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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】タクシーシステム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/40 20240101AFI20240709BHJP
   G07B 11/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G06Q50/40
G07B11/00 501
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021080011
(22)【出願日】2021-05-10
(65)【公開番号】P2022173940
(43)【公開日】2022-11-22
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】覚知 誠
(72)【発明者】
【氏名】泉田 修
(72)【発明者】
【氏名】井上 俊二
(72)【発明者】
【氏名】濱島 拓美
(72)【発明者】
【氏名】金高 充志
(72)【発明者】
【氏名】安藤 敏広
(72)【発明者】
【氏名】高平 正光
【審査官】池田 聡史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-174208(JP,A)
【文献】特開2002-181580(JP,A)
【文献】特開2021-012449(JP,A)
【文献】特開2018-147354(JP,A)
【文献】国際公開第2018/073986(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111985764(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0223396(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G07B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員を無人運転で目的地まで輸送する複数の無人タクシー車両と、
前記無人タクシー車両に搭載され、前記乗員が提示した証明書媒体を読み取った結果を、読取データとして出力する媒体リーダと、
前記読取データを解析することで、目的地および決済情報を含むチケット情報を取得し、取得した前記チケット情報に基づいて前記無人タクシー車両の目的地の設定および決済を実行するシステムコントローラと、
前記証明書媒体の種類ごとに、前記証明書媒体の種類を特定するための識別用特徴と、前記証明書媒体のフォーマットを示すフォーマット情報と、を対応付けて記憶した媒体DBと、
前記証明書媒体の個体を識別するための個体識別情報と、前記チケット情報と、を対応付けて記憶したチケットDBと、
を備え、前記証明書媒体は、タクシー利用以外の場面で前記乗員を証明することを目的として前記乗員に発行された媒体であり、
前記システムコントローラは、前記読取データから前記識別用特徴を抽出し、抽出された前記識別用特徴を前記媒体DBに照らし合わせて、提示された前記証明書媒体の前記フォーマット情報を特定し、特定された前記フォーマット情報に基づいて前記読取データを解析し、
前記フォーマット情報は、少なくとも、前記読取データ内における前記個体識別情報の配置を示す情報を含んでおり、
前記システムコントローラは、特定された前記フォーマット情報に基づいて前記読取データから前記個体識別情報を抽出し、抽出された前記個体識別情報を前記チケットDBに照らし合わせることで、提示された前記証明書媒体に対応付けられた前記チケット情報を取得する、
ことを特徴とするタクシーシステム。
【請求項2】
請求項に記載のタクシーシステムであって、
前記チケット情報は、さらに、前記無人タクシー車両を利用する際の時間的条件、位置的条件、および人的条件の少なくとも一つを含む利用条件を含んでおり、
前記システムコントローラは、取得した前記チケット情報に含まれる前記利用条件と、実際の利用条件と、が合致しない場合、前記証明書媒体に基づく前記目的地の設定および前記決済処理を行わない、
ことを特徴とするタクシーシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のタクシーシステムであって、
前記システムコントローラは、取得した前記チケット情報に1以上の連絡先が含まれている場合、前記証明書媒体の提示を受けて行う前記乗員の輸送状況を前記連絡先に通知する、ことを特徴とするタクシーシステム。
【請求項4】
請求項に記載のタクシーシステムであって、
前記証明書媒体には、1以上の位置情報が記録されており、
前記システムコントローラは、特定された前記フォーマット情報に基づいて前記読取データから前記位置情報を前記チケット情報として抽出し、抽出された前記位置情報に基づいて前記目的地の設定を行う、
ことを特徴とするタクシーシステム。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載のタクシーシステムであって、
前記システムコントローラは、取得した前記チケット情報に2以上の前記目的地が含まれている場合、2以上の前記目的地を前記乗員に目的地候補として提示し、前記乗員が選択した前記目的地候補を前記無人タクシー車両の前記目的地として設定する、ことを特徴とするタクシーシステム。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1項に記載のタクシーシステムであって、
前記媒体リーダは、前記証明書媒体を撮像するカメラ、前記証明書媒体の表面をスキャンするスキャナ、前記証明書媒体に付されたバーコードを読み取るバーコードリーダの少なくとも一つを含む、ことを特徴とするタクシーシステム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のタクシーシステムであって、
