(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】遠隔操作装置
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20240709BHJP
E02F 9/16 20060101ALI20240709BHJP
E02F 9/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
E02F9/26 A
E02F9/16 B
E02F9/00 Z
(21)【出願番号】P 2021058148
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 均
(72)【発明者】
【氏名】澤田 祐介
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/308074(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106444734(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/328030(US,A1)
【文献】米国特許第9982415(US,B2)
【文献】特開2020-200660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00-9/28
G05D 1/00
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業を実行する機械を操作者が遠隔操作する遠隔操作装置であって、
前記遠隔操作装置は、操作者が座る座部を有するシートと、
前記シートを保持しているシート保持装置と、
前記シートを動かす駆動装置と、
前記遠隔操作装置の全体の処理を行う演算処理ユニットを含む電子機器類を収容する複数の筐体と、を備え、
前記複数の筐体は、上部に前記シート保持装置が固定されている第1筐体と、前記第1筐体の前記操作者の前方向に接して固定されている第2筐体と、を有し、
前記駆動装置と、前記演算処理ユニットとは、前記第1筐体に設けられている遠隔操作装置。
【請求項2】
前記遠隔操作装置は、前記操作者の足部を載せて保持する足保持部を有し、
前記第1筐体は、前記第1筐体の上部を覆う第1上板を有し、
前記第2筐体は、前記第2筐体の上部を覆う第2上板を有し、
前記第2上板は、前記第1上板より低い位置に配置されており、
前記足保持部は、前記第2上板の上方、かつ、前記座部の高さ以下に位置している、請求項1に記載の遠隔操作装置。
【請求項3】
前記第1筐体と前記第2筐体とは、互いに接する接続面において、それぞれ開口部を有しており、
前記それぞれの開口部は互いに連通している、請求項1、又は2に記載の遠隔操作装置。
【請求項4】
前記第2筐体は、前記演算処理ユニットが前記演算処理ユニット以外の装置と通信を行う通信装置を収容している、請求項1~3の何れか一項に記載の遠隔操作装置。
【請求項5】
前記操作者の前面に配置され、遠隔操作される前記機械から受信した前記機械の前方視野を表示するモニタ装置を備え、
前記モニタ装置は、複数の画面部と、前記複数の画面部を保持する複数の保持部材とを有し、
前記複数の保持部材のそれぞれの一端部は前記第2筐体に固定されている、請求項1~4の何れか一項に記載の遠隔操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械を遠隔操作するための改良された操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特許文献1に開示されているように、作業現場の作業機械を遠隔操作することにより作業を行うシステムが開発されている。特許文献1の遠隔操作システムでは、実機の操縦席と同じように製作された遠隔操作装置に操作者が搭乗して遠隔操作を行う。操縦装置には、操作者の前面にモニタが備えられており、操作者は実車に搭乗している時と同じ視野を見られることで、実車に乗車している感覚で作業機械を操縦することができる。
【0003】
