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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】車両のカウルルーバ
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
B62D25/08 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021083003
(22)【出願日】2021-05-17
(65)【公開番号】P2022176522
(43)【公開日】2022-11-30
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾藤 芳彦
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 稔
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-084116(JP,A)
【文献】特開2013-023177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントガラスの下端部に接続されているとともに、外観意匠を構成する本体部と、前記本体部の裏側に配設された封鎖部材と、前記本体部と前記封鎖部材とで囲まれた空間部とを備えた車両のカウルルーバにおいて、
前記空間部は、前記本体部と前記封鎖部材とがフロントガラス側の位置及びその反対側の位置で接することで形成されており、
前記本体部には、前記車両に設けられた別部材と連結している連結部と、前記連結部から車両高さ方向に延びる壁部とが前記反対側の位置に設けられており、
前記封鎖部材が前記壁部に固定されることなく突き当てられるように接した状態とされることで、前記本体部の前記壁部と前記封鎖部材とは、前記反対側の位置で離間可能に接している車両のカウルルーバ。
【請求項2】
前記本体部は、前記封鎖部材から離間して前記フロントガラスから離れる方向に移動可能であるとともに、前記封鎖部材との接触で前記フロントガラスに近づく方向への移動が阻止されている請求項1に記載の車両のカウルルーバ。
【請求項3】
前記本体部と前記封鎖部材とは、前記フロントガラス側の位置で固定されて接している請求項1又は2に記載の車両のカウルルーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントガラスの下端部に接続されている車両のカウルルーバに関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連する車両のカウルルーバが特許文献1に記載されている。このカウルルーバは、車両のフードパネルとフロントガラスとの間に設けられた車体外装部品であり、カウルルーバの後端部がフロントガラスの下端部に接続されている。そしてカウルルーバは、外観意匠をなす意匠部分(本体部)と、意匠部分の裏側に配置された機能部分(封鎖部材)と、意匠部分と機能部分とで囲まれた空間部とを有している。意匠部分は、フロントガラス側で車両上側に突出する山部分と、この山部分の前側で車両下側に凹んだ溝部分とを有している。そしてカウルルーバの前部を構成する溝部分の底板部が、カウルルーバの下方に配設されたカウル(別部材)に嵌合されて連結されている。また機能部分は、意匠部材の山部分の裏側で車両前後方向に延びており、この機能部分の前端部と後端部とが意匠部分に熱融着されることで、意匠部分と機能部分とで囲まれた空間部が形成されている。上記構成のカウルルーバは、その空間部によって構造的に補強されて変形し難くなっている。このため車両高さ方向からカウルルーバに荷重が加わった際にも、このカウルルーバの形状が保持されて、フロントガラスとの接続が極力外れないようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-73566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上記構成のカウルルーバでは、その取付けの際に意匠部分を車両前方に撓ませるなどして、下方に位置するカウルに嵌合させている。しかし公知技術のカウルルーバは、その空間部の剛性によって変形し難く(撓み難く)なっているため、カウルとの嵌合に大きな作業力を要する。