前記証明書媒体は、特定の施設を利用するために発行された証明書媒体であり、
前記チケット情報は、前記証明書媒体に対応する前記特定の施設の住所を含む、
ことを特徴とするタクシーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、乗員を無人運転で目的地まで輸送する複数の無人タクシー車両を備えたタクシーシステムを開示する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動運転が可能な自動運転車両をタクシー車両として利用することが提案されている。例えば、特許文献1には、自動運転車両を用いてタクシーサービスを提供する技術が開示されている。このように自動運転車両を用いることで、運転手が乗車しない無人タクシー車両を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-174208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、無人タクシー車両では、当然ながら、運転手が乗車していない。そのため、無人タクシー車両を利用する乗員は、通常、情報端末、あるいは、無人タクシー車両に搭載されたユーザインターフェース装置を操作して、目的地の設定や決済処理を実行する必要がある。しかし、乗員の中に、こうした情報機器を適切に操作できない人もいる。例えば、高齢者や子供、泥酔者等は、情報機器を適切に操作できない場合が多い。その結果、高齢者等は、無人タクシー車両を気軽に利用できないおそれがあった。また、情報機器を適切に操作できる人であっても、上述した目的地の設定操作や決済操作は、手間であった。
【0005】
そこで、本明細書では、多くの人がより簡易に利用できるタクシーシステムを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示するタクシーシステムは、乗員を無人運転で目的地まで輸送する複数の無人タクシー車両と、前記無人タクシー車両に搭載され、前記乗員が提示した証明書媒体を読み取った結果を、読取データとして出力する媒体リーダと、前記読取データを解析することで、目的地および決済情報の少なくとも一方を含むチケット情報を取得し、取得した前記チケット情報に基づいて前記無人タクシー車両の目的地の設定および決済の実行の少なくとも一方を実行するシステムコントローラと、を備え、前記証明書媒体は、タクシー利用以外の場面で前記乗員を証明することを目的として前記乗員に発行された媒体である、ことを特徴とする。
【0007】
かかる構成とすることで、乗員は、自身が所有する証明書媒体を提示するだけで、目的地の設定および決済処理の少なくとも一方が完了するため、無人タクシー車両をより簡易に利用できる。
【0008】
この場合、さらに、前記証明書媒体の種類ごとに、前記証明書媒体の種類を特定するための識別用特徴と、前記証明書媒体のフォーマットを示すフォーマット情報と、を対応付けて記憶した媒体DBを備え、前記システムコントローラは、前記読取データから前記識別用特徴を抽出し、抽出された前記識別用特徴を前記媒体DBに照らし合わせて、提示された前記証明書媒体の前記フォーマット情報を特定し、特定された前記フォーマット情報に基づいて前記読取データを解析してもよい。
【0009】
かかる構成とすることで、システムコントローラは、様々な種類の証明書媒体に記録されている内容を、把握できる。そして、これにより、タクシーシステムは、様々な種類の証明書媒体を、タクシーチケットとして利用できる。
【0010】
また、さらに、前記証明書媒体の個体を識別するための個体識別情報と、前記チケット情報と、を対応付けて記憶したチケットDBと、を備え、前記フォーマット情報は、少なくとも、前記読取データ内における前記個体識別情報の配置を示す情報を含んでおり、前記システムコントローラは、特定された前記フォーマット情報に基づいて前記読取データから前記個体識別情報を抽出し、抽出された前記個体識別情報を前記チケットDBに照らし合わせることで、提示された前記証明書媒体に対応付けられた前記チケット情報を取得してもよい。
【0011】
かかる構成とすることで、証明書媒体ごとに、利用者が希望するチケット情報を割り当てることができる。結果として、利用者の利便性をより向上できる。
【0012】
また、前記チケット情報は、さらに、前記タクシー車両を利用する際の時間的条件、位置的条件、および人的条件の少なくとも一つを含む利用条件を含んでおり、前記システムコントローラは、取得した前記チケット情報に含まれる前記利用条件と、実際の利用条件と、が合致しない場合、前記証明書媒体に基づく前記目的地の設定および前記決済処理を行わなくてもよい。
【0013】
かかる構成とすることで、証明書媒体の不正利用を効果的に防止できる。
【0014】
また、前記システムコントローラは、取得した前記チケット情報に1以上の連絡先が含まれている場合、前記証明書媒体の提示を受けて行う前記乗員の輸送状況を前記連絡先に通知してもよい。
【0015】
かかる構成とすることで、乗員の関係者が、乗員の輸送状況を把握できるため、関係者の安心感をより向上できる。
【0016】
また、前記証明書媒体には、1以上の位置情報が記録されており、前記システムコントローラは、特定された前記フォーマット情報に基づいて前記読取データから前記位置情報を前記チケット情報として抽出し、抽出された前記位置情報に基づいて前記目的地の設定を行ってもよい。
【0017】
かかる構成とすることで、証明書媒体に対応するチケット情報を事前に登録する必要がないため、乗員は、より気軽に無人タクシー車両を利用できる。
【0018】
また、前記システムコントローラは、取得した前記チケット情報に2以上の前記目的地が含まれている場合、2以上の前記目的地を前記乗員に目的地候補として提示し、前記乗員が選択した前記目的地候補を前記無人タクシー車両の前記目的地として設定してもよい。
【0019】
かかる構成とすることで、乗員の利便性をより向上できる。
【0020】