遠隔操作装置は、モニタと、レバー等の操作装置類が装備されたシート装置と、そのシート装置が載せられて固定される筐体と、を含んで構成されている。筐体は、操作者がシート装置に乗り降りする際のステップとして機能し、操作者が筐体の上に立ち上がったり、操作者がシート装置に搭乗したりしても変形しないように頑丈に作られている。また、筐体内部の空間を利用して操縦装置を制御する制御用PCを含む電子装置類が収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように構成された筐体は非常に重く、移動が困難であった。そのため、多人数により移動させる必要があり、搬送性が悪かった。この問題に対し、従来の筐体を単純に小さい2つの筐体で構造にすることで搬送性を高めることが考えられるが、組立設置時の安定性に懸念点があり実現するのに壁があった。また、筐体の上に固定されたシートに操作者が座るので、重心高が高くなる。この状態で筐体を小型化すると、高い重心高に比べて床接地面積が小さくなり、操縦装置の転倒等、操縦装置の不安定化につながる可能性があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、搬送性を高めながら、安定性がよく、利便性が良い遠隔操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による遠隔操作装置は、作業を実行する機械を操作者が遠隔操作する遠隔操作装置であって、遠隔操作装置は、操作者が座る座部を有するシートと、シートを保持しているシート保持装置と、シートを動かす駆動装置と、遠隔操作装置の全体の処理を行う演算処理ユニットを含む電子機器類を収容する複数の筐体と、を備え、複数の筐体は、上部にシート保持装置が固定されている第1筐体と、第1筐体の前記操作者の前方向に接して固定されている第2筐体と、を有し、駆動装置と、前記演算処理ユニットとは、第1筐体に設けられている。
【0008】
本発明によれば、遠隔操作装置が備える筐体は、2分割構成とされているため、搬送性が高められている。搬送性の向上とともに、操作者が座り重心高が高く重量バランスがアンバランス傾向となる操縦装置において、比較的重量物である、駆動装置と演算処理ユニットとを、上部にシートを保持する筐体内に配置することで重心高を下げることに寄与し、重量バランスよい操縦装置とすることができる。また、第2筐体に対してシートを保持する第1筐体は重量が大きく、遠隔操作装置全体の重心の位置を第1筐体に位置させることができる。遠隔操作装置の組立設置時においては、駆動装置や演算処理ユニットを備え比較的に重量物である第1筐体を設置した後に、第2筐体やシート等を設置していくことで、遠隔操作装置全体の重心の位置が第1筐体に位置しているので、重量バランスがアンバランスとならず安定性を保つことができる。
【0009】
また、本発明による遠隔操作装置は、操作者の足部を載せて保持する足保持部を有し、第1筐体は、第1筐体の上部を覆う第1上板を有し、第2筐体は、第2筐体の上部を覆う第2上板を有し、第2上板は、第1上板より低い位置に配置されており、足保持部は、第2上板の上方、かつ、座部以下の高さに位置していることが好ましい。
【0010】
本発明によれば、2つの筐体のそれぞれの上面のうち、シートが固定されている第1筐体の上面を高く構成することで操作者のいすの座面を高い位置に保持するとともに、足側の第2筐体の上面を低くすることで、操作者の足部の十分なスペースを確保し、操縦装置を設置されている床面からの乗り降りをしやすくできる。すなわち、乗り降りがしやすく、操縦しやすい操縦装置にできる。また、第2筐体の上面を低くすることにより、駆動装置によるシートの傾きが大きい場合でも足保持部が第2筐体に干渉するのが防止される。
【0011】
また、本発明による遠隔操作装置は、第1筐体と第2筐体とは、互いに接する接続面において、それぞれ開口部を有しており、それぞれの開口部は互いに連通していることが好ましい。
【0012】
本発明によれば、第1筐体と第2筐体とのそれぞれの開口部が互いに連通して冷却風を流すことができる構造にすることにより、本来、開口部がない面同士の接続面である場合に対して、第1筐体、及び、第2筐体に配置されている電子機器類の冷却性を、装置を追加することなく向上させることができる。
