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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】フォークリフト
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
B66F9/24 L
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021069117
(22)【出願日】2021-04-15
(65)【公開番号】P2022094889
(43)【公開日】2022-06-27
【審査請求日】2023-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2020207816
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】安立 結香子
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-175599(JP,A)
【文献】中国実用新案第208292587(CN,U)
【文献】特開2017-019595(JP,A)
【文献】特開平08-026691(JP,A)
【文献】特開2020-193061(JP,A)
【文献】特開2020-015571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00-11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷役対象の差込孔に挿入されるフォークを備える荷役装置と、
前記フォークとともに昇降し、かつ、前記フォークとともに傾動するように設けられており、レーザーを照射して前方に存在する物体までの距離を測定する第1距離計と、
前記フォークとともに昇降し、かつ、前記フォークとともに傾動するように設けられており、レーザーを照射して前方に存在する物体までの距離を測定する第2距離計と、
前記第1距離計の測定値と前記第2距離計の測定値との差から、前記フォークと荷役対象との間に、相対的な角度ずれ及び相対的な位置ずれの少なくともいずれかが生じているか否かを判定する判定部を有する制御装置と、を備え、
前記判定部は、前記第1距離計と前記第2距離計とから照射される前記レーザーの少なくとも一方を前記差込孔に通過させて、前記レーザーによる前記測定値の差から前記フォークと前記荷役対象との相対的な位置ずれ又は角度ずれを判定し、前記第1距離計の測定値と前記第2距離計の測定値との差が閾値以上の場合に、前記角度ずれが生じていると判定するフォークリフト。
【請求項2】
前記第1距離計、及び前記第2距離計は、一方向への距離のみを測定可能な1次元の距離計である請求項1に記載のフォークリフト。
【請求項3】
前記フォークは、差込部を備え、
前記第1距離計、及び前記第2距離計は、前記差込部の表面から所定距離離間した位置で前記物体までの距離を測定するように配置されている請求項1又は請求項2に記載のフォークリフト。
【請求項4】
前記第1距離計及び前記第2距離計は、それぞれから照射される前記レーザーが、前記フォークと前記荷役対象とが相対的に位置ずれ及び角度ずれを生じていない状態で前記差込孔を通過するように配置されている請求項1に記載のフォークリフト。
【請求項5】
前記フォークリフトは操作者によって操作されるものであり、
前記制御装置は、前記判定部が判定する前記フォークと前記荷役対象との相対的な位置ずれ又は角度ずれを前記操作者に通知する請求項1に記載のフォークリフト。
【請求項6】
前記制御装置は、前記判定部が前記フォークと前記荷役対象との相対的な位置ずれ又は角度ずれが生じていると判定した場合に、位置ずれ又は角度ずれが小さくなるように制御する請求項1に記載のフォークリフト。
【請求項7】
荷役対象の差込孔に挿入されるフォークを備える荷役装置と、
前記フォークとともに昇降し、かつ、前記フォークとともに傾動するように前記フォーク下方に設けられており、前記フォーク下面に平行なレーザーを照射して前方に存在する物体までの距離を測定する第1距離計と、
前記フォークとともに昇降し、かつ、前記フォークとともに傾動するように前記フォーク上方に設けられており、前記第1距離計から照射されるレーザーに平行なレーザーを照射して前方に存在する物体までの距離を測定する第2距離計と、
前記第1距離計の測定値と前記第2距離計の測定値との差から、前記フォークと前記荷役対象との間に、前後方向の相対的な角度ずれが生じているか否かを判定する判定部を有する制御装置と、を備え、
前記第1距離計から照射されるレーザーと前記第2距離計から照射されるレーザーとの間の上下方向の距離は、前記荷役対象の前記差込孔の開口高さより短く設定されているフォークリフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フォークリフトに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示のフォークリフトは、フォークと、カメラと、画像処理装置と、を備える。フォークにはパレットが積まれる。フォークリフトは、フォークに積まれたパレットを搬送する。カメラ及び画像処理装置は、フォークをパレットに差し込む際に、パレットの差込口の向きを判定するために設けられている。カメラは、フォークに設けられている。カメラは、パレットを撮像する。画像処理装置は、カメラによって撮像された画像を取得する。画像処理装置は、画像から輝度値の分布を導出する。画像処理装置は、輝度値の分布から差込口の向きを判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-40769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フォークリフトには、フォークと荷役対象との間に、相対的な角度ずれ及び相対的な位置ずれの少なくとも一方が生じているか否かを判定することが求められる場合がある。特許文献1に開示のフォークリフトのように、カメラ及び画像処理装置を用いることで、フォークと荷役対象との間に相対的な角度ずれが生じているか否かを判定することは可能である。同様に、特許文献1に開示のフォークリフトのように、カメラ及び画像処理装置を用いることで、フォークと荷役対象との間に相対的な位置ずれが生じているか否かを判定することは可能である。しかしながら、カメラ及び画像処理装置を用いる場合、画像処理装置による画像処理に要する時間が長くなりやすい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するフォークリフトは、フォークを備える荷役装置と、前記フォークとともに昇降し、かつ、前記フォークとともに傾動するように設けられており、前方に存在する物体までの距離を測定する第1距離計と、前記フォークとともに昇降し、かつ、前記フォークとともに傾動するように設けられており、前方に存在する物体までの距離を測定する第2距離計と、前記第1距離計の測定値と前記第2距離計の測定値との差から、前記フォークと荷役対象との間に、相対的な角度ずれ及び相対的な位置ずれの少なくともいずれかが生じているか否かを判定する判定部と、を備える。