また、前記媒体リーダは、前記証明書媒体を撮像するカメラ、前記証明書媒体の表面をスキャンするスキャナ、前記証明書媒体に付されたバーコードを読み取るバーコードリーダ、前記証明書媒体に内蔵されたICチップに記録されたデータを読み取るICリーダの少なくとも一つを含んでもよい。
【発明の効果】
【0021】
本明細書で開示するタクシーシステムによれば、多くの人がより簡易に無人タクシー車両を利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】タクシーシステムのイメージ図である。
図2】タクシーシステムの構成を示すブロック図である。
図3】媒体DBの構成の一例を示す図である。
図4】証明書媒体の一種である運転免許証とそのフォーマットの一例を示す図である。
図5】証明書媒体の一種である診察券とそのフォーマットの一例を示す図である。
図6】チケットDBの構成の一例を示す図である。
図7】証明書媒体をタクシーチケットとして使用する場合のシステムコントローラの処理の流れを示す図である。
図8】UI装置を介して乗員に提示される目的地選択画面の一例を示す図である。
図9】証明書媒体をタクシーチケットとして使用する場合のシステムコントローラの処理の他の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照してタクシーシステム10の構成について説明する。図1は、タクシーシステム10のイメージ図である。図1に示す通り、タクシーシステム10は、複数のタクシー車両12と、これらを管理する管理センタ14と、を備えている。
【0024】
タクシー車両12は、乗員からの依頼を受けて、個別契約で乗員を目的地まで輸送する車両である。本例のタクシー車両12は、定員1名の一人乗り車両である。なお、当然ながら、乳幼児等は乗員としてカウントせず、大人と同乗可能である。また、このタクシー車両12は、動的運転タスクの全てを車両側で行う自動運転車両である。したがって、タクシー車両12には、運転手は乗車していない。
【0025】
なお、「自動運転」とは、動的運転タスクのほぼ全てを車両が行うことを意味しており、例えば、米国の自動車技術会(SAE)で定められたレベル3からレベル5のいずれかを意味する。レベル3は、高速道路等、特定の場所において、全ての動的運転タスクが自動化されているものの、緊急時には、ドライバーの操作が必要となる運転形態である。また、レベル4は、特定の場所に限り、全ての動的運転タスクが自動化されており、緊急時の対応も自動的に処理される運転形態である。レベル5は、場所等の制限なく、ほぼ全ての条件で自動運転が可能な運転形態であり、いわゆる、「完全自動運転」を意味する。
【0026】
管理センタ14は、タクシー車両12の配車を管理する。具体的には、管理センタ14は、複数のタクシー車両12それぞれの位置と運行状態を収集し、管理している。ここで、タクシー車両12の運行状態としては、例えば、空車、賃走、回送、迎車等がある。管理センタ14は、さらに、利用者からのリクエストや、市中におけるタクシー車両12および人の分布状況等を考慮して、タクシー車両12の望ましい配置を算出し、タクシー車両12に配車指示を出力する。タクシー車両12は、この配車指示に従い、適宜、走行する。
【0027】
ここで、上述した通り、タクシー車両12には、運転手が乗車していない。そのため、乗員は、通常、自身が所有する情報端末110(例えばスマートフォン等)またはタクシー車両12に搭載されたユーザインターフェース装置(以下「UI装置」という)を操作して、目的地を設定したり、決済を実行したりする必要がある。しかし、乗員の中には、こうした情報機器の操作を適切に行えない人もいる。例えば、高齢者や小児は、情報機器の操作に慣れておらず、情報機器を適切に操作できない場合が多い。また、通常時には、情報機器を適切に操作できる人であっても、飲酒や疾病の影響で、情報機器を適切に操作できない場合もある。さらに、情報機器を適切に操作できる人にとっても、目的地の設定操作等は、手間がかかり、面倒な作業である。特に、自宅等のように、タクシー車両12の目的地として設定する機会が多い場所については、情報機器を操作することなく、簡易に、目的地として設定できるようにしたいという要望がある。
【0028】
そこで、本例のタクシーシステム10では、乗員が予め所有している証明書媒体100に基づいて、目的地の設定および決済の実行の少なくとも一方を実行する。具体的には、管理センタ14は、証明書媒体100と、チケット情報と、を予め関連付けて記憶しておく。チケット情報とは、タクシー車両12を利用する際に必要な情報であり、目的地および決済情報の少なくとも一つを含む。タクシー車両12は、乗員が提示した証明書媒体100を読み取り、読み取った結果を管理センタ14に送信する。管理センタ14は、予め記憶した情報と、タクシー車両12から送信された情報と、を照合して、証明書媒体100に対応付けられたチケット情報を特定し、タクシー車両12に送信する。タクシー車両12は、管理センタ14から送信されたチケット情報に基づいて目的地の設定等を実行する。つまり、本例のタクシーシステム10では、乗員が保持する証明書媒体100を、タクシー車両12を利用する際に提示する「タクシーチケット」としても利用できる。以下、こうした処理を実現するための具体的構成について説明する。
【0029】
はじめに、本システムで取り扱う証明書媒体100について説明する。証明書媒体100は、乗員が予め所有しているもので、物理的に持ち運びができる証明書である。したがって、証明書媒体100は、例えば、カード状でもよいし、手帳状でもよい。また、証明書媒体100は、タクシー利用以外の場面で、乗員を証明するために、タクシーシステム10以外の組織や団体、個人が発行した証明書である。したがって、証明書媒体100は、例えば、運転免許証やマイナンバーカード、パスポート、学生証、社員証、診察券、メンバーズカードでもよい。また、本例のタクシーシステム10は、複数種類の証明書媒体100を取り扱う。したがって、例えば、タクシーシステム10は、特定の乗員が所有する運転免許証と自宅を関連づけて記憶するとともに、当該特定の乗員が所有の診察券と医療施設の住所とを互いに関連付けて記憶していてもよい。この場合、タクシー車両12は、乗員が運転免許証を提示した場合には、乗員の自宅を目的地に設定し、診察券を提示した場合には、医療施設の住所を目的地に設定する。