【0013】
また、本発明による遠隔操作装置の第2筐体は、演算処理ユニットが演算処理ユニット以外の装置と通信を行う通信装置を収容していることが好ましい。
【0014】
本発明によれば、メンテナンス頻度が多い通信装置を1つの筐体に集中配置して、メンテナンス性が向上できる。通信装置は、シートが固定されている第1筐体ではなく第2筐体に配置されるので、シートが搭載されている第1筐体に配置する場合と比べてシートが邪魔にならずメンテナンスしやすい。
【0015】
また、本発明による遠隔操作装置は、操作者の前面に配置され、遠隔操作される機械から受信した機械の前方視野を表示するモニタ装置を備え、モニタ装置は、複数の画面部と、複数の画面部を保持する複数の保持部とを有し、記複数の保持部のそれぞれの一端部は第2筐体に固定されていることが好ましい。
【0016】
本発明によれば、大きいモニタ装置を最低限の保持機構により、筐体に集中配置して、確実に固定することができる。さらに、筐体とモニタ装置との距離を一定に保つことができ、距離の調整作業が不要である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる遠隔操作装置の左後面斜視図である。
【
図3】
図1の遠隔操作装置のシートとモニタ装置とを除いた状態を示した左後面斜視図である。
【
図5】第2上板を除いた第2筐体と、第1筐体との接続部分を示した前面斜視図である。
【
図6】第1筐体、及び第2筐体のそれぞれの第1上板、及び第2上板を除いた状態を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1、及び
図2を参照して、本発明に係る遠隔操作装置100を説明する。遠隔操作装置100は、遠隔操作装置100から離れた場所にある図示しない作業機械を遠隔操作する装置である。作業機械はその種類を限定しないが、例えば、建設機械のクローラショベルである。
【0019】
クローラショベルは、クローラ式の下部走行体と、旋回機構を介して下部走行体に搭載されている上部旋回体とを備えている。上部旋回体には、キャブと、バケットを有するアームを備えた作業アタッチメントが設けられている。キャブには、操作レバー等を遠隔操作可能な制御機構と、キャブのフロントウィンドウ越しに周囲環境を撮像する撮像装置とが設けられている。撮像装置により撮像された画像は、遠隔操作装置100に無線送信されて、操作者が視認することができる。操作者は、送信された画像を見ながら遠隔操作装置100を操作することで、遠隔操作装置100から制御信号が送信され、作業機械が遠隔操作される。作業機械には3軸方向の加速度を検出するジャイロセンサ等の加速度センサが搭載されており、検出された加速度信号は遠隔操作装置100に無線送信される。
【0020】
遠隔操作装置100は、シート10と、シート保持装置20と、駆動装置30と、モニタ装置50と、第1筐体60と、第2筐体70とを備えている。シート10は、座部11と、シート10の左側部と右側部とにそれぞれアームレスト12、12を備えている。左側のアームレスト12は操作レバー13、右側のアームレスト12は操作レバー13と表示パネル14とを有している。表示パネル14は遠隔操作する作業機械、アタッチメント、及びスイッチ類の現在の状態を示す情報が表示される。表示パネル14は、例えば、液晶パネルである。
【0021】
図3及び
図4を参照してシート保持装置20を説明する。シート保持装置20は、第1の筐体60の上にシート10を上下動可能に保持している。シート保持装置20は、保持軸21と、水平板24とを有している。水平板24は平らな板部材であり、水平板24の下面中央部で保持軸21に支えられている。水平板24は、左右方向に平行にされた1辺が前側に配置された略三角形に形成され、後ろ側の頂点が前側の1辺と平行な直線でカットされた形状に形成されている。
【0022】
