(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】交通管制システム、交通管制方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20240709BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G08G1/00 C
G08G1/16 D
(21)【出願番号】P 2021061467
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】川本 敦史
(72)【発明者】
【氏名】生田 靖弘
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-350719(JP,A)
【文献】特開平05-159196(JP,A)
【文献】特開2019-185772(JP,A)
【文献】特開2009-259158(JP,A)
【文献】特開2017-224146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の交通需要に対応する、予めシミュレーションにより定められた1台以上の仮想車両の流れを示す複数の交通パターンを記憶する記憶部と、
時間帯又は現在の交通情報に基づいて、現在の交通需要を推定する推定部と、
推定された前記現在の交通需要に対応する
現在交通パターンを
前記記憶部から取得する取得部と、
取得した前記交通パターンの仮想車両に、実際の車両を割り当てる割当部と、
前記割り当られた実際の車両と通信して、当該実際の車両の走行を、前記現在交通パターンの仮想車両と整合するように制御する制御部と、
を備える、交通管制システム。
【請求項2】
前記複数の交通需要に対応する複数の交通パターンは、複数の異なる時間帯、複数の異なる天候、及び複数の異なる非常事態の少なくとも1つに対応する複数の交通パターンである、請求項
1に記載の交通管制システム。
【請求項3】
前記複数の交通需要に対応する複数の交通パターンは、特定のエリアで事故が発生した場合に、当該特定のエリアを迂回するような交通パターンを含む、請求項
1に記載の交通管制システム。
【請求項4】
1つ以上のコンピュータにより実行される交通管制方法であって、
時間帯又は現在の交通情報に基づいて、現在の交通需要を推定するステップと、
複数の交通需要に対応する、予めシミュレーションにより定められた1台以上の仮想車両の流れを示す複数の交通パターンを記憶する記憶部から、推定された前記現在の交通需要に対応する現在交通パターンを取得するステップと、
取得した前記
現在交通パターンの仮想車両に、実際の車両を割り当てるステップと、
前記割り当られた実際の車両と通信して、当該実際の車両の走行を、前記現在交通パターンの仮想車両と整合するように制御するステップと、を含む、交通管制方法。
【請求項5】
請求項4に記載の交通管制方法をコンピュータに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は交通管制システム、交通管制方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両に搭載される車両制御装置、および前記車両制御装置とネットワークにより接続されるサーバから構成される車両制御システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、車両の自律走行を実現するため、車両は自車位置の把握、他車位置の把握、走行経路の計算など、多数の複雑な処理を実行する必要がある。更に、サーバは、複数の車両から走行軌跡を収集し、絶えず更新していく必要がある。車両とサーバが複雑な処理を行う必要がある車両制御システムでは、ひとたびエラーが発生すると、衝突事故が発生する場合がある。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、より簡便で安全な自律走行を実現するための交通管制システム、交通管制方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様にかかる交通管制システムは、現在の交通需要に対応する、予め定められた仮想車両の流れを示す交通パターンを取得する取得部と、
取得した前記交通パターンの仮想車両に、実際の車両を割り当てる割当部と、
を備える。
【0007】
本開示の第2の態様にかかる交通管制方法は、
現在の交通需要に対応する、予め定められた仮想車両の流れを示す交通パターンを取得するステップと、
取得した前記交通パターンの仮想車両に、実際の車両を割り当てるステップと、
を含む。
【0008】
本開示の第3の態様にかかるプログラムは、