【0006】
フォークと荷役対象との間に相対的な角度ずれが生じていると、この角度ずれに起因して第1距離計の測定値と第2距離計の測定値に差が生じる。フォークと荷役対象との間に相対的な位置ずれが生じていると、この位置ずれに起因して第1距離計の測定値と第2距離計の測定値に差が生じる。判定部は、第1距離計の測定値と第2距離計の測定値との差からフォークと荷役対象との間に、相対的な角度ずれ及び相対的な位置ずれの少なくともいずれかが生じているか否かを判定することができる。2つの距離計の測定値の差からフォークと荷役対象との間に、相対的な角度ずれ及び相対的な位置ずれの少なくともいずれかが生じているか否かを判定できるため、画像処理を行う場合に比べて判定部の処理時間を短くできる。
【0007】
上記フォークリフトについて、前記判定部は、前記第1距離計の測定値と前記第2距離計の測定値との差が閾値以上の場合に、前記角度ずれが生じていると判定してもよい。
判定部が、角度ずれが生じているか否かの判定を行いやすい。
【0008】
上記フォークリフトについて、前記第1距離計、及び前記第2距離計は、一方向への距離のみを測定可能な1次元の距離計であってもよい。
第1距離計及び第2距離計として、複数の方向への距離を測定可能な距離計を用いる場合に比べて判定部の処理時間を短くできる。
【0009】
上記フォークリフトについて、前記フォークは、差込部を備え、前記第1距離計、及び前記第2距離計は、前記差込部の表面から所定距離離間した位置で前記物体までの距離を測定するように配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、処理時間を短くできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】フォークリフトの側面図。
図2】フォークリフトの概略構成図。
図3】フォークとパレットとの間に前後方向に対する相対的な角度ずれが生じていない状態での2つの距離計とパレットとの関係を示す図。
図4】制御装置が行う判定制御を示すフローチャート。
図5】フォークとパレットとの間に前後方向に対する相対的な角度ずれが生じている状態での2つの距離計とパレットとの関係を示す図。
図6】フォークとパレットとの間に前後方向に対する相対的な角度ずれが生じている状態での2つの距離計とパレットとの関係を示す図。
図7】フォークとパレットとの間に左右方向に対する相対的な角度ずれが生じていない状態での2つの距離計とパレットとの関係を示す図。
図8】フォークとパレットとの間に左右方向に対する相対的な角度ずれが生じている状態での2つの距離計とパレットとの関係を示す図。
図9】制御装置が行う位置ずれ判定制御を示すフローチャート。
図10】フォークとパレットとの間に上下方向に対する相対的な位置ずれが生じている状態での2つの距離計とパレットとの関係を示す図。
図11】サイドシフト装置の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
フォークリフトの第1実施形態について説明する。
図1に示すように、フォークリフト10は、車体11と、リーチレグ12と、前輪13と、後輪14と、荷役装置21と、を備える。本実施形態のフォークリフト10は、リーチ式のフォークリフトである。フォークリフト10は、カウンタ式のフォークリフトであってもよい。フォークリフト10は、自動で動作するものであってもよいし、フォークリフト10に搭乗した操作者によって手動で動作するものであってもよいし、自動での動作と手動での動作を切り替えられるものであってもよい。以下の説明において、前後左右上下とはフォークリフト10を基準にした前後左右上下である。前後方向は、フォークリフト10の進行方向ともいえる。左右方向は、フォークリフト10の車幅方向ともいえる。上下方向はフォークリフト10の高さ方向ともいえる。
【0013】
リーチレグ12は、左右方向に互いに離間して2つ設けられている。リーチレグ12は、車体11から前方に延びている。
前輪13は、各リーチレグ12に1つずつ設けられている。後輪14は、車体11に設けられている。後輪14は、操舵輪である。後輪14は、駆動輪である。
【0014】
荷役装置21は、車体11の前方に設けられている。荷役装置21は、マスト22と、リフトブラケット25と、フォーク26と、リフトシリンダ31と、ティルトシリンダ32と、を備える。
【0015】
マスト22は、多段式のマストである。マスト22は、アウタマスト23と、インナマスト24と、を備える。インナマスト24は、アウタマスト23に対して昇降可能に設けられている。
【0016】
リフトブラケット25は、インナマスト24に固定されている。フォーク26は、リフトブラケット25に固定されている。フォーク26は、左右方向に互いに離間して2つ設けられている。リフトブラケット25は、フォーク26をインナマスト24に固定するための部材である。
【0017】
フォーク26は、固定部27と、差込部28と、を備える。固定部27は板状である。差込部28は板状である。差込部28は、固定部27から固定部27の厚み方向に延びている。差込部28は、第1面29と、第2面30と、を備える。第1面29と第2面30とは、差込部28の厚み方向に互いに反対の面である。第1面29及び第2面30は、差込部28の表面の一部である。第1面29は、差込部28の下面である。第2面30は、差込部28の上面である。固定部27は、リフトブラケット25に固定されている。差込部28は、固定部27から前方に延びている。
【0018】
リフトシリンダ31は、油圧シリンダである。リフトブラケット25は、リフトシリンダ31への作動油の給排によって昇降する。フォーク26は、リフトブラケット25とともに昇降する。
【0019】
ティルトシリンダ32は、油圧シリンダである。リフトブラケット25は、ティルトシリンダ32への作動油の給排によって前後方向に傾動する。傾動は、リフトブラケット25を前方に傾動させる前傾、及びリフトブラケット25を後方に傾動させる後傾を含む。フォーク26は、リフトブラケット25とともに傾動する。
【0020】
図2に示すように、フォークリフト10は、駆動機構41と、油圧機構42と、第1距離計51と、第2距離計52と、制御装置61と、を備える。
駆動機構41は、フォークリフト10を走行動作させるための部材である。駆動機構41は、後輪14を駆動させるための駆動源及び後輪14を操舵するための操舵機構を含む。駆動源をモータとするフォークリフト10であれば、駆動機構41はモータドライバを含む。駆動源をエンジンとするフォークリフト10であれば、駆動機構は燃料噴射装置を含む。
【0021】
油圧機構42は、油圧機器への作動油の給排を制御するための部材である。油圧機器は、リフトシリンダ31、及びティルトシリンダ32を含む。油圧機構42は、作動油を吐出するポンプ、及び油圧機器への作動油の給排を制御するコントロールバルブを含む。
【0022】