保持軸21は、直径がわずかに異なる2つの中空管がそれぞれ、外筒22と内筒23として組み合わされた二重管構造である。外筒22の上端は水平板24の下面に固定され、内筒23の下端は第1筐体60の上面に固定されている。外筒22と内筒23とは互いに固定されておらず、上下方向に相対移動可能である。外筒22に差し込まれている内筒23の上端は開口されており、外筒22と内筒23とに囲まれた内部空間には、気密にされて高圧ガスが充填されている。シート10、及び操作者の質量は、高圧ガスの反発力で支えられている。したがって、シート10は駆動装置30によりストローク可能範囲内で上下動が可能である。
【0023】
次に、駆動装置30を説明する。駆動装置30は、シート10を回転させるとともにシート10に振動を与え、操作者に実機での操作感を体感させる装置である。駆動装置30は、回転装置31と、振動装置41とを有している。
【0024】
回転装置31は、水平板24の上面に設けられている回転軸32と、回転軸32の上に載せられている回転板33と、回転板33を回転させる駆動力を発生する駆動力装置34と、駆動力装置34で発生した駆動力を回転板33に伝達する連結部材36とを有している。
【0025】
回転板33はシート10を回動可能に載置しており、駆動力装置34から伝達される駆動力により、シート10とともに回転する。駆動力装置34は、加速度信号に応じて駆動力を発生させる。また、回転板33の前部には、操作者がシート10に座っている時に足を載せる足保持部37が設けられている。また、足保持部37には、走行レバー15が固定されている。駆動力装置34はリニア駆動装置であり、直方体形状に形成されて水平板24の後端部に設けられている。リニア駆動装置の駆動形式は限定されないが、例えば、エアシリンダ、回転モータとボールねじとの組み合わせ、又はリニアモータ等の何れでもよい。連結部材36は、駆動力装置34と、回転板33の後端部とを連結している。
【0026】
連結部材36の駆動力装置34側端部には、駆動力装置34の駆動シャフト35が貫通している図示しない長穴が形成されている。駆動力装置34の駆動シャフト35は直線状に動き、回転板33の後端部に固定されている連結部材36は、回転板33の回転に応じて円弧状に動く。したがって、連結部材36の位置は、遠隔操作装置100の前後方向に対する回転板33の回転角度が大きくなるほど、駆動力装置34の直線移動位置に対し相対移動して離れることになる。そのため、連結部材36が駆動シャフト35に対して相対移動する際に、駆動シャフト35が長穴内を相対移動しながら駆動力装置34の駆動力を伝達できるように構成されている。すなわち、回転板33の後端部に連結された連結部材36は、回転板33の回転角度位置による連結部材36と駆動力装置34との位置関係の変化を連結部材36の長穴により吸収しながら、駆動力装置34から回転板33に駆動力を伝達している。
【0027】
振動装置41は、複数のシリンダ42を有している。振動装置41はさらに、それぞれのシリンダ42の上部に設けられた押圧板43と、押圧板43の下面に固定されている複数のストッパ部材44を有している。シリンダ42は、第1筐体60に3つ設けられており、略三角形形状に形成された水平板24に合わせて、前側に2つ、後ろ側に1つ配置されている。シリンダ42の上部は、押圧板43のほぼ中央に固定されている。押圧板43は、遠隔操作される作業機械からの加速度信号に応じて、シリンダ42を上下動し、水平板24の下面を押圧してシート10を振動させる。シリンダ42の駆動源は、例えば、エア圧、又は電動モータである。
【0028】
図3及び
図4に示されているように、振動装置41が作動していない時には、押圧板43の上下方向位置は、押圧板43の上下ストローク範囲の下端に位置している。シリンダ42の非作動時において、押圧板43は、それぞれの押圧板43の下面において、シリンダ42の周囲を取り囲んでそれぞれ4つずつ配置されているストッパ部材44により保持されている。
【0029】
図1と
図2と
図7とを参照して、モニタ装置50を説明する。モニタ装置50は、第1画面部51と、第2画面部52と、カメラ53と、モニタ支持部54とを有している。また、第1画面部51、及び第2画面部52はそれぞれ、左右方向に連続して配置された3つのディスプレイを有している。第1画面部51と、第2画面部52とは、撮像された作業機械の前方と左右の画像を表示し、操作者はモニタ装置50の画像を視認しながら遠隔操作する。モニタ支持部54は、金属製の中空管で形成された、2本の保持部材55と、それぞれの保持部材55に固定された補助部材57とを有している。それぞれの保持部材55の上部には、第1画面部51と、第2画面部52とが固定具で固定されている。
