア20を備える、ステータ1の製造方法である。
【0061】
まず、図4に示すように、ステータコア20を形成する(ステップS10)。この工程(S10)では、図2及び図3に示すように、径方向外側端部において、軸方向に延びる第1面243aと第2面243bとによって径方向外側に突出する凸形状を有するスロット24を形成する。
【0062】
なお、本実施形態では、後述するコイル10をスロット24に挿入する前に、スロット24に絶縁紙40を配置する。
【0063】
また、図4に示すように、断面形状が円形のコイル線11を環状に巻き付けてコイル10を形成する(ステップS20)。この工程(S20)では、コイル線11を環状に巻き付けて、スロット24内に収容される二つのコイル辺部と、二つのコイル辺部を繋ぎ、ステータコア20の軸方向両側に配置されるコイル渡り部と、を有するコイル10を形成する。
【0064】
次に、コイル10をスロット24に挿入する(ステップS30)。この工程(S30)では、例えば、以下のように実施する。
【0065】
具体的には、工程(S20)で形成した環状のコイル10を、ステータコア20の径方向内側に配置されるブレードに保持する。次に、ブレードの径方向内側に配置されたコイル移動機構により、コイル10を軸方向に移動する。詳細には、コイル移動機構を軸方向一側から他側に向けて移動する。これにより、コイル10の2つのコイル辺部をスロット24に配置するとともに、軸方向一側のコイル渡り部は、ステータコア20の一側でスロット24間を跨ぐとともに、他側のコイル渡り部は、ステータコア20の他側でスロット24間を跨ぐ。
【0066】
なお、本実施形態の工程(S20)では、スロット24にコイル10を挿入する際に、コイル10とともに、ウエッジ30を挿入する。
【0067】
以上の工程(S10~S30)を実施することにより、図1及び図2に示すステータ1を製造することができる。
【0068】
以上説明したように、本実施形態のステータ1及びステータ1の製造方法によれば、スロット24の径方向外側端部において、径方向外側に突出する凸形状を構成する第1面243a及び第2面243bに対向するように、少なくとも1つの丸線を配置することによって、占積率を向上できる。
【0069】
また、スロット24の径方向外側端部において、径方向外側に突出する凸形状を構成する第1面243a及び第2面243bに対向するコイル線11aを含むように整列部を構成することができる。これにより、コイル線11aを俵積みの起点にすることで、整列部を容易に形成することができる。このように、本実施形態では、スロット24の径方向外側端部を凸形状にすることによって、径方向外側からコイル線11の配置を規制することができる。したがって、本実施形態のスロット24にコイル線11を俵積みすることによって、占積率をさらに向上することができる。
【0070】
(変形例1)
上述した実施形態では、凸形状の径方向外側端は、周方向の中心に位置するが、これに限定されない。本変形例では、図5に示すように、凸形状の径方向外側端は、周方向の中心から周方向の一側(図5では右側)にずれる。
【0071】
本変形例では、径方向に並ぶ層の列は、4列である。また、第1面243aに沿って3本のコイル線11が並ぶとともに、第2面243bに沿って2本のコイル線11が並ぶ。
【0072】
(変形例2)
上述した実施形態では、スロット24内のコイル線11全体が俵積みされているステータを例に挙げて説明したが、本発明のステータでは、スロット24内のコイル線11の一部が俵積みされてもよく、図6に示すようにスロット24内のコイル線11の全部が俵積みされていなくてもよい。本変形例では、図6に示すように、スロット24内のコイル線11は、径方向及び周方向に並ぶ。
【0073】
詳細には、図6に示すように、スロット24内に配置されるコイル線11は、径方向に並ぶ複数の層X1~X4をなす。
【0074】
また、4つのコイル線11を互いに接触させて、4つのコイル線11の中心C1、C2、C3、C4が軸方向視において正方形になるように配置される。周方向に隣り合う層において、コイル線11の中心を結ぶ仮想線V同士の周方向距離Lは、コイル線11の直径と同じである。
【0075】
(変形例3)
上述した実施形態では、スロット24の2つの側面242が一定の周方向幅を有して軸方向に延びる平面である構造を例に挙げて説明したが、本発明のスロット24の側面242は限定されない。本変形例のスロット24の側面242は、図7に示すように、径方向外側に向けて周方向幅が広くなる側面242を有する。
【0076】
(変形例4)
上述した実施形態では、スロット24の径方向外側端面243は、第1面243aと第2面243bと第3接続部246とからなるが、これに限定されない。本変形例では、図8に示すように、径方向外側端面243は、第3面243cと第4面243dとをさらに有する。第3面243cは、第1面243aの周方向外側端と第1接続部244とを連結する。第4面243dは、第2面243bの周方向外側端と第1接続部244とを連結する。第3面243c及び第4面243dは、側面242と直交する。
【0077】
(変形例5)
上述した実施形態では、図1に示すように、コイルを挿入する2つのスロット24は、スロット24を4つ挟んだ一のスロット24と他のスロット24とされるが、これに限定されない。
【0078】
(変形例6)
上述した実施形態では、2つのスロット24に1つのコイル10を挿入する方法を例に挙げて説明した。4以上のスロット24に、複数のコイル10を同時に挿入してもよい。
【0079】
今回開示された実施形態及び変形例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施形態及び変形例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0080】
1 :ステータ
10 :コイル
11,11a:コイル線
20 :ステータコア
24 :スロット
30 :ウエッジ
40 :絶縁紙
241 :スロットオープン
242 :側面
243 :径方向外側端面
243a :第1面
243b :第2面
244 :第1接続部
245 :第2接続部
246 :第3接続部(連結部分)
C1,C2,C3,C4:中心
L :周方向距離
V :仮想線
X1,X2,X3,X4,X5:層
θ1,θ2,θ3:角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8