距離計51,52は、レーザー距離計である。距離計51,52は、レーザーが当たった箇所からの反射光を受光することでレーザーが当たった箇所までの距離を測定する。距離計51,52は、レーザーを照射したにも関わらず、反射光を受光できない場合、測定値を無限とする。測定値が無限とは、距離計51,52の測定可能距離内にはレーザーが当たる箇所がないことを意味する。本実施形態の距離計51,52は、一方向への距離のみを測定可能な1次元の距離計である。
【0023】
距離計51,52は、荷役装置21に取り付けられている。詳細にいえば、距離計51,52は、フォーク26とともに昇降し、かつ、フォーク26とともに傾動する箇所に取り付けられている。例えば、距離計51,52は、リフトブラケット25、又はフォーク26に取り付けられている。本実施形態において、距離計51,52は、2つのフォーク26のうち一方のフォーク26に取り付けられている。
【0024】
第1距離計51と第2距離計52とは、上下方向に互いに離間して設けられている。例えば、第1距離計51と第2距離計52とは、差込部28を間に挟んだ状態で配置されている。なお、第1距離計51と第2距離計52は、フォーク26の表面に設けられていてもよいし、フォーク26に埋め込まれていてもよい。本実施形態において、第1距離計51は、第2距離計52よりも下方に設けられている。
【0025】
第1距離計51と第2距離計52とは、フォーク26が傾動していない状態で、互いの前後方向の位置が同一となるように取り付けられている。言い換えれば、フォーク26の先端から第1距離計51までの距離と、フォーク26の先端から第2距離計52までの距離とは同一である。距離計51,52は、前方を向いた状態で取り付けられている。距離計51,52は、フォーク26よりも前方に位置する物体までの距離を測定可能である。
【0026】
図3に示すように、第1距離計51から照射されるレーザーL1、及び第2距離計52から照射されるレーザーL2が差込部28の第1面29と平行になるように、2つの距離計51,52は取り付けられている。これにより、前後方向に対する第1面29の傾き、前後方向に対するレーザーL1の傾き、及び前後方向に対するレーザーL2の傾きが同一になる。2つの距離計51,52は、レーザーL1,L2の傾きをフォーク26の傾きとみなせるように配置されているといえる。本実施形態において「平行」及び「同一」とは、各部材の寸法公差や各部材の取付によって生じる誤差を許容するものである。
【0027】
本実施形態において、第1距離計51及び第2距離計52は、差込部28の表面から所定距離D11離間した位置で前方の物体までの距離を測定するように配置されている。詳細にいえば、第1距離計51から照射されるレーザーL1は第1面29から下方に所定距離D11離間した位置を通過する。これにより、第1距離計51によって測定される距離は、第1面29から所定距離D11離間した位置で測定される距離となる。第2距離計52から照射されるレーザーL2は第2面30から上方に所定距離D11離間した位置を通過する。これにより、第2距離計52によって測定される距離は、第2面30から所定距離D11離間した位置で測定される距離となる。なお、第1面29からレーザーL1までの所定距離D11と、第2面30からレーザーL2までの所定距離D11とは、同一の値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0028】
第1距離計51及び第2距離計52は、差込部28の表面から所定距離D11離間した位置で前方の物体までの距離を測定できるように、フォーク26の外部に設けられている。第1距離計51及び第2距離計52を荷役装置21に取り付けるためのブラケットによって第1距離計51及び第2距離計52の取付位置を調整することで、所定距離D11は調整可能である。また、第1距離計51及び第2距離計52自体が備えるケースの厚みを調整することで、所定距離D11は調整可能である。
【0029】
図2に示すように、制御装置61は、プロセッサ62と、記憶部63と、を備える。プロセッサ62としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はDSP(Digital Signal Processor)が用いられる。記憶部63は、RAM(Random access memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部63は、処理をプロセッサに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部63、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御装置61は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御装置61は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0030】
制御装置61は、走行動作に関する制御を行う。制御装置61は、駆動機構41を制御することでフォークリフト10を走行させる。制御装置61は、荷役動作に関する制御を行う。制御装置61は、油圧機構42を制御することで荷役装置21に荷役動作を行わせる。本実施形態の荷役動作は、フォーク26を昇降させるリフト動作、及びフォーク26を傾動させるティルト動作を含む。
【0031】
制御装置61は、判定制御を行う。判定制御は、第1距離計51の測定値と第2距離計52の測定値との差から、フォーク26と荷役対象との間に相対的な角度ずれが生じているか否かを判定する制御である。荷役対象とは、フォーク26に積まれるパレット、及びパレットが置かれる対象となる荷置き場を含む。荷置き場としては、例えば、棚又はトラックの荷台を挙げることができる。
【0032】
一例として、フォーク26にパレットを積む荷取り作業を行う際の判定制御について作用とともに説明を行う。
図3に示すように、パレット90は、矩形平板状の平パレットである。パレット90は、載置面91と、底面92と、差込孔画定面93と、開口面97と、を備える。載置面91及び底面92は、パレット90の外面のうち、パレット90の厚み方向に互いに反対となる面である。載置面91は、荷が積載される面である。差込孔画定面93は、差込孔96を画定する面である。差込孔96には、フォーク26の差込部28が差し込まれる。差込孔画定面93は、第1内面94と、第2内面95と、を備える。第1内面94と、第2内面95とは、パレット90の厚み方向に互いに向かい合う。底面92から第1内面94までの距離は、底面92から第2内面95までの距離よりも短い。載置面91、底面92、第1内面94及び第2内面95は互いに平行である。開口面97は、差込孔96が開口する面の1つである。本実施形態において、開口面97は荷役動作時にフォークリフト10と向かい合う面である。
【0033】
制御装置61は、フォーク26とパレット90との間に前後方向に対する相対的な角度ずれが生じているか否かを判定する。判定制御が行われるタイミングは任意である。例えば、フォークリフト10が起動状態の場合、常に判定制御が行われるようにしてもよいし、予め定められた条件が成立した場合に判定制御が行われるようにしてもよい。予め定められた条件としては、例えば、荷役動作が開始されることである。例えば、制御装置61は、リフト動作又はティルト動作が開始されると、判定制御を行う。