【0030】
また、それぞれの保持部材55の下端側の一端部56は、第2筐体70の第2前板73に確実に固定されて、保持部材55が垂直になるように保持されている。保持部材55が第2前板73に固定されていることで、遠隔操作装置100を分解後、再度組み立てる際に、シート10とモニタ装置50との間隔を毎回調整しながら合わせる必要がなく、組み立てることで所定の間隔に調整される。それぞれの保持部材55の一端部56には補助部材57が固定されている。補助部材57は、補助部材57の下端部が床面に接しており、重量物であるモニタ装置50を第2筐体70とともに確実に支えるように構成されている。なお、保持部材55と、モニタ装置50、及び補助部材57を固定している固定具は限定されないが、例えば、U字状に形成された金属製ブラケットと、ボルトナット等からなる締結具でよい。金属製ブラケットとボルトナットの締結具により、遠隔操作装置100を容易に分解及び組み立てることができる。
【0031】
図3~
図5を参照して、複数の筐体60、70を説明する。複数の筐体60、70は、上部にシート10等を載置しているとともに、内部に電子機器類を収容する部材である。遠隔操作装置100の搬送性をよくするために、筐体60、70は複数で構成され、第1筐体60と、第2筐体70とを有している。第1筐体60と、第2筐体70とは、左右方向長さは同じであり、前後方向長さ、及び上下方向長さは異なっている。第1筐体60の前方に、第2筐体70が接続されている。
【0032】
第1筐体60は直方体であり、上部に駆動装置30、シート保持装置20、及びシート10を載せており、内部に電子機器類である第1演算処理ユニット81と、第2演算処理ユニット82と、シートコントローラ84とを収容している。第1演算処理ユニット81は、モニタ装置50の出力制御、表示パネル14の出力制御および入力認識、操作レバー13や走行レバー15の入力を認識する。第2演算処理ユニット82は、遠隔操作装置100と遠隔操作対象となる作業機械との通信を管理し、作業機械から無線送信される映像や傾斜の信号を第1演算処理ユニット81に受け渡し、第1演算処理ユニット81で認識された操作等の入力の入力情報を作業機械に送信する。シートコントローラ84は、加速度信号に基いて駆動力装置34と振動装置41とを制御する。直方体に形成された第1筐体60の6面の各位置にはそれぞれ、第1底板61、2枚の第1側板62、62、第1前板63、第1後板64、及び第1上板65が配置されている。長方形に形成されている第1底板61の下面には、第1底板61の各角部周辺に移動防止具を含むキャスタ66が配置されている。
【0033】
図6は、第1筐体60、及び第2筐体70の内部に配置された電子機器類を示している。第1筐体60には、比較的質量が重い2つの第1演算処理ユニット81、及び第2演算処理ユニット82が配置されている。第1演算処理ユニット81と、第2演算処理ユニット82とは、第1筐体60内において、左右方向、及び前後方向において、シート10の中心位置に対応してバランスが取れるように配慮されている。第1演算処理ユニット81と、第2演算処理ユニット82とは、第2筐体の左右方向における中心軸に対して、ほぼ対称の位置に配置されている。
【0034】
例えば、第1演算処理ユニット81は左右方向中心軸に対して一方向側に距離Kで配置され、第2演算処理ユニット82は第1演算処理ユニット81と反対側の他方向側に距離0.8Kから1.2K、(K±0.2K程度)の範囲に配置されている。また、第1筐体60内において、前後方向の配置についても、左右方向と同様である。例えば、第1演算処理ユニット81は前後方向中心軸に対して一方向側に距離Lで配置され、第2演算処理ユニット82は第1演算処理ユニット81と反対側の他方向側に距離0.8Lから1.2L、(L±0.2L程度)の範囲に配置されている。すなわち、第1演算処理ユニット81と、第2演算処理ユニット82とは、第1筐体60の上方に配置されているシート10等の装置、及びシート10に乗り込む操作者のトータルの重心位置と、左右方向、及び前後方向においてほぼ近い位置に配置されており、質量バランスが取れるように配置されている。また、シート10等の装置、及びシート10に乗り込む操作者のトータルの重心位置は、第2筐体70の上下方向において、高い位置にある。これに対し、第1演算処理ユニット81と、第2演算処理ユニット82とは、低い位置に配置されており、遠隔操作装置100のトータルの重心高を下げることにも寄与している。