現在の交通需要に対応する、予め定められた仮想車両の流れを示す交通パターンを取得する処理と、
取得した前記交通パターンの仮想車両に、実際の車両を割り当てる処理と、
を含む動作をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、より簡便で安全な自律走行を実現するための交通管制システム、交通管制方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1にかかるシミュレーションにより導出される仮想車両の流れ(交通パターン)を説明する図である。
【
図2】実施の形態1にかかる交通パターンの仮想車両への実際の車両の割当を説明する図である。
【
図3】実施の形態1にかかる交通管制システムの構成を示す概略図である。
【
図4】実施の形態1にかかる交通管制方法を示すフローチャートである。
【
図5】実施の形態2にかかる交通パターンの生成の流れを示すフローチャートである。
【
図6】実施の形態2にかかる交通パターンの例を説明する図である。
【
図7】実施の形態2にかかる交通パターンの例を説明する図である。
【
図8】実施の形態2にかかる交通パターンの変形例を説明する図である。
【
図9】実施の形態2にかかる交通パターンの変形例を説明する図である。
【
図10】実施の形態2にかかるサーバの構成を示すブロック図である。
【
図11】実施の形態2にかかる交通パターンの仮想車両への実際の車両の割当方法を説明するフローチャートである。
【
図12】実施の形態2にかかる交通パターンの仮想車両への実際の車両の割当方法を説明する図である。
【
図13】実施の形態2にかかる交通パターンの仮想車両への実際の車両の割当方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
まず、
図1及び
図2を参照して、本開示の実施の形態1の概要を説明する。
本開示は概して、自動運転システムに関し、より具体的には、交通需要に応じた車両の自動運転を実現する交通管制システムに関する。
図1は、シミュレーションにより導出される仮想車両の流れを説明する図である。交通需要は、各時間帯において道路を通過しようとする車両台数をいう。交通需要は、一般に、時間帯や地域ごとに異なる。そのため、時間帯や地域ごとの交通需要に対応する仮想車両の流れ(交通パターンとも呼ばれる)を予め作成しておく。シミュレーションにより、自動運転に係る車両同士が互いにぶつからないこと、すなわち、仮想的な車両が特定のエリア(例えば、交差点)に同時刻に進入しないことを保証する理想的な仮想車両の流れを導出することができる。例えば、既知の交通シミュレータにより、様々な交通需要に対応する理想的な仮想車両の流れ(交通パターン)を導出することができる。特定の地域における様々な時間帯ごとの交通パターンを事前に導出してもよい。
図1の右図に示すように、交通パターンは、現在の交通需要を満たすように、複数の仮想車両が経時的に移動するスムーズな流れであり、交差点等において、互いに衝突することが無いように定められたものである。
【0013】
次に、
図2に示すように、上記のように求められた理想的な仮想車両の流れに、実際の車両を動的に割り当てる。すなわち、コンピュータや人工知能が、現在の交通需要に対応する記憶された交通パターンを選択し、当該交通パターン上の仮想車両への実際の車両の割当問題を解く。交通管制システムにおいて、各自動運転車両の位置情報は、GPS(全地球測位システム)又はビーコン測位システムなどの既知の測位システムにより把握され得る。また、道路には、周囲環境を監視するレーダおよび監視カメラを設置してもよい。また、交通管制システムは、様々な地域の地図および、道路(一般道路および高速道路を含む)、交差点、施設、店舗などの位置情報を示す地図情報を、記憶部に記憶する。交通管制システムは、リアルタイムに各自動運転車両の位置情報を把握しつつ、交通需要に対応した予め定められた交通パターンに、車両の割り当てを実行することができる。
【0014】
図3は、交通管制システムの構成を示す概略図である。
交通管制システム1は、交通管制装置(サーバ100とも呼ばれる)と、ネットワーク(有線及び無線ネットワークを含む)を介して通信可能に接続された複数の車両200と、を備える、サーバ100は、ネットワーク(有線及び無線ネットワークを含む)を介して複数の車両200を遠隔で操作することで、自動運転を実現する。
【0015】
サーバ100は、制御部110および記憶部120を備えるコンピュータにより実現される。制御部110は、プロセッサにより構成され、取得部102、割当部103、通信部104を含み得る。制御部110は、電気部品(例えば、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路、デジタルシグナルプロセッサ、中央処理装置(CPU)などの1つ以上の集積回路)などの回路から形成されてもよい。