【0034】
以下、判定制御について詳細に説明を行う。以下の説明では、リフト動作によってフォーク26とパレット90との上下方向の位置合わせは完了しているとする。第1実施形態において、「角度ずれ」とは、フォーク26とパレット90との前後方向に対する相対的な角度ずれを示す。パレット90は、第2内面95よりも第1内面94が下方に位置するように置かれているとする。
【0035】
図4に示すように、ステップS10において、制御装置61は、2つの距離計51,52から測定値を取得する。
次に、ステップS11において、制御装置61は、第1距離計51の測定値と第2距離計52の測定値との差が閾値以上か否かを判定する。ステップS11の判定結果が否定の場合、制御装置61はステップS12の処理を行う。ステップS11の判定結果が肯定の場合、制御装置61はステップS13の処理を行う。
【0036】
ステップS12において、制御装置61は、角度ずれが生じていないと判定する。
図3に示すように、フォーク26とパレット90との前後方向に対する相対的な角度ずれが生じていない場合、第1距離計51から照射されるレーザーL1、及び第2距離計52から照射されるレーザーL2の両方が差込孔96を通過する。パレット90の後方に物体が存在していない場合、第1距離計51の測定値及び第2距離計52の測定値は、両方無限になる。2つの距離計51,52の測定値が両方無限の場合、制御装置61は2つの距離計51,52の測定値に差はないと判定する。フォーク26とパレット90との前後方向に対する相対的な角度ずれが生じている場合であっても、この角度ずれが許容範囲であれば2つの距離計51,52から照射されるレーザーL1,L2が差込孔96を通過する。即ち、フォーク26とパレット90との前後方向に対する相対的な角度ずれが生じている場合であっても、この角度ずれが許容範囲内であれば角度ずれが生じていないとみなされる。許容範囲は、2つの距離計51,52から照射されるレーザーL1,L2の両方が差込孔96を通過可能な範囲である。
【0037】
ここで、所定距離D11は、フォーク26とパレット90との前後方向に対する相対的な角度ずれが生じていない状態で、レーザーL1,L2の両方が差込孔96を通過するように設定されている。第1距離計51から照射されるレーザーL1は、上下方向において第1面29と第1内面94との間を通過する。第2距離計52から照射されるレーザーL2は、上下方向において第2面30と第2内面95との間を通過する。第1距離計51及び第2距離計52は、差込部28の表面と差込孔画定面93との間をレーザーL1,L2が通過するように設けられているといえる。レーザーL1とレーザーL2との間の距離は、第1内面94と第2内面95との間の距離よりも短い。所定距離D11が長いほど、レーザーL1とレーザーL2とが差込孔96を通過しにくくなる。所定距離D11は、フォーク26の位置合わせの精度等に応じて、適宜設定すればよい。
【0038】
パレット90の後方に物体が存在している場合であって、この物体が距離計51,52の測定可能距離内に位置している場合、パレット90の後方の物体にレーザーL1,L2が照射される。距離計51,52は、物体までの距離を測定する。この場合、物体の形状によっては2つの距離計51,52の測定値に差が生じる。2つの距離計51,52の測定値の差が閾値未満であれば、制御装置61は、角度ずれが生じていないと判定する。フォークリフト10が使用される環境を予め把握できており、パレット90の後方に存在する物体によって生じる測定値の差が予め予想できていれば、この差を許容するように閾値を設定すればよい。
【0039】
ステップS13において、制御装置61は、角度ずれが生じていると判定する。
図5及び図6に示すように、フォーク26とパレット90との前後方向に対する相対的な角度ずれが生じている場合、第1距離計51から照射されるレーザーL1、及び第2距離計52から照射されるレーザーL2の両方が第1内面94又は第2内面95に当たる。角度ずれが生じている場合、第1距離計51と第2距離計52との上下方向の離間距離に応じて、第1距離計51の測定値と第2距離計52の測定値に差が生じる。従って、第1距離計51の測定値と第2距離計52の測定値との差から、角度ずれが生じているか否かを判定することができる。
【0040】
フォーク26の第1面29を前後方向に延長した仮想的な面を仮想面IM1とし、パレット90の第1内面94、及び第2内面95のうち仮想面IM1と交わる面を基準面とする。仮想面IM1と基準面とのなす角を角θ1とする。
【0041】
角θ1は、角度ずれを示している。第1距離計51から照射されるレーザーL1、及び第2距離計52から照射されるレーザーL2が第1内面94に当たる場合、第1内面94が基準面となる。第1距離計51から照射されるレーザーL1、及び第2距離計52から照射されるレーザーL2が第2内面95に当たる場合、第2内面95が基準面となる。第1内面94が基準面となる場合、角θ1は基準面から上方に広がる角となる。第2内面95が基準面となる場合、角θ1は基準面から下方に広がる角となる。
【0042】
ステップS12又はステップS13の処理を終えると、制御装置61は判定制御を終了する。ステップS11,S12,S13の処理を行うことで、制御装置61は、判定部を備えているといえる。
【0043】
判定制御を終えた後に制御装置61が行う処理は、任意である。
制御装置61は、フォーク26とパレット90との前後方向に対する相対的な角度ずれが小さくなるように制御を行ってもよい。この場合、制御装置61は、第1距離計51の測定値よりも第2距離計52の測定値が大きければ、マスト22を後傾させる。制御装置61は、ティルトシリンダ32への作動油の給排を制御することでマスト22を後傾させる。第1距離計51の測定値よりも第2距離計52の測定値が大きい場合、2つの距離計51,52のレーザーL1,L2は第1内面94に当たっている。この場合、フォーク26を後傾させることで角θ1の角度が小さくなっていく。制御装置61は、2つの距離計51,52の測定値の差が閾値未満になるまでフォーク26を後傾させる。制御装置61は、第1距離計51の測定値よりも第2距離計52の測定値が小さければ、フォーク26を前傾させる。制御装置61は、ティルトシリンダ32への作動油の給排を制御することでフォーク26を前傾させる。第1距離計51の測定値よりも第2距離計52の測定値が小さい場合、2つの距離計51,52のレーザーL1,L2は第2内面95に当たっている。この場合、フォーク26を前傾させることで角θ1の角度が小さくなっていく。制御装置61は、2つの距離計51,52の測定値の差が閾値未満になるまでフォーク26を前傾させる。なお、制御装置61が、角度ずれを小さくするように制御を行う場合、フォークリフト10は手動で動作するものであってもよいし、自動で動作するものであってもよい。手動で動作するフォークリフト10であっても、操作者を支援するための支援機能を備えている場合がある。この支援機能として、角度ずれを小さくするように上記した制御を行うようにしてもよい。