【0030】
また、証明書媒体100には、当該証明書媒体100およびその所有者に関する情報(以下「証明書情報」という)が記録されている。例えば、運転免許証は、国によって多少の違いはあるが、所有者の氏名や、住所、運転が許可されている車両種類、顔写真、有効期限、免許証番号、発行機関の名称等が証明書情報として、その表面に印刷されている。また、診察券は、発行元の医療施設によって違いがあるが、通常、医療施設の名称や住所、電話番号、所有者の登録番号、所有者の氏名等が、証明書情報として記録されている。こうした証明書情報は、証明書媒体100の表面にテキストとして印刷されてもよいし、バーコード等に暗号化された状態で印刷されてもよい。また、別の形態として、証明書情報は、証明書媒体100に内蔵されたICチップに記録されてもよい。
【0031】
次に、図2を参照してタクシー車両12および管理センタ14の構成について説明する。図2は、タクシーシステム10の構成を示すブロック図である。図2に示すように、タクシー車両12は、駆動ユニット24と、車両センサ群26と、通信I/F28と、UI装置30と、媒体リーダ32と、決済装置34と、車両コントローラ22と、を有する。駆動ユニット24は、タクシー車両12を走行させるための機械的駆動力を発生させる機器であり、例えば、原動機や動力伝達装置、ブレーキ装置、懸架装置、舵取り装置等を含む。車両センサ群26は、タクシー車両12の走行に必要な各種情報をセンシングするための複数のセンサを含む。かかる車両センサ群26は、例えば、タクシー車両12の周辺環境を検知するためのセンサ(例えばカメラ、LiDAR、ミリ波レーダ、超音波センサ等)や、タクシー車両12の現在位置を検知するためのセンサ(例えばGPS等)、タクシー車両12の走行状態を検知するためのセンサ(例えば加速度センサ、ジャイロセンサ等)等を含む。車両センサ群26で検知された情報は、車両コントローラ22に送信される。車両コントローラ22は、車両センサ群26で検知された情報に基づいて、タクシー車両12の加減速量および操舵量を演算し、駆動ユニット24を駆動する。
【0032】
通信I/F28は、通信技術を利用して、車外の情報機器と通信する。この場合、通信対象である情報機器としては、例えば、管理センタ14や、他のタクシー車両12、乗員が所有する情報端末110等が含まれる。こうした通信は、携帯電話会社が提供するモバイルデータ通信を利用して行われてもよいし、ブルートゥース(登録商標)等の近距離無線通信を利用して行われてもよいし、専用の通信回線を利用して行われてもよい。
【0033】
UI装置30は、利用者に対して情報を提示するとともに、利用者からの操作を受け付ける装置である。このUI装置30は、例えば、利用者に情報を出力する出力装置と、利用者の操作を受け付ける入力装置と、を有する。出力装置は、例えば、ディスプレイ、スピーカ、および、ランプの少なくとも1つを含んでもよい。また、入力装置は、例えば、タッチパネル、キーボード、スイッチ、レバー、ペダル、マイクの少なくとも1つを含んでもよい。
【0034】
媒体リーダ32は、乗員が提示した証明書媒体100を読み取り、その結果を読取データとして出力する。かかる媒体リーダ32は、例えば、証明書媒体100を撮像するカメラ、証明書媒体100の表面をスキャンするスキャナ、証明書媒体100に付されたバーコードを読み取るバーコードリーダ、および、証明書媒体100に内蔵されたICチップに記録されたデータを読み取るICリーダ、の少なくとも一方を含んでもよい。媒体リーダ32がカメラまたはスキャナを有する場合、読取データは、証明書媒体100を撮像またはスキャンして得られる画像データを含む。また、媒体リーダ32がバーコードリーダを有する場合、読取データは、バーコードを解析して得られる情報を含む。さらに、媒体リーダ32がICリーダを有する場合、読取データは、ICチップから読みだされたデータを含む。
【0035】
決済装置34は、単独で、または、管理センタ14と協働して、タクシー車両12の利用料金の徴収を実行する装置である。したがって、決済装置34は、利用料金を徴収するための装置、例えば、投入された現金の金額を計数して必要に応じて釣銭を出す金銭装置や、クレジットカードでの決済を処理するカードリーダ、プリペイドカードに内蔵されたICチップと通信するRFIDリーダ/ライタ、バーコード決済を行うためのバーコードリーダ等を有してもよい。また、決済装置34は、利用者が事前登録した電子ウォレットにアクセスするためのアクセス情報(例えば、利用者の識別情報やパスワード等)を取得し、これを管理センタ14に送信する装置でもよい。この場合、管理センタ14は、受信したアクセス情報に基づいて、利用者の電子ウォレットにアクセスし、利用料金を徴収する。また、後述する通り、証明書媒体100に、決済情報として、引き落とし口座やクレジット番号が対応付けられている場合、タクシーシステム10は、この決済情報に従って、決済処理を自動的に実行する。したがって、この場合、乗員は、証明書媒体100の提示さえ行えば、決済装置34を操作する必要はない。
【0036】
車両コントローラ22は、タクシー車両12の駆動を制御する。車両コントローラ22は、例えば、車両センサ群26での検知結果からタクシー車両12の周辺環境を把握し、タクシー車両12が安全に走行できるように駆動ユニット24の駆動を制御する。
【0037】
車両コントローラ22は、物理的には、プロセッサ22aとメモリ22bとを有するコンピュータである。この「コンピュータ」には、コンピュータシステムを1つの集積回路に組み込んだマイクロコントローラーも含まれる。また、プロセッサ22aとは、広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。また、プロセッサ22aは、物理的に1つの要素である必要はなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサを含んでもよい。同様に、メモリ22bも、物理的に1つの要素である必要はなく、物理的に離れた位置に存在する複数のメモリで構成されてもよい。また、メモリ22bは、半導体メモリ(例えばRAM、ROM、ソリッドステートドライブ等)および磁気ディスク(例えば、ハードディスクドライブ等)の少なくとも1つを含んでもよい。