【0035】
第1上板65、及び第1底板61には、多数の小さな切欠き68が設けられている。また、左右の第1側板62、62にはそれぞれ、排気ファン69、69が設けられている。したがって、切欠き68から導入される空気は、第1筐体60内に収容されている演算処理ユニット81を冷却しながら流れ、左右の第1側板62、62に設けられている排気ファン69、69から排出される。また、
図4に示されているように、第1筐体60の第2筐体70との接続面である第1前板63には、開口である第1開口部67が設けられている。
【0036】
第2筐体70は、第2筐体70の内部に電子機器類である通信装置83を収容している。直方体に形成された第2筐体70の6面の各位置にはそれぞれ、第2底板71、2枚の第2側板72、72、第2前板73、第2後板74、及び第2上板75が配置されている。通信装置83は、遠隔操作の対象である作業機械との通信を行う装置であり、第2演算処理ユニット82によって制御される。通信装置83は、送受信部と、当該送受信部と第1演算処理ユニット81や第2演算処理ユニット82などの他の制御機器とを接続するスイッチングハブにより構成される。通信装置83と他の制御機器とは、例えば、LANケーブルで接続される。長方形に形成されている第2底板71の下面には、第2底板71の各角部周辺に移動防止具を含むキャスタ66が配置されている。また、第2底板71には、多数の小さな切欠き68が設けられている。なお、第2上板75には、切欠き68は設けられていない。第2上板75は足保持部37に近いこと、及び第2上板75の上方からのほこりが入りやすいことから、第2筐体70内へ異物が侵入するのを防止するためである。
【0037】
遠隔操作装置100のソフトウェアを更新する際には、例えば、業務用PCと遠隔操作装置100とを接続して、第1演算処理ユニット81や第2演算処理ユニット82に搭載されているソフトウェアを書き換える必要がある。この際に、通信装置83のスイッチングハブに業務用PCを接続することで遠隔操作装置100のソフトウェアを更新できるようにしている。
また、遠隔操作装置100で動作不具合が発生した場合や定期点検時には、最初に通信信号の中継点である通信装置83を調べることで、通信装置83に信号が到達しているかが確認される。通信装置83が故障している場合には、通信装置83や通信装置83に接続されるケーブル等の周辺部品の交換作業が行われる。
第2筐体70は上方に何も配置されておらず、第2上板75を容易に取り外し可能であることから、収容されている通信装置83を確認し易い。したがって、ソフトウェアの更新作業や通信装置83のメンテナンス作業を効率的に行うことができる。
【0038】
第2筐体70は第1筐体60と同様に直方体であるが、前後方向長さがより長く、上下方向長さがより短く形成されている。第2筐体70の高さが第1筐体60の高さより低く形成されているのは、以下の理由である。第1の理由は、遠隔操作装置100に操作者が搭乗する場合には、高い座面のシート10ほど乗降しにくく、第1筐体60より低い第2筐体70を乗り込み用のステップとして利用すると乗り込み易いためである。
【0039】
第2の理由は、倒れにくく安定性が高い遠隔操作装置100を構成するためである。
図4に示されているように、第2筐体70の上には、操作者の足を載せる足保持部37が位置している。第2筐体70と足保持部37とを干渉しないように構成する必要があるため、第2筐体70の第2上板75の高さを所定の高さに抑えることで、足保持部37の高さ位置を低くすることができる。その結果、シート10を低い位置に配置でき、遠隔操作装置100全体の高さを低くすることができる。よって、遠隔操作装置100が倒れにくくなり、安定性が向上する。特に、遠隔操作装置100の作動中にシート10は回転及び振動するため、シート10に座っている操作者にとって、シート10は高い位置より低めの位置の方が、安定感を感じて好ましい。遠隔操作装置100は、第2筐体70の第2上板75を第1筐体60の第1上板65より低く配置していることで、遠隔操作装置100の安定性の向上と、操作者の遠隔操作装置100への乗降し易さとを図っている。