【0044】
フォークリフト10が操作者によって操作されるものであれば、制御装置61は、操作者への通知を行ってもよい。操作者への通知は、任意の方法で行うことができる。例えば、フォーク26とパレット90との前後方向に対する相対的な角度ずれが生じている場合、音、光、及び表示器への表示のうち少なくとも1つによって角度ずれが生じていることの通知を行う。この場合、フォークリフト10は音を発するブザー、光を発するランプ、及び表示器のうち少なくとも1つを備える。通知は、角度ずれが生じていることのみを通知するものであってもよいし、マスト22を前傾させるか後傾させるかを指示する通知であってもよい。
【0045】
第1実施形態の効果について説明する。
(1-1)第1距離計51と第2距離計52とは互いに上下方向に離間して設けられている。フォーク26とパレット90との間に角度ずれが生じていると、この角度ずれに起因して第1距離計51の測定値と第2距離計52の測定値に差が生じる。制御装置61は、第1距離計51の測定値と第2距離計52の測定値との差から角度ずれが生じているか否かを判定することができる。距離計51,52の測定値の差から角度ずれが生じているか否かを判定できるため、画像処理を行うことで角度ずれが生じているかを判定する場合に比べて制御装置61の処理時間を短くできる。
【0046】
(1-2)制御装置61は、第1距離計51の測定値と第2距離計52の測定値との差が閾値以上の場合に、角度ずれが生じていると判定する。角θ1の角度を算出し、角θ1の角度から角度ずれが生じているか否かの判定を行う場合に比べて、制御装置61が、角度ずれが生じているか否かの判定を行いやすい。
【0047】
(1-3)第1距離計51及び第2距離計52は、1次元の距離計である。第1距離計51及び第2距離計52として、複数の方向への距離を測定可能な距離計を用いる場合に比べて制御装置61の処理時間を短くできる。例えば、第1距離計51及び第2距離計52として、照射角度を変更しながらレーザーを照射する2次元のレーザー距離計を用いる場合、複数の照射角度に対応した数の測定値が得られる。これに対して、1次元のレーザー距離計であれば、照射角度を変更しない分、得られる測定値の数が2次元のレーザー距離計に比べて少ない。従って、制御装置61の処理時間を短くできる。
【0048】
(1-4)第1距離計51及び第2距離計52は、差込部28の表面から所定距離D11離間した位置で、前方の物体までの距離を測定する。このように第1距離計51及び第2距離計52を配置することで、第1距離計51及び第2距離計52をフォーク26の外部に設ければよく、フォーク26に埋め込む必要がない。第1距離計51及び第2距離計52をフォーク26に埋め込む場合、第1距離計51及び第2距離計52をフォーク26に取り付けるためのブラケットを設ける必要があり、フォーク26が厚くなるおそれがある。また、第1距離計51及び第2距離計52を埋め込むための専用のフォーク26を用いる必要があり、製造コストの増加を招く。本実施形態のように、第1距離計51及び第2距離計52をフォーク26の外部に設けられるようにすることで、フォーク26が厚くなったり、製造コストが増加することを抑制できる。
【0049】
(第2実施形態)
フォークリフトの第2実施形態について説明する。以下の説明では、第1実施形態と同様の箇所についての説明を省略し、第1実施形態との相違点について説明する。
【0050】
図7に示すように、差込部28は、第3面81と、第4面82と、を備える。第3面81及び第4面82は、第1面29と第2面30との間で延びる面である。第3面81と第4面82とは、差込部28の幅方向に互いに反対となる面である。第3面81及び第4面82は、差込部28の表面の一部である。第3面81は、差込部28の左側面である。第4面82は、差込部28の右側面である。
【0051】
差込孔画定面93は、第3内面98と、第4内面99と、を備える。第3内面98と、第4内面99とは、第1内面94と第2内面95との間で延びている。第3内面98と、第4内面99とは、パレット90の厚み方向及び差込孔96が延びる方向の両方に直交する方向に互いに向かい合う。
【0052】
第1距離計71と第2距離計72とは左右方向に互いに離間して設けられている。2つのフォーク26のうち一方を第1フォーク26Lとし、他方を第2フォーク26Rとする。2つのフォーク26のうち左方のフォーク26が第1フォーク26Lであり、右方のフォーク26が第2フォーク26Rである。第1距離計71は第1フォーク26Lに設けられている。第2距離計72は第2フォーク26Rに設けられている。第1フォーク26Lの先端から第1距離計71までの距離と、第2フォーク26Rの先端から第2距離計72までの距離とは同一である。第1距離計71は、第1距離計71のレーザーL3が第1フォーク26Lの幅方向の面と平行となるように取り付けられている。第2距離計72は、第2距離計72のレーザーL4が第2フォーク26Rの幅方向の面と平行となるように取り付けられている。2つのフォーク26の幅方向の面は互いに平行である。第1距離計71のレーザーL3と第2距離計72のレーザーL4とは互いに平行といえる。
【0053】
第1距離計71から照射されるレーザーL3は、第1フォーク26Lの第3面81から左方に所定距離D12離間した位置を通過する。これにより、第1距離計71によって測定される距離は、第3面81から所定距離D12離間した位置で測定される距離となる。第2距離計72から照射されるレーザーL4は、第2フォーク26Rの第4面82から右方に所定距離D12離間した位置を通過する。これにより、第2距離計72によって測定される距離は、第4面82から所定距離D12離間した位置で測定される距離となる。
【0054】
制御装置61は、フォークリフト10とパレット90との正対ずれが生じているか否かを判定する。正対ずれとは、左右方向に対するフォーク26とパレット90との相対的な角度ずれである。第2実施形態において、角度ずれとは、左右方向に対するフォーク26とパレット90との相対的な角度ずれを示す。パレット90は、第3内面98が第4内面99よりも左方に位置するように配置されているとする。
【0055】
制御装置61は、第1実施形態と同様の制御によって角度ずれが生じているか否かを判定する。詳細にいえば、第1距離計71の測定値と第2距離計72の測定値との差からフォーク26とパレット90との間に角度ずれが生じているか否かを判定する。
【0056】
フォーク26とパレット90との間に角度ずれが生じていない場合、第1距離計71から照射されるレーザーL3、及び第2距離計72から照射されるレーザーL4の両方が差込孔96を通過する。この場合、第1実施形態と同様に、制御装置61は、角度ずれが生じていないと判定する。
【0057】
所定距離D12は、フォーク26とパレット90との左右方向に対する相対的な角度ずれが生じていない状態で、レーザーL3,L4の両方が差込孔96を通過するように設定されている。第1距離計71から照射されるレーザーL3は、左右方向において第1フォーク26Lの第3面81と第3内面98との間を通過する。第2距離計72から照射されるレーザーL4は、左右方向において第2フォーク26Rの第4面82と第4内面99との間を通過する。