【0038】
次に、管理センタ14の構成について説明する。管理センタ14は、管理コントローラ40と、通信I/F42と、媒体DB44と、チケットDB46と、を有している。通信I/F42は、汎用的な通信網、または、専用通信網を介して、複数のタクシー車両12と通信を行う。
【0039】
媒体DB44は、証明書媒体100の種類と、そのフォーマットを特定する際に参照されるデータベースであるが、これについては、後に詳説する。また、チケットDB46は、証明書媒体100に対応付けられたチケット情報を特定する際に参照されるデータベースである。このチケットDB46の具体的構成についても後述する。
【0040】
管理コントローラ40は、利用者が、外部の情報端末、または、タクシー車両12のUI装置30を介して送信した利用要求に応じて、タクシー車両12の配車をコントロールする。利用要求は、利用者が、タクシー車両12を利用したい場合に送信される情報である。この利用要求には、少なくとも、目的地が含まれる。また、利用者が、現時点で乗車せず、後のタイミングで乗車する場合、利用要求は、さらに、乗車位置および乗車日時を含む。管理コントローラ40は、こうした利用要求や、複数のタクシー車両12の走行状態、市中における人の分布等に基づいて、タクシー車両12に配車指示を出力する。こうした管理コントローラ40も、プロセッサ40aとメモリ40bとを有したコンピュータで構成される。
【0041】
また、この管理コントローラ40および車両コントローラ22は、システムコントローラ20を構成する。システムコントローラ20は、乗員が提示した証明書媒体100に基づいて、タクシー車両12の目的地設定および決済処理の少なくとも一方を実行する。
【0042】
次に、媒体DB44の構成について図3図5を参照して説明する。図3は、媒体DB44の構成の一例を示す図である。図4は、証明書媒体100の一種である運転免許証100aとそのフォーマットの一例を示す図である。また、図5は、証明書媒体100の一種である診察券100bとそのフォーマットの一例を示す図である。
【0043】
上述した通り、本例のタクシーシステム10は、証明書媒体100に基づいてタクシー車両12の目的地設定等を行う。また、タクシーシステム10は、複数種類の証明書媒体100を取り扱うことができる。証明書媒体100に記録された証明書情報の内容や、その記録のフォーマット等は、証明書媒体100の種類によって異なる。そのため、媒体リーダ32で読み取った読取データから、証明書媒体100に記録された証明書情報を抽出するためには、証明書媒体100の種類とそのフォーマットを把握する必要がある。
【0044】
そこで、タクシーシステム10は、証明書媒体100の種類とフォーマットを特定するために、媒体DB44を有している。媒体DB44は、図3に示すように、証明書媒体100の種類番号と、媒体名と、識別用特徴と、フォーマット情報と、を対応付けて記録したデータベースである。種類番号は、証明書媒体100の種類を示す識別番号である。図示例では、運転免許証には、「K0001」、「ABCクリニック」の診察券には「K0002」という種類番号が設定されている。
【0045】
識別用特徴は、証明書媒体100の種類を特定する際に用いられる特徴である。例えば、証明書媒体100には、通常、当該証明書媒体100の種類を示すテキストが記録されている。この種類を示すテキストは、識別用特徴となる。例えば、図4に示す日本の運転免許証100aの場合、顔画像Ea6の左側に、「運転免許証」のテキストEa7が付されている。この「運転免許証」というテキストの内容や、フォント、フォントサイズ、記載位置等が、運転免許証100aの識別用特徴として媒体DB44に記録される。また、識別用特徴は、こうした媒体種類の名称を示すテキストに関する情報に加え、運転免許証100aに含まれる特定の画像やテキストを含んでもよい。
【0046】
同様に、図5に示す「ABCクリニック」の診察券100bの場合、上部に「ABCクリニック」のテキストEb2が付されている。この「ABCクリニック」というテキストや、フォント、フォントサイズ、記載位置等が、診察券100bの識別用特徴として媒体DB44に記録される。また、識別用特徴は、こうした媒体種類の名称を示すテキストに関する情報に加え、診察券100bに含まれる特定の画像、例えば、図5の例では、猫の画像Eb4と、その位置等の情報を含んでもよい。
【0047】
管理コントローラ40は、媒体リーダ32で取得された読取データを解析し、この識別用特徴の有無を判断する。そして、特定の識別用特徴を有している場合には、読み取られた証明書媒体100の種類は、特定された識別用特徴に対応する種類であると判断する。例えば、管理コントローラ40は、読取データに、「ABCクリニック」というテキストと、所定の猫の画像と、が含まれている場合、読み取られた証明書媒体100の種類は、種類IDが「K0002」の診察券100bであると判断する。
【0048】
媒体DB44には、さらに、種類番号に対応付けて、フォーマット情報も記録されている。フォーマット情報は、証明書媒体100に記録されている証明書情報のフォーマットを示す情報である。例えば、図4に示す日本の運転免許証100aの場合、エリアAa1に氏名Ea1、エリアAa2に生年月日Ea2、エリアAa3に住所Ea3、エリアAa8に免許証番号Ea8等のように、所定のフォーマットに従って、証明書情報が記録されている。
【0049】