即ち、カウルルーバの意匠部分と機能部分を全体的に前方に移動させるために大きな作業力を要し、更にこれらを移動させるために、フロントガラスとの接続箇所に潤滑剤を付与して滑り易くする必要もある。また意匠部分と機能部分を前後の位置で熱融着する構成では、熱融着による固定箇所が多くなるなどしてコストアップになる。本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、カウルルーバの剛性と取付け性とを、コストアップを抑制しつつ確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の車両のカウルルーバは、車両のフロントガラスの下端部に接続されているとともに、外観意匠を構成する本体部と、本体部の裏側に配設された封鎖部材と、本体部と封鎖部材とで囲まれた空間部とを備えている。この種の構成においては、カウルルーバの剛性と取付け性を、コストアップを抑制しつつ確保することが望ましい。そこで本発明の空間部は、本体部と封鎖部材とがフロントガラス側の位置及びその反対側の位置で接することで形成されており、本体部には、車両に設けられた別部材と連結している連結部と、連結部から車両高さ方向に延びる壁部とが反対側の位置に設けられており、封鎖部材が壁部に固定されることなく突き当てられるように接した状態とされることで、本体部の壁部と封鎖部材とは、反対側の位置で離間可能に接している。本発明では、カウルルーバの剛性を確保できるように空間部が形成され、さらに空間部を形成する本体部と封鎖部材とが、フロントガラス側とは反対側の位置で離間可能、即ち、固定されることなく接している。このため本体部を、封鎖部材から離間させて移動させられるようになるとともに、これらの固定箇所を極力減らすことでコストアップの抑制を図ることができる。
また本発明では、車両高さ方向からカウルルーバに加わる荷重が封鎖部材に伝達された際に、この荷重を、封鎖部材が接している本体部の壁部を通じて連結部で受けられるようになる。
【0006】
第2発明の車両のカウルルーバは、第1発明の車両のカウルルーバにおいて、本体部は、封鎖部材から離間してフロントガラスから離れる方向に移動可能であるとともに、封鎖部材との接触でフロントガラスに近づく方向への移動が阻止されている。本発明では、カウルルーバの本体部を、フロントガラスから離れる方向に移動させられるようになり、取付け性の確保に資する構成となる。また封鎖部材との接触によって、本体部のフロントガラスに近づく方向への移動を阻止することにより、本体部と封鎖部材とで囲まれた空間部を適切に形成しておけるようになる。
【0008】
発明の車両のカウルルーバは、第発明又は第2発明の車両のカウルルーバにおいて、本体部と封鎖部材とは、フロントガラス側の位置で固定されて接している。本発明では、車両高さ方向からカウルルーバに加わる荷重が、フロントガラス側の本体部と封鎖部材の固定箇所を通じて、封鎖部材により確実に伝達されるようになる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る第1発明によれば、カウルルーバの剛性と取付け性とを、コストアップを抑制しつつ確保することができる。また第1発明によれば、カウルルーバの剛性をより確実に確保することができる。また第2発明によれば、カウルルーバの剛性と取付け性をより確実に確保することができる。そして第発明によれば、カウルルーバの剛性を更に確実に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】車両の前部の斜視図である。
図2図1のII-II線断面に相当する車両の前部の断面図である。
図3】カウルルーバの斜視図である。
図4】カウルルーバの本体部と封鎖部材の拡大斜視図である。
図5】突起部を示す本体部の裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図1図5を参照して説明する。各図には、便宜上、車両の前後方向と左右方向と上下方向を示す矢線を適宜図示する。なお図2では、便宜上、カウルルーバ及びカウルルーバが取付けられている部材を実線で図示し、その他の部材を二点破線で図示又は省略する。また図2に示す断面図は、図3に示すカウルルーバの左部において最も前後の寸法が小さい部分の断面に相当する。
【0012】