【0016】
サーバ100は、1つ以上の独立型データ処理装置上に、又はコンピュータの分散型ネットワーク上に実施することができる。
【0017】
取得部102は、現在の交通需要に対応する、予め定められた仮想車両の流れを示す交通パターンを取得する。割当部103は、取得した交通パターンの仮想車両に、実際の車両を割り当てる。
【0018】
割当部103は、後述する特定の数式又は人工知能(例えば、ディープニューラルネットワークモデル)により、割当問題を解くことで、動的に交通パターンの仮想車両に、実際の車両を割り当てることができる。
【0019】
通信部104は、ネットワークとの通信インタフェースである。通信部104は、交通管制システムを構成する他のネットワークノード装置と通信するために使用される。通信部104は、無線通信を行うために使用されてもよい。例えば、通信部104は、IEEE 802.11 seriesにおいて規定された無線LAN通信、もしくは3GPP(3rd Generation Partnership Project)等において規定されたモバイル通信を行うために使用されてもよい。サーバ100は、通信部104を介して、多数の車両200から各車両の位置情報を継続的に取得して、各車両の走行軌跡を把握することができる。
【0020】
車両200も、サーバと通信する通信部(図示せず)と、サーバからの指示に基づいて、車両を制御する制御部210を備える。車両200は、GPS受信機などの位置情報受信部を備える。制御部210は、車両に搭載された各種センサ(車速センサ、操舵角センサなど)および車両の位置情報に基づいて、サーバから指示された交通パターンにしたがって、車両のアクチュエータを動作させることができる。アクチュエータは、例えば、ステアリング、アクセル、ブレーキなどを制御することができる。また、車両200は、位置情報受信部(図示せず)を備え、通信部を介して、各車両の位置情報を、車両の識別番号とともにサーバ100に送信することができる。
【0021】
なお、いくつかの実施形態では、交通管制システムにおいて、サーバ100の機能の一部又は全部は、車両に搭載されるコンピュータに備えられてもよい。
【0022】
図4は、本実施形態にかかる交通管制方法を説明する。
現在の交通需要に対応する、予め定められた仮想車両の流れを示す交通パターンを取得する(ステップS1)。取得した交通パターンの仮想車両に、実際の車両を割り当てる(ステップS2)。
【0023】
以上のように、本実施形態における交通管制システムは、事前に用意された交通パターンに基づいて、実際の車両の動的な割当を行うことで、遅延を抑制した、安全な自動運転を実現することができる。
【0024】
なお、他の実施形態では、サーバ100は、時間帯又は交通情報に基づいて現在の交通需要を推定する推定部を備えてもよい。交通情報は、高速道路、一般道路の渋滞情報を含んでもよいし、車両や道路等に設置された各種センサ情報、ナビゲーションシステムからの位置情報などの交通ビックデータを含んでもよい。
【0025】
他の実施形態では、シミュレーションにより求められた複数の交通需要ごとの複数の交通パターンを記憶する記憶部120を備えてもよい。複数の交通需要に対応する複数の交通パターンは、例えば、複数の異なる時間帯、複数の異なる天候、及び複数の異なる非常事態に対応する複数の交通パターンの少なくとも1つを含むことができる。他の実施形態では、特定のエリア(例えば、特定の交差点)で事故が発生した時に、当該交差点を迂回するような交通パターンを用意しておくこともできる。記憶部120は、サーバ内に設けられてもよいし、ネットワークを介してサーバに接続されていてもよい。
【0026】
実施の形態2
次に、実施の形態2にかかる交通管制システムおよび方法を説明する。
まず、
図5のフローチャートを参照して、理想的な仮想車両の流れのシミュレーションの生成を具体的に説明する。
図5は、交通パターンの生成の流れを示すフローチャートである。
【0027】
様々な交通需要を想定する(ステップS11)。交通需要の例としては、通勤時、帰宅時、昼間時、夜間時、災害時などが挙げられるが、これに限定されない。例えば、様々な時間帯ごと、様々な天候ごと(例えば、晴天、雨天、降雪)又は様々な非常事態時(例えば、災害、地震、洪水、台風、事故、工事など)に対応する交通需要を想定することができる。
【0028】
次に、シミュレータを用いて、想定した様々な交通需要のうちの1つに対応する交通パターンを生成する(ステップS12)。シミュレータは、既知の交通シミュレータを使用することができる。生成した交通パターンは、自動運転を遠隔制御するサーバ内の、又は当該サーバにネットワークを介して接続されたデータベースに記憶する。データベースは、記憶部120の一例である。