同様に、図5に示す診察券100bの場合、エリアAb2に医療施設の名称Eb2、エリアAb3に登録番号Eb3、エリアAb5に施設住所Eb5、エリアAb6に施設電話番号Eb6、エリアAb7に本人の氏名Eb7等のように、所定のフォーマットに従って証明書情報が記録されている。媒体DB44には、こうした証明書媒体100のフォーマットを示す情報、例えば、各エリアの座標と、記録される情報種類等が、記録されている。管理コントローラ40は、このフォーマット情報に基づいて、読取データを解析し、証明書媒体100の証明書情報を取得する。
【0050】
なお、ここで例示したフォーマット情報は一例である。フォーマット情報は、少なくとも、証明書媒体100の個体を識別するための個体識別情報の配置を含んでいれば、その形態は、適宜、変更されてもよい。例えば、運転免許証100aの場合は、免許証番号Ea8が、診察券100bの場合は、登録番号Eb3が個体識別情報となる。したがって、フォーマット情報は、免許証番号Ea8がエリアAa8に、登録番号Eb3がエリアAb3に記録されている情報を含むのであれば、その他の形態は、適宜、変更されてもよい。
【0051】
次に、チケットDB46について図6を参照して説明する。チケットDB46は、証明書媒体100の個体識別情報と、チケット情報と、を対応付けて記録したデータベースである。具体的に説明すると、チケットDB46には、個体識別情報として、種類番号と、個体番号と、が対応付けて記録されている。種類番号は、媒体DB44に記録された種類番号と同じであり、証明書媒体100の種類を示す識別情報である。個体番号は、証明書媒体100の個体を示す識別情報である。例えば、図4に示す日本の運転免許証100aの場合、運転免許証ごとに異なる免許証番号Ea8が付与されている。したがって、運転免許証100aの場合、免許証番号Ea8が、運転免許証100aの個体を識別する個体番号として登録される。同様に、図5に示す診察券100bの場合には、登録番号Eb3が、診察券100bの個体を識別する個体番号として登録される。そして、証明書媒体100の種類番号と個体番号とのを組み合わせが、証明書媒体100の個体を識別する個体識別情報となる。
【0052】
チケットDB46には、さらに、チケット情報も記録されている。チケット情報は、目的地および決済情報の少なくとも一つを含む情報である。目的地は、位置を特定可能な情報であれば、地名と番地で構成される住所でもよいし、位置を示す緯度および経度でもよい。また、別の形態として、目的地は、施設の固有名称や、電話番号等でもよい。また、目的地情報として登録される位置は、一か所に限らず、複数でもよい。
【0053】
決済情報は、タクシー車両12の利用料金を決済するために必要な情報である。かかる決済情報としては、例えば、料金の引き落とし口座番号や、クレジットカード番号、電子マネーのID番号等が含まれる。
【0054】
チケット情報には、さらに、利用条件が含まれてもよい。利用条件は、対応する証明書媒体100の所有者が、タクシー車両12を利用する際の条件である。この利用条件は、例えば、時間的条件、位置的条件、人的条件の少なくとも一つを含んでもよい。時間的条件は、タクシー車両12を利用する日時や曜日、季節等を含む。また、位置的条件は、例えば、乗員がタクシー車両12に乗車する地域等を含む。さらに、人的条件は、対応する証明書媒体100を所持する乗員の属性、例えば、性別や年齢等を含む。管理コントローラ40は、このチケットDB46に記録されている利用条件と、実際のタクシー車両12の利用条件と、が合致しない場合は、証明書媒体100に基づく目的地の設定および決済処理を行わないが、これについては、後述する。
【0055】
チケット情報には、さらに、連絡先情報が含まれてもよい。連絡先情報は、証明書媒体100の提示を受けて行う乗員の輸送状況の連絡先を示す情報である。かかる連絡先情報としては、例えば、メールアドレスや、ショートメッセージの宛先(すなわち電話番号)、インスタントメッセンジャーのID等が含まれる。システムコントローラ20は、証明書媒体100の提示を受けて乗員の輸送を実行した場合、この連絡先に、その状況を通知する。なお、連絡先は、一つに限らず、複数登録されてもよい。
【0056】
こうしたチケットDB46の情報は、乗員または乗員の代理人が、外部の情報端末、あるいは、タクシー車両12のUI装置30を操作して登録する。具体的には、チケット情報の登録を希望する人は、外部の情報端末あるいはUI装置30を操作して、登録を希望する証明書媒体100の読取データと、当該証明書媒体100に対応付けたいチケット情報と、を管理センタ14に送信する。
【0057】
例えば、管理コントローラ40は、登録希望者から、チケット情報の登録リクエストを受けた場合、登録希望者に対して証明書媒体100の読取データ(例えば撮像画像等)の送信を要求する。この要求を受けて、登録希望者が読取データを送信すれば、管理コントローラ40は、読取データを、媒体DB44に照らし合わせて、証明書媒体に記録されている証明書情報(氏名や登録番号等)を抽出する。そして、得られた証明書情報を、登録希望者に送信し、その内容の正誤を確認する。確認の結果、抽出した証明書情報に誤りが無ければ、続いて、管理コントローラ40は、登録希望者に、当該証明書媒体100に対応付けるチケット情報の入力を要求する。この要求を受けて、登録希望者が、チケット情報を管理コントローラ40に送信する。管理コントローラ40は、受信したチケット情報を、証明書媒体100の識別情報(種類番号および個体番号)と対応付けて、チケットDB46に記録する。こうしたチケット情報の登録のために、登録希望者は、自身が所有する情報端末に専用のアプリケーションをインストールしてもよいし、タクシーシステム10が運営するホームページにアクセスしてもよい。
【0058】
ここで、こうしたチケット情報の登録操作は、証明書媒体100の所有者が行ってもよいし、当該所有者の代理人が行ってもよい。すなわち、上述した通り、高齢者や小児は、情報端末の操作に不慣れなため、上述したチケット情報の登録を適切に行えない場合がある。かかる場合には、証明書媒体100の所有者の代理人、例えば、所有者の家族や知人が、所有者に替わって、チケット情報を登録してもよい。いずれにしても、チケットDB46に、証明書媒体100の識別情報とチケット情報とを対応付けて記録することで、証明書媒体100を、目的地および決済情報の少なくとも一つを示すタクシーチケットとして利用できる。