【0040】
左右のそれぞれの第2側板72、72には、軽量化のための1つ以上の側板開口部79が設けられている。また、第2筐体70の第1筐体60との接続面である第2後板74には、
図4に示されているように、開口である第2開口部77が設けられている。
図5には、第2上板75を省いた、第1筐体60と第2筐体70との接続面の前方斜視図が示されている。第1筐体60の第1開口部67と、第2筐体70の第2開口部77とは、略同じ大きさに形成されており、両者により連通した1つの開口が形成されている。
【0041】
第1前板63と第2後板74とは、それぞれ互いに接する板部分の第2後板74の四隅において、図示しないボルトナット等の締結具で固定されている。搬送時はそれらの締結具を外すだけで、第1筐体60と第2筐体70とを容易に分離可能である。また、作業の容易化のために、一方にはスタッドボルト、他方にはボルト用孔を設けておき、ボルト用孔にスタッドボルトを挿通後、蝶ねじで固定することもできる。このようにすると、両者を工具不要で連結、及び分離できる。なお、
図5に示されているように、第1前板63の第2上板75より上の部分には、第1開口部67は形成されていない。これは、第1前板63は足保持部37の直下に位置しており、第1筐体60内へ異物が侵入するのを防止するためである。
【0042】
第1開口部67と第2開口部77との連通構造により、第1筐体60の上部の切欠き68から導入される空気の一部は、第1開口部67と第2開口部77とからなる1つの開口を通って第2筐体70内に流れ込み、左右のそれぞれの第2側板72、72に設けられている1つ以上の側板開口部79から排出される。これにより、追加の冷却装置を設けることなく、容易な手法で電子機器類の冷却性を向上することができる。また、第1筐体60、及び第2筐体70の内部に入り込んだほこり等は、冷却風の流れに運ばれて側板開口部79から排出される。なお、側板開口部79からの異物の侵入を防止するために側板開口部79をアクリル板等の軽量な板材で塞いでもよい。
【0043】
図6において、矢印Aは、第1筐体60と、第2筐体70との内部に流れる空気の流れの一部を概念的に示したものである。空気は、第1開口部67と第2開口部77とが設けられていることで、第1筐体60及び第2筐体70の内部を効率的に冷却しながら流れることができる。
【0044】
本発明の遠隔操作装置100が備える筐体は、2分割構成とされているため、搬送性が高められている。搬送性の向上とともに、操作者が座り重心高が高く重量バランスがアンバランス傾向となる遠隔操作装置100において、重量物である、駆動装置30と第1第2演算処理ユニット81、82とを、上部にシート10を保持している第1筐体60内に配置することで重心高を下げることに寄与し、重量バランスよい遠隔操作装置100とすることができる。また、第2筐体70に対してシート10を保持する第1筐体は重量が大きく、遠隔操作装置100全体の重心の位置を第1筐体60に位置させることができる。遠隔操作装置100の組立設置時においては、駆動装置30や演算処理ユニット81を備え比較的に重量物である第1筐体60を設置した後に、第2筐体70、シート10等を設置していくことで、遠隔操作装置100全体の重心の位置が第1筐体60に位置しているので、重量バランスがアンバランスとならず安定性を保つことができる。
【符号の説明】
【0045】
10 シート、 11 座部、 20 シート保持装置、 30 駆動装置、
37 足保持部、 50 モニタ装置、 51 第1画面部、
52 第2画面部、 55 保持部材、 56 一端部、 65 第1上板、
75 第2上板、 60 第1筐体、 70 第2筐体、
81 第1演算処理ユニット、 82 第2演算処理ユニット、
83 通信装置、 100 遠隔操作装置。