[車両の前部構造の概要]
カウルルーバ10について説明する前に、まず車両2の前部構造の概要について説明する。車両2のボディの左右両側には、図1に示すように、フロントドア3により開閉される左右のドア開口部4が設けられている(図1では、便宜上、車両の左側に設けられた部材にのみ対応する符号を付す)。各ドア開口部4の前端縁には、それぞれフロントピラー5が立設されており、左右のフロントピラー5によってルーフパネル(図示省略)の前部が支持されている。これら左右のフロントピラー5は、フロントドア3のベルトラインBRよりも下側のピラー支柱部5aがフェンダパネル6によって覆われている。またフェンダパネル6よりも上側に位置するフロントピラー5の意匠部5bがフェンダパネル6の意匠面と連続している。そして左右のフロントピラー5の意匠部5bとルーフパネルとによって囲まれた位置にはフロントガラス7が設けられている。
【0013】
また左右のフェンダパネル6の間には、図1に示すように、車両のエンジンルームERを開閉可能に構成されたエンジンフード8が設けられている。また左右のフロントピラー5のピラー支柱部5a間には、エンジンルームERと車室Rとを仕切るダッシュパネル(図示省略)が車幅方向となる左右方向に延びる縦壁状に設けられている。そしてエンジンルームERの後側には、車幅方向に延びるカウルルーバ10(詳細後述)が設けられている。ここでカウルルーバ10の後端部は、図2に示すように、フロントガラス7の下端部70に接続されており、カウルルーバ10の前部は、ダッシュパネルの上側に設けられたカウルパネル20に連結されて支えられている。このカウルパネル20は、本発明の別部材に相当し、その前部にエンジンルームERの天井部を構成するカウルフロントパネル21が設けられている。そしてカウルフロントパネル21の前端部に、カウルルーバ10を支えるフランジ状のルーバ支持部22が車幅方向に延びるように設けられている。またルーバ支持部22の前端位置には、後述するカウルルーバ10との連結のための嵌合孔23が車幅方向に適宜の間隔で形成されている。
【0014】
[カウルルーバ]
図2及び図3に示すカウルルーバ10は、フロントガラス7から流下した水を車両2の車幅方向両端部まで導くとともに、外気導入機能を持った車体外装部品である。このカウルルーバ10は、図3に示すように、その中央位置と左寄り位置とに外気導入部10a,10bがそれぞれ設けられており、右寄り位置には、図示しないワイパーの回転軸が通される一対の孔部Hが形成されている。そしてカウルルーバ10は、図2に示すように、外観意匠をなす本体部11と、この本体部11の裏側(図2の下側)に配設された封鎖部材12と、本体部11と封鎖部材12とで囲まれた空間部18とを有している(本体部11と封鎖部材12と空間部18の詳細は後述)。
【0015】
上記構成のカウルルーバ10では、図2を参照して、車両高さ方向から加わる荷重Fに対する剛性を、その内部に形成された空間部18にて確保している(図2では、便宜上、荷重の加わる向きを示す矢線に荷重を示す符号Fを付す)。この種のカウルルーバ10は、カウルパネル20(別部材)に対する取付け性を考慮して、その本体部11を車両前方、即ち、フロントガラス7から離れる方向に移動可能であることが望ましい。さらにコストアップ抑制の観点から本体部11と封鎖部材12の固定箇所19が少ないことが望ましい。そこで本実施例では、後述する構成によって、カウルルーバ10の剛性と取付け性とを、コストアップを抑制しつつ確保することとした。以下、カウルルーバ10の各構成について詳述する。
【0016】
[本体部]
図2に示す本体部11は、その後端部110が、フロントガラス7に沿うように緩やかに傾斜しており、フロントガラス7の下端部70の表面側に接続されている。即ち、本体部11の後端部110は、フロントガラス7の下端部70に対して固定部材111によって固着されて接続されている。また本体部11は、後端部110の前側に山部13を備えており、その山部13が車幅方向に延びるように形成されている。この山部13は、やや前方に傾いた状態で車両上側に突出しており、後側壁部130と頂部131と前側壁部132とから形成されている。山部13の後側壁部130は、車両前方に向かうにつれて次第に上側に傾斜しており、車両高さ方向から加わる荷重Fを受けられるようになっている。この後側壁部130の裏側には、図2及び図4を参照して、下側に突出する突起部133が車幅方向に適宜の間隔で形成されている(図4では、突起部の形成箇所に対応する符号133を付す)。これら各突起部133は、図5に示すように断面横T字形、又は断面T字形をなしているとともに、本体部11の後端部110に対してほぼ直角に下側に突出している。また図2に示す頂部131は、後側壁部130から前方に向かうにつれて次第に下方に傾斜している。そして前側壁部132の上部は、頂部131から下側に向かうにつれて次第に後側に傾斜しており、前側壁部132の下部は概ね垂直に下側に延びて、後述する溝部14の底板部140につながっている。