【0059】
次に、証明書媒体100をタクシーチケットして使用する場合のシステムコントローラ20の処理について図7を参照して説明する。タクシー車両12を利用したい乗員は、タクシー車両12に乗車した際、自身が所有する証明書媒体100を提示する。媒体リーダ32は、提示された証明書媒体100を読み取り、その読み取り結果を読取データ60として、車両コントローラ22に出力する。車両コントローラ22は、得られた読取データ60を、管理コントローラ40に送信する。管理コントローラ40は、媒体DB44を参照して読取データを解析することで、乗員が提示した証明書媒体100の種類とフォーマットを特定する。
【0060】
具体的には、管理コントローラ40は、読取データ60の中から、識別用特徴62を探索する。例えば、読取データが証明書媒体100を撮像した画像の場合、管理コントローラ40は、当該画像に対してOCR(Optical Character Recognition)を施し、OCRの結果、得られたテキストの中から、識別用特徴62として設定されているテキストの有無を探索してもよい。また、別の形態として、識別用特徴62として所定の画像が設定されている場合、管理コントローラ40は、パターンマッチング処理により、読取データ(すなわち撮像画像)に、所定の画像が含まれているか否かを判断してもよい。いずれにしても、管理コントローラ40は、読取データが有する識別用特徴62に対応する種類を、乗員が提示した証明書媒体100の種類として判断する。そして、媒体種類が特定できれば、管理コントローラ40は、特定できた媒体種類を、媒体DB44に照らし合わせて、対応するフォーマット情報64を取得する。
【0061】
フォーマット情報64が得られれば、管理コントローラ40は、読取データ60をフォーマット情報64に基づいて解析し、読取データ60から証明書情報を抽出する。証明書情報としては、例えば、証明書媒体100の個体番号、証明書媒体100の所有者の氏名や、住所、証明書媒体100が使用される施設の名称や住所等である。こうした証明書情報が得られれば、管理コントローラ40は、得られた個体番号と証明書媒体100の種類番号の組み合わせである個体識別情報66を、チケットDB46に照らし合わせて、提示された証明書媒体100に対応付けられたチケット情報68を取得する。
【0062】
チケット情報68が得られれば、管理コントローラ40は、このチケット情報68を、車両コントローラ22に送信する。車両コントローラ22は、受信したチケット情報68に基づいて、タクシー車両12の目的地設定および決済処理の少なくとも一方を実行する。すなわち、チケット情報に、目的地が含まれている場合、車両コントローラ22は、チケット情報に含まれる目的地を、タクシー車両12の目的地として設定する。なお、チケット情報に2以上の目的地が含まれている場合、車両コントローラ22は、この2以上の目的地を、目的地候補として、UI装置30を介して乗員に提示する。図8は、UI装置30を介して乗員に提示される目的地選択画面54の一例を示す図である。チケット情報に、目的地1として「ABCクリニック:ccc市ddd町1-2-3」が、目的地2として、「自宅:aaa市bbb町1-2-3」がそれぞれ含まれている場合、車両コントローラ22は、UI装置30を介して、図8に示す目的地選択画面54を乗員に提示する。乗員は、提示された二つの目的地候補56のうち、所望する目的地を選択する。車両コントローラ22は、乗員により選択された目的地候補56を、タクシー車両12の目的地として設定する。
【0063】
また、チケット情報に、決済情報が含まれている場合、車両コントローラ22は、その決済情報に従い、決済処理を実行する。例えば、決済情報として、所定の引き落とし口座が設定されている場合、車両コントローラ22は、その引き落とし口座から、タクシー車両12の利用料金を引き落とす。
【0064】
また、チケット情報に、利用条件が含まれている場合、車両コントローラ22は、タクシー車両12の実際の利用条件が、チケット情報で設定された利用条件に合致しているか否かを確認する。そして、実際の利用条件が、設定された利用条件に合致していない場合は、証明書媒体100に基づく目的地の設定および決済処理を行わず、乗員にその旨を通知する。
【0065】
また、チケット情報に、連絡先情報が含まれている場合、車両コントローラ22は、乗員の輸送状況を、連絡先情報に登録された連絡先に、通知する。かかる構成とすることで、輸送状況の連絡を受ける人の安心感を向上できるとともに、万一、乗員に異常が発生した場合、早期に対応できる。例えば、児童が通う塾の会員証に対応付けて、当該塾の住所(目的地)と、児童の両親のメールアドレス(連絡先情報)が、それぞれ、チケットDB46に記録されている場合を考える。この場合、タクシー車両12は、児童が塾の会員証を提示すれば、当該児童を塾へと輸送する。また、この場合、タクシー車両12は、児童の輸送状況を、児童の両親のメールアドレスに送信する。この連絡を受けて、両親は、児童の状況を、遠隔にいても把握できるため、高い安心感が得られる。また、万一、予想外の状況となった場合、例えば、本来、塾への輸送が開始されている時刻になっても、輸送が開始されない場合等には、両親は、異常の発生に早期に気付けるため、早期に適切な対応をとることができる。
【0066】
以上の説明で明らかな通り、本例によれば、乗員は、証明書媒体100を提示すれば、目的地設定および/または決済処理を、自動的に実行できる。その結果、情報機器を適切に操作することが難しい高齢者や小児、泥酔者等でも容易にタクシー車両12を利用できる。また、情報機器を適切に操作できる人であっても、自身が所有する証明書媒体100(例えば運転免許証100a)と、移動頻度の高い場所(例えば自宅等)と、を対応付けて登録しておけば、証明書媒体100を提示するという簡単な作業でタクシー車両12を利用できるため、タクシー車両12の利便性をより向上できる。
【0067】