【0029】
想定したすべての交通需要に対応する交通パターンを生成した場合(ステップS13でYES)、本プロセスは終了する。一方、想定したすべての交通需要に対応する交通パターンを生成していない場合(ステップS13でNO)、すべての交通需要に対応する交通パターンを生成するまで、ステップS11およびS12の処理を繰り返す。
【0030】
ここで、
図6及び
図7を参照して、理想的な交通パターンの例を説明する。
本開示の実施形態では、特定の地域における全ての仮想車両を、自動運転で走行させることを想定している。本例では、4台の仮想車両はすべて、本システムにより遠隔自動制御されているものとする。
図6では、道路は、便宜上、同一の大きさ及び形状の複数の仮想的なブロックに分割されている。
図6の例では、t+1において、4台の仮想車両がそれぞれ、所定の速度で交差点に向かって進行する。t+3の図において、4台の仮想車両は、それぞれ交差点に進入する。次に、t+4の図において、各仮想車両は、速度を落とさずに、かつ互いに衝突せずに、次のブロックに進行する。
図6の例ではすべての仮想車両が直進することを想定している。しかし、理想的な交通パターンはこれに限定されない。
【0031】
例えば、
図7に示すように、交差点に進入した1台以上の車両が、その後、右折又は左折した場合にも、理想的な交通パターンを生成することができる。なお、本例では、4台の仮想車両を図示したが、交通需要に合わせて、好適な台数の仮想車両を用意することができる。また、道路も、一般道路、高速道路、十字路、T字路、直線車線、カーブなど様々な形状および交通制限を有する道路を組み合わせて、任意に設定することができる。他の実施形態では、特定のエリア(例えば、特定の交差点)で事故が発生した時に、特定のエリア(例えば、当該交差点)を迂回するような交通パターンを用意しておくこともできる。
【0032】
図8及び
図9は、交通パターンの変形例を説明する図である。
図8は、ロータリー交差点を含む三叉路の例を示す。
図9は、ロータリー交差点を含む六叉路の例を示す。任意のレイアウトで、各車両が相互に接触することなく、また、ブレーキを踏むことなく、また、他車の通過を待つことなく、それぞれが決めた進行方向に向かって、交差点を通過する理想的な流れを計算することができる。
【0033】
以上のように、各車両が互いに衝突しないように、できる限り走行速度を最大化する理想的な交通パターンを生成することができる。こうした理想的な交通パターンは、前述の通り、交通管制システムにおけるデータベースに予め記憶される。
【0034】
上記例では、人が理想的な交通パターンをシミュレーションすることを想定した。しかし、こうしたシミュレーションは膨大な時間を要するため、必要に応じて、人工知能により、予め理想的な交通パターンを作成させるようにしてもよい。
【0035】
図10は、実施の形態2にかかるサーバの構成を示すブロック図である。
サーバ100は、制御部110および記憶部120を備えるコンピュータにより実現される。制御部110は、プロセッサにより構成され、推定部101、取得部102、割当部103、通信部104を含み得る。本実施形態では、実施の形態1とは異なる推定部101が追加されている。推定部101は、時間帯又は交通情報に基づいて現在の交通需要を推定する。推定部101は、特定のエリアにおける各車両から車両位置を収集し、収集された多数の車両の位置情報を使用して、現在の交通需要を推定することもできる。また、推定部101は、事故や渋滞の交通情報や交通ビッグデータを利用して、現在の交通需要を推定することができる。
【0036】
取得部102は、推定部101により推定された現在の交通需要に対応する、予め定められた仮想車両の流れを示す交通パターンを取得する。割当部103は、取得した前記交通パターンの仮想車両に、実際の車両を割り当てる。通信部104は、ネットワークとの通信インタフェースである。通信部104は、交通管制システムを構成する他のネットワークノード装置と通信するために使用される。通信部104は、無線通信を行うために使用されてもよい。例えば、通信部104は、IEEE 802.11 seriesにおいて規定された無線LAN通信、もしくは3GPP(3rd Generation Partnership Project)等において規定されたモバイル通信を行うために使用されてもよい。
【0037】
また、本システムにおいて、道路には、周囲環境を監視するレーダおよび監視カメラを設置した場合、サーバ100は、これらのレーダや監視カメラからネットワークを介して周囲環境情報を取得して、事故が発生したことを把握することができる。すなわち、推定部101が、特定のエリア(例えば、特定の交差点)で事故が発生したことを推定又は把握する場合には、取得部102は、特定のエリア(例えば、当該交差点)を迂回するような交通パターンを取得するようにしてもよい。