【0017】
また本体部11の山部13の前側には、図2に示すように、車幅方向に延びる溝部14が形成されている。この本体部11の溝部14は、山部13に対して下側に凹んでおり、溝部14の車両前後方向に延びる底板部140の後端からは、山部13の前側壁部132が車両高さ方向上側に延びている。また溝部14には、その底板部140の前端から傾斜状に立ち上がる前壁部141が形成され、その前壁部141の上端位置には、カウルルーバ10の前端部を構成するフランジ部142が車幅方向に延びるように形成されている。そして溝部14のフランジ部142に、エンジンフード8の後端部が支持されており、更にエンジンフード8と本体部11の間にはウエザストリップWSが設けられている。
【0018】
また図2に示すカウルルーバ10の溝部14には、その底板部140からほぼ直角に下側に突出する断面J字形の嵌合爪15が設けられている。この嵌合爪15は、カウルフロントパネル21の嵌合孔23に対応して車幅方向に適宜の間隔で形成されている。そしてカウルフロントパネル21のルーバ支持部22上にカウルルーバ10が載置された状態で、底板部140の嵌合爪15が、ルーバ支持部22の対応する嵌合孔23に嵌合されて連結されている(連結作業の詳細は後述)。さらに溝部14の底板部140とルーバ支持部22間は、スポンジ状のシール材16によって車幅方向における全体に亘ってシールされている。そして本実施例では、溝部14(底板部140)の嵌合爪15とルーバ支持部22の嵌合孔23の嵌合箇所が、カウルルーバ10とカウルパネル20(別部材)とが連結する連結部17となる。また底板部140から車両高さ方向上側に延びる前側壁部132が本発明の壁部に相当する。
【0019】
[封鎖部材]
また図2図4を参照して、カウルルーバ10の本体部11の裏側には、車両前後方向に延びる封鎖部材12が配設されている(封鎖部材12の配設手法は後述)。この封鎖部材12は、上方視で概ね矩形の板状の部材であり、後述するように本体部11の山部13の左部裏側を封鎖できるように配設される。そして封鎖部材12の後部には、図2に示すように車幅方向に延びる後端フランジ部120が形成されている。この後端フランジ部120は、本体部11の後端部110に倣った角度で傾斜しつつ車両前後方向に延びている。また封鎖部材12は、後端フランジ部120の前側でクランク状に下側に屈曲しているとともに、その前端部122が、概ね水平な状態で前方に延びて、本体部11(山部13)の前側壁部132に接するように配置される。そして封鎖部材12の後端フランジ部120には、図4に示すように複数の挿通孔121が、車幅方向に適宜の間隔で設けられている。これら各挿通孔121は、本体部11の山部13の対応する突起部133を挿通できるように横T字形またはT字形に形成されている。
【0020】
[本体部に対する封鎖部材の配設(空間部の形成)]
図2に示すカウルルーバ10では、上述の封鎖部材12を、本体部11の山部13の左部裏側に配設して、本体部11と封鎖部材12とで囲まれた空間部18を形成する。このとき山部13の後部に設けられた各突起部133を、封鎖部材12の後端フランジ部120の対応する挿通孔121に挿通して位置決めする。そして本体部11に対する封鎖部材12の位置決めをしたのち、突起部133の先端側を挿通孔121の周縁に熱融着等で固定しておく。この状態においては、封鎖部材12の後部の後端フランジ部120が、本体部11の後部側の位置、即ち、フロントガラス7側の位置にある後側壁部130の突起部133に固定されて接した状態となる。また封鎖部材12の前端部122は、本体部11の前側の位置、即ち、フロントガラス7側とは反対側の位置にある前側壁部132に突き当てられるように接した状態となる。