ところで、本例では、タクシー利用以外の場面で乗員を証明することを目的として乗員に発行された証明書媒体100を、タクシーチケットとして利用している。しかし、こうした証明書媒体100を利用するのではなく、タクシーシステム10が、専用のタクシーチケットを発行することも考えられる。しかし、タクシー利用以外で利用できないタクシーチケットを発行した場合、乗員は、持ち歩く媒体の種類が増えてしまい、媒体の使い分けが煩雑になるという問題がある。一方、証明書媒体100にタクシーチケットとしての機能を付与することで、乗員が持ち歩く媒体の種類を減らすことができ、媒体の使い分けが容易となる。
【0068】
また、多くの人は、自身を証明するために、何らかの証明書媒体100を、財布等に入れて、常時、持ち歩く。例えば、運転免許証は、様々な場面で、自身の証明書として利用できるため、運転免許証を保有している人は、これを財布等に入れて、常時、持ち歩くことが多い。このように、常時持ち歩く証明書媒体100にタクシーチケットとしての機能を付与することで、タクシーチケットを持ってくるのを忘れてタクシーを利用できない、といった問題の発生を効果的に防止できる。
【0069】
また、証明書媒体100の中には、特定の施設を利用するために発行されるものもある。例えば、診察券は、当該診察券を発行した医療施設を利用するために発行されるものである。本例のタクシーシステム10によれば、こうした特定の施設で利用される証明書媒体100に対応づける目的地として、当該特定の施設の住所を登録できる。そして、かかる登録とすることで、乗員は、行き先に応じて証明書媒体100の種類を容易に使い分けることができる。例えば、本例のタクシーシステム10によれば、第一医療施設の診察券に第一医療施設の住所を、第二医療施設の診察券に第二医療施設の住所を、それぞれ対応付けて登録できる。この場合、乗員は、第一医療施設で治療を受けたいときには、第一医療施設の診察券をタクシー車両12に提示すれば、第一医療施設に移動でき、第二医療施設で治療を受けたいときには、第二医療施設の診察券をタクシー車両12に提示すれば、第二医療施設に移動できる。換言すれば、この場合、乗員は、治療を受けたい医療施設の診察券をタクシー車両12に提示すれば、当該医療施設に移動できるため、診察券(証明書媒体100)を直感的に使い分けることができる。
【0070】
次に、他のタクシーシステム10での処理について図9を参照して説明する。上述のタクシーシステム10では、証明書媒体100に対応するチケット情報を、乗員または乗員の代理人が、予め、情報端末を操作してチケットDB46に登録していた。図9のタクシーシステム10では、チケット情報を、予め登録するのではなく、証明書媒体100に記録された証明書情報から特定する。すなわち、証明書媒体100には、その所有者の自宅住所または証明書媒体100を利用する施設の住所、または、その両方が記録されている場合が多い。この場合において、システムコントローラ20は、証明書媒体100に記録されている自宅住所または施設住所をタクシー車両12の目的地として自動的に設定する。
【0071】
すなわち、車両コントローラ22は、媒体リーダ32から証明書媒体100の読取データ60を受信すれば、これを、管理コントローラ40に送信する。管理コントローラ40は、読取データ60を、媒体DB44に照らし合わせ、乗員が提示した証明書媒体100のフォーマット情報64を取得する。そして、管理コントローラ40は、フォーマット情報64を取得すれば、当該フォーマット情報64に基づいて、読取データ60から、乗員の自宅住所、または、施設住所、または、その両方を抽出する。管理コントローラ40は、ここで抽出された住所情報を、目的地、ひいては、チケット情報68として取り扱う。そして、管理コントローラ40は、住所情報が抽出できれば、抽出した住所情報が目的地として設定されたチケット情報68を車両コントローラ22に送信する。車両コントローラ22は、チケット情報68に含まれる目的地を、タクシー車両12の目的地に設定する。また、自宅住所および施設住所の双方を受信した場合、車両コントローラ22は、これら二つの住所を目的地候補56として乗員に提示し、乗員が選択した目的地候補56をタクシー車両12の目的地に設定する。
【0072】
以上の通り、本例では、証明書媒体100から直接、目的地の位置情報を抽出している。かかる構成とすることで、証明書媒体100とチケット情報とを対応づけるための事前操作が不要となるため、乗員は、より簡易にタクシー車両12を利用できる。
【0073】
なお、これまで説明した構成は一例であり、システムコントローラ20が、証明書媒体100の読取データを解析することで、目的地および決済情報の少なくとも一方を含むチケット情報を取得し、取得したチケット情報に基づいてタクシー車両12の目的地の設定および決済の実行の少なくとも一方を実行するのであれば、その他の構成は、変更されてもよい。例えば、これまでの説明では、管理コントローラ40が、読取データの解析を行っているが、読取データの解析の一部または全てを、車両コントローラ22が、行ってもよい。また、管理センタ14ではなく、タクシー車両12が媒体DB44およびチケットDB46を有してもよい。さらに、これまでの説明では、タクシー車両12を1人乗り車両としているが、タクシー車両12は、複数人が同時に乗車可能でもよい。
【符号の説明】
【0074】
10 タクシーシステム、12 タクシー車両、14 管理センタ、20 システムコントローラ、22 車両コントローラ、24 駆動ユニット、26 車両センサ群、28 通信I/F、30 UI装置、32 媒体リーダ、34 決済装置、40 管理コントローラ、42 通信I/F、44 媒体DB、46 チケットDB、54 目的地選択画面、56 目的地候補、60 読取データ、62 識別用特徴、64 フォーマット情報、66 個体識別情報、68 チケット情報、100 証明書媒体、110 情報端末。
図1
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図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9