【0058】
図8に示すように、角度ずれが生じている場合、第1距離計71から照射されるレーザーL3、及び第2距離計72から照射されるレーザーL4の両方が開口面97に当たる。角度ずれが生じている場合、第1距離計71と第2距離計72との左右方向の離間距離に応じて、第1距離計71の測定値と第2距離計72の測定値とに差が生じる。従って、第1距離計71の測定値と第2距離計72の測定値との差から、角度ずれが生じているか否かを判定することができる。
【0059】
2つのフォーク26の幅方向の面に直交する仮想的な面を仮想面IM2とし、仮想面IM2とパレット90の開口面97とのなす角を角θ2とする。角θ2は、角度ずれを示している。
【0060】
制御装置61は、角度ずれが小さくなるように制御を行ってもよい。この場合、制御装置61は、駆動機構41を制御することでフォークリフト10の向きを変更する。制御装置61は、第1距離計71の測定値よりも第2距離計72の測定値が大きければ、フォークリフト10の右方が左方よりも前進するように操舵を行う。制御装置61は、第1距離計71の測定値よりも第2距離計72の測定値が小さければ、フォークリフト10の左方が右方よりも前進するように操舵を行う。これにより、角θ2の角度が小さくなっていく。制御装置61は、2つの距離計71,72の測定値の差が閾値未満になるまでフォークリフト10を前進させる。
【0061】
第2実施形態の効果について説明する。第1実施形態の効果(1-2)~(1-4)と同様の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(2-1)第1距離計71と第2距離計72とは互いに左右方向に離間して設けられている。制御装置61は、第1距離計71の測定値と第2距離計72の測定値との差から角度ずれが生じているか否かを判定することができる。距離計71,72の測定値の差から角度ずれが生じているか否かを判定できるため、画像処理を行う場合に比べて制御装置61の処理時間を短くできる。
【0062】
各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○第1実施形態において、制御装置61は角θ1の角度を算出してもよい。角θ1の角度は、以下の(1)式で算出することができる。
【0063】
【数1】
図5及び図6に示すように、D1は、第1距離計51の測定値から第2距離計52の測定値を減算した値である。Lは、第1距離計51と第2距離計52との上下方向の離間距離である。Lは、左右方向から見て、第1距離計51のレーザーL1と第2距離計52のレーザーL2との両方に直交する線分におけるレーザーL1,L2間同士の寸法ともいえる。
【0064】
制御装置61は、角θ1の角度が算出できた場合には、フォーク26とパレット90との間に前後方向に対する角度ずれが生じていると判定してもよい。
制御装置61は、角θ1の角度が-の値であれば、2つの距離計51,52のレーザーが第1内面94に当たっていると判定できる。制御装置61は、角θ1の角度が+の値であれば、2つの距離計51,52のレーザーL1,L2が第2内面95に当たっていると判定できる。制御装置61が、フォーク26とパレット90との角度ずれが小さくなるように制御を行う場合、制御装置61は、角θ1の角度が-の値であればフォーク26を後傾させればよい。制御装置61は、角θ1の角度が+の値であればフォーク26を前傾させればよい。
【0065】
同様に、第2実施形態において、制御装置61は、角θ2の角度を算出してもよい。角θ2の角度は、(1)式と同様な式によって算出することができる。図8に示すように、角θ2の角度を算出する場合、Lは、第1距離計71と第2距離計72との左右方向の離間距離である。Lは、上下方向から見て、第1距離計71のレーザーL3と第2距離計72のレーザーL4との両方に直交する線分におけるレーザーL3,L4間同士の寸法ともいえる。
【0066】
○各実施形態において、フォーク26の先端から第1距離計51,71までの距離と、フォーク26の先端から第2距離計52,72までの距離は異なっていてもよい。この場合、制御装置61は、第1距離計51,71及び第2距離計52,72の測定値の少なくとも一方を補正する。
【0067】
第1距離計51,71の位置と第2距離計52,72の位置との前後方向の差を前後差とする。第1距離計51,71及び第2距離計52,72の測定値の一方を補正する場合、例えば、制御装置61は第1距離計51,71の測定値に前後差を加算又は減算する。制御装置61は、第1距離計51,71が第2距離計52,72よりも後方に位置していれば第1距離計51,71の測定値から前後差を減算し、第1距離計51,71が第2距離計52,72よりも前方に位置していれば第1距離計51,71の測定値に前後差を加算する。
【0068】
第1距離計51,71及び第2距離計52,72の測定値の両方を補正する場合、例えば、制御装置61は第1距離計51,71及び第2距離計52,72の一方に前後差/2を加算し、他方に前後差/2を減算する。制御装置61は、第1距離計51,71が第2距離計52,72よりも後方に位置していれば第1距離計51,71の測定値から前後差/2を減算し、第2距離計52,72の測定値に前後差/2を加算する。制御装置61は、第1距離計51,71が第2距離計52,72よりも前方に位置していれば第1距離計51,71の測定値に前後差/2を加算し、第2距離計52,72の測定値に前後差/2を減算する。
【0069】
上記したように、第1距離計51,71と第2距離計52,72との前後方向での基準位置を一致させ、基準位置からの距離を導出できるようにすれば、第1距離計51,71及び第2距離計52,72の位置関係は任意である。
【0070】
○第1実施形態において、第1距離計51と第2距離計52とは互いに上下方向に離間していればよく、左右方向の位置関係は適宜変更してもよい。例えば、2つのフォーク26の一方に第1距離計51を設け、他方に第2距離計52を設けてもよい。また、2つのフォーク26の両方に第1距離計51及び第2距離計52を設けてもよい。
【0071】
○第1実施形態において、制御装置61は、第1距離計51の測定値と第2距離計52の測定値との差から、フォーク26とパレット90との間に、相対的な位置ずれが生じているか否かを判定してもよい。位置ずれ判定制御について説明を行う。位置ずれ判定制御は、フォーク26とパレット90との間に、相対的な位置ずれが生じているか否かを判定する制御である。以下では、フォーク26とパレット90との間に上下方向の相対的な位置ずれが生じているか否かを判定する場合について説明する。
【0072】
位置ずれ判定制御が行われるタイミングは任意である。例えば、位置ずれ判定制御が行われるタイミングは、判定制御と同様である、以下の説明において「位置ずれ」とは、フォーク26とパレット90との上下方向に対する相対的な位置ずれを示す。
【0073】
図9に示すように、ステップS20において、制御装置61は、2つの距離計51,52から測定値を取得する。