こうして本体部11と封鎖部材12とがフロントガラス7側の位置及びその反対側の位置で接することで、カウルルーバ10に空間部18を形成することができる。このとき封鎖部材12の前端部122と前側壁部132とを接触させて、本体部11のフロントガラス7側への移動を阻止することにより、本体部11と封鎖部材12とで囲まれた空間部18を適切に形成しておけるようになる。なお封鎖部材12の前端部122と前側壁部132とは車両高さ方向における適宜の位置で接することができる。例えば図2に示す封鎖部材12部分では、後述する連結部17への荷重Fの伝達性を考慮して、封鎖部材12の前端部122が前側壁部132の下端部、即ち、連結部17にできる限り近い高さ位置で接している。そして上述のように封鎖部材12の後端フランジ部120だけを固定することで、本体部11と封鎖部材12の固定箇所19を極力少なくすることができるようになる。
【0021】
[カウルルーバの配設作業(別部材への連結作業)]
図2に示すカウルルーバ10の配設に際しては、まずフロントガラス7の下端部70に、本体部11の後端部110を固定部材111にて接続する。つづいてカウルルーバ10の前部を、その下方に位置するカウルフロントパネル21のルーバ支持部22(別部材)に連結する。このときカウルルーバ10の本体部11を前方(フロントガラス7から離れる方向)に撓ませながら、この本体部11の溝部14に設けた嵌合爪15を、ルーバ支持部22に設けた嵌合孔23に嵌合する。この種の構成においては、上述した空間部18によってカウルルーバ10が変形し難くなるなどして、カウルフロントパネル21との嵌合に大きな作業力を要するおそれがある。
【0022】
そこで本実施例の空間部18は、図2に示すように、本体部11と封鎖部材12とがフロントガラス7側の位置及びその反対側の位置で接することで形成されており、本体部11と封鎖部材12とは、フロントガラス7側とは反対側の位置で離間可能に接している。即ち、封鎖部材12の前端部122と山部13の前側壁部132とは、互いに固定されているわけではなく、前側(フロントガラス7から離れる方向)に離間可能に接している。そして上記構成によると、カウルルーバ10の本体部11の前部、例えば前側壁部132から溝部14にかけての部分だけを、比較的容易に前側に撓ませて移動させられるようになる(図2の二点破線状態を参照)。このため本体部11の前部だけを前側に移動させて、この本体部11の溝部14に設けた各嵌合爪15を、ルーバ支持部22の対応する嵌合孔23に嵌合できる。こうしてカウルルーバ10では、その剛性が連結作業の際に低くなり、本体部11の前部だけを前方移動させる(撓ませる)ことで操作力を極力低減することができる。さらにカウルルーバ10では、その後端部110をフロントガラス7に対して滑らす必要もないため、潤滑剤が不要となってコストアップの抑制に資する構成となる。そして本体部11の前部が元の状態(図2の実線状態)に戻ることで、封鎖部材12の前端部122と山部13の前側壁部132とが接触し、本体部11と封鎖部材12とで囲まれた空間部18が適切に形成されるようになる。
【0023】
[カウルルーバの剛性]
そして図2に示すカウルルーバ10は、その空間部18によって構造的に補強されることで、車両高さ方向から荷重Fが加わった際にもフロントガラス7との接続が極力外れないように構成されている。即ち、本体部11(山部13)の後側壁部130に対して高さ方向から加えられた荷重Fは、突起部133と挿通孔121の固定箇所19を通じて封鎖部材12に伝達される。そして封鎖部材12の前端部122は、上述したように本体部11の前側壁部132に接しているとともに、この前側壁部132は、カウルルーバ10の底板部140の連結部17に続いている。このため封鎖部材12に伝達された荷重Fを、この封鎖部材12が接している前側壁部132を通じて、底板部140の連結部17で受けられるようになる。こうして本実施例のカウルルーバ10によれば、車両高さ方向から荷重Fが加わった際に、空間部18の剛性によって変形が抑制されることで、フロントガラス7との接続が極力外れないようになっている。
【0024】
以上説明した通り本実施例では、カウルルーバ10の剛性を確保できるように空間部18が形成され、さらに空間部18を形成する本体部11と封鎖部材12とが、フロントガラス7側とは反対側の位置で離間可能、即ち、固定されることなく接している。このため本体部11を、封鎖部材12から離間させて移動させられるようになるとともに、これらの固定箇所19を極力減らすことでコストアップの抑制を図ることができる。このため本実施例によれば、カウルルーバ10の剛性と取付け性とを、コストアップを抑制しつつ確保することができる。