【0038】
次に、
図11のフローチャートを参照して、上記の交通パターンの仮想車両への実際の車両の割り当てる方法を説明する。
【0039】
自動運転を制御するサーバの制御部の推定部101は、時間帯、交通情報又は交通ビーグデータから現在の交通需要を推定する(ステップS21)。
【0040】
取得部102は、推定された現在の交通需要に対応する交通パターンを、データベースから取得する(ステップS22)。最適な交通パターンを選択し、仮想的な車両の流れを生成する。
【0041】
割当部103は、仮想的な車両に実際の車両を割り当てる(ステップS23)。現在の交通需要に対応する交通パターン内の仮想的な車両と、実際の車両との対応付け(
図12)を割当問題として定式化し、当該割当問題を解くことにより、対応付けを導出することができる。また、この割当問題を動的に解くために、ニューラルネットワークなど人工知能を利用することもできる。なお、ニューラルネットワークは、ディープニューラルネットワーク(DNN)、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)などを含むことができる。しかし、割当問題を動的に解くためにニューラルネットワークを利用すると、割当問題を解き続けることができず、途中で停止してしまう場合もある。
【0042】
そこで、本例では、この割当問題を動的に解くためには、選択方程式を適用することができる。詳細は、”H. Haken著, 「Treatment of combinatorial optimization problems using selection equations with cost terms.」 PHYSICA D 1999”を参照されたい。
【0043】
図12は、仮想車両と実車両の割り当て方式を示す。
n台(nは自然数)の仮想車両に、n台の実車両を割り当てる(
図12では、n=5の例を示す)。各仮想車両に、1台の実車両のみが割り当てられる。全コスト、すなわち、各割り当ての合計が最小になるように割り当て問題を解く。この問題は、高次元の割り当てに対して一般化することができる。
【0044】
図13は、問題サイズ5×5の2次元割り当て問題を解く、結合した選択方程式のシミュレーションの4つの時間ステップを示す。ドットは、行列(
)として配置される。ドットのサイズは、この値
に比例する。時刻t
0は初期状態を示す。時刻t
3では、置換行列に対応する安定点が出現する。
【0045】
詳細は同論文に説明されるように、次の運動方程式が得られる。
【数1】
【0046】
この数式は、iとjを、仮想車両と実車両とすることで、本実施形態にかかる割当問題に適用することができる。これにより、上記ニューラルネットワークによる停止の問題を防止でき、安定して割当問題を解くことができる。
【0047】
交通管制システムは、割当後の各車両を、当該交通パターンに沿って、自動運転させる。すべての車両は、車両の運転手により操縦されず、交通管制システムからの指示に基づいて、自律的に走行することができる。また、他の実施形態では、車両に搭載された前方カメラにより、前方の車両を撮影して、前方車両との車間距離を維持するようにしてもよい。こうすることで、交通管制システムにおいて、各車両は、こうした撮影画像に基づいて当該交通パターンの対応する仮想車両の位置を維持しながら、移動させることもできる。
【0048】
以上説明した交通管制システムでは、交通情報および交通ビックデータを利用して現在の交通需要を推定し、推定した交通需要に整合する、予め設定された交通パターンを取得することができる。更に、交通需要に整合する交通パターンを用いて、実際の車両を割り当てることで、渋滞等の発生を抑制することができる。
【0049】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。本システムでは、特定の地域における全ての車両を自動運転で走行させることを前提としたが、これに限定されない。例えば、特定の地域で、特定の時間(例えば、緊急事態発生時)における全ての車両を自動運転で走行させるようにしてもよい。すなわち、通常時で、道路が混雑していない状況では、自動運転でない車両が走行してもよく、緊急事態発生時で、道路が混雑している状況では、全ての車両を自動運転で走行させてもよい。つまり、緊急事態発生時のみに、本システムを利用するようにしてもよい。
【0050】
なお、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【符号の説明】
【0051】
1 交通管制システム
100 サーバ
101 推定部
102 取得部
103 割当部
104 通信部
110 制御部
120 記憶部
200 車両
210 制御部