次に、ステップS21において、制御装置61は、第1距離計51の測定値及び第2距離計52の測定値の一方が判定用閾値未満か否かを判定する。ステップS21の判定結果が否定の場合、制御装置61はステップS22の処理を行う。ステップS21の判定結果が肯定の場合、制御装置61はステップS23の処理を行う。
【0074】
ステップS22において、制御装置61は、位置ずれが生じていないと判定する。位置ずれが生じていない場合、第1距離計51のレーザーL1及び第2距離計52のレーザーL2は、差込孔96を通過する。このため、位置ずれが生じていない場合、第1距離計51の測定値及び第2距離計52の測定値が無限となる。従って、位置ずれが生じていない場合、ステップS21の判定結果が否定となり、位置ずれが生じていないと判定できる。
【0075】
ステップS23において、制御装置61は、位置ずれが生じていると判定する。
図10に示すように、フォーク26の差込部28がパレット90の差込孔96よりも上方に位置している場合、第1距離計51のレーザーL1は差込孔96を通過する一方で、第2距離計52のレーザーL2は開口面97に当たる。制御装置61は、第1距離計51の測定値が無限であり、かつ、第2距離計52の測定値が予め定められた判定用閾値未満であればフォーク26が差込孔96よりも上方に位置していると判定する。判定用閾値としては、第2距離計52のレーザーL2が開口面97に当たっているか否かを判定できるように設定される。制御装置61は、第2距離計52の測定値が無限であり、かつ、第1距離計51の測定値が予め定められた判定用閾値未満であればフォーク26が差込孔96よりも下方に位置していると判定する。
【0076】
上記したように、位置ずれが生じている場合、第1距離計51の測定値及び第2距離計52の測定値の一方は無限であり、他方は判定用閾値未満である。従って、位置ずれが生じている場合、ステップS21の判定結果が肯定となり、位置ずれが生じていると判定できる。このように、位置ずれが生じている場合には、第1距離計51の測定値と第2距離計52の測定値に差が生じる。このため、制御装置61は、第1距離計51の測定値と第2距離計52の測定値との差から、位置ずれが生じているか否かを判定できる。ステップS21,S22,S23の処理を行うことで、制御装置61は、位置ずれが生じているか否かを判定する判定部を備えているといえる。
【0077】
制御装置61は、フォーク26とパレット90との間に上下方向の位置ずれが生じている場合、位置ずれが小さくなるように制御を行ってもよいし、操作者への通知を行ってもよい。位置ずれが小さくなるように制御を行う場合、制御装置61は、油圧機構42を制御することでフォーク26を昇降させる。制御装置61は、第1距離計51の測定値が無限であり、かつ、第2距離計52の測定値が判定用閾値未満であればフォーク26を下降させる。制御装置61は、第2距離計52の測定値が無限であり、かつ、第1距離計51の測定値が判定用閾値未満であればフォーク26を上昇させる。制御装置61は、例えば、2つの距離計51,52の測定値の両方が無限になるとフォーク26を停止させる。
【0078】
制御装置61は、第1距離計51及び第2距離計52を用いて、位置ずれが生じているか否かの判定のみを行ってもよい。制御装置61は、第1距離計51及び第2距離計52を用いて、角度ずれが生じているか否かの判定と、位置ずれが生じているか否かの判定の両方を行ってもよい。この場合、角度ずれが生じているか否かを判定するための距離計と、位置ずれが生じているか否かを判定するための距離計とを個別に設ける必要がないため、部品点数の削減が図られる。制御装置61は、角度ずれ及び位置ずれの少なくともいずれかが生じているか否かを判定できればよい。
【0079】
○第2実施形態において、制御装置61は、第1距離計71の測定値と第2距離計72の測定値との差から、フォーク26とパレット90との間に左右方向の相対的な位置ずれが生じているか否かを判定してもよい。第1フォーク26Lが前後方向にパレット90と向かい合わず、かつ、第2フォーク26Rが前後方向にパレット90と向かい合う場合、第1距離計71のレーザーL3はパレット90に当たらない一方で、第2距離計72のレーザーL3は開口面97に当たる。この場合、第1距離計71の測定値は無限となり、第2距離計72の測定値は予め定められた横ずれ判定用閾値未満となる。第2フォーク26Rが前後方向にパレット90と向かい合わず、かつ、第1フォーク26Lが前後方向にパレット90と向かい合う場合、第2距離計72のレーザーL4はパレット90に当たらない一方で、第1距離計71のレーザーL3は開口面97に当たる。この場合、第1距離計71の測定値は横ずれ判定用閾値未満となり、第2距離計72の測定値は無限となる。制御装置61は、2つの距離計71,72のうち一方の距離計の測定値が無限であり、かつ、他方の距離計の測定値が予め定められた横ずれ判定用閾値未満であればフォーク26とパレット90との間に左右方向の相対的な位置ずれが生じていると判定する。横ずれ判定用閾値としては、レーザーL3,L4が開口面97に当たっているか否かを判定できるように設定される。
【0080】
制御装置61は、フォーク26とパレット90との間に左右方向の位置ずれが生じている場合、位置ずれが小さくなるように制御を行ってもよいし、操作者への通知を行ってもよい。位置ずれが小さくなるように制御を行う場合、フォークリフト10は、サイドシフト装置を備えることが好ましい。サイドシフト装置は、サイドシフトシリンダを備え、サイドシフトシリンダへの作動油の給排によってフォーク26を左右方向に移動させることが可能な装置である。以下、サイドシフト装置について詳細に説明を行う。
【0081】
図11に示すように、サイドシフト装置110は、リフトブラケット25に取り付けられている。リフトブラケット25は、2つのフィンガーバー101,102を備える。2つのフィンガーバー101,102は、上下方向に間隔を空けて設けられている。
【0082】
サイドシフト装置110は、シフター111と、シフトシリンダ116と、を備える。
シフター111は、2つのフィンガーバー101,102に対して左右に移動可能に設けられている。シフター111は、2つのシフターバー112,113と、2つのシフターバー112,113を連結する2つの連結部材114,115と、を備える。2つのシフターバー112,113は、上下方向に間隔を空けて設けられている。2つの連結部材114,115は、左右方向に間隔を空けて設けられている。連結部材114,115は、シフターバー112,113の端部同士を連結している。シフターバー112,113には、フォーク26が連結されている。
【0083】
シフトシリンダ116は、油圧シリンダである。シフトシリンダ116への作動油の給排によってシフター111は左右方向に移動する。シフター111とともにフォーク26も左右方向に移動する。図11に示すサイドシフト装置110は、2つのフォーク26の間隔を維持した状態でフォーク26を左右方向に移動させる装置である。サイドシフト装置としては、2つのフォーク26同士の間隔を変更できる装置を用いてもよい。
【0084】