【0025】
さらに本実施例では、カウルルーバ10の本体部11を、フロントガラス7から離れる方向に移動させられるようになり、取付け性の確保に資する構成となる。また封鎖部材12との接触によって、本体部11のフロントガラス7に近づく方向への移動を阻止することにより、本体部11と封鎖部材12とで囲まれた空間部18を適切に形成しておけるようになる。また本実施例では、車両高さ方向からカウルルーバ10に加わる荷重Fが封鎖部材12に伝達された際に、この荷重Fを、封鎖部材12が接している本体部11の前側壁部132を通じて連結部17で受けられるようになる。そして本実施例では、車両高さ方向からカウルルーバ10に加わる荷重Fが、フロントガラス7側の本体部11と封鎖部材12の固定箇所19を通じて、封鎖部材12により確実に伝達されるようになる。
【0026】
本実施形態のカウルルーバは、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。本実施形態では、本体部と封鎖部材の構成を例示したが、これら各部材の構成を限定する趣旨ではない。例えばカウルルーバでは、本体部と封鎖部材とを、フロントガラス側の位置と反対側の位置の少なくとも一方の位置で離間可能に接する構成とすることができる。即ち、封鎖部材の前端部を前側壁部に固定するとともに、封鎖部材の後端フランジ部を本体部に対して離間可能に接する構成とすることもできる。ここで本体部に対して後端フランジ部を離間可能にする構成として、後端フランジ部の挿通孔に本体部の突起部を前方移動可能に挿通する構成、後端フランジ部を前後に短寸化して突起部に接触させる構成、後端フランジ部を本体部(山部)の後側壁部や後端部から下方に延びるリブに接する構成を例示できる。また本体部と封鎖部材とを、フロントガラス側の位置及び反対側の位置で離間可能に接する構成とすることもできる。この場合には、まず封鎖部材の前端部を前側壁部に離間可能に接する構成とする。さらに封鎖部材の後端フランジ部の車両幅方向の両端部に挿通孔を設け、この両端の挿通孔だけに突起部を挿通して固定しておく。これにより封鎖部材の後端フランジ部において、車両幅方向における挿通孔間の部分を、本体部に対して離間可能に接する構成とすることができる。
【0027】
また本体部及び封鎖部材の形状や寸法は適宜変更可能であり、突起部や挿通孔の形状や形成数も適宜変更可能である。また本体部に対する封鎖部材の位置も適宜変更可能であり、封鎖部材を、本体部の中央位置と左寄り位置と右寄り位置の少なくとも一箇所に配設でき、また本体部を概ね横断するように配設することもできる。また本体部と封鎖部材を熱融着で固定したが、これらの固定手法として接着やクリップ止めやビス止め等の各種手法を採用できる。またカウルルーバをカウルフロントパネルに連結したが、カウルルーバは、カウルパネル等の別部材の適宜の位置に連結でき、嵌合連結のほかに、係合構造やカンヌキ構造などの各種の連結構造を採用できる。そしてカウルルーバとフロントガラスの接続構造も適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0028】
2 車両
3 フロントドア
4 ドア開口部
5 フロントピラー
5a ピラー支柱部
5b 意匠部
6 フェンダパネル
7 フロントガラス
70 (フロントガラスの)下端部
8 エンジンフード
10 カウルルーバ
10a,10b 外気導入部
11 本体部
110 (本体部の)後端部
12 封鎖部材
120 後端フランジ部
121 挿通孔
122 (封鎖部材の)前端部
13 山部
130 後側壁部
131 頂部
132 前側壁部(本発明の壁部)
133 突起部
14 溝部
140 底板部
141 前壁部
15 嵌合爪
16 シール材
17 連結部
18 空間部
19 (本体部と封鎖部材の)固定箇所
20 カウルパネル(本発明の別部材)
21 カウルフロントパネル
22 ルーバ支持部
23 嵌合孔
111 固定部材
142 フランジ部
BR ベルトライン
R 車室
ER エンジンルーム
WS ウエザストリップ
図1
図2
図3
図4
図5