制御装置61は、第1距離計71の測定値が無限であり、かつ、第2距離計72の測定値が横ずれ判定用閾値未満であればフォーク26を右方に移動させてもよい。例えば、制御装置61は、第1フォーク26Lが前後方向にパレット90と向かい合わず、かつ、第2フォーク26Rが前後方向にパレット90と向かい合う場合、フォーク26を右方に移動させてもよい。制御装置61は、第2距離計72の測定値が無限であり、かつ、第1距離計71の測定値が横ずれ判定用閾値未満であればフォーク26を左方に移動させてもよい。例えば、制御装置61は、第2フォーク26Rが前後方向にパレット90と向かい合わず、かつ、第1フォーク26Lが前後方向にパレット90と向かい合う場合、フォーク26を左方に移動させてもよい。制御装置61は、例えば、2つの距離計71,72の測定値の両方が無限になるとフォーク26を停止させる。フォークリフト10がサイドシフト装置を備えない場合、制御装置61は、駆動機構41を制御してフォークリフト10の操舵を行うことで位置ずれが小さくなるように制御を行ってもよい。
【0085】
制御装置61がフォーク26とパレット90との間に左右方向の相対的な位置ずれが生じているか否かを判定する場合、第1距離計71及び第2距離計72は同一のフォーク26に設けられていてもよい。例えば、第1フォーク26Lに第1距離計71及び第2距離計72を設けてもよい。また、2つのフォーク26の両方に第1距離計71及び第2距離計72を設けて、それぞれのフォーク26に設けられた第1距離計71及び第2距離計72毎に位置ずれを判定してもよい。この場合、第1距離計71及び第2距離計72を1組しか設けない場合に比べて、精度良くフォーク26の位置決めを行うことができる。
【0086】
制御装置61は、第1距離計71及び第2距離計72を用いて、フォーク26とパレット90との間に左右方向の相対的な位置ずれが生じているか否かの判定のみを行ってもよい。制御装置61は、第1距離計71及び第2距離計72を用いて、角度ずれが生じているか否かの判定と、フォーク26とパレット90との間に左右方向の相対的な位置ずれが生じているか否かの判定の両方を行ってもよい。この場合、角度ずれが生じているか否かを判定するための距離計と、フォーク26とパレット90との間に左右方向の相対的な位置ずれが生じているか否かを判定するための距離計とを個別に設ける必要がないため、部品点数の削減が図られる。
【0087】
○第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせてもよい。即ち、制御装置61は、前後方向に対する角度ずれが生じているか否かの判定と、左右方向に対する角度ずれが生じているか否かの判定との両方を行ってもよい。
【0088】
この場合、距離計は少なくとも3つ設けられる。1つの距離計を第1距離計とし、この第1距離計と上下方向に離間して1つの距離計を設け、第1距離計と左右方向に離間して1つの距離計を設ければよい。この場合、第1距離計と上下方向に離間して設けられた距離計と第1距離計と左右方向に離間して設けられた距離計との両方が第2距離計である。制御装置61は、第1距離計の測定値と、第1距離計と上下方向に離間して設けられた距離計の測定値から前後方向に対する角度ずれが生じているか否かを判定する。制御装置61は、第1距離計の測定値と、第1距離計と左右方向に離間して設けられた距離計の測定値から左右方向に対する角度ずれが生じているか否かを判定する。
【0089】
また、制御装置61は、上下方向に対する相対的な位置ずれが生じているか否かの判定と、左右方向に対する相対的な位置ずれが生じているか否かの判定との両方を行ってもよい。即ち、制御装置61は、前後方向に対する角度ずれが生じているか否かの判定、左右方向に対する角度ずれが生じているか否かの判定、上下方向に対する相対的な位置ずれが生じているか否かの判定、及び、左右方向に対する相対的な位置ずれが生じているか否かの判定のうち2つ以上の任意の判定を行ってもよい。
【0090】
○第1実施形態において、制御装置61は、フォーク26と荷置き場との前後方向に対する相対的な角度ずれが生じているか否かを判定してもよい。棚やトラックの荷台は、パレット90が置かれるパレット載置面を備える。第1距離計51及び第2距離計52から照射されるレーザーL1,L2は、パレット載置面に当たる。制御装置61は、第1距離計51の測定値と第2距離計52の測定値との差からフォーク26と荷置き場との前後方向に対する相対的な角度ずれが生じているか否かを判定する。
【0091】
同様に、第1実施形態において、制御装置61は、フォーク26と荷置き場との上下方向に対する相対的な位置ずれが生じているか否かを判定してもよい。
○第1実施形態において、パレットの種類は任意である。パレットは、例えば、ポストパレット、又はメッシュパレットであってもよい。パレットの種類によっては、パレットと荷置き場との間に差込孔が画定される。言い換えれば、パレットは第1内面94を備えていない場合がある。この場合、距離計51,52から照射されたレーザーL1,L2は、第1内面94に代えて荷置き場に当たる。レーザーL1,L2が荷置き場に当たる場合であっても、実施形態と同様の手法によって、フォーク26とパレットとの間に角度ずれが生じているか否かを判定することができる。
【0092】
○各実施形態において、距離計51,52,71,72としては、超音波センサ、光電センサ、又はミリ波レーダーを用いてもよい。距離計51,52,71,72としては、2方向への距離を測定可能な2次元の距離計を用いてもよいし、3次元への距離を測定可能な3次元の距離計を用いてもよい。
【0093】
○各実施形態において、フォークリフト10は、遠隔操作されるものであってもよい。この場合、操作者は、フォークリフト10から離れた遠隔地でフォークリフト10の操作を行う。操作者は、遠隔地に設けられた操作端末を操作する。操作端末としては、専用の装置を用いることもできるし、タブレット端末などの携帯通信端末を用いることもできる。操作端末は、フォークリフト10を操作する操作部と、通信装置と、を備える。操作部は、レバー等の物理的な部材であってもよいし、操作部として機能するシンボルをタッチパネルに表示したものであってもよい。通信装置は、予め定められたフォーマットでデータを生成し、このデータをフォークリフト10に送信するものである。
【0094】
フォークリフト10は、車載通信装置を備える。車載通信装置は、通信装置から送信されたデータを受信して制御装置61に出力する。制御装置61は、通信装置から送信されたデータに従いフォークリフト10を動作させる。制御装置61は、角度ずれが生じていることの通知を操作者へ行う場合、角度ずれが生じていることを示す情報を含むデータを車載通信装置から通信装置に送信する。これにより、操作端末は、操作者への通知を行うことができる。
【符号の説明】
【0095】
10…フォークリフト、21…荷役装置、26…フォーク、28…差込部、29…差込部の表面である第1面、30…差込部の表面である第2面、51,71…第1距離計、52,72…第2距離計、61…判定部としての制御装置、81…差込部の表面である第3面、82…差込部の表面である第4面。
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